説明

立体画像表示装置

【課題】簡易な構成でありながら、シャッタメガネが表示面に対して傾いた場合の色変化を抑制することができるようにする。
【解決手段】表示部11に表示される画像の表示状態に応じて、左眼用シャッタ2Lおよび右眼用シャッタ2Rを開閉させるシャッタメガネ2と、表示部11の表示面側に配置された表示側偏光板12とを備える。左眼用シャッタ2Lおよび右眼用シャッタ2Rはそれぞれ、液晶セル20と、液晶セル20の表示部側に配置された位相差板22と、液晶セル20の位相差板22が設けられた側とは反対側に配置された第1のメガネ側偏光板21とを有する。表示側偏光板12の偏光軸と第1のメガネ側偏光板21の偏光軸とを互いに直交させ、かつ、表示側偏光板12の偏光軸と位相差板22の位相差軸とを互いに平行または直交させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタメガネを用いて立体表示を行う立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶シャッタを利用した立体視用の特殊なシャッタメガネを装着させて観察者の両眼に視差のある別々の画像を見せることで、立体視を実現するメガネ式の立体画像表示装置が知られている(特許文献1,2参照)。立体視を実現するためには、左眼と右眼とに異なる視差画像を見せる必要があるため、左眼用画像と右眼用画像との2つの視差画像が必要となる。
【0003】
図17は、従来のメガネ式の立体画像表示装置の一般的な構成例を示している。この立体表示装置は、画像を表示する表示装置101と、表示装置101を観察するための液晶シャッタ方式のシャッタメガネ102とを備えている。表示装置101は、液晶表示装置やCRT(陰極線管)等の2次元表示パネルからなる表示部111と、表示部111の表示面111A側に設けられた表示側偏光板112とを有している。シャッタメガネ102は、観察者の左眼3L側に配置される左眼用シャッタ102Lと、観察者の右眼3R側に配置される右眼用シャッタ102Rとを有している。左眼用シャッタ102Lは、例えばTN(ツイストネマティック)型の液晶セル120と、液晶セル120の観察者側に配置された第1のメガネ側偏光板121と、液晶セル120の表示部111側に配置された第2のメガネ側偏光板122とからなる。右眼用シャッタ102Rの構成も左眼用シャッタ102Lと同様である。この立体画像表示装置では、表示装置101に時分割で左眼用画像と右眼用画像とを交互に表示する。その表示タイミングに同期させてシャッタメガネ102の左眼用シャッタ102Lと右眼用シャッタ102Rとを交互にオン/オフ(開/閉)制御することで、観察者に対して左眼3L側では左眼用画像のみを認識させ、右眼3R側では右眼用画像のみを認識させることで、立体視を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−327961号公報
【特許文献2】特開2002−82307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、メガネ式の立体画像表示装置において、シャッタメガネ102には、表示装置101からの映像の光だけでなく、視聴環境によっては外部照明の光も入射される。この外部照明の点滅周波数とシャッタメガネ102の開閉周波数とが特定の関係にあるときに干渉し、フリッカ(ちらつき)が発生する問題がある。これは、観察者にとっては非常に不快であり、視覚疲労の原因となる。
【0006】
このような外部照明との干渉によるフリッカ対策として、特許文献1,2には、図18に示したように、シャッタメガネ102Aにおいて、表示部111側に配置された第2のメガネ側偏光板122を省いた構成のものが考えられている。または、第2のメガネ側偏光板122に代えて極低偏光度の偏光板を採用することも考えられる。図18の構成では、外部照明の光に対してはシャッタメガネ102Aはシャッタとして機能せず、表示側偏光板112を介して出射される表示装置101からの映像の光に対してのみシャッタとして機能することで、フリッカが防止される。しかしながら、図18の構成では、観察者が顔を左右方向に傾けた際、すなわちシャッタメガネが表示面111Aに対して左右方向に傾いた際に、観察者が顔を正面に向け、両眼を水平方向に置いている場合の観察状態に対して、観察画像に大きな色変化が生じてしまう問題がある。さらに、その色変化は、傾ける方向が例えば左方向と右方向とで別々に非対称に色づくような状態となり、観察者にとって不自然な画像表示となってしまう。
【0007】
