説明

糖尿病および神経心理学的機能不全を処置するための組成物および方法

本発明は、特定のグループの患者における糖尿病、神経心理学的障害および神経学的障害を処置するための組成物および方法に関する。更に詳しくは、本発明は、欠陥のあるカリウムチャネルを有する患者における糖尿病、神経心理学的障害および神経学的障害を処置する方法に関する。本発明は、ヒト被検体、特に成人または子供に使用することができ、そして種々の神経学的障害を処置するのに適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のグループの患者において糖尿病、神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害を処置するための組成物および方法に関する。更に詳しくは、本発明は、欠陥のあるカリウムチャネルを有する患者において糖尿病、神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害を処置する方法に関する。本発明は、ヒト被検体、特に成人または子供において使用することができ、そして種々の神経学的障害を処置するのに適切である。
【0002】
緒言
ATP感受性カリウムチャネル(KATP)は膜を横切るカリウムの運動を調節することにより細胞代謝を電気的活性に結び付ける。これらのチャネルは、2つの種類のサブユニット:4個の細孔形成性内向き整流性カリウムチャネルを取り巻く4つの調節性スルホニル尿素レセプター(SUR)、を有するオクタマー複合体である。各タイプのサブユニットについていくつかのアイソフォームが存在する:SUR1は膵臓β細胞およびニューロンにおいて見いだされるが、SUR2Aは心臓細胞中にあり、そしてSUR2Bは平滑筋中にあり;Kir6.2は膵臓β細胞、脳、心臓および骨格筋などの多数の組織内にあり;そしてKir6.1は、血管平滑筋およびアストロサイトに見出されうる。KATPチャネルは、特にそれがATP濃度の増加に応答してインスリン分泌を調節するβ細胞において、グルコース代謝調節における多重の生理学的役割を演じる。それらは、低血糖症もしくは高血糖症、低酸素症、虚血などの代謝ストレスに対する保護における重要な代謝センサでもあると思われる。
【0003】
幼児の永続性高インスリン血症性低脂血症(HI)は、組織学的病変に基づいて2つの形態(拡散性および巣性)に分けられうる不均一障害である。異なる不活性化突然変異が、両方の形態において示唆された:KATPチャネルの恒久的不活性化は、低ATPにもかかわらず、不適切なインスリン分泌を誘発する。ある種のHIにおいて有効に使用されるジアゾキシド(diazoxide)は、KATPチャネルを開き、したがってインスリン分泌に対する突然変異効果を超える(overpass)。反対に、いくつかの研究は、永続性新生児糖尿病を有する患者においてKir6.2をコードするKCNJ11の配列決定を報告しており、そして症例の30〜50%について異なる突然変異を見出した。約28のヘテロ接合活性化突然変異(heterozygous activating mutations)が今回同定され、最も頻度の高い突然変異はアミノ酸R201にある。これらの突然変異は、野生型と比較してKATPチャネルの減少したATP感受性をもたらし、そしてチャネルブロックのレベルは、異なる臨床的特徴の原因となりうる:「軽度」の形態は、孤立的な永続性新生児糖尿病(isolated permanent neonatal diabetes)を与えるが、これに対して重篤な形態は、糖尿病を神経学的症候、例えばてんかん、発達遅延、筋肉脆弱および軽度の二形態特徴(mild dimorphic features)を合併する。スルホニル尿素は、SURに対する高いアフィニティーで結合することによりKATPチャネルを閉じる。
【0004】
発明の要約
ここに、本発明者等は、欠陥のある突然変異したカリウムチャネル、特にATP感受性カリウムチャネルを有する被検体のグループにおいてスルホニル尿素治療を使用することができことを初めて示した。更に詳しくは、本発明は、スルホニル尿素治療は、突然変異したSUR1ポリペプチドを有する被検体を処置するのに使用することができ、そしてこれらの糖尿病患者においてインスリンに取って代わることができることを示した。
【0005】
驚くべきことに、本発明者等は、神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害(眼の障害を含む)を処置するためにこのようなグループの患者にスルホニル尿素治療を使用することができることも示した。更に詳しくは、本発明者等は、KCNJ11突然変異によるインスリン処理された糖尿病を有する子供をインスリンからスルホニル尿素に移行させ、そして評価するプロトコールをデザインした。本発明者等の結果は、インスリン注射から経口グリベンクラミド治療への移行は、大抵の患者に高度に有効であり、そして安全であることを示す。
【0006】
更に、本発明者等は、73人のND患者の症例シリーズにおける未知の起源の永続性または一過性の新生児糖尿病(ND)を有すると診断された34人の患者においてABCC8の39エキソンを最近スクリーニングした。本発明者等は、9人の患者における7つのミスセンス突然変異を同定した。4つの突然変異は、家族性であり、そして新生児糖尿病および成人発症糖尿病との垂直伝達を示し;残りの突然変異はde novoであった。スルホニル尿素のレセプターであるにもかかわらず、本発明者等の結果は、意外にも、突然変異したSUR1を有する患者におけるスルホニル尿素による処置が正常血糖を達成することを示す。
【0007】
これは、ある単一遺伝子形の糖尿病の分子的理解がいかに子供における処置の意外な変化をもたらしうるかを説明する。これは、ファーマコゲノミックアプローチがすばらしく本発明者等の若年患者の生活の質を改善する目覚ましい例である。
【0008】
本発明の目的は、欠陥のある突然変異したカリウムチャネル(ATP感受性Kチャネル)サブユニットを有する被検体において糖尿病または/および神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害を処置するための医薬組成物の製造のためのカリウムチャネルリガンドの使用に関する。
【0009】
本発明の特定の局面において、本発明は、欠陥のある突然変異したカリウムチャネルSUR1サブユニットを有する被検体において糖尿病または/および神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害を処置するための医薬組成物の製造のためのカリウムチャネルリガンドの使用に関する。
【0010】
本発明の更なる目的は、欠陥のある突然変異したカリウムチャネルSUR1サブユニットを有する被検体において糖尿病または/および神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害を処置する方法であって、被検体に有効量のカリウムチャネルリガンドを投与することを含む方法である。好ましくは、有効量は、好ましくは膜脱分極を誘導または回復するのに十分な時間の期間、チャネル開口を減少させるかまたはチャネルを閉じる量である。
【0011】
本発明の更なる目的は、被検体が欠陥のある突然変異したカリウムチャネルSUR1サブユニットを有するかどうかを決定する工程を含み、このような突然変異したサブユニットの存在はカリウムチャネルリガンドによる処置から被検体が利益を得ることができること示す、被検体における糖尿病または/および神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害を処置する方法である。
【0012】
本発明の更なる目的は、糖尿病または/および神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害に罹患している患者がカリウムチャネルリガンドで処置されうるかどうかを決定する方法であって、被検体が欠陥のある突然変異したカリウムチャネルSUR1サブユニットを有するかどうかを決定することを含む方法である。
【0013】
