説明

精製リポペプチドの調製方法

【課題】 ダプトマイシンおよびダプトマイシン関連リポペプチドを結晶化または沈殿する方法を開発し、これらのリポペプチドのための改良された精製方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、従来の抗生物質に耐性である菌株を含むグラム陽性細菌に対する強力な殺菌活性を有するリポペプチド抗生物質であるダプトマイシンを含む結晶性または結晶様リポペプチドに関する。本発明はまた、従来の抗生物質に耐性である菌株を含むグラム陽性細菌に対する強力な殺菌活性を有するリポペプチド抗生物質であるダプトマイシンを含むリポペプチドを精製する方法に関する。さらに、本発明はまた、精製された形態のリポペプチドを含む医薬組成物、およびそれら組成物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、その内容がこの参照により開示に含まれる米国仮出願第60/256,268号(2000年12月18日出願);第60/274,741号(2001年3月9日出願);第___号(2001年12月13日出願);および第___号(2001年12月13日出願)の利益を主張する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は従来の抗生物質に耐性である菌株を含むグラム陽性細菌に対する強力な殺菌活性を有するリポペプチド抗生物質であるダプトマイシンを含む結晶性または結晶様リポペプチドに関する。本発明はまた結晶性または結晶様リポペプチドを調製する工程、およびダプトマイシンを含むリポペプチドを精製する方法に関する。本発明はまた精製された形態のリポペプチドを含む医薬組成物、およびこれらの組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗生物質耐性細菌によって生じる感染を含むグラム陽性感染の件数の急速な増加は新しい種類の抗生物質の開発に対する新たな関心を呼び起こしている。そのような種類の一つがリポペプチド抗生物質であり、これはダプトマイシンを含む。ダプトマイシンは重症かつ生命に危険を及ぼす疾患を引き起こす臨床的に重要なグラム陽性細菌に対してin vitroで強力な殺菌活性を有する。これらの細菌はバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、グリコペプタイド低感受性黄色ブドウ球菌(GISA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)、そしてペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、といった、それらに対する治療の選択肢がごく少数しかない耐性病原体を含むが、これらに限定されない(例えば、非特許文献1参照)。ダプトマイシンの阻害効果は、in vitroおよびin vivoの迅速な、濃度依存性の殺菌効果、およびin vivoの比較的に持続性の濃度依存性のPAE(抗生物質後効果)である。
【0004】
ダプトマイシンは既に報告されている(例えば、非特許文献2参照)。ダプトマイシンはまたLY146032の名でも知られ、Streptomyces roseosporusの発酵から得ることのできる環状リポペプチド抗生物質である。ダプトマイシンはS.roseosporusのA21978C0因子系抗生物質の一員であり、環状13アミノ酸ペプチドのトリプトファンのN末端に結合したデカノイル側鎖から成る(図1)。
【0005】
ダプトマイシンは、大部分のグラム陽性細菌に対して非常に効果的であり;非常に殺菌効果が高く速効性であり;耐性率が低く抗生物質耐性菌に対して有効であるため、優れた活性プロファイルを有する。本化合物は現在、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含むがこれらに限定されない細菌によって引き起こされる重症感染症を治療するためのさまざまな製剤が開発中である。
【0006】
いくつかの米国特許はダプトマイシン(LY 146032)を含むA−21978C0抗生物質およびダプトマイシン関連リポペプチドを記載している。これらの特許はまたA−21978C0抗生物質およびダプトマイシン関連リポペプチドを生産および単離する方法を記載している。
【0007】
Streptomyces roseosporusの発酵培養物からダプトマイシンを合成および単離する方法が記載されている(例えば、特許文献1から5参照)。A−21978C0抗生物質およびA−21978C0抗生物質を脱アシル化およびペプチド核を再アシル化する方法およびこの製法によって作られる誘導体も記載されている(例えば、特許文献6から10参照)。さらに、ダプトマイシン、無水ダプトマイシンおよびダプトマイシンのβ−異性体形態の製造の間に作られる2種類の不純物の同定および単離も記載されている(例えば、特許文献11参照)。これらの米国特許のいずれも、リポペプチドの純度を高める方法でリポペプチドを沈殿または結晶化するための方法を開示していない。
【0008】
結晶性リポペプチド、および当該リポペプチドを結晶化する方法も開示されている。特許文献12において開示されているリポペプチドは構造的にダプトマイシンおよびダプトマイシン関連リポペプチドとは異なる。また、ヘキサペプチドから成る結晶性環状リポペプチドも開示されている。特許文献13において開示されている結晶性環状リポペプチドもまた構造的にダプトマイシンおよびダプトマイシン関連リポペプチドとは異なる。特許文献13は、エキノカンジン系化合物である当該リポペプチドは、結晶化溶媒としてn−プロパノール水溶液を用いたときに得ることができることを開示している。たとえば特許文献13の請求項1−2を参照のこと。特許文献12も特許文献13もダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドを結晶化または沈殿する方法を開示しておらず、またそれらはStreptomycesによって生産されたリポペプチドを結晶化または沈殿する方法を開示していない。
【非特許文献1】Tally ら、1999、Exp.Opin.Invest.Drugs 8:1223−1238
【非特許文献2】Biotechnology of Antibiotics第2版,W.R.Strohl編(New York: Marcel Dekker、Inc.)、1997、pp.415−435
【特許文献1】米国再発行特許発明第32,333号明細書
【特許文献2】米国再発行特許発明第32,455号明細書
【特許文献3】米国特許第4,800,157号明細書
【特許文献4】米国特許第4,874,843号明細書
【特許文献5】米国特許第4,885,243号明細書
【特許文献6】米国再発行特許発明第32,310号明細書
【特許文献7】米国再発行特許発明第32,311号明細書
【特許文献8】米国特許第4,537,717号明細書
【特許文献9】米国特許第4,482,487号明細書
【特許文献10】米国特許第4,524,135号明細書
【特許文献11】米国特許第5,912,226号明細書
【特許文献12】米国特許第4,439,425号明細書
【特許文献13】米国特許第5,336,756号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ダプトマイシンおよびダプトマイシン関連リポペプチドを結晶化または沈殿する方法を開発し、これらのリポペプチドのための改良された精製方法を提供するのは有利であると思われる。加えて、結晶性の形態または高度に精製された沈殿形態のダプトマイシンもしくは他のダプトマイシン関連リポペプチドは、細菌感染を治療するための医薬組成物を処方開発するのに有用であると思われる。さらに、結晶性の形態または高度に精製された沈殿形態のダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドは、殺菌製品、特に大量の殺菌製品を製造する方法において有用であると考えられる。したがって、結晶性または沈殿ダプトマイシンおよびダプトマイシン関連リポペプチドを製造する方法、およびそれによって製造された結晶性または沈殿した形態のそれらのリポペプチドが必要である。しかし、ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドを結晶化または沈殿し、その結果結晶化または沈殿の後に前より純度の高いリポペプチドを得るのに効果的な、単純かつ頑健な方法は存在しなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、結晶性および結晶様リポペプチド、特にダプトマイシンおよびダプトマイシン関連リポペプチド、およびそれらを製造するための方法を提供することによってこれらの問題に対処する。一実施形態において、本発明はリポペプチドを結晶化するための方法を提供する。別の一実施形態において、本方法は結晶化または沈殿後には結晶化または沈殿前より純粋であるリポペプチドを提供する。
【0011】
本発明はまた、特にリポペプチドを結晶化または沈殿することを含む、リポペプチドを製造しおよび精製する頑健な方法を提供する。一実施形態において、結晶化または沈殿の工程はリポペプチドを精製するために用いられる。別の一実施形態において、その工程はリポペプチドの、好ましくはダプトマイシンの、大規模および/または商業的生産に用いられる。
【0012】
本発明はまた、ダプトマイシンおよびダプトマイシン関連リポペプチドの高度に精製された結晶性または結晶様の形態を提供する。一実施形態において、結晶性および結晶様リポペプチドは医薬組成物に使用されうる。別の一実施形態において、本発明は当該医薬組成物を使用する方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1はダプトマイシンの構造を示す図である。
【0014】
図2は実施例12に記載する方法によって製造されたダプトマイシンのいが状結晶または結晶様粒子の顕微鏡写真を示す。
【0015】
図3はダプトマイシンの針状結晶の顕微鏡写真を示す。
【0016】
図4はダプトマイシンの棒状結晶の顕微鏡写真を示す。
【0017】
図5はダプトマイシン試料の100×倍率の顕微鏡写真を示す。非晶性ダプトマイシンの顕微鏡写真が平面透過光(A)を用いておよび直交偏光(B)を用いて示されている。ダプトマイシン結晶の顕微鏡写真が平面透過光(CおよびE)を用いておよび直交偏光(DおよびF)を用いて示されている。ダプトマイシン結晶は実施例7で開示された手順によって製造された。
【0018】
図6は非晶性ダプトマイシンのX線粉末回折パターンである。
【0019】
図7は実施例7に記載された手順によって製造されたダプトマイシン結晶のX線粉末回折パターンである。
【0020】
図8は実施例7に記載された手順によって製造されたダプトマイシン結晶の別の試料のX線粉末回折パターンである。
【0021】
図9はダプトマイシンの結晶様粒子の、偏光に暴露されたときの複屈折を示す図である。結晶様粒子は実施例12に記載された方法によって製造された。
【0022】
図10は結晶化の典型的な方法のフローチャートである。
【0023】
図11は結晶化または沈殿を用いない典型的な製造方法のフローチャートである。この製造方法ではダプトマイシンを含む発酵培養物の製造に細菌発酵を用い、次いで精密濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除限外濾過、疎水クロマトグラフィーを用いてダプトマイシンを精製し、陰イオン交換クロマトグラフィーを溶媒の除去に用い、限外濾過と逆浸透を発熱性物質の除去に用い、そしてバイアルにダプトマイシンを詰める。たとえばこの種類の方法の詳細な記述について引用により開示する国際公開第01/44274号パンフレット(2001年6月21日公開)を参照のこと。
【0024】
図12は発酵、精密濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除限外濾過、結晶化または沈殿、結晶または沈殿物の乾燥、そしてバイアルに当該化合物を乾燥充填する工程を含む、リポペプチド化合物の典型的な製造方法のフローチャートである。たとえば実施例13を参照のこと。
【0025】
図13は発酵、精密濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化または沈殿、結晶または沈殿物の乾燥、そしてバイアルに当該化合物を乾燥充填する工程を含む、リポペプチド化合物の典型的な製造方法のフローチャートである。たとえば実施例14を参照のこと。
【0026】
図14は発酵、精密濾過、サイズ排除限外濾過、結晶化または沈殿、結晶または沈殿物の乾燥、そしてバイアルに当該化合物を乾燥充填する工程を含む、リポペプチド化合物の典型的な製造方法のフローチャートである。たとえば実施例15を参照のこと。
【0027】
図15は発酵、精密濾過、結晶化または沈殿、結晶または沈殿物の乾燥、そしてバイアルに当該化合物を乾燥充填する工程を含む、リポペプチド化合物の典型的な製造方法のフローチャートである。たとえば実施例16を参照のこと。
【0028】
図16はダプトマイシンの環状リポペプチドアナログであるCB−131547の構造を描いた図である。本発明における有用なタンパク質混合物のSDS−PAGEの、還元条件下および非還元条件下の両方を図示する図である。本発明の一つの実施例によるタンパク質混合物のHPLC画分27〜36のSDS−PAGEゲルを示す図である。
【0029】
発明の目的
本発明の一つの目的はリポペプチドを結晶化または沈殿するための方法を提供することである。一実施形態において、本方法はダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドを結晶化または沈殿させるのに用いられる。別の一実施形態において、本方法は結晶化または沈殿の前のリポペプチドの純度と比較してリポペプチドの純度を高める。本方法は、リポペプチドの非晶性調製物を与え、および、結晶性のまたは沈殿した結晶様のリポペプチドがリポペプチドの非晶性調製物より純粋である条件下でリポペプチドを結晶化または沈殿する工程を含む。一実施形態において、非晶性調製物は最高で純度92%でありそこから精製された結晶性または結晶様リポペプチドは少なくとも純度95%であり、また少なくとも純度96%、97%または98%あるいはより高純度でありうる。別の一実施形態において、非晶性調製物は最高で純度80%でありそしてそこから精製された結晶性または結晶様リポペプチドは少なくとも純度95%であり、また少なくとも96%、97%または98%あるいはより高純度でありうる。別の一実施形態において、非晶性調製物は最高で純度60%でありそしてそこから精製された結晶性または結晶様リポペプチドは少なくとも純度95%であり、また少なくとも96%、97%または98%あるいはより高純度でありうる。さらにもう一つの実施形態において、非晶性調製物は最高で純度40%でありそしてそこから精製された結晶性または結晶様リポペプチドは少なくとも純度95%であり、また少なくとも96%、97%または98%あるいはより高純度でありうる。別の一実施形態において、非晶性調製物は最高で純度20%でありそしてそこから精製された結晶性または結晶様リポペプチドは少なくとも純度95%であり、また少なくとも96%、97%または98%あるいはより高純度でありうる。より好適な一実施形態において、非晶性調製物は最高で純度10%でありそしてそこから精製された結晶性または結晶様リポペプチドは少なくとも純度95%であり、また少なくとも96%、97%または98%あるいはより高純度でありうる。
【0030】
本発明のもう一つの目的は、特に、リポペプチドを結晶化または沈殿することから成る、リポペプチドを製造および精製する方法を提供することである。一実施形態において、結晶化または沈殿の工程はリポペプチドを精製するのに用いられる。好適な一実施形態において、結晶化または沈殿は、結晶化されたバッチまたは沈殿ごとに行われる。別の一実施形態において、当該製法は、リポペプチドの、好ましくはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドの、商業生産のための大規模製法である。一実施形態において、リポペプチドは発酵によって生産される。発酵産物は次いで、結晶化または沈殿を含むさまざまな精製方法によって精製される。一実施形態において、結晶化または沈殿の工程は、精密濾過、サイズ排除限外濾過および/または陰イオン交換クロマトグラフィーを含む他の精製方法と組み合わせて使用されうる。一実施形態において、結晶化または沈殿の工程は、結晶化または沈殿を用いない精製方法の中で用いられる一以上の精製方法に代えて用いられている。別の一実施形態において、結晶化または沈殿の工程は、結晶化または沈殿の工程を有しないその他の工程と比較して精製を高めるのに用いられる。一つの好適な実施形態において、当該方法は結晶化または沈殿の後に結晶性または結晶様リポペプチドを回収する工程から成る。
