説明

粉末化粧料の製造方法

【課題】 フッ素処理粉末の油分付着性を改善した粉末化粧料を容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】 フッ素化合物処理粉末を含む粉末成分と、結合剤として粘度が100〜50000mPa・sである高粘性油分を含む油性成分と、を混合して粉末化粧料を製造する方法であって、前記混合に用いる装置が、複数の翼を設けた第1回転翼及び第2回転翼を、同一軸線上に回転軸を有するように対向した状態で混合室内に配置し、第1回転翼側の投入口から原料を供給するとともに、該第1回転翼及び第2回転翼を互いに同一又は反対方向に回転させることにより原料を混合し、第2回転翼側の排出口から混合された原料を排出する回転翼対向型混合装置であり、前記フッ素化合物処理粉末を粉末化粧料全量に対して5〜97質量%と、前記高粘性油分を粉末化粧料全量に対して0.1〜10質量%と、を混合することを特徴とする粉末化粧料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末化粧料の製造方法、特にフッ素処理粉末の油分付着性を改善した粉末化粧料を容易に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パウダーファンデーションに代表される粉末化粧料は、粉末成分を主体として、結合剤としての油性成分や界面活性剤等を添加混合した粉末を成型して得られ、通常の場合、パフ、スポンジ、ブラシ等の化粧用具を用いて使用されている。従来の一般的な粉末化粧料は、例えば、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、リボンブレンダー、ニーダー等の攪拌混合機を用いて粉末成分と油性成分を混合した後、パルペライザー等のハンマーミルを用いて均一化し、金属又は樹脂の中皿に乾式プレス成型することによって製造されている。なお、このような従来の方法は、溶媒を添加することなく、粉末成分と油性成分の混合を行なうことから乾式製法と呼ばれている。
【0003】
しかしながら、上記従来の乾式製法では、肌への伸展性、付着性、微細粒子感、化粧持ち等の実用特性及び耐衝撃性等の点で、十分に満足のいく粉末化粧料が得られていなかった。この原因としては、粉末成分と油性成分との均一化が不十分であるため、凝集した粉末成分が残存しており、油性成分が凝集粉末中で偏在化していることが考えられる。
【0004】
一方で、近年、粉末化粧料における実用特性を改善する目的で、種々の製造方法あるいは成型方法の開発が行なわれている。例えば、化粧料基剤にアルコール等の溶媒を添加してスラリーとし、次いで該スラリーを容器に充填した後、前記溶媒を真空吸引により除去する化粧料の充填固化方法(特許文献1参照)や、粉末成分として特定の粉体と油剤を含む基剤を溶媒に添加してスラリーとした後、溶媒を除去する固形粉末メーキャップ化粧料の製造方法(特許文献2参照)、粉末成分と結合剤としての油性成分を溶媒中で混合したスラリーを媒体攪拌ミルを用いて粉末成分表面を油性成分で均一に被覆した後に、溶媒除去して乾式プレス成型を行なうことにより得られた粉末固型化粧料の製造方法(特許文献3参照)等の湿式製法が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記製造方法あるいは成型方法によっても、例えば、微細粒子感、化粧持ち等の実用特性や耐衝撃性の点で、十分に満足の行くものは得られていなかった。特に、湿式製法では、粉末の表面全体にわたって一様に油性成分が被覆されてしまうため、粉末成分の吸油性が極端に低下し、皮脂等の油分に対する化粧持ちが悪いという問題があった。加えて、上記湿式製法では、別途、溶媒除去・乾燥工程が必要となるため、工程が煩雑となるのみならず、安全面や環境面での問題も指摘されている。
【0006】
一方、粉末化粧料の化粧持ちを改善する目的で、表面を撥水・撥油性を有するフッ素化合物で処理した粉末成分が用いられており、また、肌への付着力、化粧持ち等を改善する目的で、高粘性の油分の使用が試みられた。しかしながら、フッ素化合物による撥油特性のため高粘性油分を粉末中に均一に分散させることが困難であることから、粉末の凝集が生じやすく、従来の粉末化粧料の製造においてフッ素処理粉末と高粘性油分とを併用することは非常に困難であった。
【特許文献1】特公昭61−54766号公報
【特許文献2】特開平7−277924号公報
