説明

結晶成長装置および結晶成長方法

【解決手段】 ボディ・リネージュを低減するVGF結晶成長プロセスおよびVB結晶成長プロセスを用いて結晶成長を行うシステムおよび方法を開示する。一実施形態例によると、原材料を含むアンプルを、加熱源を有する炉の内部に挿入する段階と、結晶化温度勾配を、結晶および/または炉に対して相対的に移動させて、原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直す垂直勾配冷却法を用いて結晶を成長させる段階と、アンプル/加熱源を互いに相対的に移動させて、原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直す動作を継続して行う垂直ブリッジマン法を用いて結晶を成長させる段階とを備える方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示するシステムおよび方法は、概して第III−V族化合物、第II−VI族化合物、および、関連する単結晶化合物の成長に関し、具体的にはボディ・リネージュ(ボディ伝達線欠陥、body lineage)を低減させつつ上記化合物を成長させる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスおよび光電子デバイスの製造者は通常、スライスおよび研磨によってマイクロ電子デバイスを製造するための基板となる半導体結晶が必要となる。当該半導体結晶は、商業的に成長させられたもので、大型で、均質な単結晶の半導体結晶である。半導体結晶を成長させる際には、多結晶性の材料を、融点(通常では摂氏1200度を超える)まで加熱して、多結晶材料融体を生成し、当該融体と高品質シード結晶とを接触させ、シード結晶と接触させることで融体の結晶化が可能になる。融体を結晶化することによって、シード結晶が多結晶材料の下方に配置されて垂直軸に沿って、基本的に円筒形状の結晶(インゴット)が形成される。半導体結晶を形成するために必要な設備には、結晶成長炉、アンプル、るつぼ、および、るつぼ支持部が含まれる。るつぼは、シードウェルと呼ばれる、幅狭の下部を持つ。
【0003】
従来の結晶成長プロセスおよび結晶成長設備には問題がある。例えば、公知の結晶成長プロセスで得られる結晶は、ボディ・リネージュを含むので、従来の結晶成長プロセスを用いて成長させた結晶のうち利用可能な全長が短くなってしまう。成長させた結晶の全長が短くなってしまうと、収率が下がってしまう。したがって、公知のシステムが抱える上記のような欠点を克服する結晶成長装置および結晶成長方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係るシステムおよび方法は、単結晶化合物の成長に関する。
【0005】
一実施形態例によると、原材料を含むアンプルを、加熱源を持つ炉の内部に入れて、垂直勾配冷却法を利用して結晶を成長させ、結晶化温度勾配を、結晶または炉に対して相対的に移動させて原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直し、垂直ブリッジマン法を用いて結晶を成長させ、アンプル/加熱源を互いに相対的に移動させて、原材料の融解を継続して行い、単結晶化合物として形成し直す方法が提供される。
【0006】
上記の概要の説明および後述する詳細な説明はいずれも、一例にすぎず、説明を目的として提供するものであって、本発明を制限するものではないと理解されたい。本明細書に記載する以外にも特徴および/または変更があるとしてよい。例えば、本発明は、開示した特徴のさまざまなコンビネーションおよびサブコンビネーション、および/または、以下の詳細な説明に開示されるその他の特徴のコンビネーションおよびサブコンビネーションに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付図面は、本明細書の一部を成すものであり、本発明のさまざまな実施例および側面を示すと共に、関連する説明箇所を参照することで、本発明の原則を説明するものである。添付図面は以下の通りである。
【図1】本明細書に記載する改良に関する側面に係る結晶成長装置20の一例を示す断面図である。
【図2】本明細書に記載する改良に関する側面に係るボディ・リネージュを持つ結晶インゴットの一例を示す図である。
