説明

経路案内システム

【課題】 目的地が一義的には指定されていない状態で、大回りを生じない適切な経路を案内可能とする。
【解決手段】 行政界などのエリアで目的地の指定を入力する。ナビゲーション装置は、入力された目的エリアの中で、複数の仮目的地を設定し、これらの仮目的地までのエリア指定経路探索を行う。また、得られた経路の共通部分を抽出し、各経路が分かれていく分岐点を特定する。
ナビゲーション装置は、ユーザの現在位置が分岐点に近づくと、更に目的地を絞り込むように促すとともに、分岐点を超えてユーザが進行した場合には、大回りせずに行ける範囲に目的エリアを絞り込む。この絞り込み、またはユーザの入力によって、目的地が特定された場合には、特定された目的地に対する経路探索・経路案内処理に移行する。
こうすることで、目的地が大雑把に指定された場合でも、大回りを生じない経路案内を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定された目的地に向かう経路を探索し、案内する経路案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路をリンクおよびノードで表したネットワークデータを用いて、指定された出発地から目的地までの経路を探索し、案内するナビゲーションシステムが普及している。
このようなナビゲーションシステムのユーザは、出発する際に、目的地の位置を正確に指定できない場合がある。目的地の場所をあいまいにしか知らない場合や、目的地の設定をしている際に信号が変わって設定を中断しなくてはならない場合などである。
このように正確に指定されていない場合には、従来、経路探索を開始できない場合があった。また、経路探索を行う場合でも、指定された範囲で特定できる地点への経路探索を行っていた。
【0003】
例えば、市町村などが指定された場合には、指定された行政界の役所の所在地を目的地に設定していた。また別の態様として、特許文献1は、市町村などが指定された場合には、指定された行政界と道路との交点となる各地点を求め、それらの交点のうち出発地から最短の道のりとなる交点への経路案内を行う技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−240438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術の経路探索では、ユーザが意図する目的地に対して必ずしも適切な経路が得られるとは限らなかった。
例えば、行政界が広い場合には、役所の所在地がユーザの真の目的地とは相当離れていることがある。このような場合には、役所の所在地を目的地とする経路探索では、ユーザにとって適切な経路は得られない。
また、特許文献1記載の技術のように行政界と道路の交点に対する経路探索も同様であり、必ずしも出発地から最短の道のりにある交点への経路が、ユーザの目的地に対する経路として適しているとは限らない。
ユーザが、途中で目的地をより正確に設定しなおしたとしても、そのタイミングによっては、すでに最適な経路に比べると無用な大回りせざるを得ないところに案内されている可能性があり、適切な経路が得られるとは限らなかった。
【0006】
ナビゲーションシステムのユーザが、目的地を正確に指定できない状態で出発することは、頻繁に起きうることであり、かかる場合に、適切とは言えない経路案内が行われることは、ナビゲーションシステムの有用性を大きく損ねてしまうことになる。
本発明は、かかる課題に鑑み、目的地が正確に指定されていない状態でも、無用な大回りを生じさせない経路を案内可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、指定された目的地に向かう経路を案内する経路案内システムとして構成することができる。
経路案内システムは、地図データベース記憶部、入力部、仮目的地設定部、経路探索部、経路案内部を備える。
地図データベース記憶部は、道路をノード、リンクで表したネットワークデータを格納する。ネットワークデータは、通行規制も踏まえて自動車の経路探索に使用可能な主ネットワークと、経路探索に使用可能ではあるが通行規制の整備が完全とは言えない準ネットワークなどを混在して用意してもよい。
【0008】
入力部は、出発地と目的地を入力する。出発地は、ユーザの現在位置を自動的に入力するようにしてもよい。目的地は、一義的に定まらず選択の余地を残した状態で入力して構わない。例えば、市町村などの行政界単位で指定する方法、地図上で任意の領域を指定する方法などをとることができる。これらの指定は、ユーザが目的地の位置を正確に知らない場合や、住所等で目的地を指定する途中で出発する場合のいずれであってもよい。また、複数地点の目的地を指定する態様であってもよい。
【0009】
仮目的地設定部は、指定された目的地の範囲内で、経路探索に用いる複数の仮目的地を設定する。仮目的地は、種々の設定が可能である。複数の地点で目的地が指定されている場合には、指定された目的地の全部または一部を仮目的地と扱ってもよい。行政界などの領域で目的地が指定された場合には、その領域内または境界上に存在する任意の点を選択し、仮目的地とすることができる。仮目的地の数は、任意に設定可能である。
目的地が領域で指定されている場合、その領域の図心と、設定された全仮目的地の重心位置の偏差が一致、または十分に狭い所定範囲内に収まるよう設定することが好ましい。
【0010】
経路探索部は、ネットワークデータを参照して、出発地から、それぞれの仮目的地までの経路を探索する。そして、経路案内部は、それぞれの仮目的地までの経路が分岐する地点までの経路案内を行う。出発地から複数の仮目的地までの経路を探索すると、途中までは、全ての仮目的地に共通の経路となり、途中から、仮目的地に応じて経路が分かれていくようになる。経路案内部は、経路が分かれていく分岐点までの経路案内を行うのである。
こうすることにより、本発明の経路案内システムによれば、目的地の範囲内で設定された仮目的地に共通する範囲で経路案内を行うから、案内される経路は、指定された範囲内のどの地点に対しても、適切な経路となる。ユーザは、分岐点までの経路案内がなされている間に、より詳細、正確に目的地を指定すれば、目的地まで無用な大回りなどしなくて済む適切な経路を得ることができる。
【0011】
本発明において、指定された目的地の範囲に出発地が近い場合には、仮目的地までの経路に共通部分が生じないことがある。かかる場合には、経路案内システムは、目的地の範囲を狭めるよう指示を出すようにしてもよい。仮目的地までの経路に共通部分が生じた時点で、経路案内を開始すればよい。
また、経路案内の途中で、ユーザの現在位置が、分岐点に近づいた場合には、経路案内システムは、ユーザに対して、分岐点が近づいていることを報知したり、目的地をより詳細に設定するよう指示したりすることが好ましい。
これらの態様をとることにより、無用な大回りを回避した経路案内を実現することができる。
【0012】
本発明においては、次に示すように到着地点を用いた経路探索を行うものとしてもよい。
まず、地図データベースには、ネットワークデータに加え、道路を含む地物を描画するための地物データを記憶する。そして、ネットワークデータおよび地物データを参照して到着地点を得る到着地点取得部を設ける。到着地点とは、自動車が通行可能な道路としてネットワークデータが整備された道路上の点であって、目的地に対応する地物から直接またはいずれかの道路を通行して到着できる点である。
到着地点は、地物データの一部として、建物等の地物ごとに設定されているものとしてもよい。この場合は、到着地点取得部は、目的地として指定された地物に対応する到着地点のデータを読み込めば済む。目的地が座標値で指定された場合には、到着地点取得部は、指定された座標が対応する地物を特定し、その地物に対応する到着地点のデータを読み込めばよい。
