説明

糖尿病性潰瘍を処置するための医薬の調製における薬学的組成物の使用

肢もしくは体表における糖尿病性潰瘍を処置するための医薬の調製、または医療用包帯材の調製における、薬学的組成物の使用を提供する。本薬学的組成物は、薬学的組成物の総重量に基づいて、(A)3〜15重量%の食用ミツロウと、(B)85〜97重量%の、オウゴン(Scutellaria root)、オウレン(Coptis root)、オウバク(Phellodendron bark)、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物とからなる。ゴマ油抽出物中において、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果のそれぞれは、ゴマ油の総重量に基づいて、乾燥原料で2〜10重量%の量である。糖尿病性潰瘍を処置するための医療用包帯材および該包帯材を納めた対応する薬箱も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、肢または体表における糖尿病性潰瘍を処置するための医薬の調製、または医療用包帯材の調製における、薬学的組成物の使用に関する。本発明は、肢または体表における糖尿病性潰瘍を処置するためのある種の医療用包帯材、および該包帯材を納めた対応する薬箱にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
中国特許ZL931002761には、熱損傷を処置するための薬学的組成物が開示されており、該薬学的組成物は、該薬学的組成物の総重量に基づいて、(A)3〜15%の食用ミツロウと、(B)85〜97%の、オウゴン(Huangqin)、オウレン(Huanglian)、オウバク(Huangbai)、ミミズおよびケシさく果の、抽出物とからなる。ゴマ油抽出物中において、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果のそれぞれは、ゴマ油の総重量に基づいて、乾燥原料で2〜10重量%の量である。
【0003】
さらにまた、熱損傷を処置するための前記薬学的組成物は、主として、温血哺乳動物またはヒトにおいて、熱傷、特に広範囲にわたる熱傷、熱傷、化学熱傷などを含む熱損傷を処置するために使用される。また、創面潰瘍、感染創面、膣炎、子宮膣部びらん、痔、圧迫潰瘍、創面、凍傷、および凍瘡などを含むヒトの糜爛および潰瘍を処置するためにも使用することができる。
【0004】
用語:
1.「本発明に記載の薬学的組成物」または「本発明の薬学的組成物」:これは、薬学的組成物の総重量に基づいて、(A)3〜15%の食用ミツロウと、(B)85〜97%の、オウゴン(コガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)の根)、オウレン(オウレン(Coptis chinensis Franch)、三角葉オウレン(C. deltoidea C.Y.Cheng et Hsiao)または雲南オウレン(C. teeta Wall)の根)、オウバク(シナキハダ(Phellodendron chinense Schneid)またはミヤマキハダ(P. amurense Rupr)の樹皮)、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物とからなる薬学的組成物を示す。ゴマ油抽出物中において、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果のそれぞれは、ゴマ油の総重量に基づいて、乾燥原料で2〜10重量%の量である。
【0005】
2.潰瘍:潰瘍がよくある疾患の一つであり、潰瘍の処置が臨床医にとって日常的な実務であることは、当業者において異論がない。潰瘍の定義は自明であるようにも思われるが、多くの専門家は、創傷と潰瘍の相違について、それほど熟知しているわけではない。一般に、真皮または皮下組織に達する組織欠陥を潰瘍と呼ぶことができ、一定の深さを有する円形の膿性潰瘍を膿性糜爛と呼び、小さくて非常に深い孔状の潰瘍を瘻孔と呼ぶ。Leverは、潰瘍を、治癒後の陳旧性瘢痕の真皮および表皮の部分的欠陥と定義した。一方、「Anderson’s Pathology」では、組織表面または器官表面の近傍に発生した炎症が強い炎症性刺激を与えて組織壊死を引き起こし、ついには、壊死組織の剥脱後に潰瘍が形成されると、考えられている。このように、皮膚科学では、組織学および形態学の観点から、潰瘍は真皮および表皮の部分的欠陥であり、前提条件としての炎症を必ずしも必要としない。しかし、病理学では、まず最初に器官の表層において炎症が発生し、壊死組織の脱落後に潰瘍が形成される。したがって、皮膚科学では創傷は潰瘍の範疇に含まれるが、病理学ではそうでないことがわかる。
【0006】
創傷と潰瘍の関係に関して、Siemensは、次のように指摘した。最初に治療されなかった創傷は、通常は二次感染を発生し、その後、肉芽組織が成長して、創傷の底部を覆う。この状況では、創傷を潰瘍と呼ぶべきである。中国では、専門家がこの種の創面を「開放創」と呼び、それを創傷潰瘍に分類する場合があることは、注記に値する。