このような色変化を防止するために、例えば特許文献2に記載されているような円偏光板(1/4波長板)を用いることが考えられる。すなわち、図19に示したように、表示装置101において、表示側偏光板112の表面に1/4波長板113を配置すると共に、シャッタメガネ102Bにおいて、液晶セル120の表示部111側に1/4波長板123を配置する。各部における偏光軸と位相差軸との関係は、例えば図20に示したような配置とする。
【0008】
図20に示したように、表示側偏光板112の偏光軸141と、第1のメガネ側偏光板121の偏光軸144は互いに直交する状態とする(互いの吸収軸同士または透過軸同士を直交する状態とする)。また、表示側の1/4波長板113の位相差軸142は表示側偏光板112の偏光軸141に対して45°傾いた状態とし、表示側の1/4波長板113の位相差軸142とメガネ側の1/4波長板143は、互いに直交する状態とする(互いの遅相軸同士または進相軸同士を直交する状態とする)。具体的には例えば水平方向を0°とすると、表示側偏光板112の偏光軸141の方向を90°、第1のメガネ側偏光板121の偏光軸144の方向を0°とし、表示側の1/4波長板113の位相差軸142の方向を135°、メガネ側の1/4波長板143の位相差軸142の方向を45°とする。このような配置では、表示側偏光板112から出射された直線偏光の光が表示側の1/4波長板113によって円偏光とされ、さらにメガネ側の1/4波長板143によって、再び直線偏光に戻されて液晶セル120に入射させることで、シャッタメガネ102Bを表示装置101からの映像の光に対してシャッタとして機能させることができる。しかしながら、このような構成では、表示装置101側に1/4波長板113を配置する必要があるため、大面積の波長板が必要となり、コストが高くなってしまう。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡易な構成でありながら、シャッタメガネが表示面に対して傾いた場合の色変化を抑制することができる立体画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による立体画像表示装置は、左眼用画像と右眼用画像とを時分割で交互に表示する表示部と、表示部の表示面側に配置された表示側偏光板と、左眼用シャッタおよび右眼用シャッタを有し、表示部に表示される画像の表示状態に応じて、左眼用シャッタおよび右眼用シャッタを開閉させるシャッタメガネとを備えているものである。また、左眼用シャッタおよび右眼用シャッタはそれぞれ、液晶セルと、液晶セルの表示部側に配置された位相差板と、液晶セルの位相差板が設けられた側とは反対側に配置された第1のメガネ側偏光板とを有し、表示側偏光板の偏光軸と第1のメガネ側偏光板の偏光軸とが互いに直交し、かつ、表示側偏光板の偏光軸と位相差板の位相差軸とが互いに平行または直交するようにしたものである。
【0011】
本発明の立体画像表示装置では、表示側偏光板の偏光軸と第1のメガネ側偏光板の偏光軸とが互いに直交し、かつ、表示側偏光板の偏光軸と位相差板の位相差軸とが互いに平行または直交していることで、シャッタメガネが表示面に対して傾いた状態となる場合にのみ、位相差板による作用が生じ、色変化が抑制されるような光学補償がなされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の立体画像表示装置によれば、表示部の表示面側に表示側偏光板を配置すると共に、シャッタメガネ側に位相差板を配置し、表示側偏光板の偏光軸と位相差板の位相差軸とを互いに平行または直交させるようにしたので、シャッタメガネが表示面に対して傾いた状態となる場合にのみ、位相差板による作用を生じさせることができる。これにより、シャッタメガネが表示面に対して傾いていない状態での通常の表示特性を保ちつつ、シャッタメガネが表示面に対して傾いた場合の色変化を抑制することができる。また、位相差板をシャッタメガネに設けるようにしたので、表示部に設ける場合に比べて小面積で済み、構成も簡易で低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る立体画像表示装置の一構成例を示す断面図である。
【図2】図1に示した立体画像表示装置の各部における偏光軸および位相差軸の第1の組み合わせ例を示す説明図である。
【図3】図1に示した立体画像表示装置の各部における偏光軸および位相差軸の第2の組み合わせ例を示す説明図である。
【図4】図1に示した立体画像表示装置の第1の具体的な構成例を示す構成図である。
【図5】図1に示した立体画像表示装置の第2の具体的な構成例を示す構成図である。
