説明

管状火炎バーナ及びガラス加工方法

【課題】管状火炎を用いてガラス表面を汚染等することなく、極めて短時間で火炎研磨処理等が可能な管状火炎バーナ及び、それを用いたガラスの加工方法を提供する。
【解決手段】ブロック体と、円筒状の燃焼室と、燃料用整流路と、燃焼室の別の接線方向に沿って形成された酸素含有ガス用整流路と、燃料用整流路の法線方向に沿って形成された燃料用供給路と、酸素含有ガス用整流路の法線方向に沿って形成された酸素含有ガス用供給路と、を備えた管状火炎バーナ及び、それを用いたガラスの加工方法であって、円筒状の燃焼室において、燃料用供給路および燃料用整流路を介して導入された燃料と、酸素含有ガス用供給路および酸素含有ガス用整流路を介して導入された酸素含有ガスと、を混合燃焼させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状火炎バーナ及びガラス加工方法に関する。特に、整流された燃料および酸素含有ガスを用いて管状火炎を生成し、それを用いてガラス表面を汚染等することなく、極めて短時間で火炎研磨処理等が可能な管状火炎バーナ及び、それを用いたガラスの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼量の調節範囲が非常に大きく、小型化されると共に、環境汚染が起こりにくい管状火炎バーナが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図10(a)〜(b)に示すように、一方が開放された管状の燃焼室192に、他方側からノズル193を用いて、燃料ガス(F)および酸素含有ガス(G)をそれぞれ供給するとともに急速混合し、次いで、これらのガスからなる混合ガスに点火して、管状火炎を形成する構成の管状火炎バーナ191である。
そして、かかる管状火炎バーナ191は、先端部の形状が偏平であって、かつ開口面積が縮小された特殊形態のノズル193を一対用いており、この一対のノズル193から供給する燃料ガス(F)および酸素含有ガス(G)からなる混合ガスによって、燃焼室192に旋回流を効率的に発生させ、それに着火して管状火炎を形成することを特徴としている。
【0003】
一方、ガラス容器等のガラス成形体の製造等において、ガラス成形体の表面を均一かつ効果的に火炎研磨可能なガラス成形体用の火炎研磨装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図11に示すように、かかる火炎研磨装置204は、ローダ212を介して、ガラス成形体を移送する供給コンベア(図示せず)に隣接して設置され、ガラス成形体を周回移送する循環コンベア210と、ガラス成形体に火炎を当てるバーナ(図示せず)と、を含んで構成されており、かつ、バーナから、ガラス成形体の表面に対して、例えば、1500℃以上の火炎を10〜20秒程度吹き付けることによって、火炎研磨処理を実施していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3358527号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特許平3−242338号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された管状火炎バーナによれば、燃焼室の周囲に、特殊形態のノズルが複数個必要であって、それにより、管状火炎バーナが、全体として、大型化したり、その周囲にデッドスペースができたり、さらには、装置全体が、水平方向に大きく広がっていることから、設置上の制約が大きいという問題点が見られた。
その上、かかる管状火炎バーナにおいては、燃焼室を構成する周囲壁から、管状火炎に由来した熱が拡散する場合があって、それにより、燃焼室の周囲壁が過度に加熱される場合も見られた。
【0006】
一方、特許文献2に開示されたガラス成形体の火炎研磨装置によれば、数十秒程度で、ガラス成形体の表面を均一かつ効果的に火炎研磨処理ができるという利点が得られるものの、通常のガスバーナ(図示せず)を用いていることから、火炎温度のばらつきが大きく、また、ガラス成形体の表面に、一部不完全燃焼して生成した炭化物(すす)が付着しやすくて、次工程における加飾工程等に悪影響を及ぼす場合が見られた。
【0007】
そこで、本発明者らは、鋭意研究した結果、所定の管状火炎燃焼室等を、ブロック体の内部に設けるとともに、燃料用供給路および燃料用整流路を介して管状火炎燃焼室に整流された状態で導入された燃料と、酸素含有ガス用供給路および酸素含有ガス用整流路を介して管状火炎燃焼室に整流された状態で導入された酸素含有ガスと、を急速混合して、それを燃焼させてなる管状火炎を用いることによって、ガラス容器の表面に炭化物(すす)を付着させることなく、安定的かつ迅速に火炎研磨処理したり、ガラス容器の表面に、無機化合物を効率的に加飾したり、さらには、ガラス原料を均一に熔融できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、少なくともブロック体と、当該ブロック体の実質的内部に、所定の燃焼室と、燃料用供給路と、燃料用整流路と、酸素含有ガス用供給路と、酸素含有ガス用整流路と、を含むことによって、整流された燃料および酸素含有ガスを用いて管状火炎を安定的に形成できるとともに、全体構成が簡易かつ小型であって、かつ、ガラス表面における汚染等が少ない管状火炎バーナ、及びそれを用いたガラス加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ブロック体と、ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室と、燃焼室の接線方向に沿って形成された少なくとも一つの燃料用整流路と、燃焼室の別の接線方向に沿って形成された少なくとも一つの酸素含有ガス用整流路と、燃料用整流路の法線方向に沿って形成された燃料用供給路と、酸素含有ガス用整流路の法線方向に沿って形成された酸素含有ガス用供給路と、を備え、円筒状の燃焼室において、燃料用供給路および燃料用整流路を介して導入された燃料と、酸素含有ガス用供給路および酸素含有ガス用整流路を介して導入された酸素含有ガスと、を混合燃焼させることを特徴とする管状火炎バーナが提供され、上述した課題を解決することができる。
すなわち、所定のブロック状管状火炎バーナを構成することによって、燃料と酸素含有ガスの混合ガスによる旋回流が生成しやすくなり、ひいては、特殊形態のノズルを用いることなく、かつ、小型かつ簡易な管状火炎バーナであっても、炭化物(すす)の発生が少ない管状火炎を安定して形成することができる。
特に、所定の燃料用整流路や酸素含有ガス用整流路等を含んで管状火炎バーナを構成し、整流された燃料および酸素含有ガスを用いることによって、所定の燃焼室に流入する燃料や酸素含有ガスの流速や濃度が均一化され、燃焼室における管状火炎の安定性をさらに向上させることができる。
その上、ブロック体の内部に形成した燃焼室から外部への熱拡散を少なくすることができる一方、ブロック体の外部から燃焼室への熱移動も少なくなって、外気温度の影響を受けずに、燃焼室内の温度管理が容易になり、管状火炎をさらに安定して形成することができる。
したがって、かかる管状火炎バーナを火炎研磨処理装置等に用いた場合、ガラス表面を極めて短時間で、かつ、炭化物(すす)の発生が少ない条件でもって、火炎研磨処理等を実施することが可能となる。
【0009】
また、本発明の管状火炎バーナを構成するにあたり、燃料用整流路および燃料用整流路、あるいはいずれか一方の整流路を、ブロック体の厚さ方向に所定深さを有するとともに、ブロック体の上方から平面視した場合に、所定幅を有するスリット状とすることが好ましい。
このように構成することによって、ブロック体の厚さ方向に所定深さおよびブロック体の平面方向に所定幅を有する燃料流体としての燃料を効果的に利用することができ、ひいては、所定深さを有する管状火炎を安定して形成することができる。
その上、燃料用整流路および燃料用整流路、あるいはいずれか一方が、所定深さおよび所定幅を有するスリット状であれば、清掃自体が容易になって、整流路の汚染に起因した悪影響を排除して、鉛直方向に所定幅を有する管状火炎をさらに安定して形成することができる。
【0010】
また、本発明の管状火炎バーナを構成するにあたり、燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路、あるいはいずれか一方の供給路を円筒状とすることが好ましい。
このように構成することによって、かかる円筒状の燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路を介して、それぞれに対応するスリット状の整流路に対して、所定量の燃料や酸素含有ガスを、比較的スム−ズに導入することができ、結果として、鉛直方向に所定幅(所定深さ)を有する管状火炎を安定して形成することができる。
【0011】
