素子搭載用基板、半導体モジュールおよび携帯機器
【課題】半導体素子との接続信頼性の向上が可能な突起電極を有する素子搭載用基板を提供する。
【解決手段】素子搭載用基板20は、絶縁樹脂層32と、絶縁樹脂層32の一方の主表面S1に設けられた配線層34、その配線層34と電気的に接続され、配線層34から絶縁樹脂層32側に突出している突起電極36とを備える。この突起電極36に半導体素子50が電気的に接続されて半導体モジュール10が形成される。突起電極36の頂部面には凹部が設けられている。この凹部は突起電極36の側面に設けられた開放口と連通している。
【解決手段】素子搭載用基板20は、絶縁樹脂層32と、絶縁樹脂層32の一方の主表面S1に設けられた配線層34、その配線層34と電気的に接続され、配線層34から絶縁樹脂層32側に突出している突起電極36とを備える。この突起電極36に半導体素子50が電気的に接続されて半導体モジュール10が形成される。突起電極36の頂部面には凹部が設けられている。この凹部は突起電極36の側面に設けられた開放口と連通している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子搭載用基板、半導体モジュールおよび携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の表面実装方法として、半導体素子の電極にはんだバンプを形成し、はんだバンプとプリント配線基板の電極パッドとを接続するフリップチップ実装方法が知られている。また、フリップチップ実装方法を採用した構造としては、たとえばCSP(Chip Size Package)構造が知られている。
【0003】
一方、近年の電子機器の小型化、高機能化に伴い、半導体素子のさらなる小型化が求められている。半導体素子の小型化に伴い、プリント配線基板に実装するための電極間の狭ピッチ化が不可欠となっている。ところがフリップチップ実装方法では、はんだバンプ自体の大きさや、はんだ付け時のブリッジ発生などが制約となり、電極の狭ピッチ化に限界があった。このような限界を克服するための構造として、銅などの金属からなる配線層に形成した突起構造を電極またはビアとし(以下、突起電極とよぶ)、基材にエポキシ樹脂などの絶縁樹脂層を介して半導体素子を実装し、突起電極に半導体素子の電極を接続する構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−349361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の突起電極を用いて半導体素子の電極との接続を行うと、突起電極の頂部面と半導体素子の電極との間に絶縁樹脂が残渣として介在することにより、接続不良が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体素子との接続信頼性の向上が可能な突起電極を有する素子搭載用基板の提供にある。また、本発明の他の目的は、突起電極と半導体素子の電極との間の接続信頼性が向上した半導体モジュールおよび携帯機器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、素子搭載用基板である。当該素子搭載用基板は、基材と、基材に設けられた配線層と、配線層に設けられた突起電極と、を備え、突起電極の頂部面に凹部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この態様の素子搭載用基板によれば、素子搭載用基板に搭載される半導体素子の素子電極と突起電極とが接合した状態のとき、凹部が絶縁樹脂層で充填され、突起電極と素子電極の接合面には絶縁樹脂層が残渣として生じにくくなることにより、突起電極と素子電極との接続信頼性の向上が図られる。
【0009】
上記態様の素子搭載用基板において、凹部が突起電極の側面に設けられた開口と連通していてもよい。また、開口は、突起電極が接続された配線層が延在する方向と反対側の突起電極の側面に設けられていてもよく、凹部が突起電極の頂部面の中央部分に設けられていてもよい。
【0010】
本発明の他の態様は半導体モジュールである。当該半導体モジュールは、上述した態様の素子搭載用基板と突起電極に対向する素子電極が設けられた半導体素子と、を備え、突起電極と素子電極とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0011】
この態様によれば、半導体モジュールにおいて、突起電極と素子電極との接続信頼性の向上が図られる。
【0012】
本発明のさらに他の態様は携帯機器である。当該携帯機器は、上述した態様の半導体モジュールを搭載したことを特徴とする。
【0013】
この態様によれば、携帯機器において、突起電極と素子電極との接続信頼性の向上が図られ、ひいては携帯機器の動作信頼性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体素子との接続信頼性の向上が可能な突起電極を有する素子搭載用基板が提供される。また、突起電極と半導体素子の電極との間の接続信頼性が向上した半導体モジュールおよび携帯機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る半導体モジュールの構造を示す断面図である。
【図2】突起電極の頂部面側の平面図である。
【図3】突起電極の側面図である。
【図4】図4(A)〜(E)は、実施の形態に係る素子搭載用基板および半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図5】図5(A)〜(F)は、実施の形態に係る素子搭載用基板および半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図6】突起電極形成用のレジストの概略平面図である。
【図7】図7(A)〜(D)は、それぞれ、頂部面に凹部が設けられた突起電極の変形例1〜4を示す図である。
【図8】図8(A)は、シミュレーションモデルに用いた、半導体モジュールのモデル構造を示す断面図である。図8(B)は、半導体モジュールのモデル構造における配線層、突起電極および半導体素子の配置を示す平面図である。
【図9】図9(A)は、比較例で用いた突起電極の形状および寸法を示す図である。図9(B)は、実施例1および実施例2で用いた突起電極の形状および寸法を示す図である。
【図10】図10(A)、(B)は、それぞれ、比較例の突起電極における相当応力分布を示す図、比較例の突起電極におけるZ方向応力分布を示す図である。
【図11】図11(A)、(B)は、それぞれ、実施例1の突起電極における相当応力分布を示す図、実施例1の突起電極におけるZ方向応力分布を示す図である。
【図12】図12(A)、(B)は、それぞれ、実施例2の突起電極における相当応力分布を示す図、実施例2の突起電極におけるZ方向応力分布を示す図である。
【図13】実施の形態に係る半導体モジュールを備えた携帯電話の構成を示す図である。
【図14】図13に示した携帯電話の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
