説明

窒化物半導体基板の製造方法

【課題】窒化物半導体基板の表面にダメージを与えることなく、平坦な表面を有する窒化物半導体基板を製造できる窒化物半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】Ni、Ti、Cr、W、Moのいずれか、又はこれらいずれかの金属の窒化物から形成される表面を有する定盤を用い、前記定盤の前記表面と窒化物半導体基板の平坦化する表面とを対向して近接して配置し、対向配置の前記定盤および前記窒化物半導体基板を900℃以上の高温状態とし、前記定盤の表面と前記窒化物半導体基板の表面との間に少なくとも水素とアンモニアを含むガスを供給することにより、前記定盤に対向する前記窒化物半導体基板の表面をエッチングして平坦化する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体基板の表面を平坦に加工する窒化物半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体ウェハ等の加工物の表面を平坦化する加工方法には、砥粒、砥粒を分散させた研磨液(スラリー)あるいは砥粒を固定した研磨布などを用いて加工物表面を研磨する機械的方法、腐食性のある薬剤などを用いて加工物表面をエッチングする化学的方法、プラズマを用いて加工物表面をエッチングする物理・化学的方法などが知られている。
【0003】
窒化物半導体、例えばGaN(窒化ガリウム)の場合、デバイスを形成する面となるGa面(Ga極性面)は、硬く、化学的に安定である。このため、GaN基板(GaN自立基板)の表面を化学的に平坦に且つ十分なエッチング速度でエッチングする適切な薬剤がなく、従来、GaN基板の平坦化には、機械的方法やプラズマエッチングが行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の機械的方法では、GaN面をミラー面に加工する場合には、ダイヤ砥粒やSiC砥粒等を用い、より面粗度のよい面に仕上げ、最終加工として、アルミナやコロイダルシリカ等のスラリーを用い、平坦な面に加工する、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−284283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した機械的方法による研磨では、GaN等の窒化物半導体基板の表面に機械的損傷・ダメージが残ると共に、表面の平坦化・平滑化のレベルには限界がある。また、プラズマエッチングでは、大型で高価な装置が必要となると共に、窒化物半導体基板の表面へのプラズマによるダメージも問題となる。
【0006】
本発明の目的は、窒化物半導体基板の表面にダメージを与えることなく、平坦な表面を有する窒化物半導体基板を製造することができる窒化物半導体基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、Ni、Ti、Cr、W、Moのいずれか、又はこれらいずれかの金属の窒化物から形成される表面を有する定盤を用い、前記定盤の前記表面と窒化物半導体基板の平坦化する表面とを対向して近接して配置し、対向配置の前記定盤および前記窒化物半導体基板を900℃以上の高温状態とし、前記定盤の表面と前記窒化物半導体基板の表面との間に少なくとも水素とアンモニアを含むガスを供給することにより、前記定盤に対向する前記窒化物半導体基板の表面をエッチングして平坦化する工程を有する窒化物半導体基板の製造方法である。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の窒化物半導体基板の製造方法において、前記定盤の表面と前記窒化物半導体基板の表面との間の距離が、2mm〜20mmの範囲である窒化物半導体基板の製造方法である。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の窒化物半導体基板の製造方法において、前記窒化物半導体基板に対向する前記定盤の表面は、表面粗さRMSが10μm以下である窒化物半導体基板の製造方法である。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれかに記載の窒化物半導体基板の製造方法おいて、前記エッチングして平坦化する工程における前記窒化物半導体基板の表面のエッチング速度が、1μm/時以上である窒化物半導体基板の製造方法である。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の態様のいずれかに記載の窒化物半導体基板の製造方法において、前記窒化物半導体基板の表面がエッチングにより除去されても、前記定盤の表面と前記窒化物半導体基板の表面との間の距離が一定となるように、前記定盤と前記窒化物半導体基板の間を近づけるようにした窒化物半導体基板の製造方法である。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1〜第4の態様のいずれかに記載の窒化物半導体基板の製造方法において、前記定盤と前記窒化物半導体基板の一方または両方を、互いの表面を対向させつつ回転させる窒化物半導体基板の製造方法である。
