説明

粉体の造粒方法

【課題】生産効率に優れ、粉体の本来の性能を損なわない粉体の造粒方法を提供する。
【解決手段】(1)粉体と、ラジカル重合性化合物と、前記粉体100質量部に対して10質量部以上の水と、を混合して粉体組成物を得る混合工程と、(2)前記粉体組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む、粉体の造粒方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の造粒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合反応により生成する粒子は、微粒子を発生しやすいことが知られ、かような製造過程における微粒子の発生は、種々の問題を引き起こす。例えば、取り扱い時に粉塵が発生しやすく、作業環境の悪化やロスが生じやすいといった問題、塵肺等、取扱者の健康上の問題、粉末の流動性が悪くなるので、ホッパーでのブリッジ形成、フラッシュ現象等が起こり易いといった問題点が挙げられる。また、発生した微粉末を廃棄することは、収率を大きく低下させることになると共に、廃棄コストの面からも不利となる。
【0003】
粉体が吸水性樹脂の場合、微粉末の発生は特に顕著な問題となる。一般的に吸水性樹脂は150μm未満の微粒子の含有量が少ない程好ましいとされている。微粉末は、おむつなどの吸水性物品を用いた場合に、吸水性物品中で目詰まりによって通液性を低下させ、液洩の要因となるためである。
【0004】
そこで、これら吸水性樹脂等の各種粉体の製造工程で必然的に発生してしまう微粉末を液体バインダを用いて造粒することで上記の問題を解決しようとする試みが種々なされている。例えば、前記液体バインダとして水溶性高分子を用いる技術(例えば、特許文献1)、水ガラスを用いる技術(例えば、特許文献2)、水中油型の変性ワックスエマルジョンを用いる技術(例えば、特許文献3)がある。
【特許文献1】特開昭63−154766号公報
【特許文献2】特開平7−70328号公報
【特許文献3】特開平6−263881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来使用されていたバインダは、その添加により、例えば吸水性樹脂の場合、吸水速度などの吸水性能が損なわれるなど、粉体本来の性能が損なわれる場合があった。また、従来のバインダの添加による方法では、均一な粒度の造粒物を得ることが困難な場合があった。
【0006】
また、特に粉体が吸水性樹脂である場合には、以下の問題点があった。吸水性樹脂は、高吸収倍率、優れた吸収速度、高いゲル強度、基材から水を吸い上げるための優れた吸引力等が必要とされる。しかし、吸水特性は架橋密度に影響を受けるため、架橋密度が大きくなるとゲル強度は増加するが吸水量が低下するなど、特性間の関係は必ずしも正の相関を示さない。特に、吸収倍率と、吸収速度、ゲル強度および吸引力等とは相反する関係にある。このため、吸収倍率が向上した吸水性樹脂では、粒子が液体に接した場合に、吸水が均一に行なわれず吸水性樹脂の塊になった部分を形成したり、吸水性樹脂粒子全体に水が拡散しないため吸収速度等を極端に低下させる場合がある。
【0007】
このような現象を緩和し、吸収倍率が高く、かつ吸収速度等も比較的良好な吸水性樹脂を得るために、吸水性樹脂の表面を架橋剤を用いて処理し、吸水性樹脂の表面の架橋密度を高める表面処理など、何らかの表面処理を行うことが頻繁に行われる。従来の吸水性樹脂の造粒方法では、かような操作がさらに必要となるため、生産効率の点から問題があった。
【0008】
このような現状のもと、本発明は、生産効率に優れ、粉体の本来の性能を損なわない粉体の造粒方法、また、残存するモノマー(ラジカル重合性化合物)が低減された粉体造粒物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)粉体と、ラジカル重合性化合物と、前記粉体100質量部に対して10質量部以上の水と、を混合して含水した粉体組成物を得る混合工程と、(2)前記粉体組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含むことを特徴とする、粉体の造粒方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粉体の造粒方法は、非常に簡便であり、種々の粉体に幅広く適用できる。また、吸水性樹脂に適用した場合には、吸水特性、特に加圧下吸水倍率に優れた吸水性樹脂を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、(1)粉体と、ラジカル重合性化合物と、前記粉体100質量部に対して10質量部以上の水と、を混合して含水した粉体組成物を得る混合工程と、(2)前記粉体組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む、粉体の造粒方法である。
【0012】
以下、各工程について詳述する。
【0013】
(1)混合工程
本工程においては、粉体と、ラジカル重合性化合物と、粉体100質量部に対して10質量部以上の水とが混合される。後述するラジカル重合開始剤を本混合工程において混合してもよい。粉体、ラジカル重合性化合物、水および場合によっては重合開始剤を混合する際の混合順序には限定がない。したがって、それぞれ単独で粉体と混合してもよく、予めラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物とを含む水溶液を調製し、これを粉体に混合してもよい。しかしながら、ラジカル重合性化合物が粉体の表面に均一に分散されるためには、ラジカル重合性化合物と場合によってラジカル重合開始剤とを含む水溶液を予め調製し、これと粉体とを混合することが好ましい。なお、ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物と粉体とを混合した後に、水と混合してもよい。ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物とを溶解させる水溶液は、水のほかに、これらの溶解性を損なわない範囲で他の溶媒を含んでいてもよいが、好ましくは水のみを使用する。
【0014】
本工程において用いられる水の量は特に制限されないが、粉体100質量部(固形分100質量%に換算したもの)に対して、10質量部以上、10〜150質量部、10〜120質量部、15〜100質量部、15〜50質量部および30〜50質量部の順で好ましい。かような範囲であれば、造粒が効果的に行われ、また、活性エネルギー線を照射した後の乾燥工程で乾燥に多くのエネルギーを必要としない。
【0015】
また、粉体組成物の混合性を向上させるため、粉体、ラジカル重合性化合物、水、またはそれらの混合物に対して混合助剤を添加することが好ましい。この際、混合助剤として、水は含まない。また、混合助剤の添加時期は特に制限されないが、混合助剤を、工程(1)と同時にまたは工程(1)の前に添加することが好ましい。
【0016】
これらの混合助剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、混合助剤の添加量は、粉体の水による凝集を抑制し、水溶液と粉体との混合性を向上できるものであれば特に制限されないが、例えば、粉体100質量部に対して、0.01〜40質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の量で添加されることが好ましい。または、本発明では、混合助剤は、水溶液全量に対して、好ましくは0〜40質量%、より好ましくは0.01〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%の量で使用されてもよい。
【0017】
工程(1)においては、粉体と、ラジカル重合性化合物と、粉体100質量部に対して10質量部以上の水とが均一に混合される条件であれば、混合条件は、特に制限されるものではないが、以下、好適な条件を例示する。
【0018】
工程(1)前の粉体及び水の温度は、特に制限されないが、例えば、混合工程前の粉体の温度は、0〜150℃、10〜120℃、20〜100℃、50〜100℃の順で好ましい。この際、工程(1)前の粉体の温度が150℃を超えると、粉体が熱で劣化する可能性があり、逆に0℃未満であると、水が結露してしまい運転を安定して行なえない可能性がある。また、工程(1)前の水の温度は、好ましくは5〜80℃、より好ましくは10〜60℃、特に好ましくは20〜50℃である。かような温度範囲であれば、工程(1)前に水が過度に蒸発して、充分に造粒が行われない可能性が低く、また、水が結露してしまい運転を安定して行なえない可能性も低い。
【0019】
