説明

紫外線照射装置及び光ファイバの被覆形成方法

【課題】 UVランプを用いた紫外線照射装置と比較して長寿命、低消費電力、且つ、低ランニングコストの紫外線照射装置及び光ファイバの被覆形成方法を提供する。
【解決手段】 光ファイバF1の表面に紫外線硬化型樹脂からなる被覆層C1,C2を塗布し、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線照射装置において、紫外線硬化型樹脂に、紫外線を照射可能な位置に設けられた少なくとも2つ以上の半導体発光素子34を備え、第1及び第2半導体発光素子は紫外線を発し、それらのピーク波長が異なっている。この装置は、光ファイバFを囲むと共に内部にガスが流れる包囲管31を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの表面上に塗布された樹脂を硬化させるための紫外線照射装置、及び光ファイバの被覆形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリフォームから線引きされた裸光ファイバ、あるいは、一度ボビンに巻き取られた光ファイバ素線の表面上に、樹脂被覆が行われている。光ファイバの外周を紫外線硬化型樹脂(UV光硬化型樹脂)で被覆し、そのUV光硬化型樹脂に紫外線(UV光)を照射してUV光硬化型樹脂を硬化させている。下記特許文献1は、UV光の光源として紫外線レーザダイオード(UV−LD)または紫外線発光ダイオード(UV−LED)などの紫外線半導体発光素子を1個または複数個使用し、消費電力の低減を達成しようと試みている。
【特許文献1】特開2003−89555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本願発明者らが鋭意検討した結果、上記従来の装置では、光ファイバを被覆する被覆の硬化が不十分であり、光ファイバの品質に悪影響を及ぼすことが判明した。
【0004】
すなわち、UV−LEDは、単一で狭い(±5nm程度)帯域の発光スペクトルを有しており、この発光スペクトルのピーク値を与える波長(ピーク波長)は、UV光硬化型樹脂に含まれる光重合開始剤の吸収スペクトルのピーク値やショルダー値を与える波長の近傍には存在しないことがある。その場合、光重合開始剤からのラジカル生成が抑制され、樹脂硬化反応が促進されないという問題がある。かかる点からすれば、樹脂硬化を十分に促進させるには、UVランプの方が有効であると考えるが、UVランプは、寿命が短く消費電力が高いという難点がある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、UVランプを用いた紫外線照射装置と比較して長寿命、低消費電力、且つ、低ランニングコストの紫外線照射装置及び光ファイバの被覆形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明にかかる紫外線照射装置は、光ファイバの表面に塗布された紫外線硬化型樹脂に、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線照射装置において、光ファイバを囲むと共に内部にガスが流れる管と、その管の側面に設けられた紫外線透過用の貫通孔を通して、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射可能な位置に設けられた少なくとも第1及び第2半導体発光素子とを備え、第1及び第2半導体発光素子は紫外線を発し、それらのピーク波長が異なることを特徴とする。
【0007】
本発明の装置によれば、紫外線帯域内に少なくとも2つのスペクトルのピークを有しているため、紫外線硬化型樹脂の硬化を十分に促進させることができる。なお、紫外線帯域とは、波長10nm〜400nmの範囲である。これにより、半導体発光素子は、UVランプよりも、長寿命で、消費電力が低く、したがって、ランニングコストが低い。したがって、本発明の装置は、半導体発光素子を用いているにも拘らず、紫外線硬化型樹脂の硬化を十分に促進させることができるため、長寿命、低消費電力、低ランニングコストでの動作が可能となる。特に、ガスが管内を流れることにより、第1及び第2の半導体発光素子が直接冷却されるため、これらから出射される光の強度が低下せず、且つ、半導体発光素子の寿命が延びることとなる。
【0008】
また、第1及び第2半導体発光素子は、放熱フィンに熱的に接続されていることが好ましい。この場合、第1及び第2半導体発光素子は、放熱フィンによって効率的に冷却されるため、照射強度が低下せず且つ紫外線光源の寿命が延びることとなる。
【0009】
また、第1及び第2半導体発光素子は、自身以外の半導体発光素子の光出射面に向けて紫外線を出射しないように配置されていることが好ましい。半導体発光素子の光出射面に、他の半導体発光素子から紫外線が入射すると、内部で発振などが生じたり、温度上昇が生じて、半導体発光素子が劣化し、その寿命が低下するが、本構成では、かかる状態を回避するように第1及び第2半導体発光素子が配置されている。したがって、半導体発光素子を長寿命化することができる。
【0010】
また、本発明に係る光ファイバの被覆形成方法は、紫外線硬化型樹脂が塗布された光ファイバに対して紫外線を照射して硬化させる光ファイバの被覆形成方法において、光ファイバに光ファイバを囲む管を通過させつつ、管内にガスを供給すると共に、前記第1及び第2半導体発光素子が、紫外線硬化型樹脂に、ピーク波長の異なる少なくとも2種類の紫外線をそれぞれ照射する工程を備えることを特徴とする。また、前記ガスに含まれる酸素含有率は0.5Vol%未満であることが好ましい。
