説明

管状体及び管状部材の接合方法

【課題】 接合部の強度に優れ、空孔による悪影響が実質的に存在しない良好な接合状態を有する接合部を有する管状体を提供する。
【解決手段】 管状部材(A)と管状部材(B)とが接合した接合部を有する管状体であって、上記(A)と上記(B)の少なくとも一方が、溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有する積層管であり、上記積層管を構成する少なくとも1つの層が溶融加工性含フッ素樹脂からなり、上記管状体は、各層の厚みが式(1)〜(3)(1) T1 > T2(2) T1 < T2(3) T1 > T1(各式中、T1は、上記(A)と上記(B)との接合面における最内層の厚みを表し、T2は、上記接合部以外の部分における最内層の厚みを表し、T1は、上記接合面における最内層以外の層の厚みの合計を表し、T2は、上記接合部以外の部分における最内層以外の層の厚みの合計を表す。)で表される関係を有する管状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体及び管状部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業、化学工業分野、食品分野、薬品分野等において、耐薬品性、耐熱性、高いクリーン性を示すので、フッ素樹脂、とりわけテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕が装置や製造ラインに多く使用されている。
各種装置や製造ラインにおいて、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂成形品を接合する方法として、接合端面を加熱溶融した後に端面同士を所定の圧力で突き合せて溶着し冷却する方法、いわゆる突き合せ溶着方法が知られている。
【0003】
突き合せ溶着方法としては、樹脂製管状部品を互いに対向させ、その対向する端面をそれぞれ加熱溶融した後、両樹脂製管状部品を相対的に近づけて溶着する方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
突き合せ溶着方法においては、溶着部内側のビード発生を抑制する手段として、管端部に沿って外周から内周へ傾斜させるよう形状加工を施し、溶接時に放射熱によって外周から内周へと低下する温度勾配を管端部に生じさせる方法(例えば、特許文献2参照)、端部溶融の際に、押し付け時に溶着部位の内部支持体を膨張させる方法(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
【0005】
一方、近年、2層の溶融加工性含フッ素樹脂からなる積層管に対してもこのような突き合せ溶着を行うことが求められている。しかし、上述したような公知の方法は、単層構造の管状部材を接合する技術として提案されたものであり、積層管の溶着方法については一切言及されていない。
【特許文献1】特開平8−162264号公報
【特許文献2】特開平1−110128号公報
【特許文献3】特開平3−92335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、接合部の強度に優れ、空孔による悪影響が実質的に存在しない良好な接合状態を有する接合部を有する管状体、及び、上記管状体を得ることができる管状部材の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、管状部材(A)と管状部材(B)とが接合した接合部を有する管状体であって、上記管状部材(A)と上記管状部材(B)の少なくとも一方が、溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有する積層管であり、上記積層管を構成する少なくとも1つの層が溶融加工性含フッ素樹脂からなり、上記管状体は、各層の厚みが式(1)〜(3)
(1) T1 > T
(2) T1 < T
(3) T1 > T
(各式中、T1は、上記管状部材(A)と上記管状部材(B)との接合面における最内層の厚みを表し、T2は、上記接合部以外の部分における最内層の厚みを表し、T1は、上記接合面における最内層以外の層の厚みの合計を表し、T2は、上記接合部以外の部分における最内層以外の層の厚みの合計を表す。)で表される関係を有するものであることを特徴とする管状体である。
【0008】
本発明は、2つの管状部材の各端面を加熱溶融させた後に溶着することよりなる管状部材の接合方法であって、上記管状部材は、少なくとも一方が溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有する積層管であり、上記積層管を構成する少なくとも1つの層が溶融加工性含フッ素樹脂からなり、上記各端面は、いずれも外周部の面取りを行ったものであることを特徴とする管状部材の接合方法である。
本発明は、上記本発明の管状体を備えていることを特徴とする半導体製造装置である。
本発明は、上記本発明の管状体を備えていることを特徴とする半導体製造ラインへの薬液供給システムである。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の管状体は、管状部材(A)と管状部材(B)とが接合した接合部を有するものである。本発明の管状体において、上記管状部材(A)と上記管状部材(B)の少なくとも一方は、溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有する積層管である。本発明の管状体は、管状部材(A)及び管状部材(B)の両方が、上記積層管であるものであってもよいし、一方の管状部材が単層構造であるものであってもよい。上記積層管は、少なくとも1つの層が溶融加工性含フッ素樹脂からなるものである。上記溶融加工性樹脂及び上記溶融加工性樹脂については、後述する。
【0010】
上記管状体は、各層の厚みが式(1)〜(3)で表される関係を有するものである。
(1) T1 > T
