説明

終端回路、試験装置、テストヘッド、及び通信デバイス

【課題】終端のオーバーシュートを十分に低減する終端回路を提供する。
【解決手段】
本発明に係る終端回路は、入力信号が印加される終端の電位の変動を検知する電位変動検知部と、電位変動検知部が、終端の電位が上昇したことを検知した場合に、終端から電流を引き込むことにより、入力信号が印加されることによる終端のオーバーシュートを低減する第1電流発生部とを備え、電位変動検知部は、基準電位に基づいて比較電位を生成する比較電位生成部と、終端の電位の上昇にともなって上昇した比較電位と基準電位とを比較し、比較結果を出力する電位比較部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、終端回路、試験装置、テストヘッド、及び通信デバイスに関する。特に本発明は、終端のオーバーシュートを低減する終端回路、並びに当該終端回路を備える試験装置、テストヘッド、及び通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術に係る終端回路10の構成を示す。終端回路10は、アンプ18、抵抗22、及びコンデンサ24を備え、被試験デバイス(以下、「DUT」という。)12から試験装置のテストヘッドが有するコンパレータ14及び16に入力される入力信号のオーバーシュートを低減させる機能を有する。ここで、コンパレータ14及び16への入力電位VCPINは、理論的には、(((VDUT−Vtt)/(RDUT+Rterm))×Rterm)+Vttとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図1に示した終端回路10において、アンプ18の出力抵抗Rvttは有限である。そのため、アンプ18の周波数特性が高帯域にわたり、かつ、アンプ18が高利得である場合には、出力抵抗Rvttの影響を無視することができるが、アンプ18を一般的なオペアンプで構成した場合には、周波数特性がDUT12からの入力信号に比べて低く、コンパレータ14及び16への入力電位VCPINに影響を与えてしまう。一般的には、この対策として、コンパレータ14及び16の入力端とアンプ18の出力端との間と、グランド電位との間に、大きな容量Cvttを有するコンデンサ24を付加する。しかしながら、DUT12からの入力信号の周波数特性が高帯域である場合には、入力信号に追従してオーバーシュートを十分に低減させることができない。
【0004】
そこで本発明は、上記の課題を解決することができる終端回路、試験装置、テストヘッド、及び通信デバイスを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の形態によると、入力信号が印加される終端の電位の変動を検知する電位変動検知部と、電位変動検知部が、終端の電位が上昇したことを検知した場合に、終端から電流を引き込むことにより、入力信号が印加されることによる終端のオーバーシュートを低減する第1電流発生部とを備える。
【0006】
電位変動検知部は、基準電位に基づいて比較電位を生成する比較電位生成部と、終端の電位の上昇にともなって上昇した比較電位と基準電位とを比較し、比較結果を出力する電位比較部とを有し、第1電流発生部は、電位比較部が出力する比較結果に基づいて、終端から電流を引き込んでもよい。
【0007】
電位比較部が出力する比較結果に基づいて、比較電位が基準電位より大きい場合に、比較電位生成部の出力端から電流を引き込むことにより比較電位と基準電位とを等しくする第2電流発生部をさらに備えてもよい。
【0008】
比較電位生成部は、基準電位が非反転入力端子に入力され、比較電位生成部の出力電位である比較電位が反転入力端子に入力され、比較電位を基準電位と等しくするように動作してもよい。
【0009】
電位比較部は、基準電位が反転入力端子に入力され、終端の電位の上昇にともなって上昇した比較電位が非反転入力端子に入力され、第2電流発生部は、比較電位を基準電位と等しくする比較電位生成部の出力端から電流を引き込むことにより比較電位を降下させ、比較電位を基準電位と等しくしてもよい。電位比較部は、比較電位生成部より動作速度が高速であってもよい。比較電位生成部は、電圧出力型のアンプであり、電位比較部は、電流出力型のアンプであってもよい。
【0010】
本発明の第2の形態によると、被試験デバイスを試験する試験装置であって、被試験デバイスから入力される入力信号を予め定められた閾値電圧と比較するコンパレータと、コンパレータの入力端の電位のオーバーシュートを低減する終端回路とを備え、終端回路は、入力信号が印加されるコンパレータの入力端の電位の変動を検知する電位変動検知部と、電位変動検知部が、コンパレータの入力端の電位が上昇したことを検知した場合に、コンパレータの入力端から電流を引き込むことにより、入力信号が印加されることによるコンパレータの入力端のオーバーシュートを低減する第1電流発生部とを有する。
【0011】
本発明の第3の形態によると、入力信号を予め定められた閾値電圧と比較するコンパレータに、被試験デバイスから入力される入力信号を供給するテストヘッドであって、入力信号が印加されるコンパレータの入力端の電位の変動を検知する電位変動検知部と、電位変動検知部が、コンパレータの入力端の電位が上昇したことを検知した場合に、コンパレータの入力端から電流を引き込むことにより、入力信号が印加されることによるコンパレータの入力端のオーバーシュートを低減する第1電流発生部とを備える。
【0012】
本発明の第4の形態によると、通信デバイスは、入力信号が印加される終端の電位の変動を検知する電位変動検知部と、電位変動検知部が、終端の電位が上昇したことを検知した場合に、終端から電流を引き込むことにより、入力信号が印加されることによる終端のオーバーシュートを低減する第1電流発生部とを備える。
