説明

端子開放検出装置及び半導体装置

【課題】本発明は、端子のオープンが発生してからそのオープンを検出するまでの異常判定時間と、端子が正常状態に復帰をしてからその復帰を検出するまでの正常復帰時間に違いを設けることができる、端子開放検出装置の提供を目的とする。
【解決手段】端子20の開放を検出する端子開放検出装置であって、端子20の外部インピーダンスの増加に応じて電流の供給量が低下する電流源30Aから、ベース電流が供給されるトランジスタQ1と、トランジスタQ1のベース電荷の放電を制限するダイオードD1と、トランジスタQ1のオンオフに連動する出力信号を出力するトランジスタQ2とを備えることを特徴とする、端子開放検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子の開放を検出する端子開放検出装置及び該端子開放検出装置を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、端子のオープン状態を検出することにより、スイッチング素子のスイッチング動作を停止させる保護を行う半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この半導体装置は、特許文献1の図3に示されるように、端子のオープンが実際に起こってから一定期間経過した後に、そのオープンの検出を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−274644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の開示技術のままでは、端子の状態がオープン状態から正常状態に復帰したとしても、正常状態への復帰を速やかに検出することができない。
【0005】
そこで、本発明は、端子のオープンが発生してからそのオープンを検出するまでの異常判定時間と、端子が正常状態に復帰をしてからその復帰を検出するまでの正常復帰時間に違いを設けることができる、端子開放検出装置及び該端子開放検出装置を備える半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る端子開放検出装置は、
端子の開放を検出する端子開放検出装置であって、
前記端子の外部インピーダンスの増加に応じて電流の供給量が低下する電流源から、ベース電流が供給されるトランジスタと、
前記トランジスタのベース電荷の放電を制限するダイオードと、
前記トランジスタのオンオフに連動する出力信号を出力する出力回路とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る半導体装置は、該端子開放検出装置と前記出力信号に基づく制御を行う制御手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、端子のオープンが発生してからそのオープンを検出するまでの異常判定時間と、端子が正常状態に復帰をしてからその復帰を検出するまでの正常復帰時間に違いを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態である半導体装置100の構成図である。
【図2】端子開放検出装置10の検出タイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】定電流源30と異なる他の構成例である。
【図4】端子開放検出装置の異常判定時間を長くするための構成例である。
【図5】端子開放検出回路の第1の比較例である。
【図6】端子開放検出回路の第2の比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。図1は、本発明の実施形態である半導体装置100の構成図である。半導体装置100は、半導体装置100の端子20の開放故障及び開放故障からの復帰を検出する端子開放検出回路10を、半導体集積回路(IC)として、備えている。半導体装置100の外部部品との接続を可能にする端子20には、半導体装置100が実装される基板と同じ基板に実装された外付け抵抗30Eが接続されている。すなわち、正常状態では、端子20は外付け抵抗30Eを介してグランドにショートされている。端子開放検出回路10は、プリント基板実装時のはんだ不良や熱ストレスによるはんだクラックなどの異常が外付け抵抗30Eに発生することによって、ICの端子20が開放状態となることを検出する。
【0011】