(2) T1 < T
(3) T1 > T
上記式(1)〜(3)において、T1は接合面における内層の厚みを表し、T2は接合部以外の部分における内層の厚みを表し、T1は接合面における最内層以外の層の厚みの合計を表し、T2は接合部以外の部分における最内層以外の層の厚みの合計を表す。
【0011】
図1は、管状部材(A)及び管状部材(B)の両方が積層管である場合の模式図であり、本発明の管状体の接合部の形状を模式的に示したものである。図1中、上記T1、T2、T1、T2の各パラメータが示されている。これらのパラメータは、積層管の接合部近傍を長手方向に切断し、その断面を光学顕微鏡やルーペ等によって観察することによって測定することができる。
【0012】
本発明において、上記接合面とは、管状部材同士を接合させた時に接する面を意味し、上記接合部(溶着部ということもある。)とは、接合時に加熱融解した管状部材の端部に該当する部分全体を意味し、接合部以外の部分とは、接合時に加熱融解しなかった部分を意味する。なお、上記各厚みは、何れも軸方向に測定した値である。
【0013】
本発明の管状体における接合部は、接合部以外の部分とは最内層と最内層以外の層の厚みの合計の比が相違しており、最内層の厚みの比が大きいものである。接合によって形成される接合面の空孔は、積層界面と断面が接する部分に主に生じるものであることから、このような積層界面と断面が接する部分をできるだけ積層管の外表面に近い位置のものとすることによって、空孔によって生じる接合部の不良をなくしたものである。
【0014】
なお、積層管が3層以上である場合は、接合面の空孔は複数個生じうるものであるが、最内層と最内層以外の層の厚みの合計の比を上述した範囲のものとして、最内部の空孔を外表面に近い位置のものとすれば、その他の空孔も必然的に外表面に近いものとなるため、本発明においては上記パラメータを規定したものである。
【0015】
図1は、理想的な接合状態である場合を表す模式図である。図1においては界面ノッチが表れており、接合部形状が対象軸を有するから、この対称軸が接合面であることが明確である。しかし、現実には使用する管の種類等によっては、非対称である場合もあるため、以下に接合面の判断基準をより具体的に説明する。
【0016】
まず、断面の光学顕微鏡写真によって接合面が視覚的に明確に認識できる場合はこれによって接合面を判断する(判断基準1)。この場合は、接合面が曲線である場合も考えられるが、曲線に沿って長さを判断すればよい。
【0017】
光学顕微鏡によって接合部界面が明確に判断できない場合は、以下の基準に基づいて接合面を判断し、これらの基準による接合面についての上記各パラメータを算出する。
【0018】
まず、断面の光学顕微鏡写真において接合面は認識できないが、界面ノッチが明確に現れる場合がある(例えば、図2に示した接合部パターンAや図3に示した接合部パターンBの場合がこれに該当する)。ここで、界面ノッチとは、接合界面上に現れるビード頭部のくぼみのことである。管の内部及び外部の両側に界面ノッチが明確に現れた場合、これらを結んだ線を接合界面とする。(判断基準2)
【0019】
上記判断基準2において、接合面は、上記接合パターンAのように管の厚み方向に平行である場合もあれば、上記接合パターンBのように管の厚み方向に対して斜めである場合もあるが、斜めであっても上記基準に基づいて接合界面を判断する。
【0020】
接合面が視覚的に認識できず、かつ、内面、外面のうちいずれか一方又は両方において界面ノッチが明確に現れていない場合(例えば、図4に示した管外部に界面ノッチが現れていない場合がこれに該当する)、界面ノッチが現れていない面においては、ビードノッチ間の中間点を上述の界面ノッチとみなし、上記判断基準2と同様に接合面を判断する。なお、ビードノッチとは、接合部のビード両脇にある、ビードが立ち上がる基点のことである。(判断基準3)
【0021】
本発明においては、上述した判断基準1〜3に基づいて、接合面を判断し、これによってT1、T1、Tを測定することができる。例えば、図5に示した接合部パターンDのようにビードが一方に偏って形成された特殊な接合部パターンを有する場合であっても、内側外側のビードの幅をLbi、Lboと規定して、このビード幅の中心線上でT1、T1、Tを測定することができる。すなわち、上記判断基準3に基づいて判断することができる。
【0022】
また、接合部パターンAのように、接合部に段差が生じた場合は、いずれの側によってT1、T1、Tを判断するかがポイントとなるが、原則としてT1がより大きい値となる側で測定を行い、T1が同一である場合はT1の値としてより大きい値を採用する。
【0023】
更に、以下で説明するTは、段差が生じている場合にはいずれを基準線とするかによって値が異なるが、よりTが大きくなる面を基準面として測定する。
【0024】
なお、接合部パターンD(図5)は、ビードが一方に偏って形成されるものであるが、このような接合部パターンは、異なった種類の管を接合したために管状部材(A)と管状部材(B)とを構成する樹脂の粘度差が存在する場合に生じるものである。すなわち、積層管と射出成形等によって形成された継ぎ手等の単層管を溶着した場合、継ぎ手等に用いられる原料は一般にチューブ成形用原料に比べてMFRが高く、すなわち粘度が低いので、より粘度の低い原料からなる継ぎ手等の方向にビードが偏ってしまうことによって形成される接合部パターンである。
【0025】
突合せ接合によって得られた接合部を有する管状体は、図1に示すように、一般に接合部の管外側にビードを有するものである。接合状態によってはノッチを有する場合もある。上記接合部は、管内側はビードやノッチを有さないものであることが好ましく、管内側にビードを有する場合であっても、管内側の高さTが下記式(4)で表される関係を有するものであることが好ましい。上記管内側の高さTが、本範囲内にあれば、流動体移送材として使用しても、流動体の輸送において圧損やマイクロバブル発生等の支障が生じにくい。
(4) −0.3×T2 ≦ T < 0.7 ×T
