説明

粘着剤層付き透明導電性フィルムとその製造方法、透明導電性積層体およびタッチパネル

【課題】タッチパネル等に適用した場合に、粘着剤層にかかわる視認性の問題を低減することができる粘着剤層付き透明導電性フィルムとその製造方法、透明導電性積層体およびタッチパネルを提供する。
【解決手段】第一の透明プラスチックフィルム基材(1)の一方の面に透明導電性薄膜(2)を有し、第一の透明プラスチックフィルム基材(1)の他方の面に粘着剤層(3)を有する、粘着剤層付き透明導電性フィルムであって、前記粘着剤層付き透明導電性フィルムに用いられる粘着剤層(3)の第一の透明プラスチックフィルム基材(1)に貼り合わされる側の表面(3a)の表面粗さ(Ra)が、2〜130nmであることを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層付き透明導電性フィルムに関する。当該粘着剤層付き透明導電性フィルムは、適宜加工処理がなされた後に、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの新しいディスプレイ方式やタッチパネルなどにおける透明電極に用いられる。その他、粘着剤層付き透明導電性フィルムは、透明物品の帯電防止や電磁波遮断、液晶調光ガラス、透明ヒーターなどに用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性薄膜としては、ガラス上に酸化インジウム薄膜を形成した、いわゆる導電性ガラスがよく知られているが、導電性ガラスは基材がガラスであるために可撓性、加工性に劣り、用途によっては使用できない場合がある。そのため、近年では可撓性、加工性に加えて、耐衝撃性に優れ、軽量であることなどの利点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムをはじめとする各種のプラスチックフィルムを基材とした透明導電性フィルムが使用されている。
【0003】
前記透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材の一方の面に透明導電性薄膜を設け、かつ、透明プラスチックフィルム基材の他方の面に粘着剤層を有する粘着剤層付き透明導電性フィルムの粘着剤層を介して透明基体を貼りあわせた透明導電性積層体として用いられている(特許文献1)。
【0004】
前記透明導電性フィルムに適用する粘着剤層には、主にアクリル系粘着剤が用いられている。アクリル系粘着剤を用いて貼り合わされた透明導電性フィルムは、高い透光性を有していることから、透明導電性フィルムが使用された表示装置を斜め方向から視認した場合には、アクリル系粘着剤に起因する格子状のムラやスジ状のムラ、いわゆる塗工ムラが浮き出る問題があり、これが視認性に大きな影響を及ぼす場合がある。
【0005】
粘着剤層については、塗工厚み、表面粗さを制御することが提案されている。例えば、離型面の表面粗さを小さく制御した離型基材に粘着剤層を形成し、当該粘着剤層を保護フィルムに転写することによって、保護フィルム上に表面粗さを小さく制御した粘着剤層を形成することが提案されている(特許文献2)。しかし、前記特許文献によっても、粘着剤層のムラによる視認性の問題を改善できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6‐309990号公報
【特許文献2】特開2005‐306996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粘着剤層付き透明導電性フィルムをタッチパネル等に適用した場合に、粘着剤層にかかわる視認性の問題を低減することができる粘着剤層付き透明導電性フィルムとその製造方法、及び透明導電性積層体を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、前記粘着剤層付き透明導電性フィルムまたは透明導電性積層体を用いた、タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の粘着剤層付き透明導電性フィルム等により前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、第一の透明プラスチックフィルム基材の一方の面に透明導電性薄膜を有し、前記第一の透明プラスチックフィルム基材の他方の面に粘着剤層を有する、粘着剤層付き透明導電性フィルムであって、
前記粘着剤層付き透明導電性フィルムに用いられる前記粘着剤層の前記第一の透明プラスチックフィルム基材に貼り合わされる側の表面の表面粗さ(Ra)が、2〜130nmであることを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルム、に関する。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムにおける粘着剤層に、第二の透明プラスチックフィルム基材が貼り合わされていることを特徴とする透明導電性積層体、に関する。
【0012】
また、本発明は、上記本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルム又は上記本発明の透明導電性積層体が少なくとも1枚使用されていることを特徴とするタッチパネル、に関する。
【0013】
また、本発明は、上記本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法であって、
離型シート上に粘着剤塗工液を塗工する工程と、
