説明

精密な記録のためのシステム及び方法

【課題】トラッキング用基準層を設けたマイクロホログラフィックディスクの記録深さを計算する方法を提供する。
【解決手段】第1の波長を有する放射トラッキングビームがディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第1の外部電圧を印加するステップであって、基準層は部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む第1の外部電圧を印加するステップと、放射記録ビームが基準層上で収束するように、対物レンズと結合された前記1つ以上のアクチュエータに第2の外部電圧を印加するステップであって、記録ビームは、トラッキングビームの前記第1の波長と異なる第2の波長を有する、第2の外部電圧を印加するステップと、第1の外部電圧と第2の外部電圧との差を演算するステップと、前記差に基づいて電圧−距離較正曲線を用いてレンズシフト距離を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術は、主に、ビット単位のホログラフィックデータ記憶技術に関する。具体的に、本技術は、ホログラフィックディスクにおける並列複製の方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの能力が進歩したことで、コンピュータ技術は、民生用ビデオ、データアーカイブ、文書保管、イメージング、映画制作等をはじめとする、新しい応用領域に入ってきた。これらの応用が、データ記憶技術の発達への絶え間ない推進力となり、記憶容量及びデータレートの増加をもたらしている。
【0003】
データ記憶技術の発達の一例が、光記憶システムにおける記憶容量の漸進的増加であろう。例えば、1980年代初期に開発されたコンパクトディスクの容量は、データであれば650〜700MB前後であり、2チャネルオーディオプログラムであれば74〜80分前後である。これに対し、1990年代初期に開発されたデジタル多用途ディスク(DVD)フォーマットの容量は、4.7GB前後(単層)又は8.5GB前後(二重層)である。更に、より高解像度のビデオフォーマットの要求のような、増大し続ける要求を満たすために、更なる大容量記憶技術が開発されている。例えば、Blu−ray Disc(商標)フォーマットのような大容量記録フォーマットは、単層ディスクに約25GB、二重層ディスクに約50GBを保持することが可能である。コンピューティング技術が発達し続けるにつれて、更なる大容量の記憶媒体が必要とされるであろう。例えば、記憶装置産業において容量増加の要求に応え得る他の記憶技術の開発例として、ホログラフィック記憶システム及びマイクロホログラフィック記憶システムがある。
【0004】
ホログラフィック記憶装置は、ホログラム形式のデータの記憶装置であり、ホログラムは、感光性記憶媒体において2つの光ビームの交差によって形成される3次元干渉パターンの画像である。ページベースのホログラフィック技術及びビット単位のホログラフィック技術の両方が追究されてきた。ページベースのホログラフィックデータ記憶装置では、記憶媒体の体積内で、デジタルエンコードされたデータ(例えば、複数のビット)を収容する信号ビームを基準ビームに重ねることによって化学反応が引き起こされ、これによって、その体積内の媒体の屈折率が変調される。したがって、各ビットは、概ね、干渉パターンの一部として記憶される。ビット単位のホログラフィ又はマイクロホログラフィックデータ記憶装置では、各ビットが、典型的には2つの逆伝搬収束記録ビームによって生成されるマイクロホログラム(ブラッグ反射グレーティング)として書き込まれる。このデータは、読み出しビームをマイクロホログラムに反射させて記録ビームを再構築することにより、取り出される。
【0005】
ビット単位のホログラフィックシステムは、より間隔の狭い層収束マイクロホログラムの記録を可能にして、従来の光システムより格段に大きな記憶容量を提供することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7453787号明細書
【発明の概要】
【0007】
しかし、現時点では、ホログラフィックディスクの精密な所望の深さ/層にホログラムを記録する、正確な技術が存在しない。そこで、そのような記録技術が必要である。
【0008】
本発明の一実施形態によると、ホログラフィックディスクの記録深さを計算する方法を提供する。本方法は、第1の波長を有する放射トラッキングビームがディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第1の外部電圧を印加するステップであって、この基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含むステップを含む。本方法は更に、放射記録ビームがディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第2の外部電圧を印加するステップであって、この記録ビームは、トラッキングビームの第1の波長と異なる第2の波長を有するステップを含む。本方法は更に、第1の外部電圧と第2の外部電圧との差を演算するステップを含む。本方法は更に、この差に基づいて、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算するステップであって、このレンズシフト距離は、放射トラッキングビーム及び放射記録ビームがそれぞれ基準層上で収束するような、対物レンズの距離のシフトを意味するステップを含む。本方法は更に、レンズシフト距離に基づいて記録深さを計算するステップを含む。