上記式(4)中、T2は、上記管状部材の接合部以外の部分における肉厚(即ち、T2=T2+T2)を表し、正の符号は管内側にビードが形成されていることを表し、負の符号は管内側にノッチが形成されていることを表す。
上記Tは、より好ましくは0.5×T2未満、更に好ましくは0.1×T2未満であり、上記範囲内であれば、−0.2×T2以上、更に好ましくは−0.1×T2以上であってもよい。
本明細書において、管内側の高さTとは、接合部以外の部分における管内側表面を長手方向に延長した面から軸方向に測定したときの接合面における管内側の高さを意味する。
【0026】
本発明の管状体は、各層の厚みが下記式(5)で表される関係を有することが好ましい。
(5) 0 ≦ T1 < 0.2×T
(式中、T1及びT1は、上記定義と同じ。)
上記各層の厚みが本範囲内にあれば、接合部に空孔がないか存在しても外部表面近傍に存在するため、空孔の影響が小さい。よって、長期間使用時の流動体の漏れや接合部の劣化等の問題が生じない。
【0027】
上記観点から接合部の形状を限定したものであることから、本発明の管状体は、T1=0、すなわち、接合部においては外層の厚みが0となっているものであってもよい。この場合は、積層界面と断面とが接する部分が管外側に露出していることから、ビード部の空孔が存在しない点で好ましいものである。
【0028】
接合面においてT1=0である場合、接合部はT3=0(T3は、接合部における外層厚みを表す。)である部分の面積が接合部の管外側表面の面積の30%未満であることが好ましい。T3=0である部分は、外層が存在しない単層状態であるから、このような部分はできる限り少ないことが望ましく、上記管外側表面の面積の20%未満、更に好ましくは上記管外側表面の面積の10%未満であることがより好ましく、理想的には接合面においてのみT1=0を満たし、その他の点では実質的にすべての点でT3=0を満たさない状態であることが好ましい。
【0029】
本発明の管状体は、上述のように、管状部材(A)及び/又は管状部材(B)として、溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有し、少なくとも1つの層が溶融加工性含フッ素樹脂からなる積層管を有するものである。ゆえに、上記管状体は、強度、耐薬品性、耐熱性等に優れている。
上記管状体は、更に、積層管を構成する溶融加工性含フッ素樹脂を適宜選択することにより、薬液低透過性とすることもできる。
【0030】
上記積層管において、その層構成は上述の各層を有するものであれば特に限定されず、例えば、フッ素非含有溶融加工性樹脂からなる層と溶融加工性含フッ素樹脂からなる層との2層構造であってもよいし、フッ素非含有溶融加工性樹脂からなる層を2層有し溶融加工性含フッ素樹脂からなる層1層有する3層構造であってもよいし、フッ素非含有溶融加工性樹脂からなる層を1層有し溶融加工性含フッ素樹脂からなる層2層有する3層構造であってもよい。もちろん、溶融加工性含フッ素樹脂のみからなる積層管であってもよい。
上記積層管は、なかでも、最内層が溶融加工性含フッ素樹脂であるものが好ましい。
【0031】
上記積層管において、各層の厚みは、接合面が上述の式(1)〜(3)で表される関係を有するものであれば特に限定されず、充分な可視光透過度を発揮する程度に適宜調整することができるが、接合部以外の部分において、管の肉厚(T2)に対する外層厚み比率が5〜50%であることが好ましい。
上記接合部は、管の肉厚(T2)に対する長手方向長さの比率が、好ましくは0.6〜3.0、より好ましくは1.0〜1.9である。
【0032】
本発明において、上記溶融加工性樹脂とは溶融加工性を有するポリマーであり、溶融加工性フッ素樹脂もフッ素非含有溶融加工性樹脂も包含するものである。
上記フッ素非含有溶融加工性樹脂としては、特に限定されず、ナイロン樹脂、アラミド樹脂等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;エチレン/ビニルアルコール共重合体からなる樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリフェニレンオキサイド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル系樹脂;スチレン系樹脂;アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂〔ABS〕;塩化ビニル系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂〔PEEK〕;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂〔PES〕;ポリエーテルイミド樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂等が挙げられる。
本明細書において、溶融加工性とは、ASTM D−1238及びD−2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローを測定できるポリマーの特性を意味する。
【0033】
本発明において、上記溶融加工性含フッ素樹脂とは、溶融加工性を有し炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一つがフッ素原子に置換されてなるポリマーである。
【0034】
上記溶融加工性含フッ素樹脂としては、特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン〔TFE〕共重合体、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕共重合体、フッ化ビニル重合体、ビニリデンフルオライド重合体等が挙げられるが、なかでも、耐蝕性と加工性の点で、TFE共重合体であることが好ましく、ガスバリア性、薬液低透過性等の点で、CTFE共重合体であることが好ましい。
【0035】
