説明

組成物及び製造方法

【課題】マイクロ電気機械技術の成膜プロセス方法とその方法で製造された装置を提供する。
【解決手段】基板308に、電極310とその上に配置された接点302とを設けることができる。次に、二酸化ケイ素の層330を例えば蒸着によって成膜し、パターン化して電極310と接点302を包囲する。次いで、薄い接着層332、シード層334、及び金属層336を電気メッキによって成膜することができる次に、フォトレジストの層338を設け、パターン化し、その後金属、シード、及び接着層336、334、332をエッチングして梁304を形成した後、フォトレジストを除去する。最後に、二酸化ケイ素の層330を除去する。スイッチ構造体装置は、保護性のキャップ340により封入し気密に封止し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に提示される主題は、機械装置に関し、具体的には、マイクロ電気機械(MEM)及びナノ電気機械(NEM)技術に基づく装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器及び高電圧高電流スイッチの設備を含む多数の用途向けの機械装置はサイズが大きく、スイッチ機構を起動するには大きい力を必要とすることが多い。また、かかる従来のスイッチは比較的遅い速度で作動する。これは製作するのが複雑で高価であることが多い。加えて、スイッチ機構の接点が物理的に分離されているとき、アーク放電が発生することが知られており、スイッチを通してアーク電流が流れ続けるのを防止するために特別な回路が設けられることがある。このアークに伴うエネルギーはスイッチ接点を劣化させたり危険な状況を提示したりする可能性がある。
【0003】
高速用途では、電圧を制御してかけることによって導電状態と非導電状態とを切り替える固相スイッチが使用されている。固相スイッチは非導電状態で接点間に物理的なギャップを生じないので、漏れ電流が通常存在する。固相スイッチはまた、導電状態で装置の内部抵抗のため電圧降下を生じる。電圧降下と漏れ電流により、普通の作動条件下で電力損失と熱の発生が起こる。これらは、スイッチの性能とスイッチの寿命に悪影響を及ぼす。固相スイッチに伴う固有の漏れ電流のため、これらを回路遮断器用途に使用するのはあまり望ましくない。
【0004】
マイクロ電気機械システム(MEMS)に基づくスイッチ装置はある種の用途でマクロ電気機械スイッチ及び固相スイッチの潜在的な代替と見られている。これは、MEMS系スイッチが電流を流すように設定されたときに低い抵抗を有する傾向があり、また非導電状態に設定されたときには漏れを示さないことができるからである。さらに、MEMS系スイッチは従来の電気機械スイッチよりも速い応答時間を示すことが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7812703号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一群の実施形態の方法において、基板を提供し、この基板の上に除去可能な層を形成する。少なくとも50原子%の金属を含む金属層を除去可能な層の上に形成する。この金属層をパターン化しエッチングして、除去可能な層の上に構造体を画成する。除去可能な層を取り除き、金属層を、その上に気密封止キャップを接合するのに必要な時間を越えて加熱する。
【0007】
別の一群の実施形態では、装置は、基板と、基板の上に形成された金属層とを含んでおり、この金属層は、この導電性の層が予め決定できる成膜(堆積)したままの欠陥密度を有するとして特徴付けられる成膜プロセスで形成される。製作プロセスの結果として、導電性の層の欠陥密度は、同一の層又は類似の組成を有し同様な成膜条件下で形成される別の層の予め決定できる成膜したままの欠陥密度と比べて低下する。
【0008】
上記及びその他の特徴、局面、及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで理解を深めることができよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、一例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体の概略透視図である。
【図2】図2は、図1のスイッチ構造体の概略側面図である。
【図3】図3は、図1のスイッチ構造体の概略部分透視図である。
【図4】図4は、開放位置にある、図1のスイッチ構造体の概略側面図である。
【図5】図5は、閉鎖位置にある、図1のスイッチ構造体の概略側面図である。
【図6】図6A〜Cは、接触位置と非接触位置との間の梁の動きを示す、図1のスイッチ構造体の側面図である。
【図7】図7は、別の例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体の概略側面図である。
【図8】図8は、図7のスイッチ構造体の概略側面図である。
【図9】図9は、図7のスイッチ構造体の概略部分透視図である。
【図10】図10A〜10Fは、一例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体を製作するプロセスを示す概略側面図である。
【図11】図11は、別の例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体の概略透視図である。
【図12】図12は、図11のスイッチ構造体の概略側面図である。
【図13】図13は、図11のスイッチ構造体の概略部分透視図である。
【図14】図14は、別の例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体の概略透視図である。
【図15】図15は、図14のスイッチ構造体の概略側面図である。
【図16】図16は、図14のスイッチ構造体の概略部分透視図である。
【図17】図17は、さらに別の例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体の概略透視図である。
【図18】図18は、さらにもう1つ別の例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体の概略側面図である。
【図19A】図19Aは、結晶粒界を形成するように合致する異なる配向の原子平面を示す、結晶粒界のフィルター処理したTEM像である。
【図19B】図19Bは、比較的低い温度の熱処理後の、図19Aに示すものと類似の結晶粒界のフィルター処理したTEM像である。
【図20】図20A及び20Bは、熱処理後の試料における改良された変形抵抗を示す、応力緩和試験の結果を示す。
【0010】