【0007】
3.皮膚潰瘍:皮膚潰瘍が皮膚損傷後に真皮またはそれより深い層が関わる限定的皮膚欠陥であり、治癒後に瘢痕が残るであろうことは、当業者において異論がない。
【0008】
4.糖尿病性潰瘍:糖尿病性潰瘍は、糜爛潰瘍でも、創面潰瘍でも、上述した意味での潰瘍でもなく、糖尿病に起因して下肢および体表組織に生じる、潰瘍の特徴を有する特殊な種類の潰瘍であり、これは主として下肢に発生し、外傷性潰瘍とは、病因または病理発生が全く異なると、本発明の発明者は考えている。今のところ、糖尿病性潰瘍用の理想的で効果的な医薬は、世界中にまだない。
【0009】
本発明に記載の糖尿病性潰瘍には、糖尿病患者の肢における潰瘍および体表上の潰瘍が含まれる。
【0010】
糖尿病性潰瘍の病理発生機序は極めて複雑であり、統一された共通する明解な理解は、今のところない。一般に、相互に影響を及ぼす3つの過程、すなわち血管障害、神経障害、および免疫障害が関与する。
【0011】
血管障害:
血管障害には大きく分けて2つのタイプがある。一つは大血管の病理学的変化であり、もう一つは微小血管の病理学的変化である。これらの病理学的変化は、脚および体表にある軟組織の虚血をもたらし、最終的には潰瘍に進展する。
【0012】
神経障害:
神経障害は、糖尿病性足部潰瘍の病理発生過程の初期段階に関与し、糖尿病性足部潰瘍における最も重要な有害因子でもある。この病理発生過程では、全ての神経機能が損傷を受けるが、多くの場合、足筋を制御する運動神経を含む最も長くて最も細い神経線維が最初に損傷を受ける。虫様筋の機能喪失は足変形につながり、それが中足指の節関節下、足指背または足指先などの部位における圧力または摩擦を増加させる。これらの因子は潰瘍を容易に誘発する。自律神経機能の損傷も神経障害の初期段階に出現し、動静脈シャント、組織潅流量の減少、脱毛、皮脂腺および汗腺の機能喪失を含む一連の病理学的変化を引き起こす。これらの要素は協働して、皮膚乾燥、鱗屑形成および亀裂傾向をもたらす。
【0013】
免疫障害:
糖尿病性感染症における免疫障害の役割にはまだ議論があり、研究者の大半は、血糖の不十分な管理が患者を感染しやすい状態にするのだろうと考えている。しかし、実際には、糖尿病患者における体液性免疫は正常であるように見え、血中免疫グロブリンレベルは正常であるかわずかに高く、Bリンパ球数は正常であり、モデルマウスにおいて、抗体反応または補体結合の無効性は認められなかった。
【0014】
例えば、糖尿病性足病変の主症状は、血管障害、神経障害、および脚の感染に起因する脚の疼痛、しびれ感、足部潰瘍および肢端壊疽である。これは、臨床的には、糖尿病性足病変と呼ばれる(一般的には腐敗した足(rotten foot)と呼ばれる)ことが多く、次のような主要症状を有する。
1.皮膚のかゆみ、乾燥および無汗、四肢の冷感、浮腫および萎凋、皮膚色調の黒ずみ、色素斑の出現、毳毛剥脱。
2.刺痛、灼熱痛、しびれ感、四肢の感覚異常または感覚喪失、綿を踏んでいるような感覚、アヒル歩行、間欠性跛行、および休息痛。
3.四肢の栄養不良、緊張力の弱化、損傷を受けやすい関節靭帯。
4.中足骨頭の陥没、中足指節関節が彎曲し、凹足を形成、槌趾、鉤爪様趾(chicken claw toe)、シャルコー関節、骨破壊が病的骨折をもたらし得るなど。
5.足の背動脈の脈動が弱まるか消失する;深部反射および表在反射が遅延するか消失する。
6.四肢の、乾燥し亀裂の生じた皮膚または皮膚疱疹、血性小水疱、びらん、潰瘍、壊疽または壊死。
【0015】
現在の臨床技法では、糖尿病患者は、多くの種類の皮膚病変、長期にわたる代謝障害、微小血管および末梢神経の病理学的変化を同時に罹患することが多く、これらの変化は皮膚潰瘍の決定的な原因でもある。長期にわたる血管障害は、血管を(特に下肢において)硬化、狭窄させ、血液供給に負の影響を与えて、皮膚の栄養不良をさらにもたらす。微小血管の病理学的変化は、神経内膜への血液供給量を低下させ、自律神経の病変を悪化させ得る。神経の病理学的変化は、皮膚の疼痛および圧覚の閾値レベルを増加させ、足底の圧力負荷部位を変化させ得るので、足、とりわけ足指に、しばしば感染が起こる。この状況において、皮膚への傷害が起こると、修復はしばしば不十分になり、皮膚は、足の二次感染、潰瘍および壊疽を極めて起こしやすくなる。この疾患の最初期における誘発因子はほとんどの患者で明白であることが多く、なかでも創傷は最も重要なものである。さらに、水虫、爪甲真菌症、および抗生物質の長期使用を伴う糖尿病患者は、より一層、足真菌感染症を起こしやすい。高齢の糖尿病患者の場合は、その長い疾患の経過、低下した活動、低下した末梢循環効率ゆえに、皮膚潰瘍を起こす可能性がより高い。一方、高齢の患者では、高血糖が免疫機能を減じ、潰瘍形成後に感染を起こす可能性が高くなると同時に、重症例では、蜂窩織炎、骨髄炎、敗血症などが起こることもあり、その場合は、切断率が著しく増加する。一般に、糖尿病性潰瘍は、血糖管理、感染対策、微小循環の改善、および創傷領域の局部管理、例えばセファロスポリン類、リンコマイシン、ペニシリン、クラリスロマイシン、アシクロビル、アモキシシリンおよびジクロキサシリンナトリウムカプセル剤、化合物スルファメトキサゾールなどを抗感染手段として使用するもの、ムピロシン軟膏を外用するものなどを含む体系的医学療法によって処置されるべきである。しかし、ひとたび糖尿病性潰瘍が起こると、この潰瘍性創面を治癒させるための理想的で効果的な治療法はなく、今なお、外科的切断が採用されることが多い。このように、臨床実務においては、糖尿病性潰瘍の非手術的治療法が大いに求められており、新しい医学的技法または医薬にも大きな需要がある。