また、本発明の管状火炎バーナを構成するにあたり、ブロック体の厚さ方向に重ね合わせられ、円筒状の燃焼室と連通する連通穴を有する延長ブロック体をさらに備えることが好ましい。
このように延長ブロック体を備えた構成とすることによって、その内部に設けた連通穴を利用して、管状火炎の内部に、ガラス熔融原料等を安全かつ安定的に供給することができる。
また、延長ブロック体の側から管状火炎を取り出すこともできるが、このような延長ブロック体を備えることによって、燃焼室の軸方向の長さや管径を容易に変更(延長)することができる。
さらに、このように延長ブロック体を設けて、それを設けた側から管状火炎を取り出す場合、連通穴の周囲に、所定の冷却管を設けることによって、延長ブロック体の過熱についても有効に防止することができる。
【0012】
また、本発明の管状火炎バーナを構成するにあたり、ブロック体と、延長ブロック体と、の間に、これらの構成材料よりも線膨張率が大きい材料からなる介在板を備えることが好ましい。
このように構成することによって、ブロック体および延長ブロック体よりも介在板の熱伝導率が大きいため、燃焼室で形成した管状火炎を延長ブロック体側へと滑らかに導くとともに、ブロック体と延長ブロック体の熱劣化も防止することができる。
また、ブロック体と延長ブロック体よりも介在板の線膨張係数が大きいため、ボルトを用いて管状火炎バーナを組み立てた後、介在板がブロック体および延長ブロック体と全面接触するいわばナットの役目を果たし、ブロック体と延長ブロック体の結合をさらに強くすることもできる。
【0013】
また、本発明の別の態様は、ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室に、その接線方向から燃料と酸素含有ガスを供給して管状火炎を生成し、その生成した管状火炎を吹き付けてガラス表面を加熱研磨する管状火炎バーナを用いたガラス加工方法であって、ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程と、供給した燃料および酸素含有ガスを、ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程と、整流した燃料および酸素含有ガスを、それぞれ円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程と、管状火炎を吹き付けてガラス表面を加熱研磨する工程と、を含むことを特徴とする管状火炎バーナを用いたガラス加工方法である。
すなわち、このようにガラス加工方法を実施することによって、安定的に形成された管状火炎を用いて、極めて短時間、かつ、炭化物(すす)の発生が少ない条件にて、ガラス表面を円滑に火炎研磨(ファイアーポリッシュ)することができる。
【0014】
また、本発明のさらに別の態様は、ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室に、その接線方向から燃料と酸素含有ガスを供給して管状火炎を形成し、その生成した管状火炎を用いて熔解させた無機塗料を、ガラス表面に吹き付けて加飾する管状火炎バーナを用いたガラス加飾方法であって、ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程と、供給した燃料および酸素含有ガスを、ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程と、整流した燃料および酸素含有ガスを、それぞれ円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程と、管状火炎を用いて熔解させた無機塗料を、ガラス表面に吹き付けて加飾する工程と、を含むことを特徴とする管状火炎バーナを用いたガラス加工方法である。
すなわち、このようにガラス加工方法を実施することにより、安定的に形成された管状火炎を用い、炭化物(すす)の発生が少ない条件にて、無機塗料であっても、迅速かつ安定的に加飾することができる。
【0015】
また、本発明のさらに別の態様は、ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室に、その接線方向から燃料と酸素含有ガスを供給して管状火炎を形成し、その生成した管状火炎を用いて、ガラス原料を熔解させる管状火炎バーナを用いたガラス加工方法であって、ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程と、供給した燃料および酸素含有ガスを、前記ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程と、整流した燃料および酸素含有ガスを、それぞれ円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程と、管状火炎を用いて、ガラス原料を熔解させる工程と、を含むことを特徴とする管状火炎バーナを用いたガラス加工方法である。
すなわち、このようにガラス加工方法を実施することにより、安定的に形成された管状火炎を用い、炭化物(すす)の発生が少ない条件にて、所定のガラス原料であっても、迅速かつ安定的に熔融することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は、第1の実施形態の管状火炎バーナの平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示される管状火炎バーナにおけるA−A線断面図である。
【図2】図2は、管状火炎バーナの分解図である。
【図3】図3は、延長ブロック体を含む管状火炎バーナの全体図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、管状火炎バーナの使用方法の使用例を説明するために供する図である。
【図5】図5は、管状火炎バーナの半径方向位置における火炎温度分布を説明するために供する図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、管状火炎形成用ガスの種類(CH/O、C/O、H/O)とそれら当量比の、火炎温度に及ぼす影響を説明するために供する図である。
【図7】図7は、第2の実施形態のガラス加工方法(火炎研磨方法)を説明するために供する図である。
【図8】図8は、第4の実施形態のガラス加工方法(ガラス熔融方法)を説明するために供する図である。
【図9】図9(a)は、第4の実施形態のガラス加工方法(ガラス熔融方法)によって得られたガラスを説明するために供する図(写真)であって、図9(b)は、ガラス原料を説明するために供する図(写真)である。
【図10】図10(a)は、従来の管状火炎バーナの縦断面図であり、図10(b)は、図10(a)の管状火炎バーナにおけるA−A線断面図である。
【図11】図11は、従来のガラス成形体の火炎研磨装置を説明するために供する図である。
【0017】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る管状火炎バーナ1は、図1(a)に例示されるように、ブロック体2と、ブロック体2の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室3と、燃焼室3の接線方向に沿って形成された少なくとも一つの燃料用整流路4と、燃焼室3の別の接線方向に沿って形成された少なくとも一つの酸素含有ガス用整流路5と、燃料用整流路4の法線方向に沿って形成された燃料用供給路6と、酸素含有ガス用整流路5の法線方向に沿って形成された酸素含有ガス用供給路7と、を備えている。
そして、かかる管状火炎バーナ1によれば、円筒状の燃焼室3において、燃料用供給路6および燃料用整流路4を介して導入された燃料(F)と、酸素含有ガス用供給路7および酸素含有ガス用整流路5を介して導入された酸素含有ガス(G)と、を混合燃焼させて、管状火炎を形成することを特徴としている。
以下、第1の実施形態のブロック状管状火炎バーナについて、適宜図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0018】
1.ブロック体
図1(a)〜(b)に示されるブロック体2は、管状火炎バーナ1の筐体であって、通常、直方体状物または立方体状物であることが好ましい。
そして、かかるブロック体2は、円筒状の燃焼室3、燃料用供給路6、燃料用整流路4、酸素含有ガス用供給路7、および酸素含有ガス用整流路5を形成するための主要筐体であるとともに、円筒状の燃焼室3等と、外部との間の熱移動の遮蔽部材でもある。
すなわち、このようなブロック体2を設けるとともに、その内部に、円筒状の燃焼室3、燃料用供給路6、燃料用整流路4等をそれぞれ組み込んでしまうことによって、ブロック状管状火炎バーナ全体として、小型化が可能となるばかりか、外部への突起物が少なくなって、配置性が向上したり、良好な取扱性を得たりすることができる。
