説明

粘着剤スプレー

【課題】被塗布物上に粘着膜を形成でき、かつ、強い粘着力を長時間にわたって保持することができる粘着剤スプレーを提供する。
【解決手段】粘着剤と噴射剤を、バルブを備えたエアゾール容器に封入し、バルブのバルブステムに装着された噴射ボタンから噴射剤の圧力により粘着剤が噴出するものであって、粘着剤としてスチレン系熱可塑性エラストマー100質量部、ワックス状ポリブテン1000〜2000質量部を含む粘着剤配合物を、希釈剤としてイソパラフィン系炭化水素を加えて分散体とし、粘着剤の固形分量(スチレン系熱可塑性エラストマーとワックス状ポリブテンの合計)が全体の50質量%〜60質量%とした原液と、噴射剤として20℃に於ける圧力が0.3〜0.7MPaとなる液化天然ガス(LPG)及びジメチルエーテル(DME)から選択される一種または二種を使用することを特徴とする粘着剤スプレー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤スプレーに関し、被塗布物上に粘着膜を形成できる粘着スプレーに関し、目的に応じて、害虫を捕獲できる粘着膜を長時間にわたりその特性を維持することができる粘着剤スプレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリブテン、水、乳化剤および誘引剤を含有する水性エマルジョンからなる小昆虫捕獲用スプレー組成物が開示され、 前記水性エマルジョンの粘度が、25℃において 1,000cP以下であり、 前記水性エマルジョンにおける各成分の配合割合が、ポリブテン10〜80重量%、水20〜80重量%、 乳化剤0.1〜20重量%および誘引剤 0.1〜5重量%である捕獲用スプレー組成物が開示されている。ここには、小昆虫の捕獲性能を高めるためには、ゴムを配合することが好ましい。この目的で配合するゴムとしては、粘度平均分子量2万から2百万の範囲のポリイソブチレン、ブチルゴム、またはこれらの混合物が適当である。ゴムの分子量がこの範囲を外れると、粘着性が不足して小昆虫の捕獲性能が低下するので好ましくない。これらのゴムはポリブテンに対する相溶性が良好であるため、小昆虫に対する粘着性を向上することができる。ゴムの配合量は、0.1〜20重量%が適当である。0.1重量%未満では、捕獲性能向上の効果を示することが困難であり、一方20重量%を越えると粘度が高くなりすぎるためにスプレー性が低下すると共に、初期粘着力が低下し、小昆虫の捕獲性能が低下するためにいずれも好ましくない。
【0003】
特許文献2には、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(b)該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合性を有する水溶性モノマー及び(c)分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する油溶性の多官能性モノマーを含有するモノマー組成物を、油溶性重合開始剤及び界面活性剤の存在下で水性懸濁重合することによって得られる平均粒径が5〜100μmの粘着性微球体、溶剤ならびにエアゾール噴射剤からなるスプレー性粘着剤組成物であって、上記モノマー組成物中には、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に対して(c)多官能性モノマー0.08〜0.15重量部が含有され、上記溶剤は炭素数が5〜7の炭化水素からなるとともに、上記エアゾール噴射剤が液化天然ガス単体もしくは液化天然ガスとジメチルエーテルの混合物からなることを特徴とするスプレー性粘着剤組成物が開示され、さらにこのスプレー性粘着剤組成物に、環化ゴムもしくは環化ゴムと酢酸ビニルがグラフトされたブチルゴムとの混合物が添加されていることを特徴とするスプレー性粘着剤組成物も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−116101号公報
【特許文献2】特開平07−70531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件発明は、被塗布物上に粘着膜を形成でき、かつ、強い粘着力を長時間にわたって保持することができる粘着剤スプレーを提供する。
従来の粘着剤スプレーは、被塗布物上に粘着膜を形成できるが、その粘着力は長く保持することができず、せいぜい3〜5日程度であった。その原因はいろいろあるが、その一つは出来上がる粘着層が薄いため、また、粘着特性も徐々に低下していることがわかった。
本発明者は、鋭意研究の結果、スプレー缶に詰める粘着剤配合物の固形分量を50%以上とし、配合する噴射剤や原液と噴射剤の割合及び使用するエアゾール容器の構造等を工夫することにより粘着力を長時間にわたって保持することができる粘着スプレーを発明するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、粘着剤と噴射剤を、バルブを備えたエアゾール容器に封入し、バルブのバルブステムに装着された噴射ボタンから噴射剤の圧力により粘着剤が噴出するものであって、粘着剤としてスチレン系熱可塑性エラストマー100質量部、ワックス状ポリブテン1000〜2000質量部を含む粘着剤配合物を、希釈剤としてイソパラフィン系炭化水素を加えて分散体とし、粘着剤の固形分量(スチレン系熱可塑性エラストマーとワックス状ポリブテンの合計)が全体の50質量%〜60質量%とした原液と、噴射剤として20℃に於ける圧力が0.3〜0.7MPaとなる液化天然ガス(LPG)及びジメチルエーテル(DME)から選択される一種または二種を使用し、原液/噴射剤比が30/70質量%〜70/30質量%であり、上記バルブの噴射穴の総開口面積が0.15〜0.70mmであることを特徴とする粘着剤スプレーである。
本発明の粘着剤スプレーにおいては、粘着剤配合物として、さらに、粘着剤濡れ性向上剤としてグリセリンを、1〜10質量部を含み、かつ、液化天然ガス(LPG)/ジメチルエーテル(DME)混合比が、100/0質量%〜60/40質量%であることが好ましい。
【0007】
さらに、本発明の粘着剤スプレーは、粘着剤配合物が、さらに粘着付与樹脂1〜500質量部、紫外線吸収剤0.1〜5質量部、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックス0.1〜10質量部から選ばれる1種以上を含み、希釈剤が、さらにシクロヘキサン若しくはイソヘキサンを含むことができる。また、さらに本発明は、このような粘着剤スプレーを捕虫用として用いる捕虫用スプレーでもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着スプレーは、粘着剤配合物の固形分量を50質量%以上としたにもかかわらず、被塗布物に向けて容易にスプレーノズルから噴射することができ、しかも被塗布物上で、強い粘着膜を形成でき、かつ、強い粘着力を長時間にわたって保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の粘着スプレーを立木の根元付近に散布し、イラガの幼虫が捕獲された写真。