【0031】
本発明のもう一つの目的は、高度に精製された、たとえば無菌の、結晶性または結晶様リポペプチドを提供することである。一実施形態において、リポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。結晶性または結晶様リポペプチドは、いが状(多数の針が互いに固まりあって、いがに似た外観を呈する)(図2を参照)、針状(図3を参照)、棒状(図4を参照)、板状または薄片状を含むどのような結晶性または結晶様の形状も有しうる。一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドは少なくとも80%の純度を有し、また少なくとも純度85%、90%でありうる。別の一実施形態において、結晶性または結晶様の形態のリポペプチドは少なくとも95%の純度を有し、また少なくとも純度96%、97%、98%またはそれ以上でありうる。
【0032】
さらに一つの本発明の目的は、結晶性または結晶様リポペプチドを含む医薬組成物を提供することである。一実施形態において、リポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。一実施形態において、医薬品組成物は経口投与用に腸溶コーティングされ、または微粉末粒子または微小球の形に製剤処方されている。別の実施形態において、本発明は当該医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する方法を提供する。
【0033】
定義
別に定義の無い限り、ここで用いられるすべての技術的および科学的用語は当業者が通常理解している意味を有する。本発明の実施には、別に指定の無い限り、化学、生化学、生物物理学および微生物学の従来の方法、およびそこで用いられる基本用語を用いる。
【0034】
「リポペプチド」の語は、共有結合でペプチド部分に結合している脂質様の部分から成る分子、およびその塩、エステル、アミドおよびエーテルをいう。「リポペプチド」の語はまた、一以上のアミノ基、カルボン酸基または水酸基が保護されている、保護された形態のリポペプチドを包含する。保護基の例についてはたとえば“Protective Groups in Organic Synthesis” Theodora W.Greene著、John Wiley and Sons、New York、1981を参照のこと。一実施形態において、当該リポペプチドは抗生物質である。別の一実施形態において、当該リポペプチドはLY303366、エキノカンジン類、ニューモカンジン類,アキュレアシン類、ビスコーシン、サーファクチン、プリパスタチンB1、アンホマイシン、または米国特許第5,629,288号において開示されたリポペプチド誘導体である。これらのリポペプチドは当該技術分野において既知である。たとえば米国特許第5,202,309号および国際公開第00/08197号パンフレットを参照のこと。別の一実施形態において、当該リポペプチドはダプトマイシン関連分子である。別の一実施形態において、当該リポペプチドはダプトマイシンである。
【0035】
「ダプトマイシン関連分子」は、特に、ダプトマイシン、A54145、または、たとえばこれらの分子中に存在しうるすべての不斉中心について作られうるすべての立体異性体を含むダプトマイシン関連リポペプチドのような、構造的にダプトマイシンと関連した他のリポペプチドを含む。
【0036】
「ダプトマイシン関連リポペプチド」は、米国特許第4,537,717号、第4,482,487号、第RE32,311号、第RE32,310号、および米国特許出願公開第09/547,357号として現在再発行出願されている第5,912,226号、において開示されたリポペプチドを制限なく含む。ダプトマイシン関連リポペプチドはまた、国際公開第01/44272号パンフレット(2001年6月21日公開);国際公開第01/44274号パンフレット(2001年6月21日公開);および国際公開第01/44271号パンフレット(2001年6月21日公開)において開示されたものを含み;これらの出願のすべては特にこの参照により開示に含まれる。上記に特定した出願において開示されたダプトマイシン関連リポペプチドは、ダプトマイシンのオルニチンおよび/またはキヌリン残基および/または脂肪酸側鎖が修飾されている合成および半合成リポペプチドに関する。ダプトマイシン関連リポペプチドはさらに、ダプトマイシンのn−デカノイル脂肪酸側鎖がn−オクタノイル、n−ノナノイル、n−ウンデカノイル、n−ドデカノイル、n−トリデカノイルまたはn−テトラデカノイル脂肪酸側鎖に置き換わっているA−21978C0抗生物質を含む。
【0037】
「ダプトマイシン」の語はα−アスパルチル基を含むA21978C0因子系抗生物質のn−デカノイル誘導体をいう。「ダプトマイシン」はLY146032と同義である。
【0038】
「無水ダプトマイシン」の語はダプトマイシンのα−アスパルチル基がサクシニミド基と環化しているダプトマイシン関連リポペプチドをいう。無水ダプトマイシンの構造についてはたとえば’226特許を参照のこと。
【0039】
「β−異性体」または「ダプトマイシンのβ−異性体」の語はα−アスパルチル基のかわりにβ−アスパルチル基を含むダプトマイシン関連リポペプチドをいう。ダプトマイシンのβ−異性体の構造についてはたとえば’226特許を参照のこと。
【0040】
「単離された」の語は、混合物中に存在する化合物の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80% または90%である化合物または製品をいう。「単離された」の語はまた、混合物群中に存在する化合物の少なくとも5〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%または80〜90%である化合物をいうと理解される。混合物中の化合物の割合は、下記の通り化合物の純度を測定するための当該技術分野において既知であるどのような方法によって測定されてもよい。
【0041】
「実質的に純粋である」とは、少なくとも95%が目的の化合物である試料をいう。好ましくは、ダプトマイシンは、試料の少なくとも95%から少なくとも97%がダプトマイシンであるとき「実質的に純粋である」。同様に、ダプトマイシン関連リポペプチドは、試料の少なくとも95%から少なくとも97%がダプトマイシン関連リポペプチドであるとき「実質的に純粋である」。
【0042】
ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドは、それぞれ試料の少なくとも98%から少なくとも99%がダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドであるとき「本質的に純粋である」。
【0043】
ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドは、それぞれ他の化合物の存在する量がダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチド調製物の量の1%を超えないとき、他の化合物を「実質的に含まない」。
【0044】
ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドは、それぞれ他の化合物の存在する量がダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチド調製物の量の0.5%を超えないとき、他の化合物を「本質的に含まない」。
【0045】
ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドはそれぞれ他の化合物の存在する量がダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチド調製物の量の0.1%を超えないとき、他の化合物を「含まない」。あるいは、ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドはそれぞれ、他の化合物がHPLCによって検出限界がダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチド調製物の量の約0.05%以下である最大感度の条件下で検出され得ないとき、他の化合物を「含まない」。
【0046】
「精製」ダプトマイシンは、実質的に純粋なダプトマイシン、本質的に純粋なダプトマイシン、またはその塩、または別の化合物を実質的に含まない、本質的に含まない、または含まないダプトマイシンもしくはその塩をいう。同様に、「精製」ダプトマイシン関連リポペプチドは、実質的に純粋なダプトマイシン関連リポペプチド、本質的に純粋なダプトマイシン関連リポペプチド、またはその塩、または別の化合物を実質的に含まない、本質的に含まない、または含まないダプトマイシン関連リポペプチドまたはその塩をいう。
【0047】
「粗」ダプトマイシンは、純度90%未満のダプトマイシンもしくはその塩をいう。同様に、「粗」ダプトマイシン関連リポペプチドは、純度90%未満のダプトマイシン関連リポペプチドまたはその塩をいう。
【0048】
「半精製」ダプトマイシンは、少なくとも純度90%かつ純度95%未満であるダプトマイシンもしくはその塩をいう。同様に、「半精製」ダプトマイシン関連リポペプチドは、少なくとも純度90%かつ純度95%未満であるダプトマイシン関連リポペプチドもしくはその塩をいう。
【0049】
ダプトマイシン、ダプトマイシン関連リポペプチドまたは他のリポペプチドの純度は、医薬組成物における製剤処方の前のリポペプチドをいう。リポペプチドの純度は「パーセント純度」によって称される。純度の尺度は、結晶性調製物の結晶化度の程度の尺度ではない。純度は、核磁気共鳴 (NMR)、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)または微生物学的検定法を含むどのような方法によって測定されてもよい。ダプトマイシンの純度を測定するための好ましい一方法は、分析高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による。分析HPLCの2つの方法が、この参照により開示に含まれる国際公開第01/53330号パンフレット(2001年7月26日公開)に記載されている。
【0050】
「リポペプチド結晶」は、リポペプチドまたはリポペプチド塩の一以上の結晶をいう。結晶としてのリポペプチドの測定は、特に、光学顕微鏡法、電子顕微鏡法、X線粉末回折、固体核磁気共鳴(NMR)または偏光顕微鏡法を含むどのような方法によって測定されてもよい。顕微鏡法は結晶の長さ、直径、幅、大きさ、形を、また結晶が単粒子として存在するかまたは多結晶性であるかを測定するのに用いることができる。
【0051】
リポペプチドまたはリポペプチド粒子は、一つの方法、たとえば肉眼でまたは光学または偏光顕微鏡法によって測定されたとき、結晶性の特質を有していると判定され、しかし別の方法、たとえばX線粉末回折によって測定されたとき結晶性の性質を有しない場合は、「結晶様」である。「結晶様」であるリポペプチドは一定の条件下では結晶性である可能性があり、しかし別の条件下に置かれたときは非晶性になりうる。
【0052】
「結晶性リポペプチド」または「結晶形態のリポペプチド」は、リポペプチド結晶を含むリポペプチドまたはその塩の調製物である。一実施形態において、結晶性リポペプチドは若干の非晶性リポペプチドを含みうる。一実施形態において、結晶性リポペプチドは重量で50%を超えるリポペプチド結晶を含む。別の一実施形態において、結晶性リポペプチドは60%、70%、80%、90%または95%を超えるリポペプチド結晶を含む。結晶性リポペプチドは50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%または90〜95%のリポペプチド結晶を含みうる。別の一実施形態において、結晶性リポペプチドは95%を超えるリポペプチド結晶を、たとえば少なくとも96%、97%、98%または99%のリポペプチド結晶または100%のリポペプチド結晶を含む。結晶性リポペプチドはまた95〜100%のどこでものリポペプチド結晶を含みうる。リポペプチド結晶の重量での割合は、医薬組成物の製剤処方前のリポペプチド調製物についていう。
【0053】
リポペプチドの「非晶性」の形態は、ここに記載のリポペプチド結晶または結晶様リポペプチド(または結晶様粒子)をわずかしか、あるいは全く含まないリポペプチド調製物をいう。一実施形態において、非晶性リポペプチドは重量で20%未満のリポペプチド結晶または結晶様リポペプチドを含む。別の一実施形態において、非晶性リポペプチドは重量で10%未満のリポペプチド結晶または結晶様リポペプチドを含む。別の一実施形態において、非晶性リポペプチドは重量で5%未満のリポペプチド結晶または結晶様リポペプチドを含む。さらにより好適な一実施形態において、非晶性リポペプチドは重量で1%未満のリポペプチド結晶または結晶様リポペプチドを含む。
【0054】
「バッチ結晶化」は、目的のリポペプチドを結晶化試薬溶液と混合しリポペプチドを溶液中で結晶化させる方法をいう。「バッチ沈殿」は、リポペプチドを沈殿試薬溶液と混合しリポペプチドを溶液中で沈殿させる方法をいう。一実施形態において、結晶性または沈殿した調製物は溶液から回収される。別の一実施形態において、結晶性または沈殿した調製物は濾過または遠心分離によって回収される。
【0055】
「有機沈殿剤」は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEGMME)または化学的に類似した化合物をいう。
【0056】
「塩」は、イオン化合物をいう。これらのイオン化合物は沈殿剤として作用しうる。
【0057】
「低分子量アルコール」は、少なくとも1個のアルコール官能基、および8個以下の炭素原子を含む有機化合物である。たとえば、低分子量アルコールには、制限なく、メタノール、イソプロパノール、およびtert−ブタノールが含まれる。
【0058】
「多価アルコール」は、1個以上のアルコール基、および8個以下の炭素原子を含む化合物をいう。多価アルコールには、たとえば、制限なく、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールおよび1,4−ブタンジオールが含まれる。
【0059】
「容器」は、物を保持するための入れ物をいう。たとえば、容器には、制限なく、アンプル、バイアル、試験管、瓶、またはシリンダが含まれる。
【0060】
精製リポペプチドを製造する方法
本発明の一つの目的は、リポペプチドの非晶性調製物を与えそしてリポペプチドを結晶化または沈殿する工程を含むリポペプチドの精製方法を提供することである。一実施形態において、リポペプチドは結晶化または沈殿に供される前より結晶化または沈殿の後により高い純度を有する。リポペプチドは、ハンギングドロップ、シッティングドロップまたはサンドイッチドロップ蒸気拡散法、液−液つまり自由界面拡散法、微量透析法または透析法、緩速溶媒蒸発、昇華、あるいはマイクロバッチ結晶化法またはバッチ結晶化法によって結晶化されうる。一般に、リポペプチドは同様の方法によって沈殿することができ、リポペプチドはバッチ沈殿によって沈殿されるのが好ましい。一つの好適な実施形態において、結晶化または沈殿されたリポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。より好適な一実施形態では、結晶化または沈殿されたリポペプチドはダプトマイシンである。
【0061】
リポペプチドは、本明細書の教示に従って結晶化または沈殿されうる。一実施形態において、下記でさらに論じる通り、低分子量または多価アルコール、pH緩衝剤、および一価または二価陽イオンを含む塩を含む溶液をリポペプチドに加え、沈殿または結晶化を起こさせることによって、リポペプチドは結晶化または沈殿されうる。別の一実施形態において、塩は緩衝能を有するので追加のpH緩衝剤は溶液中に存在しなくてもよい。別の一実施形態において、塩は二価陽イオンを含む。一つの好適な実施形態において、加える溶液はPEGまたはPEG−MMEまたは化学的に類似した化合物を含まない。一実施形態において、リポペプチドを沈殿または結晶化させるための方法は一般にa)リポペプチドを一価または二価陽イオンを含む塩、任意でpH緩衝剤、および低分子量または多価アルコールと混合し;そしてb)リポペプチドを適切な温度条件下で溶液から沈殿または結晶化させる工程を含む。
【0062】