また、このようなブロック体2を設けることによって、燃焼室3はもちろんのこと、燃料用供給路6、燃料用整流路4、酸素含有ガス用供給路7、および酸素含有ガス用整流路5への外部からの熱移動を有効に防止できるとともに、燃焼室3等からの外部への熱移動についても、有効に防止することができる。
したがって、外気温度等の影響を受けずに、燃焼室内の温度管理が容易になり、管状火炎をさらに安定して形成することができる。
その上、生成した管状火炎において振動現象を生じたり、燃料や酸素含有ガスの供給に際して、流体上で振動現象が生じたとしても、ブロック体2がこれらの振動を吸収し、振動に伴う悪影響を排除することができる。
【0019】
また、かかるブロック体2の構成材料については特に制限されるものではないが、例えば、金属材料(ステンレス材料、白金材料、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタニウム合金、タングステン合金、銅モリブデン、クロムモリブデン鋼、ニッケル・クロムモリブデン鋼、ニッケル・アルミニウム・コバルト系合金、イリジウム添加Ni基超耐熱合金等)やセラミックス材料(SiC、Al23、Zr23、Si34、ガラス材料等)などの少なくとも一つの耐熱性材料が挙げられる。
そして、ブロック体をこのように耐熱性材料から構成することによって、ブロック体の厚さ方向に所定深さを有する管状火炎を安定して形成することができるとともに、管状火炎バーナの設計や製造等についても容易になる。
【0020】
但し、ブロック体2の全体を耐熱性材料から構成する必要はなく、例えば、燃焼室3の周囲、少なくとも燃焼室3の内壁のみ、耐熱温度が1500℃以上のステンレス材料、白金材料、ニッケル・クロムモリブデン鋼、ニッケル・アルミニウム・コバルト系合金、イリジウム添加Ni基超耐熱合金等から構成することもでき、それ以外の部分は、耐熱温度が1500℃未満の銅合金やアルミニウム合金等の加工容易な金属材料から構成することも好ましい。
すなわち、図1(a)〜(b)に示すブロック体2の場合、一例であるが、耐熱性材料として、燃焼室3の周囲はステンレス材料(SUS303)を用い、それ以外の部分は、銅合金を用いて構成してあり、全体として直方体状ブロック(縦8cm×横8cm×高さ3cm)としてある。
【0021】
ここで、耐熱性材料の耐熱温度(長期使用可能温度:1000時間以上所定温度で使用した場合であっても、外観変化や機械的特性の顕著な変化が無い場合のその温度を意味する。)を、通常、500〜3000℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、耐熱性材料の耐熱温度が500℃未満となると、ガラス加工に必要な管状火炎が、実用上形成できない場合があるためである。一方、耐熱性材料の耐熱温度が3000℃を超えると、選択可能な材料が過度に制限される場合があるためである。
したがって、耐熱性材料の耐熱温度(長期使用可能温度)を1000〜2800℃の範囲内の値とすることがより好ましく、1300〜2500℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0022】
そして、ブロック体2を金属材料から作製する場合は、所定の金属ブロックを切削加工して、燃焼室3、燃料用供給路6、燃料用整流路4、酸素含有ガス用供給路7、および酸素含有ガス用整流路5を、それぞれ形成することが好ましい。
また、ブロック体2をセラミックス材料から作製する場合には、粉体や粒体を焼結したものを用いることも可能である。
その上、ブロック体2の軸方向の長さに応じて、金属材料等の一体物を用いてもよいし、あるいは、複数枚のタイルを接着剤などの接合材を用いて接合してなる複合物を用いてもよい。
【0023】
2.燃焼室
燃焼室3は、ブロック体2を厚さ方向(軸方向)に貫通して形成され、内部に、円筒状空間として形成された小室であって、燃料と、酸素含有ガスとを急速混合し、それに着火させて、管状火炎を安定的に形成、維持するための小室である。
そして、この円筒状の燃焼室3は、図1(b)に示すように、下方から大径円筒状の貫通穴3bと、その貫通穴3bの中心であって、かつその上方に形成された小径円筒状の貫通穴3aと、から二段階で構成されていることが好ましい。
この理由は、かかる大径円筒状の貫通穴3bに、所定管径を有する管状部材3dを挿入し、それを燃焼室の一部として利用し、管状火炎を安定的に形成したり、所定場所まで誘導したりすることができるためである。
【0024】
また、燃焼室3の直径(φ1)、すなわち、小径円筒状の貫通穴3aの直径(φ1)を、通常、5〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる直径(φ1)が5mm未満であると、燃料と酸素含有ガスからなる混合ガスの旋回流を安定的に発生させることが難しい場合があるためである。
一方、かかる直径(φ1)が100mmを超えると、管状火炎を形成した後、火炎温度分布にバラツキが生じやすい場合があるためである。
よって、燃焼室3における小径円筒状の貫通穴3aの直径(φ1)を、10〜80mmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜30mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した大径円筒状の貫通穴3bの直径(φ2)については、小径円筒状の貫通穴3aの直径(φ1)、およびそれに挿入する管状部材3dの外径や肉厚等を考慮して、定めることができる。
【0025】
また、燃焼室3の垂直方向の長さ(L2)を、通常、10〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる長さ(L2)が10mm未満であると、管状火炎が形成しにくくなる場合があるためである。
一方、かかる長さ(L2)が100mmを超えると、管状火炎を形成した後、火炎温度分布にバラツキが生じやすいからである。
よって、燃焼室3の長さ(L2)を、20〜80mmの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜70mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0026】
3.整流路
また、整流路(燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5)に関して、図1(a)に示すように、燃料用供給路6の法線方向に対して、燃料用整流路4が設けてあり、酸素含有ガス用供給路7の法線方向に対して、酸素含有ガス用整流路5が設けてあることが好ましい。
そして、燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5は、それぞれブロック体2の厚さ方向に所定深さ、例えば、3〜40mmの深さを有するとともに、ブロック体2を上方から平面視した場合に、スリット状であって、その両側がブロック体2の厚さ方向に沿って起立した壁面を有するように形成してあることが好ましい。
この理由は、これらの燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5を、ブロック体2の厚さ方向に所定深さ、およびブロック体2の平面方向に所定幅を有するスリット状とすることによって、燃料供給路6から導入された燃料および酸素含有ガス用供給路7から導入された酸素含有ガスの流速や濃度をそれぞれ均一化することができるためである。
【0027】
より具体的には、ブロック体2の内部において、燃料用供給路6および燃料用整流路4が直交して配置してあることから、燃料用供給路6から供給された燃料は、燃料用整流路4の壁に衝突して、そこで少々拡散する。
したがって、燃料流れは、一時的に滞留するものの、所定深さを有するスリット状の燃料用整流路4に順次導入されることから、そこで、燃料流速や燃料濃度が、流動方向のみならず、ブロック体2の厚さ方向においても、均一化されることになる。
同様に、ブロック体2の内部において、酸素含有ガス用供給路7および酸素含有ガス用整流路5が直交して配置してあることから、酸素含有ガス用供給路7から供給された酸素含有ガスは、酸素含有ガス用整流路5の壁に衝突して、そこで少々拡散する。
したがって、酸素含有ガスは、一時的に滞留するものの、所定深さを有するスリット状の酸素含有ガス用整流路5に順次導入されることから、そこで、酸素含有ガスの流速や濃度が、流動方向のみならず、ブロック体2の厚さ方向においても、均一化されることになる。
【0028】
すなわち、このような燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5を、所定場所に設けることによって、燃焼室3において、均一組成であって、かつ均一流速の混合ガス層が形成され、それに着火させることによって、結果として、ブロック体2の厚さ方向に所定幅を有する管状火炎を安定して形成することができる。