【特許文献3】特許3608778号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みて行われたものであり、その解決すべき課題は、フッ素処理粉末に対する油分付着性を改善した粉末化粧料を容易に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を行なった結果、従来、化粧料の製造には用いられてこなかった特定構造の回転翼対向型式混合装置を用いて、フッ素処理粉末を含む粉末成分と、結合剤としての油性成分とを混合することによって、該粉末成分の凝集を生じることなく、フッ素処理粉末を含む粉末粒子の表面上に均一に油性成分を被覆することが可能となり、これによって肌への伸展性、付着性、微細粒子感、化粧持ち等の実用特性、及び耐衝撃性に優れた粉末化粧料を容易に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、フッ素化合物処理粉末を含む粉末成分と、結合剤として粘度が100〜50000mPa・sである高粘性油分を含む油性成分と、を混合して粉末化粧料を製造する方法であって、前記混合に用いる装置が、複数の翼を設けた第1回転翼及び第2回転翼を、同一軸線上に回転軸を有するように対向した状態で混合室内に配置し、第1回転翼側の投入口から原料を供給するとともに、該第1回転翼及び第2回転翼を互いに同一又は反対方向に回転させることにより原料を混合し、第2回転翼側の排出口から混合された原料を排出する回転翼対向型混合装置であり、前記フッ素化合物処理粉末を粉末化粧料全量に対して5〜97質量%と、前記高粘性油分を粉末化粧料全量に対して0.1〜10質量%と、を混合することを特徴とする粉末化粧料の製造方法であることを特徴とする。
【0010】
また、前記粉末化粧料の製造方法において、粉末化粧料全量に対して、粉末成分65〜97質量%と、油性成分3〜35質量%を混合することが好適である。また、前記粉末化粧料の製造方法において、前記回転翼対向型混合装置における第1回転翼及び第2回転翼を互いに反対方向に回転させて用いることが好適である。
【0011】
また、前記粉末化粧料の製造方法において、前記粉末成分中に弾性粉末を含むことが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、従来、化粧料の製造には用いられてこなかった特定構造の回転翼対向型混合装置を用いて、フッ素化合物処理粉末を含む粉末成分と、結合剤としての高粘性油性成分とを混合することによって、該粉末成分の凝集を生じることなく、フッ素化合物処理粉末を含む粉末粒子の表面上に均一に油性成分を被覆することが可能となり、これによって肌への伸展性、付着性、微細粒子感、化粧持ち等の実用特性、及び耐衝撃性に優れた粉末化粧料を容易に製造することができる。また、本発明の製造方法は、粉末成分と油性成分との混合の際に溶媒を用いない乾式製法であるため、湿式製法と比較して製造工程が簡易であり、且つ安全面や環境面での問題も少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明にかかる粉末化粧料の製造方法は、フッ素化合物処理粉末を含む粉末成分と、結合剤として粘度が100〜50000mPa・sである油性成分とを混合して粉末化粧料を製造する方法であって、前記混合に用いる装置が、特定構造の回転翼対向型混合装置であることを特徴とするものである。
【0014】
粉末成分
本発明の製造方法に用いられる粉末成分は一般に粉末化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものでない。粉末成分としては、例えば、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、焼成タルク、焼成セリサイト、焼成白雲母、焼成金雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素、フォトクロミック性酸化チタン(酸化鉄を焼結した二酸化チタン、)、還元亜鉛華;有機粉末(例えば、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、シリコーンレジン被覆シリコーンエラストマー粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母チタン、フォトクロミック性を有する雲母チタン、基板として雲母の代わりタルク、ガラス、合成フッ素金雲母、シリカ、オキシ塩化ビスマスなどを使用したもの、被覆物として酸化チタン以外に、低次性酸化チタン、着色酸化チタン、酸化鉄、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化コバルト、アルミなどを被覆したもの、機能性パール顔料として、パール顔料表面に樹脂粒子を被覆したもの(特開平11−92688)、パール顔料表面に水酸化アルミニウム粒子を被覆したもの(特開2002−146238)、パール顔料表面に酸化亜鉛粒子を被覆したもの(特開2003−261421)、パール顔料表面に硫酸バリウム粒子を被覆したもの(特開2003−61229)等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられる。なお、上記粉末成分は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
粉末成分としては表面未処理のものを用いてもよく、あるいはシリコーンやシランカップリング剤、テフロン(登録商標)、脂肪酸、脂肪酸セッケン、ラウロイルリジン等により表面処理を施したものを用いてもよい。粉末成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0016】