IC端子の開放を検出する場合、ノイズ等の誤判定を防ぐために、端子20が開放されている異常状態が一定時間継続した時に異常フラグを立てることが要求される。また、IC端子の開放状態が正常状態に復帰した場合、迅速に異常フラグを取り下げることが要求される。
【0012】
図2は、端子開放検出回路10の検出タイミングを示すタイミングチャートである。端子開放検出回路10は、外付け抵抗30Eのはんだクラック等の異常が発生することにより端子20が開放すると、端子20が開放した異常発生時点t1から所定時間経過時に(検出タイミングt2で)、端子20の開放を検出したことを表す異常フラグを出力する。異常発生時点t1からその異常を検出する時点t2までの異常判定時間を一定時間(例えば、50μs)以上設けることによって、ノイズ等による誤作動を防止できる。そして、異常検出時点t2の後、端子20が開放されている異常状態から端子20が開放されていない正常状態に端子20の状態が復帰時点t3で復帰をすると、端子開放検出回路10は、その復帰を復帰時点t3後に速やかに検出する。端子開放検出回路10は、異常状態から正常状態への復帰を検出した検出時点t4で、異常フラグを取り下げる。端子20が正常状態に復帰してからその復帰を検出するまでの正常復帰時間(すなわち、t3−t4の期間)を短縮することによって、実際には正常状態であるにもかかわらず、異常状態であると誤認識されている時間を短くすることができる。
【0013】
図2に示した動作を行う端子開放検出回路10の構成と端子開放検出回路10を備える半導体装置100の構成について、図1を参照しながら詳細説明する。半導体装置100には、端子開放検出回路10と、電流源30Aと、オペアンプ30Bと、オペアンプ30Bの出力に応じて駆動する出力トランジスタ30Cと、基準電源30Dと、制御部40とが集積化されている。電流源30Aと、電流源30Aの下流側にコレクタが接続された出力トランジスタ30Cと、抵抗分割等によって基準電圧を生成する基準電源30Dと、npn型の出力トランジスタ30Cのエミッタと基準電源30Cの基準電圧との電圧差を増幅するオペアンプ30Bと、出力トランジスタ30Cのエミッタに端子20を介して接続された外付け抵抗30Eとによって、定電流源30が構成されている。
【0014】
定電流源30の構成要素である電流源30Aは、複数の電流供給経路を有し、トランジスタ30Cに電流を供給する経路とトランジスタ30C以外の回路素子に電流を供給する経路とを有する。電流源30Aは、端子20の外部インピーダンスの増加に応じて電流の供給量が低下するカレントミラーである。図1における外部インピーダンスは、外付け抵抗30Eの抵抗分に相当する。端子20の外部インピーダンスが増加するにつれて端子20から流れ出る電流の電流値は小さくなる。そして、端子20の外部インピーダンスが無限大(つまり、端子20が開放状態)になると、端子20から電流は流れ出ない。つまり、電流源30Aは、端子20から電流を流し出すことによって他の回路にも電流を供給することができるが、端子20から電流を流しだすことができなければ他の回路への電流供給は停止する。
【0015】
なお、定電流源30は、IC端子に外付けされたIC外付け抵抗とICとの組み合わせによるIC内部定電流発生回路であれば、図1の構成に限らない。
【0016】
図3は、定電流源30と異なる他の構成例である。図3の定電流源30は、電流源30Aと、電流源30Aの下流側にコレクタが接続された出力トランジスタ30Cと、抵抗分割等によって基準電圧を生成する基準電源30Dと、基準電源30の基準電圧がベースに供給されるPNPトランジスタ30Gと、出力トランジスタ30CのベースとPNPトランジスタ30Gのエミッタとの接続点に定電流を供給する定電流源30Fと、出力トランジスタ30Cのエミッタに端子20を介して接続された外付け抵抗30Eとを備えることによって、定電流を供給する。
【0017】
図1において、端子開放検出回路10は、電流源30Aの複数の供給経路のうちの一の供給経路(トランジスタQ3)からベース電流が供給される第1のトランジスタ(トランジスタQ1)と、トランジスタQ1のベース電荷の放電を制限するダイオードD1と、トランジスタQ1のオンオフに連動する出力信号を出力する第2のトランジスタ(トランジスタQ2)を含む出力回路とを備えている。
【0018】
トランジスタQ3のエミッタには、ICの内部電源電圧が接続されている。また、トランジスタQ3のコレクタとグランドと間に、抵抗R1と抵抗R2とを直接接続した分圧回路が設けられている。電流源30AのトランジスタQ3から流れ出る電流は、ダイオードD1を介して、トランジスタQ1を駆動するベース電流として、トランジスタQ1のベースに供給される。