【図3】本明細書に記載する改良に関する側面に係る垂直勾配冷却(VGF)法および垂直ブリッジマン(VB)法を用いた結晶成長法の一例を示す図である。
【図4】本明細書に記載する改良に関する側面に係る図1に示す結晶成長炉を投入する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では本発明を詳細に説明する。本発明の例を添付図面に図示する。以下の説明に記載されている実施例は、請求項に記載している本発明に係る全ての実施例を表しているわけではない。逆に、本発明に係る特定の側面に応じた一部の例に過ぎない。可能であれば、同一または同様の構成要素を指定する際、複数の図面にわたって、同じ参照番号を用いる。
【0009】
本発明に係る装置および方法は特に、ヒ化ガリウム(GaAs)の結晶成長を実施する装置および方法に適用され得る。そして、このように適用される場合に関連付けて、本発明に係る装置および方法を説明する。しかし、本発明に係る装置および方法は、他の第III−V族化合物、第II−VI族化合物および関連する単結晶化合物を生成するために利用され得るので、これ以外にも適用可能性があるものと考えられたい。
【0010】
図1は、結晶成長装置20の一例を示す断面図である。当該装置は、炉24の内部にるつぼ支持部22を備えるとしてよい。炉24は、例えば、垂直勾配冷却(VGF)法または垂直ブリッジマン(VB)結晶成長法、および/または、炉が可動性である場合には、垂直ブリッジマン−ストックバーガー法で用いられる結晶化温度勾配を設定する炉である。るつぼ支持部22は、るつぼ27を含むアンプル26(一実施例によると、石英製である)に対する熱勾配制御を可能とし、熱勾配制御に関して物理的な支持力を提供する。るつぼ支持部22は、炉の動作中、結晶成長プロセス時に移動させることが可能である。これに代えて、るつぼ支持部を固定して、炉を、動作中、結晶成長プロセス時に移動させることも可能である。るつぼ27は、シード結晶28、シード結晶の上方に形成されている成長した単結晶性の結晶/化合物30、および、融体原材料32を含むとしてよい。一実施形態によると、るつぼ27は、円筒形状結晶成長部分34、小径シードウェル円筒形状部分36、および、テーパー状中間部分44と含む熱分解窒化ホウ素(pBN)材料であってよい。結晶成長部分34は、直径が、製造する結晶の所望の直径に等しい。現在の業界基準では、結晶の直径が2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチおよび8インチの、切断するとウェハを製造するインゴットが挙げられる。一実施例によると、るつぼ27の底部において、シードウェル円筒形部分36は、底部が閉じているとしてよく、直径が高品質シード結晶28の直径よりもわずかに大きくなっており、例えば、約6mm−25mmであって、長さは30mm−100mmのオーダである。円筒形状結晶成長部分34およびシードウェル円筒形状部分36は、壁部が直線状か、または、外向きに1度から数度のオーダのテーパー状であってよく、るつぼ27から結晶を取り外し易いように構成されている。成長部分34とシードウェル円筒形状部分36との間のテーパー状中間部分38は、例えば、約45度−60度で傾斜している側壁を持ち、直径が大きい方は成長ゾーンの壁部と直径が同じで当該成長ゾーンの壁部に接続されており、直径が小さい方は、シードウェルの壁部と直径が同じで当該シードウェルの壁部に接続されている。傾斜している側壁は、傾斜角度を変えて、45度−60度よりも急峻または緩やかにするとしてもよい。
【0011】
るつぼ27は、結晶成長炉24に挿入される前に、原材料を充填して、アンプル26に挿入される。アンプル26は、石英製であるとしてよい。アンプル26の形状は、るつぼ27の形状と同様である。るつぼは、結晶成長領域40において円筒形状を持ち、シードウェル領域42では直径がより小さい円筒形状であって、これら2つの領域間にテーパー状中間領域44を持つ。るつぼ27は、アンプル26の内部に嵌合する。この際、両者間の隙間はわずかである。アンプル26は、シードウェル領域42の底部において閉じており、るつぼと同様に、るつぼおよび原材料が投入された後に、上部が封止される。アンプル26の底部の形状は、るつぼ27と同一の漏斗形状である。
【0012】