図1は、実施の形態に係る半導体モジュールの構造を示す断面図である。素子搭載用基板20は、絶縁樹脂層32と、絶縁樹脂層32の一方の主表面S1に設けられた配線層34、その配線層34と電気的に接続され、配線層34から絶縁樹脂層32側に突出している突起電極36とを備える。この突起電極36に半導体素子50が電気的に接続されて半導体モジュール10が形成されている。
【0018】
絶縁樹脂層32は、絶縁性の樹脂からなり、たとえばエポキシ系熱硬化型樹脂が挙げられる。
【0019】
配線層34は、絶縁樹脂層32の一方の主表面S1に設けられており、導電材料、好ましくは圧延金属、さらには圧延銅により形成される。あるいは電解銅などで形成してもよい。配線層34には、絶縁樹脂層32側に突起電極36が突設されている。本実施の形態においては、配線層34と突起電極36とは一体的に形成されているが、特にこれに限定されない。配線層34の絶縁樹脂層32と反対側の主表面には、配線層34の酸化などを防ぐための保護層38が設けられている。保護層38としては、ソルダーレジスト層などが挙げられる。保護層38の所定の領域には開口部38aが形成されており、開口部38aによって配線層34の一部が露出している。開口部38a内には外部接続電極としてのはんだ部40が形成され、はんだ部40と配線層34とが電気的に接続されている。はんだ部40を形成する位置、すなわち開口部38aの形成領域は、たとえば再配線で引き回した領域の端部である。
【0020】
突起電極36はその全体的な形状が、先端に近づくにつれて径が細くなっていてもよい。言い換えると、突起電極36の側面はテーパ状となっていてもよい。また、突起電極36の頂部面にNi/Auめっき層などの金属層が設けられていてもよい。突起電極36の頂部面の形状については後述する。
【0021】
半導体素子50は、Si基板などの半導体基板に形成された集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)などの能動素子である。
【0022】
絶縁樹脂層32の側の半導体素子50の主表面に、突起電極36のそれぞれに対向する位置に素子電極52が設けられている。また、絶縁樹脂層32の側の半導体素子50の主表面には、素子電極52が露出するように開口が設けられた保護層54が設けられている。保護層54としては、たとえばポリイミドを用いることができる。
【0023】
以上の構成の半導体モジュール10は、はんだボールなどのはんだ部40がプリント基板などの実装基板に設けられた電極パッドに接合されることにより、実装基板に実装可能である。
【0024】
ここで、突起電極36の頂部面の形状について説明する。図2は、突起電極36の頂部面側の平面図である。図3は、突起電極36の側面図である。本実施の形態では、上述した素子電極52と接する面となる突起電極36の頂部面は角が丸みを帯びた矩形状である。突起電極36の頂部面には凹部60が設けられている。本実施の形態では、凹部60は十字状に形成された溝であり、頂部面の各辺に接続する側面に設けられた開口に十字状に伸びた溝がそれぞれ連通している。言い換えると、凹部60は突起電極36の側面に設けられた開放口と連通している。
【0025】
突起電極36と素子電極52とが接合した状態のとき、凹部60は上述した絶縁樹脂層32で充填され、突起電極36と素子電極52との接合面には絶縁樹脂層32が残渣として生じにくくなることにより、突起電極36と素子電極52との接続信頼性の向上が図られている。言い換えると、突起電極36と素子電極52とを接合させる際に、突起電極36と素子電極52との間に介在する絶縁樹脂層32が凹部60に入り込むことができるため、突起電極36と素子電極52との接合面に絶縁樹脂層32が残りにくくなる。
【0026】
さらに、凹部60が突起電極36の側面に設けられた開口と連通しているため、突起電極36と素子電極52とを接合させる際に絶縁樹脂層32が凹部60に入りきらない場合には、突起電極36の側面に設けられた開口から絶縁樹脂層32が押し出されることにより、突起電極36と素子電極52との接合面に絶縁樹脂層32がより一層残りにくくなる。
【0027】
凹部60が設けられる領域は特に限定されないが、突起電極36の頂部面の中央部分を含むことが望ましい。凹部60が設けられていない場合に残渣が発生しやすい場所は突起電極36の頂部面の中央部分であるため、突起電極36の頂部面の中央部分に凹部60を設けることより、残渣の発生をより効果的に抑制することができる。
【0028】
また、突起電極36の側面に設けられる開口は最低でも1カ所あればよいが、突起電極36の頂部面を平面視したときに、開口を等角度(本実施の形態では90度)で設置することにより、突起電極36と素子電極52とを接合させる際に余分な絶縁樹脂層32を各開口に均等に押し出すことができ、ひいては残渣の発生をより効果的に抑制することができる。この結果、突起電極36と素子電極52との接着性が向上するため、突起電極36と素子電極52との間の接続信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、突起電極36は、半導体モジュール10の外周辺に沿って列をなしていてもよい。この場合、一つの外周辺に沿って列をなす突起電極36において、突起電極36の頂部面に設けられた凹部60が当該外周辺に対して一定方向を向いていてもよい。さらに、突起電極36の頂部面に設けられた凹部60の開放口となる開口の少なくとも一方が半導体モジュール10の外周辺側に向いていることが好ましい。
【0030】
(素子搭載用基板および半導体モジュールの製造方法)
図4(A)〜(E)、図5(A)〜(F)は、素子搭載用基板および半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【0031】
まず、図4(A)に示すように、少なくとも、突起電極36の高さと配線層34の厚さとの和より大きい厚さを有する金属板としての銅板100を用意する。
【0032】
次に、図4(B)に示すように、リソグラフィ法により、突起電極36のパターンに合わせてレジスト110を選択的に形成する。具体的には、ラミネーター装置を用いて銅板100に所定膜厚のレジスト膜を貼り付け、突起電極36のパターンを有するフォトマスクを用いて露光した後、現像することによって、銅板100の上にレジスト110が選択的に形成される。なお、レジストとの密着性向上のために、レジスト膜のラミネート前に、銅板100の表面に研磨、洗浄等の前処理を必要に応じて施すことが望ましい。
【0033】
図6は、突起電極36形成用のレジスト110の概略平面図である。図6に示すように、レジスト110には、突起電極36の頂部面に形成される凹部60に合わせてスリット112が設けられている。このスリット112は、エッチングによりレジスト110の下部が削られることを見越して、凹部60より狭くなるように設計されている。
【0034】
次に、図4の説明に戻り、図4(C)に示すように、レジスト110をマスクとして、銅板100に所定のパターンの突起電極36を形成する。具体的には、レジスト110をマスクとして銅板100をエッチングすることにより、所定のパターンを有する突起電極36を形成する。このとき、レジスト110のパターンに応じて突起電極36の頂部面に凹部(図示せず)が形成される。突起電極36を形成した後、レジスト110を剥離剤を用いて剥離する。この工程により、銅板100に突起電極36が形成される。突起電極36の基底部の一辺の長さ、頂部面の一辺の長さ、高さは、たとえばそれぞれ、75μm、60μm、30μmである。
