説明

絨毛性体乳腺発育ホルモンのスプライシング変種

本発明は、INSP100は、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B;Q14407)の新規スプライシング変種であること、およびINSP104は、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A;P01243)の新規スプライシング変種であることを基にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各々、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B;Q14407)およびヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A;P01243)の新規スプライシング変種としてここで同定された、INSP100およびINSP104と称される新規タンパク質、ならびに疾患の診断、予防および治療のためのこれらのタンパク質およびコード遺伝子に由来する核酸配列の使用に関する。この変種は、変化したA-Bループを有し、その結果変化した受容体結合特性を有すると推定される。
本明細書に引用した全ての刊行物、特許および特許出願は、引用により完全に本明細書に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
(背景)
薬剤の発見過程において、機能ゲノム学の時代の到来にあわせて根幹的な革命が現在進行している。“機能ゲノム学”という用語は、対象のタンパク質配列に機能を帰属させるためにバイオインフォマティクスツールを利用するアプローチに用いられる。そのようなツールは、配列データの生成速度が、これらタンパク質配列に機能を割り当てる研究室の能力をはるかに越えるのでますます必要性を増している。
バイオインフォマティクスツールの潜在能力および精度が高まっているために、前記ツールは通常の生化学的特徴付け技術と急速に置き換えられつつある。実際、本発明の同定に用いた高度なバイオインフォマティクスツールは、今や、高い信頼性をもつ結果を出力する能力を有する。
配列データが利用可能になるにつれ、種々の研究機関および企業組織がそれらを調査し、重要な発見が絶え間なく達成され続けている。しかしながら、研究および薬剤発見のための標的として、更なる遺伝子およびそれらがコードするポリペプチドを同定し特徴付ける必要性は引き続き存在している。
【0003】
選択的プレ-mRNAスプライシングは、機能的に多様なタンパク質が、単独の遺伝子の一次転写産物から、多くは組織特異的パターンで作成される主要な細胞過程である。
実験的に、スプライシング変種は、変種mRNAの偶然の単離およびそれに続く配列決定により同定される。しかしこの実験的手法は、ヒトトランスクリプトームについては網羅的に完了してはおらず(これは、あらゆる可能性のある環境条件下でのヒトの全組織由来の全mRNAの系統的単離および配列決定を必要とするので)、かつこの実験的制限のために、多数のスプライシング変種が同定されないまま残されている。
本発明者らは、ヒト成長ホルモン遺伝子のスプライシング変種の存在に関して、独自仕様のバイオインフォマティクス法を用い、意図的な方向性のある検索を行った。この方法により、実験により既知のスプライシング変種の限定されたデータセットを、推定されたスプライシング変種のはるかに大きいセットへ拡大することができる。
【0004】
[内分泌ホルモン]
ホルモンは、中間代謝、成長および細胞分化を包含する多種多様な生理的機能を調節する。これらは、それらの物理化学的特性に応じて、ふたつの基本的作用機序を有する。親油性ステロイドホルモンおよび甲状腺ホルモンは、疎水性であり、主に細胞内で作用し、遺伝子転写を調節するのに対し、アドレナリンおよびメラトニンのようなペプチドホルモンは、親水性であり、細胞膜で作用し、細胞内調節作用につながるシグナル伝達事象のカスケードの引き金を引く(Lodish et al. (1995) Molecular Cell Biology, Scientific American Books Inc. , New York, NY, pp.856-864)。ホルモンは、内分泌腺の特化された細胞において産生され、それらの標的細胞へ血液循環により到達する。ステロイドホルモンは、主として副腎皮質、卵巣および精巣の細胞の細胞質ゾルおよびミトコンドリアにおいて生じる一連の酵素反応によりコレステロールから誘導される。場合によっては、ステロイドホルモンは、活性化されるかまたはより活性のある誘導体を生成するために、標的組織において修飾が施されなければならない。ほとんどのペプチドホルモンは、前駆体タンパク質(プロホルモン)の形で合成され、内分泌細胞に貯蔵される。循環中へ放出される前に、プロホルモンは活性ホルモンに切断される。いくつかのホルモン(主にステロイドホルモンおよび甲状腺ホルモン)は、特異的結合タンパク質に結合しながら、循環系で輸送される。これらのタンパク質は、必要な時にホルモンを放出し、またホルモンを迅速な失活から保護するホルモン貯蔵庫(depot)として働く。
【0005】
ヒトの全身の生理におけるホルモンの中心的性質のために、ホルモン機能の調節不能は、多くの疾患過程において役割を果たすことが示されており、これは腫瘍(Sommer S. and Fuqua S. A., (2001) Semin Cancer Biol., Oct; 11(5): 339-52;Bartucci M. , Morelli C. , Mauro L, Ando S. , and Surmacz E., (2001) Cancer Res., Sep 15; 61(18): 6747-54;Oosthuizen G. M. , Joubert G. , and du Toit R. S., (2001) S. Afr. Med. J., Jul ; 91(7): 576-79;Nickerson T. , Chang F. , Lorimer D. , Smeekens S. P. , Sawyers C. L. , and Pollak M., (2001) Cancer Res., Aug 15; 61(16): 6276-80)、心血管疾患(Liu Y. , Ding J. , Bush T. L., Longenecker J. C. , Nieto F. J. , Golden S. H. , and Szklo M., (2001) Am. J. Epidemiol., Sep 15; 154(6): 489-94)、代謝疾患(Flyvbjerg A., (2001) Growth Horm. IGF Res., Jun; ll Suppl. A,: S115-9;Diamond T. , Levy S. , Smith A. , Day P. and Manoharan A., (2001) Intern. Med. J., Jul ; 31(5): 272-8;Toprak S., Yonem A., Cakir B., Guler S. , Azal O., Ozata M. , and Corakci A., (2001) Horm. Res., 55(2) : 65-70)、炎症(McEvoy A. N. , Bresnihan B. , FitzGerald O., and Murphy E. P., (2001) Arthritis Rheum., Aug ; 44(8): 1761-7,; Lipsett P. A., (2001) Crit. Care Med., Aug; 29(8) : 1642-4)、およびCNS関連疾患(Bowen R. L., (2001) JAMA., Aug 15; 286(7): 790-1)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0006】
[成長ホルモンファミリー]
成長ホルモンは、構造的類似性および生物学的活性を共有するポリペプチドホルモンのファミリーのメンバーであり、全ての脊椎動物において下垂体によりおよび一部の哺乳類の胎盤において生成される。ファミリーのメンバーは、下垂体プロラクチン、胎盤ラクトゲン(同じくヒトの絨毛性体乳腺発育ホルモン[hCS]とも称される)、反芻動物および齧歯類のプロラクチン-関連タンパク質、マウスのプロリフェリン、および魚類のソマトラクチンがある。
ほとんどのGHファミリーのメンバーをコードしている遺伝子は、5個のエクソンおよび4個のイントロンを含み、脊椎動物の出現前に単一の祖先遺伝子の複製により生じたように見える。スプライシング変種およびプロセッシング変種が、このファミリーの数種類のメンバーについて説明されている。
染色体第17q22-24上に位置したヒトGH-関連遺伝子ファミリーは、高度に配列が保存された遺伝子および6番染色体上の単一のプロラクチン遺伝子の遺伝子クラスターからなる(Owerbach D. et al., Science 1981)。この遺伝子クラスターは、5個の構造遺伝子である2個のGH遺伝子および3個のCS遺伝子を含み、それらの発現は、組織特異性である:hGH-N(N=正常)、hGH-V(V=変種)、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン-様(hCS-L)、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモンAおよびB(hCS-AおよびhCS-B)(Misra-Press, A et al. JBC 1994; Boguszewski C. et al., JBC, 1998)。
タンパク質のGH-関連ファミリーは、それらの3次元構造が4個の逆平行ヘリックスバンドルとしても知られている4個のα-ヘリックスを構成するので、構造的類似性を共有している。これらのα-ヘリックスは、密にパッキングされ、これらの平行対の2個の長いループ連結により、上-上-下-下方向に逆平行に配置されている。
【0007】
hGH/hCS遺伝子ファミリーは、母親と胎児の代謝のならびに胎児の成長および発育の調節において、重要である。妊娠時に、母親の下垂体GH(hGH-N)発現は抑制され;および、胎盤により発現されたGH変種であるhGH-Vが、母親における優勢なGHとなり始める。hCS-A遺伝子およびhCS-B遺伝子の産物であるhCSは、妊娠6週目以降、母親と胎児の両方の循環に分泌される。hGH-VおよびhCSは、母親において調和して作用し、インスリン-様成長因子(IGF)生成を刺激し、および中間代謝を調節し、胎児におけるブドウ糖およびアミノ酸の利用可能性の増加を生じる。胎児において、hCSは、ラクトゲン受容体および恐らくは独自のCS受容体を介して作用し、胚の発達を調節し、中間代謝を調節し、IGF、インスリン、副腎皮質ホルモンおよび肺のサーファクタントの生成を刺激する。胎児組織には機能的GH受容体が存在しないので、胎児下垂体において発現されるhGH-Nは、妊娠後期までは、胎児においてほとんどまたは全く生理的作用を有さない。強力な体形成性ホルモンでもあるhGH-Vは、胎児には放出されない。まとめると、妊娠中のhGH/hCS遺伝子ファミリーの研究は、これらのホルモンの互いのおよび他の成長因子との複雑な相互作用を明らかにした。胎児の成長および発達の調節におけるファミリーのメンバーの、ならびにこれらの遺伝子の発現を調節する因子の相対的役割を明らかにするためには、追加の研究が必要である(Handwerger S. & Freemark M. J., Pediatr. Endocrinol. Metab., 2000 Apr ; 13(4): 343-56)。
【0008】
ヒト成長ホルモンは、ソマトトロピンとしても知られており、下垂体前方の成長ホルモン分泌細胞(somatotroph)と称される細胞により合成および分泌される約190個のアミノ酸のタンパク質ホルモンである。これは主に、成長および代謝を含む、いくつかの複雑な生理的過程の制御に関与している。成長ホルモンは、ヒトおよび動物の両方において使用される薬物としてもかなり関心がある。
成長ホルモンは、ふたつの個別の作用型を有する。直接作用は、標的細胞上のその受容体に結合する成長ホルモンの結果である。脂肪の細胞(脂肪細胞)は、例えば、成長ホルモン受容体を有し、成長ホルモンは、それらを刺激し、トリグリセリドを破壊し、それらの循環脂肪を取込みおよび蓄積する能力を抑制する。間接作用は、インスリン-様成長因子-1(IGF-1)により主に媒介される。体の成長の刺激における成長ホルモンの主要な役割は、肝臓および他の組織を刺激し、IGF-1を分泌することである。成長ホルモンの成長促進作用の大部分は、実際にはIGF-1のその標的細胞に対する作用に帰因している。例えば、IGF-1は、軟骨細胞(軟骨の細胞)の増殖を刺激し、骨成長を生じる。成長ホルモンは、タンパク質、脂質および炭水化物の代謝に対する重要な作用も有する。場合によっては、成長ホルモンの直接作用が明らかに示され、他方でIGF-1は、重要なメディエーターであると考えられ、一部の場合では直接作用および間接作用の両方が作用しているように見える。
その成長に対する複雑な作用に加え、成長ホルモンの欠乏および過剰の両方の状態は、正常な生理におけるこのホルモンの役割に対する非常に明白な証拠を提供する。このような障害は、視床下部、下垂体または標的のいずれかの細胞における病巣を反映し得る。欠乏状態は、単にこのホルモンの生成の欠乏から生じるのではなく、ホルモンに対する標的細胞の応答性の欠乏からも生じる。
【0009】
臨床上、成長ホルモンの欠乏または受容体の欠損は、成長の遅れまたは小人症となる。成長ホルモン欠乏の顕在化は、障害の開始年齢によって異なり、遺伝性または後天性のいずれかの疾患から生じ得る。
成長ホルモンの過剰な分泌の作用も、発症年齢に非常に左右され、ふたつの個別の疾患であるように見える。巨人症は、小児または青年において始まる過剰な成長ホルモン分泌の結果である。これは非常に稀な障害であり、通常成長ホルモン分泌細胞の腫瘍の結果である。
末端肥大症は、成人における成長ホルモンの過剰分泌の結果である。この障害の開始は、典型的には潜伏性である。臨床上は、骨および結合組織の過剰な成長が、“粗雑な造作(coarse feature)”と説明されるような外観の変化につながる。過剰な成長ホルモンおよびIGF-1は、グルコース不耐を含む代謝の撹乱につながる。
ヒト死体下垂体から精製された成長ホルモンが、重度の成長遅滞の小児を治療するために長く使用されている。最近になって、組換え成長ホルモンの利用可能性が、ヒトおよび動物集団へのいくつかの別の応用につながっている。例えば、ヒト成長ホルモンは、病的に低身長症の小児を治療するために、通常使用される。正常な加齢における成長ホルモンの役割は余り理解されていないが、一部の加齢の美容上の症状は、成長ホルモン療法に反応し易いように見える。成長ホルモンは現在、乳牛の乳汁生産増大に関して承認されかつ市販されており;畜産産業における成長ホルモンの別の適用は、ブタ成長ホルモンによるブタの生育の処置である。このような処置は、筋肉成長を著しく刺激し、脂肪の沈着を低下することが明らかにされている。
成長ホルモンは、細胞過程において重要な役割を果たすので、この部分の研究およびその調節の方法は、大きな関心である。このホルモンのスプライシング変種を同定することは、非常に科学的に重要であろう。
【発明の開示】
【0010】
[本発明]
本発明は、INSP100は、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B;Q14407)の新規スプライシング変種であり、INSP104は、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A;P01243)の新規スプライシング変種であるという発見を基にしている。
本発明の第一の特徴のひとつの態様において:
(i)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12に記載のアミノ酸配列を含むまたはこれらからなるポリペプチド;
(ii)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12のフラグメントを含むまたはこれらからなり、前記フラグメントは、少なくとも、INSP100/INSP104のエクソン2の伸長部分のフラグメントを含むもしくはこれからなり、前記配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12のフラグメントは、成長ホルモンとして機能するか、もしくは配列番号:6に記載のアミノ酸配列に特異的である抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)との機能的等価物;
であるポリペプチドが提供される。
【0011】
好ましくは、本発明の第一の特徴の第一の態様のポリペプチドは:
(i)配列番号:8、配列番号:10もしくは配列番号:12に記載のアミノ酸配列を含むまたはこれらからなる、ポリペプチド;
(ii)配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12のフラグメントであり、前記フラグメントは、少なくとも、INSP100/INSP104のエクソン2の伸長部分のフラグメントを含むもしくはこれからなり、前記配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12のフラグメントは、成長ホルモンとして機能するか、もしくは配列番号:6に記載のアミノ酸配列に特異的である抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)との機能的等価物である。
好ましくは、本発明のポリペプチドは、成長ホルモンとして機能するか、または配列番号:6に記載のアミノ酸配列に特異的である抗原決定基を有する。
配列番号:2に記載された配列を有するポリペプチドは、以後“INSP100エクソン2novポリペプチド”または“INSP104エクソン2novポリペプチド”と称される。配列番号:4に記載された配列を有するポリペプチドは、以後“INSP100エクソン3novポリペプチド”または“INSP104エクソン3novポリペプチド”と称される。配列番号:6に記載された配列を有するポリペプチドは、以後“INSP100隣接エクソン2nov-3novポリペプチド”または“INSP104隣接エクソン2nov-3novポリペプチド”と称される。配列番号:8に記載された配列を有するポリペプチドは、以後“INSP100完全長ポリペプチド”と称される。配列番号:10に記載された配列を有するポリペプチドは、以後“INSP100完全長成熟ポリペプチド”または“INSP104完全長成熟ポリペプチド”と称される。配列番号:12に記載された配列を有するポリペプチドは、以後“INSP104完全長ポリペプチド”と称される。
【0012】
本明細書において使用される用語“INSP100ポリペプチド”は、INSP100エクソン2novポリペプチド、INSP100エクソン3novポリペプチド、INSP100隣接エクソン2nov-3novポリペプチド、INSP100完全長ポリペプチド、およびINSP100完全長成熟ポリペプチドを含むかまたはこれらからなるポリペプチドを含む。
本明細書において使用される用語“INSP104ポリペプチド”は、INSP104エクソン2novポリペプチド、INSP104エクソン3novポリペプチド、INSP104隣接エクソン2nov-3novポリペプチド、INSP104完全長ポリペプチド、およびINSP100完全長成熟ポリペプチドを含むかまたはこれらからなるポリペプチドを含む。
図2は、ヒト由来のQ14407絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B)のスプライシングパターンを、新規スプライシング変種INSP100のスプライシングパターンと比較している。また図2は、ヒト由来のP01243絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A)のスプライシングパターンを、新規スプライシング変種INSP104のスプライシングパターンと比較している。新規スプライシング変種INSP100およびINSP104は両方とも、伸長されたエクソン2(2nov)および短縮されたエクソン3(3nov)を有する。
この図は、下垂体成長ホルモン(GH-N)を基にした主な二次構造エレメントも描いている。GH-Nは、4個のαヘリックス(A、B、CおよびD)で構成され、および特に重要であるのは、ヘリックスAとヘリックスBを連結している“A-Bループ”である。A-Bループは、成長ホルモン受容体と結合するGH-N相互作用表面の重要な成分である(Well JA, PNAS, vol93 pp.1-6, 1996 “Binding in the growth hormone receptor complex”)。
【0013】
新規スプライシング変種INSP100およびINSP104は、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2の新規スプライシング変種(hCS-B;Q14407)および公知のヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1の新規スプライシング変種 (hCS-A;P01243)と比べ、A-Bループに挿入された追加の残基を有する(各エクソン2の伸長のため)ことが分かる。同様に、各エクソン3の短縮は、A-Bループにおける一部のhCS-AおよびhCS-B残基の除去につながる。したがってINSP100およびINSP104は、A-B ループの組成においてhCS-AおよびhCS-Bとは異なり、ならびにこのループは同族受容体への結合における主要な決定基であるので、INSP100およびINSP104は、変化した受容体結合特性(結合親和性および/または受容体選択性に関して;例えば増加したまたは減少した結合親和性および/または受容体選択性に関して)を示すと推定される。
“成長ホルモンとして機能する”により、本発明者らはそのポリペプチドの活性は、完全長野生型ポリペプチド(配列番号:8、10、または12)の機能と比べ実質的に有害な影響を受けない、ヒト成長ホルモン内の保存された特徴として同定されたアミノ酸配列または構造の特徴を含むポリペプチドを意味することを意図している。例えば、多種多様なアッセイを用い、ヒト成長ホルモンの結合に対する作用を決定することができ(例えば、Well J.A. PNAS, Vol.93 pp.1-6, 1996参照)、これは成長ホルモンおよび受容体の1:1複合体を沈降させるためのモノクローナル抗体の使用、ならびにhGHbpのC末端近傍に位置した蛍光タグの消光による、溶液中でhGHによって誘導されるhGHbp分子の二量体化アッセイを含む(Well J.A. PNAS Vol.93 pp.1-6,1996参照)。[hGHbp=GH受容体の細胞外ドメイン]。
【0014】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B;Q14407)またはヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A;P01243)と比べて、低下したまたは増加した親和性および/または受容体選択性を有する。 “配列番号:6に記載のアミノ酸配列に対し特異的である抗原決定基”とは、配列番号:6のポリペプチドにより保持されているが、公知のヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B;Q14407)または公知のヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A;P01243)によっては保持されない抗原決定基をいう。このような抗原決定基は、エクソン2の伸長部分をコードしている配列番号:2の一部内に位置したアミノ酸配列からなるか、または配列番号:2の配列番号:4との接合点に広がるアミノ酸配列からなるか、またはエクソン2の伸長部分によりコードされた配列番号:2の一部と、エクソン2の非-伸長部分によりコードされた配列番号:2の一部の接合部に広がるアミノ酸配列(すなわち、Q14407およびP01243のエクソン2に共通のアミノ酸配列)からなってよい。以下に考察したように、このような抗原決定基は、本発明のポリペプチドに免疫特異的であるリガンド、例えばポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を作成することができる。
好ましくは、本発明のポリペプチドは、以下のアミノ酸配列の1種、2種または全てを含まない:(i) Q14407またはP01243の完全なエクソン3によりコードされたアミノ酸配列;(ii) INSP100もしくはINSP104またはそれらのフラグメントに共通でないQ14407またはP01243のエクソン3アミノ酸配列のフラグメント(例えば、INSP100またはINSP104に共通でないQ14407またはP01243のエクソン3アミノ酸配列のフラグメントの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%を示すフラグメント);(iii) これらのアミノ酸配列のいずれかひとつと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列。本発明のポリペプチドは、配列番号:2でコードされたアミノ酸配列のC-末端にこれらのアミノ酸配列のひとつを含まないことが特に好ましい。
ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2、NM_020991およびヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1、NM_001317をコードしているコード配列は、本発明の範囲から特に排除される。
【0015】
第二の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする精製核酸分子を提供する。
本発明のこの特徴の第一の態様において、精製核酸分子は、配列番号:1(INSP100およびINSP104エクソン2novポリペプチドをコードしている)、配列番号:5(INSP100およびINSP104隣接エクソン2nov-3novポリペプチドをコードしている)、配列番号:7(INSP100完全長ポリペプチドをコードしている)、配列番号:9(INSP100およびINSP104完全長成熟ポリペプチドをコードしている)、または配列番号:11(INSP104完全長ポリペプチドをコードしている)に記載された核酸配列を含むか、またはこれらの配列のいずれかひとつの余剰的等価物(redundant equivalent)もしくはフラグメントである。
本発明はさらに、精製核酸分子は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11に記載の核酸配列からなるか、またはこれらの配列のいずれかひとつの余剰的等価物もしくはフラグメントであることを提供する。
ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B;Q14407)およびヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A;P01243)をコードしているコード配列は、本発明の範囲から特に排除される。
第三の特徴では、本発明は、高ストリンジェンシー条件下で本発明の第二の特徴の核酸分子とハイブリダイズするが、高ストリンジェンシー条件下でP01243またはQ14407とはハイブリダイズしない精製核酸分子を提供する。好ましくは、配列番号:1または5と、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする本発明の第三の特徴に従った核酸分子が提供される。好ましくは、エクソン2の伸長部分とハイブリダイズする本発明の第三の特徴に従った核酸分子が提供される。別の態様において、エクソン2の伸長部分と配列番号:3の接合部にかかる核酸配列と、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする本発明の第三の特徴の核酸分子が提供される。
第四の特徴では、本発明は、本発明の第二または第三の特徴の核酸分子を含むベクター、例えば発現ベクターを提供する。
ベクターの好ましい例は、pDONR 221、pEAK12およびプラスミド13685を含む(「実施例」の項参照)。
【0016】
第五の特徴では、本発明は、本発明の第四の特徴のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
第六の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴の成長ホルモンに特異的に結合するリガンドを提供する。