【0011】
上述のように、ピーク波長の異なる少なくとも2種類の紫外線が照射されることにより、紫外線硬化型樹脂の硬化が促進される。ピーク波長の異なる2種類の紫外線は、同時に照射されることが好ましいが、別々に照射されてもよく、また、連続光であっても、パルス光であってもよい。なお、パルス光の場合には、各パルスの紫外線照射タイミングをずらすことも可能である。ここで、ガスを流していることにより、第1及び第2の半導体発光素子が冷却されるため、これらから出射される光の強度が低下せず、且つ、半導体発光素子の寿命が延びることとなる。また、このガス中の酸素含有率を0.5Vol%未満とすることで、酸素による樹脂の表面硬化阻害作用を抑制することができる。
【0012】
また、このような被覆形成方法においても、第1及び第2半導体発光素子は、放熱フィンに熱的に接続されていることが好ましい。この場合、第1及び第2半導体発光素子は、放熱フィンによって効率的に冷却されているため、照射強度が低下せず且つ紫外線光源の寿命が延びることとなる。
【0013】
また、このような被覆形成方法においても、第1及び第2半導体発光素子は、自身以外の半導体発光素子の光出射面に向けて出射しないように、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射することが好ましい。この配置によれば、上述のように、半導体発光素子内部での発振や温度上昇を抑制し、半導体発光素子を長寿命化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紫外線照射装置及び光ファイバの被覆形成方法によれば、UVランプを用いた紫外線照射装置と比較して長寿命、低消費電力、且つ、低ランニングコストで光ファイバ被覆を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施の形態に係る紫外線照射装置及び光ファイバの被覆形成方法について説明する。なお、同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1は、線引き時の光ファイバの走行方向に沿った紫外線照射装置UVAの縦断面図であり、図2は図1に示した紫外線照射装置UVAのII−II矢印水平断面図である。なお、図1は、図2におけるI−I矢印線に沿って切った装置の断面図を示している。
【0016】
まず、本実施形態に係る製造方法によって製造される光ファイバFについて説明する。
【0017】
本実施形態において、光ファイバ素線は裸光ファイバF1と、その表面を被覆している被覆層C1,C2とを含んで構成されている。裸光ファイバF1は、プリフォームを線引きして形成されたガラスファイバである。被覆層C1,C2は、紫外線が照射されると硬化する紫外線硬化型樹脂からなり、裸光ファイバF1の表面を保護する機能を有している。なお、被覆層C1,C2は、裸光ファイバに隣接している内層(プライマリ樹脂)C1と、その内層C1を取り巻く外層(セカンダリ樹脂)C2の2層から構成されている。
【0018】
本実施形態において、被覆層C1,C2が顔料・染料などで着色されている場合には、識別性を付与する機能を有することもできる。また、被覆層C2の外側に紫外線硬化型樹脂からなる着色層が設けられることもある。
【0019】
内層C1及び外層C2に含めることができるラジカル系光重合開始剤の一例は、以下の通りであり、これらの光重合開始剤は、いずれか単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
(1)イルガキュア907:(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)
(2)イルガキュア819:(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)
各光重合開始剤の化学構造式を図11(イルガキュア907:以下、I−907)、図12(イルガキュア819:以下、I−819)にそれぞれ示す。なお、「イルガキュア」は登録商標であり、上記光重合開始剤はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製のものである。
【0020】
上述のラジカル系光重合開始剤と共に、内層C1及び外層C2に含有される樹脂材料の一例は以下の通りである。
(内層C1)
内層C1には、軟質(ヤング率が1kg/mm以下のものを言う)の紫外線硬化型樹脂を用いることが望ましい。内層樹脂には、ポリエーテル系或いはポリエステル系ウレタンアクリレートの使用が好ましく、必要に応じて反応性希釈モノマーを含んでも良い。反応性希釈モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等の化合物が挙げられ、これらは1種使用しても良いし、2種以上併用しても良い。内層C1のヤング率は、例えば紫外線硬化型樹脂のポリエーテル部分の分子量及び希釈モノマーの種類により調整する。即ち、内層C1は、ポリエーテル部分の分子量を大きくすること、または直鎖状の分子量の大きな単官能希釈モノマーを選定することでヤング率を小さくすることが出来る。
(外層C2)