これに対し、到着地点を予め用意しない構成とすることもできる。この場合には、到着地点取得部は、目的地を起点とする経路探索によって、到着地点を見いだすことになる。この場合の経路探索には、通行規制の整備が完全とは言えない準ネットワークや、ネットワークが一切整備されてはいない道路も用いることができる。ネットワークが整備されていない道路については、地物データに含まれる道路のポリゴンデータの連結具合をネットワークデータとして扱うことにより経路探索の対象とすることができる。経路探索によって適切な到着地点を見いだすために、地物ポリゴンのデータには、それぞれの地物の出入口から直近の道路に至る線分を出入口線として記憶させておくことが好ましい。
【0013】
このように到着地点を用いた経路案内では、建物などの地物の出入口を考慮した経路案内ができる。かかる経路案内が可能なシステムにおいては、目的地となる地物を正確に指定してこそ有用性が増す。しかし、その一方で、出発する時点では、正確には目的地を指定しきれない場合もある。目的地が完全に指定されていない場合でも、適切な経路が案内される本発明は、このように地物の出入口を考慮した経路案内が可能なシステムの利便性を更に向上させることができる点で、必要性および有用性が高いと言えるのである。
【0014】
本発明において、経路案内部は、それぞれの仮目的地までの経路が分岐した後の部分について、各経路と、その経路によって到達できる目的地との対応を識別可能な表示態様で地図を表示してもよい。例えば、分岐点の後、経路が左右に分かれる場合、右側の経路を通ってたどり着ける目的地と、左側の経路を通ってたどり着ける目的地とを識別可能に表示するのである。
識別可能な表示態様としては、例えば、経路ごとに目的地を色分けして表示する態様が挙げられる。この場合には、目的地と、そこに向かう経路とを同じ色で表示することがより好ましい。別の表示態様として、経路と対応づけて、到達可能な目的地を示すメッセージまたはリストを表示してもよい。
このように経路と目的地とを対応づけた表示を行うことにより、分岐点まで来ても正確な目的地を指定できない場合でも、ユーザは、いずれの経路を進めばよいか判断することが可能となる。
本態様での案内を実現するためには、分岐から各目的地までの経路を探索する必要があるが、この経路探索は、種々のタイミングで行うことができる。経路案内を開始する前に行っても良いし、経路案内を開始した後、分岐点に到着するまでの期間に、経路案内と並行して行うようにしてもよい。後者の態様によれば、各目的地までの経路探索が終了するのを待たずに、速やかに経路案内を開始できる利点がある。
【0015】
本発明において、現在位置に応じて経路案内をしている際に、仮目的地までの経路の分岐点をユーザが経過してしまった場合の対処は、種々の方法をとることができる。
例えば、経路探索部は、それぞれの仮目的地に対して再度経路探索を行ってもよい。分岐点を過ぎているため、仮目的地によっては、新たに得られた経路では、分岐点経過前の経路から経路変更が必要になるものも出てくる。経路探索部は、新たに得られた経路と従前の経路とを比較することにより、従前の経路と比べて経路変更せずに到達できる仮目的地を抽出することができる。経路変更を要する仮目的地のうち、特に、従前の経路に対して経路変更後の経路の方が大回り、つまり道のりが長くなる仮目的地だけを抽出するようにしてもよい。また、経路探索を再度行わずに、現在位置からそれぞれの仮目的地までの距離、方位などに基づいて、大回りになると想定される仮目的地を抽出することも可能である。
そこで、経路案内システムは、こうして抽出された仮目的地を、他の仮目的地から識別可能な表示態様で表示する。例えば、抽出された仮目的地の色を変えたり、輝度を高くしたり、識別しやすいマークを表示するなどの態様が考えられる。こうすることにより、ユーザは、現在位置から経路変更せずに到達できる目的地の範囲や、経路変更が必要になったとしても大回りはせずに到達できる目的地の範囲を知ることができる。
目的地付近まで来れば、ユーザは、目的地がどの方向にあるのか概ね見当がつき、改めて目的地を指定しなくても、ユーザが自己の判断で経路を選んで進むことがある。上述の態様によれば、このような場合に、自分の意図する目的地が目立つ表示態様となっていることを確認することにより、ユーザは、自分が選んだ経路が正しいか否かを判断することが可能となる。
【0016】
本発明の経路案内システムでは、当初は目的地が一義的には定まらない態様で目的地を入力していても、経路案内の過程で、目的地の範囲を当初よりも絞り込んで指定したり、特定の目的地を完全に指定したりしてもよい。こうすることで、新たに指定された目的地に対して順次、適切な経路を提示することができる。また、分岐前に目的地を新たに絞り込んでいけば、従前の経路から無用に大回りすることもない。
【0017】
このように順次、目的地の絞り込みが可能な場合において、ユーザの現在位置が分岐点を過ぎた場合には、経路案内システムは、先に示した通り、再度経路探索を行って、従前の経路から経路変更を要する仮目的地と、そうでない仮目的地とをそれぞれ特定することができる。
このように再度経路探索を行う場合、経路案内システムは、さらに、この経路変更が許容範囲を超える仮目的地、例えば、変更後の経路と従前の経路の道のりの差違が許容範囲を超えて大回りが必要となる仮目的地や、経路変更後は右左折の回数が許容範囲を超えて増大する仮目的地、Uターンして進行方向の逆方向に向かう必要が生じる仮目的地などについては、指定可能な目的地の対象から除外した態様で地図を表示してもよい。例えば、経路変更が許容範囲を超える仮目的地を、いわゆるグレーアウトのように目立たない色で表示したり、仮目的地自体の表示を削除したり、輝度を低下させるなどの態様が考えられる。こうすることで、ユーザは経路変更が許容範囲を超えない範囲で目的地を指定することができる。
ユーザが分岐点を通過する時には、先に説明した通り、目的地の概ねの見当が得られていることが多い。つまり、この時点でユーザが新たに目的地を絞り込む入力をする場合には、大回りとならない範囲など、経路変更が許容範囲を超えない範囲で指定するのが通常である。上述の態様は、こうした観点から、許容範囲を超える経路変更が必要となる仮目的地を除外した態様で地図が表示されるため、不要な仮目的地がユーザの視野に入ることを避けることができ、目的地の絞り込みをしやすい画面を提供することができる。
【0018】
ユーザが正確に目的地を指定していない場合でも、ユーザは、以前に訪問したことがある場所を目的地に指定しようと意図している場合がある。
かかる場合に対応するため、経路案内システムに、従前の経路探索結果の履歴を記録する履歴記憶部を設けてもよい。履歴には、少なくとも経路探索によって訪問した目的地が記録されていればよい。
そして、ユーザが目的地を指定した場合、経路案内システムは、履歴記憶部を参照して、従前の経路探索結果における目的地のうち、指定された目的地から所定の範囲内にあるものも加えて、仮目的地を設定してもよい。履歴から得られた目的地をそのまま仮目的地として用いてもよいし、得られた目的地とユーザから指定された目的地とを包含する範囲を設定し、この中で仮目的地を設定してもよい。
こうすることにより、従前の履歴を踏まえた経路案内ができる。従って、ユーザが以前に訪問したことがある目的地を指定するつもりで不正確な指定をしている場合であっても、訪問した目的地についても適切な経路を提示することが可能となる。
【0019】
本発明は、その他、コンピュータを用いた経路案内方法として構成してもよいし、かかる経路案内をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。また、かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】経路案内システムの構成を示す説明図である。
【図2】地図データベースの構造を示す説明図である。
【図3】到着地点の設定について示す説明図である。
【図4】経路案内処理のフローチャートである。
【図5】画面入力処理のフローチャートである。
【図6】基準目的エリアの設定例(1)を示す説明図である。
【図7】基準目的エリアの設定例(2)を示す説明図である。
【図8】基準目的エリアの設定例(3)を示す説明図である。
【図9】文字目的エリアの設定例(1)を示す説明図である。
【図10】文字目的エリアの設定例(2)を示す説明図である。
【図11】履歴目的地の設定例を示す説明図である。