【0035】
なお、本実施の形態では、銅で形成された突起電極36の頂部面に凹部を形成しているが、突起電極36の頂部面にNi/Auめっき層などの金属層を設けた後、この金属層を選択的に除去することにより凹部を形成してもよい。この場合には、金属層の露出面が突起電極36の頂部面となる。
【0036】
次に、図4(D)に示すように、ラミネート装置を用いて、突起電極36が設けられた側の銅板100の表面に絶縁樹脂層32を積層する。
【0037】
次に、図4(E)に示すように、O2プラズマエッチングを用いて、突起電極36の頂部面が露出するように絶縁樹脂層32を薄膜化する。
【0038】
続いて、図5(A)に示すように、突起電極36の頂部面が半導体素子50側に向くようにして、銅板100を配置する。一方、突起電極36に対向する素子電極52が設けられた半導体素子50を配置する。そして、プレス装置を用いて、銅板100と半導体素子50とを圧着する。プレス加工時の圧力および温度は、それぞれ約5Mpaおよび200℃である。
【0039】
プレス加工の際、加熱および加圧によって絶縁樹脂層32が塑性流動し、素子電極52が露出するように開口が設けられた保護層54の形状に合わせて、半導体素子50と銅板100との間の隙間に絶縁樹脂層32が流れ込む。そして、図5(B)に示すように、銅板100、絶縁樹脂層32および半導体素子50が一体化され、突起電極36と素子電極52とが圧着して、突起電極36と素子電極52とが電気的に接続される。この際、突起電極36と素子電極52との間にも絶縁樹脂層32の一部が流れ込むが、本実施の形態では、突起電極36の側面に設けられた開口と連通する凹部が突起電極36の頂部面に設けられているため、突起電極36と素子電極52との間に介在する絶縁樹脂層32が凹部に入り込むことにより、突起電極36と素子電極52との接合面に絶縁樹脂層32が残りにくくなる。さらに、絶縁樹脂層32が凹部に入りきらない場合には、突起電極36の側面に設けられた開口から絶縁樹脂層32が押し出されることにより、突起電極36と素子電極52との接合面に絶縁樹脂層32がより一層残りにくくなる。
【0040】
次に、図5(C)に示すように、リソグラフィ法により、絶縁樹脂層32と反対側の銅板100の主表面に、配線層34のパターンに合わせてレジスト120を選択的に形成する。
【0041】
次に、図5(D)に示すように、レジスト120をマスクとして銅板100の主表面をエッチングして、銅板100に所定のパターンの配線層34を形成する。その後レジストを剥離する。本実施の形態における配線層34の厚さは約30μmである。
【0042】
次に、図5(E)に示すように、リソグラフィー法により、はんだ部40の形成位置に対応する領域に開口部38aを有する保護層38を、絶縁樹脂層32と反対側の配線層34の主表面に形成する。
【0043】
次に、図5(F)に示すように、配線層34の一部であるランド領域の開口部38a内にはんだ部40を形成する。
【0044】
以上説明した製造工程により、半導体モジュール10が形成される。また、半導体素子50を搭載しなかった場合には、素子搭載用基板20が得られる。
【0045】
(変形例)
図7(A)〜(D)は、それぞれ、頂部面に凹部が設けられた突起電極36の変形例1〜4を示す図である。変形例1、2では、直線状の凹部60の両端がそれぞれ、突起電極36の側面に設けられた開口に連通している。変形例1では、突起電極36の頂部面は角が丸みを帯びた矩形状であり、一対の開口は対向する突起電極36の側面に設けられている。変形例2では、突起電極36の頂部面は円形状である。変形例3では、突起電極36の頂部面に設けられた凹部60の一端が突起電極36の側面に設けられた開口に連通しており、突起電極36の頂部面に設けられた凹部60の他端は突起電極36の側面に達することなく、突起電極36の頂部面内で終端している。変形例4では、突起電極36の頂部面の中央部分に円形状の凹部60aと円形状の凹部60aに連通する直線状の凹部60bが設けられており、円形状の溝と反対側の直線状の溝の一端が突起電極の側面に設けられた開口に連通している。
【0046】
以上の各変形例では、突起電極の側面に設けられた開口に連通する溝が突起電極の頂部面に設けられている構成については、実施の形態と共通しており、実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0047】
(突起電極の熱応力評価)
突起電極の側面に設けられた開口に連通する溝が突起電極の頂部面に設けられた構成における熱応力を有限要素法解析ソフトANSYSを用いたシミュレーションにより評価した。図8(A)は、シミュレーションモデルに用いた、半導体モジュールのモデル構造を示す断面図である。図8(B)は、半導体モジュールのモデル構造における再配線、突起電極およびSi基板の配置を示す平面図である。
【0048】
図8(A)に示すように、半導体モジュールのモデル構造では、Cuで形成された配線層(再配線)34の両端近傍にそれぞれ突起電極36a、36bが配線層34と一体的に設けられており、突起電極36a、36bの頂部面がそれぞれ半導体素子(Si基板)50に接している。配線層34と半導体素子50との間は絶縁樹脂層32で充填されている。また、半導体素子50の他方の面は絶縁樹脂層33で被覆されている。半導体素子50、配線層34、絶縁樹脂層32、絶縁樹脂層33の厚さは、それぞれ、300μm、10μm、30μm、30μmとした。また、図8(B)に示すように、半導体素子50の寸法を400μm×650μmとし、配線層34の寸法を200μm×450μmとした。また、突起電極36aと突起電極36bとの間隔を200μmとした。
【0049】
以上説明したモデル構造を基本とし、比較例の半導体モジュールでは、一組の突起電極36a、36bをそれぞれ図9(A)に示す形状とした。図9(A)に示すように、比較例の突起電極36a、36bの頂部面には凹部が設けられていない。
【0050】
一方、実施例1の半導体モジュールでは、一組の突起電極36a、36bをそれぞれ図9(B)に示す形状とした。図9(B)に示すように、実施例1の突起電極36a、36bの頂部面には突起電極の側面が開放口となる凹部60が設けられている。凹部60の深さ、幅をそれぞれ5μm、20μmとした。実施例1では、凹部60の開放口となる開口は、向かい合わせとなる突起電極36a、36bの側面にそれぞれ設けられている。言い換えると、突起電極36aが接続された配線層34が延在する側の突起電極36aの側面に凹部60の開放口となる開口が形成されている。また、突起電極36bが接続された配線層34が延在する側の突起電極36bの側面に凹部60の開放口となる開口が形成されている。なお、半導体素子50との接触面積を合わせるため、実施例1の突起電極36の頂部面の寸法は、60μm×60μmとし、比較例の突起電極36の頂部面の寸法は、53μm×53μmとした。
【0051】