前記粘着剤塗工液に、温度30〜80℃、風速0.5〜15m/秒の第1乾燥工程、および、温度90〜160℃、風速0.1〜25m/秒の第2乾燥工程を施すことにより粘着剤層を形成する工程とを有することを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは透明導電性フィルム上の粘着剤層の表面粗さ(Ra)、特に長尺方向に対して垂直方向(直交方向)の表面粗さ(Ra)が視認性に大きく影響していることを見出した。本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、粘着剤層の表面粗さ(Ra)が、2〜130nmに制御されており、粘着剤層は塗工ムラなく形成されている。よって、粘着剤層の塗工ムラによる視認性の低下が抑えられ、表示装置の視認性、特に、斜め方向における視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の透明導電性積層体の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の透明導電性積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムを説明する。図1は、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。図1の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、第一の透明プラスチックフィルム基材1の一方の面に透明導電性薄膜2を有し、第一の透明プラスチックフィルム基材1の他方の面には粘着剤層3を介して、離型シート4が設けられている。前記粘着剤層付き透明導電性フィルムに用いられる粘着剤層3の第一の透明プラスチックフィルム基材1に貼り合わされる側の表面3aの表面粗さ(Ra)は、2〜130nmである。図2は、図1の粘着剤層付き透明導電性フィルムにおいて、第一の透明プラスチックフィルム基材1の一方の面に、アンダーコート層5を介して透明導電性薄膜2が設けられている場合である。なお、図2ではアンダーコート層5が1層記載されているが、アンダーコート層5は複数層設けることができる。前記透明導電性薄膜2が形成されたフィルム基材1の他方の面には、粘着剤層3を介して離型シート4が設けられている。
【0017】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムにおいて、粘着剤層表面3aの表面粗さ(Ra)は、2〜130nmである。前記表面粗さ(Ra)は、10〜120nmであるのが好ましく、さらには20〜110nmであるのが好ましい。前記表面粗さ(Ra)が130nmを超える場合には、粘着剤層のムラが顕著になり、視認性に悪影響を及ぼす。一方、前記表面粗さ(Ra)が2nm未満の場合には、生産性に著しい悪影響を及ぼす。
【0018】
前記第一の透明プラスチックフィルム基材1としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。当該プラスチックフィルムは1層のフィルムにより形成されている。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂およびポリアリレート系樹脂である。
【0019】
前記フィルム基材1の厚みは、通常、10〜200μmであり、20〜180μmであることが好ましく、30〜150μmであることがより好ましい。フィルム基材1の厚みが10μm未満であると、フィルム基材1の機械的強度が不足し、破断が起こり易くなる。一方、厚みが200μmを超えると、透明導電性薄膜2の製膜加工において投入量を低減させ、またガスや水分の除去工程に弊害を生じ、生産性を損なうおそれがある。
【0020】
前記フィルム基材1には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電性薄膜2またはアンダーコート層5の前記フィルム基材1に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電性薄膜2またはアンダーコート層5を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0021】
前記透明導電性薄膜2の構成材料としては、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどの金属酸化物が好ましい。
【0022】
透明導電性薄膜2の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を1×103Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さ10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。厚さが10nm未満であると表面電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、35nmを超えると透明性の低下を引き起こす。
【0023】
透明導電性薄膜2の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0024】
アンダーコート層5は、無機物、有機物または無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は光の屈折率である〕があげられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。上記の他、酸化インジウムに対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化スズを0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0025】
アンダーコート層を無機物により形成する場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスとして、またはウェット法(塗工法)などにより形成できる。アンダーコート層を形成する無機物としては、前述の通り、SiOが好ましい。ウェット法では、シリカゾル等を塗工することによりSiO2膜を形成することができる。
【0026】
また有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などがあげられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0027】
アンダーコート層5を複数層形成する場合、フィルム基材1から第一層目のアンダーコート層は、有機物により形成されており、フィルム基材1から最も離れたアンダーコート層は、無機物により形成されていることが、得られる粘着剤層付き透明導電性フィルムの加工性の点で好ましい。従って、アンダーコート層5が二層の場合には、フィルム基材1から第一層目のアンダーコート層は有機物、第二層目は無機物により形成されていることが好ましい。
【0028】
アンダーコート層5の厚さは、特に制限されるものではないが、光学設計、前記フィルム基材1からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。なお、アンダーコート層5を2層以上設ける場合、各層の厚さは、5〜250nm程度であり、好ましくは10〜250nmである。