その上、燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路が、所定深さおよび所定幅等を有するとともに、管状火炎を形成する前は、上方開放したスリット状であれば、清掃自体が容易になって、これらの整流路の汚染に起因した悪影響を排除して、管状火炎をさらに安定して形成することができる。
【0029】
また、整流路(燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5)の数に関して、ブロック体2において、燃焼室3の周縁からブロック体2の一辺に沿って、かつ、燃焼室3の接線方向において、少なくとも2個形成してあることが好ましく、あるいは4個形成してあることがより好ましい。
そして、隣り合う燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5は、一方を長さ方向に延長した場合において、90°方向に交わる関係で配置されている。すなわち、いずれかを仮想的に長さ方向に延ばした場合、直交する関係となるように配置してあることが好ましい。
この理由は、このように燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5を配置することによって、ブロック体2の全面を有効活用できるとともに、燃料用整流路4と、酸素含有ガス用整流路5との間の熱移動や振動移動等を、可及的に少なくすることができるためである。
【0030】
さらに、燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5の整流路幅、すなわち、ブロック体の上方から平面視した場合のスリット幅を0.1〜10mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、当該スリット幅が0.1mm未満であると、燃料や酸素含有ガスの流通性が著しく低下する恐れが生じるためであって、一方、かかるスリット幅が10mmを超えると、燃料や酸素含有ガスにおける整流効果が著しく低下する場合があるためである。
したがって、燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5におけるスリット幅をそれぞれ0.5〜8mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜4mmの範囲内の値にすることがさらに好ましい。
但し、燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5のスリット幅は、同一でも異なっていても良く、したがって、いずれか一方のみのスリット幅を0.1〜10mmの範囲内の値とし、他方のスリット幅はかかる範囲外となっても好ましい態様である。
【0031】
その他、図1(a)に示す燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5は、それぞれ上方に開放した、所定深さを有する溝状のスリットとしてあるが、管状火炎を形成する際には、かかる溝状のスリットの上部を塞いで、外部に、燃料や酸素含有ガスが漏れないようにシールすることになる。
したがって、管状火炎を形成する際には、例えば、図2および図3に示すように、後述する延長ブロック体12を、同様に後述する介在板10を介して、ブロック体2に連結し、溝状のスリット4、5の上部を塞いで、シール状態とするものである。
【0032】
4.供給路
また、図1(a)に示すように、燃料用供給路6および酸素含有ガス用供給路7は、ブロック体2に、その一側面から燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5の始端側の壁面4b等に至るまで貫通して、それぞれ少なくとも1個(合計2個)、あるいは、それぞれ少なくとも2個(合計4個)形成されることが好ましい。
そして、隣り合う燃料用供給路6および酸素含有ガス用供給路7は、それぞれの供給路の長さ方向に対して、相互に90°で交わるように配置されていることが好ましい。すなわち、概ね平面四角形状のブロック体2の4つの角部に対して、それぞれ同一方向から燃料用供給路6および酸素含有ガス用供給路7が交互配置され、結果として、90°方向に直交するように、隣接配置することが好ましい。
この理由は、このように配置することによって、ブロック体2の全体を有効利用することができ、かつ、ブロック体2の内部における燃料用整流路4および酸素含有ガス用整流路5の配置も容易になって、さらには、燃料用整流路4と、酸素含有ガス用整流路5との間の熱移動や振動移動等が可及的に少なくなって、管状火炎の形成もさらに容易になるためである。
【0033】
なお、燃料用供給路6には、ボルトを含むジョイント部6aやパッキン6bを介して、外部の燃料供給装置(図示せず。)と連結された燃料用供給管6cが装着されている。
また、同様に、酸素含有ガス用供給路7には、ボルトを含むジョイント部7aやパッキン7bを介して、外部の酸素含有ガス供給装置(図示せず。)と連結された酸素含有ガス用供給管7cが装着されている。
したがって、このような構成とすることによって、それぞれ燃料(F)および酸素含有ガス(G)を、安定的に供給することができる。
【0034】
5.燃料
燃料(F)としては、気体燃料、液体燃料、固体燃料等のいずれも用いることができる。
また、気体燃料としては、メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素ガス、水素、高炉ガス(BFG)、転炉ガス(LDG)、コークス炉ガス(COG)などの製鉄所副生ガス、都市ガスが挙げられる。
また、液体燃料としては、灯油や重油が挙げられる。
さらに、固体燃料としては、木質系バイオマス燃料を粉砕して粉状にしたバイオマス粉状燃料が挙げられる。
【0035】
6.酸素含有ガス
酸素含有ガス(G)としては、空気、空気とパージガスとしての窒素との混合ガス、純粋酸素等が挙げられる。
【0036】
7.延長ブロック体
また、図2に示すように、ブロック体2の片側等に、延長ブロック体12を設けることが好ましい。
すなわち、ブロック体2の厚さ方向の面に重ね合わせられて使用され、円筒状の燃焼室3と連通する連通穴3bを有する延長ブロック体をさらに備えることが好ましい。
この理由は、かかる延長ブロック体12を備えることによって、その内部に設けた連通穴3bを利用して、燃焼室3、ひいては管状火炎の内部の所定位置に、ガラス熔融原料等を安全かつ安定的に供給することができるためである。
また、管状火炎バーナ1において、管状火炎の放出方向を変えて、延長ブロック体12の側から取り出すこともできるが、その場合、このような延長ブロック体12を備えることによって、燃焼室3の軸方向の長さ(L2)や管径を容易に変更(延長)できるという利点を得ることができる。
さらに、ブロック体2の片側に、延長ブロック体12を設けて、それを設けた側から管状火炎を取り出す場合、図示しないものの、連通穴3bの周囲に、冷却管(空冷管や冷媒管)を設けることによって、連通穴3bの過熱を有効に防止することもできる。
【0037】
ここで、図2に示す延長ブロック体12についても、ブロック体2と同様に、金属材料やセラミックス材料などの耐熱性材料から構成されていることが好ましい。
但し、延長ブロック体12の全体を必ずしも耐熱性材料から構成する必要はなく、例えば、連通穴3bの周囲のみ、耐熱温度が1500℃以上のステンレス材料やニッケル・クロムモリブデン鋼等から構成するとともに、それ以外の部分は、耐熱温度が1500℃未満の銅合金やアルミニウム合金等の加工容易な金属材料から構成することも好ましい。
【0038】
また、延長ブロック体12の形態に関して、全体を直方体状とし、かつ、延長ブロック体12の厚さを、ブロック体2の厚さ(L2)よりも十分厚くなる、例えば、ブロック体2の厚さ(L2)の1.2〜10倍の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる延長ブロック体12の厚さが、ブロック体2の厚さ(L2)の1.2倍未満では、別途取り付ける意義が薄れるためである。
一方、かかる延長ブロック体12の厚さが、ブロック体2の厚さ(L2)の10倍を超えると、形成した管状火炎の安定性が低下する場合があるためである。
したがって、延長ブロック体12の厚さを、ブロック体2の厚さ(L2)の1.5〜5倍の範囲内の値とすることがより好ましく、1.8〜3倍の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
そして、かかる延長ブロック体12の中心部には、延長ブロック体12を軸方向に貫通するとともに、組み立て時に燃焼室3と連通する連通穴3bが形成してあることが好ましい。
したがって、かかる連通穴3bを利用して、円筒状の燃焼室3にガラス原料等を落下供給させたり、他の気体流を吹き込んだりすることが可能となる。