【図12】建物群を目的エリアとして設定する例を示す説明図である。
【図13】エリア指定経路探索処理のフローチャートである。
【図14】エリア経路案内処理のフローチャートである。
【図15】エリア経路案内例(1)を示す説明図である。
【図16】エリア経路案内例(2)を示す説明図である。
【図17】エリア経路案内例(3)を示す説明図である。
【図18】経路案内例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例について以下の順序で説明する。
A.システム構成:
B.データ構造:
B1.ネットワークデータ:
B2.文字データ:
B3.地物データ:
B4.到着地点の設定:
C.経路案内処理:
C1.画面入力処理:
C2.エリア指定経路探索処理:
C3.エリア指定経路案内処理:
D.経路案内例:
【実施例1】
【0022】
A.システム構成:
図1は、経路案内システムの構成を示す説明図である。経路案内システムは、ナビゲーション装置100として構成される。本実施例では、ナビゲーション装置100は、地図データ等を提供するサーバ200とネットワークNEで接続されており、サーバ200から地図データベースの更新を受けられるものとした。ナビゲーション装置100は、スタンドアロンで稼働する構成としてもよいし、その機能の一部をサーバ200等で実行する構成としてもよい。
【0023】
サーバ200は、地図データベース記憶部210、送受信部201、およびデータベース管理部202を備えている。送受信部201、データベース管理部202は、ハードウェア的に構成してもよいが、本実施例では、これらの機能を実現するコンピュータプログラムをインストールすることによって、ソフトウェア的に構成するものとした。
【0024】
送受信部201は、ナビゲーション装置100とネットワークNEを介した通信を行う。本実施例では、地図データベース記憶部210に格納されたデータや、その提供を求めるためのコマンド等が通信される。
データベース管理部202は、ナビゲーション装置100から要求された地図情報を、地図データベース記憶部210から読み出す。地図データベース記憶部210には、地物データ211、文字データ212、およびネットワークデータ213が格納されている。
地物データ211は、道路や建物など地図に描画すべき地物のポリゴンデータである。文字データ212は、地図上に表示すべき文字情報である。例えば、建物の名称や地名などの文字情報が含まれる。ネットワークデータ213は、道路をノード、リンクのつながりで表したデータである。
【0025】
ナビゲーション装置100には、主制御部101の下で稼働する種々の機能ブロックが構成されている。本実施例では、主制御部101および各機能ブロックは、それぞれの機能を実現するソフトウェアをインストールすることによって構成したが、その一部または全部をハードウェア的に構成してもよい。
送受信部102は、サーバ200とのネットワークNEを介した通信を行う。本実施例では、地図データベースおよびその提供を受けるためのコマンドの送受信が主として行われる。
コマンド入力部103は、ナビゲーション装置100に設けられたボタン、レバー、タッチパネル等の操作を通じて、ユーザからの指示を入力する。本実施例における指示としては、経路探索の出発地、目的地の指定などが挙げられる。
現在位置入力部としてのGPS入力部104は、GPS(Global Positioning System)を用いてユーザの現在位置を入力する。
地図データベース記憶部105は、サーバ200から提供された地図データベースを格納する。本実施例では、サーバ200が備える地図データベース記憶部210に記憶されている地図データベースの全体をナビゲーション装置100内の地図データベース記憶部105にも格納するものとしたが、経路探索や地図表示に必要となる部分のみを、その都度、サーバ200から取得するものとしてもよい。また、地図データベース記憶部105には、従前の経路探索および経路案内履歴も記録されている。履歴には、経路探索・案内を行った日時、ユーザが指定した出発地、目的地の情報、現実に案内した目的地の情報などが記録されている。
経路探索部107は、地図データベース記憶部105を参照して、経路探索を行う。
表示制御部106は、地図データベース記憶部105を用いてナビゲーション装置100のディスプレイに地図および探索された経路を表示する。
【0026】
B.データ構造:
図2は、地図データベースの構造を示す説明図である。地物データ、文字データ、ネットワークデータに格納される情報の概要を示した。
【0027】
B1.ネットワークデータ:
ネットワークデータとは、道路をリンク、ノードで表したデータである。本実施例では、ネットワークデータとして主ネットワークデータと、準ネットワークデータの2種類が用意されている。図中に実線で示したリンクL1〜L4およびノードN1、N2が主ネットワークデータであり、破線で示したリンクL11〜L13およびノードN11、N12が準ネットワークデータである。
主ネットワークデータおよび準ネットワークデータともに、それぞれに属するリンクデータおよびノードデータを格納している。リンクデータは、それぞれのリンクを形成する点列の座標、国道・県道等の種別、車線数その他の属性情報や通行規制情報などを記録している。ノードデータは、座標値、通行規制などを記録している。
ただし、主ネットワークデータは、現地調査によって通行規制が十分に整備されたデータであり、車両の経路探索に支障なく用いることができるデータとなっている。これに対し、準ネットワークデータは、通行規制の整備が十分とは言えないデータであり、車両の経路探索では、使用しない方が好ましいデータである。本実施例でも、経路探索は原則として主ネットワークデータを用いて行うものとしている。
【0028】
B2.文字データ:
文字データ212は、地物の名称や地名などを表示する文字を規定するデータである。図中には、建物BLDの名称を表示するためのデータ例を示した。文字データは、内容、位置、地物、フォント、サイズなどの情報を格納する。
内容は、表示すべき文字列であり、図中の例では、「△△(株)」という会社名称である。
位置は、文字を表示する位置である。本実施例では、文字列の左下の点P5を基準点として、この座標値を指定するものとした。
地物は、文字が関連づけられる地物データのポリゴン名称である。
フォント、サイズは、表示する際のフォントおよびサイズの指定である。
この他、色、太字など、種々の属性を指定可能としてもよい。
【0029】
B3.地物データ:
地物データ211について、建物H1を例にとって構造を示す。地物データ211は、建物、道路等の地物を描画するためのポリゴンデータであり、名称、形状、代表点、出入り口線、到着地点、属性などを格納している。
名称は、地物の名称である。ポリゴンに固有のIDを用いてもよい。
形状は、地物のポリゴンの頂点を示す座標の列である。図の例では、建物H1のポリゴンの頂点P1、P2、P3、P4の各座標が格納されている。
代表点は、地物の位置を表す地点Cの座標である。代表点は、地物の図心を用いることが多いが、任意に設定可能である。
出入口線は、地物と道路とを関連づけるための情報である。建物H1の場合、玄関から道路に出るための線分Dが出入口線として登録される。具体的には、線分Dの両端の座標が登録されることになる。出入口線は、線分Dのうち、道路上の端点のみを登録するものとしてもよい。また、出入口線は、建物や駐車場など、出入りを伴う地物に設定されるものであり、地物の全てに設定する必要はない。図の例では、建物BLDに対して正面の出入口線DB1および駐車場BLDP側の出入口線DB2、建物H2〜H4に対してそれぞれ出入口線DH2〜DH4、駐車場PKに対して出入口線DPKが設定されている。
【0030】
到着地点Gは、地物の出入口線の道路上の端点から、いずれかの道路を経てたどりつけるネットワーク上の点である。建物H1の場合、図中に点線で示す通り、出入口線Dが関連づけられている道路R21を経て、リンクL2に至ることができるため、リンクL2上に到着地点Gが設定されている。出入口線Dから道路R21を図中右方向にたどり、ノードN11で右折してノードN2に至る経路をとり、ノードN2を到着地点とすることもできる。本実施例では、建物H1からノードN2に至る道のりよりも、到着地点Gに至る道のりの方が短いから、このように設定した。到着地点は、一つに限定する必要はないから、ノードN2も到着地点に設定してもよい。
