結合組織の処置のための組成物
本発明は、アミノ糖、S-アデノシルメチオニン、アラキドン酸、ペントサンを含むGAG、コラーゲンII型、テトラサイクリンもしくはテトラサイクリン様化合物、ジアセリン、スーパーオキシドジスムターゼ、L-エルゴチオネイン、メチルスルファニルメタン、1種もしくは複数種のアボカド/ダイズ不けん化物および鎮痛薬、例えばアセトアミノフェンを含む、同化剤、抗異化剤、抗酸化剤および鎮痛剤のいずれかまたは全てを含有する、ヒトおよび動物における結合組織での炎症の調節のための、ならびにCOX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインを含むそのような炎症のマーカーの調節のための組成物に関し、かつ、これらの新規の組成物の、それを必要とするヒトおよび動物への投与によってヒトおよび動物を処置する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2006年12月6日付で出願された米国特許出願第11/634,383号の優先権を主張するものであり、その特許出願の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、1998年6月5日付で出願された「A COMPOSITION OF ACETAMINOPHEN, AN AMINOSUGAR AND A GLYCOSAMINOGLYCAN」という名称の米国特許仮出願第60/088,205号の恩典を主張する、かつ、さらに1998年2月13日付で出願された「THE USE OF ANABOLIC AGENTS, ANTI-CATABOLIC AGENTS, ANTIOXIDANT AGENTS, AND ANALGESICS FOR PROTECTION, TREATMENT AND REPAIR OF CONNECTIVE TISSUES IN HUMANS AND ANIMALS」という名称の米国特許仮出願第60/074,594号の恩典を主張する1999年2月12日付で出願された米国特許出願第09/249,335号の一部継続出願である、1999年3月23日付で出願された米国特許出願第09/274,881号の継続出願である、2002年7月11日付で出願された米国特許出願第10/192,318号の継続出願である、2004年4月15日付で出願された米国特許出願第10/824,498号に関連している。上記の出願の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本発明は、ヒトおよび他の動物における結合組織の炎症の保護、処置、修復および調節のための組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒトを含む哺乳動物の組織は、組織を構築する同化プロセスと、組織を分解する異化プロセスとが絶えず変わる状態にある。これらの2つのプロセスの間のバランスが取れている場合には健康な状態が存在し、このバランスの乱れによって疾患が生じる。このことは身体の全ての組織にあてはまる。結合組織はいくつかの理由で特に重要である。第1に、結合組織は体の「機能的細胞」、すなわち、上皮細胞、筋肉細胞および神経細胞を支えている。第2に、結合組織は多細胞生命体にとって不可欠な、細胞間情報交換において重要な役割を果たす。
【0005】
炎症プロセスはこのバランスにおいて重要な位置を占めている。組織への損傷が起こると、炎症は、組織修復をもたらす生化学的プロセスを惹起する。炎症は関わる組織の疼痛、炎症および膨潤といった症状をもたらすので、患者も医師もともにこれを、できるだけ早急かつ完全に処置および軽減されるべき、異常なかつ望ましくない状態と見なすことが多い。結果として、薬局は「抗炎症薬」(コルチコステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬、例えばアスピリンなど)でいっぱいになっている。ある種の状況下で、炎症は確かに破壊的なこともあるが、しかし炎症が組織治癒と密接に関連していると肝に銘じることは重要である。実際、炎症は、厳密に同化性または異化性と容易には分類されず、いずれの効果も持ちうる。体内でのその目的は有害な物質を除去、希釈または隔離することである。炎症は同様に、損傷した組織を修復および再構築する生化学的プロセスも発動する。炎症は治癒に不可欠であるので、および炎症は組織破壊も引き起こしうるので、炎症およびそのメディエータは同化および異化のバランスにおいて重要な要因である。
【0006】
炎症性メディエータの非常に重要なクラスの1つはエイコサノイド群である。エイコサノイドは必須脂肪酸(「FA」)から体内で合成される。一連の生化学的反応を通じ、前駆脂肪酸が修飾されて中間代謝産物アラキドン酸(「AA」)、ω-6 FAおよびエイコサペンタエン酸(「EPA」)、ω-3 FAを生ずる。アラキドン酸から生成されるエイコサノイドには2系列のプロスタグランジンおよび4系列のロイコトリエンがあり、これらは一般に炎症促進性である。3系列プロスタグランジンおよびヒドロキシエイコサペンタエン酸(「HEPE」)などの、EPAから誘導されるエイコサノイドは、AAから誘導されるものよりも炎症性が低い。さらに、このようなエイコサノイドは抗炎症作用さえ持ちうる。
【0007】
1つのクラスとして、エイコサノイドは短命かつ局所的に活性である。エイコサノイドは血管拡張、血管透過性の増大および走化性を含む、炎症の初期事象に関与する。さらに、エイコサノイドは、治癒プロセスの早期段階において役立つ。例えば、エイコサノイドはTGF-Bなどのサイトカインの放出を誘発し、これが今度は結合組織細胞の移動および増殖、ならびに細胞外マトリックスの沈着を刺激する。特定の構成性エイコサノイドは、胃腸粘膜および腎臓において保護作用も有する。何故なら、それらのエイコサノイドがグリコサミノグリカン合成およびこれらの器官の正常な灌流を維持するからである。
【0008】
これらのような同化プロセスのため、ならびに体内の天然の抗異化剤および抗酸化剤の影響のため、炎症の多くの場合の結果は、損傷の消散および損傷した組織の治癒である。炎症自体が疾患の一因となるのは、病的状態においてだけである。
【0009】
エイコサノイド前駆体FA (cis-リノール酸およびα-リノレン酸、いわゆるω-3およびω-6脂肪酸を含む)の治療的使用に関する研究は、主に、エイコサノイド合成の競合的阻害剤としてのその使用、それゆえ、その抗炎症作用に向けられてきた。重篤なまたは絶対的な食事性欠乏の場合を除き、エイコサノイドが結合組織において有する有益な同化作用に対しては注意がほとんど払われてこなかった。しかしながら、天然に起こるエイコサノイドの「不顕性の」欠乏は、おそらく疾患に大きく寄与するも、十分に診断されていない。例えば、酵素Δ-6-デサチュラーゼはAA合成の関与段階を担う。この酵素(Δ-6-デサチュラーゼ)の活性は年齢とともに減少する。これは、高齢人口層での結合組織機能不全の発生率の増加における重要な要因であることを証明している可能性が高い。AAの欠乏が同化プロセスを低減し、異化事象を優位にさせるからである。
【0010】
組織の治癒における炎症の重要性、およびいくつかのエイコサノイドが果たす保護的な役割を考えれば、エイコサノイドの生成を遮断することによって炎症を低減する医薬には、治癒および同化プロセスに対して負の作用があることも驚くべきことではない。強力に抗炎症性を示すコルチコステロイド薬も治癒を遅延し、細胞外マトリックス成分の生成を低減することは長い間知られている。これは、コルチゾールおよび関連する化合物が細胞膜を安定化し、それゆえ、ホスホリパーゼA2、つまりAAの前駆体の放出を阻害するからである。最近では、非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)に注意が向けられている。NSAIDは、コルチコステロイドと同様に、プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼを阻害し、かくしてシクロオキシゲナーゼ経路を遮断するので、結合組織細胞によるマトリックス成分の合成を低減できることが数多くの研究によって明らかにされている。
【0011】
炎症プロセスは組織治癒の必須条件であるので、およびエイコサノイドは炎症プロセスのメディエータであるので、AA (および他のエイコサノイド化合物)の使用は傷害組織の治療法に対する新規のアプローチである。Kirkpatrickらは器官培養中のニワトリ胚軟骨に対するプロスタノイド前駆体の使用について調査し、有意な効果を認めなかった。[Kirkpatrick, C. J., 「Effects of Prostanoid Precursors and Indomethacin on Chick Embryonic Cartilage Growth in Organ Culture」, Expl. Cell Biol., 51: 192-200 (1993)(非特許文献1)]。鳥類の軟骨および胚軟骨は哺乳動物の出生後軟骨とは著しく異なるので、この研究における実験モデルが有意な効果のないことの一因になった可能性がある。例えば、そもそも、どの種の胚軟骨も指数関数的増殖期にあるので、異化亢進性かつ同化性である。Kentらはウサギ軟骨におけるAAの効果を検討し、正の効果を認めたが、それ以前のおよびその後の研究ではこれを確認できていない。[Kent, L. et al., 「Differential Response of Articular Chondrocyte Populations to Thromboxane B2 and Analogs of Prostaglandin Cyclic Endoperoxidases」, Prostaglandins. 19:391-406 (1980)(非特許文献2)]。KirkpatrickおよびGardnerは、AAおよびAAのさまざまな代謝産物が生合成に対してあまり効果を与えないまたは阻害効果を与えることを見出した。[Kirkpatrick C. J. and Gardner, D. L., 「Influence of PGAI on Cartilage Growth」, Experientia, 33(4):504 (1976)(非特許文献3)]。しかしながら、Lippielloらは、AAおよび他のω-6脂肪酸が細胞培養での軟骨細胞代謝に対して有益な作用を与えることを見出した。[Lippiello, L., Ward, M., 「Modification of articular cartilage chondrocyte metabolism by in vitro enrichment with fatty acids (abstract)」, Trans. Orthop. Res. Soc. 13: 162 (1988)(非特許文献4); Lippiello, L., 「Prostaglandins and articular cartilage; does Prostaglandin perturbation perpetuate cartilage destruction?」 Semin Arthritis Rheum 11:87 (1981)(非特許文献5)]。体内での同化プロセスと異化プロセスとの間のバランスは壊れやすく容易に乱されるので、これらのバラツキのある結果は、予想外というわけではない。Phanらは、シクロオキシゲナーゼ経路によるAAの生成物が抗線維形成性であるのに対し、リポキシゲナーゼ経路によるAA生成物が線維形成促進性であることを示唆している。この現象はエイコサノイドの相互作用の複雑さを実証している。
【0012】
異化事象は、体成分を分解する酵素により体内で通常媒介される。異化は健康にとって不可欠であり、必要な酵素の欠乏はムコ多糖体沈着のようないわゆる蓄積症などの、疾患を引き起こす。過度の異化も組織の破壊を引き起こし、変形性関節症のような変性疾患または多発性硬化症のような自己免疫疾患において見られるような、疾患を導くことがある。体内のさまざまな抗異化物質は、異化作用を抑制および平衡化するのに役立つ。例えば、コンドロイチン硫酸は、軟骨マトリックス中のコラーゲンおよびプロテオグリカンを異化するメタロプロテイナーゼの影響を弱める。同様に、α1アンチトリプシンは、肺気腫における肺胞の破壊に寄与するエラスターゼの作用を阻害する。
【0013】
酸化的損傷も体内での同化作用と異化作用とのバランスに影響を及ぼす。この損傷は、不対電子を有する物質である遊離ラジカルの作用の結果である。遊離ラジカルはATPの生成のような正常反応の結果として体内で恒常的に生じる。それらは炎症プロセスの間にも生じる。遊離ラジカルは、化学的に極めて反応性が高いので、細胞の損傷を引き起こす。それらは単一の電子(真空のように自然では嫌われる状態)しか持たないので、これらの物質はその近くの分子から電子を「奪う」。それによって、細胞膜またはDNAなどの、細胞構造を構成する分子は電子不足とされる。電子の不足によって今度は、細胞構造が不安定になり、異常タンパク質の製造、細胞破裂、および細胞死を含む、細胞機能不全が起こる。酸化的損傷は、加齢プロセスを含む体内での多くの異化事象に関係している。ビタミンC、ビタミンE、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、セレンおよびグルタチオンなどの、抗酸化物質は、酸化的損傷が起こる前に遊離ラジカルを除去する物質である。抗酸化物質は、細胞損傷を予防するという意味において、特定のタイプの抗異化剤である。
【0014】
身体は、組織の成長を刺激する同化化合物も含む。グルコサミンは、グルコースから体内で天然に形成されるアミノ糖である。グルコサミンは、外因的に供給されると、結合組織細胞合成を刺激し、それによって正常な細胞外マトリックスの量を増加させる。グルコサミンは、軟骨および他の結合組織中のグリコサミノグリカンの構成単位でもある。したがって、グルコサミンをさらに供給することにより結合組織でのマトリックス合成のための余分な原料が身体に供給される。体内の同化化合物の他の例としては、タンパク質合成を刺激するソマトトロピン、ならびに軟骨細胞および線維芽細胞の増殖を刺激し、マトリックス合成を増強するソマトメジンまたはインスリン様成長因子が挙げられる。
【0015】
これらの化合物の作用および相互作用は複雑である。ある化合物は異なる組織において異なる作用を持ちうる。例えば、ソマトトロピンは、タンパク質合成(同化作用)を増大する、がしかし脂肪分解(異化作用)も加速する。特定の化合物または化合物の組み合わせが有する作用は、投与経路、投薬量および治療期間を含む、多くの要因に依存するであろう。
【0016】
過去に研究者らは、個々の化合物のその同化作用、抗酸化作用または抗異化作用に向けた使用について検討してきた。グルコサミンは細胞培養において結合組織細胞を刺激し、マトリックス成分、つまりコラーゲンおよびグリコサミノグリカン(GAG)をもたらすことが見出されている。[Jimenez, S., 「The Effects of Glucosamine sulfate on Chondrocyte Gene Expression」, Eular Symposium, Madrid October 1996 Proceedings, page 8-10(非特許文献6)]。S-アデノシルメチオニンはGAGの硫酸化を含む、いくつかの合成反応に関与することが知られている。[Champe, P. Biochemistry, 2nd edition, J. B. Lippincott Co, Philadelphia, 1994, pp. 248, 250, 265(非特許文献7)]。アラキドン酸は、角膜治癒を刺激することが見出されている。[Nakamura, M., 「Arachidonic Acid Stimulates Corneal Epithelial Migration」, J. Ocul. Pharmacol., Summer: 10(2): 453-9 (1994)(非特許文献8)]。それゆえ、これらの化合物は同化作用を有する。
【0017】
コンドロイチン硫酸は、軟骨マトリックスを破壊するメタロプロテイナーゼを含めて、分解酵素を阻害することが明らかにされている。[Bartolucci, C., 「Chondroprotective action of chondroitin sulfate」, Int. J. Tiss. Reac., XIII(6):311-317 (1991)(非特許文献9)]。硫酸ペントサンを用いた研究から、硫酸ペントサンはウサギ心筋細胞において補体を介した損傷を阻止することが明らかにされている。[Kilgore, K., 「The Semisynthetic Polysaccharide Pentosan Polysulfate Prevents Complement-Mediated Myocardial Injury in the Rabbit Perfused Heart」, J. Pharmocol. Exp. Ther., 285(3):987-94 (1998)(非特許文献10)]。コラーゲンII型の経口投与は、関節リウマチにおいて関節組織を破壊する有害な免疫応答を低減することが明らかにされている。テトラサイクリン類似体は、マトリックスメタロプロテイナーゼの強力な阻害剤である。[Ryan, M., 「Potential of Tetracyclines to Modify Cartilage Breakdown in Osteoarthritis.」 Curr. Opin. Rheumatol., 8(3): 238-47 (1996)(非特許文献11)]。ジアセレインはインターロイキン-1活性の阻害によって、ならびに同様にリンパ球および好中球に対する直接的作用によって炎症プロセスを修正する。[Beccerica, E., 「Diacetylrhein and rhein: in vivo and in vitro effect on lymphocyte membrane fluidity」, Pharmocol. Res., 22(3):277-85 (1990)(非特許文献12); Mian, M., 「Experimental Studies on Diacerhein: Effects on the Phagocytosis of Neutrophil Cells from Subcutaneous Carregeenan-Induced Exudate」, Drugs Exp. Clin. Res., 13(11):695-8 (1987)(非特許文献13); Spencer, C., 「Diacerein」, Drugs, 53(1):98-106 (1997)(非特許文献14)]。これらの化合物は抗異化剤に分類することができる。
【0018】
L-エルゴチオネインはヒドロキシルラジカルを除去し、一重項酸素の形成を阻害することができる[Han J S. 「Effects of Various Chemical Compounds on Spontaneous and Hydrogen Peroxide Induced Reversion in Strain TA104 of Salmonella typhimurium」, Mutant Res., 266(2):77-84 (1992)(非特許文献15)]のに対し、スーパーオキシドジスムターゼはスーパーオキシドラジカルを除去する[Mathews C, Biochemistry 2nd ed., Benjamin/Cummings Pub. Co., Menlo Park Calif., 1996, page 551(非特許文献16)]。これらの化合物は酸化防止剤に分類することができる。
【0019】
これらの化合物は個別に検討されてきたものの、本発明者らの知る限り、本発明者ら以外の誰も、健康を維持しかつ治癒を促進するために同化剤、抗異化剤および抗酸化剤のいずれかのまたは全てのある種の組み合わせの効果について調べていない。本発明によれば、これらの薬剤の組み合わせを用いて、適切な同化作用(治癒)を最大とし、望ましくない異化作用(分解)および酸化的損傷を低減し、それと同時に有害な反応を最小またはなしとすることができる。それゆえ、ヒトおよび動物における結合組織の維持および修復のために同化剤、抗異化剤、抗酸化剤および/または鎮痛剤の組み合わせの有益な作用を利用する組成物を提供する必要のあることが理解されうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Kirkpatrick, C. J., 「Effects of Prostanoid Precursors and Indomethacin on Chick Embryonic Cartilage Growth in Organ Culture」, Expl. Cell Biol., 51: 192-200 (1993)
【非特許文献2】Kent, L. et al., 「Differential Response of Articular Chondrocyte Populations to Thromboxane B2 and Analogs of Prostaglandin Cyclic Endoperoxidases」, Prostaglandins. 19:391-406 (1980)
【非特許文献3】Kirkpatrick C. J. and Gardner, D. L., 「Influence of PGAI on Cartilage Growth」, Experientia, 33(4):504 (1976)
【非特許文献4】Lippiello, L., Ward, M., 「Modification of articular cartilage chondrocyte metabolism by in vitro enrichment with fatty acids (abstract)」, Trans. Orthop. Res. Soc. 13: 162 (1988)
【非特許文献5】Lippiello, L., 「Prostaglandins and articular cartilage; does Prostaglandin perturbation perpetuate cartilage destruction?」 Semin Arthritis Rheum 11:87 (1981)
【非特許文献6】Jimenez, S., 「The Effects of Glucosamine sulfate on Chondrocyte Gene Expression」, Eular Symposium, Madrid October 1996 Proceedings, page 8-10
【非特許文献7】Champe, P. Biochemistry, 2nd edition, J. B. Lippincott Co, Philadelphia, 1994, pp. 248, 250, 265
【非特許文献8】Nakamura, M., 「Arachidonic Acid Stimulates Corneal Epithelial Migration」, J. Ocul. Pharmacol., Summer: 10(2): 453-9 (1994)
【非特許文献9】Bartolucci, C., 「Chondroprotective action of chondroitin sulfate」, Int. J. Tiss. Reac., XIII(6):311-317 (1991)
【非特許文献10】Kilgore, K., 「The Semisynthetic Polysaccharide Pentosan Polysulfate Prevents Complement-Mediated Myocardial Injury in the Rabbit Perfused Heart」, J. Pharmocol. Exp. Ther., 285(3):987-94 (1998)
【非特許文献11】Ryan, M., 「Potential of Tetracyclines to Modify Cartilage Breakdown in Osteoarthritis.」 Curr. Opin. Rheumatol., 8(3): 238-47 (1996)
【非特許文献12】Beccerica, E., 「Diacetylrhein and rhein: in vivo and in vitro effect on lymphocyte membrane fluidity」, Pharmocol. Res., 22(3):277-85 (1990)
【非特許文献13】Mian, M., 「Experimental Studies on Diacerhein: Effects on the Phagocytosis of Neutrophil Cells from Subcutaneous Carregeenan-Induced Exudate」, Drugs Exp. Clin. Res., 13(11):695-8 (1987)
【非特許文献14】Spencer, C., 「Diacerein」, Drugs, 53(1):98-106 (1997)
【非特許文献15】Effects of Various Chemical Compounds on Spontaneous and Hydrogen Peroxide Induced Reversion in Strain TA104 of Salmonella typhimurium」, Mutant Res., 266(2):77-84 (1992)
【非特許文献16】Mathews C, Biochemistry 2nd ed., Benjamin/Cummings Pub. Co., Menlo Park Calif., 1996, page 551
【発明の概要】
【0021】
本発明は新規の組成物、ならびにそのような組成物を用いてヒトおよび動物における結合組織の損傷を処置、修復および予防する方法を提供する。それゆえ、本発明の目的はヒトおよび動物における結合組織の保護、処置および修復のための同化剤、抗異化剤、抗酸化剤および/または鎮痛剤のいずれかの、または全ての新規の組成物を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、同化剤、抗異化剤、抗酸化剤および/または鎮痛剤のいずれかまたは全てを含有する組成物によりヒトおよび動物における結合組織を処置および修復する方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、アミノ糖、S-アデノシルメチオニン(SAMe)、アラキドン酸(AA)、GAG、硫酸ペントサン、コラーゲンII型、テトラサイクリン、ジアセリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、L-エルゴチオネイン、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物(ASU)および鎮痛剤、例えばアセトアミノフェンなどからなる群より選択される同化剤、抗異化剤、抗酸化剤および/または鎮痛剤のいずれかまたは全てを含む組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、アミノ糖、SAMe、アラキドン酸、GAG、硫酸ペントサン、コラーゲンII型、テトラサイクリン、ジアセリン、SOD、L-エルゴチオネイン、1種または複数種のASUおよび鎮痛剤、例えば、アセトアミノフェンからなる群より選択される要素の1つまたは複数を含有する、ヒトおよび動物における結合組織の損傷を修復、処置、および予防するための組成物を提供することである。
【0025】
本発明のさらなる目的は、ヒトおよび動物における結合組織の損傷に関連する炎症を調節するための組成物を提供することである。
【0026】
本発明のこれらのおよび他の目的は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】コンドロイチン硫酸などのGAGの作製のための生合成経路の詳細な説明を示す。
【図2】SAMeおよびその直接の前駆体の分子構造である。
【図3】SODの機能の略図を示す。
【図4】不けん化性脂質のいくつかの例を示す。
【図5】アセトアミノフェンの分子構造である。
【図6】実施例7において異なる2期間で観察された、細胞外マトリックス(ECM)およびマイクロキャリア上の軟骨細胞の像を表す。
【図7】実施例7において観察された、II型コラーゲンを染色した軟骨細胞の像である。
【図8】実施例7において測定された、IL-1β活性化に対するPGE-2の反応を示した2つのグラフを表す。
【図9】実施例7による、アボカド/ダイズ不けん化物(ASU)、コンドロイチン硫酸およびグルコサミンに対するPGE-2反応の調節を示したグラフを表す。
【図10】実施例8による、THP-1細胞におけるTNF-α発現を示したグラフを表す。
【図11】実施例8による、IL-1βを示したグラフである。
【図12】実施例8において測定された、THP-1細胞におけるiNOS発現を示したグラフである。
【図13】実施例8において測定された、THP-1細胞におけるp38発現を示したグラフである。
【図14】図14Aおよび14Bは、実施例9において測定された、活性化軟骨細胞におけるCOX-2の阻害を示す。
【図15】実施例9において測定された、分泌性PGE-2レベルを示したグラフである。
【図16】実施例11において測定された、ヒト軟骨細胞におけるインターロイキン-8 (IL-8)発現を示したグラフである。
【図17】実施例11において測定された、ヒト軟骨細胞における単球走化性タンパク質(MCP)発現を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
結合組織の損傷を処置、修復および予防するために用いられる本発明の組成物は、同化剤、抗異化剤および/または抗酸化剤の組み合わせを含む。好ましい態様の成分は、アミノ糖、SAMe、AA、ペントサンを含むGAG、コラーゲンII型、テトラサイクリン、ジアセリン、SOD、L-エルゴチオネイン、メチルスルファニルメタン(MSM)、および1種または複数種のASUからなる群より選択される組成物を含む。任意で、本発明の組み合わせはアセトアミノフェンなどの、1種または複数種の鎮痛剤を含んでもよい。さらに、本発明はこれらの新規の組成物を、その組成物を必要とするヒトおよび動物に投与する方法を範囲に含む。
【0029】
アミノ糖の一例であるグルコサミンは、グルコースから体内で自然に形成される。グルコサミンは、外因的に供給されると、結合組織細胞合成を刺激し、正常な細胞外マトリックスの量を増加させる。グルコサミンは、軟骨および他の結合組織中のグリコサミノグリカン(「GAG」)の構成単位でもあり、したがって、グルコサミンをさらに供給することにより結合組織でのマトリックス合成のための追加の原料が身体に供給される。本発明の組成物のアミノ糖成分は、グルコサミン塩酸塩およびグルコサミン硫酸塩を含むグルコサミンの塩、グルコサミンリン酸、ならびにN-アセチルグルコサミンおよびその塩かつ/または混合物を含むがこれらに限定されない、天然、合成または半合成のアミノ糖を含むことができる。さらに、アミノ糖という用語は同様に、化学的に修飾されたもののなおその機能を保持する可能性のあるアミノ糖を包含するよう本明細書において用いられる。そのような化学的修飾はエステル化、硫酸化、ポリ硫酸化、アセチル化、およびメチル化を含むが、これらに限定されることはない。さらに、アミノ糖という用語は、上記のアミノ糖とは実質的に異ならない任意の組成の物質に拡大できるものと考えられる。
