説明

立体成型品及びその製造方法並びにその用途

本発明は、硬化性シリコーン組成物の架橋物からなる立体成型品であって、前記硬化性シリコーン組成物の少なくとも一部を前記架橋物の誘電率よりも大きい誘電率を有し、前記架橋物に対して剥離性を有する基材と接触した状態で架橋させて得られた立体成型品に関する。接着現場における成型機並びにプライマー乃至接着剤の使用を必要とせず、複雑な立体形状を有するシリコーンゴムを任意の材質の基体へ容易に且つ比較的短時間で接着させることが可能であり、得られる製品のシリコーンゴム部分に気泡の混入や欠損がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン組成物からなる立体成型品及びその製造方法並びにその用途に関する。本願は2006年11月8日に出願された日本国特許出願2006−302815に基づき優先権を主張するものであり、当該出願の内容は本願に参考として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、立体形状のシリコーンゴムを金属、ガラス、プラスチック等の各種の材質からなる基体と一体化させて使用することが広く行われている。これまで、シリコーンゴムと基体とを一体化させるには、第1の方法として、成型機の金型のキャビティ内に基体を配置し、未硬化のシリコーンゴムをキャビティに充填し、加圧・加熱してシリコーンゴムを硬化させると同時に基体に接着させる方法がある。なお、シリコーンゴムと基体との接着促進のために基体に予めプライマーを塗布・乾燥する場合もある。
【0003】
第2の方法は未硬化のシリコーンゴムを所定の形状として基体上に配置し、硬化・接着させる方法である。特に、縮合硬化型のシリコーンゴムは室温で硬化し、各種の基体に良好な接着性を示すので、この方法での接着に好適である。
【0004】
第3の方法は、硬化したシリコーンゴムと基体とを、接着剤を用いて接着するものである。例えば、特開平1−280517号公報の図12〜図14には、シリコーンゴム製のリング状パッキンを用いて密封容器をシールするにあたり、該シール部に接着剤を予め塗布しておくことで、リング状パッキンの該シール部への接合強度を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−280517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、第1の方法では、シリコーンゴムと基体との接着のためには金型を備えた成型機が必要であり、接着現場での施工は困難である。しかも、加圧・加熱時には金型の型締め圧力及びシリコーンゴムの熱膨張によりキャビティ内が高圧になるため、これに耐えられない材質及び構造の基体は使用できないという問題もある。また、基体に予めプライマーを塗布・乾燥する場合は、プライマーの塗布・乾燥に時間を要するだけでなく、基体が立体形状を有する場合は、特に、基体表面の所定箇所に正確にプライマーを塗布することが困難な場合がある。更に、プライマー中の有機溶媒の揮発による環境負荷の問題も存在する。
【0007】
第2の方法では、未硬化のシリコーンゴムが硬化するまでの間、該シリコーンゴムを目的の形状に保持する必要があるが、硬化に時間がかかる場合には量産を必要とする部品の製造には不向きである。また、未硬化のシリコーンゴムは形状を整えることが難しいため、複雑な形状を得ることができず、寸法精度も悪化するという問題がある。
【0008】
一方、型枠、シーリングテープ等を用いて未硬化のシリコーンゴムを目的の形状に保つ方法もあるが、手間がかかる上、成型機を使う場合と比較して複雑な形状の成型物を得ることができない。加えて、シリコーンゴムに高い圧力をかけられないため、シリコーンゴム中への気泡混入、型枠への充填不足等が起こりやすい問題があった。
【0009】
第3の方法では、未硬化のシリコーンゴムを予め成型機で硬化させて成型し、その後、接着剤を用いて接着現場で施工できる利点がある。しかし、硬化したシリコーンゴムは基体との接着が困難であり、基体との十分な強度での接着をもたらす接着剤の種類が限定されている。更に、接着剤を塗布するのに手間がかかるという問題もある。
【0010】
特に、基体の一部にのみ硬化シリコーンゴムを接着させたい場合には、基材の一部に限定してプライマーを塗布する必要があるが、プライマーは一般に低粘度で、浸透性・濡れ性に富むために、正確に一部分のみに塗布するのは容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような従来技術の現状に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、接着現場における成型機並びにプライマー乃至接着剤の使用を必要とせず、複雑な立体形状を有するシリコーンゴムを任意の材質の基体へ容易に且つ比較的短時間で接着させることを可能とし、得られる製品のシリコーンゴム部分に気泡の混入や欠損がない、シリコーンゴムと基体との新たな接着様式を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、硬化性シリコーン組成物の架橋物からなる立体成型品であって、前記硬化性シリコーン組成物の少なくとも一部を前記架橋物の誘電率よりも大きい誘電率を有し、前記架橋物に対して剥離性を有する基材と接触した状態で架橋させて得られた立体成型品によって達成される。
【0013】
前記硬化性シリコーン組成物はヒドロシリル化反応硬化型であることが好ましい。
【0014】
前記ヒドロシリル化反応硬化型の硬化性シリコーン組成物は、
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、
(C)接着促進剤、及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒
を含むヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物であることが好ましい。
【0015】
前記(C)接着促進剤は、一分子中にケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であってもよい。
【0016】
前記(C)接着促進剤は、一分子中にケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも1個有し、一分子中にケイ素原子結合アルケニル基及び/又はケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であることが好ましく、更には、前記(C)接着促進剤は、一分子中にケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも1個有し、一分子中にケイ素原子結合アルケニル基及び/又はケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個有するオルガノシラン、オルガノポリシロキサンまたはシラトランからなる群から選択される少なくとも一つの有機ケイ素化合物であることが好ましい。
【0017】
本発明の立体成型品は、前記硬化性シリコーン組成物の少なくとも一部を前記架橋物の誘電率よりも大きい誘電率を有する基材と接触した状態で架橋させることによって製造することができる。前記基材を独立して使用する場合の形状は、フィルム又はシートが好ましい。一方、前記架橋をキャビティを備える型内の該キャビティで行う場合は、前記型が前記基材からなる、又は、前記キャビティ面の少なくとも一部が前記基材からなることが好ましい。前記架橋をロール上で行う場合には、前記ロールが前記基材からなる、又は、前記ロール表面の少なくとも一部が前記基材からなることが好ましい。なお、前記硬化性シリコーン組成物をノズル又はダイから押出し、これを前記基材と接触させて架橋させてもよい。
【0018】
