粉体ホルダ、測定用試料製造方法及び試料分析方法
【課題】 試料表面の平滑性が求められる分析において、粉体であっても容易に測定用試料を製造することができ、測定効率の向上を可能とする粉体ホルダ、測定用試料製造方法及び試料分析方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の粉体ホルダは、基台部と、基台部上に設けられた粉体保持部と、を備え、粉体保持部が、粉体保持部の基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を少なくとも1つ有し、粉体保持部の硬度が、基台部の硬度よりも小さい。
【解決手段】 本発明の粉体ホルダは、基台部と、基台部上に設けられた粉体保持部と、を備え、粉体保持部が、粉体保持部の基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を少なくとも1つ有し、粉体保持部の硬度が、基台部の硬度よりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体ホルダ、測定用試料製造方法及び試料分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、EPMA(電子プローブマイクロアナライザ、X線マイクロアナライザ)分析や蛍光X線分析における試料の分析面は平滑であることが要求される。これは、試料表面に凹凸があると、X線の分光条件や吸収過程が変化してX線強度に影響を与えるからである。
【0003】
ところで、粉体に対して上記の分析を行う場合、従来は、試料表面の平滑性を得るために粉体を所定の治具を用いてプレスして測定用試料を製造していた。例えば、錠剤を成形する硬質金属製の型枠を用いてハンドプレス或いは油圧式機械により粉体試料を成形した後、型枠から成形された試料を取り出し、これを測定用試料としていた。また、粉体から測定用試料を製造する別の方法としては、バインダー樹脂と粉体とを混合し、これを硬化させて得られた硬化物を研磨する方法もある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】内山 郁、渡辺 融、紀本 静雄、「X線マイクロアナライザ 第6版」、第95頁、日刊工業新聞社、1975年8月30日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の測定用試料製造方法では、測定用試料の製造に多くの手間と時間を費やし、測定の効率が必ずしも十分なものとは言えなかった。
【0006】
本発明は、試料表面の平滑性が求められる分析において、粉体であっても容易に測定用試料を製造することができ、測定効率の向上を可能とする粉体ホルダ、測定用試料製造方法及び試料分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の粉体ホルダは、基台部と、この基台部上に設けられた粉体保持部と、を備え、粉体保持部が、粉体保持部の基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を少なくとも1つ有し、粉体保持部の硬度が、基台部の硬度よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明の粉体ホルダによれば、粉体収容孔に粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧することによって、基台部を変形させずに粉体保持部を変形させることができる。これにより、粉体保持部の変形とともに、粉体収容孔に充填された粉体も平滑面で加圧されるので、粉体収容孔内に平滑な表面を有する測定用試料を得ることができる。そして、この粉体ホルダを分析装置の試料台に配置して測定を行うことができる。したがって、上記粉体ホルダを用いることにより、粉体から容易に測定用試料が得られるとともに、粉体ホルダから測定用試料を取り出すことなく測定を行うことができるので、測定効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の粉体ホルダにおいては、上記粉体保持部が、粉体保持部の基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を複数有していることが好ましい。かかる粉体ホルダによれば、複数の粉体収容孔のそれぞれに粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧することによって、複数の粉体収容孔内に平滑な表面を有する測定用試料を同時に得ることができる。これにより、多数の粉体を分析する場合に測定効率を更に向上させることができる。
【0010】
また、粉体収容孔を複数有している上記の粉体ホルダによれば、複数の粉体収容孔のそれぞれに粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を平滑面で加圧することによって、複数の粉体収容孔内に得られる測定用試料の表面を1つの面に位置させることができる。これにより、試料の表面を所定の3次元座標の位置に合わせる必要がある分析装置においては、ある1つの測定用試料表面を所定の3次元座標の位置に合わせれば、残りの測定用試料については、2次元での移動のみで上記所定の3次元座標の位置に試料の表面を合わせることができる。したがって、測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせるための操作において、1次元分の操作の省略を可能とすることができ、測定効率を更に向上させることが可能となる。
【0011】
なお、従来の型枠を用いて測定用試料を製造する方法では、粉体を個別にプレス成形していたので複数の測定用試料の厚さを一定にすることは容易でなく、これらの測定用試料を試料台に並べて試料ごとに順次測定する場合、測定ごとに試料表面を所定の3次元座標の位置に合わせる操作が必要であった。
【0012】
さらに、本発明の粉体ホルダにおいては、上記基台部が、粉体保持部の基台部と反対側の面よりも外方に張出し、粉体保持部を包囲する環状のマーキング面を有し、このマーキング面には少なくとも1つのマーキング部が設けられていることが好ましい。
【0013】
かかる粉体ホルダは、マーキング部を有していることにより、このマーキング部と粉体収容孔との位置関係を予め得ることができるものとなっている。したがって、粉体収容孔に粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧して、粉体収容孔内に測定用試料が得られた粉体ホルダ(以下、「測定用試料ホルダ」という場合もある)のマーキング部を分析装置内で確認し、このマーキング部を基準点とすることにより、予め得られているマーキング部と粉体収容孔との位置関係に基づいてそれぞれの測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせることができる。これにより、測定効率を更に向上させることが可能となる。
【0014】
また、本発明の粉体ホルダにおいては、上記マーキング部に対して粉体収容孔を所定の位置に位置合わせする位置合わせ部が、基台部及び粉体保持部にそれぞれ設けられていることが好ましい。このような位置合わせ部を設けることにより、個別に用意された基台部及び粉体保持部を用いる場合であっても、マーキング部と粉体収容孔との位置関係をより確実に得ることができる。
【0015】
さらに、本発明の粉体ホルダにおいては、上記基台部が上記粉体保持部を収容する粉体保持部収容凹部を有し、この粉体保持部収容凹部に上記粉体保持部が嵌め込まれていることが好ましい。かかる粉体ホルダによれば、粉体保持部が基台部にしっかりと固定される。このため、粉体収容孔に粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧する際に、粉体保持部がずれることを抑制でき、これにより粉体収容孔内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることが可能となる。
【0016】
また、上記基台部に設けられた上記粉体保持部収容凹部は、粉体保持部収容凹部の開口が深さ方向に向かって小さくなっていることが好ましい。粉体保持部収容凹部がこのような形状であれば、基台部から粉体保持部を抜き出すことが容易となり、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部と粉体保持部とに分解することがより容易となる。これにより、基台部を再利用する場合には、新しい粉体保持部と組み合わせて新しい粉体ホルダが得られるまでの手間と時間を低減することができる。
【0017】
さらに、上記基台部が、基台部に設けられた上記粉体保持部収容凹部に繋がる貫通孔を有していることが好ましい。このような貫通孔を有していることにより、測定が終了した測定用試料ホルダにおいて、貫通孔に例えば棒状の器具を差込んで粉体保持部を基台部から容易に押し出すことができ、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部と粉体保持部とに分解することがより容易となる。
【0018】
また、本発明の粉体ホルダにおいては、上記基台部が基台部と粉体保持部とのずれを防止する第1のずれ防止部を有し、上記粉体保持部が第1のずれ防止部に対して相補的な形状を有する第2のずれ防止部を有していることが好ましい。かかる粉体ホルダによれば、粉体収容孔に粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧する際に、粉体保持部が基台部に対してずれることを抑制でき、これにより粉体収容孔内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることが可能となる。また、上記マーキング部が設けられている粉体ホルダにおいては、マーキング部と粉体収容孔との位置関係をより確実に定めることができる。
【0019】
また、本発明の測定用試料製造方法は、上記の本発明の粉体ホルダにおいて、粉体保持部の粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程と、粉体保持部の基台部と反対側の面を平滑面で加圧することにより粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明の測定用試料製造方法によれば、本発明の粉体ホルダを用いて上記の工程を経ることにより、上述したように粉体から平滑面を有する測定用試料を容易に製造することができる。これにより試料表面の平滑性が求められる分析(特には、EPMA分析装置を用いる元素分析)の測定効率を向上させることができる。
【0021】
また、本発明の第1の試料分析方法は、本発明の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料に、入射線として電子線又はX線を照射し、測定用試料から発生するX線を出射線として検出することにより測定用試料を分析することを特徴とする。本発明の試料分析方法によれば、本発明の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料が平滑面を有するので、この測定用試料を用いることにより、上記従来の方法により得られた測定用試料を用いる場合に比べて、測定効率に優れた分析を行うことができる。
【0022】
さらに、本発明の第1の試料分析方法においては、上記測定用試料から発生するX線を更に分光結晶で分光して得られるX線を出射線として検出することにより測定用試料を分析することが好ましい。分光結晶でX線を分光することにより、発生X線のエネルギー分解能が向上し、特に元素分析を行う場合に元素の識別精度が向上する。このような分析方法においても、試料表面の平滑性が要求されるので、本発明の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料を用いることにより、上記従来の方法により得られた測定用試料を用いる場合に比べて、更に測定効率に優れた分析を行うことができる。
【0023】
また、本発明の第2の試料分析方法は、複数の試料に対して、試料ごとに、入射線として電子線又はX線を前記試料に照射し、試料から発生するX線を出射線として検出することにより複数の試料を分析する試料分析方法であって、上記本発明の粉体ホルダのうち、粉体保持部が、粉体保持部の基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を複数有し、且つ、基台部が、粉体保持部の基台部と反対側の面よりも外方に張出し、粉体保持部を包囲する環状のマーキング面を有し、このマーキング面には少なくとも1つのマーキング部が設けられている粉体ホルダにおいて、粉体保持部の粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程、及び、粉体保持部の基台部の反対側の面を平滑面で加圧することにより粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程を含む工程により得られた測定用試料ホルダを試料台に配置する配置工程と、測定用試料ホルダのマーキング部を確認して基準点とする基準点設定工程と、測定用試料ごとに、基準点と、予め定められた粉体収容孔とマーキング部との位置関係と、に基づいて、測定用試料の表面を電子線又はX線の照射位置に合わせ、入射線として電子線又はX線を照射し、測定用試料から発生するX線を出射線として検出する試料分析工程とを有することを特徴とする。
【0024】
上記の試料分析方法によれば、粉体収容孔を複数有している本発明の粉体ホルダを用いることにより、上述したように測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせるための操作において、1次元分の操作の省略を可能とすることができる。さらに、マーキング部を有する本発明の粉体ホルダを用いることにより、マーキング部を基準点とすれば、予め得られているマーキング部と粉体収容孔との位置関係に基づいてそれぞれの測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせることが容易にできる。したがって、初めにマーキング部の位置を確認し、次に、ある1つの測定用試料の表面を電子線又はX線の焦点位置(所定の3次元座標の位置)に合わせれば、他の測定用試料の表面を所定の3次元座標の位置に合わせることが、予め得られているマーキング部と粉体収容孔との位置関係に基づいて2次元での移動のみで行うことが可能となる。これにより、複数の試料に対する測定効率を極めて向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明よれば、試料表面の平滑性が求められる分析において、粉体であっても容易に測定用試料を製造することができ、測定効率の向上を可能とする粉体ホルダ、測定用試料製造方法及び試料分析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0027】