図面を通じて類似の参照番号は類似の特徴を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、添付の図面を参照して例としての実施形態について説明する。これらの実施形態の幾つかは上記及びその他のニーズに対処し得る。図1〜図3を参照すると、一例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体100の幾つかの図が示されている。この例のスイッチ構造体100は、少なくとも一部が導電性の材料(例えば、金属)からなる接点102を含んでいる。スイッチ構造体100はまた、導電性の材料(例えば、金属)を含んでなる、片持ち梁104として図示されている導電性要素も含んでいる。梁の片持ち部分104aは接点102の上に延びている。幾つかの実施形態では、導電性要素はまた、例えば、梁104上の保護性の(恐らくは非導電性の)コーティング、又は接点102と導通させることを目的として梁の前記部分に沿って配置される導体パッドのような他の機構も含み得る。梁104は梁と一体化し得るアンカー106とベース107によって支持することができ、ここから片持ち部分104aが延びている。アンカーとベースは、梁の片持ち部分104aを、図示した基板108のような下にある支持構造体と接続する役目をする。図1〜図3に示す実施形態のスイッチ構造体100において、接点102とアンカー106はいずれも、従来の微細加工技術(例えば、電気メッキ、蒸着、フォトリソグラフィー、ウェット及び/又はドライエッチング、等)を用いて基板108上に形成される。
【0012】
スイッチ構造体100はマイクロ電気機械若しくはナノ電気機械装置又はマイクロ電気機械システム(MEMS)の一部を構成し得る。例えば、接点102及び梁104は数又は数十ナノメートル又はマイクロメートルの程度の寸法を有し得る。一実施形態では、梁104は108-1以上の表面積−体積比を有し得、別の実施形態ではこの比は103-1に近くなり得る。
【0013】
例えば、金属−酸化物−半導体電界効果トランジスター(MOSFET)及び、様々な構成部品間の電気的接続を提供する役目をするパターン化された導電性層(図示せず)を含む集積回路を基板108上に形成し得る。かかるパターン化された導電性層はまた接点102及び梁104に対する電気的接続も提供し得(例えば、後者に対する接続はアンカー106を介する)、これらの接続は図1と2に概略的に示されており、以下に記載する。これらの半導体装置及び導電性層も、スイッチ構造体100の機構と同様に、従来の微細加工技術を使用して製作することができる。一実施形態では、基板108は、ウエハーの表面上に形成されたスイッチ構造体100及びその他の回路と共に、1以上のMOSFETを含むように加工処理された単結晶半導体ウエハーの一部分であり得る。スイッチ構造体100はMOSFETの1つを覆って(例えば、ウエハーの表面に垂直な線に沿って)配置され得、MOSFETと共に作動可能であり得る。
【0014】
図4と5も参照して、梁104は、梁が接点102から分離間隔dだけ離れている図4に示す第1の非接触又は「開放」位置と、梁が接点102と電気的に接触している図5に示す第2の接触又は「閉鎖」位置との間で選択的に可動であるように構成することができる。例えば、梁104は、接触位置と非接触位置との間で動くとき変形を受けるように構成することができ、結果として梁は自然に(すなわち、外部からかけられた力がない状態で)非接触位置に配置され、かつ接触位置を占めるように変形され得、その間に機械的エネルギーを蓄積することになる。他の実施形態では、梁104の変形してない配置が接触位置であり得る。
【0015】
スイッチ構造体100はまた電極110も含み得、これは適当に荷電されたとき電極と梁104との間に電位差を生じ、その結果接点102に対抗して電極の方へ梁を引き寄せる静電気力が生まれる。充分な電圧が電極110にかかると、静電気力によって梁104が変形することにより、梁は図4に示す非接触(すなわち、開放又は非導通)位置から図5に示す接触(すなわち、閉鎖又は導通)位置に移動する。従って、電極110はスイッチ構造体100に対して「ゲート」として機能し得、電極110にかかる電圧(「ゲート電圧」といわれる)がスイッチ構造体の開閉を制御する役割を果たす。電極110は、この電極110にゲート電圧VGが選択的にかけられ得るようにゲート電源112と連通し得る。
【0016】
接点102と梁104は回路114の構成部品である。代表的な回路114は第1の側116と第2の側118を有しており、これらは互いに接続を断っているとき互いに異なる電位にある(例えば、一方の側のみが電源120に接続されている場合)。接点102と梁104は、それぞれ回路114のどちらかの側116、118に接続されていて、第1と第2の位置の間の梁の変形がそれぞれ電流を通す、また遮断するように機能することができる。梁104は、本スイッチ構造体100を利用する用途によって決定される頻度(一定又は不定)で繰り返して動かして接点102と接触させたり接触させなかったりし得る。接点102と梁104が互いに分離されているとき、接点と梁との間の電圧差は「スタンドオフ電圧」といわれる。
【0017】
一実施形態では、梁104は(例えば、アンカー106を介して)電源120と連通し得、接点102は負荷抵抗RLを有する電気的負荷122と連通し得る。電源120は電圧源又は電流源として作動し得る。梁104は電気接点として機能し、梁が接触位置にあるとき負荷電流(例えば、振幅約1mA以上、振動周波数約1kHz以下)が電源120から梁104を通って接点102及び電気的負荷122へ流れるのを可能にし、他の場合梁が非接触位置にあるときには電気的経路を分断し、電流が電源から負荷へ流れるのを防止する。上記の電流とスイッチ切り替え頻度は比較的高めの電力分配用途で利用し得るかもしれない。本スイッチ構造体100をシグナリング用途で利用する(比較的低めの電力で作動することが多い)場合のような他の実施形態では、電源120は1kHz超の振動数で100mA以下(さらに1mA程度まで)の大きさを有する電流を提供し得る。
【0018】
上記スイッチ構造体100は、回路全体の電流及び電圧容量を増大するために、類似又は異なる設計の他のスイッチ構造体を含む回路の一部として利用することができるであろう。かかるスイッチ構造体は直列又は並列に構成して、スイッチ構造体が開いているときのスタンドオフ電圧の均一な分布を、またスイッチ構造体が閉じているときの電流の均一な分布を容易にすることができるであろう。
【0019】
スイッチ構造体100の作動中、梁104は、この梁を第1と第2の位置(すなわち、接点102との接触状態及び非接触状態)との間で変形させる、上述の電極110によって確立される静電気力のような外部からかけられる力を受け得る。スイッチ構造体100は室温及び40℃まで、又はこれ以上で作動し得るが、実質的に梁を形成している材料の融解温度の50%未満又は30%未満であることが多い。さらに、スイッチ構造体100が数年程度の有用な寿命を保有すると期待される用途(例えば、比較的高めの電力分配用途)の場合、梁104は少なくとも104秒、場合によっては106秒、さらには109秒を超える累積時間接点102と接触し得る。さらに、接点102と電気的接続又は物理的接触をするように変形させたとき、梁104は比較的高い応力を受け得る。応力の大きさは、部分的に、スイッチ構造体100の幾何学的形状及び梁の材料組成に依存する。
【0020】
