説明

紐状ゴムの加硫装置

【課題】装置全体のスペースが小さく、また、折り返し部を複数備えても、被加硫物の最初の端部を加硫通路内に設置することが容易な紐状ゴムの加硫装置を提供すること。
【解決手段】複数の折り返し部を備えた筒状の搬送通路と、該搬送通路の外周面を被覆する発熱体と、搬送通路のほぼ中心軸を通り、該通路内部及び外部を循環する態様で配置される搬送ベルトと、該ベルトの搬送手段と、前記搬送ベルトと被加硫物端部に着脱自在に装着し、搬送ベルトと被加硫物の駆動を同期させる取り付け駒と、を備えて構成し、前記搬送手段は、駆動源に接続される駆動プーリーと、搬送通路の折り返し部及び搬送通路外部の曲がり部に備える従動プーリーと、により構成し、該従動プーリーには、搬送ベルト装着用の溝と、被加硫物搬送用の溝を並列して備え、被加硫物の装置への取り付け段階で、前記取り付け駒を介して、被加硫物と搬送ベルトが並列に連結されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形により成形される長い紐状ゴムを連続的に加硫(架橋)処置する加硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長い紐状ゴムの押出成形品(被加硫物)を加熱筒内(炉)に連続通過させて加硫するためには、十分な加熱温度及び時間が必要であり、これに直線的な炉を持つ連続加硫装置を用いると、炉(装置)が長くなりスペースが必要となることや、そのために加熱ボリュームが大きくなるといった問題があったため、これを解消するための従来技術として、例えば、炉となる架橋筒に押出機に連なる上昇筒部と、該上昇筒部に連なる湾曲反転部と、該湾曲反転部に連なる下降筒部を形成した垂直方向に設置した倒U字型の連続架橋装置(特許文献1)や、前記同様に倒U字型の加硫通路が形成され、通路に沿って円周上に発熱体ユニットを複数配列し、その発熱体の内側に透過性の耐熱ガラスからなる円筒体を設けて構成し、各発熱体から放射される遠赤外線が、円筒体を透過し、被加硫物を均等に加熱するとした加硫装置(特許文献2)などが提案されている。これらによれば、加硫のための炉の長さが、長さ方向で半分になることにより装置のスペースをある程度小さくすることができる。
【0003】
しかし、このような折り返し部を備える装置では、炉を開放することなく、炉内の加硫通路に被加硫物の最初の部分を設置する作業が困難であり、前記従来の装置では、特許文献2の加硫装置において、炉内の通路に最初の被加硫物を引き上げる手段として、予め加硫済みの押出成形品や針金等がダミーとして、押出ヘッドの出口から第1加熱部、ローラ収納ボックスの各ローラ、第2加熱部、送り出しローラ、および引っ張り装置にわたって用意されており、当該最初の被加硫物を、そのダミーに接続することにより設置するといった方法が採られている。一方、引用文献1では言及がない。
【特許文献1】特公昭60−14448号公報
【特許文献2】特開2000−280263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献の装置では、前記の通り、折り返し部により長さ方向へのスペースを半分とし、また、垂直方向への送りとしていることから装置の設置スペースは、ある程度小さくすることができるが、装置を設置する建屋の都合などにより、高さ方向への長さは限定される場面も考えられることから、条件によっては、十分な長さが取れないことも懸念され、また、高さ方向に高くなることはメンテナンスなどでは必ずしも好ましいものではないといった問題がある。
また、加硫の最初の段階で被加硫物の先端部分を加硫通路内に設置する手段として、特許文献2の装置では、前記のようにダミーを用いているが、そもそも通路内にダミーを取り付ける手段が記載されておらず、根本的な解決手段とはなっていない。
更に、加硫通路がU字状(折り返し部が1つ)より多い、複数の折り返し部を備えた九十九折構造をとるものでは、折り返し毎にプーリーやローラへの被加硫物の接触面が反転することなどから、前記した、最初の段階で被加硫物の先端部分を加硫通路内に設置することの困難性は一層顕著となる。
尚、炉が開放するものであると、この被加硫物の先端部分の炉への設置は容易となるが、開閉手段を備える必要があり、また、設置する間、炉内温度を下げておく必要があるなどの不都合が多いことから好ましい構成とはいえない。
【0005】