【図2】図2は、プレート上に本発明の粘着スプレーを立木の根元付近に散布し、ゴキブリとイエバエが捕獲された写真。
【図3】バルブの断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る粘着スプレーの形態を説明する。
本発明で用いる粘着剤としては、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。
具体的には、SIS(スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体)、さらに水添タイプのSEPS(スチレン/エチレン/プロピレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。SISはクインタックシリーズ(日本ゼオン社製)、SISエラストマー(JSR社製)、SEPSおよびSEBSはセプトン(以上クラレ社製)、SEBS(クレイトンポリマー社製)、タフテックSEBS(旭化成ケミカルズ社製)、SEBSエラストマー(アロン化成社製)、SEBSエラストマーエスポレックスTPS(住友化学工業社製)等を使用できる。
一般的なSIS及びSBSは安価で、他のスチレン系エラストマーに比べて柔らかく伸びやすいため柔軟性や成形性に優れており、バランスの良い性能を持つ。一方、耐熱性、耐候性、耐摩耗性の欠点がある。しかし、SIS、SBSをそれぞれ水素添加したSEPS、SEBSはそれらの欠点を改善しており、また引張強度が大きい特徴を持つ。
【0011】
クラレが蓄積した独自技術をさらに発展させ、開発した高性能熱可塑性エラストマーであるセプトンは、加硫加工なしで加硫ゴムのような高弾性・高強度を示す。耐熱劣化性、耐候性、低温特性、絶縁性、耐薬品、安全性に優れている。また、オレフィン・スチレン系ポリマーとの親和性が良好で、用途に応じて銘柄を選択できる。
クレイトンポリマーは不飽和のゴム中間ブロックを持つクレイトンDと、飽和中間ブロックを持つクレイトンGがある。クレイトンDポリマー(SIS)は、一般に熱可塑性樹脂(ポリスチレン)などと類似のメルトフロー値を持つため成形性に優れている。さらにGポリマー(SEBS)は耐酸化劣化性や耐候性、耐熱性、加工安定性に優れている。
本発明においては、このようなスチレン系熱可塑性エラストマーなら、何でも使うことができる。さらに、本発明で用いるワックス状のポリブテンは、ワックス状であれば何でもよく市販品としてはポリブテンHV−300(新日本石油社製)を挙げることができる。
【0012】
本発明で用いる濡れ性向上剤としては、高沸点溶媒であるグリセリン溶媒を使用できる。
グリセリンには精製、日本薬局方、化粧品、食品添加物用等があり、無色透明の粘調のある液体である。具体的には、日油社製、新日本理化社製、花王社製等の精製グリセリンを使用できる。
本発明でいう粘着剤配合物は、スプレー缶中では、希釈剤との混合物であり、その状態は粘着剤配合物が希釈剤との混合液に分散していると考えられる。
粘着剤配合物としては、さらに粘着付与樹脂1〜500質量部、紫外線吸収剤0.1〜5質量部、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックス0.1〜10質量部から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0013】
本発明で用いる希釈剤としては、イソパラフィン系炭化水素を挙げることができる。具体的には、IPソルベント(出光興産社製)、シェルゾール(シェルケミカルズジャパン社製)等が挙げられる。
さらにシクロへキサン、イソへキサンを含むことができる。
IPソルベントは低臭気であり、また高純度のため流動点が低い。蒸発速度の違うグレードもあり、高い安全性から様々な用途で使用されている。用途としては、塗料・インキ、殺虫剤、接着剤、研磨剤、シーリング剤等の溶剤や、芳香剤、家庭用艶出しクリーナー等の希釈剤、潤滑油、化粧品等がある。
シェルゾールは地球環境や人体への影響が少なく、金属加工部品の脱脂洗浄を中心に幅広い分野で使用できる。
本発明で用いる粘着付与樹脂としては、水添テルペン樹脂 を挙げることができる。市販品としては、クリアロンP−105(ヤスハラケミカル社製)がある。
【0014】
また、本発明の捕虫スプレーは、さらに誘引剤を添加することができる。誘引剤としては、乳酸液やアルコール、更には食品添加物に使用されるフレーバー、例えばバナナやピーナッツ、トロピカルフルーツの香りなどを使用することができる。
また、誘引目的ではなく、フレグランスや芳香剤としても使用できる。
【0015】
本発明で用いるエアゾール噴射剤としては、20℃に於ける圧力が0.3〜0.7MPaとなる液化天然ガス(LPG:一般的にはプロパンとブタンの混合ガスを指す)及びジメチルエーテル(DME)から選択される一種または二種が好適に用いられる。
粘着剤原液と噴射剤の配合比率は、30/70質量%〜70/30質量%であることが望ましく、40/60質量%〜60/40質量%であることがより望ましい。
【0016】
上記の粘着剤は、エアゾール容器に封入され、最終の形態となる。
エアゾール容器は従来のエアゾール容器と基本的には同様の構造でよく、バルブを備えた容器に噴射ボタンを取りつけたものである。
バルブの噴射穴の総開口面積は、0.15〜0.70mmであることが望ましく、0.2〜0.6mmであることがより望ましい。
また、噴射ボタンの噴射穴は直径0.45〜1.0mmであることが望ましく、0.5〜0.7mmであることがより望ましい。
ステム1は、通常プラスチック又は金属の成型品であり、容器の開口部に取り付けられたバルブの中心部に位置するハウジング4に取り付けられる(図3参照)。ステム1をスプリング3に抗して押すことにより、噴射穴(ステムオリフィス)8が開口し、エアゾールがデップチューブ7を通して、噴射穴(ステムオリフィス)8より噴出される。ステム1を押すのをやめると、スプリング3により、元の位置にステムが戻り、噴射穴(ステムオリフィス)8が閉鎖される。噴射穴(ステムオリフィス)8は所望により1個ないし複数個設けられる。
マウンテンカップ5は、図示しない容器の上部にガスケット6を介してカシメられて一体化されている。ステム1とハウジング4にガスケット2が介在され、未使用時は噴射穴(ステムオリフィス)8はステムガスケット2によって密閉されており、ステム1を上下動することにより、噴射穴(ステムオリフィス)8がガスケット2により開閉する。
【実施例】
【0017】
(実施例1−5)
実施した配合、また使用した噴射剤及びエアゾール容器の構造等の違いによる噴射状態の調査を表1に示す。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は様々な実施の形態が可能であり、実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
粘着剤配合物の配合を、SEBSエラストマー:クレイトンG1657(クレイトンポリマー社製)を100部、ポリブテンHV−300(新日本石油社製)を1700部、希釈剤:IPソルベント1016(出光興産社製)を1600部配合し溶解させ、各種条件にてスプレー缶に封入し、噴射状態の変化を確認した。