【0019】
ダイオードD1は、トランジスタQ1にベース電流を供給する供給経路に挿入されている。ダイオードD1は、例えば、トランジスタのPN接合部を流用すればよい。図1に例示されるように、トランジスタQ1のベース電荷の放電が制限されるように、ダイオードD1を配置することによって、ダイオードD1を配置していない場合に比べ、トランジスタQ1のオフ時間を長くすることができる。図1の場合、ダイオードD1のアノードは抵抗R1と抵抗R2との接続点に接続され、ダイオードD1のカソードはトランジスタQ1のベースに接続される。
【0020】
トランジスタQ1のオンオフに連動する出力信号が、端子20の開放/非開放を表すステータス信号として、制御部40に対して出力される。ステータス信号を制御部40に対して出力する出力回路として、定電流源i1,i2と、トランジスタQ2が備えられている。トランジスタQ1のコレクタとトランジスタQ2のベースとの接続点が定電流源i1の下流側に接続されている。定電流源i2の下流側に接続されたトランジスタQ2のコレクタが、制御部40に接続されている。トランジスタQ1の後段にトランジスタQ2を設けることによって、トランジスタQ1の出力の論理レベルが反転したステータス信号を制御部40に対して出力させることができる。
【0021】
なお、定電流源i2とトランジスタQ2とを削除し、定電流源i1の下流側とトランジスタQ1のコレクタとの接続点を制御部40に接続する回路を、端子20の開放/非開放を表すステータス信号を制御部40に対して出力する出力回路としてもよい。この場合、端子20の正常状態/異常状態を表す極性は、図2に示した極性に対して反転したものである。
【0022】
制御部40は、端子20の開放/非開放に応じた制御をステータス信号の論理レベルに基づいて行う制御手段である。制御部40は、端子20が開放されている異常状態を表す論理レベルのステータス信号が入力された場合には、異常状態に応じた既定の動作を行い、端子20が開放されていない正常状態を表す論理レベルのステータス信号が入力された場合には、正常状態に応じた既定の動作を行う。例えば、制御部40がパワーMOSやIGBT等の半導体スイッチング素子を駆動する駆動信号を半導体装置100の出力信号として出力するアプリケーションに使用される場合、端子20が開放されている異常状態が検出された時点で、当該駆動信号の出力を停止させる。端子20が開放されることによって、定電流源30から規定の定電流を半導体装置100内の各回路に供給することができないという異常状態に陥る。したがって、端子20が開放されることにより定電流が正常に供給できない異常状態に、半導体スイッチング素子が駆動し続けることを防ぐことができる。
【0023】
なお、制御部40は、ステータス信号に応じてパルス信号を出力するトランジスタを含んだ回路でもよいし、メモリが配されたマイクロコンピュータ等の高級な回路素子でもよい。
【0024】
続いて、半導体装置100の動作について説明する。端子20が開放されていない正常状態では、トランジスタQ3がオンしていることにより、トランジスタQ1はベース電流が注入されることによりオンしている。トランジスタQ1のオンによりトランジスタQ2はオフするので、正常状態を表すHレベルのステータス信号が制御部40に出力され続ける。逆に、端子20が開放されている異常状態では、トランジスタQ3がオフしていることにより、トランジスタQ1はオフする。トランジスタQ1のオフによりトランジスタQ2はオンするので、異常状態を表すLレベルのステータス信号が制御部40に出力され続ける。
【0025】
ここで、端子20の開放により異常状態に転じたとき、トランジスタQ1のベース電荷の放電はダイオードD1によって阻止される。そのため、トランジスタQ1がオンからオフに転じるまでには長い時間(例えば、数〜数十μs)を要する。すなわち、ベース電荷の放電を阻止することによって、端子20が開放する異常が実際に発生した時点からその異常を検出するまでの異常判定時間を長く確保することができる。異常判定時間の調整は、トランジスタQ1のコレクタにつながる電流源i1の電流値によって行うことができる。電流源i1の電流値を大きくすることによって、異常判定時間を長くすることができる。また、ダイオードD1のアノードとグランド間を接続する抵抗R2の抵抗値によって、異常判定時間を調整してもよい。抵抗R2の抵抗値を大きくするにつれてベース電荷の放電時間は長くなるので、異常判定時間を長くすることができる。
【0026】