【発明の概要】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明において解決しようとする技術的課題は、上述した全く公知の、熱損傷を処置するための薬学的組成物を使って、肢または体表における糖尿性潰瘍(略して糖尿病性潰瘍)を処置することである。
【0017】
したがって本発明は、肢または体表における糖尿病性潰瘍を処置するための医薬の調製における、または医療用包帯材の調製における、薬学的組成物の使用に関する。前記薬学的組成物は、薬学的組成物の総重量に基づいて、(A)3〜15%の食用ミツロウと、(B)85〜97%の、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物とからなる。ゴマ油抽出物中において、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果のそれぞれは、ゴマ油の総重量に基づいて、乾燥原料で2〜10重量%の量である。
【0018】
本発明に記載の薬学的組成物は外用用である。本技法において、外用医薬には、例えば溶液剤、チンキ剤、粉末剤、ローション剤、油剤、乳剤、軟膏、ペースト剤、硬膏、およびゲル剤など、多くの剤形が含まれ得る。油剤、乳剤、軟膏、ペースト剤、硬膏またはゲル剤は、本発明における薬学的組成物にとって、好ましい形態である。
【0019】
本発明に記載の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0020】
本発明の使用は、肢または体表における糖尿病性潰瘍を処置するための医薬の調製における、本発明に記載の薬学的組成物の使用にのみ関する。言い換えると、本発明に記載の薬学的組成物は、糖尿病性潰瘍を処置するために外用されるものとする。本発明は、糖尿病を処置するために内用される医薬の調製における、本発明に記載の薬学的組成物の使用には関係しない。言い換えると、本発明は、糖尿病そのものを処置するために内用される医薬としての、本発明に記載の薬学的組成物には関係しない。
【0021】
本発明はさらに、肢または体表における糖尿病性潰瘍を処置するための、ある種の医療用包帯材に関し、本明細書における該包帯材は、以下の成分からなる薬学的組成物を含む:薬学的組成物の総重量に基づいて、(A)3〜15%の食用ミツロウと、(B)85〜97%の、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物。ゴマ油抽出物中において、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果のそれぞれは、ゴマ油の総重量に基づいて、乾燥原料で2〜10重量%の量である。
【0022】
医療用綿ガーゼおよび医療用包帯は、本明細書における該医療用包帯材の好ましい形態である。
【0023】
本発明は、本発明に記載の薬学的組成物または本明細書における前記医療用包帯材と、使用説明書とを含む、ある種の薬箱にも関する。薬箱は、前記薬学的組成物、またはその前記薬学的組成物を含有する前記医療用包帯材と統合されると同時に、使用説明書の写しが少なくとも1部は同梱されていて、それが臨床実務における本発明の薬箱の利便性を高める。
【0024】
本発明では、糖尿病性潰瘍が本発明に記載の薬学的組成物で処置され、満足のゆく治療有効性が得られた。現代の臨床実務において解決が極めて困難な課題であると特に認識されている、広範囲にわたる重度の糖尿病性潰瘍の処置に関して、その有効性は顕著だった。糖尿病患者における下肢の最初の切断後に起こる切断創面の続発性潰瘍の処置においても、極めて著しい治療有効性があった。
【0025】
臨床実施方法は次のとおりである:
1.包帯法
本発明の薬学的組成物を、糖尿病性潰瘍の創面に、1〜3mmの厚さで直接塗布した。創面を綿ガーゼ(または他の類似する通気性材料)で覆って(あまり厚くならないように)包帯し、朝と夕の1日2回、または1日1回(あまり好ましくない状態の場合)、包帯材の交換を行った。本明細書における前記包帯材の交換は、まず最初に糖尿病性潰瘍の創面中の代謝産物および残留する薬学的組成物を綿棒で極めて穏やかに除去し、次に創面を新しい同じ薬学的組成物で覆い、最後にガーゼ包帯材で包帯することを意味する。壊死筋腱組織が潰瘍性創面上に現れたら、それを剪刀で除去する。処置全体を通して、潰瘍性創面を消毒するために消毒薬を使用することは、禁止される。
【0026】