アンプルおよびるつぼが共に漏斗形状であるので、るつぼ支持部22は、この漏斗形状を収容可能なこと、および、炉24の内部でアンプル26を安定して直立した状態で保持することが要件となる。他の実施例によると、アンプルおよびるつぼは、他の形状を持つとしてもよく、るつぼ支持部22の基本的な構造はその形状に嵌合するように適宜変更される。ある実施形態によると、アンプルおよびその内容物の安定性および強度は、るつぼ支持部22の円筒形状部分50が剛性を持ち壁厚が薄いことによって得られる。剛性を持ち壁厚が薄い円筒形状部分50は、アンプル構造26の漏斗形状端部を収容する。一実施形態によると、るつぼ支持部の円筒形状部分50は、熱伝導性材料、好ましくは、石英で形成されている。他の実施形態によると、るつぼ支持部の円筒形状部分50には、シリコンカーバイドおよびセラミックも利用可能である。円筒形状部分50は、アンプル26と円形状に接触する。円筒形状部分50の上側縁部は、アンプルのテーパー形状領域38の肩部分に当接している。このような構成とすることによって、固体同士の接触が最小限に抑えられ、比較的制御不可能な熱伝導が発生するという望ましくない事態をほぼ、または完全に生じなくすることができる。この結果、加熱をより制御可能な方法で行うことができる。
【0013】
セラミックファイバー等の低密度絶縁材料で、当該絶縁材料の略中心に位置する軸状の中空コア52のみをアンプル26のシードウェル42を挿入するべく残して、支持用円筒形状部分50の内側の大半を充填する。他の実施形態では、低密度絶縁材料は、アルミナファイバ(摂氏1800度)、アルミナシリカファイバ(摂氏1426度)、および/または、ジルコニアファイバ(摂氏2200度)を含むとしてもよい。絶縁材料は、るつぼ支持部22に慎重に配置される。円筒形状部分50の上にアンプル26を置くと、アンプル26の重量によって絶縁材料が押し下げられて、斜め絶縁材料端部54が形成される。円筒形状部分の内部の大半を低密度絶縁材料で充填することによって、空気流が少なくなり、望ましくない比較的制御不可能な対流の発生を完全または略完全に防ぐ。対流は、伝導と同様に、制御不可能な熱伝達プロセスであり、VGF結晶成長プロセスおよびその他の結晶成長プロセスに悪影響を及ぼす。
【0014】
中空コア52は、直径がアンプルのシードウェル42と略等しく、アンプルのシードウェル42の底部の下方でわずかな距離だけ下方に延伸している。別の実施形態によると、中空コア52は、シードウェルの底部から炉装置24の底部まで、るつぼ支持部を貫通して延在している。中空コア52は、結晶の中心からの冷却路となっている。中空コア52は、シードウェル内および成長中の結晶の中心における冷却に寄与している。このような構成によると、熱エネルギーは、固体状の結晶およびシードの中心を通って下方に放熱され、結晶支持部22内の絶縁材料内にある中空コア52を通って下方に放熱される。中空コア52が無ければ、冷却しているインゴットの中心の温度は、外面に近い結晶材料よりも高くなるのが自然であろう。この場合、インゴットの中心は、どの水平方向の断面においても、インゴットの外周部が固体化した後に結晶化することになる。このような条件下では電気特性が均一な結晶を形成することができない。結晶支持方法に中空コア52の形成を含めることによって、熱エネルギーはアンプル26の底部および中空コア52を下方に伝導していき、そこから放射チャネル56から放射状に放熱される。成長中の結晶の中心から熱エネルギーを減らして、結晶の直径方向にわたって複数の等温層を平坦に維持することが重要である。結晶−融体界面を平坦に維持することによって、電気特性および物理特性が均一な結晶を成長させることが可能となる。
【0015】
円筒形状部分50内の低密度絶縁材料は、一群の炉内加熱部60からアンプル26へのシードウェル領域42における熱放射流を妨害するので、この方法では絶縁材料を貫通する複数の水平方向の放射チャネル/開口/トンネル56を形成する必要がある。放射チャネル56は、絶縁材料を貫通するように構成されており、炉内加熱部60からアンプルシードウェル42への熱伝導を制御する熱放射口となる。放射チャネル56の数、形状および直径は、具体的な条件によって変わる。また、放射チャネルは、斜めになっていてもよいし、屈曲していてもよいし、または、波状になっているとしてもよい。