工程(1)における混合温度は、0〜150℃、10〜120℃、20〜100℃、30〜90℃、40〜70℃の順で好ましい。この際、混合温度が150℃を超えると、粉体が熱で劣化する可能性がある。逆に、混合温度が0℃未満であると、水が結露してしまい運転を安定して行なえない可能性がある。なお、混合工程を高温で行なうと、ラジカル重合開始剤を添加する場合、熱により、少ない活性エネルギー線照射量でラジカル重合性化合物の重合が行われるため、好ましい。
【0020】
また、工程(1)における混合時間は、各成分が均一に混合できる時間であれば特に制限されない。具体的には、混合時間は、好ましくは0.1秒〜60分、より好ましくは1秒〜30分、更により好ましくは2秒〜20分、最も好ましくは5秒〜10分である。この際、混合時間が下限を下回ると、各成分が均一に混合しない可能性があり、逆に、混合時間が上限を超えて必要以上に長くなると、吸水性樹脂内部に過剰な水が浸透していくため、活性エネルギー線の照射による造粒が進行しにくくなる可能性がある。
【0021】
造粒効果を向上させるためには、混合/照射系を密閉などすることにより水蒸気の過剰な漏れを抑えることが好ましい。
【0022】
混合工程に使用される機器は、特に限定されず、通常の混合機、例えば、V型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、回転円板型混合機、パドル型混合機、気流型混合機、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、高速流動式混合機、浮上流動式混合機等を用いる方法がある。
【0023】
(2)照射工程
本工程においては、上述した工程(1)で得られた粉体組成物に活性エネルギー線を同時または別途照射する。
【0024】
活性エネルギー線は重合開始剤として用いられるものであり、該活性エネルギー線の照射によって、粉体間に存在するラジカル重合性化合物が重合する。この重合により、粉体同士の接着性が増加し、粉体が造粒される。前記混合工程においても、水がバインダとなり、ある程度造粒が進行するが、活性エネルギー線の照射により造粒が効率的にかつ均一に行われる。本発明では、粉体間の接着性に寄与する水とラジカル重合性化合物の量を制御し、好ましくは、ラジカル重合開始剤を添加し、その量を造粒性と粉体物性のバランスがとれるように最適化することで、残存するラジカル重合性化合物を短時間で低減できる有用な造粒技術を見出すことができた。
【0025】
活性エネルギー線の照射は、粉体、水、およびラジカル重合性化合物の混合中に行ってもよく、これらの2つ以上を混合した後に照射してもよい。すなわち、工程(1)と工程(2)は同時に行ってもよく、また工程(1)の後に、工程(2)を行ってもよい。しかしながら、造粒が均一的に形成しうる点で、好ましくは、工程(1)の後に、工程(2)を行う。
【0026】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、ガンマー線の1種または2種以上が挙げられる。好ましくは、紫外線、電子線である。活性エネルギー線の人体への影響を考慮すると、紫外線がより好ましい。重合開始剤を用いない場合、好ましくは波長300nm以下、より好ましくは波長200nm以下、特に好ましくは波長100〜200nmの紫外線を用いる。また、重合開始剤を用いる場合は、好ましくは波長300nm以下、より好ましくは180〜290nmの紫外線を用いる。照射条件は、紫外線を用いる場合には、好ましくは、照射強度が3〜1000mW/cm、照射量が100〜10000mJ/cmである。
【0027】
紫外線を照射する装置としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を例示することができる。紫外線が照射される限り、好ましくは波長300nm以下の紫外線が照射される限り、他の放射線や波長を含んでもよく、その手法は特に限定されるものではない。なお、電子線を用いる場合には、好ましくは加速電圧を50〜800kV、吸収線量を0.1〜100Mradとする。
【0028】
一般に、活性エネルギー線を照射する時間は、好ましくは0.1分以上60分未満でよく、より好ましくは0.2分以上30分未満、さらに好ましくは1分以上15分未満である。
【0029】
本発明では、活性エネルギー線を照射して造粒する際には、加温する必要はない。ただし、該活性エネルギー線の照射を、加熱下で行なうこともできる。粉体が吸水性樹脂である場合には、これによって、吸水特性に優れる吸水性樹脂が得られる。活性エネルギー線照射時の温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは10〜120℃、さらに好ましくは20〜100℃、特に好ましくは50〜100℃の範囲である。なお、活性エネルギー線を照射すると輻射熱が発生する場合がある。この場合には、活性エネルギー線の照射が加熱下に行なわれている。
【0030】
なお、後述するラジカル重合開始剤は、加熱により活性化されるが、本発明では、活性エネルギー線の照射によりラジカル重合開始剤が活性化されるため、加熱は補助的なものである。なお、加熱する方法としては、活性エネルギー線照射装置内に加熱された気体を導入する方法、活性エネルギー線照射装置の周りをジャケット等で加熱する方法、活性エネルギー照射線を照射する際の輻射熱により加熱する方法、予め加熱された粉体に活性エネルギー照射線を照射する方法が挙げられる。
【0031】
活性エネルギー線照射の際には、攪拌等により、粉体を流動させてもよいし、粉体を静置してもよい。本発明の造粒方法において、好適な一実施形態は、上記工程(1)と、該粉体組成物を静置して、活性エネルギー線を照射する工程(2)とを含む、造粒方法である。静置して照射することにより、塊状の粗大な造粒物が得られるという効果がある。
【0032】
工程(2)の具体的方法は、粉体組成物に均一に活性エネルギー線を照射できれば、特に限定されないが、例えば、流動状態で行うことが好ましい。流動状態とは、ゆるやかな攪拌による部分的流動も含む概念である。粉体組成物を流動させることによってラジカル重合開始剤と粉体との混合物に、活性エネルギー線を均一に照射することができ、得られる造粒物の粒子径制御がしやすく、造粒の効果がより一層顕著となる。活性エネルギー線の照射の際に粉体を撹拌できる装置としては、特に限定されず、振動型混合機、振動フィダー、リボン型混合機、円錐型リボン型混合機、スクリュー型混合押出機、気流型混合機、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、パドル型混合機、高速流動式混合機、浮上流動式混合機、円筒縦型混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー、連続式レディゲミキサー等が挙げられる。また、筒状または箱状などの形状を有する装置中で吸水性樹脂組成物を流動させ、当該装置の周囲から活性エネルギー線を照射してもよい。この際、混合物を流動させるためには、粉体の空気輸送に用いられるように空気などの気体の圧力を利用してもよい。空気を利用する場合には、粉体の乾燥を防ぐために空気を加湿することが好ましい。活性エネルギー線の照射は、多方向から行うと短時間で均一に表面処理することができる。なお、上記装置を構成する材料は、吸水性樹脂組成物への活性エネルギー線の照射を大きく阻害しない材料であれば特に制限されないが、例えば、石英ガラスなどが例示される。
【0033】
一般に、ラジカルを活性種とする反応は、酸素によって阻害されることが知られているが、本発明の製造方法においては、活性エネルギー線の照射の際には、雰囲気を不活性雰囲気にする必要はない。
【0034】
活性エネルギー線の照射後には、乾燥などのために、必要に応じて、粉体を50〜250℃の温度で加熱処理してもよい。
【0035】
生産効率の観点からは、上記工程(1)と工程(2)とで用いられる製造機器は、同一のものであることが好ましく、また、撹拌混合造粒機構による攪拌造粒機が好ましい。攪拌造粒機とは、回転する撹拌子(攪拌翼、攪拌羽根)を有し、この攪拌子を撹拌することにより混合・造粒できる装置をいう。攪拌造粒機には、パグミル、ヘンシェル、アイリッヒなどがある(改訂五版 化学工学便覧 表18・12(昭和63年3月18日発行))。好適な攪拌造粒装置は、原料が投入される混合槽内(例えばセパラブルフラスコ)に、回転可能に配設された撹拌羽根(水平軸形、垂直軸形)を備えた撹拌造粒機であり、末端に羽根がついている攪拌棒は、混合槽底面に対して垂直方向に設置されている(垂直軸形)ことが好ましい。選択される攪拌羽根の形状は、特に限定されるものではないが、レーディゲミキサーのようなシャベル;パドル;タービン;湾曲翼等が挙げられる。造粒の効果がより顕著となることから、攪拌羽根の形状は、パドル、傾斜パドル、湾曲羽根ファンタービン、矢羽根タービン、プロペラ、ファウドラー型、ブルマージン型が好ましい。また、パドル、傾斜パドル、ファウドラー型、プロペラの攪拌羽根を有する攪拌造粒機において、適切な回転速度(通常300〜600rpm、好ましくは400〜500rpm)で回転させることにより、混合槽内に粉体組成物の層流が少なくとも一部生じているように、好ましくは乱流が発生しないように行うことが、造粒の効果を向上させる観点から、好ましい。また、攪拌棒は、混合槽底面に対して垂直方向に設置され、重力と攪拌羽根の回転で粉体が加圧されることが、さらに好ましい。