[測定用試料製造方法]
先ず、本発明の測定用試料製造方法の実施形態について説明する。
【0028】
本実施形態の測定用試料製造方法は、本発明の粉体ホルダにおいて、粉体保持部の粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程と、粉体保持部の基台部と反対側の面を平滑面で加圧することにより粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程とを有している。
【0029】
ここで、上記の測定用試料製造方法で用いる本発明の粉体ホルダの第1実施形態について説明する。
【0030】
図1〜3は、本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す図である。図1は本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す概略平面図である。また、図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。また、図3は、本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す分解斜視図である。図1〜3に示される粉体ホルダ100は、基台部10と、粉体保持部20とを備えている。基台部10は、粉体保持部20を収容する粉体保持部収容凹部11を有し、粉体保持部収容凹部11は、基台部10の一面上に形成されている。ここで、基台部10及び粉体保持部20は、いずれも円柱状になっている。また、基台部10は、粉体保持部20の基台部10と反対側の面20aよりも外方に張出して、粉体保持部収容凹部11を取り囲むように環状壁を有している。そして、環状壁は、粉体保持部収容凹部11を取り囲むように環状のマーキング面12aを有している。そして、このマーキング面12a上にマーキング部50が設けられている。また、粉体保持部20は、粉体保持部20の面20a側に粉体収容孔30a〜30iを有している。更に、位置合わせ部40が、基台部10及び粉体保持部20のそれぞれに設けられており、測定用試料を製造する際に粉体ホルダにおいて両者を合わせることにより、粉体収容孔30a〜30iとマーキング部50との位置関係を定めることができる。
【0031】
本実施形態の粉体ホルダ100においては、粉体保持部20の硬度が、基台部10の硬度よりも小さいことが必要である。以下、粉体ホルダ100の構成について詳細に説明する。
【0032】
(基台部)
基台部10は、その硬度が粉体保持部20よりも大きければよく、材質については特に限定されない。本実施形態の粉体ホルダにおいては、基台部10上に粉体保持部20が配置された状態で後述する加圧工程が行われた場合に、粉体保持部20が変形して基台部10が変形しなければよい。具体的な硬度としては、例えば、基台部10のブリネル硬さ(HB)が150以上であることが好ましい。ここで、本明細書における「ブリネル硬さ(HB)」とは、以下のようにして得られた値を意味する。すなわち、直径10mmの鋼球を材料表面に垂直に荷重3000kgを加えて押し付けたときに、この試験荷重を圧痕表面積で割った値をブリネル硬さ(HB)とする(参考文献:「化学便覧」、著作者:社団法人日本化学会、発行所:丸善株式会社、1975年6月20日発行)。
【0033】
基台部10の材質としては、例えば、ステンレス鋼及び炭素鋼等が挙げられる。
【0034】
基台部10の大きさについては、特に限定されないが、例えば図1に示される直径L1が20〜90mmであることが好ましく、図2に示される厚さH1が10〜20mmであることが好ましい。直径L1が上記の範囲であれば、一般のEPMA分析装置等の試料台に配置することがより確実にできるとともに、粉体保持部がより多数の粉体収容孔を有することができる。また、厚さH1が上記の範囲であれば、基台部の重量増加による分析装置の試料台への負荷を抑制できるとともに、基台部の強度をより確実に確保できる。
【0035】
(粉体保持部)
粉体保持部20は、その硬度が基台部10よりも小さければよく、材質については特に限定されない。本実施形態の粉体ホルダにおいては、基台部10上に粉体保持部20を配置した状態で後述する加圧工程が行われた場合に、基台部10が変形せずに粉体保持部20が塑性変形すればよい。具体的な硬度としては、例えば、粉体保持部20のブリネル硬さ(HB)が80未満であることが好ましい。
【0036】
粉体保持部20の材質としては、例えば、Al、Pb、Zr、Cu、Sn及びこれらの合金が挙げられる。
【0037】
粉体保持部20の大きさについては、特に限定されないが、例えば図1に示される直径L2が10〜70mmであることが好ましく、図2に示される厚さH2が2〜3mmであることが好ましい。直径L2が上記の範囲であれば、マーキング面12aの面積を十分に確保できるとともに、粉体保持部がより多数の粉体収容孔を有することが可能となる。また、厚さH2が上記の範囲であれば、粉体保持部の取扱い性が良好であるとともに、粉体保持部の重量増加による分析装置の試料台への負荷をより確実に低減することができる。
【0038】
また、粉体保持部20は加圧によって塑性変形させるため、粉体保持部20の基台部10と反対側の面の位置と、マーキング面12aの位置との間にクリアランスH3があることが好ましい。本実施形態においては、クリアランスH3が0.5〜1mmであることが好ましい。かかる範囲のクリアランスH3があれば、粉体保持部20を加圧によって塑性変形させて測定用試料の表面を十分に平滑にすることができるとともに、粉体保持部が過剰に変形して粉体収容孔の開口位置が大きくずれることを防止することができる。
【0039】
(粉体収容孔)
粉体収容孔30a〜30iの開口の大きさについては、粉体保持部20を加圧した後に十分な測定領域が確保されていればよく、特に限定されない。本実施形態の粉体ホルダ100においては、粉体収容孔30a〜30iの開口の孔径が3〜5mmであることが好ましい。3mm未満であると、加圧によって粉体収容孔の開口面積が小さくなり測定が困難となったり、粉体収容孔の開口位置がずれてマーキング部と粉体収容孔との位置関係が変化したりする傾向にある。一方、開口の孔径が5mmを超えると、多量の粉体が必要となる傾向にある。
【0040】
また、粉体収容孔の数については、後述する加圧工程によって粉体収容孔の開口がつぶれて測定領域が確保できなくなったり、粉体収容孔の開口位置がずれてマーキング部と粉体収容孔との位置関係が大きく変化したりすることがないように設定することが好ましい。本実施形態の粉体ホルダ100においては、粉体収容孔同士の間隔が1mm以上確保されていることが好ましい。
【0041】
(マーキング面)
マーキング面12aは、マーキング部50を設けるための面積が確保されていればよい。
【0042】
(マーキング部)
マーキング部50としては、例えば視覚的に確認できるように設けられた目印が挙げられ、具体的には、Xの刻印、点の刻印等が挙げられる。また、マーキング部を複数設ける場合には、それぞれが区別できるように形を変えたり、近傍に数字を刻印したりすることが好ましい。また、粉体保持部を平滑面で加圧する際に、マーキング部が平滑面によってつぶされて確認できなくなることを避けるため、マーキング面12aに凹部を形成し、この凹部の底面にマーキング部が設けられていてもよい。また、マーキング部50が設けられる位置については特に限定されないが、例えば、それぞれのマーキング部50がマーキング面12a上で均等に離れていることが、粉体収容孔の位置をより精度よく認識できる点で好ましい。
【0043】
(位置合わせ部)
図1に示される粉体ホルダ100は、すでにマーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとが所定の位置関係になるように、基台部及び粉体保持部に設けられた位置合わせ部40を互いに合わせた状態となっている。位置合わせ部としては、図1に示されるような、視覚的に確認できるように設けられた目印が挙げられ、具体的には、刻印によって形成された目印が挙げられる。
【0044】
次に、上記の粉体ホルダ100を用いて測定用試料の製造方法、すなわち、測定用試料ホルダの製造方法について説明する。
【0045】
図4は、本発明の測定用試料製造方法の一実施形態を説明する図である。図4(a)〜(d)は、上記粉体ホルダ100を用いて測定用試料(測定用試料ホルダ)を製造する工程が示されている。図4(a)には、粉体ホルダ100の図1におけるII−II線に沿った断面図が示されており、以下、この断面図に対応する部分を参照して本発明の測定用試料製造方法の一実施形態について詳細に説明する。なお、ここでは上記粉体ホルダ100を用いて測定用試料を製造する方法を説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0046】
(粉体ホルダ準備工程)
図4(a)に示されるように、上記した粉体ホルダ100を準備する粉体ホルダ準備工程を行う。このとき、位置合わせ部40は、互いに合わせておくことが好ましい。
【0047】
(粉体充填工程)
次に、各粉体収容孔30a〜30iに測定用試料となる粉体を充填する(粉体充填工程)。図4(b)は、粉体が充填された粉体ホルダ100の断面図(図1におけるII−II線断面)を示している。粉体は、図4(b)に示されるように、各粉体収容孔に充填した粉体の表面(例えば、60d、60e、60f)が粉体保持部20の基台部10と反対側の面(以下、「被加圧面」という)20aに揃うように充填させることが好ましい。このとき、例えば、粉体がセラミック等の原料(金属酸化物等)を混合したものであれば、原料から形成されるセラミックの理論密度の50〜70%となるように粉体を充填することが好ましい。
【0048】
(加圧工程)
次に、粉体を充填した粉体ホルダ100を基台治具90上に置き、平滑面80を有する加圧用治具70で粉体保持部20の被加圧面20aを加圧し、粉体収容孔30a〜30i内に測定用試料を得る(加圧工程)(図4(c))。この加圧工程は、例えば、一般の機械式又は手動式の油圧式プレス機等を用いて行うことができる。
【0049】
上記加圧工程を経て、図4(d)に示されるように変形した粉体保持部21の粉体収容孔30a〜30i内に測定用試料62d、62e、62f(図4(d)参照)が得られる。すなわち、測定用試料を有する測定用試料ホルダ101が製造される。
【0050】
以上述べたように、本実施形態の粉体ホルダ100を用いれば、粉体収容孔30a〜30iに粉体を充填した後、粉体保持部20の被加圧面20aを平滑面80で加圧することによって、基台部10を変形させずに粉体保持部20を変形させることができる。これにより、粉体保持部20の変形とともに、粉体収容孔30a〜30iに充填された粉体も平滑面で加圧されるので、粉体収容孔内30a〜30iに平滑な表面を有する測定用試料を複数同時に得ることができる。そして、得られた測定用試料ホルダ101を分析装置の試料台に配置して測定を行うことができる。したがって、本実施形態の粉体ホルダ100を用いることにより、粉体から容易に測定用試料が得られるとともに、粉体ホルダから測定用試料を取り出すことなく測定を行うことができるので、測定効率を向上させることができる。
【0051】
加圧用治具70の平滑面80は、算術平均粗さRaが、1μm以下であることが好ましい。ここで、算術平均粗さRaとは、JIS−B−0601−1994で定義される算術平均粗さRaである。このような平滑面を有する加圧用治具70で粉体保持部20を加圧することにより、各粉体収容孔内に得られる測定用試料の表面に十分な平滑性を付与できる。
【0052】
また、上記加圧工程によって各粉体収容孔内に得られる測定用試料の表面の算術平均粗さRaを、5μm以下とすることが好ましく、3μm以下とすることがより好ましく、1μm以下とすることが更に好ましい。測定用試料の表面の算術平均粗さRaを、5μm以下とすることにより、例えば、EPMA分析装置を用いる元素分析において、測定精度をより向上させることができる。
【0053】
また、粉体保持部20を加圧して変形させる際、加圧用治具70の平滑面80と、基台治具90の基台部10に接触する面92とを平行に対向させながら粉体保持部20を加圧することが好ましい。本発明においては、加圧工程後に、各粉体収容孔30a〜30iに得られる測定用試料の表面(例えば、図4(d)に示される試料表面65d,65e及び65f)と、基台治具90の基台部10に接触する面92との距離(例えば、図4(d)に示されるLd、Le、Lf)の最大値と最小値との差を、5μm以下とすることが好ましく、3μm以下とすることがより好ましく、1μm以下とすることが更に好ましい。上記の最大値と最小値との差が5μm以下であれば、後述する複数の試料に対する試料分析方法において、より確実に測定効率を向上させることができる。
【0054】
また、上記加圧工程では加圧用治具70によって粉体保持部20を塑性変形させるので、加圧用治具70の硬度は粉体保持部20の硬度よりも大きいことが好ましい。本発明の測定用試料製造方法では、基台部10と同様の材質からなる加圧用治具70を用いることが、基台部10の形状(特に、粉体保持部収容凹部及びマーキング面の形状)の保護という観点から好ましい。
【0055】
加圧の圧力については、粉体保持部20の材質、粉体保持部20を変形させる程度、及び粉体の種類によっても左右されるが、例えば、粉体保持部20がアルミニウムからなり、この粉体保持部の厚さを加圧によって0.5〜1mm減少させ、セラミック等の原料(金属酸化物等)を混合した粉体から測定用試料を得る場合、圧力は600〜1000kg/cm2が好ましい。また、加圧の時間は、粉体の性質により適宜設定することが好ましいが、例えば、セラミック等の原料(金属酸化物等)を混合した粉体を試料とする場合は、上記の圧力を30〜90秒間加圧することにより測定用試料を得ることができる。
【0056】
[試料分析方法]
次に、本発明の試料分析方法について説明する。