【0018】
【表1】


<噴射状態>
25℃に保った各種試験体を噴射パネルから20cm離して噴射させ、噴射パネルに付着した噴射ミストの幅を測定した。
◎:噴射ミストの幅が8cm以上
○:噴射ミストの幅が5〜8cm
△:噴射ミストの幅が3〜5cm
×:噴射ミストの幅が3cm以下
表1より、比較例1は使用した噴射剤の圧力が低いため、粘着剤を噴出させる力が弱く、噴射ミストが広がらなかった。
比較例2は使用した噴射ボタンの噴射穴が小さかったため、噴射圧力は十分であったが、噴射ミストが広がらない結果となった。
比較例3は噴射剤の配合率が低いため、粘着剤を噴出させる力が弱く、噴射ミストが広がらなかった。
実施例1〜5については、概ね良好な噴射状態を得た。
実施例4は、噴射ミストの幅は8cm以上となったが、噴射ミストに糸引き現象が確認できた。これはDMEの沸点の低さに起因するものである。
【0019】
(実施例6−11)
DME単体にLPGを混合させ、糸引きの改善を行うため、表2の試験を行った。
また、使用する原液、原液と噴射剤の配合比率、バルブ噴射穴の総開口面積、ボタン噴射穴の直径は実施例1と同じものを用いた。また、噴射パターンの評価結果は表1と同じである。
【0020】
【表2】