試料は、特に、結晶または沈殿形成に関して顕微鏡検査によって観察することができ、得られたものは分光光度法で追跡しうる。好適な一実施形態において、結晶化または沈殿したリポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。
【0063】
別の一実施形態において、下記でさらに論じる通り、リポペプチドは低分子量または多価アルコール、塩、および有機沈殿剤を含む溶液を加えることによって結晶化できる。より好適な一実施形態において、結晶化されたリポペプチドはダプトマイシンである。一般に、バッチ結晶化のためには、リポペプチドは溶液に溶解しそして低分子量アルコール、塩、緩衝剤および/または有機沈殿剤が溶液に添加される。試料は次いで適切な温度条件下で、攪拌ありまたはなしで結晶化される。試料は、特に、結晶形成に関して顕微鏡検査によって観察することができ、得られたものは分光光度法で追跡しうる
上記の通り、リポペプチド、好ましくはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドは、一以上のアルコールの存在下で結晶化または沈殿される。一つの好適な実施形態において、アルコールは低分子量または多価アルコールである。低分子量または多価アルコールの例としては、制限なく、メタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、および1,4−ブタンジオールが含まれる。好適な一実施形態において、アルコールはイソプロパノール、tert−ブタノール、グリセロール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコールおよび/またはエチレングリコールである。より好適な一実施形態において、アルコールはイソプロパノールである。
【0064】
塩には、特に、ギ酸マグネシウムまたはナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、クエン酸三ナトリウム二水和物、酢酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カドミウム、酢酸アンモニウム、塩化ナトリウムおよび硫酸リチウムを含む。一実施形態において、塩はたとえばナトリウムといった一価陽イオンを含む。一つの好適な実施形態において、塩は二価陽イオンを含む。より好適な一実施形態において、塩はカルシウム陽イオン、マグネシウム陽イオンまたはマンガン陽イオンである。さらに好適な一実施形態において、塩は二価カルシウム陽イオンを含む。一実施形態において、塩は塩化カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、塩化マグネシウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ナトリウムまたは、酢酸マンガンまたは塩化マンガンといったマンガン塩である。好適な一実施形態において、塩は酢酸カルシウムである。たとえばカルシウム陽イオンのような二価陽イオンを含む他の塩の例は、当該技術分野において既知であり、特に、この参照により開示に含まれる2000年シグマ社カタログ中に列挙されたものを含む。どのような理論に縛られることも求めず、塩の陽イオンはたとえばダプトマイシンの4個のカルボキシル酸といったリポペプチドの負電荷を中和しうると考えられている。有機沈殿剤は、特に、平均分子量が300から10,000までの間で変化しうるポリエチレングリコール(PEG)、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEG−MME)を含む。一つの好適な実施形態において、有機沈殿剤はPEG300、PEG600、PEG2000、PEG4000、PEG8000またはPEG10,000である。
【0065】
リポペプチドは、pH5.0から9.5に緩衝された溶液から沈殿されるかまたは結晶化される。一実施形態において、緩衝される前は、溶液のpHは約1.5、2.0または3.0である。一実施形態において、ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドは、約pH5.5から約pH7.5の溶液から沈殿されるかまたは結晶化される。別の一実施形態において、緩衝液はpH約5.9から約pH6.3である。一実施形態において、緩衝溶液はpH緩衝剤を用いることによって得ることができる。pH緩衝剤の例は、制限なく、トリス、リン酸塩、クエン酸塩、HEPES、CHES、酢酸ナトリウムまたは2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、ホウ酸ナトリウム、カコジル酸ナトリウム、イミダゾールおよびクエン酸三ナトリウム二水和物を含む。好適な一実施形態において、塩はカコジル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、HEPES、MES、CHES、イミダゾール、酢酸カルシウム、およびトリス−HClである。より好適な一実施形態において、pH緩衝液はpH6.1酢酸カルシウム、pH6.1酢酸ナトリウム、pH6.5カコジル酸ナトリウム、pH5.6クエン酸三ナトリウム二水和物、pH7.5HEPES、pH8イミダゾール、pH6.0MES、pH6酢酸カルシウムおよびpH8.5トリス−HClである。別の一実施形態において、溶液は緩衝能も有する塩を用いることによって緩衝されうる。好適な一実施形態において、pH緩衝液はpH6.1酢酸カルシウムである。
【0066】
リポペプチドは、2〜40%の低分子量または多価アルコール、0.001〜0.5Mの塩、および0.005〜0.2MのpH緩衝剤を含む溶液から、ハンギングドロップ蒸気拡散法を用いて沈殿されるかまたは結晶化される。好適な一実施形態において、リポペプチドは、3〜30%の低分子量または多価アルコール、0.01〜0.3Mの塩、および0.01〜0.1MのpH緩衝剤を含む溶液から、沈殿されるかまたは結晶化される。より好適な一実施形態において、リポペプチドは、5〜20%の低分子量または多価アルコール、0.02〜0.1Mの塩、および0.02〜0.07MのpH緩衝剤を含む溶液から、沈殿されるかまたは結晶化される。与えられる溶液はポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEG−MME)を含んでもまたは含まなくてもよい。
【0067】
リポペプチドは、65〜95%の低分子量または多価アルコール、0.001〜0.5Mの塩、および0.001〜0.2MのpH緩衝剤を含む溶液から、バッチ結晶化を用いて沈殿されるかまたは結晶化される。一つの好適な実施形態において、リポペプチドは、70〜90%の低分子量または多価アルコール、0.005〜0.04Mの塩、および0.005〜0.04MのpH緩衝剤を含む溶液から、沈殿されるかまたは結晶化される。一部の実施形態において、リポペプチドは、3〜8%の有機沈殿剤も含む溶液から、結晶化される。より好適な一実施形態において、リポペプチドは、80〜85%の低分子量または多価アルコール、0.01〜0.03Mの塩、および0.01〜0.03MのpH緩衝剤を含む溶液から、沈殿されるかまたは結晶化される。一部の実施形態において、溶液はさらに約4〜5%の有機沈殿剤、たとえばPEGまたはPEG−MMEを含む。別の実施形態において、与えられる溶液はポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEG−MME)を含まない。
【0068】
リポペプチドは、沈殿または結晶の形成を達成するため、約0℃から約30℃までの温度でそれぞれ沈殿されるかまたは結晶化される。好適な一実施形態において、リポペプチドは、約20〜30℃の温度で結晶化または沈殿される。より好適な一実施形態において、混合物は約23〜28℃で結晶化または沈殿された。さらにより好適な一実施形態において、混合物は約27℃で結晶化または沈殿された。混合物は結晶化または沈殿が結果として生じるどのような期間のあいだでも、好ましくは約1時間から約2週間、結晶化または沈殿されうる。好適な一実施形態において、混合物は約3時間から約24時間の期間、より好ましくは約8〜18時間の期間、保存される。
【0069】
リポペプチド結晶または結晶様粒子は、制限なく、針状、棒状、いが状、薄片状、板状、またはその集団の形状を有する。一実施形態において、リポペプチド結晶または結晶様粒子はいが状、棒状または針状である。結晶または結晶様粒子の形状は、特に、光学または電子顕微鏡法によって測定しうる。別の一実施形態において、リポペプチド結晶または結晶様粒子はどの次元でも少なくとも直径約0.5μmであるどのような大きさでもありうる。より好適な一実施形態において、リポペプチド結晶または結晶様粒子は少なくとも5μmであり、より好ましくは少なくとも10μmである。さらにより好適な一実施形態において、リポペプチド結晶または結晶様粒子は少なくとも50μmであり、より好ましくは少なくとも100μmである。結晶の大きさは、当該技術分野で通常の技能を有する者に知られているどのような方法によっても測定しうる。たとえば、米国薬局方(USP)、pp.1965−67を参照のこと。
【0070】
結晶性または結晶様リポペプチドの特性は、当該技術分野で通常の技能を有する者に知られているどのような方法によっても測定しうる。測定しうる特性は、結晶性または結晶様リポペプチドの大きさ、形状、複屈折特性、粉末X線回折特性、固体NMR特性、融点および熱、光、湿度に対する安定性、および分解を含む。好適な一実施形態において、当該技術分野で通常の技能を有する者はリポペプチドが結晶性かどうかを粉末X線回折によって決定することができる。粉末X線回折は、試料が小さい結晶が不規則に配列した集団であるとき、調製物が結晶性かどうかを決定するのに非常に有用である。不規則に配列した微結晶の塊の回折によって、試験した分子およびその構造の特徴を示す一連の線または輪が(検出器に依存して)得られる。一つの好適な実施形態において、リポペプチドが結晶性かどうか決定するため、粉末回折が自動粉末回折装置によって測定される。たとえば粉末回折のためのDebye−Scherrer法の考察についてこの参照により開示に含まれるAtkinsら、PHysical Chemistry、pp.710−716(1978)を参照のこと。当該技術分野において既知であるどのような粉末回折用検出器でもを装備した当該技術分野において既知であるどのような粉末回折装置でも回折パターンの測定に用いることができる。
【0071】
本発明の一つの好適な実施形態において、リポペプチドは約pH5.0および9.5の間の緩衝剤、塩、およびアルコールを用いて、約24〜28℃の温度で、約3〜24時間の期間、結晶化または沈殿される。一つの好適な実施形態において、塩は緩衝剤でありまた二価陽イオンを含み、またアルコールは低分子量アルコールであり、またpHは約pH5.5と7.5の間である。さらにより好適な一実施形態において、塩はカルシウム塩であり、アルコールはイソプロパノールであり、pHは約pH5.9と6.3の間である。溶液が有機沈殿剤を含む実施形態では、好ましくは、有機沈殿剤はPEG4000またはPEG8000である。別の一実施形態において、リポペプチドは、12〜18%のグリセロール、0.3〜0.8の塩、0.03〜0.08のpH緩衝剤、および12〜18%のPEG600を含む溶液から沈殿されるかまたは結晶化される。さらにより好適な一実施形態において、リポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。実施形態2〜3は、高純度の結晶様ダプトマイシンを沈殿させる方法を提供する。当該技術分野で通常の技能を有する者は、本明細書の教示に従って、ダプトマイシン、ダプトマイシン関連リポペプチド、または目的の他のリポペプチドを結晶化または沈殿させるために、実施形態に示した結晶化または沈殿の条件を変更することができる。さらに、本明細書の教示はリポペプチドの精製のための方法における単一の結晶化または沈殿の工程の使用を記述しているが、当該技術分野で通常の技能を有する者は、本明細書の教示に従って、リポペプチドの精製のための方法において複数の結晶化または沈殿の工程を使用することができる。ここに開示されたように、リポペプチドの純度をさらに向上させるために複数回の結晶化または沈殿を行うことは有利であろう。
【0072】
結晶化または沈殿の後、結晶性物質または結晶様沈殿物は当該技術分野において既知であるどのような方法によっても回収することができる。一つの好適な実施形態において、結晶性物質または結晶様沈殿物は遠心分離または濾過によって回収される。さらにより好適な一実施形態において、リポペプチドを製造するための大規模製法に濾過は容易に組み込まれるため、結晶性物質または結晶様沈殿物は濾過によって回収される。結晶性物質または結晶様沈殿物が回収された後、結晶性物質または結晶様沈殿物は過剰の結晶化または沈殿試薬を除去するため洗浄してもよい。結晶性物質または結晶様沈殿物を目につくほど溶解しない限り、当該技術分野において既知であるどのような洗浄溶媒でも選択されうる。洗浄溶媒の一例を実施例12に提供する。結晶性物質または結晶様沈殿物を洗浄した後、結晶性物質または結晶様沈殿物は当該技術分野において既知であるどのような方法によって乾燥してもよい。乾燥方法の例としては風乾、凍結乾燥(フリーズドライ)あるいはデシケータ乾燥がある。好適な一実施形態において、結晶性物質または結晶様沈殿物はデシケータ乾燥される。たとえば実施例12を参照のこと。別の一実施形態において、結晶性リポペプチドの安定性はその残余抗生物質活性またはその分解によって測定されうる。抗生物質活性は、さまざまな細菌菌株に対する標準の寒天拡散法で測定されうる。たとえば、特にこの参照により開示に含まれる米国特許第4,537,717号の実施例32を参照のこと。分解量は、特に、国際公開第01/53330号パンフレット(2001年7月26日公開)に記載されたようにHPLC分析によって測定されうる。好適な一実施形態において、結晶性リポペプチドの安定性はリポペプチドの非晶性の形態の安定性よりも大きい。結晶性リポペプチドの安定性は、結晶性リポペプチドおよびその非晶形リポペプチドを熱、光、湿度に暴露し、結晶形態の分解程度を非晶形態の分解程度と測定することによって決定されうる。
【0073】
リポペプチドの分解は、リポペプチドの生物活性、または適用しうる任意の物理パラメータを測定することによって測定されうる。一実施形態において、分解はリポペプチドの特定の生物活性を、熱、光、湿度、pH変化または極端なpHの下に置かれた後に測定し、それをリポペプチドのすべての安定性試験以前の同じ生物活性と比較することによって測定されうる。分解量はたとえば、安定性試験の後に残存している生物活性の割合を測定することによって測定されうる。残存生物活性の割合は、同じ試験に供された非晶形リポペプチドの残存生物活性の割合と比較しうる。一実施形態において、リポペプチドが抗生物質であれば、結晶性リポペプチドは抗生物質活性について安定性試験の前後両方に試験され、分解試験の前後に試験された非晶性リポペプチドと比較されうる。一つの好適な実施形態において、リポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドであり、生物活性試験はリポペプチドのグラム陽性細菌に対する抗生物質活性の大きさを決定する。
【0074】
リポペプチドの分解はまた、物理的分析によっても測定されうる。一実施形態において、安定性試験後に残っている未変化の結晶性リポペプチドの割合を測定することによって分解は測定されうる。残存する未変化のリポペプチドの割合は、同じ安定性試験に供された非晶形リポペプチドの残存する未変化のリポペプチドの割合と比較されうる。好適な一実施形態において、リポペプチドの分解はHPLC、紫外分光、赤外分光、NMR、または質量分析によって測定されうる。さらにより好適な一実施形態において、結晶性リポペプチドが安定性試験に供された後に残っている未変化のリポペプチドの割合を測定するのにHPLCが用いられる。
【0075】
どのような理論に縛られることも求めず、出願人は、ダプトマイシンは上記の方法によって結晶化されると信じる。しかし、ダプトマイシン結晶を洗浄および/または乾燥することは、ダプトマイシン結晶性物質を、非晶性であるがなお結晶様である形態に戻す原因となると考えられている。にもかかわらず、上記の方法がダプトマイシンもしくは他のリポペプチドを結晶化させるよりただ沈殿させるとしても、本方法はリポペプチドを精製するため、本方法はなお有利である。
【0076】