【0036】
以下、工程(1)、工程(2)で用いられる各成分について詳述する。
【0037】
(a)粉体
本発明に用いられる粉体としては、特に限定されず、具体的には、例えば、小麦製粉等の穀類、セラミックス、粘土、プラスチックス、カーボンブラック、洗剤、および、水溶性樹脂や吸水性樹脂等の親水性樹脂等が挙げられる。その粒子径もまた特に限定されるものではないが、質量平均粒子径が、300μm以下の粉体が好ましい。上記粉体は、例えば、微粉末(例えば、粒子径150μm未満の粉体)のみでもよいし、微粉末と該微粉末よりも大きな粒子との混合物でもよいし、微粉末を除いた粉体でもよい。上記吸水性樹脂は、表面架橋が施されていてもよいが、好ましくは表面架橋されていない吸水性樹脂を用いる。
【0038】
本発明で好適に用いられる粉体は吸水性樹脂である。該吸水性樹脂としては、エチレン性不飽和単量体を必須に含む単量体成分を用いて、従来公知の方法などを用いて重合により得られるものが好ましい。
【0039】
エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されず、好ましくは末端に不飽和二重結合を有する単量体、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のアニオン性単量体やその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、等のノニオン性親水基含有単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のアミノ基含有不飽和単量体やそれらの4級化物;等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、これらの塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化物、(メタ)アクリルアミドであり、特に好ましくは、アクリル酸および/またはその塩である。
【0040】
単量体としてアクリル酸塩を用いる場合には、吸水性樹脂の吸水性能の観点からアクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩から選ばれるアクリル酸の1価塩が好ましい。より好ましくはアクリル酸アルカリ金属塩であり、特に好ましくは、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩から選ばれる金属塩である。
【0041】
吸水性樹脂を製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記単量体以外の他の単量体成分を用いることができる。例えば、炭素数8〜30の芳香族エチレン性不飽和単量体、炭素数2〜20の脂肪族エチレン性不飽和単量体、炭素数5〜15の脂環式エチレン性不飽和単量体、アルキル基の炭素数4〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの疎水性単量体を例示することができる。これら疎水性単量体の割合は、一般に、上記エチレン性不飽和単量体100質量部に対し、0〜20質量部の範囲である。疎水性単量体が20質量部を超えると、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下する場合がある。
【0042】
本発明で使用する吸水性樹脂は、内部架橋の形成によって不溶性となる。このような内部架橋は、架橋剤を使用しない自己架橋型でもよいが、一分子内に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性官能基を有する内部架橋剤を使用して形成することができる。
【0043】
このような内部架橋剤としては、特に限定されず、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、(メタ)アクリル酸多価金属塩、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの内部架橋剤は2種以上を併用してもよい。
【0044】
内部架橋剤の使用量は、吸水性樹脂を製造する際に用いる単量体成分の全量に対して、好ましくは0.0001〜1モル%、より好ましくは0.001〜0.5モル%、さらに好ましくは0.005〜0.2モル%である。0.0001モル%を下回ると、内部架橋が樹脂中に導入されず、一方、1モル%を超えると、吸水性樹脂のゲル強度が高くなりすぎ、吸水倍率が低下する場合がある。上記内部架橋剤を用いて架橋構造を重合体内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記単量体の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよい。
【0045】
吸水性樹脂を得るには、上記単量体および内部架橋剤を含む単量体成分を水溶液中で重合すればよい。この際、使用できる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド;過酸化水素;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物、等の水溶性ラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤がある。また、例えば、上記ラジカル重合開始剤に、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸、第2鉄塩等の還元剤を組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
【0046】
重合開始剤の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対し、0.01〜20質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量部の範囲、特に好ましくは1〜10質量部の範囲である。重合開始剤の混合量が0.01質量部よりも少ないと、活性エネルギー線を照射しても吸水性樹脂を充分に造粒することができなくなる場合がある。一方、重合開始剤の混合量が20質量部よりも多いと、造粒された吸水性樹脂の吸水性能が低下することがある。
【0047】
上記単量体水溶液中の単量体の濃度に特に制限はないが、好ましくは15〜90質量%、より好ましくは35〜80質量%である。15質量%を下回ると、得られたヒドロゲルの水分量が多いため、乾燥のための熱量や時間を必要とし、不利である。
【0048】
重合方法としては特に限定されず、周知の方法、例えば、水溶液重合、逆相懸濁重合、沈殿重合、塊状重合等を採用することができる。これらの方法の中でも、重合反応の制御の容易さや、得られる吸水性樹脂の性能面から、単量体を水溶液に溶解して重合させる水溶液重合や、逆相懸濁重合が好ましい。
【0049】
上記の重合を開始させる際には、上記重合開始剤を使用して開始させる。また、上記重合開始剤の他にも紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を単独あるいは重合開始剤と併用してもよい。重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲がより好ましい。重合開始時の温度が上記の範囲を外れると、得られる吸水性樹脂の残存単量体の増加や、過度の自己架橋反応が進行して吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがある。
【0050】
なお、逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許第4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号などの米国特許に記載されている。水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許第4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号などの米国特許や、欧州特許第0811636号、同0955086号,同0922717号などの欧州特許に記載されている。これら重合法に例示の単量体や開始剤なども本発明では適用できる。