【図6】図4および図5に示した具体的な構成例の色ずれ特性を示す特性図である。
【図7】図4および図5に示した具体的な構成例のコントラスト特性を示す説明図である。
【図8】図4および図5に示した具体的な構成例における位相差板の位相差値(リタデーション)と色ずれ量との関係を示す特性図である。
【図9】図1に示した立体画像表示装置の第3の具体的な構成例を示す構成図である。
【図10】図9に示した具体的な構成例でのシャッタメガネの駆動波形の一例を示す波形図である。
【図11】図1に示した立体画像表示装置の第4の具体的な構成例を示す構成図である。
【図12】図1に示した立体画像表示装置の第5の具体的な構成例を示す構成図である。
【図13】図11および図12に示した具体的な構成例における位相差板の位相差値(リタデーション)と色ずれ量との関係を示す特性図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る立体画像表示装置の一構成例を示す断面図である。
【図15】図14に示した立体画像表示装置の具体的な構成例を示す構成図である。
【図16】図4に示した具体的な構成例の色ずれ特性を示す特性図である。
【図17】従来の立体画像表示装置の第1の構成例を示す断面図である。
【図18】従来の立体画像表示装置の第2の構成例を示す断面図である。
【図19】従来の立体画像表示装置の第3の構成例を示す断面図である。
【図20】図19に示した立体画像表示装置の各部における偏光軸と位相差軸との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施の形態>
[全体構成例]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る立体画像表示装置の全体構成例を示している。この立体画像表示装置は、画像を表示する表示装置1と、表示装置1を観察するための液晶シャッタ方式のシャッタメガネ2とを備えている。表示装置1は、液晶表示装置やCRT(陰極線管)等の2次元表示パネルからなる表示部11と、表示部11の表示面11A側に設けられた表示側偏光板12とを有している。なお、液晶表示装置の場合、通常、出射側には偏光板が設けられている。このため、液晶表示装置の場合には、表示側偏光板12は液晶表示装置自体に設けられている偏光板を用いて構わない。
【0016】
シャッタメガネ2は、観察者の左眼3L側に配置される左眼用シャッタ2Lと、観察者の右眼3R側に配置される右眼用シャッタ2Rとを有している。左眼用シャッタ2Lは、例えばTN(Twisted Nematic)型またはSTN(Super Twisted Nematic)型の液晶セル20と、液晶セル20の表示部11側に配置された位相差板22と、液晶セル20の位相差板22が設けられた側とは反対側(観察者側)に配置されたメガネ側偏光板21とからなる。右眼用シャッタ2Rの構成も左眼用シャッタ2Lと同様である。
【0017】
この立体画像表示装置では、表示装置1の表示部11に時分割で左眼用画像と右眼用画像とを交互に表示する。シャッタメガネ2では、表示部11に表示される画像の表示状態に応じて、すなわち、左眼用画像と右眼用画像とを交互に表示するタイミングに同期させて左眼用シャッタ2Lと右眼用シャッタ2Rとを交互にオン/オフ(開/閉)制御する。これにより、観察者に対して左眼3L側では左眼用画像のみを認識させ、右眼3R側では右眼用画像のみを認識させることで、立体視を実現する。
【0018】
[各部の偏光軸および位相差軸の関係]
シャッタメガネ2の液晶セル20は、液晶分子のもっている屈折率異方性によって、入射光に位相差を生じさせ、偏光状態を回転させる役割を担っている。液晶セル20が例えばTN型であれば、シャッタをオン(開状態)にした場合には、表示側偏光板12を介して出射された直線偏光の光の偏光状態が、理想的には偏光方向がほぼ90°回転するように液晶層が働くが、顔を傾けると、液晶層によって生じる光の位相のずれが最適値からずれる。さらに右に傾いた時、左に傾いた時とでそのずれが異なる。本実施の形態では、このずれを補償するように、位相差板22を例えば図2または図3に示したように配置させている。位相差板22の最適な位相差値(リタデーション)は、後述するように周期的に現れるが、600nmを超えるようなリタデーションフィルムは作りにくく、またリタデーションの値も安定しないので、それ以下が好ましい。
【0019】
