説明

統合型移動端末ナビゲーション

セルラ通信ネットワークの1以上の同期していない地上送信源102〜105からの信号を受信するための送信源受信機204と、衛星測位システムの衛星107〜110からの信号を受信するための衛星測位受信機200とを備えた移動端末100を含むナビゲーションシステムが提供される。端末100はクロック208も含む。プロセッサ209は、各値が受信機200、204によって生成された測定値を表している斯かる値のリストと、端末クロックのバイアスとを有する測定値ベクトルを取得する働きをする。プロセッサ209は、動的ナビゲーションソリューションを得るために、システムの現状態を表す状態ベクトルを、以前に決定された状態ベクトルと、測定値ベクトルと、動的モデルとを使って計算する。状態ベクトルは、その成分として少なくとも、(a)端末100の1次元以上の位置情報と、(b)同期していない地上送信源102〜105に付随するクロックの所与の時間に関するバイアスの表現と、(c)端末クロック208のバイアスと、(d)(a)乃至(c)の成分に関連する誤差を示すクォリティ指標と、(e)(a)乃至(c)の成分の他の成分に対する依存度を示す相関指標とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システム技術に関し、特に、移動体通信システムの移動端末の位置を当該通信システムの信号と衛星測位システムSPS(satellite positioning systems)の信号を両方利用して決定するための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の国の法令では、セルラ通信システムのあらゆる通信事業者は、緊急の場合にはそのネットワーク内で稼働している移動端末があればその端末の位置を推定し報告することが求められている。移動端末に適用される測位法は、アプリケーションが端末の推定位置に基づいて情報を提供するロケーションベースのサービスにも利用されている。SPS信号を利用することのほかに、通信ネットワーク自体の中で発信された移動端末とネットワーク送受信基地局との間のどちらかの方向に流れる信号を利用することを含む様々な要件を満足させる試みの中で、いくつかの測位法および測位システムが開発されてきた。衛星測位システムとしては、GPS(Global Positioning system)やGLONASSやGalileoが挙げられる。これらは全て似たような働き方をする。地球近傍軌道上にある衛星は、受信端末と各衛星との間の距離の推定値を取得するために受信および復号されることが可能な測距信号を放射する。3次元的な位置決定(position fix)を遂行するにはSPS時間基準に関して測定された時間と一緒に斯かる推定値が通常4つ以上あれば十分である。
【0003】
GPSの場合、民生利用できる信号は、1575.42MHz(L1帯として知られている)と1227.60MHz(L2帯として知られている)で放射される。L1搬送波信号は、チップレート1.023MHzで、各衛星ごとに異なる測距/拡散コード(ranging/spreading code)で2位相偏移変調される。コードは米国政府刊行物[Interface Standard IS-GPS 200]で仕様が定められたGold系列の所定のメンバである。民用コードはCAコードと呼ばれ、1msごとに繰り返す1023チップの長さを持つ。
【0004】
コードエポック(code epoch)つまり開始ポイント(コードの先頭のタイミング)は、IS−GPS 200に定義されており、CAコードジェネレータのある特定の状態の発生に対応する。コードエポックは、衛星に搭載された高精度クロック(原子時計)と同期している。まとめてGCS(ground-based control segment)として知られるいくつかの地上コントロールセンタは、衛星クロックを継続的にモニタし、GPS時刻として知られるGPS時刻基準と一致するように誘導する。このGPS時刻は、米国ワシントンDCのアメリカ海軍天文台(United States Naval Observatory)に置かれたクロックで刻まれており、それ自身、協定世界時UTC(Universal Coordinated Time)との誤差が(閏秒を除いて)一般的に2〜3マイクロ秒内に収まる連続的な時間スケールである。各衛星クロックは、GPS時刻との時間誤差が最大976.6msに及ぶ可能性がある。GPS時刻と衛星クロックで刻まれている時刻との差は、衛星によってクロック補正パラメータとして知られる3つのパラメータを使ってユーザに同報される。
【0005】
またGCS(ground-based control segment)は、各衛星の位置と軌道を測定し、推定する。衛星が実際にたどった軌跡に関する知識、その現在位置、太陽、月および地球の重力場の影響、太陽風の影響および何か他のより小さな力の影響の推定値が、各衛星の将来の軌道を予測するために使用され、予測結果は全てのユーザに同報される。軌道パラメータはまとめて衛星エフェメリス(satellite ephemeris)として知られ、それらは通常2〜3時間先まで外挿するために使用することが可能である。数ヶ月以上先まで有効な衛星アルマナック(satellite almanac)と呼ばれるより低精度の軌道も同報される。
【0006】
無線受信機と、補助ハードウェアと、ソフトウェアプログラムを実行する1以上のプロセッサとを内蔵するGPS端末は、しばしばまとめて‘GPS受信機’として知られる。以後、この広義の用語‘受信機’は、信号を受信・復号し、データを処理する機能を実行するために必要な全てのパーツを含むものと理解する。それ故に、GPS受信機は、1以上の衛星の、衛星測距信号、衛星クロック補正パラメータ、衛星エフェメリスメッセージおよび衛星アルマナックメッセージを受信し、受信機の位置および速度、ローカルクロックのGPS時刻に関する時間オフセットを計算することが可能である。このローカルクロックは一般的にはGPS受信機に内蔵されたまたはGPS受信機に取り付けられた発振器に基づいており、ローカルクロック時刻はその発振器の位相によってコントロールされる。3次元的な位置+時刻のソリューションに少なくとも4つの衛星測距信号が必要であるが、それができない場合に備えて3個もしくは2個の現存衛星信号または場合によっては1個だけの現存衛星信号でソリューションを得ることを可能にするいくつかのリバーショナリ(reversionary)動作モードも存在する。30基の運転可能なGPS衛星の現コンステレイションは、12個もの衛星信号が時折同時に受信できるような配置になっており、これによりソリューション誤差が低減される。
【0007】
同様に、‘受信機’という言葉は、移動端末の地上送信源受信機に適用される場合には、同じ最広義において、無線受信機フロントエンドと、補助ハードウェアと、ソフトウェアプログラムを実行する1以上のプロセッサとを含むことが理解されるべきである。
【0008】
SPS(satellite positioning systems)受信機は、遮蔽物が何もない開放された空のもとでは非常にうまく機能するが、1以上の衛星信号が例えば建物内部など何かに遮られて減衰を強いられる場所ではあまりに成功裏に機能するとは言えない。これらの環境では、SPS受信機は、機能し続ける代替的な位置特定(ロケーション)技術からの信号収集および信号再収集の両方の支援から利益を享受することができる。加えて、位置特定ソリューションは、遮蔽状況を強いられたSPS信号を利用する場合、近くの物体からの反射、エッジ周りの屈折、受信機と衛星との間の理想的な‘見通し’直線経路と比べたときの追加的な遅延時間、および異なる経路を伝搬する放射線(rays)同士の間の干渉を含む無線伝搬状態のために、多くの場合あまり精度は高くない。
【0009】
移動端末の位置を発見するための、特にセルラ通信ネットワークに適した代替方法は、通信信号自体を利用する。これらの方法は、サービスセルタワー(serving cell tower)の位置を粗い位置の基準として利用し、移動端末から発信された信号の基地局サイトにおける到達角度または到達時間の測定値と、周囲の送信基地局から発信された信号の移動端末における到達時間の測定値とを利用することを含む。後者の場合では、通常、サービス送信機(‘サービスセル(serving cell)’)からの信号または端末のローカルクロックに関する、到達時間差が測定される。
【0010】
移動ユーザのためのセルラ通信システムは、基地局送信が共通の時間基準に同期しているシステムと、基地局が同期していないシステムとに分類できる。CDMAプロトコルを使用する通信システムは、通常、同期カテゴリに入るが、広帯域CDMA(WCDMA)およびGSM(この2つだけで世界中に導入済みのネットワーク基盤の80%以上を占める)を含むその他のシステムのほとんどは同期しない(非同期)カテゴリに入る。CDMAシステムは、基地局サイトに設置されたGPS受信機を使用してGPS時刻と同期する。