【0051】
なお、水溶液重合を行なう場合には、アクリル酸等の部分中和物を重合したり、アクリル酸等の酸基含有単量体を重合した後に水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ化合物により重合物を中和することもできる。したがって、本発明で使用される吸水性樹脂は、酸基を含有しかつ所定の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)を有するものであることが好ましい。この際、得られる吸水性樹脂の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)は、25〜100モル%の範囲であり、好ましくは50〜90モル%の範囲、さらに好ましくは50〜75モル%、最も好ましくは60〜70モル%の範囲である。
【0052】
重合後、通常は含水ゲル状架橋重合体である。本発明では、この含水ゲル状架橋重合体をそのまま吸水性樹脂として使用することもできるが、好ましくは乾燥され、後述の含水率(%)(100−固形分(%))とされる。
【0053】
一方、本発明で用いられる吸水性樹脂としては、好ましくは特にアクリル酸(塩)を主成分とするモノマーを重合して得られる粉末状の吸水性樹脂である。重合によって得られた含水ゲル状物は、好ましくは乾燥の後に粉砕されて吸水性樹脂とする。前記乾燥は、例えば、熱風乾燥機などの乾燥機を用い、好ましくは100〜220℃、より好ましくは120〜200℃で乾燥させればよい。
【0054】
このような粉砕に用いることができる粉砕機としては、例えば、粉体工学便覧(粉体工学会編、初版)の表1.10で分類されている粉砕機種名のうちでも、剪断粗砕機、衝撃破砕機、高速回転式粉砕機に分類されて、切断、剪断、衝撃、摩擦といった粉砕機構の1つ以上の機構を有するものが好ましく使用でき、それら機種に該当する粉砕機の中でも切断、剪断機構が主機構である粉砕機が特に好ましく使用できる。例えば、ロールミル(ロール回転形)粉砕機が好ましく挙げられる。
【0055】
上記に加えてあるいは上記に代えて、本発明で用いられる吸水性樹脂は、低位の中和率の吸水性樹脂前駆体を得、該吸水性樹脂前駆体に塩基を加えることによって得られることが好ましい。従来では、表面処理(表面架橋)に多官能表面処理剤を使用していた。この多官能表面処理剤は、吸水性樹脂中のカルボキシル基(−COOH)とは反応するがその塩(例えば、−COONa)とは反応しないという性質を有する。このため、予め−COOH/−COONaの存在割合が適当な範囲になるように調節したエチレン性不飽和単量体混合物(例えば、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムとの混合物)を重合することにより、−COOHと−COONaが均一に分布した吸水性樹脂を製造して、これを多官能表面処理剤による表面架橋に使用する場合には、均一な架橋が得られる。一方で、アクリル酸等の酸型のエチレン性不飽和単量体を主成分として重合した後、当該重合体を水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ化合物で中和することにより得られる吸水性樹脂は、可溶分が少なく、ゲル強度が高いが、多官能表面処理剤で表面架橋する場合には、−COOHと−COONaが均一に分布していないため、吸水特性が低下してしまう。このため、後者のような方法で得られた吸水性樹脂に、従来のような多官能表面処理剤による表面架橋を施すことは望ましくなかった。本発明の方法によれば、一旦、アクリル酸等の酸型のエチレン性不飽和単量体を主成分とする単量体/単量体混合物を重合して、低位の中和率の吸水性樹脂前駆体を得た後、この吸水性樹脂前駆体を水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ化合物で中和することによって得られる吸水性樹脂を改質することが可能になり、当該方法によって得られた改質された吸水性樹脂は、高いゲル強度及び優れた吸水特性を発揮できる。
【0056】
上記したように、吸水性樹脂を、酸型のエチレン性不飽和単量体を主成分とする単量体/単量体混合物を重合して、低位の中和率の吸水性樹脂前駆体を得た後、この吸水性樹脂前駆体に塩基を加えることによって得る場合において、塩基は、固体または液体のいずれの形態で添加されてもよい。好ましくは、塩基は、液体、特に水溶液の形態で添加することが好ましい。このように塩基を水溶液の形態で添加すると、得られた吸水性樹脂が含水状態にあるため、吸水性樹脂前駆体へ塩基を添加する工程と吸水性樹脂組成物を得る工程とを同時に行なうことができる。上記実施形態において使用できる塩基は、低位の中和率の吸水性樹脂前駆体を所望の中和率にまで中和できるものであれば特に制限されず、従来公知の無機または有機の塩または酸を使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸アンモニウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸アンモニウム等が挙げられる。これら塩基は、一種類のみを単独で使用してもあるいは二種類以上を適宜混合して用いてもよい。上記塩基のうち、アクリル酸等の酸型のエチレン性不飽和単量体を主成分とする単量体/単量体混合物を重合して得られる低位の中和率の吸水性樹脂前駆体を中和する場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の一価陽イオンの水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム等の一価陽イオンの炭酸塩が、工業的に入手が容易で、しかも、高物性であり、また、効率的に所望の中和率に調節することができることため、好ましい。なお、上記実施形態における塩基の添加量は、特に制限されず、混合工程(1)で使用される吸水性樹脂が上記したような好ましい範囲の所望の中和率に適宜選択される。
【0057】
本発明において、「低位の中和率の吸水性樹脂前駆体」とは、中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)が低いまたは酸基が中和されてない(中和率が0である)吸水性樹脂前駆体をいい、具体的には、中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)が0〜50モル%、より好ましくは0〜20モル%程度のものをいう。このような低位の中和率の吸水性樹脂前駆体は、上記方法において、好ましくは上記中和率になるように、アクリル酸などの酸基を有する単量体を主成分とした単量体混合物を使用することによって上記と同様の方法によって得られるため、詳細な説明はここでは省略する。
【0058】
(b)ラジカル重合性化合物
本発明に用いられるラジカル重合性化合物は、後述する紫外線照射により重合し、粉体間の接着性を増加させることによって、粉体の造粒に寄与する。また、粉体造粒物に含まれる残存ラジカル重合性化合物は、粉体に対して、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下に本発明の製造方法により制御できる。
【0059】
本発明で粉体と混合するラジカル重合性化合物としては、好ましくは前述したエチレン性不飽和単量体と架橋性不飽和単量体とがある。本明細書中、「エチレン性不飽和単量体」とは、1分子内に1つのビニル基を有する単量体であり、「架橋性不飽和単量体」とは、1分子内に2以上のビニル基を有する単量体である。エチレン性不飽和単量体と架橋性不飽和単量体とは、それぞれ単独で使用してもよく、両者を併用してもよい。好ましくは、吸水性樹脂を製造するに用いたエチレン性不飽和単量体と架橋性不飽和単量体との併用である。なお、造粒される粉体が、吸水性樹脂の場合、モル組成比はベースポリマーとしての吸水性樹脂と同一でも異なってもよいが、好ましくはベースポリマーとしての吸水性樹脂の組成と比較して、エチレン不飽和単量体に対して相対的に多くの架橋性単量体を含むようにする。特に、エチレン性不飽和単量体としてアクリル酸(塩)を主成分とし、これに架橋性不飽和単量体を併用すると、吸水特性に優れる点で好ましい。なお、上記のベースポリマーとは、造粒処理前の吸水性樹脂を指す。
【0060】