図の例では、建物H2〜H4に対する到着地点は点GHと設定されている。建物BLDに対しては、点GHおよび点GBLD2と設定されている。到着地点は、出入口線と同様、駐車場にも設定でき、図の例では、駐車場PKに対して到着地点GPKが設定されている。駐車場PKは、リンクL2に面しているため、出入口線DPKの端点と到着地点GPKが一致した状態となっている。
【0031】
B4.到着地点の設定:
図3は、到着地点の設定について示す説明図である。建物BLD1の出入口線DBを対象とする到着地点について示した。
建物BLD1の周辺の主ネットワークデータとしては、リンクL7、ノードN7およびリンクL5、L6およびノードN5、N6が存在する。準ネットワークデータとしては、破線で示したリンクL14が存在する。
建物BLD1の出入口線DBからいずれかの道路を経て主ネットワークにたどりつく経路としては、図中に点線で示した3通りがあげられる。道路R24を経てリンクL7にたどりつく経路、道路R25を経てたリンクL6およびリンクL5にそれぞれたどりつく経路である。これらの各経路がリンクL7、L6、L5にたどりつく点が到着地点G7、G6、G5となる。
【0032】
これらの到着地点は、経路探索によって求めることができる。本実施例では、それぞれの地物は、出入口線によって、いずれかの道路に関連づけられているから、出入口点、つまり出入口線の道路上の端点を始点とする経路探索によって到着地点を求めればよい。
この経路探索は、主ネットワークデータ、準ネットワークデータおよび道路のポリゴンの全てを用いてもよい。道路のポリゴンは、リンク、ノードで構成されている訳ではないが、隣接するポリゴンを指定するデータは持っているから、ポリゴン同士のつながり関係は規定されており、リンク、ノードと同様に、経路探索に使用することが可能である。出入口点を起点とする経路探索の結果、主ネットワークデータにたどり着いた点を到着地点とすればよい。
【0033】
図の例のように、到着地点がG7、G6、G5の3点見いだされる場合、これらの3点を建物BLD1の到着地点として用いてもよいし、例えば、地物からの道のりが最短の地点、地物からの距離が最短の地点、地物から到着地点までの経路と準ネットワークデータとの重複部分が多い点、地物から出発点に向かう方角に近い点などの基準で選択してもよい。
図の例においては、地物からの道のりや距離を基準として選べば、建物BLD1に最も近い点G5が到着地点となる。準ネットワークデータとの重複部分を基準として選べば、点G6が到着地点となる。出発地が図の左端方向にある場合には、出発地の方角を基準として選べば、点G7が到着地点となる。
【0034】
本実施例では、上述の手順で、到着地点を設定し、地物データ211に予め設定しておくものとした。到着地点は、予め設定しておくのではなく、経路探索などの処理の過程で求めるものとしてもよい。
【0035】
C.経路案内処理:
図4は、経路案内処理のフローチャートである。ナビゲーション装置100の経路探索部107および表示制御部106が主として実行する処理であり、ハードウェア的にはナビゲーション装置100のCPU(以下、単に「CPU」という)が実行する処理である。
以下では、まず、経路案内処理の全体の流れを説明した後、その過程で行われる処理について詳細に説明する。
【0036】
CPUはまず出発地を入力する(ステップS100)。出発地は、ユーザが指定してもよいし、GPSなどで取得した現在位置を出発地に設定してもよい。
目的地は、入力モードに応じて処理が異なる(ステップS102)。本実施例では、キーボード等を利用する入力モードと、ナビゲーション装置100に表示された地図画面を利用する入力モードとを選択可能とした。キーボードは、ナビゲーション装置にハードウェア的に備えられるものとしてもよいし、画面に表示されるソフトウェアキーボードとしてもよい。
キーボードによる入力モードが指定されている場合には(ステップS102)、CPUは、ユーザによる操作を介して指定された情報を入力する(ステップS104)。
地図画面による入力モードが指定されている場合には、画面入力処理を実行する(ステップS110)。画面入力処理は、地図画面内で、目的地となる地点や、目的地を含む所定の領域を指定することで、目的地を入力する処理であるが、その詳細な処理内容は後述する。
【0037】
次に、CPUは、ユーザの指定内容で目的地が一義的に特定されているかを判断する(ステップS130)。目的地が一点または単一の地物に特定されている場合には、その目的地に対する経路探索を行う(ステップS180)。この処理は、出発地、目的地が特定されている場合の周知の経路探索処理である。
そして、探索された経路に対する経路案内を行う(ステップS182)。本実施例では、目的地が一義的に特定された状態での経路案内を、「目的地経路案内」と称する。目的地経路案内は、ユーザの現在位置を検出しながら、経路および現在位置の表示を行うものであり、ユーザが目的地に到着するまで実行される(ステップS184)。経路案内には、音声案内も併せて行ってもよい。
【0038】
一方、目的地が一義的に特定されてはいない場合(以下、この指定を「エリア指定」という)(ステップS130)には、エリア指定経路探索を行う(ステップS140)。これは、複数の目的地が指定されている場合や、行政界などの領域で目的地が指定されている場合に、指定されたいずれの目的地に対しても、過度な大回りを生じないように経路を探索する処理である。処理の詳細は後述する。
そして、CPUは、こうして得られた経路に対して経路を案内する(ステップS150)。本実施例では、目的地が一義的に定まっていない状態での案内を、目的地経路案内(ステップS182)に対して、エリア経路案内と称する(ステップS150)。処理の詳細は後述するが、ナビゲーション装置100は、エリア経路案内中にも、ユーザの現在位置に応じて目的地の絞り込みを行っている。ユーザが改めて目的地を絞り込んだ指定をしなくても、経路を進むうちに、大回りせずに、つまり従前の経路に比べて道のりが大きくなるような経路変更を伴わずに到達可能な目的地が自ずと絞られてくる場合がある。この結果、経路によっては、目的地が一つに特定されることもある。
目的地が一つに特定されると(ステップS170)、ナビゲーション装置は、目的地経路探索(ステップS180)および経路案内(ステップS182〜S184)に移行する。
【0039】
エリア経路案内(ステップS150)を行っている最中、ユーザが進行する経路によって目的地が特定できない場合、ユーザが、目的地の入力操作を行わなければ(ステップS175)、ナビゲーション装置100はエリア経路案内(ステップS150)を繰り返す。
一方、エリア経路案内中でも、ユーザが改めて目的地を指定することがある。従前に範囲等で指定していた目的地を更に絞り込む指定をする場合もあれば、全く異なる目的地に変更する場合もある。いずれにしても、このような目的地の入力操作がなされた場合には(ステップS175)、ナビゲーション装置100は、その目的地の入力処理以降の処理を実行する(ステップS102以降)。目的地が一義的に特定されていれば(ステップS130)、目的地経路探索(ステップS180)、経路案内(ステップS182〜S184)が実行されるし、目的地が特定されていない場合には(ステップS130)、再びエリア経路探索(ステップS140)、エリア経路案内(ステップS150)が実行される。
【0040】
ナビゲーション装置100は以上の処理によって、ユーザが目的地に到着するまで経路案内を行う。
上述の通り、本実施例では、目的地が一つに特定されていない状態でのエリア経路探索処理(ステップS140)、エリア経路案内処理(ステップS150)を行う点が特徴であり、一旦、エリア経路案内処理が実行されても、その後のユーザの進行状況や目的地の指定に応じて、目的地経路探索(ステップS180)、目的地経路案内(ステップS182)に移行する点に特徴がある。