外層C2には、硬質(ヤング率が10kg/mm以上のものを言う)の紫外線硬化型樹脂を用いることが望ましい。外層樹脂には、ポリエーテル系或いはポリエステル系ウレタンアクリレートの使用が好ましく、必要に応じて反応性希釈モノマーを含んでも良い。
反応性希釈モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等の化合物が挙げられ、これらは1種使用しても良いし、2種以上併用しても良い。外層C2は、ポリエステル又はポリエーテル部分の分子量を小さくすること、ウレタン基濃度を上げること、またはベンゼン環等の剛直な分子構造を有するモノマーや多官能モノマーを選定することでヤング率を大きくすることが出来る。
【0021】
図1を参照すると、紫外線照射装置UVAは、(管)包囲管31、複数の半導体発光素子35からなる紫外線光源、集光レンズ34、放熱金属板33M及び放熱フィン33Fを備えている。包囲管31の形状は円筒状であり、半導体発光素子35を固定するためのマウント基台36が、放熱フィン33Fの内壁に固定されている。包囲管31は、その長手方向が光ファイバF1の走行方向に一致するように配置されている。そして、2種類の樹脂が内層C1及び外層C2として塗布された光ファイバF1が包囲管31の中心軸に沿って移動する。
【0022】
包囲管31の材料は、遮光性を有する金属から構成することもできる。包囲管31としては、本例では、紫外線透過用の貫通孔を側面に有する金属管(例:ステンレス鋼(SUS))であるとする。本例では、半導体発光素子35は、包囲管31の周囲に配置され、その貫通孔を介して包囲管31の内部に紫外線UVが入射し、光ファイバF上に照射される。
【0023】
なお、包囲管31の材質は、100℃くらいの温度に耐えられるものであれば、金属、樹脂、セラミクスなど特に限定されないが、紫外線を吸収せず温度が上昇しないものが好ましい。安価であることと加工性が容易であることからステンレス鋼などを使用するのが好ましい。
【0024】
なお、光ファイバFの周囲すべての紫外線硬化型樹脂を硬化させるには、光ファイバFの周囲の複数箇所(3箇所以上)に半導体発光素子35を配置して紫外線UVを照射する必要があり、本形態は半導体発光素子35を配置するための基材を包囲管31とした。円筒形の包囲管31には複数の貫通孔が開けられ、これらの貫通孔の開口部に半導体発光素子35が取り付けられている。集光レンズ34の取り付け位置は、包囲管31の内壁面、外壁面、貫通孔の内面のいずれであってもよい。
【0025】
包囲管31として透明な石英管を用い、石英管の外に半導体発光素子35及び集光レンズ34を含む光源を配置し、石英管を通して紫外線を光ファイバに照射する構成の場合、光源位置が光ファイバから遠くなる。これに対して、複数の貫通孔が形成された包囲管31を用いると、光源を光ファイバFに近づけることができるため、装置の径方向の寸法を小型化することができる点で有利である。
【0026】
また、UV−LED自体が発熱するものであるのでUV−LEDをライン状に並べるとその発熱により封止樹脂やキャビティが高温劣化を引き起こすという問題があるが、本発明では集光レンズ34を含めた紫外線光源の表面を後述のガス流が通るので、このガス流によっても半導体発光素子35が冷却され、温度が上がりすぎることがないため、半導体発光素子35の寿命が更に延びることとなる。
【0027】
また、紫外線光源を複数段密に配置すれば硬化に要する装置の長さ(高さ)を短くすることができ、短くした長さの領域で光ファイバの冷却を行うことができる。この冷却長が長くなることで線速を速くすることができるため、生産性が向上する。
【0028】
また、包囲管31内を冷却するため、包囲管31内に不活性ガスが矢印GINで示すように導入され、包囲管31内を通って、矢印GOUTで示されるように包囲管31から排気される。この不活性ガスとしては、例えば窒素ガスが安価にて用いられる。
【0029】
また、包囲管31内に不活性ガスを導入すると、以下のような二次的な効果も生じる。
【0030】
まず、包囲管31内に不活性ガスを導入すると、内部の酸素が追い出され、樹脂の表面の硬化が促進される。紫外線硬化型樹脂が硬化するときに雰囲気中の酸素濃度が0.5(vol%)以上となると、紫外線硬化型樹脂の硬化が不十分となる。したがって、光ファイバに塗布された紫外線硬化型樹脂を硬化するときは、その周囲の酸素濃度を下げるために窒素などのガスが流される。このガスに含まれる酸素含有率は0.5Vol%未満であり、これにより、樹脂表面の硬化阻害作用が抑制される。なお、酸素により硬化が阻害される樹脂は、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン系、等の光重合開始剤を含むラジカル重合系樹脂である。
【0031】
次に、包囲管31内に窒素などの不活性ガスを流すことによって、樹脂の揮発成分を除去することができるので、集光レンズ34の表面の汚れや曇りを防止することができる。すなわち、樹脂に紫外線を照射すると、硬化反応熱や輻射熱によって樹脂の低分子量成分が揮発し、この揮発成分が集光レンズ34に付着して硬化し、これらが曇り、紫外線が遮られてしまう傾向がある。
【0032】
この場合、紫外線硬化型樹脂に届く紫外線量(パワー)が減り紫外線硬化型樹脂が十分硬化しなくなる。したがって、揮発分が集光レンズに付着する前に除去する必要がある。これらの理由から光ファイバを管に通して、その管の中に窒素ガスなどを流す。本形態では、このような不活性ガスにより揮発成分を除去することができる。