本発明のポリペプチドへのリガンドは、様々な形であることができ、これは天然のまたは改変された基質、酵素、受容体、有機小分子、例えば最大2000Da、好ましくは800Daまたはそれ未満の小さい天然のまたは合成の有機分子、ペプチド模倣物、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、前述の構造的または機能的模倣物を含む。
このような化合物は、本明細書に明らかにされたアッセイ法およびスクリーニング法により同定することができる。
第七の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させるか、または本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節するのに有効な化合物を提供する。
本発明の第七の特徴の化合物は、前記ポリペプチドの遺伝子発現レベルまたは活性を増加させ得るか(アゴニスト作用)、または低下させ得る(アンタゴニスト作用)。
重要なことに、INSP100およびINSP104ポリペプチドの機能を同定することによって、疾患の治療および/または診断に有効な化合物を同定することが可能であるスクリーニング方法の設計が可能になる。本発明の第六および第七の特徴のリガンドおよび化合物は、このような方法を用い同定されても良い。これらの方法は、本発明の特徴に含まれる。
【0017】
第八の特徴で、本発明は、ヒト成長ホルモンが関連した疾患の治療または診断に使用するための、本発明の第一の特徴のポリペプチド、または本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、または本発明の第四の特徴のベクター、または本発明の第六の特徴のリガンド、または本発明の第七の特徴の化合物を提供する。このような疾患および障害は、生殖障害、妊娠障害、例えば妊娠性絨毛疾患、発育障害、例えばSilver-Russell症候群、成長障害、成長ホルモン欠乏症、クッシング病、内分泌障害、細胞増殖障害で、新生物、癌腫、下垂体腫瘍、卵巣腫瘍、メラノーマ、肺腫瘍、結腸直腸腫瘍、乳房腫瘍、膵臓腫瘍、頭部および頚部腫瘍、胎盤部位の栄養膜性腫瘍、腺癌、絨毛上皮腫、骨肉腫および他の固形腫瘍を含むもの;血管新生、骨髄増殖性障害;自己免疫/炎症疾患;心血管系疾患;神経障害、疼痛;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症、および肥満を含むもの、悪液質、AIDS、腎疾患;肺損傷;加齢;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症および寄生体感染症を含むもの、ならびに他の病態を含む。好ましくは、この疾患は、内分泌機能、特に成長ホルモンが関連しているものである(例えば、Arato G. , Fulop V. , Degrell P. , Szigetvari I., Pathol. Oncol. Res., 2000 6(4): 292-4;Hitchins M. P. , Stanier P. , Preece M. A. and Moore GE. , J. Med. Genet., 2001 Dec 38(12): 810-9;Rhoton-Vlasak A. , Wagner J. M. , Rutgers J. L. , Baergen R. N. , Young R. H. , Roche P. C. , Plummer T. B. and Gleich G. J., Hum Pathol, 1998 Mar 29(3): 280-8 ;Llovera M. , Pichard C., Bernichtein S. , Jeay S., Touraine P. , Kelly P. A. and Goffin V. , Oncogene, 2000 Sep 28 19(41): 4695-705;Savage M. O. , Scommegna S. , Carroll P. V. , Ho J. T. , Monson J. P. , Besser G. M. and Grossman AB., Horm. Res., 2002 58 Suppl 1: 39-43;Aimaretti G., Corneli G. , Bellone S. , Baffoni C., Camanni F. and Ghigo E. , J. Pediatr. Endocrinol. Metab., 2001 14 Suppl 5: 1233-42;Berger P. , Untergasser G., Hermann M. , Hittmair A. , Madersbacher S. and Dirnhofer S. , Hum. Pathol., 1999 Oct 30(10): 1201-6;Hamilton J. , Chitayat D. , Blaser S. , Cohen L. E. , Phillips J. A. 3rd and Daneman D. , Am. J. Med. Genet., 1998 Nov 2 80(2): 128-32;Gonzalez- Rodriguez E. , Jaramillo-Rangel G. and Barrera-Saldana H. A. , Am. J. Med. Genet., 1997 Nov 12 72(4): 399-402; Perez Jurado L. A. , Argente J. , Barrios V. , Pozo J. , Munoz M. T., Hernandez M. and Francke U. , J. Pediatr. Endocrinol. Metab., 1997 Mar-Apr 10(2): 185-90;Saeger W. and Lubke D. , Endocr. Pathol. 1996 Spring 7(1) : 21-35 ;Conzemius M. G., Graham J. C. , Haynes J. S. and Graham C. A. , Am. J. Vet. Res., 2000 Jun 61(6): 646-50;Bartlett D. L. , Charland S. , Torosian M. H. , Cancer, 1994 Mar 1 73(5): 1499-504参照)。これらの分子は、このような障害を治療するための医薬品の製造においても使用することができる。
これらの本発明の第一、第二、第三、第四、第五、第六または第七の特徴の部分は、このような疾患を治療するための医薬品の製造に使用することもできる。
【0018】
第九の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベルまたは本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を前記患者由来の組織で評価する工程、および前記発現レベルまたは活性を対照レベルと比較する工程を含む患者の疾患を診断する方法を提供し、この場合前記対照レベルと異なるレベルは疾患の指標となる。このような方法は、好ましくはin vitroで実施されるであろう。同様の方法は、患者における疾患の治療的処置のモニタリングに使用され、この場合、時間の経過にしたがってポリペプチドまたは核酸分子の発現もしくは活性レベルが対照レベルに向かって変化することは、疾患の緩解を示している。
本発明の第一の特徴のポリペプチドを検出する好ましい方法は、以下の工程を含む:(a)本発明の第六の特徴のリガンド、例えば抗体と、生物学的サンプルとを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適した条件下で接触させる工程;および(b)前記複合体を検出する工程。
本発明の第九の特徴によると、例えば短いプローブによる核酸ハイブリダイゼーション法、点変異分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、および、抗体を用いて異常なタンパク質レベルを検出する方法といった種々の異なる方法が存在することは、当業者には明らかであろう。同様の方法を短期または長期ベースで用い、患者においてモニターされる疾患の治療を可能にすることができる。本発明はまた、前記疾患の診断法に有用なキットも提供する。
好ましくは、本発明の第九の特徴の方法により診断された疾患は、ヒト成長ホルモンが関係した疾患である。
第十の特徴では、本発明は、成長ホルモンまたは成長ホルモン活性の調節因子としての第一の特徴のポリペプチドの使用を提供する。成長ホルモンとしての本発明のポリペプチドの適切な使用は、細胞の成長、代謝または分化の制御因子としての使用、受容体/リガンド対の一部としての使用、ならびに生理学的もしくは病理学的状態の診断マーカーとしての使用を含む。
【0019】
前述のように、多くの様々なアッセイを使用し、ヒト成長ホルモンの結合に対する作用を決定することができ(例えば、Well J. A., PNAS, Vol. 93 pp.1-6, 1996参照)、これは成長ホルモンと受容体の1:1複合体を沈降するモノクローナル抗体の使用、およびhGHbpのC末端近傍に位置した蛍光タグの消光による、溶液中でhGHが誘導するhGHbp分子の二量体化アッセイを含む(Well J. A., PNAS, Vol. 93 pp. 1-6, 1996参照)。[hGHbp=GH受容体の細胞外ドメイン]
第十一の特徴において、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、または本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、または本発明の第四の特徴のベクター、または本発明の第六の特徴のリガンド、または本発明の第七の特徴の化合物を、医薬として許容できる担体と組合せて含有する医薬組成物を提供する。
第十二の特徴において、本発明は、治療または診断における使用のための、本発明の第一の特徴のポリペプチド、または本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、または本発明の第四の特徴のベクター、または本発明の第六の特徴のリガンド、または本発明の第七の特徴の化合物を提供する。これらの分子は、疾患の治療のための医薬品の製造において使用することもできる。
第十三の特徴では、本発明は患者の疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、または本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、または本発明の第四の特徴のベクター、または本発明の第六の特徴のリガンド、または本発明の第七の特徴の化合物を、患者に投与することを含む。
【0020】
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードしている天然の遺伝子の発現、または本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現または活性レベルと比較したとき罹患した患者で低下する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンドまたは化合物はアゴニストであるべきである。逆に、前記天然の遺伝子の発現、または前記ポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現または活性レベルと比較したとき罹患した患者で上昇する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンドまたは化合物はアンタゴニストであるべきである。前記アンタゴニストの例にはアンチセンス核酸分子、リボザイムおよびリガンド、例えば抗体が含まれる。
好ましくは、この疾患は、ヒト成長ホルモンが関係する疾患である。
第十四番目の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをより高レベル、より低レベル、又は非存在レベルで発現するように形質転換した非ヒトトランスジェニックまたは非ヒト遺伝子ノックアウト動物を提供する。前記トランスジェニック動物は、疾患の研究用モデルとして非常に有用であり、さらに前記疾患の治療または診断に有効な化合物の同定を目的とするスクリーニング方法で用いることもできる。
本発明を利用するために用いることができる標準的な技術および手法の概要は、下記で提供される。本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクターおよび試薬に限定されないことは理解されよう。本明細書で用いられる専門用語は単に特定の態様を説明するためのものであり、前記用語によって本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。本発明の範囲は添付の請求の範囲の用語によってのみ限定される。
本明細書では、ヌクレオチドおよびアミノ酸についての標準的な略語が用いられる。
本発明の実施では別に指示がなければ、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術および免疫学の通常の技術が用いられ、前記技術は当業者の能力範囲内である。
【0021】
そのような技術は、文献中に完全に説明されている。特に適切な解説書の例には以下が含まれる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition (1989); DNA Cloning, Vol. I and II (D.N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Animal Cell Culture (R.I. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the Methods in Enzymology series (Academic Press, Inc.)特にVol. 154 & 155;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos eds. 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer and Walker, eds. 1987, Academic Press, London);Scopes, (1987) Protein Purification: Principles and Practice, Second Edition (Springer Verlag, NY);およびHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell eds. 1986)。
【0022】
本明細書において用いる“ポリペプチド”という用語は、ペプチド結合または改変ペプチド結合、すなわちペプチドイソスターによって互いに結合した2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。この用語は、短鎖(ペプチドおよびオリゴペプチド)および長鎖(タンパク質)の両方を指す。
本発明のポリペプチドは成熟タンパク質の形態を有するものでもよく、またプレ-、プロ-またはプレプロ-タンパク質であってプレ-、プロ-またはプレプロ-部分の切断によって活性化されて活性な成熟ポリペプチドを生じるタンパク質であってもよい。そのようなポリペプチドでは、プレ-、プロ-またはプレプロ-配列がリーダー配列もしくは分泌配列であっても、または成熟ポリペプチド配列の精製のために用いられる配列であってもよい。
本発明の第一の特徴のポリペプチドは、融合タンパク質の一部分を形成することができる。例えば、1個または2個以上の付加アミノ酸配列を含むことがしばしば有利であり、前記付加アミノ酸配列は、分泌配列もしくはリーダー配列、プロ-配列、精製に役立つ配列、または例えば組換え形成の間により高いタンパク質安定性を付与する配列を含んでもよい。あるいは、または前記に加えて、前記成熟ポリペプチドを別の化合物、例えば前記ポリペプチドの半減期を増加させるような化合物(例えばポリエチレングリコール)と融合させることができる。
【0023】
ポリペプチドは、、20の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでいてもよく、翻訳後プロセッシングのような天然の過程によって、または当技術分野で周知の化学的改変技術によって改変されていてもよい。本発明のポリペプチドに一般的に存在する公知の改変には、グリコシル化、脂質付加、硫化、γ-カルボキシル化(例えばグルタミン酸残基の)、ヒドロキシル化およびADP-リボシル化がある。他の可能な改変には、アセチル化、アシル化、アミド化、フラビンの共有結合付加、ヘム部分の共有結合付加、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合付加、脂質誘導体の共有結合付加、ホスファチジルイノシトールの共有結合付加、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、GPIアンカー形成、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解性プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、タンパク質へのトランスファーRNA媒介性アミノ酸付加(例えばアルギニル化)およびユビキチン結合が含まれる。
改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシ末端を含むポリペプチド内のいずれの場所に存在してもよい。実際、共有結合修飾によるポリペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端またはその両端のブロック(blockage)は、天然に存在するポリペプチドおよび合成ポリペプチドで一般的であり、そのような改変は本発明のポリペプチドにも存在し得る。
【0024】
ポリペプチド内に生じる改変は、多くの場合ポリペプチドが生成される方法の関数であろう。組換えによって生成されるポリペプチドについて、改変の性質および程度は大部分が、特定の宿主細胞の翻訳後修飾能力および問題のポリペプチドのアミノ酸配列に存在している改変シグナルによって決定されるであろう。例えば、グリコシル化パターンは、異なる種類の宿主細胞間で変動する。
本発明のポリペプチドは、任意の適切な様式で調製することができる。そのようなポリペプチドには、単離された天然に存在するポリペプチド(例えば、細胞培養物から精製される)、組換え的に生成されたポリペプチド(融合タンパク質を含む)、合成的に生成されたポリペプチド、または前記方法の組合せによって生成されたポリペプチドが含まれる。
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP100ポリペプチドあるいはINSP104ポリペプチドと相同なポリペプチドであり得る。本明細書で用いる用語として、ポリペプチドの一方の配列が他方のポリペプチドの配列に対して充分に高い同一性または類似性を有する場合、2種のポリペプチドが“相同である”と称される。“同一性”とは、アラインメントを施した配列のどの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で同一であることを示す。“類似性”は、アラインメントを施した配列のいずれの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で類似の種類であることを示す。同一性および類似性の度合いは、容易に計算することができる(Computational Molecular Biology, A.M. Lesk ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing. Informatics and Genome Projects, D.W. Smith ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, A.M. Griffin and H.G. Griffin eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, G. von Heinje, Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, M. Gribskov and J. Devereux eds., M. Stockton Press, New York, 1991)。
【0025】
したがって、相同なポリペプチドには、INSP100ポリペプチドおよびINSP104ポリペプチドの天然の生物学的変種(例えば前記ポリペプチドが由来した種における対立形質変種または地理的変種)および変異体(例えばアミノ酸置換、挿入または欠失を含む変異体)が含まれる。このような変異体は、1個または2個以上のアミノ酸残基が保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されているポリペプチドを含んでもよく、さらにこのような置換アミノ酸残基は遺伝コードでコードされたものでもそうでなくてもよい。典型的な前記の置換は、Ala、Val、LeuおよびIle間で;SerとThr間で;酸性残基AspとGlu間で;AsnとGln間で;塩基性残基LysとArg間で;または芳香族残基PheとTyr間で生じる。特に好ましいものは、いくつかの、すなわち5から10、1から5、1から3、1から2、または単に1つのアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失または付加された変種である。とりわけ好ましいものは、タンパク質の特性および活性を変化させないサイレント置換、付加および欠失である。また、その際とりわけ好ましいものは、保存的置換である。前記変異体には、1つまたは2つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含まれる。
【0026】
典型的には、2つのポリペプチド間で30%を越える同一性が、機能的等価物の指標であると考えられる。好ましくは、本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP100ポリペプチドまたはINSP104ポリペプチド、またはそれらの活性フラグメントと、INSP100またはINSP104配列の完全長にわたり90%を越える配列同一性の度合いを有する。より好ましいポリペプチドは、それぞれINSP100配列ドまたはINSP104配列の完全長にわたり92%、95%、98%または99%を越える同一性の度合いを有する。
好ましくは、本発明の機能的に等価のポリペプチドは、エクソン2の伸長部分によりコードされたアミノ酸配列、配列番号:2または配列番号:4を含む。別の態様において、本発明の機能的に等価のポリペプチドは、エクソン2の伸長部分によりコードされたアミノ酸配列、配列番号:2または配列番号:4と、少なくとも85%、90%、95%、97%または99%の配列同一性である配列を含むことが好ましい。さらに別の態様において、本発明の機能的に等価のポリペプチドは、エクソン2の伸長部分によりコードされたアミノ酸配列の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%に対応するフラグメント、またはエクソン2の伸長部分によりコードされたアミノ酸配列と、少なくとも85%、90%、95%、97%または99%の配列同一性を有する配列の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%に相当するフラグメントを含む。
適当なことに、本発明の機能的に等価のポリペプチドは、成長ホルモンとして機能するか、または配列番号:6に記載のアミノ酸配列に特異的である抗原決定基を有する。
【0027】
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドはまた、構造的アラインメントの1つまたは2つ以上の技術を用いて同定されたポリペプチドであってもよい。例えば、バイオペンジウム(Biopendium)検索データベースの作製に用いられる検索ツールの一角を構成するインファーマティカ=ゲノムスレッダー(Inpharmatica Genome Threader)(商標)技術を用いて(WO 01/69507を参照されたい)、INSP100ポリペプチドまたはINSP104ポリペプチドと比較して低い配列同一性しかもたないが、成長ホルモンタンパク質であると推定される現在未知の機能のポリペプチドを同定することができ、この方法は、INSP100またはINSP104ポリペプチドリペプチド配列との有意な構造的相同性を共有することに基づき、本発明の第一の特徴のポリペプチドを使用する。“有意な構造的相同性”とは、インファーマティカ=ゲノムスレッダー(商標)が、2つのタンパク質は少なくとも10%以上の確実性を有して構造的相同性を共有すると予測することを意味する。
本発明の第一の特徴のポリペプチドはまた、INSP100ポリペプチドのフラグメントおよびINSP100ポリペプチドの機能的等価物のフラグメントを含むが、ただしこれらフラグメントが成長ホルモン活性を保持するかまたはINSP100ポリペプチドと共通の抗原決定基を有することを条件とする。
本発明の第一の特徴のポリペプチドはまた、INSP104ポリペプチドのフラグメントおよびINSP104ポリペプチドの機能的等価物のフラグメントを含むが、ただしこれらフラグメントが成長ホルモン活性を保持するかまたはINSP104ポリペプチドと共通の抗原決定基を有することを条件とする。
【0028】
本明細書において用いる、“フラグメント”という用語は、INSP100またはINSP104ポリペプチドまたはその機能的等価物の1つのアミノ酸配列の一部(全体ではないが)と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。前記フラグメントは、前記配列に由来する少なくともn個の連続するアミノ酸を含むべきであり、さらに個々の配列に応じてnは好ましくは7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25またはそれより大きい)。小さなフラグメントは、抗原決定基を構成することができる。
そのようなフラグメントは、“独立的存在(free-standing)”、すなわち、他のアミノ酸もしくはポリペプチドの一部でもなく、他のアミノ酸もしくはポリペプチドの一部に融合されているのでもないものであってもよく、またはより大きなポリペプチドに含まれて、前記ポリペプチドの一部分または領域を形成してもよい。より大きなポリペプチドの内部に含まれている場合、本発明のフラグメントは、最も好ましくは連続する単一の領域を形成する。例えばある種の好ましい態様は、前記フラグメントのアミノ末端に融合したプレ−および/もしくはプロ−ポリペプチド領域を有するフラグメント、ならびに/または前記フラグメントのカルボキシ末端に融合した付加的領域を有するフラグメントに関する。しかしながら、いくつかのフラグメントが単一のより大きなポリペプチドの内部に含まれていてもよい。
【0029】
本発明のポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(少なくとも1つの抗原決定基を含む)を用い、例えばポリクローナルまたはモノクローナル抗体といった、前記ポリペプチドに免疫特異的なリガンドを作製することができる。そのような抗体を用い、本発明のポリペプチドを発現しているクローンを単離もしくは同定するか、またはアフィニティークロマトグラフィーで本発明のポリペプチドを精製することができる。前記抗体はまた、当業者には明らかなように、他の用途のうち診断的または治療的補助としても用いることができる。
“免疫特異的”という用語は、抗体が、先行技術における他の近縁ポリペプチドに対する親和性よりも、本発明のポリペプチドに対して実質的に強い親和性を有することを意味する。本明細書で用いる“抗体”という用語は、完全な分子だけでなく問題の抗原決定基と結合することができるそのフラグメント、例えばFab、F(ab’)2およびFvも指す。したがって、そのような抗体は、本発明の第一の特徴のポリペプチドと結合する。
用語“免疫特異性”は、抗体が公知のヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B;Q14407)に対するよりも、配列番号:8または配列番号:10のポリペプチドに対して実質的により大きい親和性を有することを意味する。また用語“免疫特異性”は、抗体が公知のヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A; P01243)に対するよりも、配列番号:10または配列番号:12のポリペプチドに対して実質的により大きい親和性を有することを意味する。