【0011】
移動端末の位置は周囲の送信基地局からの信号の受信時刻の測定値から推定できる。実際には、通常測定されるものは、例えばGSMにおける制御チャネルで同報される同期バースト、CDMA方式における拡散コードの位相、または任意の方式におけるフレーム境界など、変調における特定コンポーネントの受信時刻である。これらの測定値はそれぞれの送信機の位置と、特定コンポーネントの送信時刻または送信時間オフセットの知識と組み合わされる必要がある。一般に、いくつかの地理的に異なる基地局送受信機からの信号の独立したタイミングの測定が必要とされ、その最小数は計算により推定されなければならない未知変数の数に依存する。同期した送信機を用いて2次元的な位置を計算する場合には3つの測定値で十分である。同期していない(しかし安定した)送信機を用いて2次元的な位置を計算する場合、2つの別個の端末(または2つの位置の間を移動する1つの端末)による5つの送信機からの信号の測定値が必要とされる(米国特許第6,529,165号明細書と米国特許第6,937,866号明細書とを参照)。
【0012】
CDMAネットワーク送信はGPSと同期しており、個々の送信機の送信時間オフセットが同報される。異なるサイトにある3つの送受信基地局からの信号の端末による受信時刻の(GPS時刻に関する)測定値は端末から各サイトまでの距離に変換することができ、端末の水平ポジションは曖昧さなく計算することが可能である。同様に、2つの受信信号の時間差は2つの基地局送信機サイトの間の距離差を与え、斯かる距離差は3つあれば端末の位置の曖昧さのない計算を可能にするのに十分である。
【0013】
GSMとW−CDMAネットワークとは同期しておらず、これらに対しては時間差の測定値がしばしば利用される。最も関心があるのは隣接する送受信基地局の移動端末によって生成された測定値を使用する測位法である。受信信号の変調における選択コンポーネントの受信時刻がそれらの1つまたは端末内のローカルクロックに関して測定される。いわゆるE−OTD(Enhanced Observed Time Difference)法では、相対的な送信時間オフセットは、既知のポジションにある1つ以上の決まった監視受信機(LMU(Location Measurement Units))によって生成された類似の測定値から推定される。端末によって生成された相対的なタイミングをLMUによって生成された対応する相対的なタイミングと組み合わせることによって、端末の位置は、双曲線型(米国特許第6,275,705号明細書)または円型(欧州特許第1,271,178号明細書)技術を使って計算することができる。
【0014】
米国特許第6,529,165号明細書と米国特許第6,937,866号明細書とに記述されたE−OTD法の1つの展開は、そこから全ての移動端末の位置が全ての基地局の送信時間オフセットと一緒に現れる大規模な計算(コードネーム‘Matrix’)において多くの移動端末によって生成された多くの送受信基地局の測定値を組み合わせることによってLMUの利用を回避する。最小構成は、2つの端末がそれぞれ5つの基地局を測定するかまたは3つの端末が4つの基地局を測定するものである。しかし、実際には多くの端末と多くの基地局が使用される。基地局の送信時間オフセットは、全ての基地局からの信号を受信することが可能な所与の場所において(もしそのような場所があったとしたならば)単一の実LMUによって測定されるであろう受信時間オフセットのリストである‘仮想’LMU(VLMU)を計算し、保持するために使用されることもある(国際公開第00/73813号パンフレットを参照)。
【0015】
E−OTD法とそのMatrix展開との両方において基地局信号の送信または受信のユニバーサルタイムは決して決定されないことに注意する。相対的な時間差だけが測定される。このことは、例えば端末によるネットワーク信号の受信からGPS時刻を、較正することなく、GPS基準のLMUを使ってVLMUリストをGPS時刻と一致させることによって、または移動端末により較正することによって(国際公開第2005/071430号パンフレットを参照)、引き出すことが可能ではないことを意味する。
【0016】
概説した各測位法は、移動端末の位置を与える単独手段として単独に使用することが可能である。しかしながら、2つ以上の方法を一緒に組み合わせることには利点がある。1つの方法が失敗すれば別の方法により位置を与えることができるし、ネットワークベースの方法は、SPS法により衛星信号を取得するのを支援することができる。ここで特に関心があるのはMatrix法とSPS法、例えばGPSとの組み合わせである。Matrix法は1秒内に位置決定を遂行することができ、ユーザはほとんど瞬時に結果が得られる。しかしながら、GSMにおける精度は約100mであり、これは当該目的に十分とは言えない。GPS受信機が難しい環境でも2、3秒足らず後に位置決定(position fix)を得られるよう、セルラ信号も正確な時刻位置支援をGPS受信機に提供するために使用することができる(例えば、非特許文献[E GPS: indoor mobile phone positioning on GSM and W CDMA, Duffett-Smith, P. J. & Tarlow, S. Proceedings of the ION GNSS 2005 meeting, Long Beach, September 2005]を参照)。必要なものは最善の可能な測位サービスを提供するためにこれら2つのシステムを一緒に組み合わせる方法である。このことが本願において取り組むべき課題である。
【0017】
SPS測距信号と同期していないセルラ通信システムからの信号とを利用する位置特定計算方法を組み合わせる方法のいくつかの開示文献が存在する。ほとんどのものはSPS信号が利用可能であって妨害物に邪魔されないときにはSPS信号を利用し、それ以外のときはネットワーク信号を利用する。この選択の根拠は期待された精度に基づく。SPS信号は、衛星から受信機までの信号経路が見通し直線に沿っているときは約10m内の位置精度を実現することができる。SPS信号が妨害物に邪魔されるときは精度が50m乃至100mまで低下し、その方法は、信号が十分減衰したときには結局は利用できなくなる。そのときでも2、3個の受け入れ可能なSPS信号が存在する場合がある。ネットワークベースの測位法は、約100m乃至200mを実現することができ、セルラ信号は衛星信号よりもずっと強いのでほぼ常に利用可能である。
【0018】
米国特許第6,252,543号明細書(2001年、Campに付与)は、GPS受信機から得られた距離と地上セルラ通信システムから得られた距離とを組み合わせる方法を開示している。測距測定値を組み合わせるためのいくつかのオプションが開示されている。これらの1つは、2つのGPS測距信号と2つの地上通信信号とを利用する。このとき、それらの信号の伝搬時間が測定され、距離推定値へと変換されている。この方法は、(衛星全体の中の)少なくとも2つの衛星と(セルラ基地局全体の中の)2つのセルラ基地局内のクロックの同期とを必要とする。セルラ基地局のクロックが同期していない場合であって、GPS衛星が存在しないときは、5番目の基地局の測距測定値を追加して移動端末内のクロックを共通の時間に関して較正することを要求する。各基地局ごとにGPS時刻を基準にしたLMUを使って同期された共通のクロックが基地局に与えられている場合を除いてこの方法がどのように働くかについての詳細は一切開示されていない。この方法は、GSMまたはWCDMA方式で使用されるような同期していない基地局には適さない。
【0019】
米国特許第6,430,416号明細書(2002年、Loomisに付与)は、特にこの目的に適した低コスト無線システムを利用して移動端末内のGPS受信機を支援する方法を開示している。この方法は、GPS受信機と無線通信機とを両方内蔵する移動端末を有する。無線通信機は、基地局での到来時間を決定することが可能な信号を送信することができる無線送信機を含む。この信号は、IDと利用可能ならGPS測定値とを含む移動端末に関する情報も搬送する。送信のタイミングは、可能ならGPS時刻と同期し、可能でなければ無線通信機からの信号のタイミングは、複数の基地局(少なくとも3基)で受信された際に、無線疑似距離測定器に送られる。GPSとの同期が可能でない場合、目的に適した機器から問い合わせパルスが送信可能であり、そのパルスは基地局と任意の移動端末に受信される。疑似距離測定値は、移動端末の位置を決定するために基地局に付随する計算センターで処理される。場合によっては、GPSと無線距離測定値との両方からの疑似距離測定値を、移動端末の位置特定ソリューションを形成するためにミックスすることができる。