また、放射チャネルは、絶縁材料内の一部のみで延在しているとしてもよいので、一続きの部材である必要は必ずしもない。これによって、対流を最小限に抑えることが容易になる。一実施形態によると、放射チャネルの直径は、小さくて鉛筆の幅のオーダであるので、対流は大きな問題にならない。本発明の他の実施形態では、断面積が1インチ四方以上のオーダの大きな穴としてもよい。絶縁材料を貫通するように形成されている放射チャネル56は、絶縁材料の中心にある中空コア52と組み合わせられることで、結晶の中心から引き出される熱エネルギーを放熱して、複数の平面状の等温温度勾配層を持つ結晶を冷却する。放射チャネル56は、温度制御を可能とする構成要素であり、結晶成長の収率に直接関係する。
【0016】
図1に示す炉24は、垂直勾配冷却(VGF)結晶成長プロセス、および、垂直ブリッジマン(VB)結晶成長プロセスまたは垂直ブリッジマン−ストックバーガー(VBS)結晶成長プロセスの両方に用いることができる炉の一例である。他の炉を用いるとしてもよい。VGF結晶成長プロセスでは、加熱源における結晶化温度勾配は、当該加熱源自体が静止しているとしても、結晶が静止している一方で、移動している。VB結晶成長プロセスでは、加熱源および固定結晶化温度勾配は、結晶が移動している一方で、静止している。VBS結晶成長プロセスでは、加熱源および固定結晶化温度勾配は、結晶が静止している一方で、移動している。
【0017】
図2は、ボディ・リネージュ72を持つ結晶インゴット70を示す図である。図2に示すように、ボディ・リネージュは通常、複数の成長面で結晶成長が発生すると形成される欠陥である。ボディ・リネージュが発生すると、ボディ・リネージュ上の結晶およびボディ・リネージュより上方の結晶は、利用不可能になり、リサイクルしなければならない。このため、ボディ・リネージュは結晶成長プロセスの収率が下がる要因となり、ボディ・リネージュを少なくすることが望ましい。一部の炉およびプロセスでは炉のテーパー状部分の角度を変更するが、これでボディ・リネージュの問題が解決するわけではない。このボディ・リネージュの問題を克服する炉および結晶成長プロセスは、所与の炉において、結晶の長さが長くなり、収率が上がる。
【0018】
図3は、ボディ・リネージュを低減することによって結晶が長くなり収率が高くなる垂直勾配冷却(VGF)プロセスおよび垂直ブリッジマン(VB)プロセスの工程を用いた結晶成長法80を示す図である。結晶成長プロセスでは、上述したような結晶成長を実施するため炉を準備する(82)。最初にシードから結晶を成長させるために、VGFプロセスを利用する(84)。結晶成長プロセスのある時点において、VBプロセス(86)またはVBSプロセスを利用して、結晶成長を完了させる。VBプロセスまたはVBSプロセスを用いる場合、融体/固体ラインを所与のレベルに保持して、当該プロセスをそのままの条件で継続して実行する。これは、体積が減少するとVGFプロセスで通常必要となるプロセスの変更が必要ないためである。当該プロセスの一実施例によると、VBプロセスは、図1に示すテーパー状領域38の約12−15mm(1/2インチ)上方で利用されるとしてよい。VGFプロセスおよびVBプロセスを組み合わせることによって、結晶が長くなると共にボディ・リネージュが少なくなる。上記の方法は、図1に示す炉で利用されるとしてよいが、任意のその他の結晶成長炉と共に利用するとしてよい。上記の方法は、直径が2インチから6インチ、またはそれ以上の結晶を成長させるために用いられるとしてよい。
【0019】
図4に示すように、投入用るつぼ90は、るつぼ27の上方に配置するとしてよく、るつぼ27に投入する原材料の量を多くすることが可能となる。具体的には、ヒ化ガリウム原材料92は、固体であるので融解させるためのるつぼ27に密に詰め込むことができない。このため、投入用るつぼを用いて、融解してるつぼに落とすことが可能となるように余分に原材料を保持させることによって、るつぼ27に充填するヒ化ガリウムの量が多くなり、ヒ化ガリウム結晶の長さが長くなる。例えば、原材料の約65%を最初に投入用るつぼ90に投入して、原材料のうち35%を直接るつぼ27に投入するとしてよい。本発明を限定するものではないが一例として、上記の結晶成長炉への投入方法は、15kgを炉に投入すると、115枚のウェハを製造し得る線形欠陥のない115mmのインゴットが生成される。
【0020】
