説明

粘着シート

【課題】仮固定板に対する基板の位置決め精度をより高めることができるとともに、基板に対して良好な剥離性を有する粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着シート10は、基板20を仮固定板30に固定するためのシートである。粘着シート10は、アクリル系粘着剤組成物で構成された粘着剤層のみからなり、粘着剤層は、ゲル分率が85%以上であり、ステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力が300mm/分の引っ張り速度で0.1〜5N/20mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、特に基板を仮固定板に固定するための粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板等の基板は、その製造工程において電子部品の実装等を行う際に、ガラス板などからなる仮固定板に固定する場合がある。特許文献1には、プリント配線板の表面への電子部品の実装に際してプリント配線板をキャリアボードに固定するためのプリント配線板固定用接着シートが開示されている。この接着シートは、プラスチックフィルムからなる基材の片面あるいは両面に粘着剤層が積層された構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4115711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した基板は、電子部品を実装する際のリフロー工程等において、例えば約260℃前後の高温にさらされる。基板には加熱によって反り等が生じ得るが、粘着シートによって基板と仮固定板とが固定されているため、この反り等を抑制することができ、その結果、基板の反りに起因した仮固定板に対する基板の位置ずれを防ぐことができる。
【0005】
一方で、仮固定板や粘着シートも基板と同様に高温にさらされる。粘着シートが高温にさらされると、粘着シートに含まれる基材が収縮することで粘着シートが収縮してしまう可能性があった。粘着シートが収縮した場合、仮固定板に対する粘着シートの位置ずれが生じ、粘着シートに接着されている基板にも位置ずれが生じてしまう。特に近年は基板に搭載する電子部品の挟ピッチ化が進んでいるため、それにともない仮固定板に対する基板の位置決め精度はより高いことが求められる。
【0006】
粘着シートに含まれる基材の収縮に起因した基板の位置ずれを回避する方法としては、粘着シートから基材を除去することが考えられる。しかしながら、粘着シートから単に基材を抜いただけでは、粘着シートの粘着剤層が基板の反りを許容してしまい、その結果、基板に位置ずれが生じてしまう可能性がある。
【0007】
また、基板は、粘着シートで仮固定板に固定された状態で所定の処理が施された後、粘着シートから剥離されて次の工程に送られる。したがって、粘着シートには、糊残りなく容易に基板を引き剥がすことができる良好な剥離性が要求される。
【0008】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、仮固定板に対する基板の位置決め精度をより高めることができるとともに、基板に対して良好な剥離性を有する粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、粘着シートである。当該粘着シートは、基板を仮固定板に固定するための粘着シートであって、アクリル系粘着剤組成物で構成された粘着剤層のみからなり、粘着剤層は、ゲル分率が85%以上であり、ステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力が300mm/分の引っ張り速度で0.1〜5N/20mmであることを特徴とする。
【0010】
この態様の粘着シートによれば、仮固定板に対する基板の位置決め精度をより高めることができるとともに、基板に対して良好な剥離性を有する粘着シートを得ることができる。
【0011】
上記態様の粘着シートにおいて、アクリル系粘着剤組成物は、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)と、極性基含有モノマー(B)とをモノマー成分として含有するアクリル系重合体を含んでもよい。
【0012】
また、上記態様の粘着シートにおいて、アクリル系重合体は、モノマー成分として多官能性モノマー(C)をさらに含んでもよい。
【0013】
また、上記いずれかの態様の粘着シートにおいて、アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系重合体100質量部に対して、架橋剤を0.2〜10質量部含有してもよい。
【0014】
また、上記態様の粘着シートにおいて、架橋剤は、エポキシ系架橋剤であってもよい。
【0015】
また、上記いずれかの態様の粘着シートにおいて、基板が12〜125μmの厚さを有するプラスチック基板であり、前記仮固定板がガラス板であってもよい。
【0016】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、仮固定板に対する基板の位置決め精度をより高めることができるとともに、基板に対して良好な剥離性を有する粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る粘着シートが使用された状態の概略断面図である。