【0057】
本発明の試料分析方法の一実施形態として、上記した粉体ホルダ100を用いて得られた測定用試料ホルダ101が有する複数の測定用試料に対して、EPMA分析装置による元素分析を順次行う試料分析方法を説明する。
【0058】
先ず、本実施形態の試料分析方法で用いられるEPMA分析装置について説明する。図5は、EPMA分析装置の構成を示す概略構成図である。図5に示されるEPMA分析装置は、電子銃Eと、試料台Tと、駆動装置Mと、分光結晶ACと、検出器Dと、制御部Cとを備えている。本実施形態では、検出器DとしてWDS(Wave Dspersive Spectoroscopy)が用いられる。制御部Cは、駆動装置Mに電気的に接続されており、駆動装置Mを制御して試料台Tを所定の位置に移動させることができ、また、試料台Tの位置を読み取ることができる。さらに、制御部Cは、所定のプログラムに基づいて、電子銃E、分光結晶AC、及び検出器Dを制御して元素分析を行う。なお、元素分析は、試料台T上に配置された試料S1の表面に電子線Lが照射され、試料S1から発生したX線を分光結晶ACによって分光し、この分光を検出器Dによって検出することで行われる。ここで、所定の位置に設定された分光結晶に導かれるX線と試料表面との角度αが変化すると異なるデータとして検出されるので、EPMA分析装置による元素分析においては、測定の初めに試料表面を所定の位置(電子線の焦点位置)に合わせる必要がある。したがって、複数の試料の分析を行う場合には、測定ごとに試料表面を所定の位置(電子線の焦点位置)に合わせる必要がある。以下、本実施形態の試料分析方法を説明する。
【0059】
(ステップ1)
上記した本実施形態の測定用試料製造方法により得られた測定用試料(測定用試料ホルダ101)を分析装置の試料台Tに配置する(配置工程)。
【0060】
(ステップ2)
次に、粉体ホルダ100の、マーキング部50と各粉体収容孔30a〜30iとの位置関係を示すデータを制御部Cに記憶させる。データとしては、例えば、図6(a)に示されるように、2次元の座標で表されるものを用いることができる。図6(a)に示される座標は、粉体収容孔の位置を粉体ホルダ100が載置される面に投射して得られる値で表されている。なお、分析装置内では、粉体ホルダ100が載置される面、すなわち試料台Tの表面が、入射線と直交するように調節される。
【0061】
(ステップ3)
次に、試料台Tに配置された測定用試料ホルダ101のマーキング部50を可視顕微鏡、SEM等により確認し、このときのマーキング部50の位置を基準点(図6(b)に示される(0、0、0))として制御部Cに記憶させる(基準点設定工程)。また、制御部Cは、この基準点を通り入射線と平行な直線をZ軸とし、この基準点を通り入射線が法線となる面をX−Y面とし、更にX軸を所定の方向に設定する。
【0062】
(ステップ4)
次に、試料台Tを移動させて粉体収容孔30aの測定用試料の表面を電子線の入射領域に合わせる。このときの粉体収容孔30aの測定用試料表面のEPMA装置内での位置は、試料台Tの位置に基づいて(Xa、Ya、Za)として認識されている。更に、粉体収容孔30aの測定用試料の表面上に電子線の焦点位置が合うように、試料台TをZ軸方向に移動させる。電子線の焦点位置合ったときのZ座標はZFPとなり、この座標をEPMA測定時のZ座標として設定する。そして、粉体収容孔30aの測定用試料を測定する場合の試料台Tの適切な位置として、粉体収容孔30aに対応する座標(Xa、Ya、ZFP)を制御部Cに認識させる。ここで、上記した本実施形態の測定用試料製造方法により得られた測定用試料ホルダ101では、粉体収容孔30aの測定用試料の表面及び他の粉体収容孔30b〜30iの測定用試料の表面は同一の面に位置している。さらに、この面は試料台Tの表面と平行である。したがって、他の粉体収容孔30b〜30iの測定用試料の表面に対応するZ座標もZFPとなっている。また、この時点で粉体収容孔30b〜30iの測定用試料の表面に対応するX及びY座標についても制御部Cに認識させることができる。これについて以下に説明する。
【0063】
基準点であるマーキング部50に対する各粉体収容孔30a〜30iの位置を示す座標データは、図6(a)に示されるように、粉体収容孔30aが(Xa0、Ya0)、粉体収容孔30bが(Xb0、Yb0)、…、粉体収容孔30iが(Xi0、Yi0)というように予め得られており、このデータは上記ステップ2で制御部Cに記憶させている。EPMA装置内においては、上述のように基準点であるマーキング部50のXY座標(0、0)に対して粉体収容孔30aの対応する座標は(Xa、Ya)となっている。ここで、通常、測定用試料ホルダ101は試料台T上に自由に配置されるので、(Xa、Ya)と(Xa0、Ya0)とは一致していない場合が多い。この座標のズレは測定用試料ホルダ101の回転に由来するものである。そこで、制御部Cは、(Xa、Ya)及び(Xa0、Ya0)の値に基づいて回転の角度を算出し、この角度の回転補正を他の粉体収容孔30b〜30iの座標(Xb0、Yb0)〜(Xi0、Yi0)に対して行う。これにより、粉体収容孔30b〜30iの測定用試料を測定する場合の適切な試料台Tの位置として、粉体収容孔30b〜30iのそれぞれに対応した座標(Xb、Yb、ZFP)〜(Xi、Yi、ZFP)を制御部Cが認識する(図6(c)参照)。このようにして、粉体収容孔30b〜30iの測定用試料の表面を可視顕微鏡やSEMで確認することなく、制御部Cは粉体収容孔30b〜30iのそれぞれを測定する場合の試料台Tの的確な位置として、各粉体収容孔に対応するX、Y座標と電子線の焦点位置ZFPを認識する。なお、上述した、粉体収容孔30b〜30iの位置補正をより正確に行う観点から、粉体収容孔30aの測定用試料の表面を電子線の焦点位置に合わせる際に粉体収容孔30aの開口の中心にできるだけ近いところを用い、このときの位置を粉体収容孔30aに対応する座標(Xa、Ya、ZFP)とすることが好ましい。
【0064】
(ステップ5)
次に、粉体収容孔30a〜30iの測定用試料の測定順序として、順番に対応させて測定する粉体収容孔を制御部Cに入力する。例えば、1番目に測定する試料として粉体収容孔30a、2番目に測定する試料として粉体収容孔30b、…、9番目に測定する試料として粉体収容孔30iのように入力する。
【0065】
(ステップ6)
1番目に測定する粉体収容孔30aに対して、制御部Cの制御により電子銃Eから電子線Lが照射され、粉体収容孔30aから発生したX線は分光結晶ACによって分光され、この分光が検出器Dによって検出され、元素分析が行われる。
【0066】
(ステップ7)
粉体収容孔30aの測定用試料の元素分析が終了すると、制御部Cが駆動装置Mを制御して試料台Tを、次に測定する粉体収容孔30bの測定位置に対応する座標(Xb、Yb、ZFP)に移動させて、粉体収容孔30bの測定用試料の表面を電子線の焦点位置に合わせる。
【0067】
(ステップ8)
次に、粉体収容孔30bに対して、制御部Cの制御により電子銃Eから電子線Lが照射され、粉体収容孔30bから発生したX線は分光結晶ACによって分光され、この分光が検出器Dによって検出され、元素分析が行われる。
【0068】
(ステップ9)
粉体収容孔30bの測定用試料の元素分析が終了すると、さらに制御部Cが、ステップ5で入力された順序に基づいて、残りの測定用試料に対してステップ7及びステップ8を繰り返し、すべての測定用試料の元素分析を行う(以上のステップ6〜9が試料分析工程)。
【0069】
以上述べたように、上記した本実施形態の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料ホルダ101を用いることにより、複数の粉体収容孔内30a〜30iに得られる測定用試料の表面を1つの面に位置させることができ、マーキング部50を基準点とすれば、予め得られているマーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとの位置関係(図6(a))に基づいてそれぞれの測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせることが容易となっている。すなわち、上述のように、マーキング部50の位置を確認し、ある1つの測定用試料の表面を電子線の焦点位置に合わせれば、制御部Cによって自動的に複数の試料に対する測定が可能となり、測定効率を極めて向上させることができる。
【0070】
次に、本発明による粉体ホルダの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0071】
図7〜9は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す図である。図7は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す概略平面図である。また、図8は、図7におけるVIII−VIII線に沿った断面図である。また、図9は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す分解斜視図である。図7〜9に示される粉体ホルダ110は、円柱状の粉体保持部20が、その外周に第1のずれ防止部としての凸部42を有し、基台部10が、粉体保持部収容凹部11の内壁に第1のずれ防止部としての凸部42と相補的な形状を有する、第2のずれ防止部としての凹部41を有している点で、第1実施形態の粉体ホルダ100と相違する。ここでは、凸部42が凹部41に嵌め込まれている。
【0072】
上記の粉体ホルダ110によれば、第1のずれ防止部42と第2のずれ防止部41とが嵌合するように基台部10の粉体保持部収容凹部11に粉体保持部20を嵌め込むことにより、マーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとを所定の位置関係にすることができ、上記の位置合わせ部を省略することができる。また、第1のずれ防止部42と第2のずれ防止部41により、粉体保持部20が基台部10にしっかりと固定される。これにより、上記加圧工程においても、基台部10と粉体保持部20とのずれをより確実に抑制することができ、これにより粉体収容孔30a〜30i内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることができる。なお、上記粉体ホルダ110では、第1のずれ防止部が凹部であり、第2のずれ防止部が凸部であってもよい。また、第1のずれ防止部42及び第2のずれ防止部41の形状や位置についても、上記の効果が得られるのであれば特に限定されない。
【0073】
次に、本発明による粉体ホルダの第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0074】
図10〜12は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す図である。図10は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す概略平面図である。また、図11は、図10におけるXI−XI線に沿った断面図である。また、図12は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す分解斜視図である。図10〜12に示される粉体ホルダ120は、第1のずれ防止部及び第2のずれ防止部の位置の点で粉体ホルダ110と異なる。すなわち、粉体ホルダ120においては、粉体保持部20が、粉体保持部20の基台部10側即ち被加圧面20aと反対側に第1のずれ防止部としての凸部43を有し、基台部10が、粉体保持部収容凹部11の底面11aに第1のずれ防止部43と相補的な形状を有する、第2のずれ防止部としての凹部44を有している。ここでは、凸部43が凹部44に嵌め込まれている。この粉体ホルダ120においても、図7〜9に示される粉体ホルダ110と同様に、第1のずれ防止部43と第2のずれ防止部44とが嵌合するように基台部10に粉体保持部20を嵌め込むことにより、マーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとを所定の位置関係にすることができ、上記の位置合わせ部を省略することができる。また、第1のずれ防止部43と第2のずれ防止部44により、粉体保持部20が基台部10にしっかりと固定される。これにより、上記加圧工程においても、基台部10と粉体保持部20とのずれをより確実に抑制することができ、これにより粉体収容孔30a〜30i内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることができる。なお、上記粉体ホルダ120では、第1のずれ防止部が凹部であり、第2のずれ防止部が凸部であってもよい。また、第1のずれ防止部43及び第2のずれ防止部44の形状や位置についても、上記の効果が得られるのであれば特に限定されない。
【0075】
図13及び14は、本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す図である。図13は本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す概略平面図であり、図14は、本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す分解斜視図である。図13及び14に示される粉体ホルダ130は、粉体保持部20の外周面の一部が平面13となっている点で粉体ホルダ100と相違する。また、基台部10は、基台部10の一面上に上記粉体保持部20の形状と相補的な形状の粉体保持部収容凹部11bを有している。そして、粉体保持部20は、基台部10の粉体保持部収容凹部に嵌め込まれている。
【0076】
図13及び14に示される粉体ホルダ130においては、粉体保持部20が基台部10に嵌め込まれているため、粉体保持部収容凹部11bの中で粉体保持部20の回転が制限されている。これにより、粉体ホルダ100が有する上記位置合わせ部、或いは、粉体ホルダ110、120が有するずれ防止部がなくても、マーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとを容易に所定の位置関係にすることができ、上記した複数の試料に対する分析において、測定効率を向上させることができる。また、粉体ホルダ130によれば、粉体保持部20が基台部10にしっかりと固定されるので、上記加圧工程においても、基台部10と粉体保持部20とのずれをより確実に抑制することができ、これにより粉体収容孔30a〜30i内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることができる。