本発明では、前記立体成型品は任意の基体と接着されて各種の製品を構成する。前記製品としては、燃料電池用部品、携帯電話用部品、自動車用部品、電気・電子機器用部品、スポーツ用品、又は、建材が好ましい。なお、本発明では、前記立体成型品は、前記基体と接触する前には、前記立体成型品に対して剥離性を有する基材と共に一体化されて複合体として取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の立体成型品は、成型機と金型を用いて複雑な形状に成型でき、接着前に既に硬化しているために取り扱いが容易である。そして、本発明の立体成型品の基体への接着時には成型機を必要としないので、現場施工が可能である。また、接着に際して基体へのプライマー塗布を必要としないので、塗布に伴う作業時間を短縮でき、コスト面で有利であると共に環境負荷を低減することができる。更に、金型キャビティ内に基体を配置しないので、接着時の金型内の高圧により破壊されてしまうような材質及び構造の基体にも接着することが可能である。
【0020】
また、本発明の立体成型品は、予め所定の形状に成型されているので、現場で未硬化シリコーンゴムを所定の形状に維持する必要がなく、比較的短時間での施工が可能である。また、基体と接着されたシリコーンゴム硬化物における気泡の混入、及び、欠損の発生を回避することができる。
【0021】
また、本発明の立体成型品は、架橋したシリコーンゴムでありながら、接着剤を使用せずとも任意の基体と接着することが可能である。さらに、立体成型品の成型時にその表面の任意の場所に正確に接着性を付与することができるので、基体との一体化の際に、接着部分と非接着部分を正確に分離することが可能となる。
【0022】
本発明の立体成型品の製造方法では、上記の優れた特性を有する立体成型品を、射出成型、圧縮成型、注型成型、押出成型、カレンダー成型等の既知の成型手法、或いは、スクリーン印刷等の既知の印刷手法を用いて容易に製造することができる。
【0023】
本発明の立体成型品と基体とからなる本発明の製品は、接合面の位置が正確であり、長期の使用にも耐えることができる。特に、本発明の製品は燃料電池用部品、携帯電話用部品、コネクタ、自動車用部品、電気・電子機器用部品、スポーツ用品、建材等の部品の精密な接着が求められる分野で使用可能である。他の具体的な用途はコネクターに関する。なお、本発明の立体成型品は、該立体成型品と、該立体成型品に対して剥離性を有する基材とからなる複合体として取り扱うことにより、輸送・保存等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の立体成型品を利用したゴルフクラブの一例を示す図
【図2】本発明の立体成型品を利用したジョイントの一例
【図3】本発明の立体成型品を利用したガスケットの一例
【図4】本発明の立体成型品を利用したガスケットの他の一例
【図5】本発明の立体成型品を利用したガスケットの更に他の一例
【図6】実施例8で得られた架橋ゴム片の概略形状を示す図
【図7】実施例9で得られた架橋ゴム片の概略形状を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の立体成型品は、室温乃至加熱条件下で基体と接触すると硬化して、基体と一体化する性質を有する硬化性シリコーン組成物の架橋物(硬化物)からなる。ここでの「室温」とは20〜25℃を意味しており、好ましくは23℃〜25℃、より好ましくは23℃である。
【0026】
前記架橋物の架橋度合は限定されず、例えば、硬化性シリコーン組成物を架橋させて、その架橋物の硬さが実質的に変化しなくなるような状態(90〜100%架橋)まで完全に架橋させた状態、あるいは、不完全に架橋させ、溶剤により膨潤させて(但し、溶剤に完全に溶解することはない)流動性を失った状態、すなわち、JIS K 6800(接着剤・接着用語)に定義されているBステージ(熱硬化性樹脂の硬化中間体)のような状態であってよい。前記架橋物は少なくともその表面が架橋されていればよく、その内部が架橋されている必要はないが、全体が架橋されていることが好ましい。
【0027】
本発明において、「立体成型品」とは、3次元形状を有する成型品を意味しており、以下のいずれかの条件を満たすものである。なお、本発明の立体成型品は中実又は中空のいずれでもよく、また、スポンジ状、ゲル状若しくはゴム状でもよい。
(1)鋭角又は鈍角にて交差する、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、更により好ましくは少なくとも5つ、特に好ましくは少なくとも6つ、の平面を有する成型品。前記平面は成型品表面にて交差してもよく、或いは、その延長面が成型品表面から離れた位置で交差してもよい。
(2)平行な2つの平面を有する(1)以外の成型品であって、当該2つの平面間距離が2mm以上、好ましくは5mmを越えるもの。
(3)曲面を有する(1)及び(2)以外の成型品。
【0028】
立体成型品の具体例としては、これらに限定されるものではないが、球;非球体;楕円体;半球;リング;対向する面の間隔が2mm以上、好ましくは5mmを越える立方体・直方体等の多面体;円柱;角柱;円錐;角錐;並びに、これらの組み合わせが挙げられる。なお、厚さ2mm未満の薄いシート又はフィルムは本発明における立体成型品ではないが、厚さ2mm未満のシート部分を有していても他の部分の形状から上記(1)〜(3)の条件のいずれかを満たすものは本発明の立体成型品である。
【0029】
硬化性シリコーン組成物としては、ヒドロシリル化反応硬化性のシリコーン組成物が好ましい。
【0030】
このようなヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物としては、特に、
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子水素原子を有するオルガノポリシロキサン、
(C)接着促進剤、及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒
を含む硬化性シリコーン組成物が好ましい。
【0031】
(A)成分は、上記組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。この(A)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状が例示される。また、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、特に、ビニル基であることが好ましい。このアルケニル基の結合位置としては、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が例示される。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル甚、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の置換若しくは非置換の一価炭化水素基が例示され、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。また、(A)成分の粘度は限定されないが、得られるシリコーンゴム組成物を液状ゴムとして使用するには25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。一方、得られるシリコーンゴム組成物をミラブルゴムとして使用するには25℃における粘度は1,000,000mPa・s以上が好ましく、10,000,000mPa・s以上であることがより好ましい。(A)成分としては一種類のオルガノポリシロキサンを使用してもよく、2種類以上のオルガノポリシロキサンを併用してもよい。
【0032】