すなわち、延長ブロック体12を含む管状火炎バーナ1を、ガラス材料の熔融装置として使用する場合には、延長ブロック体12における連通穴3bには、中心にガラス原料をガイドして落下供給するための通過孔が形成された軸棒13が圧入されることになる。
【0040】
8.介在板
また、図2に示すように、ブロック体2と、延長ブロック体12と、の間に、これらの構成材料よりも線膨張率が大きい材料からなる介在板10を備えることが好ましい。
この理由は、かかる介在板10の熱伝導率が、ブロック体2および延長ブロック体12よりも大きいため、それぞれの間の隙間がなくなり、シール性が高まって、燃焼室3で形成した管状火炎を延長ブロック体12側へと滑らかに導くことができるためである。
また、かかる介在板10が優先的に熱膨張するため、ブロック体2と延長ブロック体12の熱劣化をそれぞれ有効に防止することができるためである。
さらには、ブロック体2と延長ブロック体12よりも介在板10の線膨張係数が大きいため、ボルトを用いて管状火炎バーナを組み立てた後、介在板がブロック体および延長ブロック体とを強固に全面接続する、いわば接合部材の役目を果たすこともできるためである。
【0041】
したがって、介在板10は、ブロック体2や延長ブロック体12よりも、厚さが十分薄く、より具体的には、0.1〜5mmの厚さとすることが好ましい。
そして、介在板10の中心部には、燃焼室3および連通穴(小径円筒状の貫通穴)3aと連通する連通穴3cが形成してあることが好ましい。
すなわち、例えば、銅、あるいは黄銅、青銅、洋白、白銅などの銅合金、あるいは雲母を用いて、所定厚さを有する薄板状の介在板10とすることが好ましい。
【0042】
9.スワール数
また、燃焼室3で生成される混合ガスの旋回流のスワール数(Sw)を0.6〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるスワール数が0.6未満の値になると、管状火炎の安定性が著しく低下したり、管状火炎の形成位置の制御が困難になったりするからである。
一方、スワール数が15を超えると、断面積方向の温度分布が大きくなったり、燃焼室3の内壁温度が過度に上昇し、バーナの耐久性が著しく低下したりするからである。
したがって、混合ガスの旋回流のスワール数(Sw)を1〜8の範囲内の値とすることがより好ましく、2〜6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0043】
また、かかる混合ガスの旋回流のスワール数(Sw)は、下記式で定義されるが、燃料ガスの供給源である燃料ガスの圧力および酸素含有ガスの圧力、あるいは、燃料や酸素含有ガスの供給箇所の数、供給路5や供給管6の径、整流路4の幅、燃焼室3の直径(φ1)などによって調整することができる。
スワール数(Sw)=Gθ/(G・D)
θ:ノズル出口における周方向角運動量(kg・m2/sec2
:ノズル出口における軸方向運動量(kg・m/sec2
D :ノズル直径(代表長さ)(m)
【0044】
10.着火装置
また、管状火炎バーナ1は、燃焼室3の近傍に、着火装置を備えることが好ましい。このように着火装置を備えることで、混合ガスに安全かつ容易に着火して、管状火炎を形成することができる。
例えば、燃焼室3の内壁から一部が突出するように、着火装置としてのスパークプラグ着火装置、電熱線着火装置、パイロット火炎着火装置の少なくとも一つを設けるとよい。
【0045】
11.動作
また、管状火炎バーナ1を動作させるに際して、上述した延長ブロック体12等を連結することが好ましいが、図2および図3に示すように、ブロック体2の上面に介在板10を重ね合わせ、介在板10の上面に延長ブロック体12を重ね合わせることが好ましい。
次いで、ブロック体2、介在板10、延長ブロック体12にそれぞれ形成したボルト穴2b,10b,9bに、ナットを取り付けたボルトを入れ、ボルトを締め付けると管状火炎バーナ1が得られる。
【0046】
次いで、管状火炎バーナ1では、まず、供給管6からブロック体2の供給路5に燃料(F)を供給するとともに、別の供給管6からブロック体2の供給路4に酸素含有ガス(G)を供給する。
したがって、燃料と酸素含有ガスは、それぞれ整流路4、5を構成する壁面の一つに当たり、そこで若干拡散しつつ、進行方向が90°変えられて両壁面に沿って流れるため、濃度や流速が一定化されて、いわゆる整流されることになる。
これら燃料と酸素含有ガスの流体は、整流路4から燃焼室3に流入することで、燃焼室3にて、急速に混合されて混合ガスとなり、旋回流を生成する。この旋回流に、トーチ、プラグなどの着火装置で着火すれば、燃焼室3の軸方向(図1では紙面に垂直方向、図2および図3では上下方向)に沿った管状火炎が安定して形成される。
【0047】
このように、管状火炎バーナ1は、管状火炎を形成するのに必要なものがブロック体2にすべて形成されており、整流路4の壁に燃料と酸素含有ガスをいったん当てることで、これらを整流することがき、結果として、燃焼室3の内部において、管状火炎の形成に最適な混合ガス層を生成することができる。
このため、本願発明の管状火炎バーナ1によれば、従来の特殊態様なノズルが不用であり、バーナ自体を小型化でき、バーナの設置場所の自由度が高くなる。
【0048】
また、管状火炎バーナ1´は、4箇所全ての供給路6、7から燃料(F)と酸素含有ガス(G)を必ずしも供給しなくてもよく、例えば、対向する位置の2箇所の供給路6、7から、燃料と酸素含有ガスを供給しても、管状火炎が安定して形成される。
このため、例えば、ブロック体2から、使用しない2つの接続部7を取り外し、図4(a)に示すように、ブロック体2を燃焼室3の軸方向が水平方向となるように構成すれば、上下方向から水平方向に噴射する管状火炎Hを簡単に形成できる。
すなわち、ガラス原料やガラス容器などのガラスを加工する場合には、管状火炎の噴射方向が自由に変えられると便利である。それに対して、管状火炎バーナ1´は、ブロック体2の設置に制限がないため、上下方向、水平方向だけでなく、どんな斜め方向にも管状火炎を形成でき、管状火炎Hの噴射方向の自由度が高いので、ガラスを加工等する際の作業性が向上する。
【0049】
また、図4(b)の管状火炎バーナ1´´に示すように、管状火炎Hの燃焼室3の取り出し口に、耐熱性材料等からなる管状部材3dを取り付けることも好ましい。
この理由は、このように取り付けた管状部材3dによって、管状火炎Hの安定性を向上させるとともに、所定位置まで管状火炎Hを誘導することができるためである。
そして、さらに、図4(c)の管状火炎バーナ1´´´に示すように、取り付けた管状部材3dの周囲に、冷却管3eをさらに設けることが好ましい。
この理由は、取り付けた管状部材3dが、管状火炎Hによって、過熱される場合があるものの、このような冷却管3eを設けて、外部から取り入れた空気等を、冷却管3eの内壁と、取り付けた管状部材3dの外壁との間に流すことができるためである。したがって、冷却用の空気によって、管状部材3d等を所定温度に冷却し、その耐久性を著しく伸ばすことができる。
なお、冷却管3eに関して、図4(c)に示す態様のほか、管状部材3dの周囲を包囲する延長ブロック体を取り付けるとともに、管状部材3dとの間に、空隙を設けて、その空隙の間に冷却用の空気を流す構成とすることもできる。
【0050】
12.温度分布
次いで、図5を参照して、管状火炎バーナ1によって形成される管状火炎の半径方向位置(面方向)における温度分布について説明する。
すなわち、図5の横軸は、燃焼室3(管径:40mm)における半径方向位置(中心0mm、±20mm)を示しており、縦軸は、管状火炎バーナによって形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
そして、温度分布を示す特性曲線は、中心から約±20mm離れた端部、すなわち、内面壁付近においては、1500K以下の低い温度を示している。
その一方、中心から0mm〜約±18mmの面方向領域においては、2200〜2400Kの極めて均一な高い温度であることを示している。
したがって、管状火炎を用いた場合、中心部を含めて、広範囲で得られる均一高温領域を利用して、相当量のガラス原料であっても、迅速かつ連続的に熔融することができる。
管状火炎バーナ1によって形成される管状火炎は、渦流として移動することから、燃焼室3の面方向のみならず、鉛直方向においても、均一な温度分布を有することが判明している。
【0051】
13.燃料ガス/酸素の当量比の影響
次いで、図6(a)〜(c)を参照して、管状火炎バーナ1によって形成される管状火炎の温度に及ぼす燃料ガス/酸素の当量比の影響について説明する。
すなわち、図6(a)の横軸は、管状火炎バーナ燃料ガス(CH4/O2)の当量比(−)を示しており、縦軸は、形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
また、図6(b)の横軸は、管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス(C38/O2)の当量比(−)を示しており、縦軸は、形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