【0013】
本発明の第7の態様は、第1〜第4の態様のいずれかに記載の窒化物半導体基板の製造方法において、前記定盤と前記窒化物半導体基板の両方が互いの表面を対向させつつ回転しており、前記定盤の表面を前記窒化物半導体基板の表面を含む平面上に投影したとき、前記定盤の回転の中心が前記窒化物半導体基板の表面内の領域に存在しない窒化物半導体基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、窒化物半導体基板の表面にダメージを与えることなく、平坦な表面を有する窒化物半導体基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を示すもので、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を適用した、窒化物半導体基板の表面を平坦にするエッチング装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る窒化物半導体基板の製造方法の実施形態を説明する。
【0017】
(一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法)
図1は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を説明するもので、図1(a)は斜視図、図1(b)は断面図である。
図1に示すように、窒化物半導体基板1を載置する支持基台3の上方には、支持基台3に平行に対向させ且つ所定の距離を隔てて定盤2が設けられている。定盤2と支持基台3とが対向する空間は、窒化物半導体基板1をエッチングするためのガスを流すガス流路を形成する。エッチング用のガスは、少なくとも水素(H)とアンモニア(NH)を含むガスであるが、更に例えば窒素ガス(N)等のキャリアガスを加えてもよい。図1に示す実施形態では、定盤2も支持基台3も円盤状であるが、形状は円盤状に限らない。定盤2と支持基台3は、定盤2の下面および支持基台3の上面が平坦であって、900℃以上に加熱されても変形等することなく安定な形状を保つものがよい。
【0018】
窒化物半導体基板1は、GaN、AlNなどのIII族窒化物半導体からなる基板(自立
基板、ウェハ)である。窒化物半導体基板1は、平坦化・平滑化される窒化物半導体基板1の表面1aを上に向けて、支持基台3上に載置される。窒化物半導体基板1の平坦化される表面1aは、通常、デバイスが形成されるIII族極性面(Ga面、Al面など)であ
る。図1では、窒化物半導体基板1を、支持基台3上に1枚設置しているが、複数枚設置してもよい。
【0019】
定盤2は、少なくとも窒化物半導体基板1及び支持基台3に対向する定盤2の表面2aが、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)のいずれか、又はこれらいずれかの金属の窒化物から形成されるのが好ましい。定盤は全て上記Mo等の材料で形成されていても、或いは、上記Mo等とは異なる材料の定盤本体の表面に、上記Mo等の金属膜や上記Mo等の金属窒化膜が形成されているものでもよい。上記金属や金属窒化物は、後述する触媒作用により水素ガスを分解して原子状水素を生成できる材料として挙げたものであり、触媒作用を有するものであれば、その他の材料でもよい。定盤2の表面2aは、その表面粗さRMS(二乗平均平方根粗さ)が10μm以下が好ましく、さらには表面粗さRMSが100nm以下がより好ましい。
【0020】
窒化物半導体基板1と定盤2の一方または両方は、互いの表面1a、2aを対向させつつ回転駆動する。この回転時にも、定盤2の表面2aは、窒化物半導体基板1の表面1aの上方を常に覆う広さを有する。図1に示す実施形態では、駆動モータ等を含む回転駆動機構(図示せず)を用いて、円形の窒化物半導体基板1と定盤2の両方を、それぞれの中心軸4,5の回りに互いに反対方向に回転させている。また、定盤2の表面2aを窒化物半導体基板1の表面1aを含む平面上に投影したときに、定盤2の中心軸(回転中心)5が、窒化物半導体基板の表面1a内の領域に存在しないようにしている。さらに、定盤2または支持基台3は上下に昇降駆動できるように構成され、支持基台3上の窒化物半導体基板1の表面1aと定盤2の表面2aとの距離dを調整できるようになっている。
【0021】
窒化物半導体基板1の表面1aをエッチングにより平坦化する工程では、窒化物半導体基板1の表面1aと定盤2の表面2aとの距離dを2mm〜20mmの範囲に近接して配置し、ヒーター(図示せず)等により定盤2および窒化物半導体基板1を900℃以上に加熱した状態とし、定盤2と支持基台3との間に、少なくとも水素とアンモニアを含むガスを供給する。