上記の一例として、スイッチ構造体100の片持ち梁104はニッケル(Ni)−12原子%タングステン(W)、又はニッケル(Ni)−20原子%タングステン(W)を含んでなる層であることができ、長さLは約100mm、アスペクト比(長さL対厚さt)は約25対1、接点102からの分離間隔dは約1〜3mmであり、接点は梁の自由端と対向して位置し、距離Loだけ梁と重なる。かかる幾何学的形状の場合、梁が接点102と接触するように変形したとき、100MPa超、例えば600MPa以上の応力が梁104又はアンカー106のかなりの部分に存在し得る。梁104又はアンカー106は通常の使用条件下で故障することなく104秒以上又は109秒以上上記応力に耐える必要があり得る。これらの応力は、幾何学的な凹凸、表面隆起、及び欠陥の周りのような応力集中領域の周りに存在し得る、局在化され、多くの場合一時的な応力とは区別し得る。
【0021】
片持ち梁(又はその他の変形可能な接触用構造体)及び関連する接点を含むスイッチ構造体(例えば、スイッチ構造体100)の適正な作動の場合、梁は、この梁を接点との物理的な接触に押し進める外力(例えば、電極110と関連するゲート電圧の印加の結果としての静電気力)の存在又は不在によって特定される接触位置又は非接触位置のいずれかを選択的にとることが意図されることが多い。しかしながら、数多くの研究者が観察しているように、金属のマイクロメートルスケールの片持ち梁(又はその他の変形可能な接触用構造体)を含むスイッチ構造体はうまく機能しない傾向があり、その結果スイッチ構造体の動作が意図した通りではない。これらの機能不全は一般に表面接着に関連する問題に帰因していた。具体的には、マイクロメートルスケールの梁(又はその他の変形可能な接触用構造体)の大きい表面積−体積比を考えると、梁が関連する導体パッドと接触する自由な表面の削除に伴うエネルギー低下は有力な要因であり得、変形中に梁に蓄えられる機械的エネルギーと比べても大きい可能性がある。従って、片持ち梁と関連する接点とは、これらを接触させる外力を除去した後、梁の内部歪みエネルギーが梁を接点から分離させるのに不充分であるので、互いに接着したままでいる可能性がある。
【0022】
広く知られた有力な理論と対照的に、本出願人の観察によると、金属の小規模な片持ち梁を含むスイッチ構造体の故障は、殆どの場合主として梁と関連する接点との接着に起因するのではなく、むしろ、大部分は梁の変形してない構造における変化に帰因し得るということが示唆された。すなわち、梁を関連する接点と接触させるために外力が加えられると、その梁は「クリープ」又は応力緩和ともいわれる永久的な時間依存性の塑性変形を受ける。
【0023】
梁が塑性変形を受けると、梁を接触配置に動かす外力がない状態の梁の形状は、梁が接触位置にあるときの梁の形状に似てくる。同様に、梁が接触位置にあるとき当初梁に伴っていた機械的歪みエネルギーは低下し、場合によってはほぼゼロになる。結局、このスイッチ構造体は梁と関連する接点との接着のために機能しなくなり得るが、この故障機構は二次的であり得、接触位置にある梁に伴っていた機械的歪みエネルギーの低減に起因し得る。言い換えると、スイッチを開こうとする(梁を解放する)と、梁は材料の永久的な変形のために一定期間同じ閉鎖位置にとどまり、スイッチが作動不能になる。このスイッチ構造体の梁における時間依存性の塑性変形の程度は、これらの装置が通例、梁を形成している金属材料の融解温度の50%未満、例えば30%未満である周囲温度で機能するという点で、驚くべきことである。バルク材料内に測定可能なクリープを生じさせるには、通例、融解温度の少なくとも30〜50%を超える温度が必要とされる。
【0024】
用語金属材料とは、本明細書で使用する場合、1以上の層の材料であって、それらの層の1つが合金であってもよい金属を少なくとも50原子%含有するものをいう。
【0025】
用語クリープ抵抗性とは、本明細書で使用する場合、ある材料の、連続的負荷又は応力がかけられたときの時間依存性の塑性変形に抵抗する能力をいう。同様に、用語クリープ抵抗性はまた、ある材料に(例えば、応力緩和試験の場合のように)一定の歪みがかけられたときの時間依存性の応力緩和に対する抵抗を記述する。クリープは一定の負荷の下での形状の変化又は一定の変形の下での応力の変化を含めて多様な様相で現れ得る。上記発見に鑑みて、本明細書に提示する実施形態では、梁104は実質的に、例えば50原子%超が、改良されたクリープ抵抗性を有する金属材料から形成され得る。すなわち、この材料は、例えば、室温から40℃まで、若しくはそれ以上の範囲、又は一般的には実質的に梁を形成している材料の融解温度の50%未満の温度で時間依存性の変形を抑制するように構成又は加工処理され得る。梁が複数の別個の金属材料で形成されている場合、前記範囲は、その梁の実質的な部品を構成する金属のうちの1つの最低の融解温度の50%未満であり得る。
【0026】
時間依存性の変形を抑制するように構成された材料(本明細書では、「クリープ抵抗性」材料という)は、連続的負荷又は応力がかけられたとき比較的小さい定常状態の塑性歪み速度を示す。「小さい」塑性歪み速度を構成するものは、クリープが起こり得る背景に依存し得る。現在の目的の場合、クリープ抵抗性材料は、一般に、定常状態の塑性歪み速度が、クリープを起こす材料の融解温度の半分未満、例えば実質的に梁を形成している材料の融解温度の半分未満の温度で、材料の降伏強さの約25%以下の応力に対して約10-12-1以下である材料である。クリープを起こす材料が複数の別個の金属材料で形成されている場合、前記範囲はクリープを起こす材料の実質的な部品を構成している金属のうちの1つの最低の融解温度の50%未満であり得る。さらに、梁104は、梁の機械的挙動が構成成分のクリープ抵抗性金属材料の機械的挙動によって概ね又ははっきり決定される場合、時間依存性の変形を抑制するように構成された金属材料で「実質的に形成されている」と考えることができる。
【0027】
多様な化学化合物が、材料の融解温度の約半分未満、例えば材料の融解温度の三分の一未満の温度範囲にある最高温度で利用する場合、クリープ抵抗性の金属材料として機能することができる。これらの材料は多様な作動可能な微細構造が生成するように多様な方法で合成することができる。例えば、クリープ抵抗性は、所与の作動条件に対して拡散に基づく回収プロセスを遅くする融解温度の増大の結果として得ることができる。クリープ抵抗性はまた、微細構造の操作の結果であることもできる。例えば、結晶性材料は小さい結晶粒径で形成することにより、中程度の温度(例えば、金属材料の融点温度の70%未満)での転位運動に関連するクリープを制限することができる。添加剤を結晶格子に溶解させることにより固溶体強化を起こしてもよいし、又は(例えば、結晶粒界に、又は結晶格子内に析出させることにより)別の相を形成してもよい。添加剤は、転位運動をブロックし、拡散を抑制し、又は結晶格子内の空隙のトラップとして作用するのに役立つ別個の粒子として機能することができる。幾つかの実施形態では、酸化物又は炭化物を添加剤として利用し得る。一般に、クリープ抵抗性材料の例として、Ni系及び/又はコバルト(Co)系超合金を始めとする超合金、Ni−W合金、Ni−Mn合金、小量のNi及び/又はCoを含有する金(「硬金(hard gold)」)、W、金属間化合物、固溶体及び/又は第2の相強化をし易い材料、及び六角形構造体又は低い積層欠陥エネルギーを有する材料のような塑性変形を抑制する結晶構造を有する材料がある。