好ましくは、SUR1サブユニットは、チャネル開口の確率を増加させ、それにより脱分極を阻止し、そしてインスリン分泌を限定する、活性化突然変異を与える。好ましい態様においては、突然変異したSUR1ポリペプチドは、下記のアミノ酸突然変異:L213R、I1424V、C435R、L582V、H1023Y、R1182QおよびR1379C、の少なくとも1つを示す。場合により、カリウムチャネルは、突然変異したKir6.2ポリペプチドを与えることもできる。好ましくは、カリウムチャネルは、突然変異したKir6.2ポリペプチドを与えない。
【0014】
本発明の他の特定の局面においては、本発明は、被検体における神経心理学的障害、筋肉障害および/または神経学的障害を処置するための医薬組成物を製造するためのカリウムチャネルリガンドの使用に関する。好ましくは、被検体は、欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットを有する。好ましくは、欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットは、チャネル開口の確率を増加させ、それにより脱分極を阻止し、そしてインスリン分泌を制限する活性化突然変異を与える。特定の態様においては、被検体は、糖尿病にも罹患している。他の態様においては、被検体は糖尿病に罹患していない。
【0015】
第1の態様においては、被検体は、突然変異したSUR1ポリペプチドを有し、好ましくは下記のアミノ酸突然変異:L213R、I1424V、C435R、L582V、H1023Y、R1182QおよびR1379Cの少なくとも1つを示す。
【0016】
第2の態様においては、被検体は、突然変異したKir6.2ポリペプチドを有し、好ましくは、下記のアミノ酸突然変異:F35V、F35L、H46Y、R50Q、Q52R、G53N、G53R、G53S、V59G、V59M、L164P、K170T、I182V、R201C、R201H、R201L、I296L、E322K、Y330C、Y330SおよびF333Iの少なくとも1つを示す。好ましくは、突然変異したKir6.2ポリペプチドは、下記のアミノ酸突然変異:F35V、F35L、H46Y、R50Q、G53N、G53R、G53S、V59G、V59M、K170T、I182V、R201C、R201H、R201L、E322K、Y330C、Y330SおよびF333Iの少なくとも1つを示す。
【0017】
本発明の更なる目的は、好ましくは、欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットを有する被検体における神経心理学的障害、筋肉障害および/または神経学的障害を処置する方法であって、有効量のカリウムチャネルリガンドを被検体に投与することを含む方法である。好ましくは、有効量は、好ましくは膜脱分極を誘導または回復させるのに十分な時間の期間、チャネル開口を減少させるかまたはチャネルを閉じる量である。
【0018】
本発明の更なる目的は、好ましくは、欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットを有する被検体における神経心理学的障害、筋肉障害および/または神経学的障害を処置する方法であって、被検体が欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットを有するかどうかを決定する工程を含み、このような突然変異したサブユニットの存在はカリウムチャネルリガンドによる処理から被検体が利益を得ることができること示す、方法である。特定の態様においては、被検体が欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットを有するかどうかを決定する工程は、突然変異したKir6.2ポリペプチドおよび/または突然変異したSUR1ポリペプチドの存在を決定する工程を含む。場合により、被検体が欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットを有するかどうかを決定する工程は、突然変異したKir6.2ポリペプチドの存在を決定する工程および、突然変異したKir6.2ポリペプチドが存在しない場合には、突然変異したSUR1ポリペプチドの存在を決定する工程を含む。
【0019】
本発明の更なる目的は、神経心理学的障害、筋肉障害および/または神経学的障害に罹患している患者をカリウムチャネルリガンドで処置することができるかどうかを決定する方法であって、被検体が欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットを有するかどうかを決定することを含む方法である。特定の態様においては、被検体が欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットを有するかどうかを決定する工程は、突然変異したKir6.2ポリペプチドおよび/または突然変異したSUR1ポリペプチドの存在を決定する工程を含む。場合により、被検体が欠陥のある突然変異したカリウムチャネルサブユニットを有するかどうかを決定する工程は、突然変異したKir6.2ポリペプチドの存在を決定する工程および、突然変異したKir6.2ポリペプチドが存在しない場合には、突然変異したSUR1ポリペプチドの存在を決定する工程を含む。
【0020】
本発明の更なる目的は、神経心理学的障害、筋肉障害および/または神経学的障害を処置するための医薬組成物の製造のためのカリウムチャネルリガンドの使用に関する。
【0021】
好ましくは、神経心理学的障害、筋肉障害および/または神経学的障害は、てんかん、発達遅延、筋肉脆弱、統合運動障害、失読症、筋緊張異常、言語障害、および脈絡膜と網膜の障害を含む眼の障害から選ばれる。例えば、脈絡膜と網膜の障害は、脈絡膜と網膜の新血管形成、網膜浮腫、透過性障害および/または眼の変性性障害であることができる。脈絡膜と網膜の障害については、リガンドを経口経路または眼内経路により被検体に投与することができる。特に、視覚運動統合運動障害(visiomotor dyspraxia)はカリウムチャネルリガンドにより改善されうる。筋肉障害は、神経筋肉性障害、筋障害、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮(SMA)、原発性側索硬化症(PLS)、遺伝性運動失調、進行性筋萎縮症、ポリオ後症候群および筋ジストロフィー等を含む。
【0022】
特に、リガンドは、ATP感受性カリウムチャネルリガンドである。カリウムチャネルリガンドは、単独または任意の組み合わせにおける、例えばスルファミドおよびグリニドから選ばれうる。特に、リガンドは、下記の薬物タイプ:血糖降下薬スルファミド(例えば、カルブタミド、(グルシドラル(Glucidoral))、グリベンクラミドまたはグリブリド(USA)(ダオニール、ダオニールフェイブル、オイグルカン、ヘミダオニール、ミグルカン(Miglucan))、グリボルヌリド(グルトリル)、グリカザイド(Glicazide)(ダイアミクロン)、グリメピリド(アマリール)およびグリピザイド(グリベネス、ミニディアブ、オジディア(Ozidia))、グリニド(例えばレパグリニド(ノボノルム);および併用(例えば、メトフォルミン+グリベンクラミド(グルコバンス)の中から選ぶことができる。このようなリガンドはスルホニル尿素を含む。好ましい用量は、約0.05〜約1.5mg/kg/日である。更に好ましくは、用量は約0.25〜約1.2mg/kg/日、なお更に好ましくは0.30〜0.8または1mg/kg/日である。これらの用量は、成人における二型糖尿病を処置するためのFood and Drug Administrationにより推奨された用量の高い端部にあるかまたはそれを超えている。更に、投薬量は、インスリンの中止後に減少させることができる。日量は、好ましくは、2、3または4回で投与される。好ましい態様においては、リガンドは経口投与される。
【0023】