本発明はまた、上記の方法で製造された結晶性または結晶様リポペプチドを提供する。一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドが含む一以上の不純物の量が結晶化または沈殿前のリポペプチドと比較して少ない。一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドはダプトマイシンが含む無水ダプトマイシンおよび/またダプトマイシンのβ−異性体の濃度が結晶化または沈殿前のダプトマイシンと比較して低い。別の一実施形態において、結晶性または結晶様ダプトマイシンが含むすべての不純物の濃度が非晶性ダプトマイシンと比較して低い。同様に、別の一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドはダプトマイシン関連リポペプチドであり、上記の通り、含有する一以上の不純物の濃度が非晶形ダプトマイシン関連リポペプチドと比較して低い。さらにもう一つの実施形態において、結晶性または結晶様ダプトマイシン関連リポペプチドが含むすべての不純物の濃度が非晶形ダプトマイシン関連リポペプチドと比較して低い。
【0077】
上記の方法で製造された結晶性または結晶様リポペプチドは、一価または二価の陽イオンおよび水を含む可能性が高い。好適な一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドは、二価の陽イオンを含むダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。より好適な一実施形態において、二価の陽イオンはカルシウム陽イオンである。さらにより好適な一実施形態において、結晶性または結晶様ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドは、原子吸光または熱重量分析による測定で、重量で約1〜10%の二価カルシウム陽イオンおよび重量で約0〜15%の水を含む。より好適な一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドはダプトマイシンであって重量で約5%の二価カルシウム陽イオンおよび重量で約10%の水を含み;HPLC分析によると、結晶性または結晶様ダプトマイシンの純度は、関連化合物および有機夾雑物と相対的に、少なくとも95%、96%、97%または98%あるいは95〜98%の間のいずれかの純度である。あるいは、結晶性または結晶様ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドは、ナトリウムのような一価陽イオンを含む。どのような理論に縛られることも求めず、ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドは結晶化または沈殿するときに一価または二価陽イオンと塩を形成すると考えられている。
【0078】
結晶形態のリポペプチドは、非晶形リポペプチドよりも、溶液中で増大した溶解度を示すかまたは溶液中で増大した再構成速度を示しうる。結晶性リポペプチドが増大した溶解度または増大した再構成速度を示すかどうかを測定するには、当該技術分野において既知であるどのような方法をも使用しうる。たとえば、結晶性リポペプチドの定められた量を水溶液に溶解し、溶解したリポペプチドの濃度を測定して、等量の非晶性リポペプチドを水溶液に溶解して調製した溶解リポペプチドの濃度と比較することができる。同様に、結晶性リポペプチドを水溶液に加え、次いで溶解したリポペプチドの濃度を時間に沿って測定しそれを同様の方法で測定した非晶性リポペプチドの再構成速度と比較することによって、結晶性リポペプチドの再構成速度を測定することができる。リポペプチドの濃度はHPLCで測定される。
【0079】
上記の方法は、結晶化または沈殿された元の非晶性リポペプチドよりも純粋である結晶性または結晶様リポペプチドの生産を提供する。一実施形態において、リポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。別の一実施形態において、ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドの純度は結晶化の前には92%だけであり、結晶様リポペプチドとして結晶化または沈殿した後の純度は少なくとも純度約95%、96%、97%または98%、あるいは95〜98%の間のいずれかの純度である。さらにより好適な一実施形態において、ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドの純度は結晶化の前には90%だけであり、結晶化後の純度は少なくとも純度約97%または98%である。
【0080】
別の一実施形態において、ダプトマイシンの純度は結晶化または沈殿の前には80%だけ、好ましくは70%だけ、より好ましくは60%だけであり、精製後は少なくとも純度約95%、96%、97%または98%、あるいは95〜98%の間のいずれかの純度である。別の一実施形態において、ダプトマイシンの純度は結晶化の前には50%だけ、好ましくは40%だけ、より好ましくは30%だけであり、結晶化または沈殿による精製後には少なくとも純度約95%、96%、97%または98%、あるいは95〜98%の間のいずれかの純度である。さらに好適なのは、ダプトマイシンの純度は結晶化の前には20%だけ、より好ましくは15%だけ、さらにより好ましくは10%だけであり、精製後には少なくとも純度約95%、96%、97%または98%あるいは95〜98%の間のいずれかの純度である一実施形態である。
【0081】
より好適な一実施形態において、リポペプチドはダプトマイシンである。ダプトマイシン調製物は、たとえば特にこの参照により開示に含まれる米国特許第RE32,333号、第RE32,455号、第4,800,157号、第RE32,310号、第RE32,311号、第4,537,717号、第4,482,487号、第4,524,135号、第4,874,843号、第4,885,243号または第5,912,226号、のいずれかで開示されたどの方法によっても得ることができる。ダプトマイシン調製物はまた国際公開第01/53330号パンフレット(2001年7月26日公開)に記載された方法の一つによっても得ることができる。リポペプチド調製物が調製された後、リポペプチド調製物は、結晶性または結晶様リポペプチドが調製された元のリポペプチド調製物よりも純度が高いかまたは、たとえば無水ダプトマイシンといった特定の不純物を含む濃度が低い、結晶性または結晶様リポペプチドを製造するための本明細書に記載された教示に従って結晶化または沈殿される。
【0082】
発酵培養物から精製リポペプチドを製造する方法
本発明のもう一つの実施形態は、精製リポペプチドを製造するための処理クロマトグラフィーの工程と結晶化または沈殿工程とを組み合わせた方法を描いている。一つの好適な実施形態において、本方法は、たとえば天然生物または組み換え生物による発酵といった当該技術分野において既知であるいずれかの手段を用いてリポペプチドを製造する工程と、次いでリポペプチド調製物を部分的に精製されたリポペプチド調製物を製造するためにたとえば精密濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、および/またはサイズ排除クロマトグラフィー(従来のサイズ排除クロマトグラフィー媒体を介して、または限外濾過を介して)といった一以上のいずれかの精製方法に供する工程、その後精製された結晶性または結晶様リポペプチドを得るためにリポペプチド調製物を結晶化または沈殿させる工程を含む。一つの好適な実施形態において、リポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。発酵、精密濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーおよび限外濾過に関する工程は当該技術分野で、たとえば米国特許第RE32,333号、第RE32,455号、第4,800,157号、第RE32,310号、第RE32,311号、第4,537,717号、第4,482,487号、第4,524,135号、第4,874,843号、第4,885,243号または第5,912,226号、国際公開第01/53330号(2001年7月26日公開)のいずれかで開示されている。
【0083】
本方法は、結晶化または沈殿の工程後に、回収および/または洗浄する工程を必要に応じて含む。好適な一実施形態において、結晶性リポペプチド調製物は濾過によって回収されうる。別の一実施形態において、結晶性または結晶様の物質は乾燥される。
【0084】
一実施形態において、精製法はダプトマイシンを含む発酵培養物を得るためにStreptomyces roseosporusを発酵させることを含む。一実施形態において、S.roseosporusは米国特許第4,885,243号中の記載の通りに発酵させることができる。別の一実施形態において、A−21978C0−を含む粗産物がStreptomyces roseosporusによって生産される発酵条件が、ダプトマイシンの生産を増加させS.roseosporus発酵培養物に生産される不純物および関連する夾雑物を減少させるために 国際公開第01/53330号パンフレット(2001年7月26日公開)に記載されたように変更されている。国際公開第01/53330号は、’243特許に記載されたようにStreptomyces roseosporusを発酵させることを記載していて、デカン酸の供給が発酵の全体終了を減少させることなく可能な最低レベルに保たれているという変更がある。
【0085】
あるいは、ダプトマイシンは細菌菌株または組み換えによってダプトマイシンを生産する他の生産生物を発酵させることによって得ることができる。一実施形態において、組み換え細菌菌株または他の組み換え生物は、ダプトマイシン生合成遺伝子群を含む。別の一実施形態において、ダプトマイシン生合成遺伝子群またはその一部は細菌人工染色体(BAG)を介して生物または細菌菌株に導入される。別の一実施形態において、使用した組み換え細菌菌株は、ダプトマイシン生合成遺伝子群を含むBAGを含むS.roseosporusまたはS.lividansである。米国仮出願第60/272,207号(2001年2月28日出願)は、S.roseosporus由来ダプトマイシン生合成遺伝子群およびその用法を記載しており、この参照によりその全体が開示に含まれる。
【0086】
発酵後に、当該技術分野において既知である通り、または国際公開第01/53330号に記載された通り、発酵培養液は遠心分離、精密濾過または抽出によって清澄化される。一つの好適な実施形態において、清澄化は精密濾過によって行われる。たとえば実施例13〜16および図11〜15を参照のこと。図11は結晶化または沈殿を用いない典型的な製造方法を示している。
【0087】
発酵培養液を清澄化した後、培養液中のダプトマイシン濃度は約5〜10%である。本発明の一実施形態において、ダプトマイシン調製物は精密濾過の直後に、上記の結晶化または沈殿工程に供される。一実施形態において、結晶化または沈殿は無菌条件下で行われる。結晶化または沈殿の完了後、下記にさらに詳述する通り、結晶性または結晶様ダプトマイシンは必要に応じて回収され、洗浄され乾燥される。乾燥バルク活性薬は次いで滅菌バイアルを乾燥充填するのに用いることができる。たとえば実施例16および図12を参照のこと。
【0088】
発酵培養液を清澄化した後、当該技術分野において既知である通り、または国際公開第01/53330号またはここに記載された通り、陰イオン交換クロマトグラフィーによってリポペプチドを調製物中で濃縮することができる。たとえば実施例13〜14および図12〜13を参照のこと。陰イオン交換クロマトグラフィーの後、培養液中のダプトマイシンの純度は約35〜40%である。本発明の一実施形態において、ダプトマイシン調製物は次いで、陰イオン交換クロマトグラフィーの直後に、上記の結晶化または沈殿法に供される。一実施形態において、結晶化または沈殿は無菌条件下で行われる。結晶化または沈殿の完了後、下記の通り結晶性または結晶様ダプトマイシンは必要に応じて回収され、洗浄され乾燥される。乾燥バルク活性薬は次いで滅菌バイアルを乾燥充填するのに用いることができる。たとえば実施例14および図13を参照のこと。
【0089】
本発明の別の一実施形態において、ダプトマイシン調製物は、陰イオン交換クロマトグラフィーの後に、サイズ排除限外濾過に供される。サイズ排除限外濾過は、国際公開第01/53330号パンフレットに記載されている。この出願(2001年7月26日公開)は、呼び分子量(NMW)10,000から30,000の限外濾過膜を用いてダプトマイシンを発熱性物質除去、濾過および濃縮する方法を記載している。この出願は、たとえばエンドトキシンのような分子量の大きい不純物はフィルターによって保持される一方でリポペプチドは限外濾過膜を通過する方法を開示している。リポペプチドが膜を通過した後、リポペプチド溶液のpH、温度および/または塩濃度は、リポペプチドがミセルを形成するように変えられる。リポペプチド溶液は次いで、リポペプチドミセルが膜上に保持される一方でより小さい不純物がフィルターを通過する条件下において限外濾過膜で濾過される。この方法で、リポペプチドはさらに精製される。この出願は、リポペプチドミセルが形成されまた解離しうる条件と、また、より精製されたリポペプチドの応用を得るためのリポペプチドの濾過方法を開示している。さらにより好適な一実施形態において、リポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。リポペプチドは次いで、ここに記載の通り結晶化されうる。陰イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除限外濾過の両方の後、ダプトマイシンの純度は約80〜90%である。上記で議論した通り、ダプトマイシン調製物は次いで上記の結晶化または沈殿法に、好ましくは無菌条件下で供される。結晶性または結晶様ダプトマイシンは必要に応じて回収され、洗浄され、乾燥されてバイアルを乾燥充填するのに下記の通り用いることができる。たとえば実施例13および図12を参照のこと。
【0090】
本発明の別の一実施形態において、粗ダプトマイシン調製物は、陰イオン交換クロマトグラフィーなしでサイズ排除限外濾過に供される。サイズ排除限外濾過の後、ダプトマイシンの純度は約35〜40%である。リポペプチドは次いでここに記載の通り、好ましくは無菌的な方法で、結晶化または沈殿されうる。上記の通り、結晶性または結晶様ダプトマイシンは回収され、洗浄され、乾燥されて滅菌バイアルを乾燥充填するのに用いることができる。たとえば実施例15および図14を参照のこと。
【0091】
他の一実施形態において、リポペプチド調製物は陰イオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除限外濾過の後に、たとえば国際公開第01/53330号に記載の通り、疎水クロマトグラフィー(HlC)に供される。リポペプチドは次いでここに記載の通り、結晶化または沈殿されうる。
【0092】
結晶化または沈殿の後、結晶性または結晶様リポペプチドは、ここに記載の方法によって、たとえば濾過または遠心分離によって、回収されうる。結晶性または結晶様リポペプチドは、残存する結晶化または沈殿溶媒を除去するため必要に応じて洗浄される。結晶または結晶様物質を洗浄する方法は下に記載する。たとえば実施例3を参照のこと。洗浄されたまたは洗浄されない結晶または結晶様物質は乾燥されうる。乾燥は、制限なく、真空乾燥、スプレードライ、トレイ乾燥または凍結乾燥を含む当該技術分野において既知であるいずれかの方法を用いて行うことができる。一実施形態において、乾燥は無菌条件下で行われる。別の一実施形態において、乾燥は真空乾燥によって行われる。より好適な一実施形態において、乾燥は0.65mのKlein(商標)ハステロイ−Bダブルコーン型真空乾燥機または同等の機器を用いて行われる。乾燥した結晶性または結晶様リポペプチドは安定であり保存が容易である。
【0093】
一実施形態において、バイアルに乾燥した結晶性または結晶様リポペプチドの任意の扱いやすい量を充填する。一実施形態において、バイアルは無菌条件下で充填し、次いで栓をする。別の一実施形態において、バイアルに各50から5000mgの乾燥した結晶性または結晶様リポペプチドを充填する。別の一実施形態において、バイアルに各100から1000mgを充填する。別の一実施形態において、バイアルに各200から500 mgを充填する。別の一実施形態において、乾燥した結晶性または結晶様リポペプチドはリポペプチドのバルク包装に用いられる。バルク包装は通常、結晶性または結晶様リポペプチドが各5000mgより大きい。一実施形態において、バルク包装は無菌条件下で行われる。
【0094】