2.露出法
本発明の薬学的組成物を、糖尿病性潰瘍の創面に、通常は2mmより薄い厚さで直接塗布した。潰瘍性創面を、薬学的組成物で覆った後に、露出しておいたところ、潰瘍性創面上に被せられた薬学的組成物は温められて融け始めると共に、創面中の白い代謝産物がいくらか薬物層から排出され始めるか、または薬学的組成物と混合され始めるようである。創面上の薬学的組成物の全てが、概して6〜8時間以内に、代謝産物の白い混合物へと変化する。その時点で、その白色混合物を綿棒で除去し、次に潰瘍性創面を再び新しい同じ薬学的組成物で覆う。適用された薬学的組成物が代謝産物の白色混合物へと完全に変化したらいつでも、新しい薬学組成物と交換すること。潰瘍性創面が治癒するまで、この過程を繰り返す。壊死筋腱組織が潰瘍の創面に現れたら、それを剪刀で除去する。処置全体を通して、潰瘍性創面を消毒するために消毒薬を使用することは、禁止される。
【0027】
3.薬物ガーゼ法
ちょうどワセリンガーゼの製造過程と同じように、本発明の薬学的組成物を温めて融かした後、その本発明の薬学的組成物に、ガーゼを浸漬した。潰瘍性創面をその薬学的組成物ガーゼで覆い、次に包帯法または半露出法で処置した。ガーゼを1日1回交換した。
【0028】
糖尿病は慢性高血糖を特徴とする疾患である。付随する下肢の潰瘍、創面治癒の遅延、および他の合併症も、しばしば認められる。現在の技法では、糖尿病性潰瘍の大半が、糖尿病患者にとって身体障害および死亡の主原因の一つである切断を、しばしばもたらし得る。糖尿病の最も顕著な特徴である高血糖と、潰瘍性創面の困難な治癒との間には、直接的または間接的な関係が存在する。血糖の厳密な管理は、治癒困難な創面の出現と発達を、効果的に防止することができるが、多くの患者においては、たとえ血糖レベルが正常範囲内に管理されたとしても、糖尿病性潰瘍の治癒は、依然として、極めて困難である。この状況に鑑みて、糖尿病性潰瘍の困難な治癒の機序に関する研究をさらに続け、糖尿病性潰瘍の治癒を改善するための効果的な新しい方法を見つけ出すことは、極めて重要である。かつて、糖尿病性潰瘍は、外科用包帯材交換法で処置されることが多かったが、その有効性は理想的でないのが常である。
【0029】
本発明は、血糖の効果的な管理下において、本発明の薬学的組成物が、糖尿病性潰瘍の治癒を著しく促進し得ることを明らかにする。
【0030】
本発明の薬学的組成物中の活性成分としてのリノール酸は、必須脂肪酸の一種であり、形質膜の不可欠な構成要素である。これは、組織傷害後の細胞修復にとっても必須の物質であり、局所炎症創面への栄養補給を増加させ、創面の細胞修復のために必須の栄養培地を提供することができる。糖尿病は、神経栄養性および代謝性疾患の一種である。糖尿病性潰瘍は常に足指、足首およびかかとに生じる。これは、その病理発生過程が末梢血管傷害および末梢神経栄養に密接に関係することを示している。
【0031】
糖尿病性潰瘍の局部処置にとって重要な措置は、壊死組織を適時に除去することである。なぜなら、慢性潰瘍の表面はすぐに乾燥するため、清掃することが容易ではないからである。手術による壊死組織の切除は、正常組織の一部を間違いなく傷つけることになり、エピネフリンを含有する麻酔薬の使用によって組織が重度の虚血状態にある場合は特にそうである。フレーム構成を有する軟膏形は、本発明の薬学的組成物にとって好ましい。これは油性と湿気を特徴とし、創面中に長時間留まり、創面を湿った状態に保ち、壊死組織を酵素分解および酸敗化された状態にし、最終的には創面中の分泌物を「自己排膿」によって排泄する。これは壊死組織の清掃にとって極めて有益である。その一方で、インサイチュー幹細胞分化のための生理学的環境も確立され、それが静止幹細胞の活性化および組織の再生につながるので、瘢痕の形成と癒着が防止される。壊死組織の融解および排泄は、一般的潰瘍よりも少し長く続く。創面が修復し始めるまで短期間の包帯法を採用することもできる。比較的大きな投薬量を、1.5mmを超える厚さで、毎回使用することができる。壊死組織の融解と排泄が始まり、保湿露出法に移行すると同時に、各回の投薬量を減少させ、投与回数を増やす。保湿露出法による処置中に起こる糖尿病性潰瘍変化の特徴は、壊死組織の融解および排泄がリポタンパク質の透明膜の形成と同時に起こることである。ひとたび透明膜が形成されれば、潰瘍修復は開始している。潰瘍に関する修復の全過程が常にリポタンパク質の透明膜の下で起こるように、特別な注意を払って、このリポタンパク質の透明膜の完全性を保護すべきである。皮膚の基底組織が形成された後に、リポタンパク質の透明膜は自然に消失するだろう。本発明において、糖尿病性潰瘍が脂肪層に達するほど深い多くの症例は、長い疾患の経過を有するが、それでもなお、治癒させることができる。糖尿病性潰瘍を治癒させることができる機序の一つは、潰瘍性創面における基底細胞の再生であり、もう一つは、潰瘍を取り巻く新しい皮膚の同心円状の成長である。
【0032】