被検体は、任意の哺乳動物、好ましくはヒト被検体、例えば成人または子供であることができる。特定の態様においては、被検体は子供である。好ましい態様においては、被検体は、検出可能な抗島抗体(anti-islet antibodies)を持たず、そして超音波検査法は膵臓の異常を示さなかった。本発明は、動物にも適用することができ、そして例えば眼の病理および/または筋肉病理のための獣医薬に使用されうる。従って、被検体は、動物、好ましくは哺乳動物であることができる。被検体は、犬、猫または馬などのペット動物または牛、豚、羊および山羊などの家畜であることができる。
【0024】
本発明の特定の目的は、SUR1突然変異ポリペプチドを有する被検体、好ましくは子供において糖尿病または/および神経心理学的障害および/または筋肉障害および/または神経学的障害(眼の障害を含む)を処置するための医薬組成物の製造のためのスルファミドまたはグリニド化合物の使用に関する。
【0025】
本発明は、SUR1突然変異ポリペプチドを有する被検体、好ましくは子供において糖尿病または/および神経心理学的障害および/または筋肉障害および/または神経学的障害(眼の障害を含む)を処置するための方法であって、該子供に有効量のスルファミドまたはグリニドを投与することを含む方法にも関する。
【0026】
SUR1タンパク質は、遺伝子ABCC8(UniGene Hs.54470; Genbank NP_000343およびNM_000352)によりコードするスルホニル尿素レセプターである。したがって、突然変異が結合を変化させる可能性およびスルホニル尿素結合が患者に存在しえない可能性が考慮された。しかしながら、かつこの理論的可能性にもかかわらず、それらの突然変異の同定に従って、グリベンクラミド(グリブリド)治療を開始し、そして意外にもヒトPND(永続性新生児糖尿病)患者において成功することが見出された:それぞれ、患者PND12および16において2日および15日後にインスリンを中断した。グリベンクラミド(グリブリド)の最近の用量は、それぞれ患者PND12およびPND16において0.59および0.22mg/kg/日である。これらの結果は予想外であり、そしてヒト被検体において本発明の有効性を証明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】異なるKATPチャネル形態および代謝調節。KirおよびSURサブユニットのいくつかのアイソフォームが異なる器官において見出され、そしてそれらの特異性を該チャネルに与えるが、すべてグルコース代謝を妨害する。チャネルKir6.2/SUR1はニューロンおよび膵臓において見出され、これに対してKir6.2/SUR2は、心筋および骨格筋において見出される。
【図2】KATPチャネルは、細胞代謝を膵臓β細胞における電気的活性に結び付ける。低グルコースおよび低ATP/ADP比の存在下にKATPチャネルは開かれ、そして細胞膜は過分極される。グルコース濃度、したがってATP/ADP比が増加するとき、KATPチャネルは閉じ、膜脱分極、電位開口型Ca2+チャネルの開口およびインスリンエキソサイトーシスを誘発する。
【図3】KCNJ11活性化突然変異による異常なインスリン分泌。活性化突然変異は、チャネルの減少したATP感受性の原因となり得、したがって、チャネルの永続的開口はグルコースが増加するときのインスリンの放出を阻害する。
【図4】最初にインスリン下に、次いでグリベンクラミド下にR201H突然変異を有する37歳齢の患者の3日間の糖血症の連続的監視。グリベンクラミドへの移行後の血糖レベルの変動性の減少参照。
【0028】
発明の詳細な説明
緒言
ATP感受性カリウムチャネル(KATP)は、細胞膜を横切るカリウム運動を調節することにより、細胞代謝を電気的活性に結び付ける遍在性チャネルである。これらのチャネルの多数の生理学的研究は、多くの器官、特にグルコース代謝においてそれらの必須の役割を理解することを可能とした。これらのチャネルは、2つの型のサブユニット:調節性サブユニットSURにより取り巻かれた細孔形成性サブユニットKir、からなる。これらのチャネルのいくつかのアイソフォームが異なる細胞型において存在する。膵臓β細胞でのインスリン分泌におけるそれらの役割の理解は、持続性インスリン過剰症または新生児糖尿病の原因となる多数の突然変異を同定することを可能とし、したがって、これらの患者の治療成果を変えることを可能とした。
【0029】
カリウムチャネルの生理学
ATP感受性カリウムチャネル(KATP)は、膜を横切るカリウム運動を調節することにより細胞代謝を電気的活性に結びつける。これらのチャネルは、2つの種類のサブユニット:4つの細孔形成性の内向き整流性カリウムチャネル(Kir)を取り巻く4つの調節性スルホニル尿素レセプター(SUR)を有するオクタマー複合体である[1,2]。1:1SUR1:KIR6.2化学量論性は、活性KATPチャネルのアセンブリーのために必要かつ十分である[3,4]。ABCトランスポーターファミリーのメンバーであるSURは、2つの別々の遺伝子を起源とし、したがっていくつかのスプライシングされたアイソフォームにおいて存在する。SUR1は膵臓β細胞およびニューロンにおいて見出され[5]、これに対してSUR2Aは心臓細胞にあり、そしてSUR2Bは平滑筋にある[6]。Kir6.2サブユニットは、膵臓β細胞、脳、心臓および骨格筋などの大多数の組織においてチャネル細孔を形成するが[3]、Kir6.1は、血管平滑筋およびアストロサイトにおいて見いだされうる。これらの異なるチャネル形態は、異なる細孔特性およびアデニンヌクレオチド感受性を有する[3](図1)。Kir6.2をコードするKCNJ11遺伝子およびSUR1をコードするABCC8遺伝子は、大きなIDDM2連鎖ピークに近い、11p15に位置している[7]。
【0030】
ATPチャネルは、グルコース代謝調節における多数の生理学的役割:膵臓β細胞によるインスリン分泌、膵臓α細胞によるグルカゴン放出[8]、D細胞からのソマトスタチン分泌[9]、およびL細胞からのGLP1分泌[10]、を果たす。KATPチャネルは閉じると、カリウム流出がブロックされるので不活性化されると言われる(しかし、逆説的にこの閉鎖は膜脱分極を可能とし、したがって代謝効果を可能とする)。反対に、このチャネルは、開かれると、カリウム流出が有効であるので活性化される。スルホニル尿素サブユニットはATPおよびADP濃度の変化を感知し、それによりKATPチャネル活性に影響を与える[11〜13]。これらのヌクレオチドは、チャネル活性に対する反対の効果を有し:ATPはチャネルブロッカーとして作用し、そしてMgADPはチャネル開口体として作用する。膵臓β細胞において、低グルコース濃度において、開口したKATPチャネル(活性化された)を通るカリウム流出は、膜過分極(電位約−70mVを有する)をセットアップする。グルコース代謝に応答してATP濃度の増加(MgADの付随する減少)はKATPチャネルを閉じ、そして膜脱分極の原因となる。この脱分極は、電位開口型Ca2+チャネルの開口を引き起こし、インスリン含有顆粒のエキソサイトーシスをトリガーするCa2+エントリーを可能とする[14](図2)。更に、KATPチャネルは膵臓インスリン細胞生存のために重要であり、そしてKir6.2についてノックアウトされたマウスにおける膵島細胞の分化を調節する[15、16]。
【0031】
心筋、平滑筋および骨格筋、脳ニューロン組織において、KATPチャネルは、普通は代謝ストレスに応答して閉じられそして開かれ、それにより電気的活性の阻害をもたらす[17]。更に、Kir6.1またはKir6.2ヌルマウスにおける研究は、KATPチャネルは、高血糖症もしくは低血糖症、虚血または低酸素症などの代謝ストレスに対する保護における重要な代謝センサであることを示す[18]。Kir6.2mRNAを発現する細胞は、脳全体にわたり分布しているが[19]、KATPチャネルの最も高い発現は、全汎性てんかん発作(generalized seizures)の伝播を抑制するのに重要な役割を果たす黒質網様部にある[20、21]。KATPチャネルの開口は、過分極された方向に膜電位をシフトさせることにより低酸素症期間中ニューロン活性に対する強い抑制効果を及ぼす[22]。Kir6.2を欠いているマウスは、短い低酸素症後の全汎性てんかん発作に極めて感受性であり、したがって、KATPチャネルは、プレコンディショニング誘導されるニューロン保護機構に関与することがある[20、21]。神経低糖症は、拮抗調節ホルモンの分泌、中でも自律性ニューロンの活性化を介した膵臓α細胞によるグルカゴン分泌を刺激する。KATPチャネルは、腹側正中視床下部ニューロン(ventromedial hypothalamus neurons)におけるグルコース感知について主要な役割を有し、そして顕著に減少したグルカゴン分泌をもたらすKir6.2ヌルマウスにおいては損なわれている[23]。そのほか、挙動試験において、Kir6.2ノックアウトマウスは、より少なく活動性であり、特に新しい状況において、野生型に比較して損なわれた共調および異なる情動的反応性を有する[24]。
