説明

紫外線硬化性樹脂組成物及びこれを用いた複合シート

【課題】紫外線硬化性樹脂層と基材層との密着性に優れるとともに、耐候性に優れ、長期に亘って紫外線硬化性樹脂層が基材層から剥離することのない紫外線硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】紫外線硬化樹脂と紫外線硬化触媒と紫外線吸収剤とからなり、前記紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長が、前記紫外線吸収剤の光透過曲線における波長340nmから400nm領域の微分値の極大値を示す波長よりも長波長側に存在することを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を複層化して様々な機能を発揮させるために基材の表面に塗布される紫外線硬化性樹脂組成物及びこれを用いた複合シートに関し、更に詳しくは、紫外線硬化性樹脂組成物層と基材層との密着性及び耐候性、耐光性(以下、耐候性と耐光性を含めて耐候性と記す)を向上させることができる紫外線硬化性樹脂組成物、及び、紫外線硬化性樹脂組成物層と基材層との密着性及び耐候性に優れた複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂等の基材上に該樹脂の表面状態を改善あるいは保護あるいは複合機能を持たせたり、基材上の樹脂を機能的に応用する目的で、複層化することは広く行われている。典型的な例として、水分透過、ガス透過を制限する目的で、何層もの樹脂を複層化し、各層に特定の機能を働かせ、目的の物性を得ることは周知の技術である。
例えば、プラスチック、木材の表面処理分野においては、低粘度でありながら得られた硬化塗膜が耐水性や耐湿性に優れるコーティングに有用な活性エネルギー線硬化型組成物が開示されている(特許文献1)。また、メルカプトシラン処理されたコロイド状シリカ混合物が配合され、曲げ加工性を有する硬化塗膜を表面に形成できる紫外線硬化性被覆用組成物が開示されている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、このような複合シートでは、基材と塗膜の密着性や複合シートの耐候性が弱く、塗膜が剥がれることにより複合シートの機能が失われたり、見栄えが悪くなるという問題がある。特に、タッチパネルや携帯電話などのタッチボードなど、手指などで触れることを目的とする用途に使用する場合は、装置を操作するたびに塗膜が剥がれ落ちて、単に複合シートの機能が失われて見栄えが悪くなるというだけでなく、装置を操作した手指が汚れてしまう恐れがある。
【0004】
このような問題を解決する方法としては、ポリエステル基材上にアクリル樹脂を主成分とする積層膜を形成することで基材との接着性に優れた積層ポリエステルフィルム(特許文献3)や、硬化性組成物にオリゴマー型光重合開始剤を含有させることで、加熱時にハードコート層からガスが発生するのを防止し、ハードコート層と基材の密着性の悪化を防止したハードコートフィルムが開示されている(特許文献4)。
しかしながら、このような技術では、製造直後における層間の接着性は強いものの、長時間使用している間に接着力が低下し、表面層が基材層から剥がれ落ちてしまうというトラブルが避けられない。
【特許文献1】特開2001−323005号公報
【特許文献2】特許第3838242号公報
【特許文献3】特開2003−246023号公報
【特許文献4】特開2002−256092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる実情に鑑み、上記問題点を解決し、製造直後のみならず、長期間に亘って優れた密着性と耐候性を有する紫外線硬化性樹脂組成物及び該組成物を用いた複合シートを提供するものである。
【0006】
本発明者らは、長時間使用している間に表面層が基材層から剥がれ落ちる原因について研究したところ、使用している間に紫外線の照射により表面層と基材層の界面又は界面近傍の強度が低下し、接着性が悪化することが原因であることを知見した。
そこで、表面層を構成する樹脂に紫外線吸収剤を配合することを試みたが、この紫外線吸収剤が複合シ−トの製造時において紫外線硬化樹脂を重合・硬化させるために必要な紫外線まで吸収してしまうため、紫外線硬化樹脂を十分に重合・硬化させることができないことが判明した。
【0007】
そこで、本発明者らは、表面層として紫外線硬化樹脂を使用して、紫外線硬化樹脂を効率的に重合・硬化させることができるとともに、この紫外線硬化樹脂に紫外線吸収剤を配合して、この紫外線硬化樹脂を塗膜した基材層表面の劣化を防ぐという二律背反した課題を解決するべく鋭意研究の結果、紫外線硬化触媒が分解される波長と紫外線吸収剤に吸収される波長を異ならしめることにより、上記課題が解決され、紫外線硬化樹脂は速やかに重合・硬化するとともに、内部に含有された紫外線吸収剤が樹脂を劣化させる紫外線を吸収するため、長時間使用しても初期の優れた接着性を維持し、表面層の基材層からの剥離を防ぐことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の請求項1は、紫外線硬化樹脂と紫外線硬化触媒と紫外線吸収剤とからなり、前記紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長が、前記紫外線吸収剤の光透過曲線における波長340nmから400nm領域の微分値の極大値を示す波長よりも長波長側に存在することを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物を内容とする。
【0009】
本発明の請求項2は、紫外線硬化樹脂がエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートから選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物を内容とする。
【0010】
本発明の請求項3は、紫外線硬化触媒がアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエートから選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線硬化性樹脂組成物を内容とする。
【0011】