実施例2の半導体モジュールでは、一組の突起電極36a、36bの形状自体は実施例1と同様に頂部面に凹部60が設けられた構造とし、凹部60の開放口となる開口は、向かい合わせとなる突起電極36a、36bの側面とは反対側の側面にそれぞれ設けられている。言い換えると、突起電極36aが接続された配線層34が延在する側の突起電極36aの側面とは反対側(配線層34の端部側)の側面に凹部60の開放口となる開口が形成されている。また、突起電極36bが接続された配線層34が延在する側の突起電極36bの側面とは反対側(配線層34の端部側)の側面に凹部60の開放口となる開口が形成されている。
【0052】
表1は、シミュレーションで用いた材料の物性を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
比較例、実施例1、2の半導体モジュールのモデル構造について、25℃における応力=0と仮定し、25℃から125℃への昇温過程での応力解析を実施した。なお、モデル構造の突起電極36a、36bは配線層34に対称に設けられているため、得られる応力分布も対称的となる。以下、突起電極36a、36bを総称して突起電極36として記載する。図10(A)、(B)は、それぞれ、比較例の突起電極36における相当応力分布を示す図、比較例の突起電極36におけるZ方向応力分布を示す図である。図11(A)、(B)は、それぞれ、実施例1の突起電極36における相当応力分布を示す図、実施例1の突起電極36におけるZ方向応力分布を示す図である。図12(A)、(B)は、それぞれ、実施例2の突起電極36における相当応力分布を示す図、実施例2の突起電極36におけるZ方向応力分布を示す図である。図10乃至図12の各図において、半導体素子50側をZ軸のマイナス方向に向け、配線層34側をZ軸のプラス方向に向けて突起電極が描かれている。また、図10(B)、図11(B)および図12(B)において、Z方向の応力がプラスの領域は突起電極36を半導体素子50から引き離す方向の力を示し、Z方向の応力がマイナスの領域は突起電極36を半導体素子50に押しつける方向の力を示している。比較例、実施例1、2の突起電極36について得られた解析結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
図10(A)、図11(A)、図12(A)に示されるとおり、最大相当応力は突起電極の付け根(突起電極が再配線に接続している箇所)に付加される。また図10(B)、図11(B)、図12(B)に示されるとおり、Z方向応力のうち最大応力はマイナス(突起電極をSi基板に押し付ける方向の力)で突起電極とSi基板の接触面のうち配線から遠い側に、最小応力はプラス(突起電極をSi基板から引き離す方向の力)で突起電極の付け根に付加される。比較例の突起電極36の最大相応応力に対する実施例1の突起電極36の最大相応応力の比(最大相応応力)は94.43%であり、実施例1の突起電極36の方が比較例の突起電極36に比べて最大相応応力が小さいことが確認された。また、比較例の突起電極36の最大Z方向応力に対する実施例1の突起電極36の最大Z方向応力の比(最大Z方向応力比)は94.10%となった。また、比較例の突起電極36の最小Z方向応力に対する実施例1の突起電極36の最小Z方向応力の比(最小Z方向応力比)は104.40%となった。
【0057】
このように、実施例1の突起電極36では、突起電極36の付け根部分に加わる応力、すなわち最大相応応力が減少する傾向にあることが確認された。また、突起電極36を半導体素子50から引き離す方向の応力は減少し、半導体素子50に押しつける方向の応力が増加することが確認された。この結果より、実施例1の突起電極36と半導体素子50との接着性が向上することがわかる。
【0058】
実施例2の突起電極36では、実施例1の突起電極36で確認された傾向がさらに強まることがわかる。よって、実施例2の突起電極36と半導体素子50との接着性がさらに向上することが確認された。すなわち、開口端は突起電極36が接続する配線が延在する方向と反対側の突起電極36の側面に存在することが望ましいことが確認された。
【0059】
次に、本発明の半導体モジュールを備えた携帯機器について説明する。なお、携帯機器として携帯電話に搭載する例を示すが、たとえば、個人用携帯情報端末(PDA)、デジタルビデオカメラ(DVC)、音楽プレーヤ、及びデジタルスチルカメラ(DSC)といった電子機器であってもよい。
【0060】
図13は実施の形態に係る半導体モジュール10を備えた携帯電話の構成を示す図である。携帯電話1111は、第1の筐体1112と第2の筐体1114が可動部1120によって連結される構造になっている。第1の筐体1112と第2の筐体1114は可動部1120を軸として回動可能である。第1の筐体1112には文字や画像等の情報を表示する表示部1118やスピーカ部1124が設けられている。第2の筐体1114には操作用ボタンなどの操作部1122やマイク部1126が設けられている。なお、本発明の各実施形態に係る半導体モジュールはこうした携帯電話1111の内部に搭載されている。なお、このように、携帯電話に搭載した本発明の半導体モジュールとしては、各回路を駆動するための電源回路、RF発生するRF発生回路、DAC、エンコーダ回路、携帯電話の表示部に採用される液晶パネルの光源としてのバックライトの駆動回路などとして採用することが可能である。
【0061】
図14は図13に示した携帯電話の部分断面図(第1の筐体1112の断面図)である。本発明の実施形態に係る半導体モジュール10は、はんだ部40を介してプリント基板1128に搭載され、こうしたプリント基板1128を介して表示部1118などと電気的に接続されている。
【0062】
本発明の実施形態に係る半導体モジュールを備えた携帯機器によれば、以下の効果を得ることができる。
【0063】
半導体モジュール10において、半導体素子と突起電極との接続信頼性が向上するので、こうした半導体モジュール10を搭載した携帯機器の動作信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0064】
10 半導体モジュール、20 素子搭載用基板、32 絶縁樹脂層、34 配線層、36 突起電極、38 保護層、40 はんだ部、50 半導体素子、52 素子電極、54 保護層、60 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子搭載用基板、半導体モジュールおよび携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の表面実装方法として、半導体素子の電極にはんだバンプを形成し、はんだバンプとプリント配線基板の電極パッドとを接続するフリップチップ実装方法が知られている。また、フリップチップ実装方法を採用した構造としては、たとえばCSP(Chip Size Package)構造が知られている。
【0003】