また、本発明の製造方法においては、粉末成分としてフッ素化合物処理粉末を必須として含む。フッ素化合物処理を行う基粉末としては、上記に掲げた各種の粉末成分を用いることができる。また、基粉末に、シリカやアルミナなど前処理を行ったものを用いてもよい。フッ素化合物処理粉末は、フッ素化合物による撥油特性のため、油性成分、特に高粘性の油性成分の均一化が難しく、粉末の凝集が生じやすいという問題があったが、本発明の製造方法によれば、特定構造の回転翼対向型混合装置を用いることで、このようなフッ素化合物処理粉末を用いた場合であっても、粉末粒子の表面上に均一に高粘性油分を被覆することができ、フッ素化合物の有する撥水・撥油特性が十分に発揮され、化粧持ちに優れた粉末化粧料を得ることができる。なお、粉末表面に処理されるフッ素化合物としては、ペルフルオロアルキルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩、ペルフルオロアルキルシラン、ペルフルオロアルキルエチルアクリレート等、ペルフルオロポリエーテルジアルキルリン酸およびその塩、ペルフルオロポリエーテルジアルキル硫酸塩およびその塩、ペルフルオロポリエーテルジアルキルカルボン酸およびその塩等のペルフルオロポリエーテル基を有する化合物が挙げられる。
【0017】
フッ素化合物の例として、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(化(I))などが挙げられる。
(化I)
CFCFCFCFCFCFCHCHSi(OEt) (I)
【0018】
また、フッ素化合物と、他の疎水化処理剤を併用した処理を行っても良い。本発明のフッ素化合物処理粉末には、フッ素化合物と他の処理剤で併用処理した粉末も含まれる。具体的には、アクリルシリコーン化合物である、化(II)で示される化合物などが挙げられる。
(化II)

(式中、nは整数で、a,b,c,dは共重合体内のそれぞれのモル比であり、0であることはなく、dは、40モル%以上で60モル%以下である。)
【0019】
なお、本発明の製造方法により得られる粉末化粧料において、フッ素化合物処理粉末の配合量は好ましくは粉末化粧料全量に対して5〜97質量%であり、より好ましくは20〜75質量%である。フッ素化合物処理粉末の配合量が5質量%未満では、フッ素化合物処理粉末の特性である化粧持ち向上効果が実感しにくい。75質量%を超えると、肌への付着性等においてやや劣る傾向がある。
また、本発明の製造方法により得られる粉末化粧料において、粉末成分の配合量は好ましくは65〜97質量%である。また、成型して固形状の粉末化粧料とする場合は、好ましくは80〜93質量%である。粉末成分の配合量が65質量%未満では肌への伸展性や化粧持ち等の点で充分に満足できるものを得るのが難しい場合があり、一方、97質量%を超えると、肌への付着性やしっとり感等の実用特性および耐衝撃性の点でやや劣る傾向がある。
【0020】
また、本発明の製造方法においては、粉末成分として弾性粉末を含むことが好ましい。例えば、シリコーンやポリウレタン等の球状弾性粉末は、油性成分との均一化が困難であるため、特に耐衝撃性が悪化してしまうという問題があったのに対して、本発明の製造方法によれば、特定構造の回転翼対向型混合装置を用いることで、このような弾性粉末を用いた場合であっても、弾性粉末粒子の表面上に均一に油性成分を被覆することが可能であり、伸展性等の使用感とともに耐衝撃性にも優れた粉末化粧料を得ることができる。なお、本発明に用いられる弾性粉末としては、例えば、シリコーンゴム粉末、シリコーン樹脂粉末、シリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉末、ポリウレタン粉末等が挙げられる。弾性粉末の形状としては、球状であることがより好ましい。大きさは、平均粒子径が1〜40μmのものが好ましく、より好ましくは、3〜30μmである。
【0021】
弾性粉末の形状としては、球状であることがより好ましい。大きさは、平均粒子径が1〜40μmのものが好ましく、より好ましくは、3−30μmである。
市販品としては、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー(商品名:KSP−100:信越化学工業株式会社製)、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー(商品名:KSP−300:信越化学工業株式会社製)、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(商品名:トレフィルE−506:東レ・ダウコーニング株式会社製)、ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトン架橋ポリマー(商品名:Plastic Powder D−400 :東色ピグメント社製)などが挙げられる。
【0022】