上記の結晶成長炉および結晶成長法(VGFおよびVBを組み合わせた方法)を用いて直径6インチ(150mm)のヒ化ガリウムを成長させる例を以下でより詳細に説明する。一例として、結晶を成長させる場合、るつぼの寸法は、直径が150mmで結晶成長領域40の長さが170mmであった。るつぼの直径は、シードウェル領域42において、7mmであった。当該例によると、ノンドープGaAsインゴットを成長させるべく14kgのGaAs多結晶材料を投入した。動作について説明すると、最初に、GaAsシード結晶をpBNるつぼ27の底部に挿入する。続いて、14kgのGaAs多結晶材料、液状封止剤として100gの三酸化ホウ素をそれに追加する。そして、投入が終わったpBNるつぼを、石英製のアンプルに挿入した。石英製のアンプルを、減圧下で、石英製のキャップで封止した。その後、石英製のアンプルを炉の内部へ投入して、るつぼ支持部上に配置する。
【0021】
アンプルを炉内に投入すると、約摂氏270度/時の速度で石英製のアンプルを加熱するとしてよい。一例を挙げると、温度がヒ化ガリウムの融点(摂氏1238度)を摂氏27−28度上回ると、多結晶ヒ化ガリウム材料が全て融解するまで(約10時間)この温度を保持するとしてよい。多結晶ヒ化ガリウム材料が融解すると、最初にVGF法を用いて結晶成長を行った。この後、下部加熱ゾーンにおいてゆっくりと温度を低下させるとしてよい。こうして、温度勾配を摂氏1.2度−1.8度/cmで維持している間、結晶成長領域が摂氏0.3−0.47度/時という冷却速度で冷却されるまで、シード部分で開始する結晶成長を開始させて中間領域に継続させる。
【0022】
本例によると、結晶成長領域において約1インチの高さまで結晶が成長すると、VBプロセスを開始するとしてよい。VBプロセスでは、るつぼ降下速度は高精度で制御され、冷却速度は摂氏0.29度/時間にして、温度勾配は摂氏1.8−5.2度/cmとする。この結果、このようなプロセスでは長さが105mmのインゴットから長さが81mmの高品質の結晶が得られるとしてよい。この場合、結晶収率は77%となる。結晶成長開始部分から結晶成長終了部分までの単結晶基板は、キャリア濃度が9.02E6/cmから5.30E6/cmであり、抵抗率は1.33E8Ω.cmから1.64E8Ω.cmであるとしてよい。また、転位密度は、結晶成長開始部分において3000/cmであり、結晶成長終了部分において5000/cmであってよい。さまざまなシステムパラメータを適切に変更することによって、実施形態で明示的に説明した方式以外のプロセスで動作し得ることが当業者には公知である。
【0023】
本発明を具体的な実施形態を参照しつつ上記で説明したが、本発明の原理および意図から逸脱することなく本実施形態を変更し得ることは当業者には明らかである。本発明の範囲は請求項で定義するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱源、ならびに、原材料およびシード結晶を含むるつぼを支持する可動性のるつぼ支持部を有する結晶成長炉と、
前記結晶成長炉に結合されているコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
前記加熱源および前記可動性のるつぼ支持部を制御して、
前記結晶成長炉の内部にある場合に前記るつぼ上で、前記原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直すべく、静止している前記るつぼに対して相対的に結晶化温度勾配を移動させるように前記加熱源が調整される結晶成長プロセスを実行し、
結晶成長が所定の長さに到達すると、前記るつぼ上で、前記原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直す動作を継続して行うべく、静止している前記加熱源に対して前記るつぼを移動させる結晶成長プロセスを実行する結晶成長装置。
【請求項2】
前記加熱源は、静止している加熱源である請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項3】
前記結晶成長炉は、テーパー状結晶成長領域を持ち、結晶成長の前記所定の長さは、前記テーパー状結晶成長領域の上方に約0.25mmから約50mmである請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項4】