【0028】
梁104を実質的に比較的高い融解温度を有するクリープ抵抗性材料から形成することによって、本出願人は、使用中のかなりのクリープが回避され得、その結果梁と接点102との間の分離間隔dを殆ど一定に、例えばその初期値の20〜40%以内に、1年以下、場合によっては20年を超える使用中の時間維持することができるということを観察した。言い換えると、梁104がかけられた力により非接触位置(梁が接点102から間隔dだけ分離されている)から接触位置の方に押しやられ、次いでそのかけられた力が除かれる各場合に、その梁は実質的に非接触位置に戻り、その結果梁は接点から間隔dだけ分離される。ここで、dの値は40%未満、場合によっては20%未満だけ変化する。
【0029】
代表的なクリープ抵抗性材料はNiとWを含む合金である。本出願人は、少なくとも65原子%のNiと少なくとも1原子%のWを含有する合金が高まったクリープ抵抗性を示す傾向があることを見出した。本出願人によりクリープに対してかかる抵抗を示すことが観察された合金の1つの具体的な例はNi−20原子%W、すなわち、NiとWを含み、W成分が材料の20原子%である材料である。しかし、前述の通り、実質的にNiと、約1原子%もの少ないW、30原子%以下、又はそれ以上の範囲のWとを含んでなる合金が、改良されたクリープ抵抗性を示すと期待され、クリープが抑制される程度はWの含有率で決まる(scale)。
【0030】
幾つかの実施形態による(例えば、直流条件下で電気メッキされた)NiとWの合金は約1μm以下、場合によっては10nm程度の大きさまでの平均結晶粒径を有する。例えば、80原子%のNiと20原子%のWの合金は電着により約10〜100nmの平均結晶粒径を有するNi−W材料の膜を生成し得る。このNi−W膜はその後、例えば、300〜450℃で30分以上アニーリングすることによって、高温に曝露することで材料のクリープ抵抗性をさらに高め得る。一般に、本出願人は、比較的低い温度であるが、使用条件中体験する温度よりも高い温度(高電力分配用途では、約250℃以下である傾向がある)でのNi−W膜のアニーリングが、このアニーリングしたNi−W膜から形成される構造体が受ける時間依存性の変形の程度を制限するように作用することを見出した。
【0031】
前述の通り、時間依存性の変形を抑制するように構成された金属材料から実質的に形成された上記スイッチ構造体100の製造に伴うプロセス温度は中程度であり450℃未満であり得るが、高いアニーリング温度、例えば700℃まで、又はそれ以上の範囲も適している。高まったクリープ抵抗特性を持ち込むのに有効なアニーリングを比較的低い温度、例えば250℃〜500℃で実行できる能力は、ケイ素から導体を形成するのに必要とされる実質的に高い温度、例えば従来のドーピング法を使用するときの通例900℃を超える温度と対照的である。スイッチ構造体100のアニーリングに伴うこうした低いプロセス温度によって、スイッチ構造体と例えばMOSFETのような温度感受性の構成部品との一体化が容易になる。
【0032】
梁104のクリープ抵抗性材料として、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ag、Ta及びWの任意の組合せを含む他の二元合金が挙げられる。また、梁104のクリープ抵抗性材料として非晶質金属も挙げられる。適切な非晶質金属の例としては、約80原子%以上のNi、約1〜20原子%のW、及び約1原子%以下のFeを含む少なくともNi、W、及び鉄(Fe)の合金がある。これらの材料は長距離の原子秩序(long-range atomic order)がないことを特徴としており、一般に塑性変形に対して比較的抵抗性であると考えられる。多くの非晶質合金は多くの異なる元素を混合することによって形成されるが、これらの元素は多くの場合多様な原子の大きさを有するので、構成成分の原子は液体状態から冷却される間平衡の結晶性状態に自身を配位することができない。非晶質金属のその他の例としては、限定されることはないが、55原子%のパラジウム(Pd)、22.5原子%の鉛、及び22.5原子%のアンチモンを含んでなる合金、41.2原子%のジルコニウム(Zr)、13.8原子%のチタン(Ti)、12.5原子%の銅(Cu)、10原子%のNi、及び22.5原子%のベリリウムを含んでなる合金、並びにZr、Pd、Fe、Ti、Cu、又はマグネシウムを主成分とする非晶質合金がある。
【0033】
クリープ抵抗性材料の主要な構成成分は非磁性の金属材料であり得る。例えば、梁104はアルミニウム、白金、銀、及び/又はCuで形成され得る。非磁性材料の梁104を形成することで、スイッチ構造体が磁気共鳴イメージング用途のような強磁場の存在下で機能することが期待される環境でスイッチ構造体100を使用することが容易になり得る。
【0034】
さらに、本出願人の発見に鑑みて、梁104は、梁の実質的な部分を構成する金属の1つと関連する最低の融解温度の50%を下回る、さらには30%を下回る温度を含む使用条件下で、梁を実質的に形成する金属材料の時間依存性の塑性変形に起因する梁の永久的な変形を制限するように構成し得る。梁104の永久的な変形を制限する実施形態では、梁は、梁の機械的挙動が構成成分の金属材料の機械的挙動によって概ね又ははっきり決定されるとき、金属材料で「実質的に形成されている」と考えることができる。梁は、時には、梁が接点102から分離間隔dだけ離れている開放位置に配置されることができる。他の時には、梁104は、梁が接点102と接触する閉鎖位置に配置されることができる。梁104の永久的な変形が制限されるスイッチ構造体100の作動中、梁104は、室温〜金属材料の融解温度(又は、金属材料が複数の別個の金属材料を含む場合は、梁を実質的に形成している金属材料の1つの融解温度)の約半分の温度で、少なくとも107秒の累積時間の間閉鎖位置に変形し得る。梁104は、かかる変形の後、外力の不在下における梁104と接点102との間の分離間隔dが累積時間に渡って20%未満だけ変化するように幾何学的に構成し得る。すなわち、累積時間に渡る任意の時間でのdの測定値は20%以上変化しない結果をもたらすであろう。
【0035】
例えば、図6A〜6Cを参照して、時間t0<0において、梁104は、梁が接点102から分離間隔d=d0だけ離れている第1の非接触位置に配置されることができる。次に、時間t1=0で、梁が接点102と接触するように、梁を第2の接触位置に変形させるために梁104に力Fをかけることができる。その後、梁104は、力Fを取り除くことができる時間t2=107秒まで維持することができる。力が除かれると、梁104は、接点102から分離間隔d=d1だけ離れている非接触位置に戻ることができる。
【0036】
梁104が受ける応力が、梁を実質的に形成している金属材料の永久的な塑性変形を生じさせるのに必要なものよりも小さいとき、すなわち、梁が時間依存性の塑性変形の影響を全く受けないとき、d0=d1である。永久的な塑性変形が起こらない条件下で、梁104を第2の位置に維持するのに必要とされる力Fの大きさ、及び第2の位置に配置されたときに梁に蓄えられる機械的エネルギーの量は、各々、時間の関数として一定のままでとどまると期待される。しかしながら、多少の時間依存性塑性変形が生じる条件下では、d1はd0未満であり、梁104は、接点102と梁との間の分離間隔dが所定の時間の間、スイッチ構造体100が適正に機能できるように充分なままでいることを確保するように構成することができる。
