筒状MEAの製造方法、この筒状MEAを備えるガス分解素子及び発電装置
【課題】固体電解質を用いた電気化学反応を利用したガス分解装置に用いる筒状MEAの製造工程を削減し、また製造コストを低減させることのできる、筒状MEAの製造方法を提供。
【解決手段】筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEAの製造方法であって、上記固体電解質層又は上記電極層の1つを構成する第1の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて成形する第1の成形工程S103と、上記第1の未焼成筒状部の内周部又は外周部に、上記固体電解質層又は上記電極層の他の1つを構成する第2の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて形成する第2の成形工程S106と、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して焼成筒状体を形成する焼成工程S109とを含む。
【解決手段】筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEAの製造方法であって、上記固体電解質層又は上記電極層の1つを構成する第1の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて成形する第1の成形工程S103と、上記第1の未焼成筒状部の内周部又は外周部に、上記固体電解質層又は上記電極層の他の1つを構成する第2の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて形成する第2の成形工程S106と、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して焼成筒状体を形成する焼成工程S109とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、筒状MEAの製造方法等に関する。詳しくは、ガス分解素子に用いて所定のガスを効率良く分解することができる筒状MEAの製造方法、これを備えて構成されるガス分解素子及び発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、アンモニアは農業や工業に不可欠の化合物であるがヒトには有害であるため、水中や大気中のアンモニアを分解する種々の方法が知られている。高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、アンモニア水を噴霧するとともに空気流と接触させて空気中にアンモニアを分離し、次亜臭素酸溶液又は硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また、上記方法と同じプロセスで空気中にアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法(特許文献2)や、アンモニア含有排水を、触媒を用いて、窒素と水に分解する方法が提案されている(特許文献3)。さらに、半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれることが多く、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除去する必要がある。この目的のために、半導体装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。一方、エネルギや薬品等の投入なしに安価なランニングコストで有害ガスを分解するために、リン酸燃料電池でアンモニアを分解する、半導体製造装置等における廃ガス処理の方法も提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開2003−45472号公報
【特許文献5】特許第3238086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような中和剤等の薬液を用いる方法、特許文献2に記載されているような燃焼させる方法、特許文献3に記載されているような触媒を用いた熱分解反応による方法により、アンモニアを分解することはできる。ところが、これらの方法では、薬品や外部エネルギ(燃料)を必要とし、さらには、触媒を定期的に交換する必要があり、ランニングコストが大きくなるという問題がある。
【0005】
また、装置が大掛かりとなり、既存の設備に付加的に設ける場合には、スペースを確保するのが困難である。また、リン酸型燃料電池を、化合物半導体製造の排気中のアンモニアの除去に用いる装置についても、電解質が液体であるため、空気側とアンモニア側との仕切りをコンパクトにできず、装置の小型化が難しいという問題があった。
【0006】
上記問題を解決するため、特許文献5に記載されているように、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を採用することができる。
【0007】
従来、上記筒状MEAは、固体電解質層を圧粉成形等によって成形して焼成し、その後に、燃料極を上記固体電解質層に積層成形して焼成し、さらに、空気極を種々の手法を用いて別途形成する必要があった。このため、製造工数が増加するとともに、製造コストが増加するという問題があった。
【0008】
本願発明は、固体電解質を用いた電気化学反応を利用することによって、ランニングコストを抑えながら大きな処理能力を得ることができるとともに、筒状MEAの製造工程及び製造コストを低減させることのできる、筒状MEAの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に記載した発明は、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)の製造方法であって、上記固体電解質層又は上記電極層の1つを構成する第1の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて成形する第1の成形工程と、上記第1の未焼成筒状部の内周部又は外周部に、上記固体電解質層又は上記電極層の他の1つを構成する第2の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて形成する第2の成形工程と、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程とを含んで構成される。
【0010】
本願発明に係る筒状MEAの製造方法においては、上記第1の成形工程と上記第2の成形工程とによって、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とが一体成形された未焼成筒状体が形成される。そして、その後に、この未焼成筒状体が一体として焼成される。
【0011】
すなわち、本願発明では、上記固体電解質層と、少なくとも一方の電極層が、一体成形され、一体的に焼成される。このため、これら部位を別途形成する場合に比べて製造工程数を減少させることができるとともに、製造コストを削減できる。
【0012】
また、互いに積層される固体電解質層と一方の電極層とを未焼成状態で一体成形し、その後に一体的に焼成することができる。このため、上記固体電解質層と上記一方の電極層とが密着して成形されることになり、これら固体電解質層と一方の電極層との間の良好な導電性が接合面全域において確保される。したがって、ガス分解能力の高い筒状MEAを形成することができる。
【0013】
請求項1に記載した製造工程に加えて、請求項2に記載した発明のように、上記固体電解質層と上記電極層の残りの1つを構成する第3の未焼成筒状部を所定の粉体材料を用いて積層形成する第3の成形工程を含み、上記焼成工程において、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部と上記第3の未焼成筒状部とを一度に焼成することもできる。これにより、固体電解質層とこれを挟むように形成される2つの電極層とを一度の焼成工程において焼成することが可能となり、工程数をさらに削減することができる。
【0014】
請求項3に記載した発明は、上記第1の成形工程及び上記第2の成形工程において、上記固体電解質層を構成する第1の未焼成筒状部と、この第1の未焼成筒状部の内側に形成される一方の電極層とを形成するとともに、これら未焼成筒状部を備える筒状体を焼成する上記焼成工程後に、上記固体電解質層の外周部に、他方の電極層を形成する電極層形成工程を含むものである。
【0015】
請求項3に記載した発明では、固体電解質層と一方の電極層を成形及び焼成した後、他方の電極層を別途形成するものである。上記他方の電極層を形成する手法は、特に限定されることはない。たとえば、他方の電極層形成材料を他の2層が焼成された筒状体に積層成形した後に、再度焼成することができる。また、他方の電極を焼成以外の手法で形成することもできる。たとえば、溶射等の手法を用いて形成することができる。
【0016】
請求項4に記載した発明は、上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層の表面に、多孔質導電層を形成する導電層形成工程を含むものである。
【0017】
第1の電極及び第2の電極の集電体を複数の部材で構成する場合、部材間の接触抵抗が大きいと、電極における電気化学反応を阻害し、ガス分解の効率が低下する。たとえば、第1の電極(アノード)の集電体として、多孔質金属体を、上記筒状MEAの内面側に挿入して、上記第1の電極と直接接触させる構成を採用する場合、これら多孔質金属体と第1の電極の間の接触面積や接触圧を大きくすることが困難であり、これら部材間の抵抗が増大するという問題があった。
【0018】
上記不都合を回避する手法として、金属メッシュシートを上記電極に接触状態で保持することにより、上記電極と集電体との接触抵抗を低減させることができる。たとえば、内側に形成された第1の電極層の内周面の全面に接触するように1枚の金属メッシュシートを配置することができる。また、上記金属メッシュシートの内側に多孔質金属体を挿入することによって、多孔質金属体内の樹枝状金属同士が押し合わされ、また金属メッシュシートと多孔質金属体間で互いに相手方の隙間に入り込んで相互に接触させられ、接触抵抗を低下させることができる。
【0019】
一方、上記第1の電極層の内面に対して、金属メッシュシートを全面均一に接触させるのは困難である。すなわち、第1の電極層の表面と上記金属メッシュシート間の接触圧力が異なったり、一部が第1の電極の表面から浮き上がることが多い。このような場合、第1の電極の表面において均一な集電を行うことができなくなり、第1の電極の全領域で均一な電気化学反応を生じさせることができない。このため、電気化学反応の効率が低下する。上記導電層を第1の電極層の表面に形成することにより、電極層と集電体との間の導電性を全域において確保することができる。また、上記導電層が多孔質であるため、各電極層に対するガスの接触を妨げることもない。
【0020】
上記多孔質導電層として、多孔質の導電性ペースト塗布層を設けることができる。たとえば、上記第1の電極の内周面に多孔質の導電性ペースト塗布層を設けることにより、上記第1の電極と上記多孔質金属体とが、上記多孔質の導電性ペースト塗布層及び金属メッシュシートを介して導通させられる。
【0021】
上記導電性ペースト塗布層を設けることにより、金属メッシュシートの表面の一部を上記導電性ペースト塗布層に埋め込むようにして、上記金属メッシュシートと上記第1の電極間を確実に導通させることができる。このため、これらの間の接触抵抗を大幅に低減させることができる。また、上記金属メッシュシートの全面を上記第1の電極に対して均一に接触させることができる。このため、上記第1の電極と上記金属性メッシュシート間の電気抵抗が部分的に増大することはない。また、上記導電性ペースト塗布層を、第1の電極の全面に塗布することにより、上記金属メッシュシートが上記導電性ペースト塗布層から離間した場合でも、第1の電極表面における集電を確保することが可能となる。このため、温度等の作用によって上記金属メッシュシートの一部が、上記導電性ペースト塗布層から離間した場合であっても、集電効果が低下することはない。しかも、上記導電性ペースト塗布層は多孔質であるため、上記第1の電極にガスが接触することを妨げることもない。したがって、上記第1の電極層の全領域において電気化学反応を均一に生じさせてガス分解反応の効率を大幅に向上させることが可能となり、気体分解の処理能力を増大させることができる。
【0022】
上記金属メッシュシートの形態は特に限定されることはない。たとえば、上記金属メッシュシートを、筒状に形成して、上記第1の電極を覆うように全面に配置することができる。
【0023】
また、上記金属メッシュシートの外観構成も特に限定されることはない。たとえば、織布、不織布、打ち抜きシート等を採用できる。柔軟性、孔径の均一性等を確保するには、織布を採用するのが好ましい。
【0024】
金属メッシュシートを構成する金属材料も特に限定されることはない。たとえば、Ni、Ni−Fe、Ni−Co、Ni−Cr、Ni−W等の材料から形成された金属メッシュシートを採用するのが好ましい。また、表層に銀メッキ層等が形成された金属メッシュシートを採用することもできる。また、触媒反応を期待する場合には、Ni−W等の材料から形成された金属メッシュシートを採用するのが好ましい。
【0025】
上記多孔質の導電性ペースト塗布層は、種々の導電性粒子を含むペーストから形成することができる。たとえば、上記多孔質の導電性ペースト塗布層を、銀粒子を含むペーストから形成することができる。銀粒子は導電性が高く、上記第1の電極の集電体としての電気抵抗を低下させて、ガス分解の処理能力を向上させることができる。また、安定性が良く、酸化することもほとんどない。
【0026】
上記銀ペースト以外の導電性ペーストを採用することもできる。たとえば、金粒子を含む導電性ペースト、プラチナ粒子を含む導電性ペースト等を採用できる。
【0027】
ガス分解反応の効率を高めるため、上記導電性ペースト塗布層の気孔率を、20〜80%に設定するのが好ましい。気孔率が20パーセント以下である場合、ガスを導電性ペースト塗布層内へ導くのが困難になり、効率を高めることができない。一方、気孔率が80%以上になると、充分な導電性を確保するのが困難であるとともに、塗布層の強度を確保できない。さらに、気孔率を40〜60%に設定するのがより好ましい。
【0028】
上記導電性ペースト塗布層の厚みは、5〜300μmに設定することができる。5μm以下では、金属メッシュシートを導電性ペースト塗布層に対して均一に接触させることができず、充分な導電性を確保するのが困難である。一方、300μm以上では、充分な気孔率を有する導電性ペースト塗布層を形成するのが困難となる。導電性と気孔率を確保するために、5〜100μmの厚みの導電性ペースト塗布層を設けるのがより好ましい。
【0029】
上記導電性ペースト塗布層を多孔質に形成する手法も特に限定されることはない。所要の気孔率を確保するために、所定温度で消失するバインダを所定量配合して導電性ペーストを構成できる。また、バインダが消失する際の導電性ペースト塗布層の収縮を防止するために、昇華型のバインダを配合するのが好ましい。たとえは、ナフタレン系のバインダを配合した導電性ペーストを採用するのが好ましい。上記導電性ペースト塗布層は、所定温度に加熱して上記バインダを除去して多孔質化され、さらに、温度を高めて導電性粒子が焼成されることにより、多孔質状の導電性ペースト塗布層が形成される。
【0030】
上記導電性ペースト塗布層を設ける形態も特に限定されることはない。たとえば、上記多孔質の導電性ペースト塗布層を、内側に形成された第1の電極層の全面に形成することができる。導電性ペースト塗布層を第1の電極層の全面に形成することにより、金属メッシュシートの一部が上記導電性ペースト塗布層から離間した場合にも、集電性能が低下することはなくなる。
【0031】
また、上記多孔質の導電性ペースト塗布層を所定のパターンで設けることもできる。たとえば、上記多孔質導電性ペースト塗布層が、上記金属メッシュシートに帯状又は格子状に対接するように形成することができる。上記パターンで形成することにより、高価な金属粒子を含む導電性ペーストを採用する場合に、コストを低減させることができる。
【0032】
上記導電層形成工程は、筒状MEAの製造工程のいずれの段階においても行うことができる。たとえば、上記未焼成筒状体に、導電性ペーストを積層塗布した後に、上記ペーストが多孔質化する温度に保持し、その後、温度を高めて未焼成筒状体を一体的に焼成することができる。また、請求項1又は請求項2に記載した筒状体が焼成された後に、導電性ペーストを塗布して別途多孔質化することもできる。