そこで本発明は、装置全体のスペースが小さく、また、折り返し部を複数備えても、被加硫物の最初の端部を加硫通路内に設置することが容易となる紐状ゴムの加硫装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の紐状ゴムの加硫装置は、複数の折り返し部を備え、筒状に形成される被加硫物の加硫炉となる搬送通路と、該搬送通路の筒状の外周面を被覆する発熱体と、前記搬送通路内の入口から出口までのほぼ中心軸を通り、通路外部と環状に形成され、搬送通路内部及び外部を循環する態様で配置される搬送ベルトと、該搬送ベルトを駆動させる搬送手段と、前記搬送ベルト、及び、被加硫物端部に着脱自在に装着可能で、搬送ベルトと被加硫物の駆動を同期させるための取り付け駒と、を備えて構成し、前記搬送手段の具体的なものとしては、前記搬送通路の外部に設けられる、駆動源に接続される駆動プーリーと、少なくとも該搬送通路内部の折り返し部と、搬送通路外部の曲がり部に備える、前記駆動プーリーに連動する従動プーリーと、により構成し、該従動プーリーは、搬送ベルト装着(搬送)用の溝と、被加硫物搬送用の溝とを並列して備え、被加硫物の装置への取り付け段階で、前記取り付け駒を介して、被加硫物と搬送ベルトが並列に連結されるように構成した。
【0007】
前記手段の各部は、次のように構成することが好ましい。
・前記筒状の搬送通路は、複数の折り返し部と該折り返し部を繋ぐ複数の直線部よりなり、該直線部の各々は、一つあるいは複数の直線状の筒状部材より構成し、前記折り返し部は、U字状の筒状部材、あるいは、前記従動プーリーを内蔵可能な空間を備えたハウジングとして形成される。
・前記搬送通路の外周面を被覆する発熱体は、前記直線状の筒状部材、及び、U字状の筒状部材各々に適合して、各々が筒状に形成され、前記搬送通路に巻くことにより、該搬送通路全周囲から加熱可能なものとする。
・前記搬送通路及び該搬送通路の外周面を被覆する発熱体は、軸方向に2分割可能に形成されても良い。
・前記搬送通路は、筒状の発熱体の内面として形成されても良い。
【0008】
また、本発明の紐状ゴムの加硫装置は、加熱板に複数の折り返し部を備え、U字溝として形成される被加硫物の加硫炉となる搬送通路と、該搬送通路に被せ、前記搬送通路の一面を構成する蓋体と、前記加熱板に挿着、あるいは、埋設される発熱体と、前記搬送通路内の入口から出口までのほぼ中心軸を通り、通路外部と環状に形成され、搬送通路内部及び外部を循環する態様で配置される搬送ベルトと、該搬送ベルトを駆動させる搬送手段と、前記搬送ベルト、及び、被加硫物端部に着脱自在に装着可能で、搬送ベルトと被加硫物の駆動を同期させるための取り付け駒と、を備えて構成し、前記搬送手段の具体的なものとしては、前記搬送通路の外部に設けられる、駆動源に接続される駆動プーリーと、少なくとも該搬送通路内部の折り返し部と、搬送通路外部の曲がり部に備える、前記駆動プーリーに連動する従動プーリーと、により構成し、該従動プーリーは、搬送ベルト装着(搬送)用の溝と、被加硫物搬送用の溝とを並列して備え、被加硫物の装置への取り付け段階で、前記取り付け駒を介して被加硫物と搬送ベルトが並列に連結されるように構成した、構成であっても良い。
【0009】
更に、以上手段の各部は、次のように構成することが好ましい。
・前記筒状、あるいは、U字溝に形成される搬送通路の内面は、遠赤外線コーティングが施される。
・前記駆動用プーリー、及び、従動プーリーには搬送用の突起が設けられ、かつ、前記ベルトには前記突起に係合する孔が設けられる。
・前記搬送ベルトには、前記取り付け駒接続用の駒受け部が設けられ、前記取り付け駒には、該駒受け部に適合する搬送ベルトへの係止手段、及び、前記被加硫物端部を留め置く留止部を備え、該係止手段と留止部により被加硫物を装置に取り付けたさい、被加硫物が、前記被加硫物搬送用の溝に係合する位置取りとなるように形成される。そして、その具体的なものとしては、前記搬送ベルトに設ける駒受け部は、該搬送ベルトに適当な間隔で連続して設ける孔であり、前記取り付け駒に設ける搬送ベルトへの係止手段は、前記孔に係合する例えばネジのような突起状部を備えるもので、被加硫物の留止部は、該被加硫物先端を挿通する筒部として構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紐状ゴムの加硫装置によれば、複数の折り返し部を備えることにより、搬送通路を長くしても、装置の長さ方向へのボリームを大きくすることが無く、コンパクトでスペースのとらない装置とすることができる。また、搬送通路を複数の直線状の筒状部材とU字状筒状部材で、また、発熱体を該部材に適合したものより構成し、これを繋ぎ合わせることにより容易に自在な長さ、及び、自在な巾方向、長さ方向へのスペースを持つ搬送通路を形成することができる。