(B)成分は上記組成物の架橋剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。この(B)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示される。また、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の結合位置としては、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が例示される。また、(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合した基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基.フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の置換若しくは非置換の一価炭化水素基が例示され、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。また、この(B)成分の粘度は限定されないが、25℃における粘度が1〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。(B)成分としては一種類のオルガノポリシロキサンを使用してもよく、2種類以上のオルガノポリシロキサンを併用してもよい。
【0033】
(B)成分の配合量は、上記組成物を架橋させるに十分な量であり、これは、上記組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子が0.5〜10モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に、これが1〜3モルの範囲内であることが好ましい。これは、上記組成物において、ケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子がこの範囲朱満のモル数であると、上記組成物が硬化しなくなる傾向があり、一方、この範囲をこえるモル数であると、上記組成物の架橋物の耐熱性が低下する傾向があるからである。
【0034】
(C)成分は上記組成物に良好な接着性を付与するための接着促進剤である。(C)成分としては一種類の接着促進剤を使用してもよく、2種類以上の接着促進剤を併用してもよい。
【0035】
(C)成分は、一分子中にケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であってよい。一分子中にケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物としては、同一のケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0036】
前記加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシロキシ基;イソプロペノキシ基等のアルケノキシ基;ジメチルケトキシム基、メチルエチルケトキシム基等のオキシム基が例示され、アルコキシ基であることが好ましく、特に、メトキシ基であることが好ましい。
【0037】
特に、前記有機ケイ素化合物としては、トリメトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0038】
また、前記有機ケイ素化合物中の加水分解性基以外のケイ素原子に結合している基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の置換若しくは非置換の一価炭化水素基;エポキシ基含有一価有機基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。
【0039】
前記のエポキシ基含有一価有機基としては、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基が例示される。
【0040】
各種の基体に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のアルケニル基及び/又はエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。また、これらの基に加えてケイ素原子結合水素原子を有してもよい。このような有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン、オルガノポリシロキサン、シラトランが例示される。このオルガノポリシロキサンの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。
【0041】
前記有機ケイ素化合物としては、具体的には、例えば以下のものが例示される。
【0042】
(1)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のオルガノシラン
(2)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有トリアルコキシシランと分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルシロキサン・メチルアルケニルシロキサン共重合体の反応混合物、ビニルトリメトキシシランのようなアルケニル基含有トリアルコキシシランとアリルグリシジルエーテルのようなエポキシ基とアルケニル基とを含有する化合物と分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体の反応混合物等のオルガノポリシロキサン
(3)式:
【化1】

で示されるビス(トリメトキシシリルプロポキシメチル)アリルシラトラン、式:
【化2】

で示されるシラトラン等のシラトラン
【0043】
(C)接着促進剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有トリアルコキシシランと分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルシロキサン・メチルアルケニルシロキサン共重合体の反応混合物等のオルガノポリシロキサン、及び、ビス(トリメトキシシリルプロポキシメチル)アリルシラトラン、並びに、これらの組み合わせが特に好ましい。
【0044】
(C)成分の配合量は、上記組成物の架橋物に特に良好な接着性を付与するに十分な量であり、例えば、(A)成分100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲内となる量であることが好ましく、特に、これが0.1〜10重量都の範囲内となる量であることが好ましい。これは、(C)成分の配合量がこの範囲朱満であると、架橋物の接着性が低下する傾向があり、一方、この範囲をこえても接着性に影響はなく、むしろ、架橋物の安定性が低下する傾向があるからである。
【0045】
(D)成分は、上記組成物のヒドロシリル化反応による硬化を促進するための触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知のヒドロシリル化反応用触媒が例示される。特に、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等の白金系触媒が反応速度が良好であることから好ましい。
【0046】
(D)成分の配合量は、上記組成物の架橋を促進するに十分な量であり、これは、白金系触媒を用いる場合には、上記組成物において、この触媒中の白金金属が重量単位で0.01〜1,000ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特に、これが0.1〜500ppmの範囲内であることが好ましい。これは、(D)成分の配合量が、この範囲未満であると、組成物の硬化速度が著しく遅くなる傾向があり、一方、この範囲をこえても、さほど硬化速度には影響がなく、むしろ、着色等の問題を生じるからである。
【0047】
