説明

経路探索方法、経路探索装置及びコンピュータプログラム

【課題】 有料道路の通行料金が最も安い最安経路を正確に探索することができる経路探索方法を提供する。
【解決手段】 本発明の経路探索方法は、開始リンクlsと終了リンクleとを取得する第1のステップと、有料道路の通行料金を含む経路コストが最小となる今回の最小コスト経路を、開始リンクlsから前回の最小コスト経路の末尾に繋がる中間リンクlmまでの今回の経路の中から選択する処理を、終了リンクleに到達するまで繰り返し実行する第2のステップと、を含む。そして、第2ステップにおいて、通行料金が確定している今回の経路については、今回の最小コスト経路の選択を確定し、通行料金が確定していない今回の経路については、次回以降の最小コスト経路の候補として記憶し、今回の最小コスト経路としての選択を確定させない持ち越し処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発地点から目的地点までの経路の中から、有料道路の通行料金が安い経路を正確に探索することができる、経路探索方法、経路探索装置及びこれらを実行するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自車両を出発地点から目的地点まで誘導する経路探索装置(例えば、車載ナビゲーション装置)は既に周知である。この経路探索装置は、出発地点から目的地点までの推奨経路を所定の経路探索ロジックを用いて演算し、この演算結果である推奨経路を、ディスプレイやスピーカ等の出力装置を介して画像や音声で搭乗者に案内するものである。
かかる推奨経路の探索手法は、例えば、開始リンクからのリンクコストの累計(経路コスト)が最小となる最小コスト経路を特定のアルゴリズムで算出するのが一般的であり、その探索アルゴリズムとして、例えばダイクストラ法が利用される(特許文献1参照)。
【0003】
また、上記ダイクストラ法を利用した経路探索方法として、例えば、旅行時間と、有料道路の通行料金を旅行時間に換算したコスト値の和を、各中間リンクに対するリンクコストとして定義することにより、有料道路の通行料金がなるべく安くなる推奨経路を探索するものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−44547号公報
【特許文献2】特開2005−134191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7は、上記ダイクストラ法による探索アルゴリズムを説明するためのリンクのネットワーク図である。なお、図7において、l(小文字のエル)は道路ネットワークを構成するリンクであり、nはそのリンクlの接続点(ノード)である。
また、lsは開始リンク、leは終了リンクであり、これらは出発地点及び目的地点に最も近いリンクlとして選択される。lm(i=1,2,3,……)は、開始リンクlsと終了リンクleの間の中間リンクである。
【0006】
ダイクストラ法による探索アルゴリズムは、一般に次の(1)〜(4)の処理より構成されている。
(1) 開始リンクlsと終了リンクleを決定する。
(2) 開始リンクlsからその末尾に繋がる中間リンクlmまでの経路の中から、予め定義された経路コスト(旅行時間等)が最小となる最小コスト経路を選択する。
(3) (2)の処理で得られた前回の最小コスト経路の末尾に、この末尾から枝分かれする中間リンクlmを接続し、開始リンクlsからその中間リンクlmまでの今回の経路の中から、経路コストが最小となる今回の最小コスト経路を選択し、前回の最小コスト経路と置き換えて更新する。
【0007】
(4) (3)の処理において、選択済みの既知の最小コスト経路を「前回」とし、その末尾に更に中間リンクlmを接続する経路を「今回」として、当該(3)の処理を、終了リンクleに到達するまで繰り返し実行する。
なお、この(4)の繰り返し処理においては、通常、開始リンクlsと終了リンクleを含む、所定エリアの範囲内にある中間リンクlmが探索対象とされる。
【0008】
ここで、図7のネットワークにおいて、開始リンクlsからその末尾に繋がる中間リンクlm1,lm4,lm7までの3つの経路のうち、lm1を通る経路コストが最小であるとする。
この場合、lm1の末尾にはlm2しか接続されていないので、ls→lm1→lm2→lm3の経路がlm3に至るまでの最小コスト経路となる。従って、この中間リンクlm3以降の終了リンクleまでの経路探索を行う場合には、必ず、lm1→lm2の経路が採用されるので、中間リンクlm3以降の探索処理が単純化される。
【0009】
このように、ダイクストラ法による探索アルゴリズムでは、前回の最小コスト経路の末尾に中間リンクlmを接続してなる1又は複数の今回の経路の中から、最小の経路コストとなる今回の最小コスト経路を1本だけ残す処理になっているので、例えば総当たりのアルゴリズムによる経路探索に比べて、計算量が大幅に減少するという利点がある。
一方、前記特許文献2のように、旅行時間と有料道路の通行料金を旅行時間に換算したコスト値の和を、各中間リンクに対するリンクコストとして定義すれば、ダイクストラ法による探索アルゴリズムを利用して、通行料金の面でも有利な推奨経路を探索できる。
【0010】
しかし、上記の探索方法では、有料道路の通行料金の代わりに、その通行料金を旅行時間に換算したコスト値を、各中間リンクlmのリンクコストに便宜的に当てはめているだけであるから、有料道路の経路コストが一般道路よりも大きくなるという点で、出来るだけ安価な経路が選ばれ易くなるに過ぎず、通行料金が最も安い真の最安経路を厳密に探索できないという欠点がある。
図8は、ダイクストラ法による探索アルゴリズムにおける、上記課題を更に詳しく説明するための道路線形図である。
【0011】