さらに、図6(c)の横軸は、管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス(H2/O2)の当量比(−)を示しており、縦軸は、形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
そして、図6(a)〜(c)の温度分布を示す特性曲線は、それぞれ燃料ガスの種類によらず、当量比1付近で、形成される管状火炎において、最高火炎温度が得られることを示している。
したがって、管状火炎を用いた場合、燃料ガスの種類によらず、燃料ガスの当量比1付近で、最高火炎温度が得られることから、それを利用して、相当量のガラス原料であっても、迅速かつ連続的のみならず、安定的に熔融することができる。
【0052】
[第2の実施形態]
また、本発明の第2の実施形態は、ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室に、その接線方向から燃料と酸素含有ガスを供給して管状火炎を生成し、その生成した管状火炎を吹き付けてガラス表面を加熱研磨するガラス加工方法である。
そして、下記工程1〜4を含むことを特徴とする管状火炎バーナを用いたガラス加工方法(ガラス火炎研磨方法)である。
工程1:ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程
工程2:供給した燃料および酸素含有ガスを、ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程
工程3:整流した燃料および酸素含有ガスを、それぞれ円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程
工程4:管状火炎を吹き付けてガラス表面を火炎研磨する工程
【0053】
1.工程1
工程1は、ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程である。
すなわち、所定の当量比と混合ガスの旋回流のスワール数となるように、燃料ガスボンベの圧力、圧縮機の吐出圧、燃料Fや酸素含有ガスGの供給箇所の数を調整しながら、燃料および酸素含有ガスを供給する工程である。
【0054】
2.工程2
また、工程2は、供給した燃料および酸素含有ガスを、ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程である。
すなわち、図1(a)に示すように燃料(F)は、燃料用整流路4の両壁面の一つである後壁4aに当たった後、進行方向が90°変えられて、前壁4aと、後壁4bとの間に沿って逐次流れるため、流速や濃度が一定である、安定的な燃料(F)の流れに整流される。
同様に、酸素含有ガス(G)についても、酸素含有ガス用整流路5の後壁に当った後、進行方向が90°変えられて、前壁と、後壁との間に沿って逐次流れるため、流速や濃度が一定である、安定的な酸素含有ガス(G)の流れに整流される。
【0055】
3.工程3
また、工程3は、整流した燃料(F)と酸素含有ガス(G)を、それぞれ円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程である。
すなわち、これら燃料(F)と酸素含有ガス(G)の流体は、整流路4から燃焼室3に流入することで、燃焼室3にて、面流の状態をほぼ保ちながら急速に混合されて、所定の混合ガスとなり、旋回流を生成する。
そして、工程3において、燃焼室3に管状火炎を形成する。すなわち、混合ガスからなる旋回流に、トーチやプラグなどの上述した着火装置で着火することによって、燃焼室3の軸方向に沿った管状火炎が安定して形成される。
【0056】
ここで、酸素含有ガス(G)として、最初は、空気を用いた後、切り替えて、炭化水素ガスおよび酸素を用いることが好ましい。
この理由は、このように実施することによって、より安全な着火を確保することができ、かつ、さらに安全かつ迅速なガラス原料の熔解が可能となるためである。
すなわち、燃料(F)や酸素含有ガス(G)として、炭化水素ガスおよび空気を用いた場合、形成される管状火炎の温度が比較的低いものの、他のガスを用いた場合と比較して、より安全に着火することができる。
一方、燃料(F)や酸素含有ガス(G)として、炭化水素ガスおよび酸素を用いた場合、形成される管状火炎の温度が比較的高く、それを利用して、相当量のガラス原料であっても、迅速かつ連続的に熔解できる。
【0057】
4.工程4
また、工程4は、火炎研磨工程であって、管状火炎を吹き付けてガラス表面を火炎研磨して、平滑化させる工程である。
この場合、成形後のガラス容器の表面に形成された肌荒れを、管状火炎の熱で、瞬時に熔融して取り除くこと(ファイアーポリッシュ)が簡単にでき、ひいては、均一な光沢面とすることができる。
すなわち、第2の実施形態に係るガラス加工方法によれば、熔融ガラスの生成、ガラス容器の加飾、ファイアーポリッシュを簡単に行うことができ、ひいては、ブロック体の側面を利用して、管状火炎の噴射方向も自由に変えられることから、ガラス加工時の作業性も向上すると言える。
【0058】
ここで、第2の実施形態に係るガラス加工方法を実施するに際して、ブロック状管状火炎バーナを一つまたはそれ以上備え、ガラス容器温度を所定温度に加熱して、ガラス容器表面を火炎研磨するための火炎研磨装置を使用する。
すなわち、図7に例示するように、ガラス容器用支持部55と、複数のブロック状管状火炎バーナ部52a〜52hと、ガラス容器を乗せた状態でガラス容器用支持部55を円弧状に移動させるための駆動部57と、を備えるとともに、当該ガラス容器用支持部55が移動する移動仮想曲線の片側領域に沿って、複数のブロック状管状火炎バーナ部52a〜52hが放射状に配置してあり、かつ、中心点Cの周囲に、円筒状の断熱反射板51が設けてある火炎研磨装置50を使用することができる。
【0059】
したがって、ベルトコンベア59上を流れてきたガラス容器(図示せず)を、矢印Aのようにガイド58が、火炎研磨装置50のガラス容器用支持部55にとりこむことができる。
次いで、ガラス容器用支持部55を円弧状に移動させるとともに、複数のブロック状管状火炎バーナ部52a〜52hの少なくとも一つによって、管状火炎を1秒以下で吹き付け、ガラス容器表面を迅速に火炎研磨して、平滑化することができる。
最後に、矢印Bのように別なガイド58によって、火炎研磨処理されたガラス容器をとりこみ、再び、ベルトコンベア59上に戻すことができる。
なお、図7に示す火炎研磨装置50の場合には、ブロック状管状火炎バーナ部52bと、52cとの間に、加飾装置54が設けてあり、火炎研磨処理している間に、ブロック状管状火炎バーナ部56によって、部分加熱熔融した無機塗料を、ガラス容器の表面に吹付け、所定の装飾模様を形成することもできる。
【0060】
[第3の実施形態]
また、本発明の第3の実施形態は、ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室に、その接線方向から燃料と酸素含有ガスを供給して管状火炎を形成し、その生成した管状火炎を用いて熔解させた無機塗料を、ガラス表面に吹き付けて加飾する管状火炎バーナを用いたガラス加工方法である。
そして、下記工程1〜3および工程4´を含むことを特徴とする管状火炎バーナを用いたガラス加工方法(ガラス加飾方法)である。
工程1:ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程
工程2:供給した燃料および酸素含有ガスを、ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程
工程3:整流した燃料および酸素含有ガスを、それぞれ円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程
工程4´:管状火炎を用いて熔解させた無機塗料を、ガラス表面に吹き付けて加飾する工程
以下、第2の実施形態の管状火炎バーナを用いたガラス加工方法と異なる点を中心に、第3の実施形態のガラス加工方法について具体的に説明する。
【0061】
1.工程1〜3
第3の実施形態における工程1〜3は、第2の実施形態のガラス加工方法における工程1〜3の内容と同様であることから、再度の説明は省略する。
【0062】
2.工程4´
また、工程4´は、いわゆる加飾工程であって、管状火炎を用いて熔解させた無機塗料を、ガラス表面に吹き付けて、所定の装飾パターン等を形成し、加飾する工程である。
すなわち、管状火炎バーナの燃焼室に生成された管状火炎の内部に、無機塗料を投入し、十分に溶解させた後、それをガラス表面に吹き付けて、所定の装飾パターン等を形成し、加飾することが好ましい。
【0063】