また、異常判定時間を更に延長したい場合には、図4に示すように、トランジスタQ1のベース−コレクタ間にコンデンサC1を接続するとよい。コンデンサC1は、トランジスタQ1のミラー効果を利用することにより、トランジスタQ1のベース−エミッタ間(図1の場合、エミッタはグランドに接続)にコンデンサを接続した場合に比べ、トランジスタQ1の「直流電流増幅率hFE分の1」の容量とすることができる。したがって、トランジスタQ1のベース−コレクタ間にコンデンサC1を挿入することによって、コンデンサC1の追加による実装面積の増加を抑えた上で、異常判定時間をコンデンサC1の容量に応じて延長することができる。
【0027】
一方、トランジスタQ1は、異常状態から正常状態に復帰すると、ベース電流が電流源30AのトランジスタQ3からダイオードD1の順方向に流れて供給されることによって、迅速にオフからオンにすることができる。
【0028】
以上、上述の実施例によれば、端子20の開放故障が発生してからその開放故障を検出するまでの異常判定時間と、端子20が正常状態に復帰をしてからその復帰を検出するまでの正常復帰時間に違いを設け、異常判定時間より短い正常復帰時間を設定することができる。
【0029】
また、上述の実施例によれば、比較的少ない素子数且つ小さい素子面積でIC端子の開放検出の目的を果たし、ICを安価にすることができる。例えば、図2に示した動作を行う端子解放検出回路として、端子開放検出回路10以外でも、図5,6に示した構成が挙げられる。
【0030】
図5の構成では、コンデンサC2と抵抗R3によって時定数を作り出し、異常判定時間を確保している。正常復帰は、抵抗R3に並行に設けたダイオードD2によって抵抗R3の抵抗分をキャンセルしてコンデンサC2を急速放電する。一方、図6の構成では、デジタル回路によりカウンタで時間計測するものである。デジタル回路用の基本クロック発生器(CR回路、セラロック、水晶などの発振回路)を必要とする。また、正常復帰は、カウンタをキャンセルする回路を設ける必要がある。
【0031】
このように、図5の構成では、異常判定時間を確保するためにはコンデンサC2の容量と抵抗R3の抵抗値を大きくする必要があり、図6の構成では、異常判定時間を確保しつつ正常復帰時間を短縮するためには基本クロック発生器等の比較的大きな回路を設ける必要がある。したがって、いずれの構成の場合でも、回路規模が大きくなり、ICチップ面積を増大させてしまう。これに対して、本発明に係る上述の実施例によれば、図5,6の構成に比べ素子数や素子面積を減らして、端子の開放を検出することができる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0033】
例えば、制御部40は、半導体装置100に内蔵されずに、半導体装置100の外部に実装されるものでもよい。
【符号の説明】
【0034】
Q1〜Q3 トランジスタ
D1 ダイオード
C1 コンデンサ
i1,i2 定電流源
10 端子開放検出回路
20 端子
30A 電流源
30B オペアンプ
30C 出力トランジスタ
30D 基準電源
30E 外付け抵抗
30F 定電流源
30G PNPトランジスタ
40 制御部
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子の開放を検出する端子開放検出装置であって、
前記端子の外部インピーダンスの増加に応じて電流の供給量が低下する電流源から、ベース電流が供給されるトランジスタと、
前記トランジスタのベース電荷の放電を制限するダイオードと、
前記トランジスタのオンオフに連動する出力信号を出力する出力回路とを備えることを特徴とする、端子開放検出装置。
【請求項2】
前記トランジスタのベース−コレクタ間にコンデンサが挿入された、請求項1に記載の端子開放検出装置。
【請求項3】
前記ダイオードは、前記トランジスタに前記ベース電流を供給する供給経路に挿入される、請求項1又は2に記載の端子開放検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の端子開放検出装置と、前記出力信号に基づく制御を行う制御手段とを備える、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−190604(P2010−190604A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32685(P2009−32685)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】