【0033】
上記未焼成成形体を形成する手法は特に限定されることはない。たとえば、請求項5に記載した発明のように、ラバープレス成形法を用いて成形を行う筒状MEAの製造方法を採用できる。すなわち、内部空間を埋める中心型部を設けた筒状の加圧ゴム型に、所定の粉体材料を充填して加圧することにより、第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、上記加圧圧縮力を解除することにより、上記加圧ゴム型及び上記第1の未焼成筒状部の内周部を拡径して、上記中心型部の外周部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程と、上記筒状型部に、所定の粉体材料を充填するとともに再加圧することにより、上記第2の未焼成筒状部を成形する上記第2の成形工程とを含んで、上記筒状MEAの製造方法を構成できる。
【0034】
ラバープレス成形法は、ゴム型内に粉体又は予備成形した圧粉体を充填し、その外周から高い静水圧を加えて、均質な圧縮成形体を形成する方法である。上記ゴム型は、圧縮過程において圧縮変形させられるとともに、圧縮力を解除すると弾性によってもとの形態に戻る。本請求項に記載した発明は、上記ゴム型の圧縮−復元の変形を利用して、筒状体EMAを成形するものである。
【0035】
請求項5に記載した発明では、まず、第1の未焼成筒状部を、ラバープレス成形の通常の手法によって形成する第1の成形工程が行われる。その後、静水圧を解除する際に、中心型部の周りで圧縮成形された未焼成筒状部を、ゴム型の内面に付着させるようにして内周部を拡径することにより、上記中心型部の外周部と第1の未焼成筒状部の内周部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程が行われる。そして、上記筒状型部内に、第2の未焼成筒状部を形成する粉体材料を充填して、再度静水圧を加えることにより、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを一体成形する。その後、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を一体的に焼成することにより、固体電解質層と一方の電極層とを備える筒状体を形成することができる。
【0036】
上記製造手法を採用することにより、固体電解質層と一方の電極層を連続的に形成することができるとともに、一度の焼成工程において焼成することが可能となる。このため、製造工程を削減できるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0037】
請求項6に記載した発明は、ラバープレス成形法を用いて成形を行う筒状MEAの製造方法であって、内部空間を埋める中心型部を設けた筒状の加圧ゴム型に、所定の粉体材料を充填して加圧することにより、第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、上記加圧力を解除することにより、上記加圧ゴム型を拡径して、上記加圧ゴム型内周部と上記第1の未焼成筒状部の外周部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程と、上記筒状型部に、所定の粉体材料を充填するとともに再加圧することにより、上記第2の未焼成筒状部を形成する上記第2の成形工程とを含んで構成される。
【0038】
請求項6に記載した発明は、第1の成形工程において成形された第1の未焼成筒状部の外周側に、第2の未焼成筒状部を形成するための筒状形成空間を形成するように構成したものである。この手法を採用することにより、請求項5に記載した発明と同様に、製造工程を削減できるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0039】
請求項7に記載した発明は、所定の処理を行うことにより消失させることができる棒状犠牲型部の外周部に、上記第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、上記第1の未焼成筒状部の外周部に、上記第2の未焼成筒状部を形成する第2の成形工程と、上記棒状犠牲型部を消失させる犠牲型部消失工程と、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程を含んで構成される。
【0040】
請求項7に記載した発明では、棒状の犠牲型部の外周部に、第1の未焼成筒状部と第2の未焼成筒状部とを連続した成形工程によって形成することができる。上記成形法は特に限定されることはない。上記犠牲型部の外周部に、第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部を構成する材料を、所定の厚みで順に塗布することにより、上記各工程を行うことができる。また、2色射出成形法等を利用して、上記第1の未焼成筒状部と第2の未焼成筒状部とを積層形成することもできる。
【0041】
上記犠牲型部は、所定の処理を施すことにより消失させることができるように構成される。たとえば、上記筒状部を構成する材料に配合されるバインダと同様の樹脂材料を用いて犠牲型部を形成し、焼成工程前に、上記バインダが昇華する温度に所定時間保持することにより、焼成工程前に消失させることができる。
【0042】
上記犠牲型部を採用することにより、第1の未焼成筒状部と第2の未焼成筒状部とを精度高く成形することが可能となる。また、連続した工程において2つの未焼成筒状部を形成できるとともに、一度の焼成工程においてこれら未焼成筒状部を一体的に焼成することができる。したがって、製造工程を削減できるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0043】
上記犠牲型部を用いた成形方法は、固体電解質層とこれを挟むように配置される2つの電極層の3層を一度に形成することもできる。すなわち、請求項8に記載した発明のように、所定の処理を行うことにより消失させることができる棒状犠牲型部の外周部に、上記第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、上記第1の未焼成筒状部の外周部に、上記第2の未焼成筒状部を形成する第2の成形工程と、上記第2の未焼成筒状部の外周部に、上記第3の未焼成筒状部を形成する第3の成形工程と、上記棒状犠牲型部を消失させる犠牲型部消失工程と、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部と上記第3の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程を含んで構成できる。
【0044】
請求項9に記載した発明は、請求項8に記載した発明において、上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層の表面に、多孔質導電層を形成する、導電層形成工程を含むものである。
【0045】
導電層形成工程は、上記固体電解質層及び電極層の成形工程と別途に行うことができる。また、上記固体電解質層及び上記電極層を構成する未焼成筒状体に積層して導電層形成材料を設け、上記犠牲型部消失工程において、上記導電層を多孔質化することもできる。
【0046】
上記第1の電極層及び上記第2の電極層を構成する材料は特に限定されることはない。たとえば、上記第1の電極、及び/又は、第2の電極を、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックスとを含む焼成体とすることができる。 金属粒連鎖体は、金属粒が連なってできた数珠状の細長い金属体をいう。Ni、Fe含有Ni、もしくはNi,Fe含有Niに微量Tiを含む金属とするのがよい。Niなどは表面酸化された状態では、その金属粒連鎖体の表面が酸化されており、中身(表層の内側の部分)は酸化されずに金属の導電性を保持している。
【0047】
このため、たとえば固体電解質層内を移動するイオンが陰イオンの場合(陽イオンの場合もある)、次のような作用効果が生じる。
(A1)金属粒連鎖体を第1の電極層(アノード)に含有させた場合、アノードにおいて、固体電解質層から移動してくる陰イオンと、アノード外部からアノードへと導かれる気体中のガス分子との化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ陰イオンを参加させてアノードでの化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、その化学反応の結果、生じる電子の導電性を、金属粒連鎖体の金属部分で確保することができる。この結果、アノードにおける電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。金属粒連鎖体を第1の電極(アノード)に含有させた場合、アノードにおいて、陽イオンたとえばプロトンを発生させて固体電解質層中をカソードへと陽イオンを移動させ、上記の電荷による促進作用を、同様に得ることができる。
ただし、金属粒連鎖体の酸化層については、使用前は焼成処理によって確実に形成されているが、使用中に還元反応によって酸化層がなくなることが多い。酸化層がなくなっても、上記の触媒作用は減ずることはあってもなくなることはない。とくにFeやTiを含有させたNiは、酸化層がなくても触媒作用は高い。
(A2)金属粒連鎖体を第2の電極層(カソード)に含有させた場合、カソードにおいて、カソード外部からカソードへと導かれる気体中のガス分子の化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ外部回路からの電子の導電性を向上させて、当該電子を参加させてカソードでの化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、当該分子から効率よく陰イオンを生じて、固体電解質層へと送り出すことができる。(A1)と同様に、(A2)の場合、固体電解質層中を移動してきた陽イオンと、外部回路を流れてきた電子と、第2の気体との電気化学反応を促進することができる。このため、上記アノードに含ませる場合と同様に、カソードにおける電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。どのような場合に、金属粒連鎖体をカソードに含ませるかは、分解対象のガスによって変わる。
(A3)金属粒連鎖体をアノードおよびカソードに含有させた場合は、上記(A1)および(A2)の効果を得ることができる。
【0048】
上記の電気化学反応は、イオンの固体電解質層を移動する速度または移動時間で律速される場合が多い。イオンの移動速度を大きくするために、上記のガス分解素子は、加熱機器たとえばヒータを備え、高温、たとえば600℃〜1000℃にするのが普通である。高温にすることで、イオン移動速度だけでなく、電極での電荷授受をともなう化学反応も促進される。
【0049】
固体電解質層を移動するイオンが陰イオンの場合は、上述のように、カソードでの化学反応によって発生し、供給される。カソードにおいて導入された流体中の分子と電子とが反応して陰イオンが生成する。生成した陰イオンは、固体電解質層中をアノードへと移動する。カソードでの反応に参加する電子は、アノードとカソードとを連絡する外部回路(蓄電器、電源、電力消費機器を含む)から入ってくる。固体電解質層を移動するイオンが陽イオンの場合は、アノードでの電気化学反応によって発生して固体電解質層中をカソードへと移動する。電子はアノードで発生して外部回路をカソードへと流れてカソードでの電気化学反応に参加する。上記電気化学反応は、燃料電池としての発電反応であってもよいし、または電気分解反応であってもよい。
【0050】
また、固体電解質が、酸素イオン導電性またはプロトン導電性を有する構成をとることができる。酸素イオン導電性の固体電解質を用いた場合、たとえばカソードで電子と酸素分子とを反応させて酸素イオンを生じさせ、これを固体電解質層を移動させてアノードにて所定の電気化学反応を起こさせることができる。この場合、酸素イオンの固体電解質層中の移動速度はプロトンと比べて大きくないので、実用レベルの分解容量を得るには、温度を十分高める、及び/又は固体電解質層の厚みを十分薄くする、などの対策が必要である。
一方、プロトン導電性の固体電解質は、バリウムジルコネート(BaZrO3)などが知られている。プロトン導電性の固体電解質を用いると、たとえばアノードでアンモニアを分解してプロトン、窒素分子および電子を生じさせて、プロトンを固体電解質層を経てカソードへと移動させ、カソードにおいて酸素と反応して水(H2O)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいので固体電解質層中の移動速度は大きいので、加熱温度を低くして実用レベルの分解容量を得ることができる。
【0051】
また、たとえば筒状MEAを用いてアンモニア分解を行うとき、内側をアノードとした場合、酸素イオン導電性の固体電解質では、水を筒状体の内側(アノード)で生成する反応となる。水は、温度が低い出口付近では水滴を形成して圧力損失の原因となる。これに対して、プロトン導電性の固体電解質を用いると、プロトンと酸素分子と電子とが、カソード(外側)で生成する。外側はほぼ開放されているので、水滴となって付着しても圧力損失を生じにくい。
【0052】
請求項13に記載した発明のように、分解対象のガスを燃料とし、ガス分解素子によって燃料電池を構成して発電を行うこともできる。
【0053】
分解の対象となるガスも特に限定されることはない。たとえば、上記のいずれかのガス分解素子を備え、第1の電極にアンモニアを含む気体を導入し、第2の電極に酸素分子を含む気体を導入することができる。これによって、第2の電極(カソード)で発生させた酸素イオンを第1の電極(アノード)に移動させて、第1の電極においてアンモニアと酸素イオンとを、金属粒連鎖体による触媒作用、およびイオンによる促進作用のもとで反応させて、さらに反応の結果生じる電子を速やかに移動させることができる。
【0054】
本発明に係るガス分解素子は、ガス除害だけでなく、燃料電池や、ガス分解を利用した独自の電気化学反応装置の分野で、装置の基礎となる電極等に用いられて、電気化学反応の効率向上、装置の小型化、低いランニングコスト等を得ることに貢献できる。
【発明の効果】
【0055】
本発明のガス分解素子の製造方法によって、ガス分解効率が高く、またランニングコストの低いガス分解装置を構成する筒状MEAを製造できるとともに、製造工程数及び製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)本願発明の実施の形態1におけるガス分解素子を示す縦断面図であり、(b)は、(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。
【図2】図1のガス分解素子の電気配線系統を示す図である。
【図3】筒状MEAに対する外部配線及び気体搬送路の接続形態を示す図である。
【図4】本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法のフローチャートである。
【図5】(a)(b)は、本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図6】(c)(d)は、本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図7】(e)(f)は、本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図8】(g)(h)は、本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図9】本願発明の第2の実施形態に係る筒状MEAの製造方法のフローチャートである。
【図10】(a)(b)(c)は、本願発明の第2の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図11】(d)(e)(f)は、本願発明の第2の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図12】(a)(b)(c)(d)は、本願発明の第3の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図13】(e)(f)(g)は、本願発明の第3実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本願発明の実施の形態を図を用いて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1に係るガス分解素子10の縦断面図である。また、図1(b)は、図1(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。なお、本実施形態では、特に、本願発明をアンモニアガスを分解するガス分解素子に適用した場合について説明する。