【0020】
さらに、ツネハラ(Tsunehara)およびクワハラ(Kuwahara)の米国特許第6,928,292号明細書(2005年)は、GPS受信機とセルラ信号から位置を計算するように構成されたセルラ受信機との両方を備えた移動端末を開示している。各位置特定機器は、信頼度指標(reliability indicator)も提供する。この指標は、いくつかの形式の1つを採用することができ、GPSまたはセルラの受信信号から計算される。GPSに関しては、信頼度指標は、位置と受信信号クォリティ(例えば信号対ノイズ比)との計算に使用される衛星信号の数に基づいていることがある。セルラ信号は、同期取得と受信タイミングの測定値を含む。セルラ信号は、計算に使用される信号の数と各基地局からの受信信号クォリティを含むセルラ信号の信頼度指標を決定するためにも使用される。位置計算では信頼度指標を使ってGPSとセルラの両方からの別個の位置計算が例えば平均によって組み合わされる。ただし、2つの位置測定は同時でなければならないという制約がある。
【0021】
Watters等の米国特許第6,249,245号明細書(2001年)は、発明の4つの実施態様を開示している。最初の態様は、セルラ通信システムを利用してDGPS補正値(differential GPS correction)を、セルラ信号を受信することが可能な移動端末に設置されたGPS受信機に送信する。第2の実施態様は、視野内に不十分なGPS衛星しかない場合にセルラ基地局から同報されるGPS‘スードライト(pseudolite)’信号を提供する。このスードライトからの距離測定値がGPS疑似距離測定値と置き換わる。第3の実施態様では、移動端末は視野内に十分なGPS衛星が存在する場合にはGPS信号を使って位置を計算する。所要数の衛星が視野内に存在しない場合は、位置計算はセルラネットワークインフラを用いて行われる。そして、最後の第4の実施態様では、基地局と移動端末との間の往復遅延時間を計算するためにセルラ信号が使用され、そこから距離計算が実行できる。この距離計算は、不十分なGPS衛星信号しか利用できないときにはGPS疑似距離と置き換わる。
【0022】
上述した方法は、いずれもGPS信号とセルラ信号とネットワークから利用可能な全ての情報を利用しておらず、最適な方法によりアレンジされた2つのシステムタイプからの測定値の組み合わせでもない。より良い方法は、組み合わせKalmanフィルタまたはそれと類似のプロセスを利用することである。
【0023】
ベストなナビゲーションソリューションを得るために異なるナビゲーションシステムからの測定値を組み合わせることにKalmanフィルタを使用することは、当該分野では周知である。例えば、非特許文献[Multi-configuration Kalman filter design for high-performance GPS navigation, Kao, M. H & Eller, D. H. IEE trans. Auto control, AC28, 304-314, March 1983]では、車載されたGPS受信機からの測定値が同じく車載された慣性センサからの測定値とどのように組み合わされるかが開示されている。別の例は、GPSやGLONASSといった共同実装された別個のSPSシステムからのデータを組み合わせることである。多くの他の例が存在する。しかし、これらのケースでは、共通のゴールは、本例では例えば車の位置、速度および加速度など、同じ物を測定する異なるローカルシステムからの出力を一緒に組み合わせることである。副産物として、GPS受信機のクロックの状態も決定され、組み合わされたシステムの完全な記述に関係のある全ての成分を列挙した状態ベクトルの変数の1つとして保持される。
【0024】
Kalmanフィルタを使って異なるナビゲーションシステムを組み合わせることも当該分野では周知である。例えば、非特許文献[van Graas (J. Inst. Navigation 35, 2, 147-160, 1988)]は、疑似距離を混成(hybridize)して全ての利用可能なナビゲーション情報を効率的に処理する技術を使用してGPS測定値とLoran−C測定値を融合する技術について述べている。しかしながら、測定値は2つの異なるシステムから来るが、それらは両方ともナビゲーション目的のために設計されていることに留意すべきである。特に、送信機のクロックオフセットは各システムで分かっている。同技術はGPSを同期していないセルラ送信機で生成された測定値と組み合わせるシステムには適用することはできない。各セルラ送信機の送信時間オフセットは完全に未知で任意であるからである。
【0025】
本ケースにおいて特に関心があることは、GPSなどの衛星ナビゲーションシステムと、例えばセルラネットワーク送信機などの地上送信源から受信された信号に基づく測位システムとの組み合わせである(例えば米国特許第6,529,165号明細書を参照)。克服されなければならない更なる問題としては、正確な時間、位置、および周波数を供給して、端末が建物内部にある場合など信号が弱い状況において衛星の捕捉および再捕捉の面で衛星測位システムを支援することが挙げられる。欧州特許出願第06112194.3号明細書には、ユニバーサルタイム(例えばGPS時刻)を受信信号(例えばセルラネットワーク信号)と関連付ける方法であって、安定したクロックによってコントロールされた送信機から受信された安定した信号が移動端末で時間タグ付けされることを可能にする方法が記述されている。ユニバーサルタイムは、後で別の受信信号から‘読み出す’ことができる。国際公開第2005/071430号パンフレットには、移動端末がネットワークを1つの送信機から別の送信機へ移動する際に送信機自体が互いに同期していなくとも時間タグ付け(time-tag)を可能にする方法が開示されている。この中核を成すものは国際公開第00/73813号パンフレットに記述されたVLMUコンセプトである。このVLMUコンセプトによれば、米国特許第6,529,165号明細書に記述されたMatrix測位法の副産物として、送信機の送信時間オフセットのリストが作成され保持される。
【0026】
地上送信機からの信号の利用に伴う更なる問題は、地上送信機に付随するクロックは移動端末のクロックと比べて多くの場合通常かなり安定しているが、それらのクロックは、相互に、そして使用中の特定ユニバーサルタイムから徐々にドリフトする可能性があり、その結果、時間タグは無期限に使用することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、これらの問題を、常時優れたナビゲーションソリューションを与えるだけではなく1つのプロセスで全てのクロックの状態をローカルおよび遠隔の両方で追跡するという方法で、別々の測位システムの測定値を組み合わせることによって解決する。衛星測位システム受信機に正確な時間、位置、および周波数を供給する支援が‘組み込まれ’、移動端末が動き回る際に全ての環境にわたってスムーズな移行が実現される。これにより、端末を追跡し続けるのに要するリソースがより少なくて済むので、端末のバッテリ寿命に与える影響をより小さく抑えたままナビゲーションソリューションを保持することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、上記課題を解決するため、セルラ通信ネットワークの移動端末のための動的ナビゲーションソリューションを取得し、保持するための方法であって、前記移動端末は、セルラ通信ネットワークの1つ以上の同期していない地上送信源からの信号を受信するための送信源受信機と、衛星測位システムの衛星からの信号を受信するための衛星測位受信機と、端末クロックとを備えたものである、方法を提供する。この方法は、
各値が受信機によって生成された測定値を表している斯かる値のリストと、前記端末クロックに関係する情報とを有する測定値ベクトルを取得するステップと、
システムの現状態を表す状態ベクトルを、以前に決定された状態ベクトルと前記測定値ベクトルと動的モデルとを使って計算するステップと、
前記状態ベクトルから動的ナビゲーションソリューションを導出するステップと
を有し、
前記状態ベクトルは、その成分として少なくとも、
(a)前記移動端末の1次元以上の位置情報と、
(b)前記同期していない地上送信源に付随するクロックの所与の時間に関するバイアスの表現と、
(c)前記端末クロックのバイアスと、
(d)(a)乃至(c)の成分に関連する誤差を示すクォリティ指標(quality indicators)と、
(e)(a)乃至(c)の成分の他の成分に対する依存度を示す相関指標(linking indicators)と
を含む。