また、粉体と混合するラジカル重合性化合物を適宜選択することにより、粉体表面に親水性、疎水性、接着性、生体親和性などの様々な性質を付与することができる。粉体表面に親水性を付与するエチレン性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコール含有単量体が例として挙げられる。粉体表面に疎水性を付与するエチレン性不飽和単量体としては、メチルメタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートや、スチレンなどの芳香族基含有単量体、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートなどのフッ素含有単量体が例として挙げられる。吸水性樹脂粒子表面に接着性を付与するエチレン性不飽和単量体としては、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのガラス転移温度が25℃以下のポリマーを形成する単量体、ビニルアミン、アリルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性単量体、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン基を含む単量体が例として挙げられる。中でも、シラン基を含む単量体が、粒子間の接着性だけでなく、粒子の金属、ガラス、パルプなどの基材への接着性が向上できるため、好ましく使用される。さらに、粉体が吸水性樹脂である場合、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを部分的に中和されたアクリル酸と過硫酸塩を含む水溶液に加えると、加えない場合に比べて通液性が優れた吸水性樹脂を得ることができる。粉体表面に生体親和性を付与するエチレン性不飽和単量体としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどのリン脂質様の構造を有する単量体が例として挙げられる。
【0061】
粉体が吸水性樹脂の場合、吸水性樹脂粒子表面の性質を改変するという目的を達成するためには、ラジカル重合性化合物は、上記(a)で記載した吸水性樹脂を製造するのに使用されるエチレン性不飽和単量体及び内部架橋剤とは異なる化合物を含むことが望ましい。この際、上記(a)で記載した吸水性樹脂を製造するのに使用されるエチレン性不飽和単量体と中和率の異なるエチレン性不飽和単量体は、「上記(a)で記載した吸水性樹脂を製造するのに使用されるエチレン性不飽和単量体及び内部架橋剤とは異なるラジカル重合性化合物」に包含される。特に、ラジカル重合性化合物中に、窒素、硫黄、リン、ケイ素、及びホウ素からなる群より選択される少なくとも1つの酸素以外のヘテロ原子を含むエチレン性不飽和単量体が含まれることが好ましい。これにより、吸水性樹脂粒子の性質をより大きく改変できる。より好ましくは、ケイ素、特にシラン基(XSi(OR)4−n、但し、Rは、独立して、メチル、エチル、フェニルまたはアセトキシ基を表わし、nは、1〜3の整数である)、リンを含むエチレン性不飽和単量体が使用される。また、酸素以外のヘテロ原子を含むエチレン性不飽和単量体をラジカル重合性化合物として使用する場合の当該酸素以外のヘテロ原子を含むエチレン性不飽和単量体の量は、所望の性質によって適宜選択できるが、ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対して、50質量部以下、より好ましくは0.01〜20質量部、最も好ましくは0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0062】
上記したエチレン性不飽和単量体の中で水溶性の低い化合物は、必要に応じてラジカル重合開始剤及び他のラジカル重合性化合物を含む水溶液に分散するか、親水性有機溶媒に溶解して該水溶液に混合した後、吸水性樹脂に添加してもよい。または、必要に応じて有機溶媒に溶解して、該水溶液とは別に添加してもよい。この際、エチレン性不飽和単量体の添加順序は、特に制限されず、上記水溶液より前にあるいは後に添加してもいずれでもよい。
【0063】
また、粉体の特性と経済的な観点からは、ラジカル重合性化合物は、アクリル酸および/またはアクリル酸のアルカリ金属塩を含むことが好ましい。この際、アクリル酸および/またはアクリル酸のアルカリ金属塩の量は、所望の性能などによって適宜選択でき、特に制限されるものではないが、ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対して、アクリル酸(塩)が、50質量部以上、より好ましくは70〜95質量部の量で使用されることが好ましい。
【0064】
また、本発明において使用できる架橋性不飽和単量体としては、特に制限されないが、例えば、吸水性樹脂の製造で使用される内部架橋剤として例示した単量体や2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパンなどが挙げられる。これらのうち、ポリエチレングリコールジアクリレートや2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパンが好ましく使用される。このような場合の架橋性不飽和単量体の量は、所望の性質によって適宜選択できるが、ラジカル重合性化合物の全量に対して、0.05〜20モル%、より好ましくは0.1〜10モル%、最も好ましくは0.3〜5モル%であることが好ましい。また、架橋性不飽和単量体は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対し、50質量部以下、好ましくは0.01〜20質量部の範囲、より好ましくは0.1〜10質量部の範囲である。架橋性不飽和単量体を併用することにより加圧下吸収倍率をより向上せしめることができる。架橋性不飽和単量体を併用することで、加圧下吸収倍率が向上する理由は明確ではないが、該水溶性エチレン性不飽和単量体が重合時に架橋性不飽和単量体によって架橋構造を形成し、これが吸水性樹脂の表面に導入されるためと推察される。
【0065】
上記ラジカル重合性化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物で使用されてもよく、また、後者の場合の組合わせは、付与すべき性質などにより適宜に選択でき、特に限定されるものではない。
【0066】
使用するラジカル重合性化合物の量は、好ましくは吸水性樹脂100質量部に対し1〜50質量部の範囲、より好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは1〜10質量部の範囲である。かような範囲であれば、粉体の造粒が良好に行われ、また粉体の特性が維持されうる。
【0067】
(d)ラジカル重合開始剤
ラジカル重合開始剤を同時または別途添加することによって、活性エネルギー線照射による重合性化合物の重合反応性がより向上する。本発明に用いられうるラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等の光分解型重合開始剤が挙げられる。また、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩などのアゾ化合物;等の熱分解型重合開始剤を併用してもよい。さらに、これら重合開始剤に、亜硫酸塩、L−アスコルビン酸(塩)等の還元剤を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
粉体が吸水性樹脂の場合、親水性および吸水性に優れる吸水性樹脂の表面に均一に容易に分散でき、これにより吸水特性に優れる吸水性樹脂を製造することができるため、水溶性ラジカル重合開始剤であることが好ましい。具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−2(−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩等の水溶性アゾ化合物等が挙げられる。これらの中でも、特に過硫酸塩を使用すると、表面処理後の吸水性樹脂の加圧下吸収倍率、通液性、自由膨潤倍率がいずれも優れる点で好ましい。なお、水溶性ラジカル重合開始剤とは、水(25℃)に1質量部以上溶解するものを指し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。
【0069】
ラジカル重合開始剤の使用量に制限はないが、本発明では、粉体100質量部に対し、0.01〜20質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量部の範囲、特に好ましくは1〜10質量部の範囲である。かような範囲であれば、粉体の性能が維持され、また、造粒が効果的に行われるため、好ましい。
【0070】
(e)混合助剤