【0030】
本発明の組成物のGAG成分は、コンドロイチン、ヒアルロン酸、グルクロン酸、イズロン酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸(dermatin sulfate)、ならびにその断片、塩および混合物を含むがこれらに限定されない、天然、合成もしくは半合成のGAG、GAG様化合物、またはGAG前駆体を含むことができる。さらに、本明細書において用いられるGAGという用語は、化学的に改変されたもののなおその機能を保持するGAGをさらに包含する。そのような修飾は、エステル化、硫酸化、ポリ硫酸化およびメチル化を含むが、これらに限定されることはない。実際に、硫酸化GAGは、本発明の組成物の好ましい成分である。ゆえに、モノ硫酸化およびポリ硫酸化(または過剰硫酸化) GAGは、本発明の組成物の好ましいGAG成分である。GAGという用語は同様に、上記の化合物、例えば、ムコ多糖、プロテオグリカンおよびヘパラノイドの同群の代替的名称を包含するよう意図される。さらに、本発明の組成物のGAGまたはGAG様成分は、ブナの木に、サメ軟骨、ウシ気管、クジラ中隔およびブタ鼻孔を含む動物軟骨の形態に、ならびにモエギイガイ(Perna canaliculus)およびナマコなどの無脊椎動物に限定されないがこれらを含む、植物源または動物源から誘導されうる。
【0031】
コンドロイチン硫酸は好ましいGAGである。コンドロイチン硫酸は、関節軟骨において最も豊富なグリコサミノグリカンであり、体内のその他の多くの結合組織にも存在する。さらに、コンドロイチン硫酸は、異常な過度の炎症条件下で結合組織を分解する分解性酵素を競合的に阻害する。コンドロイチン硫酸は、グルクロン酸および硫酸化ガラクトサミンの反復単位で構成される重合体である。[Lester M. Morrison, M. D. and O. Arne Schjeide, Ph.D., Coronary Heart Disease and the Mucopolysaccharides (Glycosaminoglycans) 12 (1974); Philip C. Champe and Richard A. Harvey, Lippincott's Illustrated Reviews: Biochemistry, 148-50 (2nd ed. 1994)]。コンドロイチン硫酸は、グルクロン酸および硫酸化ガラクトサミンのこれらの反復単位の、少なくとも2つ、潜在的には多くを持たなければならないことを当業者は理解している。
【0032】
図1はコンドロイチン硫酸などの、GAGの作製のための生合成経路の詳細な説明を示す。さらに、本発明はコンドロイチン硫酸の断片などの、GAGの断片を含むことができる。本発明の時点で「グリコサミノグリカンの断片」は、グリコサミノグリカンの2つ未満の反復単位を構成する多糖の群であることを当業者は理解している。ゆえに、これらの物質の断片は、各重合体の反復単位の2つ未満を構成する多糖の群で構成されることが理解される。
【0033】
例えば、コンドロイチン硫酸の断片は、コンドロイチン硫酸の反復単位を含んだ、しかし上記の2つの反復単位未満の群で存在する、多糖で構成される分子であることを当業者は理解している。したがって、グルクロン酸および硫酸化ガラクトサミンで構成される分子は、コンドロイチン硫酸の断片を構成しうる。実際に、コンドロイチン硫酸の断片を構成しうる8つの異なる二糖構造が存在する。[Timothy. E. Hardingham and Amanda J. Fosang, Proteoglycans: Many Forms and Many Functions, FASEB J., 6:861-862 (1992)]。
【0034】
他の天然に存在するグリコサミノグリカン、例えば、ヒアルロン酸を本発明において使用することができる。同様に、グリコサミノグリカンの断片を利用することもできる。当業者は「コンドロイチンの断片」、「コンドロイチン硫酸の断片」、「コンドロイチン塩の断片」、「グリコサミノグリカンの断片」および「コンドロイチン硫酸断片」という用語を理解しており、それらを、グリコサミノグリカンの2つ未満の反復単位を構成する糖(またはその塩)の群を意味するものとさらに理解している。
【0035】
コンドロイチン硫酸の断片が、例えば、コンドロイチン硫酸それ自体と同じ有用性を持ちうるものと当業者は予期するであろう。コンドロイチン硫酸は、体内でさらに小さな単位に分解され、その上、軟骨および他の結合組織の形成時に再構築される。それゆえ、身体はコンドロイチン硫酸の断片を、コンドロイチン硫酸それ自体を利用するのと同じように利用するものと理解される。同じことが、「コンドロイチンの断片」、「コンドロイチン塩の断片」および「グリコサミノグリカンの断片」についてもいえる。コンドロイチン、コンドロイチン塩および他のグリコサミノグリカンはそれぞれ、摂取されれば、身体により分解され、軟骨および他の結合組織の形成時に再構築される。それゆえ、身体はコンドロイチンの断片を、コンドロイチンそれ自体を利用するのと同じように利用し、コンドロイチン塩の断片を、コンドロイチン塩を利用するのと同じように利用し、およびグリコサミノグリカンの断片を、グリコサミノグリカンを利用するのと同じように利用する。
【0036】
さらに、GAGという用語は、上記のGAGとは実質的に異ならない任意の組成の物質に拡大できるものと意図される。本発明の範囲内であるこのようなGAG様化合物の例は、ペントサンポリ硫酸(PPS)ならびにカルシウム誘導体化PPSおよびPPSナトリウムなどのその塩である。したがって、本発明の組成物において使用できる好ましいGAG様化合物はPPSである。
【0037】
PPSは、(1-4)結合したβ-D-キシラノ-ピラノースの反復単位からなるブナヘミセルロースから抽出される化合物の硫酸化形態である半合成ポリ硫酸化キシランである。さらに詳細には、PPSは、これらのヘミセルロース化合物を一連の化学反応を介して木材から抽出し、次いで、多数の硫酸基を精製多糖鎖に付加することにより生成される。このプロセスにより、多数の負に荷電した硫酸基を保有する低分子量の直線状多糖鎖が得られる。PPSは、GAGの過剰硫酸化形態とみなされる半合成ヘパリノイドである。
【0038】
上記の活性を示すいくつかの形態のPPSが存在する。PPSナトリウムおよびカルシウム誘導体化PPS (CAPPSと呼ばれる)はどちらもPPSの機能を達成するために使用することができる。これらの形態のPPSはそれぞれGAG様活性を示し、以下GAG様化合物といわれる。
【0039】
ペントサンの作用機構を以下のように要約することができる。
【0040】
1. 炎症組織における微小循環の安定化および改善による、ならびに抗補体作用(補体カスケードと呼ばれる炎症の体液性メディエータの放出を低減する)による抗炎症活性。
2. 炎症に寄与する白血球である顆粒球の走化性の阻害。
3. プロテオグリカン合成に対する刺激作用。
4. 滑膜線維芽細胞によるヒアルロン酸合成に対する刺激作用。
5. NSAIDの濃度よりもはるかに低い濃度での、ヒト顆粒球エラスターゼ(非競合的阻害)、ヒアルロニダーゼ(競合的阻害)、コンドロイチン-4-スルファターゼおよびN-アセチル-グルコサミニダーゼを含む異化酵素の強力な阻害。
【0041】
ポリ硫酸化グリコサミノグリカンなどの、他の合成または半合成グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカン様化合物を本発明において使用することができる。
【0042】
カワラケツメイ(Cassia)属の植物において見出され、最近になって認められた有機化合物ジアセレインには、インターロイキン-1βの阻害による抗炎症作用があり、その結果として、関節軟骨におけるコラゲナーゼの生成が低下する。ジアセレインは滑膜線維芽細胞のフィブリン溶解活性も低下させる。ジアセレインは同様に、走化性(白血球の誘引)およびスーパーオキシドアニオン(これは「毒性酸素種」または「遊離ラジカル」の1つである)の生成を用量依存的に阻害する。これらの有害な化合物は体内で自発的に、特に破壊的炎症の間に生じる。ジアセレインは鎮痛活性および解熱活性を有する。ジアセレインはコンドロイチン-4-硫酸の分解を低減し、コンドロイチン-4-硫酸とコンドロイチン-6-硫酸との比の増大をもたらす。(この比は変性軟骨において病的に減少する。)ジアセレインはプロスタグランジン合成を穏やかに増大し、これにより胃粘膜に対して保護的に作用することができる。
【0043】
S-アデノシルメチオニン(SAMe)は、身体全体に存在する、かつ含硫基移動(transsulfation)反応などの多数の生物学的反応に関わる重要な内因性化合物である。この役割で、SAMeは、タンパク質およびプロテオグリカンを含む多くの結合組織構造成分の合成において重要な反応物である。したがって、SAMeは、他の同化剤の作用を増強しうる重大な同化作用を有する。SAMeは同様に、その抗酸化作用による抗炎症作用を有する。
【0044】
SAMeは体内でアデノシン三リン酸(「ATP」)およびメチオニンから合成される化合物である(図2)。SAMeは中枢神経系を含む、多くの組織に存在する。SAMeの主なCNS機能は、神経伝達物質およびリン脂質を含む、種々の重要な化合物を合成する反応においてメチル基を供与することである。例えば、SAMeは、原形質膜の脂質内層の一部を形成するホスファチジルコリンへのホスファチジルエタノールアミンの変換を容易にする。その際に、SAMeは膜流動性を増大し、受容体/リガンド結合の有効性を増強する。[Champe and Harvey, Biochemistry, 1994; Stramentinoli, G., 「Pharmacologic Aspects of S-Adenosylmethionine」, American J. Med., 83(5A):35 (1987); Baldessarini, F., 「Neuropharmacology of S-Adenosyl Methionine」, American J. Med., 83(5A):95 (1987); Carney, M., 「Neuropharmacology of S-Adenosyl Methionine」, Clin. Neuropharmacol, 2(3):235 (1986); Janicak, P., 「S-Adenosylmethionine in Depression」, Alabama J. Med. Sci. 25(3):306 (1988)]。これらの機能は、ベタイン(トリメチルグリシン)、5-メチルテトラヒドロ葉酸、葉酸およびジメチルグリシンなどの他のメチル供与体にも関係しうる。[Champe and Harvey, Biochemistry, 1994]。
【0045】
スーパーオキシドジスムターゼは、動物および植物の組織において天然に存在する酵素であり、最近では、炎症治療の薬剤として研究されている。スーパーオキシドジスムターゼは、破壊的炎症プロセスの間に細胞内腔中の毒性酸素ラジカルを捕らえることによって作用する。スーパーオキシドジスムターゼはプロスタグランジン生合成を阻害しないが、破壊的炎症から生じるプロスタグランジンの過剰生成を止める。その作用の中には浮腫形成の阻害、ならびに炎症の急性徴候およびアジュバント誘導関節炎における2次関節変化(硬直および石灰化)の阻害がある。スーパーオキシドジスムターゼは、鎮痛作用を持っておらず、NSAIDのように、最終的には関節軟骨のさらなる損傷につながる罹患関節の酷使に寄与しない。同様に、スーパーオキシドジスムターゼは心血管系、中枢神経系または内分泌系に有害な作用を及ぼさない。図3はSODの機能の略図を示す。
【0046】
L-エルゴチオネインは、植物および動物において自然発生の、しかしヒト身体において合成されない、すなわち食物源のみから供給される細胞内抗酸化物質である。L-エルゴチオネインの抗酸化特性は、反応性酸素種(遊離ラジカル)を除去する能力、種々の金属カチオンをキレート化する能力、グルタチオンペルオキシダーゼ(SeGPx)およびマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn SOD)などの抗酸化酵素を活性化する能力、NADPH-シトクロームCレダクターゼなどのスーパーオキシド生成酵素を阻害する能力、ならびにヘモグロビンおよびミオグロビンなどの種々のヘムタンパク質の酸化に影響を及ぼす能力に関連するものと思われる。全ての身体組織はこれらの2つの酸素担体分子に依存しているので、この特徴は極めて有益である。[Brummel, M. C., 「In Search of a Physiological Function for L-ergothioneine」, Med. Hypotheses, 18(4):351-70 (December 1985); Brummel, M. C, 「In Search of a Physiological Function for L-ergothioneine,--II」, Med. Hypotheses, 30(1):39-48 (September 1989); Han, J. S., 「Effects of Various Chemical Compounds on Spontaneous and Hydrogen Peroxide-Induced Reversion in Strain TA104 of Salmonella typhimurium」, Mutat. Res., 266(2):77-84 (April 1992); Arduini, A., 「Possible Mechanism of Inhibition of Nitrite-Induced Oxidation of Oxyhemoglobin by Ergothioneine and Uric Acid」, Arch. Biochem. Biophys., 294(2):398-402 (May 1992)]。
【0047】
コラーゲンII型も同化作用と異化作用との正常なバランスを維持するのに役立つ有益な作用を有する。具体的には、免疫系が個体自身の結合組織を「外来侵入物」であるかのように攻撃かつ異化する、自己免疫プロセスから結合組織病が生じることもある。コラーゲンII型の経口投与は免疫系を脱感作し、それによってさらなる攻撃を阻止し、これらの個体での免疫応答を正常化することができる。これにより結合組織における異化プロセスが減少し、同化作用が最大になる。コラーゲンII型の摂取により、この分子は腸管関連リンパ系組織(GALT、別名パイエル板)中の免疫細胞に提示される。コラーゲン分子とGALT内の特定の細胞との相互作用により、サプレッサーT細胞と呼ばれる移動性免疫細胞が活性化される。これらの細胞が、今度は、個体自身の(結合組織における)コラーゲンII型に対する破壊的免疫反応を抑える。
【0048】
テトラサイクリンファミリーの化合物は、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン類似体および「テトラサイクリン様」化合物を含み、その抗菌作用のゆえに治療に用いられている。現在の研究は、わずかな抗菌作用しか持たないが、抗同化作用を有する「テトラサイクリン様」化合物に集中している。具体的には「テトラサイクリン様」化合物は、コラーゲンおよびプロテオグリカンを含む細胞外マトリックス成分を分解する組織メタロプロテイナーゼを阻害し、しかも十分な抗菌作用を持たない多環式化合物である。これらの化合物、およびテトラサイクリンファミリーの他の化合物のこの機能は、これらの化合物がカルシウムイオンおよび亜鉛イオンをキレート化する能力に関連している可能性がある。例えば、ドキシサイクリンは、関節軟骨におけるコラゲナーゼ活性を阻害することが明らかにされている。
【0049】
アボカド(ワニナシ属、特にP.アメリカーナ(P. americana))およびダイズ(Glycine max)の、不けん化物と呼ばれる、ある種の脂質抽出物も結合組織に対するその有益な作用について研究されている。これらの不けん化化合物は、けん化を起こさない、すなわち、アルカリと反応してセッケンを形成しない植物脂質の一部である。そのような多くの化合物が存在しており、特定のアボカド抽出物は極めて多数の化合物を含有しうる。例としては脂溶性ビタミン(A、D、EおよびK)、植物エストロゲンなどのステロイド、ステロール(バイオフラボノイド)ならびに揮発性精油(メントール、ショウノウ、リコペン、ジベレリン酸、リモネン、シンナムアルデヒド、カロテノイド、および補酵素Qとしても知られるユビキノンなどのテルペン)が挙げられる[Mathews, C. K. & van Holde, K. E. Biochemistry, 2nd ed., The Benjamin/Cummings Pub. Co., Inc., 1996, p. 691]。
【0050】
アボカド/ダイズ不けん化物(ASU)は、Piascledineという商品名で欧州において用いられており、変形性関節症およびその他の形態の関節炎[Thiers, M. H., 「Unsaponifiable constituents of avocado and soya oils. Treatment of certain forms of arthralgia」, J. Med. Lyon 53(222): 195-8 (February 1972) (article in French)]ならびに軟組織炎症状態[Trevoux, R., 「Unsaponifiable fractions of the avocado and soybean in gynecology」, J. Bynecol. Obstet. Biol. Reprod. 6(1):99-105 (January 1977) (article in French); Lamaud, M. E., et al., 「Biochemical modifications of connective tissue induced by the non-saponifiables of avocado and soybean oils administered percutaneously in the‘hairless’rat」, Pathol. Biol. 26(5):269-74 (May-June 1978) (article in French)]を処置するために用いられている。この化合物の作用機構は、軟骨細胞のTGF (形質転換増殖因子)β1、TGFβ2およびプラスミノゲン活性化因子阻害剤1 (「PAI-1」)発現を刺激することである。ASUはPAI-1を増加させることにより、メタロプロテアーゼの活性化を引き起こすカスケードを遮断する[Boumediene K., et al., 「Avocado/soya unsaponifiables enhance the expression of transforming growth factor beta 1 and beta 2 in cultured articular chondrocytes」, Arthritis Rheum. 42(1): 148-56 (January 1999)]。ASU混合物は軟骨細胞によるストロメライシン、IL-6、インターロイキン-8 (IL-8)およびプロスタグランジンE2の自発的生成も減らす。さらに、ASUはIL-1の作用を低減し、それによって軟骨細胞および滑膜細胞によるコラゲナーゼの産生を減らす。[Henrotin, Y. E., et al., 「Effects of three avocado/soybean unsaponifiable mixtures on metalloproteinases, cytokines and prostaglandin E2 production by human articular chondrocytes」, Clin. Rheumatol. 17(1): 31-9 (1998)]。
【0051】
TGFβ1および2は、相同なポリペプチドサイトカインのファミリーのメンバーである。これらの局所的に作用するホルモンは、傍分泌作用または自己分泌作用を及ぼすことが可能であり、リンパ球、内皮細胞およびマクロファージを含む、さまざまな細胞型により作製される。TGFβは、種々の組織において多様な作用を及ぼし、一般的に、上皮細胞代謝を阻害する。しかしながら、結合組織では、TGFβは、線維芽細胞および間葉由来の他の細胞の間接的な分裂促進因子であることが明らかにされている。TGFβは同様に、細胞のフィブロネクチンおよびコラーゲン産生を刺激し、プロテアーゼ活性を低減し、それによってマトリックス産生の純増加をもたらしうる。[Cotran, R. F., Kumar, V. and Robbins, S. L., Eds., Pathologic Basis of Disease, 5th ed., Saunders, 1994, pp. 40-42]。
【0052】
ストロメライシンはプロテオグリカン、ラミニン、フィブロネクチンおよびコラーゲンを含む、さまざまな細胞外マトリックス成分に作用するプロテイナーゼのサブタイプである。ストロメライシンはインターロイキン-1および腫瘍壊死因子αなどのサイトカインの影響を受けて、いくつかある細胞型の中で特に、線維芽細胞、滑膜細胞およびマクロファージによって産生される。多くの炎症メディエータの中にはインターロイキンおよびプロスタグランジンがある。これらの化合物の全てのレベルが低下すると、炎症の特徴である疼痛および膨潤の減少が起こる。
【0053】
ASU混合物に存在する脂溶性ビタミンは成長に必要であり、TGF-βの同化作用を増大する。脂溶性ビタミンはTGFβを刺激し、先に説明したように、分解性酵素を減らしもするので、ASU混合物は同化作用も抗異化作用もともに有するといえる。ASUの作用のいくつかは本発明における他の化合物の作用と重複するが、ASUはそれらの他の化合物と組み合わせて用いた場合、その化合物群に独特の性質を与え、非常に有益な作用をもたらす。例えば、グルコサミンおよびASUはともに結合組織細胞において同化プロセスを刺激するが、これらの化合物は異なる細胞作用機構を有する。グルコサミンは、一つには、プロテインキナーゼCを通じて作用するが、ASUの作用は、上記のように、形質転換増殖因子によるものである。同様に、コンドロイチンおよびASUはIL-1の阻害作用を有する。しかしながら、ASUはプラスミンカスケードを阻害するのに対し、コンドロイチンは補体カスケードの活性化を低減する。変形性関節症は、細胞レベルでの多くのサイトカインの相互作用を伴う複雑な疾患である。本発明の種々の化合物は種々のサイトカインに作用するので、適切な組み合わせで用いた場合、それらは相乗効果を持つであろう。
【0054】
ASUは、プラセボ比較二重盲検臨床試験で、変形性関節症の症状の軽減において有効であることが明らかにされている。[Maheu, E., et al., 「Symptomatic efficacy of avocado/soybean unsaponifiables in the treatment of osteoarthritis」, Arthritis Rheum. 41(1): 81-91 (January 1998); Blotman, F., et al., 「Efficacy and safety of avocado/soybean unsaponifiables in the treatment of symptomatic osteoarthritis」, Rev. Rheum. Engl. Ed. 64(12): 825-34 (December 1997)]。これらの試験では、介入群における副作用は、プラセボ群において見られた副作用と同様であったことから、ASUは安全かつ耐容性良好な物質であることが示唆されている。本発明において用いられるASUは、任意のまたは全ての不けん化脂質および/またはその組み合わせを含んでもよい。
【0055】
ASUの成分の例としてはリモネン、βカロテン、フィロキノンおよびジベレリン酸が挙げられるが、これらに限定されることはない。先に説明したように、ASUは、脂溶性ビタミン、ステロイド、ステロールおよび揮発性精油、またはその任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、いくつかの化合物群のいずれかを含むことができる。例えば、アボカド/ダイズ不けん化物(ASU)は、カンペステロール、スチグマステロール、ジヒドロ-ブラシカステロールおよびβ-シトステロールなどの、1種または複数種の植物ステロールを含むことができる。
【0056】
さらに、本発明は、1つのアボカド/ダイズ抽出物またはこのような抽出物の混合物もしくは組み合わせ(2種以上のASU)を含有する組成物を含む。そのような組み合わせは多く存在しており、その全てが本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0057】
本発明のさまざまな配合物は、種々の形態または量で1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物を含むことができる。例えば、いくつかの態様において、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物は、約30%のステロールに標準化されるように組成物に含まれることができる。いくつかの態様において、アボカド/ダイズ不けん化物は、ダイズ不けん化物とアボカド不けん化物との比約2:1で組成物に含まれることができる。いくつかの態様において、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物は、室温で固体でありかつヒトの体温で液体でありうる。いくつかの態様において、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物を、1種または複数種の賦形剤または担体と組み合わせて、粉末を作製することができる。
【0058】
本発明の化合物には優れた安全性プロファイルなど、結合組織病に対する既存の治療法に比べていくつかの利点がある。これは、一つには、これらの化合物が体内におよびさまざまな食物中に普通に存在しているという事実に関連する。本化合物に共通する別の特徴は、作用の開始が遅いという傾向である。NSAIDなどの医薬は、疾患の症状を急に変化させる傾向がある。本発明の内因性化合物は、体内の構造および機能を正常にすることでゆっくりと効く。この作用は有益であるが、このことは、一般的に症状がすぐに緩和されないことを意味する。このため、鎮痛薬が本発明の組成物の任意の成分として含まれる。鎮痛薬は、コルチコステロイド薬および多くのNSAIDで明らかにされているように、治療用量で副作用が最小限であること、および同様に結合組織合成に対する負の作用が最小限であることが明らかにされている鎮痛性化合物の群から選択されるべきである。それゆえ、本発明の組成物に含むことができる鎮痛薬は、抗炎症作用がない非ステロイド性鎮痛薬である。言い換えれば、鎮痛薬は、NSAIDではない非ステロイド薬である。本発明の鎮痛薬の例としては、アセトアミノフェンおよびトラマドールが挙げられる。以下で論じられる場合を除き、本発明の好ましい鎮痛薬はアセトアミノフェンである。
【0059】
アセトアミノフェンは、中枢神経系における酵素シクロオキシゲナーゼの可逆阻害によって主に作用するアナリン誘導体鎮痛・解熱化合物である。アセトアミノフェンは同様に、体中の神経終末における抹消疼痛インパルスの発生を遮断する。アセトアミノフェンは症候性疼痛の緩和のために広く用いられている。疼痛の緩和は非常に明白な人道的理由で有益である。また、脳の感情中枢と免疫系との間には重要な関係があるので、疼痛の緩和、および結果として生じる気分の高まりには、炎症、および免疫系により調節される多くの他のプロセスに対して有益な作用がある。アセトアミノフェンは、シクロオキシゲナーゼ活性を遮断するが、アセトアミノフェンにはほとんど抗炎症活性がない。それゆえ、アセトアミノフェンは、NSAIDおよびコルチコステロイドと同様に、結合組織の同化作用を阻害せず、治療用量で副作用が最小であるため、本発明において理想的な鎮痛剤である。本発明において安全な鎮痛薬を含ませる別の利点は、患者の服薬遵守が高い、すなわち、疾患を緩和する作用が生じるのに十分長い間、患者が調製物を服用し続ける可能性を高めることである。単離された軟骨保護剤の試験では、薬剤が効いていないと患者が認知することで、しばしば治療初期の数週間での脱落率が高い。鎮痛薬の添加により、患者は治療を続けたいと思うことが多くなると考えられる。
【0060】
ネコはアセトアミノフェンを効果的に代謝しない(肝臓におけるグルクロン酸との抱合が不十分であり、その後、グルタチオンの枯渇が起こる)ので、アセトアミノフェンに感受性である。[Goodman, A. and Goodman, L., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 7th ed., MacMillan Publishing Co., 1985, pp.692-95; Ahrens, F., Pharmacology, Williams & Wilkins, 1996, pp. 174-75]。したがって、アセトアミノフェンはネコでの使用に推奨されない。
【0061】
メチルスルホニルメタン(MSMまたはジメチルスルホン)は、スルホンとして知られる化学物質群に属する有機硫黄化合物である。メチルスルホニルメタンはいくつかの原始植物において自然に発生し、多くの食品飲料において少量で存在する。MSMは抗炎症作用を有することが研究者らによって示唆されている。
【0062】
本発明は、有益な同化作用(治癒)を最大とし、かつ何らかの潜在的な負の作用を最小とする同化剤、抗異化剤および抗酸化剤の新規の組み合わせを含む。その際に、本発明は、ヒトおよび動物における結合組織の保護、処置および修復のための、これらの薬剤および抗酸化剤の新規の組み合わせを提供する。
【0063】
