説明

絶縁ペーストおよびそれを用いた電子回路部品の製造方法

【課題】より低誘電率を有する絶縁層を形成可能にする絶縁ペーストを提供する。
【解決手段】窒化窒化硼素化合物、ガラス粉末および有機ビヒクルを含むことを特徴とする絶縁ペーストとする。窒化硼素化合物は黒鉛化指数3.5以下の窒化硼素であることが好ましく、ガラス粉末の非誘電率が7以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率の絶縁層を形成可能にする絶縁ペーストに関する。本発明の絶縁ペーストは、電子部品の絶縁層などに用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクスの発展は情報通信分野の産業機器、家庭電化製品等の多機能化と大幅な小型化をもたらしている。これらエレクトロニクス化はトランジスタ、IC、LSIの驚異的な技術開発の進展と量産によるところが大きいが、同時にこれら半導体素子と共に電気回路を形成する受動回路部分の小型化、高性能化とこれらを実装するハイブリッドIC技術等の実装化技術によるところも大きい。これら技術発展の中でICセラミックパッケージ、ハイブリッドIC技術、高密度実装マルチチップパッケージ等の半導体チップの実装基板技術や積層セラミックチップコンデンサー等のチップ部品はセラミックの多層積層技術の大きな成果である。ICの高信頼性パッケージや大型コンピュータのLSIのマルチチップパッケージ等は多層セラミック配線技術が高密度実装、高信頼性上必須の技術となり、今なお開発競争が続けられている。一方、エレクトロニクスの軽薄短小化をもたらした技術として受動回路素子のチップ化によるところが大きく、チップコンデンサー等がその代表例である。このように半導体素子の実装や部品の小型多機能化のため、多層積層技術は今日のエレクトロニクス発展に深い関わりをも持ち、キーテクノロジーとして重要視されている。
【0003】
セラミックの多層化技術は、厚膜印刷多層方法、グリーンシート法による多層方法を用いるのが一般的である。厚膜印刷多層方法はセラミック焼結基板に導体回路パターンと絶縁層を各ペーストの印刷と焼成を繰り返して多層配線を行う方法であり、グリーンシート多層方法はセラミックのグリーン(生)シート上に導体回路パターンを印刷しスルホールを通して三次元的に立体配線を形成する方法である。
【0004】
これらに用いられる絶縁ペーストは、多層化における層間絶縁が主な目的であり、要求される特性としては、絶縁層間のリーク電流が少ないこと、誘電特性、スルホールの解像度である。
【0005】
絶縁ペーストの誘電特性は、高密度実装多層配線の伝播信号遅延時間を少なくし、線間浮遊容量を小さくするため誘電率、誘電損失はできるだけ少ない方がよい。従来、多層用絶縁ペーストは、繰り返し焼成されるため結晶化ガラスが用いられるが、結晶化ガラスの組成を操作しても誘電率はせいぜい6〜7程度である。そこで、さらに低誘電率を達成するためには、誘電率の低いシリカ等の材料とガラスを組み合わせることが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらでも誘電率は5程度であり、無機物でさらに低誘電率化、特に比誘電率が4以下を達成するには困難であった。
【特許文献1】特開2001−28474(第0061段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術に鑑みて、より低誘電率を有する絶縁層を形成可能にする絶縁ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、窒化硼素化合物、ガラス粉末および有機ビヒクルを含む絶縁ペーストである。また、上記記載の絶縁ペーストから製造される電子回路部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より低誘電率を有する絶縁層を形成可能にする絶縁ペーストを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における絶縁ペーストは、窒化硼素化合物、ガラス粉末および有機ビヒクルを含むことを特徴とする。
【0010】
窒化硼素化合物としては、アモルファス窒化硼素、六方晶窒化硼素および立方晶窒化硼素等の窒化硼素や、焼結助剤として、希土類元素の酸化物、アルミナ、シリカ、マグネシア、酸化硼素、チタニア等を含む窒化硼素化合物等が挙げられるが、熱伝導性を考慮すると窒化硼素が好ましく、中でも結晶性の窒化硼素が好ましい。さらには、黒鉛化指数の小さな窒化硼素を用いることが好ましい。
【0011】
好ましい黒鉛化指数は3.5以下である。より好ましくは、3.0以下である。黒鉛化指数は、X線回折による(100)、(101)、(102)面の回折強度(ピーク面積)より、次式で算出したものであり、黒鉛化指数が小さいほど結晶性が高くなり、絶縁性、耐熱性が良好になる。