【図2】図2(A)〜図2(E)は、実施形態に係る粘着シートを用いて実施される基板の製造工程を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート10は、プリント配線基板などの基板20を仮固定板30に固定するためのシートである。粘着シート10は、粘着剤層のみからなる、いわゆる基材レス粘着シートであり、粘着剤層の一方の主表面が仮固定板30に接着され、粘着剤層の他方の主表面に基板20が接着される。これにより、基板20が粘着シート10を介して仮固定板30に固定される。なお、本実施形態の「粘着シート」には、テープ状のもの(粘着テープ)、フィルム状のもの(粘着フィルム)も含まれる。以下、粘着シート10、基板20および仮固定板30のそれぞれについて詳細に説明する。
【0021】
[粘着シート]
粘着シート10は粘着剤層のみからなる。この粘着剤層は、アクリル系粘着剤組成物で構成されている。粘着剤層におけるアクリル系粘着剤組成物の含有量は、粘着剤層の固形分の総質量(100質量%)に対して、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。
【0022】
粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)と、極性基含有モノマー(B)とをモノマー成分として含有するアクリル系重合体を含む。例えば、アクリル系粘着剤組成物は、粘着性を発現する役割を担うベースポリマーとしてのアクリル系重合体と、架橋剤とで構成される。なお、アクリル系粘着剤組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0023】
以下、アクリル系重合体のモノマー成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)および極性基含有モノマー(B)のそれぞれについて詳細に説明する。
【0024】
((メタ)アクリル酸アルキルエステル(A))
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)は、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する。アルキル基の炭素数を20以下とすることで、粘着剤層の結晶性が過剰に高まることを抑制することができ、これにより粘着剤層の粘着性が失われてしまうことを防ぐことができる。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)の含有量は、アクリル系重合体を形成するモノマー成分の総質量に対して、好ましくは65質量%〜99質量%であり、より好ましくは70質量%〜99質量%であり、さらに好ましくは70質量%〜98質量%である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)の含有量を65質量%以上とすることで、アクリル系粘着剤組成物が有する粘着性等を良好に発現させることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)の含有量を99質量%以下とすることで、極性基含有モノマー(B)の含有量を、極性基含有モノマー(B)が持つ粘着性向上機能等をより確実に発揮する量とすることができる。
【0026】
炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコシル基等を例示できる。これらのアルキル基は単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステルを挙げることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)は、好ましくは(メタ)アクリル酸C2−14アルキルエステルであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸C2−10アルキルエステルである。なお、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、「(メタ)・・・」は全て同様の意味である。
【0028】
(極性基含有モノマー(B))
極性基含有モノマー(B)は、分子内に極性基を有するモノマーであり、粘着剤層に良好な粘着性や凝集力を付与することができる。極性基含有モノマー(B)の含有量は、アクリル系重合体を形成するモノマー成分の総質量に対して、好ましくは1質量%〜10質量%であり、より好ましくは2質量%〜9質量%であり、さらに好ましくは2質量%〜8質量%である。極性基含有モノマー(B)の含有量を10質量%以下とすることで、アクリル系粘着剤組成物の凝集力が過大となることを抑制し、粘着剤層の粘着性の低下を回避することができる。極性基含有モノマー(B)の含有量を1質量%以上とすることで、アクリル系粘着剤組成物の凝集力が過小となることを抑制し、粘着剤層の粘着性の低下を回避することができる。
【0029】
極性基含有モノマー(B)としては、例えば、
(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコール等の水酸基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン等のアミド基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有モノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;
ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート等のリン酸基含有モノマー;
シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;
