説明

粉体コーティング法

基体上にコーティングを形成するための方法において、一部が導電性である流動室において粉体の流動床を形成することにより粉体の摩擦電気的帯電を行う工程、流動室の導電性部分に電圧を印加する工程、電気的に非導電性であるか又は弱導電性であり、電気的に絶縁されているか、または接地されている基体を、全体的又は部分的に流動床中に浸漬する工程、該基体を流動床から引き出す工程、及び付着した粒子を、基体の少なくとも一部の上で連続したコーティングへと形成する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体コーティング組成物を基体に施与するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体コーティング物質は、粉体コーティング粒子が静電気で帯電され、普通は金属製で、電気的に接地されている基体への付着が引き起こされる、静電気付与方法によって、通常、付与される固体組成物である。粉体コーティング粒子の帯電は、スプレーガンを用いて、粒子と電離された空気との相互作用によって(コロナ帯電法)、または摩擦によって(摩擦電気、摩擦静電気、または「摩擦」帯電)、普通には達成される。帯電粒子は空気中を基体に向かって運ばれ、そしてその最終的な堆積は、とりわけスプレーガンと基体間に生起された電界力線によって影響を受ける。
【0003】
コロナ帯電法の不利な点は、基体のくぼんだ場所内への電界力線の進入が制限されること(ファラデーケージ効果)の結果として、複雑な形を持つ基体、特にくぼんだ部分を持つ基体をコーティングするのが困難なことである。ファラデーケージ効果は摩擦静電気帯電法の場合にはそれほど顕著ではないが、この方法は他の欠点を有する。
【0004】
静電気スプレー法の代わりとして、粉体コーティング組成物は、基体が(典型的には200℃〜400℃まで)予熱され、そして粉体コーティング組成物の流動床内に浸漬される方法によって付与されることもできる。予熱された基体と接触した粉体粒子は溶融し、そして基体の表面に付着する。熱硬化性粉体コーティング組成物の場合には、初めにコーティングされた基体は、付与されたコーティングの硬化を完了させるためにさらに加熱を受けさせることもできる。このような後加熱は熱可塑性粉体コーティング組成物の場合には必要でないかもしれない。
【0005】
流動床法はファラデーケージ効果を排除し、それによって製作中の製品の基体のくぼんだ部分がコーティングされるのを可能とし、そして他の点でも魅力があるが、付与されたコーティングが静電気コーティング法によって得ることができるものよりも実質的に厚いという不利な点を持つことが知られている。
【0006】
粉体コーティング組成物のもう1つの他の付与技術は、いわゆる静電気流動床法であり、同法では流動室内に、またはもっと普通には多孔性空気分散膜の下に広がるプレナムチャンバー内に配置された印加電極によって空気が電離される。電離空気は粉体粒子を帯電させ、粉体粒子は同符号に帯電した粒子の静電反発の結果として全体として上向きの動きを得る。その効果として帯電した粉体粒子の雲が流動床の表面の上に形成される。基体は通常、接地され、そして粉体粒子の雲の中に導入され、粉体粒子の一部が基体表面上に静電誘引によって堆積する。基体の予備加熱は静電気流動床法においては必要とされない。
【0007】
静電気流動床法は小さい物品をコーティングするのに特に適している。何故ならば帯電した流動床の表面から物品が離れるほど、粉体粒子の堆積速度が下がるからである。さらに、伝統的な流動床法の場合のように、粉体はある囲い込み内に閉じ込められるので、基体上に堆積しない過剰スプレー分のリサイクルおよび再混合用の機器を設ける必要がない。しかし、コロナ帯電静電気法の場合のように、印加電極と基体の間に強い電界があり、そしてその結果、ファラデーケージ効果がある程度まで働き、そして基体のくぼんだ場所内への粉体粒子の不十分な堆積に至る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基体上にコーティングを形成するための方法において、以下の工程、
粉体コーティング組成物の流動床を形成し、それによって粉体コーティング組成物の摩擦静電気帯電を達成する工程、ただし流動床は少なくとも一部が導電性である流動室を含む、
流動室の導電性部分に電圧を印加する工程、
電気的に非導電性であるか又は弱導電性である基体を、全体的又は部分的に流動床中に浸漬し、そうすることにより粉体コーティング組成物の摩擦静電気で帯電した粒子が基体に付着する工程、ただし基体は電気的に絶縁されているか、または接地されている、
基体を流動床から引き出す工程、及び
付着した粒子を、基体の少なくとも一部の上で連続したコーティングへと形成する工程、
を含み、該方法が流動床内での電離またはコロナ効果なしに行われる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
基体は中質繊維板(MDF)、又はプラスチック材料又は別の非導電性又は弱導電性物質であり得、原則として任意の所望される形及びサイズであることができる。
【0010】
MDFに加えて、木材、木製品の他に、プラスチック材料、電導性添加剤を含むプラスチック材料、ポリアミド、高絶縁性プラスチック材料、たとえばポリカーボネートは好適な基体となる。
【0011】
約10オーム/□〜例えば約1011オーム/□の表面抵抗を持つ基体は弱導電性と考えられ、一方約1011オーム/□より上の表面抵抗を持つ基体は、例えば非導電性と考えられる。
【0012】
MDFの基体は、その水分含有量に依存して、10オーム/□〜1011オーム/□オーダーの表面抵抗を持つことができ、10オーム/□オーダーの表面抵抗は、1011オーム/□オーダーの表面抵抗よりも高い水分含有量に対応する。
【0013】
木材および木製品は、木材の種類およびその水分含有量に依存して、10オーム/□〜1011オーム/□オーダーの表面抵抗を持つと予想されることができる。
【0014】
電気的に導電性の添加剤を含むプラスチック材料および電気的に導電性の添加剤を含まない各種のプラスチック材料は、その材料および、1または複数の添加剤が含まれるときは、その添加剤に依存して、10〜1011オーム/□オーダー、すなわち弱導電性の範囲内の表面抵抗を持つことができる。
【0015】
高絶縁性プラスチック材料、たとえばポリアミドおよびポリカーボネートは1011オーム/□より上のオーダー、すなわち非導電性の範囲内の表面抵抗を持つと予想されることができる。
【0016】
さらに、弱導電性基体は、10〜10オーム/□オーダーの表面抵抗の低領域と10のわずかに上から始まって1011オーム/□まで広がる高領域に分類されることができる。1011オーム/□より上の表面抵抗を持つ材料は「絶縁性」と考えられる。
【0017】
本明細書の方法により塗装され得る基体は、もちろん重合体に限定されない。
【0018】
基体の表面抵抗は少なくとも10オーム/□のオーダーであることができ、たとえば、
・10〜10オーム/□のオーダーである。
・少なくとも10オーム/□のオーダーである。
・10〜1011オーム/□のオーダーである。
【0019】
絶縁性基体の表面抵抗は少なくとも1011オーム/□のオーダーであることができる。
【0020】
上に示された表面抵抗値は、ASTM基準D257−93によって2kV印加で測定されたものである。
【0021】