【0029】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムでは、粘着剤層3の粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0030】
アクリル系粘着剤は、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとする。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は1〜14程度であり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、等を例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。これらの中でもアルキル基の炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
前記アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の各種モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素含有モノマー(複素環含有モノマーを含む)、芳香族含有モノマー等があげられる。
【0032】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などがあげられる。これらのなかでもアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0033】
水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどがあげられる。
【0034】
また、窒素含有モノマーとしては、例えば、マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド;N−アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなども改質目的のモノマー例としてあげられる。
【0035】
芳香族含有モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0036】
上記モノマーの他に、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
【0037】
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
【0038】
これらの中でも、架橋剤との反応性が良好である点から、水酸基含有モノマーが好適に用いられる。また、接着性、接着耐久性の点から、アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。
【0039】
アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、重量比率において、50重量%以下である。好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%である。
【0040】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万〜250万程度であるのが好ましい。前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。
【0041】
本発明の粘着剤層を形成する粘着剤は、ベースポリマーに加えて架橋剤を含有することができる。架橋剤により、透明導電性フィルムとの密着性や耐久性を向上でき、また高温での信頼性や粘着剤自体の形状の保持を図ることができる。ベースポリマーがアクリル系ポリマーの場合、架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、過酸化物系、金属キレート系、オキサゾリン系などを適宜に使用可能である。これら架橋剤は1種を、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート化合物が用いられる。イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したアダクト系イソシアネート化合物;イソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどが挙げられる。
【0043】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂があげられる。また、エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N´,N´−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N´,N´−テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、及びN,N−ジグリシジルアニリンなどが挙げられる。
【0044】
過酸化物系架橋剤としては、各種過酸化物が用いられる。過酸化物としては、ジ(2‐エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ‐sec‐ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t‐へキシルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ‐n‐オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシ2‐エチルヘキサノエート、ジ(4‐メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、などが挙げられる。これらのなかでも、特に架橋反応効率に優れる、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシドが好ましく用いられる。
【0045】
架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.02〜3重量部である。架橋剤の使用割合が、10重量部を超えると架橋が進みすぎて接着性が低下するおそれがある点で好ましくない。
【0046】
