説明

組付け搬送装置

【課題】精度高く部品を車体に組付け可能な組付け搬送装置を提供する。
【解決手段】組付け搬送装置10は、チェーンコンベア1、ハンガ2、自走台車3、及びロボット4を備える。ハンガ2は、車体Wを懸架し、チェーンコンベア1に牽引される。自走台車3は、ハンガ2と共に車体Wが搭載され、部品組立ラインALを往復動する。ロボット4は、自走台車3と同期して移動する。チェーンコンベア1は、部品組立ラインALの始端部ではハンガ2との係合が解除され、部品組立ラインALの終端部ではハンガ2が再び係合する。これにより、組付け搬送装置10は、部品を車体Wに組付け中は、パワーチェーン12の振動が車体Wに伝達することなく、精度高く部品を車体Wに組付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付け搬送装置に関する。特に、搬送されてきたワークに部品を組み付ける組付け装置に適した組付け搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の組立ラインでは、ロボットを用いて、塗装後の車体に各種の部品を組み付けている。このような組立ラインでは、例えば、オーバーヘッドコンベア(チェーンコンベア)に懸架されたハンガに塗装工程を経た車体を搭載して、車体を搬送しながら、ロボットを用いて、各種の部品を組み付けている。
【0003】
ロボットを用いた車体の自動組付け方法としては、自走式のロボットと車体を懸架するハンガを同期進行(同期追従)させて、ウインドガラス(部品)を車体に組付ける方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、ロボットを用いた組付け搬送装置としては、車体搬送装置、テーブル、テーブル駆動装置、ロボット、及びすくい上げ装置からなるウインドガラス自動貼付装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
組立ラインに設けた車体搬送装置(オーバーヘッドコンベア)は、車体を載せて搬送する。テーブルは、ウインドガラス貼付ステーションで車体搬送方向及びそれと反対方向に移動できる。テーブル駆動装置は、車体がウインドガラス貼付ステーションに進入してきたときに、テーブルを車体と同期して前進駆動させ、ウインドガラスを車体に貼付後、テーブルを元の位置に戻す。ロボットは、テーブルに設置されてテーブルと共に移動される。すくい上げ装置は、テーブル上に設置されて搬送中の車体をすくい上げる。
【0006】
又、特許文献2によるウインドガラス自動貼付装置は、テーブル駆動装置の再駆動前は、チェーン側部材がハンガ側部材の第1の腕に係合してチェーン側部材がハンガ側部材を車体搬送方向に引張り、テーブル駆動装置の再駆動後は、チェーン側部材がハンガ側部材の第2の腕がチェーン側部材に係合してハンガ側部材がチェーン側部材を車体搬送方向に押すように構成された係合装置を備えている。
【0007】
特許文献2によるウインドガラス自動貼付装置は、係合装置におけるハンマリング(サージング)が無くなり、ハンマリング(サージング)がある場合に生じていたロボットとすくい上げ装置・車体との振動係数の差によって生じるロボットと車体との振動による位置ずれ(微動)も生じなくなり、精度高くウインドガラスを車体に貼付することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−34455号公報
【特許文献2】特開2000−272562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1による自動組付け方法は、部品組立用のロボットとワークを搭載したハンガとを同期進行させて、部品を組付けている。したがって、部品の組付けが完了するまで、ハンガを移動させるチェーンコンベアを停止させることが必要であるという問題がある。
【0010】
同様に、特許文献2による自動組付け装置は、ワークを搬送するハンガにテーブルを同期させて前進駆動させて、部品を組付けている。したがって、部品を組付けの際、チェーンコンベアとハンガとの係合部のガタを無くし、ハンマリング、サージングなどを防止するため、密着状態を維持する手段が必要となり構造が複雑化する。
【0011】
チェーンコンベアを停止することなく駆動して、車体に部品を組付けることができれば、組立ラインの前工程又は後工程で他の作業をすることもでき、自動車の製造ライン全体として、生産性を向上できる。
【0012】