上記組成物は、(A)成分〜(D)成分を均一に混合することにより得られる。そして、この組成物を室温〜200℃の温度範囲、好ましくは、室温〜120℃の温度範囲に加熱することによって、ヒドロシリル化反応させて架橋物を形成することができる。上記組成物を加熱する際には、上記組成物の架橋後に余分に熱をかけないことが推奨される。
【0048】
この硬化性シリコーン組成物を架橋する際に、そのヒドロシリル化反応速度を調整し、架橋物の安定性を向上させるために、上記組成物にヒドロシリル化反応抑制剤を配合することが好ましい。このヒドロシリル化反応抑制剤としては、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾールが例示される。この付加反応抑制剤の配合量としては、上記組成物の架橋条件により異なるが、(A)成分100重量部に対して0.00001〜5重量部の範囲内であることが実用上好ましい。
【0049】
また、上記のような硬化性シリコーン組成物には、その他任意の成分として、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導質性金属粉末等の充填剤、染料、顔料、難燃材、シリコーンオイル、溶剤を配合することができる。特に、圧縮成型及び射出成型等のように金型を用いて成型する場合には、金型から取り出す際に成型物が破損するのを防ぐため、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、カーボンブラック等の補強性のある成分、特にヒュームドシリカ、を組成物の3〜60質量%、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%の範囲で加えることが好ましい。また、架橋物をスポンジ状とする場合は、公知の発泡剤を加えてもよい。
【0050】
また、成型物の硬度を下げたり、基体への密着性を向上させたり、応力を小さくしたりすることを目的として、シリコーンオイル、特には架橋性反応基を含有しないジオルガノポリシロキサンを組成物の3〜400質量%、好ましくは5〜200質量%、より好ましくは10〜100質量%の範囲で加えてもよい。該シリコーンオイルの25℃における粘度は特に限定されないが、取扱い作業性の点から、50〜50,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。該シリコーンオイルとしては、(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基と同じ基を有するジオルガノポリシロキサン、すなわち(A)成分と相溶性の高いシリコーンオイルである事が好ましい。一方、成型物表面にブリードアウトして潤滑性を付与することを目的としてシリコーンオイルを配合する場合には、(A)成分と相溶性の低い架橋性反応基を含有しないジオルガノポリシロキサンを選択して、組成物の1〜10質量%の範囲で加えることが好ましい。また、(A)成分と相溶性のあるシリコーンオイルと(A)成分と相溶性のないシリコーンオイルとを同時に配合してもよい。
【0051】
次に本発明の硬化性シリコーン組成物の立体成型品の製造方法について詳しく説明する。
【0052】
本発明の立体成型品は、硬化性シリコーン組成物の架橋物に対して剥離性があり、且つ、該架橋物より大きな誘電率を有する基材と接触させながら架橋させて成型することにより得ることができる。このような成型方法としては、特に限定されるものではなく、任意の成型方法を採用することができるが、圧縮成型、射出成型、トランスファー成型、射出圧縮成型、注型成型等の型を使用して硬化性シリコーン組成物を該型内で架橋させる成型方法(以下、「金型成型」という)を使用することが好ましい。
【0053】
金型成型の好ましい態様としては、例えば、硬化性シリコーン組成物の架橋物に対して剥離性があり、且つ、該架橋物より大きな誘電率を有する基材をフィルム又はシート形状とし、金型のキャビティ内に配置する方法が例示される。すなわち、圧縮成型や射出成型時に、この基材フィルム又はシートを金型のキャビティ内の全部又は任意の場所に設置し、その後、硬化性シリコーン組成物をキャビティ内に導入して、所定の圧力及び温度条件下で架橋させると、基材フィルム又はシートがキャビティの形状に追従するので、キャビティの形状通りの立体成型品を成型により得ることができ、同時に、成型中に基材フィルム又はシートと接触した部分の立体成型品表面には接着性が発現する。
【0054】
基材フィルム又はシートをキャビティの一部分のみに設置し、成型品の一部分に接着性を付与してもよい。キャビティから成型品を取り出す場合には、成型品に基材フィルム又はシートが付着したままでよい。成型品又は基材フィルムとキャビティ面との離型性が劣る場合には、既知の離型剤をキャビティ面に予め塗布するか、又は、フッ素樹脂等を用いた既知の表面処理をキャビティ面に予め施すことで離型性を改善してもよい。
【0055】
基材フィルム又はシートの柔軟性又は強度が低いために十分なキャビティ形状追従性が得られない場合は、十分な形状追従性をもつ他のフィルム又はシート上に該基材をコーティングした、2層からなるフィルム又はシートを用いてもよい。十分な形状追従性をもつフィルム又はシートとしてはポリエステル製フィルム又はシート、特に、ポリエチレンテレフタレート製フィルム又はシートが例示される。なお、基材フィルム又はシートは平面形状のものを用いて成型時にキャビティ形状に追従させてもよいし、予めキャビティ形状に成型したものを用いてもよい。
【0056】
金型成型の他の態様としては、硬化性シリコーン組成物の架橋物に対して離型性を有し、且つ、より大きな誘電率を有する基材の材料からキャビティを備える型を作製し、或いは、金型のキャビティ面の少なくとも一部を前記基材から構成して、当該型を用いて硬化性シリコーン組成物の架橋及び成型を行う方法が例示される。
【0057】
金型のキャビティ面の少なくとも一部を前記基材から構成する態様としては、キャビティ面を前記基材の材料でコーティングする方法が挙げられる。立体成型品の全体に接着性を付与する場合にはキャビティ面の全てをコーティングし、立体成型品の一部分にのみ接着性を付与する場合には、当該部分に対応するキャビティ面のみをコーティングすればよい。コーティングの方法としては既知の方法を使用することができ、例えば、樹脂製の基材の場合には基材を熱で融解してコーティングする方法、溶剤中に溶解してコーティングする方法等が例示される。一方、金型の一部に任意の形状の前記基材をインサートして、金型のキャビティ面の一部を前記基材の表面が構成するようにしてもよい。前記成型品とキャビティ面との離型性が劣る場合には、既知の離型剤をキャビティ面に予め塗布するか、又は、フッ素樹脂等を用いた既知の表面処理をキャビティ面に予め施すことで離型性を改善してもよい。
【0058】
なお、硬化性シリコーン組成物が液状の場合は、型に圧力をかけずに硬化性シリコーン組成物をキャビティ内に導入し、室温にて、又は、加熱して、架橋状態となるように(注型)成型することができる。
【0059】
また、他の成型方法として、硬化性シリコーン組成物をダイ又はノズルから押出し、該組成物の架橋物に対して離型性を有し、且つ、より大きな誘電率を有する基材と直ちに接触させて熱架橋したり、硬化性シリコーン組成物を前記基材と共にダイ又はノズルから押出して熱架橋したりする押出成型を採用してもよい。なお、ダイ又はノズルにおける硬化性シリコーン組成物の通過面の少なくとも一部又は全部を前記基材から構成してもよく、その態様としては、既述したように前記基材でダイ又はノズルを形成する方法や前記基材でダイ又はノズルの内面をコーティングする方法が挙げられる。
【0060】
更に、他の成型方法として、硬化性シリコーン組成物を、該組成物の架橋物に対して剥離性を有し、且つ、より大きな誘電率を有する基材からなるロール上でカレンダー成型を行ってもよい。このカレンダー成型においては、ロール表面の少なくとも一部又は全部を前記基材から構成してもよく、その態様としては、既述したように前記基材でロール表面をコーティングする方法が挙げられる。前記ロールとしては加熱機能を備えたものが好ましい。このカレンダー成型においては、ロール間隔を調整、或いは、ロール表面に凹凸を形成する等して、平滑な表面を有する薄いシート又はフィルム以外の、例えばエンボス加工された立体成型品を得ることができる。