さらには、前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。
【0047】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、離型シート上に粘着剤塗工液を塗工する工程および前記粘着剤塗工液から粘着剤層を形成する工程を施すことにより得ることができる。
【0048】
前記塗工工程を施すにあたり、粘着剤塗工液が調製される。粘着剤塗工液は、溶液または分散液のいずれでもよい。溶液の場合、溶剤としては、例えば、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤が用いられる。粘着剤塗工液の濃度は、通常、2〜80重量%程度、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは7〜50重量%に調整したものを用いる。
【0049】
離型シート上への、粘着剤塗工液の塗工方法は、特に制限されず、例えば、クローズドエッジダイ、スロットダイ等のダイコーティング法;リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。
【0050】
前記粘着剤塗工液の塗工工程にあたり、形成される粘着剤層の乾燥厚さは適宜に調整することができるが、通常、1〜40μm程度であり、3〜35μmが好ましく、さらには5〜30μmが好ましい。
【0051】
粘着剤層の厚さが薄くなりすぎると、ペン打痕が付き易くなりタッチパネル用の粘着剤層として好ましくない。その一方、厚くしすぎると、透明性を損なったり、粘着剤層の形成や各種被着体への貼り合わせ作業性、更にコストの面でも不利になる。
【0052】
次いで、離型シート上に塗工された前記粘着剤塗工液を乾燥して、表面粗さ(Ra)が、2〜130nmの粘着剤層を形成する。前記粘着剤層の形成は、例えば、温度30〜80℃、風速0.5〜15m/秒の第1乾燥工程を施した後に、温度90〜160℃、風速0.1〜25m/秒の第2乾燥工程を施すことにより行うことができる。
【0053】
第1乾燥工程により、粘着剤塗工液の溶剤を蒸発させるとともに、表面粗さ(Ra)が、2〜130nmの粘着剤層表面を形成する。次いで、第2乾燥工程により、前記表面粗さ(Ra)が2〜130nmの粘着剤層を硬化(固化)して粘着剤層を形成する。
【0054】
第1乾燥工程の温度は30〜80℃であり、35〜70℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。前記温度が30℃未満では、溶剤の乾燥に時間がかかり過ぎ生産性の点で好ましくない。一方、温度が80℃を超えると乾燥が進みすぎて、粘着剤層表面を前記表面粗さ(Ra)に制御することができなくなる。また、風速は、0.5〜15m/秒であり、0.5〜10m/秒が好ましく、1〜5m/秒がより好ましい。前記風速が0.5m/秒より小さい場合は、溶剤の乾燥に時間がかかり過ぎ生産性の点で好ましくない。一方、風速15m/秒より大きいと乾燥が進みすぎて、粘着剤層表面を前記表面粗さ(Ra)に制御することができなくなる。第1乾燥工程における処理時間は、10秒〜30分間程度であり、好ましくは30秒〜20分間、より好ましくは45秒〜10分間である。なお、第1乾燥工程における処理時間は、温度、風速との関係を考慮して、粘着剤層表面が前記表面粗さ(Ra)になるように制御される。
【0055】
第2乾燥工程の温度は90〜160℃であり、130〜160℃が好ましく、135〜155℃がより好ましい。前記温度が90℃未満では溶剤の乾燥に時間がかかり過ぎ生産性の点で好ましくない。一方、温度が160℃を超えると粘着剤に色味が着き好ましくない。また、風速は、0.1〜25m/秒であり、1〜23m/秒が好ましく、5〜20m/秒がより好ましい。前記風速が0.1m/秒より小さい場合は、溶剤の乾燥に時間がかかり過ぎ生産性の点で好ましくない。一方、風速が25m/秒より大きいとフィルムの走行性に悪影響を及ぼし好ましくない。第2乾燥工程における処理時間は、10秒〜20分間程度であり、好ましくは20秒〜10分間、より好ましくは30秒〜3分間である。なお、第2乾燥工程における処理時間は、温度、風速との関係を考慮して、粘着剤層を硬化(固化)するように制御される。
【0056】
前記第1乾燥工程、第2乾燥工程において、温度を前記範囲に制御する手段としては、例えば、オーブン、温風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等を用いることができる。また、前記第1乾燥工程、第2乾燥工程において、風速を前記範囲に制御する送風手段としては、カウンターフロー式により施すことができる。前記送風手段との距離は10〜100cm程度、好ましくは10〜50cmである。前記風速は、ミニベーン型デジタル風速計により測定することができる。風速測定は、送風ノズルの下、離型シート上に塗工されている粘着剤塗工液の上3cmの位置の風速を、風速計を用いて測定する。風速計は、日本カノマックス(株)製の風速計MODEL1560/SYSTEM 6243を用いる。
【0057】
前記第一の透明プラスチックフィルム基材1の片面に形成された粘着剤層3は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が20000〜500000Paであることが好ましく、70000〜200000Paであることがより好ましい。前記貯蔵弾性率(G’)が20000Paより小さすぎると、ペン打痕が付き易くなりタッチパネル用の粘着剤層として好ましくない。一方、前記貯蔵弾性率(G’)が500000Paより大きくなりすぎると、接着性に劣るため好ましくない。
【0058】
また、本発明における貯蔵弾性率(G’)とは、動的機械特性のひとつでJIS−K−7244−1プラスチック一動的機械特性の試験方法−第1部:通則に記述があり、本発明のG’はこのJIS−K7244−1表4のパート2でねじり変形モードによって得られる値のことをいう。
【0059】
応力を単位容積あたりのエネルギー量と考えると、外部からポリマー試験片に機械的エネルギーを与えて正弦運動をさせた時、与えたエネルギーの一部は弾性によりポリマー内に貯蔵され、残りは内部摩擦により熱に変わって失われる。この際、試験中の発熱による温度上昇は非常に小さいので温度一定として近似する。ここで、貯蔵弾性率G’の場合は貯蔵された部分に相当し、損失弾性率G’’は内部摩擦により失われた部分に相当する。したがって、G’は硬さの程度を示し、G’’は粘性の程度を表すと考えられる。