“実質的により大きい親和性”とは、hCS-B(Q14407)に対する親和性と比べ、配列番号:8または配列番号:10のポリペプチドに対する親和性が測定可能に増加していることを意味している。好ましくは、この親和性は、配列番号:8または配列番号:10のポリペプチドに対して、hCS-B(Q14407)に対するよりも、少なくとも1.5-倍、2-倍、5-倍、10-倍、100-倍、103-倍、104-倍、105-倍または106倍強い。
“実質的により大きい親和性”とは、hCS-A(P01243)に対する親和性と比べ、配列番号:10または配列番号:12への親和性が測定可能に増加していることを意味している。好ましくは、親和性は、配列番号:10または配列番号:12のポリペプチドに対して、hCS-A(P01243)に対するよりも、少なくとも1.5-倍、2-倍、5-倍、10-倍、100-倍、103-倍、104-倍、105-倍または106倍強い。
【0030】
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択される哺乳類、例えばマウス、ウサギ、ヤギまたはウマが、本発明の第一の特徴のポリペプチドで免疫され得る。動物を免疫するために用いられるポリペプチドは、組換えDNA技術によるものでもよく、または化学的に合成されてもよい。所望する場合には、前記ポリペプチドを担体タンパク質と結合させることができる。前記ポリペプチドと化学的に結合させることができる一般的に用いられ得る担体には、ウシ血清アルブミン、チログロブリンおよびキーホールリンペットヘモシアニンが含まれる。次に、前記結合ポリペプチドが用いられて、動物が免疫される。免疫した動物から血清が採集され、既知の方法、例えばイムノアフィニティークロマトグラフィーにしたがって処理される。
【0031】
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対するモノクローナル抗体もまた、当業者は容易に生成できる。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製する一般的な方法論は、周知である(例えば以下を参照されたい:Kohler G & Milstein C, Nature, 256:495-497(1975);Kozbor et al., Immunology Today, 4:72(1983);Cole et al., 77-96 “Monoclonal Antibodies and Cancer Treatment”, Alan R. Liss, Inc. (1985))。
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対して生成されたモノクローナル抗体のパネル(panels)を種々の特性、すなわちアイソタイプ、エピトープ、親和性などについてスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体は、それらを作らせた個々のポリペプチドの精製に特に有用である。あるいは、対象のモノクローナル抗体をコードする遺伝子を、例えば当技術分野で知られるPCR技術によってハイブリドーマから単離し、さらにクローニングし適切なベクターで発現させることができる。
また、非ヒト可変領域がヒト定常領域と結合または融合されているキメラ抗体(例えば以下を参照されたい:Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:3439(1987))も有用であり得る。
抗体は、例えばヒト化により、改変して個体での免疫原性を減少させることができる(例えば以下を参照されたい:Jones et al., Nature, 321:522(1986); Verhoeyen et al., Science, 239:1534(1988);Kabat et al., J. Immunol., 147:1709(1991);Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029(1989);Gorman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:34181(1991); Hodgson et al., Bio/Technology, 9:421(1991))。本明細書で用いられる“ヒト化抗体”という用語は、非ヒトドナー抗体の重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン中のCDRアミノ酸および選択した他のアミノ酸がヒト抗体の等価なアミノ酸に代えて置換されている抗体分子を指す。したがって、ヒト化抗体はヒトの抗体とよく似ているが、ドナー抗体の結合能力を有する。
また別の選択肢では、抗体は、2つの異なる抗原結合ドメインを有し、その各ドメインが異なるエピトープに向けられている“二重特異性”抗体であってもよい。
【0032】
ファージディスプレー技術を用いて、本発明のポリペプチドに対する結合活性を有する抗体をコードしている遺伝子を、関連する抗体の保有についてスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅V-遺伝子レパートリー、または未感作ライブラリーのいずれかから選択することができる(J. McCafferty et al., Nature, 348:552-554 (1990);J. Marks et al., Biotechnology, 10:779-783 (1992))。前記抗体の親和性は、鎖のシャッフリングによって改善することもできる(T. Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991))。
上記の技術によって作製された抗体は、ポリクローナルであれモノクローナルであれ、免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で試薬として用いることができるという点で、更なる有用性を有する。これらの用途では、これら抗体を、分析的に検出可能な試薬(例えば放射性同位元素、蛍光分子または酵素)で標識することができる。
本発明の第二および第三の特徴の好ましい核酸分子は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12に記載のポリペプチド配列ならびに機能的に等価なポリペプチドをコードするものである。これら核酸分子は、本明細書に記載した方法および用途で用いることができる。本発明の核酸分子は、好ましくは本明細書で開示される配列に由来する少なくともn個の連続するヌクレオチドを含み、この場合、前記個々の配列に応じてnは10またはそれより大きい(例えば12、14、15、18、20、25、30、35、40またはそれより大きい)。
本発明の核酸分子は、上述の核酸分子に相補的な配列も含む(例えばアンチセンスまたはプローブとしての目的のために)。
【0033】
本発明の核酸分子は、RNA(例えばmRNA)、またはDNA(例えばcDNA、合成DNAまたはゲノムDNAを含む)の形態であってもよい。そのような核酸分子は、クローニングによって、化学合成技術によって、またはそれらの組合せによって得ることができる。前記核酸分子は、固相ホスホルアミダイト化学合成のような技術を用いる化学合成によって、ゲノムまたはcDNAライブラリーから、または生物体からの分離によって調製することができる。RNA分子は、一般的にはDNA配列のin vitroまたはin vivo転写によって作製され得る。
核酸分子は、二本鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)でも、非コード鎖(アンチセンス鎖とも称される)でもよい。
“核酸分子”という用語には、DNAおよびRNAのアナログ(例えば改変骨格を含むもの)、ならびにペプチド核酸(PNA)も含まれる。本明細書で用いられる“PNA”という用語は、アンチセンス分子または抗遺伝子(anti-gene)作用因子を指し、長さが少なくとも5ヌクレオチドであってアミノ酸残基のペプチド骨格に結合されたオリゴヌクレオチドを含み、このペプチド骨格は好ましくはリジンで終わる。前記末端リジンは当該組成物に可溶性を付与する。PNAは、PEG化(pegylated)されて細胞内での寿命が延長されてもよく、細胞内では、PNAは優先的に相補性一本鎖DNAおよびRNAと結合して転写物の伸長を停止させる(P.E. Nielsen et al., Anticancer Drug Des., 8:53-63 (1993))。
本発明のポリペプチドをコードしている核酸分子は、本明細書に説明された核酸分子の1種または2種以上のコード配列と同じであって良い。
これらの分子はまた、遺伝コードの縮退の結果として、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12のポリペプチドをコードする配列と異なる配列を有することもある。
【0034】
そのような核酸分子には、それ自体で成熟なポリペプチドのコード配列;成熟ポリペプチドのコード配列および付加コード配列(例えばリーダー配列または分泌配列をコードするもの)、例えばプロ-、プレ-またはプレプロ-ポリペプチド配列をコードするもの;前述の付加的コード配列を伴って、または伴わないで、さらに付加的な非コード配列(非コード5’および3’配列を含む)を伴う成熟ポリペプチドのコード配列が含まれるが、ただしこれらに限定されず、前記の非コード5’および3’配列は、例えば転写される非翻訳配列で、転写(終止シグナルを含む)、リボソーム結合およびmRNA安定性において役割を果たすものである。前記核酸分子は、更なる機能性を提供するアミノ酸のような付加アミノ酸をコードする付加配列を含むこともできる。
本発明の第二および第三の特徴の核酸分子は、本発明の第一の特徴のポリペプチドおよびフラグメントの機能的等価物およびそれらのフラグメントもコードし得る。そのような核酸分子は、天然に存在する変種、例えば天然に存在する対立形質変種であっても、または前記分子は天然に存在することが知られていない変種であってもよい。前記のような天然に存在しない核酸分子の変種は、突然変異誘発技術(核酸分子、細胞または生物に対して適用される技術が含まれる)によって達成できる。
このような変種の中では、特にヌクレオチドの置換、欠失または挿入によって前述の核酸分子と異なる変種が挙げられる。置換、欠失または挿入には、1個以上のヌクレオチドが関与し得る。変種は、コード領域または非コード領域またはその両方において改変されていてもよい。コード領域における改変は、保存的または非保存的なアミノ酸置換、欠失または挿入を生成し得る。
本発明の核酸分子はまた、多様な理由で、当技術分野で一般的に知られている方法を用いて操作されてもよく、前記方法としては、遺伝子産物(ポリペプチド)のクローニング、プロセッシングおよび/または発現の改変が挙げられる。ランダムフラグメント化によるDNAシャッフリングならびに遺伝子フラグメントおよび合成オリゴヌクレオチドのPCRリアッセンブリーは、ヌクレオチド配列の操作に用いられ得る技術に含まれる。部位特異的突然変異誘発を用いて、新規な制限部位の挿入、グリコシル化パターンの変更、コドンの優先性の変更、スプライシング変種の生成、変異の導入などを行うことができる。
【0035】
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする核酸分子は、結合核酸分子が融合タンパク質をコードするように、異種配列に連結されてもよい。前記のような結合核酸分子は本発明の第二または第三の特徴に包含される。例えば、このポリペプチドの活性の阻害物質についてペプチドライブラリーをスクリーニングするために、前記のような結合核酸分子を用いて、市販の抗体により認識され得る融合タンパク質を発現させることは、有用であり得る。融合タンパク質はまた、本発明のポリペプチド配列と異種タンパク質配列との間に位置する切断部位を含むように操作し、それによって前記ポリペプチドを異種タンパク質から切り離して精製することができるようにしてもよい。
本発明の核酸分子には、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子と部分的に相補的であり、したがってそのコード核酸分子とハイブリダイズする(ハイブリダイゼーション)アンチセンス分子も含まれる。そのようなアンチセンス分子(例えばオリゴヌクレオチド)は、当業者にはよく知られるように、本発明のポリペプチドをコードする標的核酸を認識し、その標的核酸と特異的に結合してその転写を妨げるように設計することができる(例えば以下の文献を参照されたい:J.S. Cohen, Trends in Pharm. Sci., 10:435 (1989);J. Okano, Neurochem., 56:560 (1991);J. O’ Connor, Neurochem., 56:560 (1991);Lee et al., Nucleic Acids Res., 6:3073 (1979);Cooney et al., Science, 241:456 (1988);Dervan et al., Science, 251:1360 (1991))。
【0036】
本明細書で用いられる“ハイブリダイゼーション”という用語は、2つの核酸分子が水素結合によって互いに会合することを指す。典型的には、1つの分子が固相支持体に固定され、他方は溶液中で遊離しているであろう。次に、2つの分子は、水素結合に適した条件下で互いに接触させられ得る。前記結合に影響する因子には以下が含まれる:溶媒の種類および体積;反応温度;ハイブリダイゼーションの時間;攪拌;液相分子の固相支持体への非特異的結合を妨害する薬剤(デンハルト試薬、またはBLOTTO);分子の濃度;分子の結合速度を増加させる化合物の使用(硫酸デキストランまたはポリエチレングリコール);およびハイブリダイゼーションに続く洗浄条件のストリンジェンシー(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。
完全に相補的な分子と標的分子とのハイブリダイゼーションの阻害は、当業者に知られるハイブリダイゼーションアッセイを用いて調べることができる(例えばSambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。したがって、実質的に相同な分子は、文献(G.M. Wahl and S.L. Berger, Methods Enzymol., 152:399-407 (1987);A.R. Kimmel, Methods Enzymol., 152:507-511 (1987))で教示されるように、完全に相同な分子と標的分子との結合を種々のストリンジェンシー条件下で競合させ阻害するであろう。
“ストリンジェンシー”とは、異なる分子の会合よりも非常に類似した分子の会合に適した、ハイブリダイゼーション反応における条件を指す。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、以下を含む溶液(50%のホルムアミド、5倍のSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍のデンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、および20μg/mLの変性せん断サケ精子DNA)中で42℃にて一晩インキュベーションし、続いてフィルターを約65℃にて0.1倍のSSC中で洗浄すると定義される。低ストリンジェンシー条件は、35℃にて実施されるハイブリダイゼーション反応を含む(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。好ましくは、ハイブリダイゼーションに用いられる条件は高ストリンジェンシー条件である。
【0037】
本発明のこの特徴の好ましい態様は、INSP100核酸分子をコードする核酸分子の全長にわたって少なくとも80%、85%または90%同一である核酸分子、およびそのような核酸分子と実質的に相補的な核酸分子である。
好ましくは、本発明のこの特徴の核酸分子は、そのようなコード配列の全長にわたって少なくとも92%同一の領域を含むかまたはこれらと相補的な核酸分子である。これに関しては、そのような核酸分子の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%または99%同一の核酸分子が特に好ましい。この特徴の好ましい態様は、INSP100ポリペプチドと同じ生物学的機能または活性を実質的に保持するポリペプチドをコードする核酸分子である。
本発明のこの特徴の好ましい態様は、INSP104核酸分子をコードする核酸分子の全長にわたって少なくとも80%、85%または90%同一である核酸分子、およびそのような核酸分子と実質的に相補的な核酸分子である。
好ましくは、本発明のこの特徴の核酸分子は、そのようなコード配列の全長にわたって少なくとも92%同一の領域またはこれらと相補的な核酸分子を含む。これに関しては、そのような核酸分子の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%または99%同一の核酸分子が特に好ましい。この特徴の好ましい態様は、INSP104ポリペプチドと同じ生物学的機能または活性を実質的に保持するポリペプチドをコードする核酸分子である。
本発明はまた、以下の工程を含む、本発明の核酸分子を検出する方法を提供する:(a)二重鎖を形成するハイブリダイゼーション条件下で、本発明の核酸プローブを生物学的サンプルと接触させる工程;および(b)形成された前記の二重鎖を全て検出する工程。
【0038】
本発明にしたがって利用し得るアッセイに関連して下記でさらに考察するように、上述の核酸分子をRNA、cDNAまたはゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして用いて、INSP100ポリペプチドまたはINSP104ポリペプチドをコードする完全長cDNAおよびゲノムクローンを単離し、さらにこのポリペプチドをコードする遺伝子と高い配列類似性を有する相同遺伝子またはオーソログ遺伝子のcDNAまたはゲノムクローンを単離することができる。
これに関しては、当技術分野で既知の他の技術のうち、特に以下の技術を利用することができ、これらの技術は、例示として下記で考察される。DNAのシークエンシングおよび解析の方法は周知であって、当技術分野では一般的に利用可能であり、本明細書で考察される本発明の態様の多くを実施するために実際に用いることができる。そのような方法では、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、シークエナーゼ(US Biochemical Corp., Cleaveland, OH)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)、耐熱性T7ポリメラーゼ(Amersham, Chicago, IL)、またはポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼの組合せ(例えば市販(Gibco/BRL, Gaithersburg, MD)のELONGASE増幅システムで見出されるようなもの)のような酵素を利用することができる。好ましくは、シークエンシング過程は、例えばハミルトンマイクロラブ(Hamilton Micro Lab)2200(Hamilton, Reno, NV)、ペルティエサーマルサイクラー(Peltier Thermal Cycler)PTC200(MJ Research, Watertown, MA)、ABIカタリストならびに373および377DNAシークエンサー(Perkin Elmer)のような機器を用いて自動化することができる。
【0039】
INSP100ポリペプチドまたはINSP104ポリペプチドの機能と等価な機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子を単離する方法の1つは、当技術分野で知られている標準的な手法を用い、天然のプローブまたは人工的に設計したプローブによりゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーを探索することである(例えば以下の文献を参照されたい:“Current Protocols in Molecular Biology”, Ausubel et al.(eds), Greene Publishing Association and John Wiley Interscience, New York, 1989, 1992)。特に有用なプローブは、適切なコード遺伝子(配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9または配列番号:11)に由来する核酸配列に対応するか、または前記配列と相補的であって、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、さらに好ましくは少なくとも50の連続する塩基を含むプローブである。好ましくは、ひとつの態様において、INSP100またはINSP104のエクソン2の伸長部分の少なくとも一部をコードしている核酸配列に対応するか、または相補的である、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも50個の連続塩基を含むプローブが提供される。
前記のようなプローブは、分析的に検出可能な試薬で標識して、前記プローブの識別を容易にすることができる。有用な試薬には、放射性同位元素、蛍光色素、および検出可能な生成物の形成を触媒し得る酵素が含まれるが、ただしこれらに限定されない。これらのプローブを用いて、当業者は、ヒト、哺乳類または他の動物供給源から対象のタンパク質をコードするゲノムDNA、cDNAまたはRNAポリヌクレオチドの相補的なコピーを単離し、近縁配列、例えば前記のファミリー、タイプおよび/またはサブタイプに属するまた別のメンバーについて、前記の供給源をスクリーニングすることができるであろう。
【0040】
多くの場合、単離されるcDNA配列は不完全で、ポリペプチドをコードする領域は短く(通常は5’末端で)切断されているであろう。完全長cDNAを得るために、または短いcDNAを伸長させるために、いくつかの方法が利用可能である。そのような配列は、部分的なヌクレオチド配列を用い、上流の配列(例えばプロモーターおよび調節エレメント)を検出するための当技術分野で公知の種々の方法を用いて伸長させることができる。例えば、使用され得るある方法は、cDNA末端迅速増幅法(RACE;例えば以下を参照されたい:Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:8998-9002 (1988))に基づく。前記技術の最近の改変(例えばマラソン(Marathon)(商標)技術(Clontech Laboratories Inc.)により例示される)は、より長いcDNAの検索を顕著に単純化している。“制限部位”PCRと称されるわずかに異なる技術では、普遍的プライマーを用いて、既知の遺伝子座に近接する未知の核酸配列が検索される(G. Sarkar, PCR Methods Applic., 2:318-322 (1993))。逆PCRも、既知の領域に基づく多様なプライマーを用いて、配列を増幅することまたは伸長することに用いられ得る(T. Triglia et al., Nucleic Acids Res., 16:8186 (1988))。使用され得る別の方法は捕捉PCRで、この方法は、ヒトおよび酵母の人工染色体DNAにおける既知配列に近接しているDNAフラグメントのPCR増幅を含む(M. Lagerstrom et al., PCR Methods Applic., 1:111-119 (1991))。未知配列を検索するために用いられ得る別の方法は、Parkerの方法である(J.D. Parker et al, Nucleic Acids Res., 19:3055-3060 (1991))。さらに、ゲノムDNAをウォーキングするためにPCR、入れ子(nested)プライマーおよびプロモーターファインダー(PromoterFinder)(商標)ライブラリー(Clontech, Palo Alto, CA)を用いてもよい。この方法ではライブラリーのスクリーニングが不要で、イントロン/エクソン結合部の発見に有用である。
完全長cDNAをスクリーニングする場合、より大きなcDNAを包含するようにサイズ選択されたライブラリーを用いることが好ましい。さらにまた、遺伝子の5’領域を含む配列をより多く含むという点で、ランダムプライミングした(random-primed)ライブラリーが好ましい。ランダムプライムライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを生成できない状況で特に好まれ得る。ゲノムライブラリーは、5’非転写調節領域に配列を伸長させるために有用であり得る。
【0041】
本発明のある態様では、染色体上の位置特定のために、本発明の核酸分子を用いることができる。この技術では、核酸分子は個々のヒト染色体上の特定の位置に対して特異的に標的化され、個々のヒト染色体上の特定の位置とハイブリダイズさせることができる。本発明の関連配列の染色体上へのマッピングは、遺伝子関連疾患に関する配列の相関性確認において重要な工程である。いったん染色体の正確な位置に配列がマッピングされたら、前記配列の染色体上の物理的な位置を遺伝子地図データと相関させることができる。そのようなデータは、例えば以下で見出すことができる:V. McKusick, Mendelian Inheritance in Man(ジョーンズホプキンス大学、ウェルチ医学図書館を通じてオンラインで利用可能である)。同じ染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾患との関係を、次に連鎖解析(物理的に近接する遺伝子の同時遺伝(coinheritance))によって同定する。これにより、ポジショナルクローニングまたは他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を検索する研究者に貴重な情報が提供される。いったん疾患または症候群の位置が遺伝連鎖によって特定のゲノム領域で大まかに限局されたら、前記領域にマッピングされるいずれの配列も、更なる解析のための関連遺伝子または調節遺伝子となることができる。前記核酸分子はまた、正常な個体、キャリア個体または罹患個体間で転座、逆位などによる染色体位置上の相違を検出するために用いることができる。
【0042】
本発明の核酸分子はまた、組織分布同定(tissue localisation)のために役立つ。そのような技術は、ポリペプチドをコードするmRNAの検出によって、組織中の前記ポリペプチドの発現パターンの決定を可能にする。これらの技術には、in situハイブリダイゼーション技術およびヌクレオチド増幅技術(例えばPCR)が含まれる。これらの研究から得られる結果は、生物内での前記ポリペプチドの正常な機能を示唆する。さらに、変異遺伝子によってコードされるmRNAの発現パターンと正常mRNA発現パターンとの比較研究によって、変異ポリペプチドの疾患における役割に対する貴重な洞察が提供される。そのような不適切な発現は時間的、位置的または量的なものであり得る。
遺伝子サイレンシング法を実施して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在性発現をダウンレギュレートすることもできる。RNA干渉(RNAi)(S.M. Elbashir et al. Nature, 411:494-498 (2001))は、使用可能な配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのための1つの方法である。短いdsRNAオリゴオリゴヌクレオチドをin vitroで合成して細胞内に導入する。これらdsRNAの配列特異的結合によって標的mRNAの分解が開始され、標的タンパク質の発現が減少または阻害される。
上記に述べた遺伝子サイレンシングの有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えばウェスタンブロットによる)、またはTaqManによる方法を用いるRNAレベルの測定によって評価することができる。
本発明のベクターは本発明の核酸分子を含み、クローニングベクターでも発現ベクターでもよい。本発明のベクターで形質転換、トランスフェクトまたは形質導入され得る本発明の宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよい。