本発明の薬学的組成物中の表面活性物質は親水性基と親油性無極性基とから構成され、本発明の薬学的組成物は高い表面活性を有し、可溶化効果を有する[Rongxiang Xu. Regenerative medicine: research, creation and prospect. Chinese Journal of Burns, Wounds and Ulcers, 2002, 14(2):122-130]。本発明の薬学的組成物の二状態変換は、潰瘍性創面を効果的に隔離して、抗感染効果、すなわち細菌感染を減少させ、細菌の生組織への依存を失わせることで、効果的に細菌数を減少させ、細菌成長を阻害する効果をもたらし、最終的には細菌を遮断し、阻害し、排出する効果を持つ。軟膏による潰瘍の効果的な隔離は、酵素活性の維持を助け、不飽和脂肪酸とビタミンCの酸化を減少させ、阻止し、過酸化物の形成を効果的に防止し、細胞膜と脂肪を酸化損傷から保護し、組織の正常な代謝作用を維持する役割を果たす。
【0033】
本発明の薬学的組成物は、潰瘍性創面を効果的に隔離し、露出した神経終末への外因子の刺激を回避して、鎮痛効果をもたらす。医薬層が創面への異物の刺激を遮断することの他、前記鎮痛効果が関与する他の機序は、次のとおりである:(1)本発明の薬学的組成物中のβ-シトステロールおよび他の成分は炎症反応を効果的に低減することができる;(2)本医薬そのものは非刺激性である;(3)本医薬は局所微小循環を改善し、局所血流を強化し、局所代謝を促進し、神経終末に対する組織虚血、無酸素、浮腫の刺激効果を減弱する;(4)やがて、静止幹細胞の活性化および組織の再生につながるインサイチュー幹細胞分化のための生理学的環境も確立され、これらは全て、潰瘍治癒にとって好ましい。
【0034】
本発明の薬学的組成物の臨床応用価値は以下に挙げる点にある。
1.糖尿病性潰瘍性創面への、特に広範囲にわたる重度の糖尿病性潰瘍性創面および組織への、酸素供給を改善して、創面を、無酸素で生命力のない状態から、酸素化され生命力のある状態へと変化させる。
2.必要不可欠な肉芽組織を比較的迅速に成長させる。
3.肉芽組織から皮膚組織の新しい治癒創面を徐々に再生させる。
【0035】
結論として、本発明は、現代臨床医学における、医薬による糖尿病性潰瘍の治療の欠落を埋めるに至った。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例7に記載する糖尿病患者の左外踝における糖尿病性潰瘍の写真。
【図2】実施例7に記載する糖尿病患者の潰瘍への医療用ガーゼの貼付および塗布の写真。
【図3】実施例7に記載する糖尿病患者の左外踝における潰瘍の処置進捗の写真。
【図4】実施例7に記載する糖尿病患者の左外踝における潰瘍の処置進捗の写真。
【図5】実施例7に記載する糖尿病患者の左外踝における潰瘍の処置進捗の写真。
【図6】実施例8に記載する糖尿病患者の左外踝における潰瘍の写真。
【図7】実施例8に記載する糖尿病患者に関する潰瘍への医療用ガーゼの貼付および塗布の写真。
【図8】実施例8に記載する糖尿病患者に関する潰瘍への貼付および塗布の写真。
【図9】実施例9に記載する糖尿病患者の処置前の糖尿病性潰瘍の写真。
【図10】実施例9に記載する糖尿病患者の処置中の糖尿病性潰瘍の写真。
【図11】実施例9に記載する糖尿病患者の処置後の糖尿病性潰瘍の写真。
【図12】実施例10に記載する糖尿病患者の処置前の糖尿病性潰瘍の写真。
【図13】実施例10に記載する糖尿病患者の処置後の糖尿病性潰瘍の写真。
【図14】実施例10に記載する糖尿病患者の処置後の糖尿病性潰瘍の写真。
【図15】実施例10に記載する糖尿病患者の処置後の糖尿病性潰瘍の写真。
【図16】実施例11に記載する糖尿病患者に関する硬膏による処置の写真。
【図17】実施例11に記載する糖尿病患者に関する処置後31日目の写真。
【図18】実施例11に記載する糖尿病患者に関する処置後60日目の写真。
【図19】実施例11に記載する糖尿病患者に関する処置後90日目の写真。
【図20】実施例11に記載する糖尿病患者に関する処置後110日目の写真。
【発明を実施するための形態】
【0037】
態様
次に、添付の写真を活用し、限定でない下記の実施例により、本発明をさらに説明する。本発明の要旨から逸脱することなく、多くの変更を本発明に加えることができ、それでもなお、前記変更の全てが、同様に本発明の範疇に包含されることは、全ての当業者が理解し、同意するところである。さらにまた、全ての原料は、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果、ゴマ油を含めて、市場から容易に入手することができる。
【実施例】
【0038】
実施例1
中国特許ZL931002761の実施例1で開示されている方法のとおりに、開示されたものと同じ詳細な原料に従って、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物を得る。上記のゴマ油抽出物とミツロウとを混合することにより、本発明に記載の薬学的組成物1を得る。
【0039】
実施例2