【0077】
図15〜17は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す図である。図15は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す概略平面図である。図16は、図15におけるXVI−XVI線に沿った断面図である。図17は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す分解斜視図である。図15〜17に示される粉体ホルダ140は、粉体保持部収容凹部11cの開口がその深さ方向に向かって小さくなっている点で粉体ホルダ100と相違する。また、粉体保持部20は、粉体保持部20の基台部10側が粉体保持部収容凹部11cの形状と相補的な形状を有している。粉体保持部収容凹部11cがこのような形状であれば、基台部10から粉体保持部20を抜き出すことが容易となり、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部10と粉体保持部20とに分解することがより容易となる。これにより、基台部を再利用する場合には、新しい粉体保持部と組み合わせて新しい粉体ホルダが得られるまでの手間と時間を低減することができる。なお、粉体保持部収容凹部11cの形状については、基台部10から粉体保持部20を抜き出すことが容易となるものであればよく、図16及び17に示される形状に限定されない。
【0078】
図18〜20は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す図である。図18は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す概略平面図である。図19は、図18におけるXIX−XIX線に沿った断面図である。図20は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す分解斜視図である。図18〜20に示される粉体ホルダ150は、基台部10が、粉体保持部収容凹部11に繋がる貫通孔52を有している点で粉体ホルダ100と相違する。貫通孔52は、基台部10の粉体保持部収容凹部11と反対側の面、即ち基台部10の底面53から粉体保持部収容凹部11の底面54に通じている。このような貫通孔52を有していることにより、測定が終了した測定用試料ホルダにおいて、貫通孔52に例えば棒状の器具を差込んで粉体保持部20を基台部10から容易に押し出すことができ、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部10と粉体保持部20とに分解することがより容易となる。これにより、基台部を再利用する場合には、新しい粉体保持部と組み合わせて新しい粉体ホルダが得られるまでの手間と時間を低減することができる。
【0079】
図21〜23は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す図である。図21は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す概略平面図である。図22は、図21におけるXXII−XXII線に沿った断面図である。図23は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す分解斜視図である。図21〜23に示される粉体ホルダ160は、基台部10が、粉体保持部収容凹部11cに繋がる貫通孔52を有している点で粉体ホルダ140と相違している。貫通孔52は、基台部10の外周壁55から粉体保持部収容凹部11cの内周壁56に通じている。このような貫通孔52を有していることにより、測定が終了した測定用試料ホルダにおいて、貫通孔52に例えば棒状の器具を差込んで粉体保持部20を基台部10から容易に押し出すことができ、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部10と粉体保持部20とに分解することがより容易となる。これにより、基台部を再利用する場合には、新しい粉体保持部と組み合わせて新しい粉体ホルダが得られるまでの手間と時間を低減することができる。
【0080】
上記貫通孔52の大きさについては、貫通孔に例えば棒状の器具を差込んで粉体保持部を基台部から押し出すことができるのであれば、特に限定されない。また、貫通孔52の位置についても、図19及び20並びに図22及び23に示される位置に特に限定されない。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、基台部10の形状としては、粉体保持部収容凹部を有する円柱に限らず、粉体保持部収容凹部を有する四角柱やその他の形状であってもよい。また、粉体保持部20の形状についても、円柱状に限らず、四角柱やその他の形状であってもよい。さらに、粉体収容孔30a〜30iの形状についても、その開口形状を円形以外に四角形やその他の形状とすることができる。また、粉体収容孔は、粉体保持部を貫通する孔であっても、非貫通孔であってもかまわない。
【0082】
また、本発明による測定用試料製造方法は、上記した実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、図4(c)に示される加圧用治具70は、粉体保持部20の被加圧面20aに対して外方に張出した形状を有しているが、被加圧面20aの形状に合わせた雄型の加圧用治具を代わりに用いることもできる。この場合、粉体保持部20の変形する程度は、図2に示されるクリアランスH3に制限されないので、適宜加圧条件を設定することが好ましい。
【0083】
また、本発明による試料分析方法は、上記した実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態において、上記のステップ2及びステップ5はステップ1の前に行うこともできる。また、マーキング部が2つ設けられた粉体ホルダを用いる場合は、それぞれのマーキング部の位置を分析装置内で確認することで測定用試料ホルダの回転補正を行うことができ、粉体収容孔30aの測定用試料の表面を電子線の照射領域に合わせなくても、すべての粉体収容孔30a〜30iの測定用試料の表面に対応する装置内でのX−Y座標が算出できる。
【0084】
さらに、上記実施形態では、本発明の測定用試料製造方法により製造された測定用試料をEPMA装置による元素分析で用いているが、この他にも、測定用試料に入射線として電子線又はX線を照射し、発生したX線を出射線として検出して試料を分析する方法に用いることができる。例えば、入射線として電子線を用いる分析としては、例えばEPMA装置による分析等が挙げられ、入射線としてX線を用いる分析としては、例えば蛍光X線分析装置による分析等が挙げられる。また、発生したX線を検出する検出器としては、WDS以外にEDS(Energy Dispersive Spectoroscopy)等を用いることができる。また、本発明の試料分析方法は、本発明の測定用試料製造方法により製造された測定用試料に、入射線としてレーザを照射して試料の分析を行う方法であってもよい。例えば、Laser Abration ICP−MS分析が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す概略平面図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の測定用試料製造方法の一実施形態を説明する図である。
【図5】図5は、本発明の試料分析方法の一実施形態を説明するための、EPMA分析装置の構成を示す概略構成図である。
【図6】図6は、本発明の測定用試料製造方法の一実施形態を説明するための、粉体ホルダの平面図である。
【図7】図7は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す図である。
【図8】図8は、図7におけるVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図9は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す分解斜視図である。
【図10】図10は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す概略平面図である。
【図11】図11は、図10におけるXI−XI線に沿った断面図である。
【図12】図12は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す分解斜視図である。
【図13】図13は、本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す概略平面図である。
【図14】図14は、本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す分解斜視図である。
【図15】図15は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す概略平面図である。
【図16】図16は、図15におけるXVI−XVI線に沿った断面図である。
【図17】図17は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す分解斜視図である。
【図18】図18は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す概略平面図である。
【図19】図19は、図18におけるXIX−XIX線に沿った断面図である。
【図20】図20は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す分解斜視図である。
【図21】図21は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す概略平面図である。
【図22】図22は、図21におけるXXII−XXII線に沿った断面図である。
【図23】図23は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
10…基台部、11、11b、11c…粉体保持部収容凹部、12a…マーキング面、20…粉体保持部、30a〜30i…粉体収容孔、40…位置合わせ部、42,43…第1のずれ防止部、41,44…第2のずれ防止部、50…マーキング部、52…貫通孔、60d,60e,60f…粉体の表面、62d,62e,62f…測定用試料、65d,65e,65f…試料表面、70…加圧用治具、80…平滑面、90…基台治具、100…粉体ホルダ、101…測定用試料ホルダ、110,120,130,140,150,160…粉体ホルダ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体ホルダ、測定用試料製造方法及び試料分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、EPMA(電子プローブマイクロアナライザ、X線マイクロアナライザ)分析や蛍光X線分析における試料の分析面は平滑であることが要求される。これは、試料表面に凹凸があると、X線の分光条件や吸収過程が変化してX線強度に影響を与えるからである。
【0003】
ところで、粉体に対して上記の分析を行う場合、従来は、試料表面の平滑性を得るために粉体を所定の治具を用いてプレスして測定用試料を製造していた。例えば、錠剤を成形する硬質金属製の型枠を用いてハンドプレス或いは油圧式機械により粉体試料を成形した後、型枠から成形された試料を取り出し、これを測定用試料としていた。また、粉体から測定用試料を製造する別の方法としては、バインダー樹脂と粉体とを混合し、これを硬化させて得られた硬化物を研磨する方法もある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】内山 郁、渡辺 融、紀本 静雄、「X線マイクロアナライザ 第6版」、第95頁、日刊工業新聞社、1975年8月30日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の測定用試料製造方法では、測定用試料の製造に多くの手間と時間を費やし、測定の効率が必ずしも十分なものとは言えなかった。
【0006】
本発明は、試料表面の平滑性が求められる分析において、粉体であっても容易に測定用試料を製造することができ、測定効率の向上を可能とする粉体ホルダ、測定用試料製造方法及び試料分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の粉体ホルダは、基台部と、この基台部上に設けられた粉体保持部と、を備え、粉体保持部が、粉体保持部の基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を少なくとも1つ有し、粉体保持部の硬度が、基台部の硬度よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明の粉体ホルダによれば、粉体収容孔に粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧することによって、基台部を変形させずに粉体保持部を変形させることができる。これにより、粉体保持部の変形とともに、粉体収容孔に充填された粉体も平滑面で加圧されるので、粉体収容孔内に平滑な表面を有する測定用試料を得ることができる。そして、この粉体ホルダを分析装置の試料台に配置して測定を行うことができる。したがって、上記粉体ホルダを用いることにより、粉体から容易に測定用試料が得られるとともに、粉体ホルダから測定用試料を取り出すことなく測定を行うことができるので、測定効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の粉体ホルダにおいては、上記粉体保持部が、粉体保持部の基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を複数有していることが好ましい。かかる粉体ホルダによれば、複数の粉体収容孔のそれぞれに粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧することによって、複数の粉体収容孔内に平滑な表面を有する測定用試料を同時に得ることができる。これにより、多数の粉体を分析する場合に測定効率を更に向上させることができる。