【0032】
心筋および骨格筋において、Kir6.2と共発現されるSUR2Aアイソフォームは、ATPに対してより少なく感受性である[5]。KATPチャネルは、筋肉線維のエネルギー状態を細胞膜の電気的活性に結びつける:それらは疲労期間中静止張力の発生を阻止し、そして疲労後の力の回復を改良する[25]。心筋繊維鞘(cardiac sarcolemma)において高い密度で発現されて、KATPチャネルは、脳におけると同じく、心臓保護機構虚血関連プレコンディショニングと多分関連している[26〜29]。カテコールアミンサージ下に、適当なKATPチャネル活性は、正常な膜依存性細胞機能、例えばカリウムの細胞損失および適当なカルシウムハンドリングのために必要である[26、27、29、30]。Kir6.2ヌルマウスにおけるKATPチャネル機能の欠損は、交感神経刺激下に不整脈のリスク因子として[26、31]および基礎的条件下に虚血に対するより高い感受性のリスク因子として[32]認識される。しかしながら、マウスの速い心拍数は、ヒトと比較してKATPチャネルの相対的重要性を倍増することができる。それにもかかわらず、心臓スルホニル尿素レセプターにおける突然変異が、心筋症および心室不整脈を有する患者において同定された[33]。血管平滑筋において、KATPチャネルは、心音に関与している[34、35]。2種類の突然変異が、Kir6.2またはSUR1サブユニットにおいて記載されている。第1に、不活性化突然変異(インスリン過剰症におけるように)は、KATPチャネルの永続的閉鎖、したがってコントロールされていないインスリンエキソサイトーシスの原因となる。反対に、活性化突然変異(新生児糖尿病におけるように)は、該チャネルの永続的開口を引き起こし、したがって膜過分極を引き起こし、そしてインスリンエキソサイトーシスを引き起こさない。
【0033】
カリウムチャネルおよびインスリン過剰症
小児の持続性インスリン過剰症低血糖症(HI)は組織病理学的病巣に基づいて2つの形態(拡散した(diffuse)および巣状(focal))に分けることができるが、臨床的には区別できない不均一障害(heterogeneous disorder)である。拡散形態は、全膵臓の調節されていないインスリン分泌により特徴付けられるが、これに対して巣状形態はソマチック島細胞過形成(somatic islet-cell hyperplasia)に相当する[36−38]。巣状HIは散在性であり、そしてSUR1またはKir6.2の父系遺伝した不活性化突然変異のヘミ接合性またはホモ接合性ならびに過形成島における母系アレルの損失と関連している[39,40]。拡散HIは、インスリン分泌の調節における種々の欠陥:不活性化Kir6.2またはSUR1突然変異、グルコキナーゼの突然変異[42]、グルタメートデヒドロゲナーゼの突然変異[43,44]、短鎖L−3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼの突然変異[45]およびインスリンレセプターにおける修飾(modification) [46]により引き起こされうる不均一障害である[41]。劣性ホモ接合性または二重ヘテロ接合性SUR1またはKir6.2突然変異[47−51]は、医学的処置に抵抗性の、そしてしばしば大半の膵切除を必要とする拡散性かつ重篤な新生児HIの大多数の症例(80%)の原因となりうる。優性SUR1およびKir6.2突然変異は、KATPチャネル活性の50%を減少させる原因となり得、そして人生の最初の年に起こりそしてジアゾキシドに感受性の重篤さのより少ないHIを引き起こす [52]。
【0034】
カリウムチャネル遺伝子またはポリペプチドにおける突然変異を検出すること
当技術分野で知られている種々の技術を、カリウムチャネル遺伝子(KCNJ11またはABCC8)またはポリペプチド(Kir6.2またはSUR1)における特定の突然変異の存在を検出するのに使用することができる。特に、このような技術は、典型的には、血液サンプルなどの被検体に由来する生物学的サンプルに関してin−vitroまたはex vivoで行われる。
【0035】
遺伝子型を決定するのに使用することができる当業者にそれ自体知られている技術の例は、配列決定、増幅(例えばPCR)、特異的プライマー、特異的プローブ、マイグレーション等を使用する任意の方法、典型的には定量的RT−PCR、LCR(リガーゼ連鎖反応)、TMA(転写媒介増幅)、PCE(酵素増幅イムノアッセイ)、DHPLC(改変高速液体クロマトグラフィー)、MLPA(多重ライゲーション依存性プローブ増幅)およびbDNA(分岐DNAシグナル増幅)アッセイを含む。
【0036】
特定の態様においては、ポリペプチドの任意の位置のアミノ酸残基を決定することは、該アミノ酸残基をコードするヌクレオチドを含むチャネル遺伝子またはRNAまたはその一部を配列決定する工程を含む。
【0037】
他の特定の態様においては、アミノ酸残基を決定することは、該アミノ酸残基をコードするヌクレオチドを含む遺伝子またはRNAまたはその一部を増幅する工程を含む。増幅は、例えば慣用の方法およびプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば単純PCR、RT−PCRまたはネストPCRにより行うことができる。
【0038】
他の特定の態様においては、アミノ酸残基を決定することは、アレル特異的制限酵素消化の工程を含む。これは、特定のアレルのコード配列を開裂し、そして他のアレルを開裂しない制限酵素を使用することにより行うことができる。
【0039】
更なる特定の態様においては、アミノ酸残基を決定することは、該アミノ酸残基をコードするヌクレオチドを含む遺伝子またはRNAまたはその一部を、遺伝子型に対して特異的な核酸プローブとハイブリダイゼーションさせ、そしてハイブリッドの存在または不存在を決定する工程を含む。
【0040】
カリウムチャネルのKir6.2サブユニットおよび糖尿病
インスリン分泌におけるKATPチャネルの基本的役割および小児のインスリン過剰症に関与するKir6.2突然変異を知って、KATPチャネル過剰活性がインスリン分泌を阻害することにより糖尿病を引き起こすことがありうると仮定して、KCNJ11によりコードされたKir6.2における突然変異を一型糖尿病および二型糖尿病について調査した[53][図3]。実際に、Kir6.2における普通のE23K多形は、二型糖尿病らに強く関連していることが見出され[54、55]、グルコース負荷試験においてインスリン分泌が減少しており[56]、そして高血糖症に応答してグルカゴン分泌の抑制が減少している[57]。糖尿病の小児の大きな集団に基づくコホートは、6か月齢以前に定まる早期発症永続性糖尿病が、一型糖尿病のための高頻度の「保護的」HLA遺伝子型、低頻度の自己免疫および小出生時体重(small-for-date birth weight)により後期発症症例とは異なることを示唆する[58]。
【0041】