また、本発明の製造方法において、粉末成分に含まれる弾性粉末の配合量は好ましくは粉末化粧料全量に対して5.0〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。従来の製法では、弾性粉末配合すると、耐衝撃性が悪化する傾向があったが、本発明では耐衝撃性に優れるため、特に弾性粉末を5%以上配合しても十分な耐衝撃性を持ち、肌への進展性にも優れた化粧料を得ることができる。一方、20質量%を超えると、耐衝撃性、肌への付着性の点においてやや劣る傾向がある。
【0023】
油性成分
本発明の製造方法に用いられる油性成分としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油等の天然植物油;トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂;カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の動植物性液状油脂、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類;流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等の合成エステル油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンデカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン油などの他、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。なお、上記油性成分は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
また、本発明の製造方法において、油性成分として、25℃における粘度が100〜50000mPa・sである高粘性油分を含むことが好ましい。粘度は、B型粘度計などで測定でき、非ニュートン性流体については、回転数12rpmでは測定される値である。従来の製造方法では、高粘性の油分を粉末中に均一に分散することは非常に困難であったものの、本発明の製造方法によれば、特定構造の回転翼対向型混合装置を用いることで、このような高粘性油分を用いた場合、粉末粒子の表面上に均一に高粘性油分を被覆することが可能であるため、肌への付着力、化粧持ち等に優れた粉末化粧料を得ることができる。
【0025】
本発明の製造方法に用いられる高粘性油分としては、例えば、水添ポリイソブテン、トリイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジメチルポリシロキサンやジフェニルジメチコンなどのシリコーン油、ひまし油、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル・フィトステリル)やジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルなどのダイマー酸およびダイマージオールの誘導体等が挙げられる。
【0026】
なお、本発明の製造方法により得られる粉末化粧料において、高粘性油分の配合量は好ましくは粉末化粧料全量に対して0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。高粘性油分の配合量が0.1質量%未満では、肌への付着性や化粧持ち等の点で充分に満足できるものを得るのが難しく、10質量%を超えると、肌への伸展性等の点で充分に満足できるものを得るのが難しい。
また、本発明の製造方法により得られる粉末化粧料において、油性成分の配合量は好ましくは3〜35質量%であり、より好ましくは7〜20質量%である。油性成分の配合量が3質量%未満では、肌への付着性やしっとり感等の実用特性および耐衝撃性の点で充分に満足できるものを得るのが難しく、一方、35重量%を超えると、肌への伸展性や化粧持ち等の点で充分に満足できるものを得るのが難しい。
【0027】
ここで、本発明に用いられる高粘性油分の配合量は、肌への付着性や肌への伸展性の観点から、フッ素化合物処理粉末1重量部に対し0.005重量部以上、0.5重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以上、0.15重量部以下であることがさらに好ましい。
【0028】
回転翼対向型混合装置
本発明の製造方法において、粉末成分と油性成分との混合に用いる装置は、複数の翼を設けた第1回転翼及び第2回転翼を、同一軸線上に回転軸を有するように対向した状態で混合室内に配置し、第1回転翼側の投入口から原料を供給するとともに、該第1回転翼及び第2回転翼を互いに同一又は反対方向に回転させることにより原料を混合し、第2回転翼側の排出口から混合された原料を排出する回転翼対向型混合装置である。
当該特定構造の回転翼対向型混合装置を用いて、粉末成分と油性成分とを混合することによって、該粉末成分の凝集を生じることなく、粉末粒子の表面上に均一に油性成分を被覆することが可能となる。また、本発明に用いられる回転翼対向型混合装置は、乾式の混合装置であるため、粉末成分及び油性成分を適当な混合用溶媒に溶解させて用いる必要がなく、湿式混合の場合と比較して製造工程が簡易であり、且つ安全面や環境面での問題も少ない。