図2および図3は、図1に示した立体画像表示装置の各部における偏光軸と位相差軸との関係を示している。図2に示した第1の組み合わせ例では、表示側偏光板12の偏光軸41とメガネ側偏光板21の偏光軸43とを互いに直交する状態としている(互いの吸収軸同士または透過軸同士を直交する状態としている)。また、表示側偏光板12の偏光軸41と位相差板22の位相差軸42(遅相軸または進相軸)とが互いに平行となるようにしている(例えば表示側偏光板12の吸収軸と位相差板22の遅相軸とが互いに平行となるようにしている)。具体的には例えば水平方向を0°とすると、表示側偏光板12の偏光軸41の方向を90°、メガネ側偏光板21の偏光軸43の方向を0°とし、位相差板22の位相差軸42の方向を90°とする。ただし、各部における偏光軸と位相差軸との相対的な軸方向の関係が図2と同様であれば良く、軸角度は0°や90°に限定されるものではない。
【0020】
図3に示した第2の組み合わせ例では、図2の第1の組み合わせ例と同様に、表示側偏光板12の偏光軸41とメガネ側偏光板21の偏光軸43とを互いに直交する状態としている(互いの吸収軸同士または透過軸同士を直交する状態としている)。一方、表示側偏光板12の偏光軸41と位相差板22の位相差軸42(遅相軸または進相軸)とが互いに直交するようにしている(例えば表示側偏光板12の吸収軸と位相差板22の遅相軸とが互いに直交するようにしている)。具体的には例えば水平方向を0°とすると、表示側偏光板12の偏光軸41の方向を90°、メガネ側偏光板21の偏光軸43の方向を0°とし、位相差板22の位相差軸42の方向を0°とする。ただし、各部における偏光軸と位相差軸との相対的な軸方向の関係が図3と同様であれば良く、軸角度は0°や90°に限定されるものではない。
【0021】
図2または図3に示したように配置することで、シャッタメガネ2が表示面11Aに対して傾いた状態となる場合にのみ、位相差板22による作用を生じさせることができる。これにより、シャッタメガネ2が表示面11Aに対して傾いていない状態での通常の表示特性を保ちつつ、シャッタメガネ2が表示面11Aに対して傾いた場合の色変化を抑制することができる。また、位相差板22をシャッタメガネ2に設けるようにしたので、表示部11に設ける場合に比べて小面積で済み、構成も簡易で低コストである。
【0022】
[具体的な構成例とその特性]
以下、図2または図3に示した配置に対応する具体的な構成例とその特性について説明する。以下では、水平方向を0°として説明する。また、表示側偏光板12の偏光軸41とメガネ側偏光板21の偏光軸43は吸収軸、位相差板22の位相差軸42は遅相軸とする。
【0023】
(第1の具体的な構成例)
図4(A),(B)は、第1の具体的な構成例を示している。各部の軸方向の相対的な関係は図2に対応している。この第1の具体的な構成例では、表示側偏光板12の偏光軸41の方向を135°、メガネ側偏光板21の偏光軸43の方向を45°とし、位相差板22の位相差軸42の方向を135°としている。位相差板22の素材はシクロオレフィン系ポリマーである。液晶セル20はTN型であり、液晶分子の長軸方向の屈折率(ne)と短軸方向の屈折率(no)との差(Δn)は0.136、セルギャップは3.4μmである。液晶セル20の(top)側(位相差板22が配置された側)の配向方向は135°、(bottom)側(メガネ側偏光板21が配置された側)の配向方向は45°となっている。すなわち、位相差板22の位相差軸42の方向と液晶セル20の(top)側の配向方向は平行となっている。
【0024】
(第2の具体的な構成例)
図5(A),(B)は、第2の具体的な構成例を示している。各部の軸方向の相対的な関係は図3に対応している。この第2の具体的な構成例では、表示側偏光板12の偏光軸41の方向を45°、メガネ側偏光板21の偏光軸43の方向を135°とし、位相差板22の位相差軸42の方向を135°としている。位相差板22の素材はシクロオレフィン系ポリマーである。液晶セル20はTN型であり、液晶分子の長軸方向の屈折率(ne)と短軸方向の屈折率(no)との差(Δn)は0.136、セルギャップは3.4μmである。液晶セル20の(top)側(位相差板22が配置された側)の配向方向は135°、(bottom)側(メガネ側偏光板21が配置された側)の配向方向は45°となっている。すなわち、位相差板22の位相差軸42の方向と液晶セル20の(top)側の配向方向は、図4の第1の具体的な構成例と同様に、平行となっている。
【0025】