【0011】
また、搬送ベルト搬送用の溝と被加硫物搬送用の溝を並列に備える従動プーリーを備え、該従動プーリーにより搬送される搬送ベルトの任意の位置に、被加硫物の先端部を該搬送ベルトに同期して搬送可能に接続する取り付け駒を備えることにより、折り返し部を複数備え、また、閉鎖された装置(炉)であっても、被加硫物の最初の端部を、取り付け駒を介して搬送ベルトに連結し、搬送通路の入口から出口まで同期させて可動することにより、被加硫物の先端部分を加硫通路内に容易に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の紐状ゴムの加硫装置の実施の形態につき、図面を参考にしながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態の全体構成図を示している。尚、図面は本発明の技術に特に関係ある構成のみを記載しており、加熱装置や駆動装置に一般的に用いられる、例えば温度センサー、タイマー、各種制御装置、電気配線等の構成に付いては省略している。
本例の紐状ゴムの加硫装置は、直線部となる直線状円筒管11と折り返し部となるU字状円筒管12を複数連結し、九十九折形状とした、被加硫物の加熱搬送通路となる筒状の加硫通路(加硫炉)1と、該加硫通路1外周面のほぼ全周囲を被覆して、加硫通路内部を加熱する筒状のバンドヒーター2と、前記加硫通路1の入口14から出口15までのほぼ中心軸を通り、該加硫通路1外部と環状を形成して、加硫通路1の内部及び外部を循環する態様で配置される、被加硫物7を搬送するための搬送ベルト3と、前記加硫通路1の外部に設けられる駆動源となる駆動モーター5に接続する駆動プーリー41、及び、前記加硫通路1内部の折り返し部と加硫通路1外部の前記搬送ベルト3の進行方向変換部に備える前記駆動プーリー41に連動する複数の従動プーリー42とにより構成し、該搬送ベルト3とこれに連動する被加硫物7を駆動させるための搬送手段と、前記搬送ベルト3、及び、被加硫物7の端部に着脱自在に装着可能で、被加硫物を搬送ベルト3の駆動に同期して搬送させるための取り付け駒6(図4〜図8参照)と、を備えて基本構成し、押出機から押出し成形された紐状ゴム(被加硫物)7を、駆動プーリー41及び従動プーリー42により循環駆動される搬送ベルト3に連動させて、加硫炉入口14から出口15までの加硫通路1内部を加熱搬送することにより加硫して、加硫後は、該紐状ゴム(被加硫物)7を巻き取り装置で巻き取って回収する装置として構成した。
【0013】
次に、本例各部の構成に付き詳細に説明する。
図2は、本例の加硫通路となる直線状円筒管と発熱体となるバンドヒーターの構成を示す上面図を示し、図3は、本例の従動プーリーを含む、折り返し部の一部断面図を示している。尚、図3において、理解を容易とするため、従動プーリーについては断面図として記載していない。
加硫通路1は、複数の折り返し部(本例においては2箇所)と直線部よりなる九十九折形状の通路として形成され、各々熱伝導性に優れた金属などの材料により、折り返し部はU字状円筒管12、直線部は直線状円筒管11として形成し、内面には加熱効果を高めるための遠赤外線コーティング13を施して形成した。また、直線状円筒管11は、複数の円筒管(11a、11b、11c、11d)を連結して一つの直線通路を形成するよう構成した。これにより、短い直線状円筒管(11a、11b、11c、11d)を所望数連結することにより、一つの長さの円筒管のブロックから所望の長さの炉を形成することができる。一方、U字状円筒管12には、被加硫物7の折り返しのため、内部に後記する従動プーリー42を収容する必要から、U字の内側面に従動プーリー42の厚さよりもわずかに大きな隙間となる切り欠け部16を設けて、従動プーリー42の設置部とした。(図3参照)
以上の加硫通路1によると、加硫通路1を長くしても、装置の長さ方向へのボリームが大きくならないため、コンパクトでスペースのとらない装置とすることができる。また、前記直線状円筒管11とU字状円筒管12の組合せにより、容易に自在な長さ、及び、自在な巾方向、長さ方向へのスペースを持つ加硫通路1を形成することができる。
尚、折り返し部の加硫通路1は、U字状円筒管12ではなく、従動プーリー42を内蔵可能な空間を備えたハウジングにより形成しても良い。