【0058】
ガス分解素子10は、円筒状の固体電解質層1の内面を覆うように第1の電極層(アノード)2が設けられるとともに、外面を覆うように第2の電極層(カソード)5が設けられた筒状MEA7(1,2,5)を備えて構成されている。第1の電極層(アノード)2は燃料極、また、第2の電極層(カソード)5は空気極と呼ばれることがある。本実施形態に係る上記筒状MEA7(1,2,5)は、図1に示すように、直円筒状に形成されている。筒状MEAの内径は、たとえば20mm程度であるが、適用する装置に応じて寸法等を設定できる。本実施形態のガス分解素子10では、円筒状の筒状MEA7の内筒を埋めるように、アノード側集電体11が配置されている。また、第2の電極層(カソード)の外面に巻き付くようにカソード側集電体12が配置されている。
【0059】
上記アノード側集電体11は、銀ペースト塗布層11gとNiメッシュシート11aと多孔質金属体11sと中心導電棒11kとを備えて構成されている。上記Niメッシュシート11aは、銀ペースト塗布層11gを介して、筒状MEA7の内面側の第1の電極層(アノード)に接触して、多孔質金属体11sから中心導電棒11kへと導電するように構成されている。多孔質金属体11sは、アンモニアガス等の気体の圧力損失を低減させるために、気孔率を高くできる金属メッキ体、たとえば、セルメット(登録商標:住友電気工業株式会社)を用いるのが好ましい。第1の電極層(アノード)とアノード側集電体11との間の電気抵抗を低減させるために、上記銀ペースト塗布層11gとNiメッシュシート11aとが配置されている。
【0060】
上記カソード側集電体12は、銀ペースト塗布配線12gとNiメッシュシート12aとを備えて構成されている。本実施形態では、Niメッシュシート12aが、筒状MEA7の外面に接触して、外部配線へと導電している。銀ペースト塗布配線12gは、第2の電極層(カソード)における酸素ガスを酸素イオンに分解するのを促進する触媒として作用する銀を含み、かつカソード側集電体12の電気抵抗を低くすることに寄与する。所定の性状の銀ペースト塗布配線12gは、酸素分子を通しながら銀粒子が第2の電極層(カソード)に接触して、第2の電極層(カソード)内に含まれる銀粒子と同等の触媒作用を発現する。しかも、第2の電極層(カソード)に含ませるより安価である。
【0061】
図2は、固体電解質層1が酸素イオン導電性である場合における、図1のガス分解素子10の電気配線系統を示す図である。アンモニアを含む気体は、気密性を厳格にした筒状MEA7の内筒、すなわちアノード側集電体11が配置されている空間に導入される。筒状MEA7を用いた場合、内面側に気体を通すことから、多孔質金属体11sが用いられる。圧力損失を低くする点から、上述のように、多孔質金属体11sとして、多孔質金属めっき体、たとえば、上述したセルメットを用いることができる。アンモニアを含む気体は、多孔質金属体11s、Niメッシュシート11a、及び多孔質の銀ペースト塗布層11gの空隙を通りながら、第1の電極層(アノード)と接触して、下記のアンモニア分解反応をする。
【0062】
酸素イオンO2-は、第2の電極層(カソード)での酸素ガス分解反応によって生じ、固体電解質層1を通って第1の電極層(アノード)に到達したものである。すなわち陰イオンである酸素イオンが固体電解質層1を移動する場合の電気化学反応である。
【0063】
第1の電極層(アノード)では、以下の反応が生じている。
(アノード反応):2NH3 +3O2-→N2 +3H2 O+6e-
より詳しくは、一部のアンモニアが、2NH3 →N2 +3H2 の反応を生じ、この3H2
が酸素イオン3O2-と反応して3H2 Oを生成する。第2の電極層(カソード)には空気、とくに酸素ガスが、スペースSを通るように導入され、第2の電極層(カソード)において酸素分子から分解した酸素イオンを第1の電極層(アノード)に向かって固体電解質層1へと送り出す。
【0064】
第1の電極層(カソード)では、以下の反応が生じている。
(カソード反応):O2 +4e- →2O2-
上記の電気化学反応の結果、電力が発生し、第1の電極層(アノード)と第2の電極層(カソード)との間に電位差を生じ、カソード側集電体12からアノード側集電体11へと電流Iが流れる。カソード側集電体12とアノード側集電体11との間に負荷、たとえばこのガス分解素子10を加熱するためのヒータ41を接続しておけば、そのための電力を供給することができる。ヒータ41への上記電力の供給は、部分的であってもよい。多くの場合、自家発電の供給量はヒータ全体に要する電力の半分以下であることが多い。
【0065】
上記のガス分解素子10では、筒状MEA7の内面側の第1の電極層(アノード)においては、アノード側集電体11の電気抵抗を低くしながら、ここを通る気体の圧力損失を低くすることが重要である。また、第2の電極層(カソード)側においては、空気は円筒内を通らないが、空気と第2の電極層(カソード)との接触箇所を高密度化し、カソード側集電体12の低抵抗化するのが重要である。
【0066】
上記は、陰イオンである酸素イオンが固体電解質層1を移動する電気化学反応であるが、固体電解質層1に、たとえばバリウムジルコネート(BaZrO3)を用いてプロトンを第1の電極層(アノード)で発生させて固体電解質層1中を第2の電極層(カソード)へと移動させる反応も、本発明の望ましい一つの形態である。
【0067】
プロトン導電性の固体電解質層1を用いると、たとえばアンモニアを分解する場合、第1の電極層(アノード)でアンモニアを分解してプロトン、窒素分子および電子を生じさせて、プロトンを固体電解質層1を経て第2の電極層(カソード)へと移動させ、第2の電極層(カソード)において酸素と反応して水(H2 O)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいので固体電解質層中の移動速度は大きい。このため加熱温度を低くしながら実用レベルの分解容量を得ることができる。固体電解質層1の厚みも、強度を確保できる厚みにすることができる。
【0068】
図3は、中心導電棒11kと外部配線11eとの接続形態、および筒状MEA7と気体搬送路45との接続形態を示す図である。筒状MEA7の端には、フッ素樹脂製の管状継ぎ手30が嵌め合わされる。嵌め合わせは、管状継ぎ手30の本体部31から固体電解質層1へと延びる締結部31bの内面側に収納されたOリング33が、焼成体であるセラミックスの固体電解質層1の外面に当接された状態が維持されるように行う。このため、管状継ぎ手30の締結部31bは、外径がテーパ状に形成されており、そこにねじが切られ、そのねじに環状ねじ32が螺合される。環状ねじを外径が大きくなる方向へと螺合することで、締結部31bは、外面から締め付けられ、Oリング33による気密性を調節することができる。
【0069】
管状継ぎ手30の本体部31には、気密性を保ってその本体部31を貫通する導電貫通部37cが設けられ、気密性を保つために封止樹脂38等が塗られている。この導電貫通部37cは、円柱棒で、外部配線11eと確実な導電接続を行うためにナット39を螺合させるねじを切っておくのがよい。導電貫通部37cの管内先端には導電線37bが接合されており、この導電線37bの他端には接続板37aが接合されている。
接続板37aと、中心導電棒11kの先端部35との導電接続は、接続器具たとえばドライバを用いて、そのドライバを管状継ぎ手30の突き出し孔部31aを通して、ねじ34を螺合することにより行う。ドライバによるねじ34の締め付けによって、先端部35と接続板37aとの導電接続における電気抵抗(接触抵抗)をほとんどなくすことができる。
【0070】
また、カソード側集電体12のNiメッシュシート12aの端部の外周に、外部配線12eを周回させることで、外部への引き出しを行うことができる。第2の電極層(カソード)は、筒状MEA7の外面側に位置するので、アノード側集電体11から外部への引き出しほど困難ではない。
【0071】
気体搬送路45は、弾性変形可能な樹脂等の管路を用いるのがよい。上記管路の端部を、突き出し孔部31aの外周に嵌め合わせ、締結具47で締結することで、気密性のよい接続を得ることができる。
【0072】
図3における、アノード側集電体11と外部配線11eとの接続、および管状継ぎ手30と気体搬送路45との接続は、ともに非常に簡単かつ小型の構造で実現されている。また、上記の2種類の接続が、ヒータからの熱硫の主流部から外れた位置へと、中心導電棒11kおよびその付属品である先端部35によって離されている。このため、フッ素樹脂という普通の耐熱性樹脂または耐食性樹脂によって、長期間の繰り返し耐久性を確保することができる。また、中心導電棒11kを、多孔質金属体11sと小さい接触抵抗で導電接続することができる。
【0073】
<筒状MEAの製造方法の第1の実施形態>
図4〜図8に、筒状MEA7の製造方法の第1の実施形態を示す。図4は、第1の実施形態に係る筒状MEA7の製造方法に係るフローチャートである。また、図5〜図8の(a)〜(h)は、上記製造方法の各工程を示す図である。
【0074】
本実施形態では、ラバープレス成形法を用いて筒状MEAが製造される。ラバープレス成形法は、ゴム型内に粉体材料あるいは予備成形した粉体材料を充填し、外周から高い静水圧を加えて、均質な圧粉成形体を成形する手法である。
【0075】
本実施形態では、筒状の成形型部を備えるゴム型21が準備される(S101)。図5(a)に示すように、上記ゴム型21内には、円柱状の型部が形成されているとともに、中心部に、金属等の硬質材料から形成された丸棒状の中心型部22が挿入され、上記中心型部22の外周面と上記ゴム型21の内周面によって筒状の成形型部21aが形成される。本実施形態では、上記筒状の成形型部21a内に、固体電解質層1を構成する粉体材料が充填される(S102)。その後、ゴム型21の外周部に静水圧を作用させて、上記粉体材料を圧縮し、筒状の成形体1aが形成される(S103)。
【0076】
上記ゴム型21に作用する静水圧を除去すると、弾性によってゴム型21が圧縮前の形態に戻ろうとする。このとき、成形体1aも一種のスプリングバッグによって拡径する。本実施形態では、上記円筒状の成形体1aの拡径を利用して、上記ゴム型内にある上記圧縮成形体1a(第1の未焼成筒状部)の内周部と上記中心型部22の外周部との間に筒状の隙間を形成し、この筒状の隙間を第2の筒状成形型部23とする(S104)。なお、上記圧縮成形体(第1の未焼結筒状部)を上記棒状型部の外周面ら離間させるために、離型剤等を塗布しておくのが好ましい。
【0077】
次に、図6(c)に示すように、上記第2の筒状成形型部23に、内側に形成される第1の電極層2を構成する粉体材料が充填される(S105)。その後、図6(d)に示すように、上記粉体材料が充填されたゴム型21に、再度静水圧を作用させて、上記粉体材料を先に成形した第1の未焼成筒状部1aとともに圧縮成形することにより、第2の未焼成筒状部2aが形成される(S106)。
【0078】
上記工程によって、固体電解質層を構成する未焼成筒状部1aと、第1の電極層(アノード)を構成する第2の未焼成筒状部2aとが一体成形された筒状体7aが形成され、 図7(e)に示すように、上記ゴム型21内から取り出される(S107)。その後、図7(e)に示すように、上記筒状体7aの先端部をカットする加工が行われて、両端部が開口された未焼成筒状体7aが形成される。
【0079】
本実施形態では、次に、上記第1の電極層(アノード)の内周部に多孔質導電層11gを構成する銀ペースト塗布工程が行われる(S108)。
【0080】
塗布して乾燥(焼成)させた後に多孔質になる銀ペーストは市販されており、たとえば京都エレックス株式会社製のDD−1240などを用いることができる。銀ペースト塗布層11gを多孔質にすることにより、多くのアンモニア分子NH3 が、多孔質の気孔中に入って、上記アノード中の触媒に触れてアノード反応が生じやすくなる。
【0081】
ガス分解反応の効率を高めるため、上記銀ペースト塗布層11gの気孔率を、20〜80%に設定するのが好ましい。気孔率が20パーセント以下である場合、ガスを導電性ペースト塗布層内へ導くのが困難になり、効率を高めることができない。一方、気孔率が80%以上になると、充分な導電性を確保するのが困難であるとともに、塗布層の強度を確保できない。さらに、気孔率を40〜60%に設定するのがより好ましい。
【0082】
上記銀ペースト塗布層11gの厚みは、5〜300μmに設定することができる。5μm以下では、Niメッシュシート11aの全域を、銀ペースト塗布層11gに均一に接触させることができず、充分な導電性を確保するのが困難である。一方、300μm以上では、充分な気孔率を有するペースト塗布層を形成するのが困難となる。導電性と気孔率を確保するために、5〜100μmの厚みの銀ペースト塗布層11gを設けるのがより好ましい。
【0083】
上記銀ペースト塗布層11gを形成する手法は特に限定されることはない。上記未焼成筒状体7aを、銀ペーストを満たした浸漬層に漬けるディッピング法や、上記未焼成筒状体7a内に銀ペーストを噴射する塗布ノズルを挿入する手法等により、上記銀ペースト塗布層11gを形成することができる。
【0084】
また、銀ペースト塗布層11gを、多孔質に形成する手法も特に限定されることはない。上述した所要の気孔率を確保するために、所定温度で消失するバインダを所定量配合した銀ペーストを採用できる。また、バインダが消失する際の導電性ペースト塗布層の収縮を防止するために、昇華型のバインダを配合するのが好ましい。たとえば、ナフタレン系のバインダを配合した銀ペーストを採用するのが好ましい。上記銀ペースト塗布層11gは、所定温度に加熱することにより上記バインダが除去されて多孔質化され、さらに、温度を高めて銀粒子が焼成されることにより、多孔質状の銀ペースト塗布層11gが形成される。
【0085】
上記銀ペースト塗布層11gを設ける範囲も特に限定されることはないが、アノード2の全面に銀ペースト塗布層11gを設けるのが好ましい。銀ペースト塗布層11gをアノード2の全面に形成することにより、Niメッシュシートの一部が上記銀ペースト塗布層から離間した場合にも、アノード2における集電性能が低下することはなくなる。
【0086】
上記銀ペースト塗布層11gを設けた後、焼成炉において上記銀ペーストを多孔質化する温度で保持することにより銀ペースト内のバインダを除去して多孔質化し、さらに温度を高めて、上記第1の未焼成筒状部及び第2の未焼成筒状部が焼成される(S109)。上記銀ペーストを多孔質化するために約400℃の温度で約60分間保持された後、上記第1の未焼成筒状部及び第2の未焼成筒状部を焼成するために約800℃まで昇温させて焼成工程が行われる。これにより、図8(g)で示す筒状焼成体7bが形成される。
【0087】
本実施形態では、上記筒状焼成体7bの外周部に第2の電極層(カソード)5を別途形成する第2の電極層形成工程が行われる(S110)。上記第2の電極層(カソード)の形成方法は、特に限定されることはない。たとえば、カソードを構成する粉体材料を含むペースト等を塗布し、再度焼成することができる。これにより、筒状MEAが形成される。また、溶射等の手法によって上記第2の電極層を形成することもできる。
【0088】
上述した実施形態に係る筒状MEAの製造方法においては、固体電解質層1を構成する第1の未焼成筒状部1aと、内側の第1の電極層(アノード)2を構成する第2の未焼成筒状部2aとを、一つのゴム型21を用いて連続して行うことができる。このため、製造工数及び製造コストを削減することができる。
【0089】
また、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とが、大きな静水圧を作用させて一体的に積層形成することができる。また、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とが、一度の焼成工程において焼成される。このため、上記固体電解質層1と上記第1の電極層2とが密着した状態で焼成され、これらの間の導電性を充分に確保することができる。このため、上記固体電解質層と上記第1の電極層間の導電性の低下によって、性能が低下する恐れもない。
【0090】
上記第1の実施形態では、固体電解質層1を構成する第1の未焼成筒状部の内周部に、第1の電極層(アノード)2を構成する第2の未焼成筒状部2aを形成したが、上記固体電解質層を構成する未焼成筒状部1aの外周部に、第2の電極層(カソード)を構成する第2の未焼成筒状部を形成することもできる。
【0091】