かくして、いくつかの研究は、知られている病因(グルコキナーゼ、インスリン−プロモーター因子1、PTF1a、FOXP3、およびEIF2AK3における突然変異[59−63])なしに永続性新生児糖尿病を有する患者におけるKir6.2をコードするKCNJ11の配列決定を報告し、そして症例の30〜50%について異なる突然変異を見出した[14、64、65](表2参照)。新生児糖尿病の研究のためのフランスネットワークからの患者の本発明者等の研究において、本発明者等は、糖尿病の診断において64日中央値年齢(median age)(範囲1〜260)を有する17人の妊娠期限の終わりに生まれた赤ん坊(at-term babies)についてKCNJ11遺伝子をスクリーニングした。本発明者等は、9人の患者において7つのヘテロ接合性突然変異:既に述べた3つ(V59M、R201H、R201C)および4つの新規な突然変異(F35L、G53N、E322K、Y330C)を同定した。最も多くの患者は、多分子宮インスリン分泌不全により、小さな出生時体重を有していた[64]。KCNJ11における突然変異も同定されたが、一過性新生児糖尿病症例においてはより少ない頻度で同定された[66]。記載された突然変異の大部分(約80%[14])はde novoであるが、1つの症例は証明された生殖細胞モザイクを有することが報告されており、これは、再発のリスクをカウンセリングするときこの可能性が考慮されるべきであることを示唆している[67]。これらの突然変異は野生型と比較してKATPチャネルの減少したATP感受性をもたらし、そしてチャネルブロックのレベルは異なる臨床的特徴の原因となりうる:「軽度の」形態は孤立した永続性新生児糖尿病を与え、これに対して重篤な形態は、糖尿病と神経学的症候、例えばてんかん、発達遅延、筋肉脆弱および軽度の異形性特徴を合併する[14、64、65、68]。最も高頻度の突然変異は、ホットスポット突然変異であるCpGジヌクレオチドの存在によりR201に位置している(C末端に位置している)。他の正に帯電した残基によるこのアミノ酸の置換はATP感受性に対する僅かな効果しか持たないが、中性または負に帯電したアミノ酸による置換は、チャネル機能の大きな損傷を引き起こす[14、69〜71]。しかしながら、R201突然変異によるATP感受性の減少は小さく、したがって孤立した新生児糖尿病の原因となりうるが、これに対してV59M、V59G、Q52Rのような大きな減少を引き起こす突然変異は、重篤な疾患と関連している[14、64、65、68]。一過性新生児糖尿病において同定された4つの突然変異[66、72](R201H、G53S、G53RおよびI182V)は、ATP感受性のより軽度の減少をもたらすが、関連した表現型は可変である。何故ならば、発端者の母が永続性新生児糖尿病または4人のうち3人について5歳齢後に現れた糖尿病を有していたからである。観察された筋肉脆弱は、筋肉および神経学的起源の両方からであることができる。何故ならば、Kir6.2は両細胞において発現されるからである。発達遅延およびてんかんは、前記したとおり中枢神経系に存在するKATPチャネルから生じる。反対に、心臓機能またはECGに対する顕著な効果は記載されておらず、そしてこれは、Kir6.2/SUR1のATP阻害よりも大きい突然変異体Kir6.2/SUR2AのATP阻害により説明されうる[68、73、74]。
【0042】
KCNJ11突然変異を有する成人および子供におけるスルホニル尿素の使用
膵臓β細胞に対するスルホニル尿素の効果は、チフス熱について処置された患者が重篤な低血糖症を有していたので、Janbonにより1942年に発見された。その後、スルホニル尿素ファミリーは急速に発展し、そして1956年以来インスリンを必要としない糖尿病の処置として使用された[75]。スルホニル尿素はSURに高いアフィニティーで結合することによりKATPチャネルを閉じる[74、76、77]。加えられたヌクレオチドの不存在下では、スルホニル尿素によるKATP電流の高アフィニティー阻害は、60〜80%にしか達しない[17]。
【0043】
SUR1は、グリベンクラミドに対する2つの結合部位を有し、これに対してトルブタミドは、1つにのみ結合する[2、74、75]。この二重の結合は、グリベンクラミドの長い洗い出し時間を説明することができる[78]。膵臓KATPチャネルに結合することに加えて、グリベンクラミドは、心臓筋および骨格筋または平滑筋型チャネルの活性を阻害するが[78]、SUR2に結合することによりミトコンドリアチャネルも阻害する。なお、SUR2に対するグリベンクラミドのこのアフィニティーは、SUR1に対するよりは300〜500倍低い。それにもかかわらず、高用量のグリベンクラミドで虚血心臓疾患を有する患者を処置するとき注意しなければならないことがある[78]。何故ならば、KATPチャネルは、上記した心臓保護機構虚血関連プレコンディショニングに介入するからである。しかしながら、二型糖尿病処置において報告されたこの型の副作用の不存在は、余分の膵臓チャネル阻害の効果が鋭敏になりうることを示唆する。
【0044】
膵臓KATPチャネルに対するスルホニル尿素の高いアフィニティーは、これらの薬物がこれらの患者においてインスリンに取って代わるのに使用されうることを示唆した。トルブタミドの静脈内注射は、KCNJ11突然変異を有する患者において、彼等が静脈内グルコースに応答しないときでさえ、インスリン分泌を刺激することができた[14]。その後6人の患者が、インスリ皮下注射から経口スルホニル尿素治療に首尾よく切り替えられた[14、79−81]。必要なグリベンクラミドの用量は、二型糖尿病処置に使用される用量よりもはるかに高い用量である0.8mg/kg/日までであった。インスリンを中止するのに必要な遅延は、現在2年近くの追跡調査で3日〜8週である。これらの結果は、同じKCNJ11突然変異に関してすら、患者間の大きな不均一性を示す。本発明者等自身の実験は、7人のうち5人の患者でインスリンから経口グリベンクラミドへの首尾よい移行を示し、移行できなかった最後の2人の少女は、まだ理解されていない他の病理に多分関係した神経学的特徴を有する双子であり、そして彼女らにとってそれに従うのは多分最善ではなかった。
【0045】
本発明者等のヨーロッパ人の共同研究は、KCNJ11のヘテロ接合性突然変異による永続性新生児糖尿病を有する40家族からの総計49人の年齢順の患者(consecutive patients)(3か月齢から36歳齢まで)を報告するであろう[82]。適当な用量のスルホニル尿素(0.8mg/kg/日当量グリベンクラミド)で処置されたこれらの49人の患者の内、44人(90%)は、インスリン処置を中止することができた。最初に必要なグリベンクラミドの中央値用量は、0.45mg/kg/日(0.05〜1.5mg/kg/日)であった。血糖コントロールは、試験されたすべての38人の患者において改善され、平均糖化ヘモグロビンレベルは、低血糖症の頻度を高めることなく、スルホニル尿素前の8.1%からインスリンの中止後の12週における6.4%になった。インスリンを中止することができない患者の80%(5人のうち4人)が、成功したグループにおいて14%(44人のうち6人)にすぎないのと対照的に、神経学的特徴を有していた。5人の患者は、一過性の下痢をしたが、他の副作用は報告されなかった。ある研究は、スルホニル尿素によるKATPチャネルの閉鎖はヒト島においてβ細胞アポトーシスを誘導することができ、したがって、二型糖尿病患者におけるβ細胞量の減少を突然引き起こすことがあるが、この信頼性はまだ確認されなければならないことを示した[83、84]。しかしながら、KCNJ11突然変異を有する患者に関しては、グリベンクラミド有効性が数年間一過性であるとしても、それは毎日の皮下注射なしの年々およびその後の生活の質の改善を意味する(Diabetes UK Careline Journal,2006における経口治療への成功した切り替え後の若い少年の個人的証言参照)。したがって、本発明者等は、KCNJ11突然変異によるインスリン処置される糖尿病を有する子供をインスリンからスルホニル尿素に移行させ、そして評価するためのプロトコールをデサインした。本発明者等は、これまでに同定された子供を含めるために(n=12)、我々の病院(AP−HP、Paris France)の臨床的研究方針の承認を得、そしてフランス保険局(French Authorities for Health Care)(AFSSAPS)からの同意を得た。
【0046】
インスリンからグリベンクラミドへの移行:症例研究