また、本例においては折り返し部を2箇所としているが、3箇所又は奇数箇所とすると、押出機、及び、巻き取り装置を本加硫装置の一方側にまとめることが容易となり、よりスペースを取らない装置とすることができる。(図10参照)
【0014】
バンドヒーター2は、前記加硫通路1の円筒管11、12の外周囲に密着させて巻く態様で、該加硫通路1全長に亘り、ほぼ全周囲を被覆する電気発熱体で、本例のバンドヒーター2は、内部に、鉄クロム合金等からなる発熱線を配線し、その周囲に酸化マグネシウム等の絶縁材を充填して封止した、ほぼ円筒状に、前記円筒管11、12の径及び長さ(形状)に適合して形成される発熱部となる発熱筒板21と、該発熱筒板21を前記円筒管11、12の外周に被覆するさいの締付け用バンドとなる可撓性金属板よりなる外板22と、該外板22の径を拡縮するための締付けロット23、及び、電気配線のためのターミナル24より構成され、該発熱筒板21は、いくらかの可撓性を備え、円周方向両端面は接続されていない隙間26を設け、前記円筒管11、12の外周囲に被覆するさい、前記締付けロット23を締めることにより、外板22の径を収縮させ、以て、該発熱筒板21の隙間26を縮めることで前記円筒管11、12に該発熱筒板21をしっかり密着させることのできる構成としている。また、U字状円筒管12を被覆するバンドヒーターは、該U字状円筒管12に適合する形状に形成されており、該U字状円筒管12と同様に、被加硫物7の折り返しのため、内部に後記する従動プーリー42を収容する必要から、U字の内側面に従動プーリー42の厚さよりもわずかに大きな隙間となる切り欠け部16を設けて構成している。(図3参照)
本ハンドヒーター2によれば、発熱体となる発熱筒板21が円筒管11、12にしっかり密着されることで、加硫通路1を全周囲から効率よく加熱することができる。また、前記円筒管11、12に適合する長さ、形状に形成されることから、該円筒管11、12に適合して、自在な長さ、及び、自在な巾方向、長さ方向へのスペースを持つ加硫通路1の形成に適用することができる。
尚、バンドヒーター2の発熱筒板21は、軸方向に2分割して形成し、前記円筒管11、12の外周囲に被覆するさい、前記締付けロット23などの締め付け手段により、前記発熱筒板21と同様に軸方向に2分割した外板22により挟持し、分割された双方の発熱筒板21を縮め付けるとで、前記円筒管11、12に該発熱筒板21をしっかり密着させることのできる構成としても良い。本構成によると、バンドヒーター2のメンテナンスを容易にすることができる。
また、発熱体は、前記加硫通路と一体的に構成したものであっても良く、更に、円筒状に形成された発熱体の内面が加硫通路となる構成としても良い。本構成によると、装置構成をより簡易なものとすることができる。
【0015】
搬送ベルト3は、被加硫物7を該加硫通路1の入口14から出口15まで同期させて搬送するために設けられ、前記の通り、加硫通路1の入口14から出口15までのほぼ中心軸を通り、該加硫通路1外部と環状に形成して、加硫通路1の内部及び外部を循環する態様で配置される。また、該ベルト3には、後記する可動プーリー41や従動プーリー42の回転駆動に従って、該ベルト3を可動するためのプーリー41、42に備えるスプロケット43に適合する径及び間隔のスプロケット係合孔31、及び、後記する取り付け駒6を装着するため、該ベルト全長に亘り連続して適当な間隔で駒係合孔32を設けて構成する。(図5参照)
【0016】
そして、前記搬送ベルト3を駆動する駆動手段として、前記加硫通路1の外部に設けられる駆動源となる駆動用モーター5と、該モーター5に接続するひとつの駆動プーリー41と、搬送ベルト3の循環経路のベルト進行方向変換部に備える、前記駆動プーリー41の駆動に連動する複数の従動プーリー42により構成し、駆動プーリー41には、前記搬送ベルト3を架けるベルト搬送用の溝44と、該溝内に突起して設ける前記搬送ベルト3のスプロケット係合孔31に係合してベルトを可動するスプロケット43を備え、一方、従動プーリー42には、前記同様のベルト搬送用の溝44と、被加硫物を架ける被加硫物搬送用の溝45を並列して備え、また、前記ベルト搬送用溝44内には、前記同様に突起して設けるスプロケット43を備えて構成する。また、加硫通路1内の折り返し部に備えられる従動プーリー42は、該通路の中心軸に被加硫物7が位置するように配置され、また、前記した通り、U字状円筒管12、及び、該部位のバンドヒーター2に備えられた切り欠け部16よりプーリー軸を含む一部を加硫通路外部に位置させて設置される。