この場合、第1の未焼成筒状部を成形した後に、上記ゴム型の静水圧を解除する際に、上記ゴム型の内周面と、上記第1の未焼成筒状部との間に隙間を形成し、この隙間を筒状型空間として、第2の未焼成筒状部を構成する粉体材料を充填することができる。また、上記ゴム型の内周面を上記第1の未焼結筒状部の外周面から離間させるために、ゴム型の内周面に離型剤を塗布しておくのが好ましい。なお、上述した実施形態では、固体電解質層を構成する未焼結筒状部を先に成形する例を示したが、第1の電極層(アノード)を構成する未焼結筒状部を先に成形して、その後、外周部に固体電解質層を構成する未焼結筒状部を成形することもできる。また、先に、第2の電極層(カソード)を構成する未焼結筒状部を成形し、その後、内周部に固体電解質層を構成する未焼結筒状部を成形することもできる。
【0092】
上記各未焼結筒状部を構成する粉体材料は、固体電解質層及び電極層を構成する材料に対応して選定される。
【0093】
上記固体電解質層1を構成する粉体材料として、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体酸化物1としては、酸素イオン導電性の、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いるのがよい。また、プロトン導電性のバリウムジルコネートを用いることもできる。上記各粉体材料は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持することにより焼成することができる。
【0094】
第1の電極層(アノード)2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体と、酸素イオン導電性のセラミックスとを主成分とする焼成体として形成できる。酸素イオン導電性のセラミックスとしては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。
【0095】
上記SSZを採用する場合、平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。焼成工程は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持することにより行うことができる。また、SSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とするのが好ましい。表面酸化された金属粒連鎖体と、SSZとの配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。
【0096】
上記金属粒連鎖体の金属は、ニッケル(Ni)またはNiに鉄(Fe)を含むものを採用するのが好ましい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。
【0097】
金属粒連鎖体は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。第1の電極層(アノード)2に含まれる金属粒連鎖体の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
【0098】
第2の電極層(カソード)5は、酸素イオン導電性のセラミックスを主成分とする焼成体から形成される。この場合の酸素イオン導電性のセラミックスとして、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いることができる。これら粉体材料も、上記と同様の条件で焼成することができる。
【0099】
<筒状MEAの製造方法に係る第2の実施形態>
図9から図11に、筒状MEA7の製造方法の第2の実施形態を示す。図9は、第2の実施形態に係る筒状MEA7の製造方法に係るフローチャートである。また、図10〜図11の(a)〜(f)は、上記製造方法の各工程を示す図である。
【0100】
第2の実施形態に係る製造方法は、犠牲型部を用いて筒状MEAを製造するものである。犠牲型部を用いて粉体を成形し、焼成前に上記型部を消失させることにより、複雑な形状や成形困難な形状を成形することが可能となる。通常、上記犠牲型部は、所定温度以上に加熱することにより昇華等する樹脂材料から形成されており、粉体を成形する際に用いられるバインダ樹脂等を用いて形成することができる。
【0101】
図10(a)に示すように、本実施形態では、筒状MEAの内部空間に対応した棒状犠牲型部42が採用される(S201)。上記棒状犠牲型部42は、ポリアセタール樹脂等の所定温度以上で昇華して消失する樹脂材料から形成することができる。
【0102】
上記棒状犠牲型部42の外周に、第1の電極層(アノード)2を構成する粉体材料を含むスラリーを所定厚みで塗布した後(S202)、乾燥させることにより(S203)、第1の未焼成筒状部2aが形成される。
【0103】
次に、図10(b)に示すように、上記第1の未焼成筒状部2aの外周に、固体電解質層1を構成する粉体材料を含むスラリーを塗布した後(S204)、乾燥させることにより(S205)、第2の未焼成筒状部1aが形成される。
【0104】
積層形成された上記第1の未焼成筒状部2a及び第2の未焼成筒状部1aを、上記棒状犠牲型部42とともに炉中で所定温度に加熱することにより、上記棒状犠牲型部42を消失させる犠牲型部消失工程が行われる(S206)。これにより、図10(c)で示すように、第1の未焼成筒状部2aと上記第2の未焼成筒状部1aとが一体成形された未焼結筒状体7aが形成される。
【0105】
その後、上記未焼成筒状部1a.2aを構成する粉体が焼成される温度まで加熱して、上記未焼成筒状部1a.2aを焼成し(S207)、図11(d)に示す固体電解質層1と第1の電極層(アノード)2とを備える焼成筒状体7bが形成される。
【0106】
次に、図11(e)に示すように、上記第1の実施形態と同様に、上記焼成筒状体7bの外周に第2の電極層(カソード)5を形成する第2の電極層形成工程(S208)が行われる。
【0107】
さらに、図11(f)に示すように、上記第1の電極層2の内面に導電層を構成する銀ペーストを塗布して(S209)、多孔質化することにより(S210)、筒状MEA7が形成される。
【0108】
第2の実施形態では、犠牲型部42の外周に筒状MEAを構成する材料を積層するだけで成形を行うことができるため、製造工程数が削減されるとともに、製造コストを低減できる。
【0109】
なお、本実施形態では、第1の未焼成筒状部及び上記第2の未焼成筒状部を、焼成粉体を含むスラリーを塗布することにより行ったが、上記第1の未焼成筒状部及び上記第2の未焼成筒状部に対応する金型に材料を充填する成形手法を用いることもできる。たとえば、粉体をバインダと混合溶融して射出する2色射出成形法等を採用することもできる。
【0110】
<筒状MEAの製造方法に係る第3の実施形態>
図12及び図13に、本願発明の第3の実施形態を示す。この実施形態も、所定の操作によって消失する犠牲型部を用いて行うものである。
【0111】
図12(a)に示すように、本実施形態では、筒状MEAを構成する粉体材料の焼成温度より高い耐熱温度を有する棒状部材42aと、この棒状部材42aの外周部に所定の厚みで形成された犠牲層42bとを備える棒状の中心型部42を用いて成形を行う。
【0112】
上記棒状部材42aは、耐熱性の高いセラミックス等によって形成することができる。また、上記犠牲層42bは、第2の実施形態において採用した犠牲型部を構成する樹脂材料を用いて形成することができる。
【0113】
図12(b)に示すように、上記中心型部42の外周部に、第1の電極層2を構成する粉体材料を含むスラリーを所定厚みで塗布して乾燥させることにより、第1の未焼成筒状部2aを形成する。
【0114】
また、図12(c)に示すように、上記第1の未焼成筒状部2aの外周部に、固体電解質層1を構成する粉体材料を含むスラリーを所定厚みで塗布して乾燥させることにより、第2の未焼成筒状部1aを形成する。
【0115】
本実施形態では、さらに、図12(d)に示すように、上記第2の未焼成筒状部1aの外周部に、第2の電極層を構成する粉体材料を含むスラリーを所定厚みで塗布して乾燥させることにより、第3の未焼成筒状部5aを形成する。
【0116】
その後、図13(e)に示すように、積層形成された上記各未焼成筒状部2a,1a,5aから構成される未焼結筒状体7aを、上記中心型部42が付属した状態で所定温度に加熱することにより、上記犠牲層42bを消失させる。この状態で、上記棒状部材42aと上記未焼結筒状部7aとの間に、上記犠牲層42bに対応する隙間43が形成されるため、上記棒状部材42を引き抜いて、上記未焼結筒状体7aを別途焼成することもできる。
【0117】
本実施形態では、図13(f)に示すように、上記各未焼成筒状部2a,1a,5aを上記棒状部材42aに保持させた状態で、さらに加熱し、上記各未焼成筒状部2a,1a,5aを焼成させる。これにより、焼成された3層2,1,5を備える焼成筒状体7bが形成される。
【0118】
その後、図13(g)に示すように、上記棒状部材42aが、焼成筒状体7bから抜き出されて、筒状MEA7が形成される。
【0119】
本実施形態では、固体電解質層1と、第1の電極層2及び第2の電極層5を構成する未焼成筒状部2a,1a,5aを、連続して一体形成することができる。また、各層を構成する上記未焼成筒部2a,1a,5aを備える未焼成筒状体7aを、一度の焼成工程において焼成することができる。このため、製造工数を削減できるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0120】
また、犠牲層42bを備える棒状型部42を採用しているため、上記各工程を、上記成形体を上記棒状部材42aを付属させた状態で行うことができる。このため、各工程におけるハンドリングを容易に行うことができる。さらに、長尺の筒状MEAを形成する場合、工程途中の歪みや破損を防止することができる。
【0121】
なお、図12及び図13においては、多孔質導電層を設ける工程は示さなかったが、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の手法で形成することができる。
【0122】
上述した実施形態は、本願発明をガス除害を目的としたガス分解素子の製造方法に適用したが、ガス除害を主目的としないガス分解素子や、電気化学反応装置の筒状MEAの製造方法に適用できる。たとえば、燃料電池等を構成する筒状MEAの製造方法にも用いることができる。
【0123】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本願発明に係る製造方法によって、ランニングコスト低く、小型であり、さらに高い性能を有するガス分解素子を、少ない製造工数及び低いコストで製造することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 固体電解質層
2 第1の電極層(アノード)
5 第2の電極層(カソード)
7 筒状MEA
1a 第1の未焼成筒状部
2a 第2の未焼成筒状部
7a 未焼成筒状体
7b 焼成筒状体
11g 銀ペースト塗布層(導電性ペースト塗布層)
【技術分野】
【0001】
本願発明は、筒状MEAの製造方法等に関する。詳しくは、ガス分解素子に用いて所定のガスを効率良く分解することができる筒状MEAの製造方法、これを備えて構成されるガス分解素子及び発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、アンモニアは農業や工業に不可欠の化合物であるがヒトには有害であるため、水中や大気中のアンモニアを分解する種々の方法が知られている。高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、アンモニア水を噴霧するとともに空気流と接触させて空気中にアンモニアを分離し、次亜臭素酸溶液又は硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また、上記方法と同じプロセスで空気中にアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法(特許文献2)や、アンモニア含有排水を、触媒を用いて、窒素と水に分解する方法が提案されている(特許文献3)。さらに、半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれることが多く、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除去する必要がある。この目的のために、半導体装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。一方、エネルギや薬品等の投入なしに安価なランニングコストで有害ガスを分解するために、リン酸燃料電池でアンモニアを分解する、半導体製造装置等における廃ガス処理の方法も提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開2003−45472号公報
【特許文献5】特許第3238086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような中和剤等の薬液を用いる方法、特許文献2に記載されているような燃焼させる方法、特許文献3に記載されているような触媒を用いた熱分解反応による方法により、アンモニアを分解することはできる。ところが、これらの方法では、薬品や外部エネルギ(燃料)を必要とし、さらには、触媒を定期的に交換する必要があり、ランニングコストが大きくなるという問題がある。
【0005】
また、装置が大掛かりとなり、既存の設備に付加的に設ける場合には、スペースを確保するのが困難である。また、リン酸型燃料電池を、化合物半導体製造の排気中のアンモニアの除去に用いる装置についても、電解質が液体であるため、空気側とアンモニア側との仕切りをコンパクトにできず、装置の小型化が難しいという問題があった。
【0006】
上記問題を解決するため、特許文献5に記載されているように、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を採用することができる。
【0007】
従来、上記筒状MEAは、固体電解質層を圧粉成形等によって成形して焼成し、その後に、燃料極を上記固体電解質層に積層成形して焼成し、さらに、空気極を種々の手法を用いて別途形成する必要があった。このため、製造工数が増加するとともに、製造コストが増加するという問題があった。
【0008】
本願発明は、固体電解質を用いた電気化学反応を利用することによって、ランニングコストを抑えながら大きな処理能力を得ることができるとともに、筒状MEAの製造工程及び製造コストを低減させることのできる、筒状MEAの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に記載した発明は、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)の製造方法であって、上記固体電解質層又は上記電極層の1つを構成する第1の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて成形する第1の成形工程と、上記第1の未焼成筒状部の内周部又は外周部に、上記固体電解質層又は上記電極層の他の1つを構成する第2の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて形成する第2の成形工程と、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程とを含んで構成される。
【0010】
本願発明に係る筒状MEAの製造方法においては、上記第1の成形工程と上記第2の成形工程とによって、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とが一体成形された未焼成筒状体が形成される。そして、その後に、この未焼成筒状体が一体として焼成される。
【0011】
すなわち、本願発明では、上記固体電解質層と、少なくとも一方の電極層が、一体成形され、一体的に焼成される。このため、これら部位を別途形成する場合に比べて製造工程数を減少させることができるとともに、製造コストを削減できる。
【0012】
また、互いに積層される固体電解質層と一方の電極層とを未焼成状態で一体成形し、その後に一体的に焼成することができる。このため、上記固体電解質層と上記一方の電極層とが密着して成形されることになり、これら固体電解質層と一方の電極層との間の良好な導電性が接合面全域において確保される。したがって、ガス分解能力の高い筒状MEAを形成することができる。
【0013】