上記TFE共重合体は、テトラフルオロエチレン〔TFE〕と、TFE以外のフルオロオレフィン及び/又はフッ素非含有エチレン性モノマーとを共重合して得られるものである。
【0036】
上記TFE以外のフルオロオレフィンとしては特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、
【0037】
【化1】

【0038】
等のパーフルオロエチレン性モノマー;ビニリデンフルオライド〔VdF〕、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン等の水素含有フルオロエチレン性モノマー等の塩素含有フルオロエチレン性モノマー等が挙げられる。
上記PAVEとしては、得られる樹脂の耐クラック性やコストの面からパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等を好適に用いることができる。
上記TFE以外のフルオロオレフィンは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記フッ素非含有エチレン性モノマーとしては、特に限定されず、例えば、エチレン〔Et〕、プロピレン、ブテン、ペンテン等の炭素数2〜10のα−オレフィンモノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキル基が炭素数1〜20のアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
上記フッ素非含有エチレン性モノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
上記TFE共重合体としては、耐蝕性、耐薬品性に特に優れ、可視光透過度が高い点で、TFE/PAVE共重合体〔PFA〕、TFE/HFP共重合体〔FEP〕、Et/TFE共重合体、又は、TFE/VdF共重合体であることが好ましく、耐熱性に優れる点で、PFAであることがより好ましい。
上述のTFE共重合体は、流動体移送管として使用する場合であっても、内部の流動体を汚染せず、雑菌が繁殖しにくい点で、積層管の内層として好ましく使用することができる。
【0041】
上記CTFE共重合体は、2元共重合体であってもよいし3元以上の共重合体であってもよく、例えば、2元共重合体としては、CTFE/TFE共重合体、CTFE/PAVE共重合体、CTFE/VdF共重合体、CTFE/HFP共重合体、CTFE/Et共重合体等が挙げられ、3元以上の共重合体としては、CTFE/TFE/HFP共重合体、CTFE/TFE/VdF共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、CTFE/TFE/HFP/PAVE共重合体、CTFE/TFE/VdF/PAVE共重合体等が挙げられるが、積層管の外層とする場合、少なくともクロロトリフルオロエチレン単位〔CTFE単位〕、テトラフルオロエチレン単位〔TFE単位〕、並びに、CTFE及びTFEと共重合可能な単量体〔α〕に由来する単量体〔α〕単位を構成要素とするものであることが好ましい。
【0042】
本明細書において、上記「CTFE単位」及び「TFE単位」は、CTFE共重合体の分子構造上、それぞれ、CTFEに由来する部分〔−CFCl−CF−〕、TFEに由来する部分〔−CF−CF−〕であり、上記「単量体〔α〕単位」は、同様に、CTFE共重合体の分子構造上、単量体〔α〕が付加してなる部分である。
【0043】
上記単量体〔α〕としては、CTFE及びTFEと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、例えば、国際公開第2005−100420号パンフレットに記載の単量体が挙げられるが、なかでも、Et、VdF、PAVE、及び、一般式(I)CX=CX(CF(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは、1〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体が好ましく、PAVEがより好ましい。
【0044】
上記CTFE共重合体は、好ましくは、上記単量体〔α〕単位が0.1〜10モル%であり、CTFE単位及び上記TFE単位が合計で90〜99.9モル%である。上記CTFE共重合体は、TFEを必須単量体とし、上記単量体〔α〕単位を本範囲内とすることにより、耐熱性、成形性、耐ストレスクラック性、ガスバリア性、耐薬品性、液体低透過性を向上することができる。
上記単量体〔α〕がPAVEである場合、上記単量体〔α〕単位のより好ましい下限は0.5モル%、より好ましい上限は5モル%、更に好ましい上限は3モル%である。
上記CTFE共重合体における各単量体単位の割合は、官能基含有エチレン性単量体単位の種類により19F−NMR分析、赤外分光光度計〔IR〕、元素分析、蛍光X線分析を適宜組み合わせて行うことにより得られる値である。
【0045】
上記溶融加工性含フッ素樹脂は、耐薬品性の点で、−COF、−CHOH、−CONH等の不安定末端が残存していないことが好ましい。
上記溶融加工性含フッ素樹脂は、層間接着性を向上させる目的で、国際公開第2005−100420号パンフレット記載の官能基含有エチレン性単量体を共単量体として重合したものであってもよい。
【0046】
上記溶融加工性含フッ素樹脂は、融点が一般に200〜380℃である。
本発明における積層管は、この融点範囲において、上記最内層における溶融加工性樹脂と上記最内層上に設けられた層における溶融加工性樹脂との融点の差が15℃以上であるものであってもよいし、上記融点の差が40℃以上、80℃未満であるものであってもよい。
従来、本融点範囲のような各層の融点差が大きい積層管は、接合時に端部に加熱すると、融解状態が不均一になり接合部の肉厚を均一に保てない問題や、得られる管状体の接合部に空孔等の不良が生じる問題があったが、本発明の管状体は、融点差が大きい積層管を接合した接合部を有するものであるにも関わらず、これらの問題がない。