【0033】
本形態では、光ファイバFの周囲にガスが流れているので、揮発分が樹脂から出てくればすぐにガス流とともに除去される。包囲管31中にガスを流しているのでガスが拡散することもなく一定の流れとなり揮発分が効率的に除去される。
【0034】
更に、不活性ガスの流れを層流に近づけることによって、包囲管31内での光ファイバの振動を抑制することも可能となる。
【0035】
包囲管31の図面上側に位置する塗布装置側の端部には、不活性ガスを矢印GINの方向に導入するためのガス導入口が形成されている。ガス導入口にはガス導入管INAが接続されており、不活性ガスがガス導入管INAを介して包囲管31内に導入される。また、ガス導入管INAが接続されている端部と反対側の包囲管31の端部には、ガス排出口が形成されている。ガス排出口にはガス排出管OUTAが接続されており、不活性ガス及び揮発した樹脂の成分がガス排出管OUTAを介して排出される。
【0036】
紫外線光源を構成する半導体発光素子35としては、紫外線レーザダイオード(UV−LD)又は紫外線発光ダイオード(UV−LED)が用いられる。半導体発光素子35は、例えば図示しない制御装置に電気的に接続され、該制御装置により半導体発光素子35への供給電力が制御されても良い。半導体発光素子35の前面には集光レンズ34が固定されており、好ましくは2層の樹脂被覆上でスポット径φ1mm程度、または1mm幅×12mm長くらいのラインビーム形状に集光される。紫外線硬化型樹脂を硬化するためには、照射する紫外線の照射強度が5000〜7000mW/cmであることが好ましい。
【0037】
半導体発光素子35は、自身の発熱によりかなりの高温(〜100℃)となり、高温劣化により照射強度が低下し、且つ自身の寿命を大きく減少させる。これを防ぐため、半導体発光素子35は、これが固定されるマウント用基台36、及び基台36に固定された放熱金属板33Mを介して、放熱フィン33Fに熱的に接続されている。放熱フィン33Fは、必要に応じて水冷してもよい。なお、放熱金属板33M、放熱フィン33F及び基台36に用いることができる金属としては、CuやAlが列挙される。放熱フィン33Fにより、半導体発光素子35において発生した熱を、マウント用基台36及び放熱金属板33Mを介して奪い、半導体発光素子35の温度を約50℃に保持することが可能となる。これにより、半導体発光素子35も長寿命化する。
【0038】
放熱フィン33Fは紫外線が照射される向きとは反対に取り付け、包囲管31の外に出るように取り付ける。包囲管31の外壁が薄い場合には、図示の如く放熱フィン33Fは、包囲管31の周囲に放射状に広がる。包囲管31の外壁が厚い場合には、紫外線光源の全体が包囲管31内に埋め込まれるようになるが、この場合には、包囲管31の貫通孔を介して、放熱フィン33Fが包囲管31の外に露出するように構成する。包囲管31に開けた貫通孔から内部を流れるガスが漏れないように、包囲管31に設けられた貫通孔と集光レンズ34との間は樹脂等で密封するのが好ましい。
【0039】
半導体発光素子35であるUV−LEDは、単一で狭い(±5nm)発光波長を有するが、本システムの紫外線照射装置UVAには、発光スペクトルのピーク値を与える波長(中心波長)が異なる2種類以上の半導体発光素子35を、一つの紫外線照射装置UVAに同時に搭載している。例えば、図面の上から奇数番目の半導体発光素子35の発光スペクトルが第1の発光スペクトルであり(第1の半導体発光素子)、偶数番目の半導体発光素子35の発光スペクトルが第2の発光スペクトルである(第2の半導体発光素子)。なお、複数の紫外線照射装置UVAを光ファイバの走行方向に沿って配置した場合には、第1の紫外線照射装置UVAに、第1の半導体発光素子35を搭載し、第2の紫外線照射装置UVAに、第2の半導体発光素子35を搭載してもよい。
【0040】
より具体的には、第1及び第2スペクトルのピーク値を与える波長λ1、λ2は、それぞれ、紫外線硬化型樹脂に含まれる光重合開始剤の吸収スペクトルのピーク値を与える波長λ3±10nmの範囲内、又は吸収スペクトルのショルダー値を与える波長λ4±10nmの範囲内に存在する。すなわち、これらは以下の関係式を有している。
・λ3−10nm≦λ1≦λ3+10nm
・λ3−10nm≦λ2≦λ3+10nm
・λ4−10nm≦λ1≦λ4+10nm
・λ4−10nm≦λ2≦λ4+10nm
図9は、光重合開始剤の種類と、ピーク値を与える波長λ3及びショルダー値を与える波長λ4を示す表である。
【0041】
なお、実用的には、ピークの波長が365nmより長波長側のLEDを用いた場合、発光出力が大きくなる。
【0042】
例えば、樹脂中に光重合開始剤としてI−819が用いられている場合、その吸収波長のピーク位置λ3は280〜300nm、ショルダー位置λ4は365nmであるから、半導体発光素子35としては、(A)290±10nm、(B)365±10nmの範囲に発光波長のピーク位置λ1、λ2を有する2種類のUV−LEDを用いればよい。
【0043】
このようなUV−LEDは、以下のような材料から構成することができる。
(A)290nm±10nm
活性層:InAlGaN、InGaN、AlGaN、GaN、C、等
基板:Al、GaN、SiC、Si、等
(B)365nm±10nm
活性層:InAlGaN、InGaN、AlGaN、GaN、C、等