請求項1に記載した製造工程に加えて、請求項2に記載した発明のように、上記固体電解質層と上記電極層の残りの1つを構成する第3の未焼成筒状部を所定の粉体材料を用いて積層形成する第3の成形工程を含み、上記焼成工程において、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部と上記第3の未焼成筒状部とを一度に焼成することもできる。これにより、固体電解質層とこれを挟むように形成される2つの電極層とを一度の焼成工程において焼成することが可能となり、工程数をさらに削減することができる。
【0014】
請求項3に記載した発明は、上記第1の成形工程及び上記第2の成形工程において、上記固体電解質層を構成する第1の未焼成筒状部と、この第1の未焼成筒状部の内側に形成される一方の電極層とを形成するとともに、これら未焼成筒状部を備える筒状体を焼成する上記焼成工程後に、上記固体電解質層の外周部に、他方の電極層を形成する電極層形成工程を含むものである。
【0015】
請求項3に記載した発明では、固体電解質層と一方の電極層を成形及び焼成した後、他方の電極層を別途形成するものである。上記他方の電極層を形成する手法は、特に限定されることはない。たとえば、他方の電極層形成材料を他の2層が焼成された筒状体に積層成形した後に、再度焼成することができる。また、他方の電極を焼成以外の手法で形成することもできる。たとえば、溶射等の手法を用いて形成することができる。
【0016】
請求項4に記載した発明は、上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層の表面に、多孔質導電層を形成する導電層形成工程を含むものである。
【0017】
第1の電極及び第2の電極の集電体を複数の部材で構成する場合、部材間の接触抵抗が大きいと、電極における電気化学反応を阻害し、ガス分解の効率が低下する。たとえば、第1の電極(アノード)の集電体として、多孔質金属体を、上記筒状MEAの内面側に挿入して、上記第1の電極と直接接触させる構成を採用する場合、これら多孔質金属体と第1の電極の間の接触面積や接触圧を大きくすることが困難であり、これら部材間の抵抗が増大するという問題があった。
【0018】
上記不都合を回避する手法として、金属メッシュシートを上記電極に接触状態で保持することにより、上記電極と集電体との接触抵抗を低減させることができる。たとえば、内側に形成された第1の電極層の内周面の全面に接触するように1枚の金属メッシュシートを配置することができる。また、上記金属メッシュシートの内側に多孔質金属体を挿入することによって、多孔質金属体内の樹枝状金属同士が押し合わされ、また金属メッシュシートと多孔質金属体間で互いに相手方の隙間に入り込んで相互に接触させられ、接触抵抗を低下させることができる。
【0019】
一方、上記第1の電極層の内面に対して、金属メッシュシートを全面均一に接触させるのは困難である。すなわち、第1の電極層の表面と上記金属メッシュシート間の接触圧力が異なったり、一部が第1の電極の表面から浮き上がることが多い。このような場合、第1の電極の表面において均一な集電を行うことができなくなり、第1の電極の全領域で均一な電気化学反応を生じさせることができない。このため、電気化学反応の効率が低下する。上記導電層を第1の電極層の表面に形成することにより、電極層と集電体との間の導電性を全域において確保することができる。また、上記導電層が多孔質であるため、各電極層に対するガスの接触を妨げることもない。
【0020】
上記多孔質導電層として、多孔質の導電性ペースト塗布層を設けることができる。たとえば、上記第1の電極の内周面に多孔質の導電性ペースト塗布層を設けることにより、上記第1の電極と上記多孔質金属体とが、上記多孔質の導電性ペースト塗布層及び金属メッシュシートを介して導通させられる。
【0021】
上記導電性ペースト塗布層を設けることにより、金属メッシュシートの表面の一部を上記導電性ペースト塗布層に埋め込むようにして、上記金属メッシュシートと上記第1の電極間を確実に導通させることができる。このため、これらの間の接触抵抗を大幅に低減させることができる。また、上記金属メッシュシートの全面を上記第1の電極に対して均一に接触させることができる。このため、上記第1の電極と上記金属性メッシュシート間の電気抵抗が部分的に増大することはない。また、上記導電性ペースト塗布層を、第1の電極の全面に塗布することにより、上記金属メッシュシートが上記導電性ペースト塗布層から離間した場合でも、第1の電極表面における集電を確保することが可能となる。このため、温度等の作用によって上記金属メッシュシートの一部が、上記導電性ペースト塗布層から離間した場合であっても、集電効果が低下することはない。しかも、上記導電性ペースト塗布層は多孔質であるため、上記第1の電極にガスが接触することを妨げることもない。したがって、上記第1の電極層の全領域において電気化学反応を均一に生じさせてガス分解反応の効率を大幅に向上させることが可能となり、気体分解の処理能力を増大させることができる。
【0022】
上記金属メッシュシートの形態は特に限定されることはない。たとえば、上記金属メッシュシートを、筒状に形成して、上記第1の電極を覆うように全面に配置することができる。
【0023】
また、上記金属メッシュシートの外観構成も特に限定されることはない。たとえば、織布、不織布、打ち抜きシート等を採用できる。柔軟性、孔径の均一性等を確保するには、織布を採用するのが好ましい。
【0024】
金属メッシュシートを構成する金属材料も特に限定されることはない。たとえば、Ni、Ni−Fe、Ni−Co、Ni−Cr、Ni−W等の材料から形成された金属メッシュシートを採用するのが好ましい。また、表層に銀メッキ層等が形成された金属メッシュシートを採用することもできる。また、触媒反応を期待する場合には、Ni−W等の材料から形成された金属メッシュシートを採用するのが好ましい。
【0025】
上記多孔質の導電性ペースト塗布層は、種々の導電性粒子を含むペーストから形成することができる。たとえば、上記多孔質の導電性ペースト塗布層を、銀粒子を含むペーストから形成することができる。銀粒子は導電性が高く、上記第1の電極の集電体としての電気抵抗を低下させて、ガス分解の処理能力を向上させることができる。また、安定性が良く、酸化することもほとんどない。
【0026】
上記銀ペースト以外の導電性ペーストを採用することもできる。たとえば、金粒子を含む導電性ペースト、プラチナ粒子を含む導電性ペースト等を採用できる。
【0027】
ガス分解反応の効率を高めるため、上記導電性ペースト塗布層の気孔率を、20〜80%に設定するのが好ましい。気孔率が20パーセント以下である場合、ガスを導電性ペースト塗布層内へ導くのが困難になり、効率を高めることができない。一方、気孔率が80%以上になると、充分な導電性を確保するのが困難であるとともに、塗布層の強度を確保できない。さらに、気孔率を40〜60%に設定するのがより好ましい。
【0028】
上記導電性ペースト塗布層の厚みは、5〜300μmに設定することができる。5μm以下では、金属メッシュシートを導電性ペースト塗布層に対して均一に接触させることができず、充分な導電性を確保するのが困難である。一方、300μm以上では、充分な気孔率を有する導電性ペースト塗布層を形成するのが困難となる。導電性と気孔率を確保するために、5〜100μmの厚みの導電性ペースト塗布層を設けるのがより好ましい。
【0029】
上記導電性ペースト塗布層を多孔質に形成する手法も特に限定されることはない。所要の気孔率を確保するために、所定温度で消失するバインダを所定量配合して導電性ペーストを構成できる。また、バインダが消失する際の導電性ペースト塗布層の収縮を防止するために、昇華型のバインダを配合するのが好ましい。たとえは、ナフタレン系のバインダを配合した導電性ペーストを採用するのが好ましい。上記導電性ペースト塗布層は、所定温度に加熱して上記バインダを除去して多孔質化され、さらに、温度を高めて導電性粒子が焼成されることにより、多孔質状の導電性ペースト塗布層が形成される。
【0030】
上記導電性ペースト塗布層を設ける形態も特に限定されることはない。たとえば、上記多孔質の導電性ペースト塗布層を、内側に形成された第1の電極層の全面に形成することができる。導電性ペースト塗布層を第1の電極層の全面に形成することにより、金属メッシュシートの一部が上記導電性ペースト塗布層から離間した場合にも、集電性能が低下することはなくなる。
【0031】
また、上記多孔質の導電性ペースト塗布層を所定のパターンで設けることもできる。たとえば、上記多孔質導電性ペースト塗布層が、上記金属メッシュシートに帯状又は格子状に対接するように形成することができる。上記パターンで形成することにより、高価な金属粒子を含む導電性ペーストを採用する場合に、コストを低減させることができる。
【0032】
上記導電層形成工程は、筒状MEAの製造工程のいずれの段階においても行うことができる。たとえば、上記未焼成筒状体に、導電性ペーストを積層塗布した後に、上記ペーストが多孔質化する温度に保持し、その後、温度を高めて未焼成筒状体を一体的に焼成することができる。また、請求項1又は請求項2に記載した筒状体が焼成された後に、導電性ペーストを塗布して別途多孔質化することもできる。
【0033】
上記未焼成成形体を形成する手法は特に限定されることはない。たとえば、請求項5に記載した発明のように、ラバープレス成形法を用いて成形を行う筒状MEAの製造方法を採用できる。すなわち、内部空間を埋める中心型部を設けた筒状の加圧ゴム型に、所定の粉体材料を充填して加圧することにより、第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、上記加圧圧縮力を解除することにより、上記加圧ゴム型及び上記第1の未焼成筒状部の内周部を拡径して、上記中心型部の外周部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程と、上記筒状型部に、所定の粉体材料を充填するとともに再加圧することにより、上記第2の未焼成筒状部を成形する上記第2の成形工程とを含んで、上記筒状MEAの製造方法を構成できる。
【0034】
ラバープレス成形法は、ゴム型内に粉体又は予備成形した圧粉体を充填し、その外周から高い静水圧を加えて、均質な圧縮成形体を形成する方法である。上記ゴム型は、圧縮過程において圧縮変形させられるとともに、圧縮力を解除すると弾性によってもとの形態に戻る。本請求項に記載した発明は、上記ゴム型の圧縮−復元の変形を利用して、筒状体EMAを成形するものである。
【0035】
請求項5に記載した発明では、まず、第1の未焼成筒状部を、ラバープレス成形の通常の手法によって形成する第1の成形工程が行われる。その後、静水圧を解除する際に、中心型部の周りで圧縮成形された未焼成筒状部を、ゴム型の内面に付着させるようにして内周部を拡径することにより、上記中心型部の外周部と第1の未焼成筒状部の内周部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程が行われる。そして、上記筒状型部内に、第2の未焼成筒状部を形成する粉体材料を充填して、再度静水圧を加えることにより、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを一体成形する。その後、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を一体的に焼成することにより、固体電解質層と一方の電極層とを備える筒状体を形成することができる。
【0036】
上記製造手法を採用することにより、固体電解質層と一方の電極層を連続的に形成することができるとともに、一度の焼成工程において焼成することが可能となる。このため、製造工程を削減できるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0037】
請求項6に記載した発明は、ラバープレス成形法を用いて成形を行う筒状MEAの製造方法であって、内部空間を埋める中心型部を設けた筒状の加圧ゴム型に、所定の粉体材料を充填して加圧することにより、第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、上記加圧力を解除することにより、上記加圧ゴム型を拡径して、上記加圧ゴム型内周部と上記第1の未焼成筒状部の外周部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程と、上記筒状型部に、所定の粉体材料を充填するとともに再加圧することにより、上記第2の未焼成筒状部を形成する上記第2の成形工程とを含んで構成される。
【0038】
請求項6に記載した発明は、第1の成形工程において成形された第1の未焼成筒状部の外周側に、第2の未焼成筒状部を形成するための筒状形成空間を形成するように構成したものである。この手法を採用することにより、請求項5に記載した発明と同様に、製造工程を削減できるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0039】
請求項7に記載した発明は、所定の処理を行うことにより消失させることができる棒状犠牲型部の外周部に、上記第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、上記第1の未焼成筒状部の外周部に、上記第2の未焼成筒状部を形成する第2の成形工程と、上記棒状犠牲型部を消失させる犠牲型部消失工程と、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程を含んで構成される。
【0040】
請求項7に記載した発明では、棒状の犠牲型部の外周部に、第1の未焼成筒状部と第2の未焼成筒状部とを連続した成形工程によって形成することができる。上記成形法は特に限定されることはない。上記犠牲型部の外周部に、第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部を構成する材料を、所定の厚みで順に塗布することにより、上記各工程を行うことができる。また、2色射出成形法等を利用して、上記第1の未焼成筒状部と第2の未焼成筒状部とを積層形成することもできる。
【0041】
上記犠牲型部は、所定の処理を施すことにより消失させることができるように構成される。たとえば、上記筒状部を構成する材料に配合されるバインダと同様の樹脂材料を用いて犠牲型部を形成し、焼成工程前に、上記バインダが昇華する温度に所定時間保持することにより、焼成工程前に消失させることができる。
【0042】
上記犠牲型部を採用することにより、第1の未焼成筒状部と第2の未焼成筒状部とを精度高く成形することが可能となる。また、連続した工程において2つの未焼成筒状部を形成できるとともに、一度の焼成工程においてこれら未焼成筒状部を一体的に焼成することができる。したがって、製造工程を削減できるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0043】
上記犠牲型部を用いた成形方法は、固体電解質層とこれを挟むように配置される2つの電極層の3層を一度に形成することもできる。すなわち、請求項8に記載した発明のように、所定の処理を行うことにより消失させることができる棒状犠牲型部の外周部に、上記第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、上記第1の未焼成筒状部の外周部に、上記第2の未焼成筒状部を形成する第2の成形工程と、上記第2の未焼成筒状部の外周部に、上記第3の未焼成筒状部を形成する第3の成形工程と、上記棒状犠牲型部を消失させる犠牲型部消失工程と、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部と上記第3の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程を含んで構成できる。
【0044】
請求項9に記載した発明は、請求項8に記載した発明において、上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層の表面に、多孔質導電層を形成する、導電層形成工程を含むものである。
【0045】
導電層形成工程は、上記固体電解質層及び電極層の成形工程と別途に行うことができる。また、上記固体電解質層及び上記電極層を構成する未焼成筒状体に積層して導電層形成材料を設け、上記犠牲型部消失工程において、上記導電層を多孔質化することもできる。
【0046】