これらの化合物は動物およびヒトの結合組織に対して種々の有益な作用を及ぼし、これらは種々の機構を介して機能するので、互いと組み合わされた状態で有効に働く。各化合物はいくつかの機能を有するが、これらは大まかに、(1) 体内の成長プロセスを促進する、グルコサミン、SAMe、AAおよびASUを含む、同化剤、(2) 破壊プロセスまたは異化プロセスを阻害する、コンドロイチン硫酸、ペントサン硫酸、コラーゲンII型、テトラサイクリン、ジアセリンおよびASUなどの、抗異化剤、ならびに(3) 毒性酸素種(遊離ラジカル)を除去することによって組織損傷を阻止する、SODおよびL-エルゴチオネインなどの、抗酸化物質として分類することができる。当然ながら、重複した機能によって2つ以上のグループに分けられる、ASUなどの化合物もある。本発明は、これらの化合物の組み合わせが有効に働くことを立証する。さらに、鎮痛薬を任意で、上記の個々の化合物のいずれかにまたはそれらの組み合わせに加えて、疼痛の緩和をもたらしてもよい。アセトアミノフェンは強力な抗炎症作用を持っておらず、それゆえ、結合組織の治癒を妨げないので、一般に好まれる鎮痛薬である。また、治療用量でさえ胃腸潰瘍または不十分な腎臓灌流を引き起こす可能性のあるNSAIDとは異なり、アセトアミノフェンは治療用量で副作用が最小である。したがって、本発明は、以下の薬剤: AA、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、ペントサン、ジアセリン、S-アデノシルメチオニン、スーパーオキシドジスムターゼ、L-エルゴチオネイン、コラーゲンII型、テトラサイクリン様化合物、1種または複数種のASUおよび任意で、1種または複数種の鎮痛薬、例えばアセトアミノフェンの、2つまたはそれ以上のさまざまな組み合わせからなる。例としては2つの同化剤(例えば、AAおよびグルコサミン); 同化剤および抗異化剤(例えば、AAおよびペントサン); 抗異化剤および抗酸化物質(例えば、テトラサイクリンおよびスーパーオキシドジスムターゼ)のような組み合わせ; または3つ以上の薬剤(例えば、グルコサミン、SAMeおよびAA)もしくはSAMe、ASU、アセトアミノフェンおよびジアセリンの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。ASU抽出物に存在しうる特異的な化合物の例としては、リモネン、βカロテン、ユビキノンおよびリン酸ウンデカプレノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0064】
以下の表は、上記で論じた化合物の対の可能な組み合わせを示す。文字「X」は、本発明の新規の組成物を形成する化合物の新規の組み合わせを示す。本発明は同様に、表に示す組み合わせに、以下の化合物の3つまたはそれ以上の薬剤の組み合わせを含む。
グルコサミン
コンドロイチン
SAMe
ペントサン
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
L-エルゴチオネイン
コラーゲンII型
ジアセリン
アラキドン酸
テトラサイクリン様化合物
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物
鎮痛薬、例えば、アセトアミノフェン
メチルスルファニルメタン(MSM)
【0065】
上で説明したように、望ましい組み合わせの例をXで示す。例えば、一番目の横列中の最初のXは、グルコサミンおよびL-エルゴチオネインまたはグルコサミンおよびジアセリンの組み合わせを意味する。本発明の組成物はさらに、任意の所与の横列または縦列中のXで示した組み合わせの任意の集合または追加を含む。例えば、一番目の横列に示される組成物は、グルコサミン + L-エルゴチオネイン + ジアセリン、またはグルコサミン + ジアセリン + テトラサイクリン様化合物、またはグルコサミン + L-エルゴチオネイン + ジアセリン + AA + テトラサイクリン様化合物などの組み合わせを含む。「コラーゲンII型」と表した縦列に示す組成物の例としてはコラーゲンII型 + SAMe + ペントサン、またはコラーゲンII型 + SAMe + ペントサン + スーパーオキシドジスムターゼ + L-エルゴチオネインなどの組み合わせが挙げられよう。「ASU」と表した縦列に示す組成物の例としては1種もしくは複数種のASU + グルコサミン、または1種もしくは複数種のASU + SAMe + ペントサン、または1種もしくは複数種のASU + コラーゲンII型 + SAMe + ペントサン + スーパーオキシドジスムターゼ + L-エルゴチオネインなどの組み合わせが挙げられよう。同様に、この表は、鎮痛薬、例えば、アセトアミノフェンを、単独または任意の組み合わせのいずれかで、表に列挙したその他任意の化合物と組み合わせられることを示す。
【0066】
上記の薬剤のある種の組み合わせを詳しく調べ、いくつかの組み合わせでの新規の応答を立証した。コンドロイチン硫酸、グルコサミン、SAMe、アラキドン酸、コラーゲン、ペントサンおよびスーパーオキシドジスムターゼのうちのある種の組み合わせの効果を、さまざまな実験のなかで成牛軟骨細胞の培養物において試験した(実施例2参照)。この特定の試験において、ある種の組み合わせには阻害作用(代謝低下)があった。刺激的かつ阻害的な新規の相互作用は、種々の疾患状態の下で有益でありうる。例えば、代謝亢進状態は、いくつかの疾患の発病の一部である。このような疾患では、阻害(代謝低下)応答は個体にとって有益であろう。さまざまな実験モデルの下で研究した薬剤での濃度範囲の効果を調べるために、さらなる試験が計画される。生合成活性の増加も減少もともに新規の相互作用であり、選択の状況下の生物にとって有益でありうることに留意されたい。例えば、現在、変形性関節症には特に発病の初期段階において、代謝亢進的要素があると考えている研究者は多い。処置を、軟骨マトリックス生成を刺激する薬剤、または阻害性であり、それゆえ、軟骨環境をいっそう代謝低下状態にし、これが軟骨組織に安定化作用を及ぼしうる薬剤に集中するべきかどうかに関して、研究者らは意見を異にしている。
【0067】
本発明の組成物は、筋肉内、静脈内、経口、皮下、直腸、局所、経皮、鼻腔内、および関節内、舌下、腹腔内を含むがこれらに限定されない、任意の経路によって投与することができる。
【0068】
また、吸収を助けるために、本発明の化合物のいずれかの塩のいずれか、例えば、グルコサミンHCl、グルコサミン硫酸、グルコサミンリン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸カルシウム、コンドロイチン硫酸カリウムなどを使用してもよい。さらに、本発明の組成物を、長期放出剤形、丸剤、錠剤(咀しゃく錠など)、カプセル(硬ゼラチンカプセル、液体入りカプセル、ソフトゲルカプセルなど)、クリーム、ペースト、粉末(数杯の粉末など)、液体、エアロゾル、長期放出形態、注射可能物質などを含む全ての一般的な剤形で与えてもよい。本発明の組成物を、小袋(sachet)のような剤形でおよび処置(treat)において与えてもよい。
【0069】
本発明の組成物の投薬量範囲は、この組成物を投与するヒトまたは動物の必要に応じて変化するであろう。投薬の頻度も、この組成物を投与するヒトまたは動物の必要に応じて変化しうる。
【0070】
例えば、ASU、コンドロイチン硫酸(CS)、およびグルコサミン(Gluc)の組み合わせをイヌまたはウマなどの動物に投与することができる。この組成物を2〜4週または4〜6週などの、初期の間に特定の用量(またはさまざまな用量)で毎日(または一日おきに)動物に投与することができる。個別の用量計画は標的の対象により変わることがある。初期の間の投薬計画は、動物の炎症組織を浸す体液の中で活性成分が安定な状態を達成するようにデザインすることができる。例えば、初期の期間に、粉末状の組成物の1日投薬量を以下の量でウマに投与することができる: 600ポンド未満のウマには1杯を投与することができ、600〜1200ポンドのウマには2杯を投与することができ、および1200ポンドを超えるウマには3杯を投与することができる。動物において組成物に対する応答が観察される前に、初期期間の一部または全部が経過しうる。このため、各種の配合物は比較的遅効性であると考えることができる。対象の中には投与の初期の間にすぐに応答しうるものもいる。臨床応答が観察されたら、投薬の量および頻度を、快適な状態に対象を保つよう意図したレベルに減らすことができる。例えば、ウマのための長期投与は600ポンドまでのウマ、600〜1200ポンドのウマおよび1200ポンドを超えるウマに対し、それぞれ、毎日1/2杯、1杯および1〜2杯でありうる。激しい運度、または動物での結合組織の炎症に影響を与えうる事象の前およびその間に、特別な支援のため、投薬の量および/または頻度を、例えば、初期の投与レベルに増やすことができる。また、動物の快適度が低下しているようなら、レベルおよび頻度を再び低減する前に、投薬量および頻度を、例えば、2〜4週などのさらなる期間、初期の投与レベルに増やすことができる。特定の投薬レベルで着実な改善が認められたら、投与の頻度および/または量を、例えば、半分の投薬量および半分の頻度にさらに減らすことができる。対象の投薬量および頻度は、必要に応じて結合組織に特別な支援を与えるために、必要に応じてどの時点でも、例えば、週末にまたは対象がいっそう活動的になるその他の時点で増やすことができる。
【0071】
ASU、CSおよびGluの組み合わせを健常な対象に対する長期処置に用いて、炎症事例を予防および/または調節するのに役立てることもできる。
【0072】
本発明により主張される組成物のさまざまな成分の投薬量範囲は以下のとおりである。
【0073】
中間にヒトを含む、小動物から大動物の体重の薬効範囲を範囲に含むように用量をデザインする。同一のまたは類似の投薬量を周期的に、例えば、毎日または一日おきに小動物、大動物およびヒトに投与することができる。
【0074】
以下の例は例示であり、本発明を決して限定しない。具体的には、本発明者らが利用できる最良のデータによって決められた、生理的濃度範囲を用いた。
【0075】
実施例1
本発明者らの予備研究では、Hulth法の改変により、New Zealand白ウサギの後膝関節に外科的不安定性を引き起こした。手術後、動物を毎日1時間運動させた。実験用飼料配合物を、その軟骨安定化作用について評価した。標準的なHarland (Teklad)ウサギ飼料(対照)、40重量%のAA (Arasco)を含む2%の真菌油(fungal oil)をも含む標準飼料、ならびに、アラキドン酸およびグルコサミン/コンドロイチンをも含む標準飼料を調べた。16週で、全てのウサギの大腿骨内側顆を取り出し、軟骨変性を、サフラニン-O染色スライドを用い改良型Mankin組織学的・組織化学的等級付けシステムで定量的に評価した。外科的不安定性のある全関節由来の軟骨は、さまざまな程度の巨視的な変性病変を示した。本発明者らの予備結果から、アラキドン酸のグルコサミン/コンドロイチン硫酸への添加は、軟骨において新規の相互作用をもたらす可能性があることが示唆された。この新規の相互作用は軟骨調節作用を有する可能性がある。
【0076】
実施例2
手順:
関節軟骨を、ヒトまたは動物の関節から無菌的に切除し、大ペトリ皿中の少量のDMEM/F-12またはF-12に入れた。この組織を寸法1〜2 mmのさいの目に切り、20 mLのDMEMまたはF-12 + 400 μ/mLのコラゲナーゼを含有する小さな培養フラスコに移した。このフラスコを振とう機に置き、一晩インキュベートした。
【0077】
細胞の放出を増大させるため、細胞消化物を繰り返し吸引した。次いで細胞消化物を50 mL滅菌遠心管の中に入れ、Beckman中10分間1000 RPMで遠心分離した。培地をピペットで捨て、1% FCSを含有する新鮮なDMEM/F-12を添加した。ペレットのサイズに応じて、約2040 mLの培地を添加した。細胞数を血球計によって測定し、消化物を細胞100,000個/0.2 mLの濃度に近づけた。
【0078】
GAG合成:
GAG合成を行うため、8チャンネルピペッタを用いて96ウェルプレートの各ウェルの中に0.2 mLを分注し、細胞を24時間付着させた。培地を除去し、新鮮な1% FCS培地0.3 mLを2〜3日間添加した。実験日に、培地を除去し、35-硫酸同位体を含有する実験溶液を添加した。インキュベーションを4時間続けた。終了: インキュベーション時間の終わりに、標識培地を除去し、細胞層を冷DMEMまたはF-12 0.3 mLで繰り返し(約5回)すすぎ、細胞層を計数のために凍結した。
【0079】
96ウェルプレートの計数:
両合成実験の細胞層を50度で加熱した後に、1 N NaOH 100 μlを2時間添加した。シンチラント(scintillant) 200 μlを添加し、プレートを計数器に入れた。データをCPM/細胞100,000個として表した。
ChSO4 = コンドロイチン
AA = アラキドン酸(Arachadonic Acid)
SAMe = S-アデノシルメチオニン
Paleos = SOD
Collagen = コラーゲン
Pentos = ペントサン
H = 高濃度
L = 低濃度
【0080】
このモデルでは、試験した濃度で、代表的な組み合わせにはこの特定の試験において阻害(代謝低下)作用があった。この代謝低下作用はさまざまな疾患状態の下で有益である可能性があり、実際に、刺激的かつ阻害的な新規の相互作用はさまざまな疾患状態の下で有益である可能性がある。例えば、代謝亢進状態は、いくつかの疾患の発病の一部である。このような疾患では、阻害(代謝低下)応答は個体にとって有益であろう。さまざまな実験モデルの下で研究した薬剤での濃度範囲の効果を調べるために、さらなる試験が計画される。生合成活性の増加も減少もともに新規の相互作用であり、選択の状況下の生物にとって有益でありうることに留意されたい。例えば、現在、変形性関節症には特に発病の初期段階において、代謝亢進的要素があると考えている研究者は多い。処置を、軟骨マトリックス生成を刺激する薬剤、または阻害性であり、それゆえ、軟骨環境をいっそう代謝低下状態にし、これが軟骨組織に安定化作用を及ぼしうる薬剤に集中するべきかどうかに関して、研究者らは意見を異にしている。
【0081】
実施例3
ある4歳児は若年性関節リウマチに罹っており、その免疫系は天然コラーゲンII型に対する抗体によって内因性の結合組織を不適切に標的化している。結果として起こる軟骨の炎症および分解は、滑膜関節における疼痛および機能不全を引き起こす。現処置の中には、免疫系を非選択的に抑制し、したがって身体を感染症になりやすくするコルチコステロイド、またはDNA合成、修復、および細胞複製を阻害し、したがって免疫系だけでなく腸粘膜および骨髄にも影響を与えるメトトレキセートがある。この小児に毎日コラーゲンII型2 mg、および毎日SOD 10 mgを与える。コラーゲンは不適切な免疫攻撃を低減し、SODは細胞に損傷を与える破壊的遊離ラジカルを不活化する。SODは細胞の損傷を阻止することにより、関節組織細胞の正常な機能を最大限にするのに役立つ。この組み合わせは治療用量で有害な副作用がなく、関節リウマチの既存療法に有益に付加されるものである。
【0082】
実施例4
ある6歳齢のサラブレッド競走馬は腕骨の好中球性炎症に罹っている。この状態では、関節組織への外傷が細胞を傷つけ、それゆえ、多数の好中球を滑膜腔に誘引するサイトカインの遊離を引き起こす。この応答は敗血症の場合に有益であるが、非敗血性の状態では好中球は動物にとって有益な役割を果たさない。実際に、好中球はスーパーオキシド分子を含む、さまざまな分解性化合物を生ずるので、それらが関節に存在すると炎症、組織損傷、および炎症増大の悪循環の一因となる。現在、この状態は、プロスタグランジン合成を抑制し、それゆえ多くの副作用を有する非ステロイド性抗炎症薬を用いて処置される。このウマにジアセリン100 mg、ペントサン200 mg、およびSAMe 1000 mgの混合物を与える。ジアセリンおよびペントサンはともに走化性(白血球の罹患領域への誘引)を阻害し、したがって、関節における好中球の数を低減する。さらに、ペントサンは滑液の合成を刺激し、したがって、関節の正常な機能を支持する。ジアセリンはスーパーオキシド生成を阻害する。スーパーオキシド生成は、好中球がその有害な作用を及ぼす機構の1つであるので、ジアセリンのこの作用は明らかに有益である。SAMeは、細胞膜の構造および機能を支持し、それゆえ、傷ついた関節組織細胞を修復するのに役立ち、したがって、有害な炎症を開始する事象を遮断する。この組み合わせは治療用量で有害な副作用を及ぼさず、既存療法に比べて大きな改善である。
【0083】
実施例5
ある47歳の女性は重篤な変形性膝関節症に罹っている。現在、彼女は症状を抑えるのに多量のNSAIDを必要としている。彼女の整形外科医はグルコサミン/コンドロイチン硫酸の服用を勧めているが、これらの化合物は動物組織から抽出されたものであり、この患者が厳格な菜食主義者であるため、彼女は服用するのを嫌がっている。その代わりに彼女は、ジアセリン25 mgおよびASU 250 mg、ならびにアセトアミノフェン500 mgを毎日服用している。ジアセリンは走化性を阻害し、それによって膝関節における炎症を軽減する。ASUはTGFβ1および2を増やし、損傷した関節組織の修復を刺激する。アセトアミノフェンは急速な鎮痛を引き起こし、軟骨代謝に悪影響を及ぼすことなく、かつ胃腸潰瘍のリスクなく患者の症状を軽減する。疼痛の軽減の結果として、この患者は、日課に15分の散歩を加えることを決めている。管理された運動は、彼女の心身の状態をさらに改善する。
【0084】
実施例6
ある5歳齢のJersey乳牛は、ライム病に起因する発熱および滑膜炎の発症後、重篤な変形性関節症と診断されている。この動物は所有者の家庭用牛乳供給源であり、所有者は、1) この動物を殺処分する、2) 非ステロイド性抗炎症薬を用いる、または3) ステロイドを用いるなどの、伝統的な解決法を推し進めるよりも、「天然」の化合物、すなわち、植物および動物体内に通常存在する化合物を用いて跛行を処置することを望んでいる。この動物をASU 900 mg、SAMe 600 mgおよびグルコサミン500 mgで毎日処置する。このアプローチはいくつかの理由で既存の選択肢に比べて改善している。これらの化合物は、安全域の広いことが証明された植物体および動物体の天然成分であるので、牛乳に分泌された代謝産物に対する懸念はあまりない。これらの化合物は経口で利用可能であり、かつ少量で活性があるので、食事中の動物に投与するのが容易である。この3つの化合物の併用効果は炎症および疼痛を軽減すること、正常な機能を支持すること、ならびに結合組織の治癒を刺激することである。
【0085】
各種のさらなる例ではCOX-2などの、炎症および疼痛のマーカーを阻害するかまたはそれ以外の方法で調節する際の各種組成物の効果を例証する。これらの例のいくつかにおいて、各種の配合物は炎症および疼痛のマーカーを低減するように、しかし副作用の可能性があるためそれらのマーカーを完全には取り除かないようにデザインされた。すなわち、以下の例において記述するいくつかの態様によって達成される1つの目標は、対照レベルくらいに、または対照レベルを少し上回るもしくは下回るまでに炎症および疼痛マーカーを低減することであった。
【0086】
以下の実施例のいくつかでは、特定の実験で用いるのに望ましい濃度を得るため、用いたASU (すなわち、ASU-NMX 1000(商標), Nutramax Laboratories Inc., Edgewood, MD USA)を100%エタノール(Sigma-Aldrich)に溶解し希釈した。研究のなかで用いた濃度は、ASU組成の最小の植物ステロール含量に基づいた。ウシ軟骨細胞(細胞5×105個/ウェル)を72時間(i) 対照培地のみ、または(ii) 濃度25、8.3、2.7、0.9および0.3 μg/mlのASUとともにインキュベートすることにより、特定の実験で用いるのに望ましいASU濃度をまず初めに決定した。細胞を24時間リポ多糖体(LPS, 20 ng/ml; Sigma-Aldrich)で活性化し、細胞上清を分泌PGE-2および亜硝酸塩濃度について分析した。0.3または0.9 μg/mlではPGE-2および亜硝酸塩レベルに対する有意な効果は認められなかった。2.7 μg/mlで、PGE-2および亜硝酸塩レベルのわずかな抑制が認められた。最も高い抑制レベルは8.3〜25 μg/mLであることが分かった。これらの実施例において用いたASU濃度は上記のデータに基づいて、ならびにASUに対する報告の臨床投薬量および既刊のインビトロデータに基づいて選択された。
【0087】
実施例7〜11では、以下の用語および定義を用いる。
【0088】
シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)は、酵素として機能するかつプロスタグランジン(PGE-2)と呼ばれるある種の化学伝達物質の生成を特異的に調節するタンパク質である。このPGE-2分子は、関節炎状態において認められる炎症の疼痛および腫脹を引き起こす。COX-2活性が遮断されると、炎症は軽減する。COX-2は炎症の部位でのみ活性である。
【0089】
プロスタグランジンE2 (PGE-2)は、炎症を含む幅広い身体機能に関与するホルモン様物質の群に属する化学伝達物質である。PGE-2は炎症の間に疼痛および腫脹を引き起こす。
【0090】
p38:
MAPキナーゼ(MAPK)は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ14としても知られている。MAPキナーゼp38はサイトカイン、ストレスおよびリポ多糖体(LPS)のような細菌産物に対する細胞応答を制御するシグナル伝達系に関与している。
【0091】
分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK):
MAPKセリン/スレオニンは、細胞外刺激に応答するかつ遺伝子発現、増殖、分化および機能を含めさまざまな細胞活動を調節する特異的なタンパク質キナーゼである。これは肉体的ストレスおよびサイトカインによって例示される刺激に応答するシグナル伝達経路などの、細胞シグナル伝達および情報交換に関与している。
【0092】
サイトカインはホルモンおよび神経伝達物質のような、細胞シグナル伝達および情報交換に関与する多様なタンパク質である。それらは先天性免疫応答と適応性免疫応答の両方の機能性にとって不可欠であり、種々の免疫性疾患、炎症性疾患および感染性疾患において主要な役割を果たす。
【0093】
腫瘍壊死因子α(TNF-α)は、腫瘍細胞の死(壊死)を誘導するサイトカインと呼ばれるタンパク質のスーパーファミリーに属し、幅広い炎症促進性活性を保有する。TNF-αは多機能性であり、その活性の阻害は、関節炎を含む炎症性疾患における炎症の軽減に有益である。
【0094】
インターロイキン-1β(IL-1β)は、軟骨細胞、マクロファージおよび線維芽細胞を含む、さまざまな細胞によって産生されるサイトカインファミリーに属するタンパク質である。これは炎症の主要な調節因子である。IL-1βは体温、ならびに炎症および先天性免疫に関与する他の化学的メディエータの産生を高める。
【0095】
誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)は、サイトカインおよび他の刺激因子への曝露後の一酸化窒素(NO)の生成を制御する可溶性酵素である。iNOSは炎症においておよび感染に対する防御において重要である。
【0096】
ケモカインは、種々の細胞によって産生されるタンパク質であり、異種細胞を炎症およびまたは損傷の部位に引き付ける能力、ならびに原位置でのこれらの細胞の局在化を補助する能力を持つ。ケモカインの2つの例はインターロイキン-8 (IL-8)および単球走化性タンパク質(MCP)である。
【0097】
実施例7: マイクロキャリア撹拌培養にて増殖されたIL-1β活性化軟骨細胞におけるプロスタグランジンE-2生成の調節
マイクロキャリア撹拌培養において増殖された軟骨細胞はインターロイキン-1β(IL-1β)により活性化されて、プロスタグランジンE-2 (PGE-2)を産生しうるかどうか、ならびにこの活性化は、抗炎症活性を有することが個別に知られた天然産物のアボカドダイズ不けん化物(ASU)、グルコサミン(Glu)およびコンドロイチン硫酸(CS)によって遮断されうるかどうかを評価するために、実施例7の研究をデザインした。
【0098】
方法:
コラーゲンマイクロキャリアビーズに播種したイヌ軟骨細胞(4×103/cm2)を撹拌培養において14日間増殖させた。それらを次に、培地のみまたはASU (NMX-1000(商標), 25 μg/mL)、CS (TRH122(登録商標), 20 μg/mL)およびGlu (FCHG49(登録商標), 10 μg/mL)の組み合わせとともに24時間インキュベートした。ASU、GluおよびCSの組み合わせはNutramax Laboratories, Incから供給された。次に培養物を24時間37℃、5%CO2で培地のみとともにインキュベートするか、またはIL-1β(10 ng/mL)により活性化するかした。上清をPGE-2含量についてアッセイした。軟骨細胞を、顕微鏡検査およびII型コラーゲンに対する免疫蛍光検査によって分析した。データを、Tukeyのpost-hoc検定によるANOVAで分析した。p<0.05の値を統計的に有意と考えた。
【0099】
結果:
この方法に従うことによって、図6の2枚の像に示される通り、付着した軟骨細胞がマイクロキャリア上で増殖し、細胞外マトリックス材を産生したことが分かった。これらの図は、マイクロキャリア上で増殖中の軟骨細胞の位相差顕微鏡写真を示したものであり、この細胞が増殖し、細胞外マトリックスを産生していることを示している。
【0100】
図7 (「関節軟骨表現型に特徴的なII型コラーゲンの継続的産生を裏付ける免疫染色済みの軟骨細胞の光学顕微鏡像」)に示される通り、培養物は凝集体を形成し、II型コラーゲンに対し免疫染色されたことで、このタンパク質の継続的産生が示唆された。
【0101】
図8 (「軟骨細胞が引き続く継代時でさえも応答性であり続けることを示す、IL-1βの後、軟骨細胞によるPGE-2の産生」)に示される通り、継代数3および4の軟骨細胞を播種したマイクロキャリアの活性化は、IL-1βによるサイトカインに対する類似の応答性、つまり活性化されていない対照の、それぞれ、179%および165%のPGE-2レベルを示した。
【0102】
軟骨細胞を播種したマイクロキャリアのASU、GluおよびCSの組み合わせでの前処理により、PGE-2レベルが、活性化されていない対照の約60%未満にまで有意に低減された(p<0.05)。
【0103】
図9 (「軟骨細胞によるPGE-2の生成はASU-CSおよびGluの組み合わせによって阻害され、この組み合わせがこの炎症促進性マーカーの産生を低減することを示す」)に示される通り、軟骨細胞はIL-1βで活性化された場合にPGE-2レベル(19152 ± 2721 pg/mL)を増大した。ASU、CSおよびGluの組み合わせは、IL-1βで活性化された対照に比べてPGE-2生成(4020 ± 468 pg/mL)を79%阻害した(p<0.05)。
【0104】
結論:
この証拠から、炎症促進性の刺激に対する軟骨細胞の応答を評価するために、およびこれらの応答を変えられる薬剤を同定するためにマイクロキャリア撹拌培養系を使用できることが明らかである。マイクロキャリア撹拌バイオリアクタ中の動的条件は、軟骨細胞が関節中で遭遇する生体力学的環境を再現するように思われる。それゆえ、マイクロキャリア撹拌培養系は、天然産物の潜在的な抗炎症性を評価するのに有用な手段となりうる。この培養系を用いて、本発明者らは、ASU、GluおよびCSの組み合わせが炎症経路の活性化を効果的に遮断することを認めた。
【0105】
実施例8: ヒトマクロファージ様THP-1細胞におけるアボカドダイズ不けん化物、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸の組み合わせによるTNF-α、IL-1β、iNOSおよびp38発現の抑制
変形性関節症(OA)は、関節軟骨の浸食および滑膜の二次的炎症により特徴付けられる変形性関節疾患である。滑膜は、OAの発病に不可欠なメディエータを産生する単球/マクロファージ様細胞を含有する。そのような炎症促進性メディエータはケモカイン、サイトカイン、プロスタグランジンおよび一酸化窒素を含む。最近の臨床研究およびインビトロ研究により、アボカドダイズ不けん化物(ASU)、グルコサミン(Glu)およびコンドロイチン硫酸(CS)などのある種の天然産物はそれぞれ、抗炎症性を有することが示された。ASUはOA患者において疼痛および機能的障害を軽減することが報告されている。同様に、GluおよびCSの組み合わせも中等度から重度のOAで苦しんでいる患者の部分群において疼痛を緩和すること、および関節可動性を改善することが明らかにされた。実施例8の研究において、本発明者らは、ASU、GluおよびCSの組み合わせがASUのみ、またはGluおよびCSどうしの組み合わせよりも炎症促進性遺伝子の発現の抑制に大きな効果を及ぼしうるかどうかを評価した。これらの処理を、十分に立証された代替単球/マクロファージTHP-1細胞株において試験した。
【0106】
実施例8の研究では、アボカドダイズ不けん化物(ASU)、グルコサミン(Glu)およびコンドロイチン硫酸(CS)の組み合わせがASUのみ、またはGluおよびCSどうしの組み合わせよりも炎症促進性遺伝子の発現の抑制に有効であるかどうかを判定しようとした。
【0107】
方法:
ヒト単球/マクロファージ代替THP-1細胞(細胞5×105個)を37℃および5% CO2で24時間、(i) 対照培地のみ、(ii) ASU (8.3 μg/ml; NMX1000TM-ASU)、(iii) Glu (15 mM; FCHG49(登録商標))およびCS (20 μg/ml; TRH122(登録商標))とともにまたは(iv) ASU (8.3 μg/ml)、Glu (15 mM)およびCS (20 μg/ml)の組み合わせとともにインキュベートした。全試験材料はNutramax Laboratories, Inc., Edgewood, MDから供給された。次いで細胞を1時間20 ng/ml LPSで活性化した。全RNAを抽出し、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38、およびハウスキーピング遺伝子としてのS14に特異的なプライマーを用いてRT-PCR分析に供した。
【0108】
結果:
ASU、GluおよびCSの組み合わせによる前処理は、活性化THP-1細胞において50〜80%だけTNF-α、IL-1βおよびiNOSの発現を大いに抑制した。組み合わせ処理はTNF-αおよびIL-1βの発現をベースラインの非活性化対照と同様のレベルに低減し、iNOSの発現をベースラインの非活性化レベルよりも低いレベルに低減した。TNF-α、IL-1βおよびiNOSの発現に対する組み合わせ調製物の阻害効果は、ASUのみ、またはGluおよびCSどうしよりも著しい。サイトカインおよびiNOS発現の阻害は、p38発現の著しい抑制に関連している。
【0109】
図10 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる単球/マクロファージ様THP-1細胞におけるTNF-α発現の阻害」)に示される通り、ASU、GluおよびCSの組み合わせとのプレインキュベーションではLPS活性化細胞において>75%だけTNF-α発現が抑制された。この組み合わせ処理はTNF-α発現を非活性化対照(C)レベルと同様のレベルに下方制御した。この組み合わせの阻害効果は個々の薬剤のみよりも著明であった。
【0110】
図11 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる単球/マクロファージ様THP-1細胞におけるIL-1β発現の阻害」)に示される通り、ASU、GluおよびCSの組み合わせとのプレインキュベーションではLPS活性化細胞において50%だけIL-1β発現が抑制された。この組み合わせ処理は個々の薬剤のみよりもIL-1β発現の抑制で有効であった。