又、特許文献1による車体の自動組付け方法、及び特許文献2による自動組付け装置は、チェーン(パワーチェーン)とハンガとが係合した状態で、部品を車体に組付けている。したがって、パワーチェーンの振動が車体に伝達して、精度高く部品を車体に組付けることを困難にしている。
【0013】
部品を車体に組付け中は、チェーンコンベアとハンガとの係合を解除できれば、精度高く部品を車体に組付けることができる。以上のことを達成することが本発明の課題であった。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、生産性を向上でき、かつ精度高く部品を車体に組付けることが可能な組付け搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するため、車体を懸架するハンガが車体の組付けステーションに到達して部品を車体に組み付ける間は、ハンガとチェーンコンベアとの係合を解除して、チェーンコンベアからの振動などの外乱を無くし、部品を車体に組付け後は、ハンガとチェーンコンベアとが再び係合するように、組付け搬送装置を構成することにより、上記の課題を解決したもので、これに基づいて、以下のような新たな組付け搬送装置を提供するに至った。
【0016】
本発明の請求項1による組付け搬送装置は、製造ラインに配置された搬送手段と、前記搬送手段に牽引されるワーク搭載手段と、前記搬送手段と同じライン上を往復動する自走手段と、この自走手段と同期して移動する部品組み付け手段と、を備え、前記搬送手段は、前記自走手段が移動を開始する始端部では前記ワーク搭載手段との係合が解除され、前記自走手段が移動を終了する終端部では前記ワーク搭載手段が再び係合する。
【0017】
本発明の請求項2による組付け搬送装置は、請求項1記載の組付け搬送装置において、前記搬送手段は、コンベアレールに案内されて移動するパワーチェーンを備え、前記パワーチェーンは、前記ワーク搭載手段側に係合自在な係合手段を有し、この係合手段は、係合解除と再係合を前記コンベアレールと前記ワーク搭載手段との相対位置を変化させることにより可能としている。
【0018】
本発明の請求項3による組付け搬送装置は、請求項1又は2記載の組付け搬送装置において、前記自走手段は、前記搬送手段に搭載された車体を位置決めする位置決め手段と、前記搬送手段を着脱可能に締結するクランプ手段と、前記ラインの床面上を所定の速度で走行させる駆動手段と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明による組付け搬送装置は、チェーンコンベアを停止することなく駆動して、車体に部品を組付けることができるので、自動車の製造ライン全体として、生産性を向上できる。
【0020】
又、本発明による組付け搬送装置は、部品を車体に組付け中は、チェーンコンベアとハンガとの係合を解除している。したがって、パワーチェーンの振動が車体に伝達することなく、精度高く部品を車体に組付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による組付け搬送装置の構成を示す側面図である。
【図2】前記実施形態による組付け搬送装置の縦断面図であり、組付け搬送装置を背面側から観ている。
【図3】前記実施形態による組付け搬送装置の平面図であり、車体及びハンガを横断面で示している。
【図4】前記実施形態による組付け搬送装置の側面図であり、フロントトロリを拡大して示している。
【図5】前記実施形態による組付け搬送装置の側面図であり、パワーチェーンとフロントトロリとの係合関係を示す状態変化図である。
【図6】図4のV−V矢視断面図である。
【図7】前記実施形態による組付け搬送装置の背面図であり、自走台車の駆動部を拡大して示している。
【図8】前記実施形態による組付け搬送装置の部分側面図であり、自走台車に備わるリフトアップ装置の構成を概略で示している。
【図9】前記実施形態による組付け搬送装置の部分側面図であり、自走台車に備わるクランプ装置を拡大して示している。
【図10】前記実施形態による組付け搬送装置の背面図である。
【図11】前記実施形態による組付け搬送装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0023】
[組付け搬送装置の構成]
最初に、本発明の一実施形態による組付け搬送装置の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による組付け搬送装置の構成を示す側面図である。図2は、前記実施形態による組付け搬送装置の縦断面図であり、組付け搬送装置を背面側から観ている。