表2より、DMEの配合率を40%未満にすることにより、良好な噴射状態を有し、かつ噴射時の糸引き現象を発生しないことが確認できた。
【0021】
実施した配合、また配合量の違いによる捕獲性の調査を表3に示す。
本発明で用いる粘着剤は、被塗布物に塗布し使用するものである。被塗布物には金属、プラスチック類、石、瓦礫、紙類、樹木等の材質、また紐状やネット、シート状等のあらゆる形状にも塗布が可能である。
粘着剤配合物を被塗布物へ塗布し、自由に粘着剤膜の厚みを噴射時間によって変えることが出来る。
実施した配合、また配合量の違いによる捕獲性の調査を表3、4に示す。
表3、4で使用したスプレー仕様(噴射剤、原液と噴射剤の配合比率、バルブ噴射穴の総開口面積、ボタン噴射穴の直径)は下記の通りである。
噴射剤:LPG/DME=80%/20%
原液と噴射剤の割合:原液50%/噴射剤50%
バルブ噴射穴の総開口面積:0.40mm
ボタン噴射穴の直径:0.60mm
【0022】
(実施例12)
粘着剤配合物の配合を、SEBSエラストマー:クレイトンG1657(クレイトンポリマー社製)を100部、ポリブテンHV−300(新日本石油社製)を1700部、希釈剤:IPソルベント1016(出光興産社製)を1600部配合し溶解させ、スプレー缶に封入した。その後、東洋紡エステルフィルム(東洋紡績社製)にウェット膜厚200μmでスプレー塗布し、粘着シートとした。
【0023】
(実施例13)
粘着剤配合物の配合を、SEBSエラストマー:クレイトンG1657(クレイトンポリマー社製)を100部、ポリブテンHV−300(新日本石油社製)を1600部、希釈剤:IPソルベント1016(出光興産社製)を1600部配合し溶解させ、さらに、濡れ性向上剤:グリセリンを5部添加し、スプレー缶に充填した。
【0024】
(実施例14)
粘着剤配合物の配合を、SEBSエラストマー:クレイトンG1657(クレイトンポリマー社製)を100部、可塑剤:ポリブテンHV−300(新日本石油社製)を1500部、粘着付与樹脂:水添テルペン樹脂 クリアロンP−105(ヤスハラケミカル社製)を200部、ポリエチレンワックス:ハイワックス200P(三井化学社製)を5部、酸化防止剤:サンダント2246(三新化学工業社製)を2部、さらに、溶剤:IPソルベント1016(出光興産社製)を1600部配合し溶解させ、さらに、濡れ性向上剤:グリセリンを5部添加し、スプレー缶に充填した。
【0025】
(実施例15)
希釈剤:IPソルベント1016を1400部、シクロヘキサン150部とした以外実施例14と同様にして粘着シートを得た。
【0026】
(実施例16)
希釈剤:IPソルベント1016を2000部、ポリブテンHV−300を2000部、水添テルペン樹脂 クリアロンP−105を500部とした以外実施例14と同様にして粘着シートを得た。

【0027】
(実施例17)
グリセリンを0部とした以外実施例16と同様にして粘着シートを得た。
【0028】
(実施例18)
誘引剤:バターフレーバー(高砂香料製)を50部とした以外実施例16と同様にして粘着シートを得た。
【0029】
(比較例4)
ポリブテンHV−300を500部、希釈剤:IPソルベント1016を0部とした代わりに、酢酸エチル3000部とした以外実施例12と同様にして粘着シートを得た。
(比較例5)
グリセリン0部とした以外比較例4と同様にして粘着シートを得た。
(比較例6)
粘着剤配合物の配合を、クレイトンG1657を100部、クリアロンP−105を200部、IPソルベント1016を1000部、さらに酢酸エチル1000部を加えて比較例4と同様にして粘着シートを得た。
(比較例7)
粘着剤配合物の配合を、クレイトンG1657を100部、クリアロンP−105を200部、酢酸エチル1500部を加えて比較例4と同様にして粘着シートを得た。
(比較例8)
粘着剤配合物の配合を、クレイトンG1657を100部、ポリブテンHV−300を1700部、IPソルベント1016を、4800部を加えて比較例4と同様にして粘着シートを得た。
【0030】
<捕獲試験>
25℃に保った空間の床に粘着シートを固定し、対象の害虫が粘着シートに付着後、
動くかどうかを観察。 10匹中9匹以上動かなかったものを◎。10匹中6〜8匹動かなかったものを○。 10匹中3〜5匹動かなかったものを△、10匹中0〜2匹動かなかったものを×とした。
試験は、塗布当日および塗布後30日目に実施。