【0111】
図12 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる単球/マクロファージ様THP-1細胞におけるiNOS発現の阻害」)に示される通り、ASU、GluおよびCSの組み合わせとのプレインキュベーションではLPS活性化細胞において80%だけiNOS発現が抑制された。この組み合わせはiNOS発現を非活性化対照(C)レベルよりも低いレベルに抑制した。この組み合わせは個々の薬剤のみよりもiNOS発現の抑制で有効であった。
【0112】
図13 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる単球/マクロファージ様THP-1細胞におけるp38発現の阻害」)に示される通り、ASU、GluおよびCSの組み合わせとのプレインキュベーションではLPS活性化細胞において75%だけp38発現が抑制された。この組み合わせ処理はp38発現を非活性化対照(C)レベルよりも低いレベルに下方制御した。この組み合わせは個々の薬剤のみよりもp38発現の抑制で有効であった。
【0113】
考察/結論:
本実施例は、ASU、GluおよびCSの組み合わせがASUのみ、またはGluおよびCSどうしよりも炎症促進性遺伝子の発現の抑制で有効であったことを実証するものである。TNF-α、IL-1βおよびiNOSの抑制はp38、つまり関節の炎症に関与する重要なシグナル伝達メディエータの下方制御に関連していた。これらの所見は、OA患者において、特に単一の処置のみには反応しない者に対して疼痛および炎症を緩和するための組み合わせ処置の潜在的な臨床有用性を示唆するものである。
【0114】
実施例9: 軟骨細胞でのアボカドダイズ不けん化物(ASU)によるシクロオキシゲナーゼ-2遺伝子発現およびプロスタグランジンE2産生の阻害
はじめに:
シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)は、炎症に関与する非常に重要な酵素であり、炎症促進性メディエータ・プロスタグランジン(PGE-2)の産生において中心的な役割を果たす。COX-2は、プロスタグランジンG/Hシンターゼとしても知られており、アラキドン酸の2つの短寿命中間体、つまりプロスタグランジンG (PGG)およびプロスタグランジンII (PGH)への段階的変換を触媒する。PGGはPGE-2を含む、さまざまな形態へ異性化する。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)はプロスタグランジン合成を阻害することにより、変形性関節症(OA)において炎症を抑制するためにおよび疼痛を緩和するために広く用いられている。最近になって、植物由来の産物などの、補完代替医療(CAM)は、強力な抗炎症活性を及ぼすことが立証された。例えば、Soeken KL. et al. Clin J. Pain. 20(1): 13-8, 2004を参照されたい。アボカドダイズ不けん化物(ASU)の抽出物もこれらに含まれる。ASUの抗炎症活性は、免疫-炎症系に主に由来する組織細胞の原型に関して試験されている。軟骨細胞に及ぼすASUの効果についてはほとんど知られていない。軟骨細胞は、軟骨の唯一の細胞成分として、PGE-2などの炎症促進性メディエータを合成する。実施例9の研究では、ASUがCOX-2遺伝子発現を効果的に阻害し、それによってPGE-2合成を抑制するという仮説について試験した。
【0115】
材料および方法:
関節軟骨細胞をコラゲナーゼ消化によって成熟ホルスタインの中手関節から単離した。軟骨細胞をプレーティングし(5×105/ウェル)、使用の前に5〜7日間維持した。軟骨細胞を(i) 72時間ASU (25 μg/ml)、または(ii) 72時間対照培地のみとともにプレインキュベートした。軟骨細胞を次に、対照培地のみとともに再インキュベートし、または(a) RT-PCR分析によってCOX-2発現を判定するために1時間および(b) 免疫アッセイ法によって分泌PGE-2レベルを測定するために24時間、37℃、5% CO2で20 ng/mlのリポ多糖体(LPS)により活性化した。細胞を溶解し、全RNAをTRIzol(登録商標) (Life Technologies(商標)で抽出した。等量(1 μg)の全RNAを逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)に供した。COX-2、およびハウスキーピング遺伝子としてのGAPDHに特異的なウシプライマーを用いた。臭化エチジウム含有ゲルを電気泳動させて、UV線下でバンドを可視化した。個別の泳動を3〜5回実施した。SigmaStat統計プログラムを用いて一元配置ANOVA (Tukey post-hoc分析)による多重比較を実施し、ここでp<0.05を統計的に有意と考えた。
【0116】
結果:
アボカドダイズ不けん化物との軟骨細胞のプレインキュベーションにより、非活性化ウシ軟骨細胞においてCOX-2のベースライン発現が低減された。図14Aおよび14B (「ASUによる活性化軟骨細胞でのCOX-2発現の阻害」)に示すように、72時間のASUとの軟骨細胞のプレインキュベーションの後、1時間のLPSでの活性化によって、COX-2転写産物の活性化がベースラインレベルの下方まで大いに遮断された。
【0117】
さらに、図15 (「ASUによる活性化軟骨細胞でのPGE-2生成の阻害」)に示すように、72時間のASUとの軟骨細胞のプレインキュベーションの後、24時間のLPSでの活性化によって、図15に示すように、分泌PGE-2の濃度が顕著に低減された(P<0.01)。SigmaStat統計プログラムを用いて一元配置ANOVA (Tukey post-hoc分析)による多重比較を実施し、ここでp<0.05を統計的に有意と考えた。
【0118】
考察/結論:
実施例9の研究は、ASUが軟骨細胞においてCOX-2発現の活性化を阻害することを実証するものである。この阻害は炎症促進性メディエータPGE-2の生成の減少をもたらす。PGE-2生成の遮断は、炎症に関連する疼痛を軽減することが立証されている。本発明者らの所見は、変形性関節症によって例示される、疼痛状態の管理におけるASUの有用性の提案を支持するものである。
【0119】
実施例10: アボカドダイズ不けん化物(ASU)による軟骨細胞および単球での炎症促進性サイトカインおよびCOX-2発現の阻害
サイトカインTNF-αおよびIL-1β、ならびに酵素シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)は慢性炎症性疾患における主なメディエータとして知られている。COX-2は、プロスタグランジンPGE-2の生成を調節することによって炎症に関与する非常に重要な酵素である。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)はサイトカインおよびPG合成を阻害することにより、特に変形性関節症において、炎症を抑制するためにおよび疼痛を緩和するために広く用いられている。最近になって、疼痛および炎症の管理に代わるアプローチにより、励みになる結果が得られている。アボカドダイズ不けん化物(ASU)の抽出物もこれらに含まれる。ヒトでの臨床研究により、ASUが炎症に関連する疼痛を軽減し、関節腔狭小化の程度を低減することが示唆されている。細胞標的に及ぼすASUの効果についてはほとんど知られていない。実施例10の研究では、ASUが軟骨細胞および単球においてCOX-2、TNF-αおよびIL-1βの遺伝子発現を阻害するという仮説について試験した。代替単球-マクロファージ様THP-1細胞を用いた。
【0120】
成熟ホルスタインの中手関節由来の関節軟骨細胞(5×105/ウェル)およびヒトTHP-1単球様細胞(5×105/ウェル)を(i) ASU (25 μg/mL)または(ii) 対照培地のみとともにそれぞれ72時間および24時間プレインキュベートした。細胞を対照培地のみ、または(a) 逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)分析によって遺伝子発現を判定するために1時間および(b) 免疫アッセイ法によって分泌PGE-2レベルを測定するために24時間20 ng/mlのリポ多糖体(LPS)とともに再インキュベートした。ウシおよびヒトCOX-2、TNF-α、IL-1β、ならびにハウスキーピング遺伝子としてのGAPDHに特異的なプライマーを用いた。臭化エチジウム含有ゲルを電気泳動させて、UV線下でDNAバンドを可視化した。個別の泳動を3〜5回実施した。SigmaStat統計プログラムを用いて一元配置ANOVA (Tukey post-hoc分析)による多重比較を実施し、ここでp<0.05を統計的に有意と考えた。ASUは非活性化ウシ軟骨細胞においてCOX-2、TNF-αおよびIL-1βのベースライン発現を低減した。
【0121】
さらに、ASUは、LPSにより誘導された細胞でのこれらのメディエータの活性化を遮断した。COX-2発現の遮断は93 ± 1%だけの分泌PGE-2の顕著な低減をもたらした(P<0.01)。同様に、24時間のASUとのTHP-1細胞のプレインキュベーションの後、1時間のLPSでの活性化により、LPSのみで活性化された対照細胞に比べて、TNF-αおよびIL-1β転写産物の発現が大いに遮断された。
【0122】
実施例10の研究は、ASUが軟骨細胞および単球においてTNF-αおよびIL-1βの発現を劇的に抑制し、軟骨細胞においてCOX-2転写産物の低減を認めたことを初めて実証するものである。この観察結果は、ASUが疼痛および炎症を改善するというプラスの臨床所見を支持するものである。本発明者らの研究は、変形性関節症によって例示される、疼痛状態の管理におけるASUの有用性の提案を支持するものである。
【0123】
実施例11: 軟骨細胞における炎症促進性遺伝子の発現の、アボカドダイズ不けん化物、グルコサミン、およびコンドロイチン硫酸の組み合わせによる阻害
はじめに:
変形性関節症(OA)は、関節軟骨の浸食および滑膜の二次的炎症により特徴付けられる変形性関節疾患である。軟骨浸食は、軟骨中の軟骨細胞および滑膜に局在する単球/マクロファージにより産生される炎症促進性メディエータによって誘導される。OAの管理においてアボカドダイズ不けん化物(ASU)、グルコサミン(Glu)およびコンドロイチン硫酸(CS)を用いることの利点が臨床研究から立証されている。ASUはOA患者において疼痛を軽減すること、および機能障害を最小限に抑えることが明らかにされている。例えばErnst E. Clin Rheum. 2003; 22(4-5): 285-8を参照されたい。同様に、GluおよびCSの組み合わせは、OAに罹っている動物において顕著に跛行を軽減し、関節可動性を改善した。例えば、Hanson RR et al. Equine Practice. 1997; 19(9): 16-22; およびCanapp SO et al. Amer. J Vet. Res. 1999; 60(12): 1552-7を参照されたい。同様に、例えば、Henrotin YE et al. Clin Rheum. 1998; 17(1): 31-9; およびChan PS et al. Osteoarthritis Cart. 2005; 13(5): 387-94を参照されたい。炎症促進性メディエータの発現はp38 MAPKシグナル伝達経路を通じて調節される。本発明者らの研究では、ASU、GluおよびCSの組み合わせがp38シグナル伝達経路を通じて炎症促進性遺伝子の発現を大いに下方制御するかどうかを評価した。本発明者らはヒトおよびウマ軟骨細胞でのこれらの化合物の効果について評価した。
【0124】
材料および方法:
ウマ軟骨細胞をコラゲナーゼ消化によって関節軟骨から単離した。ウマ軟骨細胞およびヒト関節軟骨細胞(ATCC)を細胞5×105個/ウェルの密度でプレーティングした。細胞を対照培地のみ、または生理学的濃度の(i) ASU (8.3 μg/ml; NMX 1000(商標)-ASU)、(ii) Glu (11 μg/ml; FCHG49(登録商標))およびCS (20 μg/ml; TRH122(登録商標))、もしくは(iii) ASU (8.3 μg/ml)、Glu (11 μg/ml)およびCS (20 μg/ml)の組み合わせとともに24時間37℃、5% CO2でインキュベートした。炎症を誘導するため、細胞をリポ多糖体(20 ng/ml, LPS)またはインターロイキン-1-β(10 ng/ml, IL-1β)により1時間活性化した。全RNAをTRIzol(登録商標) (Life Technologies(商標))を用いて単離し、遺伝子発現をRT-PCRを用いて分析した。
【0125】
結果:
活性化ウマ軟骨細胞において、組み合わせ処理はCOX-2発現を非活性化対照レベルと同様のレベルに抑制した。さらに、ASU、Glu、およびCSの組み合わせは、活性化ヒト軟骨細胞においてケモカインの発現を抑制した。図16 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる活性化軟骨細胞におけるケモカインIL-8発現の阻害」)および図17 (ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる活性化軟骨細胞におけるケモカインMCP発現の阻害)を参照されたい。インターロイキン-8 (IL-8)およびMCPの発現は非活性化対照レベルと同様のレベルに下方制御された。
【0126】
考察/結論:
実施例11の研究は、ASU、GluおよびCSの組み合わせが軟骨細胞において炎症促進性遺伝子の発現を大いに抑制することを実証するものであった。この組み合わせ処理はケモカインの発現の低減で有効であった。ケモカインなどの、炎症促進性メディエータの抑制は、骨関節炎関節における炎症促進性の応答を調節する際に非常に重要である。本発明者らの結果は、OAの管理におけるASU、GluおよびCSの組み合わせの潜在的な臨床有用性を強固にし、単一の薬剤のみには反応しない患者に対して代替的な選択肢を与えるものである。
【0127】
本発明の教示に基づき、本発明により教示される化合物の組み合わせが相乗的に作用することを当業者は理解するであろう。例えば、グルコサミンは軟骨細胞代謝に刺激作用を及ぼし、軟骨細胞代謝は、それだけで、軟骨分解疾患の改善で助けになることが理解されよう。しかしながら、細胞代謝の増大は、酸化的リン酸化の天然副産物のように、遊離ラジカルの生成の増大をもたらすこともある。遊離ラジカル生成の増大は、グルコサミン投与の有益な効果を弱めうる。L-エルゴチオネインをグルコサミンと組み合わせることによって、代謝が増大し、遊離ラジカルによる損傷が低減し、これらの作用の一方をもたらす化合物を供与した場合よりも大きな利益をもたらすものと予想されよう。それゆえ、当業者は、本発明の教示に基づき、グルコサミンをL-エルゴチオネインと組み合わせることが、どちらかのみを供与するよりも有益であることを理解するであろう。本発明のある種の化合物の間にある相乗作用は、各化合物をより低い用量で使用することも可能にする。これらの化合物は全く安全であるが、副作用の可能性があるかもしれない。例えば、多量のグルコサミン硫酸またはコンドロイチン硫酸は、いくつかの個体で胃腸障害を引き起こす可能性がある。さらに、これらの化合物は高価である。これらの理由で、用量を最小にし、それでも有益な作用を達成する能力が望ましい。
【0128】
本発明の基本的な趣旨から逸脱することなく多くの変更がなされうる。本発明の種々の態様を先に記述してきたが、それらは限定ではなく単なる例証として提示されているものと理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本明細書において明確に記載したもの以外に本発明を実践できることを当業者は理解するであろう。このように、本発明の広さおよび範囲は、前述の例示的な態様のいずれかによって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ定義されるべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2006年12月6日付で出願された米国特許出願第11/634,383号の優先権を主張するものであり、その特許出願の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、1998年6月5日付で出願された「A COMPOSITION OF ACETAMINOPHEN, AN AMINOSUGAR AND A GLYCOSAMINOGLYCAN」という名称の米国特許仮出願第60/088,205号の恩典を主張する、かつ、さらに1998年2月13日付で出願された「THE USE OF ANABOLIC AGENTS, ANTI-CATABOLIC AGENTS, ANTIOXIDANT AGENTS, AND ANALGESICS FOR PROTECTION, TREATMENT AND REPAIR OF CONNECTIVE TISSUES IN HUMANS AND ANIMALS」という名称の米国特許仮出願第60/074,594号の恩典を主張する1999年2月12日付で出願された米国特許出願第09/249,335号の一部継続出願である、1999年3月23日付で出願された米国特許出願第09/274,881号の継続出願である、2002年7月11日付で出願された米国特許出願第10/192,318号の継続出願である、2004年4月15日付で出願された米国特許出願第10/824,498号に関連している。上記の出願の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本発明は、ヒトおよび他の動物における結合組織の炎症の保護、処置、修復および調節のための組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒトを含む哺乳動物の組織は、組織を構築する同化プロセスと、組織を分解する異化プロセスとが絶えず変わる状態にある。これらの2つのプロセスの間のバランスが取れている場合には健康な状態が存在し、このバランスの乱れによって疾患が生じる。このことは身体の全ての組織にあてはまる。結合組織はいくつかの理由で特に重要である。第1に、結合組織は体の「機能的細胞」、すなわち、上皮細胞、筋肉細胞および神経細胞を支えている。第2に、結合組織は多細胞生命体にとって不可欠な、細胞間情報交換において重要な役割を果たす。
【0005】
炎症プロセスはこのバランスにおいて重要な位置を占めている。組織への損傷が起こると、炎症は、組織修復をもたらす生化学的プロセスを惹起する。炎症は関わる組織の疼痛、炎症および膨潤といった症状をもたらすので、患者も医師もともにこれを、できるだけ早急かつ完全に処置および軽減されるべき、異常なかつ望ましくない状態と見なすことが多い。結果として、薬局は「抗炎症薬」(コルチコステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬、例えばアスピリンなど)でいっぱいになっている。ある種の状況下で、炎症は確かに破壊的なこともあるが、しかし炎症が組織治癒と密接に関連していると肝に銘じることは重要である。実際、炎症は、厳密に同化性または異化性と容易には分類されず、いずれの効果も持ちうる。体内でのその目的は有害な物質を除去、希釈または隔離することである。炎症は同様に、損傷した組織を修復および再構築する生化学的プロセスも発動する。炎症は治癒に不可欠であるので、および炎症は組織破壊も引き起こしうるので、炎症およびそのメディエータは同化および異化のバランスにおいて重要な要因である。
【0006】
炎症性メディエータの非常に重要なクラスの1つはエイコサノイド群である。エイコサノイドは必須脂肪酸(「FA」)から体内で合成される。一連の生化学的反応を通じ、前駆脂肪酸が修飾されて中間代謝産物アラキドン酸(「AA」)、ω-6 FAおよびエイコサペンタエン酸(「EPA」)、ω-3 FAを生ずる。アラキドン酸から生成されるエイコサノイドには2系列のプロスタグランジンおよび4系列のロイコトリエンがあり、これらは一般に炎症促進性である。3系列プロスタグランジンおよびヒドロキシエイコサペンタエン酸(「HEPE」)などの、EPAから誘導されるエイコサノイドは、AAから誘導されるものよりも炎症性が低い。さらに、このようなエイコサノイドは抗炎症作用さえ持ちうる。
【0007】
1つのクラスとして、エイコサノイドは短命かつ局所的に活性である。エイコサノイドは血管拡張、血管透過性の増大および走化性を含む、炎症の初期事象に関与する。さらに、エイコサノイドは、治癒プロセスの早期段階において役立つ。例えば、エイコサノイドはTGF-Bなどのサイトカインの放出を誘発し、これが今度は結合組織細胞の移動および増殖、ならびに細胞外マトリックスの沈着を刺激する。特定の構成性エイコサノイドは、胃腸粘膜および腎臓において保護作用も有する。何故なら、それらのエイコサノイドがグリコサミノグリカン合成およびこれらの器官の正常な灌流を維持するからである。
【0008】
これらのような同化プロセスのため、ならびに体内の天然の抗異化剤および抗酸化剤の影響のため、炎症の多くの場合の結果は、損傷の消散および損傷した組織の治癒である。炎症自体が疾患の一因となるのは、病的状態においてだけである。
【0009】
エイコサノイド前駆体FA (cis-リノール酸およびα-リノレン酸、いわゆるω-3およびω-6脂肪酸を含む)の治療的使用に関する研究は、主に、エイコサノイド合成の競合的阻害剤としてのその使用、それゆえ、その抗炎症作用に向けられてきた。重篤なまたは絶対的な食事性欠乏の場合を除き、エイコサノイドが結合組織において有する有益な同化作用に対しては注意がほとんど払われてこなかった。しかしながら、天然に起こるエイコサノイドの「不顕性の」欠乏は、おそらく疾患に大きく寄与するも、十分に診断されていない。例えば、酵素Δ-6-デサチュラーゼはAA合成の関与段階を担う。この酵素(Δ-6-デサチュラーゼ)の活性は年齢とともに減少する。これは、高齢人口層での結合組織機能不全の発生率の増加における重要な要因であることを証明している可能性が高い。AAの欠乏が同化プロセスを低減し、異化事象を優位にさせるからである。
【0010】
組織の治癒における炎症の重要性、およびいくつかのエイコサノイドが果たす保護的な役割を考えれば、エイコサノイドの生成を遮断することによって炎症を低減する医薬には、治癒および同化プロセスに対して負の作用があることも驚くべきことではない。強力に抗炎症性を示すコルチコステロイド薬も治癒を遅延し、細胞外マトリックス成分の生成を低減することは長い間知られている。これは、コルチゾールおよび関連する化合物が細胞膜を安定化し、それゆえ、ホスホリパーゼA2、つまりAAの前駆体の放出を阻害するからである。最近では、非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)に注意が向けられている。NSAIDは、コルチコステロイドと同様に、プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼを阻害し、かくしてシクロオキシゲナーゼ経路を遮断するので、結合組織細胞によるマトリックス成分の合成を低減できることが数多くの研究によって明らかにされている。
【0011】
炎症プロセスは組織治癒の必須条件であるので、およびエイコサノイドは炎症プロセスのメディエータであるので、AA (および他のエイコサノイド化合物)の使用は傷害組織の治療法に対する新規のアプローチである。Kirkpatrickらは器官培養中のニワトリ胚軟骨に対するプロスタノイド前駆体の使用について調査し、有意な効果を認めなかった。[Kirkpatrick, C. J., 「Effects of Prostanoid Precursors and Indomethacin on Chick Embryonic Cartilage Growth in Organ Culture」, Expl. Cell Biol., 51: 192-200 (1993)(非特許文献1)]。鳥類の軟骨および胚軟骨は哺乳動物の出生後軟骨とは著しく異なるので、この研究における実験モデルが有意な効果のないことの一因になった可能性がある。例えば、そもそも、どの種の胚軟骨も指数関数的増殖期にあるので、異化亢進性かつ同化性である。Kentらはウサギ軟骨におけるAAの効果を検討し、正の効果を認めたが、それ以前のおよびその後の研究ではこれを確認できていない。[Kent, L. et al., 「Differential Response of Articular Chondrocyte Populations to Thromboxane B2 and Analogs of Prostaglandin Cyclic Endoperoxidases」, Prostaglandins. 19:391-406 (1980)(非特許文献2)]。KirkpatrickおよびGardnerは、AAおよびAAのさまざまな代謝産物が生合成に対してあまり効果を与えないまたは阻害効果を与えることを見出した。[Kirkpatrick C. J. and Gardner, D. L., 「Influence of PGAI on Cartilage Growth」, Experientia, 33(4):504 (1976)(非特許文献3)]。しかしながら、Lippielloらは、AAおよび他のω-6脂肪酸が細胞培養での軟骨細胞代謝に対して有益な作用を与えることを見出した。[Lippiello, L., Ward, M., 「Modification of articular cartilage chondrocyte metabolism by in vitro enrichment with fatty acids (abstract)」, Trans. Orthop. Res. Soc. 13: 162 (1988)(非特許文献4); Lippiello, L., 「Prostaglandins and articular cartilage; does Prostaglandin perturbation perpetuate cartilage destruction?」 Semin Arthritis Rheum 11:87 (1981)(非特許文献5)]。体内での同化プロセスと異化プロセスとの間のバランスは壊れやすく容易に乱されるので、これらのバラツキのある結果は、予想外というわけではない。Phanらは、シクロオキシゲナーゼ経路によるAAの生成物が抗線維形成性であるのに対し、リポキシゲナーゼ経路によるAA生成物が線維形成促進性であることを示唆している。この現象はエイコサノイドの相互作用の複雑さを実証している。
【0012】
異化事象は、体成分を分解する酵素により体内で通常媒介される。異化は健康にとって不可欠であり、必要な酵素の欠乏はムコ多糖体沈着のようないわゆる蓄積症などの、疾患を引き起こす。過度の異化も組織の破壊を引き起こし、変形性関節症のような変性疾患または多発性硬化症のような自己免疫疾患において見られるような、疾患を導くことがある。体内のさまざまな抗異化物質は、異化作用を抑制および平衡化するのに役立つ。例えば、コンドロイチン硫酸は、軟骨マトリックス中のコラーゲンおよびプロテオグリカンを異化するメタロプロテイナーゼの影響を弱める。同様に、α1アンチトリプシンは、肺気腫における肺胞の破壊に寄与するエラスターゼの作用を阻害する。
【0013】
酸化的損傷も体内での同化作用と異化作用とのバランスに影響を及ぼす。この損傷は、不対電子を有する物質である遊離ラジカルの作用の結果である。遊離ラジカルはATPの生成のような正常反応の結果として体内で恒常的に生じる。それらは炎症プロセスの間にも生じる。遊離ラジカルは、化学的に極めて反応性が高いので、細胞の損傷を引き起こす。それらは単一の電子(真空のように自然では嫌われる状態)しか持たないので、これらの物質はその近くの分子から電子を「奪う」。それによって、細胞膜またはDNAなどの、細胞構造を構成する分子は電子不足とされる。電子の不足によって今度は、細胞構造が不安定になり、異常タンパク質の製造、細胞破裂、および細胞死を含む、細胞機能不全が起こる。酸化的損傷は、加齢プロセスを含む体内での多くの異化事象に関係している。ビタミンC、ビタミンE、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、セレンおよびグルタチオンなどの、抗酸化物質は、酸化的損傷が起こる前に遊離ラジカルを除去する物質である。抗酸化物質は、細胞損傷を予防するという意味において、特定のタイプの抗異化剤である。
【0014】
身体は、組織の成長を刺激する同化化合物も含む。グルコサミンは、グルコースから体内で天然に形成されるアミノ糖である。グルコサミンは、外因的に供給されると、結合組織細胞合成を刺激し、それによって正常な細胞外マトリックスの量を増加させる。グルコサミンは、軟骨および他の結合組織中のグリコサミノグリカンの構成単位でもある。したがって、グルコサミンをさらに供給することにより結合組織でのマトリックス合成のための余分な原料が身体に供給される。体内の同化化合物の他の例としては、タンパク質合成を刺激するソマトトロピン、ならびに軟骨細胞および線維芽細胞の増殖を刺激し、マトリックス合成を増強するソマトメジンまたはインスリン様成長因子が挙げられる。
【0015】
これらの化合物の作用および相互作用は複雑である。ある化合物は異なる組織において異なる作用を持ちうる。例えば、ソマトトロピンは、タンパク質合成(同化作用)を増大する、がしかし脂肪分解(異化作用)も加速する。特定の化合物または化合物の組み合わせが有する作用は、投与経路、投薬量および治療期間を含む、多くの要因に依存するであろう。
【0016】
過去に研究者らは、個々の化合物のその同化作用、抗酸化作用または抗異化作用に向けた使用について検討してきた。グルコサミンは細胞培養において結合組織細胞を刺激し、マトリックス成分、つまりコラーゲンおよびグリコサミノグリカン(GAG)をもたらすことが見出されている。[Jimenez, S., 「The Effects of Glucosamine sulfate on Chondrocyte Gene Expression」, Eular Symposium, Madrid October 1996 Proceedings, page 8-10(非特許文献6)]。S-アデノシルメチオニンはGAGの硫酸化を含む、いくつかの合成反応に関与することが知られている。[Champe, P. Biochemistry, 2nd edition, J. B. Lippincott Co, Philadelphia, 1994, pp. 248, 250, 265(非特許文献7)]。アラキドン酸は、角膜治癒を刺激することが見出されている。[Nakamura, M., 「Arachidonic Acid Stimulates Corneal Epithelial Migration」, J. Ocul. Pharmacol., Summer: 10(2): 453-9 (1994)(非特許文献8)]。それゆえ、これらの化合物は同化作用を有する。