本発明の請求項4は、紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物を内容とする。
【0012】
本発明の請求項5は、紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長が315nm以上400nmにあり、紫外線吸収剤の光透過曲線における波長340nmから400nm領域の微分値の極大値を示す波長が385nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物を内容とする。
【0013】
本発明の請求項6は、請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長を含む紫外光を照射して前記紫外線硬化性樹脂組成物を重合・硬化してなることを特徴とする複合シートを内容とする。
【0014】
本発明の請求項7は、基材が透明又は半透明の樹脂からなることを特徴とする請求項6に記載の複合シートを内容とする。
【0015】
本発明の請求項8は、紫外線硬化性樹脂組成物の層の表面にエンボスにより装飾模様を設けたことを特徴とする請求項6又は7に記載の複合シートを内容とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長が、紫外線吸収剤の光透過曲線における波長340nmから400nm領域の微分値の極大値を示す波長よりも長波長側に存在するため、紫外線吸収剤は紫外線硬化触媒の分解反応に必要な紫外光を全て吸収するというようなことはなく、従って、紫外線硬化性樹脂組成物は紫外光照射により速やかに重合・硬化する。
また、硬化した組成物は、内部に含有されている紫外線吸収剤が光学的に有害な紫外線を吸収するため、長年使用しても基材との密着性を低下させることがなく、優れた密着性を維持させることができる。
【0017】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物においては、使用可能な紫外線硬化樹脂としてはエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートが好ましく、紫外線硬化触媒としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエートが好ましく、紫外線吸収剤としてはヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系のものが好ましい。
【0018】
紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長は315nm〜400nmが好ましく、また、紫外線吸収剤の光透過曲線における波長340nmから400nm領域の微分値の極大値を示す波長が385nm以下が好ましく、このような紫外線硬化触媒と紫外線吸収剤を使用することにより、紫外線吸収剤は紫外線硬化触媒の反応に必要な紫外線を吸収せず、その反応を妨げないので、紫外線硬化性樹脂組成物は波長が315〜400nmの紫外光の照射により、速やかに重合・硬化する。
【0019】
上記の紫外線硬化性樹脂組成物は基材上に塗布し、紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長を含む紫外光を照射すると、紫外線硬化性樹脂組成物が重合・硬化し、複合シートが得られる。重合・硬化したこの紫外線硬化性樹脂組成物層に含まれる紫外線吸収剤は、基材層との界面又は界面付近を劣化させる波長の紫外線を吸収するため、本発明の複合シートは長期に亘って製造直後の優れた密着力が維持するとともに、紫外線硬化性樹脂組成物層の基材層からの剥離が防止され、優れた耐候性を有する。
【0020】
基材が透明または半透明の樹脂からなる場合は、紫外線硬化性樹脂組成物を重合・硬化させる際の紫外光照射を基材層側からも行うことが可能であり、紫外線硬化性樹脂組成物層の重合・硬化をより効率的に行うことができる。
【0021】
この紫外線硬化性樹脂組成物の層にはエンボスにより装飾模様を設けることにより、装飾性に優れた複合シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化樹脂と紫外線硬化触媒と紫外線吸収剤とからなり、前記紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長が、紫外線吸収剤の光透過曲線における波長340nmから400nm領域の微分値の極大値を示す波長よりも長波長側に存在することを特徴とする。
【0023】
紫外線硬化樹脂としては、アクリレート又はメタクリレート(以下アクリレート及び/又はメタアクリレートを単にアクリレートと記載する場合がある)系官能基を持つものが好ましく、さらに好ましくは、エステルアクリレート、ウレタンアクリレート及びエポキシアクリレートが挙げられる。
【0024】
紫外線硬化樹脂として使用されるエステルアクリレートは、ポリエステル系ポリオールのオリゴマーのアクリレート、その混合物から構成される。
【0025】
ポリエステル系ポリオールのオリゴマーとしては、アジピン酸とグリコール(エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコールなど)やトリオール(グリセリン、トリメチロールプロピレンなど)、セバシン酸とグリコールやトリオールとの縮合生成物であるポリアジペートポリオールや、ポリセバシエートポリオールなどが挙げられる。これらは単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0026】
アクリレートを構成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0027】
また、紫外線硬化性樹脂組成物層にさらに硬度を付与するために、多官能モノマーを併用することができる。多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0028】
ウレタンアクリレートは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との縮合生成物であるウレタン系オリゴマーを、アクリレート化したものから構成される。なお、アクリレートを構成する単量体としては、上記のエステルアクリレートを構成するアクリレートと同様である。
【0029】