本明細書において、上記融点は、示差走査熱測定計(機器名RDC220、セイコー電子社製)を用いて、昇温速度10℃/分で昇温させたときに得られる融解熱曲線のピーク温度として求めたものである。
【0047】
本発明において、積層管は、上述の溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有するものであればよいが、なかでも、溶融加工性含フッ素樹脂からなる層を2層有するものが好ましい。
上記積層管は、薬液低透過性、視認性等の点で、内層がPFAであり外層が上記CTFE共重合体であるもの、内層がPFAであり外層がETFEであるもの等が好ましく、また、薬液低透過性、視認性、接着性等の点で、内層がPFAであり外層が上記CTFE共重合体であるものがより好ましい。
【0048】
本発明の管状体は、管状部材(A)及び管状部材(B)の一方が単層構造の管状部材である場合、該単層構造の管状部材としては、溶融加工性含フッ素樹脂からなるものが好ましく、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕であることがより好ましい。上記単層管としては、射出成形等によって形成された継ぎ手を挙げることができる。
特に、積層管が内層がPFAであり外層がCTFE共重合体であるものである場合、単層構造の管状体は、PFAからなるものであることが好ましい。
【0049】
上記積層管における溶融加工性含フッ素樹脂からなる層や単層管は、使用薬液に溶出しない限り着色剤等の添加剤を含むものであってもよい。
【0050】
本発明の管状体は、上述したように、接合部の強度に優れている。
上記管状体は、例えば、接合部における管状部材(A)と管状部材(B)との破裂圧力が、一般に2.0MPa以上、好ましくは2.5MPa以上とすることができる。上記管状体は、本破裂圧力が上記範囲内にあるので、接合部の強度に優れている。
上記破裂圧力は、T−300N TEST PUMP(キョーワ社製)を用いて、30cm長さのサンプルに対し、25℃の水を用いて0.1MPa/minの昇圧速度で継続的に加圧を行い、管が破裂した時の最大応力を測定したものである。
【0051】
本発明の管状体は、接合部における薬液透過性を低くすることができ、例えば接合部における35%塩酸透過係数[(g・cm)/(cm・秒)]を2.0以下にすることもできるし、1.0以下にすることもできる。
上記接合部における35%塩酸透過係数は、国際公開第2005−100420号パンフレットに記載の方法で測定したものである。
【0052】
本発明の管状体は、例えば、管状部材(A)及び管状部材(B)の端面の外周部を面取りした後、突き合わせ溶着させることにより得ることができる。すなわち、本発明の管状体は、接合前の各管状部材の端部形状を予めコントロールした上で接合することによって得ることができるものである。
【0053】
本発明の管状部材の接合方法は、2つの管状部材の各端面を加熱溶融させた後に溶着することよりなるものであり、上記積層管の端面は、上記加熱溶融を行う前に予め外周部の面取りを行ったものであるものである。
本発明の接合方法において、外周部の面取りを加熱溶融前に行うことにより、管外側に適度な大きさのビードがあり、管内側のビードが小さいか又は無く、接合部の強度が高い管状体を得ることができる。
【0054】
上記外周部の面取りは、端部の外側表面を切削等の加工によって、端部がテーパー状になるようにして行うことができる。
上記外周部の面取りは、管状部材の端部における切削長さxと管状部材の肉厚(T2)の比が、好ましくは0.2〜1.0、より好ましくは0.5〜0.8 となるよう行う。
本明細書において、上記切削長さxとは、面取り後における端部の管外側から面取り前の端部まで距離を長手方向に測定した値である。
上記外周部の面取りは、図6に示すように端部の管内側が尖形となるよう切削してもよいし、図7に示すように端部の内層部分が尖形となるよう切削してもよい。
上記外周部の面取りは、内層部分が尖形となるよう切削する場合、管内側から軸方向に測定したテーパーの先端部分の高さαが、好ましくは内層厚みT2の10〜100%、より好ましくは内層厚みT2の20〜80%となるよう行うことができる。
上記外周部の面取りは、切削角度θ(°)が、0<θ<70となるよう行うことが好ましく、15<θ<65であることがより好ましい。
上記切削角度θとは、図6及び図7に示すように、積層管軸方向と外周部切削面との角度を意味する。
【0055】
本発明の接合方法において、上記積層管の端面は、更に内周部の面取りを行ったものであることが好ましい。上記接合方法において、外周部及び内周部の両方で面取りを行うと、管内側にビードがないか、又は、管内側の高さTが上述の式(4)−0.3×T2≦T<0.7×T2(T2は、上記定義と同じ。)の関係を満たすものとすることができる点で好ましい。
上記内周部の面取りは、端部の管内側を切削して、端面がテーパー状になるようにして行うことができる。
上記内周部の面取りは、管状部材の端部における切削長さyと管状部材の肉厚T2の比が、好ましくは0.05〜1.0、より好ましくは0.1〜0.8となるよう行う。
本明細書において、上記切削長さyとは、面取り後における端部の管内側から面取り前の端部まで距離を長手方向に測定した値である。
上記内周部の面取りは、管内側から軸方向に測定したテーパーの先端部分の高さαが、好ましくは内層厚みT2の10〜100%、より好ましくは内層厚みT2の20〜80%となるよう行うことができる(図8参照。)。
上記内周部の面取りは、切削角度θ(°)が、0<θ<45となるよう行うことが好ましく、5<θ<30であることがより好ましい。
上記切削角度θとは、図8に示すように、積層管軸方向と内周部切削面との角度を意味する。
【0056】
本発明の接合方法において、外周部と内周部の両方を面取りする場合、上記切削角度θ(°)が20<θ<70であり且つ上記切削角度θ(°)が0<θ<30であることが好ましく、上記切削角度θ(°)が30<θ<65であり且つ上記切削角度θ(°)が5<θ<25であることがより好ましい。