図6は、図4の第1の具体的な構成例での色ずれ特性をxy色度図で示している。なお、図5の第2の具体的な構成例についても同様の特性が得られる。図6には比較例として、位相差板22を省いた構成(図18参照)での特性も同時に示す。図6は、図4に示した配置でシャッタをオン(開状態)にして、白色LED(Light Emitting Diode)からなる光源からの光を観察した場合の特性を示している。シャッタメガネ2が表示装置1の表示面11Aに対して傾いた状態に相当する場合の特性を調べるため、表示側偏光板12を面内で左右方向に−30°〜正面(0°)〜30°と傾けた場合の特性を計算した。また、位相差板22の位相差値(リタデーション)による違いを調べるため、位相差値を63nm、70nm、77nm、84nmと変えた場合の特性を計算した。位相差値は550nmの波長に対するものである。図6の結果から分かるように、位相差板22を省いた構成では、傾き角に応じて、観察される色が大きく変化している。これに比べて位相差板22を配置した場合には、色の変化が小さくなっている。図6の結果では、相差板22の位相差値が70nmのときに最も色変化が小さくなっている。
【0026】
図7は、図4の第1の具体的な構成例でのコントラスト特性を示している。なお、図5の第2の具体的な構成例についても同様の特性が得られる。図7には比較例として、位相差板22を省いた構成(図18参照)での特性も同時に示す。図6と同様に、表示側偏光板12を面内で左右方向に−30°〜正面(0°)〜30°と傾けた場合の特性を計算した。図7の結果から、位相差板22を設けたことによるコントラストの劣化は生じていないことが分かる。
【0027】
図8は、図4の第1の具体的な構成例における位相差板22の位相差値(リタデーション)と色ずれ量との関係を示している。なお、図5の第2の具体的な構成例についても同様の特性が得られる。図8には、表示側偏光板12を面内で左右方向に−30°傾けた場合と30°傾けた場合の特性を示す。図8から、位相差板22の位相差値に応じて色ずれ量は周期的に変化することが分かる。図8において点線で囲んだように、位相差値が70nm付近、280nm付近等で色ずれ量が小さくなる。図8の結果から、図4の第1の具体的な構成例または図5の第2の具体的な構成例の場合には、位相差板22は、550nmの波長における位相差値R(nm)が、以下の値を満たすことが好ましい。
R=70+210*n、ただし、n=0,1,2… (式1)
【0028】
(第3の具体的な構成例)
図9(A),(B)は、第3の具体的な構成例を示している。各部の軸方向の相対的な関係は図2に対応している。この第3の具体的な構成例では、表示側偏光板12の偏光軸41と、メガネ側偏光板21の偏光軸43と、位相差板22の位相差軸42との関係は、図4の第1の具体的な構成例と同様である。位相差板22の素材はシクロオレフィン系ポリマーで、位相差値は70nmである。液晶セル20はツイスト角が270°のSTN型であり、液晶分子の長軸方向の屈折率(ne)と短軸方向の屈折率(no)との差(Δn)は0.13、セルギャップは4μmである。液晶セル20の(top)側(位相差板22が配置された側)の配向方向は135°、(bottom)側(メガネ側偏光板21が配置された側)の配向方向は45°となっている。すなわち、位相差板22の位相差軸42の方向と液晶セル20の(top)側の配向方向は、図4の第1の具体的な構成例と同様に、平行となっている。
【0029】
図10は、図9の第3の具体的な構成例でのシャッタメガネ2(液晶セル20)の駆動波形を示している。図10に示した駆動条件において、図4の第1の具体的な構成例と同様の特性を得ることができた。
【0030】
(第4の具体的な構成例)
図11(A),(B)は、第4の具体的な構成例を示している。各部の軸方向の相対的な関係は図3に対応している。この第4の具体的な構成例では、表示側偏光板12の偏光軸41の方向を135°、メガネ側偏光板21の偏光軸43の方向を45°とし、位相差板22の位相差軸42の方向を45°としている。位相差板22の素材はシクロオレフィン系ポリマーである。液晶セル20はTN型であり、液晶分子の長軸方向の屈折率(ne)と短軸方向の屈折率(no)との差(Δn)は0.136、セルギャップは3.4μmである。液晶セル20の(top)側(位相差板22が配置された側)の配向方向は135°、(bottom)側(メガネ側偏光板21が配置された側)の配向方向は45°となっている。すなわち、位相差板22の位相差軸42の方向と液晶セル20の(top)側の配向方向は、図4の第1の具体的な構成例とは異なり、互いに直交している。
【0031】
(第5の具体的な構成例)