【0012】
黒鉛化指数=((100)面積+(101面積))/((102)面積)
X線回折は、例えば理学電機社製X線回折装置GF−2013を用い、次のような条件で行うことができる。
Target:Cu
Filter:Ni
Voltage:30kV
High Voltage:1350V
Time Constant:2秒
Scan Speed:2°/分(2θ)
Divergence Slit:1°
Receiving Slit:0.3mm
Scattering Slit:1°
Chart Speed:20mm/分
窒化硼素化合物をペースト化するためには、粉末状で用いることが好ましく、その粒子径は、中心粒子径(D50)が0.1〜3μmの範囲内、最大粒子径が8μm以下である。より好ましくは、中心粒子径(D50)が0.5〜2.5μmの範囲内、最大粒子径が5μm以下である。中心粒子径、最大粒子径がこの範囲内であることで、層間絶縁膜として用いた場合、平滑な表面が得られ層間絶縁が良好となる。平均粒子径がこの範囲より大きい場合、表面凹凸が大きくなり、絶縁性が不良になる場合がある。また、平均粒子径がこの範囲より小さい場合は、絶縁ペーストの流動特性が不良になり、塗布時に問題になる場合がある。
【0013】
本発明の絶縁ペーストにおいては、焼結助剤としてガラス粉末を用いる。通常、電子回路部品では、融点が比較的低い安価な銀や銅を電極に使用するため、焼成温度は、800〜900℃で実施される。そのため、絶縁層も800〜900℃で焼成する必要があるが、窒化硼素化合物のみでは、その融点が比較的高いため、800〜900℃の焼成温度では焼結せず、絶縁層の緻密性が不良になる。また、本発明の絶縁ペーストは低誘電率を目的としているため、用いるガラス粉末も低誘電率であることが好ましい。具体的には、ガラス粉末の比誘電率が7以下、好ましくは6以下である。
【0014】
比誘電率が7以下のガラス粉末としては、SiO、B、NaO、LiO、KO、Al、MgO、CaO、BaO、TiO、SrO、ZnO、SnO、ZrO、CeOのような酸化物からなるものが挙げられる。
【0015】
好ましいガラス粉末の組成として具体的には、酸化物換算表記で
SiO 15〜70質量%
Al 3〜50質量%
4〜20質量%
MgO 1〜20質量%
およびCaO、BaO、TiO、LiO、KOおよびNaOの少なくとも1種の化合物を0.1〜20質量%含有するガラスなどが挙げられる。
【0016】
ガラス粉末の軟化点は、500〜900℃の範囲内であることが好ましい。軟化点が500〜900℃の範囲内であることで、絶縁層の緻密性を向上し、高い絶縁抵抗を得ることができ、絶縁ペーストの低温焼成を可能にする。好ましい軟化点の範囲としては、600〜850℃である。480℃のガラス粉末を含有してもよい。軟化点が350〜480℃のガラス粉末を含有させることにより、より緻密性を向上できる。好ましくは、軟化点が350〜480℃のガラス粉末と軟化点が500〜900℃のガラス粉末との質量比が2:98〜35:65の範囲内である。より好ましくは、2:98〜20:80の範囲内である。
【0017】
軟化点が350〜480℃のガラス粉末としては、酸化ビスマス、酸化鉛、酸化亜鉛の内、少なくとも1種を20〜90質量%含有するものであることが、軟化点、熱膨張係数のコントロールが容易な点で好ましく挙げられる。これらの成分の含有量が90質量%を越えるとガラスの耐熱温度が低くなり、ガラス基板への焼き付けの点で好ましくなく、また、酸化ビスマス、酸化鉛及び酸化亜鉛の含有量が20質量%未満では焼き付け温度や軟化点を制御するのに効果が少なくなる。
【0018】
その他の成分として、酸化珪素、酸化硼素、酸化ジルコニウム等を含有することも有効である。
【0019】
上記のような範囲内の酸化物の含有成分やその重量比は、絶縁層に要求される特性に応じた値によって、適宜調整できる。
【0020】
ガラス粉末においても、粒子径は、中心粒子径(D50)が0.1〜3μmの範囲内、最大粒子径が8μm以下であることが好ましい。より好ましくは、中心粒子径(D50)が0.5〜2.5μmの範囲内、最大粒子径が5μm以下である。中心粒子径、最大粒子径がこの範囲内であることで、層間絶縁膜として用いた場合、平滑な表面が得られ層間絶縁が良好となる。平均粒子径がこの範囲より大きい場合、表面凹凸が大きくなり、絶縁性が不良になる場合がある。
【0021】
緻密性が高く、誘電率の低い絶縁層を得るためには、上記窒化硼素化合物とガラス粉末の質量比を50:50〜95:5、さらに好ましくは65:35〜90:10とすることが好ましい。上記窒化硼素化合物とガラス粉末の合計量に対する窒化硼素化合物の含有量を95質量%以下とすることによって特に緻密な絶縁膜を得ることができ、また、50質量%以上とすることによって、特に誘電率の低い絶縁層を得ることができる。
【0022】
絶縁層の緻密性の評価は、絶縁層の吸水率を測定することで評価ができる。緻密性が低い場合、吸水率が高くなる。