一方、近年の電子機器の小型化、高機能化に伴い、半導体素子のさらなる小型化が求められている。半導体素子の小型化に伴い、プリント配線基板に実装するための電極間の狭ピッチ化が不可欠となっている。ところがフリップチップ実装方法では、はんだバンプ自体の大きさや、はんだ付け時のブリッジ発生などが制約となり、電極の狭ピッチ化に限界があった。このような限界を克服するための構造として、銅などの金属からなる配線層に形成した突起構造を電極またはビアとし(以下、突起電極とよぶ)、基材にエポキシ樹脂などの絶縁樹脂層を介して半導体素子を実装し、突起電極に半導体素子の電極を接続する構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−349361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の突起電極を用いて半導体素子の電極との接続を行うと、突起電極の頂部面と半導体素子の電極との間に絶縁樹脂が残渣として介在することにより、接続不良が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体素子との接続信頼性の向上が可能な突起電極を有する素子搭載用基板の提供にある。また、本発明の他の目的は、突起電極と半導体素子の電極との間の接続信頼性が向上した半導体モジュールおよび携帯機器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、素子搭載用基板である。当該素子搭載用基板は、基材と、基材に設けられた配線層と、配線層に設けられた突起電極と、を備え、突起電極の頂部面に凹部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この態様の素子搭載用基板によれば、素子搭載用基板に搭載される半導体素子の素子電極と突起電極とが接合した状態のとき、凹部が絶縁樹脂層で充填され、突起電極と素子電極の接合面には絶縁樹脂層が残渣として生じにくくなることにより、突起電極と素子電極との接続信頼性の向上が図られる。
【0009】
上記態様の素子搭載用基板において、凹部が突起電極の側面に設けられた開口と連通していてもよい。また、開口は、突起電極が接続された配線層が延在する方向と反対側の突起電極の側面に設けられていてもよく、凹部が突起電極の頂部面の中央部分に設けられていてもよい。
【0010】
本発明の他の態様は半導体モジュールである。当該半導体モジュールは、上述した態様の素子搭載用基板と突起電極に対向する素子電極が設けられた半導体素子と、を備え、突起電極と素子電極とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0011】
この態様によれば、半導体モジュールにおいて、突起電極と素子電極との接続信頼性の向上が図られる。
【0012】
本発明のさらに他の態様は携帯機器である。当該携帯機器は、上述した態様の半導体モジュールを搭載したことを特徴とする。
【0013】
この態様によれば、携帯機器において、突起電極と素子電極との接続信頼性の向上が図られ、ひいては携帯機器の動作信頼性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体素子との接続信頼性の向上が可能な突起電極を有する素子搭載用基板が提供される。また、突起電極と半導体素子の電極との間の接続信頼性が向上した半導体モジュールおよび携帯機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る半導体モジュールの構造を示す断面図である。
【図2】突起電極の頂部面側の平面図である。
【図3】突起電極の側面図である。
【図4】図4(A)〜(E)は、実施の形態に係る素子搭載用基板および半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図5】図5(A)〜(F)は、実施の形態に係る素子搭載用基板および半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図6】突起電極形成用のレジストの概略平面図である。
【図7】図7(A)〜(D)は、それぞれ、頂部面に凹部が設けられた突起電極の変形例1〜4を示す図である。
【図8】図8(A)は、シミュレーションモデルに用いた、半導体モジュールのモデル構造を示す断面図である。図8(B)は、半導体モジュールのモデル構造における配線層、突起電極および半導体素子の配置を示す平面図である。
【図9】図9(A)は、比較例で用いた突起電極の形状および寸法を示す図である。図9(B)は、実施例1および実施例2で用いた突起電極の形状および寸法を示す図である。
【図10】図10(A)、(B)は、それぞれ、比較例の突起電極における相当応力分布を示す図、比較例の突起電極におけるZ方向応力分布を示す図である。
【図11】図11(A)、(B)は、それぞれ、実施例1の突起電極における相当応力分布を示す図、実施例1の突起電極におけるZ方向応力分布を示す図である。
【図12】図12(A)、(B)は、それぞれ、実施例2の突起電極における相当応力分布を示す図、実施例2の突起電極におけるZ方向応力分布を示す図である。
【図13】実施の形態に係る半導体モジュールを備えた携帯電話の構成を示す図である。
【図14】図13に示した携帯電話の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
図1は、実施の形態に係る半導体モジュールの構造を示す断面図である。素子搭載用基板20は、絶縁樹脂層32と、絶縁樹脂層32の一方の主表面S1に設けられた配線層34、その配線層34と電気的に接続され、配線層34から絶縁樹脂層32側に突出している突起電極36とを備える。この突起電極36に半導体素子50が電気的に接続されて半導体モジュール10が形成されている。
【0018】
絶縁樹脂層32は、絶縁性の樹脂からなり、たとえばエポキシ系熱硬化型樹脂が挙げられる。
【0019】
配線層34は、絶縁樹脂層32の一方の主表面S1に設けられており、導電材料、好ましくは圧延金属、さらには圧延銅により形成される。あるいは電解銅などで形成してもよい。配線層34には、絶縁樹脂層32側に突起電極36が突設されている。本実施の形態においては、配線層34と突起電極36とは一体的に形成されているが、特にこれに限定されない。配線層34の絶縁樹脂層32と反対側の主表面には、配線層34の酸化などを防ぐための保護層38が設けられている。保護層38としては、ソルダーレジスト層などが挙げられる。保護層38の所定の領域には開口部38aが形成されており、開口部38aによって配線層34の一部が露出している。開口部38a内には外部接続電極としてのはんだ部40が形成され、はんだ部40と配線層34とが電気的に接続されている。はんだ部40を形成する位置、すなわち開口部38aの形成領域は、たとえば再配線で引き回した領域の端部である。
【0020】
突起電極36はその全体的な形状が、先端に近づくにつれて径が細くなっていてもよい。言い換えると、突起電極36の側面はテーパ状となっていてもよい。また、突起電極36の頂部面にNi/Auめっき層などの金属層が設けられていてもよい。突起電極36の頂部面の形状については後述する。
【0021】
半導体素子50は、Si基板などの半導体基板に形成された集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)などの能動素子である。
【0022】