基板:Al、GaN、SiC、Si、等
また、内層C1および外層C2の樹脂中にI−819という光重合開始剤が用いられている場合には、中心波長λ1、λ2が、それぞれ(C)365±5nm及び(D)395±5nmのLEDを使用してもよい。
【0044】
このようなUV−LEDは、以下のような材料から構成することができる。
(C)365nm±5nm
活性層:InAlGaN、InGaN、AlGaN、GaN、C、等
基板:Al、GaN、SiC、Si、等
(D)395nm±5nm
活性層:InAlGaN、InGaN、AlGaN、GaN、C、等
基板:Al、GaN、SiC、Si、等
上述のように、一つのLEDから出る波長の幅が狭いので、一種類のLEDを使用するのでは樹脂の硬化性が不十分であるが、二種類以上のLEDを使用して紫外線硬化型樹脂の吸収ピーク波長の近くのある程度幅のある波長の光を照射すると、紫外線硬化型樹脂を十分に硬化させることができる。
【0045】
半導体発光素子35は、樹脂が塗布された光ファイバを中心として複数個配置されている。外層C2上でスポット径φ1mm程度または1mm幅×12mm長くらいのラインビーム形状に集光するので、光ファイバの周囲全てに紫外線を照射するには、周囲方向に複数点から紫外線を照射する必要がある。例えば、図1に示した例では、1つの水平面内において、3個の半導体発光素子35が配置される(図2参照)。なお、水平面は光ファイバの走行方向(長手方向)に垂直である。この3個の光源を1セットとし、一つの紫外線照射装置UVAには、光ファイバの走行方向に沿って数セットの光源が並べて配置されている。
【0046】
図1には、5セットの光源が描かれているが、セット数は照射される紫外線エネルギーの総量により決定される。5セットとは限らない。これより多くのセット数を並べても、少ないセット数を並べても構わない。2種類以上の紫外線光源を一つの紫外線照射装置に同時に搭載する場合には、このセット毎に、発光波長のピーク位置が異なる紫外線光源を交互に並べて配置することができる。
【0047】
反対側の半導体発光素子35に紫外線UVが当たると、その半導体発光素子35の温度が上昇したり、不要な発振が生じることで、照射量が減り、かつ寿命が短くなるので、好ましくない。そこで、図2に記載のように、光ファイバを挟んで反対側に半導体発光素子35が位置しないように、半導体発光素子35を配置する。例えば図2のように、1つの水平面内において、120°間隔で半導体発光素子35を配置する。すなわち、紫外線UVの出射方向は、水平面内において、120度の角度を成している。換言すれば、1つの水平面内の第1、第2及び第3の半導体発光素子35は、自身以外の半導体発光素子35の光出射面に向けて紫外線を出射しないように配置されている。
【0048】
半導体発光素子の集光スポット径は1mmであり、これは光ファイバの直径よりも大きく、包囲管の反対側に一部分の紫外線が到達するが、かかる配置により、半導体発光素子の寿命を延ばすことができる。
【0049】
図3は、上記光源の分解斜視図である。
【0050】
長方形のセラミクスからなるマウント基台36は、すり鉢状の凹部を有しており、この凹部の底面上に半導体発光素子35が固定されている。半導体発光素子35上には、半導体発光素子35を収容する凹部を有する集光レンズ34が設けられており、集光レンズ34はマウント基台36の凹部内に嵌っている。マウント基台36の凹部の内面には必要に応じてAgやAlなどからなる反射膜が形成されることが好ましい。
(第2実施形態)
図4は、線引き時の光ファイバの走行方向に沿った紫外線照射装置UVAの縦断面図であり、図5は図4に示した紫外線照射装置UVAのV−V矢印水平断面図である。なお、図4は、図5におけるIV−IV矢印線に沿って切った装置の断面図を示している。
【0051】
この実施形態に係る装置の第1実施形態の装置との相違点は、半導体発光素子35の配置のみである。図5に示した例では、1つの水平面内において、4個の半導体発光素子35が配置される。この4個の光源を1セットとし、一つの紫外線照射装置UVAには、光ファイバの走行方向に沿って数セットの光源が並べて配置されている。
【0052】
図4には、5セットの光源が描かれているが、セット数は照射される紫外線エネルギーの総量により決定される。5セットとは限らない。これより多くのセット数を並べても、少ないセット数を並べても構わない。2種類以上の紫外線光源を一つの紫外線照射装置に同時に搭載する場合には、このセット毎に、発光波長のピーク位置が異なる紫外線光源を交互に並べて配置することができる。
【0053】
反対側の半導体発光素子35に紫外線UVが当たると、その半導体発光素子35の温度が上昇したり、不要な発振が生じることで、照射量が減り、かつ寿命が短くなるので、好ましくない。そこで、図4に記載のように、半導体発光素子35を水平面に対して傾けて、反対側の半導体発光素子35に紫外線UVが当たらないようにしてある。換言すれば、図5に示したように、1つの水平面内の第1、第2、第3及び第4の半導体発光素子35は、自身以外の半導体発光素子35の光出射面に向けて紫外線を出射しないように配置されている。
【0054】
次に、本実施形態に用いられる光ファイバ素線の製造装置について図6及び図7を用いて説明する。なお、図6又は図7において、符号6,7,10,11,12は紫外線照射装置を示しており、図1又は図4に示した紫外線照射装置UVAは、これらの紫外線照射装置の代表として示されている。