本発明のポリペプチドは、宿主細胞内に含まれるベクター中のそれらのコード核酸分子の発現によって、組換え形態で調製することができる。前記のような発現方法は当業者によく知られており、多くは以下の文献でより詳細に記述されている:Sambrook et al.(上掲書)およびFernandez & Hoeffler(1998, eds. “Gene expression systems. Using nature for the art of expression”, Academic Press, San Diego, London, Boston, New York, Sydney, Tokyo, Toronto)。
【0043】
一般的には、要求される宿主でポリペプチドを生成させるために、核酸分子の維持、増殖または発現に適したいずれの系またはベクターも用いることができる。周知であり日常的である種々の技術のいずれによっても(例えば前掲書(Sambrook et al.)に記載されたようなもの)、適切なヌクレオチド配列を発現系に挿入することができる。一般的には、コード遺伝子は制御エレメント(例えばプロモーター、リボソーム結合部位(細菌での発現の場合)、および場合によってオペレーター)の制御下に置かれ、それによって所望のポリペプチドをコードするDNA配列を形質転換宿主細胞でRNAに転写させることができる。
適切な発現系の例には、例えば染色体系、エピソーム系およびウイルス由来系、例えば以下に由来するベクターが含まれる:細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポーバウイルス(例えばSV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルス、または上記の組合せ、例えばプラスミドとバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来するもの(例えばコスミドおよびファージミドを含む)。プラスミドにおいて含まれ発現されるものよりも大きいDNAフラグメントをデリバリーするためには、ヒト人工染色体(HAC)も使用することができる。
特に適切な発現系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物(例えば細菌);酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系;または動物細胞系が含まれる。無細胞翻訳系もまた、本発明のポリペプチドの生成に用いることができる。
【0044】
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の宿主細胞への導入は、多くの標準的な実験室マニュアル(例えば、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology (1986)および上掲書(Sambrook et al.))に記載された方法によって達成できる。特に適切な方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン仲介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、陽イオン脂質仲介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、擦過ローディング(scrape loading)、弾道導入または感染が含まれる(以下を参照されたい:Sambrook et al.(1989)上掲書;Ausubel et al.(1991)上掲書;Spector, Goldman & Leinwald,(1998))。真核細胞では、発現系は、その系の要求に応じて一過性(例えば、エピソーム性)または永続的(染色体組込み)であり得る。
コード核酸分子は、所望であれば、例えば翻訳ポリペプチドの小胞体内腔、細胞膜周辺腔または細胞外環境への分泌のために、シグナルペプチドまたはリーダー配列のような制御配列をコードする配列を含んでいても、または含んでいなくてもよい。これらのシグナルは前記ポリペプチドにとって内因性であってもよく、または異種シグナルであってもよい。リーダー配列は、翻訳後プロセッシングで細菌宿主によって取り除くことができる。
制御配列の他に、宿主細胞の増殖に関連して前記ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することが望ましい場合がある。調節配列の例は、化学的または物理的刺激(調節化合物の存在を含む)または多様な温度もしくは代謝条件に応答して遺伝子の発現を増加させたり低下させたりする配列である。調節配列は、ベクターの非翻訳領域、例えばエンハンサー、プロモーターならびに5’および3’非翻訳領域である。これらは、宿主細胞タンパク質と相互作用して、転写および翻訳を実行する。そのような調節配列は、その強度および特異性を変化させることができる。利用されるベクター系および宿主に依存して、多くの適切な転写および翻訳エレメント(構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む)を用いることができる。例えば、細菌系でクローニングするときは、誘導性プロモーター、例えばBluescriptファージミド(Stratagene, La Jolla, CA)またはpSportl(商標)プラスミド(Gibco BRL)などのハイブリッドlacZプロモーターを用いることができる。バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターは、昆虫細胞で用いることができる。植物細胞ゲノムに由来するプロモーターまたはエンハンサー(例えば熱ショック、RUBISCOおよび貯蔵タンパク質遺伝子)または植物ウイルスに由来するプロモーターまたはエンハンサー(例えばウイルスプロモーターまたはリーダー配列)は、ベクターへクローニングすることができる。哺乳類細胞系では、哺乳類遺伝子由来または哺乳類ウイルス由来のプロモーターが好ましい。配列の多数コピーを含む細胞株の作製が必要な場合、SV40またはEBVをベースとするベクターが、適切な選択マーカーとともに用いられ得る。
【0045】
発現ベクターは、特定の核酸コード配列を適切な調節配列とともにベクター内に配置させることができるように構築され、前記コード配列の調節配列に関する位置および向きは、前記コード配列が調節配列の“制御”下で転写されるような位置および向きである(すなわち制御配列にてDNA分子と結合するRNAポリメラーゼは、前記コード配列を転写する)。いくつかの事例では、前記配列を適切な向きで制御配列に付属させることができるように(すなわちリーディングフレームを維持するために)、前記配列を改変する必要があるであろう。
ベクターへの挿入の前に、制御配列および他の調節配列を核酸コード配列に連結させることができる。あるいは、制御配列および適切な制限部位を既に含む発現ベクターへコード配列を直接クローニングすることができる。
組換えポリペプチドの長期的かつ高収量の生成のためには、安定な発現が好ましい。例えば、対象のポリペプチドを安定して発現する細胞株は、ウイルスの複製起点および/または内因性発現エレメントならびに選択マーカー遺伝子を同じまたは別個のベクター上に含む発現ベクターを用いて形質転換させることができる。ベクターの導入に続き、選択培地に切り替える前に細胞を栄養(enriched)培地で1〜2日間増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することで、選択マーカーの存在によって、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖および回収が可能になる。安定して形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞の種類に適した組織培養技術を用いて増殖させることができる。
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞株は当技術分野で公知であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション (American Type Culture Collection, ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれ、そのような細胞株には、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベイビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎(COS)細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞、ボウズ(Bowes)メラノーマ細胞およびヒト肝細胞癌(例えばHepG2)細胞および他の多数の細胞株が挙げられるが、これだけに限られない。
バキュロウイルス系では、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料は、特にインビトロジェン(Invitrogen, San Diego, CA)からキットの形態で(“MaxBac”キット)商業的に入手可能である。そのような技術は一般的に当業者に知られており、文献には完全に記載されている(Summers & Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987))。この系での使用に特に適切な宿主細胞には、昆虫細胞、例えばドロソフィラ(Drosophila)S2細胞およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞が含まれる。
【0046】
当技術分野で公知である多くの植物細胞培養および植物体(whole plant)遺伝子発現系が存在する。適切な植物細胞遺伝子発現系の例には、米国特許第5,693,506号、5,659,122号および5,608,143号に記載されるものが含まれる。植物細胞培養における遺伝子発現の更なる例は、文献に記載されている(Zenk, Phytochemistry, 30:3861-3863 (1991))。
特に、プロトプラストを単離し、これを培養して完全な再生植物を形成することが可能な植物は全て利用することができ、それによって移入遺伝子を含む完全な植物が回収できる。特に、サトウキビ、サトウダイコン、綿花、果実および他の樹木、マメ類および野菜の主要な種の全てを含む(ただしこれらに限定されない)全ての植物は、培養細胞または培養組織から再生させることができる。
特に好ましい細菌宿主細胞の例には、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌(E.coli)、ストレプトマイセスおよびバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)細胞が含まれる。
真菌での発現に特に適切な宿主細胞の例には、酵母細胞(例えばS.セレビシアエ(cerevisiae))およびアスペルギルス細胞が含まれる。
形質転換細胞株の回収に用いることができる多くの選択系は、当技術分野で公知である。そのような例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(M. Wigler et al., Cell, 11:223-32 (1977))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(I. Lowy et al., Cell, 22:817-23 (1980))の遺伝子が挙げられ、これらはそれぞれtk-またはaprt±細胞で用いることができる。
さらにまた、抗代謝物質耐性、抗生物質耐性または除草剤耐性を選択基準として用いてもよく;例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)はメトトレキセートに対する耐性を付与し(M. Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 77:3567-70 (1980))、nptはアミノグリコシド系ネオマイシンおよびG−418に対する耐性を付与し(F. Colbere−Garapin et al., J. Mol. Biol., 150:1-14 (1981))、さらにalsまたはpatはそれぞれクロロスルフロン(chlorsulfuron)およびホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する。さらに別の選択可能な遺伝子が報告されており、それらの例は当業者には明白であろう。
【0047】
マーカー遺伝子の発現の有無は対象の遺伝子も存在することを示唆するが、対象の遺伝子の存在および発現を確認する必要があり得る。例えば、関連配列がマーカー遺伝子配列内に挿入されている場合、マーカー遺伝子機能が存在しないことによって、適切な配列を含む形質転換細胞を識別することができる。あるいは、マーカー遺伝子は、単一のプロモーターの制御下に、本発明のポリペプチドをコードする配列とともに直列に配置することができる。通常、誘導または選択に応答するマーカー遺伝子の発現は、直列遺伝子の発現も示している。
あるいは、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含み、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に知られている多様な手法で同定することができる。前記手法には、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質バイオアッセイ、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)またはイムノアッセイ技術(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および放射性イムノアッセイ(RIA))が含まれ(ただしこれらに限定されない)、核酸またはタンパク質の検出および/または定量のためにメンブレン、溶液またはチップをベースとする技術が含まれる(例えば以下を参照されたい:R. Hampton et al.(1990) Serological Methods, A Laboratory Manual, APS Press, St Paul, MN;およびD.E. Maddox et al.(1983) J. Exp. Med. 158:1211−1216)。
【0048】
多様な標識および結合技術が当業者に知られており、種々の核酸およびアミノ酸アッセイで用いることができる。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に近縁な配列を検出するための標識ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプローブの作製手段には、標識したポリヌクレオチドを用いるオリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識またはPCR増幅が含まれる。あるいは、本発明のポリペプチドをコードする配列をベクターにクローニングしてmRNAプローブを作製することができる。そのようなベクターは当技術分野で公知であって、商業的に入手可能であり、適切なRNAポリメラーゼ(例えばT7、T3またはSP6)および標識ヌクレオチドを添加することによりin vitroでRNAプローブを合成することに用いられ得る。これらの手法は、商業的に入手可能な種々のキット(Pharmacia & Upjohn (Kalamazoo, MI);Promega (Madison, WI);U.S. Biochemical Corp., (Cleaveland, OH))を用いて実施することができる。
検出を容易にするために用いられ得る適切なレポーター分子または標識には、放射性核種、酵素および蛍光、化学発光または色素生産性物質、基質、コファクター、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。
本発明の核酸分子は、トランスジェニック動物、特にげっ歯類動物の作製にも用いることができる。そのようなトランスジェニック動物は、本発明の別の特徴を構成する。そのような作製は、体細胞の改変によって局部的に、または遺伝性改変を導入する生殖細胞系列療法によって実施することができる。前記のようなトランスジェニック動物は、本発明のポリペプチドの調節因子として有効な薬剤分子のための動物モデルを作製するために特に有用であり得る。
【0049】
ポリペプチドは、周知の方法によって組換え細胞培養物から回収し精製することができ、これは、硫安またはエタノール沈澱、酸性抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸化セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーが含まれる。高性能液体クロマトグラフィーは、精製に特に有用である。単離および/または精製の間にポリペプチドが変性した場合には、タンパク質のリフォールディングのためによく知られている技術を用いて活性な高次構造を再生することができる。
所望の場合には、可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に本発明のポリペプチドをコードする配列を連結させることにより特殊化したベクター構築物も、タンパク質の精製を容易にするために用いることができる。そのような精製容易化ドメインの例には、金属キレートペプチド(例えば固定化金属上での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGS伸長/アフィニティー精製システム(Immunex Corp., Seattle, WA)で用いられるドメイン)が含まれる。切断可能なリンカー配列(例えばXA因子またはエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CA)に特異的なもの)を精製ドメインと本発明のポリペプチドとの間に包含させて、精製を容易にすることに用いてもよい。そのような発現ベクターの1つは、チオレドキシンまたはエンテロキナーゼ切断部位に先行するいくつかのヒスチジン残基と融合させた本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を提供する。ヒスチジン残基は、IMAC(固定金属イオンアフィニティークロマトグラフィー;J. Porath et al.(1992) Prot. Exp. Purif. 3:263−281)により精製を容易にし、一方、チオレドキシンまたはエンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からポリペプチドを精製するための手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターについての考察は以下で提供される:D.J. Kroll et al., DNA Cell Biol., 12:441-453 (1993))。
【0050】
スクリーニングアッセイで使用するためにポリペプチドを発現させる場合は、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞の表面で前記ポリペプチドを生成させることが一般には好ましい。この場合、宿主細胞はスクリーニングアッセイで使用する前に、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)またはイムノアフィニティー技術のような技術を用いて収穫することができる。ポリペプチドが培養液中に分泌される場合は、前記培養液を回収して発現されたポリペプチドを回収および精製することができる。ポリペプチドが細胞内で生成される場合、ポリペプチドを回収する前に、先ず初めに細胞を溶解させねばならない。
本発明のポリペプチドを用いて、種々の薬剤スクリーニング技術のいずれかで化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。そのような化合物は、本発明のポリペプチドの遺伝子発現レベルまたは活性レベルを活性化させる(アゴニスト作用)か、または阻害する(アンタゴニスト作用)ことができ、本発明のさらなる特徴を形成し得る。好ましい化合物は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させることに有効であるか、または本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節することに有効である。
アゴニスト化合物またはアンタゴニスト化合物は、例えば細胞、無細胞調製物、化学物質ライブラリーまたは天然物混合物から単離することができる。これらのアゴニストまたはアンタゴニストは、天然または改変された基質、リガンド、酵素、受容体、もしくは構造的もしくは機能的模倣物質であってもよい。前記のようなスクリーニング技術の適切な概論については、以下を参照されたい:Coligan et al.(1991) Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5。
良好なアンタゴニストである可能性が高い化合物は、本発明のポリペプチドと結合し、結合しているときに前記ポリペプチドの生物学的作用を誘導しない分子である。強力なアンタゴニストには、本発明のポリペプチドと結合し、それによって本発明のポリペプチドの活性を阻害または消滅させる有機小分子、ペプチド、ポリペプチドおよび抗体が含まれる。そのようなやり方で、前記ポリペプチドと正常な細胞の結合分子との結合が阻害され、その結果前記ポリペプチドの正常な生物学的活性が阻害され得る。
【0051】
このようなスクリーニング技術で用いられる本発明のポリペプチドは、溶液中で遊離していても、固相支持体に固定されていても、細胞表面に保持されていても、または細胞内に位置していてもよい。一般に、このようなスクリーニングの方法は、前記のポリペプチドを発現している適切な細胞または細胞膜を用いることを含み、前記細胞または細胞膜を被験化合物と接触させて、結合または機能的応答の刺激もしくは阻害を観察する。続いて前記被験化合物と接触させた細胞の機能的応答を、前記被験化合物と接触させなかった対照細胞と比較する。このようなアッセイによって、前記ポリペプチドの活性化によって生じるシグナルを被験化合物がもたらすか否かを、適切な検出系を用いて評価することができる。活性化の阻害剤は、一般的には既知のアゴニストの存在下でアッセイを行われ、被験化合物の存在下でのアゴニストによる活性化の影響が観察される。
本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニスト化合物を同定する好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)本発明の第一の特徴のポリペプチドをその表面に発現している細胞を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で被験化合物と接触させる工程であって、前記ポリペプチドは、前記化合物と前記ポリペプチドとの結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる第二の成分と結合されており;および、
(b)前記化合物と前記ポリペプチドとの相互作用によって生じる前記シグナルのレベルを測定することにより、前記化合物が前記ポリペプチドと結合しこれを活性化するかまたは阻害するかを決定する工程。
【0052】
本明細書に説明されたアッセイ型において検出可能なシグナルを生成する方法は、当業者に公知であろう。特定の例は、GAL4 DNA結合ドメインとの融合における、LBDのような、本発明のポリペプチドまたはフラグメントを発現する構築体を、例えばpFR-Luc(Stratagene Europe, Amsterdam, オランダ)のようなレポータープラスミドと一緒に細胞へ同時トランスフェクションすることである。この特定のプラスミドは、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を制御するGAL4結合部位の5個の縦列反復配列を伴う、合成プロモーターを含む。可能性のあるリガンドが細胞に添加された場合、これは、GAL4-ポリペプチド融合体と結合し、ルシフェラーゼ遺伝子の転写を誘導するであろう。ルシフェラーゼ発現のレベルは、ルミネセンスリーダーを用い、その活性によりモニタリングすることができる(例えば、Lehman et al JBC 270, 12953, 1995;Pawar et al JBC, 277, 39243, 2002参照)。
本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを同定するさらに好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)本発明のポリペプチドを細胞表面に発現している細胞を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で被験化合物と接触させる工程であって、前記ポリペプチドは、前記化合物とポリペプチドとの結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる第二の成分と結合されており;および、
(b)前記化合物と前記ポリペプチドとの相互作用によって生じる前記シグナルレベルを前記化合物が存在しないときの前記シグナルレベルと比較することにより、前記化合物が前記ポリペプチドと結合しこれを活性化するかまたは抑制するかを決定する工程。
さらに好ましい態様では、上述の一般的な方法が、前記ポリペプチドに対する標識または非標識リガンドの存在下でアゴニストまたはアンタゴニストの同定を行う工程をさらに含み得る。
【0053】
本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法の別の態様は、以下の工程を含む:
本発明のポリペプチドをその表面に有する細胞とリガンドとの結合または前記のポリペプチドを含む細胞膜とリガンドとの結合の抑制を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で候補化合物を存在させて決定する工程、および前記ポリペプチドに結合したリガンドの量を決定する工程。リガンドの結合の減少をひき起こし得る化合物は、アゴニストまたはアンタゴニストであると考えられる。好ましくは、前記リガンドが標識されている。
より詳しくは、アンタゴニストまたはアゴニスト化合物をポリペプチドについてスクリーニングする方法は以下の工程を含む:
(a)本発明のポリペプチドを細胞表面に発現している全細胞または本発明のポリペプチドを含む細胞膜と、標識リガンドとをインキュベートする工程;
(b)前記全細胞または細胞膜と結合した標識リガンドの量を測定する工程;
(c)工程(a)の標識リガンドおよび前記全細胞または細胞膜の混合物に候補化合物を添加し、前記混合物を平衡化させる工程;
(d)前記全細胞または細胞膜と結合した標識リガンドの量を工程(c)の後で測定する工程;および、
(e)工程(b)および工程(d)で結合した標識リガンドの相違を比較する工程であって、それにより工程(d)の結合の減少をひき起こす化合物はアゴニストまたはアンタゴニストであると考える前記工程。
【0054】
本発明のINSP100およびINSP104ポリペプチドは、免疫系における細胞増殖および遊走のような過程を含む、様々な生理学的および病理学的過程を調節することができる。したがってINSP100およびINSP104ポリペプチドの生物学的活性は、様々な適切なアッセイを用い、このような調節因子活性の試験を可能にするシステムにおいて試験することができる。
例えば細胞成長阻害を観察するために、固形または液体培地を使用することができる。固形培地において、成長阻害を受ける細胞は、形成されたコロニーのサイズを比較することにより、対象細胞群から容易に選択することができる。液体培地において、成長阻害は、培養培地の濁度またはDNA内の標識チミジンの組込みを測定することにより、スクリーニングすることができる。典型的には、新たに合成されたDNAへのヌクレオシドアナログの組込みを用い、細胞集団における増殖(すなわち、活性細胞成長)を測定する。例えばブロモデオキシウリジン(BrdU)を、DNA標識試薬として使用することができ、抗-BrdUマウスモノクローナル抗体を、検出試薬として使用することができる。この抗体は、ブロモデオキシウリジンを組込んだDNAを含む細胞にのみ結合する。免疫蛍光法、免疫組織法、ELISA、および比色法を含む多くの検出方法を、このアッセイと組合せて使用することができる。ブロモデオキシウリジン(BrdU)および抗-BrdUマウスモノクローナル抗体を含むキットは、Boehringer Mannheim (Indianapolis, IN)から市販されている。
【0055】