N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルモルホリン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−ビニルピラゾール、N−ビニルイソオキサゾール、N−ビニルチアゾール、N−ビニルイソチアゾール、N−ビニルピリダジン等の複素環含有モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;
2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;等を挙げることができる。なお、これらの極性基含有モノマーは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
(多官能性モノマー(C))
また、アクリル系重合体は、モノマー成分として多官能性モノマー(C)をさらに含有してもよい。多官能性モノマー(C)は、例えば1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーである。アクリル系重合体にモノマー成分として多官能性モノマー(C)を含有させることで、架橋を十分に進めて粘着剤層を高いゲル分率に調整することができる。
【0031】
多官能性モノマー(C)の含有量は、その分子量や官能基数等により異なるが、アクリル系重合体を形成するモノマー成分の総質量に対して、好ましくは0質量%〜5質量%であり、より好ましくは0質量%〜4質量%であり、さらに好ましくは1質量%〜4質量%である。多官能性モノマー(C)を5質量%以下で含有させることで、粘着剤層の凝集力が過大となることを抑制し、粘着剤層の粘着性の低下を回避することができる。
【0032】
多官能性モノマー(C)としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの多官能性モノマー(C)は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
(他のモノマー成分)
アクリル系重合体を形成するモノマー成分には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)、極性基含有モノマー(B)および多官能性モノマー(C)以外の他のモノマー成分が含まれていてもよい。
【0034】
他のモノマー成分は、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)、極性基含有モノマー(B)および多官能性モノマー(C)と共重合可能なモノマーである。このようなモノマーとしては、例えば、
炭素数が21以上の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;
スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;
エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィンまたはジエン類;
ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;
塩化ビニル;
等を挙げることができる。これらのモノマーは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
(架橋剤)
粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤組成物には、粘着剤層のゲル分率(溶剤不溶分の割合)をコントロールする等の目的で、架橋剤が含まれることが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などを挙げることができる。これらの架橋剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも架橋剤は、エポキシ系架橋剤であることが好ましい。
【0036】
架橋剤の含有量は、アクリル系重合体100質量部に対して、0.2質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.3質量部〜9質量部であり、さらに好ましくは0.3質量部〜8質量部である。架橋剤の含有量を0.2質量部以上とすることで、粘着剤層のゲル分率を高めて、基板20の位置ずれをより確実に抑制することができる。また、架橋剤の含有量を10質量部以下とすることで、粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎて、粘着剤層の粘着性が低下することを抑制することができる。
【0037】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などを挙げることができる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製の商品名「テトラッドC」を用いることができる。
【0038】
(その他の成分)
アクリル系粘着剤組成物には、上述した成分の他、必要に応じて、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤が、本実施形態に係る粘着シート10の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。
【0039】
また、アクリル系粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を実質的に含まないことが好ましい。ここで「実質的に含まない」とは、不可避的に混入する場合を除いて、能動的に配合しないことを示す。粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系粘着剤組成物の固形分の総質量に対して、好ましくは1質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%未満である。アクリル系粘着剤組成物が粘着付与樹脂を実質的に含まないことで、粘着剤層が加熱された際に生じ得るアウトガスの発生を抑制することができる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などを挙げることができる。