各10Kgのオウレン、オウゴンおよびオウバク片、各2kgのミミズおよびケシさく果、100Kgのゴマ油および10Kgのミツロウを使用する点以外は、中国特許ZL931002761に記載の方法と同じ方法に従って、本発明に記載の薬学的組成物を製造する。ミツロウと、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物とを混合することにより、薬学的組成物2を得る。
【0040】
実施例3
各8Kgのオウレン、オウゴンおよびオウバク片、各3kgのミミズおよびケシさく果、100Kgのゴマ油および8Kgのミツロウを使用する点以外は、本発明の実施例1に記載した方法と同じ方法に従って、本発明に記載の薬学的組成物を製造する。ミツロウと、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物とを混合することにより、薬学的組成物3を得る。
【0041】
実施例4
各3Kgのオウレン、オウゴンおよびオウバク片(当技術分野における調製片)、各4kgのミミズおよびケシさく果、100Kgのゴマ油および15Kgのミツロウを使用する点以外は、中国特許ZL931002761に記載の方法と同じ方法に従って、本発明に記載の薬学的組成物を製造する。ミツロウと、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物とを混合することにより、薬学的組成物4を得る。
【0042】
実施例5
各10Kgのオウレン、オウゴンおよびオウバク片、各10kgのミミズおよびケシさく果、100Kgのゴマ油および3Kgのミツロウを使用する点以外は、本発明の実施例3に記載した方法と同じ方法に従って、本発明に記載の薬学的組成物を製造する。ミツロウと、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物とを混合することにより、薬学的組成物5を得る。
【0043】
実施例6
実施例1〜5で得た本発明における医薬組成物を温めて融かす。当業者に公知の方法に従って、前記5つの薬学的組成物のそれぞれに、医療用ガーゼをそれが完全に浸かるまで、個別に直接浸漬することで、本発明の薬学的組成物を含有する医療用包帯材を得る。その包帯材を市場向け医療品に梱包した。
【0044】
実施例7:糖尿病患者における踝軟組織の潰瘍の処置
糖尿病患者、男性、59歳。左外踝が、約4×4cmの範囲で、2年間にわたって潰瘍化し(図1参照)、糖尿病性潰瘍との確定診断を受けた。入院後に、血糖を低下させる対症療法を採用し、実施例1に記載した方法に従って製造された薬学的組成物から調製した実施例6に記載の医療用ガーゼを使用した。包帯材を貼付して潰瘍性創面を覆い(図2および図3参照)、それを1日1回交換した。患者は1ヶ月間の処置後に治癒し、退院した(図4および図5参照)。
【0045】
実施例8:糖尿病患者における踝軟組織の潰瘍の処置
糖尿病患者、男性、58歳。左内踝が、約3.5×4cmの範囲で、2年間にわたって潰瘍化し(図6参照)、糖尿病性潰瘍との確定診断を受けた。入院後に、血糖を低下させる待機的処置を採用し、実施例2に記載した方法に従って製造された薬学的組成物から作製した実施例6に記載の医療用ガーゼを使用した。包帯材を貼付して潰瘍性創面を覆い(図7参照)、それを1日1回交換した。患者は1ヶ月間の処置後に治癒し、退院した(図8参照)。
【0046】
実施例9:糖尿病性足部潰瘍の処置
糖尿病患者、女性、42歳は、左足が22日間にわたって潰瘍化し、悪化し始めた後に、医師の診察を受けた。医師は切断を勧告したが、患者はそれを拒絶した。入院時に、早朝の空腹時血糖は22.67mmol/Lであり、患者は、臨床的に、糖尿病と確定診断された。重度の糖尿病性潰瘍が左足の内下部に現れ、左足の著しい腫脹、足背の外側部から足底の中央部および後部にかけての激しい潰瘍化を伴うと同時に、瘻管が形成されて連結し、足指の趾節骨が露出し、筋膜および筋の壊死、潰瘍化が始まり、悪臭を放った(図9参照)。抗感染および栄養補助療法の後、患者には、実施例3に記載の薬学的組成物を、潰瘍上に約2mmの厚さで塗布し、次に、薬学的組成物で覆われた潰瘍性創面を完全に露出させた。医薬を1日1回交換した(図10参照)。45日間の処置後に、潰瘍は基本的に治癒し、患者は病院から退院した(図11参照)。
【0047】
実施例10:糖尿病性足部潰瘍の処置
長年にわたって糖尿病を患っている男性。日常生活において血糖はあまりよく管理されていなかった。左踝の糖尿病性潰瘍が臨床診断された。左足の遠位端の内側部が明らかに赤く腫脹していた。母趾および指節関節に開放創があり、関節包が損傷していた。骨関節表面が見え、壊死組織が骨の遠位端の内側部分に付着していた。筋腱が腫脹し、変性していた。足底に、悪臭と分泌物を伴う8×6cmの創面があった(図12参照)。この患者には、実施例4に記載の薬学的組成物を、潰瘍上に約1.5mmの厚さで塗布し、次に、薬学的組成物で覆われた潰瘍性創面を完全に露出させた。医薬を1日1回交換した。35日間の処置後に、前記潰瘍が治癒し、患者は病院から退院した(図13、図14、図15参照)。
【0048】
実施例11:糖尿病性足部潰瘍の処置