ポリオール化合物としては、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール、ポリアジペートポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリエステル系ポリオール、アクリル酸エステル類とヒドロキシエチルメタアクリレートとのコポリマーなどが単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0030】
ポリイソシアネート化合物としては、メチレン・ビス(p−フェニレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート・ヘキサントリオールの付加体、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート二量体、水添キシレンジイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオフォスフェートなどが単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0031】
エポキシアクリレートは、エポキシ樹脂とアクリル酸又はメタクリル酸との反応によって得られる。なお、アクリレートを構成する単量体としては、上記のエステルアクリレート、ウレタンアクリレートを構成するアクリレートと同様である。
【0032】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂及びその他のグリシジル化合物からなる樹脂が挙げられる。
フェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA又はビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応によって生じる樹脂様生成物であり、そして種々の分子量の液体及び固体樹脂を包含する、ある範囲の物質からなっている。好ましくは、300〜600の範囲に分子量を有するビスフェノールA−エピクロロヒドリンの液体縮合物である。
ノボラック型エポキシ樹脂は、アクリル酸又はメタクリル酸とエポキシ−ノボラック樹脂つまりエピクロロヒドリンとフェノール又はクレゾールホルムアルデヒド縮合物との反応によって得られる樹脂との反応生成物に適用することもでき、そして2個より多いエポキシ官能基をもった複数のグリシジルエーテル基を含有している。
【0033】
エピクロロヒドリンと脂肪族ジオール又はポリオールとの反応によって得られるジグリシジルエーテルから誘導される比較的低い粘度のエポキシアクリレートも、このエポキシアクリレートに包含される。アクリル酸又はメタクリル酸と反応できる材料の例には、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル及びブタンジオールジグリシジルエーテルが包含される。これらは単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0034】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物に配合される紫外線硬化触媒は、紫外光により分解されて紫外線硬化樹脂の重合・硬化反応の引き金になる物質であり、好ましいものとして、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエートのものが例示できる。紫外線硬化触媒の分解波長領域は、紫外線吸収剤との共存下で有効に分解し重合反応を開始させるとの観点から、やや長波長方向に偏っているもの、具体的には315〜400nm程度のものを使用するのが好ましい。
アセトフェノン類としては、具体的にはアセトフェノン、2, 2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2, 2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1, 1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンが挙げられ、また、ベンゾフェノン類としては、具体的にはベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4' −メチルジフェニルサルファイド、4, 4' −ビスメチルアミノベンゾフェノンが挙げられ、更に、チオキサントン類としては、2, 4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンが挙げられる。
また、必要に応じ、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルホスフィンなどを混合して使用することもできる。これらはそれぞれ単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
紫外線硬化触媒の使用量は、紫外線硬化樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜6重量部である。0.1重量部未満では重合・硬化速度が遅くなり、一方、10重量部を越えると耐油性等の物性が低下する傾向がある。
【0035】
本発明の紫外線硬化樹脂に配合される紫外線吸収剤は、樹脂を劣化させる紫外線を吸収することにより樹脂を保護するために配合する物質であり、好ましいものとして、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系のものが例示できる。