【0040】
(アクリル系粘着剤組成物の作製方法)
アクリル系粘着剤組成物を構成するアクリル系重合体は、従来公知の重合法により上述したモノマー成分を重合(共重合)させることによって調製することができる。アクリル系重合体の作製方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法や紫外線照射による重合法などを挙げることができる。中でも、コストおよび量産性の観点から、溶液重合方法が好ましい。なお、アクリル系重合体の作製に際しては、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤や溶剤など、それぞれの重合法に応じた適宜な成分を、従来公知のものの中から適宜選択して使用することができる。
【0041】
アクリル系重合体を溶液重合法により作製する際に用いられる重合開始剤としては、アゾ系開始剤が好ましい。アゾ系開始剤は、開始剤の分解物が加熱発生ガス(アウトガス)の発生原因となる成分としてアクリル系粘着剤組成物中に残留しにくいため、重合開始剤として好適に使用することができる。アゾ系開始剤としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸などを挙げることができる。アゾ系開始剤の使用量は、アクリル系重合体を形成するモノマー成分の総質量に対して、好ましくは0.1質量%〜3質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜2質量%である。
【0042】
アクリル系重合体を溶液重合法により作製する際に用いられる溶剤としては、従来公知の有機溶剤などを用いることができる。このような有機溶剤としては、例えば、
酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;
メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;
シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤;
トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤
等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万〜200万であり、より好ましくは60万〜150万であり、さらに好ましくは70万〜150万である。アクリル系重合体の重量平均分子量を30万以上とすることで、良好な粘着特性を発揮させることができる。一方、アクリル系重合体の重量平均分子量を200万以下とすることで、アクリル系粘着剤組成物に良好な塗工性を持たせることができる。アクリル系重合体の重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。
【0044】
(粘着剤層の形成方法)
粘着剤層の形成方法は、特に制限されず、公知の粘着剤層の形成方法の中から適宜選択することができる。例えば、後述する剥離ライナー上にアクリル系粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗布し、必要に応じて乾燥あるいは硬化させて粘着剤層を形成する方法などが挙げられる。なお、アクリル系粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用の塗工機を用いて実施することができる。
【0045】
(粘着剤層のゲル分率)
粘着剤層は、ゲル分率が85%以上であり、好ましくは85%〜99%であり、より好ましくは86%〜99%であり、さらに好ましくは87%〜99%である。粘着剤層のゲル分率を85%以上とすることで、粘着シート10の剛性を高めることができ、これにより粘着剤層が基板20の反り等に追従して変形してしまうことを抑制することができる。よって、基板20の位置ずれを抑制することができる。粘着剤層のゲル分率は、アクリル系重合体のモノマー組成、架橋剤の種類や含有量などにより制御することができる。
【0046】
(ゲル分率の測定方法)
粘着剤層のゲル分率は、以下に説明するゲル分率の測定方法により算出される値である。すなわち、粘着剤層を約0.1g採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、測定サンプルを作製する。そして、測定サンプルの質量を測定する。この質量を浸漬前質量とする。浸漬前質量は、採取した粘着剤層と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総質量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計質量も測定し、この質量を包袋質量とする。
【0047】
続いて、測定サンプルを酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器から測定サンプルを取り出し、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去する。酢酸エチルを除去した測定サンプルの質量を測定し、この質量を浸漬後質量とする。そして、下記の式(1)からゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=(A−B)/(C−B)×100 (1)