【0022】
定盤2と支持基台3との間に供給されたガスは、定盤2の表面2aおよび窒化物半導体基板1の表面1aに沿って流れる。この際に、水素ガスは、高温状態にある定盤2の表面2aに接触し、定盤2の表面2aを形成するMo等の触媒作用により、定盤2の表面2aには反応性の高い原子状水素が発生する。主に、この原子状水素によって窒化物半導体基板1の表面1aのエッチングがなされると考えられる。すなわち、窒化物半導体基板1の表面1aで発生した原子状水素は、窒化物半導体基板1側へと拡散して窒化物半導体基板1の表面1aに到達し、窒化物半導体基板1の表面1aをエッチングする。具体的には、窒化物半導体基板1がGaN基板の場合、原子状水素により、表面のGaN結晶がGaH(ガラン)とNH(アンモニア)に分解されてエッチングされる。
【0023】
原子状水素は不安定であり短時間で反応して消滅してしまい、原子状水素によるエッチング作用は、定盤2の表面2aから離れるにつれて急速に減衰する。このため、定盤2の表面2aから一定の距離の内側にある窒化物半導体基板1のみがエッチングされ、定盤2と窒化物半導体基板1との間の距離が長くなると、窒化物半導体基板1はエッチングされない。従って、定盤2と窒化物半導体基板1との間を例えば2mm〜20mmの範囲に近接して配置する。
定盤2から拡散する原子状水素は、定盤2に近い窒化物半導体基板1の表面1aにより多く到達する。すなわち、凹凸を有する窒化物半導体基板1の表面1aにおいて、原子状
水素は、主に、定盤2側に面する窒化物半導体基板1の表面1aの凸部に多く到達する。このため、窒化物半導体基板1の表面1aの凸部の方が凹部よりも多くエッチングされ、表面1aの平滑化・平坦化が進行する。特に、定盤2から拡散する原子状水素の到達可能な距離を考慮して、定盤2の表面2aと窒化物半導体基板1の表面1aとの距離dを適切に設定すると、主に、定盤2側に面する表面1aの凸部の頂点側を選択的にエッチングでき、より平滑化・平坦化が促進される。
【0024】
窒化物半導体基板1の表面1aがエッチングにより除去されていっても、定盤2の表面2aと窒化物半導体基板1の表面1aとの間の距離dが一定となるように、定盤2と窒化物半導体基板1の間を近づけるようにするのが好ましい。これにより、エッチングによる適切な窒化物半導体基板1の表面1aの平滑化・平坦化が図れ、また、エッチング速度を一定に保つことができる。
【0025】
エッチング時に水素ガスの他に、アンモニアガスを流すのは、窒化物半導体基板1の熱分解を抑制するためである。900℃以上に加熱された窒化物半導体基板1では熱分解が起こり、窒化物半導体基板1の表面1aから窒素分子が抜け出る。この熱分解は特に結晶が弱い所などで起こりやすく、基板1の表面1aにランダムな凹凸が形成される。アンモニアガスを流すと、900℃以上の高温下でアンモニアが分解されて原子状窒素が生成され、この原子状窒素が基板1の表面1aに補給される。このため、アンモニアガスを流すことにより、窒化物半導体基板1の表面1aの熱分解を抑制・低減でき、熱分解による表面1aの状態変化を抑えることができる。
【0026】
定盤2及び窒化物半導体基板1のどちらも回転させずに固定した状態でエッチングを行うと、定盤2の表面2aの表面状態・表面形状が、窒化物半導体基板1の表面1aに転写される。定盤2の表面2aが平坦であれば、その平坦な形状が窒化物半導体基板1の表面1aに反映されることになる。定盤2の表面2aが十分に平坦でない場合には、上記したように窒化物半導体基板1と定盤2の一方または両方を回転するのがよい。この回転により、定盤2の表面2aの凹凸・表面粗さが平均化された形で、窒化物半導体基板1の表面1aの平滑化・平坦化がなされる。窒化物半導体基板1と定盤2の両方を回転する時の方がそれらの一方のみを回転する時よりも、窒化物半導体基板1の表面1aの平滑化・平坦化がより促進される。
【0027】
定盤2の表面2aが原子レベルで平坦でない場合には、窒化物半導体基板1と定盤2の両方を回転し、窒化物半導体基板1と定盤2の回転中心(中心軸)4,5をずらすことで、原子レベルで平坦な窒化物半導体基板1の表面1aを得ることができる。また、定盤2と窒化物半導体基板1の両方を回転する場合、定盤2の表面2aを窒化物半導体基板1の表面1aを含む平面上に投影したとき、定盤2の回転中心(中心軸)5を窒化物半導体基板1の表面1aの外側にするのがよい。定盤2の回転中心が窒化物半導体基板1の表面1a内にあると、定盤2の回転中心及びその近傍に対向する窒化物半導体基板1の表面1aの部分は、上記回転による定盤表面2aの表面粗さ等の平均化が不十分となるが、定盤2の回転中心が窒化物半導体基板1の表面1a外にあると、窒化物半導体基板1の表面1aにおける面内平坦度の均一化が図れる。
【0028】