【0029】
なお、本発明に用いられる回転翼対向型混合装置は、従来、粉砕のための装置として用いられており、粉砕装置として当業者において公知である。例えば、特開2002−79183号公報、特開2003−1127号公報、特開2003−10712号公報、特開2003−71307号公報等に記載されている粉砕装置を、本発明の混合装置として用いることができる。なお、市販の装置としては、例えば、サイクロンミル(フローテック株式会社製)が挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法において用いる回転翼対向型混合装置の一実施例の概略図を図1に示す。なお、本発明に用いられる回転翼対向型混合装置は、これに限定されるものではない。
回転翼対向型混合装置10は、混合室11の内部に、モータ12,13によりそれぞれ回転駆動される第1回転翼14及び第2回転翼15が同一軸線上に対向した状態で設けられ、混合室11の第1回転翼14側に原料の投入口16を連通し、混合室11の第2回転翼15側に排出口17を連通して設けられている。また、回転翼対向型混合装置10投入口16の上部には原料供給装置20が設けられ、さらに排出口17の先には捕集装置30(及び回収容器32)と吸引装置40が接続されている。
【0031】
回転翼対向型混合装置10において、同一軸線上に対向して配置された第1回転翼14及び第2回転翼15は、モータ12,13の回転軸と一体に回転する。そして、回転翼対向型混合装置10においては、モータ12,13により第1回転翼14及び第2回転翼15を互いに同一方向あるいは反対方向に高速で回転させた状態で、原料供給装置20によって対象となる混合物原料を原料投入口16から投入する。回転翼対向型混合装置10に投入された混合物原料は、第1回転翼14、第2回転翼15又は混合室11の内壁面に激しく衝突し、さらには当該原料成分同士が衝突しあうことで、均一に混合・分散される。そして、この結果、粉末成分の凝集を生じることなく、粉末粒子の表面上に均一に油性成分が被覆された混合物が得られる。
【0032】
また、対向する第1回転翼14及び第2回転翼15は、互いに同一方向あるいは反対方向に回転する。ここで、本発明の製造方法においては、第1回転翼及び第2回転翼を反対方向に回転させて用いることが好適である。互いに反対方向に回転させて用いることで、同一方向に回転させて用いた場合よりも大きなせん断応力を発生させることができるため、粉末成分の凝集が生じにくく、均一な混合物が得られやすい。なお、第1回転翼14及び第2回転翼15の回転速度は、例えば、1000〜10000rpm、好ましくは3000〜8000rpmの間で、適宜調整することができる。
【0033】
なお、第1回転翼14及び第2回転翼15においては、それぞれ、モータ12,13の回転軸に取り付けられたボスの周囲に複数の翼が放射状に設けられている。1の回転翼に対して、通常、翼は2〜16枚程度である。なお、第1回転翼14及び第2回転翼15において、回転翼の形状、翼の枚数等は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
混合室11内で混合された対象混合物は、排出口17から排出される。なお、排出口17の先には捕集装置30及び吸引装置40が接続されている。吸引装置40の作動により、排出口17から連続的に対象混合物が排出され、排出された対象混合物は捕集装置30において捕集され、回収容器32内部に集められる。なお、吸引装置40の作動条件は、対照混合物の種類や量、回転翼の回転速度等によって、適宜調整することができる。また、吸引装置40及び捕集装置30を作動させた状態で、原料供給装置20によって混合物原料を連続的に投入することによって、混合物を連続的に生産することが可能である。
【0035】
粉末成分及び油性成分は、それぞれ個別あるいは同時に回転翼対向型混合装置10に投入しても構わないが、通常の場合、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等の簡易な攪拌装置によって予備混合を行なっておくことが好ましい。予備混合を行なわずに回転翼対向型混合装置10に投入すると、軽い粉末成分のみが油性成分と十分に混合されることなく先に排出されてしまう等、混合工程の制御が困難になる。
【0036】
また、本発明の製造方法において、例えば、ファンデーション等の粉末固形化粧料を製造する場合には、通常、上記のようにして得られた粉末成分と油性成分との混合物を、例えば、金属あるいは樹脂の中皿容器に充填し、乾式成型による固形化を行なう。なお、固形化の方法としては従来公知の乾式プレス成型等を用いることができる。
【0037】
本発明の製造方法によって製造される粉末化粧料においては、本発明の効果を損なわない範囲において、通常、化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて常法により製造することが出来る。
【0038】