【0029】
動的ナビゲーションソリューションは、ある特定のエポック(epoch)における端末の位置状態の推定値を表す変数であって1次元以上における少なくとも端末の位置を含み、場合によっては端末の速度と加速度も含む変数から構成される。特定のエポックは、現在時刻であることもあれば、あるいは将来もしくは過去の時刻であることもある。例えば、ナビゲーションソリューションの計算とそれをスクリーンに表示するまでの例えば1秒の遅延時間とを克服するために、特定のエポックを現在時刻の1秒前に設定することが可能である。
【0030】
本発明は、上記課題を解決するために、セルラ通信ネットワークの1つ以上の同期していない地上送信源からの信号を受信するための送信源受信機と、衛星測位システムの衛星からの信号を受信するための衛星測位受信機と、端末クロックとを備えた移動端末を含むナビゲーションシステムも提供する。本システムはプロセッサを備えており、該プロセッサは、
各値が受信機によって生成された測定値を表している斯かる値のリストと、前記端末クロックに関係する情報とを有する測定値ベクトルを取得する手段と、
システムの現状態を表す状態ベクトルを、以前に決定された状態ベクトルと前記測定値ベクトルと動的モデルとを使って計算する手段と、
前記状態ベクトルから動的ナビゲーションソリューションを導出する手段と
を有しており、
前記状態ベクトルは、その成分として少なくとも、
(a)前記移動端末の1次元以上の位置情報と、
(b)前記同期していない地上送信源に付随するクロックの所与の時間に関するバイアスの表現と、
(c)前記端末クロックのバイアスと、
(d)(a)乃至(c)の成分に関連する誤差を示すクォリティ指標と、
(e)(a)乃至(c)の成分の他の成分に対する依存度を示す相関指標と
を含む。
【0031】
前記移動端末は、CDMA、GSMまたはW−CDMA技術を使用するようなセルラ通信ネットワークの端末でありうる。前記端末は、ネットワークに登録されていてもいなくてもよい。代わりに、前記端末は、1以上の同期していない地上送信源からの信号と1以上の衛星測位システムからの信号とを受信することが可能な任意の移動端末でありうる。本発明は、2以上の衛星測位システム受信機、または2以上の同期していない地上送信源、またはその両方を有する端末を含む。
【0032】
同期していない地上送信源は、1以上のセルラ通信ネットワークの送信機または任意の目的でセットアップされた他の送信源でありうる。例えば、同期していない地上送信源は、無線またはテレビジョン送信機、または他の同報(放送)送信機でありうる。それらは同期した、または一部同期した、例えばセルラCDMAネットワークなどのシステムの送信機、あるいはLORAN−C(ロランC)といった地上ナビゲーションシステムの送信機でありうる。これらのケースでは、本発明の方法は送信を同期していないものとして取り扱い、送信機の送信時間オフセットについての情報が利用できることを要しないが、ナビゲーションソリューションの一部としてそれらを推定する。全てのケースで、端末が送信源から受信する信号の1つの特徴に受信時間を割り当てることができるという要件が存在する。これは信号の位相であったり、または変調成分であったり、またはパルス源の場合には特定のパルスの受信であったりする場合がある。通常、本目的に使用される特徴は、(信号の位相のように)連続であるかまたは既知の受信パタン(例えばGSM同報制御チャネル信号における同期バースト)であるという要件が存在する。本発明は、ナビゲーションソリューションにおいて2以上のタイプの同期していない地上送信源からの信号の利用を含む。例えば、GSMネットワークおよびW−CDMAネットワークからの信号が両方とも一緒に測定され使用されるか、またはGSMネットワークおよび公共放送無線もしくはテレビジョンネットワークからの信号が両方とも一緒に測定され使用される。
【0033】
前記衛星測位システムは、システムの端末の位置を決定する目的で地球軌道衛星を使用する、Transit衛星システム、GPS衛星システム、Galileo衛星システム、北斗衛星システム(Bidou)、または準天頂衛星システム(QZSS)その他のシステムの1以上を含みうる。本発明は、ナビゲーションソリューションで使用される2以上の衛星測位システムからの信号を利用することを含む。
【0034】
前記端末クロックは、端末に付随または接続した任意のクロックでありうる。このクロックは、ハードウェアもしくはソフトウェアまたはその両方で実装が可能であり、同期していない地上送信源受信機の1つの一部、衛星測位システム受信機の1つの一部、もしくは全ての受信機の共通するコンポーネント、または別個の発振器でありうる発振器によってコントロールされる。端末のローカルタイム(局所時間)は、この発振器の状態に関して測定される。
【0035】
前記プロセッサは端末に付随または端末に直接接続されている場合があるか、またはそれは端末から遠隔にある場合がある。遠隔にある場合、それは1以上のリンクを介してそのデータを受信する。リンクは用途に応じて有線または無線であることが可能であり、リンクは単方向または双方向でありうる。例えば、前記プロセッサはセルラ端末の汎用プロセッサまたはセルラ無線ネットワークで端末と繋がった遠隔プロセッサでありうる。
【0036】
測定値ベクトルは、各値が受信機によって生成された測定値を表している斯かる値のリストを含む。例えば、衛星システム受信機からの信号を表す値は、相互または共通の基準に関して測定された、受信機での事前処理から得られる疑似距離または時間オフセットの推定値である場合がある。別の例では、前記値は、同期していない地上送信源からの信号の1つに関して測定されたまたは端末クロックもしくは別の基準である場合がある共通の基準に関して測定された、これらの同期していない地上送信源からの信号の受信の時間オフセットの推定値を表す。それらの値は、受信機の出力の未処理の‘生の’IQ(in-phase and quadrature)サンプルでありうる。用途に応じて多くのフォーマットが可能である。
【0037】
測定値ベクトルは、端末のクロックに関係する値も含む。例えば、発振器の位相が表される場合もあれば、発振器に接続されたカウンタの状態が表される場合もある。あるいはクロック状態は、間接的に、例えばクロック信号を使用してまたはクロック信号から得られたもしくはクロック信号にロックされた‘チック(ticks)’を使用して測定値ベクトルに時間を記録することによって表されることがある。
【0038】
測定値ベクトルは、不完全または可変長である場合がある。これは例えば、1以上の衛星が(建物などで)妨害されている間、または衛星および/または送信源の数が変化するときに起こることがある。測定値ベクトルの一時的に利用できないまたはまだ検出される必要があるベクトル成分は、測定値ベクトルにおいてヌル値で表される。例えば端末が送信源の受信範囲を超えて移動したために、存在したが今は消えてしまっている成分は、最初はヌル値で表されることがあるが、しばらく後に完全に除去されることがある。この結果、測定値ベクトルは短くなる。測定値ベクトルにおける測定値の表現はベクトル成分に関係する1以上の‘クォリティ’パラメータも含みうる。例えば、衛星疑似距離には測定値上のノイズの標準偏差値を表す値が伴う場合がある。この値は、ヌル測定値を表すために−1の値に設定されることがある。多くの他のスキームも可能である。
【0039】
本願において、‘受信機’は、測定値ベクトルの値を提供する前に‘生の’信号を処理するための手段、例えば状況に応じて相互相関器または関連プロセッサで走るソフトウェアプログラム、を含む場合もあれば含まない場合もある。
【0040】
状態ベクトルを決定する計算は、測定値ベクトルの成分の性質と程度に応じてより複雑な場合もあればあまり複雑でない場合もある。例えば、測定値ベクトルがそれぞれの受信機によって受信信号から既に得られたタイミングオフセットまたは疑似距離を含む場合には、計算はKalmanフィルタまたはその類似物で使用される種類のものでよい。測定値ベクトルが生の未処理データを含む場合、計算は実際には時間または距離値を計算するためにそれらの生データの処理を含むのでより複雑である。例えば、米国特許第6,529,165号明細書は、その位置が分かっているかまたは決定されている4以上の送信源からの信号の受信の相対的な時間の、位置が分かっていない2以上の端末による測定値が、端末の位置と相対的な送信時間オフセットのリストを両方同時に見つけるためにどのように使用されるかを教示している。この計算は、状態ベクトルの計算の一部として1以上の送信源受信機からの生の未処理のデータから出発して、または既に決定済みの時間オフセット値を使って、実行することができる。
【0041】