上記の原子状水素を用いたエッチングでは、エッチング面がGa面のように硬く化学的に安定であっても、十分なエッチング速度で窒化物半導体基板1の表面1aを平坦化できる。本発明では1μm/時以上のエッチング速度を実現でき、窒化物半導体基板の生産性を向上できる。また、従来の機械的方法やプラズマエッチングのように、研磨後に窒化物半導体基板の表面に損傷・ダメージを与えることがないため、本発明のエッチング工程後の窒化物半導体基板(窒化物半導体自立基板)は、ダメージを受けた表面部を除去する等の処理が不要で、発光素子などのデバイス作製にそのまま使用することができる。更に、
高温状態で近接配置した定盤と窒化物半導体基板との間に、少なくとも水素とアンモニアを含むガスを供給するだけでエッチングできるので、図2に示すような簡素で小型なエッチング装置によって窒化物半導体基板表面の平坦化を実現できる。
【0029】
なお、上記実施形態では、図1に示すように、窒化物半導体基板1を下方に、定盤2を上方に配置したが、上下を逆にして、定盤2を下方に、平坦化される表面1aを下方に向けた窒化物半導体基板1を上方に配置するようにしてもよい。さらに、定盤の表面と窒化物半導体基板の表面とが対向して配置されていれば、定盤及び窒化物半導体基板の全体を斜めなどに配置してもよい。
【0030】
(他の実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法)
次に、本発明の他の実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を説明する。図2に、この実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を適用したエッチング装置を示す。図2のエッチング装置10は、一度に複数枚の窒化物半導体基板1をエッチングして平坦化する装置である。
【0031】
図2に示すように、エッチング装置10は、窒化物半導体基板1と定盤20が設置される容器11を備える。容器11は、上壁11aおよび底壁11bを有する筒体状の密閉容器であり、石英ガラスなどから形成されている。容器11内の上方には定盤20が水平に配置されており、定盤20の上面中央部には、容器11の上壁11aを貫通して設けられた駆動軸12が連結されている。駆動軸12は、図示省略の回転機構および昇降機構によって、回転可能に且つ昇降可能に設けられている。この実施形態の定盤20は、円盤状のガラス基板、セラミック基板あるいは金属基板等からなる定盤本体21と、その下側の表面(主表面)に形成されたMo(モリブデン)の金属膜22とから形成されている。金属膜22は、例えば、定盤本体21にスパッタリングにより形成したりすればよい。なお、金属膜22の材料は、Moに限らず、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)などでもよい。
【0032】
窒化物半導体基板1は、容器11の底壁11b側に、定盤20に対向させ且つ定盤20の周方向に沿って複数が配置されている。複数の窒化物半導体基板1は、それぞれホルダ15を介して底壁11b上に設置される。窒化物半導体基板1は、ホルダ15上部の凹部に収容され、ホルダ15に水平状態で保持される。各ホルダ15は、図示省略の回転機構によって回転可能に設けられており、ホルダ15と共に窒化物半導体基板1が回転する。ホルダ15は、石英、SiC(炭化ケイ素)、SiCコートのカーボン、酸化アルミニウムなどから形成するのが好ましい。
【0033】
容器11の外側には、上壁11aの上方と底壁11bの下方に、定盤20および窒化物半導体基板1を加熱するためのヒーター16が設けられている。また、容器11の側壁には、容器11内にエッチング用のガスを供給するガス供給口17と、エッチング処理後のガスを容器11外に排出するガス排出口18とが形成されている。
【0034】
図2のエッチング装置10を用いた窒化物半導体基板1のエッチングによる平坦化処理を説明する。
【0035】
複数の窒化物半導体基板1を各ホルダ15に設置し、定盤20下面の金属膜22と窒化物半導体基板1の表面との間が所定の距離(例えば、2mm〜20mm)となるように、駆動軸12を昇降して定盤20の位置(初期位置)を決める。図示省略の回転機構により、定盤20とホルダ15に保持された窒化物半導体基板1とをそれぞれ所定の回転速度で回転し、ヒーター16により、定盤20および窒化物半導体基板1を所定の温度に加熱する。定盤20および窒化物半導体基板1の加熱温度は900℃以上1100℃以下の範囲
が好ましい。加熱され高温状態となった容器11内に、ガス供給口17からエッチング用のガスを供給する。ガス供給口17から供給されたガスは、定盤20と窒化物半導体基板1が配置された底壁11bとの間隙を流れ、ガス排出口18から容器11外へと排出される。