本発明にかかる製造方法は、ファンデーション、アイシャドウ、チークカラー、ボディーパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、プレストパウダー、デオドラントパウダー、おしろいなどの粉末状もしくは固形状の粉末化粧料に好適に適用される。
【実施例1】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%で示す。
まず最初に、本実施例において用いた評価方法について説明する。
【0040】
<実用特性評価>
各実施例及び比較例で得られた粉末化粧料について、20名の女性パネラーにより、粉末の微粒子感を指で触って評価した後、各化粧料を半顔ずつ塗布し、しっとりさ及びなめらかさ、粉っぽさ、均一な仕上り、3時間後の化粧持ちについて、それぞれ比較評価した。
17名以上が良いと回答 ◎
12名〜16名 ○
9名〜11名 △
5名〜8名 ×
4名以下 ××
【0041】
<耐衝撃性評価>
各実施例及び比較例で得られた粉末化粧料を樹脂中にプレス成型し、化粧品用のコンパクト容器にセットしサンプルとした。厚さ20mmの鉄板上に高さ30cmからサンプルを水平状態にて落下し、破損するまでの落下回数を耐衝撃性の評価とした。
【0042】
本発明者らは、下記表1に示す処方にて実施例1及び比較例1の粉末化粧料(ファンデーション)を製造し、上記評価基準にて、得られた各種粉末化粧料の実用特性、及び耐衝撃性についての評価を行った。
なお、実施例1の粉末化粧料においては、処方中の粉末成分に油性成分を添加してヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)にて一定時間混合した後、図1の回転翼対向型混合装置(サイクロンミル:フローテック社製)を用いて2回混合し、樹脂中皿に乾式プレス成型した。一方、比較例1の粉末化粧料においては、実施例1と同一処方中の粉末成分に油性成分を添加してヘンシェルミキサーにて混合した後、ハンマー式粉砕機であるパルペライザー(ホソカワミクロン製)で2回粉砕し、樹脂中皿に乾式プレス成型した。
【0043】
【表1】

※1(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー(KSP−100:信越化学工業株式会社製) 2.0%
(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー(KSP−300:信越化学工業株式会社製) 2.0%
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(トレフィルE−506:東レ・ダウコーニング株式会社製) 2.0%
【0044】
上記表1に示されるように、回転翼対向型混合装置を用いた実施例1の粉末化粧料においては、フッ素処理粉末である1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(化(I))と、高粘性油分であるジメチルポリシロキサン(5000mPa・s)を併用したにも関わらず、微粒子感、しっとりさ、なめらかさ、粉っぽさ、均一な仕上がり、化粧持ちといった各種実用特性の点でいずれも優れたものであり、また、耐衝撃性も良好なものであった。
これに対して、パルペライザー(ハンマー式粉砕機)を用いた比較例1では、なめらかさは若干良好であったものの、他の実用特性の点では優れた評価は得られず、また、耐衝撃性の評価でも実施例1の半分以下であった。
【0045】
なお、上述の化(I)は以下の式で表される。
(化I)
CFCFCFCFCFCFCHCHSi(OEt) (I)
【0046】
つづいて、下記表2〜5に示す各種粉末化粧料処方を用いて、上記表1と同様にして各種評価を行なった。なお、各種粉末化粧料の製造方法は、いずれも実施例1及び比較例1と同一である。評価結果を表2〜5に併せて示す。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
なお、表3に記載の化(II)は以下の式で表される。
(化II)

(式中、nは整数で、a,b,c,dは共重合体内のそれぞれのモル比であり、0であることはなく、dは、40モル%以上で60モル%以下である。)
【0050】
【表4】

※2(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー(KSP−100:信越化学工業株式会社製) 2.0%
(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー(KSP−300:信越化学工業株式会社製) 4.0%
【0051】
【表5】

※3(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー(KSP−100:信越化学工業株式会社製)
【0052】
上記表2〜5に示されるように、回転翼対向型混合装置を用いた実施例2〜5の粉末化粧料においては、フッ素処理粉末と、高粘性油分とを併用したにも関わらずいずれもパルペライザーを用いた比較例2〜5と比べて、微粒子感、しっとりさ、なめらかさ、粉っぽさ、均一な仕上がりといった各種実用特性の点で優れており、また、耐衝撃性も良好なものであった。