以下、画面入力処理(ステップS110)およびエリア指定経路探索処理(ステップS150)、エリア経路案内処理(ステップS160)について、詳細に内容を説明する。
【0041】
C1.画面入力処理:
図5は、画面入力処理のフローチャートである。ナビゲーション装置100に表示された地図画面を利用して目的地の指定を入力する処理であり、コマンド入力部103が主として実行する処理である。
ナビゲーション装置100は、ポインタで指定された座標点を入力する(ステップS111)。一点だけを指定する場合もあれば、地図画面で閉領域を形成するように複数点を入力することもある。
指定された点の精度は、表示されている地図の階層に応じて異なる。広域の地図を表示している場合(以下、「高階層」ということもある)には、指定した点の精度は低くなる。逆に、狭い地域について詳細な地図を表示している場合(以下、「低階層」ということもある)には、指定した点の精度は高くなる。本実施例では、このような精度の差違を考慮して、指定された座標点から目的地のエリア指定に置き換える処理を、階層に応じて異ならせた。階層のどの範囲を低階層と呼ぶかは、ナビゲーション装置100が表示可能な階層数、各階層の詳細度などに応じて、任意に決めることができる。
【0042】
高階層の場合(ステップS112)、ナビゲーション装置100は、まず、指定点を含む基準目的エリアを設定する(ステップS113)。
図6は、基準目的エリアの設定例(1)を示す説明図である。図6(a)に示すように、ナビゲーション装置100には、九州の半分程度が入る広域の地図が表示されている状態で、九州北東部の点(矢印A6)が指定された場合を考える。図6(b)は、指定された座標点P6付記の拡大図である。このように広域で指定された場合、その指定精度が高いとは言えないため、ナビゲーション装置100は、実際に指定された点P6を中心とする所定の半径r6からなる領域を基準目的エリアAR6と設定する。半径r6は、予め設定された固定の値としてもよいし、図6(a)の階層に応じて変化させてもよい。この例では、基準目的エリアAR6を円形としているが、形状は、矩形など、任意に設定可能である。
【0043】
図7は、基準目的エリアの設定例(2)を示す説明図である。図7(a)に示す点P7が指定された場合を考える。この例では、点P7が含まれる行政界に基づいて基準目的エリアA7aを設定している。図7(a)では、区の境界で基準目的エリアA7aを設定しているが、市の境界、県の境界などで設定してもよい。いずれの行政界を基準とするかは、地図の階層に応じて変化させてもよい。
図7(b)はユーザが複数点を指定して閉領域で目的地を指定した例である。この場合は、指定された点をなめらかに結ぶ閉領域を基準目的エリアA7bとする。指定された点を包含する円や矩形など規定の形状の領域を基準目的エリアとして用いてもよい。この指定は、ユーザが、目的地の所在を、「概ねこの辺り」という程度に把握している場合に有用である。図7(a)に比較して、行政界単位で境界が設定されるよりも基準目的エリアを絞り込むことが可能となるし、複数の行政界にまたがったエリアを指定することも可能となる利点がある。
【0044】
図8は、基準目的エリアの設定例(3)を示す説明図である。図8(a)に示す点P8aが指定された場合を考える。この例では、点P8aが含まれる矩形領域Ar8を設定した上で、川R8によって矩形領域Ar8を分断し、点P8aが含まれる側の領域を基準目的エリアAr8aと設定した。矩形領域Ar8に代えて円形などの領域を用いてもよい。図8(a)の例は、川R8が存在する場合には、少なくとも川の一方(図中の左側)に目的地が存在するというユーザの意図を反映させた例である。川の他、湖沼、線路などを基準目的エリアの境界としてもよい。川を境界とする処理は、川が明確に識別できる程度に地図上に表示されている場合に適用することが好ましいため、低階層で表示されている時にのみ適用するようにしてもよい。
図8(b)も同様に、川を境界とする処理例である。この例では、点P8bが含まれる矩形領域Ar8を、破線で示すようにメッシュに分割し、このメッシュの組合せで基準目的エリアを設定するものとした。川R8に対し、点P8bの対岸側にあるメッシュ、川および対岸側が半分以上を占めるメッシュを矩形領域Ar8から除外する。この結果、図中に実線囲みで示した領域が基準目的エリアAr8bに設定される。
【0045】
図5に戻り、画面入力処理について説明する。
基準目的エリアの設定(図5のステップS113)では、図6〜8で説明した全ての態様による設定を行う必要はなく、いずれかの設定を行ってもよい。図6〜8で説明した態様のいずれを行うかは、予め定めておくものとしてもよいし、ユーザが入力時に選択可能としてもよい。地図の階層に応じて図6〜8の態様を使い分けてもよい。
【0046】
ユーザは、地図上の文字が表示されている部分をクリックすることもある。このような場合、ユーザは文字に対応する地点を目的地として指定する意図であることがある。そこで、ナビゲーション装置100は、ユーザが指定する指定点が、地図上の文字を取り囲む領域内に含まれている場合には、この領域内の文字に基づいて文字目的エリアを設定する(ステップS114)。
【0047】
図9は、文字目的エリアの設定例(1)を示す説明図である。図9(a)に示す地図画面上で、「東京駅」の文字をユーザがクリックした場合を考える。本実施例では、「東京駅」の文字列を含むように文字領域C9を設定し、ユーザが指定した点(矢印A9の先の点P9)が、文字領域C9内に存在する時、「東京駅」の文字列をクリックしたものと判断する。
図9(b)は、「東京駅」の文字領域C9周辺を拡大した状態を示している。点P9は、ユーザが実際に指定した座標点である。このように、ユーザが文字領域C9を指定した場合には、文字に対応する「東京駅」を目的地とする意図であったのか、現実に指定された座標点を目的地とする意図であったのかが特定できない。そこで、本実施例では、双方を目的地として扱うものとした。つまり、実際に指定された座標点P9を中心とする所定の領域AR91と、東京駅を中心とする所定範囲AR92を目的エリアに設定するのである。このうち、指定された座標点を中心とする領域AR91については、先に説明した基準目的エリア(図5のステップS113)で設定済みであるため、文字目的エリアとしては、東京駅を中心とする領域AR92を設定する。
文字目的エリアAR92の広さは、任意に設定可能である。文字を指定していることから、ユーザの意図が比較的明確であると判断し、基準目的エリアAR91よりも狭い領域としてもよい。また、ユーザが指定した文字に対応する地点または領域のみを文字目的エリアとしてもよい。この場合は、「東京駅」の場合には、その地点のみが文字目的エリアとして設定されることになる。仮に、「墨田区」のように行政界を指定する文字がクリックされている場合には、その行政界が文字目的エリアとして設定されることになる。
【0048】
図10は、文字目的エリア設定例(2)を示す説明図である。図10(a)に示すように、A団地の領域RAa、B団地の領域RAbが表示されている地図で、ユーザが矢印A10の先の点P10を指定した場合を考える。A団地、B団地には、それぞれ複数の建物が存在しているが、この階層では、個々の建物までは表示されず、それぞれ領域として示されているだけである。指定された点P10は、「A団地」の文字領域内に含まれている。
図10(b)は、目的エリアの設定状態を示している。この例においても、実際に指定された座標点P10を中心とする基準目的エリアAR101と、「A団地」という文字に基づく文字目的エリアAR102が設定される。文字目的エリアAR102は、A団地RAaを包含する矩形領域(図中の破線)で設定してもよいし、A団地の領域RAa(図中のハッチングを付した領域)を用いてもよい。
【0049】
図5に戻り、画面入力処理について説明する。ナビゲーション装置100は、文字目的エリアを設定すると、目的地履歴を参照し(ステップS115)、履歴にある目的地のうち指定点に近い履歴目的地を抽出する(ステップS116)。本実施例では、目的地履歴は、ナビゲーション装置100の地図データベース記憶部105に記録されており、履歴には、経路探索・案内を行った日時、ユーザが指定した出発地、目的地の情報、現実に案内した目的地の情報などが記録されている。