一実施形態において、結晶化または沈殿の工程は無菌条件下で行われる。この実施形態では、滅菌した結晶化または沈殿試薬および滅菌した、管理下にある作業環境が用いられる。一実施形態において、リポペプチドは無菌の結晶化または沈殿試薬と混合される前に、上記で開示されたように限外濾過膜で濾過される。結晶化または沈殿の後、結晶性または結晶様リポペプチド調製物は、無菌条件下で、遠心分離または濾過によって回収される。一実施形態において、リポペプチド調製物は滅菌濾過によって回収される。別の一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドは回収された後に滅菌される。無菌の結晶化、沈殿および濾過の方法は、医薬品最終製品を滅菌する方法と同様に、当該技術分野において既知である。たとえば、参照により開示に含まれるRemington: The Science and Practice of PHarmacy.Easton、 Pennsylvania: Mack Publishing Company (1995)、pp.1474−1487を参照のこと。
【0095】
別の一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドは乾燥されない。この実施形態では、結晶性または結晶様リポペプチドは、好ましくはリポペプチドの結晶性または結晶様の性質を維持する溶液中に保存する。バイアルには無菌または非無菌条件下でリポペプチドおよび溶液を詰めることができる。一実施形態において、その条件は無菌である。あるいは、結晶性または結晶様リポペプチドおよび溶液は大量包装を詰めるのに用いることができる。
【0096】
図10および11は結晶化を用いた典型的なダプトマイシン製造手順を描くフローチャートを提供する。製造手順に無菌の結晶化を組み込むことによって手順が相当に短縮され、工程のうち3〜4工程が無くなる。
【0097】
結晶性または結晶様リポペプチド医薬組成物およびその使用法
本発明のもう一つの目的は、結晶性または結晶様リポペプチドもしくはその塩、および結晶性または結晶様リポペプチドもしくはその塩を含む医薬品処方を提供することである。一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドはダプトマイシンである。しかし、ここでは結晶性または結晶様リポペプチドへの言及はすべて上記で開示された通り、特に、ダプトマイシン、A54145およびダプトマイシン関連リポペプチドを含む、ダプトマイシン、ダプトマイシン関連分子を特に考える。
【0098】
ダプトマイシン結晶または結晶様粒子、また他のリポペプチド結晶または結晶様粒子は、たとえば、特に、針状形、板状形、薄片状形、等方状形、いが状形、または棒状形といった形を有しうる。一実施形態において、ダプトマイシン結晶または結晶様粒子はいが状、針状または棒状の形を有する。結晶または結晶様粒子の大きさは約0.5μmから100μmより大まで変動しうる。一実施形態において、粒子の大きさは少なくとも5μm以上である。より好適な一実施形態において、粒子の大きさは少なくとも10μm以上であり、より好ましくは少なくとも50μmである。さらにより好適な一実施形態において、粒子の大きさは少なくとも100μmである。
【0099】
さらに、一実施形態において、ダプトマイシン結晶は図6、7および8に示すX線回折パターンを有する。別の一実施形態において、リポペプチド結晶は非晶形リポペプチドと比べて異なる融点を示す。
【0100】
本発明の一実施形態において、結晶形態のリポペプチドは、非晶形リポペプチドと等しいかまたはより大きい安定性を示す。好適な一実施形態において、結晶性リポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。別の好適な一実施形態において、結晶性リポペプチドは無菌である。別の好適な一実施形態において、結晶性リポペプチドの安定性は非晶形リポペプチドよりも大きい。結晶性リポペプチドは、熱、光、分解または湿度に対して非晶形リポペプチドより高い安定性を示しうる。リポペプチドの安定性は、たとえば抗生物質活性、リポペプチドの分解、またはダプトマイシンの無水ダプトマイシンもしくはダプトマイシンのβ−異性体への変換を含む任意の方法によって測定されうる。本発明の別の一実施形態において、結晶形態のリポペプチドは、非晶形リポペプチドよりも迅速に水溶液中で再構成されうる。
【0101】
たとえばダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドといった結晶性または結晶様リポペプチド、およびその医薬品として許容される塩、エステル、アミド、保護された形態は、疾患の、とりわけ細菌感染の治療的、実験的または予防的処置のために、経口、静脈内、筋肉内、皮下、エアロゾル、局所または非経口投与用に製剤処方されうる。ここで「結晶性または結晶様リポペプチド」または「結晶性または結晶様ダプトマイシン」への言及は、医薬品として許容されるその塩を含む。たとえばダプトマイシンといった結晶性または結晶様リポペプチドは、微小球の微粉末粒子として容易に製剤処方が可能で、そのため経口投与用に腸溶性コーティングされたリポペプチドを、またたとえば肺へのエアロゾル投与用に医薬品組成物を、また徐放性のリポペプチド処方の調製物を、容易に調製できるため、医薬組成物のために特に有利でありうる。結晶性または結晶様リポペプチド、および結晶性または結晶様ダプトマイシンは、またより容易に水溶液に溶解しうる。
【0102】
ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドを含む結晶性または結晶様リポペプチドは、ダプトマイシンもしくは目的のリポペプチドと適合する任意の、医薬品として許容される担体または賦形剤を用いて製剤処方されうる。ヒトの治療のためのさまざまな抗細菌剤の投与法の概要については、たとえば、内容がこの参照により開示に含まれるHandbook of Pharmaceutical Additives: An International Guide to More than 6000 Products by Trade Name、Chemical、Function、and Manufacturer、Ashgate Publishing Co.、M.AshおよびI.Ash編、1996;The Merck Index: An Encyclopedia of Chemicals、 Drugs and Biologicals、S.Budavari編、年刊;Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA;Martindale: The Complete Drug Reference、K.Parfitt編、1999;およびGoodman & Oilman’s The PHarmaceutical Basis of Therapeutics, Pergamon Press、New York、NY、L.S.Goodmanら編;を参照のこと。本発明の化合物は従来の医薬品担体および賦形剤と混合することができ、また錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、ウエハー、クリーム、などの形態で用いることができる。本発明の化合物はまた、ここで述べるような他の治療的薬剤および抗生物質と混合することができる。本発明の化合物を含む組成物は、重量にして約0.1〜90%の当該活性化合物を含み、より一般的には約10〜30%を含む。
【0103】
本発明の組成物は、制御放出(たとえばカプセル)または徐放性送達系(たとえば生分解性マトリクス)を用いて投与することができる。本発明の組成物に適した薬物送達のための典型的な遅延放出性送達系が米国特許第4,452,775号明細書(Kent宛)、第5,239,660号明細書(Leonard宛)、第3,854,480号明細書(Zaffaroni宛)に記載されている。
【0104】
本組成物はトウモロコシデンプンまたはゼラチン、乳糖、白糖、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウムおよびアルギン酸といった担体および賦形剤を含みうる。本組成物はクロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、およびアルギン酸を含みうる。
【0105】
含むことのできる錠剤結合剤は、アカシア、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、デンプン、およびエチルセルロースである。
【0106】
使用しうる滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムまたは他のステアリン酸金属塩、ステアリン酸、液体シリコーン、タルク、ロウ、油、およびコロイド状シリカを含む。
【0107】
たとえばハッカ、ウィンターグリーン油、チェリーフレーバーなどといった香料もまた使用することができる。剤形を外観上より美しくまたは製品を識別しやすくするため、着色料を添加するのもまた望ましい可能性がある。
【0108】
経口使用には、錠剤およびカプセル剤といった固形の処方が特に有用である。徐放性のまたは腸溶性コーティングされた製剤もまた考案することができる。別の一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドはリポペプチドの経口アベイラビリティを高める担体組成物と組み合わせて投与することができる。一つの好適な実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドはダプトマイシンである。小児および老人への使用には、懸濁剤、シロップおよびチュアブル錠が特に適切である。経口投与には、医薬組成物はたとえば錠剤、カプセル剤、懸濁剤または液体の形態である。医薬組成物は好ましくは、治療上効果的な量の有効成分を含む用量単位の形である。そのような用量単位の例は錠剤およびカプセル剤である。治療目的には、錠剤およびカプセル剤は有効成分に加えて、たとえばアカシアガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、またはトラガカントといった従来の担体;たとえばリン酸カルシウム、グリシン、乳糖、トウモロコシデンプン、ソルビトール、または白糖といった増量剤;たとえばステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、またはタルクといった滑沢剤;たとえばジャガイモデンプンといった崩壊剤、香料または着色料、または許容される湿潤剤を含むことができる。経口液体製剤は一般に水性または油性の溶液、懸濁剤、乳剤、シロップまたはエリキシルであり、たとえば懸濁剤、乳化剤、非水系剤、保存料、着色料、および香料といった従来の添加物を含みうる。経口液体製剤はリポペプチドミセルまたはリポペプチドのモノマー形を含みうる。液体製剤用の添加物の例はアカシア、アーモンド油、エチルアルコール、分画ココナツ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、水素添加食用油、レシチン、メチルセルロース、メチルまたはプロピル−パラ−ヒドロキシ安息香酸エステル、プロピレングリコール、ソルビトール、またはソルビン酸を含む。
【0109】
静脈内(IV)投与には、本発明の化合物の水溶性の形態を通常用いられる任意の静脈注射液に溶解し注入によって投与することができる。静脈注射処方は、カルシウム、ヒト血清アルブミン、クエン酸塩、酢酸塩、塩化カルシウム、炭酸塩、およびその他の塩を含み制限されない担体、賦形剤または安定剤を含みうる。静脈注射液は生理的食塩水またはリンゲル液を、制限なく含む。ダプトマイシンまたは他のリポペプチドはまた、注射器、カニューレ、カテーテル、および管路に入れることができる。
【0110】
非経口投与のための処方は、水系または非水系の等張無菌注射溶液または懸濁液の形態でありうる。これらの溶液または懸濁液は、経口投与用の処方における使用で言及した担体の一以上を含む無菌の粉末または顆粒から調製することができる。結晶状または結晶様リポペプチドはポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、および/またはさまざまな緩衝液に溶解することができる。筋肉内、非経口または静脈内製剤には、結晶状または結晶様リポペプチド化合物または当該化合物のたとえば塩酸塩といった適当な可溶性塩の形態の無菌処方を、たとえば注射用水(WFI)、生理的食塩水または5%ブドウ糖といった医薬品の希釈剤に溶解して投与することができる。結晶状または結晶様リポペプチド化合物の適当な不溶性の形態もまた、水系基剤かまたは、たとえばオレイン酸エチルのような長鎖脂肪酸エステルといった医薬品として許容される油系基剤中の懸濁液として調製および投与することができる。
【0111】
たとえばポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中に結晶状または結晶様リポペプチドのマイクロカプセルマトリクスを形成することによって、蓄積注射剤形態を作成することができる。ポリマーに対する薬剤の比率、および使用する特定のポリマーの性質に従って薬剤放出速度を制御しうる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドリド)を含む。注射用蓄積処方はまた、体組織と適合しうるマイクロエマルジョン中に薬剤を捕捉することによっても調製しうる。
【0112】
局所使用については、本発明の化合物はまた肌あるいは鼻および喉の粘膜に使用するのに適当な形態に作成することができ、クリーム、軟膏、液体スプレー、または吸入剤、トローチ、喉塗布剤の形態を取ることができる。そうした局所処方はさらに、活性成分の表面浸透を助けるジメチルスルホキシド(DMSO)といった化学化合物を含むことができる。局所用製剤には、たとえば結晶性または結晶様ダプトマイシン、適当なその塩の形態といった結晶性または結晶様リポペプチドを含む無菌処方を、クリーム、軟膏、スプレー、または他の局所用剤として投与しうる。局所用製剤はまた、リポペプチド組成物を含浸した絆創膏の形態にもなりうる。
【0113】
眼または耳への使用には、本発明の化合物は軟膏、クリーム、ローション、塗布剤または粉末として疎水性または親水性基剤中に処方した液体または半液体の剤形で投与することができる。
【0114】
直腸投与には、本発明の化合物はたとえばココアバター、ワックスまたは他のグリセリドといった従来の担体と混和した座剤の形態で投与することができる。
【0115】
エアロゾル製剤には、結晶性または結晶様リポペプチドまたは当該化合物の塩の形態の無菌処方を、たとえばと計量式吸入器といった吸入器、およびネブライザーで用いることができる。エアロゾル化された剤形は、肺炎および副鼻腔感染といった呼吸器感染の治療に特に有用である。
【0116】
あるいは、本発明の化合物は、適当な医薬品として許容される担体中での投与時の再構成のために、粉末の結晶性または結晶様の形態で用いることができる。別の一実施形態において、化合物の単位用量剤形は、無菌の密栓されたアンプル中で適当な希釈剤中にある化合物またはその塩の溶液となりうる。化合物の単位用量中の濃度は、使用する化合物によって、またその溶解度、および医師が目的とする用量によって、たとえば約1%から約50%まで変動しうる。組成物が用量単位を含むとき、各用量単位は好ましくは約10〜5000mgの活性物質を含み、より好ましくは50〜1000mg、そしてさらにより好ましくは100〜500mgを含む。成人の治療には、投与経路および頻度に従って、使用する用量は好ましくは一日当たり100mg〜3gの範囲で変動する。
【0117】
さらに、本発明は対象の中でグラム陽性細菌によって起こった感染を治療する方法を提供する。一つの好適な実施形態において、本方法はグラム陽性細菌によって引き起こされた感染を治療するのに使用することができる。「治療する」の語は、感染症の発症を防ぎ、またはたとえば既存の感染というような感染を抑えあるいは消滅させる、その両方のために、対象に治療上効果的な量の本発明の化合物を投与することと定義される。ここでいう「対象」の語は、哺乳類、植物、または培養細胞と定義される。ここで用いる「治療上効果的な量」の句は、本発明によると症状の始まりを妨げ症状を軽くし、または細菌感染の進行を止める、ダプトマイシン、ダプトマイシン関連リポペプチドまたは他の抗菌性リポペプチドのある量を意味する。一つの好適な実施形態において、対象はリポペプチド治療を必要とするヒトまたはその他の患畜である。既存の感染は急性または慢性でありうる。効果的な用量は一般に約0.1と約75mg/kgの間の、たとえば結晶性または結晶様ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチド、または医薬品として許容されるその塩といった結晶性または結晶様リポペプチドである。好適な用量は約1から約25mg/kgの結晶性または結晶様ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドまたは医薬品として許容されるその塩である。より好適な用量は、約1から約12mg/kgの結晶性または結晶様ダプトマイシン、結晶性または結晶様ダプトマイシン関連リポペプチドまたは医薬品として許容されるその塩である。さらにより好適な用量は、約3から8mg/kgの結晶性または結晶様ダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドまたは医薬品として許容されるその塩である。抗菌薬を投与する典型的な手順は、全体がこの参照により開示に含まれる米国特許第5,041,567号明細書(Rogers宛)および国際公開第95/05384号パンフレットに記載されている。