この従動プーリー42によると、ベルト搬送用溝44と、被加硫物搬送用溝45を並列して備えることにより、被加硫物の最初の加硫通路1内への取り付け段階で、後記する取り付け駒6を介して被加硫物6と搬送ベルト3を並列して連結することができ、加硫通路1内への被加硫物7の設置を容易なものとすることができる。
駆動用モーター5は、公知のサーボモーター、あるいは、速度制御可能なモーターを用いれば良い。
【0017】
図4は、本例の取り付け駒を示す構成図で、Aが側面図、Bが底面図を示し、図5は、該取り付け駒を搬送ベルト及び被加硫物に装着した状態を示している。
取り付け駒6は、被加硫物7の加硫通路1内への最初の送り込み段階で、該被加硫物を搬送ベルト3の可動に追従して加硫通路内に搬送させるため、前記搬送ベルト3の駒係合孔32、及び、被加硫物7の端部に着脱自在に装着され、搬送ベルト3と被加硫物7を連結させるもので、前記搬送ベルト3に連続的に備えた駒係合孔32に係合するキャップネジ611、及び、該キャップネジ611を前記駒係合孔32に固定するナット612よりなるベルト係止部61と、被加硫物7を貫通可能で、かつ、一時的に保持可能な内径を有する筒状の被加硫物留止リング62と、該ベルト係止部61と被加硫物留止リング62を一体なものとする連結部63より形成される。
本取り付け駒6を本装置に取り付けるさいは、被加硫部7の端部を被加硫物留止リング62に差し込み、加硫通路1の入口14の手前の任意の位置で、搬送ベルト3の駒係合孔32の適当な位置に、ベルト係止部61のキャップネジ611を差し込みナット612で締め付けることにより取り付けることができる。そして、この取り付けられた状態において、搬送ベルト3が従動プーリー42のベルト搬送用溝44に適合することは当然として、被加硫物7が従動プーリー6の被加硫物搬送用溝45に適合するように位置される。
一方、被加硫物7の先端が加硫通路1内を搬送され、出口15まで到達したら、手作業により取り付け駒6を取り外し、被加硫物7先端部を引き出して、巻き取り装置のドラムに巻きつけ、その後は、プーリー41、42のスプロケット43の送りと同期させて巻き取る。尚、本発明に直接関係しないが、巻き取りドラムの駆動は、スプロケット43の送り速度より速く設定し、例えば滑りクラッチなどを介在しておくことにより、ある程度被加硫物7に張力を与えながら巻き取る構造とすることが好ましい。
【0018】
図6は、前記例とは別の取り付け駒の構成、及び、搬送ベルトへの取り付け手段を示している。
本例の取り付け駒6は、後記するキャップネジ611を貫通させる通孔610を備え、板状として形成される、搬送ベルト3への取り付け部位となるベルト係止部61と、前例の取り付け駒同様に、被加硫物7を貫通可能で、かつ、一時的に保持可能な内径を有する筒状の被加硫物留止リング62と、該ベルト係止部61と被加硫物留止リング62を一体なものとする連結部63、及び、前記ベルト係止部61をベルト3に取り付けるための、該ベルト係止部61とは別に設けるキャップ付きネジ611及びナット612より形成される。
本取り付け駒を本装置に取り付けるさいは、被加硫部7の端部を被加硫物留止リング62に差し込み、加硫通路1入口14の手前の任意の位置で、搬送ベルト3の駒係合孔32の適当な位置に、ベルト係止部61の通孔610を適合させ、該双方の孔32、610にキャップネジ611を差し込みナット612で締め付けることにより取り付けることができる。
尚、取り付け駒の構成は、様々考えられることから、本例に限定するものではなく、搬送ベルト3と被加硫物7が連結さてれ加硫通路1内を搬送されるものであればどの様な構成を採っても良い。
また、前記取り付け駒のいずれの実施例も一時的に保持可能な内径により被加硫物留止リング62に被加硫物7を取り付けているが、被加硫物7の被加硫物留止リング62からの抜けを防止する観点から、該被加硫物留止リング62側面からのネジ留めなどによる適当な抜け防止手段を備えると一層好ましい。
【0019】
図7は、本例における加硫通路内での取り付け駒の搬送状態を示し、図8は、図7の搬送段階A及びBの位置にあるときの従動プーリーと取り付け駒との関係を示している。
加硫通路1に複数の折り返し部を備え、プーリーにより反転させる場合、搬送ベルト3や被加硫物7は、プーリーを通過するごとに該プーリーに接触する面の表裏が反転することになる。即ち、図7のAの段階では取り付け駒6のナット612側がプーリーの内側となり、Bの段階では取り付け駒6のキャップネジ611のキャップ側がプーリーの内側に位置して通過することになる。