【0061】
なお、他の成型方法として、硬化性シリコーン組成物の架橋物に対して剥離性を有し、且つ、より大きな誘電率を有する基材上に硬化性シリコーン組成物をスクリーン印刷して架橋させる方法を採用してもよい。
【0062】
これらの方法において、成型温度は室温〜200℃、好ましくは室温〜120℃の範囲である。成型温度が低すぎると成型に時間がかかりすぎ、高すぎると成型品の基材からの剥離性が悪化したり、成型品の接着性が低下したりすることがあるからである。また、成型品が架橋した直後に金型等から成型品を取り出し、余分に熱を与えないことが好ましく、架橋時間はJIS K 6300−2(振動式加硫試験機による加硫特性の求め方)に示される90%加硫時間に対して、その0.7倍〜10倍が好ましく、更に好ましくは、0.9倍以上3倍以内である。これは架橋時間が短すぎると架橋物の物理強度が不足し、取り扱いが困難になったり、接着施工後の強度不足により不具合を生じることがあるためである。また、架橋後も熱を与え続けると、基材からの剥離性が悪化したり、成型品の接着性が低下したりするおそれがある。
【0063】
次に、硬化性シリコーン組成物の架橋物より大きな誘電率を有し、該架橋物に対して剥離性を有する基材について説明する。
【0064】
この基材は本発明の立体成型品の架橋時に接触させることで、該立体成型品の表面に接着性を発現させるために使用される。基材の形状は特に限定されるものではなく、フィルム又はシート、ロッド、板状、円筒形等の任意の幾何学形状であってよく、また、前記立体成型品の表面形状を反映した表面を有していてもよい。
【0065】
前記基材としては、金属酸化物等の無機質の基材;ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリスルフォン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂等の有機樹脂からなる基材が例示され、有機樹脂からなる基材が好ましく、中でもポリエーテル樹脂、セルロース樹脂が好ましく、特に、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン及び酢酸セルロースが好ましい。有機樹脂からなる基材としては、有機樹脂のみからなる基材であってもよく、また、有機樹脂を表面や内部に有する複合基材であってもよい。複合基材としては、前記の有機樹脂をその他の有機樹脂上に被覆した基材が例示される。
【0066】
前記基材からなる型、ダイ若しくはノズル、ロール、或いは、前記基材から少なくとも表面の一部が構成される型、ダイ若しくはノズル、ロールを使用して、硬化性シリコーン組成物を架橋及び成型し、接着工程に使用する前に保管する場合は、接着面が湿気に曝されないように、得られた成型品の表面をフィルム又はシート状の保護材で保護するか、乾燥雰囲気中に保管するか、フィルムバッグ等の容器中に保管することが好ましい。保護材の誘電率は特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステルのような誘電率の高い樹脂からなるフィルム、シート又はフィルムバッグのみならず、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン等からなるフィルム、シート又はフィルムバッグも保護材として使用することができる。本発明の硬化性シリコーン組成物の架橋物そのものも、その接着面とその接着面以外の表面とを密着させることで、剥離可能な保護材として用いることができる。また、長期間保存する場合には、接着性の低下を防止するため、室温以下の温度で保管することが好ましく、10℃以下の温度で保管することがより好ましい。
【0067】
次に、本発明の立体成型品の用途について詳しく説明する。
【0068】
本発明の立体成型品は、その接着機能を有する面を基体の所定の部分に室温又は加熱条件下で接触させることで、基体と接着することができる。本発明の立体成型品は、基体との接着が必要な様々な用途に使用することができ、例えば、Oリング、パッキン、ガスケット、グロメット、ゴム栓、ブーツ等の各種のシール部材として好適に使用することができる。
【0069】
基体は、特に限定されるものではないが、例えば、金属、ガラス、樹脂、ゴム等が挙げられる。金属としては、鉄、アルミ、銅、ニッケル、クロム等が例示され、樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が例示される。
【0070】
本発明の立体成型品を基体と加熱しながら密着させて一体化する場合は、加熱温度は70℃〜200℃が好ましく、より好ましくは100〜160℃の範囲である。加熱温度が低すぎると接着に時間がかかりすぎたり、接着力が弱くなるおそれがあり、加熱温度が高すぎると基体を劣化させたり、変形させるおそれがある。加熱時間は特に限定されるものではなく、基体の種類等に応じて1分〜数時間程度の範囲で適宜設定することができる。一方、ガラスのように非常に接着しやすい基材については室温でも接着させることができる。なお、本発明の立体成型品同士を接着してもよく、その場合は、立体成型品の接着機能を有する面同士を、室温で数日間密着させることにより接着させることができる。また、立体成型品と基体の接触を確実にするため、両者の接触面に圧力を付与した状態で保持することが好ましい。この場合の圧力値も特に限定されるものではなく、基体の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0071】
本発明の立体成型品と基体とを接着して得られる製品は、さまざまな産業分野で使用することができる。例えば、本発明の立体成型品を、防水、防塵、気密、液封等を目的としたガスケット、パッキン、グロメット、ゴム栓、ブーツ等のシール部材とし、各種基体と一体化した製品;本発明の立体成型品を、応力緩和、衝撃吸収、振動減衰等を目的とした部材として使用し、各種基体と一体化した、各種ブッシュ、マウント、ハンガー、ダンパー、軸受け等の製品;本発明の立体成型品を、弾性部材として使用し、各種基体と一体化した、スイッチ、ラバースプリング、ゴム弁、バルブ、ダイアフラム、ラバージョイント等の製品が例示される。より具体的には、自動車用途としては、エンジンガスケット、各種配管継ぎ手、ドアモール、ウインドグラスシール部材、ウェザーストリップ、ダストブーツ、エンジンマウント、防振用ブッシュまたはマウント、グロメット、ダイアフラム、ワイヤーハーネス用コネクタ;電気電子部品用途としては、モバイル機器やハードディスク等の精密機器本体ケース、コネクタ、キーパッド、キースイッチ、送電線接続部用ケーブルアクセサリー、燃料電池セパレータ用ガスケット;建材用途としては、SSG工法用各種ガスケット、ガスケットつきガラス、カーテンウォール、目地埋め用ガスケット、貫通部ガスケット、ラバージョイント;スポーツ用品としては、ゴルフクラブ、テニスラケット等が例示される。
【0072】
図1は、本発明の立体成型品を利用したゴルフクラブの一例であり、図1(a)はゴルフクラブ1の全体を示し、図1(b)はゴルフクラブ1の握り部の断面を示す。図1(a)に示されるように、ゴルフクラブ1は、シャフト2の握り部にグリップ3を備え、シャフト2の先端にはヘッド4が取り付けられている。そして、図1(b)に示されるように、グリップ3は一方の端が封止された略円筒形とされており、その内部空間にシャフト2の握り部が挿入されている。
【0073】
図1に示す例では、グリップ3が本発明の立体成型品とされており、その内部空間を規定する内面3aに接着性が付与されている。したがって、図1に示すゴルフクラブは、グリップ3の内部空間にシャフト2の握り部を挿入し、両者を例えば加熱することによって、基体としてのシャフト2と本発明の立体成型品としてのグリップ3とが強固に接着して、製造することができる。