【0055】
図6は、光ファイバ素線を製造する第1の製造装置を示す図である(タンデムコーティング方式)。
【0056】
この製造装置は、プリフォーム1を収容する線引炉2、強制冷却装置3、外径測定器4、第1の塗布装置5、紫外線照射装置6,7、外径測定器8、第2の塗布装置9、紫外線照射装置10,11,12、外径測定器13、気泡センサ14、ガイドローラ15、キャプスタン16、巻き取りボビン17を、光ファイバの通過経路に沿う順番に備えている。
【0057】
図7は、光ファイバ素線を製造する第2の製造装置を示す図である(デュアルコーティング方式)。
【0058】
この製造装置は、プリフォーム1を収容する線引炉2、強制冷却装置3、外径測定器4、第1の塗布装置5、第2の塗布装置9、偏肉測定器20、紫外線照射装置6,7,10,11、外径測定器13、気泡センサ14、ガイドローラ15、キャプスタン16、巻き取りボビン17を、光ファイバの通過経路に沿う順番に備えている。
【0059】
上述の製造装置においては、プリフォーム1から引き出された光ファイバFの走行方向は鉛直方向に設定されている。線引炉2は、石英ガラスを主成分とするプリフォーム1を線引きして裸光ファイバF1(光ファイバF)を形成するための装置である。線引炉2は、線引炉2内にセットされるプリフォーム1を挟んで(或いは囲んで)配置されるヒーターを有している。プリフォーム1は、その端部がヒーターにより加熱されて溶融し、線引きされて光ファイバFとなる。線引きされた光ファイバFは、所定の走行方向に沿って移動する。
【0060】
強制冷却装置3は、線引きされた光ファイバFを冷却するための装置である。強制冷却装置3は、光ファイバFを十分に冷却するために所定の走行方向に沿って所定の長さを備えている。強制冷却装置3は、光ファイバFを冷却するために例えば図示しない吸気口及び排気口を備え、この吸気口及び排気口から冷却用ガスを導入することによって光ファイバFを冷却する。
【0061】
塗布装置5,9は、裸光ファイバに樹脂を塗布するための装置である。塗布装置5,9には紫外線によって硬化する2種類の液状の樹脂が保持されており、塗布装置の樹脂中を裸光ファイバが通過することによって裸光ファイバの表面に内層樹脂(プライマリ樹脂5A)と外層樹脂(セカンダリ樹脂9A)が塗布される。
【0062】
図6に示した例では、これらの樹脂が異なる時期に塗布してから順次硬化され(タンデムコーティング)、図7に示した例では、これらの樹脂が同時に塗布されてから同時に硬化される(デュアルコーティング)。但し、タンデムコーティング方式の場合はデュアルコーティング方式に比べてスペース効率が悪くなる。
【0063】
紫外線照射装置6,7,10,11,12は、裸光ファイバの表面に塗布された2種類の樹脂に紫外線を照射して硬化させるための装置である。表面に2種類の樹脂が塗布された裸光ファイバが紫外線照射装置を通過することによって、裸光ファイバ及び2層の被覆層を有する光ファイバ素線が形成される。
【0064】
ガイドローラ15は、2種類の樹脂が塗布された光ファイバが所定の走行方向に沿って移動するように光ファイバを案内するための装置である。光ファイバ素線は、ガイドローラ15により走行方向が変更されて、キャプスタン16に引き取られ、巻き取りボビンへ17送られる。巻き取りボビン17は、完成した光ファイバ素線を巻き取るための装置である。
【0065】
上述の構成では、樹脂被覆の表層部から内部まで十分な硬化特性を持たせることが可能となり、ファイバの品質を良好に保つことができる。特に、短波長側の紫外線が樹脂表面の硬化を促進する。例えば、光重合開始剤がI−819の場合、280〜300nmの範囲内にピークを有する紫外線を各半導体発光素子から照射すると、紫外線硬化型樹脂の表面がまず硬化する。先に表面を硬化させて、その後に別の紫外線照射装置で、例えば、365±10nmの範囲内にピークを有する紫外線を各半導体発光素子から照射し、紫外線硬化型樹脂の内部を硬化させることができる。
【0066】
樹脂の表面が硬化していればガイドローラで方向を光ファイバの走行方向を変えることができるので、後から紫外線を照射する紫外線照射装置は、図6又は図7において縦に並んでいる紫外線照射装置10,11,(12)の一部を、ガイドローラ15の下流でキャプスタン16の直前までに、配置することができる。例えば、図6のタンデムコート型のシステムの場合、紫外線照射装置10,11,12の一部をガイドローラ15の下流に設置すると、その分のスペースは冷却装置を延長するなど光ファイバの冷却にあてることができ、冷却長を延長することにより、光ファイバの線速を上げることができる。
【0067】
また、紫外線照射装置は、光ファイバの樹脂被覆層の硬化状態に応じて何台使用しても良い。また、図6及び図7では光ファイバの線引の例を示したが、ボビンに巻き取られた光ファイバを繰り出して、その上にさらに紫外線硬化型樹脂を被覆する場合も、紫外線を照射して前記紫外線硬化型樹脂を硬化することは同様にできる。
【0068】
また、上述のように、実施形態にかかる光ファイバの被覆形成方法は、紫外線硬化型樹脂が塗布された光ファイバに対して紫外線を照射して硬化させる光ファイバの被覆形成方法において、紫外線硬化型樹脂に、ピーク波長の異なる少なくとも2種類の紫外線を照射する工程とを備えており、紫外線硬化型樹脂の硬化が促進される。ピーク波長の異なる2種類の紫外線は、同時に照射されることが好ましいが、別々に照射されてもよく、また、連続光であっても、パルス光であってもよい。なお、パルス光の場合には、各パルスの紫外線照射タイミングをずらすことも可能である。