混合助剤は、エチレン性不飽和単量体または水溶性ラジカル重合開始剤以外の水溶性または水分散性の化合物であり、粉体の水による凝集を抑制し、水溶液と粉体との混合性を向上させる。この際、混合助剤として、水は含まない。混合助剤としては、特に制限されないが、水溶性または水分散性の化合物であることが好ましい。このような水溶性または水分散性の化合物としては、具体的には、界面活性剤、水溶性高分子、親水性有機溶媒、水溶性無機化合物、無機酸、無機酸塩、有機酸及び有機酸塩が使用できる。なお、本明細書において、水溶性の化合物とは、室温で水100gに対する溶解度が1g以上のものをいい、好ましくは10g以上である。水以外の混合助剤を添加することによって、粉体の水による凝集を抑制して、水溶液と粉体とが均一に混合できるため、次工程で活性エネルギー線を照射する際に、活性エネルギー線を粉体に均等にかつまんべんなく照射することができ、粉体全体を均一に造粒することが可能になる。この際使用できる混合助剤としては、粉体の水による凝集を抑制し、水溶液と吸水性樹脂との混合性を向上できるものであれば特に制限されない。具体的には、界面活性剤、水溶性高分子、親水性有機溶媒、水溶性無機化合物、無機酸、無機酸塩、有機酸及び有機酸塩が使用できる。
【0071】
混合助剤を使用する場合の、混合助剤の使用形態は特に制限されず、粉末の形態で使用されてもあるいは溶液中に溶解、分散若しくは懸濁させて使用してもよいが、好ましくは水溶液の形態で使用される。
【0072】
また、混合助剤を使用する場合の、混合助剤の添加順序もまた特に制限されず、粉体に予め混合助剤を加えた後、これに水溶液を添加して混合する方法、および混合助剤を水溶液に溶解して粉体と同時に混合する方法などのような方法も使用できる。
【0073】
このような界面活性剤としては、HLBが7以上の非イオン性界面活性剤またはアニオン系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を用いることができる。例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアシルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルポリオキシエチレンサルフェート塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、等が例示できる。中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの数平均分子量は、200〜100,000が好ましく、500〜10,000がさらに好ましい。数平均分子量が大き過ぎると、水への溶解度が低下して、添加量を増やせない上、溶液の粘度も増加するので、粉体との混合性がよくない。一方、数平均分子量が小さ過ぎると、混合助剤として効果が劣る。
【0074】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、デンプン等を挙げることができる。中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルと同じく、数平均分子量は200〜100,000が好ましく、500〜10,000がさらに好ましい。
【0075】
親水性有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、アルコキシ(ポリ)エチレングリコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類;などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0076】
水溶性無機化合物としては、重合開始剤以外の塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩、塩化アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、塩化カルシウム、アルコキシチタン、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウムなどの多価金属塩、および炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩などの非還元性アルカリ金属塩pH緩衝剤が例示される。
【0077】
また、無機酸(塩)としては、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、およびそれらの塩、例えば、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が、また、有機酸(塩)としては、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびそれらの塩、例えば、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が代表的なものとして例示される。
【0078】
上記例示のうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、水溶性多価金属塩、塩化ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸、及び塩酸が混合助剤として好ましく使用される。
【0079】
本発明の第一は、造粒方法に係るものであるため、本発明は所望とする粒子径未満の粒子を造粒して、適切な粒子径とする方法として用いることができる。本発明の造粒方法により微粉末のように、従来廃棄ロスとなっていたものを無駄なく使用することができる。例えば、所望とする粒子径未満の粒子(微粒)と、所望とする粒子径の粒子(目的粒)と、分級により所望とする粒子径より大きい粒子(粗粒)に分級した後、微粒を本発明の造粒方法により、造粒することにより、微粒をリサイクルすることができる。なお、目的粒の粒子径は、用いられる粉体の用途等に応じて適宜設定される。
【0080】
また、上記のように微粒のみを造粒するのではなく、粉体全体を本発明の第一の方法によって、造粒してもよい。かような形態であっても、発生する微粒を造粒することができ、含まれる微粒の量が低減する。具体的には、本発明の第一の造粒方法によって得られた粉体100質量部に対して、粒子径500μm未満の粉体が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。造粒後の粉体の粒度分布は、造粒前の粉体の粒度分布と比較して高粒度側にシフトする。シフトする割合は、ラジカル重合剤の種類や量、水の比率、活性エネルギー線の照射条件、照射時の流動のさせ方等を適切に設定することにより変化する。粉体が吸水性樹脂である場合、最終的に得られる粉体は、500μm未満(ふるい分級で規定)の範囲の粒子径の粒子が、粉体100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。また、150μm未満の範囲の粒子径の粒子が粉体100質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0081】
粉体が吸水性樹脂の場合、求められる特性から、最終的な粒子径が、好ましくは150μm以上が全粉体に対して好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、特に好ましくは100質量%である。粒子径が150μm以上の吸水性樹脂は、使用時に目詰まりを生じたり、吸水性能を低下させたりする虞が少ない。150μm以上の粒子径に整粒するために、吸水性樹脂を製造した後、150μm未満の吸水性樹脂(1)と150μm以上の吸水性樹脂(2)とを分級し、吸水性樹脂(1)を本発明の第一の造粒方法により造粒した後、再び分級し、得られた150μm以上の吸水性樹脂(3)を吸水性樹脂(2)に戻すことによって、所望の粒子径(150μm以上)の粒子が多く得られる。このように整粒された吸水性樹脂をさらに工程(1)および工程(2)を行ってもよいし、また、他の表面架橋工程を行ってもよい。なお、上記粒子径の数値としては、以下の実施例で記載された粒度分布の測定方法で測定された値を採用するものとする。
【0082】
本発明の第二は、上記第一の発明で得られた粉体に対して分級または粉砕の少なくとも一方を行う、粉体の整粒方法である。
【0083】
第一の造粒方法によって得られた粉体中には、所望の粒子径の粒子(目的粒)以外に、粒子が複数個凝集した凝集物(粗粒)が含まれる場合がある。また、造粒前に比べて少ないものの微粒が含まれる場合もある。分級および/または粉砕(解砕)を行うことによって、粒度分布の狭い粉体が得られる。
【0084】
分級または粉砕による整粒の方法は、特に限定されるものではないが、以下の好適な2つの形態が挙げられる。
【0085】
(1)本発明の第一で得られた粉体を分級して、粗粒を除去して整粒粉体を得る工程と、前記粗粒を粉砕した後に分級して未粉砕の粗粒と微粒とを除去したものを、前記整粒粉体と合一する工程とを含む形態。