【0017】
コンドロイチン硫酸は、軟骨マトリックスを破壊するメタロプロテイナーゼを含めて、分解酵素を阻害することが明らかにされている。[Bartolucci, C., 「Chondroprotective action of chondroitin sulfate」, Int. J. Tiss. Reac., XIII(6):311-317 (1991)(非特許文献9)]。硫酸ペントサンを用いた研究から、硫酸ペントサンはウサギ心筋細胞において補体を介した損傷を阻止することが明らかにされている。[Kilgore, K., 「The Semisynthetic Polysaccharide Pentosan Polysulfate Prevents Complement-Mediated Myocardial Injury in the Rabbit Perfused Heart」, J. Pharmocol. Exp. Ther., 285(3):987-94 (1998)(非特許文献10)]。コラーゲンII型の経口投与は、関節リウマチにおいて関節組織を破壊する有害な免疫応答を低減することが明らかにされている。テトラサイクリン類似体は、マトリックスメタロプロテイナーゼの強力な阻害剤である。[Ryan, M., 「Potential of Tetracyclines to Modify Cartilage Breakdown in Osteoarthritis.」 Curr. Opin. Rheumatol., 8(3): 238-47 (1996)(非特許文献11)]。ジアセレインはインターロイキン-1活性の阻害によって、ならびに同様にリンパ球および好中球に対する直接的作用によって炎症プロセスを修正する。[Beccerica, E., 「Diacetylrhein and rhein: in vivo and in vitro effect on lymphocyte membrane fluidity」, Pharmocol. Res., 22(3):277-85 (1990)(非特許文献12); Mian, M., 「Experimental Studies on Diacerhein: Effects on the Phagocytosis of Neutrophil Cells from Subcutaneous Carregeenan-Induced Exudate」, Drugs Exp. Clin. Res., 13(11):695-8 (1987)(非特許文献13); Spencer, C., 「Diacerein」, Drugs, 53(1):98-106 (1997)(非特許文献14)]。これらの化合物は抗異化剤に分類することができる。
【0018】
L-エルゴチオネインはヒドロキシルラジカルを除去し、一重項酸素の形成を阻害することができる[Han J S. 「Effects of Various Chemical Compounds on Spontaneous and Hydrogen Peroxide Induced Reversion in Strain TA104 of Salmonella typhimurium」, Mutant Res., 266(2):77-84 (1992)(非特許文献15)]のに対し、スーパーオキシドジスムターゼはスーパーオキシドラジカルを除去する[Mathews C, Biochemistry 2nd ed., Benjamin/Cummings Pub. Co., Menlo Park Calif., 1996, page 551(非特許文献16)]。これらの化合物は酸化防止剤に分類することができる。
【0019】
これらの化合物は個別に検討されてきたものの、本発明者らの知る限り、本発明者ら以外の誰も、健康を維持しかつ治癒を促進するために同化剤、抗異化剤および抗酸化剤のいずれかのまたは全てのある種の組み合わせの効果について調べていない。本発明によれば、これらの薬剤の組み合わせを用いて、適切な同化作用(治癒)を最大とし、望ましくない異化作用(分解)および酸化的損傷を低減し、それと同時に有害な反応を最小またはなしとすることができる。それゆえ、ヒトおよび動物における結合組織の維持および修復のために同化剤、抗異化剤、抗酸化剤および/または鎮痛剤の組み合わせの有益な作用を利用する組成物を提供する必要のあることが理解されうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Kirkpatrick, C. J., 「Effects of Prostanoid Precursors and Indomethacin on Chick Embryonic Cartilage Growth in Organ Culture」, Expl. Cell Biol., 51: 192-200 (1993)
【非特許文献2】Kent, L. et al., 「Differential Response of Articular Chondrocyte Populations to Thromboxane B2 and Analogs of Prostaglandin Cyclic Endoperoxidases」, Prostaglandins. 19:391-406 (1980)
【非特許文献3】Kirkpatrick C. J. and Gardner, D. L., 「Influence of PGAI on Cartilage Growth」, Experientia, 33(4):504 (1976)
【非特許文献4】Lippiello, L., Ward, M., 「Modification of articular cartilage chondrocyte metabolism by in vitro enrichment with fatty acids (abstract)」, Trans. Orthop. Res. Soc. 13: 162 (1988)
【非特許文献5】Lippiello, L., 「Prostaglandins and articular cartilage; does Prostaglandin perturbation perpetuate cartilage destruction?」 Semin Arthritis Rheum 11:87 (1981)
【非特許文献6】Jimenez, S., 「The Effects of Glucosamine sulfate on Chondrocyte Gene Expression」, Eular Symposium, Madrid October 1996 Proceedings, page 8-10
【非特許文献7】Champe, P. Biochemistry, 2nd edition, J. B. Lippincott Co, Philadelphia, 1994, pp. 248, 250, 265
【非特許文献8】Nakamura, M., 「Arachidonic Acid Stimulates Corneal Epithelial Migration」, J. Ocul. Pharmacol., Summer: 10(2): 453-9 (1994)
【非特許文献9】Bartolucci, C., 「Chondroprotective action of chondroitin sulfate」, Int. J. Tiss. Reac., XIII(6):311-317 (1991)
【非特許文献10】Kilgore, K., 「The Semisynthetic Polysaccharide Pentosan Polysulfate Prevents Complement-Mediated Myocardial Injury in the Rabbit Perfused Heart」, J. Pharmocol. Exp. Ther., 285(3):987-94 (1998)
【非特許文献11】Ryan, M., 「Potential of Tetracyclines to Modify Cartilage Breakdown in Osteoarthritis.」 Curr. Opin. Rheumatol., 8(3): 238-47 (1996)
【非特許文献12】Beccerica, E., 「Diacetylrhein and rhein: in vivo and in vitro effect on lymphocyte membrane fluidity」, Pharmocol. Res., 22(3):277-85 (1990)
【非特許文献13】Mian, M., 「Experimental Studies on Diacerhein: Effects on the Phagocytosis of Neutrophil Cells from Subcutaneous Carregeenan-Induced Exudate」, Drugs Exp. Clin. Res., 13(11):695-8 (1987)
【非特許文献14】Spencer, C., 「Diacerein」, Drugs, 53(1):98-106 (1997)
【非特許文献15】Effects of Various Chemical Compounds on Spontaneous and Hydrogen Peroxide Induced Reversion in Strain TA104 of Salmonella typhimurium」, Mutant Res., 266(2):77-84 (1992)
【非特許文献16】Mathews C, Biochemistry 2nd ed., Benjamin/Cummings Pub. Co., Menlo Park Calif., 1996, page 551
【発明の概要】
【0021】
本発明は新規の組成物、ならびにそのような組成物を用いてヒトおよび動物における結合組織の損傷を処置、修復および予防する方法を提供する。それゆえ、本発明の目的はヒトおよび動物における結合組織の保護、処置および修復のための同化剤、抗異化剤、抗酸化剤および/または鎮痛剤のいずれかの、または全ての新規の組成物を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、同化剤、抗異化剤、抗酸化剤および/または鎮痛剤のいずれかまたは全てを含有する組成物によりヒトおよび動物における結合組織を処置および修復する方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、アミノ糖、S-アデノシルメチオニン(SAMe)、アラキドン酸(AA)、GAG、硫酸ペントサン、コラーゲンII型、テトラサイクリン、ジアセリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、L-エルゴチオネイン、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物(ASU)および鎮痛剤、例えばアセトアミノフェンなどからなる群より選択される同化剤、抗異化剤、抗酸化剤および/または鎮痛剤のいずれかまたは全てを含む組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、アミノ糖、SAMe、アラキドン酸、GAG、硫酸ペントサン、コラーゲンII型、テトラサイクリン、ジアセリン、SOD、L-エルゴチオネイン、1種または複数種のASUおよび鎮痛剤、例えば、アセトアミノフェンからなる群より選択される要素の1つまたは複数を含有する、ヒトおよび動物における結合組織の損傷を修復、処置、および予防するための組成物を提供することである。
【0025】
本発明のさらなる目的は、ヒトおよび動物における結合組織の損傷に関連する炎症を調節するための組成物を提供することである。
【0026】
本発明のこれらのおよび他の目的は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】コンドロイチン硫酸などのGAGの作製のための生合成経路の詳細な説明を示す。
【図2】SAMeおよびその直接の前駆体の分子構造である。
【図3】SODの機能の略図を示す。
【図4】不けん化性脂質のいくつかの例を示す。
【図5】アセトアミノフェンの分子構造である。
【図6】実施例7において異なる2期間で観察された、細胞外マトリックス(ECM)およびマイクロキャリア上の軟骨細胞の像を表す。
【図7】実施例7において観察された、II型コラーゲンを染色した軟骨細胞の像である。
【図8】実施例7において測定された、IL-1β活性化に対するPGE-2の反応を示した2つのグラフを表す。
【図9】実施例7による、アボカド/ダイズ不けん化物(ASU)、コンドロイチン硫酸およびグルコサミンに対するPGE-2反応の調節を示したグラフを表す。
【図10】実施例8による、THP-1細胞におけるTNF-α発現を示したグラフを表す。
【図11】実施例8による、IL-1βを示したグラフである。
【図12】実施例8において測定された、THP-1細胞におけるiNOS発現を示したグラフである。
【図13】実施例8において測定された、THP-1細胞におけるp38発現を示したグラフである。
【図14】図14Aおよび14Bは、実施例9において測定された、活性化軟骨細胞におけるCOX-2の阻害を示す。
【図15】実施例9において測定された、分泌性PGE-2レベルを示したグラフである。
【図16】実施例11において測定された、ヒト軟骨細胞におけるインターロイキン-8 (IL-8)発現を示したグラフである。
【図17】実施例11において測定された、ヒト軟骨細胞における単球走化性タンパク質(MCP)発現を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
結合組織の損傷を処置、修復および予防するために用いられる本発明の組成物は、同化剤、抗異化剤および/または抗酸化剤の組み合わせを含む。好ましい態様の成分は、アミノ糖、SAMe、AA、ペントサンを含むGAG、コラーゲンII型、テトラサイクリン、ジアセリン、SOD、L-エルゴチオネイン、メチルスルファニルメタン(MSM)、および1種または複数種のASUからなる群より選択される組成物を含む。任意で、本発明の組み合わせはアセトアミノフェンなどの、1種または複数種の鎮痛剤を含んでもよい。さらに、本発明はこれらの新規の組成物を、その組成物を必要とするヒトおよび動物に投与する方法を範囲に含む。
【0029】
アミノ糖の一例であるグルコサミンは、グルコースから体内で自然に形成される。グルコサミンは、外因的に供給されると、結合組織細胞合成を刺激し、正常な細胞外マトリックスの量を増加させる。グルコサミンは、軟骨および他の結合組織中のグリコサミノグリカン(「GAG」)の構成単位でもあり、したがって、グルコサミンをさらに供給することにより結合組織でのマトリックス合成のための追加の原料が身体に供給される。本発明の組成物のアミノ糖成分は、グルコサミン塩酸塩およびグルコサミン硫酸塩を含むグルコサミンの塩、グルコサミンリン酸、ならびにN-アセチルグルコサミンおよびその塩かつ/または混合物を含むがこれらに限定されない、天然、合成または半合成のアミノ糖を含むことができる。さらに、アミノ糖という用語は同様に、化学的に修飾されたもののなおその機能を保持する可能性のあるアミノ糖を包含するよう本明細書において用いられる。そのような化学的修飾はエステル化、硫酸化、ポリ硫酸化、アセチル化、およびメチル化を含むが、これらに限定されることはない。さらに、アミノ糖という用語は、上記のアミノ糖とは実質的に異ならない任意の組成の物質に拡大できるものと考えられる。
【0030】
本発明の組成物のGAG成分は、コンドロイチン、ヒアルロン酸、グルクロン酸、イズロン酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸(dermatin sulfate)、ならびにその断片、塩および混合物を含むがこれらに限定されない、天然、合成もしくは半合成のGAG、GAG様化合物、またはGAG前駆体を含むことができる。さらに、本明細書において用いられるGAGという用語は、化学的に改変されたもののなおその機能を保持するGAGをさらに包含する。そのような修飾は、エステル化、硫酸化、ポリ硫酸化およびメチル化を含むが、これらに限定されることはない。実際に、硫酸化GAGは、本発明の組成物の好ましい成分である。ゆえに、モノ硫酸化およびポリ硫酸化(または過剰硫酸化) GAGは、本発明の組成物の好ましいGAG成分である。GAGという用語は同様に、上記の化合物、例えば、ムコ多糖、プロテオグリカンおよびヘパラノイドの同群の代替的名称を包含するよう意図される。さらに、本発明の組成物のGAGまたはGAG様成分は、ブナの木に、サメ軟骨、ウシ気管、クジラ中隔およびブタ鼻孔を含む動物軟骨の形態に、ならびにモエギイガイ(Perna canaliculus)およびナマコなどの無脊椎動物に限定されないがこれらを含む、植物源または動物源から誘導されうる。
【0031】
コンドロイチン硫酸は好ましいGAGである。コンドロイチン硫酸は、関節軟骨において最も豊富なグリコサミノグリカンであり、体内のその他の多くの結合組織にも存在する。さらに、コンドロイチン硫酸は、異常な過度の炎症条件下で結合組織を分解する分解性酵素を競合的に阻害する。コンドロイチン硫酸は、グルクロン酸および硫酸化ガラクトサミンの反復単位で構成される重合体である。[Lester M. Morrison, M. D. and O. Arne Schjeide, Ph.D., Coronary Heart Disease and the Mucopolysaccharides (Glycosaminoglycans) 12 (1974); Philip C. Champe and Richard A. Harvey, Lippincott's Illustrated Reviews: Biochemistry, 148-50 (2nd ed. 1994)]。コンドロイチン硫酸は、グルクロン酸および硫酸化ガラクトサミンのこれらの反復単位の、少なくとも2つ、潜在的には多くを持たなければならないことを当業者は理解している。
【0032】
図1はコンドロイチン硫酸などの、GAGの作製のための生合成経路の詳細な説明を示す。さらに、本発明はコンドロイチン硫酸の断片などの、GAGの断片を含むことができる。本発明の時点で「グリコサミノグリカンの断片」は、グリコサミノグリカンの2つ未満の反復単位を構成する多糖の群であることを当業者は理解している。ゆえに、これらの物質の断片は、各重合体の反復単位の2つ未満を構成する多糖の群で構成されることが理解される。
【0033】
例えば、コンドロイチン硫酸の断片は、コンドロイチン硫酸の反復単位を含んだ、しかし上記の2つの反復単位未満の群で存在する、多糖で構成される分子であることを当業者は理解している。したがって、グルクロン酸および硫酸化ガラクトサミンで構成される分子は、コンドロイチン硫酸の断片を構成しうる。実際に、コンドロイチン硫酸の断片を構成しうる8つの異なる二糖構造が存在する。[Timothy. E. Hardingham and Amanda J. Fosang, Proteoglycans: Many Forms and Many Functions, FASEB J., 6:861-862 (1992)]。
【0034】
他の天然に存在するグリコサミノグリカン、例えば、ヒアルロン酸を本発明において使用することができる。同様に、グリコサミノグリカンの断片を利用することもできる。当業者は「コンドロイチンの断片」、「コンドロイチン硫酸の断片」、「コンドロイチン塩の断片」、「グリコサミノグリカンの断片」および「コンドロイチン硫酸断片」という用語を理解しており、それらを、グリコサミノグリカンの2つ未満の反復単位を構成する糖(またはその塩)の群を意味するものとさらに理解している。
【0035】
コンドロイチン硫酸の断片が、例えば、コンドロイチン硫酸それ自体と同じ有用性を持ちうるものと当業者は予期するであろう。コンドロイチン硫酸は、体内でさらに小さな単位に分解され、その上、軟骨および他の結合組織の形成時に再構築される。それゆえ、身体はコンドロイチン硫酸の断片を、コンドロイチン硫酸それ自体を利用するのと同じように利用するものと理解される。同じことが、「コンドロイチンの断片」、「コンドロイチン塩の断片」および「グリコサミノグリカンの断片」についてもいえる。コンドロイチン、コンドロイチン塩および他のグリコサミノグリカンはそれぞれ、摂取されれば、身体により分解され、軟骨および他の結合組織の形成時に再構築される。それゆえ、身体はコンドロイチンの断片を、コンドロイチンそれ自体を利用するのと同じように利用し、コンドロイチン塩の断片を、コンドロイチン塩を利用するのと同じように利用し、およびグリコサミノグリカンの断片を、グリコサミノグリカンを利用するのと同じように利用する。
【0036】
さらに、GAGという用語は、上記のGAGとは実質的に異ならない任意の組成の物質に拡大できるものと意図される。本発明の範囲内であるこのようなGAG様化合物の例は、ペントサンポリ硫酸(PPS)ならびにカルシウム誘導体化PPSおよびPPSナトリウムなどのその塩である。したがって、本発明の組成物において使用できる好ましいGAG様化合物はPPSである。
【0037】
PPSは、(1-4)結合したβ-D-キシラノ-ピラノースの反復単位からなるブナヘミセルロースから抽出される化合物の硫酸化形態である半合成ポリ硫酸化キシランである。さらに詳細には、PPSは、これらのヘミセルロース化合物を一連の化学反応を介して木材から抽出し、次いで、多数の硫酸基を精製多糖鎖に付加することにより生成される。このプロセスにより、多数の負に荷電した硫酸基を保有する低分子量の直線状多糖鎖が得られる。PPSは、GAGの過剰硫酸化形態とみなされる半合成ヘパリノイドである。
【0038】
上記の活性を示すいくつかの形態のPPSが存在する。PPSナトリウムおよびカルシウム誘導体化PPS (CAPPSと呼ばれる)はどちらもPPSの機能を達成するために使用することができる。これらの形態のPPSはそれぞれGAG様活性を示し、以下GAG様化合物といわれる。
【0039】
ペントサンの作用機構を以下のように要約することができる。
【0040】
1. 炎症組織における微小循環の安定化および改善による、ならびに抗補体作用(補体カスケードと呼ばれる炎症の体液性メディエータの放出を低減する)による抗炎症活性。
2. 炎症に寄与する白血球である顆粒球の走化性の阻害。
3. プロテオグリカン合成に対する刺激作用。
4. 滑膜線維芽細胞によるヒアルロン酸合成に対する刺激作用。
5. NSAIDの濃度よりもはるかに低い濃度での、ヒト顆粒球エラスターゼ(非競合的阻害)、ヒアルロニダーゼ(競合的阻害)、コンドロイチン-4-スルファターゼおよびN-アセチル-グルコサミニダーゼを含む異化酵素の強力な阻害。
【0041】
ポリ硫酸化グリコサミノグリカンなどの、他の合成または半合成グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカン様化合物を本発明において使用することができる。
【0042】
カワラケツメイ(Cassia)属の植物において見出され、最近になって認められた有機化合物ジアセレインには、インターロイキン-1βの阻害による抗炎症作用があり、その結果として、関節軟骨におけるコラゲナーゼの生成が低下する。ジアセレインは滑膜線維芽細胞のフィブリン溶解活性も低下させる。ジアセレインは同様に、走化性(白血球の誘引)およびスーパーオキシドアニオン(これは「毒性酸素種」または「遊離ラジカル」の1つである)の生成を用量依存的に阻害する。これらの有害な化合物は体内で自発的に、特に破壊的炎症の間に生じる。ジアセレインは鎮痛活性および解熱活性を有する。ジアセレインはコンドロイチン-4-硫酸の分解を低減し、コンドロイチン-4-硫酸とコンドロイチン-6-硫酸との比の増大をもたらす。(この比は変性軟骨において病的に減少する。)ジアセレインはプロスタグランジン合成を穏やかに増大し、これにより胃粘膜に対して保護的に作用することができる。
【0043】
S-アデノシルメチオニン(SAMe)は、身体全体に存在する、かつ含硫基移動(transsulfation)反応などの多数の生物学的反応に関わる重要な内因性化合物である。この役割で、SAMeは、タンパク質およびプロテオグリカンを含む多くの結合組織構造成分の合成において重要な反応物である。したがって、SAMeは、他の同化剤の作用を増強しうる重大な同化作用を有する。SAMeは同様に、その抗酸化作用による抗炎症作用を有する。
【0044】
SAMeは体内でアデノシン三リン酸(「ATP」)およびメチオニンから合成される化合物である(図2)。SAMeは中枢神経系を含む、多くの組織に存在する。SAMeの主なCNS機能は、神経伝達物質およびリン脂質を含む、種々の重要な化合物を合成する反応においてメチル基を供与することである。例えば、SAMeは、原形質膜の脂質内層の一部を形成するホスファチジルコリンへのホスファチジルエタノールアミンの変換を容易にする。その際に、SAMeは膜流動性を増大し、受容体/リガンド結合の有効性を増強する。[Champe and Harvey, Biochemistry, 1994; Stramentinoli, G., 「Pharmacologic Aspects of S-Adenosylmethionine」, American J. Med., 83(5A):35 (1987); Baldessarini, F., 「Neuropharmacology of S-Adenosyl Methionine」, American J. Med., 83(5A):95 (1987); Carney, M., 「Neuropharmacology of S-Adenosyl Methionine」, Clin. Neuropharmacol, 2(3):235 (1986); Janicak, P., 「S-Adenosylmethionine in Depression」, Alabama J. Med. Sci. 25(3):306 (1988)]。これらの機能は、ベタイン(トリメチルグリシン)、5-メチルテトラヒドロ葉酸、葉酸およびジメチルグリシンなどの他のメチル供与体にも関係しうる。[Champe and Harvey, Biochemistry, 1994]。
【0045】
スーパーオキシドジスムターゼは、動物および植物の組織において天然に存在する酵素であり、最近では、炎症治療の薬剤として研究されている。スーパーオキシドジスムターゼは、破壊的炎症プロセスの間に細胞内腔中の毒性酸素ラジカルを捕らえることによって作用する。スーパーオキシドジスムターゼはプロスタグランジン生合成を阻害しないが、破壊的炎症から生じるプロスタグランジンの過剰生成を止める。その作用の中には浮腫形成の阻害、ならびに炎症の急性徴候およびアジュバント誘導関節炎における2次関節変化(硬直および石灰化)の阻害がある。スーパーオキシドジスムターゼは、鎮痛作用を持っておらず、NSAIDのように、最終的には関節軟骨のさらなる損傷につながる罹患関節の酷使に寄与しない。同様に、スーパーオキシドジスムターゼは心血管系、中枢神経系または内分泌系に有害な作用を及ぼさない。図3はSODの機能の略図を示す。
【0046】
L-エルゴチオネインは、植物および動物において自然発生の、しかしヒト身体において合成されない、すなわち食物源のみから供給される細胞内抗酸化物質である。L-エルゴチオネインの抗酸化特性は、反応性酸素種(遊離ラジカル)を除去する能力、種々の金属カチオンをキレート化する能力、グルタチオンペルオキシダーゼ(SeGPx)およびマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn SOD)などの抗酸化酵素を活性化する能力、NADPH-シトクロームCレダクターゼなどのスーパーオキシド生成酵素を阻害する能力、ならびにヘモグロビンおよびミオグロビンなどの種々のヘムタンパク質の酸化に影響を及ぼす能力に関連するものと思われる。全ての身体組織はこれらの2つの酸素担体分子に依存しているので、この特徴は極めて有益である。[Brummel, M. C., 「In Search of a Physiological Function for L-ergothioneine」, Med. Hypotheses, 18(4):351-70 (December 1985); Brummel, M. C, 「In Search of a Physiological Function for L-ergothioneine,--II」, Med. Hypotheses, 30(1):39-48 (September 1989); Han, J. S., 「Effects of Various Chemical Compounds on Spontaneous and Hydrogen Peroxide-Induced Reversion in Strain TA104 of Salmonella typhimurium」, Mutat. Res., 266(2):77-84 (April 1992); Arduini, A., 「Possible Mechanism of Inhibition of Nitrite-Induced Oxidation of Oxyhemoglobin by Ergothioneine and Uric Acid」, Arch. Biochem. Biophys., 294(2):398-402 (May 1992)]。
【0047】
コラーゲンII型も同化作用と異化作用との正常なバランスを維持するのに役立つ有益な作用を有する。具体的には、免疫系が個体自身の結合組織を「外来侵入物」であるかのように攻撃かつ異化する、自己免疫プロセスから結合組織病が生じることもある。コラーゲンII型の経口投与は免疫系を脱感作し、それによってさらなる攻撃を阻止し、これらの個体での免疫応答を正常化することができる。これにより結合組織における異化プロセスが減少し、同化作用が最大になる。コラーゲンII型の摂取により、この分子は腸管関連リンパ系組織(GALT、別名パイエル板)中の免疫細胞に提示される。コラーゲン分子とGALT内の特定の細胞との相互作用により、サプレッサーT細胞と呼ばれる移動性免疫細胞が活性化される。これらの細胞が、今度は、個体自身の(結合組織における)コラーゲンII型に対する破壊的免疫反応を抑える。
【0048】
テトラサイクリンファミリーの化合物は、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン類似体および「テトラサイクリン様」化合物を含み、その抗菌作用のゆえに治療に用いられている。現在の研究は、わずかな抗菌作用しか持たないが、抗同化作用を有する「テトラサイクリン様」化合物に集中している。具体的には「テトラサイクリン様」化合物は、コラーゲンおよびプロテオグリカンを含む細胞外マトリックス成分を分解する組織メタロプロテイナーゼを阻害し、しかも十分な抗菌作用を持たない多環式化合物である。これらの化合物、およびテトラサイクリンファミリーの他の化合物のこの機能は、これらの化合物がカルシウムイオンおよび亜鉛イオンをキレート化する能力に関連している可能性がある。例えば、ドキシサイクリンは、関節軟骨におけるコラゲナーゼ活性を阻害することが明らかにされている。