【0118】
たとえばダプトマイシンといった結晶性または結晶様リポペプチドは、一日一回投与または一日当たり複数回投与によって投与することができる。治療計画は、たとえば数日間または2〜4週間といった長期に渡る投与を要しうる。投与用量当たりの量または総投与量は、感染の性質と重傷度、患者の年齢と全般的健康状態、リポペプチドおよび微生物に対する患者の耐性、または感染に関わる微生物、といった要素に依存する。投与方法は、この参照により開示に含まれる国際公開第00/18419号(2000年4月6日公開)に開示されている。
【0119】
本発明の方法は、グラム陽性細菌感染を低減または消失させるのに有効な量で本発明の化合物、またはその医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む。リポペプチドは経口、非経口で、吸入、局所、直腸、鼻、頬、膣、または埋め込みリザーバ、外部ポンプまたはカテーテルによって投与することができる。リポペプチドは眼科用またはエアロゾル化した使用のために調製することができる。本発明の化合物、またはその医薬組成物はまた、腫瘍、心室、または関節に直接注射、または非経口投与することができる。非経口投与は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液中、脳槽内、クモ膜下、肝内、病変内および頭蓋内注射または輸液を含む。好適な一実施形態において、結晶性または結晶様ダプトマイシン、ダプトマイシン関連リポペプチドまたは他のリポペプチドは静脈内、皮下または経口で投与される。
【0120】
本発明の方法は、感染が任意の種類のグラム陽性細菌によって引き起こされまたは悪化する細菌感染を有する患者の治療に用いることができる。一つの好適な実施形態において、結晶性または結晶様ダプトマイシン、ダプトマイシン関連リポペプチドまたは他のリポペプチド、またはその医薬組成物、は本発明の方法に従って患者に投与される。別の一実施形態において、細菌感染はメチシリン感受性およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemotyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を含む)、グリコペプタイド低感受性黄色ブドウ球菌(GISA)、ペニシリン感受性およびペニシリン耐性連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus avium、Streptococcus bovis、Streptococcus lactisを含む)、Streptococcus sangiusおよびC群連鎖球菌、G群連鎖球菌および緑色レンサ球菌群)、腸球菌(たとえばEnterococcusfaecalisとEnterococcusfaeciumといったバンコマイシン感受性およびバンコマイシン耐性菌株を含む)、Clostridium difficile、Clostridium clostridiiforme、Clostridium innocuum、Clostridium perfringens、Clostridium ramosum、Haemophilus influenzae、Listeria monocytogenes、Corynebacterium jeikeium、Bifidobacterium spp.、Eubacterium aerofaciens、Eubacterium lentum、Lactobacittus acidophilus、Lactobacillus casei、Lactobacilttus plantarum、Lactococcus spp.、Leuconostoc spp.、Pediococcus、Peptostreptococcus anaerobius、Peptostreptococcus asaccarolyticus、Peptostreptococcus magnus、Peptostreptococcus micros、Peptostreptococcus prevotii、Peptostreptococcus productus、Propionibacterium acnes、およびActinomyces spp.を含むがそれらに限らない細菌によって引き起こされるかまたは悪化する。
【0121】
古典的「耐性」菌株に対するダプトマイシンの抗菌活性は、in vitro実験において古典的「感受性」菌株に対する抗菌活性と比較しうる。加えて、感受性菌株に対するダプトマイシンの最小発育阻止濃度(MIC)値は典型的にはバンコマイシンの値より4倍低い。したがって、好適な一実施形態において、本発明の化合物、またはこれらの結晶性または結晶様リポペプチドのうち任意の一つの医薬組成物が、本発明の方法に従って、バンコマイシンを含む他の抗生物質に耐性の細菌感染を示す患者に投与される。さらに、グリコペプタイド抗生物質とは違って、グラム陽性細菌に対してダプトマイシンは迅速かつ濃度依存性の殺菌活性を示す。従って、一つの好適な実施形態において、本発明の化合物、またはこれらの結晶性または結晶様リポペプチドのうち任意の一つの医薬組成物が、本発明の方法に従って、速効性抗生物質治療を必要としている患者に投与される。
【0122】
本発明の方法は体の任意の器官または組織のグラム陽性細菌感染に使用することができる。これらの器官または組織は、制限なく、骨格筋、皮膚、血流、腎臓、心臓、肺そして骨を含む。本発明の方法は、制限なく、皮膚および軟組織感染、菌血症および尿路感染症の治療に用いることができる。本発明の方法は、制限なく、中耳炎、副鼻腔炎、および薬物耐性肺炎球菌またはHaemophilus influenzaeによって引き起こされた慢性気管支性肺炎を含む呼吸器感染症に罹患した地域社会の治療に用いることができる。本発明の方法はまた、好気性、糞食性または嫌気性細菌を含む異なる種類のグラム陽性細菌を含む混合感染を治療するのに用いることもできる。これらの感染の型は、腹腔内感染、肺炎、骨および関節感染および産科/婦人科感染を含む。本発明の方法はまた、制限なく、心内膜炎、腎炎、敗血性関節炎および骨髄炎を含む感染を治療するのに用いることもできる。一つの好適な実施形態において、上記の疾患のいずれもが結晶性または結晶様ダプトマイシン、ダプトマイシン関連リポペプチド、抗菌性リポペプチド、またはこれらの結晶性または結晶様リポペプチドの任意の一つの医薬組成物を用いて治療することができる。
【0123】
結晶性または結晶様ダプトマイシン、ダプトマイシン関連リポペプチドまたは他のリポペプチドはまた、患者または動物の食事または餌に入れて投与することができる。総食餌摂取の一部として投与される場合、ダプトマイシンもしくは他のリポペプチドの量は重量にして食餌の1%未満に、好ましくは重量で0.5%だけにすることができる。動物の食餌は通常の食物にすることができ、ダプトマイシンもしくは他のリポペプチドを加えることができるかまたは、ダプトマイシンもしくは他のリポペプチドを配合飼料に加えてもよい。
【0124】
本発明の方法はまた、同時にたとえば結晶性または結晶様でない他の形態のダプトマイシンもしくは他のリポペプチド抗生物質を、または結晶性または結晶様ダプトマイシンもしくは他の結晶性または結晶様リポペプチド抗生物質以外の一以上の抗真菌薬および/または一以上の抗生物質を投与しながら実施することもできる。結晶性または結晶様ダプトマイシンもしくは他のリポペプチド抗生物質以外の抗真菌薬および抗生物質の同時投与は、たとえば異なる種類のグラム陽性細菌によって引き起こされる混合感染、または細菌と真菌の両方によって引き起こされる混合感染に有用である可能性がある。さらに、結晶性または結晶様ダプトマイシンもしくは他のリポペプチド抗生物質が、一以上の同時投与される抗生物質の毒性プロファイルを改善しうる。ダプトマイシンおよびアミノグリコシドの投与が、そのアミノグリコシドによって生じる腎毒性を改善しうることが示されている。一つの好適な実施形態において、抗生物質および/または抗真菌薬を本発明の化合物と、または本発明の化合物を含む医薬品組成物中に、同時に投与しうる。
【0125】
本発明の化合物と同時に投与してよい抗菌薬およびその分類は、制限なく、ペニシリン類および関連する薬剤、カルバペネム類、セファロスポリン類および関連する薬剤、アミノグリコシド類、バシトラシン、グラミシジン、ムピロシン、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、フシジン酸ナトリウム、リンコマイシン、クリンダマイシン、マクロライド類、ノボビオシン、ポリミキシン類、リファマイシン類、スペクチノマイシン、テトラサイクリン類、バンコマイシン、テイコプラニン、ストレプトグラミン類、スルフォンアミド類、トリメトプリムおよびその組み合わせを含む抗葉酸剤、ピリメタミン、ニトロフランを含む合成抗細菌剤、マンデル酸メタナミンおよび馬尿酸メタナミン、ニトロイミダゾール類、キノロン類、フルオロキノロン類、イソニアジッド、エタンブトール、ピラジナミド、パラ−アミノサリチル酸(PAS)、シクロセリン、カプレオマイシン、エチオナミド、プロチオナミド、チアセタゾン、ビオマイシン、エバニノマイシン、グリコペプタイド、グリシルサイクリン、ケトリド類、オキサゾリジノン;イミペネン、アミカシン、ネチルミシン、フォスフォマイシン、ゲンタマイシン、セフトリアキソン、ジラシン、LY333328、CL331002、HMR3647、リネゾリド、シナシッド、アズトレオナム、およびメトロニダゾール、エピロプリム、OCA_983、GV_143253、サンフェトリネムナトリウム、CS_834、ビアペネム、A_99058.1、A_l65600、A_l79796、KA159、ディネマイシンA、DX8739、DU6681;セフルプレナム、ER35786、セフォセリス、サンフェトリネム セレキセティル、HGP_31、セフピローム、HMR_3647、RU_59863、メルサシジン、KP736、リファラジル;コサン、AM1732、MEN10700、レナペネム、BO2502A、NE_1530、PR39、K130、OPC20000、OPC2045、ベネプリム、PD138312、PD 140248、CP111905、スロペネム、リチペナム アコキシル、RO_65_5788、シクロチアリジン、Sch_40832、SEP_132613、ミカコシジンA、SB_275833、SR_15402、SUN A0026、TOC39、カルモナム、セフォゾプラン、セフェタメト ピボキシル、およびT3811を含む。
【0126】
一つの好適な実施形態において、本発明に従って化合物と同時投与しうる抗菌薬は、制限なく、イミペネン、アミカシン、ネチルミシン、フォスフォマイシン、ゲンタマイシン、セフトリアキソン、テイコプラニン、ジラシン、LY333328、CL331002、HMR3647、リネゾリド、シナシッド、アズトレオナム、およびメトロニダゾールを含む。
【0127】
本発明に従って化合物と同時投与しうる抗真菌薬は、制限なく、カスポフンゲン、ボリコナゾール、セルタコナゾール、IB_367、FK_463、LY_303366、Sch_56592、シタフロキサシン、アンフォテリシン、ナイスタチン、プリマリシンといったDB_289ポリエン類;フルコナゾール、イトラコナゾール、およびケトコナゾールといったアゾール類;ナフチファインおよびテルビナファインといったアリルアミン類;そしてフルサイトシンといった抗代謝剤を含む。他の抗真菌薬は、制限なく、この参照により開示に含まれるFostelら、Drug Discovery Today 5:25−32(2000)で開示されているものを含む。Fostelらはコリネカンジン、Mer_WF3010、フサカンジン類、アートリキチン/LL15G256(ソルダリン類、シスペンタシン、アゾキシルバシリン、オーレオバシジンおよびカフレファンジンを含む抗真菌性化合物を開示している。
【0128】
本発明の化合物、またはこれらの結晶性または結晶様リポペプチドの任意の一以上の医薬組成物は、本方法に従って細菌感染が根絶または低減されるまで投与しうる。一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチド約3日間から約6ヶ月までの期間投与される。一つの好適な実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドは7から56日間投与される。より好適な一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドは7から28日間投与される。さらにより好適な一実施形態において、結晶性または結晶様リポペプチドは7から14日間投与される。結晶性または結晶様リポペプチドは、希望であればより長い期間またはより短い期間投与することができる。好適な一実施形態において、リポペプチドはダプトマイシンもしくはダプトマイシン関連リポペプチドである。
【0129】
本発明がより完全に理解されるように、以下の実施例を示す。これらの実施例は説明目的のためだけのものであり、いかなる方法によっても本発明の範囲を制限するものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0130】
ダプトマイシンは従来の方法によって調製された。ダプトマイシン調製物は淡黄色の非晶性の粉末で、25℃での溶解度は水に対して1g/mLより大であり、エタノールに対しての溶解度は2.8mg/mLであった。非晶性ダプトマイシン調製物は吸湿性であり、215℃で分解した。
【0131】
残りの実施例は、有機沈殿剤(たとえばPEG)の存在下または非存在下でのリポペプチドの結晶化または沈殿について記述する。
【実施例2】
【0132】
マイクロバッチ結晶化で、25μLのダプトマイシンストック(20mg/mLメタノール)を15μLの試薬ストック(200mM酢酸カルシウム、0.1Mカコジル酸(pH6.5)、18%[w/v]PEG8000および15μLのエチレングリコール)と連続的に混合し、水溶性成分が27.5%、45%メタノール、27.5%エチレングリコールである水溶液を得た。収率50%、HPLCで測定した純度が98%で、いが状結晶が形成された。
【実施例3】
【0133】
440mgのダプトマイシンを、25 mM 酢酸ナトリウム (pH5.0)と5 mM CaClを含む緩衝液1MLで溶解して、ダプトマイシンストックを調製した。結晶化は蒸気拡散法(ハンギングドロップ)によって行った。in which 5μLのダプトマイシンストックを5μLの0.1Mクエン酸三ナトリウム二水和物(pH5.6)、および35%[v/v] tert−ブタノール水溶液に加え、水滴を形成した。水滴は気密環境下で、結晶化が起こるまでリザーバ溶液の上につり下げられた。この方法ではいが状のダプトマイシン結晶が得られた。たとえば図2を参照のこと。
【実施例4】
【0134】
実施例3のように調製したダプトマイシンストックの5μLを、0.1Mカコジル酸ナトリウム(pH6.5)、0.2M酢酸カルシウムおよび9%[w/v]PEG 8000を含む溶液の5μLに加えた。結晶化は、実施例3に記載された通り、蒸気拡散法で行った。この方法では針状ダプトマイシン結晶が得られた。たとえば図3を参照のこと。
【実施例5】
【0135】
実施例3のように調製したダプトマイシンストックの5μLを、0.1μLのベンズアミジンを終濃度が220mg/mLとなるように含む0.1Mカコジル酸ナトリウム(pH6.5)、0.2M酢酸亜鉛および9%[w/v]PEG8000の溶液5μLに加えた。この方法では棒状ダプトマイシン結晶が得られた。たとえば図4を参照のこと。
【実施例6】
【0136】
水溶液中の濃度が20〜25mg/mLであるダプトマイシン1ML(HPLC測定の結果、純度97.1%)を続けて水231μL、酢酸カルシウム(pH6.0)77μL、プロピレングリコール960μL、そして50%[w/v]PEG4000の231μLと混合した。溶液は4〜5時間、4℃で静置した。収率75%でいが状結晶が得られた。結晶性ダプトマイシンはイソプロパノールで洗浄した。ダプトマイシンはHPLCによる測定で純度98.4%であった。