そして、ブロック状の管状火炎バーナを一つまたはそれ以上備え、それによって、無機顔料を熔解させて、それをガラス容器の表面に付着させて所定模様を形成する加飾装置を使用することができる。
すなわち、図4(a)に示すように、管状火炎バーナの側面を利用して、垂直方向に立設し、管状火炎Hを形成することができる。この場合、形成された管状火炎Hは、水平方向に噴出される。
次いで、管状火炎バーナの中心部等に、無機塗料を投入し、それを均一に熔解させながら、ガラス容器の表面に付着させた後、所定温度に冷却することによって、強固に付着した無機塗料からなる所定模様を形成する。
したがって、所定の管状火炎バーナを、当該管状火炎バーナによって迅速かつ均一に熔解した無機塗料を、ガラス表面に吹き付けて、所定の装飾パターン等を形成するための加飾装置1´として使用することができる。
よって、第3の実施形態に係るガラス加工方法によれば、所定の管状火炎バーナを用いて形成した管状火炎を用いて、ガラス容器の加飾を迅速かつ容易に行うことができる。その上、ブロック体の底面(あるいは側面)を利用して鉛直方向を軸として回転させ、管状火炎の噴射方向も自由に変えられることから、ガラス加工時の作業性も向上すると言える。
【0064】
[第4の実施形態]
また、本発明の第4の実施形態は、ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室に、その接線方向から燃料と酸素含有ガスを供給して管状火炎を形成し、その生成した管状火炎を用いてガラス原料を熔融させるガラス加工方法である。
そして、下記工程1〜3および工程4´´を含むことを特徴とする管状火炎バーナを用いたガラス加工方法(ガラス熔融方法)である。
工程1:ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程
工程2:供給した燃料および酸素含有ガスを、ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程
工程3:整流した燃料および酸素含有ガスを、それぞれ円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程
工程4´´:生成した管状火炎の内部に、ガラス原料を落下させ、当該ガラス原料を熔解させる工程
以下、第2の実施形態および第3の実施形態のガラス加工方法と異なる点を中心に、第4の実施形態の加工方法(ガラス熔融方法)について具体的に説明する。
【0065】
1.工程1〜3
第4の実施形態における工程1〜3は、第1および第2の実施形態のガラス加工方法における工程1〜3の内容とそれぞれ同様であることから、再度の説明は省略する。
【0066】
2.工程4´´
また、工程4´´は、図8に示すように、ガラス熔融装置70を用いたガラス熔融工程であって、ブロック状管状火炎バーナ1を用いて生成した管状火炎の内部に、ガラス原料を落下させ、当該ガラス原料を熔解させる工程である。
すなわち、落下状態のガラス原料を、管状火炎を用いて加熱することによって、熔融させるガラス原料量の如何によらず、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、かつ、発生する排ガス等の影響を排除して、極めて高いエネルギー効率でもって、迅速かつ連続的に熔融することができる。
したがって、図9(b)に示すようなガラス原料を、数秒以内に熔解して、図9(a)に示すようなガラス材料(一部が粗熔融状態)とすることができる。
【0067】
ここで、工程4´´を実施するガラス熔融装置70としては、下記の態様とすることが好ましい。
すなわち、ガラス原料を供給するガラス原料供給口78aを有する原料供給装置78と、供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとする縦型円筒状のガラス熔融塔74と、を順次に備えたガラス熔融装置70であって、縦型円筒状のガラス熔融塔74の上方に、第1の実施形態で説明したのと同様のブロック状管状火炎バーナ1が設けてあることが好ましい。
【0068】
この理由は、このようにガラス熔融装置70を構成することによって、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、ガラス原料そのものであっても、所定面積を有するとともに、面方向のみならず、鉛直方向にも均一な温度分布を有する管状火炎によって、縦型円筒状のガラス熔融塔74の内部を落下中のガラス原料を、迅速かつ連続的に熔融することができるためである。
また、縦型円筒状のガラス熔融塔74の内部で、鉛直方向に移動する管状火炎を用いて、落下中のガラス原料を熔解させることから、発生する廃ガスについても同時に排除することができるためである。
その上、ガラス原料の熔融に寄与した管状火炎が、縦型円筒状のガラス熔融塔74の内壁に沿って移動し、得られた熔融ガラスの貯留部付近に到達可能なことから、かかる管状火炎を利用して、得られた熔融ガラスをさらに加熱保温することができ、ひいては、ガラス原料の熔融に際して、極めて高いエネルギー効率を得ることができるためである。
【0069】
ここで、ガラス熔融装置70を用いて熔融させるガラス原料としては、珪砂、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、リン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等)、生石灰、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硼砂、長石、ガラスカレット、金属等の一種単独または二種以上の混合物、カレット、ガラスフリットが挙げられる。
【0070】
また、ガラス熔融装置において、図8に示すように、原料供給装置78と、縦型円筒状のガラス熔融塔74との間に、断熱装置または冷却装置72が設けてあることが好ましい。
この理由は、バッファー室やガラスウール充填室等の断熱装置や、水冷管等の冷却装置等が設けてあることにより、原料供給装置に、ガラス原料を所定時間滞留させた場合であっても、その間の凝集を容易に防止することができるためである。
【0071】
また、図8に示すように、熔解されたガラス原料が、矢印Jで示されるように供給され、その中に、部分的熔解状態のガラス原料が一部存在していたような場合、生成された管状火炎を、熔解ガラス96の表面付近まで誘導し、その熱を利用して、均一な粘度を有する流動状態の熔融ガラスとすることができる。
さらに、ガラス熔融塔とは別に加熱手段を設けることによって、均一温度かつ良好な流動状態の熔融ガラスとすることもできる。
より具体的には、そのような加熱手段として、ガスバーナー加熱、赤外線加熱、誘導加熱、電気加熱等の少なくとも一つを設けることによって、例えば、温度が1200〜2000℃の範囲であって、かつ、均一流動状態の熔融ガラスとすることができる。
なお、ガラス熔融塔の下方端に、上述した管状火炎生成装置が設けてある場合には、かかる管状火炎生成装置のさらに下方に、得られた熔融ガラスの貯留部を設けるとともに、そこに追加加熱装置を設ければ良い。
【0072】
また、図8に示すように、ガラス熔融塔74の下方端に設けてある貯留部92の側方に、ガラス熔融塔74で得られた熔融ガラス96を流動させながら、炭酸ガス(CO2)や亜硫酸ガス(SO2)等を脱泡するためのガラス清澄装置97をさらに備えることが好ましい。
より具体的には、図8に示すように、プ−ル状のガラス清澄装置97を設けて、熔融ガラス96を緩やかに流動させながら、さらには撹拌しながら、内部に含まれる炭酸ガスやや亜硫酸ガス等を、矢印Kで表わされる方向に、有効に脱泡することが好ましい。
この理由は、このようなガラス清澄装置をさらに備えることによって、内部に泡が少ない熔融ガラスが得られ、それを用いて、所定のガラス製品を安定的に製造することができるためである。
【0073】
また、図8に示すように、ブロック状管状火炎バーナ1の近傍に、着火装置79を備えることが好ましい。
この理由は、このように着火装置を備えることによって、管状火炎形成用ガスに対して、安全かつ容易に着火して、管状火炎を形成することができるためである。
より具体的には、ガラス熔融塔の内部であって、管状火炎形成装置の近傍に、着火装置として、スパークプラグ着火装置、電熱線着火装置、パイロット火炎着火装置等の少なくとも一つを設けることが好ましい。
【0074】
また、図8に示すように、ガラス熔融塔74の所定場所に、酸素や燃料ガス等のガスセンサ84、86を備えることが好ましい。
この理由は、このようにガスセンサ84、86を備えることによって、過剰な酸素の滞留や、燃料ガスの滞留について検知することができるためである。したがって、このような滞留ガスに起因して、予想しない発火現象が生じたり、管状火炎の安定性が低下したりする現象を有効に防止することができる。
そして、さらに、ガスセンサ84、86とともに、温度計88を併用することが好ましい。
この理由は、このように温度計88を併用することによって、ガスセンサ84、86の検知精度を高めたり、これらガスセンサやガラス熔融塔74の故障診断にも使用することができるためである。