【0049】
アボカド(ワニナシ属、特にP.アメリカーナ(P. americana))およびダイズ(Glycine max)の、不けん化物と呼ばれる、ある種の脂質抽出物も結合組織に対するその有益な作用について研究されている。これらの不けん化化合物は、けん化を起こさない、すなわち、アルカリと反応してセッケンを形成しない植物脂質の一部である。そのような多くの化合物が存在しており、特定のアボカド抽出物は極めて多数の化合物を含有しうる。例としては脂溶性ビタミン(A、D、EおよびK)、植物エストロゲンなどのステロイド、ステロール(バイオフラボノイド)ならびに揮発性精油(メントール、ショウノウ、リコペン、ジベレリン酸、リモネン、シンナムアルデヒド、カロテノイド、および補酵素Qとしても知られるユビキノンなどのテルペン)が挙げられる[Mathews, C. K. & van Holde, K. E. Biochemistry, 2nd ed., The Benjamin/Cummings Pub. Co., Inc., 1996, p. 691]。
【0050】
アボカド/ダイズ不けん化物(ASU)は、Piascledineという商品名で欧州において用いられており、変形性関節症およびその他の形態の関節炎[Thiers, M. H., 「Unsaponifiable constituents of avocado and soya oils. Treatment of certain forms of arthralgia」, J. Med. Lyon 53(222): 195-8 (February 1972) (article in French)]ならびに軟組織炎症状態[Trevoux, R., 「Unsaponifiable fractions of the avocado and soybean in gynecology」, J. Bynecol. Obstet. Biol. Reprod. 6(1):99-105 (January 1977) (article in French); Lamaud, M. E., et al., 「Biochemical modifications of connective tissue induced by the non-saponifiables of avocado and soybean oils administered percutaneously in the‘hairless’rat」, Pathol. Biol. 26(5):269-74 (May-June 1978) (article in French)]を処置するために用いられている。この化合物の作用機構は、軟骨細胞のTGF (形質転換増殖因子)β1、TGFβ2およびプラスミノゲン活性化因子阻害剤1 (「PAI-1」)発現を刺激することである。ASUはPAI-1を増加させることにより、メタロプロテアーゼの活性化を引き起こすカスケードを遮断する[Boumediene K., et al., 「Avocado/soya unsaponifiables enhance the expression of transforming growth factor beta 1 and beta 2 in cultured articular chondrocytes」, Arthritis Rheum. 42(1): 148-56 (January 1999)]。ASU混合物は軟骨細胞によるストロメライシン、IL-6、インターロイキン-8 (IL-8)およびプロスタグランジンE2の自発的生成も減らす。さらに、ASUはIL-1の作用を低減し、それによって軟骨細胞および滑膜細胞によるコラゲナーゼの産生を減らす。[Henrotin, Y. E., et al., 「Effects of three avocado/soybean unsaponifiable mixtures on metalloproteinases, cytokines and prostaglandin E2 production by human articular chondrocytes」, Clin. Rheumatol. 17(1): 31-9 (1998)]。
【0051】
TGFβ1および2は、相同なポリペプチドサイトカインのファミリーのメンバーである。これらの局所的に作用するホルモンは、傍分泌作用または自己分泌作用を及ぼすことが可能であり、リンパ球、内皮細胞およびマクロファージを含む、さまざまな細胞型により作製される。TGFβは、種々の組織において多様な作用を及ぼし、一般的に、上皮細胞代謝を阻害する。しかしながら、結合組織では、TGFβは、線維芽細胞および間葉由来の他の細胞の間接的な分裂促進因子であることが明らかにされている。TGFβは同様に、細胞のフィブロネクチンおよびコラーゲン産生を刺激し、プロテアーゼ活性を低減し、それによってマトリックス産生の純増加をもたらしうる。[Cotran, R. F., Kumar, V. and Robbins, S. L., Eds., Pathologic Basis of Disease, 5th ed., Saunders, 1994, pp. 40-42]。
【0052】
ストロメライシンはプロテオグリカン、ラミニン、フィブロネクチンおよびコラーゲンを含む、さまざまな細胞外マトリックス成分に作用するプロテイナーゼのサブタイプである。ストロメライシンはインターロイキン-1および腫瘍壊死因子αなどのサイトカインの影響を受けて、いくつかある細胞型の中で特に、線維芽細胞、滑膜細胞およびマクロファージによって産生される。多くの炎症メディエータの中にはインターロイキンおよびプロスタグランジンがある。これらの化合物の全てのレベルが低下すると、炎症の特徴である疼痛および膨潤の減少が起こる。
【0053】
ASU混合物に存在する脂溶性ビタミンは成長に必要であり、TGF-βの同化作用を増大する。脂溶性ビタミンはTGFβを刺激し、先に説明したように、分解性酵素を減らしもするので、ASU混合物は同化作用も抗異化作用もともに有するといえる。ASUの作用のいくつかは本発明における他の化合物の作用と重複するが、ASUはそれらの他の化合物と組み合わせて用いた場合、その化合物群に独特の性質を与え、非常に有益な作用をもたらす。例えば、グルコサミンおよびASUはともに結合組織細胞において同化プロセスを刺激するが、これらの化合物は異なる細胞作用機構を有する。グルコサミンは、一つには、プロテインキナーゼCを通じて作用するが、ASUの作用は、上記のように、形質転換増殖因子によるものである。同様に、コンドロイチンおよびASUはIL-1の阻害作用を有する。しかしながら、ASUはプラスミンカスケードを阻害するのに対し、コンドロイチンは補体カスケードの活性化を低減する。変形性関節症は、細胞レベルでの多くのサイトカインの相互作用を伴う複雑な疾患である。本発明の種々の化合物は種々のサイトカインに作用するので、適切な組み合わせで用いた場合、それらは相乗効果を持つであろう。
【0054】
ASUは、プラセボ比較二重盲検臨床試験で、変形性関節症の症状の軽減において有効であることが明らかにされている。[Maheu, E., et al., 「Symptomatic efficacy of avocado/soybean unsaponifiables in the treatment of osteoarthritis」, Arthritis Rheum. 41(1): 81-91 (January 1998); Blotman, F., et al., 「Efficacy and safety of avocado/soybean unsaponifiables in the treatment of symptomatic osteoarthritis」, Rev. Rheum. Engl. Ed. 64(12): 825-34 (December 1997)]。これらの試験では、介入群における副作用は、プラセボ群において見られた副作用と同様であったことから、ASUは安全かつ耐容性良好な物質であることが示唆されている。本発明において用いられるASUは、任意のまたは全ての不けん化脂質および/またはその組み合わせを含んでもよい。
【0055】
ASUの成分の例としてはリモネン、βカロテン、フィロキノンおよびジベレリン酸が挙げられるが、これらに限定されることはない。先に説明したように、ASUは、脂溶性ビタミン、ステロイド、ステロールおよび揮発性精油、またはその任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、いくつかの化合物群のいずれかを含むことができる。例えば、アボカド/ダイズ不けん化物(ASU)は、カンペステロール、スチグマステロール、ジヒドロ-ブラシカステロールおよびβ-シトステロールなどの、1種または複数種の植物ステロールを含むことができる。
【0056】
さらに、本発明は、1つのアボカド/ダイズ抽出物またはこのような抽出物の混合物もしくは組み合わせ(2種以上のASU)を含有する組成物を含む。そのような組み合わせは多く存在しており、その全てが本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0057】
本発明のさまざまな配合物は、種々の形態または量で1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物を含むことができる。例えば、いくつかの態様において、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物は、約30%のステロールに標準化されるように組成物に含まれることができる。いくつかの態様において、アボカド/ダイズ不けん化物は、ダイズ不けん化物とアボカド不けん化物との比約2:1で組成物に含まれることができる。いくつかの態様において、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物は、室温で固体でありかつヒトの体温で液体でありうる。いくつかの態様において、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物を、1種または複数種の賦形剤または担体と組み合わせて、粉末を作製することができる。
【0058】
本発明の化合物には優れた安全性プロファイルなど、結合組織病に対する既存の治療法に比べていくつかの利点がある。これは、一つには、これらの化合物が体内におよびさまざまな食物中に普通に存在しているという事実に関連する。本化合物に共通する別の特徴は、作用の開始が遅いという傾向である。NSAIDなどの医薬は、疾患の症状を急に変化させる傾向がある。本発明の内因性化合物は、体内の構造および機能を正常にすることでゆっくりと効く。この作用は有益であるが、このことは、一般的に症状がすぐに緩和されないことを意味する。このため、鎮痛薬が本発明の組成物の任意の成分として含まれる。鎮痛薬は、コルチコステロイド薬および多くのNSAIDで明らかにされているように、治療用量で副作用が最小限であること、および同様に結合組織合成に対する負の作用が最小限であることが明らかにされている鎮痛性化合物の群から選択されるべきである。それゆえ、本発明の組成物に含むことができる鎮痛薬は、抗炎症作用がない非ステロイド性鎮痛薬である。言い換えれば、鎮痛薬は、NSAIDではない非ステロイド薬である。本発明の鎮痛薬の例としては、アセトアミノフェンおよびトラマドールが挙げられる。以下で論じられる場合を除き、本発明の好ましい鎮痛薬はアセトアミノフェンである。
【0059】
アセトアミノフェンは、中枢神経系における酵素シクロオキシゲナーゼの可逆阻害によって主に作用するアナリン誘導体鎮痛・解熱化合物である。アセトアミノフェンは同様に、体中の神経終末における抹消疼痛インパルスの発生を遮断する。アセトアミノフェンは症候性疼痛の緩和のために広く用いられている。疼痛の緩和は非常に明白な人道的理由で有益である。また、脳の感情中枢と免疫系との間には重要な関係があるので、疼痛の緩和、および結果として生じる気分の高まりには、炎症、および免疫系により調節される多くの他のプロセスに対して有益な作用がある。アセトアミノフェンは、シクロオキシゲナーゼ活性を遮断するが、アセトアミノフェンにはほとんど抗炎症活性がない。それゆえ、アセトアミノフェンは、NSAIDおよびコルチコステロイドと同様に、結合組織の同化作用を阻害せず、治療用量で副作用が最小であるため、本発明において理想的な鎮痛剤である。本発明において安全な鎮痛薬を含ませる別の利点は、患者の服薬遵守が高い、すなわち、疾患を緩和する作用が生じるのに十分長い間、患者が調製物を服用し続ける可能性を高めることである。単離された軟骨保護剤の試験では、薬剤が効いていないと患者が認知することで、しばしば治療初期の数週間での脱落率が高い。鎮痛薬の添加により、患者は治療を続けたいと思うことが多くなると考えられる。
【0060】
ネコはアセトアミノフェンを効果的に代謝しない(肝臓におけるグルクロン酸との抱合が不十分であり、その後、グルタチオンの枯渇が起こる)ので、アセトアミノフェンに感受性である。[Goodman, A. and Goodman, L., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 7th ed., MacMillan Publishing Co., 1985, pp.692-95; Ahrens, F., Pharmacology, Williams & Wilkins, 1996, pp. 174-75]。したがって、アセトアミノフェンはネコでの使用に推奨されない。
【0061】
メチルスルホニルメタン(MSMまたはジメチルスルホン)は、スルホンとして知られる化学物質群に属する有機硫黄化合物である。メチルスルホニルメタンはいくつかの原始植物において自然に発生し、多くの食品飲料において少量で存在する。MSMは抗炎症作用を有することが研究者らによって示唆されている。
【0062】
本発明は、有益な同化作用(治癒)を最大とし、かつ何らかの潜在的な負の作用を最小とする同化剤、抗異化剤および抗酸化剤の新規の組み合わせを含む。その際に、本発明は、ヒトおよび動物における結合組織の保護、処置および修復のための、これらの薬剤および抗酸化剤の新規の組み合わせを提供する。
【0063】
これらの化合物は動物およびヒトの結合組織に対して種々の有益な作用を及ぼし、これらは種々の機構を介して機能するので、互いと組み合わされた状態で有効に働く。各化合物はいくつかの機能を有するが、これらは大まかに、(1) 体内の成長プロセスを促進する、グルコサミン、SAMe、AAおよびASUを含む、同化剤、(2) 破壊プロセスまたは異化プロセスを阻害する、コンドロイチン硫酸、ペントサン硫酸、コラーゲンII型、テトラサイクリン、ジアセリンおよびASUなどの、抗異化剤、ならびに(3) 毒性酸素種(遊離ラジカル)を除去することによって組織損傷を阻止する、SODおよびL-エルゴチオネインなどの、抗酸化物質として分類することができる。当然ながら、重複した機能によって2つ以上のグループに分けられる、ASUなどの化合物もある。本発明は、これらの化合物の組み合わせが有効に働くことを立証する。さらに、鎮痛薬を任意で、上記の個々の化合物のいずれかにまたはそれらの組み合わせに加えて、疼痛の緩和をもたらしてもよい。アセトアミノフェンは強力な抗炎症作用を持っておらず、それゆえ、結合組織の治癒を妨げないので、一般に好まれる鎮痛薬である。また、治療用量でさえ胃腸潰瘍または不十分な腎臓灌流を引き起こす可能性のあるNSAIDとは異なり、アセトアミノフェンは治療用量で副作用が最小である。したがって、本発明は、以下の薬剤: AA、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、ペントサン、ジアセリン、S-アデノシルメチオニン、スーパーオキシドジスムターゼ、L-エルゴチオネイン、コラーゲンII型、テトラサイクリン様化合物、1種または複数種のASUおよび任意で、1種または複数種の鎮痛薬、例えばアセトアミノフェンの、2つまたはそれ以上のさまざまな組み合わせからなる。例としては2つの同化剤(例えば、AAおよびグルコサミン); 同化剤および抗異化剤(例えば、AAおよびペントサン); 抗異化剤および抗酸化物質(例えば、テトラサイクリンおよびスーパーオキシドジスムターゼ)のような組み合わせ; または3つ以上の薬剤(例えば、グルコサミン、SAMeおよびAA)もしくはSAMe、ASU、アセトアミノフェンおよびジアセリンの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。ASU抽出物に存在しうる特異的な化合物の例としては、リモネン、βカロテン、ユビキノンおよびリン酸ウンデカプレノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0064】
以下の表は、上記で論じた化合物の対の可能な組み合わせを示す。文字「X」は、本発明の新規の組成物を形成する化合物の新規の組み合わせを示す。本発明は同様に、表に示す組み合わせに、以下の化合物の3つまたはそれ以上の薬剤の組み合わせを含む。
グルコサミン
コンドロイチン
SAMe
ペントサン
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
L-エルゴチオネイン
コラーゲンII型
ジアセリン
アラキドン酸
テトラサイクリン様化合物
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物
鎮痛薬、例えば、アセトアミノフェン
メチルスルファニルメタン(MSM)
【0065】
上で説明したように、望ましい組み合わせの例をXで示す。例えば、一番目の横列中の最初のXは、グルコサミンおよびL-エルゴチオネインまたはグルコサミンおよびジアセリンの組み合わせを意味する。本発明の組成物はさらに、任意の所与の横列または縦列中のXで示した組み合わせの任意の集合または追加を含む。例えば、一番目の横列に示される組成物は、グルコサミン + L-エルゴチオネイン + ジアセリン、またはグルコサミン + ジアセリン + テトラサイクリン様化合物、またはグルコサミン + L-エルゴチオネイン + ジアセリン + AA + テトラサイクリン様化合物などの組み合わせを含む。「コラーゲンII型」と表した縦列に示す組成物の例としてはコラーゲンII型 + SAMe + ペントサン、またはコラーゲンII型 + SAMe + ペントサン + スーパーオキシドジスムターゼ + L-エルゴチオネインなどの組み合わせが挙げられよう。「ASU」と表した縦列に示す組成物の例としては1種もしくは複数種のASU + グルコサミン、または1種もしくは複数種のASU + SAMe + ペントサン、または1種もしくは複数種のASU + コラーゲンII型 + SAMe + ペントサン + スーパーオキシドジスムターゼ + L-エルゴチオネインなどの組み合わせが挙げられよう。同様に、この表は、鎮痛薬、例えば、アセトアミノフェンを、単独または任意の組み合わせのいずれかで、表に列挙したその他任意の化合物と組み合わせられることを示す。
【0066】
上記の薬剤のある種の組み合わせを詳しく調べ、いくつかの組み合わせでの新規の応答を立証した。コンドロイチン硫酸、グルコサミン、SAMe、アラキドン酸、コラーゲン、ペントサンおよびスーパーオキシドジスムターゼのうちのある種の組み合わせの効果を、さまざまな実験のなかで成牛軟骨細胞の培養物において試験した(実施例2参照)。この特定の試験において、ある種の組み合わせには阻害作用(代謝低下)があった。刺激的かつ阻害的な新規の相互作用は、種々の疾患状態の下で有益でありうる。例えば、代謝亢進状態は、いくつかの疾患の発病の一部である。このような疾患では、阻害(代謝低下)応答は個体にとって有益であろう。さまざまな実験モデルの下で研究した薬剤での濃度範囲の効果を調べるために、さらなる試験が計画される。生合成活性の増加も減少もともに新規の相互作用であり、選択の状況下の生物にとって有益でありうることに留意されたい。例えば、現在、変形性関節症には特に発病の初期段階において、代謝亢進的要素があると考えている研究者は多い。処置を、軟骨マトリックス生成を刺激する薬剤、または阻害性であり、それゆえ、軟骨環境をいっそう代謝低下状態にし、これが軟骨組織に安定化作用を及ぼしうる薬剤に集中するべきかどうかに関して、研究者らは意見を異にしている。
【0067】
本発明の組成物は、筋肉内、静脈内、経口、皮下、直腸、局所、経皮、鼻腔内、および関節内、舌下、腹腔内を含むがこれらに限定されない、任意の経路によって投与することができる。
【0068】
また、吸収を助けるために、本発明の化合物のいずれかの塩のいずれか、例えば、グルコサミンHCl、グルコサミン硫酸、グルコサミンリン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸カルシウム、コンドロイチン硫酸カリウムなどを使用してもよい。さらに、本発明の組成物を、長期放出剤形、丸剤、錠剤(咀しゃく錠など)、カプセル(硬ゼラチンカプセル、液体入りカプセル、ソフトゲルカプセルなど)、クリーム、ペースト、粉末(数杯の粉末など)、液体、エアロゾル、長期放出形態、注射可能物質などを含む全ての一般的な剤形で与えてもよい。本発明の組成物を、小袋(sachet)のような剤形でおよび処置(treat)において与えてもよい。
【0069】
本発明の組成物の投薬量範囲は、この組成物を投与するヒトまたは動物の必要に応じて変化するであろう。投薬の頻度も、この組成物を投与するヒトまたは動物の必要に応じて変化しうる。
【0070】
例えば、ASU、コンドロイチン硫酸(CS)、およびグルコサミン(Gluc)の組み合わせをイヌまたはウマなどの動物に投与することができる。この組成物を2〜4週または4〜6週などの、初期の間に特定の用量(またはさまざまな用量)で毎日(または一日おきに)動物に投与することができる。個別の用量計画は標的の対象により変わることがある。初期の間の投薬計画は、動物の炎症組織を浸す体液の中で活性成分が安定な状態を達成するようにデザインすることができる。例えば、初期の期間に、粉末状の組成物の1日投薬量を以下の量でウマに投与することができる: 600ポンド未満のウマには1杯を投与することができ、600〜1200ポンドのウマには2杯を投与することができ、および1200ポンドを超えるウマには3杯を投与することができる。動物において組成物に対する応答が観察される前に、初期期間の一部または全部が経過しうる。このため、各種の配合物は比較的遅効性であると考えることができる。対象の中には投与の初期の間にすぐに応答しうるものもいる。臨床応答が観察されたら、投薬の量および頻度を、快適な状態に対象を保つよう意図したレベルに減らすことができる。例えば、ウマのための長期投与は600ポンドまでのウマ、600〜1200ポンドのウマおよび1200ポンドを超えるウマに対し、それぞれ、毎日1/2杯、1杯および1〜2杯でありうる。激しい運度、または動物での結合組織の炎症に影響を与えうる事象の前およびその間に、特別な支援のため、投薬の量および/または頻度を、例えば、初期の投与レベルに増やすことができる。また、動物の快適度が低下しているようなら、レベルおよび頻度を再び低減する前に、投薬量および頻度を、例えば、2〜4週などのさらなる期間、初期の投与レベルに増やすことができる。特定の投薬レベルで着実な改善が認められたら、投与の頻度および/または量を、例えば、半分の投薬量および半分の頻度にさらに減らすことができる。対象の投薬量および頻度は、必要に応じて結合組織に特別な支援を与えるために、必要に応じてどの時点でも、例えば、週末にまたは対象がいっそう活動的になるその他の時点で増やすことができる。
【0071】
ASU、CSおよびGluの組み合わせを健常な対象に対する長期処置に用いて、炎症事例を予防および/または調節するのに役立てることもできる。
【0072】
本発明により主張される組成物のさまざまな成分の投薬量範囲は以下のとおりである。
【0073】
中間にヒトを含む、小動物から大動物の体重の薬効範囲を範囲に含むように用量をデザインする。同一のまたは類似の投薬量を周期的に、例えば、毎日または一日おきに小動物、大動物およびヒトに投与することができる。
【0074】
以下の例は例示であり、本発明を決して限定しない。具体的には、本発明者らが利用できる最良のデータによって決められた、生理的濃度範囲を用いた。
【0075】
実施例1
本発明者らの予備研究では、Hulth法の改変により、New Zealand白ウサギの後膝関節に外科的不安定性を引き起こした。手術後、動物を毎日1時間運動させた。実験用飼料配合物を、その軟骨安定化作用について評価した。標準的なHarland (Teklad)ウサギ飼料(対照)、40重量%のAA (Arasco)を含む2%の真菌油(fungal oil)をも含む標準飼料、ならびに、アラキドン酸およびグルコサミン/コンドロイチンをも含む標準飼料を調べた。16週で、全てのウサギの大腿骨内側顆を取り出し、軟骨変性を、サフラニン-O染色スライドを用い改良型Mankin組織学的・組織化学的等級付けシステムで定量的に評価した。外科的不安定性のある全関節由来の軟骨は、さまざまな程度の巨視的な変性病変を示した。本発明者らの予備結果から、アラキドン酸のグルコサミン/コンドロイチン硫酸への添加は、軟骨において新規の相互作用をもたらす可能性があることが示唆された。この新規の相互作用は軟骨調節作用を有する可能性がある。
【0076】
実施例2
手順:
関節軟骨を、ヒトまたは動物の関節から無菌的に切除し、大ペトリ皿中の少量のDMEM/F-12またはF-12に入れた。この組織を寸法1〜2 mmのさいの目に切り、20 mLのDMEMまたはF-12 + 400 μ/mLのコラゲナーゼを含有する小さな培養フラスコに移した。このフラスコを振とう機に置き、一晩インキュベートした。
【0077】
細胞の放出を増大させるため、細胞消化物を繰り返し吸引した。次いで細胞消化物を50 mL滅菌遠心管の中に入れ、Beckman中10分間1000 RPMで遠心分離した。培地をピペットで捨て、1% FCSを含有する新鮮なDMEM/F-12を添加した。ペレットのサイズに応じて、約2040 mLの培地を添加した。細胞数を血球計によって測定し、消化物を細胞100,000個/0.2 mLの濃度に近づけた。
【0078】
GAG合成:
GAG合成を行うため、8チャンネルピペッタを用いて96ウェルプレートの各ウェルの中に0.2 mLを分注し、細胞を24時間付着させた。培地を除去し、新鮮な1% FCS培地0.3 mLを2〜3日間添加した。実験日に、培地を除去し、35-硫酸同位体を含有する実験溶液を添加した。インキュベーションを4時間続けた。終了: インキュベーション時間の終わりに、標識培地を除去し、細胞層を冷DMEMまたはF-12 0.3 mLで繰り返し(約5回)すすぎ、細胞層を計数のために凍結した。
【0079】
96ウェルプレートの計数:
両合成実験の細胞層を50度で加熱した後に、1 N NaOH 100 μlを2時間添加した。シンチラント(scintillant) 200 μlを添加し、プレートを計数器に入れた。データをCPM/細胞100,000個として表した。
ChSO4 = コンドロイチン
AA = アラキドン酸(Arachadonic Acid)
SAMe = S-アデノシルメチオニン
Paleos = SOD
Collagen = コラーゲン
Pentos = ペントサン
H = 高濃度
L = 低濃度
【0080】
このモデルでは、試験した濃度で、代表的な組み合わせにはこの特定の試験において阻害(代謝低下)作用があった。この代謝低下作用はさまざまな疾患状態の下で有益である可能性があり、実際に、刺激的かつ阻害的な新規の相互作用はさまざまな疾患状態の下で有益である可能性がある。例えば、代謝亢進状態は、いくつかの疾患の発病の一部である。このような疾患では、阻害(代謝低下)応答は個体にとって有益であろう。さまざまな実験モデルの下で研究した薬剤での濃度範囲の効果を調べるために、さらなる試験が計画される。生合成活性の増加も減少もともに新規の相互作用であり、選択の状況下の生物にとって有益でありうることに留意されたい。例えば、現在、変形性関節症には特に発病の初期段階において、代謝亢進的要素があると考えている研究者は多い。処置を、軟骨マトリックス生成を刺激する薬剤、または阻害性であり、それゆえ、軟骨環境をいっそう代謝低下状態にし、これが軟骨組織に安定化作用を及ぼしうる薬剤に集中するべきかどうかに関して、研究者らは意見を異にしている。
【0081】
実施例3
ある4歳児は若年性関節リウマチに罹っており、その免疫系は天然コラーゲンII型に対する抗体によって内因性の結合組織を不適切に標的化している。結果として起こる軟骨の炎症および分解は、滑膜関節における疼痛および機能不全を引き起こす。現処置の中には、免疫系を非選択的に抑制し、したがって身体を感染症になりやすくするコルチコステロイド、またはDNA合成、修復、および細胞複製を阻害し、したがって免疫系だけでなく腸粘膜および骨髄にも影響を与えるメトトレキセートがある。この小児に毎日コラーゲンII型2 mg、および毎日SOD 10 mgを与える。コラーゲンは不適切な免疫攻撃を低減し、SODは細胞に損傷を与える破壊的遊離ラジカルを不活化する。SODは細胞の損傷を阻止することにより、関節組織細胞の正常な機能を最大限にするのに役立つ。この組み合わせは治療用量で有害な副作用がなく、関節リウマチの既存療法に有益に付加されるものである。
【0082】
実施例4
ある6歳齢のサラブレッド競走馬は腕骨の好中球性炎症に罹っている。この状態では、関節組織への外傷が細胞を傷つけ、それゆえ、多数の好中球を滑膜腔に誘引するサイトカインの遊離を引き起こす。この応答は敗血症の場合に有益であるが、非敗血性の状態では好中球は動物にとって有益な役割を果たさない。実際に、好中球はスーパーオキシド分子を含む、さまざまな分解性化合物を生ずるので、それらが関節に存在すると炎症、組織損傷、および炎症増大の悪循環の一因となる。現在、この状態は、プロスタグランジン合成を抑制し、それゆえ多くの副作用を有する非ステロイド性抗炎症薬を用いて処置される。このウマにジアセリン100 mg、ペントサン200 mg、およびSAMe 1000 mgの混合物を与える。ジアセリンおよびペントサンはともに走化性(白血球の罹患領域への誘引)を阻害し、したがって、関節における好中球の数を低減する。さらに、ペントサンは滑液の合成を刺激し、したがって、関節の正常な機能を支持する。ジアセリンはスーパーオキシド生成を阻害する。スーパーオキシド生成は、好中球がその有害な作用を及ぼす機構の1つであるので、ジアセリンのこの作用は明らかに有益である。SAMeは、細胞膜の構造および機能を支持し、それゆえ、傷ついた関節組織細胞を修復するのに役立ち、したがって、有害な炎症を開始する事象を遮断する。この組み合わせは治療用量で有害な副作用を及ぼさず、既存療法に比べて大きな改善である。
【0083】
実施例5