(式(1)において、Aは浸漬後質量であり、Bは包袋質量であり、Cは浸漬前質量である。)
【0048】
(粘着剤層の粘着力)
粘着剤層は、ステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力が300mm/分の引っ張り速度で0.1〜5.0N/20mmであり、より好ましくは0.1〜4.0N/20mmであり、さらに好ましくは0.1〜3.0N/20mmである。ステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力を300mm/分の引っ張り速度で0.1N/20mm以上とすることで、基板20および仮固定板30に対して良好な粘着性を粘着シート10に付与することができる。また、ステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力を300mm/分の引っ張り速度で5.0N/20mm以下とすることで、基板20および仮固定板30に対して良好な剥離性を粘着シート10に付与することができる。なお、後述するように、基板20がプラスチックからなり、仮固定板30がガラスからなる場合であっても、粘着シート10の引き剥がし粘着力を上述の範囲に設定することで、良好な粘着性と剥離性とが得られる。なお、本実施形態において粘着剤層の粘着力は、後述する180°引き剥がし粘着力の測定方法に基づき測定された値である。
【0049】
粘着剤層の厚さ、すなわち粘着シート10の厚さは、好ましくは3μm〜100μmであり、より好ましくは3μm〜75μmであり、さらに好ましくは3μm〜50μmである。粘着剤層の厚さを3μm以上とすることで、基板20および仮固定板30に対する良好な粘着性を粘着シート10に付与することができる。粘着剤層の厚さを100μm以下とすることで、粘着シート10の反りや仮固定板30に対する位置ずれをより確実に抑制することができる。
【0050】
(粘着シートの形状)
粘着シート10は、使用前の状態、すなわち基板20および仮固定板30に接着される前の状態で、粘着剤層の両主表面上に剥離ライナー(セパレータ)が設けられていてもよい。粘着剤層は、2枚の剥離ライナーにより両主表面が保護されてもよいし(剥離ライナー/粘着剤層/剥離ライナー)、両面が剥離面となっている1枚の剥離ライナーにより、ロール状に巻回される形態で両主表面が保護されていてもよい。剥離ライナーは粘着剤層の保護材として用いられ、粘着シート10を被着体(基板、仮固定板)に貼着する際に剥がされる。なお、剥離ライナーは必ずしも設けられなくてもよい。
【0051】
剥離ライナーとしては、例えば、シリコーン系離型剤や長鎖アルキル系離型剤等の離型剤が表面に塗布されたプラスチックフィルムや紙等を使用することができる。
【0052】
[基板]
基板20は、例えばプラスチック等の絶縁性材料からなる。基板20を構成するプラスチックとしては、例えばポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー等を挙げることができる。なお、基板20は、ガラス基板等であってもよい。基板20の表面には、例えば銅、ニッケル、金、クロムや、各種の合金等の導電性材料からなる所定の配線パターンが形成されている。また、基板20には、IC、コンデンサ、コネクタ、抵抗、LED等の電子部品が実装される。あるいは、基板20には、各種のスイッチング素子と、このスイッチング素子に信号を与える走査線などが形成されてもよい。基板20は、例えば、12μm〜125μmの厚さを有する。また、基板20は、可撓性を有するディスプレイや太陽電池等の基板として用いることができる。
【0053】
[仮固定板]
仮固定板30は、例えばガラスからなり、その表面に粘着シート10を介して基板20が固定される。基板20は、仮固定板30に固定された状態で、回路パターンやスイッチング素子等の形成、電子部品の実装等が行われる。すなわち、仮固定板30は、基板20を製造する際のキャリアボードとして機能する。
【0054】
図2(A)〜図2(E)を参照しながら、実施形態に係る粘着シート10を用いて実施される基板20の製造工程を説明する。図2(A)〜図2(E)は、実施形態に係る粘着シートを用いて実施される基板の製造工程を説明するための工程断面図である。
【0055】
図2(A)に示すように、仮固定板30の主表面上に粘着シート10が貼り付けられる。図2(A)において、粘着シート10は、仮固定板30の一方の主表面の全面に貼り付けられているが、仮固定板30の主表面のうち、基板20が配置される領域等のみに貼り付けられてもよい。
【0056】
次に、図2(B)に示すように、粘着シート10の主表面上に基板20が貼り付けられる。基板20は、スイッチング素子の形成や電子部品の実装が行われる側の面と反対側の面が粘着シート10に貼り付けられる。
【0057】
次に、粘着シート10を介して仮固定板30に固定された基板20に対して、配線パターンやスイッチング素子等の形成、あるいは電子部品の実装等が実施される。この基板20の製造工程において、例えば、図2(C)に示すように、粘着シート10を介して仮固定板30に固定された基板20は、加熱処理装置40に収容され、260℃前後の加熱によりはんだを溶融させるリフロー工程が実施される。本実施形態に係る粘着シート10は、基材レス粘着シートであるため、加熱による基材の熱収縮に起因した粘着シートの位置ずれが起こらない。また、粘着シート10を構成する粘着剤層は、上述のようにゲル分率が85%以上であるため、加熱によって生じ得る基板20の反りを抑制することができる。そのため、仮固定板30に対する基板20の位置決め精度を高めることができる。また、粘着剤層は、アクリル系粘着剤組成物で構成されているため、耐熱性を備える。
【0058】