ヒドロキシフェニルトリアジン系としては、2, 4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2, 4−ビス−ブチロキシフェニル)−1, 3, 5−トリアジン、2−( 2ヒドロキシ−4−[ 1−オクチルオキシカルボニルエトキシ] フェニル) −4, 6−ビス(4−フェニルフェニル)−1, 3, 5−トリアジン、2−[ 4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル) オキシ] −2−ハイドロオキシフェニル] −4, 6−ビス(2, 4, −ジメチルフェニル)−1, 3, 5−トリアジン、2−[ 4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル) オキシ] −2−ハイドロオキシフェニル] −4, 6−ビス(2, 4, −ジメチルフェニル)−1, 3, 5−トリアジン、2−[ 4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル) オキシ] −2−ハイドロオキシフェニル] −4, 6−ビス(2, 4, −ジメチルフェニル)−1, 3, 5−トリアジンが挙げられ、またベンゾトリアゾール系としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)フェノールが挙げられ、更に、ヒンダードアミン系としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−[[3,5−ビス(1,1,−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル] メチル] ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートが挙げられる。
【0036】
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線硬化樹脂100重量部に対し、1〜50重量部、好ましくは2〜20重量部、より好ましくは4〜10重量部である。1重量部未満では樹脂の劣化防止効果が不十分となり、一方、50重量部を越えても樹脂の耐候性は余り変わらず、却って不経済であり、またブリードしたり物性を低下させる傾向がある。
【0037】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物には、必要に応じ、反応性希釈剤を用いることができる。このような反応性希釈剤としてはアリレートモノマーが好適で、一官能性のものとして、2−エチルヘキシルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、二官能性のものとして、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、多官能性のものとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられ、これらは単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。反応性希釈剤の使用量は、所望の粘度に応じ適宜決定される。
【0038】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物には、反応性有機ケイ素化合物を含ませることもできる。該反応性有機ケイ素化合物は、一般式、Rm Si(OR′)n で表わされる化合物であり、ここでR、R′は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+n=4であり、そしてm及びnはそれぞれ整数である。上記一般式で表される化合物は、透明性を保持したまま基材への密着性に優れたSiO2 ゲル膜となるので透明性を損なうことなく、耐擦傷性が向上するので好ましい。
【0039】
上記一般式で表される更に具体的な化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらは単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0040】
なお、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物には、前記の反応性有機ケイ素化合物の他に剥離性改良剤や老化防止剤等を配合してもよい。
また、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤等を含ませることもできる。
【0041】
上記した紫外線硬化性樹脂組成物は、基材上に塗布し、紫外線硬化触媒の分解波長領域の紫外光を照射して重合・硬化させて使用する。
基材としては特に限定されず、例えば、紙、木材、ガラス、金属、樹脂等が挙げられるが、特に樹脂が好適である。このような樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
なお、紫外線硬化性樹脂組成物の層は基材の片面だけに設けてもよいし、表裏両面に設けてもよい。
また、基材が透明または半透明である場合は、紫外線硬化性樹脂組成物の塗布面からだけでなく、裏面側、即ち、基材側からも紫外光を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を速やかに重合・硬化させることができるため好ましい。
【0042】
本発明における紫外線硬化性樹脂組成物層には、装飾模様を施すことができる。装飾模様を設ける方法は特に制限されず、印刷法、エンボス法等のいずれでもよいが、紫外線硬化性樹脂組成物層を重合・硬化させる工程で装飾模様を賦形できる点でエンボス法が好ましい。この場合、エンボス面は紫外線硬化性樹脂層面に当接するので、その反対側、即ち基材側から紫外光を照射するのが好ましく、従って、このような基材としては紫外光の透過を妨げない透明又は半透明の樹脂が好ましく、就中、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0043】
上記のようにして製造された複合シートは、紫外線硬化性樹脂組成物の層に含まれる紫外線吸収剤が基材樹脂を劣化させる波長の紫外線を吸収するため、耐候性が良く樹脂を劣化させないので、基材層と紫外線硬化性樹脂組成物層は初期の優れた密着力を維持し、長期に亘って紫外線硬化性樹脂組成物の基材層からの層剥離を防止することができる。
本発明の複合シートは、液晶表示装置、CRT表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置等の他、タッチパネル等の表示装置部品等の保護シート、装飾シートとして有用である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、部は特に断らない限り重量部を表す。
【0045】
実施例1