【0074】
図2は、本発明の立体成型品を利用したジョイントの一例であり、この例では、雌ネジ6と雄ネジ7との間に本発明の立体成型品であるリング状のパッキン8が挟まれた状態でジョイント5が構成されている。パッキン8は、その外周面8aに接着性が付与されており、雌ネジ6の開口部にパッキン8を収容し、雄ネジ7を挿入して一体化した後に、放置または加熱することによって、パッキン8の外周面8aが雌ネジ6に接着して、シール性の高いジョイント5を製造することができる。また、パッキン8は雌ネジ6に接着しているので、分解時のパッキン8の脱落を防止することもできる。なお、パッキン8の形状も単純なものでよく、製造コスト等の面でも有利である。
【0075】
図3は、本発明の立体成型品を利用したガスケットの一例を示す断面図であり、図3(a)は、下面10aに接着性を付与された、本発明の立体成型品であるガスケット10が基体9上に接着された半完成品を示す。図3(a)に示す半完成品では、ガスケット10の上面10bに、ガスケット10の誘電率よりも大きい誘電率を有し、上面10bに対して剥離性を有するフィルム11が貼付されており、図3(b)に示すように、フィルム11を剥離してガスケット10の上面10bを基体12に接着させることにより、完成品とされる。この例では、ガスケット10は基体9及び基体12のそれぞれに強固に一体化されているので、高いシール性を得ることができる。
【0076】
図4は、本発明の立体成型品を利用したガスケットの他の一例を示す断面図であり、基体13に設けられた凹所内に本発明の立体成型品であるガスケット15が嵌入されている。ガスケット15はその下面15aに接着性が付与されており、例えば加熱等により前記凹所の底面に接着されて基体13と一体化されている。図4に示す例では、基体14とガスケット15とは接着されていないので、基体14とガスケット15との水平方向相対位置が変動する場合であっても、ガスケット15は基体14との接触状態を維持したまま摺動してシール性を維持することができる。
【0077】
図5は、本発明の立体成型品を利用したガスケットの更に他の一例を示す断面図であり、基体としての容器16の外周壁の上端に、接着面18aを介してガスケット18が取り付けられている。ガスケット18により、容器16と蓋17との間はシールされ、容器内の内容物の気密が保たれる。
【0078】
なお、本発明の立体成型品は、該立体成型品と、該立体成型品に対して剥離性を有する基材とからなる複合体として取り扱うことができ、この場合は、輸送・保存等を容易に行うことができる。前記基材の材質・形状は特に限定されるものではないが、既述した硬化性シリコーン組成物の架橋物より大きな誘電率を有し、該架橋物に対して剥離性を有する基材と同一のものが好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、粘度は25℃における値である。
【0080】
[調製例1]
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%) 85質量部、粘度2,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.23質量%) 15質量部、ヘキサメチルジシラザンで処理したBET比表面積200m/gのフュームドシリカ 11質量部をロスミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合した後、減圧下180℃で2時間加熱処理して流動性のあるマスターバッチ1を調製した。
【0081】
[調製例2]
分子量約50万のジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体生ゴム(ビニル基含有量約0.065質量%) 100質量部、粘度40mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン 15質量部、BET比表面積300m/gのフュームドシリカ 40質量部をニーダーミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合した後、180℃で1.5時間加熱処理してミラブルゴムタイプのマスターバッチ2を調製した。
【0082】
[調製例3]
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%) 100質量部、粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%) 0.2質量部、BET比表面積225m/gのフュームドシリカ 40質量部、ヘキサメチルジシラザン 7質量部、水 2質量部をロスミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合した後、減圧下200℃で2時間加熱処理して流動性のあるマスターバッチ3を調製した。
【0083】
[調製例4]
48質量%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと52質量%の粘度20mPa・sの分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量11質量%)とを水酸化カリウムを触媒として縮合反応させ、ストリッピング、中和、ろ過して粘度17mPa・sの接着促進剤1を得た。
【0084】
[実施例1]
マスターバッチ1 96質量部、動粘度55mm/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量約0.70質量%) 1.0質量部、白金系触媒(白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属含有量約4000ppm)) 0.32質量部、接着促進剤1 0.6質量部、ビス(トリメトキシシリルプロポキシメチル)アリルシラトラン(接着促進剤) 0.3質量部、フェニルブチノール 0.5質量部と粘度10,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 99.5質量部の混合物(硬化遅延剤) 2.0質量部を均一に混合して硬化性シリコーンゴム組成物(組成物中のヒドロシリル基含有量の合計/ビニル基含有量の合計=1.1)を得た。
【0085】
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、誘電率3.5のポリエーテルスルフォン(PES)をコーティングしたフィルム(以下、「PESフィルム」という)を、PES面がキャビティ側となるように金型内に配置し、得られた硬化性シリコーンゴム組成物をキャビティに導入して、20MPaの圧力下、100℃で5分間圧縮成型して、フィルムが貼着した、厚さ2mm、幅2.5cm、長さ10cmのシート状部分を有する架橋ゴム片を得た。
【0086】
架橋ゴム片をフィルムが貼着した状態で、24時間室温で放置した。次に、フィルムを剥離し、前記シート状部分を150℃で60分間、各種の基体(ガラス製、SUS304鋼製、及び、アルミニウム製)と密着させて、架橋ゴム片と基体とを接着させた。架橋ゴム片と基体との熱膨張率の差により接着面が破壊されることを防止するために、アルミ製の平板で架橋ゴム片を挟み、金属製のクリップと用いて架橋ゴム片と基体の圧力をかけて一体化させた。
【0087】
[実施例2]
マスターバッチ2 99質量部、動粘度15mm/sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子含有量約0.83質量%) 0.69質量部、白金系触媒(白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属含有量約4000ppm)) 0.1質量部、接着促進剤1 0.53質量部、ビス(トリメトキシシリルプロポキシメチル)アリルシラトラン(接着促進剤) 0.26質量部、2−メチル−3−ブチン−2−オール(硬化遅延剤) 0.014質量部を均一に混合して硬化性シリコーンゴム組成物(組成物中のヒドロシリル基含有量の合計/ビニル基含有量の合計=1.1)を得た。