【0024】
又、図3は、前記実施形態による組付け搬送装置の平面図であり、車体及びハンガを横断面で示している。図4は、前記実施形態による組付け搬送装置の側面図であり、フロントトロリを拡大して示している。図5は、前記実施形態による組付け搬送装置の側面図であり、パワーチェーンとフロントトロリとの係合関係を示す状態変化図である。図6は、図4のV−V矢視断面図である。
【0025】
本発明の実施形態による組付け搬送装置10は、搬送手段となるチェーンコンベア1、ワーク搭載手段となるハンガ2、自走手段となる自走台車3、及び部品組み付け手段となる部品組み付けロボット(以下、ロボットと略称する)4を備えている。
【0026】
(チェーンコンベアの構成)
チェーンコンベア1は、自動車の製造ラインに沿って、上方に配置されている。ハンガ2は、車体Wを懸架し、チェーンコンベア1に牽引される。自走台車3は、ハンガ2と共に車体Wが搭載され、部品組立ラインALを往復動することができる。ロボット4は、自走台車3と同期して移動することができる。
【0027】
チェーンコンベア1は、コンベアレール11、パワーチェーン12、及び一対の案内レール13・13を備えている。コンベアレール11は、自動車の製造ラインに沿って、上方に配置されている。パワーチェーン12は、コンベアレール11に案内されて、移動することができる。
【0028】
一対の案内レール13・13は、パワーチェーン12の直下に配置されている。一対の案内レール13・13は、コンベアレール11に並設されている。案内レール13は、断面がC型のチャンネル材を連結している。一対の案内レール13・13は、それらの開口部が対向するように配置されている。
【0029】
図1又は図2を参照すると、コンベアレール11は、断面がI型のチャンネル材を連結している。コンベアレール11は、天井に敷設された門型の支持梁15の横梁15aの中央部に、コンベアレール11の上端が固定されている。又、縦梁16は、コンベアレール11と案内レール13とが適宜な間隔になるように固定している。支持梁15及び縦梁16は、自動車の製造ラインに沿って、適宜な間隔で設けられている。
【0030】
図4及び図6を参照すると、パワーチェーン12は、センタリンク12aとサイドリンク12bとを交互にピン12pで連結している。センタリンク12aは、U字状に分岐した一対のトロリブラケット121を突出している。トロリブラケット121の先端部には、ローラ12cを片持ち状に支持している。一対のローラ12c・12cは、コンベアレール11の垂直ウェッブを間にして、対向するように配置されている。一対のローラ12c・12cは、コンベアレール11の水平フランジに沿って、転動できる。
【0031】
図4及び図6を参照すると、パワーチェーン12は、複数のトロリブラケット121及びローラ12cを介して、コンベアレール11に懸架されているので、下方に湾曲するように垂れ下がることが防止されている。パワーチェーン12は、図示しないスプロケットに駆動されて、一方の方向に移動できる。そして、一部のセンタリンク12aには、案内レール13に向けて突出する係合手段となる係合爪122を有している。
【0032】
(ハンガの構成)
図1から図6を参照すると、ハンガ2は、フロントトロリ21、一組のロードトロリ22・22、及びリアトロリ23を上部に備えている。フロントトロリ21は、ハンガ2の進行方向の前方に延出している。又、フロントトロリ21は、案内レール13に案内されて移動できる。
【0033】
一組のロードトロリ22・22は、ハンガ2に直結している。一組のロードトロリ22・22は、案内レール13に懸架されると共に、案内レール13に案内されてその軌道を移動できる。リアトロリ23は、ハンガ2の進行方向と逆方向の後方に延出している。又、リアトロリ23は、案内レール13に案内されて移動できる。
【0034】
フロントトロリ21と前部のロードトロリ22とは、第1リンク(連接棒)24で回動自在に連結されている。リアトロリ23と後部のロードトロリ22とは、第2リンク(連接棒)24で回動自在に連結されている。
【0035】
図4から図6を参照すると、フロントトロリ21は、その本体となるブラケット21aの上部に一組のローラ21b・21bを回転自在に支持している。これらのローラ21b・21bは、ブラケット21aを貫通する支持軸の両端部に一対に取り付けられている。そして、これらのローラ21b・21bは、案内レール13の水平フランジに沿って転動できる。又、フロントトロリ21は、ブラケット21aと案内レール13との直接接触を防止するために、一組のサイドローラ21c・21cを回転自在に支持している。