【実施例7】
【0137】
ダプトマイシン(200mg、純度97.1%)を水2.54mLに溶解した。ダプトマイシン溶液を続いて10.0mLのメタノール、0.78mLの1M酢酸カルシウム(pH6.0)、9.50mLのプロピレングリコール、そして2.20mLの50%[w/v]PEG4000と順序通り連続して混合し、最終量が25.02mLになった。混合物は室温で10〜14時間の間、血液ミキサー(Fischer)中で攪拌した。数時間内に結晶が出現し始めた。最終収量は14時間後で約70〜80%であった。結晶は1000rpm、15分間の遠心分離によって集めた。上清を除去し、結晶は12.5mLのイソプロパノールに再懸濁された。ダプトマイシン懸濁液をカラム(バイオラッド)に移し、重力によって落とさせてイソプロパノールを除去した。結晶は窒素竜によって乾燥した。乾燥処理の間に塊はすべて壊れ、均一な乾燥試料となった。この方法でできた結晶はいが状であって98.37%の純度を有した。
【実施例8】
【0138】
ダプトマイシンは、PEG4000の代わりにPEG8000を用いて実施例7に従って結晶化した。使用した試薬の量は実施例7と同一である。
【0139】
この方法で調製した結晶はいが状であって、98.84%の純度を有する。
【実施例9】
【0140】
2つのダプトマイシン試料は実施例7に従って調製し、1つの非晶性検体と結晶化度についてUSP<695>結晶化度試験を用いて調べた。ダプトマイシン粒子はスライドガラス上の鉱油に乗せられており、次いで偏光顕微鏡(PLM)で検査された。粒子は、複屈折性(干渉色が無い)で、試料台を回転させたとき消光点がある場合、結晶性と判定された。
【0141】
非晶性ダプトマイシン試料は、複屈折性の無い、網目状でフレーク状である粒子から成った。弱い複屈折性を示した一部の粒子には細長片状の部分があったが、粒子は主に非晶性であった。対照的に、実施例7に従って調製したダプトマイシン試料は、弱い複屈折といくらかの消光のある多結晶性粒子から成り、これらが主に結晶性であることを示した。図5を参照のこと。
【実施例10】
【0142】
2つのダプトマイシン試料を実施例7に従って調製し、1つの非晶性試料を結晶化度についてX線粉末回折によって分析した。試料はORS標準作業手順書EQ−27 Rev.9.に従って操作されたジーメンスD500自動粉末回折計(ORS 1D No.LD−301−4)で分析した。回折計はグラファイトモノクロメーターと50kV、40mAで運転されるCu(λ=1.54Å)X線源を装備していた。NBS(米国規格基準局)雲母標準試料を用いて(SRM675)、2θ校正を実施する。試料は以下の機器パラメータを用いて分析した:
2θの測定幅(度) 4.0〜40.0
段階幅(度) 0.05
段階毎の測定時間(秒) 1.2
光線スリット 1(1°)、2(1°)、3(1°)、4(0.15°)、5(0.15°)
試料調製は、ゼロバックグラウンド試料板を用いて、ORS標準作業手順書MIC−7 Rev.1 に従って実施した。
【0143】
Cu(λ=1.54Å)X線源を用いて全試料を分析した。非晶性ダプトマイシン 試料はX線粉末回折ではピークが見られなかった。図6を参照のこと。対照的に、2つのダプトマイシン試料は両方ともX線粉末回折によってピークが見られた。最初のダプトマイシン試料の回折角(2θ)(図7)は19.225、23.242、23.427および23.603(度)であった。第2のダプトマイシン試料の回折角(2θ)(図8)は10.966、19.205および23.344(度)であった。最初の結晶性ダプトマイシン試料はまた、10−11°の間に小さなピークを示している。図7を参照のこと。
【実施例11】
【0144】
ダプトマイシンを水に溶解した。最終濃度が187 mMになるよう酢酸ナトリウムを加えた。最終濃度が28mMになるよう塩化カルシウムを加えた。ダプトマイシン溶液は混合し、最終濃度が78.4%になるようイソプロパノールを加えた。溶液は混ぜてインキュベートした。沈澱物がインキュベート後に形成された。沈殿した物質はいが状の結晶に見え、光学顕微鏡法で直径約60μmであった。物質は次いで乾燥された。乾燥した物質は約30〜40%の塩を含んでいた。乾燥後、粉末X線回折を行った。粉末X線回折は、乾燥したダプトマイシン沈殿物中に結晶の存在を示さなかった。
【実施例12】
【0145】
ダプトマイシン1g(HPLCによる測定で純度約91.5%)を16.8mLの蒸留水に加え手溶解した。2.5mLの1M酢酸カルシウム(pH6.1)と60mLのイソプロパノールを加えた。溶液を27℃の水浴中に置き、水浴と温度を平衡化させた。イソプロパノールを5mLずつ、溶液が濁るまでゆっくり加えた(合計約30mLのイソプロパノール)。溶液を27℃で一晩インキュベートし、沈澱を形成させた。
【0146】
沈殿物は光学顕微鏡法で約60μmのいが状結晶を含むように見えた。図2を参照のこと。ダプトマイシン沈殿物を加圧濾過/乾燥漏斗に入れ、重力によって濾過した。沈殿物は各回25mLの洗浄溶液(80%イソプロパノールと20%の溶液A、ここで溶液Aは水18mLと氷酢酸2mLから成る)を用いて2回洗浄し、一晩重力で液を切った。沈殿物を次いでデシケータに移し、真空下で乾燥させた。乾燥後、粉末X線回折を行った。粉末X線回折は、乾燥したダプトマイシン沈殿物中に結晶の存在を示さなかった。しかし、HPLCによる沈殿物の純度分析は、沈殿物が純度98.2%のダプトマイシンであることを示した。
【0147】
注目すべきことは、沈澱後のダプトマイシン調製物は、沈澱前のダプトマイシン調製物と比べて無水ダプトマイシンが有意に少ない。
【0148】
どのような理論に縛られることも求めず、出願人は、ダプトマイシンを沈殿させるために実施例11および12において用いた条件は、実際に結晶性ダプトマイシンを生産するが、続く洗浄工程および/または乾燥工程によって結晶性ダプトマイシンが非晶形ダプトマイシンに戻ると信じる。にもかかわらず、偏光の中での結晶試料の複屈折によって図3に示すように、非晶性ダプトマイシンはなお結晶様である。
【実施例13】
【0149】
抗生物質の生産を最適化する一方で夾雑物の生産を最小化する濃度でのデカン酸制限発酵で、S.roseosporus NRRL菌株15998の発酵培養を実施した。残余の供給デカン酸はガスクロマトグラフィーによって測定し、目標の残留濃度は誘導開始(約30時間目)から収穫までデカン酸10ppmである。培養物の遠心分離および続いて清澄化した培養液の分析は、ダプトマイシンの生産をHPLCによって測定するために用いられた。収穫物の力価は典型的には発酵培養液1リットル当たり1.0〜3.0グラムである。
【0150】
発酵培養物はPall−Sep(商標)を用いた精密濾過または同等の精密濾過システムによって、または完全な商業スケールの遠心分離およびデプス・フィルタによってのいずれかで収穫される。清澄化された培養液はMitsubishi(商標)FP−DA13陰イオン交換樹脂にかけられ、pH6.5の30mM NaClで洗浄され、pH6.0−6.5の300mM NaClで溶出される。pHを3.0−4.8に調整し、温度を2−15℃に調整する。これらの条件下で、ダプトマイシンはミセルを形成する。ミセル状ダプトマイシン溶液を任意の規格の10,000NMW限外濾過膜(AG Technology Corp.UFホローファイバーまたは同等品)を用いて濾過洗浄する。ダプトマイシンミセルは濾過膜に保持されるが、多数の不純物は10,000NMWの濾過膜を通過するため除去される。 ダプトマイシンミセルの限外濾過によってダプトマイシンの純度は約80〜90%に上昇する。
【0151】
ダプトマイシン調製物は次いで無菌条件下で上記の方法の一を用いて結晶化または沈殿される。一つの好適な実施例において、ダプトマイシンの大量調製のためにスケールアップできることを除き、実施例7、8または12に記載の手順に従ってダプトマイシンは結晶化または沈殿される。結晶性または結晶様ダプトマイシンは結晶化または沈殿溶液から濾過によって、好ましくは真空濾過によって分離される。結晶性または結晶様ダプトマイシンは洗浄溶液で洗浄される(実施例3を参照のこと)。結晶性または結晶様ダプトマイシンは次いで、0.65mKleinハステロイ−Bダブルコーン型真空乾燥機または同等機を用いて無菌条件下で真空乾燥される。その後バイアルに1本当たり250または500mgの乾燥した結晶性ダプトマイシンを充填する。図9はこの製造方法のフローチャートを示す。
【実施例14】
【0152】
S.roseosporusの発酵、発酵培養物の精密濾過および陰イオン交換クロマトグラフィーを実施例13に記載の通りに行う。この時点でダプトマイシン調製物は純度約35〜40%である。陰イオン交換クロマトグラフィー後、ダプトマイシンは実施例13に記載の手順に従って結晶化または沈殿される。ダプトマイシンは次いで実施例13で述べた手順に従って洗浄および乾燥される。乾燥した結晶性または結晶様ダプトマイシンはその後、実施例13に記載の通り、滅菌バイアルに充填するのに用いる。図6はこの製造方法のフローチャートを示す。
【実施例15】
【0153】
S.roseosporusの発酵および発酵培養物の精密濾過を実施例13に記載の通りに行う。精密濾過後、発酵培養物を実施例13に記載の通りサイズ排除限外濾過に供する。この時点でダプトマイシン調製物は純度約35〜40%である。限外濾過後、ダプトマイシンは実施例13に記載の手順に従って結晶化または沈殿される。ダプトマイシンは次いで実施例13で述べた手順に従って洗浄および乾燥される。乾燥した結晶性または結晶様ダプトマイシンはその後、実施例13に記載の通り、滅菌バイアルに充填するのに用いる。図7はこの製造方法のフローチャートを示す。
【実施例16】
【0154】
S.roseosporusの発酵および発酵培養物の精密濾過を実施例13に記載の通りに行う。この時点でダプトマイシン調製物は純度5〜10%である。精密濾過後、発酵培養物は実施例13に記載の手順に従って結晶化または沈殿される。ダプトマイシンは次いで実施例13で述べた手順に従って洗浄および乾燥され滅菌バイアルに充填するのに用いられる。図8はこの製造方法のフローチャートを示す。
【実施例17】
【0155】
ダプトマイシンの環状リポペプチドアナログであるCB−131547(図xを参照)を、ダプトマイシンからの半合成経路によって調製した。CB−131547は淡黄色の非晶性の粉末で、正常食塩溶液に対する25℃での溶解度は〜80mg/mLである。
【0156】
CB−131547(60mg、純度〜90%)を水2.5mLに溶解する。CB−131547溶液は続いて、5.0mLのメタノール、0.2mLの1M酢酸カルシウム(pH6.0)、2.5mLのプロピレングリコール、そして1.0mLの50%(w/v)PEG4000とこの順で混合し、最終容量11.2mLとなる。溶液を4〜24時間、4℃で静置する。CB−131547結晶が形成され、収率〜70%、HPLCによる測定で純度〜98.0%である。
【実施例18】
【0157】
ダプトマイシンの環状リポペプチドアナログであるCB−131547(図xを参照)を、ダプトマイシンからの半合成経路によって調製した。CB−131547は淡黄色の非晶性の粉末で、正常食塩溶液に対する25℃での溶解度は〜80mg/mLである。
【0158】
CB−131547(60mg、純度〜90%)を水2.5mLに溶解する。0.2mLの1M酢酸カルシウム(pH6.0)および8mLのイソプロパノールを加える。溶液を室温(25℃)で5分間平衡化させる。イソプロパノールを1mLずつ、溶液が濁るまでゆっくり加える。溶液を室温で一晩保存し、結晶を形成させる。
【0159】
本明細書中に引用されたすべての広報および特許明細書は個々の独立した広報または特許明細書が具体的かつ個別に、参照により開示に含まれることが示されるように、この参照により開示に含まれる。前記の発明は理解を明瞭にするための図および実施例を用いてある程度詳しく記載されているが、当該技術分野で通常の技能を有する者には、本発明の教示に照らして、ある種の変更および改変は付属する請求項の精神または範囲を離れることなく行いうるのが容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】図1はダプトマイシンの構造を示す図である。
【図2】図2は実施例12に記載する方法によって製造されたダプトマイシンのいが状結晶または結晶様粒子の顕微鏡写真を示す。
【図3】図3はダプトマイシンの針状結晶の顕微鏡写真を示す。
【図4】図4はダプトマイシンの棒状結晶の顕微鏡写真を示す。
【図5】図5はダプトマイシン試料の100×倍率の顕微鏡写真を示す
【図6】図6は非晶性ダプトマイシンのX線粉末回折パターンである。
【図7】図7は実施例7に記載された手順によって製造されたダプトマイシン結晶のX線粉末回折パターンである。
【図8】図8は実施例7に記載された手順によって製造されたダプトマイシン結晶の別の試料のX線粉末回折パターンである。
【図9】図9はダプトマイシンの結晶様粒子の、偏光に暴露されたときの複屈折を示す図である。結晶様粒子は実施例12に記載された方法によって製造された。
【図10】図10は結晶化の典型的な方法のフローチャートである。
【図11】図11は結晶化または沈殿を用いない典型的な製造方法のフローチャートである。
【図12】図12はリポペプチド化合物の典型的な製造方法のフローチャートである。
【図13】図13はリポペプチド化合物の典型的な製造方法のフローチャートである。
【図14】図14はリポペプチド化合物の典型的な製造方法のフローチャートである。
【図15】図15はリポペプチド化合物の典型的な製造方法のフローチャートである。
【図16】図16はダプトマイシンの環状リポペプチドアナログであるCB−131547の構造を描いた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩であって、該リポペプチドがダプトマイシン、A54145およびダプトマイシン関連リポペプチドより成る群から選択されることを特徴とする結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項2】
前記塩が二価カルシウム塩であることを特徴とする請求項1記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項3】
前記リポペプチドがダプトマイシンであることを特徴とする請求項1記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項4】
前記塩が二価カルシウム塩であることを特徴とする請求項3記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項5】
X線回折パターンが、Cu(λ=l.54Å)X線源を用いて、回折角(2θ)=10.9、19.2および23.3(度)または回折角(2θ)=19.2、23.2、23.4および23.6(度)である、結晶性ダプトマイシンであることを特徴とする請求項3記載の結晶性リポペプチドあるいはその塩。
【請求項6】
複屈折で結晶性の特質を有するがX線粉末回折では結晶性の特質を有しない結晶様リポペプチドであることを特徴とする、請求項1から4いずれか1項記載の結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項7】
いが状または針の塊状、針状、あるいは棒状の結晶を含むことを特徴とする請求項3記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項8】
少なくとも95%の純度を有することを特徴とする請求項3記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項9】
少なくとも97%の純度を有することを特徴とする請求項3記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項10】
単独で1%を超える不純物を含まないことを特徴とする請求項3記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項11】
前記純度がHPLCによって測定されものであることを特徴とする請求項8から10いずれか1項記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項12】
リポペプチドの結晶が少なくとも5μmであることを特徴とする請求項1記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項13】
前記結晶が少なくとも50μmであることを特徴とする請求項12記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項14】