図12(A),(B)は、第5の具体的な構成例を示している。各部の軸方向の相対的な関係は図2に対応している。この第5の具体的な構成例では、表示側偏光板12の偏光軸41の方向を45°、メガネ側偏光板21の偏光軸43の方向を135°とし、位相差板22の位相差軸42の方向を45°としている。位相差板22の素材はシクロオレフィン系ポリマーである。液晶セル20はTN型であり、液晶分子の長軸方向の屈折率(ne)と短軸方向の屈折率(no)との差(Δn)は0.136、セルギャップは3.4μmである。液晶セル20の(top)側(位相差板22が配置された側)の配向方向は135°、(bottom)側(メガネ側偏光板21が配置された側)の配向方向は45°となっている。すなわち、位相差板22の位相差軸42の方向と液晶セル20の(top)側の配向方向は、図4の第1の具体的な構成例とは異なり、互いに直交している。
【0032】
図13は、図11の第4の具体的な構成例における位相差板22の位相差値(リタデーション)と色ずれ量との関係を示している。なお、図14の第5の具体的な構成例についても同様の特性が得られる。図13には、図8の場合と同様に、表示側偏光板12を面内で左右方向に−30°傾けた場合と30°傾けた場合の特性を示す。図13から、位相差板22の位相差値に応じて色ずれ量は周期的に変化することが分かる。図13から、位相差値が150nm付近、400nm付近等で色ずれ量が小さくなることが分かる。図13の結果から、図11の第4の具体的な構成例または図12の第5の具体的な構成例の場合には、位相差板22は、550nmの波長における位相差値R(nm)が、以下の値を満たすことが好ましい。
R=150+250*n、ただし、n=0,1,2… (式2)
【0033】
図8および図13の結果から、位相差板22の最適な位相差値は、位相差板22の位相差軸42の方向と液晶セル20の(top)側の配向方向との関係に応じて決まることが分かる。すなわち、図4の第1の具体的な構成例または図5の第2の具体的な構成例のように、位相差軸42の方向と液晶セル20の(top)側の配向方向が平行である場合には、上記(式1)の位相差値を用いることが好ましい。また、図11の第4の具体的な構成例または図12の第5の具体的な構成例のように、位相差軸42の方向と液晶セル20の(top)側の配向方向が直交する場合には、上記(式2)の位相差値を用いることが好ましい。
【0034】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る立体画像表示装置について説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る立体画像表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0035】
図14は、本実施の形態に係る立体画像表示装置の全体構成例を示している。この立体画像表示装置は、上記第1の実施の形態に係る立体画像表示装置(図1)に対して、低偏光度偏光板23をさらに備えている。低偏光度偏光板23は、シャッタメガネ2Aの左眼用シャッタ2Lおよび右眼用シャッタ2Rのそれぞれにおいて、位相差板22の前側(表示側偏光板12と位相差板22との間)に配置されている。本実施の形態において、メガネ側偏光板21は、本発明における「第1のメガネ側偏光板」、低偏光度偏光板23は「第2のメガネ側偏光板」に相当する。
【0036】
低偏光度偏光板23は、図15(B)に一例を示したように、表示側偏光板12の偏光軸41と低偏光度偏光板23の偏光軸44とが互いに平行となるように配置されている。また、低偏光度偏光板23の偏光度は50%以下とされている。ここで、偏光度は、以下のように定義されるものである。
(偏光度)=(P1−P2)/(P1+P2)
ただし、P1は、2枚の偏光板を互いの偏光軸を平行配置した場合の透過率。P2は、2枚の偏光板を互いの偏光軸を直交配置した場合の透過率。
【0037】
図15(A),(B)は、本実施の形態に係る立体画像表示装置の具体的な構成例を示している。低偏光度偏光板23以外の各部の軸方向の相対的な関係は図2に対応している。この具体的な構成例では、表示側偏光板12の偏光軸41と、メガネ側偏光板21の偏光軸43と、位相差板22の位相差軸42との関係は、上記第1の実施の形態における図4の第1の具体的な構成例と同様である。液晶セル20の構成も、図4の第1の具体的な構成例と同様である。低偏光度偏光板23の偏光軸44(吸収軸)は、表示側偏光板12の偏光軸41の方向と同様に135°となっている。低偏光度偏光板23の偏光度は33%である。位相差板22の素材はシクロオレフィン系ポリマーで、550nmの波長に対する位相差値は70nmである。
【0038】