【0037】
例えば、梁104は、確実にd1=0.8d0となるように構成することができる。梁104は変形中に、梁が外力の不在下で実質的に第1の位置をとるようにさせるのに充分なエネルギー蓄えることができる(例えば、20%以内)。梁104とアンカー107はその間に角θを定め得、梁104は、角θが、梁に作用する外力の不在下で、梁が第1と第2の位置の間で変形する結果として0.5%未満、場合によっては0.1%未満だけ変化するように構成することができる。
【0038】
本出願人はさらに、例えば図1に示すような片持ち梁を含むスイッチ構造体の場合、梁のアンカー(又は、その他梁が飛び出している構造体)内の時間依存性の塑性変形が、全体の梁構造の永久的な変化の有意な原因である可能性があることを発見した。d1=0.8d0である実施形態の場合、梁104は、梁が第2の位置に変形されたとき、アンカーの最大非局在化定常状態歪み速度が約10-12-1未満にとどまるように構成することができる。梁104は、アンカー106が受ける合計の塑性歪みが、梁の接触位置への最初の変形時(梁内に有意なクリープが生じる前)にアンカー内に引き起こされた弾性歪みの数%未満にとどまるように構成することができる。例えば、梁104の第2の位置への最初の変形がアンカー106内に第1の弾性歪みを引き起こし、その後少なくとも107秒の累積時間の間梁が第2の位置に変形される場合、梁は、アンカーが第1の弾性歪みの約半分未満の最大の非局部的合計塑性歪みを受けるように構成することができる。
【0039】
梁104は、梁の変形の間にアンカー106に生じた応力を閾値(これを超えると過大な塑性変形が生じるであろう)よりも低く制限するように設計することができる。この閾値応力は、梁104を変形させるときの温度、用途内で許容することができる梁の形状変化の量、及び梁を実質的に形成している材料(材料の組成と微細構造の両方を含む)の1以上に依存するであろう。
【0040】
例えば、スイッチ構造体100が梁104を実質的に形成している材料の融解温度の約半分未満の温度で作動する用途に対して、本出願人は、梁が少なくとも65原子%のニッケルと少なくとも1原子%のタングステンを有する合金である構成成分の金属材料を含む場合、アンカーの非局在化部分(すなわち、高度に局在化した応力集中領域から離れている)の応力が1000MPa未満であるとき、許容可能な性能(例えば、107秒又はさらには108秒までの変形の累積時間にわたる梁と接点との間の分離間隔の20%未満の変化)を達成することができるということを見出した。別の例として、本出願人は、アンカーの非局在化部分(すなわち、高度に局在化した応力集中領域から離れている)の応力が45MPa未満であるとき、1年間にわたり許容可能な性能を達成することができ、また、アンカーの非局在化部分(すなわち、高度に局在化した応力集中領域から離れている)の応力が20MPa未満であるとき、20年間にわたり許容可能な性能を達成することができるということを見出した。これらの例で、構成成分の金属材料は80原子%の金と20原子%のニッケルを含み得る。本出願人はまた、純粋な金で形成された梁で、アンカーの非局在化部分における応力が25MPa未満であるとき、1年の期間にわたって許容可能な性能を達成することができるということも見出した。
【0041】
全体として、梁104はアンカー106内の応力及び/又は塑性歪みを制限するように設計することができる。例えば、図7〜図9を参照して、スイッチ構造体200は、接点202と、実質的に導電性の材料(例えば、金属)で形成された片持ち梁204のような導電性要素とを含むことができる。梁204は、梁と一体化され得、基板208のような下にある支持構造体と梁を接続するアンカー206とベース207によって支持することができる。接点202も基板208によって支持され得る。スイッチ構造体200はまた、梁204を作動させるように構成された電極210も含み得る。
【0042】
多様な物理及び/又は設計パラメーターがアンカー206内の応力に影響し得る。スイッチ構造体200の特性は、例えば、梁の長さLB、梁の幅wB、梁の厚さtB、接点の長さLC、接点の幅wC、接点の厚さtC、梁−接点の分離間隔(外力の不在下)dBC、梁−電極の重なり長さLE(梁204の端部205から測定)、電極の幅wE、梁−電極の分離間隔(外力の不在下)dBE、梁組成物の材料特性、及び梁と電極21との間の最大電圧差Vmaxのいずれかで特徴付けられ得る。予想される作動温度と併せてこれらのパラメーターの値の選択に基づいて、スイッチ構造体200の1年を超え、さらには20年を超える作動寿命を可能にするのに充分に低い応力をアンカー206領域内に有するスイッチ構造体を製造することができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、梁204の厚さtBは少なくとも1μmであることができる。約1μm以上の厚さtBは後の高温におけるプロセスに起因する梁のその後の変形を制限し得る。梁204の長さLBは少なくとも約20μmであることができる。接点202は、梁の自由端205の20%以内である重なり長さLoで定められる面積に渡って梁204と対向するように配置することができる。電極210は梁204の自由端205の50%以内、幾つかの実施形態では自由端の20〜30%以内に配置し得る。
【0044】
梁204は、厚さtBの約200倍未満の長さLBを有することができ、また梁と関連する接点202との間の分離間隔dBCの約1000倍未満である。梁204が大きめのアスペクト比を有するか又は接点202から小さめの距離だけ離れている場合、接触位置に変形するときに梁内に引き起こされる応力は比較的に低い可能性がある。しかし、梁204の長さが増大すると、所与の領域に配置することができる梁の数は減少する。さらに、分離間隔dBCが低下すると、クリープに関連する変形以外の故障機構がかなりになり得る。例えば、梁204と接点202が互いに近付くと、所与の電圧差でそれらの間の引力が増大し、この引力は梁が意図せずに(例えば、電極210に電圧がかからなくても)接触位置をとることになるほど十分に大きくなることができよう。また、梁204と接点202との間の領域は、例えば電界放出に起因する電気的故障を起こし易くなり得る。
【0045】
使用中の有意なクリープを避けるように梁104、204を構成することによって、梁と接点102、202との間の分離間隔dBCを、かなり一定に、例えば、1年以下、場合によっては20年(幾つかの用途の必要条件)もの使用中、その初期値の20%以内に維持することができる。言い換えると、梁104、204がかかった力によって非接触位置(梁が距離dBCだけ接点102、202から離れている)から接触位置の方へ押しやられ、その後そのかかった力が取り除かれる各場合において、梁は、梁が接点から距離dBCだけ分離されるように非接触位置に実質的に戻ることになり、このときのdBCの値は20%未満変化する。