これに対して、本例では、取り付け駒6が前記A、Bいずれの状態でも従動プーリー42に接触せず不都合なく通過可能なように、従動プーリー42のベルト搬送用溝44の取り付け駒6が通過する部位にあたる部分に段差を形成し、取り付け駒6が接触しないように逃げスペース46を設けて構成し、ベルト係止部61が従動プーリー42に接触しないように構成している。また、被加硫物搬送用溝45についても、前記A、Bいずれの状態でも取り付け駒6の被加硫物係止リング62、及び、連結部63が該プーリー42に接触しない位置に設けている。
以上のような取り付け駒6を用いることにより、九十九折構造の加硫通路1を備える加硫炉であっても、該加硫通路1内に被加硫物7の最初の先端部分を不都合なく容易に設置することができる。
【0020】
本例の紐状ゴムの加硫装置の作動につき再度まとめて説明する。
1.押出機より押出し成形された被加硫物7の先端を、加硫炉入口14の手前で取り付け駒6の被加硫物留止リング62に挿着し、一方、この被加硫物7を挿着した取り付け駒6を、ベルト係止部61により搬送ベルト3に装着して本装置への被加硫物の取り付けを行なう。
2.駆動源となる駆動モーター5を駆動させ、駆動プーリー41、及び、連動する従動プーリー42を可動して、該従動プーリー42のスプロケット43の送りにより搬送ベルト3を循環可動することにより、被加硫物7は該搬送ベルト3と並列に同期して可動して、加硫炉入口14から折り返し部で反転しながら九十九折の加硫通路1内を加熱加硫されながら搬送される。
3.加硫通路1を搬送され、加硫炉出口15まで到達したら、手作業により、被加硫物7及び搬送ベルト3から取り付け駒6を取り外し、被加硫物7先端部を引き出して、巻き取り装置のドラムに巻きつけ、その後は、プーリー41、42のスプロケット43の送りと同期させて巻き取る。といった作動となる。
【0021】
図9は、本例の変形例で加硫通路1、及び、該加硫通路1の外周面を被覆するバンドヒーター2を軸方向に2分割可能としたものを示し、Aが接合された状態、Bが分割された状態を示している。
本変形例は、分割したさい、一方側が装置に固定されており、他方側を取り外し可能として形成しており、取り付け、取り外しの手段としては、固定側、及び、取り外し側の各々が相対して適合する位置に接合突起27を設け、該接合突起27の各々を重ねて係合し(取り外し側の接合突起27を、固定側の接合突起27に載せる)、該接合突起27各々に備えた通孔271に取り付けピン28を貫通して接続することで取り付けられ、一方、外すさいは、ピン28を抜いて分割される。尚、図示されないU字状円筒管12についても、準じて同様な構造として分割可能に形成される。
本構成によると、例えば、加硫途中での被加硫物7の破断した場合、あるいは、加硫通路1内部の汚れの除去のさいなどに、軸方向に2分割されることで作業が容易になるなどメンテナンスのしやすい装置とすることができる。
【0022】
図10は、本発明の第二の実施の形態の全体構成を示す構成図を示している。尚、図面において、理解を容易とするため装置の蓋部を省略して記載している。
本例の紐状ゴムの加硫装置は、発熱体として複数のカートリッジヒーター81を内蔵した熱板8と、該熱板8に複数(本例においては3箇所)の折り返し部を備えたU字溝として形成される、被加硫物7の加熱搬送通路となる筒状の加硫通路(U字溝)9と、前記熱板8の上面に被せ、前記加硫通路の一面を構成する蓋体(図示せず)と、前記U字溝9の入口92から出口93までのほぼ中心軸を通り、該U字溝9外部と環状に形成して、U字溝9の内部及び外部を循環する態様で配置される、被加硫物7を搬送するための搬送ベルト3と、前記U字溝9の外部に設けられる駆動源となる駆動モーター5に接続する駆動プーリー41、及び、前記U字溝9内部の折り返し溝91と、U字溝9外部の前記搬送ベルト3の進行方向変換部に備える前記駆動プーリー41に連動する複数の従動プーリー42とにより構成し、該搬送ベルト3とこれに連動する被加硫物7を駆動させるための搬送手段と、前記搬送ベルト3、及び、被加硫物7の端部に着脱自在に装着可能で、被加硫物を搬送ベルト3の駆動に同期して搬送させるための取り付け駒6(図4〜図7参照)とを備えて基本構成し、押出機から押出し成形された紐状ゴム(被加硫物)7を、駆動プーリー41及び従動プーリー42により循環駆動される搬送ベルト3に連動させて、加硫炉入口92から出口93までのU字溝9内部を加熱搬送することにより加硫して、加硫後は、該紐状ゴム(被加硫物)7を巻き取り装置で巻き取って回収する装置として構成した。