【0050】
図11は履歴目的地の設定例を示す説明図である。図11(a)に示すように、地図画面においてユーザが点P11を指定した場合を考える。指定点P11の周囲には、矩形の基準目的エリアAR11aが設定されている。
ナビゲーション装置100は、履歴を参照し、指定点P11から所定の距離r11内で、過去に訪問したことがある目的地を検索する。この結果、建物DES11が検索されたとする。ナビゲーション装置100は、図11(b)に示す通り、建物DES11を含むように基準目的エリアAR11aを拡張し、新たな目的エリアAR11bを設定する。基準目的エリアAR11aとは別に、建物DES11を目的地として追加する態様をとってもよいし、建物DES11の周囲に基準目的エリアAR11aと個別の領域を設けてもよい。
図11では、単に指定された地点P11からの距離のみで過去に訪問したことがある目的地の検索を行う例を示したが、履歴に基づく目的地の検索も種々の方法が可能である。例えば、出発地と目的地とを総合的に考慮してもよい。つまり、履歴に記録された出発地が、現在の出発地と一致または近くにあるものの中から、目的地が指定点P11に近いものを検索するようにしてもよい。また、ユーザによる目的地の指定履歴を考慮してもよい。つまり、ユーザによる目的地の指定も履歴として記録しておき、この指定された目的地が、指定点P11に近いものを検索するようにしてもよい。特定の目的地に向かう場合、目的地の指定の仕方には、ユーザに応じた傾向が存在するので、目的地の指定の履歴を参照することにより、こうしたユーザの傾向を踏まえた目的地の指定が可能となる。
【0051】
ナビゲーション装置100は、以上で説明した基準目的エリア、文字目的エリア、および履歴目的地を総合して目的エリアとする(ステップS117)。これらの3種類の目的エリアを包含する領域を設定し、この領域を目的エリアと指定してもよい。
【0052】
次に、図5に戻り、低階層で地図が表示されている場合の処理を説明する。低階層で地図が表示されている場合、つまり狭い範囲で詳細な地図が表示されている場合(ステップS112)には、指定点に近い建物群を目的エリアとして指定する(ステップS118)。
図12は、建物群を目的エリアとして設定する例を示す説明図である。地図上には、団地RAa、RAbが表示されている。団地RAaには建物Ha1〜Ha3が存在し、団地RAbには建物Hb1〜Hb5が存在する。この状態で、点P12が指定された場合を考える。
ナビゲーション装置100は、点P12を中心とする所定半径r12の円領域(図中の破線)を基準目的エリアと設定する。しかし、このように個々の建物が判別できる状態で地図が表示されている状態では、ユーザは団地RAa内の建物ではなく、団地RAb内の建物を指定する意図であるのが通常である。そこで、ナビゲーション装置100は、点P12から半径r12の範囲内に含まれている建物のうち、点P12が含まれる団地RAbに属する建物Hb4、Hb5からなる建物群を目的エリアとして指定する。団地RAa内の建物Ha3は、半径r12の領域内に存在するが、目的エリアには含まない。
ここで、本実施例では、「目的エリア」という用語は、目的地が一義的に定まっていない状態を意味するため、建物Hb4、Hb5のように2つの建物が指定されている状態も、「目的エリア」と称するものとする。
図12の例においても目的エリアは種々の設定が可能であり、例えば、団地RAbと半径r12との重複領域を目的エリアとしてもよい。
【0053】
ナビゲーション装置100は、以上で説明した処理によって指定された目的エリアに基づいて図4に示したエリア指定経路探索(図4のステップS140)、エリア経路案内(ステップS150)等の処理を実行する。
上述の画面入力処理(図5)では、高階層、低階層ともに、結果として目的エリアが指定される処理例、つまりいずれの階層においても、目的地が一義的には特定されない処理例を示した。入力モード等の切り替えによって、または階層に応じて、ユーザが指定した座標点をそのまま特定の目的地として入力するモードを設けてもよい。この場合には、ナビゲーション装置100は、目的地経路探索(図4のステップS180)、目的地経路案内(ステップS182)等を実行する。
【0054】
C2.エリア指定経路探索処理:
図13は、エリア指定経路探索処理のフローチャートである。経路案内処理(図4)のステップS140において、目的エリアが指定されている状態で経路探索を行う処理である。
【0055】
まず、ナビゲーション装置100は、指定された目的エリアを入力する(ステップS141)。
そして、目的エリア内で仮目的地を複数選択する(ステップS142)。仮目的地とは、後述する経路探索の目的地とする地点である。
図中に仮目的地の設定例を示した。
左側は、円形の目的エリアAR13[0]が設定されている場合の例である。仮目的地を目的エリアAR13[0]の中心点D13[0]および境界の8等分点D13[1]〜D13[8]に設定した。仮目的地D13[0]〜D13[8]の重心位置が、目的エリアAR13[0]の図心と一致する例である。こうすることで、目的エリア内に均等に仮目的地を設定することができる。境界上の仮目的地の数は、8等分に限らず任意に設定可能であるが、図中の上下方向および左右方向の双方に対して偏りを避けるため、少なくとも4点以上を設けることが好ましい。
図の右側には、矩形の目的エリアAR13[1]が設定されている場合の例である。仮目的地D13[10]〜D13[13]を目的エリアAR13[1]からランダムに設定した例を示した。仮目的地の数は、任意に設定可能である。
目的エリアが円形の場合に、仮目的地をランダムに設定してもよいし、矩形の場合に、境界および内部に均等に設定しても構わない。
【0056】
仮目的地は、その他種々の方法で設定可能である。例えば、目的エリアを図8に示したようにメッシュ状に分割した上で、各メッシュごとにランダムに仮目的地を設定してもよい。こうすることで、ランダムに設定する場合でも、仮目的地の偏りを緩和することができる。
過去の履歴を参照して、訪問したことがある目的地を、仮目的地として設定することもできる。
行政界ごとに所定数ずつ仮目的地を設定するようにしてもよい。
後述する通り、設定されたそれぞれの仮目的地に対して経路探索を行うことになるため、経路探索処理の負荷軽減のため、ここで述べたいずれの態様においても、設定される仮目的地の総数には上限値を設けておくことが好ましい。
また、目的エリアのいずれの点においても遠回りとならない適切な経路を得るためには、仮目的地が目的エリア全体に偏りなく分布していることが好ましく、この意味で、仮目的地の重心と目的エリアの図心との偏差が所定値以内に収まるように仮目的地を設定することが好ましい。
【0057】
仮目的地が設定されると、ナビゲーション装置100は、
各仮目的地の到着地点までの経路探索を行う(ステップS143)。仮目的地となっている地物に設定された到着地点のデータを読み込み(図2参照)、この到着地点をゴールとする経路探索を行うのである。図2で説明した通り、到着地点とは、地物の出入口線から、直接またはいずれかの道路をたどって主リンクデータまで到達した点であるから、到着地点を用いた経路探索を行うことにより、仮目的地周辺の道路の状態を考慮した適切な経路を探索することが可能となる。
到着地点が設定されていない地物や、地物と無関係の地点が仮目的地となっている場合には、仮目的地から最短距離にあるノードに対して経路探索を行ってもよい。
【0058】
次に、ナビゲーション装置100は、全仮目的地に対する経路を比較して、経路の分岐点を特定する(ステップS144)。図中に分岐点の特定方法を示した。各仮目的地に至る経路として、以下の4本が得られている。
出発地→点BP1→点BP2→仮目的地D13[20];
出発地→点BP1→点BP2→仮目的地D13[21];
出発地→点BP1→点BP3→仮目的地D13[22];
出発地→点BP1→点BP3→仮目的地D13[23];
【0059】