次に、図2(D)に示すように、基板20に所定の処理が施された後、基板20を粘着シート10から剥離する。粘着シート10から剥離した基板20は、次の製造工程に回される。
【0059】
次に、図2(E)に示すように、粘着シート10を仮固定板30から剥離する。
【0060】
粘着剤層は、上述のようにステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力が300mm/分の引っ張り速度で0.1〜5N/20mmである。そのため、粘着シート10から基板20を引き剥がす際に基板20にかかる力を低減することができるため、粘着シート10からの引き剥がしによって基板20が変形してしまうことを抑制することができる。また、粘着シート10を破損させることなく容易に粘着シート10から基板20を剥離することができるため、基板20への糊残りを回避することができる。これにより、基板20の製造における作業性が向上し、高スループット化を図ることができる。また、粘着シート10を破損させることなく容易に仮固定板30から粘着シート10を剥離することができるため、仮固定板30への糊残りを回避することができる。これにより、仮固定板30を容易に再利用することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る粘着シート10は、アクリル系粘着剤組成物で構成された粘着剤層のみからなる。したがって、基材の熱収縮に起因した基板20の位置ずれを排除することができる。また、粘着剤層は、ゲル分率が85%以上である。したがって、基板20の反り等に追従して粘着剤層が変形することを抑制することができる。これにより、仮固定板に対する基板の位置決め精度を高めることができる。また、基材レスとすることで、粘着シート10の製造コストを低減することができる。また、粘着剤層がアクリル系粘着剤組成物で構成されているため、シリコーン系粘着剤の場合に生じ得るシロキサンなどのアウトガスの発生を抑制することができる。また、シリコーン系粘着剤やUV硬化型粘着剤に比べて製造コストを低減することができる。
【0062】
また、粘着剤層は、ステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力が300mm/分の引っ張り速度で0.1〜5N/20mmである。そのため、基板20および仮固定板30に対して良好な接着性および剥離性を粘着シート10に持たせることができる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
(アクリル系粘着剤組成物の作製)
アクリル酸2−エチルヘキシル100質量部、アクリル酸2質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.01質量部を、トルエン210質量部中で、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部の共存下かつ窒素置換下、60〜80℃で撹拌しながら溶液重合処理し、固形分35質量%の溶液を調製した。次いで、この溶液の固形分100質量部に対し、酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)2質量部、イソプロピルアルコール25質量部、架橋剤としてアルミニウムトリスアセチルアセトネート(商品名「アルミキレートAW」、川崎ファインケミカル株式会社製)4質量部、エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」、三菱ガス化学株式会社製)0.3質量部を混合して、アクリル系粘着剤組成物E1を作製した。
【0065】
(粘着シートの作製)
片面をシリコーンで剥離処理した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(剥離ライナー)の剥離処理面上に、得られたアクリル系粘着剤組成物E1を、最終的な粘着剤層の厚さが15μmになるように塗布し、120℃で2分間加熱して乾燥させ、粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムを、剥離処理面が粘着剤層側となるようにして貼り合わせ、基材レスタイプの粘着シートを得た。
【0066】
(実施例2)
エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」、三菱ガス化学株式会社製)の量を上述した溶液の固形分100質量部に対して0.6質量部としてアクリル系粘着剤組成物E2を調製し、得られたアクリル系粘着剤組成物E2をアクリル系粘着剤組成物E1に替えて用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材レスタイプの粘着シートを得た。
【0067】
(実施例3)
エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」、三菱ガス化学株式会社製)の量を上述した溶液の固形分100質量部に対して0.9部としてアクリル系粘着剤組成物E3を調製し、得られたアクリル系粘着剤組成物E3をアクリル系粘着剤組成物E1に替えて用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材レスタイプの粘着シートを得た。
【0068】
(比較例1)
エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」、三菱ガス化学株式会社製)の量を上述した溶液の固形分100質量部に対して0.1質量部としてアクリル系粘着剤組成物C1を調製し、得られたアクリル系粘着剤組成物C1をアクリル系粘着剤組成物E1に替えて用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材レスタイプの粘着シートを得た。