【0010】
また、粉体収容孔を複数有している上記の粉体ホルダによれば、複数の粉体収容孔のそれぞれに粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を平滑面で加圧することによって、複数の粉体収容孔内に得られる測定用試料の表面を1つの面に位置させることができる。これにより、試料の表面を所定の3次元座標の位置に合わせる必要がある分析装置においては、ある1つの測定用試料表面を所定の3次元座標の位置に合わせれば、残りの測定用試料については、2次元での移動のみで上記所定の3次元座標の位置に試料の表面を合わせることができる。したがって、測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせるための操作において、1次元分の操作の省略を可能とすることができ、測定効率を更に向上させることが可能となる。
【0011】
なお、従来の型枠を用いて測定用試料を製造する方法では、粉体を個別にプレス成形していたので複数の測定用試料の厚さを一定にすることは容易でなく、これらの測定用試料を試料台に並べて試料ごとに順次測定する場合、測定ごとに試料表面を所定の3次元座標の位置に合わせる操作が必要であった。
【0012】
さらに、本発明の粉体ホルダにおいては、上記基台部が、粉体保持部の基台部と反対側の面よりも外方に張出し、粉体保持部を包囲する環状のマーキング面を有し、このマーキング面には少なくとも1つのマーキング部が設けられていることが好ましい。
【0013】
かかる粉体ホルダは、マーキング部を有していることにより、このマーキング部と粉体収容孔との位置関係を予め得ることができるものとなっている。したがって、粉体収容孔に粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧して、粉体収容孔内に測定用試料が得られた粉体ホルダ(以下、「測定用試料ホルダ」という場合もある)のマーキング部を分析装置内で確認し、このマーキング部を基準点とすることにより、予め得られているマーキング部と粉体収容孔との位置関係に基づいてそれぞれの測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせることができる。これにより、測定効率を更に向上させることが可能となる。
【0014】
また、本発明の粉体ホルダにおいては、上記マーキング部に対して粉体収容孔を所定の位置に位置合わせする位置合わせ部が、基台部及び粉体保持部にそれぞれ設けられていることが好ましい。このような位置合わせ部を設けることにより、個別に用意された基台部及び粉体保持部を用いる場合であっても、マーキング部と粉体収容孔との位置関係をより確実に得ることができる。
【0015】
さらに、本発明の粉体ホルダにおいては、上記基台部が上記粉体保持部を収容する粉体保持部収容凹部を有し、この粉体保持部収容凹部に上記粉体保持部が嵌め込まれていることが好ましい。かかる粉体ホルダによれば、粉体保持部が基台部にしっかりと固定される。このため、粉体収容孔に粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧する際に、粉体保持部がずれることを抑制でき、これにより粉体収容孔内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることが可能となる。
【0016】
また、上記基台部に設けられた上記粉体保持部収容凹部は、粉体保持部収容凹部の開口が深さ方向に向かって小さくなっていることが好ましい。粉体保持部収容凹部がこのような形状であれば、基台部から粉体保持部を抜き出すことが容易となり、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部と粉体保持部とに分解することがより容易となる。これにより、基台部を再利用する場合には、新しい粉体保持部と組み合わせて新しい粉体ホルダが得られるまでの手間と時間を低減することができる。
【0017】
さらに、上記基台部が、基台部に設けられた上記粉体保持部収容凹部に繋がる貫通孔を有していることが好ましい。このような貫通孔を有していることにより、測定が終了した測定用試料ホルダにおいて、貫通孔に例えば棒状の器具を差込んで粉体保持部を基台部から容易に押し出すことができ、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部と粉体保持部とに分解することがより容易となる。
【0018】
また、本発明の粉体ホルダにおいては、上記基台部が基台部と粉体保持部とのずれを防止する第1のずれ防止部を有し、上記粉体保持部が第1のずれ防止部に対して相補的な形状を有する第2のずれ防止部を有していることが好ましい。かかる粉体ホルダによれば、粉体収容孔に粉体を充填した後、粉体保持部の基台部と反対側を所定の平滑面で加圧する際に、粉体保持部が基台部に対してずれることを抑制でき、これにより粉体収容孔内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることが可能となる。また、上記マーキング部が設けられている粉体ホルダにおいては、マーキング部と粉体収容孔との位置関係をより確実に定めることができる。
【0019】
また、本発明の測定用試料製造方法は、上記の本発明の粉体ホルダにおいて、粉体保持部の粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程と、粉体保持部の基台部と反対側の面を平滑面で加圧することにより粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明の測定用試料製造方法によれば、本発明の粉体ホルダを用いて上記の工程を経ることにより、上述したように粉体から平滑面を有する測定用試料を容易に製造することができる。これにより試料表面の平滑性が求められる分析(特には、EPMA分析装置を用いる元素分析)の測定効率を向上させることができる。
【0021】
また、本発明の第1の試料分析方法は、本発明の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料に、入射線として電子線又はX線を照射し、測定用試料から発生するX線を出射線として検出することにより測定用試料を分析することを特徴とする。本発明の試料分析方法によれば、本発明の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料が平滑面を有するので、この測定用試料を用いることにより、上記従来の方法により得られた測定用試料を用いる場合に比べて、測定効率に優れた分析を行うことができる。
【0022】
さらに、本発明の第1の試料分析方法においては、上記測定用試料から発生するX線を更に分光結晶で分光して得られるX線を出射線として検出することにより測定用試料を分析することが好ましい。分光結晶でX線を分光することにより、発生X線のエネルギー分解能が向上し、特に元素分析を行う場合に元素の識別精度が向上する。このような分析方法においても、試料表面の平滑性が要求されるので、本発明の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料を用いることにより、上記従来の方法により得られた測定用試料を用いる場合に比べて、更に測定効率に優れた分析を行うことができる。
【0023】
また、本発明の第2の試料分析方法は、複数の試料に対して、試料ごとに、入射線として電子線又はX線を前記試料に照射し、試料から発生するX線を出射線として検出することにより複数の試料を分析する試料分析方法であって、上記本発明の粉体ホルダのうち、粉体保持部が、粉体保持部の基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を複数有し、且つ、基台部が、粉体保持部の基台部と反対側の面よりも外方に張出し、粉体保持部を包囲する環状のマーキング面を有し、このマーキング面には少なくとも1つのマーキング部が設けられている粉体ホルダにおいて、粉体保持部の粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程、及び、粉体保持部の基台部の反対側の面を平滑面で加圧することにより粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程を含む工程により得られた測定用試料ホルダを試料台に配置する配置工程と、測定用試料ホルダのマーキング部を確認して基準点とする基準点設定工程と、測定用試料ごとに、基準点と、予め定められた粉体収容孔とマーキング部との位置関係と、に基づいて、測定用試料の表面を電子線又はX線の照射位置に合わせ、入射線として電子線又はX線を照射し、測定用試料から発生するX線を出射線として検出する試料分析工程とを有することを特徴とする。
【0024】
上記の試料分析方法によれば、粉体収容孔を複数有している本発明の粉体ホルダを用いることにより、上述したように測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせるための操作において、1次元分の操作の省略を可能とすることができる。さらに、マーキング部を有する本発明の粉体ホルダを用いることにより、マーキング部を基準点とすれば、予め得られているマーキング部と粉体収容孔との位置関係に基づいてそれぞれの測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせることが容易にできる。したがって、初めにマーキング部の位置を確認し、次に、ある1つの測定用試料の表面を電子線又はX線の焦点位置(所定の3次元座標の位置)に合わせれば、他の測定用試料の表面を所定の3次元座標の位置に合わせることが、予め得られているマーキング部と粉体収容孔との位置関係に基づいて2次元での移動のみで行うことが可能となる。これにより、複数の試料に対する測定効率を極めて向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明よれば、試料表面の平滑性が求められる分析において、粉体であっても容易に測定用試料を製造することができ、測定効率の向上を可能とする粉体ホルダ、測定用試料製造方法及び試料分析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0027】
[測定用試料製造方法]
先ず、本発明の測定用試料製造方法の実施形態について説明する。
【0028】
本実施形態の測定用試料製造方法は、本発明の粉体ホルダにおいて、粉体保持部の粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程と、粉体保持部の基台部と反対側の面を平滑面で加圧することにより粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程とを有している。
【0029】
ここで、上記の測定用試料製造方法で用いる本発明の粉体ホルダの第1実施形態について説明する。
【0030】
図1〜3は、本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す図である。図1は本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す概略平面図である。また、図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。また、図3は、本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す分解斜視図である。図1〜3に示される粉体ホルダ100は、基台部10と、粉体保持部20とを備えている。基台部10は、粉体保持部20を収容する粉体保持部収容凹部11を有し、粉体保持部収容凹部11は、基台部10の一面上に形成されている。ここで、基台部10及び粉体保持部20は、いずれも円柱状になっている。また、基台部10は、粉体保持部20の基台部10と反対側の面20aよりも外方に張出して、粉体保持部収容凹部11を取り囲むように環状壁を有している。そして、環状壁は、粉体保持部収容凹部11を取り囲むように環状のマーキング面12aを有している。そして、このマーキング面12a上にマーキング部50が設けられている。また、粉体保持部20は、粉体保持部20の面20a側に粉体収容孔30a〜30iを有している。更に、位置合わせ部40が、基台部10及び粉体保持部20のそれぞれに設けられており、測定用試料を製造する際に粉体ホルダにおいて両者を合わせることにより、粉体収容孔30a〜30iとマーキング部50との位置関係を定めることができる。
【0031】
本実施形態の粉体ホルダ100においては、粉体保持部20の硬度が、基台部10の硬度よりも小さいことが必要である。以下、粉体ホルダ100の構成について詳細に説明する。
【0032】
(基台部)
基台部10は、その硬度が粉体保持部20よりも大きければよく、材質については特に限定されない。本実施形態の粉体ホルダにおいては、基台部10上に粉体保持部20が配置された状態で後述する加圧工程が行われた場合に、粉体保持部20が変形して基台部10が変形しなければよい。具体的な硬度としては、例えば、基台部10のブリネル硬さ(HB)が150以上であることが好ましい。ここで、本明細書における「ブリネル硬さ(HB)」とは、以下のようにして得られた値を意味する。すなわち、直径10mmの鋼球を材料表面に垂直に荷重3000kgを加えて押し付けたときに、この試験荷重を圧痕表面積で割った値をブリネル硬さ(HB)とする(参考文献:「化学便覧」、著作者:社団法人日本化学会、発行所:丸善株式会社、1975年6月20日発行)。
【0033】
基台部10の材質としては、例えば、ステンレス鋼及び炭素鋼等が挙げられる。
【0034】
基台部10の大きさについては、特に限定されないが、例えば図1に示される直径L1が20〜90mmであることが好ましく、図2に示される厚さH1が10〜20mmであることが好ましい。直径L1が上記の範囲であれば、一般のEPMA分析装置等の試料台に配置することがより確実にできるとともに、粉体保持部がより多数の粉体収容孔を有することができる。また、厚さH1が上記の範囲であれば、基台部の重量増加による分析装置の試料台への負荷を抑制できるとともに、基台部の強度をより確実に確保できる。
【0035】
(粉体保持部)