【0009】
本発明の別の実施形態によると、ホログラフィックディスクの記録深さを計算するシステムを提供する。本システムは、放射トラッキングビームを放射するように構成されたトラッキングレーザ源を含む。本システムは更に、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータであって、この対物レンズは、第1の外部電圧がアクチュエータに印加されると、第1の波長を有する放射トラッキングビームをディスクの基準層上で収束させるように構成され、この基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む、1つ以上のアクチュエータを含む。本システムは更に、第2の外部電圧が前記アクチュエータに印加されることによってディスクの基準層上で収束する放射記録ビームを放射するように構成された記録レーザ源であって、この放射記録ビームは、放射トラッキングビームの第1の波長と異なる第2の波長を有する、記録レーザ源を含む。本システムは更に、第1の外部電圧と第2の外部電圧との差を演算するように構成された処理サブシステムを含む。処理サブシステムは更に、この差に基づいて、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算する。このレンズシフト距離は、放射トラッキングビーム及び放射記録ビームがそれぞれ基準層上で収束するような、対物レンズの距離のシフトを意味する。処理サブシステムは更に、このレンズシフト距離に基づいて、記録深さを計算する。
【0010】
本発明の別の実施形態によると、ホログラフィックディスクにデータを正確に記録するための制御システムを提供する。本制御システムは、放射トラッキングビームを放射するトラッキングレーザ源を含む。本制御システムは更に、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータであって、この対物レンズは、第1の外部電圧がアクチュエータに印加されると、放射トラッキングビームをディスクの基準層上で収束させ、この基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む、1つ以上のアクチュエータを含む。本制御システムは更に、第2の外部電圧がアクチュエータに印加されることによってディスクの基準層上で収束する放射記録ビームを放射するように構成された記録レーザ源であって、この放射記録ビームは、放射トラッキングビームの第1の波長と異なる第2の波長を有する、記録レーザ源を含む。本制御システムは更に、第1の外部電圧と第2の外部電圧との差を演算する処理サブシステムを含む。処理サブシステムは更に、この差に基づいて、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算する。このレンズシフト距離は、放射トラッキングビーム及び放射記録ビームがそれぞれ基準層上で収束するような、対物レンズの距離のシフトを含む。処理サブシステムは更に、このレンズシフト距離に基づいて、記録深さを計算する。処理サブシステムは更に、現在の記録深さを、所定の記録深さと比較する。処理サブシステムは更に、現在の記録深さが所定の深さと等しくなるように、トラッキングビーム又は記録ビームのいずれかと光学的に結合された記録深さ調節光学サブシステムにおいて、複数の光学素子を調節する。
【0011】
本発明の別の実施形態によると、ホログラフィックディスクの記録深さを制御する方法を提供する。本方法は、第1の波長を有する放射トラッキングビームがディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第1の外部電圧を印加するステップであって、この基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含むステップを含む。本方法は更に、放射記録ビームがディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第2の外部電圧を印加するステップであって、この記録ビームは、トラッキングビームの第1の波長と異なる第2の波長を有するステップを含む。本方法は更に、第1の外部電圧と第2の外部電圧との差を演算するステップを含む。本方法は更に、この差に基づいて、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算するステップであって、このレンズシフト距離は、放射トラッキングビーム及び放射記録ビームがそれぞれ基準層上で収束するような、対物レンズの距離のシフトを意味するステップを含む。本方法は更に、レンズシフト距離に基づいて、現在の記録深さを計算するステップを含む。本方法は更に、現在の記録深さを所定の記録深さと比較するステップを含む。本方法は更に、現在の記録深さが所定の深さと等しくなるように、トラッキングビーム又は記録ビームのいずれかと光学的に結合された記録深さ調節光学サブシステムにおいて、複数の光学素子を調節するステップを含む。