Xu、20年間にわたって糖尿病を患っている59歳の男性。彼は、その糖尿病性足病変壊疽により、中国の地方病院で医師の診察を受けた。医師は切断を勧告したが、彼は同意せず、Harbin Medical Universityに附属するFirst Clinical Hospitalに移された。入院時の診断では、(1)I型糖尿病;(2)半年間にわたる右脚の動脈閉塞による右足の糖尿病性壊疽が示された。潰瘍性創面の管理後に、患者を、実施例2に記載した薬学的組成物の軟膏形、実施例6に記載の硬膏形(実施例3に記載の薬学的組成物を含有するもの)で処置した(図16)。医薬を1日1回交換し、露出後は、潰瘍を軟膏で、あるいは硬膏で処置した。潰瘍性創面は徐々に治癒し[図17(31日目)、図18(60日目)参照]、90日目には潰瘍性創面が基本的に治癒した(図19参照)。110日間にわたる処置後に、潰瘍性創面は十分に治癒した(図20参照)。
【0049】
実施例12:60の症例における下肢の糖尿病性潰瘍に対する治療有効性の観察
脚上の糖尿病性潰瘍の症例60例のうち、36例は男性、24例は女性だった。年齢は60歳〜80歳で、全ての患者が多飲、多尿、多食、活力低下などの症状を有していた。検査では、空腹時血糖のレベルが7.8mmol/Lより高いことが繰り返し示され、II型糖尿病という診断と合致した。下肢の潰瘍が1ヶ月〜26ヶ月間持続した全ての症例のうち、15例は急性潰瘍、45例は慢性潰瘍だった。他の病院で処置を受けていた後者の全例のうち、足指潰瘍は36例、かかと潰瘍および中足潰瘍は各9例、そして脛骨前部潰瘍は6例だった。足部潰瘍は全て慢性で、脂肪層に達する深さがあり、潰瘍性創面は肉芽組織を欠き、乾燥し、滲出性はほとんどなかった。最も小さい面積は2.0cm×1.0cm、最も大きい面積は2.2cm×5.5cmだった。足部潰瘍は、厚くて硬い胼胝組織で囲まれていた。6例の脛骨前部潰瘍のうち5例は外部創傷によって引き起こされたものであり、いずれも2.0cm×3.5cm未満の面積、明らかな赤色、腫脹、周辺皮膚のかゆみおよび疼痛を有していた。全症例を、ランダム化により、2つの群、すなわち観察群用の30例と、対照群用の30例とに分割した。これら2つの群間で、年齢、性別、病期、および潰瘍サイズに、統計上の有意差はなかった(P>0.05)。原疾患の処置については、食餌療法を強化することの他に、対応する薬物による血糖レベルの降下を全ての症例に適用した。高齢患者における低血糖および乳酸血症を避けるために、アカルボースを与えた。血糖濃度を定期的に検査し、治療計画を相応に再調節した。原疾患に関する最も理想的な処置効果は、血糖濃度が8.3mmol/Lより低いことである。
【0050】
観察群(試験群)では、潰瘍性創面および周辺の皮膚を1%ポビドン-ヨウ素で消毒し、滅菌生理食塩水で浄化し、滅菌した鉗子および剪刀で壊死組織を清掃した後、滅菌生理食塩水または3%過酸化水素溶液で浄化した。観察群の全ての潰瘍にポビドン-ヨウ素を均等に局部外用して、薬物を1〜2分間、組織に浸透させた。次に、実施例1に記載した本発明の薬学的組成物を綿棒で潰瘍上に塗布し、平らに塗り拡げ、厚さを1.5mm〜2.0mmに保った。滅菌ガーゼを軟膏の上に置き、包帯した。患部脚を持ち上げて、医薬を1日1回交換した。壊死組織が融解し始めたら、治療戦略を保湿露出法に変更した。厚さを1.0mmにして、医薬を1日2回交換した。医薬を交換するたびに、融解した壊死組織を適時に清掃した。
【0051】
対照群では、滅菌ガーゼを160,000Uのゲンタマイシンに浸してから、包帯材で包帯された潰瘍に1日1回適用した。交換の際には、肉芽組織が成長して上皮化が完全に実現するまで、2群における潰瘍中の融解混合物または壊死組織を清掃除去すべきである。
【0052】
作図法および透明なグラフ用紙を使って、潰瘍性創面の治癒率を決定し、潰瘍性創面の面積を計算する。詳細についてはAdobe Photoshop 7.0およびOsirisソフトウェアを参照されたい。処置前の面積を初期面積として選択し、調査終了時の面積を時相点(time phase point)面積として選択した。面積を計算するための式:治癒面積=(初期面積)-(時相点面積);潰瘍性創面の治癒率=(治癒面積/病変面積)×100%。治癒+明らかに有効+有効=総有効数。治癒:完全な上皮化、滲出物なし;明らかに有効:治癒率が80%を上回り、分泌物がなく、肉芽組織が明らかに成長し、生気があり、出血しやすい;有効:潰瘍性創面が縮小するが、80%に達することはなく、滲出物が減少し、肉芽組織が増殖し、青白いか、または生気がない;無効:潰瘍性創面が変化しないか、あるいは拡大さえし、生気がない。
【0053】
統計処理により、全てのデータを

として表した。t検定、x2検定および相関分析を計数データに含む統計解析は、SPSS11.0統計ソフトウェアで行った。P<0.05は統計的有意性を表す。
【0054】