本発明者等は、2か月齢で発見された永続性新生児糖尿病を有する37歳齢の患者の症例、彼女が両側耳炎で入院した時の系統的グルコース監視期間中の症例、をここに報告する。代謝コントロールは、彼女がインスリン治療を開始した5歳齢まで適切な食事下に順調であった。しかしながら、数日間注射を何回も中止したにもかかわらず、彼女は決してケトアシドーシスにならなかった。彼女は2人の子供を持ち、最初の子供は生まれた最初の日に永続性新生児糖尿病を示し、そしてインスリン注射により直ちに処置された小女であった。母と娘の両方にKir6.2突然変異R201Hが2004年に見出され、そして本発明者等は、2005年1月にグリベンクラミド治療を開始した[82]。移行は大きな成功であった。何故ならば摂取した最初の錠剤が0.1mg/kg/日以下のグリベンクラミドの必要量で両者へのインスリン注射を恒久的に中止するのに十分であったからである(母36歳、娘15歳)。現在18か月の追跡調査で、彼女らは両方とも彼女らの血糖コントロールを改善し、そして彼女らのHbA1cを改善し(母で7.4%から6%に、娘で9.5%から7.9%に)、そして副作用、特に反復低血糖はなかった。図4に示されたとおり、血糖値はインスリン治療下よりもグリベンクラミド下にはるかに安定であった。
【0047】
SUR1、糖尿病および神経心理学的特徴
極めて最近、本発明者等は、新生児糖尿病を有する34人の患者のうち9人において7つのヘテロ接合性ABCC8突然変異を観察した:PNDを有する2人におけるL213RおよびI1424V、ならびにTND(一過性新生児糖尿病)を有するヒトにおけるC435R、L582V、H1023Y、R1182QまたはR1379C。影響を受けたアミノ酸は、ラット、マウス、ニワトリおよび日本フグにおいて保存され、それらはチャネルの機能にとって重要であることを示唆する。本発明者等は、180人の糖尿病被検体およびフランス起源の140人の無関係の非糖尿病の白人個体の関連したエキソンを配列決定して、これらの突然変異を観察しなかった。更に、本発明者等は、既知の若年発症型糖尿病(MODY)関連突然変異なしのファミリーからの若年発症型糖尿病と診断された24人の発端者を含む、110人の糖尿病被検体のサブセットにおける突然変異により影響を受けないABCC8エキソンにおいて追加の非同義変化を検出しなかった。
【0048】
突然変異を有するファミリーの部分的系図を達成した。L213R、L582V(TND36)、H1023Y、I1424VおよびR1379C(TND19)突然変異はde novo突然変異である(L582V、TND16、およびR1379C、TND17突然変異もまた遺伝した)。C435R、L582V(TND16)、R1182QおよびR1379C(TND17)ファミリーにおいて、父はヘテロ接合体であり、そして突然変異体アレルは糖尿病と共分離された(co-segregated)。TND13(C435R)の父は13歳で糖尿病と診断され;彼の突然変異の同定後、彼はグリベンクラミド(10mg/日)に対する成功した応答時にインスリンを中止した(処置の24年後)。経口グルコース負荷試験(OGTT)は、TND34(R1182Q)の父が糖尿病を有することを示し;彼は最近は食事のみで処置されている。TND16ファミリーにおいて、個体II−3およびII−4は、OGTTにより30齢後に糖尿病と診断され、そして最近は食事のみで処置されている。32齢で、TND17(R1379C)の父は糖尿病を発生し、そしてグリベンクラミドで処置される。R1379Cアレルは、以前に妊娠期間中の糖尿病と診断されそして最近は食事で処置されている祖母、および44齢で糖尿病と診断されそして最近はスルホニル尿素で処置されている大おばにおいても同定された。
【0049】
したがって、本発明者等は、遺伝的欠陥が以前に同定されていない本発明者等の症例シリーズにおいて34ND症例の9つにおいてABCC8突然変異を見出した。これらの9人の患者は、この研究に含まれた73ND症例の12%の割合を占める。この研究の29PND患者のうち、12のKCNJ11症例は41%の割合を占め、2つのABCC8症例は7%の割合を占め、52%近くが解明されていない。44TND症例の殆ど57%は、染色体6q異常に帰することができ(n=25)、2%はKCNJ11突然変異に帰することができ(n=1)、そして〜15%はABCC8突然変異に帰することができる(n=7)。11TND症例の病因は決定されていない。
【0050】
糖尿病
表1は、突然変異体SUR1を有する患者の臨床的特徴の要約を与える。糖尿病は、32日の中央値齢(範囲3〜125日)で、5症例で多尿および多飲をもたらし、そして2症例でケトアシドーシスをもたらす高血糖症と診断された。TND17および34は、低出生時体重および高血糖症を有していた。抗島抗体は検出できず、そして超音波検査法は、膵臓の異常を示さなかった。初期のインスリン処置が、それぞれ、発端者TND16、34、17、19、13、36および28において1、2.5、3、4、4、8.5および10か月間必要であった。最後の実証されたインスリンの用量は、0.12から1.2U/kg/日まで変わり、平均は0.67U/kg/日であった。
【0051】
SUR1タンパク質はスルホニル尿素レセプターである。したがって、突然変異が結合を変える可能性および患者においてスルホニル尿素結合が存在し得ない可能性が考えられた。しかしながら、そしてこの理論的可能性にもかかわらず、それらの突然変異の同定に続いて、グリベンクラミド(グリブリド)治療が開始され、そしてPND患者において成功することが見出された:インスリンはそれぞれ患者PND12および16において2日および15日後に中止された。グリベンクラミド(グリブリド)の最近の用量はそれぞれ患者PND12および16において0.59および0.22mg/kg/日である。TNDを有する人の2人は人生において後に再びインスリンを必要とした。TND28は16歳で再び高血糖症になり、インスリンで処置され、次いでグリピジド(0.16mg/kg/日)に移行した。TND19は11歳でインスリンを必要とし、そして16歳でグリベンクラミド(0.28mg/kg/日)に切り替えられた。これらの用量は、成人における二型糖尿病を処置するための合衆国FDAにより最近推奨されたグリピジドおよびグリベンクラミドの用量の高い方の端にあるか、またはこの用量を超えている。
【0052】
【表1】

【0053】
神経学的特長、筋肉的特徴および神経心理学的特徴
患者PND12は、発達遅延を示したが、KCNJ11突然変異を有するいくらかの個体と対照的に、てんかん発作または筋肉脆弱を持たなかった。彼の両親は運動遅延および発達遅延を報告しており、これらは統合運動障害を含むことがその後実証された。TND17は少しのジストニーを示した。TND16は遅い思考を示し、そしてTND13は少しの視空間統合運動障害(visual-spatial dyspraxia)を示した。誰もいくらかのKCNJ11突然変異と関連した表面的特徴を持たなかった。他のインデックス症例のどれも異常な認知機能または発達を示さなかった。
ABCC8/SUR1は、脳において発現され、したがって、この遺伝子の突然変異は患者のいくらかにおいて観察された神経学的特徴の直接原因となりうる。
【0054】
代謝試験
患者PND12および16におけるCペプチドのベースライン空腹時レベルは低かったが(0.24および0.63nM)、経口グリベンクラミドによる処置の2時間後それぞれ、1.1および1.4nMに358%および222%増加した。β細胞機能不全と合致して、グルカゴンによる刺激は、ベースラインレベルより79%(0.19nM)および106%(0.67nM)の増分で悪化した(正常な応答は少なくとも150%の増分である)。
【0055】
遺伝的病因に従うNDの臨床的特徴