【0069】
(比較例2)
(UVシロップ(部分重合物)の作製)
イソノニルアクリレート90質量部およびアクリル酸10質量部を混合して得られたモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、BASF社製)0.05質量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)0.05質量部を配合し、粘度が20Pa・sになるまで紫外線を照射して、一部が重合したUVシロップ(部分重合物)を得た。
【0070】
(アクリル系粘着剤組成物の作製)
得られたUVシロップ100質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.2質量部、イソノニルアクリレート0.2質量部、酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)1.0質量部を均一に混合して、アクリル系粘着剤組成物C2を得た。
【0071】
(粘着シートの作製)
片面をシリコーンで剥離処理した厚さ50μmのPETフィルムの剥離処理面上に、得られたアクリル系粘着剤組成物C2を、最終的な粘着剤層の厚さが50μmになるように塗布して塗布層を形成した。次いで、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのPETフィルムを、剥離処理面が塗布層側となるようにして塗布層に被覆した。これにより塗布層を酸素から遮断した。続いて、2枚のPETフィルムで被覆された塗布層に、PETフィルム側から照度340mW/cm(UVチェッカー「UVR−T1」(株式会社トプコン製)で測定)の紫外線を約2分照射した。そして、片方のPETフィルムを引き剥がし、120℃、1分間の加熱で乾燥させて残存モノマーを揮発させ、粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのPETフィルムを、剥離処理面が粘着剤層側となるようにして貼り合わせ、基材レスタイプの粘着シートを得た。
【0072】
(比較例3)
(アクリル系粘着剤組成物の作製)
アクリル酸2−エチルヘキシル100質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル4質量部を、酢酸エチル163質量部中で、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部の共存下かつ窒素置換下、60〜80℃で撹拌しながら溶液重合処理し、固形分30質量%の溶液を調製した。次いで、この溶液の固形分100質量部に対し、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業株式会社製)0.5質量部を混合して、アクリル系粘着剤組成物C3を作製した。
【0073】
(粘着シートの作製)
得られたアクリル系粘着剤組成物C3をアクリル系粘着剤組成物E1に替えて用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材レスタイプの粘着シートを得た。
【0074】
(比較例4)
(アクリル系粘着剤組成物の作製)
アクリル酸2−エチルヘキシル90質量部、アクリル酸10質量部を、酢酸エチル199質量部中で、ベンゾイルパーオキサイド0.6質量部の共存下かつ窒素置換下、60〜80℃で撹拌しながらトルエン137質量部を滴下して溶液重合処理し、固形分23質量%の溶液を調製した。次いで、この溶液の固形分100質量部に対し、酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)1質量部、粘着付与剤(商品名「YSポリスターS−145」、ヤスハラケミカル株式会社製)20質量部、エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」、三菱ガス化学株式会社製)0.05質量部を混合して、アクリル系粘着剤組成物C4を作製した。
【0075】
(粘着シートの作製)
得られたアクリル系粘着剤組成物C4をアクリル系粘着剤組成物E1に替えて用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材レスタイプの粘着シートを得た。
【0076】
[試験方法]
([ゲル分率)
上述したゲル分率の測定方法にしたがって、実施例1〜3および比較例1〜4に係る粘着シートの粘着剤層について、ゲル分率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0077】
(180°引き剥がし粘着力)
実施例1〜3および比較例1〜4に係る粘着シート各々について、一方の剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合せた。その後、20mm×200mmの方形状に切断して試験片を作製した。各試験片の他方の剥離ライナーを剥がし、2kgのローラーを一往復させて、被着体としてのステンレス鋼(SUS304)板に露出した粘着剤層を貼り付けた。これを23℃、相対湿度(RH)50%の環境下で30分間保持した。その後、引張試験機(商品名「テンシロン」、島津製作所社製)を用いて、JIS Z 0237(2005)に準拠して23℃、RH50%の環境下、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分の条件で、ステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力(単位:N/20mm)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0078】
(反り抑制評価)