【0057】
本発明の接合方法において、加熱溶融は、使用する管状部材の種類に応じて条件を適宜選択して行うことができ、一般に端部を320〜400℃の温度に加熱して行うことができる。
上記加熱溶融は、加熱時間30〜100秒で行うことが好ましい。
【0058】
本発明の接合方法において、加熱溶融後における溶着は、使用する管状部材の種類に応じて適宜条件を設定することができ、特に限定されないが、押付け距離が一般に1.2〜3.5mmであり、押付け速度が一般に400〜3000Hzである。
本明細書において、上記押付け距離とは、次のように説明される距離である。
まず管状部材の加熱溶融前の段階で、チューブ端面どうしが密接するように溶着装置のクランプに固定する。この位置を原点とする。次にクランプの片方が水平方向に待避するように移動してできた端面間スペースの中心に加熱板がセットされ、管状部材の端面の加熱溶融を開始する。所定の加熱時間が経過した後に、先述の加熱板が管状部材の下方に待避する。その直後に速やかにクランプが原点方向に水平移動して溶融端面同士が押し付けられる。このとき、前述の原点位置を通り越して余分に押し付けることで確実に溶着部位が形成されるが、この原点を余分に通り越す距離を押し付け距離とする。
上記押付け速度は、各管状部材の端面を突き当てる際の速度を意味する。
【0059】
上述したような特定の形状の接合部を得るためには、特に押し付け距離が極めて重要であり、端面の形状を考慮した上で、接合における押し付け距離を設定することによって、接合部の形状を制御することができる。
【0060】
本発明の接合方法は、上述のように、管状部材を加熱溶融して溶着する前に予めその端部の外周部を面取りするものであるので、得られる管状体は、上述の本発明の管状体と同様に、接合部のビードが適度なサイズであり、接合部の強度が高い。また、本接合方法により得られる管状体は、上述の本発明の管状体と同様に、積層管側の接合部において内層厚みが大きく外層厚みが極めて薄いので、一般に空孔が生じていない。更に、上記接合方法は、管状部材として積層管同士を接合するものであっても、得られる管状体において、各積層管の外層及び内層の界面と接合面との界面Xを1点にすることができるので、空孔が生じない。
【0061】
本発明の接合方法において、2つの管状部材のうち少なくとも一方は、溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有する積層管であり、上記積層管を構成する少なくとも1つの層が溶融加工性含フッ素樹脂からなるものである。
上記積層管、溶融加工性樹脂及び溶融加工性含フッ素樹脂は、それぞれ本発明の管状体において説明したものと同様の構造、組成及び物性を有するものである。
上記接合方法における積層管は、融点範囲が上述の範囲内にある溶融加工性樹脂層を有することができ、内層における溶融加工性樹脂と外層における溶融加工性樹脂との融点の差が15℃以上であるものであってもよいし、上記融点の差が40℃以上、80℃未満であるものであってもよい。
【0062】
上記接合方法における積層管は、薬液低透過性、視認性等の点で、内層がPFAであり、外層が上述のCTFE共重合体であることが好ましい。
これらの樹脂を積層させた積層管は、PFAの融点は一般に300℃程度、CTFE共重合体の融点は250℃程度であり各層の融点差が大きいので、端面を均一に加熱すると溶融状態が不均一となり、溶着しても溶着部位の肉厚が不均一となる、溶着界面に空孔が生じる等の問題がある。この問題を解消するため、外層を剥離してから溶着する方法も考えられるが、層間接着性が大きい積層管は、外層を剥離すること自体が困難であり、かつ剥離した部位において外層によるバリア性等の機能が損失したり機械強度が低下してしまう問題があった。このように、単層構造の管状部材同士の溶着では生じなかった問題が積層管の溶着において生じるが、適切な溶着方法は未だに見出されていなかった。
一方、本発明の管状体の接合方法は、各層の融点差が大きい積層管であっても、容易に溶着し、接合部の強度に優れた管状体を得ることができる。
即ち、本発明の接合方法では、積層管同士又は積層管と単層構造を有する管との溶着において、得られる接合部界面の大部分を最内層が占める構造となるよう各管の端面を切削する等して制御することにより強く安定した接合強度の管状部材を得ることができる。更に、本効果は、管の各層を構成する樹脂間の接着性や相溶性が乏しい組み合わせであっても、最内層を構成する材料種を統一し上記切削を行うことにより得ることができる。
【0063】
本発明の接合方法において、一方の管状部材が上述の積層管であれば、他方の管状部材は、積層管であってもよいし、単層構造を有するものであってもよい。
上記他方の管状部材としての積層管は、溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有し少なくとも1つの層が溶融加工性含フッ素樹脂からなるものであれば特に限定されず、上述の積層管であってもよい。上記接合方法において、2つの管状部材は同種の積層管であってもよい。
【0064】
上記単層構造を有する管状部材としては、特に限定されないが、上述の溶融加工性含フッ素樹脂からなるものが好ましく、PFAからなるものがより好ましい。
【0065】
本発明の管状体及び本発明の接合方法から得られる管状体(以下、これらの管状体を「本発明における管状体」と総称する。)は、例えば、各種流動体の移送部材として好適に使用することができる。
本発明における管状体は、半導体製造装置の部材、半導体製造ラインにおける薬液供給システム等、各種工業製品の製造装置や製造ラインにおけるチューブ又はホース、自動車燃料用チューブ若しくは自動車燃料用ホース等の燃料用チューブ又は燃料用ホース、溶剤用チューブ又は溶剤用ホース、塗料用チューブ又は塗料用ホース、自動車のラジエーターホースやブレーキホース、エアコンホース、飲食物用チューブ又は飲食物用ホース等として使用することができる。