【0046】
梁材料及び作動温度の選択を含めてスイッチ構造体200の上記設計パラメーターの値の選択に基づいて、本出願人は、アンカー206領域の応力が、スイッチ構造体200に対して、少なくとも1年で20年を超える作動寿命を可能にする程充分に低いスイッチ構造体を製造することができるということを見出した(例えば、梁204と接点202との間の分離間隔の変化が20%未満、すなわち、d1=0.8d0)。下記表に、本出願人がかかる許容可能な性能を観察したパラメーター値、作動温度、及び梁材料の幾つかの組合せを示す。
【0047】
【表1】

実質的に金属材料で形成される上記スイッチ構造体100の製造に関連するプロセス温度は中程度であり、通常450℃未満である。これは、ケイ素から導体を形成するのに必要とされる温度(従来のドーピング方法を使用する場合、通常900℃を超える)と対照的である。このスイッチ構造体100に関連する低いプロセス温度のため、例えばMOSFETのような温度−感受性の構成部品とスイッチ構造体との一体化が容易になり得る。
【0048】
前述のように、図1のスイッチ構造体100のようなスイッチ構造体は、従来の微細加工技術を用いて基板上に製作することができる。例えば、図10A〜10Eを参照すると、一例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体を製造するための製作プロセスの概略図が示されている。先ず、基板308に、電極310とその上に配置された接点302とを設けることができる。次に、二酸化ケイ素の層330(本明細書では除去可能な層ともいう)を例えば蒸着によって成膜し、パターン化して電極310と接点302を包囲する(図10A)。次いで、薄い接着層332(例えば、チタン)、シード層334(例えば、金)、及び金属層336(例えば、Ni−4原子%W)を電気メッキによって成膜することができる(図10B)。次に、フォトレジストの層338を設け、従来のフォトリソグラフィーを用いてパターン化し(図10C)、その後金属、シード、及び接着層336、334、332をエッチングして梁304を形成した後、フォトレジストを除去する(図10D)。最後に、梁304を支持しており、電極310と接点302を包囲する二酸化ケイ素の層330を除去する(図10E)。図10Fに示されているように、スイッチ構造体装置300は、保護性のキャップ340により封入し気密に封止し得る。この保護性のキャップ340は、ガラスフリットの介在層(図示せず)により、例えば約300〜450℃の範囲の温度で15分間基板308に接合される。上記の製作プロセスで、二酸化ケイ素の層330の代わりに、例えば電着銅の層のような他の除去可能な層を使用してもよい。
【0049】
次に図11〜図13を参照すると、別の例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体400が幾つかの図に示されている。スイッチ構造体は接点402と、実質的に導電性の材料(例えば、金属)で形成された片持ち梁404のような導電性要素とを含むことができる。梁404はアンカー406とベース407により支持することができ、これらは梁と一体化し得、また基板408のような下にある支持構造体に梁を接続する役目をし得る。スイッチ構造体400はまた、梁404を作動させるように構成された電極410も含み得る。梁404は幅wB1を有する第1の梁部分404aと幅wB2>wB1を有する第2の梁部分404bとを含み得る。電極410は、大まかにwB2と等しくし得る幅wEを有することができる。このように、電極410によりもたらされる作動させる力は第2の梁部分404bと電極の対応する幅を調節することによって調節することができる。第2の梁部分404bもまた、大まかにいって電極410の長さLEと等しい長さLB2を有し得る。
【0050】
図14と15は、別の例の実施形態に従って構成されたスイッチ構造体500の図である。スイッチ構造体は接点502と、アンカー506とベース507により支持された片持ち梁504とを含むことができる。スイッチ構造体500はまた、梁504を作動させるように構成された電極510も含み得る。梁504は幅wBを有することができ、電極510は梁の幅と異なり得る幅wEを有することができる。wE>wBの場合、電極510により生じ梁504に作用する静電気力は梁の効率的な作動を引き起こし得、恐らくは梁を作動させるのに必要とされるエネルギーを低くする。接点502は幾つかの別個の接点構造体502a、502bを含み得、梁504は各々の接点構造体に並列に、又は直列に電流を提供し得る。
【0051】
図17を参照して、幾つかの実施形態では、スイッチ構造体600は、共通の第2の梁部分604cに接続された複数の第1の片持ち梁部分604a、604bを有する導電性要素604を含み得る。図18を参照して、スイッチ構造体700は対向する接点702と梁704を含み得る。梁704は、梁を作動させたときに接点702と接触するように構成された突起部709を含み得る。梁704のかかる構成により、関連する電極710の厚さtEとほぼ等しい厚さtCを有する接点702が可能になり得る。
【0052】
実施形態はNi−Wのような合金の電着で実施し得る。広範囲の条件下で、電気メッキしたNi−W及び他の二元電気メッキ合金は約10nm程度の平均の結晶粒径を有するナノ結晶性材料であることができる。これは、通例10〜100μm(10000〜100000nm)の範囲の結晶粒径を有する従来のエンジニアリング材料よりも3桁(103)小さい大きさである。ナノ結晶性の結晶粒径は、平衡とはかけ離れて作動する電気メッキプロセスの特性である。かかる代表的なニッケル−タングステン合金メッキプロセスは、ENLOY(登録商標)Ni−500という名称で販売されている合金を形成するためにWest Haven,CtのEnthone Inc.から入手可能である。ENLOY(登録商標)はEnthone Inc.の登録商標である。このメッキプロセスは60℃、電流密度60mA/cm2、pH7.5で作動し得る。すなわち、電気メッキプロセスにおいて原子が互いの上に成膜する速度は、比較的大きい結晶粒径によって特徴付けられる低エネルギー状態に原子が整列することができる速度よりも速い可能性がある。一般に、電気メッキした材料はまた、比較的高い密度の点欠陥、例えば空孔(空隙)及び格子間不純物(例えば、水溶液からのメッキ中の還元反応の副生成物である水素)、並びに線欠陥、例えば転位も含有する。小さい結晶粒径と高い欠陥密度のため、一般に電気メッキした材料、特にNi−Wは、他のプロセスで製造された合金とは非常に異なる機械的性質を有することができる。
【0053】