【0012】
全図面を通じて同様の符号で同様のパーツを示す添付図面を参照しながら下記の説明を読めば、本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点の理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態によるホログラフィックデータ記憶ディスクの一例の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態によるマイクロホログラフィック記録システムの一例のブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による別の例示的マイクロホログラフィック記録システムのブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による、ホログラフィックディスクの2波長記録システムの概略図である。
【図5】本発明の一実施形態による、図4の記録システムに基づく記録深さ測定技術の概略図である。
【図6】本発明の一実施形態による、図5の測定技術を用いてホログラフィックディスクにデータを正確に記録するための制御システムの概略図である。
【図7】本発明の一実施形態による、ホログラフィックディスクの記録深さを計算する方法の各ステップを表すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による、ホログラフィックディスクの記録深さを制御する方法の各ステップを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で詳細に説明するように、本発明の実施形態は、精密な記録のためのシステム及び方法を含む。本システム及び方法は、ディスク内のホログラムの記録深さを正確に測定可能な測定技術を含む。本システムは、放射トラッキングビーム及び放射記録ビームを異なる2つの波長で用いることと、複数の光学素子を用いることにより、精密な記録を達成する。
【0015】
以下では、本発明の技術の1つ以上の実施形態を記載する。これらの実施形態の記載を簡潔にするために、本明細書では、実際の実装の全ての機能を記載するわけではない。そのような、いかなる実際の実装の開発においても、どのような開発プロジェクトや設計プロジェクトにおいてもそうであるように、開発者の個々の目標を達成するためには、実装ごとに異なる可能性のある、システム関連及びビジネス関連の制約に従うこと等、実装ごとに様々な決定を行わなければならないことを理解されたい。更に、そのような開発作業は、複雑であり、時間のかかるものであるにもかかわらず、当業者にとっては、決まり切った設計、製作、及び製造上の作業であり、本開示は、そのような当業者に恩恵をもたらすことを理解されたい。
【0016】
ビット単位のホログラフィックデータ記憶システムは、典型的には、重なり合い、干渉し合う2つのビームを記録媒体(例えば、ホログラフィックディスク)内に放射することによって記録を行うことを伴う。各データビットは、マイクロホログラムとよばれる、微視的サイズの局在ホログラフィックパターンの有無によって表現される。マイクロホログラムは、収束ビームを照射されると、容積光反射器として動作する。例えば、図1に示すホログラフィックディスク10は、ディスク10の層内にデータビットを配列できる様子を表している。一般に、ホログラフィックディスク10は、円形の、ほぼ平坦なディスクであって、1つ以上のデータ記憶層11が、透明なプラスチックフィルムに埋め込まれている。これらのデータ層は、深さ方向にほぼ局在化していて光を反射することが可能な材料から成る、任意の数の変性領域を含むことが可能であり、これらは、例えば、ビット単位のホログラフィックデータ記憶装置に用いられるマイクロホログラムである。幾つかの実施形態では、データ層を、ディスク10にあたる光ビームの照射強度に対して応答性があるホログラフィック記録可能材料に埋め込むことがある。例えば、様々な実施形態において、ディスク10の材料は、閾値応答性であっても、線形応答性であってもよい。データ層は、厚さが約0.05μmから5μmの範囲、間隔が約0.5μmから250μmの範囲であってよい。基準層13は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティング或いはその両方を含んでおり、図4〜6において参照される。
【0017】
マイクロホログラム15の形式のデータは、一般に、ディスク10の外側エッジから内側限界にかけての情報領域に、順次式螺旋状トラック12の形で記憶可能であるが、同心の円形又は螺旋状のトラック、又は他の構成を用いてもよい。ディスク10がデータの記録及び/又は読み出しのために回転可能であるように、スピンドル穴14は、ホログラフィックシステムのスピンドル周囲と嵌合するように寸法決め可能である。スピンドルの回転は、記録及び/又は読み出し処理の間、一定線速度又は一定角速度を維持するように、フィードバックシステムによって制御可能である。更に、ディスクスピンドル、記録用光学素子、及び/又は読み出し用光学素子を、平行移動台又はスライダにより、ディスクの半径方向に動かすことにより、光学システムでディスクの半径全体にわたって記録又は読み出しを行うことが可能になる。