粉体保持部20は、その硬度が基台部10よりも小さければよく、材質については特に限定されない。本実施形態の粉体ホルダにおいては、基台部10上に粉体保持部20を配置した状態で後述する加圧工程が行われた場合に、基台部10が変形せずに粉体保持部20が塑性変形すればよい。具体的な硬度としては、例えば、粉体保持部20のブリネル硬さ(HB)が80未満であることが好ましい。
【0036】
粉体保持部20の材質としては、例えば、Al、Pb、Zr、Cu、Sn及びこれらの合金が挙げられる。
【0037】
粉体保持部20の大きさについては、特に限定されないが、例えば図1に示される直径L2が10〜70mmであることが好ましく、図2に示される厚さH2が2〜3mmであることが好ましい。直径L2が上記の範囲であれば、マーキング面12aの面積を十分に確保できるとともに、粉体保持部がより多数の粉体収容孔を有することが可能となる。また、厚さH2が上記の範囲であれば、粉体保持部の取扱い性が良好であるとともに、粉体保持部の重量増加による分析装置の試料台への負荷をより確実に低減することができる。
【0038】
また、粉体保持部20は加圧によって塑性変形させるため、粉体保持部20の基台部10と反対側の面の位置と、マーキング面12aの位置との間にクリアランスH3があることが好ましい。本実施形態においては、クリアランスH3が0.5〜1mmであることが好ましい。かかる範囲のクリアランスH3があれば、粉体保持部20を加圧によって塑性変形させて測定用試料の表面を十分に平滑にすることができるとともに、粉体保持部が過剰に変形して粉体収容孔の開口位置が大きくずれることを防止することができる。
【0039】
(粉体収容孔)
粉体収容孔30a〜30iの開口の大きさについては、粉体保持部20を加圧した後に十分な測定領域が確保されていればよく、特に限定されない。本実施形態の粉体ホルダ100においては、粉体収容孔30a〜30iの開口の孔径が3〜5mmであることが好ましい。3mm未満であると、加圧によって粉体収容孔の開口面積が小さくなり測定が困難となったり、粉体収容孔の開口位置がずれてマーキング部と粉体収容孔との位置関係が変化したりする傾向にある。一方、開口の孔径が5mmを超えると、多量の粉体が必要となる傾向にある。
【0040】
また、粉体収容孔の数については、後述する加圧工程によって粉体収容孔の開口がつぶれて測定領域が確保できなくなったり、粉体収容孔の開口位置がずれてマーキング部と粉体収容孔との位置関係が大きく変化したりすることがないように設定することが好ましい。本実施形態の粉体ホルダ100においては、粉体収容孔同士の間隔が1mm以上確保されていることが好ましい。
【0041】
(マーキング面)
マーキング面12aは、マーキング部50を設けるための面積が確保されていればよい。
【0042】
(マーキング部)
マーキング部50としては、例えば視覚的に確認できるように設けられた目印が挙げられ、具体的には、Xの刻印、点の刻印等が挙げられる。また、マーキング部を複数設ける場合には、それぞれが区別できるように形を変えたり、近傍に数字を刻印したりすることが好ましい。また、粉体保持部を平滑面で加圧する際に、マーキング部が平滑面によってつぶされて確認できなくなることを避けるため、マーキング面12aに凹部を形成し、この凹部の底面にマーキング部が設けられていてもよい。また、マーキング部50が設けられる位置については特に限定されないが、例えば、それぞれのマーキング部50がマーキング面12a上で均等に離れていることが、粉体収容孔の位置をより精度よく認識できる点で好ましい。
【0043】
(位置合わせ部)
図1に示される粉体ホルダ100は、すでにマーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとが所定の位置関係になるように、基台部及び粉体保持部に設けられた位置合わせ部40を互いに合わせた状態となっている。位置合わせ部としては、図1に示されるような、視覚的に確認できるように設けられた目印が挙げられ、具体的には、刻印によって形成された目印が挙げられる。
【0044】
次に、上記の粉体ホルダ100を用いて測定用試料の製造方法、すなわち、測定用試料ホルダの製造方法について説明する。
【0045】
図4は、本発明の測定用試料製造方法の一実施形態を説明する図である。図4(a)〜(d)は、上記粉体ホルダ100を用いて測定用試料(測定用試料ホルダ)を製造する工程が示されている。図4(a)には、粉体ホルダ100の図1におけるII−II線に沿った断面図が示されており、以下、この断面図に対応する部分を参照して本発明の測定用試料製造方法の一実施形態について詳細に説明する。なお、ここでは上記粉体ホルダ100を用いて測定用試料を製造する方法を説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0046】
(粉体ホルダ準備工程)
図4(a)に示されるように、上記した粉体ホルダ100を準備する粉体ホルダ準備工程を行う。このとき、位置合わせ部40は、互いに合わせておくことが好ましい。
【0047】
(粉体充填工程)
次に、各粉体収容孔30a〜30iに測定用試料となる粉体を充填する(粉体充填工程)。図4(b)は、粉体が充填された粉体ホルダ100の断面図(図1におけるII−II線断面)を示している。粉体は、図4(b)に示されるように、各粉体収容孔に充填した粉体の表面(例えば、60d、60e、60f)が粉体保持部20の基台部10と反対側の面(以下、「被加圧面」という)20aに揃うように充填させることが好ましい。このとき、例えば、粉体がセラミック等の原料(金属酸化物等)を混合したものであれば、原料から形成されるセラミックの理論密度の50〜70%となるように粉体を充填することが好ましい。
【0048】
(加圧工程)
次に、粉体を充填した粉体ホルダ100を基台治具90上に置き、平滑面80を有する加圧用治具70で粉体保持部20の被加圧面20aを加圧し、粉体収容孔30a〜30i内に測定用試料を得る(加圧工程)(図4(c))。この加圧工程は、例えば、一般の機械式又は手動式の油圧式プレス機等を用いて行うことができる。
【0049】
上記加圧工程を経て、図4(d)に示されるように変形した粉体保持部21の粉体収容孔30a〜30i内に測定用試料62d、62e、62f(図4(d)参照)が得られる。すなわち、測定用試料を有する測定用試料ホルダ101が製造される。
【0050】
以上述べたように、本実施形態の粉体ホルダ100を用いれば、粉体収容孔30a〜30iに粉体を充填した後、粉体保持部20の被加圧面20aを平滑面80で加圧することによって、基台部10を変形させずに粉体保持部20を変形させることができる。これにより、粉体保持部20の変形とともに、粉体収容孔30a〜30iに充填された粉体も平滑面で加圧されるので、粉体収容孔内30a〜30iに平滑な表面を有する測定用試料を複数同時に得ることができる。そして、得られた測定用試料ホルダ101を分析装置の試料台に配置して測定を行うことができる。したがって、本実施形態の粉体ホルダ100を用いることにより、粉体から容易に測定用試料が得られるとともに、粉体ホルダから測定用試料を取り出すことなく測定を行うことができるので、測定効率を向上させることができる。
【0051】
加圧用治具70の平滑面80は、算術平均粗さRaが、1μm以下であることが好ましい。ここで、算術平均粗さRaとは、JIS−B−0601−1994で定義される算術平均粗さRaである。このような平滑面を有する加圧用治具70で粉体保持部20を加圧することにより、各粉体収容孔内に得られる測定用試料の表面に十分な平滑性を付与できる。
【0052】
また、上記加圧工程によって各粉体収容孔内に得られる測定用試料の表面の算術平均粗さRaを、5μm以下とすることが好ましく、3μm以下とすることがより好ましく、1μm以下とすることが更に好ましい。測定用試料の表面の算術平均粗さRaを、5μm以下とすることにより、例えば、EPMA分析装置を用いる元素分析において、測定精度をより向上させることができる。
【0053】
また、粉体保持部20を加圧して変形させる際、加圧用治具70の平滑面80と、基台治具90の基台部10に接触する面92とを平行に対向させながら粉体保持部20を加圧することが好ましい。本発明においては、加圧工程後に、各粉体収容孔30a〜30iに得られる測定用試料の表面(例えば、図4(d)に示される試料表面65d,65e及び65f)と、基台治具90の基台部10に接触する面92との距離(例えば、図4(d)に示されるLd、Le、Lf)の最大値と最小値との差を、5μm以下とすることが好ましく、3μm以下とすることがより好ましく、1μm以下とすることが更に好ましい。上記の最大値と最小値との差が5μm以下であれば、後述する複数の試料に対する試料分析方法において、より確実に測定効率を向上させることができる。
【0054】
また、上記加圧工程では加圧用治具70によって粉体保持部20を塑性変形させるので、加圧用治具70の硬度は粉体保持部20の硬度よりも大きいことが好ましい。本発明の測定用試料製造方法では、基台部10と同様の材質からなる加圧用治具70を用いることが、基台部10の形状(特に、粉体保持部収容凹部及びマーキング面の形状)の保護という観点から好ましい。
【0055】
加圧の圧力については、粉体保持部20の材質、粉体保持部20を変形させる程度、及び粉体の種類によっても左右されるが、例えば、粉体保持部20がアルミニウムからなり、この粉体保持部の厚さを加圧によって0.5〜1mm減少させ、セラミック等の原料(金属酸化物等)を混合した粉体から測定用試料を得る場合、圧力は600〜1000kg/cm2が好ましい。また、加圧の時間は、粉体の性質により適宜設定することが好ましいが、例えば、セラミック等の原料(金属酸化物等)を混合した粉体を試料とする場合は、上記の圧力を30〜90秒間加圧することにより測定用試料を得ることができる。
【0056】
[試料分析方法]
次に、本発明の試料分析方法について説明する。
【0057】
本発明の試料分析方法の一実施形態として、上記した粉体ホルダ100を用いて得られた測定用試料ホルダ101が有する複数の測定用試料に対して、EPMA分析装置による元素分析を順次行う試料分析方法を説明する。
【0058】
先ず、本実施形態の試料分析方法で用いられるEPMA分析装置について説明する。図5は、EPMA分析装置の構成を示す概略構成図である。図5に示されるEPMA分析装置は、電子銃Eと、試料台Tと、駆動装置Mと、分光結晶ACと、検出器Dと、制御部Cとを備えている。本実施形態では、検出器DとしてWDS(Wave Dspersive Spectoroscopy)が用いられる。制御部Cは、駆動装置Mに電気的に接続されており、駆動装置Mを制御して試料台Tを所定の位置に移動させることができ、また、試料台Tの位置を読み取ることができる。さらに、制御部Cは、所定のプログラムに基づいて、電子銃E、分光結晶AC、及び検出器Dを制御して元素分析を行う。なお、元素分析は、試料台T上に配置された試料S1の表面に電子線Lが照射され、試料S1から発生したX線を分光結晶ACによって分光し、この分光を検出器Dによって検出することで行われる。ここで、所定の位置に設定された分光結晶に導かれるX線と試料表面との角度αが変化すると異なるデータとして検出されるので、EPMA分析装置による元素分析においては、測定の初めに試料表面を所定の位置(電子線の焦点位置)に合わせる必要がある。したがって、複数の試料の分析を行う場合には、測定ごとに試料表面を所定の位置(電子線の焦点位置)に合わせる必要がある。以下、本実施形態の試料分析方法を説明する。
【0059】
(ステップ1)
上記した本実施形態の測定用試料製造方法により得られた測定用試料(測定用試料ホルダ101)を分析装置の試料台Tに配置する(配置工程)。
【0060】
(ステップ2)
次に、粉体ホルダ100の、マーキング部50と各粉体収容孔30a〜30iとの位置関係を示すデータを制御部Cに記憶させる。データとしては、例えば、図6(a)に示されるように、2次元の座標で表されるものを用いることができる。図6(a)に示される座標は、粉体収容孔の位置を粉体ホルダ100が載置される面に投射して得られる値で表されている。なお、分析装置内では、粉体ホルダ100が載置される面、すなわち試料台Tの表面が、入射線と直交するように調節される。
【0061】
(ステップ3)
次に、試料台Tに配置された測定用試料ホルダ101のマーキング部50を可視顕微鏡、SEM等により確認し、このときのマーキング部50の位置を基準点(図6(b)に示される(0、0、0))として制御部Cに記憶させる(基準点設定工程)。また、制御部Cは、この基準点を通り入射線と平行な直線をZ軸とし、この基準点を通り入射線が法線となる面をX−Y面とし、更にX軸を所定の方向に設定する。
【0062】
(ステップ4)
次に、試料台Tを移動させて粉体収容孔30aの測定用試料の表面を電子線の入射領域に合わせる。このときの粉体収容孔30aの測定用試料表面のEPMA装置内での位置は、試料台Tの位置に基づいて(Xa、Ya、Za)として認識されている。更に、粉体収容孔30aの測定用試料の表面上に電子線の焦点位置が合うように、試料台TをZ軸方向に移動させる。電子線の焦点位置合ったときのZ座標はZFPとなり、この座標をEPMA測定時のZ座標として設定する。そして、粉体収容孔30aの測定用試料を測定する場合の試料台Tの適切な位置として、粉体収容孔30aに対応する座標(Xa、Ya、ZFP)を制御部Cに認識させる。ここで、上記した本実施形態の測定用試料製造方法により得られた測定用試料ホルダ101では、粉体収容孔30aの測定用試料の表面及び他の粉体収容孔30b〜30iの測定用試料の表面は同一の面に位置している。さらに、この面は試料台Tの表面と平行である。したがって、他の粉体収容孔30b〜30iの測定用試料の表面に対応するZ座標もZFPとなっている。また、この時点で粉体収容孔30b〜30iの測定用試料の表面に対応するX及びY座標についても制御部Cに認識させることができる。これについて以下に説明する。
【0063】