【0023】
好ましい吸水率は0.5%以下である。より好ましくは0.2%以下である。吸水率の測定には、例えば、水分率計を用いることができるが、本発明では、平沼産業(株)製の微量水分率測定装置AQ−7と水分気化付属装置EV−6を用い、200℃加熱気化法(試料を200℃で加熱して水分を気化させ、これを乾燥窒素ガスで規定セルへ導き測定する方法)で測定した。
【0024】
また、本発明の絶縁ペーストには、上記以外の無機粉末が含まれていてもよい。例えば、多層化する際に絶縁層の識別のために無機顔料を含んでもよい。黒色にする場合は、Co−Cr−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Cu−Mn、Co−Ni−Mn、Co−Ni−Cr−Mn、Co−Ni−Cu−Mnなどの化合物からなる黒色顔料、青色にする場合はCo−Al、Co−Al−Cr、Co−Al−Si、Zr−Si−V、Co−Zn−Si、Co−Zn−Al、Co−Zr−V、Co−Si、緑色にする場合はCa−Si−Cr、Sn−Zr−V、Zr−Si−Pr−V、Zr−Si−Pr−Cr−Fe、Cr−Al、Zr−Si−Pr−Cr、Cr−Co−Al−Zn、Cr−Al−Si、朱色にする場合はAl−Mn、Al−Cr−Zn、Sn−Cr、Zr−Si−Fe等の顔料を用いることができる。顔料の添加量は、顔料の種類にもよるが、通常、全無機粉末に対して0.1〜10質量%の範囲である。
【0025】
本発明における有機ビヒクルは、バインダー樹脂を有機溶剤中に溶解させたもので、公知のものが使用できるが、バインダー樹脂は、焼成時に酸化または/および分解または/および気化し、炭化物が無機物中に残存しないことが好ましく、具体的には、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、または、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等の重合体もしくは共重合体からなるアクリル樹脂、ポリ−α−メチルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリブテン等が挙げられる。
【0026】
バインダー樹脂を溶解する有機溶剤としては、バインダー樹脂を溶解するものであれば、特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、テルピネオール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等とイソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、第二ブチルアルコール、イソブチルアルコール、3−ペンタノール、n−ブチルアルコール、イソアミルアルコール、メチルアミルアルコール、n−アミルアルコール、メチルn−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジエチルセロソルブ、n−ブチルエーテル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、炭酸ジエチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸メチルアミル、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、2−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、γ−ブチルラクトンなどが挙げられる。
【0027】
本発明では、スルホールの形成などのパターン化を高精細に行うために、絶縁ペーストに感光性を付与させた感光性絶縁ペーストを用いることも好ましい形態の一つである。
【0028】
本発明の絶縁ペーストを感光性絶縁ペーストとして用いる場合は、感光性ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤、増感剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、チキソ剤などを添加することができる。
【0029】
また、本発明の絶縁ペーストを感光性絶縁ペーストとして用いる場合には、バインダー樹脂として不飽和二重結合を有する感光性ポリマーまたは/および感光性オリゴマーを用いるのが好ましい。感光性オリゴマーまたは感光性ポリマーは、炭素−炭素二重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られる。さらに、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などの不飽和カルボン酸などの不飽和酸を共重合することによって、感光後のアルカリ水溶液での現像性を向上することができる。