【0018】
図2は、マイクロホログラムをホログラフィックディスク10に記録する一般的なシステムのブロック図である。ホログラフィックシステム16は光源18を含み、光源18は信号ビーム20と基準ビーム22とに分離される。幾つかの実施形態では、光源18(単一光源であっても、複数の単一モード偏光光源であってもよい)は、複数のほぼ平行な光ビームをディスク10の平行トラック12に放射して、記録を行う。この複数の光源ビームも、複数の信号ビーム20と複数の基準ビーム22とに分離される。信号ビーム20は、データに応じて変調されて(ブロック24)ディスク10に記録される。幾つかの実施形態では、処理装置40が信号ビーム20の変調(ブロック24)を制御する。変調済み信号ビーム26は、光学/サーボ機械システム28を通過する。光学/サーボ機械システム28は、収束信号ビーム30をディスク10の特定の場所で収束させるように構成された各種の光学サーボ機械素子群を含む。例えば、光学/サーボ機械システム28は、収束信号ビーム30を、ディスク10の特定のデータ層又はデータトラック12で収束させる。
【0019】
基準信号ビーム22も、光学/サーボ機械システム32を通過する。光学/サーボ機械システム32は、収束基準ビーム34が収束信号ビーム30と重なるように、収束基準ビーム34をディスク10の特定のデータ層又はデータトラック12で収束させるように設計された各種の光学サーボ機械素子群を含む。マイクロホログラムは、ホログラフィックディスク10の、重なり合う2つの逆伝搬収束レーザビーム30及び34によって形成される干渉パターンの照射スポットに記録される。幾つかの実施形態では、収束基準ビーム34を用いて、ディスク10から記録済みマイクロホログラムを取り出す。収束基準ビーム34の反射(データ反射36と称する)を、検出器38で受信して信号検出を行う。
【0020】
ディスク10を、スピンドル穴14を通して配置されたスピンドルを中心として回転させながら、重なり合う逆伝搬収束ビームを所望のトラックに保持することにより、ディスク10のトラック12に、複数のマイクロホログラムのストリームを記録する。一般に、ホログラフィックディスク10の適切なトラック12及び/又は層に複数のマイクロホログラムが正確に記録されるように、逆伝搬収束ビームのある程度の重なりを維持する。光学/サーボ機械システム28及び32を利用することにより、マイクロホログラムの記録プロセスの間は、所望の重なりが、ディスク回転に対して動的に維持される。
【0021】
このような光学/サーボ機械素子群28及び32により、ホログラフィックディスク10への記録を行うエンドユーザ装置の複雑さが増す可能性がある。本発明の技術によって提供される方法及びシステムを用いて、ホログラムディスク10をマイクロホログラムで事前フォーマットすること、及び/又はホログラムディスク10にマイクロホログラムを事前移入することにより、エンドユーザ装置は、ディスク10に対する単一ビーム露光だけで修正及び/又は消去を行うことができる。ホログラフィックディスクの事前移入を行うことは、ホログラフィックディスク10の製造工程においてマイクロホログラムを事前記録することを意味すると考えてよい。事前移入工程において記録されるマイクロホログラムは、コード、アドレス、トラッキングデータ、及び/又は他の補助情報を表すものであり得る。事前記録されたマイクロホログラムは、その後、重なり合う逆伝搬ビームではなく単一ビームにより、修正及び/又は消去可能である。このようにして、エンドユーザシステムは、重なり合う逆伝搬レーザビームを維持しなくても、事前移入済みホログラフィックディスクにデータを記録可能である。即ち、1つ以上の単一ビームを用いるエンドユーザシステムを用いて、事前移入済みホログラフィックディスク上のマイクロホログラムを修正又は消去することにより、データを記録可能である。
【0022】
逆伝搬ビームを用いてマイクロホログラムを記録することによってホログラフィックディスクの事前移入を行うことにより、エンドユーザ装置にとってのマイクロホログラムの修正の複雑さを低減できるが、本発明の技術によっても、ディスクの事前移入の工程を改善することが可能である。前述のように、ホログラフィックディスク10の事前移入を行う場合は、ディスク10に向けた、重なり合う逆伝搬ビームによって、ディスク10の選択されたトラック12及び/又は層にマイクロホログラムを記録できるように、ホログラフィックシステム内でディスク10を回転させる。ディスク10の回転速度には、ディスク材料の機械的強度等による限界があり、これによって、マイクロホログラムを記録できる速度(転送レートと称する)が制限される。例えば、Blu−ray Disc(商標)の典型的なディスク回転速度では、単一チャネルシステムの転送レートが、12x BDレートで約430メガビット毎秒になる。この転送レートでは、ディスクのデータ層あたりの記録時間が約500秒である。
【0023】