絶縁樹脂層32の側の半導体素子50の主表面に、突起電極36のそれぞれに対向する位置に素子電極52が設けられている。また、絶縁樹脂層32の側の半導体素子50の主表面には、素子電極52が露出するように開口が設けられた保護層54が設けられている。保護層54としては、たとえばポリイミドを用いることができる。
【0023】
以上の構成の半導体モジュール10は、はんだボールなどのはんだ部40がプリント基板などの実装基板に設けられた電極パッドに接合されることにより、実装基板に実装可能である。
【0024】
ここで、突起電極36の頂部面の形状について説明する。図2は、突起電極36の頂部面側の平面図である。図3は、突起電極36の側面図である。本実施の形態では、上述した素子電極52と接する面となる突起電極36の頂部面は角が丸みを帯びた矩形状である。突起電極36の頂部面には凹部60が設けられている。本実施の形態では、凹部60は十字状に形成された溝であり、頂部面の各辺に接続する側面に設けられた開口に十字状に伸びた溝がそれぞれ連通している。言い換えると、凹部60は突起電極36の側面に設けられた開放口と連通している。
【0025】
突起電極36と素子電極52とが接合した状態のとき、凹部60は上述した絶縁樹脂層32で充填され、突起電極36と素子電極52との接合面には絶縁樹脂層32が残渣として生じにくくなることにより、突起電極36と素子電極52との接続信頼性の向上が図られている。言い換えると、突起電極36と素子電極52とを接合させる際に、突起電極36と素子電極52との間に介在する絶縁樹脂層32が凹部60に入り込むことができるため、突起電極36と素子電極52との接合面に絶縁樹脂層32が残りにくくなる。
【0026】
さらに、凹部60が突起電極36の側面に設けられた開口と連通しているため、突起電極36と素子電極52とを接合させる際に絶縁樹脂層32が凹部60に入りきらない場合には、突起電極36の側面に設けられた開口から絶縁樹脂層32が押し出されることにより、突起電極36と素子電極52との接合面に絶縁樹脂層32がより一層残りにくくなる。
【0027】
凹部60が設けられる領域は特に限定されないが、突起電極36の頂部面の中央部分を含むことが望ましい。凹部60が設けられていない場合に残渣が発生しやすい場所は突起電極36の頂部面の中央部分であるため、突起電極36の頂部面の中央部分に凹部60を設けることより、残渣の発生をより効果的に抑制することができる。
【0028】
また、突起電極36の側面に設けられる開口は最低でも1カ所あればよいが、突起電極36の頂部面を平面視したときに、開口を等角度(本実施の形態では90度)で設置することにより、突起電極36と素子電極52とを接合させる際に余分な絶縁樹脂層32を各開口に均等に押し出すことができ、ひいては残渣の発生をより効果的に抑制することができる。この結果、突起電極36と素子電極52との接着性が向上するため、突起電極36と素子電極52との間の接続信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、突起電極36は、半導体モジュール10の外周辺に沿って列をなしていてもよい。この場合、一つの外周辺に沿って列をなす突起電極36において、突起電極36の頂部面に設けられた凹部60が当該外周辺に対して一定方向を向いていてもよい。さらに、突起電極36の頂部面に設けられた凹部60の開放口となる開口の少なくとも一方が半導体モジュール10の外周辺側に向いていることが好ましい。
【0030】
(素子搭載用基板および半導体モジュールの製造方法)
図4(A)〜(E)、図5(A)〜(F)は、素子搭載用基板および半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【0031】
まず、図4(A)に示すように、少なくとも、突起電極36の高さと配線層34の厚さとの和より大きい厚さを有する金属板としての銅板100を用意する。
【0032】
次に、図4(B)に示すように、リソグラフィ法により、突起電極36のパターンに合わせてレジスト110を選択的に形成する。具体的には、ラミネーター装置を用いて銅板100に所定膜厚のレジスト膜を貼り付け、突起電極36のパターンを有するフォトマスクを用いて露光した後、現像することによって、銅板100の上にレジスト110が選択的に形成される。なお、レジストとの密着性向上のために、レジスト膜のラミネート前に、銅板100の表面に研磨、洗浄等の前処理を必要に応じて施すことが望ましい。
【0033】
図6は、突起電極36形成用のレジスト110の概略平面図である。図6に示すように、レジスト110には、突起電極36の頂部面に形成される凹部60に合わせてスリット112が設けられている。このスリット112は、エッチングによりレジスト110の下部が削られることを見越して、凹部60より狭くなるように設計されている。
【0034】
次に、図4の説明に戻り、図4(C)に示すように、レジスト110をマスクとして、銅板100に所定のパターンの突起電極36を形成する。具体的には、レジスト110をマスクとして銅板100をエッチングすることにより、所定のパターンを有する突起電極36を形成する。このとき、レジスト110のパターンに応じて突起電極36の頂部面に凹部(図示せず)が形成される。突起電極36を形成した後、レジスト110を剥離剤を用いて剥離する。この工程により、銅板100に突起電極36が形成される。突起電極36の基底部の一辺の長さ、頂部面の一辺の長さ、高さは、たとえばそれぞれ、75μm、60μm、30μmである。
【0035】
なお、本実施の形態では、銅で形成された突起電極36の頂部面に凹部を形成しているが、突起電極36の頂部面にNi/Auめっき層などの金属層を設けた後、この金属層を選択的に除去することにより凹部を形成してもよい。この場合には、金属層の露出面が突起電極36の頂部面となる。
【0036】
次に、図4(D)に示すように、ラミネート装置を用いて、突起電極36が設けられた側の銅板100の表面に絶縁樹脂層32を積層する。
【0037】
次に、図4(E)に示すように、O2プラズマエッチングを用いて、突起電極36の頂部面が露出するように絶縁樹脂層32を薄膜化する。
【0038】
続いて、図5(A)に示すように、突起電極36の頂部面が半導体素子50側に向くようにして、銅板100を配置する。一方、突起電極36に対向する素子電極52が設けられた半導体素子50を配置する。そして、プレス装置を用いて、銅板100と半導体素子50とを圧着する。プレス加工時の圧力および温度は、それぞれ約5Mpaおよび200℃である。
【0039】
プレス加工の際、加熱および加圧によって絶縁樹脂層32が塑性流動し、素子電極52が露出するように開口が設けられた保護層54の形状に合わせて、半導体素子50と銅板100との間の隙間に絶縁樹脂層32が流れ込む。そして、図5(B)に示すように、銅板100、絶縁樹脂層32および半導体素子50が一体化され、突起電極36と素子電極52とが圧着して、突起電極36と素子電極52とが電気的に接続される。この際、突起電極36と素子電極52との間にも絶縁樹脂層32の一部が流れ込むが、本実施の形態では、突起電極36の側面に設けられた開口と連通する凹部が突起電極36の頂部面に設けられているため、突起電極36と素子電極52との間に介在する絶縁樹脂層32が凹部に入り込むことにより、突起電極36と素子電極52との接合面に絶縁樹脂層32が残りにくくなる。さらに、絶縁樹脂層32が凹部に入りきらない場合には、突起電極36の側面に設けられた開口から絶縁樹脂層32が押し出されることにより、突起電極36と素子電極52との接合面に絶縁樹脂層32がより一層残りにくくなる。