図8において、実線は高速道路等の有料道路を示し、ICはその有料道路のインターチェンジを示している。また、破線の矢印は、各ICと繋がる一般道路の経路を示す。
ここで、有料道路の通行料金は、入口ICと出口ICが決まるまで確定しない。特に、ETC割引における区間割引や時間割引を考慮すると、この傾向は顕著である。従って、図8の道路線形図における、有料道路の途中である地点P1や地点P2においては、有料道路の通行料金が未だ確定していない。
【0012】
換言すると、探索途中の経路が有料道路の区間内の中間リンクlm(図8の地点P1や地点P2)に至った段階では、旅行時間や距離等の中間リンクlmごとに定まる経路コストについては一律に確定するが、有料道路の通行料金については、出口ICが分からないため厳密には確定しない。
従って、図8における地点P1,P2の通過時点では、3つのIC(a),IC(b),IC(c)のうちの、どこから有料道路に乗る経路が、最終的に通行料金が最小となるのか判断できない。
【0013】
ところが、従来のダイクストラ法による探索アルゴリズムでは、探索途中のすべての経路に対して、最小の経路コストとなる最小コスト経路を1つだけ選択する処理を実行することから、実際には、例えばIC(c)から有料道路に乗る経路の料金コストが最小であるような場合でも、地点P2における経路選択時において、IC(c)から有料道路に乗る経路が切り捨てられ、他のIC(a)やIC(b)から有料道路に乗る経路が最小コスト経路として選択されてしまう可能性がある。
【0014】
このように、従来のダイクストラ法による探索アルゴリズムでは、経路コストが最小となる最小コスト経路をその都度1本だけ残す処理を行うので、探索途中の経路が有料道路の区間中である場合には、その時点ではどの出口で有料道路を降りるか分からないことから、そもそも通行料金を厳密に特定することができず、このため、通行料金が最も安い最安経路を厳密に探索することができないという不都合がある。
なお、前記特許文献2では、この問題に対処するために、有料道路の利用区間が異なる経路を複数求め、これらの経路の経路コストを比較するという方法も提案されているが、この方法を用いても通行料金を最安とする経路が求まるとは限らない。
【0015】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、有料道路の通行料金が最も安い最安経路を正確に探索することができる経路探索方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の経路探索方法は、開始リンクと終了リンクとを取得する第1のステップと、有料道路の通行料金を含む経路コストが最小となる今回の最小コスト経路を、前記開始リンクから前回の前記最小コスト経路の末尾に繋がる中間リンクまでの今回の経路の中から選択する処理を、前記終了リンクに到達するまで繰り返し実行する第2のステップと、を含む経路探索方法であって、前記第2のステップにおいて、前記通行料金が確定している今回の経路については、今回の前記最小コスト経路の選択を確定し、前記通行料金が確定していない今回の経路については、次回以降の前記最小コスト経路の候補として記憶し、今回の前記最小コスト経路としての選択を確定させない持ち越し処理を実行することを特徴とする。
【0017】
本発明の経路探索方法によれば、上記第2のステップにおいて、通行料金が確定していない今回の経路については、次回以降の最小コスト経路の候補として記憶し、今回の最小コスト経路としての選択を確定させない持ち越し処理を実行するので、次回以降に有料道路を降りる経路があった時点で、通行料金を厳密に確定できるようになる。
このため、常に厳密に確定した通行料金を含む経路コストに基づいて、最小コスト経路の選択を実行することができ、有料道路の通行料金が最も安い最安経路を正確に探索することができる。
【0018】
本発明の経路探索方法において、より具体的には、前記経路コストは、次の(a)の通行料金と(b)の金額換算値との和によって定義することができる。
(a) 前記有料道路の通行料金
(b) 前記開始リンクからこれまでの経路の走行に要する時間、距離、エネルギー消費量及び環境負荷ガス排出量のうちの、少なくとも1つ又はそれらの組み合わせを金額に換算した換算値
この場合、上記走行時間、距離、エネルギー消費量及び環境負荷ガス排出量をも含めて、総合的に有利な最小コスト経路を探索することができる。
【0019】
なお、「エネルギー消費量」とは、内燃機関のみで駆動する車両の場合には、ガソリンその他の化石燃料やバイオ燃料等の燃料消費量であり、内燃機関と電動モータとで駆動するハイブリッド車の場合には、その燃料消費量に充放電量を加えてもよく、電動モータのみで駆動する電気自動車の場合には、充放電量である。
また、「環境負荷ガス排出量」とは、車両の走行に伴って排出される環境に影響を与えるガスの排出量のことをいい、例えば、CO2やNOx等の温室効果ガス又は有害ガスの排出量のことをいう。
【0020】
一方、前記第2のステップにおいて、前記通行料金が確定していない今回の経路の当該通行料金以外のコストが、前回の前記最小コスト経路の前記経路コストよりも劣っている場合(すなわち、その経路コストよりも大きい場合)には、通行料金が確定していない今回の経路がその後に最小コスト経路となることはあり得ないので、前記持ち越し処理を実行しないことが好ましい。
これにより、無駄な最小コスト経路の選択が次回以降に行われるのを防止でき、経路探索に必要な演算負荷を低減することができる。
【0021】
また、前記第2のステップにおいて、前記通行料金が確定していない今回の経路が複数ある場合には、前記通行料金以外のコストが予め設定された閾値以下の当該経路についてのみ前記持ち越し処理を実行したり、前記通行料金以外のコストが小さい方から選択した所定数の当該経路についてのみ前記持ち越し処理を実行したりすることが好ましい。