1つ以上の実施形態では、並列マイクロホログラム記録技術により、転送レートを高め、ホログラフィックディスク10の記録時間を短縮可能である。例えば、並列マイクロホログラム記録では、複数のビームをホログラフィックディスクに向けて、ディスク10の複数のトラック12を照射可能である。ビームは、同じ光学素子群内をほぼ同じ方向に伝搬する光の集合体を意味し、複数の異なる光源から発せられた光を含み得る。また、逆方向から複数のビーム(即ち、逆伝搬ビーム)をディスク10の複数のトラック12に向けることにより、重なり合う複数の逆伝搬ビームが複数の照射スポットから成る干渉パターンを形成し、その結果、ディスク10の平行トラック12に複数のマイクロホログラムが記録されるようにしてもよい。更に、幾つかの実施形態では、データ層面に対して面積が比較的小さい収束スポットにおいて、重なり合うビーム同士が干渉する可能性がある。これらの、干渉パターンの収束照射スポットは、非照射領域によって分離可能である。データ層上の照射面積を制限することにより、記録されるマイクロホログラムの深さ方向の広がりを、所望のサイズに制限すること、及び/又は所望の(例えば、約0.05μmから5μmの範囲の)データ層に制限することが可能である。
【0024】
更に、図3に示すように、複製システムの1つ以上の実施形態では、平行チャネル光源18を直接変調する。例えば、平行チャネル光源18を、平行チャネル光源18を直接変調することに適した変調器24と結合する。変調器24は、処理装置40によって制御可能であり、平行チャネル光源18を変調することにより、平行チャネル光源18から発せられる変調済み信号ビーム26に、複製ディスク10に記録すべき情報を含めることができる。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態による、ホログラフィックディスク10(図1)の2波長記録システム70の概略図である。トラッキングレーザ源74が、第1の波長を有する放射トラッキングビーム76を放射する。特定の実施形態では、第1の波長の範囲が約400nmから約800nmである。トラッキングビーム76は、光学サブシステム78(記録深さ調節光学サブシステムと称する)に入射する。一実施形態では、記録深さ調節光学サブシステムは、複数のレンズを含む。調節されたトラッキングビーム80は、対物レンズ82に入射する。対物レンズ82は、ビーム80がディスク10の基準層86上で収束するように、ビーム伝搬方向83に平行移動する。一実施形態では、この基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む。ダイクロイックコーティングの非限定的な例として、酸化物及び窒化物から成る複数の誘電体層がある。別の実施形態では、メタライズドコーティングが、アルミニウム又は金又は銀又はこれらの合金のうちのいずれかを含む。別の実施形態では、この基準層は、放射トラッキングビームを最大約100%反射し、放射記録ビームを最大約1%反射する。同様に、第1の波長と異なる第2の波長を有する記録レーザ源92が、放射記録ビーム96を放射し、放射記録ビーム96は更に、これに限定されないが、光軸102に対して特定の角度で配置されたダイクロイックミラー98等の光学素子に入射する。特定の実施形態では、第2の波長の範囲が約375nmから約650nmである。ダイクロイックミラー98は、入射した記録ビーム96を反射して、これを反射記録ビーム104とする。対物レンズ82は、反射記録ビーム104を、ディスク10の所望の記録深さ72に入射するように収束させる。
【0026】
図5は、図4の記録システム70に基づく記録深さ測定システム110の概略図である。対物レンズ82(図4)には、1つ以上のアクチュエータ112が結合されている。第1の外部電圧がアクチュエータ112に印加されると、対物レンズ82がビーム伝搬方向83に平行移動し、それによって、トラッキングビーム80(図4)がディスク10の基準層86上で収束する。そのような、トラッキングビームを収束させる第1の外部電圧121は、処理サブシステム122によって記録される。同様に、第2の外部電圧123がアクチュエータ112に印加されると、対物レンズ82が動き、それによって、記録ビーム96(図4)がディスク10の基準層86上で収束する。そのような、記録ビーム96を収束させる第2の外部電圧もまた、処理サブシステム122によって記録される。処理サブシステム122は更に、第1の外部電圧と第2の外部電圧との差を演算し、この差に基づき、電圧−距離較正曲線を用いてレンズシフト距離を計算する。本明細書で用いる「レンズシフト距離」とは、放射トラッキングビーム80及び放射記録ビーム96をそれぞれディスク10の基準層86上で収束させる、対物レンズ82の距離のシフトを意味する。次に、処理サブシステムは、このレンズシフト距離に基づいて、記録深さ128を計算する。
【0027】
図6は、ホログラフィックディスク10(図1)に特定の深さ144でデータを正確に記録するための制御システム140の概略図である。制御システム140は、図4及び5の記録システムに対するフィードバック制御システムとして動作する処理サブシステム122(図5)を含む。処理サブシステムは、図5で上述された記録深さの計算を行った後、その現在の記録深さ144を、所定の記録深さ146と比較する。所望の記録深さが達成されていない場合は、現在の記録深さが所定の深さと等しくなるように、記録深さ調節光学サブシステム78内の複数の光学素子を、ビーム伝搬方向83において調節する。