【0040】
次に、図5(C)に示すように、リソグラフィ法により、絶縁樹脂層32と反対側の銅板100の主表面に、配線層34のパターンに合わせてレジスト120を選択的に形成する。
【0041】
次に、図5(D)に示すように、レジスト120をマスクとして銅板100の主表面をエッチングして、銅板100に所定のパターンの配線層34を形成する。その後レジストを剥離する。本実施の形態における配線層34の厚さは約30μmである。
【0042】
次に、図5(E)に示すように、リソグラフィー法により、はんだ部40の形成位置に対応する領域に開口部38aを有する保護層38を、絶縁樹脂層32と反対側の配線層34の主表面に形成する。
【0043】
次に、図5(F)に示すように、配線層34の一部であるランド領域の開口部38a内にはんだ部40を形成する。
【0044】
以上説明した製造工程により、半導体モジュール10が形成される。また、半導体素子50を搭載しなかった場合には、素子搭載用基板20が得られる。
【0045】
(変形例)
図7(A)〜(D)は、それぞれ、頂部面に凹部が設けられた突起電極36の変形例1〜4を示す図である。変形例1、2では、直線状の凹部60の両端がそれぞれ、突起電極36の側面に設けられた開口に連通している。変形例1では、突起電極36の頂部面は角が丸みを帯びた矩形状であり、一対の開口は対向する突起電極36の側面に設けられている。変形例2では、突起電極36の頂部面は円形状である。変形例3では、突起電極36の頂部面に設けられた凹部60の一端が突起電極36の側面に設けられた開口に連通しており、突起電極36の頂部面に設けられた凹部60の他端は突起電極36の側面に達することなく、突起電極36の頂部面内で終端している。変形例4では、突起電極36の頂部面の中央部分に円形状の凹部60aと円形状の凹部60aに連通する直線状の凹部60bが設けられており、円形状の溝と反対側の直線状の溝の一端が突起電極の側面に設けられた開口に連通している。
【0046】
以上の各変形例では、突起電極の側面に設けられた開口に連通する溝が突起電極の頂部面に設けられている構成については、実施の形態と共通しており、実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0047】
(突起電極の熱応力評価)
突起電極の側面に設けられた開口に連通する溝が突起電極の頂部面に設けられた構成における熱応力を有限要素法解析ソフトANSYSを用いたシミュレーションにより評価した。図8(A)は、シミュレーションモデルに用いた、半導体モジュールのモデル構造を示す断面図である。図8(B)は、半導体モジュールのモデル構造における再配線、突起電極およびSi基板の配置を示す平面図である。
【0048】
図8(A)に示すように、半導体モジュールのモデル構造では、Cuで形成された配線層(再配線)34の両端近傍にそれぞれ突起電極36a、36bが配線層34と一体的に設けられており、突起電極36a、36bの頂部面がそれぞれ半導体素子(Si基板)50に接している。配線層34と半導体素子50との間は絶縁樹脂層32で充填されている。また、半導体素子50の他方の面は絶縁樹脂層33で被覆されている。半導体素子50、配線層34、絶縁樹脂層32、絶縁樹脂層33の厚さは、それぞれ、300μm、10μm、30μm、30μmとした。また、図8(B)に示すように、半導体素子50の寸法を400μm×650μmとし、配線層34の寸法を200μm×450μmとした。また、突起電極36aと突起電極36bとの間隔を200μmとした。
【0049】
以上説明したモデル構造を基本とし、比較例の半導体モジュールでは、一組の突起電極36a、36bをそれぞれ図9(A)に示す形状とした。図9(A)に示すように、比較例の突起電極36a、36bの頂部面には凹部が設けられていない。
【0050】
一方、実施例1の半導体モジュールでは、一組の突起電極36a、36bをそれぞれ図9(B)に示す形状とした。図9(B)に示すように、実施例1の突起電極36a、36bの頂部面には突起電極の側面が開放口となる凹部60が設けられている。凹部60の深さ、幅をそれぞれ5μm、20μmとした。実施例1では、凹部60の開放口となる開口は、向かい合わせとなる突起電極36a、36bの側面にそれぞれ設けられている。言い換えると、突起電極36aが接続された配線層34が延在する側の突起電極36aの側面に凹部60の開放口となる開口が形成されている。また、突起電極36bが接続された配線層34が延在する側の突起電極36bの側面に凹部60の開放口となる開口が形成されている。なお、半導体素子50との接触面積を合わせるため、実施例1の突起電極36の頂部面の寸法は、60μm×60μmとし、比較例の突起電極36の頂部面の寸法は、53μm×53μmとした。
【0051】
実施例2の半導体モジュールでは、一組の突起電極36a、36bの形状自体は実施例1と同様に頂部面に凹部60が設けられた構造とし、凹部60の開放口となる開口は、向かい合わせとなる突起電極36a、36bの側面とは反対側の側面にそれぞれ設けられている。言い換えると、突起電極36aが接続された配線層34が延在する側の突起電極36aの側面とは反対側(配線層34の端部側)の側面に凹部60の開放口となる開口が形成されている。また、突起電極36bが接続された配線層34が延在する側の突起電極36bの側面とは反対側(配線層34の端部側)の側面に凹部60の開放口となる開口が形成されている。
【0052】
表1は、シミュレーションで用いた材料の物性を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
比較例、実施例1、2の半導体モジュールのモデル構造について、25℃における応力=0と仮定し、25℃から125℃への昇温過程での応力解析を実施した。なお、モデル構造の突起電極36a、36bは配線層34に対称に設けられているため、得られる応力分布も対称的となる。以下、突起電極36a、36bを総称して突起電極36として記載する。図10(A)、(B)は、それぞれ、比較例の突起電極36における相当応力分布を示す図、比較例の突起電極36におけるZ方向応力分布を示す図である。図11(A)、(B)は、それぞれ、実施例1の突起電極36における相当応力分布を示す図、実施例1の突起電極36におけるZ方向応力分布を示す図である。図12(A)、(B)は、それぞれ、実施例2の突起電極36における相当応力分布を示す図、実施例2の突起電極36におけるZ方向応力分布を示す図である。図10乃至図12の各図において、半導体素子50側をZ軸のマイナス方向に向け、配線層34側をZ軸のプラス方向に向けて突起電極が描かれている。また、図10(B)、図11(B)および図12(B)において、Z方向の応力がプラスの領域は突起電極36を半導体素子50から引き離す方向の力を示し、Z方向の応力がマイナスの領域は突起電極36を半導体素子50に押しつける方向の力を示している。比較例、実施例1、2の突起電極36について得られた解析結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