染色体6の異常に連鎖したTND症例の出生時体重(TND−6q;n=25)は、突然変異体SUR1(表1、補遺)により引き起こされたTNDを有するヒトの出生時体重と比較して、低く、しばしば母集団の最も低い3%内にあった(20/25対2/7、p=0.014)。巨舌症は、25人のTND−6q24発端者のうち4人には存在したが、TND−SUR1患者には存在しなかつた。糖尿病は、TND−SUR1患者に比較してTND−6q24においてより早期に診断され(29.9日に対して4日の平均、p<0.05)、これは少なくとも部分的に、TND−6q24患者のより低い出生時体重を多分反映しており(それぞれ20症例対2症例、p=0.019)、系統的グルコース監視のより大きな可能性を与える。発達遅延、糖尿病の再発の頻度および時間を含む他の臨床的特徴は異ならなかった。染色体6の異常はPNDと関連していなかった。
【0056】
【表2】

【0057】
突然変異体Kir6.2により引き起こされたNDを有する人(n=13)と、突然変異体SUR1により引き起こされたNDを有する人(n=9)の比較は、低い出生時体重の分布、診断の年齢または症状出現時のグルコースレベルに有意な差を示さなかった。ケトアシドーシスは、突然変異体SUR1により引き起こされた糖尿病よりも高い頻度で突然変異体KIR6.2により引き起こされた糖尿病と関連していたが(9/13対2/9、この差(p=0.09)は多分小さいサンプルサイズの故に、統計的に有意ではなかった。発達遅延の有病率は異ならず(3/13対1/9)、てんかんは1/13ND−KIR6.2症例において診断されたが、ND−SUR1症例のどれもその診断をされなかった。統合運動障害はND−KIR6.2の2つの症例およびND−SUR1の1つの症例において観察された。本発明者等の症例シリーズにおいて、KCNJ11突然変異は、主としてPNDと関連しており(12/13)、これに対して大部分のABCC8突然変異(7/9)はTNDに連鎖している。
【0058】
本発明者等の結果は、β細胞に見出されるATP感受性KチャネルのSUR1調節サブユニットをコードするABCC8におけるヘテロ接合性活性化突然変異は、永続性新生児糖尿病および一過性新生児糖尿病の両方を引き起こすということを示す。ND−SUR1対ND−KIR6.2患者の比較は、低い出生時体重の有病率、診断の年齢または高血糖症もしくは同伴するケトアシドーシスの重篤さにおいて有意な差を示さなかった。KCNJ11突然変異は、PNDと典型的に関連しているが、ABCC8突然変異の大多数はTNDと関連しており、これは多分より重篤さが低い形態の糖尿病を反映する。
【0059】
以前のレポートは、SUR1/KIR6.2神経内分泌チャネルおよび筋線維鞘SUR2A/KIR6.2チャネルの両方によるKIR6.2細孔の共有を反映することができる突然変異体KIR6.2により引き起こされるNDと関連した症候の不均一性を強調していた。ND−SUR1を有する幾人かの人の神経学的特徴は、SUR1含有KATPチャネルが、ニューロン細胞、例えば抑制性運動ニューロン(inhibitory motor neurons)の膜電位をコントロールすることができることを暗示する。
【0060】
ABCC8突然変異を有する父祖における糖尿病の診断は成人発症二型糖尿病または軽度の形態のTNDと合致している。フランスの新生児における系統的血液スクリーニングは、後者をありそうもなくし、そして本発明者等は、ABCC8突然変異が可変性の発現および発症の年齢を有する新規な単一遺伝子形態の二型糖尿病を生じさせることができることを提唱する。家族性早期発症二型糖尿病への過剰活性ABCC8突然変異の潜在的寄与は評価されるべきであるが、本報告は、稀な小児科学的形態の糖尿病の分子的理解がより普通の形態の疾患をいかに説明することができるかを強調する。
【0061】
臨床的実施において、染色体6q24における異常に対してABCC8またはKCNJ11突然変異を有する患者を識別する方法はない。遺伝子配列決定は必要であり、そして有用なストラテジーは、空腹時高血糖症(この場合にはGCKが解析される)を有する両親が存在しない限り、染色体6および短いイントロンのないKCNJ11を最初にスクリーニングすることである。突然変異が同定されないならば、ABCC8を解析する。遺伝的試験は、カウンセリングに対する深い示唆およびNDを有する患者のための治療を明らかに与える。実際に、スルホニル尿素は、意外にもそれらのレセプターにおける突然変異の存在下に、若年患者および成人患者におけるインスリン処置を停止するのに有効であることが証明された。
【0062】
神経心理学的特徴、Kir6.2、SUR1およびスルホニル尿素処置
カリウムチャネルに結合する分子(スルホニル尿素のような)が、Kir6.2サブユニットにおける突然変異を有する子供の神経発達面に対して正の影響を与えることができるという下記の追加の結果
【0063】
5か月齢の少女は、幼児痙攣症、発達遅延、早期発症糖尿病を有することが分かった。彼女はKir6.2にヘテロ接合性活性化突然変異を有していた。脳波記録法におけるヒプスアリスミアを伴う幼児痙攣症は重篤であり、そしてステロイドに治療抵抗性であった。経口スルホニル尿素の添加は、てんかんの部分的および一過性コントロールを可能とした。
【0064】
プライベートKCNJ11突然変異を有する1つの被検体は、永続性糖尿病と関連した軽い発達困難を発生した。スルホニル尿素処置に続いて、インスリンを中止させることができ、そして神経心理学的一里塚が改良されうる。濃縮能力、微細運動能力は改善されることが両親により報告された。
【0065】
更に、患者の残り(ABCC8(Sur1)またはKCNJ11(Kir6.2)のいずれかを有する10人)は、スルホニル尿素への移行の結果として神経心理学的機能の改善を示した。明らかなことは、筋肉緊張および全体的挙動特徴が改善されたということであった。
【0066】
これらの2つの症例およびこれらの観察に基づいて、Kir6.2およびSUR1突然変異を有する患者において、カリウムチャネルに突然変異を有するこれらの子供の神経心理学的発達に対するスルホニル尿素の有利な効果を更に実証するための、有望な臨床試験が進行中である。この薬物は、血液脳関門を横切ることが示された。
【0067】
臨床試験
本発明者等は、Kir6.2活性化突然変異またはSUR1突然変異による永続性新生児糖尿病を有する子供を皮下インスリンから経口グリベンクラミド治療に切り替えるための臨床試験を開始した。
この試験は10人の患者を含んでいた。この試験の目的は、患者を皮下インスリンから経口グリベンクラミド治療に切り替えることによりまず治療し、そして患者の神経学的および発達状態のグリベンクラミド治療下の潜在的改善を評価することにより認知することである。1人の患者は試験から排除された。この患者は、最初の日の0.3mg/kg/日から0.8mg/kg/日まで増加する量のグリベンクラミドを受け取り、またはインスリン処置を停止し、そして正しい血糖を得ることを可能とする用量を受け取った。この用量は食事習慣に依存して2、3または4回で投与される。
【0068】
神経学的状態および発達状態は、切り替えのすぐ前およびグリベンクラミド処置の開始の2、6、12および18か月後に確立される。各患者は、特に子供における神経精神運動発達を定量的に評価するスケールに従って(www.ecpa.fr/default site. asp?id=33)、微細神経発達評価に供された。更に詳しくは、神経精神運動試験は、トーヌス、側性化(lateralization)、運動協調(静的および動的)、行動(praxies)および認識、注意能力、空間能力(試験のバッテリー:NP−MOT、ECPA−Elsevier Editor,Vaivre−Douret, 2006 and EMG test、ECPA editor、Vaivre−Douret,1997)の研究を含んでいた。幼児(0〜4歳齢)では、運動発達のスケール(DF−MOT,ECPA editor,Vaivre−Douret,1999)ならびに運動発達の齢を与えることを可能とする全体および微細運動能力を使用した。神経心理学的試験は、最初に動眼能力、次いで書字(BHK test、ECPA)、時間についての熟練(skills for time)(Stambak)、異なる記憶能力(differents memories skills)、視覚能力(de Rey test)、視覚運動協調(Beery test)、視空間認知能力(visuo-spatial skills)(Khos test,Rey image)、実行能力(ポルテウスの迷路(Porteus labyrinthe)および/またはNEPSYのロンドン塔試験(LONDON tower test of the NEPSY))、視空間注意能力、書字速度および言語能力を含んでいた。