【0036】
図1を参照すると、案内レール13は、床面FLと略平行に配置されている。図5に示すように、部品組立ラインALの始端部に至るまでは、案内レール13とコンベアレール11が係合距離Hに保たれている。そして、パワーチェーン12に設けた係合爪122がフロントトロリ21を牽引できる。
【0037】
図5に示すように、部品組立ラインALの始端部では、コンベアレール11の軌道が上方に変位して、案内レール13とコンベアレール11が離間距離Hに保たれている。そして、係合爪122とフロントトロリ21に設けた係合凹部210が離間する。したがって、パワーチェーン12とフロントトロリ21(つまり、ハンガ2)とをそれぞれ独立して運動できる。
【0038】
一方、図5に示すように、部品組立ラインALの終端部では、コンベアレール11の軌道が下方に変位して、案内レール13とコンベアレール11が係合距離Hに復帰している。そして、係合爪122と係合凹部210が再び係合して、パワーチェーン12がフロントトロリ21を牽引できる。
【0039】
図4に示すように、フロントトロリ21は、その前方(先端部)に突出した係止爪211を開閉する作動レバー21dを有している。作動レバー21dの中間部は、ブラケット21aに回動可能に連結している。作動レバー21dは、第1アーム21e及び第2アーム21fにリンク機構で連結している。第1アーム21eと第2アーム21fの間には、係合凹部210が設けられている。
【0040】
図4に示すように、通常は、係止爪211に対して、作動レバー21dが閉じている。そして、係合凹部210に係合爪122が係合して、パワーチェーン12がフロントトロリ21(ハンガ2)を牽引できる。一方、リアトロリ23に設けた解除爪23d(図1参照)が係止爪211に挿入されると、作動レバー21dが開くと共に、第1アーム21e及び第2アーム21fが変位して(図4の2点鎖線を参照)、係合凹部210と係合爪122の係合が解除される。そして、フロントトロリ21は、ハンガ2の移動を停止する。
【0041】
又、図4に示すように、前方に位置するハンガ2が進行方向に移動して、解除爪23dがフロントトロリ21から離間すると、作動レバー21dが復帰して、係合凹部210と係合爪122とが再び係合可能になる。そして、ハンガ2を進行方向に移動できる。
【0042】
なお、フロントトロリ21は、作動レバー21dの運動が第1アーム21e及び第2アーム21fに伝動するが、第1アーム21e及び第2アーム21fの運動が作動レバー21dに伝動しない、不可逆な構成のリンク機構になっている。
【0043】
又、フロントトロリ21は、係合爪122が第2アーム21fに向かって進行すると、係合爪122に押されて第2アーム21fが傾倒し、係合爪122が第2アーム21fを乗り越えた後は、第2アーム21fが復帰するように構成されている。係合爪122が第1アーム21eに当接して、ハンガ2を移動している時に、ハンガ2が前方に慣性力で進行しても、第2アーム21fが係合爪122に当接して前進を抑えることができる。
【0044】
図1及び図2に示すように、ロードトロリ22は、その本体となるブラケット22aの上部に一組のローラ22b・22bを回転自在に支持している。これらのローラ22b・22bは、案内レール13の水平フランジに沿って転動できる。又、リアトロリ23は、その本体となるブラケット23aの上部に一組のローラ23b・23bを回転自在に支持している。これらのローラ23b・23bは、案内レール13の水平フランジに沿って転動できる。
【0045】
又、ハンガ2は、その上部に設けた枠体26と一対の対向するアーム27・27を有している。アーム27は、例えば、複数のパイプ部材が溶接で接合された剛体からなり、基端部が枠体26に固定されている。
【0046】
一対のアーム27・27の前部の先端部には、車体Wの底面を支持する一対の受け部27a・27aが設けられている。一対のアーム27・27の後部の先端部には、車体Wの底面を支持する一対の受け部27b・27bが設けられている。そして、これらの受け部27a・27a及び27b・27bには、ハンガ2に車体Wを位置決めするための位置決めピン27pが突出している。
【0047】