【0088】
PESフィルムを、PES面がキャビティ側となるように金型内に配置し、得られた硬化性シリコーンゴム組成物をキャビティに導入して、20MPaの圧力下、100℃で10分間圧縮成型して、フィルムが貼着した厚さ2mm、幅2.5cm、長さ10cmのシート状部分を有する架橋ゴム片を得た。
【0089】
架橋ゴム片をフィルムが貼着した状態で、24時間室温で放置した。次に、フィルムを剥離し、前記シート状部分を150℃で60分間、各種の基体(ガラス製、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製、SUS304鋼製、及び、アルミニウム製)と密着させて、架橋ゴム片と基体とを接着させた。実施例1と同じく、アルミ製の平板で架橋ゴム片を挟み、金属製のクリップと用いて架橋ゴム片と基体の圧力をかけて一体化させた。
【0090】
[実施例3]
マスターバッチ3 45質量部、粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%) 53質量部、動粘度55mm/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量約0.70質量%) 0.73質量部、白金系触媒(白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属含有量約4000ppm)) 0.3質量部、接着促進剤1 0.38質量部、ビス(トリメトキシシリルプロポキシメチル)アリルシラトラン(接着促進剤) 0.19質量部、2−メチル−3−ブチン−2−オール(硬化遅延剤) 0.017質量部を均一に混合して硬化性シリコーンゴム組成物(組成物中のヒドロシリル基含有量の合計/ビニル基含有量の合計=1.1)を得た。
【0091】
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、誘電率5.5の酢酸セルロースをコーティングしたフィルム(以下、「酢酸セルロースフィルム」という)を、酢酸セルロース面がキャビティ側となるように金型内に配置し、得られた硬化性シリコーンゴム組成物をキャビティに導入して、20MPaの圧力下、100℃で5分間プレス加硫して、フィルムが貼着した、厚さ2mm、幅2.5cm、長さ10cmのシート状部分を有する架橋ゴム片を得た。
【0092】
架橋ゴム片をフィルムが貼着した状態で、24時間室温で放置した。次に、フィルムを剥離し、前記シート状部分を150℃で30分間、各種の基体(ガラス製、PBT製、SUS304鋼製及びアルミニウム製)と密着させて、架橋ゴム片と基体とを接着させた。実施例1と同じく、アルミ製の平板で架橋ゴム片を挟み、金属製のクリップと用いて架橋ゴム片と基体の圧力をかけて一体化させた。
【0093】
[比較例1]
酢酸セルロースフィルムに代えて、誘電率2.1のポリテトラフルオロエチレンフィルムを使用する以外は実施例3と同様にして架橋ゴム片と基体とを密着させた。
【0094】
実施例1〜3及び比較例1のそれぞれについて、各種の基体に対する硬化ゴム片の接着力を測定した。 接着力の測定は(株)島津製作所製オートグラフAGS−50Dを用い、180°ピール試験により測定した。接着力は硬化ゴム片の幅当たりの剥離力(N/cm)とした。結果を表1に示す。なお、表1中の「CF」は接着面の着面の剥離モードが凝集破壊であることを示す。
【0095】
【表1】

【0096】
なお、表1中の「物理的特性」は、PESフィルム、酢酸セルロースフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルムを使用しない以外は実施例1〜3及び比較例1と同一の条件で製造された架橋ゴム片について、各種の物性を以下のようにして測定したものである。
硬度:JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータにより測定
密度:(株)東洋精機製作所製、D−100型 自動比重計を用いて測定
引張強さ、伸び、引裂き強さ:JIS K 6251及びK 6252に規定の方法により測定
100%モジュラス:JIS K 6251に規定の3号ダンベル片を100%伸張したときの応力として測定
誘電率:安藤電気(株)製、TR−1100形 誘電体損自動測定装置を用いて測定
【0097】
[実施例4]
実施例3と同様にして硬化性シリコーンゴム組成物(組成物中のヒドロシリル基含有量の合計/ビニル基含有量の合計=1.1)を得た。
【0098】
酢酸セルロースフィルムを、酢酸セルロース面がキャビティ側となるように金型内に配置し、得られた硬化性シリコーンゴム組成物をキャビティに導入して、20MPaの圧力下、100℃で2分間プレス加硫して、フィルムが貼着した、厚さ2mm、幅2.5cm、長さ10cmのシート状部分を有する架橋ゴム片を得た。なお、酢酸セルロースフィルムを使用しない以外は実施例4と同一の条件で製造された架橋ゴム片の物理的特性は実施例3と同一であった。
【0099】
架橋ゴム片をフィルムが貼着した状態で、24時間室温で放置した。次に、フィルムを剥離し、前記シート状部分を23℃で240分間、ガラス製基体と密着させて、架橋ゴム片と基体とを接着させた。(株)島津製作所製オートグラフAGS−50Dを用い、180°ピール試験により接着面の接着力(硬化ゴム片の幅当たりの剥離力)を測定したところ、2.3N/cmであった。
【0100】
この結果から、ガラスのような接着が容易な基体では、室温でも接着が得られることが分かる。
【0101】
[実施例5]
実施例3と同様にして硬化性シリコーンゴム組成物(組成物中のヒドロシリル基含有量の合計/ビニル基含有量の合計=1.1)を得た。
【0102】
PESフィルムを、PES面がキャビティ側となるように金型内に配置し、得られた硬化性シリコーンゴム組成物をキャビティに導入して、20MPaの圧力下、100℃で2分間プレス加硫して、フィルムが貼着した、厚さ2mm、幅2.5cm、長さ10cmのシート状部分を有する2つの架橋ゴム片を得た。なお、PESフィルムを使用しない以外は実施例5と同一の条件で製造された架橋ゴム片の物理的特性は実施例3と同一であった。
【0103】
各架橋ゴム片のシート状部分をフィルムが貼着した状態で、24時間室温で放置した。次に、フィルムを剥離し、前記シート状部分の剥離面同士を23℃で3日間密着させて、2つの架橋ゴム片を接着させた。(株)島津製作所製オートグラフAGS−50Dを用い、180°ピール試験により接着面の接着力(硬化ゴム片の幅当たりの剥離力)を測定したところ、5.2N/cmであった。
【0104】
[実施例6]
2つの架橋ゴム片の剥離面同士を7日間密着させた以外は実施例5を繰り返して接着面の接着力を測定したところ、14N/cmであった。なお、PESフィルムを使用しない以外は実施例6と同一の条件で製造された架橋ゴム片の物理的特性は実施例3と同一であった。
【0105】
[実施例7]
2つの架橋ゴム片の剥離面同士を21日間密着させた以外は実施例5を繰り返して接着面の接着力を測定したところ、21N/cmであった。なお、PESフィルムを使用しない以外は実施例7と同一の条件で製造された架橋ゴム片の物理的特性は実施例3と同一であった。
【0106】
[実施例8]
金型を変更して、図6に概略形状を示す、直径5mmの円断面を有するリング(リング径100mm)形状の架橋ゴム片を得る(但し、酢酸セルロースフィルムはOリングの一部の表面のみに適用する)以外は実施例3の操作を繰り返して、得られたリングを各種の基体(ガラス製、PBT製、SUS304鋼製、及び、アルミニウム製)と密着させた。(株)島津製作所製オートグラフAGS−50Dを用い、180°ピール試験を行ったところ接着面に凝集破壊が観察された。
【0107】
[実施例9]