【0031】
【表3】


表3より実施例12は、粘着剤の固形分量が52.9質量%、ドライ塗布量が105g/mになり、良い捕獲結果となった。
実施例13は実施例12より更にグリセリンを加えたことにより、ショウジョウバエ・イエバエでの当日の捕獲性が上がった。
実施例14〜18は、実施例12より更に粘着付与樹脂、ポリエチレンワックス、紫外線吸収剤、を加えたことにより、当日および30日後の捕獲性が更に良くなった。
【0032】
【表4】



表4より比較例4,5のようにポリブテン量が少ないと粘着剤自体が硬くなる。その為希釈剤を多く入れないとスプレー缶へ充填出来ないので、固形分が落ち、塗布量が上がらない為に捕獲性が落ちる。
比較例6,7のようにポリブテンを添加しないと、さらに粘着剤が固くなり比較例4,5より多くの希釈剤を入れないとスプレー缶へ充填出来ないので、さらに固形分が落ち、塗布量も落ちる。
比較例8は実施例12と比べ希釈材料が多く、ドライ塗布量が上がらない為、捕獲性が落ちた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上の結果より、本発明の粘着剤配合物は、粘着剤の膜厚を自由に変え、目的に応じた害虫を捕獲することができる。また、捕獲できる粘着特性を長期間に亘って維持することが確認された。
従って、本粘着剤配合物を被塗布物へ塗布し、形成した粘着剤膜は一般家庭や、農業従事者、PCO(Pest Control Operator)作業従事者、工場関連等における害虫の捕獲目的、また、害虫の捕獲目的以外に、強力な粘着スプレーの粘着剤膜に触れると嫌がる習性を利用し、シカやイノシシ等の害獣忌避剤としても利用できる。さらには、塗装関連のミストを吸着するなどの用途への展開が期待できる。
【符号の説明】
【0034】
1:ステム
2:ステムガスケット
3:スプリング
4:ハウジング
5:マウンテンカップ
6:カットガスケット
7:ディップチューブ
8:ステムオリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤と噴射剤を、バルブを備えたエアゾール容器に封入し、バルブのバルブステムに装着された噴射ボタンから噴射剤の圧力により粘着剤が噴出するものであって、粘着剤としてスチレン系熱可塑性エラストマー100質量部、ワックス状ポリブテン1000〜2000質量部を含む粘着剤配合物を、希釈剤としてイソパラフィン系炭化水素を加えて分散体とし、粘着剤の固形分量(スチレン系熱可塑性エラストマーとワックス状ポリブテンの合計)が全体の50質量%〜60質量%とした原液と、噴射剤として20℃に於ける圧力が0.3〜0.7MPaとなる液化天然ガス(LPG)及びジメチルエーテル(DME)から選択される一種または二種を使用し、原液/噴射剤比が30/70質量%〜70/30質量%であり、上記バルブの噴射穴の総開口面積が0.15〜0.70mmであることを特徴とする粘着剤スプレー。
【請求項2】
粘着剤配合物として、さらに、粘着剤濡れ性向上剤としてグリセリンを、1〜10質量部を含み、かつ、液化天然ガス(LPG)/ジメチルエーテル(DME)混合比が、100/0質量%〜60/40質量%であることを特徴とする請求項1に記載した粘着剤スプレー。
【請求項3】
粘着剤配合物が、さらに粘着付与樹脂1〜500質量部、紫外線吸収剤0.1〜5質量部、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックス0.1〜10質量部から選ばれる1種以上を含み、希釈剤が、さらにシクロヘキサン若しくはイソヘキサンを含む請求項1又は請求項2に記載した粘着剤スプレー。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載された粘着剤スプレーを捕虫用として用いる捕虫用スプレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14666(P2013−14666A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147510(P2011−147510)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(591189258)カモ井加工紙株式会社 (16)
【出願人】(000251277)スズカファイン株式会社 (7)
【Fターム(参考)】