【0086】
(2)本発明の第一で得られた粉体を粉砕した後に分級して整粒粉体を得る工程を含む形態。
【0087】
本発明の造粒方法によって、微粉末の量は低減するが、所望とする粒子径よりも大きい凝集物が生成する場合がある。かような凝集物は、粉砕により容易に適当な粒子径に整粒することができる。
【0088】
このような粉砕に用いることができる粉砕機としては、例えば、粉体工学便覧(粉体工学会編、初版)の表1.10で分類されている粉砕機種名のうちでも、剪断粗砕機、衝撃破砕機、高速回転式粉砕機に分類されて、切断、剪断、衝撃、摩擦といった粉砕機構の1つ以上の機構を有するものが好ましく使用でき、それら機種に該当する粉砕機の中でも切断、剪断機構が主機構である粉砕機が特に好ましく使用できる。例えば、ロールミル(ロール回転形)粉砕機やナイフが回転して対象物を解砕する形式のナイフカッター式解砕機が好ましく挙げられる。
【0089】
分級操作自体は従来公知の乾式分級機等を使用して行なうことができる。このような装置としては、ふるい網を用いて網目を通過する細粒と通過しない粗粒とに分けるふるい分け機、水平流型、上昇流型などによる沈降速度と上昇流速度との差によって粗粒と微粉末とを分級する重力分級機、遠心力場における粒子の沈降を利用する遠心分級機、粒子を含んだ気流の方向を急に変化させて慣性の大きい粒子を流線からはずして分級する慣性分級機などを使用することができる。
【0090】
さらに、分級によって除去される微粒をさらに第一の発明によって造粒する工程を加えてもよい。
【0091】
本発明の第三は、粉体を製造する工程の少なくとも1つの工程で、本発明の第一の造粒方法で得られた粉体造粒物を、粉体を製造する工程の少なくとも1つの工程において添加する工程を含む、粉体の製造方法である。本発明の第一の造粒物は、粉体としての性能が維持、または向上しているので、リサイクルしても粉体の物性が維持される。
【0092】
造粒物を添加する工程としては、粉体の製造工程中の1つ以上であれば、制限はない。粉体が吸水性樹脂である場合、例えば、単量体水溶液調製工程、重合工程、乾燥工程、粉砕・解砕・分級工程、表面処理工程、貯蔵工程等が挙げられる。各工程の輸送工程で添加することもできる。最終製品としての吸水性樹脂に対し、吸水性樹脂造粒物を添加することもできる。
【0093】
具体的には、重合前の単量体水溶液に添加したり、重合途中あるいは重合後のゲルに添加したり、粉砕工程で添加したり、表面架橋剤の混合工程に添加したりすることができる。リサイクルする場合の吸水性樹脂造粒物は、必ずしも、乾燥、粉砕されている必要はなく、水性液体を混合した造粒物のままで添加することもできる。
【0094】
リサイクル方法としては、吸水性樹脂の微粉を、そのままの形で、単量体水溶液や重合途中もしくは重合後のゲルに添加して、リサイクルする方法が知られている。しかし、この方法は、微粉を単量体に混合しようとすると、微粉がママコを生成しやすいため、均一に混合することが容易でなかった。しかも、重合ゲルに添加する場合には、発生する水蒸気が配管や装置内面に付着してしまうという問題もあった。これに対し、吸水性樹脂の微粉を造粒物の形で単量体水溶液や重合ゲルに添加する場合は、そうしたママコの発生や、配管や装置内面への付着を防ぐことができて、吸水性樹脂の微粉のリサイクルを工業的に有利に行うことができる。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。また、質量部、質量%は、各々重量部、重量%と同義とする。特に条件のない場合は、作業を室温(23±1℃)、湿度30RH%の条件下で行う。
【0096】
(1)粒度分布:質量平均粒子径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)
吸水性樹脂または粒子状吸水剤10.0gを、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、目開き2000μm、1000μm、850μm、600μm、500μm、300μm、150μm、45μmの適宜選択したJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行ない、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。
【0097】
また、X1をR=84.1質量%、X2をR=15.9質量%の時のそれぞれの粒子径とすると、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表される。すなわち、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0098】
【数1】

【0099】
(2)遠心分離機保持容量(Centrifuge Retention Capacity;「CRC」とも称する)
CRCは、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(以下、単に「生理食塩水」とも称する)に対する無加圧下、30分間における吸収倍率を示す。
【0100】
吸水性樹脂0.200gを不織布(南国パルプ工業株式会社製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)製の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温にて大過剰(約500mL)の生理食塩水中に浸漬させた。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式:H−122)を用いてedena ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量を測定した。この質量をW1(g)とした。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、その際の質量をW0(g)とした。そして、これらW1およびW0の値から、下記数式に従ってCRC(g/g)を算出した。
【0101】
【数2】

【0102】
(3)加圧下吸収倍率(AAP)
内径60mmのプラスチックの支持円筒の底に、ステンレス製400メッシュの金網(目開きの大きさ38μm)を融着させ、室温(25±2℃)、湿度50RH%の条件下で、金網上に吸水性樹脂0.900gを均一に散布し、その上に、吸水性樹脂に対して4.83kPaの荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒の内壁面との間に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストンと荷重とをこの順に載置して、この測定装置一式の質量Wa(g)を測定した。
【0103】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmのガラスフィルター(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)(23±1℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社製、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0104】
測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で所定時間吸収させた。この吸収時間は、測定開始から算出して、1時間後とした。具体的には、1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その質量W(g)を測定した。この質量測定はできるだけすばやく、かつ振動を与えないように行わなくてはならない。そして、W、Wから、次式によって加圧下吸収倍率(AAP)(g/g)を算出した。
【0105】
【数3】

【0106】
(4)全体含水率
底面の直径が4cm、高さ2cmのアルミ製カップに、吸水性樹脂1.00gをアルミ袋カップ底面に均一に広げ、この吸水性樹脂入りアルミ製カップの重さ[W4(g)]を測定した。これを180℃に調温した熱風乾燥機中に3時間放置し、熱風乾燥機から取り出した直後(少なくとも1分以内)の吸水性樹脂入りアルミ製カップの重さ[W5(g)]を測定した。そして、これらW4、W5から、次式に従って全体含水率(質量%)を算出した。
【0107】
【数4】

【0108】
(製造例1)
シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中に、70モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5433g(単量体濃度:39質量%)を仕込み、当該水溶液に内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)12.83gを溶解させて反応液とした。次いで、この反応液を窒素ガス雰囲気下において脱気した。続いて、重合開始剤である過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液29.43gおよびL−アスコルビン酸の0.1質量%水溶液24.53gを撹拌しながら反応液に添加した。その結果、約1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃にて重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体の粒子径は5mm以下であった。この粉砕された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、175℃にて50分間熱風乾燥した。このようにして、不定形で、容易に粉砕されうる粉末状凝集体を得た。
【0109】
得られた粉末状凝集体をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き425μmのJIS標準ふるいを用いて分級した。次いで、前記の操作で目開き425μmのふるいを通過した粒子を目開き125μmのJIS標準ふるいを用いて分級し、目開き125μmのふるいを通過した粒子を除去した。このようにして、吸水性樹脂(A)を得た。
【0110】
得られた吸水性樹脂(A)の粒度分布を下記表1に示す。なお、下記表1において、「2000μm on」は、分級操作後に目開き2000μmの篩の上に残存した吸水性樹脂の割合(質量%)を示す。「45(600、500、300)μm pass」は、分級操作後に目開き45(600、500、300)μmの篩を通過した吸水性樹脂の割合(質量%)を示す。「x〜yμm」は、分級操作後に目開きxμmの篩を通過し、目開きyμmの篩の上に残存した吸水性樹脂の割合(質量%)を示す。
【0111】
【表1】

【0112】
(実施例1)
ベースポリマーとしての吸水性樹脂(A)10gを500mL石英製セパラブルフラスコに加え、さらにポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)0.02g、アクリル酸ナトリウム0.2g、アクリル酸0.08g、水1.6g、過硫酸アンモニウム0.1gを予め混合した処理液を加え、攪拌羽根(図2および図3に示す傾斜型4枚パドル;図2は、セパラブルフラスコ底面に対して上方向から見たパドルの概略図、図3は、図2のIII方向から見たパドルの概略図)で500rpm撹拌して(室温(23±1℃)、10分)、吸水性樹脂組成物を得た。
【0113】
メタルハライドランプ(ウシオ電機製、UVL−1500M2−N1)を取り付けた紫外線照射装置(同、UV−152/1MNSC3−AA06)を用いて、照射強度60mW/cmで10分間、室温(23±1℃)で紫外線をセパラブルフラスコの側方から照射し(図1)、造粒処理された吸水性樹脂を得た。ランプの中心はセパラブルフラスコの側面(石英面)からの距離が14cmになるように設置し(図1)、照射中、輻射熱による系内の温度を70〜80℃に調整した。得られた吸水性樹脂の粒度分布を表1に、各種評価結果を表2に示す。なお、「全体含水率補正後のCRC」及び「全体含水率補正後のAAP」は、以下に示す計算式によって算出した。なお、下記式において、「全体含水率補正前のCRC」とは、上記(5)の全体含水率を測定する前の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)であり、また、「全体含水率補正前のAAP」とは、上記(5)の全体含水率を測定する前の吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)である。
【0114】
【数5】

【0115】
【数6】

【0116】
(実施例2)
水1.6gを水3.2gに変更した以外は、上記実施例1と同様に吸水性樹脂組成物を得た。また、実施例1と同様に吸水性樹脂組成物に対して紫外線照射を行った。得られた吸水性樹脂の粒度分布を表1に、各種評価結果を表2に示す。
【0117】
(比較例1)
ベースポリマーとしての吸水性樹脂(A)10gを500mL石英製セパラブルフラスコに加え、さらにポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)0.02g、アクリル酸ナトリウム0.2g、アクリル酸0.08g、水0.9g、過硫酸アンモニウム0.1g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量 約2,000)0.05gを予め混合した処理液を加え、攪拌羽根(図2および図3に示す傾斜型4枚パドル)で500rpm撹拌して(23±1℃、10分)、吸水性樹脂組成物を得た。また、実施例1と同様に得られた吸水性樹脂組成物に対して紫外線照射を行った。得られた吸水性樹脂の粒度分布を表1に、各種評価結果を表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
以上の結果より、実施例1および実施例2の吸水性樹脂の粒度分布は高粒度側にシフトし、造粒効果が向上していることが示された。また、実施例の吸水性樹脂は、表2に示す通り、従来の造粒物に比べて、吸水特性、特に加圧下吸水倍率に優れているものであった。また、実施例の吸水性樹脂は、残存するモノマー(ラジカル重合性化合物)が少なかった。これらの造粒物は、適宜、分級または粉砕し、最終製品となる粉体に混合しても高い吸水特性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】実施例で用いられた紫外線照射装置および攪拌装置の概略を示す図である。
【図2】実施例で用いられた攪拌装置の、セパラブルフラスコ底面に対して上方向から見たパドルの概略図である。
【図3】図2のIII方向から見たパドルの概略図である。
【符号の説明】
【0121】
1 紫外線照射装置、
2 ランプ、
3 セパラブルフラスコ、
3a セパラブルフラスコ底面、
4 パドル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)粉体と、ラジカル重合性化合物と、前記粉体100質量部に対して10質量部以上の水と、を混合して含水した粉体組成物を得る混合工程と、
(2)前記粉体組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、
を含む、粉体の造粒方法。
【請求項2】
前記ラジカル重合性化合物の混合量が、前記粉体100質量部に対して1〜50質量部である、請求項1に記載の造粒方法。
【請求項3】
前記混合工程において、ラジカル重合開始剤を同時または別途混合して含水した粉体組成物を得る、請求項1または2に記載の造粒方法。
【請求項4】
前記粉体は、吸水性樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の造粒方法。
【請求項5】
前記照射工程が、前記粉体組成物を流動させて前記活性エネルギー線を照射する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の造粒方法。
【請求項6】
少なくとも一部が層流状態で前記粉体組成物を流動させる、請求項5に記載の造粒方法。
【請求項7】
前記活性エネルギー線が紫外線である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の造粒方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の造粒方法で得られた粉体造粒物であって、前記粉体造粒物100質量部に対して、粒子径500μm未満の粉体が20質量部以下である粉体造粒物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の造粒方法で得られた粉体造粒物に対して分級または粉砕の少なくとも一方を行う、粉体の整粒方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の造粒方法で得られた粉体造粒物を、粉体を製造する工程の少なくとも1つの工程において添加する工程を含む、粉体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−264672(P2008−264672A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110673(P2007−110673)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】