梁の材料を500℃(又は融点の約1/3)未満の低い温度で熱処理すると、限定された結晶粒成長が観察され、微細構造の制限された変化が期待される。しかしながら、図20Aと20Bに示されているように、かかるアニーリングは材料のクリープ抵抗性を大いに高めることができる。いかなる特定の理論にも縛られることはないが、加熱の際に拡散速度が増大すると、欠陥密度が低下することができ、改良されたクリープ抵抗性に至ると考えられる。すなわち、比較的低い温度の熱処理でも不純物の移動、空孔の充填、転位の絶滅及び結晶粒界の整列が可能になり、かかる過剰の欠陥の除去に伴って、材料は低いエネルギー状態に到達する。前記電気メッキプロセスで、成膜直後の金属、例えばNi−Wのような合金は、小さいナノ結晶性結晶粒径と、比較的高いエネルギー状態を導く比較的大きい数のクエンチイン(quenched-in)欠陥との組合せを有する。この高い欠陥密度は、(例えば、拡散、結晶粒界ずり(sliding)、又はその他の機構を介して)緩和された構造体の場合よりも急速な変形を生じさせる。この金属の構造緩和は比較的低い温度で比較的短い時間のアニーリングで行うことができ、欠陥濃度を低減し、その結果クリープ抵抗性を改善することができる。例えば、Ni−W内のH及びO含有率の測定可能な減少は、成膜直後の材料を450℃でたった15分加熱した後に観察される。特に、H含有率はほぼ10倍減少することが観察され、O含有率は多少少ないが、それでもかなりの程度減少するのが見られた。加えて、アニーリングの際に原子構造の緩和が起こり、結晶粒界に沿って大きいレジストりーを付与することも観察されている。図19Aと19Bはフィルター処理した透過型電子顕微鏡(TEM)像であり、結晶秩序のかかる差を例証している。
【0054】
図19Aは結晶粒界を形成するように合致する異なる配向の原子平面を示す結晶粒界を示し、図19Bは比較的低い温度の熱処理後の結晶粒界を示す。
【0055】
図19Aの電着したNi−Wの成膜したままの(アニーリングしてない)試料の結晶粒界は、結晶粒間の比較的不規則な界面を有し、比較的大きい数の欠陥を含有している。およそ28の転位(欠陥)が見られる。図19Bは電着したNi−Wの類似の試料の熱処理(アニーリング)後の類似の結晶粒間の界面に沿って高まったレジストりーを示す。アニーリングにより、結晶粒界に沿って良好なレジストりーが得られる。レジストりーの向上によって欠陥は減る。図19Bではおよそ11の転位が観察される。
【0056】
いかなる特定の理論にも縛られることはないが、アニーリングの結果得られる構造緩和はMEMS用途に対する機械的特性にかなりの影響を及ぼし、その結果装置の寿命が実質的に改良されるようである。多くのMEMS用途において、構成部品が繰返し又は連続的に機械的応力を受けるとき、その構成部品が負荷の下で永久的な変形を受けないことが必須であると考えられる。梁104に使用するのに適した一例の電気メッキしたNi−W材料の性能を評価するために、Ni−W材料の成膜したままとアニーリングした試料との応力緩和の比較を行った。塑性変形に対する感受性を、応力緩和試験で定量化した。すなわち、初期の歪みを試験片に加え、各々の試験片で得られた負荷の低下を一定の期間に渡って記録した。試料片が緩和した程度で、梁の所与の変位を支えるのに必要とされる負荷は減少した。良好なクリープ抵抗性を有する材料は、低減した緩和と低減した負荷の経時的低下を示す。300℃と400℃の試験温度で行った二組の評価の結果を図20に示す。
【0057】
300℃で実施した試験に対して図20Aに示す結果から分かるように、「熱処理」Ni−Wは「成膜したままの」Ni−W(すなわち、熱処理なしの同じ材料)よりも少ない応力緩和を示した。実際、「熱処理」材料では、ほぼ106秒までに渡る時間の間負荷特性に本質的に変化はなかったのに対して、「成膜したままの」材料は同じ時間の間約40%程度のかなりの負荷の低下を示した。400℃で実施した試験に対して図20Bに示す結果でも、高い温度であっても、「熱処理」Ni−Wは「成膜したままの」Ni−Wより少ない応力緩和を示している。「成膜したままの」層は約80%の負荷の変化を示し、一方「熱処理」材料は約25%しか緩和しなかった。
【0058】
この効果を支持する理論は完全には確立されていないが、成膜したままの合金のアニーリングの結果欠陥が実質的に絶滅し、この絶滅により応力緩和性能が改良されると考えられる。成膜したままの、すなわちアニーリングなしの材料に存在するより大きい欠陥密度のため、より高い速度の塑性変形が可能になると考えられる。欠陥密度がアニーリングにより低減すると、その改変された材料は、同じ量の永久的な歪みを招くまでに、より長い時間より高い負荷を支えることができる。この改良はそのまま、MEMS及びNEMS装置の寿命が改良されることを意味する。図19に示す欠陥の観察に部分的に基づいて、本明細書に提示した実施形態に従うアニーリングは、成膜した金属層内の欠陥密度を少なくとも50%低減することができ、また適当な温度で充分な持続時間行ったとき、欠陥密度を60若しくは70%低減することができ、さらには幾何学的に必要な欠陥のみが存在する限界まで低減することができると考えられる。
【0059】
前述のように、図1のスイッチ構造体100のようなスイッチ構造体は、従来の微細加工技術を用いて基板上に製作することができる。ここで、再び図10A〜10Fを参照して、Ni−W合金を含んでなる片持ち梁を有する一例の実施形態に従ってアニーリング工程を用いてかかるスイッチ構造体装置を構築する別の製作手順を説明する。このプロセスは従来のケイ素基板308で始めて、その上に電極310と接点302を形成する。次いで、二酸化ケイ素の層330を例えば化学的蒸着により成膜して、電極310と接点302を包囲する。次に、二酸化ケイ素の層330を図10Aに示すようにパターン化する。薄い接着層332(例えば、チタン)を、二酸化ケイ素の層330を覆って成膜する。次に、シード層334を接着層332の上に成膜する。Ni−W梁を有する図示した実施形態の場合、シード層はスパッターしたAuであり得る。次に、金属層336のような導電性の層を電気メッキにより成膜する。上記一連の層を示す図10B参照。より一般的には、金属層336は広範な金属から選択される純粋な金属又は合金であり得る。本例において、金属層336は20原子%のWと合金化したNiからなり得るが、この組成は1原子%未満から50原子%を超えるWまでの範囲であることができよう。
【0060】
次に図10Cを参照して、フォトレジストの層338を設け、従来のフォトリソグラフィーを用いてパターン化し、金属、シード、及び接着層336、334、332をエッチングして梁304を形成する。フォトレジスト除去後のプレリリース構造体を図10Dに示す。一実施形態では、アニーリングはこのプレリリース構造体に対しておよそ500℃で24時間行う。より一般的には、アニーリングは約300℃〜600℃の範囲又は導電性の層の融解温度の10〜50%の範囲で行い得るが、これより低いか又は高いアニーリング温度も満足であり得る。アニーリング時間は1時間未満から48時間を越える範囲であることができる。アニーリングした後、基板308上に梁304を支持する二酸化ケイ素の層330を、等方性エッチング液で除去し、電極310と接点302が包囲されていない片持ち梁304を得る。その結果として、電極310は、梁を移動させ、接点302と梁304との電気接点を生じさせるクーロン電荷を提供することができる。図10Fに示されているように、スイッチ構造体装置300は保護性のキャップ340で封入し、気密に封止し得る。このキャップは、ガラスフリットの介在層(図示せず)により、例えば約300〜450℃の範囲の温度で15分かけて基板に接合される。電気的接続(図示せず)をキャップ340の下又はこれを貫通して設け得る。