上記第1の電極層及び上記第2の電極層を構成する材料は特に限定されることはない。たとえば、上記第1の電極、及び/又は、第2の電極を、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックスとを含む焼成体とすることができる。 金属粒連鎖体は、金属粒が連なってできた数珠状の細長い金属体をいう。Ni、Fe含有Ni、もしくはNi,Fe含有Niに微量Tiを含む金属とするのがよい。Niなどは表面酸化された状態では、その金属粒連鎖体の表面が酸化されており、中身(表層の内側の部分)は酸化されずに金属の導電性を保持している。
【0047】
このため、たとえば固体電解質層内を移動するイオンが陰イオンの場合(陽イオンの場合もある)、次のような作用効果が生じる。
(A1)金属粒連鎖体を第1の電極層(アノード)に含有させた場合、アノードにおいて、固体電解質層から移動してくる陰イオンと、アノード外部からアノードへと導かれる気体中のガス分子との化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ陰イオンを参加させてアノードでの化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、その化学反応の結果、生じる電子の導電性を、金属粒連鎖体の金属部分で確保することができる。この結果、アノードにおける電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。金属粒連鎖体を第1の電極(アノード)に含有させた場合、アノードにおいて、陽イオンたとえばプロトンを発生させて固体電解質層中をカソードへと陽イオンを移動させ、上記の電荷による促進作用を、同様に得ることができる。
ただし、金属粒連鎖体の酸化層については、使用前は焼成処理によって確実に形成されているが、使用中に還元反応によって酸化層がなくなることが多い。酸化層がなくなっても、上記の触媒作用は減ずることはあってもなくなることはない。とくにFeやTiを含有させたNiは、酸化層がなくても触媒作用は高い。
(A2)金属粒連鎖体を第2の電極層(カソード)に含有させた場合、カソードにおいて、カソード外部からカソードへと導かれる気体中のガス分子の化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ外部回路からの電子の導電性を向上させて、当該電子を参加させてカソードでの化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、当該分子から効率よく陰イオンを生じて、固体電解質層へと送り出すことができる。(A1)と同様に、(A2)の場合、固体電解質層中を移動してきた陽イオンと、外部回路を流れてきた電子と、第2の気体との電気化学反応を促進することができる。このため、上記アノードに含ませる場合と同様に、カソードにおける電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。どのような場合に、金属粒連鎖体をカソードに含ませるかは、分解対象のガスによって変わる。
(A3)金属粒連鎖体をアノードおよびカソードに含有させた場合は、上記(A1)および(A2)の効果を得ることができる。
【0048】
上記の電気化学反応は、イオンの固体電解質層を移動する速度または移動時間で律速される場合が多い。イオンの移動速度を大きくするために、上記のガス分解素子は、加熱機器たとえばヒータを備え、高温、たとえば600℃〜1000℃にするのが普通である。高温にすることで、イオン移動速度だけでなく、電極での電荷授受をともなう化学反応も促進される。
【0049】
固体電解質層を移動するイオンが陰イオンの場合は、上述のように、カソードでの化学反応によって発生し、供給される。カソードにおいて導入された流体中の分子と電子とが反応して陰イオンが生成する。生成した陰イオンは、固体電解質層中をアノードへと移動する。カソードでの反応に参加する電子は、アノードとカソードとを連絡する外部回路(蓄電器、電源、電力消費機器を含む)から入ってくる。固体電解質層を移動するイオンが陽イオンの場合は、アノードでの電気化学反応によって発生して固体電解質層中をカソードへと移動する。電子はアノードで発生して外部回路をカソードへと流れてカソードでの電気化学反応に参加する。上記電気化学反応は、燃料電池としての発電反応であってもよいし、または電気分解反応であってもよい。
【0050】
また、固体電解質が、酸素イオン導電性またはプロトン導電性を有する構成をとることができる。酸素イオン導電性の固体電解質を用いた場合、たとえばカソードで電子と酸素分子とを反応させて酸素イオンを生じさせ、これを固体電解質層を移動させてアノードにて所定の電気化学反応を起こさせることができる。この場合、酸素イオンの固体電解質層中の移動速度はプロトンと比べて大きくないので、実用レベルの分解容量を得るには、温度を十分高める、及び/又は固体電解質層の厚みを十分薄くする、などの対策が必要である。
一方、プロトン導電性の固体電解質は、バリウムジルコネート(BaZrO3)などが知られている。プロトン導電性の固体電解質を用いると、たとえばアノードでアンモニアを分解してプロトン、窒素分子および電子を生じさせて、プロトンを固体電解質層を経てカソードへと移動させ、カソードにおいて酸素と反応して水(H2O)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいので固体電解質層中の移動速度は大きいので、加熱温度を低くして実用レベルの分解容量を得ることができる。
【0051】
また、たとえば筒状MEAを用いてアンモニア分解を行うとき、内側をアノードとした場合、酸素イオン導電性の固体電解質では、水を筒状体の内側(アノード)で生成する反応となる。水は、温度が低い出口付近では水滴を形成して圧力損失の原因となる。これに対して、プロトン導電性の固体電解質を用いると、プロトンと酸素分子と電子とが、カソード(外側)で生成する。外側はほぼ開放されているので、水滴となって付着しても圧力損失を生じにくい。
【0052】
請求項13に記載した発明のように、分解対象のガスを燃料とし、ガス分解素子によって燃料電池を構成して発電を行うこともできる。
【0053】
分解の対象となるガスも特に限定されることはない。たとえば、上記のいずれかのガス分解素子を備え、第1の電極にアンモニアを含む気体を導入し、第2の電極に酸素分子を含む気体を導入することができる。これによって、第2の電極(カソード)で発生させた酸素イオンを第1の電極(アノード)に移動させて、第1の電極においてアンモニアと酸素イオンとを、金属粒連鎖体による触媒作用、およびイオンによる促進作用のもとで反応させて、さらに反応の結果生じる電子を速やかに移動させることができる。
【0054】
本発明に係るガス分解素子は、ガス除害だけでなく、燃料電池や、ガス分解を利用した独自の電気化学反応装置の分野で、装置の基礎となる電極等に用いられて、電気化学反応の効率向上、装置の小型化、低いランニングコスト等を得ることに貢献できる。
【発明の効果】
【0055】
本発明のガス分解素子の製造方法によって、ガス分解効率が高く、またランニングコストの低いガス分解装置を構成する筒状MEAを製造できるとともに、製造工程数及び製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)本願発明の実施の形態1におけるガス分解素子を示す縦断面図であり、(b)は、(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。
【図2】図1のガス分解素子の電気配線系統を示す図である。
【図3】筒状MEAに対する外部配線及び気体搬送路の接続形態を示す図である。
【図4】本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法のフローチャートである。
【図5】(a)(b)は、本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図6】(c)(d)は、本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図7】(e)(f)は、本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図8】(g)(h)は、本願発明の第1の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図9】本願発明の第2の実施形態に係る筒状MEAの製造方法のフローチャートである。
【図10】(a)(b)(c)は、本願発明の第2の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図11】(d)(e)(f)は、本願発明の第2の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図12】(a)(b)(c)(d)は、本願発明の第3の実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【図13】(e)(f)(g)は、本願発明の第3実施形態に係る筒状MEAの製造方法における各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本願発明の実施の形態を図を用いて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1に係るガス分解素子10の縦断面図である。また、図1(b)は、図1(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。なお、本実施形態では、特に、本願発明をアンモニアガスを分解するガス分解素子に適用した場合について説明する。
【0058】
ガス分解素子10は、円筒状の固体電解質層1の内面を覆うように第1の電極層(アノード)2が設けられるとともに、外面を覆うように第2の電極層(カソード)5が設けられた筒状MEA7(1,2,5)を備えて構成されている。第1の電極層(アノード)2は燃料極、また、第2の電極層(カソード)5は空気極と呼ばれることがある。本実施形態に係る上記筒状MEA7(1,2,5)は、図1に示すように、直円筒状に形成されている。筒状MEAの内径は、たとえば20mm程度であるが、適用する装置に応じて寸法等を設定できる。本実施形態のガス分解素子10では、円筒状の筒状MEA7の内筒を埋めるように、アノード側集電体11が配置されている。また、第2の電極層(カソード)の外面に巻き付くようにカソード側集電体12が配置されている。
【0059】
上記アノード側集電体11は、銀ペースト塗布層11gとNiメッシュシート11aと多孔質金属体11sと中心導電棒11kとを備えて構成されている。上記Niメッシュシート11aは、銀ペースト塗布層11gを介して、筒状MEA7の内面側の第1の電極層(アノード)に接触して、多孔質金属体11sから中心導電棒11kへと導電するように構成されている。多孔質金属体11sは、アンモニアガス等の気体の圧力損失を低減させるために、気孔率を高くできる金属メッキ体、たとえば、セルメット(登録商標:住友電気工業株式会社)を用いるのが好ましい。第1の電極層(アノード)とアノード側集電体11との間の電気抵抗を低減させるために、上記銀ペースト塗布層11gとNiメッシュシート11aとが配置されている。
【0060】
上記カソード側集電体12は、銀ペースト塗布配線12gとNiメッシュシート12aとを備えて構成されている。本実施形態では、Niメッシュシート12aが、筒状MEA7の外面に接触して、外部配線へと導電している。銀ペースト塗布配線12gは、第2の電極層(カソード)における酸素ガスを酸素イオンに分解するのを促進する触媒として作用する銀を含み、かつカソード側集電体12の電気抵抗を低くすることに寄与する。所定の性状の銀ペースト塗布配線12gは、酸素分子を通しながら銀粒子が第2の電極層(カソード)に接触して、第2の電極層(カソード)内に含まれる銀粒子と同等の触媒作用を発現する。しかも、第2の電極層(カソード)に含ませるより安価である。
【0061】
図2は、固体電解質層1が酸素イオン導電性である場合における、図1のガス分解素子10の電気配線系統を示す図である。アンモニアを含む気体は、気密性を厳格にした筒状MEA7の内筒、すなわちアノード側集電体11が配置されている空間に導入される。筒状MEA7を用いた場合、内面側に気体を通すことから、多孔質金属体11sが用いられる。圧力損失を低くする点から、上述のように、多孔質金属体11sとして、多孔質金属めっき体、たとえば、上述したセルメットを用いることができる。アンモニアを含む気体は、多孔質金属体11s、Niメッシュシート11a、及び多孔質の銀ペースト塗布層11gの空隙を通りながら、第1の電極層(アノード)と接触して、下記のアンモニア分解反応をする。
【0062】
酸素イオンO2-は、第2の電極層(カソード)での酸素ガス分解反応によって生じ、固体電解質層1を通って第1の電極層(アノード)に到達したものである。すなわち陰イオンである酸素イオンが固体電解質層1を移動する場合の電気化学反応である。
【0063】
第1の電極層(アノード)では、以下の反応が生じている。
(アノード反応):2NH3 +3O2-→N2 +3H2 O+6e-
より詳しくは、一部のアンモニアが、2NH3 →N2 +3H2 の反応を生じ、この3H2
が酸素イオン3O2-と反応して3H2 Oを生成する。第2の電極層(カソード)には空気、とくに酸素ガスが、スペースSを通るように導入され、第2の電極層(カソード)において酸素分子から分解した酸素イオンを第1の電極層(アノード)に向かって固体電解質層1へと送り出す。
【0064】
第1の電極層(カソード)では、以下の反応が生じている。
(カソード反応):O2 +4e- →2O2-
上記の電気化学反応の結果、電力が発生し、第1の電極層(アノード)と第2の電極層(カソード)との間に電位差を生じ、カソード側集電体12からアノード側集電体11へと電流Iが流れる。カソード側集電体12とアノード側集電体11との間に負荷、たとえばこのガス分解素子10を加熱するためのヒータ41を接続しておけば、そのための電力を供給することができる。ヒータ41への上記電力の供給は、部分的であってもよい。多くの場合、自家発電の供給量はヒータ全体に要する電力の半分以下であることが多い。
【0065】
上記のガス分解素子10では、筒状MEA7の内面側の第1の電極層(アノード)においては、アノード側集電体11の電気抵抗を低くしながら、ここを通る気体の圧力損失を低くすることが重要である。また、第2の電極層(カソード)側においては、空気は円筒内を通らないが、空気と第2の電極層(カソード)との接触箇所を高密度化し、カソード側集電体12の低抵抗化するのが重要である。
【0066】
上記は、陰イオンである酸素イオンが固体電解質層1を移動する電気化学反応であるが、固体電解質層1に、たとえばバリウムジルコネート(BaZrO3)を用いてプロトンを第1の電極層(アノード)で発生させて固体電解質層1中を第2の電極層(カソード)へと移動させる反応も、本発明の望ましい一つの形態である。
【0067】
プロトン導電性の固体電解質層1を用いると、たとえばアンモニアを分解する場合、第1の電極層(アノード)でアンモニアを分解してプロトン、窒素分子および電子を生じさせて、プロトンを固体電解質層1を経て第2の電極層(カソード)へと移動させ、第2の電極層(カソード)において酸素と反応して水(H2 O)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいので固体電解質層中の移動速度は大きい。このため加熱温度を低くしながら実用レベルの分解容量を得ることができる。固体電解質層1の厚みも、強度を確保できる厚みにすることができる。
【0068】
図3は、中心導電棒11kと外部配線11eとの接続形態、および筒状MEA7と気体搬送路45との接続形態を示す図である。筒状MEA7の端には、フッ素樹脂製の管状継ぎ手30が嵌め合わされる。嵌め合わせは、管状継ぎ手30の本体部31から固体電解質層1へと延びる締結部31bの内面側に収納されたOリング33が、焼成体であるセラミックスの固体電解質層1の外面に当接された状態が維持されるように行う。このため、管状継ぎ手30の締結部31bは、外径がテーパ状に形成されており、そこにねじが切られ、そのねじに環状ねじ32が螺合される。環状ねじを外径が大きくなる方向へと螺合することで、締結部31bは、外面から締め付けられ、Oリング33による気密性を調節することができる。
【0069】
管状継ぎ手30の本体部31には、気密性を保ってその本体部31を貫通する導電貫通部37cが設けられ、気密性を保つために封止樹脂38等が塗られている。この導電貫通部37cは、円柱棒で、外部配線11eと確実な導電接続を行うためにナット39を螺合させるねじを切っておくのがよい。導電貫通部37cの管内先端には導電線37bが接合されており、この導電線37bの他端には接続板37aが接合されている。