有利な方法として、基体は組成物の付与前に化学的にまたは機械的に洗浄される。
【0022】
本発明の方法において、粉体コーティング組成物の粒子は、流動床における循環において互いに擦れるときの粒子の摩擦帯電(摩擦電気、摩擦静電気、又は「摩擦」帯電)の結果、基体に付着する。
【0023】
本方法は、弱導電性および高非導電性である基体を粉体コーティングするのに有効である。弱導電性基体は電気的に絶縁されたとき、および接地されたときにコーティングされることができ、そして高非導電性基体はその非導電性の故に本質的に絶縁されている。
【0024】
本発明の方法は、流動床において電離又はコロナ効果なしに行われる。
【0025】
流動床に印加される電圧は、摩擦帯電された粉体コーティング粒子により基体をコーティングするのに十分である一方、流動床内で電離またはコロナ効果を発生させるには不十分な最大電位勾配をもたらす。大気圧の空気は通常、流動床の気体として使われるが、他の気体、たとえば窒素またはヘリウムも使用されることができる。
【0026】
実質的な電界が印加電極と基体の間に発生する静電気流動床法と比較して、本方法は、実質的な電界において起こり得るような、該繊維状の物質が直立する傾向なしに、繊維状の物質を含む基体の良好なコーティングを達成する可能性を提供する。
【0027】
伝統的な流動床施与方法と比較して、本発明の方法は、200〜400℃の温度に加熱するのが望ましくない、MDF、およびプラスチックを含む材料をコーティングする可能性を提供する。また、本方法はMDF、およびプラスチック材料に制御された方法で薄いコーティングを達成する、なぜなら粒子サイズが低減されるほど粒子間帯電はより効果的になるからである。
【0028】
粒子サイズが低減されるほど効率が改善されることは、粒子サイズが低減されるほど効率が落ちる、摩擦電気ガンを用いる粉体コーティング方法と対照的である。
【0029】
コーティングの均一性は、ゆるい粒子を除くために基体を揺すり、または振動させることによって改善されることができる。
【0030】
付着粒子の連続コーティングへの転化(たとえば、適当な場合には付与された組成物の硬化)は熱処理によって、および/または照射エネルギー、特に赤外線、紫外線または電子線照射によって達成されることができる。伝統的な流動床付与技術と比較して、基体の予熱は本発明の方法では必須段階ではなく、そして好ましくは、流動床に浸漬する前に基体を予熱しない。
【0031】
流動室に印加される電圧は、流動床内で電離またはコロナ効果を発生させるには不十分であるので、基体が電気絶縁性であるときに電流を流す可能性は低く、したがって、基体が電気絶縁性であるときに電力を流す可能性は低いだろう。基体が電気的に接地されたときに流れる電流は1mAより小さいと予想される。
【0032】
高められた温度において表面導電性を示すプラスチック材料を基体が含む場合には、本方法は、基体を流動床に浸漬する前に、プラスチック材料の融点より下、かつ粉体コーティング組成物のガラス転移温度より下の温度にプラスチック材料を加熱する工程を好ましくは含む。
【0033】
高められた温度においてさえ実質的な表面導電性を示さないプラスチック材料を基体が含む場合には、本方法は、基体を流動床に浸漬する前に、それを予備帯電させる工程を好ましくは含む。
【0034】
好ましくは、基体の浸漬及び流動床において基体を浸漬する時点で予備帯電された基体上の電荷を均等化する工程を含む。
【0035】
基体をその融点より下の温度に加熱することによって、または基体上に表面水分を導入すること、またはその両者によって、電荷は均等化されることができる。
【0036】
流動室に印加される電圧は、本発明の方法においては、好ましくは直流電圧であり、正または負のどちらでもよいが、交流電圧の使用も、たとえば電圧をそれが正であるときに、あるいはそれが負であるときに、と断続的に印加することによって可能である。印加電圧は、とりわけ流動床の大きさ、基体の大きさおよび複雑さ、ならびに所望の被膜厚さに従う広い制限内で変わることができる。この基礎の上に、印加電圧は一般的に10ボルト〜100キロボルト、もっと普通には100ボルト〜60キロボルト、好ましくは100ボルト〜30キロボルト、もっととりわけては100ボルト〜10キロボルトの範囲であり、正または負のどちらでもよい。電圧の範囲は10ボルト〜100ボルト、100ボルト〜5キロボルト、5キロボルト〜60キロボルト、15キロボルト〜35キロボルト、5キロボルト〜30キロボルトを含み、30キロボルト〜60キロボルトも十分であることができる。
【0037】
直流電圧は流動室に連続的に、または断続的に印加されることができ、そして印加電圧の極性はコーティングの間変えられることができる。電圧の断続的な印加によって、流動室は、基体が流動床に浸漬される前に帯電されることができ、そして基体が床から取り出された後まで続けられることができる。あるいは、電圧は基体が流動床に浸漬された後にのみ印加されることができる。任意的に、帯電は、基体が流動床から取り出される前に停止されることができる。印加される電圧の大きさはコーティングの間、変化されてもよい。
【0038】
電離またはコロナ状態を排除するために、流動床内に存在する最大電位勾配は空気または他の流動化気体の電離電位より下である。最大電位勾配を決定する因子は印加電圧ならびに流動室と基体及び装置の他の要素との間隔を含む。
【0039】
大気圧の空気について、電離電位勾配は30kV/cmであり、したがって大気圧の空気を流動化気体として用いる最大電位勾配は30kV/cmより下でなければならない。同じような最大電位勾配が、窒素またはヘリウムを流動化気体として使用する場合にもまた適している。
【0040】
これらの考慮事項に基づいて、流動床内に存在する最大電位勾配は29kV/cm、27.5、25、20、15,10、5または0.05kV/cmであることができる。
【0041】
最小電位勾配は一般に少なくとも0.01kV/cmまたは少なくとも0.05kV/cmであろう。
【0042】
好ましくは、基体はコーティング工程の間流動床内に完全に浸漬される。
【0043】
上に述べられたように、本発明に従う方法では、粉体粒子の帯電は流動床内の粒子間の摩擦によって達成される。流動床内の粒子間の摩擦は粒子の双極帯電を生じ、換言すれば、粒子のある割合は負の帯電を得、そしてある割合は正の帯電を得るだろう。流動床内に正および負に帯電した両方の粒子が存在することは、特に直流電圧が流動床に印加されるときは不利に見えるかもしれないが、本発明の方法は粒子の双極帯電を受け入れることができる。
【0044】
所定の極性の直流電圧が流動室に印加される場合には、静電力は主に一方の極性の粉体コーティング粒子を基体上に引き付ける傾向がある。その結果正におよび負に帯電した粒子が異なった速度で除去されることは、粉体の中で特定の極性の粒子の割合が累進的に減少することに至ると予想されるかも知れないが、実際には減少が進むにつれて、残留する粉体粒子がその相対的な極性を調節し、そして電荷バランスが維持されることが見出される。
【0045】
帯電状態での流動室による基体の好ましい浸漬時間は、基体の大きさおよび幾何学的複雑さ、要求される被膜厚さ、および印加電圧の大きさに依存するだろうが、一般に10ミリ秒から10、20または30分、通常は500ミリ秒から5分、もっととりわけては1秒から3分の範囲である。
【0046】