その理由は、上記通行料金が確定していない今回の経路を、次回以降の候補としてすべて無制限に残すこととすれば、次回以降に持ち越される経路数が増加し、経路探索に必要な演算負荷が過大となるからである。
【0022】
本発明の経路探索装置は、前記各ステップの経路探索処理を実行可能な装置よりなり、前記経路探索方法と同様の作用効果を奏する。
また、本発明のコンピュータプログラムは、上記各ステップの経路探索処理をコンピュータに事項させるためのコンピュータプログラムであって、前記経路探索方法と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
以上の通り、本発明によれば、有料道路の通行料金を含む経路コストが最小となる最小コスト経路の選択を順次繰り返す場合に、常に厳密に確定した通行料金を含む経路コストに基づいて最小コスト経路の選択を実行できるので、有料道路の通行料金が最も安い最安経路を正確に探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ナビゲーションシステムの全体構成を示す概略構成図である。
【図2】サーバ装置の機能ブロック図である。
【図3】カーナビゲーションのフローチャートである。
【図4】処理コンピュータの機能ブロック図である。
【図5】経路探索処理のフローチャート(前半)である。
【図6】経路探索処理のフローチャート(後半)である。
【図7】ダイクストラ法による探索アルゴリズムを説明するためのリンクのネットワーク図である。
【図8】ダイクストラ法による探索アルゴリズムの課題を説明するための道路線形図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔システムの全体構成〕
図1は、ナビゲーションシステムの全体構成を示す概略構成図であり、図2は、そのシステムを構成するサーバ装置の機能ブロック図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態のナビゲーションシステム1は、サーバ装置2と、複数の車両3にそれぞれ搭載された車載装置4(図2参照)とから構成されている。
なお、本明細書において、「車両」とは、自動車、原動機付き自転車、軽車両及びトロリーバス等のことをいう。また、「車載装置」とは、車両に搭載されており、その搭乗者に対して目的地までの経路を案内するいわゆるナビゲーション装置のことをいう。
【0026】
このナビゲーションシステム1は、予め入会登録された会員(ユーザ)の車両3自体をセンサとして、各車両3からサーバ装置2が情報収集し、メンバー間で相互に情報提供し合って運用することにより、サーバ装置2が各会員に対して有用な交通情報を提供するようにしたものである。
従って、本システム1によれば、通常のVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)情報とともに、このVICS情報に含まれていないより詳細かつ動的な交通情報を、各会員の車両3に提供することができる。
【0027】
本システム1のサーバ装置2は、専用の通信回線を介して交通情報センター5に接続されており、必要に応じてVICS情報を交通情報センター5から入手している。
また、サーバ装置2と路上の無線基地局7とがインターネット網6を通じて双方向通信可能となっており、各車両3の車両装置4は、搭乗者の携帯端末である携帯電話機8を介して、無線基地局7と双方向で通信可能である。このため、各車両3の車両装置4は、ほぼリアルタイムでサーバ装置2に対して情報を送受信可能となっている。
【0028】
なお、上記無線基地局7は、携帯電話機8のような移動体端末と通信可能となるように複数の地点に設置されたものであるが、その他に、無線通信機能を備える専用の車載無線機等と通信可能な路上基地局であってもよい。
また、本実施形態のサーバ装置2は、駐車場の満空情報や天候に関する情報もインターネット網6や専用回線を通じて関係各所から取得しており、これらの情報についても、各車両3の車載装置4に配信することができる。
【0029】
各車両3の車載装置4は、GPS(Global Positioning System )アンテナと、GPS受信機と、道路地図データベースと、入力デバイスと、ディスプレイ及びスピーカ等よりなる出力装置とを備えており、GPS受信機で検出した現在位置をディスプレイの画面上に表示できるようになっている。
また、車載装置4は、入力デバイスで入力された所定の旅行条件に基づいて、旅行ルートを演算可能なルート演算装置(図示せず)を備えている。
【0030】
車載装置4に入力可能な旅行条件としては、出発地点(現在地点を含む。)や目的地点のほか、経由地や優先経路(一般道路優先又は有料道路優先や、距離優先又は道幅優先)等がある。ルート演算装置のメモリには、入力される情報や自身で演算した旅行ルートに加えて、サーバ装置2から提供されたルート探索情報を保存することもできる。
なお、本実施形態の車載装置4は、ETC対応であり、有料道路の料金所等に設置されたETC路側処理装置と無線による路車間通信を行うことができる。
【0031】
〔サーバ装置の内部構成〕
図2に示すように、サーバ装置2は、ワークステーション等よりなる処理コンピュータ11と、この処理コンピュータ11に接続された通信インターフェースよりなる第1及び第2通信部12,13と、各種データベース14〜16とから構成されている。
第1通信部12は、専用回線を介して交通情報センター5に接続されている。また、第2通信部13は、インターネット網6を介して前記無線基地局7に接続され、この無線基地局7と車両3の搭乗者の無線通信機(例えば、携帯電話機)8との間の無線通信を通じて、車載装置4との間で情報の送受信を行う。