【0069】
以下実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
図1の紫外線照射装置を用いたデュアルコーティング方式の線引法により、二層被覆光ファイバを製造した。得られた二層被覆光ファイバは、外径125μmφのガラスファイバ外周に、内層200μmφ、外層240μmφの二層の紫外線硬化型樹脂を塗布硬化させた。
【0071】
内層樹脂に含まれる光重合開始剤はI−819の一種類、外層樹脂に含まれる光重合開始剤も、I−819の一種類を用いた。これらの被覆樹脂の組合せに対して、紫外線光源として、一つの紫外線照射装置に紫外線発光ダイオード(UV−LED)を2種用いて硬化させた。すなわち、内層及び外層樹脂に含まれる光重合開始剤の吸収波長のピーク位置、又はショルダー位置の前後±10nmの範囲に入る発光波長のピーク位置を持つ2種類の紫外線光源を採用した(例:355nm,365nm)。
【0072】
包囲管の材質はステンレス鋼であり、包囲管の内径は30mm、長さは250mmである。包囲管内に導入される冷却用の不活性ガスとしては窒素ガスを用いた。その際の硬化性を表面摩擦力にて評価した。内層及び外層の樹脂の材料としては、それぞれウレタンアクリレートを用いた。
【0073】
ここで、表面摩擦力の測定方法について説明する。
【0074】
図8は表面摩擦力の測定工程を示す模式図である。先ず、直径6mmの円柱状の棒100に、図7に示す製造装置で製造された光ファイバ素線Fの一部を100回密に1層巻き付け、ファイバ群FBを形成する。光ファイバ素線Fの他の部分(長さ約1000mm)を、光ファイバ素線Fが巻かれた棒100と滑車101とにかける。この際、滑車101と棒100とは、それらの間の光ファイバ素線がほぼ水平になるように配置しておく。また、滑車101と棒100とに掛けられた光ファイバ素線の一端にはロードセル102を取り付け、他端には約3.4gの重り103を取り付ける。重り103が付けられてつり合っている状態で、ロードセル102に係る荷重を基準値としてのゼロとする。次に、500mm/min.の速さで矢印Mに沿ってロードセル102を200mm引き上げる(この際、重りも引き上げられる)。
【0075】
この時、ロードセル102で測定される荷重を0.02秒間隔で取得する。ロードセル102が20mmから120mmまで移動する間に取得されたデータを、ロードセル102の移動距離10mm毎に、10の区間に分け、それらの区間の最大値を平均して被覆層の表面摩擦力、言い換えれば光ファイバ素線の表面摩擦力とする。この値が0.4Nより大きい場合、樹脂(表面)は未硬化になる傾向があり、良品の光ファイバを製造しにくくなる場合が生じやすい。表面摩擦力が0.4Nより大きいと、ボビンに巻かれた状態で光ファイバ同士がくっついて、ボビンから光ファイバを繰り出せなくなることがある。0.4N以下ではそういう問題がない。また0.2Nより小さい場合も、必要以上に紫外線が樹脂に照射されているため、石英管内に曇りが生じやすくなる。これらの結果を図10に示す。
【0076】
図10に示す図表の結果から明らかなように、内壁に紫外線光源を配置した円筒管内部に不活性ガス層流を流すと(実施例1、実施例2)、0.2Nと表面摩擦の好ましい被覆が形成されていた。また、紫外線光源の温度も下げることが出来た。紫外線光源であるLEDの寿命は、LEDの温度が70℃であれば10000時間、LEDの温度が50℃であれば30000時間(推定)であるので、放熱フィンがある場合(実施例1)は、紫外線光源の寿命が30000時間以上であり、放熱フィンなしの場合(実施例2)は10000時間〜2000時間程度であると推定される。なお、上記の寿命とは照度変化率が初期の−20%になるまでの時間である。
【0077】
それに対し、不活性ガス層流無しの場合(比較例)、光ファイバを製造している間に、揮発成分が紫外線光源(集光レンズ)に付着して紫外線光源の表面が揮発成分の付着で曇ったために、照射強度が減少し、100km線引した時点で紫外線硬化型樹脂が硬化不十分となり、表面摩擦は0.6N以上となった。
【0078】
なお、光重合開始剤の吸収波長のピーク位置、又はショルダー位置±10nmの範囲に入る発光波長のピーク位置を持つ1種類の紫外線光源を採用した場合(例:365nm)、ガス流を流した場合においても、表面摩擦力はやはり0.6Nとなった。この場合は線引き開始時点から硬化不十分であった。
【0079】
また、LEDが向き合わないように、光ファイバの周囲方向の120°間隔で配置し、かつ放熱フィンがあることにより、紫外線光源の温度は100℃以上から約50℃にまで冷却されており、高温による劣化を防ぎ、照射強度の低下(寿命の低下)を抑制できた。すなわち、UV−LDやUV−LEDなどの光源を樹脂部材内に封止している場合、光源自体が高温になるため、これを封止している樹脂部材やキャビティが劣化し、UV光の光ファイバ被覆樹脂への照射強度が低下し、しがたって、UV光硬化型樹脂の光硬化性が低下するが、上記冷却構造を採用することで、この高温化によるUV−LED自体の寿命の低下を抑制することができる。特に、本実施形態では、複数のUV−LEDが、自身以外の半導体発光素子の光出射面に向けて紫外線を出射しないように、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射しているので、その温度上昇などが抑制されている。