図10(A)、図11(A)、図12(A)に示されるとおり、最大相当応力は突起電極の付け根(突起電極が再配線に接続している箇所)に付加される。また図10(B)、図11(B)、図12(B)に示されるとおり、Z方向応力のうち最大応力はマイナス(突起電極をSi基板に押し付ける方向の力)で突起電極とSi基板の接触面のうち配線から遠い側に、最小応力はプラス(突起電極をSi基板から引き離す方向の力)で突起電極の付け根に付加される。比較例の突起電極36の最大相応応力に対する実施例1の突起電極36の最大相応応力の比(最大相応応力)は94.43%であり、実施例1の突起電極36の方が比較例の突起電極36に比べて最大相応応力が小さいことが確認された。また、比較例の突起電極36の最大Z方向応力に対する実施例1の突起電極36の最大Z方向応力の比(最大Z方向応力比)は94.10%となった。また、比較例の突起電極36の最小Z方向応力に対する実施例1の突起電極36の最小Z方向応力の比(最小Z方向応力比)は104.40%となった。
【0057】
このように、実施例1の突起電極36では、突起電極36の付け根部分に加わる応力、すなわち最大相応応力が減少する傾向にあることが確認された。また、突起電極36を半導体素子50から引き離す方向の応力は減少し、半導体素子50に押しつける方向の応力が増加することが確認された。この結果より、実施例1の突起電極36と半導体素子50との接着性が向上することがわかる。
【0058】
実施例2の突起電極36では、実施例1の突起電極36で確認された傾向がさらに強まることがわかる。よって、実施例2の突起電極36と半導体素子50との接着性がさらに向上することが確認された。すなわち、開口端は突起電極36が接続する配線が延在する方向と反対側の突起電極36の側面に存在することが望ましいことが確認された。
【0059】
次に、本発明の半導体モジュールを備えた携帯機器について説明する。なお、携帯機器として携帯電話に搭載する例を示すが、たとえば、個人用携帯情報端末(PDA)、デジタルビデオカメラ(DVC)、音楽プレーヤ、及びデジタルスチルカメラ(DSC)といった電子機器であってもよい。
【0060】
図13は実施の形態に係る半導体モジュール10を備えた携帯電話の構成を示す図である。携帯電話1111は、第1の筐体1112と第2の筐体1114が可動部1120によって連結される構造になっている。第1の筐体1112と第2の筐体1114は可動部1120を軸として回動可能である。第1の筐体1112には文字や画像等の情報を表示する表示部1118やスピーカ部1124が設けられている。第2の筐体1114には操作用ボタンなどの操作部1122やマイク部1126が設けられている。なお、本発明の各実施形態に係る半導体モジュールはこうした携帯電話1111の内部に搭載されている。なお、このように、携帯電話に搭載した本発明の半導体モジュールとしては、各回路を駆動するための電源回路、RF発生するRF発生回路、DAC、エンコーダ回路、携帯電話の表示部に採用される液晶パネルの光源としてのバックライトの駆動回路などとして採用することが可能である。
【0061】
図14は図13に示した携帯電話の部分断面図(第1の筐体1112の断面図)である。本発明の実施形態に係る半導体モジュール10は、はんだ部40を介してプリント基板1128に搭載され、こうしたプリント基板1128を介して表示部1118などと電気的に接続されている。
【0062】
本発明の実施形態に係る半導体モジュールを備えた携帯機器によれば、以下の効果を得ることができる。
【0063】
半導体モジュール10において、半導体素子と突起電極との接続信頼性が向上するので、こうした半導体モジュール10を搭載した携帯機器の動作信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0064】
10 半導体モジュール、20 素子搭載用基板、32 絶縁樹脂層、34 配線層、36 突起電極、38 保護層、40 はんだ部、50 半導体素子、52 素子電極、54 保護層、60 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に設けられた配線層と、
前記配線層に設けられた突起電極と、
を備え、
前記突起電極の頂部面に凹部が設けられていることを特徴とする素子搭載用基板。
【請求項2】
前記凹部が前記突起電極の側面に設けられた開口と連通している請求項1に記載の素子搭載用基板。
【請求項3】
前記開口は、前記突起電極が接続された前記配線層が延在する方向と反対側の前記突起電極の側面に設けられている請求項2に記載の素子搭載用基板。
【請求項4】
前記凹部が前記突起電極の頂部面の中央部分に設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の素子搭載用基板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の素子搭載用基板と、
前記突起電極に対向する素子電極が設けられた半導体素子と、
を備え、
前記突起電極と前記素子電極とが電気的に接続されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体モジュールを搭載したことを特徴とする携帯機器。
【請求項1】
基材と、
前記基材に設けられた配線層と、
前記配線層に設けられた突起電極と、
を備え、
前記突起電極の頂部面に凹部が設けられていることを特徴とする素子搭載用基板。
【請求項2】
前記凹部が前記突起電極の側面に設けられた開口と連通している請求項1に記載の素子搭載用基板。
【請求項3】
前記開口は、前記突起電極が接続された前記配線層が延在する方向と反対側の前記突起電極の側面に設けられている請求項2に記載の素子搭載用基板。
【請求項4】
前記凹部が前記突起電極の頂部面の中央部分に設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の素子搭載用基板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の素子搭載用基板と、
前記突起電極に対向する素子電極が設けられた半導体素子と、
を備え、
前記突起電極と前記素子電極とが電気的に接続されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体モジュールを搭載したことを特徴とする携帯機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−77345(P2011−77345A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228104(P2009−228104)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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