前記結晶成長炉はさらに、垂直勾配冷却炉を有する請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項5】
前記結晶成長炉は、ボディ・リネージュがない結晶インゴットを製造する請求項3に記載の結晶成長装置。
【請求項6】
前記結晶インゴットは、ヒ化ガリウムである請求項5に記載の結晶成長装置。
【請求項7】
前記垂直勾配冷却法は、約0.1℃/時から約10.0℃/時の冷却速度且つ約0.5℃/cmと約10.0℃/cmとの間の温度勾配で、結晶を成長させる請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項8】
前記垂直ブリッジマン法は、約0.1℃/時から約10.0℃/時の冷却速度且つ約0.5℃/cmから約10.0℃/cmの温度勾配で、結晶を成長させる請求項7に記載の結晶成長装置。
【請求項9】
前記るつぼに供給するヒ化ガリウム原材料の量を増やすべく、融解させて前記るつぼに供給するヒ化ガリウム原材料を投入用に保留している投入用るつぼをさらに備える請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項10】
可動性の加熱源、および、原材料およびシード結晶を含むるつぼを支持する固定されたるつぼ支持部を有する結晶成長炉と、
前記結晶成長炉に結合されているコントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記可動性の加熱源を制御して、
前記結晶成長炉の内部にある場合に前記るつぼ上で、前記原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直すべく、静止した前記加熱源を調整して、静止している前記るつぼに対して相対的に結晶化温度勾配を移動させる結晶成長プロセスを実行し、
結晶成長が所定の長さに到達すると、前記るつぼ上で、前記原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直す動作を継続して行うべく、静止している前記るつぼに対して相対的に前記加熱源を移動させる結晶成長プロセスを実行する結晶成長装置。
【請求項11】
前記結晶成長炉は、テーパー状結晶成長領域を持ち、結晶成長の前記所定の長さは、前記テーパー状の結晶成長領域の上方に約0.25mmから約50mmである請求項10に記載の結晶成長装置。
【請求項12】
前記結晶成長炉はさらに、垂直勾配冷却炉を有する請求項10に記載の結晶成長装置。
【請求項13】
前記結晶成長炉は、ボディ・リネージュがない結晶インゴットを製造する請求項11に記載の結晶成長装置。
【請求項14】
前記結晶インゴットは、ヒ化ガリウムである請求項13に記載の結晶成長装置。
【請求項15】
前記垂直勾配冷却法は、約0.1℃/時から約10.0℃/時の冷却速度且つ約0.5℃/cmと約10.0℃/cmとの間の温度勾配で、結晶を成長させる請求項10に記載の結晶成長装置。
【請求項16】
前記垂直ブリッジマン−ストックバーガー法は、約0.1℃/時から約10.0℃/時の冷却速度且つ約0.5℃/cmから約10.0℃/cmの温度勾配で、結晶を成長させる請求項15に記載の結晶成長装置。
【請求項17】
前記るつぼに供給するヒ化ガリウム原材料の量を増やすべく、融解させて前記るつぼに供給するヒ化ガリウム原材料を投入用に保留している投入用るつぼをさらに備える請求項10に記載の結晶成長装置。
【請求項18】
シードおよび原材料を含むるつぼを持つアンプルを、加熱源を持つ炉に挿入する段階と、
加熱源における結晶化温度勾配を、静止している前記るつぼに対して相対的に移動させて、前記原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直す垂直勾配冷却法を用いて結晶を成長させる段階と、
結晶成長が所定の長さに到達すると、前記炉の内部の前記アンプルにおいて、静止している前記加熱源に対して相対的に前記アンプルを移動させて、前記原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直す動作を継続して行う垂直ブリッジマン法を用いて前記結晶を成長させる段階と
を備える結晶成長方法。
【請求項19】