図2に示すように、支持梁15の縦梁15bの下端部には、断面がC型のガイドレール14を固定している。一対のガイドレール14・14は、それらの開口部が対向するように配置されている。一方、ハンガ2の枠体26の上部には、対向する一対のローラ26b・26bを配置している。そして、一対のローラ26b・26bが一対のガイドレール14・14と転動しつつ、水平方向の移動が規制されることにより、ハンガ2の揺れが防止されている。
【0048】
引き続き、実施形態による組付け搬送装置10の構成を説明する。図7は、前記実施形態による組付け搬送装置の背面図であり、自走台車の駆動部を拡大して示している。図8は、前記実施形態による組付け搬送装置の部分側面図であり、自走台車に備わるリフトアップ装置の構成を概略で示している。
【0049】
又、図9は、前記実施形態による組付け搬送装置の部分側面図であり、自走台車に備わるクランプ装置を拡大して示している。図10は、前記実施形態による組付け搬送装置の背面図である。
【0050】
(自走台車の構成)
自走台車3は、図7に示すように、ハンガ2に搭載された車体Wを位置決めする位置決め手段となる位置決め装置31を備えている。又、自走台車3は、図9に示すように、ハンガ2を着脱可能に締結するクランプ手段となるクランプ装置32を備えている。更に、自走台車3は、図7に示すように、部品組立ラインALの床面FL上を所定の速度で走行させる駆動手段となる駆動装置33を備えている。又、自走台車3は、図8に示すように、車体Wを昇降させる昇降装置34を備えている。
【0051】
図3を参照すると、自走台車3は、複数の角パイプが略矩形に枠組みされたフレーム30を備えている。フレーム30は、フロントフレーム30f及びリアフレーム30rと、これらのフロントフレーム30f及びリアフレーム30rの両端部が接合された一対のサイドフレーム30aと、を有している。
【0052】
図1及び図2に示すように、部品組立ラインALには、その始端部から終端部に向けて、一対のレール板51・51が床面FLに敷設されている。一方、自走台車3は、複数の固定車輪3wをフレーム30の底部に取り付けている。そして、これらの固定車輪3wは、一対のレール板51・51上を転動できる。なお、一対のレール板51・51は、それらの高さ(厚さ)を調整できるように、複数のスペーサ板が積層されている。
【0053】
図2及び図7に示すように、一対のレール板51・51の間には、レール板52が配置されている。レール板52は、床面FLに敷設されている。レール板52は、部品組立ラインALの始端部から終端部に向けて、配置されている。なお、レール板52は、その高さ(厚さ)を調整できるように、複数のスペーサ板が積層されている。
【0054】
図2及び図7に示すように、レール板52の中央部には、直進レール5rを固定している。一方、自走台車3は、一対のベアリング3r・3rをフレーム30の底部に取り付けている。これらのベアリング3r・3rは、直進レール5rの両側面を挟持して転動することができる。これにより、自走台車3の直線運動が確保される。又、レール板52の片翼には、ラック53を固定している。ラック53は、後述するピニオン33pと噛み合っている。
【0055】
図3及び図7に示すように、ハンガ2のアーム27の下部に設けられた左右二つの位置決めピン27pの下方には、位置決め装置31が配置されている。実体として、位置決め装置31は、複動型のエアシリンダCL1であって、そのシリンダ本体310がフレーム30に固定されている。
【0056】
図7に示すように、エアシリンダCL1のピストンロッドの先端部には、位置決め部材31aが固定されている。位置決め部材31aの先端面は、開口しており、この開口に位置決めピン27pの基端部が挿入されることにより、ハンガ2と自走台車3を精密に位置決めできる。図7は、エアシリンダCL1のピストンロッドが進出した状態であり、このピストンロッドを後退することにより、エアシリンダCL1と位置決めピン27pとの係合を解除できる。
【0057】
図1を参照すると、自走台車3は、部品組立ラインALの始端部で待機している。そして、チェーンコンベア1に牽引されたハンガ2は、自走台車3にクランプされた状態で、部品組立ラインALの終端部に向かって移動される。
【0058】
図5を参照すると、部品組立ラインALの始端部では、コンベアレール11の軌道が上方に変位して、案内レール13とコンベアレール11が離間距離Hに保たれている。したがって、自走台車3が移動を開始する始端部では、パワーチェーン12とハンガ2との係合が解除される。一方、部品組立ラインALの終端部では、コンベアレール11の軌道が下方に変位して、案内レール13とコンベアレール11が係合距離Hに復帰している。したがって、自走台車3が移動を終了する終端部では、パワーチェーン12とハンガ2が再び係合できる。