ある47歳の女性は重篤な変形性膝関節症に罹っている。現在、彼女は症状を抑えるのに多量のNSAIDを必要としている。彼女の整形外科医はグルコサミン/コンドロイチン硫酸の服用を勧めているが、これらの化合物は動物組織から抽出されたものであり、この患者が厳格な菜食主義者であるため、彼女は服用するのを嫌がっている。その代わりに彼女は、ジアセリン25 mgおよびASU 250 mg、ならびにアセトアミノフェン500 mgを毎日服用している。ジアセリンは走化性を阻害し、それによって膝関節における炎症を軽減する。ASUはTGFβ1および2を増やし、損傷した関節組織の修復を刺激する。アセトアミノフェンは急速な鎮痛を引き起こし、軟骨代謝に悪影響を及ぼすことなく、かつ胃腸潰瘍のリスクなく患者の症状を軽減する。疼痛の軽減の結果として、この患者は、日課に15分の散歩を加えることを決めている。管理された運動は、彼女の心身の状態をさらに改善する。
【0084】
実施例6
ある5歳齢のJersey乳牛は、ライム病に起因する発熱および滑膜炎の発症後、重篤な変形性関節症と診断されている。この動物は所有者の家庭用牛乳供給源であり、所有者は、1) この動物を殺処分する、2) 非ステロイド性抗炎症薬を用いる、または3) ステロイドを用いるなどの、伝統的な解決法を推し進めるよりも、「天然」の化合物、すなわち、植物および動物体内に通常存在する化合物を用いて跛行を処置することを望んでいる。この動物をASU 900 mg、SAMe 600 mgおよびグルコサミン500 mgで毎日処置する。このアプローチはいくつかの理由で既存の選択肢に比べて改善している。これらの化合物は、安全域の広いことが証明された植物体および動物体の天然成分であるので、牛乳に分泌された代謝産物に対する懸念はあまりない。これらの化合物は経口で利用可能であり、かつ少量で活性があるので、食事中の動物に投与するのが容易である。この3つの化合物の併用効果は炎症および疼痛を軽減すること、正常な機能を支持すること、ならびに結合組織の治癒を刺激することである。
【0085】
各種のさらなる例ではCOX-2などの、炎症および疼痛のマーカーを阻害するかまたはそれ以外の方法で調節する際の各種組成物の効果を例証する。これらの例のいくつかにおいて、各種の配合物は炎症および疼痛のマーカーを低減するように、しかし副作用の可能性があるためそれらのマーカーを完全には取り除かないようにデザインされた。すなわち、以下の例において記述するいくつかの態様によって達成される1つの目標は、対照レベルくらいに、または対照レベルを少し上回るもしくは下回るまでに炎症および疼痛マーカーを低減することであった。
【0086】
以下の実施例のいくつかでは、特定の実験で用いるのに望ましい濃度を得るため、用いたASU (すなわち、ASU-NMX 1000(商標), Nutramax Laboratories Inc., Edgewood, MD USA)を100%エタノール(Sigma-Aldrich)に溶解し希釈した。研究のなかで用いた濃度は、ASU組成の最小の植物ステロール含量に基づいた。ウシ軟骨細胞(細胞5×105個/ウェル)を72時間(i) 対照培地のみ、または(ii) 濃度25、8.3、2.7、0.9および0.3 μg/mlのASUとともにインキュベートすることにより、特定の実験で用いるのに望ましいASU濃度をまず初めに決定した。細胞を24時間リポ多糖体(LPS, 20 ng/ml; Sigma-Aldrich)で活性化し、細胞上清を分泌PGE-2および亜硝酸塩濃度について分析した。0.3または0.9 μg/mlではPGE-2および亜硝酸塩レベルに対する有意な効果は認められなかった。2.7 μg/mlで、PGE-2および亜硝酸塩レベルのわずかな抑制が認められた。最も高い抑制レベルは8.3〜25 μg/mLであることが分かった。これらの実施例において用いたASU濃度は上記のデータに基づいて、ならびにASUに対する報告の臨床投薬量および既刊のインビトロデータに基づいて選択された。
【0087】
実施例7〜11では、以下の用語および定義を用いる。
【0088】
シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)は、酵素として機能するかつプロスタグランジン(PGE-2)と呼ばれるある種の化学伝達物質の生成を特異的に調節するタンパク質である。このPGE-2分子は、関節炎状態において認められる炎症の疼痛および腫脹を引き起こす。COX-2活性が遮断されると、炎症は軽減する。COX-2は炎症の部位でのみ活性である。
【0089】
プロスタグランジンE2 (PGE-2)は、炎症を含む幅広い身体機能に関与するホルモン様物質の群に属する化学伝達物質である。PGE-2は炎症の間に疼痛および腫脹を引き起こす。
【0090】
p38:
MAPキナーゼ(MAPK)は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ14としても知られている。MAPキナーゼp38はサイトカイン、ストレスおよびリポ多糖体(LPS)のような細菌産物に対する細胞応答を制御するシグナル伝達系に関与している。
【0091】
分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK):
MAPKセリン/スレオニンは、細胞外刺激に応答するかつ遺伝子発現、増殖、分化および機能を含めさまざまな細胞活動を調節する特異的なタンパク質キナーゼである。これは肉体的ストレスおよびサイトカインによって例示される刺激に応答するシグナル伝達経路などの、細胞シグナル伝達および情報交換に関与している。
【0092】
サイトカインはホルモンおよび神経伝達物質のような、細胞シグナル伝達および情報交換に関与する多様なタンパク質である。それらは先天性免疫応答と適応性免疫応答の両方の機能性にとって不可欠であり、種々の免疫性疾患、炎症性疾患および感染性疾患において主要な役割を果たす。
【0093】
腫瘍壊死因子α(TNF-α)は、腫瘍細胞の死(壊死)を誘導するサイトカインと呼ばれるタンパク質のスーパーファミリーに属し、幅広い炎症促進性活性を保有する。TNF-αは多機能性であり、その活性の阻害は、関節炎を含む炎症性疾患における炎症の軽減に有益である。
【0094】
インターロイキン-1β(IL-1β)は、軟骨細胞、マクロファージおよび線維芽細胞を含む、さまざまな細胞によって産生されるサイトカインファミリーに属するタンパク質である。これは炎症の主要な調節因子である。IL-1βは体温、ならびに炎症および先天性免疫に関与する他の化学的メディエータの産生を高める。
【0095】
誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)は、サイトカインおよび他の刺激因子への曝露後の一酸化窒素(NO)の生成を制御する可溶性酵素である。iNOSは炎症においておよび感染に対する防御において重要である。
【0096】
ケモカインは、種々の細胞によって産生されるタンパク質であり、異種細胞を炎症およびまたは損傷の部位に引き付ける能力、ならびに原位置でのこれらの細胞の局在化を補助する能力を持つ。ケモカインの2つの例はインターロイキン-8 (IL-8)および単球走化性タンパク質(MCP)である。
【0097】
実施例7: マイクロキャリア撹拌培養にて増殖されたIL-1β活性化軟骨細胞におけるプロスタグランジンE-2生成の調節
マイクロキャリア撹拌培養において増殖された軟骨細胞はインターロイキン-1β(IL-1β)により活性化されて、プロスタグランジンE-2 (PGE-2)を産生しうるかどうか、ならびにこの活性化は、抗炎症活性を有することが個別に知られた天然産物のアボカドダイズ不けん化物(ASU)、グルコサミン(Glu)およびコンドロイチン硫酸(CS)によって遮断されうるかどうかを評価するために、実施例7の研究をデザインした。
【0098】
方法:
コラーゲンマイクロキャリアビーズに播種したイヌ軟骨細胞(4×103/cm2)を撹拌培養において14日間増殖させた。それらを次に、培地のみまたはASU (NMX-1000(商標), 25 μg/mL)、CS (TRH122(登録商標), 20 μg/mL)およびGlu (FCHG49(登録商標), 10 μg/mL)の組み合わせとともに24時間インキュベートした。ASU、GluおよびCSの組み合わせはNutramax Laboratories, Incから供給された。次に培養物を24時間37℃、5%CO2で培地のみとともにインキュベートするか、またはIL-1β(10 ng/mL)により活性化するかした。上清をPGE-2含量についてアッセイした。軟骨細胞を、顕微鏡検査およびII型コラーゲンに対する免疫蛍光検査によって分析した。データを、Tukeyのpost-hoc検定によるANOVAで分析した。p<0.05の値を統計的に有意と考えた。
【0099】
結果:
この方法に従うことによって、図6の2枚の像に示される通り、付着した軟骨細胞がマイクロキャリア上で増殖し、細胞外マトリックス材を産生したことが分かった。これらの図は、マイクロキャリア上で増殖中の軟骨細胞の位相差顕微鏡写真を示したものであり、この細胞が増殖し、細胞外マトリックスを産生していることを示している。
【0100】
図7 (「関節軟骨表現型に特徴的なII型コラーゲンの継続的産生を裏付ける免疫染色済みの軟骨細胞の光学顕微鏡像」)に示される通り、培養物は凝集体を形成し、II型コラーゲンに対し免疫染色されたことで、このタンパク質の継続的産生が示唆された。
【0101】
図8 (「軟骨細胞が引き続く継代時でさえも応答性であり続けることを示す、IL-1βの後、軟骨細胞によるPGE-2の産生」)に示される通り、継代数3および4の軟骨細胞を播種したマイクロキャリアの活性化は、IL-1βによるサイトカインに対する類似の応答性、つまり活性化されていない対照の、それぞれ、179%および165%のPGE-2レベルを示した。
【0102】
軟骨細胞を播種したマイクロキャリアのASU、GluおよびCSの組み合わせでの前処理により、PGE-2レベルが、活性化されていない対照の約60%未満にまで有意に低減された(p<0.05)。
【0103】
図9 (「軟骨細胞によるPGE-2の生成はASU-CSおよびGluの組み合わせによって阻害され、この組み合わせがこの炎症促進性マーカーの産生を低減することを示す」)に示される通り、軟骨細胞はIL-1βで活性化された場合にPGE-2レベル(19152 ± 2721 pg/mL)を増大した。ASU、CSおよびGluの組み合わせは、IL-1βで活性化された対照に比べてPGE-2生成(4020 ± 468 pg/mL)を79%阻害した(p<0.05)。
【0104】
結論:
この証拠から、炎症促進性の刺激に対する軟骨細胞の応答を評価するために、およびこれらの応答を変えられる薬剤を同定するためにマイクロキャリア撹拌培養系を使用できることが明らかである。マイクロキャリア撹拌バイオリアクタ中の動的条件は、軟骨細胞が関節中で遭遇する生体力学的環境を再現するように思われる。それゆえ、マイクロキャリア撹拌培養系は、天然産物の潜在的な抗炎症性を評価するのに有用な手段となりうる。この培養系を用いて、本発明者らは、ASU、GluおよびCSの組み合わせが炎症経路の活性化を効果的に遮断することを認めた。
【0105】
実施例8: ヒトマクロファージ様THP-1細胞におけるアボカドダイズ不けん化物、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸の組み合わせによるTNF-α、IL-1β、iNOSおよびp38発現の抑制
変形性関節症(OA)は、関節軟骨の浸食および滑膜の二次的炎症により特徴付けられる変形性関節疾患である。滑膜は、OAの発病に不可欠なメディエータを産生する単球/マクロファージ様細胞を含有する。そのような炎症促進性メディエータはケモカイン、サイトカイン、プロスタグランジンおよび一酸化窒素を含む。最近の臨床研究およびインビトロ研究により、アボカドダイズ不けん化物(ASU)、グルコサミン(Glu)およびコンドロイチン硫酸(CS)などのある種の天然産物はそれぞれ、抗炎症性を有することが示された。ASUはOA患者において疼痛および機能的障害を軽減することが報告されている。同様に、GluおよびCSの組み合わせも中等度から重度のOAで苦しんでいる患者の部分群において疼痛を緩和すること、および関節可動性を改善することが明らかにされた。実施例8の研究において、本発明者らは、ASU、GluおよびCSの組み合わせがASUのみ、またはGluおよびCSどうしの組み合わせよりも炎症促進性遺伝子の発現の抑制に大きな効果を及ぼしうるかどうかを評価した。これらの処理を、十分に立証された代替単球/マクロファージTHP-1細胞株において試験した。
【0106】
実施例8の研究では、アボカドダイズ不けん化物(ASU)、グルコサミン(Glu)およびコンドロイチン硫酸(CS)の組み合わせがASUのみ、またはGluおよびCSどうしの組み合わせよりも炎症促進性遺伝子の発現の抑制に有効であるかどうかを判定しようとした。
【0107】
方法:
ヒト単球/マクロファージ代替THP-1細胞(細胞5×105個)を37℃および5% CO2で24時間、(i) 対照培地のみ、(ii) ASU (8.3 μg/ml; NMX1000TM-ASU)、(iii) Glu (15 mM; FCHG49(登録商標))およびCS (20 μg/ml; TRH122(登録商標))とともにまたは(iv) ASU (8.3 μg/ml)、Glu (15 mM)およびCS (20 μg/ml)の組み合わせとともにインキュベートした。全試験材料はNutramax Laboratories, Inc., Edgewood, MDから供給された。次いで細胞を1時間20 ng/ml LPSで活性化した。全RNAを抽出し、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38、およびハウスキーピング遺伝子としてのS14に特異的なプライマーを用いてRT-PCR分析に供した。
【0108】
結果:
ASU、GluおよびCSの組み合わせによる前処理は、活性化THP-1細胞において50〜80%だけTNF-α、IL-1βおよびiNOSの発現を大いに抑制した。組み合わせ処理はTNF-αおよびIL-1βの発現をベースラインの非活性化対照と同様のレベルに低減し、iNOSの発現をベースラインの非活性化レベルよりも低いレベルに低減した。TNF-α、IL-1βおよびiNOSの発現に対する組み合わせ調製物の阻害効果は、ASUのみ、またはGluおよびCSどうしよりも著しい。サイトカインおよびiNOS発現の阻害は、p38発現の著しい抑制に関連している。
【0109】
図10 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる単球/マクロファージ様THP-1細胞におけるTNF-α発現の阻害」)に示される通り、ASU、GluおよびCSの組み合わせとのプレインキュベーションではLPS活性化細胞において>75%だけTNF-α発現が抑制された。この組み合わせ処理はTNF-α発現を非活性化対照(C)レベルと同様のレベルに下方制御した。この組み合わせの阻害効果は個々の薬剤のみよりも著明であった。
【0110】
図11 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる単球/マクロファージ様THP-1細胞におけるIL-1β発現の阻害」)に示される通り、ASU、GluおよびCSの組み合わせとのプレインキュベーションではLPS活性化細胞において50%だけIL-1β発現が抑制された。この組み合わせ処理は個々の薬剤のみよりもIL-1β発現の抑制で有効であった。
【0111】
図12 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる単球/マクロファージ様THP-1細胞におけるiNOS発現の阻害」)に示される通り、ASU、GluおよびCSの組み合わせとのプレインキュベーションではLPS活性化細胞において80%だけiNOS発現が抑制された。この組み合わせはiNOS発現を非活性化対照(C)レベルよりも低いレベルに抑制した。この組み合わせは個々の薬剤のみよりもiNOS発現の抑制で有効であった。
【0112】
図13 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる単球/マクロファージ様THP-1細胞におけるp38発現の阻害」)に示される通り、ASU、GluおよびCSの組み合わせとのプレインキュベーションではLPS活性化細胞において75%だけp38発現が抑制された。この組み合わせ処理はp38発現を非活性化対照(C)レベルよりも低いレベルに下方制御した。この組み合わせは個々の薬剤のみよりもp38発現の抑制で有効であった。
【0113】
考察/結論:
本実施例は、ASU、GluおよびCSの組み合わせがASUのみ、またはGluおよびCSどうしよりも炎症促進性遺伝子の発現の抑制で有効であったことを実証するものである。TNF-α、IL-1βおよびiNOSの抑制はp38、つまり関節の炎症に関与する重要なシグナル伝達メディエータの下方制御に関連していた。これらの所見は、OA患者において、特に単一の処置のみには反応しない者に対して疼痛および炎症を緩和するための組み合わせ処置の潜在的な臨床有用性を示唆するものである。
【0114】
実施例9: 軟骨細胞でのアボカドダイズ不けん化物(ASU)によるシクロオキシゲナーゼ-2遺伝子発現およびプロスタグランジンE2産生の阻害
はじめに:
シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)は、炎症に関与する非常に重要な酵素であり、炎症促進性メディエータ・プロスタグランジン(PGE-2)の産生において中心的な役割を果たす。COX-2は、プロスタグランジンG/Hシンターゼとしても知られており、アラキドン酸の2つの短寿命中間体、つまりプロスタグランジンG (PGG)およびプロスタグランジンII (PGH)への段階的変換を触媒する。PGGはPGE-2を含む、さまざまな形態へ異性化する。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)はプロスタグランジン合成を阻害することにより、変形性関節症(OA)において炎症を抑制するためにおよび疼痛を緩和するために広く用いられている。最近になって、植物由来の産物などの、補完代替医療(CAM)は、強力な抗炎症活性を及ぼすことが立証された。例えば、Soeken KL. et al. Clin J. Pain. 20(1): 13-8, 2004を参照されたい。アボカドダイズ不けん化物(ASU)の抽出物もこれらに含まれる。ASUの抗炎症活性は、免疫-炎症系に主に由来する組織細胞の原型に関して試験されている。軟骨細胞に及ぼすASUの効果についてはほとんど知られていない。軟骨細胞は、軟骨の唯一の細胞成分として、PGE-2などの炎症促進性メディエータを合成する。実施例9の研究では、ASUがCOX-2遺伝子発現を効果的に阻害し、それによってPGE-2合成を抑制するという仮説について試験した。
【0115】
材料および方法:
関節軟骨細胞をコラゲナーゼ消化によって成熟ホルスタインの中手関節から単離した。軟骨細胞をプレーティングし(5×105/ウェル)、使用の前に5〜7日間維持した。軟骨細胞を(i) 72時間ASU (25 μg/ml)、または(ii) 72時間対照培地のみとともにプレインキュベートした。軟骨細胞を次に、対照培地のみとともに再インキュベートし、または(a) RT-PCR分析によってCOX-2発現を判定するために1時間および(b) 免疫アッセイ法によって分泌PGE-2レベルを測定するために24時間、37℃、5% CO2で20 ng/mlのリポ多糖体(LPS)により活性化した。細胞を溶解し、全RNAをTRIzol(登録商標) (Life Technologies(商標)で抽出した。等量(1 μg)の全RNAを逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)に供した。COX-2、およびハウスキーピング遺伝子としてのGAPDHに特異的なウシプライマーを用いた。臭化エチジウム含有ゲルを電気泳動させて、UV線下でバンドを可視化した。個別の泳動を3〜5回実施した。SigmaStat統計プログラムを用いて一元配置ANOVA (Tukey post-hoc分析)による多重比較を実施し、ここでp<0.05を統計的に有意と考えた。
【0116】
結果:
アボカドダイズ不けん化物との軟骨細胞のプレインキュベーションにより、非活性化ウシ軟骨細胞においてCOX-2のベースライン発現が低減された。図14Aおよび14B (「ASUによる活性化軟骨細胞でのCOX-2発現の阻害」)に示すように、72時間のASUとの軟骨細胞のプレインキュベーションの後、1時間のLPSでの活性化によって、COX-2転写産物の活性化がベースラインレベルの下方まで大いに遮断された。
【0117】
さらに、図15 (「ASUによる活性化軟骨細胞でのPGE-2生成の阻害」)に示すように、72時間のASUとの軟骨細胞のプレインキュベーションの後、24時間のLPSでの活性化によって、図15に示すように、分泌PGE-2の濃度が顕著に低減された(P<0.01)。SigmaStat統計プログラムを用いて一元配置ANOVA (Tukey post-hoc分析)による多重比較を実施し、ここでp<0.05を統計的に有意と考えた。
【0118】
考察/結論:
実施例9の研究は、ASUが軟骨細胞においてCOX-2発現の活性化を阻害することを実証するものである。この阻害は炎症促進性メディエータPGE-2の生成の減少をもたらす。PGE-2生成の遮断は、炎症に関連する疼痛を軽減することが立証されている。本発明者らの所見は、変形性関節症によって例示される、疼痛状態の管理におけるASUの有用性の提案を支持するものである。
【0119】
実施例10: アボカドダイズ不けん化物(ASU)による軟骨細胞および単球での炎症促進性サイトカインおよびCOX-2発現の阻害
サイトカインTNF-αおよびIL-1β、ならびに酵素シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)は慢性炎症性疾患における主なメディエータとして知られている。COX-2は、プロスタグランジンPGE-2の生成を調節することによって炎症に関与する非常に重要な酵素である。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)はサイトカインおよびPG合成を阻害することにより、特に変形性関節症において、炎症を抑制するためにおよび疼痛を緩和するために広く用いられている。最近になって、疼痛および炎症の管理に代わるアプローチにより、励みになる結果が得られている。アボカドダイズ不けん化物(ASU)の抽出物もこれらに含まれる。ヒトでの臨床研究により、ASUが炎症に関連する疼痛を軽減し、関節腔狭小化の程度を低減することが示唆されている。細胞標的に及ぼすASUの効果についてはほとんど知られていない。実施例10の研究では、ASUが軟骨細胞および単球においてCOX-2、TNF-αおよびIL-1βの遺伝子発現を阻害するという仮説について試験した。代替単球-マクロファージ様THP-1細胞を用いた。
【0120】
成熟ホルスタインの中手関節由来の関節軟骨細胞(5×105/ウェル)およびヒトTHP-1単球様細胞(5×105/ウェル)を(i) ASU (25 μg/mL)または(ii) 対照培地のみとともにそれぞれ72時間および24時間プレインキュベートした。細胞を対照培地のみ、または(a) 逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)分析によって遺伝子発現を判定するために1時間および(b) 免疫アッセイ法によって分泌PGE-2レベルを測定するために24時間20 ng/mlのリポ多糖体(LPS)とともに再インキュベートした。ウシおよびヒトCOX-2、TNF-α、IL-1β、ならびにハウスキーピング遺伝子としてのGAPDHに特異的なプライマーを用いた。臭化エチジウム含有ゲルを電気泳動させて、UV線下でDNAバンドを可視化した。個別の泳動を3〜5回実施した。SigmaStat統計プログラムを用いて一元配置ANOVA (Tukey post-hoc分析)による多重比較を実施し、ここでp<0.05を統計的に有意と考えた。ASUは非活性化ウシ軟骨細胞においてCOX-2、TNF-αおよびIL-1βのベースライン発現を低減した。
【0121】
さらに、ASUは、LPSにより誘導された細胞でのこれらのメディエータの活性化を遮断した。COX-2発現の遮断は93 ± 1%だけの分泌PGE-2の顕著な低減をもたらした(P<0.01)。同様に、24時間のASUとのTHP-1細胞のプレインキュベーションの後、1時間のLPSでの活性化により、LPSのみで活性化された対照細胞に比べて、TNF-αおよびIL-1β転写産物の発現が大いに遮断された。
【0122】
実施例10の研究は、ASUが軟骨細胞および単球においてTNF-αおよびIL-1βの発現を劇的に抑制し、軟骨細胞においてCOX-2転写産物の低減を認めたことを初めて実証するものである。この観察結果は、ASUが疼痛および炎症を改善するというプラスの臨床所見を支持するものである。本発明者らの研究は、変形性関節症によって例示される、疼痛状態の管理におけるASUの有用性の提案を支持するものである。
【0123】
実施例11: 軟骨細胞における炎症促進性遺伝子の発現の、アボカドダイズ不けん化物、グルコサミン、およびコンドロイチン硫酸の組み合わせによる阻害
はじめに:
変形性関節症(OA)は、関節軟骨の浸食および滑膜の二次的炎症により特徴付けられる変形性関節疾患である。軟骨浸食は、軟骨中の軟骨細胞および滑膜に局在する単球/マクロファージにより産生される炎症促進性メディエータによって誘導される。OAの管理においてアボカドダイズ不けん化物(ASU)、グルコサミン(Glu)およびコンドロイチン硫酸(CS)を用いることの利点が臨床研究から立証されている。ASUはOA患者において疼痛を軽減すること、および機能障害を最小限に抑えることが明らかにされている。例えばErnst E. Clin Rheum. 2003; 22(4-5): 285-8を参照されたい。同様に、GluおよびCSの組み合わせは、OAに罹っている動物において顕著に跛行を軽減し、関節可動性を改善した。例えば、Hanson RR et al. Equine Practice. 1997; 19(9): 16-22; およびCanapp SO et al. Amer. J Vet. Res. 1999; 60(12): 1552-7を参照されたい。同様に、例えば、Henrotin YE et al. Clin Rheum. 1998; 17(1): 31-9; およびChan PS et al. Osteoarthritis Cart. 2005; 13(5): 387-94を参照されたい。炎症促進性メディエータの発現はp38 MAPKシグナル伝達経路を通じて調節される。本発明者らの研究では、ASU、GluおよびCSの組み合わせがp38シグナル伝達経路を通じて炎症促進性遺伝子の発現を大いに下方制御するかどうかを評価した。本発明者らはヒトおよびウマ軟骨細胞でのこれらの化合物の効果について評価した。
【0124】
材料および方法:
ウマ軟骨細胞をコラゲナーゼ消化によって関節軟骨から単離した。ウマ軟骨細胞およびヒト関節軟骨細胞(ATCC)を細胞5×105個/ウェルの密度でプレーティングした。細胞を対照培地のみ、または生理学的濃度の(i) ASU (8.3 μg/ml; NMX 1000(商標)-ASU)、(ii) Glu (11 μg/ml; FCHG49(登録商標))およびCS (20 μg/ml; TRH122(登録商標))、もしくは(iii) ASU (8.3 μg/ml)、Glu (11 μg/ml)およびCS (20 μg/ml)の組み合わせとともに24時間37℃、5% CO2でインキュベートした。炎症を誘導するため、細胞をリポ多糖体(20 ng/ml, LPS)またはインターロイキン-1-β(10 ng/ml, IL-1β)により1時間活性化した。全RNAをTRIzol(登録商標) (Life Technologies(商標))を用いて単離し、遺伝子発現をRT-PCRを用いて分析した。
【0125】
結果:
活性化ウマ軟骨細胞において、組み合わせ処理はCOX-2発現を非活性化対照レベルと同様のレベルに抑制した。さらに、ASU、Glu、およびCSの組み合わせは、活性化ヒト軟骨細胞においてケモカインの発現を抑制した。図16 (「ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる活性化軟骨細胞におけるケモカインIL-8発現の阻害」)および図17 (ASU-CS-Gluの組み合わせが個々の成分よりも良好であるものと思われることを示す、ASU-CS-Gluの組み合わせによる活性化軟骨細胞におけるケモカインMCP発現の阻害)を参照されたい。インターロイキン-8 (IL-8)およびMCPの発現は非活性化対照レベルと同様のレベルに下方制御された。
【0126】
考察/結論:
実施例11の研究は、ASU、GluおよびCSの組み合わせが軟骨細胞において炎症促進性遺伝子の発現を大いに抑制することを実証するものであった。この組み合わせ処理はケモカインの発現の低減で有効であった。ケモカインなどの、炎症促進性メディエータの抑制は、骨関節炎関節における炎症促進性の応答を調節する際に非常に重要である。本発明者らの結果は、OAの管理におけるASU、GluおよびCSの組み合わせの潜在的な臨床有用性を強固にし、単一の薬剤のみには反応しない患者に対して代替的な選択肢を与えるものである。
【0127】
本発明の教示に基づき、本発明により教示される化合物の組み合わせが相乗的に作用することを当業者は理解するであろう。例えば、グルコサミンは軟骨細胞代謝に刺激作用を及ぼし、軟骨細胞代謝は、それだけで、軟骨分解疾患の改善で助けになることが理解されよう。しかしながら、細胞代謝の増大は、酸化的リン酸化の天然副産物のように、遊離ラジカルの生成の増大をもたらすこともある。遊離ラジカル生成の増大は、グルコサミン投与の有益な効果を弱めうる。L-エルゴチオネインをグルコサミンと組み合わせることによって、代謝が増大し、遊離ラジカルによる損傷が低減し、これらの作用の一方をもたらす化合物を供与した場合よりも大きな利益をもたらすものと予想されよう。それゆえ、当業者は、本発明の教示に基づき、グルコサミンをL-エルゴチオネインと組み合わせることが、どちらかのみを供与するよりも有益であることを理解するであろう。本発明のある種の化合物の間にある相乗作用は、各化合物をより低い用量で使用することも可能にする。これらの化合物は全く安全であるが、副作用の可能性があるかもしれない。例えば、多量のグルコサミン硫酸またはコンドロイチン硫酸は、いくつかの個体で胃腸障害を引き起こす可能性がある。さらに、これらの化合物は高価である。これらの理由で、用量を最小にし、それでも有益な作用を達成する能力が望ましい。
【0128】