本実施形態では、エッチング用のガスは、水素ガス、アンモニアガスの他に、キャリアガスとして窒素ガスを使用した。ガス供給口17から供給するガスは、一例として、ガスの総流量を10slmとし、このうち水素ガスの流量が1〜3slm、アンモニアガスの流量が1slm、残りを窒素ガスとした。また、容器11内の圧力は、500Torr〜800Torrとしてエッチングを行った。
【0036】
ガス供給口17から供給されたガス中の水素ガスは、定盤20の金属膜22表面に接触し、金属膜22の触媒作用によって原子状水素が発生し、この原子状水素が窒化物半導体基板1の表面に至って基板表面がエッチングされる。基板表面がエッチングされるにつれて、必要に応じて駆動軸12を下降するなどして定盤20を移動してもよい。アンモニアガスは、上述したように、窒化物半導体基板1の熱分解を抑制する。本実施形態では、窒化物半導体基板1と定盤2の両方を回転し、且つ定盤2の回転中心の投影が窒化物半導体基板1の領域外にあるので、窒化物半導体基板1の表面を平坦にエッチングできると共に、基板表面における平坦度の面内均一化が図れる。また、複数の窒化物半導体基板1を一度に平坦化でき、生産性が高い。
【0037】
なお、上述した図2に示すエッチング装置10では、駆動軸12により定盤20を昇降できる構成としたが、窒化物半導体基板1側を昇降できる構成としてもよい。また、上記のエッチング装置10では、容器側壁の一方側のガス供給口17から反対側のガス排出口18へと容器11内を略一方向にガスを流したが、例えば、複数の窒化物半導体基板1の内側に位置する底壁11bの中央部からエッチング用のガスを導入し、定盤20と底壁11bとの間に形成されるガス流路の中央部から放射状にガスが流れるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 窒化物半導体基板
1a 表面
2 定盤
2a 表面
3 支持基台
4 中心軸(回転中心)
5 中心軸(回転中心)
10 エッチング装置
11 容器
11a 上壁
11b 底壁
12 駆動軸
15 ホルダ
16 ヒーター
17 ガス供給口
18 ガス排出口
20 定盤
21 定盤本体
22 金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni、Ti、Cr、W、Moのいずれか、又はこれらいずれかの金属の窒化物から形成される表面を有する定盤を用い、前記定盤の前記表面と窒化物半導体基板の平坦化する表面とを対向して近接して配置し、
対向配置の前記定盤および前記窒化物半導体基板を900℃以上の高温状態とし、前記定盤の表面と前記窒化物半導体基板の表面との間に少なくとも水素とアンモニアを含むガスを供給することにより、前記定盤に対向する前記窒化物半導体基板の表面をエッチングして平坦化する工程を有することを特徴とする窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記定盤の表面と前記窒化物半導体基板の表面との間の距離が、2mm〜20mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記窒化物半導体基板に対向する前記定盤の表面は、表面粗さRMSが10μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記エッチングして平坦化する工程における前記窒化物半導体基板の表面のエッチング速度が、1μm/時以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項5】
前記窒化物半導体基板の表面がエッチングにより除去されても、前記定盤の表面と前記窒化物半導体基板の表面との間の距離が一定となるように、前記定盤と前記窒化物半導体基板の間を近づけるようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項6】
前記定盤と前記窒化物半導体基板の一方または両方を、互いの表面を対向させつつ回転させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項7】
前記定盤と前記窒化物半導体基板の両方が互いの表面を対向させつつ回転しており、前記定盤の表面を前記窒化物半導体基板の表面を含む平面上に投影したとき、前記定盤の回転の中心が前記窒化物半導体基板の表面内の領域に存在しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の窒化物半導体基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−26314(P2013−26314A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157671(P2011−157671)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】