【0059】
(クランプ装置の構成)
次に、実施形態によるクランプ装置32の構成を図9により説明する。クランプ装置は、第1クランプ機構321と第2クランプ機構322とで構成されている。図1を参照すると、第1クランプ機構321は、フレーム30の両翼に一対に配置されている。同様に、図1を参照すると、第2クランプ機構322は、フレーム30の両翼に一対に配置されている。
【0060】
複動型のエアシリンダCL2は、第1クランプ機構321を駆動できる。又、複動型のエアシリンダCL3は、第2クランプ機構322を駆動できる。
【0061】
第1クランプ機構321は、鉤状に形成されたクランプ32aとリンク32bを有している。クランプ32aの基端部は、リンク32bの一端部と回動自在に連結している。リンク32bの他端部は、エアシリンダCL2のピストンロッドの先端部に連結している。
【0062】
エアシリンダCL2のピストンロッドが後退した状態では、クランプ32aの一辺がピン状部材に当接して、第1クランプ機構321は、クランプ32aが傾倒するように構成されている。又、ハンガ2のアーム27がクランプ32aを通過後に、エアシリンダCL2のピストンロッドを進出(駆動)すると、第1クランプ機構321は、クランプ32aの起立姿勢が維持されるように構成されている。そして、一対のエアシリンダCL2・CL2を同期して駆動すると(図1参照)、自走台車3に対して一対のアーム27・27(ハンガ2)を移動しつつ押圧できる。
【0063】
一方、第2クランプ機構322は、鉤状に形成されたクランプ32c、リンク32d、及び固定リンク32eからなる倍力装置で構成されている。クランプ32cの基端部は、エアシリンダCL3のピストンロッドの先端部に連結している。クランプ32cの中間部は、リンク32dの一端部と回動可能に連結している。リンク32dの他端部は、固定リンク32eの先端部と回動可能に連結している。
【0064】
図9に示されるように、エアシリンダCL3のピストンロッドが後退した状態では、クランプ32cには、一方の方向に回動する力が働き、クランプ32cの先端部がアーム27を押圧できる。そして、一対のエアシリンダCL3・CL3を同期して駆動(ピストンロッドを後退)すると(図1参照)、自走台車3に対して、クランプ32aと協働して一対のアーム27・27(ハンガ2)をクランプできる。
【0065】
(駆動装置の構成)
次に、実施形態による駆動装置33の構成を図1、図3及び図7により説明する。駆動装置33は、リアフレーム30rに取り付けられている。駆動装置33は、モータ33m及びモータ33mに直結する歯車減速器33cを備えている。歯車減速器33cは、モータ33mの出力軸の回転速度を減速すると共に、モータ33mの出力軸の向きを90度に変換している。
【0066】
歯車減速器33cの出力軸には、ピニオン33pを固定している。ピニオン33pは、ラック53に噛み合っている。モータ33mを駆動して、ピニオン33pを一方の方向に回転すると、部品組立ラインALの始端部から終端部に向けて、自走台車3を前進できる。モータ33mを駆動して、ピニオン33pを他方の方向に回転すると、部品組立ラインALの終端部から始端部に向けて、自走台車3を後退できる。
【0067】
なお、部品組立ラインALの始端部側には、図3に示すように、リアフレーム30rに当接可能な一対のショックアブソーバ54・54を床面FLに固定している。これにより、自走台車3が後退して停止するときの衝撃を緩和できる。
【0068】
(昇降装置の構成)
次に、実施形態による昇降装置34の構成を図2、図3及び図8により説明する。昇降装置34は、一対の前部昇降台34a・34a、及び一対の後部昇降台34b・34bを備えている。又、昇降装置34は、一対の前部昇降台34a・34aをそれぞれ昇降させる一組の第1昇降機構341・341と、一対の後部昇降台34b・34bをそれぞれ昇降させる一組の第2昇降機構342・342と、を備えている。更に、昇降装置34は、第1昇降機構341を駆動する複動型のエアシリンダCL4と、第2昇降機構342を駆動する複動型のエアシリンダCL5と、を備えている。
【0069】
前部昇降台34aは、面積が小さい段部を車体Wの前部の底面に当接できる。又、後部昇降台34bは、面積が小さい段部を車体Wの後部の底面に当接できる。
【0070】
第1昇降機構341及び第2昇降機構342は、「スコットラッセルの機構」、又は「パンタグラフ機構」などからなる直線運動機構であって、前部昇降台34a及び後部昇降台34bを略平行に移動(昇降)できる。