【0061】
上記例において、アニーリングはプレリリース構造体に対して、すなわち二酸化ケイ素の包囲層330の除去前に行う。他の実施形態では、アニーリングは二酸化ケイ素の層330の除去後、例えば、保護性のキャップ340の接合と同時に行うことができる。キャップ340を所定の位置に接合するのと同時に行う場合、温度は48時間までの間約300℃〜600℃の範囲であることができる。
【0062】
代表的な実施形態を参照して本発明の幾つかの特徴を例示し説明して来たが、当業者には多くの修正と変更が明らかであろう。例えば、例示の実施形態に対して、図1のスイッチ構造体100の導電性要素を片持ち梁によって例示したが、例えば、固定−固定梁、ねじり素子、及びダイアフラムを含めて他の変形可能な接点構造体も考えられる。さらに、開示した実施形態では、時間依存性の変形を抑制するように構成されたモノリシックな金属層を有する梁について記載したが、他の実施形態は一部又は全てが時間依存性の塑性変形を抑制するように構成され得る複数の層の金属材料を含んでなる梁を含む。さらに、梁104に関してNi−W合金を説明して来たが、梁及びその他の構造体は多数の他の金属及び例えば、Ni−Co、Ni−Mn、Au−Wを始めとする合金から製作してもよい。これら様々な合金中の金属の相対的な割合は大きく変化し得る。例えば、梁104に使用するNi−W合金は1%未満〜50原子%以上のWを含有し得るが、約20〜30原子%のWを含む合金がより大きいクリープ抵抗性を示し得る。また、開示したアニーリング時間とアニーリング温度は代表的な値から大きく変わり得る。例えば、アニーリング時間は1時間未満〜数日以上の範囲であり得、アニーリング温度は本明細書に記載した代表的な範囲に限定されない。多数の電気メッキプロセスが本発明を実施するのに適している。
【0063】
より一般的に、本明細書に記載した実施形態及び概念は広範囲のマイクロ電気機械システムs(MEMS)及びナノ電気機械システム(NEMS)に応用可能であり得る。ケイ素を含むMEMS構成部品(例えば、固定−固定梁、回転可能なギア、ねじり素子、又はダイアフラム)のその場での形成には、ケイ素基板のような剛性の層上に構成部品層を成膜することが含まれることが分かる。これらの同じ構造体は本教示に従って可撓性の基板又は剛性の基板(例えば、単結晶ケイ素、ポリシリコン、他の組成の半導体材料、二酸化ケイ素、さらにはセラミック層)上に成膜した金属層を用いて製造することができる。これら及びその他の構造体はまた、本教示に従って可撓性の基板上に金属層を成膜することによって製造することができる。また、自立性の梁、固定−固定梁、ギア、ねじり素子及びダイアフラムは多様な成膜プロセス(例えば、物理的蒸着、化学的蒸着、スパッタリング、無電解成膜、又は電着)のいずれかで製作することができる。これら及びさらに他の構造体は電気用途、電気機械用途及び純粋に機械的用途用に製作し得る。
【0064】
本発明の範囲は後記特許請求の範囲によってのみ限定され、特許請求の範囲はかかる修正と変更の全てを本発明の真の思想内に入るものとして包含するものと了解されたい。
【符号の説明】
【0065】
102 接点
104 梁
110 電極
300 スイッチ構造体装置
302 接点
308 基板
330 二酸化ケイ素
332 接着層
336 金属層
340 気密封止キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(308)を準備し、
基板(308)の上に除去可能な層(330)を形成し、
少なくとも50原子%の金属を含む金属層(336)を除去可能な層(330)の上に成膜し、
金属層(336)をパターン化しエッチングして除去可能な層(330)の上に構造体を画成し、
除去可能な層(330)を除去し、
金属層(336)の上に気密封止キャップ(340)を接合するのに必要な時間を越えて金属層(336)を加熱する
ことを含む方法。
【請求項2】
金属層(336)が導電性であり、加熱を実行する前に第1の欠陥密度により特徴付けられ、
加熱が金属層(336)の時間依存性の塑性変形特性を改良し、
金属層(336)の欠陥密度を低減するのに各々充分な最低温度で最小の持続時間加熱を実行する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
加熱後、欠陥密度が50%より多く低減する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
加熱後、欠陥密度が70%より多く低減する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
除去可能な層(330)を除去した後加熱を実行する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
パターン化しエッチングした後、構造体が片持ち梁(104)の形態であり、その上にキャップ(340)を形成して構造体を気密に封止し得る、請求項1記載の方法。
【請求項7】
さらに、基板(308)上に接点(102)及び電極(110)の両方を形成し、金属層(336)を成膜する前に接点(102)及び電極(110)の両方を除去可能な層(330)で包囲して、除去可能な層(330)の除去後、金属層(336)に力をかけることで、金属層(336)の一部分が移動して接点(102)と物理的に接触できるようにする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
金属層(338)を成膜することが、基板(308)の上に接着層(332)を形成し、接着層(332)の上にシード層(334)を成膜することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
金属層(336)を電気メッキプロセスで成膜する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
金属層(336)がWと合金化されたNiを含む金属層(336)からなる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
基板(308)を準備し、
基板(308)の上に除去可能な層(330)を形成し、
少なくとも50原子%の金属を含む金属層(336)を除去可能な層(330)の上に成膜し、
金属層(336)をパターン化しエッチングして、除去可能な層(330)の上に構造体を画成し、
除去可能な層(330)を除去し、
金属層(336)の上に気密封止キャップ(340)を接合するのに必要な時間を越えて金属層(336)を加熱する
ことを含む請求項1記載の方法で製造された構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−134144(P2012−134144A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−275135(P2011−275135)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】