誘電率3.5のポリエーテルスルフォン(住友化学(株)製、スミカエクセル4100P)を1,1,2−トリクロロエタンとジクロロメタンの質量比1:1混合物を溶媒として、質量比10%となるように溶解した。このPES溶液を、刷毛で鉄製(S55C製)金型のキャビティ表面に薄く塗り、室温で1時間乾燥後、320℃の熱風循環式オーブンで焼付けを行った。
【0108】
実施例3と同様にして硬化性シリコーンゴム組成物(組成物中のヒドロシリル基含有量の合計/ビニル基含有量の合計=1.1)を得た。
【0109】
得られた硬化性シリコーンゴム組成物を射出成型(温度:100℃、金型保持時間1分)して、図7に概略形状を示す、厚さ2mm、幅2.5cm、長さ10cmのシート状部分を有する架橋ゴム片を得た。なお、PESコーティングを行わない以外は実施例9と同一の条件で製造された架橋ゴム片の物理的特性は実施例3と同一であった。
【0110】
架橋ゴム片をキャビティから取り出した後、表面を厚さ0.2mmのポリエチレンテレフタレートフィルムで被覆し、24時間室温で放置した。次に、フィルムを剥離し、前記シート状部分を150℃で60分間、ガラス製、及び、SUS304鋼製の基体と密着させて、架橋ゴム片と基体とを接着させた。なお、実施例1と同じく、アルミ製の平板で架橋ゴム片を挟み、金属製のクリップと用いて架橋ゴム片と基体の圧力をかけて一体化させた。
【0111】
(株)島津製作所製オートグラフAGS−50Dを用い、180°ピール試験を行ったところガラス製基体及びSUS304鋼製基体のいずれの接着面にも凝集破壊が観察された。この結果から、射出成型物であっても、接着が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン組成物の架橋物からなる立体成型品であって、
前記硬化性シリコーン組成物の少なくとも一部を前記架橋物の誘電率よりも大きい誘電率を有し、前記架橋物に対して剥離性を有する基材と接触した状態で架橋させて得られた立体成型品。
【請求項2】
前記硬化性シリコーン組成物がヒドロシリル化反応硬化型であることを特徴とする、請求項1記載の立体成型品。
【請求項3】
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、
(C)接着促進剤、及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒
を含むヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物であることを特徴とする、請求項2記載の立体成型品。
【請求項4】
前記(C)接着促進剤が、一分子中にケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項3記載の立体成型品。
【請求項5】
前記(C)接着促進剤が、一分子中にケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも1個有し、一分子中にケイ素原子結合アルケニル基及び/又はケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項3記載の立体成型品。
【請求項6】
前記(C)接着促進剤が、一分子中にケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも1個有し、一分子中にケイ素原子結合アルケニル基及び/又はケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個有するオルガノシラン、オルガノポリシロキサンまたはシラトランからなる群から選択される少なくとも一つの有機ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項3記載の立体成型品。
【請求項7】
硬化性シリコーン組成物の架橋物からなる立体成型品の製造方法であって、
前記硬化性シリコーン組成物の少なくとも一部を前記架橋物の誘電率よりも大きい誘電率を有し、前記架橋物に対して剥離性を有する基材と接触した状態で架橋させることを特徴とする立体成型品の製造方法。
【請求項8】
前記基材がフィルム又はシートであることを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記架橋を、キャビティを備える型の該キャビティ内で行い、更に、
前記型が前記基材からなる、又は、前記キャビティ面の少なくとも一部が前記基材からなる
ことを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
前記硬化性シリコーン組成物をノズル又はダイから押出し、更に、
押出された前記組成物を前記基材と接触させて架橋させる
ことを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項11】
前記架橋をロール上で行い、更に、
前記ロールが前記基材からなる、又は、前記ロール表面の少なくとも一部が前記基材からなる
ことを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項12】
前記硬化性シリコーン組成物がヒドロシリル化反応硬化型であることを特徴とする、請求項7乃至11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、
(C)接着促進剤、及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒
を含むヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物であることを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記(C)接着促進剤が、一分子中にケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
前記(C)接着促進剤が、一分子中にケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも1個有し、一分子中にケイ素原子結合アルケニル基及び/又はケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項13記載の製造方法。
【請求項16】
前記(C)接着促進剤が、一分子中にケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも1個有し、一分子中にケイ素原子結合アルケニル基及び/又はケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個有するオルガノシラン、オルガノポリシロキサンまたはシラトランからなる群から選択される少なくとも一つの有機ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項13記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1乃至6のいずれかに記載の立体成型品と基体とを接着して得られる製品。
【請求項18】
燃料電池用部品、携帯電話用部品、自動車用部品、電気・電子機器用部品、スポーツ用品又は、建材である、請求項17記載の製品。
【請求項19】
請求項1乃至6のいずれかに記載の立体成型品、及び、
前記立体成型品に対して剥離性を有する基材
からなる複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−509088(P2010−509088A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515663(P2009−515663)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/JP2007/072038
【国際公開番号】WO2008/056810
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】