INSP100およびINSP104ポリペプチドは、上記のアッセイにおいて用量依存的な様式で多様な生理学的および病理学的過程を調節することが判明するであろう。したがって、INSP100およびINSP104ポリペプチドの“機能的等価物”には、上記アッセイにおいて用量依存的な様式で同じ調節的活性のいずれかを示すポリペプチドが含まれる。用量依存的活性の程度はINSP100およびINSP104ポリペプチドのそれと同一である必要はないが、好ましくは前記“機能的等価物”は、所定の活性アッセイにおいてINSP100およびINSP104ポリペプチドと比較して実質的に類似の用量依存性を示すであろう。
上述のある態様では、単純な結合アッセイを用いてもよく、この場合、被験化合物のポリペプチド保持表面への付着が、直接的または間接的に被験化合物と結合させた標識手段によって検出されるか、または標識競合物質との競合を含むアッセイで検出される。別の態様では、競合薬剤スクリーニングアッセイを用いることができ、この場合、ポリペプチドと特異的に結合することができる中和抗体が、結合について被験化合物と競合する。このようにして、前記抗体を用いて、前記ポリペプチドに対し特異的な結合親和性を保有する一切の被験化合物の存在を検出することができる。
前記ポリペプチドをコードするmRNAの細胞内産生に対する添加被験化合物の影響を検出するアッセイを設計することもできる。例えば、当技術分野で公知の標準的な方法によりモノクローナルまたはポリクローナル抗体を用いてポリペプチドの分泌レベルまたは細胞結合レベルを測定するELISAを構築することができ、前記ELISAを用いて、適切に操作された細胞または組織からのポリペプチド生成を阻害または増強し得る化合物について検索することができる。続いて、前記ポリペプチドと被験化合物との結合複合体の形成を測定することができる。
【0056】
同じく本発明の用語に含まれるアッセイ法は、過剰発現またはアブレーションアッセイにおける本発明の遺伝子およびポリペプチドの使用に関連したものである。このようなアッセイは、細胞内におけるこれらの遺伝子/ポリペプチドのレベルの操作、ならびにこの操作事象の操作された細胞の生理に対する評価に関連している。例えば、このような実験は、特定の遺伝子/ポリペプチドが関与しているシグナル伝達および代謝経路の詳細を明らかにし、被験ポリペプチドが相互作用するポリペプチドの同定に関する情報を作成しおよび関連した遺伝子およびタンパク質が調節される方法に関するヒントを提供する。
使用され得る別の薬剤スクリーニング技術は、対象のポリペプチドに対して適切な結合親和性を有する化合物の高速大量処理スクリーニングを提供する(国際出願WO84/03564を参照されたい)。前記方法では、多数の異なる小型の被験化合物が固相支持体上で合成され、次に本発明のポリペプチドと反応させられ洗浄され得る。ポリペプチドを固定する方法の1つは、非中和抗体を使用することである。続いて、当技術分野で周知の方法を用いて、結合ポリペプチドを検出することができる。精製ポリペプチドはまた、前述の薬剤スクリーニング技術で使用するために、プレート上に直接被覆させることができる。
当技術分野で公知の標準的な受容体結合技術により膜結合受容体または可溶性受容体を同定するのに、本発明のポリペプチドが用いられ得る。前記標準的な技術は、例えばリガンド結合アッセイおよび架橋アッセイであり、そのようなアッセイでは、ポリペプチドが放射性同位体で標識されているか、化学的に改変されているか、またはその検出もしくは精製を容易にするペプチド配列と融合されており、推定上の受容体供給源(例えば細胞の組成物、細胞膜、細胞上清、組織抽出物または体液)とインキュベートされる。結合の有効性は、生物物理的技術、例えば表面プラズモン共鳴および分光法を用いて測定することができる。結合アッセイは、受容体の精製およびクローニングのために用いることができるが、ポリペプチドとその受容体との結合に競合する前記ポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを同定するためにも用いることができる。スクリーニングアッセイを実施する標準的方法は、当技術分野ではよく理解されている。
【0057】
本発明のINSP100およびINSP104ポリペプチドは、ホルモン分泌、細胞成長および癌細胞転移を含む細胞転移のような過程を含む、様々な生理学的および病理学的過程を調節することができる(Torosian, M. H. & Donoway, R. B. , 1991, Cancer, 67 (9): 2280-2283)。したがってINSP100およびINSP104ポリペプチドの生物学的活性は、様々な適当なアッセイを用い、そのような調節因子活性の試験を可能にするシステムにおいて試験することができる。
例えば本発明のINSP100およびINSP104ポリペプチドの細胞転移に対する作用を観察するために、Ohtakiらの論文(Nature., 2001, May 31; 411(6837):613-7)または本明細書に引用された刊行物に説明された方法の1種または2種以上を用いることができる。
例えば本発明のINSP100およびINSP104ポリペプチドのホルモン分泌に対する作用を観察するために、Hinumaらの論文(Nature. 1998, May 21; 393(6682):272-6もしくはNat Cell Biol. 2000, Oct; 2(10):703-8)または本明細書に引用された刊行物を用いることができる。
本発明のINSP100およびINSP104ポリペプチドは、本発明のINSP100およびINSP104ポリペプチドと相互作用する受容体、特に成長ホルモン受容体を同定および特徴決定するために使用することもできる。同定および特徴決定に適した方法は、Hinumaらの論文(Nat Cell Biol. 2000 Oct; 2 (10): 703-8)および国際出願WO01/17958または本明細書に引用された刊行物に説明されたものを含むが、これらに限定されるものではない。
INSP100およびINSP104ポリペプチドは、前述のアッセイにおいて用量依存的様式で様々な生理学的および病理学的過程を調節することがわかっている。したがってINSP100およびINSP104ポリペプチドの"機能的等価物"は、用量依存的様式の前述のアッセイにおいて同じ調節因子活性を示すポリペプチドを含む。用量依存的活性の程度はINSP100またはINSP104ポリペプチドのものと同じである必要はないが、好ましくは"機能的等価物"は、INSP100またはINSP104ポリペプチドと比べ、所定の活性アッセイにおいて実質的に類似した用量依存性を示すであろう。
【0058】
本発明はまた、先に述べたアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、受容体、基質、酵素を同定する方法に有用なスクリーニングキットを含む。
本発明は、上記アゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、受容体、基質および酵素、ならびに前述の方法によって発見され、本発明のポリペプチドの活性または抗原性を調節する他の化合物を含む。
本発明はまた、本発明のポリペプチド、核酸、リガンドまたは化合物を適切な医薬担体と組合せて含む医薬組成物を提供する。これらの組成物は、下記に詳細に説明するように、治療用もしくは診断用試薬として、ワクチンとして、または他の免疫原性組成物として適切であり得る。
本明細書で用いる用語にしたがえば、ポリペプチド、核酸、リガンドまたは化合物[X]を含む組成物は、組成物中のX+Yの合計の少なくとも85質量%がXである場合に不純物(本明細書中ではY)を“実質的に含まない”。好ましくは、Xが組成物中のX+Yの合計の少なくとも約90質量%、より好ましくは少なくとも約95質量%、98質量%または99質量%を構成する。
【0059】
本医薬組成物は、好ましくは治療的に有効な量の本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンドまたは化合物を含むべきである。本明細書で用いられる“治療的に有効な量”という用語は、標的疾患または症状を治療、緩和もしくは予防するために、または検出可能な治療効果もしくは予防効果を示すために必要な治療薬剤の量を指す。いずれの化合物についても、治療的に有効な投与量は、最初に細胞培養アッセイ(例えば新生物細胞培養アッセイ)または動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌまたはブタ)のいずれかで見積もることができる。動物モデルは、適切な濃度範囲および投与経路の決定にも用いることができる。次にそのような情報を用いて、ヒトで有用な投与用量および投与経路を決定することができる。
ヒト対象者に対する正確な有効量は、疾患状態の重篤度、対象者の全身の健康状態、対象者の年齢、体重および性別、食事、投与時間および投与回数、併用薬剤、反応感受性および治療に対する許容性/応答性に依存するであろう。この量は、日常的検査により決定することができ、それは臨床医の判断の範囲内である。一般には、有効用量は、0.01mg/kgから50mg/kg、好ましくは0.05mg/kgから10mg/kgであろう。本組成物は、患者に個別に投与されてもよく、または他の薬剤、医薬品またはホルモンと一緒に投与されてもよい。
【0060】
医薬組成物はまた、治療薬の投与のために医薬的に許容できる担体を含むことができる。そのような担体には、抗体および他のポリペプチド、遺伝子ならびに他の治療薬剤(例えばリポソーム)が含まれるが、ただし担体がそれ自体で前記組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘発せず、かつ不都合な毒性をもたらすことなく投与され得ることを条件とする。適切な担体は、大型でゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子であり得る。
医薬組成物に、医薬的に許容できる塩、例えば無機酸の塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような);および有機酸の塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような)を用いることができる。医薬的に許容できる担体についての綿密な考察は以下のテキストで入手可能である:Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)。
治療用組成物中の医薬的に許容できる担体は、さらに液体、例えば水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールを含むことができる。さらに、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などのような助剤が、前記組成物中に存在していてもよい。そのような担体は、患者が摂取できるように、前記医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。
いったん製剤化されたら、本発明の組成物を直接対象者に投与することができる。治療される対象者は動物で、特にヒト患者が治療され得る。
本発明で用いられる医薬組成物は、多数の経路(経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜下腔内、心室内、経皮的アプリケーション(例えばWO98/20734を参照)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内または直腸的手段が挙げられるが、ただしこれらに限定されない)によって投与できる。遺伝子銃またはハイポスプレーもまた、本発明の医薬組成物の投与に用いることができる。典型的には、本治療用組成物は、注射用物質(液体溶液または懸濁剤のいずれか)として調製できる。注射に先立ち液体ビヒクルで溶液または懸濁液とするのに適する固体を調製することもできる。
【0061】
本組成物の直接的デリバリーは一般に、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内に注射することによって達成されるか、または組織の間隙腔にデリバリーされるであろう。前記組成物はまた、病巣に投与してもよい。投薬治療は、単回投与スケジュールでも反復投与スケジュールでもよい。
本発明のポリペプチドの活性が特定の疾患状態において過剰である場合には、いくつかのアプローチが利用可能である。あるアプローチは、医薬的に許容できる担体とともに上記のような阻害化合物(アンタゴニスト)を、前記ポリペプチドの機能を阻害するのに有効な量で対象者に投与することを含み、前記ポリペプチドの機能の阻害は、例えばリガンド、基質、酵素、受容体の結合を遮断することによって、または第二のシグナルを阻害することによって成され、それによって異常な症状が緩和される。好ましくは、前記アンタゴニストが抗体である。最も好ましくは、そのような抗体は、先に記載するような免疫原性を最少にするためにキメラ抗体および/またはヒト化抗体である。
別のアプローチでは、問題のリガンド、基質、酵素、受容体に対する結合親和性を保持する該ポリペプチドの可溶形を投与することができる。典型的には、前記ポリペプチドは、関連部分を保持するフラグメントの形態で投与することができる。
また別のアプローチでは、前記ポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、内部で生成されるまたは別々に投与されるアンチセンス核酸分子(上述のような)の使用といった発現遮断技術を用いて、阻害することができる。遺伝子発現の改変は、ポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域、5’領域または調節領域(シグナル配列、プロモーター、エンハンサーおよびイントロン)に対して相補的な配列またはアンチセンス分子(DNA、RNAまたはPNA)を設計することによって達成できる。同様に、阻害は“三重らせん”塩基対方法論を用いて達成することができる。三重らせん対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために二重らせんが充分に開く能力を阻害することから有用である。三重らせんDNAを用いる近年の治療上の進歩は、文献に記載されている(J.E. Gee et al.(1994) In:B.E. Huber & B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY)。相補的配列またはアンチセンス分子を設計し、リボソームに対する結合を妨げて転写を妨害することによってmRNAの翻訳を遮断することもできる。そのようなオリゴヌクレオチドは投与されてもよいし、またin vivoでの発現によりin situで生成させてもよい。
【0062】
さらに、本発明のポリペプチドの発現は、そのコードmRNA配列に特異的なリボザイムを用いることによって妨げることができる。リボザイムは、天然または合成であり得る触媒的活性型のRNAである(例えば以下を参照されたい:N. Usman et al., Curr. Opin. Struct. Biol.(1996) 6(4):527−533)。合成リボザイムを設計して、選択した位置でmRNAを特異的に切断し、それによってmRNAの機能的ポリペプチドへの翻訳を妨げることができる。リボザイムは、通常RNA分子で見出されるような、天然のリボースリン酸骨格および天然の塩基を用いて合成され得る。或いは、リボザイムは、非天然の骨格(例えば2'-O-メチルRNA)を用いて合成されて、リボヌクレアーゼ分解から保護されてもよく、また修飾塩基を含んでいてもよい。
RNA分子は、細胞内安定性および半減期を増加させるように改変されてもよい。可能な改変には、RNA分子の5'および/または3'末端へのフランキング配列の付加、または分子の骨格内でホスホジエステル結合に代わるホスホロチオエートまたは2’-O-メチルの使用が含まれるが、ただしこれらに限られない。この概念は、PNAの生成に本来的なものであり、内因性エンドヌクレアーゼによって同様に容易には認識されないイノシン、ケオシン(queosine)およびブトシン(butosine)のような非慣用塩基、ならびにアセチル-、メチル-、チオ-および同様な改変形態のアデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジンの包含によってこれらの分子の全てに広げられ得る。
本発明のポリペプチドおよびその活性の過小発現に関連する異常な状態を治療するためには、いくつかのアプローチも利用可能である。あるアプローチは、前記ポリペプチドを活性化する化合物(すなわち上述のアゴニスト)の治療的に有効な量を対象者に投与し、異常な状態を緩和することを含む。あるいは、本ポリペプチドの治療量を適切な医薬担体と組合せて投与し、関連性のあるポリペプチド生理学的バランスを回復させることができる。
【0063】
遺伝子治療を利用して対象者の関連細胞によって本ポリペプチドの内因性産生を行わせることができる。遺伝子治療は、欠陥のある遺伝子を修正した治療用遺伝子と置き換えることによって、前記ポリペプチドの不適切な生成を永久的に治療することに用いられる。
本発明の遺伝子治療は、in vivoまたはex vivoで実施することができる。ex vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離および精製、治療用遺伝子の導入、および遺伝的に改変した細胞を患者に戻して導入することを必要とする。対照的に、in vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離および精製を必要としない。
治療用遺伝子は、患者に投与するために、典型的には“パッケージング”されている。遺伝子デリバリービヒクルは、リポソームのような非ウイルス性、または、例えばK.L. Berkner (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:39-66に記載されているアデノウイルスのような複製欠損ウイルスもしくはN. Muzyczka (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:97-129および米国特許第5,252,479号に記載されているアデノ付随ウイルス(AAV)ベクターであり得る。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、複製欠損レトロウイルスベクターで発現させるために、操作され得る。次に、この発現構築物は単離されて、前記ポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターで形質導入したパッケージ細胞に導入され、その結果、前記パッケージ細胞は、対象の遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を産生することができるようになる。これらのプロデューサー細胞は、in vivoで細胞を操作するためおよびin vivoでポリペプチドを発現させるために、対象者に投与することができる(以下を参照されたい:Gene Therapy and Other Molecular Genetic- based Therapeutic Approaches, Chapter 20(およびその中に引用された文献), “Human Molecular Genetics” (1996) T. Strachan & A.Pread, BIOS Scientific Publishers Ltd.)。
【0064】
別のアプローチは“裸のDNA”の投与で、この場合、治療用遺伝子が血流または筋肉組織に直接注射される。
本発明のポリペプチドまたは核酸分子が疾患をひき起こす原因物質である場合には、本発明は、前記疾患を引き起こす原因物質に対する抗体を生成するワクチンとして用いることができる前記ポリペプチドまたは核酸分子を提供する。
本発明のワクチンは、予防的(すなわち、感染を防ぐ)であっても治療的(すなわち、感染後の疾患を治療する)であってもよい。そのようなワクチンは、免疫性を付与する抗原、免疫原、ポリペプチド、タンパク質または核酸を、通常は上述の医薬的に許容できる担体と組合せて含み、前記担体には、組成物を投与される個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体で誘発しない担体のいずれもが含まれる。さらに、これらの担体は免疫刺激剤(“アジュバント”)として機能してもよい。さらにまた、前記抗原または免疫原は、細菌の類毒素(例えばジフテリア、破傷風、コレラ、H.ピロリ菌(pyroli)由来の類毒素)および他の病原体と結合されてもよい。
ポリペプチドは胃で分解されるので、ポリペプチドを含むワクチンは、好ましくは非経口的に(例えば皮下、筋肉内、静脈内または皮内注射)投与される。非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤をレシピエントの血液に対して等張にする溶質を含んでいてもよい、水性および非水性の無菌注射溶液、ならびに懸濁剤または増粘剤を含んでもよい、水性および非水性の無菌懸濁剤が含まれる。
本発明のワクチン製剤は、単位用量または複数単位用量の容器で提供されてもよい。例えば、密封されたアンプルおよびバイアルでの提供は、使用直前に無菌液状担体を添加することのみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。投与量はワクチンの比活性に依存し、日常的な検査によって容易に決定することができる。
【0065】
本発明のポリペプチドに結合する抗体の遺伝子デリバリーも同じく、例えば、国際出願W098/55607に開示されたように作用することができる。
射出注入(jet injection)と称される技術(例えば、www.powderject.com参照)も、ワクチン組成物の製剤において有用である。
予防接種およびワクチンデリバリーシステムに関する多くの適当な方法は、国際出願WO00/29428に開示されている。
本発明はまた、診断薬としての本発明の核酸分子の使用に関する。本発明の核酸分子により特徴付けられ、機能不全に付随する遺伝子の変異型の検出は、前記遺伝子の過小発現、過剰発現または位置的もしくは時間的発現の変化から生じる疾患の診断、またはそのような疾患に対する感受性の診断を規定するかまたはそれら診断に付け加えることができる診断ツールを提供する。前記遺伝子に変異を保有する個体は、種々の技術によってDNAレベルで検出することができる。
診断のための核酸分子は、対象者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織生検または剖検材料から入手できる。ゲノムDNAを直接検出に用いてもよいし、またはPCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)もしくは他の増幅技術を分析に先立って用いることによって、ゲノムDNAを酵素的に増幅してもよい(以下の文献を参照されたい:Saiki et al., Nature 324:163-166 (1986);Bej et al., Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol., 26:301-334 (1991);Birkenmeyer et al., J. Virol. Meth., 35:117-126(1991);Van Brunt, J., Bio/Technology, 8:291-294(1990))。
【0066】
ある態様では、本発明のこの特徴は、本発明のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベルを評価すること、および前記発現レベルを対照のレベルと比較することを含む、患者における疾患を診断する方法を提供し、この場合、前記対照レベルと異なるレベルは疾患の指標となる。前記方法は:
a)本発明の核酸分子と核酸プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、患者由来の組織サンプルを前記核酸プローブと接触させる工程;
b)工程a)で用いた条件と同じ条件下で、対照サンプルを前記プローブと接触させる工程;および、
c)前記サンプル中のハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
を含み、この場合、対照サンプル中のハイブリッド複合体レベルと異なるハイブリッド複合体レベルが患者サンプルで検出されることは、疾患の指標となる。
本発明のさらなる特徴は、以下の工程を含む診断方法を含む:
a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
b)前記組織サンプルから、本発明の核酸分子を単離する工程;および、
c)疾患に付随する前記核酸分子における変異の存在を検出することによって、患者を疾患について診断する工程。
上記に記載した方法における核酸分子の検出を補助するために、増幅工程、例えばPCRの使用が含まれ得る。
【0067】
正常な遺伝子型と比較すると、増幅産物におけるサイズの変化によって、欠失および挿入を検出することができる。点変異は、増幅DNAを本発明の標識RNAとハイブリダイズさせるか、あるいは本発明の標識アンチセンスDNA配列とハイブリダイズさせることによって同定することができる。完全にマッチした配列は、RNase消化によって、または融解温度における差異を評価することによって、ミスマッチを有する二重鎖と区別することができる。DNAをストリンジェントな条件下で前記DNAとハイブリダイズする核酸プローブと接触させてハイブリッド二本鎖分子を形成させること(前記ハイブリッド二本鎖は、疾患に付随する変異に対応するいずれかの部分で前記核酸プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分を有する)、および、前記プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分の有無を前記DNA鎖の対応部分における疾患付随変異の有無を示すものとして検出することによって、患者における変異の有無を検出することができる。
前記のような診断は特に出生前検査で有用であり、新生児検査でもなお有用である。
参照遺伝子と“変異”遺伝子との間の点変異および他の配列的相違は、他の周知の技術、例えば直接DNAシークエンシングまたは一本鎖構造多型性(Orita et al., Genomics, 5:874-879 (1989))によって同定できる。例えば、シークエンシングプライマーは、二本鎖PCR産物または改変PCRによって作製された一本鎖鋳型分子とともに用いることができる。配列決定は、放射能標識ヌクレオチドを用いる通常の方法によって、または蛍光タグを用いる自動シークエンシング法によって実施される。クローン化DNAセグメントを、特異的DNAセグメントを検出するためのプローブとして用いることもできる。この方法の感度は、PCRと併用したとき極めて増強される。さらに、点変異および他の配列の変動(例えば多型性)は、例えば対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをただ1つのヌクレオチドが異なる配列のPCR増幅に用いることによって、上述したように検出することができる。
【0068】
DNA配列の相違はまた、変性剤の存在下または非存在下でのゲル内のDNAフラグメントの電気泳動移動度における変化によって、または直接DNAシークエンシング(例えば、Myers et al., Science (1985) 230:1242)によっても検出することができる。特定の位置における配列の変化はまた、RNaseおよびS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイによって、または化学切断法(Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1985) 85:4397-4401を参照)によっても明らかにすることができる。
ミクロ欠失、異数性、転座、逆位のような変異は、通常のゲル電気泳動およびDNAシークエンシングの他に、in situ分析によっても検出できる(例えば以下を参照されたい:Keller et al., DNA Probes, 2nd Ed., Stockton Press, New York, N.Y., USA (1993))。すなわち、細胞内のDNAまたはRNA配列は、それらを単離および/またはメンブレン上に固定する必要なしに、変異について分析することができる。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、現在のところ最も一般的に用いられている方法で、FISHに関する多数の概論が存在する(例えば以下を参照されたい:Trachuck et al., Science, 250, 559-562(1990);およびTrask et al., Trends, Genet., 7, 149-154(1991))。