【0023】
上記の通り、本例の装置は、前記した第一の実施の形態の加硫通路1(直線状円筒管11、U字状円筒管12)、及び、バンドヒーター2からなる加硫炉部分を、熱板8に九十九折状のU字溝9を設けた加硫通路、及び、該熱板に埋設したカートリッジヒーター81からなる加硫炉により形成するもので、他の構成部となる被加硫物搬送のための構成等は前記第一の実施の形態と同様の構成となる。
熱板8は、熱伝導性に優れた厚板状の金属材料等からなり、表面側に形成するU字溝9の下部に複数のカートリッジヒーター81を挿着して構成される。該カートリッジヒーター81は、公知のヒーターであって、ニッケル−クロム合金などからなる発熱線を絶縁材の芯材に巻きつけた発熱部を筒状の外筒内部に挿入し、周囲を酸化マグネシウムなどよりなる絶縁剤で充填、封止して形成される棒状のヒーターで、熱板8の下方側に適当となる配置により穿ったヒーター挿着用の穴に挿入、固定して挿着される。
尚、熱板を加熱するためのヒーターは、本例のカートリッジヒーターに限定するのもではなく、また、加熱炉等に当然用いられる温度制御のためのセンサーや装置は記載していないが、公知のものが公知の手段で用いられる。
また、加硫通路となるU字溝9を熱板8内に閉塞するため、熱板8と同じ金属等の材料よりなる蓋(図示しない)を熱板に被せ、U字溝9の上面となるように接続固定して、該熱板8と一体として形成した。尚、蓋を取り付け、取り外し可能として形成すると、前述したようにメンテナンスのさいに有利となる。
【0024】
U字溝9は、前記熱板8の表面側に複数の折り返し部91を備え、入口92から出口93まで一連のU字状の溝として形成される被加硫物の加硫通路で、折り返し部91は、従動プーリー42を溝内部に収納する必要から、該プーリー42全体を収容可能なスペースを備える溝として形成される。また、該U字溝の内面部、及び、蓋のU字溝の上面に当たる部位は遠赤外線コーティングが施されて形成される。
また、本例においては、第一の実施の形態で2箇所であった折り返し部91を3箇所とし、押出機及び巻き取り装置を加硫装置の一方側にまとめる構成とすることで、装置全体のスペースをよりコンパクトなものとしている。尚、折り返し部は、加硫装置の全体のスペース及び加硫通路1の必要な全長、及び、長さ方向、巾方向へのスペースなどから必要に応じて適当に選択されれば良い。
以上が、本例の第一の実施の形態と異なる構成となる部位であり、その他の構成部となる搬送ベルト3、駆動プーリー41、従動プーリー42、取り付き駒6等は第一の実施の形態と同様のものを同様に用いれば良く、また、作動に付いても同様となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す全体構成図。
【図2】前記実施例の円筒管及び発熱体の一部を示す上面図。
【図3】前記実施例の折り返し部の一部断面図。
【図4】前記実施例の取り付け駒を示す構成図。
【図5】前記取り付け駒のベルト装着状態を示す説明図。
【図6】別の取り付け駒のベルトへの装着手段を示す構成図。
【図7】前記実施例の取り付け駒の搬送状態を示す模式図。
【図8】前記搬送状態でのプーリーと取り付け駒の関係を示す説明図。
【図9】前記実施の形態の変形例を示す加硫通路及び発熱体部分の構成図。
【図10】本発明の第二の実施の形態を示す一部を省略した全体構成図。
【符号の説明】
【0026】
1. 加硫通路(炉)
11. 直線状円筒管
12. U字状円筒管
13. 遠赤外線コーティング
2. バンドヒーター
21. 発熱筒板
22. 外板
27. 接合突起
28・ 取り付けピン
3. 搬送ベルト
31. スプロケット係合孔
32. 駒係合孔
41. 駆動プーリー
42. 従動プーリー
43. スプロケット
44. ベルト搬送用溝
45. 被加硫物搬送用溝
5. 駆動用モーター
6. 取り付け駒
61. ベルト係止部
62. 被加硫物留止リング
7. 紐状被加硫物
8. 熱板
81. カートリッジヒーター