前記リポペプチドがダプトマイシンであることを特徴とする請求項12または13記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項15】
非晶形リポペプチドより高い安定性を示す結晶性リポペプチドであることを特徴とする請求項1記載の結晶性リポペプチドあるいはその塩。
【請求項16】
非晶形リポペプチドより熱、光、分解または湿度に対して高い安定性を示す結晶性リポペプチドであることを特徴とする請求項15記載の結晶性リポペプチドあるいはその塩。
【請求項17】
前記安定性が、抗生物質活性またはリポペプチド抗生物質の分解によって測定されたものであることを特徴とする請求項16記載の結晶性リポペプチドあるいはその塩。
【請求項18】
前記リポペプチドがダプトマイシンであることを特徴とする請求項15記載の結晶性リポペプチドあるいはその塩。
【請求項19】
非晶形ダプトマイシンと比較して、無水ダプトマイシンまたはダプトマイシンのβ−異性体へのより低い変換を示すことを特徴とする、請求項18記載の結晶性ダプトマイシンあるいはその塩。
【請求項20】
前記リポペプチドがダプトマイシン関連リポペプチドであることを特徴とする請求項1記載の結晶性または結晶様リポペプチドあるいはその塩。
【請求項21】
請求項1から19いずれか1項記載の結晶性または結晶様リポペプチドと、医薬品として許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項22】
前記結晶性または結晶様リポペプチドが、経口投与用に腸溶性コーティングされている結晶性または結晶様ダプトマイシンであることを特徴とする請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記結晶性または結晶様ダプトマイシンが、用量当り3から75mg/kgで製剤化されていることを特徴とする請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記担体が、ダプトマイシンの経口アベイラビリティを高めることを特徴とする請求項22記載の医薬組成物。
【請求項25】
微粉末粒子または微小球の形状であることを特徴とする請求項22記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項21記載の医薬組成物を含む容器。
【請求項27】
エアロゾルとして使用されることを特徴とする請求項25記載の医薬組成物。
【請求項28】
患者において感染を治療するための組成物であることを特徴とする請求項22記載の医薬組成物。
【請求項29】
微粉末粒子として投与されることを特徴とする請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
目標を絞った放出形態で投与されることを特徴とする請求項28記載の医薬組成物。
【請求項31】
請求項1から19いずれか1項記載の結晶性または結晶様リポペプチドと、医薬品として許容される担体とを含む製品。
【請求項32】
医薬品、食品、飼料製品、動物用製品、化粧品またはパーソナルケア製品であることを特徴とする請求項31記載の製品。
【請求項33】
他の抗生物質、安定剤、吸収を助ける薬剤、pH緩衝剤または無機塩をさらに含む医薬品であることを特徴とする請求項31記載の製品。
【請求項34】
動物飼料をさらに含み、かつ必要に応じて他の抗生物質またはビタミン類を含む飼料製品であることを特徴とする請求項31記載の製品。
【請求項35】
洗浄剤、石鹸、シャンプーおよび制汗剤より成る群から選択されるパーソナルケア製品であることを特徴とする請求項31記載の製品。
【請求項36】
石鹸、シャンプーおよび医薬組成物より成る群から選択される動物用製品であることを特徴とする請求項31記載の製品。
【請求項37】
リポペプチドを保存する方法であって、
a) リポペプチドの溶解溶液を提供し;
b) リポペプチドを結晶化または沈殿させ;
c) リポペプチドを回収および乾燥し;さらに
d) リポペプチドを保存する;工程を含み、
前記リポペプチドが、ダプトマイシン、A54145およびダプトマイシン関連リポペプチドより成る群から選択され、結晶性または結晶様リポペプチドが非晶形リポペプチドより安定であることを特徴とする方法。
【請求項38】
結晶性または結晶様リポペプチドを製造する方法であって、
a) 非晶形リポペプチドを提供し;
b) 前記リポペプチドを結晶化または沈殿させ;さらに
c) 結晶性または結晶様リポペプチドを回収する;工程を含み、
前記リポペプチドがダプトマイシン、A54145およびダプトマイシン関連リポペプチドより成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
前記回収工程が濾過によって行われることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記工程b)の後にリポペプチドを洗浄する工程をさらに含むことを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記工程c)の後にリポペプチドを乾燥する工程をさらに含むことを特徴とする請求項38または39記載の方法。
【請求項42】
前記乾燥工程の後にリポペプチドを滅菌する工程をさらに含むことを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記工程c)が無菌条件下で行われることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項44】
前記工程b)が無菌条件下で行われることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記工程c)の後に、無菌条件下でリポペプチドを乾燥する工程をさらに含むことを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項46】
結晶性リポペプチドの純度が非晶形リポペプチドより高いことを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項47】
非晶形リポペプチドの純度が約90%であり、かつ結晶性または結晶様リポペプチドの純度が95%より高いことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項48】
非晶形リポペプチドの純度が約93%であり、かつ結晶性または結晶様リポペプチドの純度が95%より高いことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項49】
非晶形リポペプチドの純度が約93%であり、かつ結晶性または結晶様リポペプチドの純度が約98%であることを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項50】
ダプトマイシンを調製する方法であって:
非晶形のダプトマイシンを提供し;
塩からの陽イオン、緩衝剤、有機沈殿剤、および低分子量アルコールを含む結晶化溶液から前記ダプトマイシンを結晶化させる;工程を含む方法。
【請求項51】
前記緩衝剤が、HEPES、Tris−HCl、イミダゾール、MES、CHES、クエン酸塩、およびカコジル酸塩より成る群から選択されることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、t−ブタノール、グリセロール、イソプロパノール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、およびメタノールより成る群から選択されることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記有機沈殿剤が、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメチルエーテルであることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項54】
前記結晶化溶液が二価陽イオンを含むことを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項55】
前記二価陽イオンが、カルシウム、亜鉛、またはマグネシウムであることを特徴とする請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記結晶化溶液のpHが、5から9.5であることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項57】
前記結晶化溶液のpHが、5.5から7.5であることを特徴とする請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記結晶化溶液のpHが、5.9から6.3であることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記結晶化が、ハンギングドロップ法またはバッチ結晶化によってなされることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項60】
前記ダプトマイシンの結晶が、いが状、針の塊状、または棒状の形状であることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項61】
結晶性ダプトマイシンを回収する工程をさらに含むことを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項62】
前記回収工程が、遠心分離、沈殿または濾過によってなされることを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項63】
結晶性ダプトマイシンを洗浄する工程をさらに含むことを特徴とする請求項50または62記載の方法。
【請求項64】
最初のダプトマイシンの純度が90%以上であることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項65】
前記結晶化が、0℃から30℃の温度で行われることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項66】
前記結晶化が、4℃で行われることを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記結晶化が、攪拌しながら行われることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項68】
結晶性または結晶様ダプトマイシンを調製する方法であって:
a)ダプトマイシン、一価または二価塩陽イオンを含む塩、pH緩衝剤、および低分子量アルコールまたは多価アルコールを含む溶液を提供し;
b)前記溶液からダプトマイシンを結晶化または沈殿させて、結晶化または結晶様ダプトマイシン調製物を得る;工程を含む方法。
【請求項69】
前記緩衝剤が、HEPES、Tris−HCl、イミダゾール、MES、CHES、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、クエン酸塩、およびカコジル酸塩より成る群から選択されることを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、t−ブタノール、グリセロール、イソプロパノール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、およびメタノールより成る群から選択されることを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項71】
前記アルコールがイソプロパノールであることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記塩が二価陽イオンを含み、該二価陽イオンが、マグネシウム陽イオン、亜鉛陽イオン、またはカルシウム陽イオンであることを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項73】
結晶性または結晶様ダプトマイシンを調製する方法であって:
a)ダプトマイシン、一価または二価塩陽イオンを含む塩であるpH緩衝剤、および低分子量アルコールまたは多価アルコールを含む溶液を提供し;
b)前記溶液からダプトマイシンを結晶化または沈殿させて、結晶化または結晶様ダプトマイシン調製物を得る;工程を含む方法。
【請求項74】
前記緩衝剤が、カルシウム陽イオンおよびマグネシウム陽イオンより成る群から選択される二価陽イオンを含むことを特徴とする請求項73記載の方法。
【請求項75】
前記溶液のpHが、5.0から9.5であることを特徴とする請求項68または73記載の方法。
【請求項76】
前記溶液のpHが、5.9から6.3であることを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記結晶化または沈殿工程が、0−30℃で行われることを特徴とする請求項68または73記載の方法。
【請求項78】
前記結晶化または沈殿工程が、23−28℃で行われることを特徴とする請求項77記載の方法。
【請求項79】
前記溶液が、pH6.1の酢酸カルシウム溶液およびイソプロパノールを含むことを特徴とする請求項73記載の方法。
【請求項80】
前記結晶化および沈殿工程が、混合物が濁るまでイソプロパノールを添加することを含むことを特徴とする請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記結晶化および沈殿工程が、1時間から2週間の期間行われることを特徴とする請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記結晶化および沈殿工程が、バッチ結晶化またはバッチ沈殿によって行われることを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項83】
結晶性または結晶様ダプトマイシンを回収する工程をさらに含むことを特徴とする請求項68または73記載の方法。
【請求項84】
前記回収工程が、濾過または遠心分離よって行われることを特徴とする請求項83記載の方法。
【請求項85】
前記回収工程が、濾過によって行われることを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項86】
結晶性または結晶様ダプトマイシンを洗浄する工程をさらに含むことを特徴とする請求項83記載の方法。
【請求項87】
前記結晶性または結晶様ダプトマイシンが、いが状の形状であることを特徴とする請求項68または73記載の方法。
【請求項88】
前記ダプトマイシンが、前記結晶化または沈殿工程の前に80%以下の純度を有し、かつ前記結晶化または沈殿工程の後に95%以上の純度を有することを特徴とする請求項68または73記載の方法。
【請求項89】
前記ダプトマイシンが、前記結晶化または沈殿工程の後に96%以上の純度を有することを特徴とする請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記ダプトマイシンが、前記結晶化または沈殿工程の後に98%以上の純度を有することを特徴とする請求項88記載の方法。
【請求項91】
精製ダプトマイシンを調製する方法であって:
a)ダプトマイシン、一価または二価塩陽イオンを含む塩であるpH緩衝剤、および低分子量アルコールまたは多価アルコールを含む溶液を提供し;
b)前記溶液からダプトマイシンを結晶化または沈殿させて、精製ダプトマイシン調製物を得る;工程を含む方法。
【請求項92】
前記精製ダプトマイシン調製物が95%以上の純度を有することを特徴とする請求項91記載の方法。
【請求項93】
前記精製ダプトマイシン調製物が98%以上の純度を有することを特徴とする請求項91記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−214348(P2008−214348A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51874(P2008−51874)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【分割の表示】特願2002−559447(P2002−559447)の分割
【原出願日】平成13年12月17日(2001.12.17)
【出願人】(503007911)キュービスト ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Cubist Pharmaceuticals,Inc.
【Fターム(参考)】