状態ベクトルは、システムの現状態を表す。状態ベクトルは、ベクトル成分として、測位情報、端末に付随するクロックと地上送信源に付随するクロックの状態についての情報、クォリティ指標、および相関指標(linking indicators)を含む。
【0042】
位置情報は、少なくとも1次元における端末の位置についての情報を含むが、2次元以上における情報、1次元以上における端末の速度、および1次元以上における端末の加速度も含みうる。例えば、位置情報は、定義されたジオイド(geoid)に関する経度、緯度および高度で表された、端末の実際の位置でありうる。あるいはそれは地球の中心を原点とするデカルト座標で表された位置でありうる。あるいはそれは実際の位置がそこから変換を用いて導出できる変数の集合でありうる。
【0043】
クロックの状態の表現は、少なくともそれらのバイアス、すなわち所与の時間に関するそれらの誤差または所与の時間からのオフセットを含むが、それらのバイアスレート、バイアスレートの変化率なども含みうる。所与の時間は、GPS時刻といった衛星測位システムの時間基準または他のユニバーサルタイムであるか、またはそれはクロックの1つの時間でありうる。同期していない地上送信源に付随するクロックに関係する成分は、直接測定されない端末から遠隔にあるクロックに必ず関係しているのに対し、位置情報と端末クロックの状態の表現における成分は、移動端末にローカルな変数に関係することに留意すべきである。同期していない送信源に付随するクロックの状態を表現する成分は、間接表現でありうる。例えば、ある特定の送信源をコントロールするために使用される発振器とその送信源のアンテナからの送信自体のタイミングとの間に未知の場合によっては可変な関係が存在することがある。それは、同期していない送信源の相互または共通の基準に関する決定可能な相対的な送信時間オフセットに過ぎない場合がある。それ故、これらの成分は、同期していない送信源の送信時間のオフセットまたはオフセット変化率、またはVLMUポジションに適切な受信時間オフセットなどでありうる。統合型ナビゲーションの目的のために、状態ベクトルのこれらの成分は、相対時間のソース、従って時間の安定した遠隔リポジトリとしての役割を果たす必要があるだけである。
【0044】
クォリティ指標は、位置情報とクロック状態表現に関連する誤差、例えば分散値、に関係する。相関指標は位置情報またはクロック状態表現のどれかの成分とどれか他の成分との依存度、例えば共分散値、を示している。
【0045】
状態ベクトルの成分の値を決定する計算は、プロセッサによって実行され、1つ以上の以前の状態ベクトルの成分の値の一部または全てのほかに最近の測定値ベクトルを構成する値のリストの利用を含む。計算は、変数がある1つの計算から次の計算までどのように変化し得るかを記述する、例えば可能なソリューションを物理的にあり得るものに制約する端末の移動の動的モデルなどの、1以上の動的モデルの利用を含む。例えば、体重80kgの歩行者は歩行速度から1秒で30m/sに加速することは(車にぶつかって飛ばされる場合以外)ほとんどあり得ない。それでもなお、束縛のないデータは、誤差故に斯かるナビゲーションソリューションを提示する可能性がある。動的モデルは、現実的な束縛条件を課し、これにより間違った測定値のソリューションにおけるウェイトが低減される。次の測定値があり得ない動きを更にサポートする場合にのみ、そのデータにフィットする蓋然性に合わせてウェイトが増す。ネットワークとローカルクロックの状態の推定値がどれくらい速く変化することが許されるかを他の動的モデルが制約する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】通信ネットワーク端末、送受信基地局、およびGPS衛星を有するシステムの略構成図である。
【図2】本発明による移動端末の主要コンポーネントを示す略構成図である。
【図3】測定値ベクトルの成分を表形式で示す図である。
【図4】状態ベクトルの成分を表形式で示す図である。
【図5】共分散行列の成分を示す図である。
【図6】動的ナビゲーションソリューションの成分を表形式で示す図である。
【図7】計算プロセスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1に移動端末100を示す。移動端末100は、送受信基地局102〜105を有するセルラ移動体通信ネットワーク101からの信号と衛星107〜110を有する衛星測位システム106からの信号を受信することが可能である。この特定の事例では、セルラネットワークは送受信基地局が互いに同期し合っていないGSMネットワークであるが、本発明はいかなるタイプの送信源にも、それらがセルラ通信ネットワークの一部であろうがなかろうが、等しく適用可能である。また、この特定の事例では、衛星測位システム106はGPS(Global Positioning System)である。この測位システムの衛星は低い地球軌道を周回する宇宙ビークル(SV:space vehicles)であるが、本発明は1以上の宇宙ビークルを有する任意の衛星測位システムに等しく適用される。
【0048】
図2は、本発明による移動端末100の主要コンポーネントの略構成図である。GPS受信機200はGPS衛星107〜110からの信号を拾うためのアンテナ201を備えており、拾われた信号は無線フロントエンド202に送られる。フロントエンド202は、GPS受信機に通常付随する増幅、周波数変更、帯域通過フィルタリング、および数値化機能を実行し、IQ(In-phase and Quadrature-phase)デジタルサンプルを出力(211)する。本実施形態では、これらはGPS処理モジュール203に送られ、そこで相互相関や復調といった機能が実行される。別の実施形態では、IQサンプルは、(存在しない場合がある)GPS処理モジュール203をバイパスして、プロセッサ209にダイレクトに送られる。GPS処理モジュール203は、様々な衛星107〜110からの信号のコード位相の時間オフセットの推定値または均等に擬似距離(pseudo-ranges)の推定値を推定する。これらは、リンク213を介してプロセッサ209に送られる。
【0049】
GSM受信機204はGSM送信機102〜105からの信号を拾うためのアンテナ205を備えており、拾われた信号は無線フロントエンド206に送られる。フロントエンド206は、GSM受信機に通常付随する増幅、周波数変更、帯域通過フィルタリング、および数値化機能を実行し、IQ(In-phase and Quadrature-phase)デジタルサンプルを出力215する。本実施形態では、これらはGSM処理モジュール207に送られ、そこで相互相関や復調といった機能が実行される。別の実施形態では、IQサンプルは、(存在しない場合がある)GSM処理モジュール207をバイパスして、プロセッサ209にダイレクトに送られる。GSM処理モジュール207は、様々なGSM送信機102〜105からの信号の特定コンポーネントの時間オフセットの推定値を引き出す。これらは、リンク217を介してプロセッサ209に送られる。
【0050】
図2には端末クロックモジュール208も示されている。この端末クロックモジュール208は、発振器その他のコンポーネントから成り、一緒に規則正しいクロック信号を生成218する。クロック信号は、GPS受信機200の処理モジュール203に印加され、そこからリンク210を介してGPSフロントエンド202に送られる。クロック信号は、同様にGSM受信機204の処理モジュール207にも印加され、そこからリンク214を介してGSMフロントエンド206に送られる。クロック信号は、プロセッサ209にもダイレクトに送られる。受信機200および204の場合、各受信機は、斯かるクロック信号をその基準源(reference source)として利用する。プロセッサ209の場合、クロック信号は、(これによりプロセッサで実行されるソフトウェアプログラムがローカルタイムを追跡し続ける)一連の割り込みをトリガーするために使用される。別の実施形態では、クロック信号は‘ローカルクロックサンプル’として直接受理される。
【0051】
図2には他のリンク212と216も示されている。これらのリンクによりプロセッサ209からそれぞれの受信機200および204に制御情報が送られる。例えば、GPS受信機200に供給される制御情報は、GPS時刻と周波数オフセットの推定値を含むソフトウェアメッセージの様式にある。これらは、GPS受信機に提供される支援情報の一部を形成する。衛星エフェメリスおよび衛星アルマナックといった他の支援情報が、GSMネットワーク101に付属するサーバから供給され、同報またはポイントツーポイントのメッセージングで移動端末100に送信されることがある。これらのメッセージは、アンテナ205で拾われ、処理され、リンク215、リンク217およびリンク212を介してGPS受信機200に供給される。同様に、ネットワーク内のサーバからプロセッサ209へ無線インタフェースとリンク215、217を介して、(本例では開始値として利用される)VMLU値を送ることが可能である。