基準点であるマーキング部50に対する各粉体収容孔30a〜30iの位置を示す座標データは、図6(a)に示されるように、粉体収容孔30aが(Xa0、Ya0)、粉体収容孔30bが(Xb0、Yb0)、…、粉体収容孔30iが(Xi0、Yi0)というように予め得られており、このデータは上記ステップ2で制御部Cに記憶させている。EPMA装置内においては、上述のように基準点であるマーキング部50のXY座標(0、0)に対して粉体収容孔30aの対応する座標は(Xa、Ya)となっている。ここで、通常、測定用試料ホルダ101は試料台T上に自由に配置されるので、(Xa、Ya)と(Xa0、Ya0)とは一致していない場合が多い。この座標のズレは測定用試料ホルダ101の回転に由来するものである。そこで、制御部Cは、(Xa、Ya)及び(Xa0、Ya0)の値に基づいて回転の角度を算出し、この角度の回転補正を他の粉体収容孔30b〜30iの座標(Xb0、Yb0)〜(Xi0、Yi0)に対して行う。これにより、粉体収容孔30b〜30iの測定用試料を測定する場合の適切な試料台Tの位置として、粉体収容孔30b〜30iのそれぞれに対応した座標(Xb、Yb、ZFP)〜(Xi、Yi、ZFP)を制御部Cが認識する(図6(c)参照)。このようにして、粉体収容孔30b〜30iの測定用試料の表面を可視顕微鏡やSEMで確認することなく、制御部Cは粉体収容孔30b〜30iのそれぞれを測定する場合の試料台Tの的確な位置として、各粉体収容孔に対応するX、Y座標と電子線の焦点位置ZFPを認識する。なお、上述した、粉体収容孔30b〜30iの位置補正をより正確に行う観点から、粉体収容孔30aの測定用試料の表面を電子線の焦点位置に合わせる際に粉体収容孔30aの開口の中心にできるだけ近いところを用い、このときの位置を粉体収容孔30aに対応する座標(Xa、Ya、ZFP)とすることが好ましい。
【0064】
(ステップ5)
次に、粉体収容孔30a〜30iの測定用試料の測定順序として、順番に対応させて測定する粉体収容孔を制御部Cに入力する。例えば、1番目に測定する試料として粉体収容孔30a、2番目に測定する試料として粉体収容孔30b、…、9番目に測定する試料として粉体収容孔30iのように入力する。
【0065】
(ステップ6)
1番目に測定する粉体収容孔30aに対して、制御部Cの制御により電子銃Eから電子線Lが照射され、粉体収容孔30aから発生したX線は分光結晶ACによって分光され、この分光が検出器Dによって検出され、元素分析が行われる。
【0066】
(ステップ7)
粉体収容孔30aの測定用試料の元素分析が終了すると、制御部Cが駆動装置Mを制御して試料台Tを、次に測定する粉体収容孔30bの測定位置に対応する座標(Xb、Yb、ZFP)に移動させて、粉体収容孔30bの測定用試料の表面を電子線の焦点位置に合わせる。
【0067】
(ステップ8)
次に、粉体収容孔30bに対して、制御部Cの制御により電子銃Eから電子線Lが照射され、粉体収容孔30bから発生したX線は分光結晶ACによって分光され、この分光が検出器Dによって検出され、元素分析が行われる。
【0068】
(ステップ9)
粉体収容孔30bの測定用試料の元素分析が終了すると、さらに制御部Cが、ステップ5で入力された順序に基づいて、残りの測定用試料に対してステップ7及びステップ8を繰り返し、すべての測定用試料の元素分析を行う(以上のステップ6〜9が試料分析工程)。
【0069】
以上述べたように、上記した本実施形態の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料ホルダ101を用いることにより、複数の粉体収容孔内30a〜30iに得られる測定用試料の表面を1つの面に位置させることができ、マーキング部50を基準点とすれば、予め得られているマーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとの位置関係(図6(a))に基づいてそれぞれの測定用試料の表面を所定の座標の位置に合わせることが容易となっている。すなわち、上述のように、マーキング部50の位置を確認し、ある1つの測定用試料の表面を電子線の焦点位置に合わせれば、制御部Cによって自動的に複数の試料に対する測定が可能となり、測定効率を極めて向上させることができる。
【0070】
次に、本発明による粉体ホルダの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0071】
図7〜9は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す図である。図7は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す概略平面図である。また、図8は、図7におけるVIII−VIII線に沿った断面図である。また、図9は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す分解斜視図である。図7〜9に示される粉体ホルダ110は、円柱状の粉体保持部20が、その外周に第1のずれ防止部としての凸部42を有し、基台部10が、粉体保持部収容凹部11の内壁に第1のずれ防止部としての凸部42と相補的な形状を有する、第2のずれ防止部としての凹部41を有している点で、第1実施形態の粉体ホルダ100と相違する。ここでは、凸部42が凹部41に嵌め込まれている。
【0072】
上記の粉体ホルダ110によれば、第1のずれ防止部42と第2のずれ防止部41とが嵌合するように基台部10の粉体保持部収容凹部11に粉体保持部20を嵌め込むことにより、マーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとを所定の位置関係にすることができ、上記の位置合わせ部を省略することができる。また、第1のずれ防止部42と第2のずれ防止部41により、粉体保持部20が基台部10にしっかりと固定される。これにより、上記加圧工程においても、基台部10と粉体保持部20とのずれをより確実に抑制することができ、これにより粉体収容孔30a〜30i内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることができる。なお、上記粉体ホルダ110では、第1のずれ防止部が凹部であり、第2のずれ防止部が凸部であってもよい。また、第1のずれ防止部42及び第2のずれ防止部41の形状や位置についても、上記の効果が得られるのであれば特に限定されない。
【0073】
次に、本発明による粉体ホルダの第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0074】
図10〜12は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す図である。図10は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す概略平面図である。また、図11は、図10におけるXI−XI線に沿った断面図である。また、図12は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す分解斜視図である。図10〜12に示される粉体ホルダ120は、第1のずれ防止部及び第2のずれ防止部の位置の点で粉体ホルダ110と異なる。すなわち、粉体ホルダ120においては、粉体保持部20が、粉体保持部20の基台部10側即ち被加圧面20aと反対側に第1のずれ防止部としての凸部43を有し、基台部10が、粉体保持部収容凹部11の底面11aに第1のずれ防止部43と相補的な形状を有する、第2のずれ防止部としての凹部44を有している。ここでは、凸部43が凹部44に嵌め込まれている。この粉体ホルダ120においても、図7〜9に示される粉体ホルダ110と同様に、第1のずれ防止部43と第2のずれ防止部44とが嵌合するように基台部10に粉体保持部20を嵌め込むことにより、マーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとを所定の位置関係にすることができ、上記の位置合わせ部を省略することができる。また、第1のずれ防止部43と第2のずれ防止部44により、粉体保持部20が基台部10にしっかりと固定される。これにより、上記加圧工程においても、基台部10と粉体保持部20とのずれをより確実に抑制することができ、これにより粉体収容孔30a〜30i内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることができる。なお、上記粉体ホルダ120では、第1のずれ防止部が凹部であり、第2のずれ防止部が凸部であってもよい。また、第1のずれ防止部43及び第2のずれ防止部44の形状や位置についても、上記の効果が得られるのであれば特に限定されない。
【0075】
図13及び14は、本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す図である。図13は本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す概略平面図であり、図14は、本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す分解斜視図である。図13及び14に示される粉体ホルダ130は、粉体保持部20の外周面の一部が平面13となっている点で粉体ホルダ100と相違する。また、基台部10は、基台部10の一面上に上記粉体保持部20の形状と相補的な形状の粉体保持部収容凹部11bを有している。そして、粉体保持部20は、基台部10の粉体保持部収容凹部に嵌め込まれている。
【0076】
図13及び14に示される粉体ホルダ130においては、粉体保持部20が基台部10に嵌め込まれているため、粉体保持部収容凹部11bの中で粉体保持部20の回転が制限されている。これにより、粉体ホルダ100が有する上記位置合わせ部、或いは、粉体ホルダ110、120が有するずれ防止部がなくても、マーキング部50と粉体収容孔30a〜30iとを容易に所定の位置関係にすることができ、上記した複数の試料に対する分析において、測定効率を向上させることができる。また、粉体ホルダ130によれば、粉体保持部20が基台部10にしっかりと固定されるので、上記加圧工程においても、基台部10と粉体保持部20とのずれをより確実に抑制することができ、これにより粉体収容孔30a〜30i内に平滑な表面を有する測定用試料をより確実に得ることができる。
【0077】
図15〜17は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す図である。図15は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す概略平面図である。図16は、図15におけるXVI−XVI線に沿った断面図である。図17は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す分解斜視図である。図15〜17に示される粉体ホルダ140は、粉体保持部収容凹部11cの開口がその深さ方向に向かって小さくなっている点で粉体ホルダ100と相違する。また、粉体保持部20は、粉体保持部20の基台部10側が粉体保持部収容凹部11cの形状と相補的な形状を有している。粉体保持部収容凹部11cがこのような形状であれば、基台部10から粉体保持部20を抜き出すことが容易となり、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部10と粉体保持部20とに分解することがより容易となる。これにより、基台部を再利用する場合には、新しい粉体保持部と組み合わせて新しい粉体ホルダが得られるまでの手間と時間を低減することができる。なお、粉体保持部収容凹部11cの形状については、基台部10から粉体保持部20を抜き出すことが容易となるものであればよく、図16及び17に示される形状に限定されない。
【0078】
図18〜20は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す図である。図18は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す概略平面図である。図19は、図18におけるXIX−XIX線に沿った断面図である。図20は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す分解斜視図である。図18〜20に示される粉体ホルダ150は、基台部10が、粉体保持部収容凹部11に繋がる貫通孔52を有している点で粉体ホルダ100と相違する。貫通孔52は、基台部10の粉体保持部収容凹部11と反対側の面、即ち基台部10の底面53から粉体保持部収容凹部11の底面54に通じている。このような貫通孔52を有していることにより、測定が終了した測定用試料ホルダにおいて、貫通孔52に例えば棒状の器具を差込んで粉体保持部20を基台部10から容易に押し出すことができ、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部10と粉体保持部20とに分解することがより容易となる。これにより、基台部を再利用する場合には、新しい粉体保持部と組み合わせて新しい粉体ホルダが得られるまでの手間と時間を低減することができる。
【0079】
図21〜23は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す図である。図21は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す概略平面図である。図22は、図21におけるXXII−XXII線に沿った断面図である。図23は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す分解斜視図である。図21〜23に示される粉体ホルダ160は、基台部10が、粉体保持部収容凹部11cに繋がる貫通孔52を有している点で粉体ホルダ140と相違している。貫通孔52は、基台部10の外周壁55から粉体保持部収容凹部11cの内周壁56に通じている。このような貫通孔52を有していることにより、測定が終了した測定用試料ホルダにおいて、貫通孔52に例えば棒状の器具を差込んで粉体保持部20を基台部10から容易に押し出すことができ、測定が終了した測定用試料ホルダを基台部10と粉体保持部20とに分解することがより容易となる。これにより、基台部を再利用する場合には、新しい粉体保持部と組み合わせて新しい粉体ホルダが得られるまでの手間と時間を低減することができる。
【0080】
上記貫通孔52の大きさについては、貫通孔に例えば棒状の器具を差込んで粉体保持部を基台部から押し出すことができるのであれば、特に限定されない。また、貫通孔52の位置についても、図19及び20並びに図22及び23に示される位置に特に限定されない。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、基台部10の形状としては、粉体保持部収容凹部を有する円柱に限らず、粉体保持部収容凹部を有する四角柱やその他の形状であってもよい。また、粉体保持部20の形状についても、円柱状に限らず、四角柱やその他の形状であってもよい。さらに、粉体収容孔30a〜30iの形状についても、その開口形状を円形以外に四角形やその他の形状とすることができる。また、粉体収容孔は、粉体保持部を貫通する孔であっても、非貫通孔であってもかまわない。