【0028】
図7は、ホログラフィックディスクの記録深さを計算する方法の各ステップを表すフローチャートである。本方法は、まず、ステップ152で、第1の波長を有する放射トラッキングビームがディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第1の外部電圧を印加する。この基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む。ステップ154で、放射記録ビームがディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第2の外部電圧を印加する。この記録ビームは、トラッキングビームの第1の波長と異なる第2の波長を有する。更に、ステップ156で、第1の外部電圧と第2の外部電圧との差を演算する。この差に基づいて、ステップ158で、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算する。このレンズシフト距離は、放射トラッキングビーム及び放射記録ビームがそれぞれ収束する、対物レンズの距離のシフトとして定義される。特定の実施形態では、電圧−距離較正曲線は、対物ミクロメータによって得られる。更に、ステップ162で、レンズシフト距離に基づいて、記録深さを計算する。特定の実施形態では、記録深さは、ホログラフィックディスクに使用されている材料の屈折率を考慮して計算される。
【0029】
図8は、ホログラフィックディスクの記録深さを制御する方法の各ステップを表すフローチャートである。本方法は、まず、ステップ172で、第1の波長を有する放射トラッキングビームがディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第1の外部電圧を印加する。この基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む。ステップ174で、放射記録ビームがディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第2の外部電圧を印加する。この記録ビームは、トラッキングビームの第1の波長と異なる第2の波長を有する。ステップ176で、第1の外部電圧と第2の外部電圧との差を演算する。この差に基づいて、ステップ178で、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算する。レンズシフト距離は、放射トラッキングビーム及び放射記録ビームがそれぞれ基準層上で収束する、対物レンズの距離のシフトを意味する。ステップ179で、レンズシフト距離に基づいて、現在の記録深さを計算する。ステップ180で、現在の記録深さを所定の記録深さと比較する。ステップ182で、現在の記録深さが所定の深さと等しくなるように、トラッキングビーム又は記録ビームのいずれかと光学的に結合された記録深さ調節光学サブシステムにおいて、複数の光学素子を調節する。
【0030】
このように、上述の、ホログラフィックディスクに精密な記録を行うシステム及び方法の各種実施形態は、データを記録するディスクの深さ/層を識別する、便利で効率的な手段を達成する方法を提供する。また、本技術により、ディスクが回転していない場合でも、望ましい深さ/層にデータを精密に記録することができる。本技術は更に、既存のホログラフィック記録システムを用いることにより、コスト効率的な精密記録手段となる。
【0031】
上記のような目的又は利点の全てを特定の実施形態に従って達成する必要はないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者には明らかなように、本明細書に記載のシステム及び技術を、本明細書に教示されている或る利点又は一連の利点が達成又は最適化されるように実施又は実行することができ、その際、本明細書に教示又は示唆されているその他の目的又は利点を達成する必要はない。
【0032】
また、当業者には明らかなように、様々な特徴を異なる実施形態において置換可能である。同様に、記載されている様々な特徴並びに各特徴のその他既知の等価物を組み合わせたり適合させたりして、本開示に従った更なるシステム及び技術を当業者が構築することができる。
【0033】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳説したが、本発明がこうした開示の実施形態に限定されないことは、明らかであろう。むしろ、本発明を改変して、上述しなかった変形、変更、置換、又は等価の構造を幾つでも組み込むことができるが、これらも本発明の範囲及び概念に含まれる。また、本発明の様々な実施形態を記述したが、本発明の態様には、記述した実施形態の一部を含むのみでもよいことを理解されたい。したがって、本発明が上記の記述によって限定されるとみなすべきではなく、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0034】