好ましくは、基体は流動床への浸漬の時間中、規則正しい、または断続的な方法で動かされる。動きは、たとえば線状、回転状および/または動揺状であることができる。上に示されたように、基体は、それにゆるくにしか付着していない粒子を除去するために、付加的に揺り動かされ、または振動下に置かれることができる。1回の浸漬の代わりに、所望の合計浸漬時間に達するまで、基体は繰り返して浸漬され、そして引き出されることができる。
【0047】
流動化気体(通常、空気)の圧力は流動化される粉体の量、粉体の流動性、流動床の大きさ、および多孔性膜上下の圧力差に依存するだろう。
【0048】
粉体コーティング組成物の粒子サイズ分布は0〜150ミクロンの範囲にあり、一般には120ミクロンまでで、15〜75ミクロンの範囲の平均粒度を持ち、好ましくは少なくとも20〜25ミクロンで、好都合には50ミクロンを超えず、もっととりわけては20〜45ミクロンであることができる。
【0049】
特に比較的薄く付与された被膜が要求される場合には、もっと細かい粒子サイズ分布が好まれることもでき、たとえば以下の基準の1以上が満たされる組成物が好まれる。
a) 95〜100容積%<50μm
b) 90〜100容積%<40μm
c) 45〜100容積%<20μm
d) 5〜100容積%<10μm
好ましくは10〜70容積%<10μm
e) 1〜80容積%<5μm
好ましくは3〜40容積%<5μm
f) d(v)50が1.3〜32μmの範囲
好ましくは8〜24μmの範囲
【0050】
平均粉体粒子サイズが5.5μmのオーダーである粉体コーティング組成物、及び実質的にすべての粉体粒子が10μmより大きくない粉体コーティング組成物は、コーティング工程の最終段階において基体に施与される熱の量を最小化するのに効果的である。
【0051】
あるいは、低温焼付け及び硬化組成物である粉体コーティング組成物は、粉体コーティング法の最終工程が最小の加熱で達成されることを許す。
【0052】
低温焼付け粉体コーティング組成物の提供は、35μmのオーダーの平均粒子サイズの使用を許す。
【0053】
D(v)50は組成物の中央粒子サイズである。もっと一般には、容積百分位数d(v)はその粒子サイズdより下にある粒子の全容積の百分率である。当該データはMalvern instruments社によって製造されるレーザー光散乱装置、MastersizerXを用いて得られることができる。必要であれば、堆積された(焼付け/硬化前の)材料の粒子サイズ分布に関係するデータは、付着堆積物を基体から掻き落とし、Mastersizerに入れることによって得られることができる。
【0054】
施与されたコーティングの厚さは5〜500ミクロンまたは5〜200ミクロンまたは5〜150ミクロン、もっととりわけて10〜150ミクロン、たとえば20〜100ミクロン、20〜50ミクロン、25〜45ミクロン、50〜60ミクロン、60〜80ミクロン、または80〜100ミクロン、または50〜150ミクロンの範囲にあることができる。コーティングの厚さに影響を与える主な因子は印加電圧であるが、帯電状態の流動室による浸漬の持続時間および流動化空気圧力も結果に影響する。
【0055】
一般に、本発明のコーティング方法は、以下の特質の1以上を特徴とすることができる。
(i)コーティングの過程は3次元であり、そしてくぼみに入り込むことができる。
(ii)印加電圧および基体と流動室の間隔は最大電位勾配が空気または他の流動化気体の電離電位勾配より下であるように選ばれる。したがって、電離またはコロナ効果は実質的にない。
(iii)粉体コーティングの厚さは流動室への印加電圧が増加するにつれて増加する。厚さの増加はある点までは質の劣化なしに達成できるが、滑らかさの累進的な劣化が最後には見られる。
(iv)コーティングは室温で達成できる。
(v)基体の均一なコーティングは、コーティングが基体のくぼみ内、突起部の上、または平らな表面上にあるか否かに係らず達成できる。
(vi)滑らかにコーティングされた端部が得られることができる。
(vii)滑らかさおよびピッチングまたはかたまりのない点において、良質な粉体コーティングが、達成できる。
(viii)電圧が基体に印加される流動床摩擦電気法と比較して、より広範な、そしてむらのない被覆が達成でき、そして良好な被覆は、より速く達成されることができる。
(ix)MDFは通常の貯蔵条件下にいくらかの表面水分を取り込み、非常に満足すべきコーティングが、ごくわずかの量の表面水分を含むMDFについて達成される。
(x)MDFの繊維の端部が立ち上がる傾向はない。
(xi)基体の片側の模様が基体の反対側上の粉体に再現される傾向はない。
【0056】
本方法は、電導性添加剤を含むプラスチック基体、特に導電性添加剤を持つポリアミドを粉体コーティングするのに有効である。
【0057】
本方法は、電導性添加剤を含まないプラスチック基体を粉体コーティングするのにもまた有効である。基体はそれを導電性にするために加熱される。加熱の間、温度は基体の融点および粉体コーティングのガラス転移温度より下に保たれる。
【0058】
上の観察は、MDFについてのものを含め、繊維がないことおよび水分の必要がないことを除いてプラスチック基体にあてはまる。
【0059】
上で言及されたプラスチック基体のコーティングにおいて、基体は好ましくは接地されるが、電気的に絶縁される、すなわち電気的接続なしてある(基体は電気的に「浮いて」いる、すなわちその電位は不確定である)こともできる。
【0060】
基体及び流動室の間の間隔は、電位勾配が流動床摩擦電気法に匹敵する、即ち、装置において使用される流動物(最も一般的には空気)のイオン化電位より十分下であるように電圧が基体に印加されるところの流動床摩擦電気法の場合とおよそ同じである。
【0061】
本発明に従う粉体コーティング組成物は、1以上の被膜形成性樹脂を含む単一の被膜形成性粉末成分を含んでいてもよく、又は2以上のそのような成分の混合物を含んでいてもよい。
【0062】
被膜形成性樹脂(重合体)は、顔料を濡らして顔料粒子間に凝集力を与える能力、および基体を濡らし、または基体に結合する能力を持つバインダーの作用をし、そして基体へ付与された後の硬化/熱処理工程において溶融し、流動して均一な被膜を形成する。
【0063】
本発明の組成物の1または各粉体コーティング成分は一般には熱硬化系であることもあろうが、代わりに(たとえば、ポリアミドに基づいた)熱可塑系が原則として使用されることができる。
【0064】
熱硬化性樹脂が使用されるときは、固体重合体バインダー系は一般に熱硬化性樹脂用の固体硬化剤を含む;代わりに2の共反応性被膜形成性熱硬化性樹脂が使用されることもできる。
【0065】
本発明に従う熱硬化性粉体コーティング組成物の1または各成分の製造に使用される被膜形成性重合体は、カルボキシ官能性ポリエステル樹脂、ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、および官能性アクリル樹脂から選ばれた1以上のものであることができる。
【0066】