紫外線硬化樹脂としてウレタンアクリレート(NKオリゴUA−32P,新中村化学工業(株)製)64部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(NKエステルA−DPH、新中村化学工業(株)製)16部、反応性希釈剤としてアクリレートモノマー(NKエステルA−DPH、新中村化学工業(株)製)20部、紫外線硬化触媒として2,4,6,−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(DAROCUR TPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3部を配合した。更に、この配合物の中に紫外線吸収剤としてヒドロオキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN 400、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を樹脂100部に対して5部添加して紫外線硬化性樹脂組成物とした。この紫外線硬化性樹脂組成物を、厚さ100μmのポリエステル製基材(東レ社製、ルミラーU34)上に厚さ20μm(10g/m2 )になる様に塗布し、この塗布面に微細エンボス模様(深度10〜40μm、200本/inchの平行線集合単位を方向性を異にして隣接した水玉模様)の付いた金属ロールを押し当てながら、基材側から315〜400nmの紫外線を含む光線(光強度:約1100mJ/cm2 )を2.0秒照射して紫外線硬化性樹脂組成物を重合・硬化させ、複合シートを得た。
【0046】
実施例2
紫外線吸収剤の量を、紫外線硬化性樹脂組成物100部に対し10部とした以外は実施例1と同様にして複合シートを得た。
【0047】
実施例3
紫外線吸収剤の量を、紫外線硬化性樹脂組成物100部に対し3部とした以外は実施例1と同様にして複合シートを得た。
【0048】
比較例
紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線吸収剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして複合シートを得た。
【0049】
(碁盤目試験)
得られた実施例1〜3及び比較例の複合シートの紫外線硬化性樹脂組成物層の表面にカッターにより1mm×1mmのクロスハッチを100個入れ、その上に粘着テープ(ニチバン(株)製カートンNo.640、商品名:セロテープ(登録商標))を貼り付けた後、該粘着テープを剥がしたときに紫外線硬化性樹脂組成物層が基材に残った目の数を計測することで密着性を評価した。なお、密着性の評価は、紫外線硬化性樹脂組成物層の側から三共電気株式会社製UB−Bランプ(型名GL15E)の紫外線を20cmの距離から照射し、照射直前、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後のものについて行った。結果は表1に示す。
◎: 100/100
○: 99/100〜95/100
△: 94/100 〜 50/100
×: 49/100 〜 0/100
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
叙上のとおり、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物及びこれを使用した複合シートは、紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長が、紫外線吸収剤の光透過曲線における波長340nmから400nm領域の微分値の極大値を示す波長よりも長波長側に存在するので、製造時における紫外線硬化性樹脂組成物の重合・硬化が適切に行われるとともに、耐候性に優れており、樹脂の劣化を防ぐことができ、基材層と紫外線硬化性樹脂組成物層の間の密着力は製造時の良好な状態に保たれ、長時間使用しても紫外線硬化性樹脂組成物層が基材層から剥離することはない。従って、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物及びこれを使用した複合シートは、特に、タッチパネルや携帯電話のタッチボードなど、手指で触れることを目的とする分野等において頗る有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化樹脂と紫外線硬化触媒と紫外線吸収剤とからなり、前記紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長が、前記紫外線吸収剤の光透過曲線における波長340nmから400nm領域の微分値の極大値を示す波長よりも長波長側に存在することを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
紫外線硬化樹脂がエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートから選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
紫外線硬化触媒がアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエートから選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長が315nm以上400nmにあり、紫外線吸収剤の光透過曲線における波長340nmから400nm領域の微分値の極大値を示す波長が385nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、紫外線硬化触媒の光吸収曲線のひとつの極大値を示す波長を含む紫外光を照射して前記紫外線硬化性樹脂組成物を重合・硬化してなることを特徴とする複合シート。
【請求項7】
基材が透明又は半透明の樹脂からなることを特徴とする請求項6に記載の複合シート。
【請求項8】
紫外線硬化性樹脂組成物の層の表面にエンボスにより装飾模様を設けたことを特徴とする請求項6又は7に記載の複合シート。

【公開番号】特開2008−266409(P2008−266409A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109256(P2007−109256)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000166649)五洋紙工株式会社 (43)
【Fターム(参考)】