【0075】
さらにまた、図8に示すように、縦型円筒状のガラス熔融塔74の途中に、一つまたは二つ以上のシャッター80(80a、80b、80c)が設けてあることが好ましい。
この理由は、このようなガラス熔融塔の内部を所定空間ごとに仕切るシャッターを設けるとともに、それらを開閉することによって、ガラス熔融塔における管状火炎の形成場所や、ガラス熔融塔の温度分布を精度良く調整することができるためである。
したがって、このようなシャッターの開閉によって、ガラス原料の熔融状態をさらに綿密に制御したり、ガラス原料の熔融作業に伴う安全性を向上させたりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、管状火炎バーナにおいて、少なくともブロック体と、ブロック体の内部に形成された所定の燃焼室と、燃料用供給路および燃料用整流路と、酸素含有ガス用供給路および酸素含有ガス用整流路と、を含むことによって、ガラス加工等する際のガラス表面の汚染が少なく、かつ、作業時間や加飾時間等を著しく短縮させた管状火炎バーナ、及びそれを用いたガラス加工方法を提供することができるようになった。
【0077】
特に、本発明の管状火炎バーナによれば、スリット状等の所定の燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路によって整流された燃料および酸素含有ガスを用いることから、燃焼室に流入する燃料や酸素含有ガスの流速や濃度が均一化され、ガラス加工方法等を実施する際の燃焼室における管状火炎の安定性をさらに向上させることが期待される。
【0078】
また、所定のブロック体を備えていることから、その内部に、燃焼室ばかりでなく、燃料用供給路、燃料用整流路、酸素含有ガス用供給路、および酸素含有ガス用整流路をすべて取り込むことが可能となり、小型化、軽量化、断熱性、振動防止、耐久性、使い勝手性、持ち運び性等に、いずれの向上にも資することが期待される。
【0079】
さらに、管状火炎バーナを用いるとともに、整流された燃料および酸素含有ガスを用いることから、安定的な管状火炎を形成することができ、ひいては、発生する炭化物(すす)の発生量を抑制し、ガラス容器に対する付着量を著しく低下させることが期待される。
【0080】
その上、所定のブロック体と連結する、所定の延長ブロック体を設けることによって、燃焼室の内部にガラス熔融原料の供給等を確実に行うことが期待されるほか、延長ブロック体の側から管状火炎を取り出す際の燃焼室の軸方向の長さや管径を容易に変更(延長)することができ、さらには、延長ブロック体の内部に設けた連通穴の周囲に、所定の冷却管を設けることによって、延長ブロック体の過熱についても有効に防止することが期待される。
【符号の説明】
【0081】
1:管状火炎バーナ、2:ブロック体、3:燃焼室、3a:小径円筒状の貫通穴、3b:大径円筒状の貫通穴、3c:連通穴、3d:管状部材、3e:冷却管、4:燃料用整流路(スリット状燃料用整流路)、4a:後壁、4b:前壁、5:酸素含有ガス用整流路(スリット状酸素含有ガス用整流路)、6:燃料用供給路、6a:ボルトを含むジョイント部、6b:パッキン、6c:燃料用供給管、7:酸素含有ガス用供給路、7a:ボルトを含むジョイント部、7b:パッキン、7c:酸素含有ガス用供給管、8:ねじ穴、8a:ねじ穴、8b:ねじ穴、10:介在板、12:延長ブロック体、13:軸棒、50:火炎研磨装置、52a〜h:ブロック状管状火炎装置、70:ガラス熔融装置、72:断熱装置または冷却装置、78:ガラス原料供給口、79:着火装置、80:シャッター、84、86:ガスセンサ、88:温度計、92:貯留部、94:加熱手段、96:熔融ガラス、97:ガラス清澄装置、F:燃料、G:酸素含有ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック体と、
前記ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室と、
前記燃焼室の接線方向に沿って形成された少なくとも一つの燃料用整流路と、
前記燃焼室の別の接線方向に沿って形成された少なくとも一つの酸素含有ガス用整流路と、
前記燃料用整流路の法線方向に沿って形成された燃料用供給路と、
前記酸素含有ガス用整流路の法線方向に沿って形成された酸素含有ガス用供給路と、
を備え、
前記円筒状の燃焼室において、前記燃料用供給路および前記燃料用整流路を介して導入された燃料と、前記酸素含有ガス用供給路および前記酸素含有ガス用整流路を介して導入された酸素含有ガスと、を混合燃焼させることを特徴とする管状火炎バーナ。
【請求項2】
前記燃料用整流路および前記燃料用整流路、あるいはいずれか一方の整流路を、前記ブロック体の厚さ方向に所定深さを有するとともに、ブロック体の上方から平面視した場合に、所定幅を有するスリット状とすることを特徴とする請求項1に記載の管状火炎バーナ。
【請求項3】
前記酸素含有ガス用供給路および前記酸素含有ガス用整流路、あるいはいずれか一方の供給路を円筒状とすることを特徴とする請求項1または2に記載の管状火炎バーナ。
【請求項4】
前記ブロック体の厚さ方向に重ね合わせられ、前記円筒状の燃焼室と連通する連通穴を有する延長ブロック体をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の管状火炎バーナ。
【請求項5】
前記ブロック体と、前記延長ブロック体と、の間に、これらの構成材料よりも線膨張率が大きい材料からなる介在板を備えることを特徴とする請求項4に記載の管状火炎バーナ。
【請求項6】
ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室に、その接線方向から燃料と酸素含有ガスを供給して管状火炎を生成し、その生成した管状火炎を吹き付けてガラス表面を加熱研磨する管状火炎バーナを用いたガラス加工方法であって、
前記ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程と、
供給した燃料および酸素含有ガスを、前記ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程と、
整流した燃料および酸素含有ガスを、それぞれ前記円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程と、
前記管状火炎を吹き付けてガラス表面を加熱研磨する工程と、
を含むことを特徴とする管状火炎バーナを用いたガラス加工方法。
【請求項7】
ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室に、その接線方向から燃料と酸素含有ガスを供給して管状火炎を形成し、その生成した管状火炎を用いて熔解させた無機塗料を、ガラス表面に吹き付けて加飾する管状火炎バーナを用いたガラス加工方法であって、
前記ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程と、
供給した燃料および酸素含有ガスを、前記ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程と、
整流した燃料および酸素含有ガスを、それぞれ前記円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程と、
前記管状火炎を用いて熔解させた無機塗料を、ガラス表面に吹き付けて加飾する工程と、
を含むことを特徴とする管状火炎バーナを用いたガラス加工方法。
【請求項8】
ブロック体の内部に形成され、少なくとも一端が開放された円筒状の燃焼室に、その接線方向から燃料と酸素含有ガスを供給して管状火炎を形成し、その生成した管状火炎を用いて、ガラス原料を熔解させる管状火炎バーナを用いたガラス加工方法であって、
前記ブロック体に形成した燃料用供給路および酸素含有ガス用供給路から、それぞれ燃料および酸素含有ガスを供給する工程と、
供給した燃料および酸素含有ガスを、前記ブロック体の内部に形成した燃料用整流路および酸素含有ガス用整流路でそれぞれ整流する工程と、
整流した燃料および酸素含有ガスを、それぞれ前記円筒状の燃焼室に導入するとともに、混合燃焼させて、管状火炎を生成する工程と、
前記管状火炎を用いて、ガラス原料を熔解させる工程と、
を含むことを特徴とする管状火炎バーナを用いたガラス加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19557(P2013−19557A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150955(P2011−150955)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000162917)興亜硝子株式会社 (19)
【Fターム(参考)】