本発明の別の態様では、本発明の核酸分子を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、遺伝的変種、変異および多型性の効率的スクリーニングを実施することができる。アレイ技術方法はよく知られていて一般的な応用性を有しており、遺伝子発現、遺伝連鎖および遺伝的可変性を含む分子遺伝学における種々の疑問に取り組むのに用いることができる(例えば以下を参照されたい:M. Chee et al., Science (1996) , Vol 274, pp610-613)。
【0069】
ある態様では、前記アレイが、以下の文献に記載されている方法にしたがって調製され使用される(PCT出願WO95/11995(Chee et al.);D.J. Lockhart et al., Nat. Biotech., 14:1675-1680 (1996);M. Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614-10619 (1996))。オリゴヌクレオチド対は、2つから100万個を越える範囲にわたり得る。前記オリゴマーは、光誘導化学法を用いて基板上の指定領域で合成される。基板は、紙、ナイロンまたは他の種類のメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライドもしくは他の適切な固相支持体のいずれであってもよい。別の特徴では、オリゴヌクレオチドは、PCT特許出願(WO95/251116, Baldeschweiler et al.)に記載されているように、化学的結合方法およびインクジェット応用装置を用いることによって基板表面上で合成することができる。別の特徴では、ドット(またはスロット)ブロットに類似する“格子化(gridded)”アレイが、真空系、熱結合方法、UV結合方法、機械的または化学的結合方法を用いて基質表面にcDNAフラグメントまたはオリゴヌクレオチドを配置することおよび連結させることに用いられ得る。上述するようなアレイは、手動で、または利用可能な装置(スロットブロットまたはドットブロット装置)、材料(適切な固相支持体すべて)および機械(ロボット機器を含む)を用いて作製することができ、8、24、96、384、1536または6144個のオリゴヌクレオチド、または2個から100万個を越える範囲の他のいずれの数をも含むことができる(このことは、アレイ自体を商業的に入手可能な計測器の有効利用に向くものとしている)。
【0070】
上記で考察する方法の他に、対象者に由来するサンプルから、ポリペプチドまたはmRNAの異常な増加または低下のレベルを決定することを含む方法によって、疾患を診断することができる。発現低下または発現増加は、例えば、核酸増幅、一例を挙げるとPCR、RT-PCR、RNase保護、ノーザンブロット法および他のハイブリダイゼーション方法のようなポリヌクレオチドの定量のために当技術分野で周知の方法のいずれかを用いて、RNAレベルで測定することができる。
宿主に由来するサンプルで本発明のポリペプチドレベルを決定することに用いることができるアッセイ技術は当業者によく知られており、また上記でいくらか詳細に考察されている(ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット分析およびELISAアッセイを含む)。本発明のこの特徴では、以下の工程を含む診断方法が提供される:(a)上記のようなリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程;および(b)前記複合体を検出する工程。
ELISA、RIAおよびFACSのようなポリペプチドレベルを測定するためのプロトコルは、ポリペプチド発現の変化レベルまたは異常レベルを診断するための基礎をさらに提供することができる。ポリペプチド発現の正常値または標準値は、正常な哺乳類対象体(好ましくはヒト)から得られた体液または細胞抽出物を、複合体形成に適した条件下で、前記ポリペプチドに対する抗体と混合することによって確立される。標準的な複合体形成量は、種々の方法、例えば分光測定方法によって定量することができる。
【0071】
本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体は、前記ポリペプチドの発現によって特徴付けられる症状または疾患の診断のために、または本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンドおよび他の化合物を用いて治療されている患者をモニターするアッセイにおいて、用いることができる。診断目的に有用な抗体は、治療薬として上述ののと同じ様式で調製することができる。前記ポリペプチドについての診断アッセイは、前記抗体および標識を用いてヒトの体液または細胞もしくは組織の抽出物中のポリペプチドを検出する方法を含む。前記抗体は改変して、または改変せずに用いることができ、さらにそれらをレポーター分子と共有結合または非共有結合によって結合させることによって標識することができる。当技術分野で公知の多様なレポーター分子を用いることができ、それらのいくつかは上記に記載されている。
生検組織由来の、対象者、対照および疾患サンプルで発現されているポリペプチドの量は、標準値と比較される。標準値と対象者の値との間の偏差は疾患診断のためのパラメータを確立する。診断アッセイを用いて、ポリペプチド発現の有無および過剰を識別し、治療的処置の間のポリペプチドレベルの調節をモニターすることができる。そのようなアッセイはまた、動物実験、臨床試験または個々の患者の治療モニタリングにおける特定の治療的処置方法の有効性を評価することに用いることができる。
【0072】
本発明の診断キットは、以下を含み得る:
(a)本発明の核酸分子;
(b)本発明のポリペプチド;または
(c)本発明のリガンド。
本発明のある特徴では、診断キットは、ストリンジェントな条件下で本発明の核酸分子とハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子を増幅させるために有用なプライマーを含む第二の容器;および、疾患の診断を容易にするために前記プローブおよびプライマーの使用についての指示書を含み得る。前記キットは、ハイブリダイズしていないRNAを消化するための薬剤を保持している第三の容器をさらに含んでもよい。
本発明の別の特徴では、診断キットが核酸分子のアレイを含んでもよく、前記核酸分子の少なくとも1つが本発明の核酸分子であってもよい。
本発明のポリペプチドを検出するために、診断キットは、本発明のポリペプチドと結合する1種または2種以上の抗体;および、前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬;を含み得る。
【0073】
このようなキットは、内分泌タンパク質が関与している疾患もしくは障害の診断または疾患もしくは障害の易罹患性の診断において使用されるであろう。このような疾患および障害は、生殖障害、妊娠障害、例えば妊娠性絨毛疾患、発育障害、例えばSilver-Russell症候群、成長障害、成長ホルモン欠乏症、クッシング病、内分泌障害、細胞増殖障害で、新生物、癌腫、下垂体腫瘍、卵巣腫瘍、メラノーマ、肺腫瘍、結腸直腸腫瘍、乳房腫瘍、膵臓腫瘍、頭部および頚部腫瘍、胎盤部位の栄養膜の腫瘍、腺癌、絨毛上皮腫、骨肉腫および他の固形腫瘍を含むもの;血管新生、骨髄増殖性障害;自己免疫/炎症疾患;心血管系疾患;神経障害、疼痛;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症、および肥満を含むもの、悪液質、AIDS、腎疾患;肺損傷;加齢;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症および寄生体感染症を含むもの、ならびに他の病態を含む。好ましくは、この疾患は、内分泌機能、特に成長ホルモンが関係するものである。
本発明の種々の特徴および態様は、特にINSP100ポリペプチドおよびINSP104ポリペプチドに関連する実施例を介して、これからより詳細に説明されるであろう。
本発明の範囲を逸脱することなく細部の改変がなされ得ることは、理解されるであろう。
【0074】
(実施例)
実施例1
INSP100およびINSP104は、5個のエクソンを含むものとして同定された。図2は、ヒト由来のQ14407絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B)のスプライシングパターンを、新規スプライシング変種INSP100のスプライシングパターンと比較している。図2は同じく、ヒト由来のP01243絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A)のスプライシングパターンを、新規スプライシング変種INSP104のスプライシングパターンと比較している。新規スプライシング変種INSP100およびINSP104は各々、伸長されたエクソン2(2nov)および短縮されたエクソン3(3nov)を有する。
この概略図は、下垂体成長ホルモン(GH-N)の主要な二次構造エレメントも示している。GH-Nは、4個のαヘリックス(A、B、CおよびD)で構成され、ならびに特に重要であるのは、ヘリックスAをヘリックスBと連結している“A-Bループ”である。A-Bループは、成長ホルモン受容体に結合するGH-N相互作用面の重要な構成要素である(Wells JA, PNAS vol. 93, pp.1-6 1996 “Binding in the growth hormone receptor complex”)。
新規スプライシング変種INSP100およびINSP104は、ヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B;Q14407)の新規スプライシング変種およびヒト絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A;P01243)の公知の新規スプライシング変種と比べ、A-Bループ中に挿入された新たな残基を有する(それぞれのエクソン2の伸長のために)ことが分かる。同様に、各エクソン3の短縮は、A-Bループ内の一部のhCS-AおよびhCS-B残基の除去を生じさせるであろう。したがって、INSP100およびINSP104は、A-Bループの構成がhCS-AおよびhCS-Bとは異なり、このループは同族の受容体に結合する主要な決定基であるので、INSP100およびINSP104は、(結合親和性および/または受容体選択性に関して;例えば、増加したまたは減少した結合親和性および/または受容体選択性に関して)変化した受容体結合特性を示すと推定される。
【0075】
これらの実験的推定は、指定された実験的試験により引き続き確認されるであろう。例えば、多くの異なるアッセイを使用し、ヒト成長ホルモンの結合に対する作用を決定することができる(例えば、J Biol Chem, 1992 Jul 15; 267(20):14219-26 “Developmental control and alternative splicing of the placentally expressed transcripts from the human growth hormone gene cluster”, MacLeod JN, Lee AK, Liebhaber SA, Cooke NE.;J Biol Chem, 1984 Nov 10; 259(21):13131-8, “Analysis of a major human chorionic somatomammotropin gene. Evidence for two functional promoter elements”, Selby MJ, Barta A, Baxter JD, Bell GI, Eberhardt NL.参照)
INSP100およびINSP104のクローニングは、原核または真核発現系における、スプライシング変種の高レベルの発現、引き続きのそれらの精製および特徴決定を可能にするであろう。例えば、組換えINSP104ポリペプチドを使用し、特異的モノクローナルまたはポリクローナル抗体を作成することができ、次にこれらを用い、このスプライシング変種は生化学的特徴決定される。あるいは、組換えINSP104ポリペプチドを、先に説明されたものおよび下記実施例4に説明されるものを含む、多種多様なスクリーニングアッセイにおいて使用することができる。
【0076】
実施例2:遺伝子アッセンブリによるINSP104のクローニング
INSP104は、成長ホルモン/胎盤性ラクトゲンファミリーに関連した、199個のアミノ酸のタンパク質をコードしている完全長予測であり、絨毛性体乳腺発育ホルモン1アイソフォーム1のスプライシング変種である。予測されたヌクレオチド配列(597bp)は、5個のコードエクソンにわたっている。
公知の配列BC022044と合致し、INSP104予測と91%マッチングを有するcDNAを、ヒト胎盤cDNAライブラリー(Clontech)から増幅した。得られたPCR産物を、pCRII-TOPOにサブクローニングし、プラスミドID13685を作成し(図4)、これを鋳型として用い、エクソンアッセンブリによりINSP104を構築した。エクソンアッセンブリ法の概要を、以下に示す:
−5'および3'末端を、プラスミド13685からPCRにより個別に増幅した。ゲル-精製したcDNAを混合し、2回目のPCR反応を行い、再アッセンブリしたDNAを増幅する。
−INSP104に対応する完全長PCR産物を、ゲル-精製し、Invitrogenゲートウェイ(商標)法を用い、逐次pDONR221(ゲートウェイエントリーベクター)およびpEAK12d(発現ベクター)へサブクローニングする。
1.1 cDNAライブラリー
ヒト胎盤cDNAライブラリー(バクテリオファージλGT10中)を、Clontechから購入した。バクテリオファージλDNAを、Wizard LambdaプレップDNA精製システムを製造元の指示に従い用い(Promega, Corporation, Madison)、感染した大腸菌宿主株の小規模培養から調製した。得られたファージDNAを、SM緩衝液約100μg/μL中に再懸濁し、4℃で保存した。
【0077】
1.2 ファージライブラリーDNAからの仮想cDNAのPCR
遺伝子特異的PCR増幅プライマー(INSP104-CP1およびINSP104-CP2、表1)を、INSP104の予測されたコード配列を含むように推定されたPCR産物を増幅するように設計した。PCRを、1X AmpliTaq(商標)緩衝液50μL、各dNTP 200μM、各クローニングプライマー50ピコモル、AmpliTaq(商標)(Perkin Elmer) 2.5ユニットおよび胎盤ファージライブラリーDNA 100ngを含有する最終体積50μLで、下記のようにプログラムされた、MJ Research DNA Engineを用い行った:94℃で1分間;94℃で1分間、および72℃で1分間を40サイクル;引き続きの72℃で7分間の1サイクル;および、4℃の保持サイクル。
増幅産物は、1X TAE緩衝液中で0.8%アガロースゲル(Invitrogen)で視認し、Wizard PCR プレップDNA精製システム(Promega)を用いゲルで精製した。滅菌水50μLで溶離したPCR産物を、直接サブクローニングするか、または-20℃で貯蔵した。
1.3 PCR産物のサブクローニング
PCR産物を、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCRII TOPO)へ、Invitrogen Corporationから購入したTAクローニングキットを製造元に指定された条件で用い、サブクローニングした。簡単に述べると、ヒトライブラリーのプールP増幅由来のゲル精製したPCR産物4μLを、TOPOベクター1μLおよび塩溶液1μLと共に、室温で15分間インキュベーションした。その後反応混合液を、大腸菌株TOP10(Invitrogen)へ、下記のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μLアリコートを、氷上で解凍し、TOPO反応液2μLを添加した。混合液を、氷上で15分間インキュベーションし、その後42℃で正確に30秒間インキュベーションすることにより、ヒートショックした。サンプルを氷上に戻し、温SOC培地(室温)250μLを添加した。サンプルを、振盪しながら37℃で1時間インキュベーションした。続いて形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレートに播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0078】
1.4.1 コロニーPCR
滅菌爪楊枝を用い、コロニーを、滅菌水50μL中に接種した。続いて接種物の10μLアリコートを、1X AmpliTaq(商標)緩衝液、200μMの各dNTP、20ピコモルT7プライマー、20ピコモルSP6プライマー、1ユニットAmpliTaq(商標)(Perkin Elmer)を含有する、全反応溶液20μLで、MJ Research DNA Engineを用いPCRを行った。サイクリング条件は以下の通りであった:94℃で2分間;94℃で30秒、47℃で30秒および72℃で1分間を30サイクル。続いて更なる分析の前に、サンプルを4℃で維持した(保持サイクル)。
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中において1%アガロースゲル上で分析した。予想されるPCR産物サイズ(複数のクローニング部位またはMSCのために+187bp)を示すコロニーを、アンピシリン(100μg/ml)含有L-ブロス(LB)5ml中で、220rpmで振盪しながら、37℃で一晩増殖させた。
1.5 プラスミドDNAの調製およびシークエンシング
ミニプレッププラスミドDNAを、Qiaprep Turbo9600ロボット式システム(Qiagen)またはWizard Plus SVミニプレップキット(Promega カタログ# 1460)を用い、製造元の指示にしたがって5mLの培養物から調製した。プラスミドDNAを100μLの滅菌水に溶出させた。そのDNA濃度を、エッペンドルフBO分光計を用いて測定した。BigDye Terminatorシステム(Applied Biosystems カタログ# 4390246)を用い製造元の指示にしたがいながら、プラスミドDNA(200-500ng)をT7およびSP6プライマーと共にDNAシークエンシングした。プライマー配列は、表1に示した。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)またはMontage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore カタログ# LSKS09624)を用い精製し、続いてApplied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
【0079】
1.6 プラスミド13685からのINSP104の5'および3'末端のPCR増幅
PCRプライマーを、INSP104の5'および3'末端を個別に増幅するように設計した(表1)。INSP104の5'末端のフォワードプライマー(INSP104-B1P-5'-F)は、ゲートウェイ attB1部位(5'GCAGGCTTC)およびコザック配列(5' GCCACC)の部分配列も含む。INSP104の5'末端のリバースプライマー(INSP104-5'-R)は、その3'末端のプライマーと25塩基重複している。INSP104の3'末端のフォワードプライマー(INSP104-3'-F)は、5'末端のリバースプライマーと25bpの重複を有した。INSP104の3'末端のリバースプライマー(INSP104-3'-R)は、5HIS配列を含む(図5)。
INSP104 5'末端の増幅のために、PCR反応を最終体積50μLで行い、これはプラスミド13685ミニプレップDNA(0.3μg/μL)0.5μL、5mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)2μL、INSP104-B1p-5'-F(10μM)6μL、INSP104-5'R 6μL、10X Pfu緩衝液5μL、およびPfuポリメラーゼ(3U/μL)(#M774B, Promega)0.5μLを含んだ。PCR条件は、94℃で2分;94℃で30秒、55℃で30秒および72℃で1分を30サイクル、ならびに4℃の保持サイクルであった。反応産物を、1.5%アガロースゲル(1X TAE)に装荷し、正しいサイズのPCR産物(226bp)を、Qiaquick Gel Extraction Kit (Qiagen カタログ#28704)を用い、50μL溶離緩衝液(Qiagen)で溶出し、ゲル精製した。
INSP104 3'末端を、前述と同じ反応条件を用いるが、プライマーINSP104-3'-FおよびINSP104-3'-R、10X AmpliTaq緩衝液5μLおよびAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems, # N808-0155, 5U/μL)0.5μLを使用し、増幅した。451bpのPCR産物を、前述のようにゲルで精製した。
【0080】
2. INSP104 ORF作製のためのINSP104の5'および3'末端のアッセンブリ
INSP104の5'および3'末端を、ゲルで精製された5'末端5μL、ゲルで精製された3'末端2μL、5mMの各dNTP 2μL、NSP104-B1P-5'-F(10μM)6μL、INSP104-3'-R(10μM)6μL、10X Pfu緩衝液5μL、Pfuポリメラーゼ(3U/μL;Promegaカタログ#M774B)0.5μLを含有するPCR反応においてアッセンブリした。反応条件は以下のようであった:94℃で4分;94℃で30秒、48℃で30秒および70℃で2分を10サイクル;94℃で30秒、52℃で30秒、70℃で2分を25サイクル;追加の伸長工程70℃で10分;ならびに、4℃の保持サイクル。反応産物を、1.5%アガロースゲル(1X TAE)上で分析した。正しいサイズ(627bp)のPCR産物、Qiaquick Gel Extraction Kit (Qiagenカタログ#28704)を用い、溶離緩衝液(Qiagen)50μLで溶出し、ゲル精製した。得られた産物(INSP104 ORF)は、5'末端にattB1部位およびコザック配列が、ならびに3'末端に5HISタグコード配列が隣接したINSP104のORFを含む(図6)。
【0081】
3. INSP104 ORFのpDONR221へのサブクローニング
INSP104 ORFを、ゲートウェイ(商標)クローニングシステム(Invitrogen)を用い、pDONR221へサブクローニングした。ゲル精製されたINSP104 ORF PCR産物2μL、5mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)2μL、GCP-フォワード(10μM)3μL、GCP-リバース(10μM)3μL、10X AmpliTaq緩衝液5μLおよびAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems, # N808-0155, 5U/μl)5μLを含有するPCR反応液50μL中で、部分的attB1組換え部位を、INSP104 ORFの5'末端に追加し、ならびに6HISタグ配列、停止コドンおよびattB2組換え部位を、INSP104 ORFの3'末端に加えた。PCR条件は、94℃で2分;94℃で30秒、55℃で30秒および72℃で1分を30サイクル;追加の伸長工程72℃で3分、および4℃の保持サイクルであった。反応産物を、1.5%アガロースゲル(1X TAE)上で分析し、予測サイズ(685bp)のPCR産物を、Qiaquick Gel Extraction Kit (Qiagen カタログ#28704)を用い、50μL溶離緩衝液(Qiagen)で溶出し、ゲル精製した。次に精製したPCR産物(ゲートウェイ-改変INSP104 ORF)を、以下のようにBPクロナーゼを使用し、pDONR221へ移した:1.5μlのゲートウェイ-改変INSP104 ORFを、0.5μL pDONR221(0.1μg/μL)、1μL BP緩衝液および1μL BPクロナーゼ酵素混合液(Invitrogen)を含む、最終体積5μL中で、室温で2時間インキュベーションした。反応を、0.5μプロテイナーゼK(2μg/μl)を添加することにより停止し、さらに37℃で10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(3μL)を用い、50μL大腸菌DH5α細胞(Invitrogen)をヒートショックすることにより形質転換した。コンピテントDH5α細胞50μLをアリコート3μLと共に、0.2ml PCRチューブ中で、氷上で30分間インキュベーションし、続いて42℃の水浴に45秒間移した。このチューブを、氷上に2分間戻し、12mlプロピレンチューブに移した。その後サンプルを、SOC培地900μLの添加により希釈し、振盪しながら37℃で1時間インキュベーションした。形質転換体(200μL)を、40μg/μLカナマイシンを含有するLBプレート上に接種し、室温で72時間インキュベーションした。プラスミドミニプレップDNAを、QiaPrep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用い、8個の得られたコロニーから単離し、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ#4390246)を製造元の指示に従い用い、M13FおよびM13RシークエンシングプライマーによりDNAシークエンシングを施した。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)またはMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサー上で分析した。
【0082】
4. NSP104-ORFの発現ベクターpEAK12dへのサブクローニング
INSP104 ORFの正確な配列を含むpDONR221クローン由来のプラスミド溶離液(1.5μL)(プラスミドID 14259)(図7)を、次に、pEAK12d(0.1μg/μL)1.5μL、LR緩衝液2μLおよびLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μLを含み、最終体積10μLである組換え反応において使用した。この混合液を室温で1時間インキュベーションし、1μLプロテイナーゼK(2μg/μL)の添加により停止し、さらに10分間37℃でインキュベーションした。この反応のアリコート(1μL)を用い、20μL大腸菌DH10B細胞(Invitrogen)(滅菌水中1/5希釈)を、Biorad Gene Pulserを製造元の推奨に従い使用し、エレクトロポレーションにより形質転換した。エレクトロポレーションした細胞を、12mlプロピレンチューブに移し、SOC培地1mLの添加により希釈し、37℃で1時間インキュベーションした。形質転換体を、LB-アンピシリンプレート上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。ミニプレップDNAを、QiaPrep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用い、3個のコロニーから調製し、溶離緩衝液50μL中に溶離した。続けて各ミニプレップ0.5μLに、5mMの各dNTP 2μL、10μM pEAK12-F 3μL、10μM pEAK12-R 3μL、10X AmpliTaq(商標)緩衝液5μLおよびAmpliTaq(商標)(Applied Biosystemsカタログ#N808-0155)0.5μLを含有する、全反応容積50μLでPCRを施した。サイクリング条件は、以下のようであった:94℃で2分;94℃で30秒、55℃で30秒、および72℃で1分を30サイクル;72℃で3分を1サイクル。その後、更なる分析の前に、サンプルを4℃で維持した(保持サイクル)。
PCR反応生成物は、1X TAE緩衝液中で、1%アガロースゲル上で分析した。予想されるPCR産物サイズ(1010bp)を生じた1個のコロニーを用い、500ml培養液からプラスミドpEAK12d-INSP104-6HIS(プラスミドID 14321)(図8)のCsCl勾配精製されたマキシプレップDNAを調製した。得られたプラスミドを、TE緩衝液中に濃度1μg/μLで再懸濁し、前述のようにpEAK12d FおよびpEAK12d Rプライマーで配列を検証した。
【0083】
表1 INSP104クローニングおよびシークエンシングのためのプライマー