【0052】
図3に示された測定値ベクトル(measurement vector)は、モジュール203から送られたGPSコード位相オフセットの推定値、モジュール207から送られた、間接的にローカルクロック208からのクロック信号からの受信時間オフセットの推定値から構成される。図示された特定のケースでは、衛星SV1乃至SV5からのコード位相の相対的タイミングに対応するN=5個の成分s乃至sと、その各成分に適用されるクォリティ指標σs1乃至σs5がとが一緒に存在する。クォリティ指標は、その値ゼロが完全にノイズのないデータを表す分散値の形をとる。対応する成分の値の信頼性が下がるほどその分散値は増大する。‘フラグ’値=−1は、対応する成分が存在せずヌル値を示している。斯かるヌル値は計算では無視される。
【0053】
図3に示すように移動端末が6基のGSM送受信基地局から受信した信号のN=6個の観測時間差(OTD:observed time differences)n乃至nもそれらのクォリティ指標σn1乃至σn6と共に測定値ベクトルの成分である。同じくこれらは対応する成分の分散値の形をとることができるが、別の実施形態ではそれらは例えばそれぞれの送信機からの信号の相互相関プロファイルが期待されたプロファイルにどれだけ良く適合するかといった他の情報から導出される場合がある。ヌルデータ値は、同じく対応するクォリティ指標値=−1で表すことができる。
【0054】
図3に示したローカルクロック時間tは、ソフトウェアカウンタから読み出された値である。ローカルクロック発振器208からの信号は、割込が生成されるごとにカウンタをインクリメントするようにプログラムされたプロセッサ208の割込ターミナルに印加される。このため、この値に割り当てられたクォリティ指標は存在しない。それは常に存在し(存在しなければ致命的なエラー)、その値(−確定的なデジタル値−)は、その次の割込の瞬間のローカル時間と見なされる。
【0055】
図4に本発明の本例で使用される状態ベクトルを表形式で示す。移動端末の3次元的な位置情報は、経度・緯度・高度(WGS84測地系に関するx、y、z)、端末の速度(ν,ν,ν)、端末の加速度(a,a,a)で表される。これらは、現時刻(current instant)、つまり測定値ベクトルにおける端末クロックで指定される時刻と見なされる状態ベクトルのエポックで計算された値である。端末クロックバイアスTとその変化率T’の推定値も状態ベクトルで運ばれる。測定値ベクトルにおける端末クロック時間がtであれば、現時刻におけるGPS時刻の最良推定値はτ=t+Tである。
【0056】
図4には送信時間オフセットα乃至αとその対応する変化率α’乃至α’の値も示されている。Nの値は、状態ベクトルで表される送信源の総数である。しかし、Nは移動端末の移動に伴って変動するので、Nは必ずしも測定値ベクトルで表されるNと同じではなく、端末が受信することが可能な送信源のサブセットも変化する。
【0057】
図4に表示された状態ベクトルのもう1つの成分は共分散行列Cである。これを図5により詳しく示す。それは、pをC自体を含まない状態ベクトルで表される変数(C以外の変数)の総数とすれば、p×p行列である。本ケースでは、30基の衛星のエントリ、言ってみれば30個の送信源に対して、この行列は原理的には131×131=17161個の成分を有するが、そのうちの多くはゼロとなる。共分散行列の対角線に沿った量は状態ベクトルの対応する成分に関連する分散である。本ケースでは、例えば、(3,3)の位置にある成分は、zの推定値に関連する分散σzzである。非対角成分は、状態ベクトルの対応する変数同士の間にどれだけ関連性が存在するかを示す。従って、その多くは関連性が無いことを表す値ゼロを有する。例えば、σαkxは、送信源Kの送信時間オフセットαとxとの間に存在する関連度を表している。ここに示した特定のケースでは、共分散行列が1つだけ存在する。別の実施形態では、単一の共分散行列は、複数のより小さな共分散行列に分解される。
【0058】
ナビゲーションソリューション(図6)は、状態ベクトルから導出される。これは、移動端末の3次元的な位置(x,y,z)を、移動端末の速度(ν,ν,ν)、移動端末の加速度(a,a,a)およびGPS時刻τと共に含む。これらの値は本ケースでは全て状態ベクトルでイクスプリシットに表現されているので、現ナビゲーションソリューションを決定するプロセスは、状態ベクトルから対応する変数の1つを単に選択するだけでよい。しかしながら、将来の時間、例えばGPS時刻τ+tのナビゲーションソリューションが必要とされる場合には、最初に外挿が行われなければならない。加速度が一定と見なされるほどtが十分小さければ、外挿位置rは、現在位置rと速度νおよび加速度aを用いて次式に基づいて見つけることができる。
【数1】

上式において、太文字はベクトル量を表している。別の実施形態では、状態ベクトルにおける位置情報は、異なる形で、例えば異なる座標系で、または既知のポイントからの距離の集合として表される。その際、現ナビゲーションソリューションの計算は変換を含まなければならない。
【0059】
新しい状態ベクトルを見つけるための計算は、(i)地上送信源受信機からの測定値を処理して移動端末の現在位置と送信源の送信時間オフセットの推定値を取得するステップと、(ii)GPS受信機からの測定値を処理して、推定された現在のGPS時刻における移動端末の位置の現在推定値から検出された衛星までの距離(ranges)を取得するステップと、(iii)少なくとも1つの以前の状態ベクトル、移動端末の移動の動的モデル、送信源クロックの動的モデルおよび端末クロックの動的モデルを使用する結果を組み合わせて新しい状態ベクトルを取得するステップとを含む。GPS受信機の動作も以前の状態ベクトルが保持する情報、特にGPS時刻、移動端末の位置、および端末クロックバイアス(つまりその周波数オフセット)の変化率の推定値によって支援される。これによりGPS受信機は断続的に使用され、測定の合間はターンオフすることが可能となり、結果的にバッテリ寿命が長くなる。従来の動作モードでは、GPS受信機は見える範囲の衛星を追跡する必要があり、これには絶え間ない(例えば1秒おきの)測定が必要となる。地上送信源からの信号の測定値を利用することによって、ローカルクロックドリフト、移動端末の移動、および端末クロックの誤差が、GPSがGPSシステムからの時折の位置決定(fixes)を要求することとは無関係に、全て追跡できる。
【0060】
米国特許第6,529,165号明細書および米国特許第6,937,866号明細書に開示されたMatrix法は、複数の送信源からの信号の複数の端末位置における相対受信時間の測定値を使って全ての端末位置と送信源の送信時間オフセットを計算する。Matrix法の働き方は、それを支配する方程式を考えることによって示される。簡単のため、解析を2次元のケース、つまり端末位置と基地局が全て平面内に存在するケースに制約する。これは通常の設定であるが、空中都市のセンターでは3次元的な配置がより適切だと考えられる。M個の斯かる端末位置から成る集合のi番目の端末位置は、平面内の(任意の)原点に関するベクトルrによって指定され、N個の送信機から成る集合のj番目のネットワーク送信機の位置は同じ原点に関するベクトルbによって指定される。信号が送信機jから端末位置iで受信される時間tijは次式で与えられる。
【数2】

上式において、i=1,...,M、j=1,...,N、εは端末のローカルクロックの当該位置における(距離で表された)時間オフセットであり、αは送信機の(同じく距離で表された)送信時間オフセットであり、cは無線波の伝搬速度である。t、εおよびαの値は、全てUUC(universal uniform clock)に関して表される。
【0061】
これは、3M+N−1個の未知変数に対するMN個の連立方程式を定義する。(−1はタイミングの絶対値が無意味を持たないことからきており、そのためεまたはα値の1つは一般性を損なうことなくゼロに設定できる。)MNが少なくとも3M+N−1と同程度であれば、連立方程式の解は存在し得る。基地局と端末の位置の幾何学的配置がそれを許すのであれば、計算によりr、εおよびαの全ての値が与えられ、そのαの値を持つネットワークタイミングモデルが保持され、その他の値が破棄される。基地局の位置は、既知であると仮定され、端末内のプロセッサに例えばネットワーク内のサーバから同報で供給されなければならない。
【0062】