【0032】
〔会員データベース〕
各データベース14〜16のうち、会員データベース14には、当該システム1に参加する登録会員の識別情報が保存されている。また、会員データベース14には、会員ごとの車両3の車種と、その車両3の走行に必要な単位距離当たりの燃料消費量(リットル/km)や環境負荷ガス排出量(CO2排出量やNOx排出量)も記録されている。なお、登録会員の車両3がハイブリッド車の場合には、燃料消費量に加えて単位距離当たりの充放電量も記録され、電気自動車の場合には、単位距離当たりの充放電量が記録される。
処理コンピュータ11は、会員データベース14に記録された特定の登録会員から受信した探索要求に基づいて、後述する経路探索処理を実行する。
【0033】
〔交通情報データベース〕
交通情報データベース15には、第1通信部12が受信した交通情報センター5からのVICS情報が保存される。このVICS情報は、処理コンピュータ11がセンター5からのVICS情報を抽出するごとに更新され、ほぼ最新の情報が保持される。
また、交通情報データベース15には、特定の登録会員から受信したリンク番号、リンク進入時刻、リンク退出時刻、リンク通過時間等よりなる交通情報(プローブ情報)も保存される。
【0034】
この場合、車載装置4は、所定時間ごと(例えば、0.1秒ごと)又は所定距離ごと(例えば、5mごと)に位置を検出しており、各リンクについて、検出位置がリンクの始端の位置を通過(一致)した時刻をリンク進入時刻とし、検出位置がリンクの終端の位置を通過(一致)した時刻をリンク退出時刻とし、リンク退出時刻とリンク進入時刻との差をリンク通過時間として算出する。
【0035】
更に、交通情報データベース15には、高速道路等の有料道路の通行料金に関する料金情報17が含まれている。
この料金情報17は、例えばNEXCOが公表している通行料金テーブルよりなる。この通行料金テーブルは、入口ICと出口ICが分かればその間の通行料金が特定できる形式のテーブルになっており、区間割引、深夜割引、通勤割引及び早朝夜間割等の割引制度ごとに定められた、複数のテーブルより構成されている。
【0036】
〔地図データベース〕
地図データベース16には、道路地図データ18が記録されている。この道路地図データ18には、リンクデータ「交差点データ」と「リンクデータ」とが含まれている。
このうち、「交差点データ」は、全国の交差点に付与された交差点IDと、その交差点位置とを対応付けたデータである。また、「リンクデータ」は、全国の道路に対応して付与された特定リンクのリンクIDに対して、次の情報1)〜4)を対応付けたデータよりなる。
【0037】
1) 特定リンクの始点・終点・補間点の位置
2) 特定リンクの始点に接続するリンクID
3) 特定リンクの終点に接続するリンクID
4) 特定リンクのリンクコスト
本実施形態の道路地図データ18は、実際の道路線形と走行方向に対応したネットワークを構成するため、例えば図1に示すように、交差点間の道路区間を向きが異なる一対の有向リンクl(小文字のエル)で表したネットワークになっている。
【0038】
具体的には、道路地図データ18は、交差点ごとにノードnが設定され、この各ノードn間が逆向きの一対のリンクlで繋がった有向グラフである。従って、一方通行の道路の場合は、一方向のリンクlのみが設定されている。なお、交差点以外の道路の途中地点にもノードnが設定される場合もある。
また、道路地図データ18のリンクデータには、地図上の各道路に対応する特定リンクlが、一般道路であるか有料道路であるかの道路種別も含まれている。
【0039】
一方、前記リンクコストは、あるリンクlとその終点に接続するリンクlの組み合わせの数だけ用意されており、道路地図データ18に記録されるリンクコストの構成要素としては、特定リンクlの始点に進入してから当該特定リンクlの終点を退出し、次に接続するリンクlの始点に進入するまでに要するリンク旅行時間を含んでいる。
すなわち、リンク旅行時間は、特定リンクlの始点から終点までを走行するのに要するリンク通過時間と、その特定リンクlの終点から次のリンクlの始点までを走行するのに要する通過時間、つまり、交差点通過に要する交差点通過時間とが含まれている。
【0040】
このリンク旅行時間は、平日、土曜、日曜及び祝日といった日種別ごとに、現時点から1日先までの5分ごとのデータが用意されており、この5分ごとのデータは、交通情報データベース15のVICS情報や、各特定会員から受信したプローブ情報に基づいて生成される。
また、道路地図データ18に記録されるリンクコストの構成要素としては、特定リンクlの始点・終端間の距離(リンク距離)も含まれている。
【0041】
〔処理コンピュータの構成〕
図2に示すように、処理コンピュータ11は、HDDやランダムアクセスメモリ等よりなる記憶装置19と、この記憶装置20から各種のコンピュータプログラムを読み出して実行する演算装置19とを備えている。
このコンピュータプログラムのうちの1つは、車両3が出発地点から目的地点まで走行する場合に、有料道路の通行料金が最安となる最安経路を探索する処理を、ダイクストラ法による経路アルゴリズムを用いて実行可能なプログラムよりなる。
【0042】
すなわち、本実施形態の演算装置20は、ダイクストラ法による経路アルゴリズムを利用して、有料道路の通行料金を含む通行コスト(リンクコストの累計)が最小となる最小コスト経路を探索する。
上記ダイクストラ法は、開始リンクlsから中間リンクlmのツリーを構成して行くに当たり、ある中間リンクlmから他の中間リンクlmに枝分かれする場合に、分岐後の中間リンクlmを含む経路コスト(開始リンクlsから分岐後の中間リンクlmまでのリンクコストの累計)の大小を比較し、この経路コストの小さい順に並べ変えるとともに、その経路コストの小さい中間リンクlmから更に探索を続けて行くという、探索アルゴリズムを採用している。