本組成物の粉体コーティング成分は、たとえばポリエポキシド硬化剤とともに使用されるカルボキシ官能性ポリエステル被膜形成性樹脂を含む固体重合体状バインダー系に基づくことができる。当該カルボキシ官能性ポリエステル系は現在、もっとも広く使用されている粉体コーティング材料である。ポリエステルは一般に10〜100の範囲の酸価、1,500〜10,000の数平均分子量Mn、および30℃〜85℃、好ましくは少なくとも40℃のガラス転移温度Tgを持つ。ポリエポキシドは、例として低分子量エポキシ化合物、たとえばトリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、すなわちジグリシジルテレフタレートで縮合したビスフェノールAのグリシジルエーテルのような化合物または光安定性エポキシ樹脂であることができる。あるいは当該カルボキシ官能性ポリエステル被膜形成性樹脂は、ビス(ベータ−ヒドロキシアルキルアミド)硬化剤、たとえばテトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミドとともに使用されることもできる。
【0067】
あるいは、ヒドロキシ官能性ポリエステルはブロック化イソシアナート官能性硬化剤またはアミン−ホルムアルデヒド縮合体、たとえばメラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、またはグリコールウラルホルムアルデヒド樹脂、たとえばCyanamid Company社によって供給される材料「Powderlink 1174」、またはヘキサヒドロキシメチルメラミンとともに使用されることができる。ヒドロキシ官能性ポリエステル用のブロック化イソシアナート硬化剤は、たとえば内部的にブロックされていてもよく、たとえばウレトジオン型であることができ、またはカプロラクタムブロック化、たとえばイソホロンジイソシアナートであることができる。
【0068】
さらなる可能性として、エポキシ樹脂はアミン官能性硬化剤、たとえばジシアンジアミドとともに使用されることができる。エポキシ樹脂用のアミン官能性硬化剤の代わりに、フェノール系材料、好ましくはエピクロロヒドリンと過剰量のビスフェノールAの反応によって形成される材料(すなわち、ビスフェノールAとエポキシ樹脂を付加体とすることによって得られるポリフェノールである)が使用されることができる。官能性アクリル樹脂、たとえばカルボキシ−、ヒドロキシ−、またはエポキシ官能性樹脂は適当な硬化剤とともに使用されることができる。
【0069】
被膜形成性重合体の混合物も使用されることができ、たとえばカルボキシ官能性ポリエステルはカルボキシ官能性アクリル樹脂および両重合体を硬化する役目をする硬化剤、たとえばビス(ベータ−ヒドロキシアルキルアミド)とともに使用されることができる。さらなる可能性として、混合バインダー系では、カルボキシ−、ヒドロキシ−、またはエポキシ官能性アクリル樹脂はエポキシ樹脂またはポリエステル樹脂(カルボキシ−またはヒドロキシ官能性)とともに使用されることができる。このような樹脂の組み合わせは、たとえばエポキシ樹脂と共硬化したカルボキシ官能性アクリル樹脂、またはグリシジル官能性アクリル樹脂と共硬化したカルボキシ官能性ポリエステルを共硬化するように選ばれることができる。しかし、もっと普通には、当該混合バインダー系は単一の硬化剤を使用(たとえば、ヒドロキシ官能性アクリル樹脂およびヒドロキシ官能性ポリエステルを硬化するブロック化イソシアナートを使用)して硬化されるように配合される。他の好ましい配合物は2つの重合体状バインダーの混合物の各バインダーについて異なる硬化剤を使用すること(たとえば、ブロック化イソシアナート硬化ヒドロキシ官能性アクリル樹脂と組み合わせて使用されるアミン硬化エポキシ樹脂)を含む。
【0070】
言及されることができる他の被膜形成性重合体は官能性フルオロ重合体、官能性フルオロクロロ重合体および官能性フルオロアクリル重合体を含み、これらのそれぞれはヒドロキシ官能性またはカルボキシ官能性であることができ、そして官能性重合体用の適当な硬化剤とともに、単独の被膜形成性重合体として、または1以上の官能性アクリル、ポリエステルおよび/またはエポキシ樹脂と組み合わせて使用されることができる。
【0071】
言及されることができる他の硬化剤はエポキシフェノールノボラックおよびエポキシクレゾールノボラック;オキシムでブロック化されたイソシアナート硬化剤、たとえばメチルエチルケトオキシムでブロック化されたイソホロンジイソシアナート、アセトンオキシムでブロック化されたテトラメチレンキシレンジイソシアナート、およびメチルエチルケトオキシムでブロック化されたDesmodur W(ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート硬化剤);光安定性エポキシ樹脂、たとえばMonsanto社によって供給される「Santolink LSE 120」;および脂肪族環状ポリエポキシド、たとえばダイセル社によって供給される「EHPE−3150」を含む。
【0072】
本発明に従い使用される粉体コーティング組成物は添加された着色剤を含まないことができるが、通例、1以上のそのような剤(顔料または染料)を含む。使用されることができる顔料の例は無機顔料、たとえば二酸化チタン、赤色または黄色酸化鉄、クロム顔料およびカーボンブラックならびに有機顔料、たとえばフタロシアニン、アゾ、アントラキノン、チオインジゴ、イソジベンズアンスロン、トリフェンジオキサンおよびキナクリドン顔料、建て染め染料顔料および酸性、塩基性、及び媒染染料のレーキ顔料である。染料は顔料の代わりに、またはそれとともに使用されることができる。
【0073】
本発明の組成物は1以上の増量剤または充填剤も含むことができ、これらはコストを最小にしながら、特に不透明性の助けとなるために、またはもっと一般に希釈剤として使用されることができる。
【0074】
以下の範囲が、本発明に従う粉体コーティング組成物の全顔料/充填剤/増量剤含有量について述べられるべきである(後混合添加剤を無視して):
0重量%〜55重量%、
0重量%〜50重量%、
10重量%〜50重量%、
0重量%〜45重量%、および、
25重量%〜45重量%。
【0075】
全顔料/充填剤/増量剤含有量のうち、顔料含有量は全組成物重量の一般に(後混合添加剤を無視して)40重量%以下であろうが、45重量%までの割合、または50重量%の割合さえも使用されることができる。通常、25%〜30%または35%の顔料含有量が使用されるが、濃色の場合には不透明性は10重量%より少ない顔料で得られることができる。
【0076】
本発明の組成物は1以上の性能添加剤(performance additive)、たとえば流動促進剤、可塑剤、安定剤、たとえば対UV劣化剤、またはガス抑止剤、たとえばベンゾインも含むことができ、または2以上の当該添加剤が使用されることができる。以下の範囲が、本発明に従う粉体コーティング組成物の全高性能添加剤含有量について述べられるべきである(後混合添加剤を無視して):
0重量%〜5重量%、
0重量%〜3重量%、および、
1重量%〜2重量%。
【0077】
一般に、上に記載された着色剤、充填剤/増量剤および高性能添加剤は後混合によっては取り込まれないで、押出または他の均質化工程の前および/またはその間に取り込まれるだろう。
【0078】
粉体コーティング組成物を基体に付与した後で、得られた付着粒子の連続コーティングへの転化(適当な場合には、付与された組成物の硬化を含めて)は熱処理によって、および/または放射エネルギー、特に赤外線、紫外線または電子線放射によって達成されることができる。
【0079】
粉体は基体上で熱の付与によって通常、硬化される(加熱の工程)、すなわち粉体粒子は溶融し、流動し、そして被膜が形成される。硬化時間および温度は使用される組成物の配合に応じて相互に依存し、以下の典型的な範囲が述べられることができる:
【0080】