図16は、図15の具体的な構成例での色ずれ特性をxy色度図で示している。なお、図16には比較例として、位相差板22を省いた構成(図18参照)での特性も同時に示す。図16は、図15に示した配置でシャッタをオン(開状態)にして、白色LEDからなる光源からの光を観察した場合の特性を示している。シャッタメガネ2Aが表示装置1の表示面11Aに対して傾いた状態に相当する場合の特性を調べるため、図6の場合と同様に、表示側偏光板12を面内で左右方向に−30°〜正面(0°)〜30°と傾けた場合の特性を計算した。また、位相差板22の位相差値(リタデーション)は上記したように70nmである。図16の結果から分かるように、位相差板22を省いた構成では、傾き角に応じて、観察される色が大きく変化している。これに比べて位相差板22を配置した場合には、色の変化が小さくなっている。
【0039】
なお、図示を省略するが、表示側偏光板12の偏光軸41と位相差板22の位相差軸42とが互いに直交するような配置(図3や図5等参照)において、低偏光度偏光板23を位相差板22の前側に配置した構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…表示装置、2,2A…シャッタメガネ、2L…左眼用シャッタ、2R…右眼用シャッタ、3L…左眼、3R…右眼、11…表示部、11A…表示面、12…表示側偏光板、20…液晶セル、21…メガネ側偏光板(第1のメガネ側偏光板)、22…位相差板、22…低偏光度偏光板(第2のメガネ側偏光板)、41,43,44…偏光軸、42…位相差軸、101…表示装置、102,102A,102B…シャッタメガネ、102L…左眼用シャッタ、102R…右眼用シャッタ、111…表示部、111A…表示面、112…表示側偏光板、113…1/4波長板、120…液晶セル、121…第1のメガネ側偏光板、122…第2のメガネ側偏光板、123…1/4波長板、141,144…偏光軸、142,143…位相差軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左眼用画像と右眼用画像とを時分割で交互に表示する表示部と、
前記表示部の表示面側に配置された表示側偏光板と、
左眼用シャッタおよび右眼用シャッタを有し、前記表示部に表示される画像の表示状態に応じて、前記左眼用シャッタおよび前記右眼用シャッタを開閉させるシャッタメガネと
を備え、
前記左眼用シャッタおよび前記右眼用シャッタはそれぞれ、
液晶セルと、
前記液晶セルの前記表示部側に配置された位相差板と、
前記液晶セルの前記位相差板が設けられた側とは反対側に配置された第1のメガネ側偏光板とを有し、
前記表示側偏光板の偏光軸と前記第1のメガネ側偏光板の偏光軸とが互いに直交し、かつ、前記表示側偏光板の偏光軸と前記位相差板の位相差軸とが互いに平行または直交している
立体画像表示装置。
【請求項2】
前記左眼用シャッタおよび前記右眼用シャッタはそれぞれ、前記表示側偏光板と前記位相差板との間に配置される第2のメガネ側偏光板をさらに有し、
前記第2のメガネ側偏光板の偏光度は50%以下であり、前記表示側偏光板の偏光軸と前記第2のメガネ側偏光板の偏光軸とが互いに平行とされている
請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記位相差板は、550nmの波長における位相差値R(nm)が、以下の値を満たす
R=70+210*n、ただし、n=0,1,2… (式1)
請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記液晶セルは、ツイストネマティック型の液晶セルであり、前記位相差板側の配向方向が、前記位相差板の位相差軸と平行である
請求項3に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記位相差板は、550nmの波長における位相差値R(nm)が、以下の値を満たす
R=150+250*n、ただし、n=0,1,2… (式2)
請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記液晶セルは、ツイストネマティック型の液晶セルであり、前記位相差板側の配向方向が、前記位相差板の位相差軸と直交している
請求項5に記載の立体画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−78568(P2012−78568A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223813(P2010−223813)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】