【0080】
本例では、半導体発光素子は1段に3個のセットを5段有し、合計15個の半導体発光素子を使用しているが、図4に示すように1段に4個の半導体発光素子セットを4段有する構造にして、合計16個の半導体発光素子を使用しても略同様の結果が得られる。
【0081】
上記実施例では、一つの紫外線照射装置に複数の発光波長のピークを持つ紫外線発光ダイオードを搭載する場合を説明したが、紫外線照射装置毎に異なる発光波長のピークを持つ紫外線発光ダイオードを搭載することも出来る。また、UV−LEDに代えて、UV−LDを用いることも可能である。また、被覆された光ファイバの上にさらに樹脂を被覆する場合にも上記形態を適用することが可能である。さらに、光ファイバを束ねてテープ化する場合の樹脂被覆にも上記形態は適用することができる。このように、上記光ファイバは、素線に限らず、オーバーコートされてなる光ファイバ心線や、樹脂被覆された光ファイバなどの多様な形態の光ファイバを含んでいる。一旦、巻き取った光ファイバを再度繰り出して、樹脂被覆を行う場合にも、上述の装置は適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】線引き時の光ファイバの走行方向に沿った紫外線照射装置UVAの縦断面図である。
【図2】図1に示した紫外線照射装置UVAのII−II矢印水平断面図である。
【図3】光源の分解斜視図である。
【図4】線引き時の光ファイバの走行方向に沿った紫外線照射装置UVAの縦断面図である。
【図5】図4に示した紫外線照射装置UVAのV−V矢印水平断面図である。
【図6】光ファイバ素線を製造する第1の製造装置を示す図である。
【図7】光ファイバ素線を製造する第2の製造装置を示す図である。
【図8】表面摩擦力の測定工程を示す模式図である。
【図9】光重合開始剤の種類と、ピーク値を与える波長λ3及びショルダー値を与える波長λ4を示す図表である。
【図10】実験結果を示す図表である。
【図11】化学構造式を示す図である。
【図12】化学構造式を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
F1・・・光ファイバ、C1・・・内層、C2・・・外層、35・・・半導体発光素子、34・・・集光レンズ、36・・・基台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの表面に塗布された紫外線硬化型樹脂に、紫外線を照射して前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線照射装置において、
前記光ファイバを囲むと共に内部にガスが流れる管と、その管の側面に設けられた紫外線透過用の貫通孔を通して、前記紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射可能な位置に設けられた少なくとも第1及び第2半導体発光素子とを備え、
前記第1及び第2半導体発光素子は紫外線を発し、それらのピーク波長が異なる、
ことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記第1及び第2半導体発光素子は、放熱フィンに熱的に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記第1及び第2半導体発光素子は、自身以外の半導体発光素子の光出射面に向けて紫外線を出射しないように配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
紫外線硬化型樹脂が塗布された光ファイバに対して紫外線を照射して硬化させる光ファイバの被覆形成方法において、
前記光ファイバに前記光ファイバを囲む管を通過させつつ、前記管内にガスを供給すると共に、第1及び第2半導体発光素子が、前記紫外線硬化型樹脂に、ピーク波長の異なる紫外線をそれぞれ照射する工程、
を備えることを特徴とする光ファイバの被覆形成方法。
【請求項5】
前記ガスに含まれる酸素含有率が0.5Vol%未満である、
ことを特徴とする請求項4に記載の光ファイバの被覆形成方法。
【請求項6】
前記第1及び第2半導体発光素子は、放熱フィンに熱的に接続されていることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の光ファイバの被覆形成方法。
【請求項7】
前記第1及び第2半導体発光素子は、自身以外の半導体発光素子の光出射面に向けて紫外線を出射しないように、前記紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射することを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の光ファイバの被覆形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−117527(P2010−117527A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290306(P2008−290306)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】