下線付き配列=コザック配列
太字配列=停止コドン
[]内配列=Hisタグ
下線付き配列=隣接cDNA部分との重複
【0084】
実施例3:INSP104の発現および精製
ここで本明細書に開示されたヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を基に、INSP104ポリペプチドのin vivoにおける組織分布および発現レベルを決定するために、更なる実験を行った。
INSP104の転写産物の存在を、様々なヒト組織に由来するcDNAのPCRにより調べることができる。INSP104転写産物は、試験したサンプル中で非常に低いレベルで存在するかもしれない。したがって、RNA調製物中の少量のゲノム混入は、偽陽性の結果を生じるので、様々なヒト組織中の転写産物の存在を確立する実験の設計には細心の注意が必要である。したがって全てのRNAは、逆転写に使用する前に、DNAseで処理されなければならない。加えて各組織に関して、対照反応は、逆転写が生じないよう設定されるのがよい(-ve RT対照)。
例えば、各組織からの総RNA 1μgを使用し、Multiscript逆転写酵素(ABI)およびランダムヘキサマープライマーを用い、cDNAを作成することができる。各組織について、逆転写酵素以外の全ての構成要素が添加された対照反応が設定される(-ve RT対照)。PCR反応は、各組織、逆転写されたRNAサンプルおよびマイナスRT対照に対し、準備される。INSP104-特異的プライマーは、本明細書に提供された配列情報を基に容易に設計される。逆転写されたサンプル中の正確な分子量の産物の存在は、マイナスRT対照中の産物の非存在と共に、その組織における転写産物の存在の証拠となり得る。INSP104転写産物をスクリーニングするためには、前述のように作成されたもののみではなく、いずれか適当なcDNAライブラリーを使用することができる。
INSP104ポリペプチドの組織分布パターンはさらに、これらのポリペプチドの機能に関連した有用な情報を提供するであろう。
加えてここで、本明細書において説明した発現ベクターを使用し、更なる実験を行うことができる。これらのベクターによる哺乳類細胞株のトランスフェクションは、INSP104タンパク質の高レベルの発現を可能にし、その結果INSP104ポリペプチドの機能特性に関する継続した研究を可能にする。下記の材料および方法は、そのような実験の適切なものの例である:
【0085】
細胞培養
エプスタイン-バーウイルス核抗原を発現しているヒト胚性腎293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen)を、Ex-細胞VPRO血清-非含有培地(シードストック、維持培地、JRH)において懸濁状態で維持した。トランスフェクションの16-20時間前に(-1日目)、細胞を、2個のT225フラスコに播種した(2%FBS播種培地(JRH)を含むDMEM/F12(1:1)中に2x105細胞/mlの密度でフラスコあたり50ml)。次の日(トランスフェクション0日目)、JetPEI(商標)試薬を用いトランスフェクションを行った(プラスミドDNA 2μL/μg、PolyPlus-トランスフェクション)。各フラスコについて、プラスミドDNAを、GFP(蛍光レポーター遺伝子)DNAで同時-トランスフェクションした。次にトランスフェクション混合物を、2個のT225フラスコに加え、37℃(5%CO2)で6日間インキュベーションした。陽性トランスフェクションの確認は、1日目および6日目の定量的蛍光試験により行った(Axiovert 10 Zeiss)。
6日目に(採集日)、2つのフラスコから上清をプールし、遠心分離し(例えば、4℃、400g)、固有の識別票を付したポットに入れた。6His-タグ付加タンパク質のQCのために(内部バイオプロセッシングQC)、1個のアリコート(500μL)を保持した。
大規模化バッチは、トランスフェクション試薬としてPolysciences からのポリエチレンイミンにより、BP/PEI/HH/02/04を参照し、“浮遊細胞のPEIトランスフェクション”と称されるプロトコルに従い作成した。
【0086】
精製方法
C-末端6Hisタグを伴う組換えタンパク質を含有する培養培地サンプルを、冷緩衝液A(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、pH7.5)で希釈した。このサンプルを、滅菌フィルター(Millipore)で濾過し、滅菌培養角ビン(Nalgene)で4℃で維持した。
精製は、自動サンプル添加装置(Labomatic)に連結したVISIONワークステーション(Applied Biosystems)で4℃で実施した。精製方法は、以下の2つの連続する工程を含んでいた:Niイオンで荷電されているPoros 20 MC (Applied Biosystems)カラム(4.6x50mm, 0.83ml)での金属アフィニティークロマトグラフィー、続いてセファデックスG-25中型(Amersham Pharmacia)カラム(1.0x10cm)でゲルろ過。
最初のクロマトグラフィー工程のために、金属アフィニティーカラムを30カラム容積のEDTA溶液(100mM EDTA;1M NaCl;pH8.0)で再生させ、15カラム容積の100mM NiS04溶液で洗浄し、10カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて7カラム容積の緩衝液B(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、400mMイミダゾール、pH7.5)で洗浄し、最後に15カラム容積の緩衝液A(15mMのイミダゾールを含む)で平衡化した。Labomaticサンプル添加装置でサンプルを200mlのサンプルループに移し、続いてNi金属アフィニティーカラムに流速10ml/分で装荷した。前記カラムを12カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて28カラム容積の緩衝液(20mMのイミダゾールを含む)で洗浄した。20mMのイミダゾール洗浄の間に、緩く付着していた混入タンパク質はカラムから溶出した。組換えHis-タグ付加タンパク質を、流速2ml/分、10カラム容積の緩衝液Bで最後に溶出させ、この溶出タンパク質を採集した。
【0087】
二番目のクロマトグラフィー工程のために、セファデックスG-25ゲルろ過カラムを、2mlの緩衝液D(1.137M NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;pH7.2)で再生し、続いて4カラム容積の緩衝液C(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;20%(w/v)グリセロール;pH7.4)で平衡化した。Niカラムから溶出したピーク画分は、VISIONに装備されているサンプル添加装置を自動的に通過して、セファデックスG-25カラムに装荷され、2ml/分の流速の緩衝液Cでタンパク質を溶出した。前記画分を、滅菌遠心分離フィルター(Millipore)で濾過し、凍結して-80℃で保存した。サンプルのアリコートを、抗-His抗体を用い、SDS-PAGE(4-12% NuPAGEゲル;Novex)ウェスタンブロットで分析した。NuPAGEゲルは、0.1%クマーシーブルーR250染色液(30%メタノール、10%酢酸)で室温で1時間染色し、続けて20%メタノール、7.5%酢酸で、バックグラウンドが透明になりタンパク質バンドが明確に視認できるまで、脱色した。
【0088】
電気泳動に続いて、タンパク質をゲルからニトロセルロースメンブレンへ移した。前記メンブレンを、5%粉乳を含む緩衝液E(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;0.1% Tween 20、pH7.4)で室温にて1時間ブロッキングし、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液E中でふたつのウサギポリクローナル抗体混合物(G-18およびH-15、各々0.2μg/mL;Santa Cruz)と共に4℃で一晩インキュベーションした。室温でさらに1時間インキュベーションした後、前記メンブレンを緩衝液E(10分、3回)で洗浄し、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液Eで1/3000に希釈したHRP-結合抗-ウサギ二次抗体(DAKO, HRP 0399)と室温で2時間インキュベーションした。緩衝液Eで洗浄(10分、3回)した後、前記メンブレンをECLキット(Amersham Pharmacia)で1分間処理した。続いて前記メンブレンをハイパーフィルム(Amersham Pharmacia)に露光し、前記フィルムを現像してウェスタンブロット画像を視覚的に分析した。
クマーシー染色により検出可能なタンパク質バンドを示したサンプルについて、タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミンを標準とする、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて決定した。
さらに細胞株中のポリペプチドの過剰発現または発現のノックダウンを使用し、宿主細胞ゲノムの転写活性に対する作用を決定することができる。INSP104ポリペプチドの二量体化のパートナーであるコ-アクチベーターおよびコ-リプレッサーを、ウェスタンブロットと組合せた免疫沈降および質量分析と組合せた免疫沈降により同定することができる。
【0089】
実施例4:タンパク質機能の生物学的関係の研究に適した生殖機能健全性アッセイ(reproductive health assay)および代謝内分泌アッセイ
本出願人は、多くの生殖機能健全性および代謝内分泌に関連したアッセイを開発し、かつタンパク質機能の生物学的関係の研究において使用している。本出願人により開発された生殖機能健全性および代謝内分泌に関連したアッセイの例は、4種の代謝内分泌に関する細胞ベースのアッセイ、および18種の生殖機能健全性に関する細胞ベースのアッセイを含む。
【0090】
1. 代謝内分泌アッセイ
1.1脂肪細胞への分化アッセイ:
脂肪細胞の分化の阻害は、糖尿病および多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のような疾患におけるインスリン抵抗性を減少させる上で重要であると考えられる脂肪体積の低下に関するin vitroモデルである。この目的は、前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化を阻害するタンパク質を同定することである。マウスの前駆脂肪細胞株3T3-L1を誘導し、インスリン+IBMXで脂肪細胞へ分化させる。TNFα+シクロヘキサミドにより分化が阻害されるという知見を陽性対照として使用する。
1.2 トリチウム化ブドウ糖の取込み(3T3 L1):
この目的は、糖尿病またはPCOS時の脂肪細胞におけるインスリン-抵抗性のモデルとしてブドウ糖取込みを刺激するタンパク質を同定することである。使用される脂肪細胞は、分化させたマウス3T3-L1前駆脂肪細胞である。
1.3 トリチウム化ブドウ糖の取込み(初代ヒト脂肪細胞):
この目的は、糖尿病またはPCOS時の脂肪細胞におけるインスリン-抵抗性のモデルとしてブドウ糖取込みを刺激するタンパク質を同定することである。初代ヒト脂肪細胞が使用される。
1.4 トリチウム化されたブドウ糖取込み(初代ヒト骨格筋細胞):
この目的は、糖尿病またはPCOS時の筋肉組織におけるインスリン-抵抗性のモデルとしてブドウ糖取込みを刺激するタンパク質を同定することである。初代ヒト骨格筋細胞を筋管に分化させ、その後このアッセイにおいて使用する。
【0091】
2. 生殖機能健全性アッセイ:
2.1 初代ヒト子宮平滑筋増殖アッセイ:
子宮平滑筋細胞の増殖は、女性の子宮類線維化疾患における腫瘍発生の前兆である。このアッセイにおいて、目的は、初代ヒト子宮平滑筋細胞の増殖を阻害するタンパク質を同定することである。
2.2 JEG-3移植アッセイ:
JEG-3細胞は、移植時の胚盤胞のモデルとして使用される絨毛栄養膜性(choriotrophoblastic)ヒト癌細胞株である。Ishikawa細胞は、脱落膜のモデルとして使用される余り分化していない子宮内ヒト癌細胞株である。JEG-3細胞は、ヒト脱落膜組織へ“移植”されるであろう。このアッセイにおいて2-チャンバーシステムが使用され、Ishikawa細胞またはIshikawa-馴化培地が下側チャンバーに配置された場合に、蛍光標識されたJEG-3細胞が、上側チャンバーから下側チャンバーへマトリゲル被覆された多孔膜を通り侵入する。遊走する細胞は、プレートリーダーにより定量される。この目的は、in vivoにおける移植を補助するために使用される、JEG-3細胞の侵入を増大するタンパク質を同定することである。
2.3 オステオポンチンビーズアッセイ(Ishikawa細胞):
Ishikawaヒト子宮内膜癌細胞を、移植のモデルとして使用した。ヒトにおける移植時に、胚盤胞により発現されたタンパク質に結合すると考えられる子宮内膜により様々なインテグリンが発現される。Ishikawa細胞は、“移植のウインドウ”の間に子宮内膜により発現されるインテグリンであるavb3を発現することが文献において示されている。このインテグリンは、栄養膜により発現されたオステオポンチンに結合すると考えられる。このアッセイにおいて、オステオポンチン-被覆した蛍光ビーズは、胚盤胞を表し、およびIshikawa細胞は、エストラジオールでそれらを処理することによりそれらが結合するように起動される。この目的は、移植時の子宮内膜の受容性の増大の補助として、Ishikawa細胞のオステオポンチン-ビーズへの結合能を増加させるタンパク質を同定することである。
【0092】
2.4 HuF6アッセイ:
HuF6細胞は始原(primary)ヒト子宮線維芽細胞である。これらの細胞は、IL-1βで細胞を処理することにより、脱落膜化を誘導することができる。脱落膜化のマーカーは、PGE2の生成であり、これはELISAにより測定される。この目的は、妊娠初期の脱落膜形成を増強する手段として、HuF6細胞によるPGE2の生成を増加させるタンパク質を同定することである。
2.5 子宮内膜症アッセイ:
腹膜TNFαは、腹膜中皮細胞への接着および増殖するために、子宮から脱落した子宮内膜細胞を誘導することにより、子宮内膜症において役割を果たす。このアッセイにおいて、BEND細胞は、TNFαで処理し、これは子宮内膜症時の接着のアッセイとして、それらのフィブロネクチン-被覆した蛍光ビーズへの結合能を増大する。この目的は、TNFαの細胞のビーズ結合能を刺激する能力を減少または阻害するタンパク質を同定することである。
2.6 hLHRで安定にトランスフェクションされたブタ顆粒膜細胞JC-410を使用するcAMPアッセイ:
多嚢胞性卵巣症候群において、下垂体由来のLHは比較的高く、卵巣包膜細胞からのアンドロゲン生産を誘導する。このアッセイは、PCOS時に卵巣におけるLHの作用を低下させるために使用されるLHシグナル伝達のインヒビターを調べるために使用される。JC-410ブタ顆粒膜細胞株は、ヒトLH受容体により安定してトランスフェクションされる。LHによる処理は、cAMP生成を生じる。
2.7 hFSHRで安定してトランスフェクションされたJC-410ブタ顆粒膜細胞を使用するcAMPアッセイ:
JC-410ブタ顆粒膜細胞株を、ヒトFSHRにより安定にトランスフェクションした。FSHによる処理はcAMP生成を刺激し、これはこのアッセイにおいて測定される。この目的は、顆粒化細胞におけるFSH作用を増強するタンパク質を同定することである。
【0093】
2.8 LβT2(マウス)下垂体細胞アッセイ:
LβT2は、不死化されたマウス下垂体性腺刺激細胞株である。アクチビン単独またはGnRH+アクチビンによる刺激は、FSHの分泌を生じる(GnRH単独による刺激は、LH分泌を生じる)。これらの細胞は、FSH生成を刺激するためにGnRHと共調して作用するタンパク質を見つけるために、GnRH+バイオスクリーンタンパク質で処理されるか、またはこれらは、アクチビン単独のようにFSH分泌を刺激することができるタンパク質を見つけるために、バイオスクリーンタンパク質単独で処理することができる。
2.9.卵丘拡張(cumulus expansion)アッセイ:
マウスの卵丘-卵母細胞複合体(2/ウェル)を使用する卵丘-拡張アッセイは、卵母細胞成熟に影響を及ぼすタンパク質をアッセイ(卵丘拡張により測定される)するために、96-ウェルフォーマットで確立されている。ふたつの96-ウェルプレートを、1アッセイにつき処理し、毎週2アッセイを行うことができる。バイオスクリーンタンパク質をただひとつの濃度でアッセイする場合、全てのバイオスクリーンIタンパク質を1ヶ月以内にアッセイすることができる。読み出し情報は、拡張に関するイエス/ノーの回答であるか、または画像解析プログラムを使用し、定量的方法で拡張を測定することができる。
2.10. RWPE増殖アッセイ:
良性前立腺肥大は、アポトーシスによりバランスがとれていない、前立腺上皮および支質の成長、その結果としてのこの臓器の肥大を特徴としている。RWPEは、HPV-18により不死化された通常のヒト前立腺上皮細胞株であり、初代ヒト前立腺上皮細胞の代わりに使用することができる。
【0094】
2.11. HT-1080線維肉腫侵襲アッセイ:
このアッセイは、JEG-3移植アッセイ(前記)の陽性細胞対照として開発された。これは、癌転移に関するモデルとしてよく確立されたアッセイである。蛍光-標識したHT-1080ヒト線維肉腫細胞を、2-チャンバーシステムの上側チャンバーにおいて培養し、刺激し、多孔質マトリゲル-被覆膜を通じ下側チャンバーへ侵襲させ、そこで定量した。この目的は、この侵襲を阻害するタンパク質を同定することである。これらの細胞を、血清を下側チャンバーへ添加することにより刺激すると侵襲するが、これはドキシサイクリンにより阻害される。
2.12. 初代ヒト子宮平滑筋アッセイ
子宮類線維化疾患の重要なもののひとつは、平滑筋腫になり始める子宮平滑筋細胞によるコラーゲン沈着である。初代ヒト子宮平滑筋細胞をTGFβで処理することにより刺激するとコラーゲンを生成するが、これはRebifによりブロックされる。この目的は、この線維症性表現型を阻害するタンパク質を発見することである。
2.13. ヒト平滑筋腫細胞の増殖アッセイ
ヒト平滑筋腫細胞株を、増殖アッセイにおける子宮類繊維疾患のモデルとして使用した。この細胞は、非常にゆっくり成長し、本発明者らは、エストラジオールおよび増殖因子でこれらを処理することによりこれらを刺激し、より迅速に成長させた。この目的は、平滑筋腫細胞のエストラジオール依存型の成長を阻害するタンパク質を同定することである。
2.14. U937遊走アッセイ
子宮内膜損傷は、免疫細胞を腹膜腔に動員するサイトカインを分泌する。これらの免疫細胞(特に活性化されたマクロファージおよびTリンパ球)は、子宮内膜症において一般的である炎症症状を媒介する。RANTESは、子宮内膜支質細胞により生成されおよび腹水中に存在することが示されている。このアッセイにおいて、活性化されたマクロファージのモデルとして使用される単球系細胞株であるU937は、2-チャンバー培養システムの下側レベルを処理することにより誘導して上側チャンバーから遊走させることができる。これらの細胞が蛍光色素と共に予め装荷された場合、これらの細胞を下側チャンバーにおいて定量することができる。この目的は、U937細胞の遊走を阻害するタンパク質を同定することである。
【0095】
2.15 JEG3ヒト栄養膜アッセイ
胚盤胞の栄養膜は、母親による胚の免疫拒絶反応の防止に重要であると考えられるクラスI HLA分子HLA-Gを生成する。子癇前症時に、HLA-Gレベルは低いかまたは存在せず、これは恐らく母親の免疫干渉により、子宮内膜および螺旋動脈への栄養膜の浸潤不良のような顕著な症状を生じるであろう。JEG-3ヒト栄養膜細胞株は、HLA-Gを生成し、これはIL-10またはLIFによる治療により増加することができる。ELISAを用い、JEG-3細胞によるHLA-G生成を測定することができ、この目的は、HLA-G生成を増加することができる他のタンパク質を発見することである。
2.16.初代ラット卵巣分散アッセイ:
JC-410-FSHR/LHR細胞株からの認知可能量のステロイド類の測定は困難であるので、未熟ラットから摘出した卵巣全体由来の初代細胞を使用するアッセイが開発されている。最初に、FSHおよび/またはLH処理後、これらの培養物からのエストラジオール生成を測定する。したがってこの目的は、ゴナドトロピンが刺激したステロイド生成を増強するタンパク質、またはこれらの培養物によるステロイド生成を増大するように単独で作用するタンパク質を同定することである。
2.17.マウスIVFアッセイ:
このアッセイにおいて、卵母細胞の受精能により測定される精子機能が、精子の受精能を刺激するタンパク質を発見する目的で、アッセイされる。
2.18.初代ヒト前立腺間質細胞増殖アッセイ
BPHの上皮成分のアッセイは、既に上述した(前記「RWPEアッセイ」の項参照)。このアッセイは、BPH時のこれらの細胞の増殖モデルとして、初代ヒト前立腺間質細胞を使用する。この目的は、これらの細胞の増殖を阻害するタンパク質を同定することである。
【0096】
配列情報 (注:エクソン-エクソン結合部によってコードされるアミノ酸については、より5'側のエクソンに帰属させる)