【0053】
また、上記実施例4及び比較例4で得られた粉末成分/油性成分混合物の粒子状態について、走査電子顕微鏡(VE−8800:KEYENCE製)による写真撮影を行なった。写真図を図2に示す。
図2から明らかなように、回転翼対向型混合装置を用いた実施例4の混合物では、ほぼ一次粒子の状態で粉末表面上に均一に油性成分が被覆されていることが確認された。これに対して、パルペライザーを用いた比較例4では、実施例4と比較して粒子が大きく、粉末成分が凝集していることがわかった。
【0054】
つづいて、上記実施例4及び比較例4で得られた粉末成分/油性成分混合物について、粒子径の分布状態をレーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000II:日機装株式会社製)を用いて測定した。また、比較として、ヘンシェルミキサーによる予備混合品についても同様の試験を行なった。結果を図3に示す。
図3に示されるように、予備混合品では粉末成分の凝集が生じており、粒子径の分布状態も非常にブロードになっていることがわかる。また、パルペライザーを用いた比較例4の混合物においては、予備混合品と比較するとピーク粒子径が小さくなっており、粉末成分の凝集が若干抑えられていることがわかる。
これに対して、回転翼対向型混合装置を用いた実施例4の混合物では、さらにピーク粒子径が小さくなっており、分布状態も非常にシャープになっていることが明らかとなった。すなわち、回転翼対向型混合装置を用いた場合、粉末成分の凝集が抑制された状態で油性成分と均一に混合されており、ほぼ一次粒子の状態で粉末表面上に均一に油性成分が被覆された混合物が得られていることが理解される。
【0055】
続いて、本発明者らは、本発明の製造方法の向上機構、及び本発明に使用するフッ素処理粉末の好適な配合量について検討した。下記表6に示す処方にて製造例1−1〜1−6、2−1〜2−5の粉末化粧料(ファンデーション)を本発明の製造方法にて製造し、上記評価基準にて、得られた各種粉末化粧料の実用特性、及び耐衝撃性についての評価を行った。
【0056】
【表6】

【0057】
上記表6の右欄に示されるように、従来の乾式法を用いて、フッ素処理粉末を適宜変化させて配合させた場合、フッ素処理粉末を5質量%以上配合させると、化粧持ちに優れる結果となったが、皮膚への付着力の悪さから、使用性に劣る結果となった(製造例2−2〜2−5)。また、同様の乾式法において、フッ素処理粉末を全く配合しなかった場合には、化粧持ちが悪い結果となった(製造例2−1)。
一方、上記表6の左欄に示されるように、本発明の回転翼対向型混合装置を用いて粉末化粧料を製造した場合、従来の製造方法を用いた場合とは異なり、フッ素処理粉末を5〜75質量%とある程度配合しても粉末の凝集が起こらず、均一な仕上がりとなり、使用性に優れた粉末化粧料が得られることが明らかとなった(製造例1−2〜1−6)。
【0058】
以上により、本発明の製造方法によって得られる粉末化粧料に配合されるフッ素処理粉末の好適な配合量は、上限は特に限定されないが、好ましくは5〜75質量%であり、さらに好ましくは20〜65質量%である。
続いて、本発明者等は、高粘性油分の好適な配合量について検討した。
【0059】
【表7】

【0060】
上記表7の右欄に示されるように、従来の乾式法を用いて、フッ素処理粉末40質量%に固定し、高粘性油分を適宜変化させて配合させた場合、高粘性油分を増量することで、多少耐衝撃性は多少改善されるものの、使用性に劣る結果となった(製造例4−1〜4−4)。また、一方、上記表7の左欄に示されるように、本発明の回転翼対向型混合装置を用いて粉末化粧料を製造した場合、従来の製造方法を用いた場合とは異なり、上記処方と同様に、フッ素処理粉末40質量%に固定し、高粘性油分を0.1〜10質量%配合しても粉末の凝集が起こらず、均一な仕上がりとなり、使用性に優れた粉末化粧料が得られることが明らかとなった(製造例3−2〜3−5)。
しかしながら、高粘性油分を10質量%を超えて配合させると、、均一な仕上がりや使用性やや劣る傾向があった。(製造例3−6)。
【0061】
以上により、本発明の製造方法によって得られる粉末化粧料に配合される高粘性油分の好適な配合量は0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%であることが明らかとなった。
【0062】
実施例6:ファンデーション 質量%
セリサイト 10
合成マイカ 残量
デシルトリシロキサンカルボン酸亜鉛被覆タルク 5
球状シリコーン粉末 3
(トレフィルE−506S:東レ・ダウコーニング株式会社製)
球状シリコーン粉末 5
(トスパール2000B:東芝シリコーン株式会社製)
球状シリコーン粉末 5
(シリコーンパウダーKSP300:信越化学工業株式会社製)
球状多孔質シリカ 2
(サンスフェアL−51:旭硝子株式会社製)
シリコーン処理酸化チタン 15
赤色干渉系パール顔料 2
亜鉛華 2
シリコーン処理ベンガラ 0.8
シリコーン処理黄酸化鉄 2
シリコーン処理黒酸化鉄 0.1