上述の本発明の管状体を備えている半導体製造装置及び上述の本発明の管状体を備えている半導体製造ラインへの薬液供給システムもまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0066】
本発明の管状体は、上述の構成よりなるので、強度、耐薬品性、耐熱性等に優れており、接合部であっても強度に優れている。本発明の管状部材の接合方法は、接合部においても強度、耐薬品性、耐熱性に優れた管状体を得る方法として優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
各実施例及び比較例における組成物の量は、特に断りがない場合は、質量基準である。
【0068】
合成例1(積層管の作成)
外層として国際公開第2005−100420号パンフレットの実施例1と同様の方法で作成したクロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕共重合体を用い、内層としてテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕ペレット(商品名:ネオフロンPFA AP231―SH、ダイキン工業社製)を用い、外層厚みを0.5mm、内層厚みを1.1mm、内径15.9mmとした以外は国際公開第2005−100420号パンフレットにおける積層チューブAと同様の方法で積層管を作成した。
【0069】
実施例1
合成例1の積層管2本を、それぞれ図9(パターンA)に示した形状となるよう端面を切削した後、PFA溶着機(形式RPWF−1410、ジー・エヌ・エス社製)を用い、表1の溶着条件にて各端面を突き合わせ溶着させて、実施例1の管状体を作成した。
【0070】
実施例2〜3
合成例1の積層管2本を、それぞれ図9(パターンB又はC)に示した形状となるよう端面を切削した後、PFA溶着機(形式 RPWF−1410、ジー・エヌ・エス社製)を用い、表1の溶着条件にて各端面を突き合わせ溶着させて、実施例2〜3の管状体を作成した
【0071】
比較例1
合成例1の積層管2本の各端面を切削せずに(図9、パターンD)、PFA溶着機(形式 RPWF−1410、ジー・エヌ・エス社製)を用い、表1の溶着条件にて各端面を突き合わせ溶着させて、比較例1の管状体を作成した。
【0072】
比較例2
合成例1の積層管2本を、図9(パターンE)に示した形状となるよう端面を切削した後、PFA溶着機(形式 RPWF−1410、ジー・エヌ・エス社製)を用い、表1の溶着条件にて各端面を突き合わせ溶着させて、比較例2の管状体を作成した。
【0073】
比較例3〜4
PFAペレット(商品名:ネオフロンPFA AP231―SH、ダイキン工業社製)を原料として用いた単層管(比較例3)、又は、合成例1の積層管(比較例4)を溶着部の無い管状体として以下の試験に用いた。
【0074】
試験例
各実施例及び各比較例の管状体について、それぞれ以下の評価を行った。
(1)接合部の観察
溶着部全周をズームルーペ(倍率5倍)を用いて観察し、空孔の数を確認した。更に、溶着部断面を顕微鏡(倍率50倍)にて観察し、T1、T1、Tを算出した。また、T3=0(T3は、接合部における外層厚みを表す。)である部分の面積の接合部の管外側表面の面積に対する比ωも算出した。これらの結果を表2に示す。
(2)接合管の破裂圧力
T−300N TEST PUMP(キョーワ社製)を用いて、30cm長さのサンプルに対し、25℃の水を用いて0.1MPa/minの昇圧速度で継続的に加圧を行い、管が破裂した時の最大応力を測定した。
(3)35%塩酸透過係数
国際公開第2005−100420号パンフレット記載の「積層チューブA、Bの35%塩酸透過係数」と同様にして行った。
各評価結果を表1に示す。また、各管状体の接合部の形状を図10〜14に示した。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
各実施例の管状体は、接合部に空孔が無いのに対し、各比較例の管状体は、接合部における空孔の個数が10以上であった。更に、各実施例の管状体は、35%塩酸透過係数Aと35%塩酸透過係数Bとの差が0.05×10−13[(g・cm)/(cm・秒)]以下であるのに対し、各比較例の管状体は、塩酸透過係数Aと35%塩酸透過係数Bとの差が0.5×10−13[(g・cm)/(cm・秒)]程度であった。このことより、各実施例の管状体は、比較例1〜2の各管状体と異なり、長時間応力下で使用しても、使用前と同等の薬液低透過性を示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の管状体は、上述の構成よりなるので、半導体産業、化学工業分野、食品分野、薬品分野等において、装置、製造ラインとして使用することができる。本発明の管状部材の接合方法は、接合部においても強度、耐薬品性、耐熱性に優れた管状体を得る方法として優れている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の管状体を表した模式図である。
【図2】本発明における積層管(接合部パターンA)の断面を表した模式図である。
【図3】本発明における積層管(接合部パターンB)の断面を表した模式図である。
【図4】本発明における積層管(接合部パターンC)の断面を表した模式図である。
【図5】本発明における積層管(接合部パターンD)の断面を表した模式図である。
【図6】本発明における積層管について、管内側から外周部の面取りした場合の端面を表した模式図である。
【図7】本発明における積層管について、端面の内層部分から外周部の面取りした場合の端面を表した模式図である。
【図8】本発明における積層管について、外周部及び内周部を面取りした場合の端面を表した模式図である。
【図9】各実施例及び各比較例における積層管の切削パターンを表した模式図である。
【図10】実施例1の管状体における接合部の長手方向断面の光学顕微鏡写真である。
【図11】実施例2の管状体における接合部の長手方向断面の光学顕微鏡写真である。