温度/℃ 時 間
280〜100 10秒〜40分
250〜150 15秒〜30分
220〜160 5分〜20分

*90℃まで下げた温度が、ある樹脂、特にあるエポキシ樹脂には使用されることができる。
【0081】
粉体コーティング組成物は、1以上の流動促進添加剤(fluidity-assisting agent)、たとえば国際特許出願公開第94/11446号に開示されているもの、および特には、この明細書に開示されている、好ましい添加剤の組み合わせであって、酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムを含み、典型的には1:99〜99:1の重量比の範囲の割合で使用され、好都合には10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、または30:70〜70:30、たとえば45:55〜55:45のものを、後混合によって取り込むことができる。国際特許出願公開第94/11446号に後混合される添加剤として開示されている、無機材料の他の組み合わせ、たとえばシリカを含む組み合わせも、原則として本発明の実施に使用されることができる。酸化アルミニウムおよびシリカは、さらに後混合される添加剤として単独で使用されることができる材料として言及されることができる。国際特許出願公開第00/01775号に開示されているように、後混合される添加剤としてワックス被覆されたシリカの使用についても、本シリカと酸化アルミニウムおよび/または水酸化アルミニウムとの組み合わせの使用を含めて、言及がされることができる。PTFE変性されたワックス又のワックス材料、例えば国際特許出願公開第01/59017号において開示されているものもまた使用され得る。
【0082】
粉体コーティング組成物が取り込まれる、後混合される添加剤の全含有量は、一般に0.01重量%〜10重量%の範囲、好ましくは少なくとも0.1重量%で1.0重量%(添加剤を除く組成物の全重量に基づいて)を超えないだろう。酸化アルミニウムと水酸化アルミニウム(および同様な添加剤)の組み合わせは添加剤を除く組成物の全重量に基づいて、好都合には0.25重量%〜0.75重量%、好ましくは0.45重量%〜0.55重量%の範囲の量で使用される。1重量%または2重量%までの量も使用されることができるが、あまりにも多く使用されると、問題、たとえばビット生成や低輸送効率が生じることがある。
【0083】
どの添加剤に関しても、「後混合される」の用語は、その添加剤が粉体コーティング組成物の製造に用いられる押出または他の均質化工程の後で取り込まれたことを意味する。
【0084】
添加剤の後混合は、たとえば以下の乾燥混合方法のどれによっても達成されることができる。
a) ミル処理前にチップにタンブラーで混合、
b) ミルで注入、
c) ミル処理後の篩分段階で導入、
d) 「タンブラー」または他の適当な混合装置で生産後の混合、または、
e) 流動床への導入。
【0085】
本発明に従う方法を行うために適する流動床摩擦電気粉体コーティング装置の一般的な形式及び本発明に従う方法のいくつかの形式が添付された図を参照して、実施例のみにより今記載される。該図面において
図1は概略断面図で表した流動床粉体コーティング装置の一般的な形式を示す。
図2A及び2Bは、実施例1において使用された第1及び第2のMDF基体の見取り図である。
図3A及び3Bは、実施例3で使用されたプラスチック基体の見取り図であり、該基体は、基体を電気的に弱導電性にする、電気的に導電性のある添加剤を含む。
【0086】
添付された図面の図1を引用すると、流動床摩擦電気粉体コーティング装置は流動室(1)を含み、流動室1は空気入口(2)をその底部に、そして流動室を下部プレナム(4)と上部流動区画室(5)に分けるように横断面に配置された多孔性空気分散膜(3)を持つ。
【0087】
運転では、絶縁された支持体(7)、好ましくは堅い支持体を有する基体(6)は、プレナム(4)から多孔膜(3)を通して導入された上向きに流れる空気流により、流動区画室(5)に設置された粉体コーティング組成物の流動床に浸漬される。
【0088】
浸漬時間の少なくとも一部の間、直流電圧が流動室(1)に可変電圧源(8)により印加される。粉体コーティング組成物の粒子は、粒子間の摩擦電気作用の結果、帯電される。示されるように、基体(6)は電気的接続を持たない(電気的に「浮いている」)。電気的に非導電性の基体は、必然的に電気的接続を有しないが、弱導電性の基体は適切な電気的接続により接地されるか、あるいは電気的接続を全く付与されないことができる。摩擦電気により帯電された粉体コーティング組成物は、基体(6)に付着する。電圧源(8)によって供給される電圧が、電離またはコロナ効果を生じさせるのに必要なレベルより下に保たれているので、当該効果は生じない。
【0089】
基体(6)はコーティング工程の間、図1に示されていない手段によって規則的な揺動方法で動かされることができる。あるいは、基体は床内を浸漬の間、断続的に、または連続的に動かされることができ、または所望の全浸漬時間に達するまで、繰り返して浸漬され、または引き出されることができる。基体を静置しておく可能性、そして床を振動し、またはプロペラ攪拌機で床を攪拌することによって粒子を動かす可能性もある。
【0090】
所望の浸漬時間の後、基体は流動床から引き出され、そして加熱されて粉体コーティング組成物の付着粒子を溶融し、融解させ、そしてコーティングを仕上げる。
【0091】
電圧源8は主線から電力を供給され、そして出力電圧は主線接地電位に対して測定される。
【0092】
以下の実施例は本発明の方法を例示し、一般的に、高さ25cm及び直径15cmの円筒状室(1)を有するNordson Corporation社により供給された流動化ユニットを有する、図1に示されたような装置を使用して実施された。
【0093】
実施例において、基体(6)は長さ300mmの棒状の絶縁支持体(7)の上に搭載された。基体は流動ユニット内で中心に設置され、3kVの電圧が流動室(1)に印加されるとき、3kV/cm以下であることが期待される最大電位勾配が生じた。即ち、30kV/cmである空気の電離電位より十分下である電位勾配の場合、満足できる結果が得られる。3kVの電圧が流動室に印加されるとき、最大電位勾配が30kV/cmであるために、基体は、流動ユニットの壁に対するよりもずっと近くである必要があることは明らかである。使用される電圧が0.5kVであるとき、最大電位勾配は0.13kV/cmであると予想され、0.2kVの電圧において、予想される最大電位勾配は約0.05kV/cmである。基体の揺動又は振動を考慮すると、満足できる結果は、0.05kV/cm〜1kV/cm、多分0.05kV/cm〜5kV/cm、おそらく0.05kV/cm〜10kV/cmの範囲の最大電位勾配を付与する条件で得られる。
【0094】
実施例において報告されたすべての浸漬時間は秒で表される。
【実施例1】
【0095】
添付図面の図2Aに言及すると、実施例1において使用された第1の基体20は、長方形であり、2つの線状の盛り上がりの形状21、22を分離する線状の窪み23を含む表面の模様を含む中質繊維板のブロックである。
【0096】
添付図面の図2Bに言及すると、実施例1において使用された第2の基体24は、長方形であり、曲がった表面の窪み25を含むMDFのブロックである。
【0097】
図面2Aに示された第1の基体20は、より高い水分含有量を有し、従って図2Bに示された第2の基体24より高い伝導率を有する。
【0098】
基体の大きさの範囲は以下の通りであった:
幅=7〜11cm
長さ=5〜15cm
深さ=1.5〜2.5cm。
【0099】
同じ配合により製造されており、かつ粒子サイズ分布(PSD)及び製造の方法が異なる、AおよびBと表示された2つの粉体コーティング系が実施例1において使用された。該粉体コーティング系は慣用の粉体コーティングミルにより製造された。
【0100】
該系に共通の配合は以下に与えられる:
【0101】
【表1】