新規であるとしてクレームされ、特許法による保護を受けようとする事項は、添付の特許請求の範囲に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィックディスクの記録深さを計算する方法であって、
第1の波長を有する放射トラッキングビームが前記ディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第1の外部電圧を印加するステップであって、前記基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む、第1の外部電圧を印加するステップと、
放射記録ビームが前記ディスクの前記基準層上で収束するように、前記対物レンズと結合された前記1つ以上のアクチュエータに第2の外部電圧を印加するステップであって、前記記録ビームは、前記トラッキングビームの前記第1の波長と異なる第2の波長を有する、第2の外部電圧を印加するステップと、
前記第1の外部電圧と前記第2の外部電圧との差を演算するステップと、
前記差に基づいて、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算するステップであって、前記レンズシフト距離は、前記放射トラッキングビーム及び前記放射記録ビームがそれぞれ前記基準層上で収束するような、前記対物レンズの距離のシフトを含む、レンズシフト距離を計算するステップと、
前記レンズシフト距離に基づいて前記記録深さを計算するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記電圧−距離較正曲線は、対物ミクロメータによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記記録深さを計算する前記ステップは、前記ホログラフィックディスク内で使用されている材料の屈折率を考慮することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ホログラフィックディスクの記録深さを計算するシステムであって、
第1の波長を有する放射トラッキングビームを放射するように構成されたトラッキングレーザ源と、
対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータであって、前記対物レンズは、第1の外部電圧が前記アクチュエータに印加されると、第1の波長を有する前記放射トラッキングビームを前記ディスクの基準層上で収束させるように構成され、前記基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む、1つ以上のアクチュエータと、
第2の外部電圧が前記アクチュエータに印加されることによって前記ディスクの前記基準層上で収束する放射記録ビームを放射するように構成された記録レーザ源であって、前記放射記録ビームは、前記放射トラッキングビームの前記第1の波長と異なる第2の波長を有する、記録レーザ源と、
処理サブシステムであって、
前記第1の外部電圧と前記第2の外部電圧との差を演算するステップと、
前記差に基づいて、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算するステップであって、前記レンズシフト距離は、前記放射トラッキングビーム及び前記放射記録ビームがそれぞれ前記基準層上で収束するような、前記対物レンズの距離のシフトを含む、レンズシフト距離を計算するステップと、
前記レンズシフト距離に基づいて前記記録深さを計算するステップと、を行うように構成された処理サブシステムと、
を備えるシステム。
【請求項5】
前記ディスクの前記記録深さを調節するように構成された記録深さ調節光学サブシステムを更に備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記記録深さ調節光学サブシステムは、複数のレンズを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記記録深さ調節光学サブシステムは、前記トラッキングビームの光路又は前記記録ビームの光路のいずれかと結合されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記ダイクロイックコーティングは、酸化物及び窒化物から成る複数の誘電体層を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
前記メタライズドコーティングは、アルミニウム又は金又は銀又はこれらの混合合金のいずれかを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
前記トラッキングレーザ源の前記第1の波長は、約400nmから約800nmの範囲の波長を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項11】
前記記録レーザ源の前記第2の波長は、約375nmから約650nmの範囲の波長を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項12】
前記基準層は、前記放射トラッキングビームを最大約100%反射し、前記放射記録ビームを最大約1%反射する、請求項4に記載のシステム。