眼科学的評価のために、いくつかの基準が決定される。6歳未満の子供では、暗順応および明順応網膜電位図(ERG)および視覚誘発電位(PEV)が決定される。6歳より多くの子供においては、錐状体ERG(cone ERG)、シングルフラッシュERG、PEVおよび感覚眼球電図(sensorial electro-oculography)が行われる。
筋緊張低下は、Kir6.2突然変異を有する患者においてのみ述べられている。
9人の患者のうち8人は糖尿病の切り替え処置に成功した。
9人の患者のうち3人は切り替え処置後に評価され、そしてそれらのすべては明らかな眼科学的改善または神経心理学的改善を示した。
特に、15か月齢であり、そしてKir6.2突然変異を有する少年は、長くなったVEP(視覚誘発電位)(>150ms)を示した。処置を切り替えて6か月後、彼は20msのVEPの明らかな改善を示した。
5か月齢であり、そしてKir6.2突然変異を有する他の少年は、軸(axis)の筋緊張低下および1か月の有意な発達遅延を示した。処置を切り替えて6カ月後、彼は軸のより多くの筋緊張低下を示さず、そしてより多くの発達遅延を示さなかった。したがって、この患者はトーヌスおよび発達の改善の証明を可能とする。
最後に、L213R SUR1突然変異を有しそして7歳齢である少年は、切り替えられた処置の18か月後に、より良好な計画、注意障害の改善、言語改善および激しい苦痛の減少を示した。
【0069】
一般的結論
結論として、KATPチャネルは、多くの器官、特に膵臓β細胞における代謝変化に対する細胞応答において中心的役割を有する。これらのチャネル、特にKir6.2およびSUR1サブユニットの生理学的機能の理解の進歩は、永続性及び反復性新生児糖尿病またはKCNJ11およびABCC8突然変異による遅い発症の糖尿病を有する患者のための主要な臨床的適用を見出した。インスリン注射から経口グリベンクラミド治療への移行は、最も多くの患者に対して高度に有効であり、そして安全である。
【0070】
これは、いくらかの単一遺伝子の形態の糖尿病の分子的理解がいかに子供における治療の意外な変化をもたらしうるかを説明する。これは目覚ましい例であり、それによりファーマコゲノミックアプローチが多数の方法で本発明者等の若い患者の生活の質を改善する。
【0071】
【表3】



【0072】
表3
フランスで入手可能なカリウムチャネルリガンド(スルホニル尿素を含む)のリスト(Source Vidal)
血糖低下薬スルファミド
カルブタミド=グルシドラル
グリベンクラミド(グリブリド USA)=ダオニールおよびダオニールフェイブル、オイグルカン、ヘミダオニール、ミグルカン
グリボルヌリド=グルトリル
グリカザイド(Glicazide)=ダイアミクロン
グリメピリド=アマリール
グリピザイド=グリベネス、ミニディアブ、オジディア(Ozidia)

グリニド(カリウムチャネルに結合する)
レパグリニド=ノボノルム
関連
メトホルミン+グリベンクラミド=グルコバンス
【0073】
【表4】














【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥のある突然変異したSUR1ポリペプチドを有する被検体において糖尿病および/または神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害を処置するための医薬組成物の製造のためのATP感受性カリウムチャネルリガンドの使用。
【請求項2】
突然変異したSUR1ポリペプチドが、下記のアミノ酸突然変異:L213R、I1424V、C435R、L582V、H1023Y、R1182QおよびR1379Cの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ATP感受性カリウムチャネルリガンドが、スルファミドおよびグリニドまたはその任意の組み合わせから選ばれる、請求項1〜2のいずれかに記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、単独または組み合わせにおける、カルブタミド(グルシドラル);グリベンクラミド;グリブリド;グリボルヌリド(グルトリル);グリカザイド(ダイアミクロン);グリメピリド(アマリール);グリピザイド(グリベネス、ミニディアブ、オジディア);レパグリニド(ノボノルム)から選ばれる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
被検体が子供または成人である、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
SUR1突然変異したポリペプチドを有する子供または成人において糖尿病および/または神経心理学的障害、筋肉障害および神経学的障害を処置するための医薬組成物の製造のためのスルファミドまたはグリニド化合物の使用。
【請求項7】
被検体における神経心理学的障害および/または筋肉障害および/または神経学的障害を処置するための医薬組成物の製造のためのATP感受性カリウムチャネルリガンドの使用。
【請求項8】
被検体がSUR1および/またはKir6.2突然変異したポリペプチドを有する、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
突然変異したSUR1ポリペプチドが、下記のアミノ酸突然変異:L213R、I1424V、C435R、L582V、H1023Y、R1182QおよびR1379Cの少なくとも1つを有し、および/または、Kir6.2突然変異したポリペプチドが、下記のアミノ酸突然変異:F35V、F35L、H46Y、R50Q、Q52R、G53N、G53R、G53S、V59G、V59M、L164P、K170T、I182V、R201C、R201H、R201L、I296L、E322K、Y330C、Y330SおよびF333Iの少なくとも1つを有する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
カリウムチャネルリガンドが、スルファミドおよびグリニドまたはその任意の組み合わせから選ばれ、好ましくは、単独または組み合わせにおける、カルブタミド(グルシドラル);グリベンクラミド;グリブリド;グリボルヌリド(グルトリル);グリカザイド(ダイアミクロン);グリメピリド(アマリール);グリピザイド(グリベネス、ミニディアブ、オジディア);レパグリニド(ノボノルム)から選ばれる、請求項7〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
神経心理学的障害および/または筋肉障害および/または神経学的障害が、てんかん、発達遅延、筋肉脆弱、統合運動障害、失読症、筋緊張異常、言語障害、および脈絡膜と網膜の障害を含む眼の障害から選ばれる、請求項1〜10のいずれかに記載の使用。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−545562(P2009−545562A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522249(P2009−522249)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057937
【国際公開番号】WO2008/015226
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(591140123)
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE − HOPITAUX DE PARIS
【出願人】(509033033)ユニベルシテ・パリ・デカルト (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS DESCARTES
【Fターム(参考)】