【0102】
さらに、後混合用に以下の添加剤配合物が調製された:
【0103】
添加剤配合物1
酸化アルミニウム(Degussa社の酸化アルミニウムC)−45重量部
水酸化アルミニウム(Martinal社のOL107C)−55重量部
【0104】
下に、2つの粉体コーティング系の粒子サイズ分布(PSD)が報告される:
【0105】
【表2】

【0106】
一般的な運転条件は以下の通りであった。
床に充填された粉体の重量:800g
床を均質化するための空流動化時間:3バールで30分
堆積された材料の標準的焼付け:120℃で30分
【0107】
基体は0.6%の添加剤1を含む粉体コーティング組成物に浸漬された。得られた結果は以下の表にまとめられる:
【0108】
【表3】



【0109】
上の表において使用された略語STDEVは基体の表面において行われた被膜厚測定の標準偏差である。
【0110】
系A及び系Bの両方の粉体は、類似の条件下、完全なコーティングを与えたが、系Aのコーティングは同様の条件下での系Bのコーティングより一般的に厚いことが明らかである。
【実施例2】
【0111】
実施例2において使用された基体は、CONAMIDE R6(ポリペンコ・コリア社により製造された)の名前で入手可能であり、いくらかの導電性を示すキャスト成形されたポリアミドである。基体は以下の寸法の長方形のスラブの形を有していた。
幅=77mm
長さ=116mm
深さ=10mm
【0112】
実施例2において使用された粉体コーティング系は実施例1において使用された系Bの粉体と同じであった。
【0113】
配合は0.6%の添加剤1を有する実施例1において使用されたのと同じであった。
【0114】
一般的な運転条件は以下の通りであった:
床に充填された粉体の重量:750g
床を均質化するための空流動化時間:3バールで30分
堆積された材料の標準的焼付け:120℃で30分
【0115】
得られた結果は以下の表にまとめられる:
【0116】
【表4】

【0117】
「厚さ」の欄において報告された値は、各基体について行われた12の被膜の厚さの測定の平均値である。各パネルは各面上の6つ異なる点において測定された。
【0118】
STDEVは被膜厚測定の標準偏差である。
【0119】
基体は電気的に接地されているか、又は電気的に絶縁されていることができる。基体は中程度の電気伝導率を示し、本方法は基体が電気的に絶縁されているより接地されているときより効率的であった。
【0120】
印加電圧の極性及び大きさは使用された粉体コーティング系の性能(コーティング工程の速度及び被膜の模様の厚さの均一性及び平滑性)に影響を与える。粉体コーティング系は最もよい性能のための一組の工程条件(印加電圧、浸漬時間、空気圧力)を有する。
【実施例3】
【0121】
添付図面の図3A及び3Bに言及すると、実施例3において使用された基体は、自動車のホイールキャップの一部であり、図3Aは該一部の正面図を示し、図3Bは該部分の背面図を示す。ホイールキャップは7.7cmの直径を有し、使用された部分はホイールキャップの約4分の1であった。ホイールキャップが製造されているところの物質はポリアミド66の名前で入手可能であり、測定可能であるが、著しく弱い電気伝導率を示す。
【0122】
図3Aに言及すると、基体30は、その正面の表面において隔離された窪み33及び34に加えてその正面の表面を横切って伸びる端の構成物31及び内部の構成物32を有するディスクの4分円の形を有した。
【0123】
図3Bに言及すると、基体30はディスクの4分円の形を有し、背面を横切って伸びる端の構成物38及び内部構成物37を有し、さらにその背面上に隔離された窪み40と41、及び隔離された突起38と39とを有していた。
【0124】
実施例3において1つの粉体コーティング系のみが使用され、実施例1及び2において使用された系Bの粉体であった。
一般的な運転条件は以下の通りであった:
床に充填された粉体の重量:750g
床を均質化するための空流動化時間:3バールで30分
堆積された材料の標準的焼付け:120℃で30分
【0125】
結果は以下の表にまとめられる:
【0126】
【表5】