実施例1〜3および比較例1〜4に係る粘着シートを25mm×75mmの方形状に切断して試験片を作製した。各試験片の一方の剥離ライナーを剥がし、試験片をガラス板にハンドローラーで圧着した。次いで、各試験片の他方の剥離ライナーを剥がし、25mm×75mmの方形状のポリイミド基板を試験片にハンドローラーで圧着した。30分〜1時間のエイジングの後、260℃の環境下で10分間放置した。続いて、23℃の環境下で1時間以上放置して冷却した。試験片が十分に冷却された状態で、ポリイミド基板に反りが生じているか目視で確認した。ポリイミド基板に反りが生じていない場合を良好(○)とし、ポリイミド基板に反りが生じている場合を不良(×)とした。評価結果を表1に示す。
【0079】
(剥離性評価)
ポリイミド基板を引き剥がす前の状態におけるポリイミド基板の反りについて評価した後、ポリイミド基板を試験片から引き剥がして、ポリイミド基板に糊残りなく引き剥がすことができるか確認した。糊残りなく引き剥がすことができた場合を良好(○)とし、引き剥がすことができなかった場合を不良(×)とした。評価結果を表1(糊残り)に示す。
【0080】
ポリイミド基板を試験片から引き剥がした後、試験片から引き剥がしたポリイミド基板に反りが生じているか目視で確認した。ポリイミド基板に反りが生じていないか、丸まらない程度に軽く反っている場合を良好(○)とし、ポリイミド基板が反って丸まった場合、すなわち円を描く程度にポリイミド基板が反った場合を不良(×)とした。評価結果を表1(引き剥がし後反り)に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1において、比較例2,3の粘着シートではポリイミド基板の引き剥がし自体ができなかったため、引き剥がし後の反り評価を「−」としている。
【0083】
表1に示すように、実施例1〜3および比較例2の粘着シートは、粘着剤層のゲル分率が85%以上であり、反り抑制評価が良好であった。一方、比較例1,3,4の粘着テープは、粘着剤層のゲル分率が85%未満であった。反り抑制評価が不良であった。これにより、粘着剤層のゲル分率を85%以上とすることで、基板の位置ずれを抑制可能であることが確認された。
【0084】
また、実施例1〜3および比較例1,3の粘着シートは、粘着剤層のステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力が300mm/分の引っ張り速度で0.1〜5N/20mmの範囲内であり、糊残り評価が良好であった。一方、比較例2,4の粘着シートは、同粘着力が5N/20mmを上回り、糊残り評価が不良であった。これにより、粘着剤層のステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力を300mm/分の引っ張り速度で0.1〜5N/20mmとすることで、基板に対して良好な剥離性を付与可能であることが確認された。
【0085】
さらに、実施例1〜3の粘着シートは、同粘着力が0.1〜0.4N/20mmの範囲内であり、引き剥がし後の反り評価が良好であった。一方、比較例1,3の粘着シートは、同粘着力が0.4N/20mmを上回り、引き剥がし後の反り評価が不良であった。これにより、粘着剤層のステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力を300mm/分の引っ張り速度で0.1〜0.4N/20mmとすることで、基板に対してより一層良好な剥離性を付与可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0086】
10 粘着シート、 20 基板、 30 仮固定板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を仮固定板に固定するための粘着シートであって、
アクリル系粘着剤組成物で構成された粘着剤層のみからなり、
前記粘着剤層は、ゲル分率が85%以上であり、ステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力が300mm/分の引っ張り速度で0.1〜5N/20mmであることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記アクリル系粘着剤組成物は、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)と、極性基含有モノマー(B)とをモノマー成分として含有するアクリル系重合体を含む請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系重合体は、モノマー成分として多官能性モノマー(C)をさらに含む請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記アクリル系粘着剤組成物は、前記アクリル系重合体100質量部に対して、架橋剤を0.2〜10質量部含有する請求項2または3に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤である請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記基板が12〜125μmの厚さを有するプラスチック基板であり、前記仮固定板がガラス板である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−35933(P2013−35933A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172377(P2011−172377)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】