本発明の基本的な趣旨から逸脱することなく多くの変更がなされうる。本発明の種々の態様を先に記述してきたが、それらは限定ではなく単なる例証として提示されているものと理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本明細書において明確に記載したもの以外に本発明を実践できることを当業者は理解するであろう。このように、本発明の広さおよび範囲は、前述の例示的な態様のいずれかによって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ定義されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトおよび動物における結合組織への損傷に関連した炎症を調節するための配合物であって、
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物;
アミノ糖; および
グリコサミノグリカン成分
を含み、
配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、グルコサミン、およびグリコサミノグリカン成分の量が、組み合わされた状態で、
COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの少なくとも1つの遺伝子発現を実質的に阻害もしくは下方制御するために; または
PGE-2レベルを低減するために
有効である、配合物。
【請求項2】
配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、アミノ糖、およびグリコサミノグリカンの量が、組み合わされた状態で、組織細胞におけるCOX-2、TNF-α、iNOS、p38、IL-1βおよびケモカインの少なくとも1つの遺伝子発現を実質的に阻害するために有効である、請求項1記載の配合物。
【請求項3】
組織細胞が軟骨細胞、マクロファージ 単球、および線維芽細胞からなる群より選択される、請求項2記載の配合物。
【請求項4】
メチルスルファニルメタン(MSM)をさらに含む、請求項1記載の配合物。
【請求項5】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が1種または複数種の植物ステロールを含む、請求項1記載の配合物。
【請求項6】
植物ステロールがカンペステロール、スチグマステロール、ジヒドロ-ブラシカステロール、およびβ-シトステロールからなる群より選択される、請求項5記載の配合物。
【請求項7】
配合物が粉末の形態であり、この粉末が、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物を1種または複数種の賦形剤または担体と組み合わせることにより作製される、請求項1記載の配合物。
【請求項8】
アミノ糖が天然、合成または半合成のものである、請求項1記載の配合物。
【請求項9】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が天然、合成または半合成のものである、請求項1記載の配合物。
【請求項10】
アミノ糖がエステル化、硫酸化、ポリ硫酸化、アセチル化およびメチル化の1つまたは複数によって化学的に修飾されている、請求項1記載の配合物。
【請求項11】
アミノ糖がグルコサミン、グルコサミン塩、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項12】
アミノ糖がグルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩、グルコサミンリン酸、マンノサミンおよびN-アセチルグルコサミンの塩からなる群より選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項13】
グリコサミノグリカン成分が天然、合成もしくは半合成のグリコサミノグリカン、グリコサミノグリカン様化合物、グリコサミノグリカン前駆体またはグリコサミノグリカンの断片を含む、請求項1記載の配合物。
【請求項14】
グリコサミノグリカン成分がエステル化、硫酸化、ポリ硫酸化、アセチル化およびメチル化の1つまたは複数によって化学的に修飾されている、請求項1記載の配合物。
【請求項15】
グリコサミノグリカン成分がコンドロイチン、コンドロイチン塩、ヒアルロン酸、ペントサンポリ硫酸およびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項16】
グリコサミノグリカン成分がコンドロイチン硫酸である、請求項1記載の配合物。
【請求項17】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約5ミリグラム〜約5グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項18】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の小動物用の用量が約5ミリグラム〜約1000ミリグラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項19】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物のヒト用の用量が約25ミリグラム〜約1500ミリグラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項20】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の大動物用の用量が約100ミリグラム〜約5グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項21】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約0.5 mg/kg〜約25 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項22】
小動物用の1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約0.5 mg/kg〜約25 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項23】
ヒト用の1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約0.5 mg/kg〜約25 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項24】
大動物用の1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約0.5 mg/kg〜約25 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項25】
アミノ糖の用量が約25ミリグラム〜約12グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項26】
アミノ糖の小動物用の用量が約25ミリグラム〜約3グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項27】
アミノ糖のヒト用の用量が約100ミリグラム〜約4グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項28】
アミノ糖の大動物用の用量が約300ミリグラム〜約15グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項29】
アミノ糖の用量が約3 mg/kg〜約125 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項30】
小動物用のアミノ糖の用量が約3 mg/kg〜約125 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項31】
ヒト用のアミノ糖の用量が約3 mg/kg〜約125 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項32】
大動物用のアミノ糖の用量が約3 mg/kg〜約125 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項33】
グリコサミノグリカン成分の用量が約15ミリグラム〜約12グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項34】
小動物用のグリコサミノグリカン成分の用量が約15ミリグラム〜約2グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項35】
ヒト用のグリコサミノグリカン成分の用量が約75ミリグラム〜約4グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項36】
大動物用のグリコサミノグリカン成分の用量が約300ミリグラム〜約12グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項37】
グリコサミノグリカン成分の用量が約1 mg/kg〜約75 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項38】
小動物用のグリコサミノグリカン成分の用量が約1 mg/kg〜約75 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項39】
ヒト用のグリコサミノグリカン成分の用量が約1 mg/kg〜約75 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項40】
大動物用のグリコサミノグリカン成分の用量が約1 mg/kg〜約75 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項41】
筋肉内、静脈内、経口、皮下、直腸、局所、経皮、鼻腔内、関節内、舌下および腹腔内投与用に調製される、請求項1記載の配合物。
【請求項42】
1つもしくは複数の丸剤、1つもしくは複数の錠剤、1つもしくは複数のカプセル、1つもしくは複数のクリーム、粉末の形態、液体形態、エアロゾル形態、長期放出形態、または注射可能な形態での投与用に調製される、請求項1記載の配合物。
【請求項43】
1つもしくは複数の液体入りカプセル、1つもしくは複数のソフトゲルカプセル、ペースト、咀しゃく錠、1杯もしくは複数杯の粉末、1つもしくは複数の小袋(sachet)、または1つもしくは複数の処置(treat)の形態での投与用に調製される、請求項1記載の配合物。
【請求項44】
請求項1〜43記載のいずれかの配合物を、それを必要とするヒトまたは動物に投与する段階を含む、ヒトおよび動物における結合組織への損傷に関連した炎症を予防する、処置する、管理する、修復するまたは調節する方法。
【請求項45】
請求項1記載の配合物を、それを必要とするヒトまたは動物に投与する段階を含む、ヒトおよび動物における結合組織への損傷に関連した炎症を予防する、処置する、管理する、修復するまたは調節する方法であって、この配合物が、COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの少なくとも1つに影響を与える、標的の細胞型を浸すヒトまたは動物の体液中での活性薬剤の定常状態濃度に達するように毎日投与され、この投薬がヒトまたは動物において所望の応答を達成または維持するように頻度または量が後に低減される、方法。
【請求項46】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が約30%のステロールに標準化される、請求項1記載の配合物。
【請求項47】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が、ダイズ不けん化物とアボカド不けん化物との比約2:1で、約30%のステロールに標準化される、請求項1記載の配合物。
【請求項48】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が室温で固体であり、かつヒトの体温で液体である、請求項1記載の配合物。
【請求項49】
配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、グルコサミン、およびグリコサミノグリカン成分の量が、組み合わされた状態で、1種または複数種のケモカインの遺伝子発現を実質的に阻害または下方制御するために有効であり、この1種または複数種のケモカインがIL-8およびMCPからなる群より選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項50】
配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、グルコサミン、およびグリコサミノグリカン成分の量が、組み合わされた状態で、PGE-2レベルを低減するために有効である、請求項1記載の配合物。
【請求項51】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の量が、COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの少なくとも1つに影響を与える、標的の細胞型を浸す体液中でのASUの植物ステロールレベル約8〜約25 μg/mLを達成するように選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項52】
アミノ糖が標的のヒトまたは動物の体液中のグルコサミン約10 μg/mLの濃度を達成するのに有効な濃度でグルコサミンを含み、かつグリコサミノグリカン成分が体液中のコンドロイチン硫酸約20 μg/mLの濃度を達成するのに有効な濃度でコンドロイチン硫酸を含む、請求項1記載の配合物。
【請求項53】
標的のヒトまたは動物における結合組織の炎症のマーカーを調節する方法であって、
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、グルコサミン、およびコンドロイチン硫酸を含む組成物をヒトまたは動物に投与する段階
を含み、この組成物が、COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの少なくとも1つの遺伝子発現をほぼ正常な値に調節するのに有効な量で炎症を調節するために標的のヒトまたは動物に投与される、方法。
【請求項54】
ヒトおよび動物における結合組織への損傷に関連した炎症を調節するための配合物であって、
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物;
グルコサミン、グルコサミン塩、またはその混合物を含むアミノ糖成分; および
コンドロイチン、コンドロイチン塩、またはその混合物を含むグリコサミノグリカン成分
を含み、配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、アミノ糖成分およびグリコサミノグリカン成分の量が、組み合わされた状態で、COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの遺伝子発現を実質的に阻害もしくは下方制御するために、ならびにPGE-2レベルを低減するために有効である、配合物。
【請求項1】
ヒトおよび動物における結合組織への損傷に関連した炎症を調節するための配合物であって、
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物;
アミノ糖; および
グリコサミノグリカン成分
を含み、
配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、グルコサミン、およびグリコサミノグリカン成分の量が、組み合わされた状態で、
COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの少なくとも1つの遺伝子発現を実質的に阻害もしくは下方制御するために; または
PGE-2レベルを低減するために
有効である、配合物。
【請求項2】
配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、アミノ糖、およびグリコサミノグリカンの量が、組み合わされた状態で、組織細胞におけるCOX-2、TNF-α、iNOS、p38、IL-1βおよびケモカインの少なくとも1つの遺伝子発現を実質的に阻害するために有効である、請求項1記載の配合物。
【請求項3】
組織細胞が軟骨細胞、マクロファージ 単球、および線維芽細胞からなる群より選択される、請求項2記載の配合物。
【請求項4】
メチルスルファニルメタン(MSM)をさらに含む、請求項1記載の配合物。
【請求項5】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が1種または複数種の植物ステロールを含む、請求項1記載の配合物。
【請求項6】
植物ステロールがカンペステロール、スチグマステロール、ジヒドロ-ブラシカステロール、およびβ-シトステロールからなる群より選択される、請求項5記載の配合物。
【請求項7】
配合物が粉末の形態であり、この粉末が、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物を1種または複数種の賦形剤または担体と組み合わせることにより作製される、請求項1記載の配合物。
【請求項8】
アミノ糖が天然、合成または半合成のものである、請求項1記載の配合物。
【請求項9】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が天然、合成または半合成のものである、請求項1記載の配合物。
【請求項10】
アミノ糖がエステル化、硫酸化、ポリ硫酸化、アセチル化およびメチル化の1つまたは複数によって化学的に修飾されている、請求項1記載の配合物。
【請求項11】
アミノ糖がグルコサミン、グルコサミン塩、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項12】
アミノ糖がグルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩、グルコサミンリン酸、マンノサミンおよびN-アセチルグルコサミンの塩からなる群より選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項13】
グリコサミノグリカン成分が天然、合成もしくは半合成のグリコサミノグリカン、グリコサミノグリカン様化合物、グリコサミノグリカン前駆体またはグリコサミノグリカンの断片を含む、請求項1記載の配合物。
【請求項14】
グリコサミノグリカン成分がエステル化、硫酸化、ポリ硫酸化、アセチル化およびメチル化の1つまたは複数によって化学的に修飾されている、請求項1記載の配合物。
【請求項15】
グリコサミノグリカン成分がコンドロイチン、コンドロイチン塩、ヒアルロン酸、ペントサンポリ硫酸およびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項16】
グリコサミノグリカン成分がコンドロイチン硫酸である、請求項1記載の配合物。
【請求項17】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約5ミリグラム〜約5グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項18】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の小動物用の用量が約5ミリグラム〜約1000ミリグラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項19】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物のヒト用の用量が約25ミリグラム〜約1500ミリグラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項20】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の大動物用の用量が約100ミリグラム〜約5グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項21】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約0.5 mg/kg〜約25 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項22】
小動物用の1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約0.5 mg/kg〜約25 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項23】
ヒト用の1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約0.5 mg/kg〜約25 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項24】
大動物用の1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の用量が約0.5 mg/kg〜約25 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項25】
アミノ糖の用量が約25ミリグラム〜約12グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項26】
アミノ糖の小動物用の用量が約25ミリグラム〜約3グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項27】
アミノ糖のヒト用の用量が約100ミリグラム〜約4グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項28】
アミノ糖の大動物用の用量が約300ミリグラム〜約15グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項29】
アミノ糖の用量が約3 mg/kg〜約125 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項30】
小動物用のアミノ糖の用量が約3 mg/kg〜約125 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項31】
ヒト用のアミノ糖の用量が約3 mg/kg〜約125 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項32】
大動物用のアミノ糖の用量が約3 mg/kg〜約125 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項33】
グリコサミノグリカン成分の用量が約15ミリグラム〜約12グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項34】
小動物用のグリコサミノグリカン成分の用量が約15ミリグラム〜約2グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項35】
ヒト用のグリコサミノグリカン成分の用量が約75ミリグラム〜約4グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項36】
大動物用のグリコサミノグリカン成分の用量が約300ミリグラム〜約12グラムの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項37】
グリコサミノグリカン成分の用量が約1 mg/kg〜約75 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項38】
小動物用のグリコサミノグリカン成分の用量が約1 mg/kg〜約75 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項39】
ヒト用のグリコサミノグリカン成分の用量が約1 mg/kg〜約75 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項40】
大動物用のグリコサミノグリカン成分の用量が約1 mg/kg〜約75 mg/kgの範囲にわたる、請求項1記載の配合物。
【請求項41】
筋肉内、静脈内、経口、皮下、直腸、局所、経皮、鼻腔内、関節内、舌下および腹腔内投与用に調製される、請求項1記載の配合物。
【請求項42】
1つもしくは複数の丸剤、1つもしくは複数の錠剤、1つもしくは複数のカプセル、1つもしくは複数のクリーム、粉末の形態、液体形態、エアロゾル形態、長期放出形態、または注射可能な形態での投与用に調製される、請求項1記載の配合物。
【請求項43】
1つもしくは複数の液体入りカプセル、1つもしくは複数のソフトゲルカプセル、ペースト、咀しゃく錠、1杯もしくは複数杯の粉末、1つもしくは複数の小袋(sachet)、または1つもしくは複数の処置(treat)の形態での投与用に調製される、請求項1記載の配合物。
【請求項44】
請求項1〜43記載のいずれかの配合物を、それを必要とするヒトまたは動物に投与する段階を含む、ヒトおよび動物における結合組織への損傷に関連した炎症を予防する、処置する、管理する、修復するまたは調節する方法。
【請求項45】
請求項1記載の配合物を、それを必要とするヒトまたは動物に投与する段階を含む、ヒトおよび動物における結合組織への損傷に関連した炎症を予防する、処置する、管理する、修復するまたは調節する方法であって、この配合物が、COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの少なくとも1つに影響を与える、標的の細胞型を浸すヒトまたは動物の体液中での活性薬剤の定常状態濃度に達するように毎日投与され、この投薬がヒトまたは動物において所望の応答を達成または維持するように頻度または量が後に低減される、方法。
【請求項46】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が約30%のステロールに標準化される、請求項1記載の配合物。
【請求項47】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が、ダイズ不けん化物とアボカド不けん化物との比約2:1で、約30%のステロールに標準化される、請求項1記載の配合物。
【請求項48】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物が室温で固体であり、かつヒトの体温で液体である、請求項1記載の配合物。
【請求項49】
配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、グルコサミン、およびグリコサミノグリカン成分の量が、組み合わされた状態で、1種または複数種のケモカインの遺伝子発現を実質的に阻害または下方制御するために有効であり、この1種または複数種のケモカインがIL-8およびMCPからなる群より選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項50】
配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、グルコサミン、およびグリコサミノグリカン成分の量が、組み合わされた状態で、PGE-2レベルを低減するために有効である、請求項1記載の配合物。
【請求項51】
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物の量が、COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの少なくとも1つに影響を与える、標的の細胞型を浸す体液中でのASUの植物ステロールレベル約8〜約25 μg/mLを達成するように選択される、請求項1記載の配合物。
【請求項52】
アミノ糖が標的のヒトまたは動物の体液中のグルコサミン約10 μg/mLの濃度を達成するのに有効な濃度でグルコサミンを含み、かつグリコサミノグリカン成分が体液中のコンドロイチン硫酸約20 μg/mLの濃度を達成するのに有効な濃度でコンドロイチン硫酸を含む、請求項1記載の配合物。
【請求項53】
標的のヒトまたは動物における結合組織の炎症のマーカーを調節する方法であって、
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、グルコサミン、およびコンドロイチン硫酸を含む組成物をヒトまたは動物に投与する段階
を含み、この組成物が、COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの少なくとも1つの遺伝子発現をほぼ正常な値に調節するのに有効な量で炎症を調節するために標的のヒトまたは動物に投与される、方法。
【請求項54】
ヒトおよび動物における結合組織への損傷に関連した炎症を調節するための配合物であって、
1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物;
グルコサミン、グルコサミン塩、またはその混合物を含むアミノ糖成分; および
コンドロイチン、コンドロイチン塩、またはその混合物を含むグリコサミノグリカン成分
を含み、配合物中の、1種または複数種のアボカド/ダイズ不けん化物、アミノ糖成分およびグリコサミノグリカン成分の量が、組み合わされた状態で、COX-2、TNF-α、IL-1β、iNOS、p38およびケモカインの遺伝子発現を実質的に阻害もしくは下方制御するために、ならびにPGE-2レベルを低減するために有効である、配合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2010−511708(P2010−511708A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540264(P2009−540264)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/024853
【国際公開番号】WO2008/070086
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(500379107)ニュートラマックス ラボラトリーズ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/024853
【国際公開番号】WO2008/070086
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(500379107)ニュートラマックス ラボラトリーズ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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