上述の症例において、6例の脛骨前部潰瘍は4週間以内に治癒し、その治癒過程は深達性2度の熱傷の治癒経過と似ていた。治癒した局部皮膚は平坦である。足指およびかかとにおける慢性潰瘍の最も短い治癒期間は35日間であり、最長は2ヶ月だった。臨床観察によれば、このタイプの潰瘍の治癒過程全体は、次に挙げる3つの段階に分割することができる:壊死組織の融解および排泄;透明なリポタンパク質膜の形成;および再生的治癒。壊死組織の融解および排泄に関する時間枠は、原疾患のタイプおよび潰瘍性創面の壊死強化に関するが、3〜4日間の処置後には全ての壊死組織が融解し始めることが可能であり、融解および排泄は2〜4週間以内に終わる。第2段階と第1段階は連係する。すなわち、透明なリポタンパク質膜は、壊死組織の融解と排泄中に段階的に発生し、透明なリポタンパク質膜が完全に形成されると、壊死組織の融解と排泄が終わる。透明なリポタンパク質膜が形成されると、再生的修復が加速し、巨視的にはパッチ様の皮膚爪(skin nail)または皮膚島(skin island)が成長し、拡大する。処置と共に、創面を取り巻く胼胝組織が徐々に剥脱し、新たに成長した皮膚が出現して同心円状に成長し、最終的には潰瘍性創面が自己修復する。
【0055】
(表1)2群間の治療有効性の比較

注:率の比較には行列表のデータに関するx2検定を採用した。有効率および治癒率のx2値はそれぞれ22.71および20.07であり、いずれもx20.05=12.84より大きく、したがってP<0.05である。平均治癒期間の比較にもx2検定を採用した。t=5.32、P<0.01。
【0056】
実施例13
当技術分野において公知の方法により、実施例1から得られた薬学的組成物、または実施例6から得られた医療用包帯材を使って、ある種の薬箱を製造した。最後に、印刷された使用説明書を、個別に梱包された薬学的組成物(例えば軟膏)または前記医療用包帯材(例えば硬膏)と組み合わせることにより、梱包後に、市場向け薬箱になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肢または体表における糖尿病性潰瘍を処置するための医薬の調製、または医療用包帯材の調製における、薬学的組成物の使用であって、
該薬学的組成物が、該薬学的組成物の総重量に基づいて、
(A)3〜15重量%の食用ミツロウと、
(B)85〜97重量%の、オウゴン(Huangqin)、オウレン(Huanglian)、オウバク(Huangbai)、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物とからなり、
該ゴマ油抽出物中において、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果のそれぞれが、ゴマ油の総重量に基づいて2〜10重量%の量である、
使用。
【請求項2】
薬学的組成物が外用剤であることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
外用剤が油剤、乳剤、ペースト剤、硬膏またはゲル剤の形態をとる剤を含むことを特徴とする、請求項2記載の使用。
【請求項4】
薬学的組成物が薬学的に許容される担体をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項5】
医療用包帯材が医療用綿ガーゼおよび医療用包帯を含むことを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項6】
肢または体表における糖尿病性潰瘍を処置するための、ある種の医療用包帯材であって、
該包帯材が薬学的組成物を含み、該薬学的組成物が、該薬学的組成物の総重量に基づいて、
(A)3〜15%の食用ミツロウと、
(B)85〜97%の、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果の、ゴマ油抽出物とからなり、
該ゴマ油抽出物中において、オウゴン、オウレン、オウバク、ミミズおよびケシさく果のそれぞれが、ゴマ油の総重量に基づいて2〜10重量%の量である、
医療用包帯材。
【請求項7】
医療用綿ガーゼおよび医療用包帯を含むことを特徴とする、請求項6記載の医療用包帯材。
【請求項8】
薬学的組成物が油剤、乳剤、ペースト剤、硬膏またはゲル剤の形態をとる剤を含むことを特徴とする、請求項6または7記載の医療用包帯材。
【請求項9】
薬学的組成物が薬学的に許容される担体をさらに含むことを特徴とする、請求項6または7記載の医療用包帯材。
【請求項10】
請求項1記載の薬学的組成物または請求項6記載の医療用包帯材と、使用説明書とを含む、ある種の薬箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−502382(P2013−502382A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525024(P2012−525024)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国際出願番号】PCT/CN2010/070263
【国際公開番号】WO2011/020311
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(511170847)
【Fターム(参考)】