9. U字溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の折り返し部を備え、筒状に形成される被加硫物の加硫炉となる搬送通路と、該搬送通路の筒状の外周面を被覆する発熱体と、前記搬送通路内の入口から出口までのほぼ中心軸を通り、通路外部と環状に形成され、搬送通路内部及び外部を循環する態様で配置される搬送ベルトと、該搬送ベルトを駆動させる搬送手段と、前記搬送ベルト、及び、被加硫物の端部に着脱自在に装着可能で、搬送ベルトと被加硫物の駆動を同期するための取り付け駒と、を備えて構成することを特徴とする紐状ゴムの加硫装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記搬送通路の外部に設けられる、駆動源に接続される駆動プーリーと、少なくとも該搬送通路内部の折り返し部と、搬送通路外部の曲がり部に備える、前記駆動プーリーに連動する従動プーリーと、により構成し、該従動プーリーは、搬送ベルト装着(搬送)用の溝と、被加硫物搬送用の溝とを並列して備え、被加硫物の装置への取り付け段階で、前記取り付け駒を介して被加硫物と搬送ベルトを並列に連結する請求項1の紐状ゴムの加硫装置。
【請求項3】
前記筒状の搬送通路は、複数の折り返し部と該折り返し部を繋ぐ複数の直線部よりなり、該直線部の各々は、一つあるいは複数の直線状の筒状部材より構成し、前記折り返し部は、U字状の筒状部材、あるいは、前記従動プーリーを内蔵可能な空間を備えたハウジングとして形成される請求項1乃至2の紐状ゴムの加硫装置。
【請求項4】
前記搬送通路の外周面を被覆する発熱体は、前記直線状の筒状部材、及び、U字状の筒状部材各々に適合して、各々が筒状に形成され、前記搬送通路に巻くことにより、該搬送通路全周囲からの加熱を可能とした請求項1乃至3のいずれかの紐状ゴムの加硫装置。
【請求項5】
前記搬送通路、及び/または、該搬送通路の外周面を被覆する発熱体は、軸方向に2分割可能に形成される請求項1乃至3のいずれかの紐状ゴムの加硫装置。
【請求項6】
前記搬送通路は、筒状の発熱体の内面として形成される請求項1乃至5のいずれかの紐状ゴムの加硫装置。
【請求項7】
加熱板に複数の折り返し部を備え、U字溝として形成される被加硫物の加硫炉となる搬送通路と、該搬送通路に被せ、前記搬送通路の一面を構成する蓋体と、前記加熱板に挿着、あるいは、埋設される発熱体と、前記搬送通路内の入口から出口までのほぼ中心軸を通り、通路外部と環状に形成され、搬送通路内部及び外部を循環する態様で配置される搬送ベルトと、該搬送ベルトを駆動させる搬送手段と、前記搬送ベルト、及び、被加硫物端部に着脱自在に装着可能で、搬送ベルトと被加硫物の駆動を同期させる取り付け駒と、を備えて構成することを特徴とする紐状ゴムの加硫装置。
【請求項8】
前記搬送手段は、前記搬送通路の外部に設けられる、駆動源に接続される駆動プーリーと、少なくとも該搬送通路内部の折り返し部と、搬送通路外部の曲がり部に備える、前記駆動プーリーに連動する従動プーリーと、により構成し、該従動プーリーは、搬送ベルト装着(搬送)用の溝と、被加硫物搬送用の溝とを並列して備え、被加硫物の装置への取り付け段階で、前記取り付け駒を介して被加硫物と搬送ベルトを並列に連結する請求項7の紐状ゴムの加硫装置。
【請求項9】
前記筒状、あるいは、U字溝に形成される搬送通路の内面は、遠赤外線コーティングが施される請求項1乃至8のいずれかの紐状ゴムの加硫装置。
【請求項10】
前記駆動用プーリー、及び、従動プーリーには搬送用の突起(スプロケット)が設けられ、かつ、前記ベルトには前記突起に係合する孔が設けられる請求項1乃至9のいずれかの紐状ゴムの加硫装置。
【請求項11】
前記搬送ベルトには、前記取り付け駒接続用の駒受け部が設けられ、前記取り付け駒には、該駒受け部に適合する搬送ベルトへの係止手段、及び、前記被加硫物端部を留め置く留止部を備え、該係止手段と留止部により被加硫物を装置に取り付けたさい、被加硫物が、前記被加硫物搬送用の溝に係合する位置取りとなるように形成される請求項1乃至10のいずれかの紐状ゴムの加硫装置。
【請求項12】
前記搬送ベルトに設ける駒受け部は、該搬送ベルトに適当な間隔で連続して設ける孔であり、前記取り付け駒に設ける搬送ベルトへの係止手段は、前記孔に係合する突起状部を備えるもので、被加硫物の留止部は、該被加硫物先端を挿通する筒部として構成する請求項11の紐状ゴムの加硫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−120275(P2010−120275A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296192(P2008−296192)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(399133707)株式会社八光電機製作所 (15)
【Fターム(参考)】