【図12】実施例3の管状体における接合部の長手方向断面の光学顕微鏡写真である。
【図13】比較例1の管状体における接合部の長手方向断面の光学顕微鏡写真である。
【図14】比較例2の管状体における接合部の長手方向断面の光学顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材(A)と管状部材(B)とが接合した接合部を有する管状体であって、
前記管状部材(A)と前記管状部材(B)の少なくとも一方が、溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有する積層管であり、前記積層管を構成する少なくとも1つの層が溶融加工性含フッ素樹脂からなり、
前記管状体は、各層の厚みが式(1)〜(3)
(1) T1 > T
(2) T1 < T
(3) T1 > T
(各式中、T1は、前記管状部材(A)と前記管状部材(B)との接合面における最内層の厚みを表し、T2は、前記接合部以外の部分における最内層の厚みを表し、T1は、前記接合面における最内層以外の層の厚みの合計を表し、T2は、前記接合部以外の部分における最内層以外の層の厚みの合計を表す。)で表される関係を有するものである
ことを特徴とする管状体。
【請求項2】
接合部は、管内側の高さTが式(4)で表される関係を有する請求項1記載の管状体。
(4) −0.3×T2 ≦ T < 0.7 ×T
(式中、T2は、管状部材の接合部以外の部分における肉厚を表し、正の符号は管内側にビードが形成されていることを表し、負の符号は管内側にノッチが形成されていることを表す。)
【請求項3】
管状体は、各層の厚みが式(5)で表される関係を有するものである請求項1又は2記載の管状体。
(5) 0 ≦ T1 < 0.2 ×T
(式中、T1及びT1は、前記定義と同じ。)
【請求項4】
接合部は、T3=0(T3は、接合部における外層厚みを表す。)である部分の面積が接合部の管外側表面の面積の30%未満である請求項1、2又は3記載の管状体。
【請求項5】
管状部材(A)及び管状部材(B)の両方が、溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有する積層管である請求項1、2、3又は4記載の管状体。
【請求項6】
管状部材(A)及び管状部材(B)は、一方が積層管であり、他方が溶融加工性含フッ素樹脂からなる単層管である請求項1、2、3又は4記載の管状体。
【請求項7】
単層管は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるものである請求項6記載の管状体。
【請求項8】
積層管は、最内層における溶融加工性樹脂と前記最内層上に設けられた層における溶融加工性樹脂との融点の差が15℃以上であるものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の管状体。
【請求項9】
積層管は、最内層における溶融加工性樹脂と前記最内層上に設けられた層における溶融加工性樹脂との融点の差が40℃以上、80℃未満であるものである請求項8記載の管状体。
【請求項10】
積層管は、内層がテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であり、外層がクロロトリフルオロエチレン共重合体である2層からなるものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の管状体。
【請求項11】
2つの管状部材の各端面を加熱溶融させた後に溶着することよりなる管状部材の接合方法であって、
前記管状部材は、少なくとも一方が溶融加工性樹脂からなる層を2層以上有する積層管であり、前記積層管を構成する少なくとも1つの層が溶融加工性含フッ素樹脂からなり、
前記積層管の端面は、前記加熱溶融を行う前に予め外周部の面取りを行ったものである
ことを特徴とする管状部材の接合方法。
【請求項12】
積層管の端面は、更に内周部の面取りを行ったものである請求項11記載の管状部材の接合方法。
【請求項13】
2つの管状部材は、いずれも積層管である請求項11又は12記載の管状部材の接合方法。
【請求項14】
2つの管状部材は、一方が積層管であり、他方が溶融加工性樹脂からなる単層管である請求項11又は12記載の管状部材の接合方法。
【請求項15】
積層管は、最内層における溶融加工性樹脂と前記最内層上に設けられた層における溶融加工性樹脂との融点の差が15℃以上であるものである請求項11、12、13又は14記載の管状部材の接合方法。
【請求項16】
積層管は、最内層における溶融加工性樹脂と前記最内層上に設けられた層における溶融加工性樹脂との融点の差が40℃以上、80℃未満であるものである請求項15記載の管状部材の接合方法。
【請求項17】
積層管は、内層がテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であり、外層がクロロトリフルオロエチレン共重合体である2層からなるものである請求項11、12、13、14、15又は16記載の管状部材の接合方法。
【請求項18】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の管状体を備えている
ことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項19】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の管状体を備えている
ことを特徴とする半導体製造ラインへの薬液供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−14324(P2008−14324A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182751(P2006−182751)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】