移動端末の位置は、3以上の地上送信源の測定値から、αの対応する値がネットワークタイミングモデルから得られるという条件で、計算することができる。ネットワークタイミングモデルを生成するための最小構成は、(M=2,N=5)および(M=3,N=4)を含むが、実際には多くの端末からのタイミング測定が使用される。
【0063】
本ケースでは、或る位置から別の位置へ移動する単一の端末が使用される。これには送信源の送信時間オフセットが十分長期にわたって予測ができるように送信源が十分にうまくコントロールされることが必要とされる。実際には、多くのネットワークは、ネットワーク構成とデザインに応じて、1時間乃至1日の範囲で安定性を示すことが分かっている。
【0064】
GPS測距値からの移動端末の位置の計算で使用される方程式と方法は周知であり、ここで改めて述べるまでもない。しかしながら、これらと既に議論したMatrix計算との間には基本的な違いが存在する。
(a)衛星クロックバイアスは、GPS受信機がSVを同期した送信源として取り扱えるように、同報される。4つ以上の距離に基づく計算はGPS時刻のほかに端末の位置も与える。
(b)指摘したように、Matrix法は受信時間オフセット同士の間の差しか使用せず、送信源は同期していないので、‘ネットワーク時間’の均等概念が存在しない。送信時間オフセットのリストの基準時は任意であるが、較正によってGPS時刻に設定可能である(国際公開第2005/071430号パンフレットを参照)。
従って、2つの方法(GPSとMatrix)の相互作用は、(b)で議論された時間オフセットを通じてのものである。状態ベクトルにおけるGPS時刻の推定値は端末の移動を許すやり方で比較的安定な遠隔の地上送信源クロックによって1つの計算から次の計算へ前進させられる。
【0065】
歩行者ナビゲーションにおける利用に適した移動端末の移動の動的モデルは、最大許容加速度を制限するものである。これは、単に次の値を制限することによって表現することができる。
【数3】

上式において、rは移動端末のk番目のベクトルポジション、rk+1はt時間後のベクトルポジション、縦のバーはそれらの間に含まれるベクトル量の絶対値を表す。状態ベクトルの計算では、解はaの値が起こり得る値の範囲内に保つ必要性によって制約される。
【0066】
送信源クロックおよび端末クロックの動的モデルは、同様に可能な‘加速度’(クロックバイアスの秒変化率)の限度内に束縛することができる。
【0067】
次の状態ベクトルを計算するための計算は、現状態ベクトルと測定値ベクトルが与えられた上でいくつかの既知技術を用いて実行することができる。例えば、MatrixとGPSを支配する方程式は、現状態ベクトルから推測される端末の位置とGPS時刻の周りでテイラー展開することによって線形化することができ、その結果は、線形Kalmanフィルタを適用するために使用することができる。非線形Kalmanフィルタ法などの方程式の線形化を必要としない他の技術も可能である。しかしながら、それらは、ノイズが多い状況、または測定値が悪い状態の場合、例えば衛星および/もしくは地上送信源の配置がまずい場合には、あまりうまく挙動しない傾向がある。
【0068】
次に、次の状態ベクトルを計算するための、RLS(recursive least-squares)離散時間フィルタおよびプロパゲータを利用する好ましい方法について説明する。このプロセスは、適応型または非適応型の場合があり、状態ベクトルの推定誤差を最小化する形で1つの離散時刻から次の離散時刻へ移行する。添字1,2,3...k−1,k,k+1,...を使って添字kが時系列のk番目の時刻を表すように、離散時刻をラベリングする。以下に使用される変数名は、以下に与えられる意味を持つことに留意すべきで、既に使用された変数名と混同してはならない。
【0069】
本プロセスのブロック図を図7に示す。測定値ベクトル700は、ローカルクロック208に関する信号の到達時刻の測定値として再指定(702)される。信号は、測定値ベクトルに存在する場合には、GPS受信機200と地上送信源受信機204との両方から到来する可能性がある。各成分を識別する追加の情報がデータチャネル701に提供される。再指定(702)された測定値ベクトルMは、離散時刻kで生成された測定値を代表する。
【0070】
時刻kの1つ前の時間ステップ(1つ前の離散時刻k−1)で予測されたベクトルMの値は記号Vによって表され、それをMと比較703することにより、次式で与えられる残差ベクトルRが得られる。
【数4】

【0071】
離散時刻kの状態ベクトルSが計算(704)される。この計算への入力は、残差R、1つ前の状態ベクトルSk−1、および情報ベクトルDを含む。情報ベクトルDは、初期位置情報ベクトルX、地上送信源の位置、時刻kにおける現在の予測された衛星位置を指定する情報、および各衛星からのクロックオフセットをGPS時刻と関連付ける3つのクロック補正パラメータを含む各衛星ごとのクロックモデルを含む。Mk+1の予測値のベクトルVK+1も次の時刻に備えて計算される。
【0072】
状態ベクトルを推定704するプロセスは、以下のように数学的な言葉でも記述することができる。ここおよびその他のところでも、ベクトルはS、Xなどのように太字のイタリック体で表される。H、Θなどの太字の直立記号は行列を表す。
【0073】
再指定された測定値ベクトルMと対応する状態ベクトルSとの間に次式に基づく線形関係が存在することを仮定する。
【数5】

上式において、nは測定誤差を表しており、Hは行列であり、ドット記号・は行列積を表す。次の状態ベクトルSk+1の予測値は、1つ前の状態ベクトルSから、この状態ベクトルを次式に基づいて次の離散時刻へ伝搬させることによって形成される。
【数6】

上式において、Θk+1,kは離散時刻kからk+1へのシステムの動的モデルを具現化する状態ベクトル伝搬行列(プロパゲータ)であり、wは推定誤差を表すノイズ系列である。式(5)と式(6)において、系列{n}=(n,n,....)と系列{w}=(w,w,....)は、平均値がゼロで共分散行列が次式で定義される独立ホワイトノイズ系列を表す。
【数7】

上式において、ブラケットは囲まれた量の期待値がとられることを意味しており、Nはnの分散、Wはwの分散、δkjはクロネッカデルタ(Kroeneker delta)記号(j≠kに対してはδkj=0、k=jに対してはδkj=1)、上付き文字Tは転置を表している。2つのホワイトノイズ系列は独立しているので、全てのkとjに対して<NT>=0である。
【0074】
状態ベクトルSの推定値Sk|kは、再指定された測定値系列(M,M,...,M)から、推定値の平均自乗誤差を最小化する形で計算される。添字k|kは‘時刻kまでのものを含む全体の測定値系列が与えられた上での時刻kにおける’と読まれるべきことを示している。これを果たす推定値は、Markovモデルを使って、測定値Mと時刻k−1で受信されるものまでを含む累積したデータを使って時刻k−1で生成される1つ前の最良推定値ベクトルSk−1|k−1のみのイクスプリシットな関数(an explicit function)として計算され、(a)新データがない場合に予測される推定値Sk|k−1=Θk,k−1・Sk−1|k−1と(b)測定値残差Rの線形結合である。新しい状態ベクトルSは、時刻k−1で生成された状態ベクトルの最良推定値を次式に基づいて遷移行列Θk,k−1を使って次の時刻kまで広げることによって計算される。
【数8】

結果として、現状態ベクトルの最良推定値は、状態ベクトルの1つ前の最良推定値と、kとk−1との間のつなぎ期間内に累積した測定値データとを使って生成される。利得行列Gは、<(S−Sk|k(S−Sk|k))>を最小化するように選ばれ、それは次式で与えられる。
【数9】

上式において、行列NはNの行列である。行列Pk|k−1は、予測推定値の誤差の共分散行列であり、次式で与えられる。
【数10】

上式において、行列Wk−1はWk−1の行列である。行列Pk|kは推定値Sk|kの誤差の共分散行列であり、次式で与えられる。
【数11】

【0075】
本プロセスの最後のステップ706では、既に述べたように状態ベクトルSから現在位置情報ベクトルXの推定値が形成される。これが動的ナビゲーションソリューションとしての出力707である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラ通信ネットワークの移動端末のための動的ナビゲーションソリューションを取得し、保持するための方法であって、前記移動端末は、セルラ通信ネットワークの1つ以上の同期していない地上送信源からの信号を受信するための送信源受信機と、衛星測位システムの衛星からの信号を受信するための衛星測位受信機と、端末クロックとを備えており、当該方法は、
各値が受信機によって生成された測定値を表している斯かる値のリストと、前記端末クロックに関係する情報とを有する測定値ベクトルを取得するステップと、