【0060】
粘着剤の場合、G’は粘着剤層が外部から受ける力に対する応力の程度を示すことになり、G’が大きければ、発生する応力が大きくなり、ガラスの反りも大きくなる。逆に小さければ、軟らかすぎて加工性、作業性に劣る。
【0061】
また前記粘着剤層は、ゲル分率が70〜98重量%であることが好ましく、85〜98重量%であるのがより好ましく、88〜95重量%であるのがさらに好ましい。前記ゲル分率が小さすぎると、ペン打痕が付き易くなりタッチパネル用の粘着剤層として好ましくない。一方、前記ゲル分率が大きくなりすぎると、接着性に劣るため好ましくない。
【0062】
なお、図1、2には示していないが、フィルム基材1と粘着剤層3の間にオリゴマー移行防止層を設けることが好ましい。なお、当該移行防止層の形成材料としては透明な膜を形成しうる適宜なものを用い、無機物、有機物またはそれらの複合材料であってもよい。その膜厚は0.01〜20μmであることが好ましい。また、当該移行防止層の形成にはコーターを用いた塗布法やスプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられることが多いが真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法といった手法が用いられていてもよい。コーティング法においては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、UV硬化型樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂成分やこれらとアルミナ、シリカ、マイカ等の無機粒子との混合物を使用してもよい。または、2層以上の共押出しにより基材成分に移行防止層の機能を持たせた基板を形成しても良い。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法といった手法においては、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルトもしくはスズやこれらの合金等からなる金属、または酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウムもしくはこれらの混合物からなる金属酸化物、ヨウ化鋼等からなる他の金属化合物を用いることができる。
【0063】
また、粘着剤層3は、アンカー層により投錨力を向上させることが可能である。アンカー層は、通常、フィルム基材1の側に設けられる。
【0064】
前記アンカー層の材料としては、粘着剤の投錨力を向上できる材料であれば特に制限はない。具体的には、例えば、同一分子内にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等の反応性官能基と加水分解性のアルコキシシリル基とを有するシラン系カップリング剤、同一分子内にチタンを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するチタネート系カップリング剤、同一分子内にアルミニウムを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するアルミネート系カップリング剤等のいわゆるカップリング剤、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エステルウレタン系樹脂等の有機反応性基を有する樹脂を用いることができる。工業的に取扱い易いという観点からは、シラン系カップリング剤を含有する層が特に好ましい。
【0065】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法は、前記構成のものが得られる方法であれば特に制限はない。通常は、前記粘着剤層3は、第一の透明プラスチックフィルム基材1の一方の面に透明導電性薄膜2(アンダーコート層5を含む場合あり)を形成して透明導電性フィルムを製造した後、当該透明導電性フィルムの他方の面に形成される。粘着剤層3は前述の通りフィルム基材1に直接形成してもよく、離型シート4に粘着剤層3を設けておき、これを前記フィルム基材1に貼り合わせてもよい。後者の方法では、粘着剤層3の形成を、ロール状のフィルム基材1上に連続的に行なうことができるので、生産性の面で一層有利である。
【0066】
また、図3に示す第二の透明プラスチックフィルム基材1´の貼り合わせは、第二の透明プラスチックフィルム基材1´の方に粘着剤層3を設けておき、これにフィルム基材1を貼り合わせるようにしてもよいし、逆にフィルム基材1の方に上記の粘着剤層3を設けておき、これに第二の透明プラスチックフィルム基材1´を貼り合わせてもよい。後者の方法では、粘着剤層3の形成を、ロール状のフィルム基材1上に連続的に行うことができ、生産性の面でより有利である。
【0067】
図3に示すように、第二の透明プラスチックフィルム基材1´は、単層構造にすることができるほか、2枚以上の第二の透明プラスチックフィルム基材1´を透明な粘着剤層により貼り合わせた複合構造として、積層体全体の機械的強度などをより向上させることができる。なお、図3では、図1に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムの離型シート4の代わりに第二の透明プラスチックフィルム基材1´が貼り合わされた構成となっているが、図2に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムの離型シート4の代わりに同様に第二の透明プラスチックフィルム基材1´を貼り合せた透明導電性積層体とすることもできる。
【0068】
前記第二の透明プラスチックフィルム基材1´として単層構造を採用する場合について説明する。単層構造の第二の透明プラスチックフィルム基材1´を貼り合わせたのちでも透明導電性積層体が可撓性であることが要求される場合は、第二の透明プラスチックフィルム基材1´としては、通常、厚さ6〜300μm程度のプラスチックフィルムが用いられる。可撓性が特に要求されない場合は、第二の透明プラスチックフィルム基材1´は、通常、厚さ0.05〜10mm程度のガラス板やフィルム状ないし板状のプラスチックが用いられる。プラスチックの材質としては、前記フィルム基材1と同様のものが挙げられる。前記第二の透明プラスチックフィルム基材1´として複数構造を採用する場合にも、前記同様の厚さとするのが好ましい。
【0069】