配列番号 1 (INSP100 & INSP104 ヌクレチド配列エクソン2nov)
1 GCTCCCGGAC GTCCCTGCTC CTGGCTTTTG CCCTGCTCTG CCTGCCCTGG
51 CTTCAAGAGG CTGGTGCCGT CCAAACCGTT CCGTTATCCA GGCTTTTTGA
101 CCACGCTATG CTCCAAGCCC ATCGCGCGCA CCAGCTGGCC ATTGACACCT
151 ACCAGGAGTT TGTAAGTTCT TGGGGAATGG

配列番号 2 (INSP100 & INSP104 タンパク質配列エクソン 2nov)
1 SRTSLLLAFA LLCLPWLQEA GAVQTVPLSR LFDHAMLQAH RAHQLAIDTY
51 QEFVSSWGMD
【0097】
配列番号3 (INSP100 & INSP104 ヌクレオチド配列エクソン3nov)
1 ACTCTATTCC GACACCCTCC AACATGGAGG AAACGCAACA GAAATCC

配列番号 4 (INSP100 & INSP104 タンパク質配列エクソン 3nov)
1 SIPTPSNMEE TQQKS

配列番号 5 (INSP100 & INSP104 エクソン2nov と 3novの連続ヌクレオチド配列)
1 GCTCCCGGAC GTCCCTGCTC CTGGCTTTTG CCCTGCTCTG CCTGCCCTGG
51 CTTCAAGAGG CTGGTGCCGT CCAAACCGTT CCGTTATCCA GGCTTTTTGA
101 CCACGCTATG CTCCAAGCCC ATCGCGCGCA CCAGCTGGCC ATTGACACCT
151 ACCAGGAGTT TGTAAGTTCT TGGGGAATGG ACTCTATTCC GACACCCTCC
201 AACATGGAGG AAACGCAACA GAAATCC

配列番号 6 (INSP100 & INSP104 エクソン 2nov および 3novの連続タンパク質配列)

1 SRTSLLLAFA LLCLPWLQEA GAVQTVPLSR LFDHAMLQAH RAHQLAIDTY
51 QEFVSSWGMD SIPTPSNMEE TQQKS
【0098】
配列番号 7 (INSP100 ヌクレオチド配列)
1 ATGGCTGCAG GCTCCCGGAC GTCCCTGCTC CTGGCTTTTG CCCTGCTCTG
51 CCTGCCCTGG CTTCAAGAGG CTGGTGCCGT CCAAACCGTT CCGTTATCCA
101 GGCTTTTTGA CCACGCTATG CTCCAAGCCC ATCGCGCGCA CCAGCTGGCC
151 ATTGACACCT ACCAGGAGTT TGTAAGTTCT TGGGGAATGG ACTCTATTCC
201 GACACCCTCC AACATGGAGG AAACGCAACA GAAATCCAAT CTAGAGCTGC
251 TCCGCATCTC CCTGCTGCTC ATCGAGTCGT GGCTGGAGCC CGTGCGGTTC
301 CTCAGGAGTA TGTTCGCCAA CAACCTGGTG TATGACACCT CGGACAGCGA
351 TGACTATCAC CTCCTAAAGG ACCTAGAGGA AGGCATCCAA ACGCTGATGG
401 GGAGGCTGGA AGACGGCAGC CGCCGGACTG GGCAGATCCT CAAGCAGACC
451 TACAGCAAGT TTGACACAAA CTCACACAAC CATGACGCAC TGCTCAAGAA
501 CTACGGGCTG CTCTACTGCT TCAGGAAGGA CATGGACAAG GTCGAGACAT
551 TCCTGCGCAT GGTGCAGTGC CGCTCTGTAG AGGGTAGCTG TGGCTTCTAG

配列番号 8 (INSP100 タンパク質配列)
1 MAAGSRTSLL LAFALLCLPW LQEAGAVQTV PLSRLFDHAM LQAHRAHQLA
51 IDTYQEFVSS WGMDSIPTPS NMEETQQKSN LELLRISLLL IESWLEPVRF
101 LRSMFANNLV YDTSDSDDYH LLKDLEEGIQ TLMGRLEDGS RRTGQILKQT
151 YSKFDTNSHN HDALLKNYGL LYCFRKDMDK VETFLRMVQC RSVEGSCGF
【0099】
配列番号 9 (INSP100 & INSP104 シグナル配列領域を含まない完全長ヌクレオチド配列)
1 GTCCAAACCG TTCCGTTATC CAGGCTTTTT GACCACGCTA TGCTCCAAGC
51 CCATCGCGCG CACCAGCTGG CCATTGACAC CTACCAGGAG TTTGTAAGTT
101 CTTGGGGAAT GGACTCTATT CCGACACCCT CCAACATGGA GGAAACGCAA
151 CAGAAATCCA ATCTAGAGCT GCTCCGCATC TCCCTGCTGC TCATCGAGTC
201 GTGGCTGGAG CCCGTGCGGT TCCTCAGGAG TATGTTCGCC AACAACCTGG
251 TGTATGACAC CTCGGACAGC GATGACTATC ACCTCCTAAA GGACCTAGAG
301 GAAGGCATCC AAACGCTGAT GGGGAGGCTG GAAGACGGCA GCCGCCGGAC
351 TGGGCAGATC CTCAAGCAGA CCTACAGCAA GTTTGACACA AACTCACACA
401 ACCATGACGC ACTGCTCAAG AACTACGGGC TGCTCTACTG CTTCAGGAAG
451 GACATGGACA AGGTCGAGAC ATTCCTGCGC ATGGTGCAGT GCCGCTCTGT
501 AGAGGGTAGC TGTGGCTTCT AG

配列番号 10 (INSP100 & INSP104 シグナル配列領域を含まない完全長タンパク質配列)
1 VQTVPLSRLF DHAMLQAHRA HQLAIDTYQE FVSSWGMDSI PTPSNMEETQ
51 QKSNLELLRI SLLLIESWLE PVRFLRSMFA NNLVYDTSDS DDYHLLKDLE
101 EGIQTLMGRL EDGSRRTGQI LKQTYSKFDT NSHNHDALLK NYGLLYCFRK
151 DMDKVETFLR MVQCRSVEGS CGF

配列番号11 (INSP104 完全長ヌクレオチド配列)
1 ATGGCTCCAG GCTCCCGGAC GTCCCTGCTC CTGGCTTTTG CCCTGCTCTG
51 CCTGCCCTGG CTTCAAGAGG CTGGTGCCGT CCAAACCGTT CCGTTATCCA
101 GGCTTTTTGA CCACGCTATG CTCCAAGCCC ATCGCGCGCA CCAGCTGGCC
151 ATTGACACCT ACCAGGAGTT TGTAAGTTCT TGGGGAATGG ACTCTATTCC
201 GACACCCTCC AACATGGAGG AAACGCAACA GAAATCCAAT CTAGAGCTGC
251 TCCGCATCTC CCTGCTGCTC ATCGAGTCGT GGCTGGAGCC CGTGCGGTTC
301 CTCAGGAGTA TGTTCGCCAA CAACCTGGTG TATGACACCT CGGACAGCGA
351 TGACTATCAC CTCCTAAAGG ACCTAGAGGA AGGCATCCAA ACGCTGATGG
401 GGAGGCTGGA AGACGGCAGC CGCCGGACTG GGCAGATCCT CAAGCAGACC
451 TACAGCAAGT TTGACACAAA CTCACACAAC CATGACGCAC TGCTCAAGAA
501 CTACGGGCTG CTCTACTGCT TCAGGAAGGA CATGGACAAG GTCGAGACAT
551 TCCTGCGCAT GGTGCAGTGC CGCTCTGTAG AGGGTAGCTG TGGCTTCTAG

配列番号 12 (INSP104 完全長タンパク質配列)
1 MAPGSRTSLL LAFALLCLPW LQEAGAVQTV PLSRLFDHAM LQAHRAHQLA
51 IDTYQEFVSS WGMDSIPTPS NMEETQQKSN LELLRISLLL IESWLEPVRF
101 LRSMFANNLV YDTSDSDDYH LLKDLEEGIQ TLMGRLEDGS RRTGQILKQT
151 YSKFDTNSHN HDALLKNYGL LYCFRKDMDK VETFLRMVQC RSVEGSCGF
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1A】図1Aは、完全長INSP100(配列番号:8)、対、ヒト由来のQ14407、絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B)のアラインメントを示す。A-Bループはアスタリスクで示している。
【図1B】図1Bは、完全長INSP104(配列番号:12)、対、ヒト由来のP01243絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A)のアラインメントを示す。A-Bループはアスタリスクで示している。
【図2】図2は、ヒト由来のQ14407絨毛性体乳腺発育ホルモン2(hCS-B)のスプライシングパターンを、新規スプライシング変種INSP100と比較している。図2は同じく、ヒト由来のP01243絨毛性体乳腺発育ホルモン1(hCS-A)のスプライシングパターンを、新規スプライシング変種INSP104とも比較している。
【図3】図3は、INSP104の推定ヌクレオチド配列を翻訳と共に示している。
【図4A】図4Aは、pCRII-TOPO-BC022044 (プラスミド(plamid)13685)のマップである。
【図4B】図4Aの続き。
【図5】図5は、INSP104と、プラスミド#13685のアラインメントである。
【図6】図6は、クローニングしたINSP104のヌクレオチド配列および翻訳である。
【図7A】図7Aは、pENTR-INSP104-6HISのマップである。
【図7B】図7Aの続き。
【図8A】図8Aは、pEAK12d-INSP104-6HISのマップである。
【図8B】図8Aの続き。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)から(iii)のいずれかのポリペプチド:
(i)配列番号:10または配列番号:12に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)配列番号:10または配列番号:12のフラグメントを含むポリペプチドであって、前記フラグメントが、少なくとも、INSP100/INSP104のエクソン2の伸長部分のフラグメントを含み、前記配列番号:10または配列番号:12のフラグメントが、成長ホルモンとして機能するか、もしくは配列番号:6に記載のアミノ酸配列に特異的である抗原決定基を有する、前記ポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物。
【請求項2】
請求項1記載の、以下の(i)から(iii)のいずれかのポリペプチド:
(i)配列番号:10または配列番号:12に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)配列番号:10または配列番号:12のフラグメントを含むポリペプチドであって、前記フラグメントが、少なくとも、INSP100/INSP104のエクソン2の伸長部分のフラグメントを含み、前記配列番号:10または配列番号:12のフラグメントが、成長ホルモンとして機能するか、もしくは配列番号:6に記載のアミノ酸配列に特異的である抗原決定基を有する、前記ポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物。
【請求項3】
請求項1または2記載の、以下の(i)から(iii)のいずれかのポリペプチド:
(i)配列番号:10または配列番号:12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(ii) 配列番号:10または配列番号:12のフラグメントからなるポリペプチドであって、前記フラグメントが、少なくとも、INSP100/INSP104のエクソン2の伸長部分のフラグメントを含み、前記配列番号:10または配列番号:12のフラグメントが、成長ホルモンとして機能するか、もしくは配列番号:6に記載のアミノ酸配列に特異的である抗原決定基を有する、前記ポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物。
【請求項4】
配列番号:10または配列番号:12に記載のアミノ酸配列と相同であり、および成長ホルモンとして機能するかもしくは配列番号:6に記載のアミノ酸配列に特異的である抗原決定基を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項の(iii)記載の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項5】
配列番号:10または配列番号:12に記載のアミノ酸配列もしくはその活性フラグメントと90%を超える配列同一性、好ましくは85%、90%、95%、98%または99%を超える配列同一性を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載のフラグメントまたは機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項6】
配列番号:10または配列番号:12に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと有意な構造的相同性を示す、請求項1〜5のいずれか1項記載の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項7】
配列番号:6記載のアミノ酸配列に特異的であり、および配列番号:10または配列番号:12記載のアミノ酸配列由来の7、9、12またはそれよりも多いアミノ酸残基からなる抗原決定基を有する、請求項1〜3および5記載のフラグメントであるポリペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドをコードしている、精製核酸分子。
【請求項9】
配列番号:9もしくは配列番号:11に記載の核酸配列を含む精製核酸分子、またはそれらの余剰的等価物もしくはフラグメントである、請求項8記載の精製核酸分子。
【請求項10】
配列番号:9もしくは配列番号:11記載の核酸配列からなる精製核酸分子、またはそれらの余剰的等価物もしくはフラグメントである、請求項8記載の精製核酸分子。
【請求項11】
高いストリンジェンシーの条件下で、請求項8〜10のいずれか1項記載の核酸分子とハイブリダイズする、精製核酸分子。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項13】
請求項12記載のベクターで形質転換されている宿主細胞。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか1項記載の成長ホルモンポリペプチドと特異的に結合するリガンド。
【請求項15】
抗体である、請求項14記載のリガンド。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの発現レベルまたは活性を増加させるかまたは低下させるいずれかの化合物。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの生物学的作用のいずれをも誘導することなく、前記ポリペプチドと結合する、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
天然または改変されている基質、リガンド、酵素、受容体または構造的もしくは機能的模倣物である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
疾患の治療または診断に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15記載のリガンド、または請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
患者由来の組織において、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドをコードする天然遺伝子の発現レベルを評価するか、または請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの活性を評価すること;および
前記発現レベルまたは活性を対照レベルと比較すること;
を含み、前記対照レベルとは異なるレベルが疾患の指標である、患者の疾患を診断する方法。
【請求項21】
In vitroで実施される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
(a)請求項14または15記載のリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で生物学的サンプルと接触させる工程;および
(b)前記複合体を検出する工程;
を含む、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
(a)患者由来の組織サンプルを核酸プローブと、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子と前記プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で接触させる工程;
(b)対照サンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プローブと接触させる工程;および
(c)前記サンプルにおけるハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
を含み、対照サンプルのハイブリッド複合体のレベルと異なる患者サンプルのハイブリッド複合体レベルが検出されることが疾患の指標である、請求項20または21記載の方法。
【請求項24】
(a)患者の組織由来の核酸サンプルを核酸プライマーと、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子と前記プライマーとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で接触させる工程;
(b)対照サンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プライマーと接触させる工程;および
(c)前記サンプルの核酸を増幅する工程;および、
(d)患者サンプルおよび対照サンプルの両方から、増幅核酸レベルを検出する工程;
を含み、対照サンプルの増幅核酸レベルと有意に異なる患者サンプルの増幅核酸レベルが検出されることが疾患の指標である、請求項20または21記載の方法。
【請求項25】
(a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
(b)前記組織サンプルから、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を単離する工程;および、
(c)前記疾患の指標として疾患に付随する変異の存在を前記核酸分子中で検出することによって、疾患について患者を診断する工程;
を含む、請求20または21記載の方法。
【請求項26】
核酸分子を増幅させて増幅産物を生成し、前記増幅産物中の変異の有無を検出することをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
核酸分子を、前記核酸分子にハイブリダイズする核酸プローブとストリンジェントな条件下で接触させて、疾患に付随する変異に対応する任意の部分に前記核酸プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分を有するハイブリッド二本鎖分子を形成させること;および
疾患に付随する変異の有無の指標として前記プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分の有無を検出すること;
によって、前記患者における変異の有無を検出する、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
疾患が、生殖障害、妊娠障害、例えば妊娠性絨毛疾患、発育障害、例えばSilver-Russell症候群、成長障害、成長ホルモン欠乏症、クッシング病、内分泌障害、細胞増殖障害で、新生物、癌腫、下垂体腫瘍、卵巣腫瘍、メラノーマ、肺腫瘍、結腸直腸腫瘍、乳房腫瘍、膵臓腫瘍、頭部および頚部腫瘍、胎盤部位の栄養膜性腫瘍、腺癌、絨毛上皮腫、骨肉腫および他の固形腫瘍を含むもの;血管新生、骨髄増殖性障害;自己免疫/炎症疾患;心血管系疾患;神経障害、疼痛;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症、および肥満を含むもの、悪液質、AIDS、腎疾患;肺損傷;加齢;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症および寄生体感染症を含むもの、ならびに他の病態を含むが、これらに限定されるものではない、請求項20〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
疾患が、成長ホルモンタンパク質に関連した疾患である、請求項20〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
成長ホルモンとしてまたは成長ホルモン活性の調節因子としての、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの使用。
【請求項31】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15記載のリガンド、または請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物を含有する、医薬組成物。
【請求項32】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、または請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を含有する、ワクチン組成物。
【請求項33】
生殖障害、妊娠障害、例えば妊娠性絨毛疾患、発育障害、例えばSilver-Russell症候群、成長障害、成長ホルモン欠乏症、クッシング病、内分泌障害、細胞増殖障害で、新生物、癌腫、下垂体腫瘍、卵巣腫瘍、メラノーマ、肺腫瘍、結腸直腸腫瘍、乳房腫瘍、膵臓腫瘍、頭部および頚部腫瘍、胎盤部位の栄養膜性腫瘍、腺癌、絨毛上皮腫、骨肉腫および他の固形腫瘍を含むもの;血管新生、骨髄増殖性障害;自己免疫/炎症疾患;心血管系疾患;神経障害、疼痛;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症、および肥満を含むもの、悪液質、AIDS、腎疾患;肺損傷;加齢;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症および寄生体感染症を含むもの、ならびに他の病態の治療用医薬の製造において使用される、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15項記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物、または、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項34】
成長ホルモンタンパク質が関連した疾患の治療のための医薬の製造において使用される、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15項記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物、または、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項35】
患者へ、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物、または、請求項31記載の医薬組成物を投与することを含む、患者における疾患を治療する方法。
【請求項36】
罹患した患者での天然遺伝子の発現またはポリペプチドの活性が健常な対象者での発現または活性のレベルと比較した場合に低い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物または組成物がアゴニストである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
罹患した患者での天然遺伝子の発現またはポリペプチドの活性が健常な対象者での発現または活性のレベルと比較した場合に高い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物または組成物がアンタゴニストである、請求項35記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの発現もしくは活性のレベル、または請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子の発現レベルを、前記患者由来の組織においてある期間にわたってモニターすることを含む、患者において疾患の治療をモニターする方法であって、
前記期間にわたる発現または活性のレベルが対照レベルに対して変化することが前記疾患の緩解の指標である、前記方法。
【請求項39】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドまたは請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を、前記ポリペプチドまたは核酸分子に対し結合親和性を有すると疑われる1種または2種以上の化合物と接触させること;および、前記核酸分子またはポリペプチドと特異的に結合する化合物を選択すること;
を含む、疾患の治療および/または診断に有効な化合物を同定する方法。
【請求項40】
請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子の増幅に有用なプライマーを含む第二の容器;および、疾患の診断を容易にするために前記プローブおよびプライマーを使用するための指示を含む、疾患の診断に有用なキット。
【請求項41】
ハイブリダイズしないRNAを消化するための薬剤を保有する第三の容器をさらに含む、請求項40のキット。
【請求項42】
核酸分子の少なくとも1種が請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子である、核酸分子のアレイを含むキット。
【請求項43】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドと結合する1種または2種以上の抗体;および、前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬を含む、キット。
【請求項44】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドをより高いレベルで発現する、より低いレベルで発現する、または発現しないように形質転換された、非ヒトトランスジェニック動物または非ヒトノックアウト動物。
【請求項45】
請求項44記載の非ヒトトランスジェニック動物を候補化合物と接触させること、および前記動物の疾患に対する前記化合物の作用を決定することによって、疾患の治療に有効な化合物をスクリーニングする方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

image rotate

【図8A】
image rotate

image rotate


【公表番号】特表2006−526385(P2006−526385A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561670(P2004−561670)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005605
【国際公開番号】WO2004/056860
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(504238862)アレス トレイディング ソシエテ アノニム (24)
【Fターム(参考)】