【0013】
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となりうる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る終端回路によれば、終端のオーバーシュートを十分に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に係る終端回路100の構成の一例を示す。また、図3は、本実施形態に係る終端回路100の終端の電位の変動の一例を示す。本実施形態においては、DUT102を試験する試験装置が備える終端回路100について説明する。終端回路100は、テストモジュールに設けられたコンパレータ104及び106に、DUT102から入力される入力信号を供給するテストヘッドに設けられ、コンパレータ104及び106の入力端の電位のオーバーシュートを低減する。
【0017】
コンパレータ104及び106は、DUT102から入力される入力信号を予め定められた閾値電圧と比較して比較結果を出力する。コンパレータ104及び106に出力は、テストモジュールに設けられた期待値比較部により期待値と比較され、期待値比較部の比較結果に基づいて、DUT102の良否が判定される。
【0018】
なお、他の実施形態においては、終端回路100は、CPUと周辺回路との通信を中継するシステムバス等の通信デバイスのバス回路における終端回路として用いられてもよいし、無線遠距離通信機器等の通信デバイスにおける終端回路として用いられてもよい。
【0019】
終端回路100は、アンプ108、コンデンサ110、抵抗120、抵抗122、アンプ124、電流源126、及び電流源128を有する。アンプ108は、本発明の比較電位生成部の一例であり、アンプ124は、本発明の電位比較部の一例であり、電流源126は、本発明の第2電流発生部の一例であり、電流源128は、本発明の第1電流発生部の一例である。また、終端回路100の構成要素のうちの電流源128を除く部分、即ちアンプ108、コンデンサ110、抵抗120、抵抗122、アンプ124、及び電流源126は、本発明の電位変動検知部の一例である。
【0020】
アンプ108は、基準電位Vtinに基づいて比較電位Vttを生成する。具体的にはアンプ108は、基準電位Vtinが非反転入力端子に入力され、当該アンプ108の出力電位である比較電位Vttが反転入力端子に入力され、比較電位Vttを基準電位Vtinと等しくするように動作する。アンプ108の出力端は、抵抗120を介して終端に電気的に接続されており、アンプ108は、終端のオーバーシュートを低減する機能を有する。しかしながら、アンプ108の周波数特性は、終端に入力される入力信号の周波数特性より低帯域であるので、アンプ108の機能のみでは十分に終端のオーバーシュートを低減することができず、終端の電位が急激に上昇することによって、アンプ108の出力電位である比較電位は、VttからVtt+ΔVttに上昇してしまう。
【0021】
コンデンサ110は、アンプ108の出力端と抵抗120との間と、接地点との間に設けられる。コンデンサ110は、アンプ108とともに終端のオーバーシュートを低減する機能を有する。しかしながら、コンデンサ110によっても、終端の電位が急激に上昇する場合には、十分に終端のオーバーシュートを低減することができない。そこで、アンプ108及びコンデンサ110は、DUT102から入力される入力信号の周波数特性の低帯域の部分において、終端の電位の変動を低減する働きを有する。
【0022】
アンプ124は、DUT102から入力される入力信号が印加されるコンパレータ104及び106の入力端(以下、「終端」という。)の電位の変動を、抵抗120及び抵抗122を介して検知する。具体的には、アンプ124は、基準電位Vtinが反転入力端子に入力され、終端の電位の上昇にともなって上昇した比較電位Vtt+ΔVttが抵抗122を介して非反転入力端子に入力され、比較電位Vtt+ΔVttが抵抗122により降下した電位Vtmonと基準電位Vtinとを比較し、比較結果を出力し、電流源126及び128に供給する。アンプ124は、アンプ108より動作速度が高速であり、例えば、アンプ108が電圧出力型のアンプであるのに対し、アンプ124は電流出力型のアンプである。これにより、アンプ124は、DUT102から入力される入力信号の周波数特性の高帯域の部分において、終端の電位の変動を低減する働きを有する。
【0023】
電流源126は、アンプ124が出力する比較結果に基づいて、比較電位Vtt+ΔVttが基準電位Vtinより大きい場合に、アンプ108の出力端から電流を引き込むことにより比較電位Vtt+ΔVttを降下させ、比較電位と基準電位とを等しくする。なお、電流源126は、定電流ΔItermを発生する定電流源である。
【0024】
電流源128は、アンプ124が出力する比較結果に基づいて、アンプ124が終端の電位が上昇したことを検知した場合に、終端から電流を引き込むことにより、入力信号が印加されることによる終端のオーバーシュートを低減する。即ち、図3に示すようなオーバーシュート部分130の電位を抑制することができる。なお、電流源128は、定電流ΔIterm×nを発生する定電流源である。
【0025】
ここで、
tom=Vtt+ΔVtt−Rtmon×ΔIterm=Vtin
であり、終端回路100の電位は、コンパレータ104及び106の入力端を基準とすると、
tt+ΔVtt−Rterm×ΔIterm×n
である。そして、終端の電位を一定とするためには、即ち、
tt+ΔVtt−Rterm×ΔIterm×n=Vtt
とするためには、