前記透明導電性積層体において第二の透明プラスチックフィルム基材1´の片面または両面にハードコート層を設けることができる。図4では、第二の透明プラスチックフィルム基材1´の片面(粘着剤層3に貼り合せない面)にハードコート層6が設けられている。前記ハードコート層6は、第二の透明プラスチックフィルム基材1´にハードコート処理を施すことにより得られる。ハードコート処理は、例えばアクリル・ウレタン系樹脂やシロキサン系樹脂などの硬質樹脂を塗布して硬化処理する方法などにより行うことができる。ハードコート処理に際しては、前記アクリル・ウレタン系樹脂やシロキサン系樹脂などの硬質樹脂にシリコーン樹脂等を配合して表面を粗面化して、タッチパネル等として実用した際に鏡作用による写り込みを防止しうるノングレア面を同時に形成することもできる。
【0070】
ハードコート層の厚さは、これが薄いと硬度不足となり、一方厚すぎるとクラックが発生する場合がある。また、カールの防止特性等も考慮すれば、好ましいハードコート層の厚さは0.1〜30μm程度である。
【0071】
なお、必要により、上記した第二の透明プラスチックフィルム基材1´の外表面(粘着剤層3に貼り合せない面)には、前記ハードコート層6の他に、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けるようにしてもよい。
【0072】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムまたは透明導電性積層体は、タッチパネルや液晶ディスプレイなどの種々の装置の形成などにおいて用いられる。特に、タッチパネル用電極板として好ましく用いることができる。
【0073】
タッチパネルは、透明導電性薄膜を有するタッチ側のタッチパネル用電極板と透明導電性薄膜を有するディスプレイ側のタッチパネル用電極板を、透明導電性薄膜同士が対向するようにスペーサを介して対向配置してなり、本発明の透明導電性フィルムからなるタッチパネル用電極板は、タッチ側、ディスプレイ側のいずれのタッチパネル用電極板にも用いることができる。特に、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムまたは透明導電性積層体を用いたタッチパネル用電極板は、粘着剤由来のムラが大きく低減されており、表示特性を満足させることから好ましい。
【実施例】
【0074】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部、%はいずれも重量基準である。
【0075】
製造例1
<アクリル系粘着剤の調製>
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート96.5部、アクリル酸3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5部、2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル0.15部および酢酸エチル100部を投入し、十分に窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら、60℃で8時間反応して、重量平均分子量165万のアクリル系ポリマー溶液を得た。上記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,コロネートL)0.5部を配合し、粘着剤塗工液(固形分12%)を調製した。
【0076】
製造例2
<アクリル系粘着剤の調製>
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99.5部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.5部、2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル0.15部および酢酸エチル100部を投入し、十分に窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら、60℃で8時間反応して、重量平均分子量165万のアクリル系ポリマー溶液を得た。上記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,コロネートL)0.1部、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学(株)製、テトラッドC)0.05部配合し、粘着剤塗工液(固形分11.5%)を調製した。
【0077】
製造例3
<アクリル系粘着剤の調製>
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、アクリル酸4部、アクリロイルモルホリン5部、4−ヒドロキシエチルアクリレート1部、2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル0.15部および酢酸エチル100部を投入し、十分に窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら、60℃で8時間反応して、重量平均分子量165万のアクリル系ポリマー溶液を得た。上記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,コロネートL)0.3部配合し、粘着剤塗工液(固形分11.5%)を調製した。
【0078】
実施例1
離型処理を施したポリエステルフィルム(離型シートA,三菱化学ポリエステル社製、商品名ダイヤホイルMRF#38,厚さ38μm)の離型処理面(表面粗さ21nm)上に、製造例1で得られた粘着剤塗工液を、乾燥厚さが22μmになるように、ダイコーターにより塗工した後、80℃のオーブン中にて、風速15m/秒の風を1分間送ることにより第1乾燥工程を施した。次いで、温度150℃、風速15m/秒の風を2分間送ることにより第2乾燥工程を施して、離型シートA上に粘着剤層を形成した。
【0079】
上記で得られた粘着剤層の表面粗さ(Ra)について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
<表面粗さ(Ra)>