【0071】
エアシリンダCL4のピストンロッドは、第1昇降機構341の起動端に連結している。エアシリンダCL4のピストンロッドを進出すると、前部昇降台34aを上昇できる。エアシリンダCL4のピストンロッドを後退すると、前部昇降台34aを下降できる。一対のエアシリンダCL4・CL4を連携して駆動することにより、一対の前部昇降台34a・34aを同じタイミングで昇降できる。なお、一対の前部昇降台34a・34aは、上昇位置と下降位置が規定されている。
【0072】
同様に、エアシリンダCL5のピストンロッドは、第2昇降機構342の起動端に連結している。エアシリンダCL5のピストンロッドを進出すると、後部昇降台34bを上昇できる。エアシリンダCL5のピストンロッドを後退すると、後部昇降台34bを下降できる。一対のエアシリンダCL5・CL5を連携して駆動することにより、一対の後部昇降台34b・34bを同じタイミングで昇降できる。なお、一対の後部昇降台34b・34bは、上昇位置と下降位置が規定されている。
【0073】
このように、実施形態による昇降装置34は、一対のエアシリンダCL4・CL4、及び一対のエアシリンダCL5・CL5を連携して駆動することにより、自走台車3に対して、車体Wを平行に昇降できる。この場合、図7に示すように、ハンガ2に設けた複数の位置決めピン27pにより、車体Wのハンガ2に対する水平面上での相対位置が維持されて、車体Wが平行に昇降される。
【0074】
(ロボットの構成)
次に、実施形態によるロボット4の構成を図2及び図10により説明する。ロボット4は、車体W及びハンガ2の搬送路の両側に配置されている。ロボット4は、ロボットフレーム40に搭載されている。ロボットフレーム40は、床面FLに敷設され、直進レール5rと平行に配置されたレール(図示せず)に案内されて、直進できる。
【0075】
図2又は図3を参照すると、自走台車3のフレーム30の両翼には、一組のクランプ片3k・3kが延出している。これらのクランプ片3k・3kには、終端が半円弧の長穴状のクランプ孔31kが切り欠かれている。そして、ロボットフレーム40に設けたピン(図示せず)がこれらのクランプ孔31kに高精度に嵌合して、ロボット4を自走台車3と同期して移動することができる。
【0076】
ロボット4は、多関節型のロボットアーム41を備えている。実施形態のロボット4は、ロボットアーム41を上下2段に備えており、これらのロボットアーム41の先端部に異なる仕様の締付ツールが予め取り付けられている。
【0077】
例えば、上記の締付ツールは、ボルトを締結する自動締付レンチが設けられ、一方のロボットアーム41が車体Wの内部に進出して、屈曲した後に、締付ツールを回転することにより、車体Wの内部のボルトを締結できる。又、ロボットアーム41は、車体Wに対して、相対的に移動可能であり、自走台車3が移動中に、車体Wの内部の複数のボルトを締結できる。
【0078】
[組付け搬送装置の動作及び作用]
次に、実施形態による組付け搬送装置10の構成を補足しながら、組付け搬送装置10の動作及び作用を説明する。図11は、前記実施形態による組付け搬送装置の動作を示すフローチャートである。
【0079】
図1又は図4から図6を参照すると、一対の案内レール13・13は、部品組立ラインALの床面FLと略平行に敷設されている。一方、コンベアレール11は、部品組立ラインALの始端部において、一対の案内レール13・13と離間すべく、コンベアレール11の軌道が上方に変位している。したがって、部品組立ラインALの始端部では、係合凹部210と係合爪122の係合が解除される。
【0080】
又、図1を参照すると、コンベアレール11は、部品組立ラインALの終端部において、一対の案内レール13・13に近づくように、コンベアレール11の軌道が下方に変位して復帰している。したがって、部品組立ラインALの終端部では、係合凹部210と係合爪122とが再び係合される。なお、部品組立ラインALの始端部と終端部の間は、一対の案内レール13・13とコンベアレール11の離間距離Hが略平行に保たれている。
【0081】
次に、図11を参照して、実施形態による組付け搬送装置10の動作を説明する。なお、図11では、符号を省略する場合がある。最初に、自走台車3は、部品組立ラインALの始端部で予め待機しているものとする。又、ロボット4は、自走台車3に連結しているものとする。
【0082】