前記加熱源は、静止している加熱源である請求項18に記載の結晶成長方法。
【請求項20】
前記炉は、テーパー状結晶成長領域を持ち、結晶成長の前記所定の長さは、前記テーパー状結晶成長領域の上方に約0.25mmから約50mmである請求項18に記載の結晶成長方法。
【請求項21】
前記炉はさらに、垂直勾配冷却炉を有する請求項18に記載の結晶成長方法。
【請求項22】
ボディ・リネージュがない結晶インゴットを製造する段階をさらに備える請求項20に記載の結晶成長方法。
【請求項23】
前記結晶インゴットは、ヒ化ガリウムである請求項22に記載の結晶成長方法。
【請求項24】
前記垂直勾配冷却法を用いて前記結晶を成長させる段階は、約0.1℃/時から約10.0℃/時の冷却速度且つ約0.5℃/cmと約10.0℃/cmとの間の温度勾配で、前記結晶を成長させる段階を有する請求項18に記載の結晶成長方法。
【請求項25】
前記垂直ブリッジマン法を用いて前記結晶を成長させる段階は、約0.1℃/時から約10.0℃/時の冷却速度且つ約0.5℃/cmから約10.0℃/cmの温度勾配で、前記結晶を成長させる段階を有する請求項24に記載の結晶成長方法。
【請求項26】
前記るつぼに供給するヒ化ガリウム原材料を増やすべく、融解させて前記るつぼに供給するヒ化ガリウム原材料の投入用の保留分を、投入用るつぼを用いて、投入する段階をさらに備える請求項18に記載の結晶成長方法。
【請求項27】
シードおよび原材料を含むるつぼを持つアンプルを、加熱源を持つ炉に挿入する段階と、
静止している前記加熱源における結晶化温度勾配を、静止している前記るつぼに対して相対的に移動させて、前記原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直す垂直勾配冷却法を用いて結晶を成長させる段階と、
結晶成長が所定の長さに到達すると、前記炉の内部の前記アンプルにおいて、静止している前記アンプルに対して相対的に前記結晶化温度勾配を含む前記加熱源を移動させて、前記原材料を融解させて単結晶化合物として形成し直す動作を継続して行う垂直ブリッジマン−ストックバーガー法を用いて前記結晶を成長させる段階と
を備える結晶成長方法。
【請求項28】
前記炉は、テーパー状結晶成長領域を持ち、結晶成長の前記所定の長さは、前記テーパー状結晶成長領域の上方に約0.25mmから約50mmである請求項27に記載の結晶成長方法。
【請求項29】
前記炉はさらに、垂直勾配冷却炉を有する請求項27に記載の結晶成長方法。
【請求項30】
ボディ・リネージュがない結晶インゴットを製造する段階をさらに備える請求項28に記載の結晶成長方法。
【請求項31】
前記結晶インゴットは、ヒ化ガリウムである請求項30に記載の結晶成長方法。
【請求項32】
前記垂直勾配冷却法を用いて前記結晶を成長させる段階は、約0.1℃/時から約10.0℃/時の冷却速度且つ約0.5℃/cmから約10.0℃/cmの温度勾配で、前記結晶を成長させる段階を有する請求項27に記載の結晶成長方法。
【請求項33】
前記垂直ブリッジマン−ストックバーガー法を用いて前記結晶を成長させる段階は、約0.1℃/時から約10.0℃/時の冷却速度且つ約0.5℃/cmから約10.0℃/cmの温度勾配で、前記結晶を成長させる段階を有する請求項32に記載の結晶成長方法。
【請求項34】
前記るつぼに供給するヒ化ガリウム原材料を増やすべく、融解させて前記るつぼに供給するヒ化ガリウム原材料の投入用の保留分を、投入用るつぼを用いて、投入する段階をさらに備える請求項27に記載の結晶成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−507313(P2013−507313A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533126(P2012−533126)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/060072
【国際公開番号】WO2011/043777
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(500406056)エーエックスティー,インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】