【0043】
〔カーナビゲーションのフローチャート〕
図3は、上記ナビゲーションシステム1で実行されるカーナビゲーションのフローチャートである。
図3に示すように、本実施形態のナビゲーションシステムでは、まず、車両3の搭乗者(登録会員)が、車載装置4に対して出発地点と目的地点の設定を行う(ステップS1)。この場合、出発地点の設定がない場合には、車両3の現在位置が出発地点となる。
【0044】
なお、本実施形態では、処理コンピュータ11が最安経路の探索を行うので、登録会員が送信する探索要求には、有料道路優先の入力情報が含まれているものとする。
上記出発地点、目的地点及び有料道路優先の入力情報を含む探索要求は、携帯電話機8等の無線通信機を通じてサーバ装置2に送信され、この探索要求を端緒として、サーバ装置2の処理コンピュータ11が経路探索処理を実行する。
【0045】
すなわち、サーバ装置2の処理コンピュータ11(具体的には、演算装置20)は、出発地点に最も近いリンクlを開始リンクlsとし、目的地点に最も近いリンクlを終了リンクleとして、前記リンクデータの中から、開始リンクlsと終了リンクleを含む所定エリアの範囲内にあるネットワークデータ(中間リンクlmの群)を、地図データベース16から取得する(ステップS2)。
【0046】
次に、処理コンピュータ11は、取得したネットワークデータに対して、ダイクストラ法による探索アルゴリズムを利用した経路探索処理を実行し(ステップS3)、有料道路の通行料金が最小となる最安経路を特定する(ステップS4)。なお、この経路探索処理の詳細については後述する。
そして、処理コンピュータ11は、上記のようにして特定した最安経路を、第2通信部13を通じて車載装置4に送信する(ステップS5)。
【0047】
車載装置4は、サーバ装置2から上記最安経路を受信すると、ディスプレイやスピーカ等の出力装置を介して、最安経路とこの経路に関連するルート内容を搭乗者に提供する(ステップS6)。
なお、この場合、出力装置によって搭乗者に提供する最安経路の情報としては、例えば次のものを含めることができる。
【0048】
ア) 出発地点から目的地点までの走行経路と走行時間
イ) 出発地点から目的地点までの走行距離
ウ) 出発地点から目的地点までの走行に必要なエネルギー消費量や環境負荷ガス排出量
エ) 有料道路を通行する場合の通行料金
オ) 有料道路を通行する場合の入口と出口
【0049】
上記の情報提供を受けた車両3の搭乗者は、自身の判断で最安経路を選択するか否かを判断する(ステップS7)。
そして、搭乗者が最安経路を選択する場合には、車両3がその最安経路に沿って走行し、目的地点に到着することになる(ステップS8)。
【0050】
〔処理コンピュータの機能〕
図4は、処理コンピュータ11の機能ブロック図である。
図4に示すように、処理コンピュータ11の演算装置20は、経路探索用のコンピュータプログラムの実行によって達成される機能実現部として、探索要求受付部20Aと、経路探索部20Bと、データアクセス部20Cと、エネルギー消費量等算出部20Dと、通行料金算出部20Eとを備えている。
【0051】
また、処理コンピュータ11の記憶装置19は、経路探索の途中で生じる経路の一時的な記憶領域として、最小コスト経路記憶部19Aと、探索済み経路記憶部19Bとを備えている。
探索要求受付部20Aは、外部からの探索要求(本実施形態では、登録会員が送信した探索要求)を受け付け、その要求があったことを、経路探索部20Bに通知する。経路探索部20Bは、その通知を受けて経路探索処理を実行する。
【0052】
データアクセス部20Cは、地図データベース16の道路地図データ18にアクセスして、経路探索部20Bが要求するリンクlを道路地図データ18のリンクデータの中から抽出し、抽出したリンクlを経路探索部20Bに送る。
エネルギー消費量等算出部20Dは、探索要求に含まれる会員IDに基づいて、登録会員の車両3の単位距離当たりのエネルギー消費量(燃料消費量や充放電量)と、単位距離当たりの環境負荷ガス(CO2やNOx)の排出量を会員データベース14から抽出し、開始リンクlsから探索途中の経路までの距離に基づいてその距離を走行するのに必要な消費量や排出量を算出し、これを経路探索部20Bに送る。
【0053】
また、通行料金算出部20Eは、探索途中の経路に有料道路が含まれており、かつ、その経路中の有料道路に対する入口ICと出口ICが確定した場合に、交通情報データベース15の料金情報17を参照して当該有料道路の通行に必要な通行料金を算出し、これを経路探索部20Bに送る。
【0054】
本実施形態の経路探索部20Bは、次の式に従って、開始リンクlsからの経路コスト(リンクコストの累計)を算出する。
経路コスト=第1コスト+第2コスト
第1コスト:有料道路の通行料金
第2コスト:開始リンクlsからこれまでの経路の走行に要する時間、距離、エネルギー消費量及び環境負荷ガス排出量を金額に換算した換算値
【0055】
なお、上記式の第2コストでは、時間、距離、エネルギー消費量及び環境負荷ガス排出量のすべてを金額の換算値にしているが、それらのうちの少なくとも1つ、或いは、いずれか2つ以上を組み合わせたものの換算値であってもよい。
【0056】
一方、記憶装置19の最小コスト経路記憶部19Aは、上記式で定義される経路コスト(第1コストと第2コストの合計値)が最小となる最小コスト経路のみを一時的に記憶する領域である。従って、この記憶部19Aは、特定の1本のリンクlについて、1つの経路(最小コスト経路)のみを記憶することができる。
これに対して、探索済み経路記憶部19Bは、最小コスト経路以外の経路でも一時的に記憶できる領域である。従って、この記憶部19Bは、特定の1本のリンクlについて、複数本の経路を記憶することができる。