車体Wを懸架したハンガ2がチェーンコンベア1に牽引されて、部品組立ラインALの始端部に到達すると、チェーンコンベア1とハンガ2の係合が解除される(ステップS1)。次に、ハンガ2を自走台車3にクランプする(ステップS2)。次に、昇降装置34を駆動して、車体Wを上昇(リフトアップ)する(ステップS3)。これにより、自走台車3に対して車体W及びハンガ2が位置決めされた状態で、車体W及びハンガ2が自走台車3に搭載される。
【0083】
次に、駆動装置33を駆動して、自走台車3を部品組立ラインALの終端部に向けて前進させる(ステップS4)。自走台車3が前進中は、ロボット4が同期して進行しているので、車体Wにロボット4でボルトなどの部品を組み付けることができる。次に、自走台車3が部品組立ラインALの終端部に到達すると、自走台車3を停止する(ステップS5)。なお、ロボット4の作業状況を監視して、自走台車3の移動速度を調整、又は自走台車3を途中停止することも可能である。
【0084】
次に、昇降装置34を駆動して、車体Wを下降(ローダウン)する(ステップS6)。これにより、車体Wと自走台車3の係合が解除される。次に、ハンガ2と自走台車3のクランプを解除する(ステップS7)。次に、チェーンコンベア1とハンガ2が再び係合して(ステップS8)、車体Wを懸架したハンガ2が後工程に移動した後は、直ちに、自走台車3を部品組立ラインALの始端部に向けて後退させる(ステップS4)。そして、自走台車3を部品組立ラインALの始端部で待機させて、一連の動作を終了する。
【0085】
本発明の実施形態による組付け搬送装置10は、チェーンコンベア1を停止することなく駆動して、車体Wにボルトなどの部品を組付けることができるので、自動車の製造ライン全体として、生産性を向上できる。
【0086】
又、本発明の実施形態による組付け搬送装置10は、ボルトなどの部品を車体Wに組付け中は、チェーンコンベア1とハンガ2との係合を解除している。したがって、パワーチェーン12の振動が車体に伝達することなく、精度高く、ボルトなどの部品を車体に組付けることができる。
【0087】
本発明の実施形態による自走台車3は、モータ33mの出力軸を水平方向に配置するなど工夫した、扁平な薄型の低床台車となっている。したがって、部品組立ラインの室内高を低減することも可能になる。
【0088】
本発明の実施形態による組付け搬送装置10は、自走台車3とロボット4とが別体で構成されているので、ロボット4に規定されることなく、自走台車3をコンパクトにすることもできる。
【0089】
本発明は、部品組み付けロボットを利用した組付け搬送装置を開示したが、本発明による技術思想を応用すれば、溶接ロボットを利用した車体の自動溶接装置も実現できる。
【符号の説明】
【0090】
1 チェーンコンベア(搬送手段)
2 ハンガ(ワーク搭載手段)
3 自走台車(自走手段)
4 ロボット(部品組み付け手段)
10 組付け搬送装置
AL 部品組立ライン
W 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインに配置された搬送手段と、
前記搬送手段に牽引されるワーク搭載手段と、
前記搬送手段と同じライン上を往復動する自走手段と、
この自走手段と同期して移動する部品組み付け手段と、を備え、
前記搬送手段は、前記自走手段が移動を開始する始端部では前記ワーク搭載手段との係合が解除され、前記自走手段が移動を終了する終端部では前記ワーク搭載手段が再び係合する組付け搬送装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、コンベアレールに案内されて移動するパワーチェーンを備え、
前記パワーチェーンは、前記ワーク搭載手段側に係合自在な係合手段を有し、
この係合手段は、係合解除と再係合を前記コンベアレールと前記ワーク搭載手段との相対位置を変化させることにより可能としている請求項1記載の組付け搬送装置。
【請求項3】
前記自走手段は、
前記搬送手段に搭載された車体を位置決めする位置決め手段と、
前記搬送手段を着脱可能に締結するクランプ手段と、
前記ラインの床面上を所定の速度で走行させる駆動手段と、を備える請求項1又は2記載の組付け搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−143521(P2011−143521A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7783(P2010−7783)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】