システムの現状態を表す状態ベクトルを、以前に決定された状態ベクトルと前記測定値ベクトルと動的モデルとを使って計算するステップと、
前記状態ベクトルから動的ナビゲーションソリューションを導出するステップと
を有しており、
前記状態ベクトルは、その成分として少なくとも、
(a)前記移動端末の1次元以上の位置情報と、
(b)前記同期していない地上送信源に付随するクロックの所与の時間に関するバイアスの表現と、
(c)前記端末クロックのバイアスと、
(d)(a)乃至(c)の成分に関連する誤差を示すクォリティ指標と、
(e)(a)乃至(c)の成分の他の成分に対する依存度を示す相関指標と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記状態ベクトルは、成分(a)として速度情報も含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記状態ベクトルは、成分(a)として加速度情報も含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記状態ベクトルは、成分(b)として前記同期していない地上送信源に付随するクロックのバイアスレートを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記状態ベクトルは、成分(b)として前記同期していない地上送信源に付随するクロックのバイアスレートの変化率を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記状態ベクトルは、成分(c)として前記端末クロックのバイアスレートを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記状態ベクトルは、成分(c)として前記端末クロックのバイアスレートの変化率を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記状態ベクトルのクォリティ指標(d)は、前記状態ベクトルの(a)乃至(c)の成分に関する分散値を含むことを特徴とする請求項1乃至7に記載の方法。
【請求項9】
前記状態ベクトルの前記相関指標(e)は、前記状態ベクトルの(a)乃至(c)の成分を(a)乃至(c)の他の成分と関連付ける共分散値であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記動的ナビゲーションソリューションは、ある特定のエポックにおける前記移動端末の位置状態の推定値を表す変数であって少なくとも前記移動端末の位置を含む変数を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ある特定のエポックにおける前記移動端末の位置状態の推定値を表す変数は、その速度も含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ある特定のエポックにおける前記移動端末の位置状態の推定値を表す変数は、その加速度も含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記測定値ベクトルの値のリストは、相互または共通の基準に関して測定された、前記受信機における事前処理から得られた疑似距離または時間オフセットの推定値を含むことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記測定値ベクトルの値のリストは、前記同期していない地上送信源からの信号の受信の、それらの1つまたは共通の基準に関して測定された時間オフセットの推定値を含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記端末クロックの状態に関係する測定値ベクトルの値は、発振器の位相、または発振器に接続されたカウンタの状態を表すことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記端末クロックの状態に関係する測定値ベクトルの値は、クロック信号を使ってまたはクロック信号から得られたもしくはクロック信号にロックされた‘チック’を使って測定値ベクトルの時間を記録することによって間接的に表されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記測定値ベクトルの一時的に利用できないまたはまだ検出される必要がある成分は、前記測定値ベクトルのヌル値で表されることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記測定値ベクトルにおける測定値の表現は、成分に関係する1つ以上のクォリティパラメータも含むことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
測定値は、2以上の衛星測位システムからの信号から作成されることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
測定値は、2以上のタイプの同期していない地上送信源からの信号から作成されることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
セルラ通信ネットワークの1つ以上の同期していない地上送信源からの信号を受信するための送信源受信機と、衛星測位システムの衛星からの信号を受信するための衛星測位受信機と、端末クロックとを備えた移動端末を含むセルラ通信システムであって、該システムはプロセッサを備えており、該プロセッサは、
各値が受信機によって生成された測定値を表している斯かる値のリストと、前記端末クロックに関係する情報とを有する測定値ベクトルを取得する手段と、
システムの現状態を表す状態ベクトルを、以前に決定された状態ベクトルと前記測定値ベクトルと動的モデルとを使って計算する手段と、
前記状態ベクトルから動的ナビゲーションソリューションを導出する手段と
を有しており、
前記状態ベクトルは、その成分として少なくとも、
(a)前記移動端末の1次元以上の位置情報と、
(b)前記同期していない地上送信源に付随するクロックの所与の時間に関するバイアスの表現と、
(c)前記端末クロックのバイアスと、
(d)(a)乃至(c)の成分に関連する誤差を示すクォリティ指標と、
(e)(a)乃至(c)の成分の他の成分に対する依存度を示す相関指標と
を含むことを特徴とするセルラ通信システム。
【請求項22】
前記移動端末は、セルラ通信ネットワークの端末であることを特徴とする請求項21に記載のセルラ通信システム。
【請求項23】
前記移動端末は、2以上の衛星測位システム受信機および/または2以上の同期していない地上送信源受信機を備えていることを特徴とする請求項21または22に記載のセルラ通信システム。
【請求項24】
前記同期していない地上送信源は、1以上のセルラ通信ネットワークの送信機であることを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載のセルラ通信システム。
【請求項25】
前記衛星測位システムは、Transit衛星システム、GPS衛星システム、Galileo衛星システム、北斗衛星システムまたは準天頂衛星システム(QZSS)の1つ以上を含むことを特徴とする請求項21乃至24のいずれか1項に記載のセルラ通信システム。
【請求項26】
前記端末クロックは、前記同期していない地上送信源受信機の1つの一部および/または前記衛星測位システム受信機の1つの一部である発振器によってコントロールされることを特徴とする請求項21乃至25のいずれか1項に記載のセルラ通信システム。
【請求項27】
前記プロセッサは、前記端末と付随しているかまたは前記端末に直接接続されていることを特徴とする請求項21乃至26のいずれか1項に記載のセルラ通信システム。
【請求項28】
前記プロセッサは、前記端末から遠隔にあることを特徴とする請求項21乃至27のいずれか1項に記載のセルラ通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−503836(P2010−503836A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527795(P2009−527795)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059429
【国際公開番号】WO2008/034728
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(508001121)ケンブリッジ ポジショニング システムズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】