【0057】
経路探索部20Bは、開始リンクlsから前回の最小コスト経路の末尾に繋がる中間リンクlmまでの今回の経路の中から、今回の最小コスト経路を選択する場合において、今回の選択時に第1コスト(有料道路の通行料金)が確定しており、かつ、今回の最小コスト経路が前回のそれよりも小さい場合には、記憶部19Aに記憶された前回の最小コスト経路を今回のものと置き換えて記憶させ、最小コスト経路のデータを更新する。
【0058】
また、経路探索部20Bは、開始リンクlsから前回の最小コスト経路の末尾に繋がる中間リンクlmまでの今回の経路の中から、今回の最小コスト経路を選択する場合において、今回の選択時に第1コスト(有料道路の通行料金)が確定していない場合には、今回の経路を、次回以降の最小コスト経路の候補として記憶部19Bに記憶させ、今回の最小コスト経路としての選択を確定させることなく、その選択を持ち越す(以下、「持ち越し処理」という。)。
【0059】
〔経路探索処理の内容〕
図5及び図6は、本実施形態の経路探索処理のフローチャートである。
以下、この図5及び図6を参照しつつ、処理コンピュータ11の演算装置20(経路探索部20B)が実行する経路探索処理について説明する。
図5に示すように、演算装置20の経路探索部20Bは、まず、探索の開始リンクlsと終了リンクleを特定する(図5のステップST1)。
【0060】
この開始リンクの特定は、道路地図データ18のリンクデータに含まれるリンクlの中で、探索要求に含まれる出発地点に最も近いリンクlを抽出することによって行われ、終了リンクleの特定は、同リンクデータに含まれるリンクの中で、目的地点に最も近いリンクlを抽出することによって行われる。
次に、経路探索部20Bは、開始リンクlsを、記憶装置19の探索済み経路記憶部19Bに登録し、探索待ちの状態にする(図5のステップST2)。
【0061】
経路探索部20Bは、探索済み経路記憶部19Bに探索待ちの経路がある場合には「第1のループ処理」を実行する。この第1のループ処理は、図5のステップST3から図6のステップST14までに規定されたループ処理であり、記憶部19Bから探索待ちの経路がなくなるまで繰り返し実行される。
第1のループ処理において、経路探索部20Bは、まず記憶部19Bから探索済みの経路を取り出す(図5のステップST3)。
【0062】
経路探索の最初の段階では、記憶部19Bに開始リンクlsしか登録されていないので、当該開始リンクlsが取り出されることになる。
次に、経路探索部20Bは、データアクセス部20Cを通じて道路ネットワークデータ(道路地図データ18のリンクデータ)を参照し、記憶部19Bから取り出した探索済み経路(最初の段階では開始リンクls)の末尾に接続する1又は複数の中間リンク(以下、このフローチャートにおいて「接続リンク」という。)lmを抽出する(図5のステップST4)。
【0063】
上記接続リンクlmを抽出すると、経路探索部20Bは「第2のループ処理」を実行する。この「第2のループ処理」は、図5のステップST5から図6のステップST14までに規定されたループ処理であり、接続リンクlmの本数分だけ繰り返し実行される。
第2のループ処理において、経路探索部20Bは、まず開始リンクlsから接続リンクlmまでの今回の経路の通行料金(第1コスト)を算出する(図5のステップST5)。このさい、接続リンクlmが有料道路の区間内にある場合には、通行料金の算出を行えないので、経路探索部20Bは料金不算出のフラグを立てる。
【0064】
次に、経路探索部20Bは、開始リンクlsから接続リンクlmまでの今回の経路において累積する距離、時間、エネルギー消費量及び環境負荷ガス排出量の金額換算値(第2コスト)を算出したあと(図5のステップST6)、上記第1コストと第2コストを合算することにより、開始リンクlsから接続リンクlmまでの今回の経路についての経路コストを算出する(図5のステップST7)。
その後、経路探索部20Bは、上記フラグの有無により、有料道路の通行料金(第1コスト)が算出できたか否かを判定する(図5のステップST8)。
【0065】
通行料金が算出できている場合(図5のステップST8でYes)には、経路探索部20Bは、当該接続リンクlmまでの登録済みである前回の最小コスト経路を、最小コスト経路記憶部19Aから取り出し(図5のステップST9)、今回の経路と間で経路コストの大小を比較する(図5のステップST10)。
そして、今回の経路の経路コストが前回の最小コスト経路よりも小さい場合(図5のステップST10でYes)には、経路探索部20Bは、今回の接続リンクlmまでの経路を新たな最小経路コストとして選択し、この今回の最小コスト経路を前回の最小コスト経路と置き換えて、記憶部19Aに登録する(図5のステップST11)。
【0066】
また、今回の経路の経路コストが前回の最小コスト経路よりも大きい場合(図5のステップST10でNo)には、経路探索部20Bは、別の接続リンクlmについて、ステップST5からの処理を繰り返す。
一方、通行料金が算出できていない場合(図5のステップST8でNo)には、経路探索部20Bは、当該通行料金が確定していない今回の接続リンクlmまでの経路を、探索済み経路記憶部19Bに登録する(図5のステップST12)。
【0067】
これにより、通行料金が確定していない接続リンクlmまでの今回の経路については、次回以降の最小コスト経路の候補として記憶され、今回の最小コスト経路としての選択を確定させない持ち越し処理が実行される。
もっとも、この場合、通行料金が確定していない今回の経路の第2コストが、記憶部19Aに登録されている前回の最小コスト経路の経路コスト(第1コスト+第2コスト)よりも劣っている場合(すなわち、その経路コストよりも大きい場合)には、次回以降においても当該今回の経路が最小コスト経路になることはあり得ない。