球状ナイロン末 4
1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(5%)
/式(II)の共重合体(2%)タルク 20
1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(5%)
/式(II)の共重合体(2%)硫酸バリウム 10
ジメチルポリシロキサン(5mPa・s) 3
ジメチルポリシロキサン(5000mPa・s) 2
スクワラン 3
ワセリン 1
ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・べヘニル) 2
ソルビタンセスキイソステアレート 0.2
クロルフェネシン 適量
酸化防止剤 適量
香料 適量
(製法)処方中の粉末成分に油性成分を添加してヘンシェルミキサーにて一定時間混合した後、図1の回転翼対向型混合装置を用いて2回混合し、樹脂中皿に乾式プレス成型した。
【0063】
実施例7:白粉(プレストパウダー) 質量%
デシルトリシロキサンカルボン酸亜鉛被覆タルク 10
合成マイカ 残量
シリル化シリカ 5
亜鉛華 5
赤色干渉系パール顔料 3
微粒子酸化チタン 3
球状シリコーン粉末 3
(トレフィルE−506S:東レ・ダウコーニング株式会社製)
球状シリコーン粉末 5
(トスパール2000B:東芝シリコーン株式会社製)
球状シリコーン粉末 5
(シリコーンパウダーKSP300:信越化学工業株式会社製)
球状多孔質シリカ 2
(サンスフェアL−51:旭硝子株式会社製)
1H,1H,2H,2H-パーフルオロ
オクチルトリエトキシシラン(5%)処理タルク 40
水添ポリイソブテン(20000mPa・s) 0.5
リンゴ酸ジイソステアリル(2000mPa・s) 1
スクワラン 1
エステル油 1
パラベン 適量
酸化防止剤 適量
香料 適量
(製法)処方中の粉末成分に油性成分を添加してヘンシェルミキサーにて一定時間混合した後、図1の回転翼対向型混合装置を用いて2回混合し、樹脂中皿に乾式プレス成型した。
【0064】
上記実施例6及び7により得られた粉末化粧料は、いずれも微粒子感、しっとりさ、なめらかさ、粉っぽさ、均一な仕上がりといった各種実用特性の点で優れており、また、耐衝撃性も良好なものであった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の製造方法において用いる回転翼対向型混合装置の一実施例の概略図である。
【図2】実施例4及び比較例4で得られた粉末成分/油性成分混合物の走査電子顕微鏡写真図である。
【図3】実施例4及び比較例4で得られた粉末成分/油性成分混合物、及び予備混合品についての粒子径分布図である。
【符号の説明】
【0066】
10 回転翼対向型混合装置
11 混合室
12 モータ
13 モータ
14 第1回転翼
15 第2回転翼
16 投入口
17 排出口
20 原料供給装置
30 捕集装置
32 回収容器
40 吸引装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化合物処理粉末を含む粉末成分と、結合剤として粘度が100〜50000mPa・sである高粘性油分を含む油性成分と、を混合して粉末化粧料を製造する方法であって、
前記混合に用いる装置が、
複数の翼を設けた第1回転翼及び第2回転翼を、同一軸線上に回転軸を有するように対向した状態で混合室内に配置し、第1回転翼側の投入口から原料を供給するとともに、該第1回転翼及び第2回転翼を互いに同一又は反対方向に回転させることにより原料を混合し、第2回転翼側の排出口から混合された原料を排出する回転翼対向型混合装置であり、
前記フッ素化合物処理粉末を粉末化粧料全量に対して5〜97質量%と、
前記高粘性油分を粉末化粧料全量に対して0.1〜10質量%と、を混合することを特徴とする粉末化粧料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末化粧料の製造方法において、粉末化粧料全量に対して、粉末成分65〜97質量%と、油性成分3〜35質量%を混合することを特徴とする粉末化粧料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉末化粧料の製造方法において、前記回転翼対向型混合装置における第1回転翼及び第2回転翼を互いに反対方向に回転させて用いることを特徴とする粉末化粧料の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3に記載の粉末化粧料の製造方法において、前記粉末成分中に弾性粉末を含むことを特徴とする粉末化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−167182(P2009−167182A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324236(P2008−324236)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】