接続板37aと、中心導電棒11kの先端部35との導電接続は、接続器具たとえばドライバを用いて、そのドライバを管状継ぎ手30の突き出し孔部31aを通して、ねじ34を螺合することにより行う。ドライバによるねじ34の締め付けによって、先端部35と接続板37aとの導電接続における電気抵抗(接触抵抗)をほとんどなくすことができる。
【0070】
また、カソード側集電体12のNiメッシュシート12aの端部の外周に、外部配線12eを周回させることで、外部への引き出しを行うことができる。第2の電極層(カソード)は、筒状MEA7の外面側に位置するので、アノード側集電体11から外部への引き出しほど困難ではない。
【0071】
気体搬送路45は、弾性変形可能な樹脂等の管路を用いるのがよい。上記管路の端部を、突き出し孔部31aの外周に嵌め合わせ、締結具47で締結することで、気密性のよい接続を得ることができる。
【0072】
図3における、アノード側集電体11と外部配線11eとの接続、および管状継ぎ手30と気体搬送路45との接続は、ともに非常に簡単かつ小型の構造で実現されている。また、上記の2種類の接続が、ヒータからの熱硫の主流部から外れた位置へと、中心導電棒11kおよびその付属品である先端部35によって離されている。このため、フッ素樹脂という普通の耐熱性樹脂または耐食性樹脂によって、長期間の繰り返し耐久性を確保することができる。また、中心導電棒11kを、多孔質金属体11sと小さい接触抵抗で導電接続することができる。
【0073】
<筒状MEAの製造方法の第1の実施形態>
図4〜図8に、筒状MEA7の製造方法の第1の実施形態を示す。図4は、第1の実施形態に係る筒状MEA7の製造方法に係るフローチャートである。また、図5〜図8の(a)〜(h)は、上記製造方法の各工程を示す図である。
【0074】
本実施形態では、ラバープレス成形法を用いて筒状MEAが製造される。ラバープレス成形法は、ゴム型内に粉体材料あるいは予備成形した粉体材料を充填し、外周から高い静水圧を加えて、均質な圧粉成形体を成形する手法である。
【0075】
本実施形態では、筒状の成形型部を備えるゴム型21が準備される(S101)。図5(a)に示すように、上記ゴム型21内には、円柱状の型部が形成されているとともに、中心部に、金属等の硬質材料から形成された丸棒状の中心型部22が挿入され、上記中心型部22の外周面と上記ゴム型21の内周面によって筒状の成形型部21aが形成される。本実施形態では、上記筒状の成形型部21a内に、固体電解質層1を構成する粉体材料が充填される(S102)。その後、ゴム型21の外周部に静水圧を作用させて、上記粉体材料を圧縮し、筒状の成形体1aが形成される(S103)。
【0076】
上記ゴム型21に作用する静水圧を除去すると、弾性によってゴム型21が圧縮前の形態に戻ろうとする。このとき、成形体1aも一種のスプリングバッグによって拡径する。本実施形態では、上記円筒状の成形体1aの拡径を利用して、上記ゴム型内にある上記圧縮成形体1a(第1の未焼成筒状部)の内周部と上記中心型部22の外周部との間に筒状の隙間を形成し、この筒状の隙間を第2の筒状成形型部23とする(S104)。なお、上記圧縮成形体(第1の未焼結筒状部)を上記棒状型部の外周面ら離間させるために、離型剤等を塗布しておくのが好ましい。
【0077】
次に、図6(c)に示すように、上記第2の筒状成形型部23に、内側に形成される第1の電極層2を構成する粉体材料が充填される(S105)。その後、図6(d)に示すように、上記粉体材料が充填されたゴム型21に、再度静水圧を作用させて、上記粉体材料を先に成形した第1の未焼成筒状部1aとともに圧縮成形することにより、第2の未焼成筒状部2aが形成される(S106)。
【0078】
上記工程によって、固体電解質層を構成する未焼成筒状部1aと、第1の電極層(アノード)を構成する第2の未焼成筒状部2aとが一体成形された筒状体7aが形成され、 図7(e)に示すように、上記ゴム型21内から取り出される(S107)。その後、図7(e)に示すように、上記筒状体7aの先端部をカットする加工が行われて、両端部が開口された未焼成筒状体7aが形成される。
【0079】
本実施形態では、次に、上記第1の電極層(アノード)の内周部に多孔質導電層11gを構成する銀ペースト塗布工程が行われる(S108)。
【0080】
塗布して乾燥(焼成)させた後に多孔質になる銀ペーストは市販されており、たとえば京都エレックス株式会社製のDD−1240などを用いることができる。銀ペースト塗布層11gを多孔質にすることにより、多くのアンモニア分子NH3 が、多孔質の気孔中に入って、上記アノード中の触媒に触れてアノード反応が生じやすくなる。
【0081】
ガス分解反応の効率を高めるため、上記銀ペースト塗布層11gの気孔率を、20〜80%に設定するのが好ましい。気孔率が20パーセント以下である場合、ガスを導電性ペースト塗布層内へ導くのが困難になり、効率を高めることができない。一方、気孔率が80%以上になると、充分な導電性を確保するのが困難であるとともに、塗布層の強度を確保できない。さらに、気孔率を40〜60%に設定するのがより好ましい。
【0082】
上記銀ペースト塗布層11gの厚みは、5〜300μmに設定することができる。5μm以下では、Niメッシュシート11aの全域を、銀ペースト塗布層11gに均一に接触させることができず、充分な導電性を確保するのが困難である。一方、300μm以上では、充分な気孔率を有するペースト塗布層を形成するのが困難となる。導電性と気孔率を確保するために、5〜100μmの厚みの銀ペースト塗布層11gを設けるのがより好ましい。
【0083】
上記銀ペースト塗布層11gを形成する手法は特に限定されることはない。上記未焼成筒状体7aを、銀ペーストを満たした浸漬層に漬けるディッピング法や、上記未焼成筒状体7a内に銀ペーストを噴射する塗布ノズルを挿入する手法等により、上記銀ペースト塗布層11gを形成することができる。
【0084】
また、銀ペースト塗布層11gを、多孔質に形成する手法も特に限定されることはない。上述した所要の気孔率を確保するために、所定温度で消失するバインダを所定量配合した銀ペーストを採用できる。また、バインダが消失する際の導電性ペースト塗布層の収縮を防止するために、昇華型のバインダを配合するのが好ましい。たとえば、ナフタレン系のバインダを配合した銀ペーストを採用するのが好ましい。上記銀ペースト塗布層11gは、所定温度に加熱することにより上記バインダが除去されて多孔質化され、さらに、温度を高めて銀粒子が焼成されることにより、多孔質状の銀ペースト塗布層11gが形成される。
【0085】
上記銀ペースト塗布層11gを設ける範囲も特に限定されることはないが、アノード2の全面に銀ペースト塗布層11gを設けるのが好ましい。銀ペースト塗布層11gをアノード2の全面に形成することにより、Niメッシュシートの一部が上記銀ペースト塗布層から離間した場合にも、アノード2における集電性能が低下することはなくなる。
【0086】
上記銀ペースト塗布層11gを設けた後、焼成炉において上記銀ペーストを多孔質化する温度で保持することにより銀ペースト内のバインダを除去して多孔質化し、さらに温度を高めて、上記第1の未焼成筒状部及び第2の未焼成筒状部が焼成される(S109)。上記銀ペーストを多孔質化するために約400℃の温度で約60分間保持された後、上記第1の未焼成筒状部及び第2の未焼成筒状部を焼成するために約800℃まで昇温させて焼成工程が行われる。これにより、図8(g)で示す筒状焼成体7bが形成される。
【0087】
本実施形態では、上記筒状焼成体7bの外周部に第2の電極層(カソード)5を別途形成する第2の電極層形成工程が行われる(S110)。上記第2の電極層(カソード)の形成方法は、特に限定されることはない。たとえば、カソードを構成する粉体材料を含むペースト等を塗布し、再度焼成することができる。これにより、筒状MEAが形成される。また、溶射等の手法によって上記第2の電極層を形成することもできる。
【0088】
上述した実施形態に係る筒状MEAの製造方法においては、固体電解質層1を構成する第1の未焼成筒状部1aと、内側の第1の電極層(アノード)2を構成する第2の未焼成筒状部2aとを、一つのゴム型21を用いて連続して行うことができる。このため、製造工数及び製造コストを削減することができる。
【0089】
また、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とが、大きな静水圧を作用させて一体的に積層形成することができる。また、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とが、一度の焼成工程において焼成される。このため、上記固体電解質層1と上記第1の電極層2とが密着した状態で焼成され、これらの間の導電性を充分に確保することができる。このため、上記固体電解質層と上記第1の電極層間の導電性の低下によって、性能が低下する恐れもない。
【0090】
上記第1の実施形態では、固体電解質層1を構成する第1の未焼成筒状部の内周部に、第1の電極層(アノード)2を構成する第2の未焼成筒状部2aを形成したが、上記固体電解質層を構成する未焼成筒状部1aの外周部に、第2の電極層(カソード)を構成する第2の未焼成筒状部を形成することもできる。
【0091】
この場合、第1の未焼成筒状部を成形した後に、上記ゴム型の静水圧を解除する際に、上記ゴム型の内周面と、上記第1の未焼成筒状部との間に隙間を形成し、この隙間を筒状型空間として、第2の未焼成筒状部を構成する粉体材料を充填することができる。また、上記ゴム型の内周面を上記第1の未焼結筒状部の外周面から離間させるために、ゴム型の内周面に離型剤を塗布しておくのが好ましい。なお、上述した実施形態では、固体電解質層を構成する未焼結筒状部を先に成形する例を示したが、第1の電極層(アノード)を構成する未焼結筒状部を先に成形して、その後、外周部に固体電解質層を構成する未焼結筒状部を成形することもできる。また、先に、第2の電極層(カソード)を構成する未焼結筒状部を成形し、その後、内周部に固体電解質層を構成する未焼結筒状部を成形することもできる。
【0092】
上記各未焼結筒状部を構成する粉体材料は、固体電解質層及び電極層を構成する材料に対応して選定される。
【0093】
上記固体電解質層1を構成する粉体材料として、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体酸化物1としては、酸素イオン導電性の、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いるのがよい。また、プロトン導電性のバリウムジルコネートを用いることもできる。上記各粉体材料は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持することにより焼成することができる。
【0094】
第1の電極層(アノード)2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体と、酸素イオン導電性のセラミックスとを主成分とする焼成体として形成できる。酸素イオン導電性のセラミックスとしては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。
【0095】
上記SSZを採用する場合、平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。焼成工程は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持することにより行うことができる。また、SSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とするのが好ましい。表面酸化された金属粒連鎖体と、SSZとの配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。
【0096】
上記金属粒連鎖体の金属は、ニッケル(Ni)またはNiに鉄(Fe)を含むものを採用するのが好ましい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。
【0097】
金属粒連鎖体は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。第1の電極層(アノード)2に含まれる金属粒連鎖体の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
【0098】
第2の電極層(カソード)5は、酸素イオン導電性のセラミックスを主成分とする焼成体から形成される。この場合の酸素イオン導電性のセラミックスとして、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いることができる。これら粉体材料も、上記と同様の条件で焼成することができる。
【0099】
<筒状MEAの製造方法に係る第2の実施形態>
図9から図11に、筒状MEA7の製造方法の第2の実施形態を示す。図9は、第2の実施形態に係る筒状MEA7の製造方法に係るフローチャートである。また、図10〜図11の(a)〜(f)は、上記製造方法の各工程を示す図である。
【0100】
第2の実施形態に係る製造方法は、犠牲型部を用いて筒状MEAを製造するものである。犠牲型部を用いて粉体を成形し、焼成前に上記型部を消失させることにより、複雑な形状や成形困難な形状を成形することが可能となる。通常、上記犠牲型部は、所定温度以上に加熱することにより昇華等する樹脂材料から形成されており、粉体を成形する際に用いられるバインダ樹脂等を用いて形成することができる。
【0101】
図10(a)に示すように、本実施形態では、筒状MEAの内部空間に対応した棒状犠牲型部42が採用される(S201)。上記棒状犠牲型部42は、ポリアセタール樹脂等の所定温度以上で昇華して消失する樹脂材料から形成することができる。
【0102】
上記棒状犠牲型部42の外周に、第1の電極層(アノード)2を構成する粉体材料を含むスラリーを所定厚みで塗布した後(S202)、乾燥させることにより(S203)、第1の未焼成筒状部2aが形成される。
【0103】
次に、図10(b)に示すように、上記第1の未焼成筒状部2aの外周に、固体電解質層1を構成する粉体材料を含むスラリーを塗布した後(S204)、乾燥させることにより(S205)、第2の未焼成筒状部1aが形成される。
【0104】
積層形成された上記第1の未焼成筒状部2a及び第2の未焼成筒状部1aを、上記棒状犠牲型部42とともに炉中で所定温度に加熱することにより、上記棒状犠牲型部42を消失させる犠牲型部消失工程が行われる(S206)。これにより、図10(c)で示すように、第1の未焼成筒状部2aと上記第2の未焼成筒状部1aとが一体成形された未焼結筒状体7aが形成される。
【0105】
その後、上記未焼成筒状部1a.2aを構成する粉体が焼成される温度まで加熱して、上記未焼成筒状部1a.2aを焼成し(S207)、図11(d)に示す固体電解質層1と第1の電極層(アノード)2とを備える焼成筒状体7bが形成される。
【0106】
次に、図11(e)に示すように、上記第1の実施形態と同様に、上記焼成筒状体7bの外周に第2の電極層(カソード)5を形成する第2の電極層形成工程(S208)が行われる。
【0107】
さらに、図11(f)に示すように、上記第1の電極層2の内面に導電層を構成する銀ペーストを塗布して(S209)、多孔質化することにより(S210)、筒状MEA7が形成される。
【0108】
第2の実施形態では、犠牲型部42の外周に筒状MEAを構成する材料を積層するだけで成形を行うことができるため、製造工程数が削減されるとともに、製造コストを低減できる。
【0109】
なお、本実施形態では、第1の未焼成筒状部及び上記第2の未焼成筒状部を、焼成粉体を含むスラリーを塗布することにより行ったが、上記第1の未焼成筒状部及び上記第2の未焼成筒状部に対応する金型に材料を充填する成形手法を用いることもできる。たとえば、粉体をバインダと混合溶融して射出する2色射出成形法等を採用することもできる。
【0110】
<筒状MEAの製造方法に係る第3の実施形態>
図12及び図13に、本願発明の第3の実施形態を示す。この実施形態も、所定の操作によって消失する犠牲型部を用いて行うものである。
【0111】
図12(a)に示すように、本実施形態では、筒状MEAを構成する粉体材料の焼成温度より高い耐熱温度を有する棒状部材42aと、この棒状部材42aの外周部に所定の厚みで形成された犠牲層42bとを備える棒状の中心型部42を用いて成形を行う。
【0112】
上記棒状部材42aは、耐熱性の高いセラミックス等によって形成することができる。また、上記犠牲層42bは、第2の実施形態において採用した犠牲型部を構成する樹脂材料を用いて形成することができる。