【0068】
そこで、経路探索部20Bは、今回の経路の第2コストが前回の最小コスト経路の経路コストよりも大きい場合には、図5のステップST12の持ち越し処理を実行せずに、次の処理に移るようになっており、これにより、無駄な最小コスト経路の選択が次回以降に行われるのを防止でき、経路探索に必要な演算負荷を低減することができる。
【0069】
また、図5のステップST12において、通行料金が確定していない今回の経路が複数ある場合には、第2コストが予め設定された閾値以下の当該経路についてのみ持ち越し処理を実行したり、第2コストが小さい方から選択した所定数の当該経路についてのみ、持ち越し処理を実行したりするようにしてもよい。
このようにすれば、通行料金が確定していない今回の経路を、次回以降の候補としてすべて無制限に残す場合に比べて、次回以降に持ち越される経路数を最小限に抑えることができ、経路探索に必要な演算負荷の増大を抑制することができる。
【0070】
次に、経路探索部20Bは、接続リンクlmが終了リンクleに到達したか否かを判定し(図6のステップST13)、到達していない場合には、記憶部19Bに残して今回の経路を探索待ちの状態にする(図6のステップST14)。
これに対して、接続リンクlmが終了リンクleに到達している場合(図6のステップST13でNo)には、経路探索部20Bは、今回の経路を探索待ちにすることなく、次のステップに移行する。
【0071】
そして、経路探索部20Bは、上記第1及び第2ループ処理をすべて実行したあと、終了リンクleに到達した経路の中から、経路コスト(第1コスト+第2コスト)が最小となる最小コスト経路を選択する(図6のステップST15)。
【0072】
〔経路探索処理の効果〕
本実施形態の処理コンピュータ11(演算装置20の経路探索部20B)による経路探索処理によれば、通行料金が確定していない今回の経路については、次回以降の最小コスト経路の候補として記憶し(図5のステップST12)、今回の最小コスト経路としての選択を確定させない持ち越し処理を実行するので、次回以降に有料道路を降りる経路があった時点で、通行料金を厳密に確定できるようになる。
このため、常に厳密に確定した通行料金を含む経路コストに基づいて、最小コスト経路の選択を実行することができ、有料道路の通行料金が最も安い最安経路を正確に探索することができる。
【0073】
図8の道路線形図を参照して、上記経路探索処理の効果を敷衍すると次の通りである。
すなわち、前記した通り、従来のダイクストラ法による探索アルゴリズムでは、探索途中のすべての経路に対して、最小の経路コストとなる最小コスト経路を1つだけ選択する処理を実行するので、実際には、例えばIC(c)から有料道路に乗る経路の料金コストが最小であるような場合でも、地点P2における経路選択時においてIC(c)から有料道路に乗る経路が切り捨てられ、他のIC(a)やIC(b)から有料道路に乗る経路が最小コスト経路として選択されてしまう可能性がある。
【0074】
これに対して、本実施形態の経路探索処理では、経路探索の過程において、通行料金が確定していない間、すなわち、探索途中の末尾の中間リンクlmが有料道路の区間内にある場合は、経路コストが最小となる最小コスト経路の選択を行わず、通行料金が求まっていない今回の経路については、次回以降の最小コスト経路の候補として探索済み経路記憶部19Bに登録するようになっている。
【0075】
従って、図8に示す道路線形図において、探索途中の経路が地点P1に到達した段階では、次の経路(1)と経路(2)の2つの経路が、いずれもその後の最小コスト経路の候補として残されるようになっている。
(1) 出発地→IC(a)→IC(b)→P1
(2) 出発地→IC(b)→P1
【0076】
また同様に、経路探索途中の経路が地点P2に到達した段階では、次の経路(1)〜(3)の3つの経路が、いずれもその後の最小コスト経路の候補として残される。
(1) 出発地→IC(a)→IC(b)→P1→P2
(2) 出発地→IC(b)→P1→P2
(3) 出発地→IC(c)→P2
【0077】
そして、地点P1,地点P2以降の経路探索において、経路が出口IC(A)を出るときに、入口IC(a)〜出口IC(A)、入口IC(b)〜出口IC(A)、入口IC(c)〜出口IC(A)間の通行料金(第1コスト)が確定するので、この時点において、上記(1)〜(3)の区間のうちでどの経路コスト(第1コスト+第2コスト)が最小であるか否かが判定され、これにより、当該(1)〜(3)のうちで通行料金が最安の最安経路が1つに絞られることになる。
【0078】
なお、図8に示す道路線形図において、探索途中に出口IC(A)と出口IC(B)のいずれを選択するかについても、同様である。
すなわち、図8において、経路探索が目的地点に到達する時点で、出口IC(A)経由と出口IC(B)経由の双方の通行料金が確定するので、それらを経由する各々の候補を1つに絞ることができ、これらを比較することによって最終的な経路コストが最小となる最小コスト経路を選択することができる。
【0079】
〔その他の変形例〕
今回開示した各実施形態は本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲とその構成と均等な範囲でのすべての変更が含まれる。
【0080】
例えば、上記実施形態において、経路コストのうち、有料道路の通行料金(第1コスト)に上限を設けるようにすれば、限られた予算内において、最も効果的に有料道路を通行する経路を選択することができる。
また、上記実施形態において、サービスエリア等の有料道路の所定地点での滞在時間を第2コストに上乗せするようにしてもよい。この場合、ETCの割引時間帯に適合するように所定地点で休憩する経路を探索することが可能となる。