これらの経路を比較することにより、出発地から点BP1までは、全ての経路で共通となっていることが分かる。ナビゲーション装置100は、このように各経路が通るリンクを比較して、共通部分を抽出するのである。そして、各経路が分かれていく分岐点、図中の例では、点BP1を求める。
分岐点までは、いずれの仮目的地に対しても大回りをしない経路、つまり最適な経路に対して道のりが増えない経路を選択できるが、分岐点を過ぎると、仮目的地によっては許容範囲を超える経路変更をせざるを得ないことが生じる。例えば、図の例では、分岐点BP1を過ぎて、点BP2の方向に進んだ後、仮目的地D13[22]、D13[23]に向かおうとすると、一旦、分岐点BP1まで戻る必要が生じ、その分、大回りの経路となってしまう。このように分岐点は、いずれの仮目的地にも適した経路を提供できる限界点としての意味がある。
出発地が目的エリアに近い場合には、各仮目的地までの経路に共通部分が見いだせず、分岐点が得られない場合もある。かかる場合には、分岐点は設定不能として、エリア指定経路探索処理を終了する。
【0060】
C3.エリア指定経路案内処理:
図14は、エリア経路案内処理のフローチャートである。経路案内処理(図4)のステップS150に相当する処理であり、目的エリアが指定されている場合に、エリア指定経路探索処理(図13)の結果を用いて経路案内を行う処理である。
【0061】
ナビゲーション装置100は、まずエリア指定経路探索処理(図13)で得られた経路および分岐点を入力する(ステップS151)。そして、ユーザの現在位置を入力する(ステップS152)。現在位置は、GPS等で検出可能である。
【0062】
案内処理の内容は、ユーザの現在位置が分岐点を通過しているか否かに応じて異なる。エリア指定経路探索処理で分岐点が得られなかった場合は、分岐点を過ぎているものとして扱われる。
現在位置が、分岐点に至っていない場合において(ステップS153)、現在位置が分岐点の付近、つまり分岐点から所定の距離範囲内にいる場合には(ステップS154)、ユーザに、分岐の接近を案内し、目的地の入力を促す(ステップS155)。
分岐点を超えて進んでしまうと、目的地によっては許容範囲を超える経路変更をせざるを得なくなるからである。
分岐点の接近を知らせる案内等は、メッセージの表示、地図画面の色の変化や点滅、音声案内などの方法をとることができる。
目的地から所定の距離範囲内にない場合には、この処理はスキップされる(ステップS154)。
【0063】
ナビゲーション装置100は、上述の案内をしたか否かに関わらず、経路案内を継続する(ステップS156)。
図15は、エリア経路案内例(1)を示す説明図である。ユーザの現在位置は点PP15である。エリア経路案内では、目的地が一義的に指定されてはいないため、ナビゲーション装置100は、経路と目的地との対応関係が識別できる態様で地図を表示する。
図の例では、ユーザの先方のノードN34で経路は分岐し、リンクLW3方向に直進すると、建物HG〜HJに行くことができるが、その他の建物HA〜HFには経路変更が必要となる。この意味で、リンクLW3方向の経路は、建物HG〜HJに関連づけられた経路である。
一方、ノードN34でリンクLW4方向に左折すると、建物HA〜HFに行くことができるが、建物HG〜HJに行くには経路変更が必要となる。この意味で、リンクLW4方向の経路は、建物HA〜HFと関連づけられた経路である。
ナビゲーション装置100は、上述の関連が識別できるように地図を表示する。図の例では、直進方向の経路に付した矢印A15aと建物HG〜HJ、左折方向の経路に付した矢印A15bと建物HA〜HFを、それぞれ同じ色等の表示態様で表示するのである。矢印A15a方向を赤色、矢印A15b方向を青色のように色を変えてもよいし、矢印A15a方向を点滅、矢印A15b方向を常時表示としてもよい。ここでは、2組に分けて表示態様を変える例を示したが、経路によっては3組以上に表示態様を分けてもよい。
こうすることにより、ユーザは、自分がどの経路をとれば、どの目的地に行けるのかを視覚的に把握することができる。従って、改めて目的地を指定するまでなく、適切な経路を選択して進行することが可能となる。
【0064】
再び図14に戻り、エリア経路案内処理について説明する。
ユーザの現在位置が分岐点を通過している場合(ステップS153)、ナビゲーション装置100は、リルートが必要な仮目的地までの経路を再探索する(ステップS157)。各仮目的地に対して得られている経路から、現在位置が外れている仮目的地について、リルートが必要と判断すればよい。
当初から分岐点が得られていない場合も、同様である。この場合は、全仮目的地がリルートの対象となる。
【0065】
リルートを行った仮目的地については、リルート前の経路からの大回りが生じているはずである。ナビゲーション装置100は、リルート前後の経路の道のりの差分から大回りの距離を算出し、大回り距離が所定以上となる仮目的地を案内対象から除外し(ステップS158)、残りの仮想目的地に対する経路案内を行う(ステップS159)。
【0066】
図16は、エリア経路案内例(2)を示す説明図である。許容範囲を超える大回りが生じる仮目的地を案内対象から除外した例を示した。
先に図15に示した状態から、ユーザは分岐点としてのノードN34を通過して、リンクLW3を直進し、現在位置16に至った場合を考える。建物HG〜HJには従前の経路通りで到達することができるため、これらの建物HG〜HJは、直進方向の矢印A16aと同じ表示態様で案内表示されている。
これに対し、建物HA〜HFについては、リルートの結果、矢印A16bを戻ってリンクLW4を進む経路が得られる。この経路と、従前の経路、即ち矢印A16cのように、ノードN34で左折してリンクLW4に進入する経路とを比較すれば、リンクLW3をノードN34まで戻る分だけ、リルート後の経路の方が大回りになっている。
この大回りの距離が、所定範囲を超えるため、図の例では、建物HA〜HFは、何らの色等も付さずに、通常の地物と同様の表示態様で表示される。建物HA〜HFは、目的地から除外されたことを示すため、いわゆるグレーアウトなど視認性の低い表示態様をとってもよい。
こうすることにより、ユーザは案内対象として残っている建物(図中の建物HG〜HJ)を見れば、自己の判断で進んでいる進路の正否を容易に判断することができる。また、更に絞り込んで目的地を指定する際にも、無用な大回りを生じない範囲で目的地を指定することができる。
【0067】
図17は、エリア経路案内例(3)を示す説明図である。ユーザが更に進み、現在位置PP17に来た場合を示した。この時点では、建物HJを通り過ぎているため、建物HJは案内対象から除かれる。目前にある建物HG〜HIは、案内対象である。
ナビゲーション装置100は、この時点でも目的エリア内の他の建物HA〜HFに対してリルートを行う。この結果、建物HA〜HDについては、現在位置から矢印A17aのように、リンクLW2、LW1を進む経路が得られる。この経路は、矢印A17bに示すようにリンクLW4、LW1を通る経路と比較して、ほぼ同じ道のりとなっているため、現在位置PP17では、許容範囲を超える大回り経路とはなっていない。
そこで、ナビゲーション装置100は、建物HA〜HDを再び案内対象として表示する。
このように一旦、案内対象から除外された建物であっても、現在位置が移動した結果、再び案内対象に含めるようにしてもよい。こうすることにより、ユーザが経路の間違いに気づき、進路を修正した場合などに、自己の意図した目的地が案内対象となるか否かによって、修正した経路の適否を容易に判断することができる。
【0068】
このようにエリア経路案内処理では、経路と目的地とを対応づけた表示(図15参照)によって、ユーザが目的地を絞り込んで入力することを支援できる。また、ユーザが自己の判断で経路を選択した時に、その正否が判断可能な情報をユーザに提供することができる(図16、17参照)。
【0069】
D.経路案内例:
図18は、経路案内例を示す説明図である。本実施例によれば、図18(a)に示すように、出発時には、エリアAR18aのように大雑把に目的エリアを指定した状態でも、大回りを生じない適切な経路案内を受けることができる。目的エリアAR18aに対する分岐点BP18aに到達するまでに、目的エリアを絞り込めばよい。