【0113】
図12(b)に示すように、上記中心型部42の外周部に、第1の電極層2を構成する粉体材料を含むスラリーを所定厚みで塗布して乾燥させることにより、第1の未焼成筒状部2aを形成する。
【0114】
また、図12(c)に示すように、上記第1の未焼成筒状部2aの外周部に、固体電解質層1を構成する粉体材料を含むスラリーを所定厚みで塗布して乾燥させることにより、第2の未焼成筒状部1aを形成する。
【0115】
本実施形態では、さらに、図12(d)に示すように、上記第2の未焼成筒状部1aの外周部に、第2の電極層を構成する粉体材料を含むスラリーを所定厚みで塗布して乾燥させることにより、第3の未焼成筒状部5aを形成する。
【0116】
その後、図13(e)に示すように、積層形成された上記各未焼成筒状部2a,1a,5aから構成される未焼結筒状体7aを、上記中心型部42が付属した状態で所定温度に加熱することにより、上記犠牲層42bを消失させる。この状態で、上記棒状部材42aと上記未焼結筒状部7aとの間に、上記犠牲層42bに対応する隙間43が形成されるため、上記棒状部材42を引き抜いて、上記未焼結筒状体7aを別途焼成することもできる。
【0117】
本実施形態では、図13(f)に示すように、上記各未焼成筒状部2a,1a,5aを上記棒状部材42aに保持させた状態で、さらに加熱し、上記各未焼成筒状部2a,1a,5aを焼成させる。これにより、焼成された3層2,1,5を備える焼成筒状体7bが形成される。
【0118】
その後、図13(g)に示すように、上記棒状部材42aが、焼成筒状体7bから抜き出されて、筒状MEA7が形成される。
【0119】
本実施形態では、固体電解質層1と、第1の電極層2及び第2の電極層5を構成する未焼成筒状部2a,1a,5aを、連続して一体形成することができる。また、各層を構成する上記未焼成筒部2a,1a,5aを備える未焼成筒状体7aを、一度の焼成工程において焼成することができる。このため、製造工数を削減できるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0120】
また、犠牲層42bを備える棒状型部42を採用しているため、上記各工程を、上記成形体を上記棒状部材42aを付属させた状態で行うことができる。このため、各工程におけるハンドリングを容易に行うことができる。さらに、長尺の筒状MEAを形成する場合、工程途中の歪みや破損を防止することができる。
【0121】
なお、図12及び図13においては、多孔質導電層を設ける工程は示さなかったが、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の手法で形成することができる。
【0122】
上述した実施形態は、本願発明をガス除害を目的としたガス分解素子の製造方法に適用したが、ガス除害を主目的としないガス分解素子や、電気化学反応装置の筒状MEAの製造方法に適用できる。たとえば、燃料電池等を構成する筒状MEAの製造方法にも用いることができる。
【0123】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本願発明に係る製造方法によって、ランニングコスト低く、小型であり、さらに高い性能を有するガス分解素子を、少ない製造工数及び低いコストで製造することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 固体電解質層
2 第1の電極層(アノード)
5 第2の電極層(カソード)
7 筒状MEA
1a 第1の未焼成筒状部
2a 第2の未焼成筒状部
7a 未焼成筒状体
7b 焼成筒状体
11g 銀ペースト塗布層(導電性ペースト塗布層)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)の製造方法であって、
上記固体電解質層又は上記電極層の1つを構成する第1の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて成形する第1の成形工程と、
上記第1の未焼成筒状部の内周部又は外周部に、上記固体電解質層又は上記電極層の他の1つを構成する第2の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて形成する第2の成形工程と、
上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程とを含む、筒状MEAの製造方法。
【請求項2】
上記固体電解質層と上記電極層の残りの1つを構成する第3の未焼成筒状部を所定の粉体材料を用いて積層形成する第3の成形工程を含み、
上記焼成工程において、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部と上記第3の未焼成筒状部とを焼成する、請求項1に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項3】
上記第1の成形工程及び上記第2の成形工程において、上記固体電解質層を構成する第1の未焼成筒状部と、この第1の未焼成筒状部の内側に形成される一方の電極層とを形成するとともに、
これら未焼成筒状部を備える筒状体を焼成する上記焼成工程後に、上記固体電解質層の外周部に、他方の電極層を形成する電極層形成工程を含む、請求項1に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項4】
上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層の表面に、多孔質導電層を形成する、導電層形成工程を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項5】
ラバープレス成形法を用いて成形を行う筒状MEAの製造方法であって、
内部空間を埋める中心型部を設けた筒状の加圧ゴム型に、所定の粉体材料を充填して加圧することにより、第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、
上記加圧力を解除することにより、上記加圧ゴム型及び上記第1の未焼成筒状部の内周部を拡径して、上記中心型部の外周部と上記第1の未焼成筒状部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程と、
上記筒状型部に、所定の粉体材料を充填するとともに再加圧することにより、上記第2の未焼成筒状部を成形する上記第2の成形工程とを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項6】
ラバープレス成形法を用いて成形を行う筒状MEAの製造方法であって、
内部空間を埋める中心型部を設けた筒状の加圧ゴム型に、所定の粉体材料を充填して加圧することにより、第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、
上記加圧力を解除することにより、上記加圧ゴム型を拡径して、上記加圧ゴム型内周部と上記第1の未焼成筒状部の外周部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程と、
上記筒状型部に、所定の粉体材料を充填するとともに再加圧することにより、上記第2の未焼成筒状部を形成する上記第2の成形工程とを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項7】
所定の処理を行うことにより消失させることができる棒状犠牲型部の外周部に、上記第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、
上記第1の未焼成筒状部の外周部に、上記第2の未焼成筒状部を形成する第2の成形工程と、
上記棒状犠牲型部を消失させる犠牲型部消失工程と、
上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項8】
所定の処理を行うことにより消失させることができる棒状犠牲型部の外周部に、上記第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、
上記第1の未焼成筒状部の外周部に、上記第2の未焼成筒状部を形成する第2の成形工程と、
上記第2の未焼成筒状部の外周部に、上記第3の未焼成筒状部を形成する第3の成形工程と、
上記棒状犠牲型部を消失させる犠牲型部消失工程と、
上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部と上記第3の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程を含む、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項9】
上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層の表面に、多孔質導電層を形成する、導電層形成工程を含む、請求項8に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項10】
上記請求項1から上記請求項9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された筒状MEAを備えるガス分解素子。
【請求項11】
上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層が、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒子連鎖体と、イオン導電性セラミックとを含む焼成体であることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項12】
上記固体電解質が、酸素イオン導電性又はプロトン導電性を有することを特徴とする、請求項10又は請求項11のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項13】
請求項10又は請求項11のいずれかに記載したガス分解素子を備える、発電装置。
【請求項1】
筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)の製造方法であって、
上記固体電解質層又は上記電極層の1つを構成する第1の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて成形する第1の成形工程と、
上記第1の未焼成筒状部の内周部又は外周部に、上記固体電解質層又は上記電極層の他の1つを構成する第2の未焼成筒状部を、所定の粉体材料を用いて形成する第2の成形工程と、
上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程とを含む、筒状MEAの製造方法。
【請求項2】
上記固体電解質層と上記電極層の残りの1つを構成する第3の未焼成筒状部を所定の粉体材料を用いて積層形成する第3の成形工程を含み、
上記焼成工程において、上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部と上記第3の未焼成筒状部とを焼成する、請求項1に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項3】
上記第1の成形工程及び上記第2の成形工程において、上記固体電解質層を構成する第1の未焼成筒状部と、この第1の未焼成筒状部の内側に形成される一方の電極層とを形成するとともに、
これら未焼成筒状部を備える筒状体を焼成する上記焼成工程後に、上記固体電解質層の外周部に、他方の電極層を形成する電極層形成工程を含む、請求項1に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項4】
上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層の表面に、多孔質導電層を形成する、導電層形成工程を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項5】
ラバープレス成形法を用いて成形を行う筒状MEAの製造方法であって、
内部空間を埋める中心型部を設けた筒状の加圧ゴム型に、所定の粉体材料を充填して加圧することにより、第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、
上記加圧力を解除することにより、上記加圧ゴム型及び上記第1の未焼成筒状部の内周部を拡径して、上記中心型部の外周部と上記第1の未焼成筒状部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程と、
上記筒状型部に、所定の粉体材料を充填するとともに再加圧することにより、上記第2の未焼成筒状部を成形する上記第2の成形工程とを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項6】
ラバープレス成形法を用いて成形を行う筒状MEAの製造方法であって、
内部空間を埋める中心型部を設けた筒状の加圧ゴム型に、所定の粉体材料を充填して加圧することにより、第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、
上記加圧力を解除することにより、上記加圧ゴム型を拡径して、上記加圧ゴム型内周部と上記第1の未焼成筒状部の外周部との間に、上記第2の未焼成筒状部に対応する筒状型部を形成する型空間形成工程と、
上記筒状型部に、所定の粉体材料を充填するとともに再加圧することにより、上記第2の未焼成筒状部を形成する上記第2の成形工程とを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項7】
所定の処理を行うことにより消失させることができる棒状犠牲型部の外周部に、上記第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、
上記第1の未焼成筒状部の外周部に、上記第2の未焼成筒状部を形成する第2の成形工程と、
上記棒状犠牲型部を消失させる犠牲型部消失工程と、
上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項8】
所定の処理を行うことにより消失させることができる棒状犠牲型部の外周部に、上記第1の未焼成筒状部を形成する第1の成形工程と、
上記第1の未焼成筒状部の外周部に、上記第2の未焼成筒状部を形成する第2の成形工程と、
上記第2の未焼成筒状部の外周部に、上記第3の未焼成筒状部を形成する第3の成形工程と、
上記棒状犠牲型部を消失させる犠牲型部消失工程と、
上記第1の未焼成筒状部と上記第2の未焼成筒状部と上記第3の未焼成筒状部とを備える筒状体を焼成して筒状焼成体を形成する焼成工程を含む、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項9】
上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層の表面に、多孔質導電層を形成する、導電層形成工程を含む、請求項8に記載の筒状MEAの製造方法。
【請求項10】
上記請求項1から上記請求項9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された筒状MEAを備えるガス分解素子。
【請求項11】
上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層が、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒子連鎖体と、イオン導電性セラミックとを含む焼成体であることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項12】
上記固体電解質が、酸素イオン導電性又はプロトン導電性を有することを特徴とする、請求項10又は請求項11のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項13】
請求項10又は請求項11のいずれかに記載したガス分解素子を備える、発電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−109173(P2012−109173A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258499(P2010−258499)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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