得られた離型シートA付きの粘着剤層に、別の離型シートB(離型処理を施したポリエステルフィルム,三菱化学ポリエステル社製、商品名ダイヤホイルMRF#38,厚さ38μm)を貼り合わせた。その後、元から貼られていた離型シートAを剥離し、ガラス(マツナミガラス社製,MICRO SLIDE GLASS)に貼り付けたものをサンプルとした。当該サンプルについて、後で貼り合わせた離型シートBが上になるように置き、更に、この離型シートBを粘着剤層から剥がして、当該粘着剤層の表面粗さ(Ra)を測定した。測定に際しては、WYKO NT3300(非接触三次元粗さ測定装置,日本ビーコ社製)を用い、20mm×20mmの範囲で観察し、粘着剤層の塗工方向と垂直な方向に5mmおきに3点の表面粗さ(Ra)を測定した。表1には、測定された表面粗さ(Ra)の平均値を示す。なお、表面粗さ(Ra)は、JIS B0601に準拠して測定される値とした。
【0081】
(アンダーコート層の形成)
フィルム基材として、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)の一方の面に、移行防止層(ウレタンアクリル系紫外線硬化性樹脂により形成,厚さ1μm)を設けてなるものを用いた。当該フィルム基材の他方の面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物の重量比2:2:1の熱硬化型樹脂により、厚さが180nmの第一層目のアンダーコート層を形成した。次いで、第一層目のアンダーコート層上に、SiOを、電子ビーム加熱法により1.33×10-2〜2.67×10-2Paの真空度で真空蒸着して、厚さ40nmの第二層目のアンダーコート層(SiO膜)を形成した。
【0082】
(透明導電性薄膜の形成)
次に、第二層目のアンダーコート層上に、アルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる5.33×10-2Paの雰囲気中で、酸化インジウム95重量%、酸化スズ5重量%を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ20nmのITO膜を形成して、透明導電性フィルムを得た。得られたITO膜は、アモルファスであった。
【0083】
(粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製)
上記離型シートA上に設けた粘着剤層に、上記透明導電性フィルム(ITO膜を形成していない側の面)を貼り合せて、粘着剤層付き透明導電性フィルムを作製した。ITO膜の表面抵抗値は、300Ω/□であった。ITO膜の表面抵抗値(Ω/□)は、三菱化学(株)製のローレスター抵抗測定器を用いて測定した。
【0084】
実施例2〜7、比較例1〜3
実施例1において、粘着剤塗工液の種類、第1乾燥工程の条件、第2乾燥工程の条件を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤層付き透明導電性フィルムを得た。
【0085】
上記粘着剤層付き透明導電性フィルムの視認性について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
<視認性>
得られた粘着剤層付き透明導電性フィルムから離型シートを剥離した後、ガラス基板に貼り合わせ、目視で、下記基準により、正面および斜め45°の2方向から視認性の観察を行った。
◎:視認性に問題なし。
○:多少のムラは確認できるが問題ないレベル。
×:視認性に問題あり。
【0087】
【表1】

【符号の説明】
【0088】
1 第一の透明プラスチックフィルム基材
1´第二の透明プラスチックフィルム基材
2 透明導電性薄膜
3 粘着剤層
4 離型シート
5 アンダーコート層
6 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の透明プラスチックフィルム基材の一方の面に透明導電性薄膜を有し、前記第一の透明プラスチックフィルム基材の他方の面に粘着剤層を有する、粘着剤層付き透明導電性フィルムであって、
前記粘着剤層付き透明導電性フィルムに用いられる前記粘着剤層の前記第一の透明プラスチックフィルム基材に貼り合わされる側の表面の表面粗さ(Ra)が、2〜130nmであることを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記透明導電性薄膜と前記第一の透明プラスチックフィルム基材との間に介在する、少なくとも1層のアンダーコート層を更に含む請求項1に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層における前記第一の透明プラスチックフィルム基材とは反対側の表面に貼り合わされた離型シートを更に含む請求項1又は2に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムにおける粘着剤層に、第二の透明プラスチックフィルム基材が貼り合わされていることを特徴とする透明導電性積層体。
【請求項5】
前記第二の透明プラスチックフィルム基材の片面又は両面に設けられたハードコート層を更に含む請求項4に記載の透明導電性積層体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムが少なくとも1枚使用されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の透明導電性積層体が少なくとも1枚使用されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項8】
請求項3に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法であって、
離型シート上に粘着剤塗工液を塗工する工程と、
前記粘着剤塗工液に、温度30〜80℃、風速0.5〜15m/秒の第1乾燥工程、および、温度90〜160℃、風速0.1〜25m/秒の第2乾燥工程を施すことにより粘着剤層を形成する工程とを有することを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−18929(P2012−18929A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159142(P2011−159142)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【分割の表示】特願2008−313441(P2008−313441)の分割
【原出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】