ΔVtt=Rterm×ΔIterm×n
を満たすように、nを調整する。
【0026】
これにより、終端電圧の変動を低減し、かつ、Rtermで調整することによって終端抵抗制度を高精度に維持することができる。
ここで、通常、
n=Rtom/Rterm
とする。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る終端回路100によれば、従来技術に係る終端回路10に高速で終端の電位の変動を検知するアンプ124と、終端から電流を引き込む電流源128を付加することによって、周波数特性が高帯域にわたる入力信号に対しても高速で追従して電位の変動を低減させることができ、その結果、図3に示すような終端のオーバーシュート部分130の電位を十分に低減し、DUT102からの入力信号をコンパレータ104及び106に精度良く供給することができる。
【0028】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来技術に係る終端回路10の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る終端回路100の構成の一例を示す図である。
【図3】終端回路100の終端の電位の変動の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
100 終端回路
102 DUT
104 コンパレータ
106 コンパレータ
108 アンプ
110 コンデンサ
120 抵抗
122 抵抗
124 アンプ
126 電流源
128 電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が印加される終端の電位の変動を検知する電位変動検知部と、
前記電位変動検知部が、前記終端の電位が上昇したことを検知した場合に、前記終端から電流を引き込むことにより、前記入力信号が印加されることによる前記終端のオーバーシュートを低減する第1電流発生部と
を備える終端回路。
【請求項2】
前記電位変動検知部は、
基準電位に基づいて比較電位を生成する比較電位生成部と、
前記終端の電位の上昇にともなって上昇した前記比較電位と前記基準電位とを比較し、比較結果を出力する電位比較部と
を有し、
前記第1電流発生部は、前記電位比較部が出力する前記比較結果に基づいて、前記終端から電流を引き込む
請求項1に記載の終端回路。
【請求項3】
前記電位比較部が出力する前記比較結果に基づいて、前記比較電位が前記基準電位より大きい場合に、前記比較電位生成部の出力端から電流を引き込むことにより前記比較電位と前記基準電位とを等しくする第2電流発生部
をさらに備える請求項2に記載の終端回路。
【請求項4】
前記比較電位生成部は、前記基準電位が非反転入力端子に入力され、前記比較電位生成部の出力電位である前記比較電位が反転入力端子に入力され、前記比較電位を前記基準電位と等しくするように動作する
請求項3に記載の終端回路。
【請求項5】
前記電位比較部は、前記基準電位が反転入力端子に入力され、前記終端の電位の上昇にともなって上昇した前記比較電位が非反転入力端子に入力され、
前記第2電流発生部は、前記比較電位を前記基準電位と等しくする前記比較電位生成部の出力端から電流を引き込むことにより前記比較電位を降下させ、前記比較電位を前記基準電位と等しくする
請求項3に記載の終端回路。
【請求項6】
前記電位比較部は、前記比較電位生成部より動作速度が高速である
請求項2に記載の終端回路。
【請求項7】
前記比較電位生成部は、電圧出力型のアンプであり、
前記電位比較部は、電流出力型のアンプである
請求項4に記載の終端回路。
【請求項8】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスから入力される入力信号を予め定められた閾値電圧と比較するコンパレータと、
前記コンパレータの入力端の電位のオーバーシュートを低減する終端回路と
を備え、
前記終端回路は、
前記入力信号が印加される前記コンパレータの入力端の電位の変動を検知する電位変動検知部と、
前記電位変動検知部が、前記コンパレータの入力端の電位が上昇したことを検知した場合に、前記コンパレータの入力端から電流を引き込むことにより、前記入力信号が印加されることによる前記コンパレータの入力端のオーバーシュートを低減する第1電流発生部と
を有する試験装置。
【請求項9】
入力信号を予め定められた閾値電圧と比較するコンパレータに、被試験デバイスから入力される前記入力信号を供給するテストヘッドであって、
前記入力信号が印加される前記コンパレータの入力端の電位の変動を検知する電位変動検知部と、
前記電位変動検知部が、前記コンパレータの入力端の電位が上昇したことを検知した場合に、前記コンパレータの入力端から電流を引き込むことにより、前記入力信号が印加されることによる前記コンパレータの入力端のオーバーシュートを低減する第1電流発生部と
を備えるテストヘッド。
【請求項10】
入力信号が印加される終端の電位の変動を検知する電位変動検知部と、
前記電位変動検知部が、前記終端の電位が上昇したことを検知した場合に、前記終端から電流を引き込むことにより、前記入力信号が印加されることによる前記終端のオーバーシュートを低減する第1電流発生部と
を備える通信デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−54783(P2006−54783A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236432(P2004−236432)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】