【0127】
基体は、被膜厚の測定を困難にする、複数の曲がった、及びへこんだ部分を含む相対的に複雑な形のものであった。堆積した質量は、形成された被膜厚の尺度として使用された。
【0128】
被覆率は視覚により評価された。
【0129】
被膜厚パターンの平滑性は視覚的に評価され、値0は非常に悪いを示し、値5は非常に良いを示す。
【0130】
基体が電気的に絶縁されているときより、接地されたときよりよい結果が得られた。
【0131】
実施例3の場合、プラスチック基体材料の融点及び浸漬前の粉体組成物の転移点(Tg℃)より下である温度T℃に基体を加熱することにより被覆率は向上されることが見出された。粉体が静電工程のみにより、そして一種の焼結工程によらずに基体に付着するために、浸漬時の基体の温度は、Tg℃より低くかった。加熱工程は空気循環オーブン中で行われた。
【0132】
基体の加熱により得られた結果は以下の表に要約される。
【0133】
【表6】

【実施例4】
【0134】
実施例4において使用された基体は、47mm×101mmの透明なポリカーボネートの(非充填型(non-filled))長方形パネルであった。
【0135】
実施例4においては1つの粉体系のみが使用された。それは、実施例1,2、及び3で使用された系Bであった。
【0136】
一般的な運転条件は以下の通りであった:
床に充填された粉体の重量:750g
床を均質化するための空流動化時間:3バールで30分
堆積された材料の標準的焼付け:120℃で30分
【0137】
基体のコーティングが行われた。浸漬前にプラスチック材料をその融点より下、かつ粉体コーティング組成物の転移点より下の温度に加熱することにより、コーティングの均一性は、改善された。
【0138】
さらに、浸漬の前に基体を予備帯電させることにおいてさらなる改善が得られ、浸漬前に基体上の電荷を均一化することによりさらなる改善が得られた。電荷の均一化は基体をその融点より下の温度に加熱すること、又は基体の表面を湿らせることにより達成された。
【実施例5】
【0139】
実施例5において使用された基体は、10cm×15cm×18mmの寸法のMDF板の長方形のブロックであった。
【0140】
系A粉体に関連して上で与えられた配合物が使用されたが、以下の通りのより小さい粒子サイズ分布まで粉砕され、これは系E粉体として識別された。
【0141】
系E
d(v)99,μm 10
d(v)50,μm 5.5
%<5μm 42
【0142】
さらに、後混合のための、以下の添加剤配合物が製造された:
添加剤配合物2
酸化アルミニウム―15重量部
水酸化アルミニウム―45重量部
シリカ(ワッカーHDK H3004)―40重量部
【0143】
シリカHDK H3004はワッカーケミーから入手可能な疎水性シリカである。用語疎水性シリカは、その表面がシリル基、例えば表面に結合されたポリジメチルシロキサンの導入により変性されたシリカを意味する。
【0144】
一般的な運転条件は以下の通りであった:
床に充填された粉体の重量―500g
床を均質化するための空流動化時間―3バールで30分
コーティング中の流動化圧力―3バール
堆積された材料の標準的焼付け―120℃で30分
【0145】
2つのMDF板が2%の添加剤1及び2%の添加剤2をそれぞれ有する系E、500gに浸漬された。浸漬時間はそれぞれの場合60秒であり、3kVが流動室に印加され、パネルは120℃において30分間加熱された。結果は下に述べられ、後混合された添加剤1を有する系Eは相対的に劣るコーティング性能を有するのに対し、添加剤2が使用されて後混合されるとき、コーティング性能はかなり改善されることを示す。
【0146】
【表7】

【実施例6】
【0147】
実施例6において使用された基体は、CONAMIDE R6プラスチックスラブであり、その詳細は上の実施例2において述べられている。一般的な運転条件は上の実施例5の場合の通りであった。
【0148】
CONAMIDE R6スラブは2%の添加剤1及び2%の添加剤2をそれぞれ有する系Eの粉体500gに浸漬された。浸漬時間はそれぞれの場合60秒であり、3kVが流動室に印加され、スラブは120℃において30分間加熱された。結果は下に述べられ、後添加された添加剤1を有する系Eが相対的に劣るコーティング性能を示すのに対し、添加剤2が後添加されて使用されるとき、コーティング性能はかなり改善されることを示す。
【0149】
【表8】

【実施例7】
【0150】
実施例7において使用された基体は、上の実施例5の場合のようにMDF板であった。
【0151】
下に述べられる、後混合のための第2の粉体配合物及び第3の添加剤配合物が製造された。
【0152】
【表9】

【0153】
添加剤配合物3
酸化アルミニウム―40重量部
水酸化アルミニウム―48重量部
PTFE変性ワックス―12重量部
【0154】
上の粉体配合物2が使用され,粒子サイズ分布は、上の実施例1において使用された系A粉体の場合の通りであった。一般的な運転条件は上の実施例5の場合の通りであった。
【0155】
2つのMDF板が、それぞれ0.6%の添加剤1及び0.6%の添加剤3を有する、配合物2系A粉体、500gに浸漬された。浸漬時間はそれぞれの場合60秒であり、3kVが流動室に印加され、パネルは120℃において30分間加熱された。結果は下に述べられ、後混合される添加剤の注意深い選択により特定の基体の場合、著しくコーティング性能が改善され得ることを示す。
【0156】
【表10】