【請求項13】
ホログラフィックディスクに特定の深さでデータを正確に記録するための制御システムであって、
放射トラッキングビームを放射するように構成されたトラッキングレーザ源と、
対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータであって、前記対物レンズは、第1の外部電圧が前記アクチュエータに印加されると、前記放射トラッキングビームを前記ディスクの基準層上で収束させるように構成され、前記基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む、1つ以上のアクチュエータと、
第2の外部電圧が前記アクチュエータに印加されることによって前記ディスクの前記基準層上で収束する放射記録ビームを放射するように構成された記録レーザ源であって、前記放射記録ビームは、前記放射トラッキングビームの波長と異なる第2の波長を有する、記録レーザ源と、
複数の光学素子を備え、前記放射記録ビームの前記記録深さを変更するように構成された記録深さ調節光学サブシステムと、
処理サブシステムであって、
前記第1の外部電圧と前記第2の外部電圧との差を演算するステップと、
前記差に基づいて、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算するステップであって、前記レンズシフト距離は、前記放射トラッキングビーム及び前記放射記録ビームがそれぞれ前記基準層上で収束するような、前記対物レンズの距離のシフトを含む、レンズシフト距離を計算するステップと、
前記レンズシフト距離に基づいて前記記録深さを計算するステップと、
現在の記録深さを所定の記録深さと比較するステップと、
前記現在の記録深さが前記所定の深さと等しくなるように、前記記録深さ調節光学サブシステムの前記複数の光学素子を調節するステップと、を行うように構成された処理サブシステムと、
を備える制御システム。
【請求項14】
前記記録深さ調節光学サブシステムの前記複数の光学素子を調節する前記ステップは、複数のレンズのうちの1つ以上を、ビーム伝搬方向に平行移動させることを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ダイクロイックコーティングは、酸化物及び窒化物から成る複数の誘電体層を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記メタライズドコーティングは、アルミニウム又は金又は銀又はこれらの混合合金のいずれかを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記トラッキングレーザ源の前記第1の波長は、約400nmから約800nmの範囲の波長を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記記録レーザ源の前記第2の波長は、約375nmから約650nmの範囲の波長を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記基準層は、前記放射トラッキングビームを最大約100%反射し、前記放射記録ビームを最大約1%反射する、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
ホログラフィックディスクの記録深さを制御する方法であって、
第1の波長を有する放射トラッキングビームが前記ディスクの基準層上で収束するように、対物レンズと結合された1つ以上のアクチュエータに第1の外部電圧を印加するステップであって、前記基準層は、部分的ダイクロイックコーティング又は部分的メタライズドコーティングの少なくとも一方を含む、第1の外部電圧を印加するステップと、
放射記録ビームが前記ディスクの前記基準層上で収束するように、前記対物レンズと結合された前記1つ以上のアクチュエータに第2の外部電圧を印加するステップであって、前記記録ビームは、前記トラッキングビームの前記第1の波長と異なる第2の波長を有する、第2の外部電圧を印加するステップと、
前記第1の外部電圧と前記第2の外部電圧との差を演算するステップと、
前記差に基づいて、電圧−距離較正曲線を用いて、レンズシフト距離を計算するステップであって、前記レンズシフト距離は、前記放射トラッキングビーム及び前記放射記録ビームが前記基準層上でそれぞれ収束するような、前記対物レンズの距離のシフトを含む、レンズシフト距離を計算するステップと、
前記レンズシフト距離に基づいて前記記録深さを計算するステップと、
現在の記録深さを所定の記録深さと比較するステップと、
前記現在の記録深さが前記所定の深さと等しくなるように、記録深さ調節光学サブシステムの複数の光学素子を調節するステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−113807(P2012−113807A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−252139(P2011−252139)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】