【0082】
また、本発明による測定用試料製造方法は、上記した実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、図4(c)に示される加圧用治具70は、粉体保持部20の被加圧面20aに対して外方に張出した形状を有しているが、被加圧面20aの形状に合わせた雄型の加圧用治具を代わりに用いることもできる。この場合、粉体保持部20の変形する程度は、図2に示されるクリアランスH3に制限されないので、適宜加圧条件を設定することが好ましい。
【0083】
また、本発明による試料分析方法は、上記した実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態において、上記のステップ2及びステップ5はステップ1の前に行うこともできる。また、マーキング部が2つ設けられた粉体ホルダを用いる場合は、それぞれのマーキング部の位置を分析装置内で確認することで測定用試料ホルダの回転補正を行うことができ、粉体収容孔30aの測定用試料の表面を電子線の照射領域に合わせなくても、すべての粉体収容孔30a〜30iの測定用試料の表面に対応する装置内でのX−Y座標が算出できる。
【0084】
さらに、上記実施形態では、本発明の測定用試料製造方法により製造された測定用試料をEPMA装置による元素分析で用いているが、この他にも、測定用試料に入射線として電子線又はX線を照射し、発生したX線を出射線として検出して試料を分析する方法に用いることができる。例えば、入射線として電子線を用いる分析としては、例えばEPMA装置による分析等が挙げられ、入射線としてX線を用いる分析としては、例えば蛍光X線分析装置による分析等が挙げられる。また、発生したX線を検出する検出器としては、WDS以外にEDS(Energy Dispersive Spectoroscopy)等を用いることができる。また、本発明の試料分析方法は、本発明の測定用試料製造方法により製造された測定用試料に、入射線としてレーザを照射して試料の分析を行う方法であってもよい。例えば、Laser Abration ICP−MS分析が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す概略平面図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、本発明の粉体ホルダの第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の測定用試料製造方法の一実施形態を説明する図である。
【図5】図5は、本発明の試料分析方法の一実施形態を説明するための、EPMA分析装置の構成を示す概略構成図である。
【図6】図6は、本発明の測定用試料製造方法の一実施形態を説明するための、粉体ホルダの平面図である。
【図7】図7は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す図である。
【図8】図8は、図7におけるVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図9は、本発明の粉体ホルダの第2実施形態を示す分解斜視図である。
【図10】図10は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す概略平面図である。
【図11】図11は、図10におけるXI−XI線に沿った断面図である。
【図12】図12は、本発明の粉体ホルダの第3実施形態を示す分解斜視図である。
【図13】図13は、本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す概略平面図である。
【図14】図14は、本発明の粉体ホルダの第4実施形態を示す分解斜視図である。
【図15】図15は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す概略平面図である。
【図16】図16は、図15におけるXVI−XVI線に沿った断面図である。
【図17】図17は、本発明の粉体ホルダの第5実施形態を示す分解斜視図である。
【図18】図18は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す概略平面図である。
【図19】図19は、図18におけるXIX−XIX線に沿った断面図である。
【図20】図20は、本発明の粉体ホルダの第6実施形態を示す分解斜視図である。
【図21】図21は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す概略平面図である。
【図22】図22は、図21におけるXXII−XXII線に沿った断面図である。
【図23】図23は、本発明の粉体ホルダの第7実施形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
10…基台部、11、11b、11c…粉体保持部収容凹部、12a…マーキング面、20…粉体保持部、30a〜30i…粉体収容孔、40…位置合わせ部、42,43…第1のずれ防止部、41,44…第2のずれ防止部、50…マーキング部、52…貫通孔、60d,60e,60f…粉体の表面、62d,62e,62f…測定用試料、65d,65e,65f…試料表面、70…加圧用治具、80…平滑面、90…基台治具、100…粉体ホルダ、101…測定用試料ホルダ、110,120,130,140,150,160…粉体ホルダ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部と、該基台部上に設けられた粉体保持部と、を備え、
前記粉体保持部が、前記粉体保持部の前記基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を少なくとも1つ有し、
前記粉体保持部の硬度が、前記基台部の硬度よりも小さい、粉体ホルダ。
【請求項2】
前記粉体保持部が、前記粉体保持部の前記基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を複数有している、請求項1に記載の粉体ホルダ。
【請求項3】
前記基台部が、前記粉体保持部の前記基台部と反対側の面よりも外方に張出して、前記粉体保持部を包囲する環状のマーキング面を有し、該マーキング面には少なくとも1つのマーキング部が設けられている、請求項2に記載の粉体ホルダ。
【請求項4】
前記マーキング部に対して前記粉体収容孔を所定の位置に位置合わせする位置合わせ部が、前記基台部及び前記粉体保持部にそれぞれ設けられている、請求項3に記載の粉体ホルダ。
【請求項5】
前記基台部が前記粉体保持部を収容する粉体保持部収容凹部を有し、該粉体保持部収容凹部に前記粉体保持部が嵌め込まれている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体ホルダ。
【請求項6】
前記基台部が有する前記粉体保持部収容凹部は、前記粉体保持部収容凹部の開口が深さ方向に向かって小さくなっている、請求項5に記載の粉体ホルダ。
【請求項7】
前記基台部が、前記基台部に設けられた前記粉体保持部収容凹部に繋がる貫通孔を有している、請求項5又は6に記載の粉体ホルダ。
【請求項8】
前記基台部が前記基台部と前記粉体保持部とのずれを防止する第1のずれ防止部を有し、前記粉体保持部が前記第1のずれ防止部に対して相補的な形状を有する第2のずれ防止部を有している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粉体ホルダ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の粉体ホルダにおいて、前記粉体保持部の前記粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程と、
前記粉体保持部の前記基台部と反対側の面を平滑面で加圧することにより前記粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程と、
を有する、測定用試料製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料に、入射線として電子線又はX線を照射し、前記測定用試料から発生するX線を出射線として検出することにより前記測定用試料を分析する、試料分析方法。
【請求項11】
前記測定用試料から発生するX線を更に分光結晶で分光して得られるX線を前記出射線として検出することにより前記測定用試料を分析する、請求項10に記載の試料分析方法。
【請求項12】
複数の試料に対して、試料ごとに、入射線として電子線又はX線を前記試料に照射し前記試料から発生するX線を出射線として検出することにより前記複数の試料を分析する試料分析方法であって、
請求項3に記載の粉体ホルダにおいて、前記粉体保持部の前記粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程、及び、前記粉体保持部の前記基台部の反対側の面を平滑面で加圧することにより前記粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程、を含む工程により得られる測定用試料ホルダを試料台に配置する配置工程と、
前記測定用試料ホルダのマーキング部を確認して基準点とする基準点設定工程と、
測定用試料ごとに、前記基準点と、予め定められた前記粉体収容孔と前記マーキング部との位置関係と、に基づいて、測定用試料の表面を前記電子線又はX線の照射位置に合わせ、入射線として電子線又はX線を照射し、前記測定用試料から発生するX線を出射線として検出する試料分析工程と、
を有する、試料分析方法。
【請求項1】
基台部と、該基台部上に設けられた粉体保持部と、を備え、
前記粉体保持部が、前記粉体保持部の前記基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を少なくとも1つ有し、
前記粉体保持部の硬度が、前記基台部の硬度よりも小さい、粉体ホルダ。
【請求項2】
前記粉体保持部が、前記粉体保持部の前記基台部と反対側に粉体を収容する粉体収容孔を複数有している、請求項1に記載の粉体ホルダ。
【請求項3】
前記基台部が、前記粉体保持部の前記基台部と反対側の面よりも外方に張出して、前記粉体保持部を包囲する環状のマーキング面を有し、該マーキング面には少なくとも1つのマーキング部が設けられている、請求項2に記載の粉体ホルダ。
【請求項4】
前記マーキング部に対して前記粉体収容孔を所定の位置に位置合わせする位置合わせ部が、前記基台部及び前記粉体保持部にそれぞれ設けられている、請求項3に記載の粉体ホルダ。
【請求項5】
前記基台部が前記粉体保持部を収容する粉体保持部収容凹部を有し、該粉体保持部収容凹部に前記粉体保持部が嵌め込まれている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体ホルダ。
【請求項6】
前記基台部が有する前記粉体保持部収容凹部は、前記粉体保持部収容凹部の開口が深さ方向に向かって小さくなっている、請求項5に記載の粉体ホルダ。
【請求項7】
前記基台部が、前記基台部に設けられた前記粉体保持部収容凹部に繋がる貫通孔を有している、請求項5又は6に記載の粉体ホルダ。
【請求項8】
前記基台部が前記基台部と前記粉体保持部とのずれを防止する第1のずれ防止部を有し、前記粉体保持部が前記第1のずれ防止部に対して相補的な形状を有する第2のずれ防止部を有している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粉体ホルダ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の粉体ホルダにおいて、前記粉体保持部の前記粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程と、
前記粉体保持部の前記基台部と反対側の面を平滑面で加圧することにより前記粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程と、
を有する、測定用試料製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の測定用試料製造方法によって得られた測定用試料に、入射線として電子線又はX線を照射し、前記測定用試料から発生するX線を出射線として検出することにより前記測定用試料を分析する、試料分析方法。
【請求項11】
前記測定用試料から発生するX線を更に分光結晶で分光して得られるX線を前記出射線として検出することにより前記測定用試料を分析する、請求項10に記載の試料分析方法。
【請求項12】
複数の試料に対して、試料ごとに、入射線として電子線又はX線を前記試料に照射し前記試料から発生するX線を出射線として検出することにより前記複数の試料を分析する試料分析方法であって、
請求項3に記載の粉体ホルダにおいて、前記粉体保持部の前記粉体収容孔に粉体を充填する粉体充填工程、及び、前記粉体保持部の前記基台部の反対側の面を平滑面で加圧することにより前記粉体収容孔内に測定用試料を得る加圧工程、を含む工程により得られる測定用試料ホルダを試料台に配置する配置工程と、
前記測定用試料ホルダのマーキング部を確認して基準点とする基準点設定工程と、
測定用試料ごとに、前記基準点と、予め定められた前記粉体収容孔と前記マーキング部との位置関係と、に基づいて、測定用試料の表面を前記電子線又はX線の照射位置に合わせ、入射線として電子線又はX線を照射し、前記測定用試料から発生するX線を出射線として検出する試料分析工程と、
を有する、試料分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−71608(P2006−71608A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258852(P2004−258852)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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