【実施例8】
【0157】
実施例8において使用された基体は、CONAMIDE R6プラスチックスラブであり、その詳細は上の実施例2において述べられている。
【0158】
一般的な運転条件は上の実施例5の場合の通りであった。
【0159】
CONAMIDE R6スラブは、0.6%の後混合添加剤1及び0.6%の後混合添加剤3をそれぞれ有する配合物2の系Aの粉体500gに浸漬された。浸漬時間はそれぞれの場合60秒であり、3kVが流動室に印加され、スラブは120℃において30分間加熱された。結果は下に述べられ、基体が変化したときでさえ、後混合添加剤の注意深い選択により、改善されたコーティング性能が維持されることを示す。
【0160】
【表11】

【実施例9】
【0161】
実施例9において使用された基体は上の実施例5の場合と同様にMDF板であった。
下に述べられるように、低温焼付け及び硬化粉体配合物が製造された。
【0162】
【表12】

【0163】
低温焼付け及び硬化配合物が系Aの粒子サイズ分布まで粉砕された。
【0164】
一般的な運転条件は上の実施例5の通りであった。
【0165】
MDF板が、0.6%の添加剤1を有する、低温焼付け及び硬化配合物粉体系、500gに浸漬された。浸漬時間はそれぞれの場合60秒であり、3kVが流動室に印加され、パネルは120℃において30分間加熱された。焼付け及び硬化は、焼付けだけの場合に通常必要とされる時間内において、120℃において達成された。結果は下に述べられ、通常のサイズの粒子サイズを有する粉体系において低温焼付け及び硬化配合物を使用することによってもまた、良好な結果が得られ得ることを示す。
【0166】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】流動床粉体コーティング装置の一般的な形式の概略断面図。
【図2A】実施例1において使用された第1及び第2のMDF基体の見取り図。
【図2B】実施例1において使用された第1及び第2のMDF基体の見取り図。
【図3A】実施例3で使用されたプラスチック基体の見取り図。
【図3B】実施例3で使用されたプラスチック基体の見取り図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の上にコーティングを形成する方法において、以下の工程、
粉体コーティング組成物の流動床を形成し、それによって粉体コーティング組成物の摩擦静電気帯電を達成する工程、ただし流動床は少なくとも一部が導電性である流動室を含む、
流動室の導電性部分に電圧を印加する工程、
電気的に非導電性であるか又は弱導電性である基体を、全体的又は部分的に、流動床中に浸漬し、それによって粉体コーティング組成物の摩擦静電気で帯電した粒子が基体に付着する工程、ただし基体は電気的に絶縁されているか、または接地されている、
基体を流動床から引き出す工程、及び
付着した粒子を、基体の少なくとも一部の上で連続したコーティングへと形成する工程、
を含み、該方法が流動床内での電離またはコロナ効果なしに行われる方法。
【請求項2】
基体が中質繊維板(MDF)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基体が木材を含む、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
基体が木製品を含む、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
基体がプラスチック材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
基体が、電気的に導電性である添加剤を含むプラスチック材料を含む、請求項1又は5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
プラスチック材料がポリアミドを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基体が高絶縁性プラスチック材料を含む、請求項1又は5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
プラスチック材料がポリカーボネートを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
基体の表面抵抗が少なくとも10オーム/□のオーダーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
基体の表面抵抗が10〜10オーム/□のオーダーである、請求項1〜4又は10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
基体の表面抵抗が少なくとも10オーム/□のオーダーである、請求項1〜4又は10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
基体の表面抵抗が10〜1011オーム/□のオーダーである、請求項1、5、又は6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
基体の表面抵抗が少なくとも1011オーム/□のオーダーである、請求項1、又は7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
基体を流動床に浸漬する前に、プラスチック材料の融点より下、かつ粉体コーティング組成物の転移温度より下の温度にプラスチック材料を加熱する工程を好含む、請求項1、5〜9、13又は14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
基体を流動床に浸漬する前に基体を予備帯電する工程を含む、請求項8又は9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
基体を流動床に浸漬する前に基体上の電荷を均一化する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
電荷を均一化するために、基体の融点より下の温度に基体を加熱する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
電荷を均一化するために、基体の表面を湿らせる工程を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
流動床における浸漬の前に、基体の予備加熱がない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
直流電圧が印加される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
正の直流電圧が印加される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
負の直流電圧が印加される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
流動床内に存在する最大電位勾配が、29kV/cm、27.5、25、20、15,10、5、1または0.05kV/cmであるような電圧が印加される、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
流動床内に存在する電位勾配が、少なくとも0.1kV/cmまたは少なくとも0.5kV/cmであるような電圧が印加される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
流動床内に存在する電位勾配が、少なくとも0.01kV/cmまたは少なくとも0.05kV/cmであるような電圧が印加される、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
10V〜100kVの範囲の電圧が印加される、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
100V〜60kVの範囲の電圧が印加される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
100V〜30kVの範囲の電圧が印加される、請求項27又は28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
100V〜10kVの範囲の電圧が印加される、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
非金属を含む基体が浸漬される、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
基体が、30分、20分、10分、5分、又は3分までの時間、帯電状態の流動室により浸漬される、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
基体が、少なくとも10ミリ秒、500ミリ秒、又は1秒の時間、帯電状態の流動室により浸漬される、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
500ミクロンまで、又は200、150、100、又は80ミクロンまでの厚さのコーティングが施与される、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも5ミクロン、又は少なくとも10、20、50、60、又は80ミクロンの厚さのコーティングが施与される、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
20〜50ミクロン、25〜45ミクロン、又は50〜60ミクロンの厚さのコーティングが施与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
基体を振り動かし、又は振動させて、ゆるい粒子を除去する、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
粉体コーティング組成物が熱硬化性の系である、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
粉体コーティング組成物の1または各粉体コーティング成分における被膜形成性重合体が、カルボキシ官能性ポリエステル樹脂、ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、および官能性アクリル樹脂から選ばれた1以上のものである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
粉体コーティング組成物が熱可塑性の系であるところの、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
粉体コーティング組成物が、後混合することにより1以上の流動促進添加剤を取り込んでいる、請求項1〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
粉体コーティング組成物が、流動促進添加剤としてアルミナ及び水酸化アルミニウムの組合せを取り込んでいる、請求項1〜41に記載の方法。
【請求項43】
流動促進添加剤が疎水性シリカを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
流動促進添加剤がPTFE変性ワックスを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
実質的にすべての粉体粒子が10μm以下である、請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
粉体コーティング組成物が低温焼付け組成物である、請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
基体が流動床内に全体的に浸漬される、請求項1〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1〜47のいずれか1項に記載の方法により得られたコーティングされた基体。

【図1】
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【公表番号】特表2006−509621(P2006−509621A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558081(P2004−558081)
【出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014167
【国際公開番号】WO2004/052558
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】