【0070】
分岐点BP18aに至るまでにユーザは、図18(b)の目的エリアAR18bに示すように、目的エリアの範囲を絞り込む入力を行う。こうすることにより、ユーザは大回りを生じない経路案内を受けることができる。ユーザは、さらに、目的エリアAR18bに対する分岐点BP18bに到達するまでに、目的エリアを絞り込む入力を行えばよい。
分岐点BP18aまで来た時点で、ユーザが目的地の所在を知っている時は、目的エリアの絞り込みを行うまでなく、自己の判断で目的地に向かう経路を進んでもよい。エリア案内処理(図14)で示した通り、ナビゲーション装置100はリルートによって許容以上の大回りが生じる範囲を案内対象から除外するため、目的エリアAR18bのように絞り込んだエリアが得られる。
【0071】
分岐点BP18bに至るまでにユーザは、図18(c)の目的エリアAR18cに示すように、目的エリアの範囲を絞り込む入力を行う。こうすることにより、ユーザは大回りを生じない経路案内を受けることができる。こうして徐々に目的エリアを絞り込む入力をしながら、ユーザは目的地までの経路案内を受けることができる。ここでは、徐々に絞り込む例を示したが、途中で目的地を完全に指定する入力を行っても構わない。
【0072】
また、分岐点BP18bまで来た時点で、ユーザが目的地の所在を知っている時は、目的エリアの絞り込みを行うまでなく、自己の判断で目的地に向かう経路を進んだ場合も、ナビゲーション装置100によって、目的エリアAR18cのように絞り込んだエリアが得られる。本実施例は、このようにユーザが自己の判断で経路を選んで進んでいく方法によっても、大回りすることなく目的地に到達することが可能な案内を行うことができる。
【0073】
本発明は、必ずしも上述した実施例の全ての機能を備えている必要はなく、一部のみを実現するようにしてもよい。また、上述した内容に追加の機能を設けてもよい。
本発明は上述の実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、実施例においてハードウェア的に構成されている部分は、ソフトウェア的に構成することもでき、その逆も可能である。
【0074】
本発明は、経路案内方法として構成することも可能である。
道路をノード、リンクで表したネットワークデータを有するコンピュータによって、指定された目的地に向かう経路を案内する経路案内方法であって、
目的地が一義的に定まらず選択の余地を残した状態での目的地および出発地を入力し、メモリに記憶する入力ステップと、
前記指定された目的地の範囲内で、経路探索に用いる複数の仮目的地を設定し、メモリに記憶する仮目的地設定ステップと、
前記ネットワークデータを参照して、前記メモリに記憶された前記出発地から、前記メモリに記憶されたそれぞれの仮目的地までの経路を探索し、その結果をメモリに記憶する経路探索ステップと、
前記メモリに記憶された前記それぞれの仮目的地までの経路が分岐する地点までの経路案内を行う経路案内ステップとを備える経路案内方法である。
【0075】
また、かかる経路案内をコンピュータによって実現するためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。
道路をノード、リンクで表したネットワークデータを有するコンピュータによって、指定された目的地に向かう経路を案内するためのコンピュータプログラムであって、
目的地が一義的に定まらず選択の余地を残した状態での目的地および出発地を入力し、メモリに記憶する入力機能と、
前記指定された目的地の範囲内で、経路探索に用いる複数の仮目的地を設定し、メモリに記憶する仮目的地設定機能と、
前記ネットワークデータを参照して、前記メモリに記憶された前記出発地から、前記メモリに記憶されたそれぞれの仮目的地までの経路を探索し、その結果をメモリに記憶する経路探索機能と、
前記メモリに記憶された前記それぞれの仮目的地までの経路が分岐する地点までの経路案内を行う経路案内機能とをコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、目的地が一義的に特定できない状態での経路案内に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
100…ナビゲーション装置
101…主制御部
102…送受信部
103…コマンド入力部
104…GPS入力部
105…地図データベース記憶部
106…表示制御部
107…経路探索部
200…サーバ
201…送受信部
202…データベース管理部
210…地図データベース記憶部
211…地物データ
212…文字データ
213…ネットワークデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された目的地に向かう経路を案内する経路案内システムであって、
道路をノードおよびリンクで表したネットワークデータを格納する地図データベース記憶部と、
目的地が一義的に定まらず選択の余地を残した状態での目的地および出発地を入力する入力部と、
前記指定された目的地の範囲内で、経路探索に用いる複数の仮目的地を設定する仮目的地設定部と、
前記ネットワークデータを参照して、前記出発地から、それぞれの仮目的地までの経路を探索する経路探索部と、
前記それぞれの仮目的地までの経路が分岐する地点までの経路案内を行う経路案内部とを備える経路案内システム。
【請求項2】
請求項1記載の経路案内システムであって、
前記地図データベースは、さらに、道路を含む地物を描画するための地物データを格納しており、
前記ネットワークデータおよび地物データを参照して、自動車が通行可能な道路として前記ネットワークデータが整備された道路上の点であって、前記目的地に対応する地物から直接またはいずれかの道路を通行して到着できる点である到着地点を取得する到着地点取得部を有し、
前記経路探索部は、前記到着地点を仮目的地とする経路探索を行う経路案内システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の経路案内システムであって、
前記経路案内部は、前記それぞれの仮目的地までの経路が分岐した後の部分について、各経路と、その経路によって到達できる目的地との対応を識別可能な表示態様で地図を表示する経路案内システム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の経路案内システムであって、
ユーザの現在位置を入力する現在位置入力部を有し、
前記経路探索部は、前記それぞれの仮目的地までの経路が分岐する分岐点を通り過ぎたところに現在位置がある場合、前記仮目的地のうち経路変更することなく到達できる仮目的地を抽出し、
前記経路案内部は、前記抽出された仮目的地を他の仮目的地から識別可能な表示態様で表示する経路案内システム。
【請求項5】
請求項4記載の経路案内システムであって、
前記入力部は、前記入力の後に、前記範囲よりも絞り込んだ目的地または特定の目的地の指定を入力可能であり、
前記経路案内部は、前記経路変更が許容範囲を超える仮目的地を、前記指定可能な目的地の対象から除外した態様で地図を表示する経路案内システム。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の経路案内システムであって、
従前の経路探索結果の履歴を記録する履歴記憶部を有し、
前記仮目的地設定部は、前記履歴記憶部を参照して、従前の経路探索結果における目的地のうち、前記指定された目的地から所定の範囲内にあるものも、前記指定された目的地に加えて仮目的地を設定する経路案内システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−209027(P2011−209027A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75466(P2010−75466)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】