【0081】
更に、上記実施形態では、サーバ装置2と車載装置4の間の無線通信を、携帯電話機8を通じて行っているが、この無線通信は、例えば、光ビーコン、無線LAN、DSRC(Dedicated Short Range Communication )等の比較的エリアの狭い路車間通信で行うこともできる。
また、上記実施形態では、サーバ装置2の処理コンピュータ11が経路探索を実行しているが、各車両3の車載装置4が独自に当該経路探索を行うことにしてもよい。すなわち、本発明の経路探索装置は車載装置4に組み込むことも可能である。
【0082】
更に、上記実施形態では、サーバ装置2と複数の車載装置4とからなるナビゲーションシステム1を例示しているが、当該システム1の構成要素は車載装置4以外のものであってもよい。例えば、サーバ装置2とインターネット通信可能な携帯電話機やノートPC等の端末装置を、上記ナビゲーションシステム1の構成要素とすることもできる。
この場合、出発地点や目的地点の設定作業をWEBサイトの入力画面を通じてユーザが行うことにより、その地点情報をサーバ装置2に送信させることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 ナビゲーションシステム
2 サーバ装置
3 車両
4 車載装置
5 交通情報センター
6 インターネット網
7 無線基地局
8 携帯電話機
11 処理コンピュータ(経路探索装置)
12 第1通信部(取得手段)
13 第2通信部
14 会員データベース
15 交通情報データベース
16 地図データベース
17 料金情報
18 記憶装置
19 演算装置(選択手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始リンクと終了リンクとを取得する第1のステップと、
有料道路の通行料金を含む経路コストが最小となる今回の最小コスト経路を、前記開始リンクから前回の前記最小コスト経路の末尾に繋がる中間リンクまでの今回の経路の中から選択する処理を、前記終了リンクに到達するまで繰り返し実行する第2のステップと、を含む経路探索方法であって、
前記第2のステップにおいて、前記通行料金が確定している今回の経路については、今回の前記最小コスト経路の選択を確定し、前記通行料金が確定していない今回の経路については、次回以降の前記最小コスト経路の候補として記憶し、今回の前記最小コスト経路としての選択を確定させない持ち越し処理を実行することを特徴とする経路探索方法。
【請求項2】
前記経路コストは、次の(a)の通行料金と(b)の金額換算値との和よりなる請求項1に記載の経路探索方法。
(a) 前記有料道路の通行料金
(b) 前記開始リンクからこれまでの経路の走行に要する時間、距離、エネルギー消費量及び環境負荷ガス排出量のうちの、少なくとも1つ又はそれらの組み合わせを金額に換算した換算値
【請求項3】
前記第2のステップにおいて、前記通行料金が確定していない今回の経路の当該通行料金以外のコストが、前回の前記最小コスト経路の前記経路コストよりも劣っている場合には、前記持ち越し処理を実行しない請求項1又は2に記載の経路探索方法。
【請求項4】
前記第2のステップにおいて、前記通行料金が確定していない今回の経路が複数ある場合には、前記通行料金以外のコストが予め設定された閾値以下の当該経路についてのみ前記持ち越し処理を実行する請求項1〜3のいずれか1項に記載の経路探索方法。
【請求項5】
前記第2のステップにおいて、前記通行料金が確定していない今回の経路が複数ある場合には、前記通行料金以外のコストが小さい方から選択した所定数の当該経路についてのみ前記持ち越し処理を実行する請求項1〜3のいずれか1項に記載の経路探索方法。
【請求項6】
開始リンクと終了リンクとを取得する取得手段と、
有料道路の通行料金を含む経路コストが最小となる今回の最小コスト経路を、前記開始リンクから前回の前記最小コスト経路の末尾に繋がる中間リンクまでの今回の経路の中から選択する処理を、前記終了リンクに到達するまで繰り返し実行する選択手段と、を備えた経路探索装置であって、
前記選択手段は、前記通行料金が確定している今回の経路については、今回の前記最小コスト経路の選択を確定し、前記通行料金が確定していない今回の経路については、次回以降の前記最小コスト経路の候補として記憶し、今回の前記最小コスト経路としての選択を確定させない持ち越し処理を実行することを特徴とする経路探索装置。
【請求項7】
開始リンクと終了リンクとを取得する第1のステップと、
有料道路の通行料金を含む経路コストが最小となる今回の最小コスト経路を、前記開始リンクから前回の前記最小コスト経路の末尾に繋がる中間リンクまでの今回の経路の中から選択する処理を、前記終了リンクに到達するまで繰り返し実行する第2のステップと、を含む経路探索処理を、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記第2のステップにおいて、前記通行料金が確定している今回の経路については、今回の前記最小コスト経路の選択を確定し、前記通行料金が確定していない今回の経路については、次回以降の前記最小コスト経路の候補として記憶し、今回の前記最小コスト経路としての選択を確定させない持ち越し処理を実行することを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−53066(P2011−53066A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201812(P2009−201812)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】