【0030】
感光性モノマーとしては、活性な炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物を用いることができる。官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用できる。具体的な例としては、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、または上記化合物のアクリル基を1部または全てメタクリル基に代えた化合物等が挙げられる。
【0031】
光重合開始剤は、ラジカル種を発生するものから選んで用いられる。光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロペンアミニウムクロリド一水塩、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2ーヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、ジフェニルスルフィド誘導体、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、N−フェニルグリシン、テトラブチルアンモニウム(+1)n−ブチルトリフェニルボレート(1−)、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられる。
【0032】
増感剤の具体例としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾール等が挙げられる。
【0033】
さらに、400nmを越えた波長領域に吸収極大をもつ化合物とビス(アルキルアミノ)ベンゾフェノンもしくはチオキサントン誘導体を含むことで、パターン底部の硬化を進めることができるため、現像時間を長くしてもパターンが基板から剥離しにくくなり、プロセスマージンを広げることができる。また、厚膜での加工が可能となる。
【0034】
400nmを越えた波長領域に吸収極大をもつ化合物の具体例としては、1−クロル−N−メチルアクリドン、2−クロル−N−メチルアクリドン、3−クロル−N−メチルアクリドン、2−クロル−N−ブチルアクリドン、2−クロル−N−メチルアクリドン、3−クロル−N−ベンジルアクリドン、4−クロル−N−メチルアクリドン、2,3−ジクロル−N−メチルアクリドン、2,6−ジクロル−N−ブチルアクリドン、N−ベンジルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−エチルアクリドンなどのアクリドン誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0035】
ビス(アルキルアミノ)ベンゾフェノンもしくはチオキサントン誘導体の具体例としては、2−メチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ラウリルチオキサントン、3−クロルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジプロピルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0036】
紫外線吸収剤を添加することも有効である。感光性絶縁ペーストの場合、無機粉末として性質の異なる軟磁性体粉末とガラス粉末を用いているため、感光性ペースト被膜の内部で露光光の散乱が大きく、パターンが広がりやすい傾向にある。紫外線吸収剤を添加することで、露光光による感光性絶縁ペースト内部の散乱光を吸収し、散乱光を弱め、シャープなパターンが得られる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、インドール系化合物、無機系の微粒子酸化金属等が挙げられる。これらの中でもベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、インドール系化合物が特に有効である。これらの具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、インドール系の吸収剤であるBONASORB UA−3901(オリエント化学工業社製)、BONASORB UA−3902(オリエント化学社製)SOM−2−0008(オリエント化学工業社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、これら紫外線吸収剤の骨格にメタクリル基等を導入し反応型として用いてもよい。本発明では、これらを1種以上使用することができる。
【0037】
紫外線吸収剤の添加量は、感光性絶縁ペースト中に0.001〜10質量%、より好ましくは、0.005〜5質量%の範囲である。これらの範囲を外れると、透過限界波長および波長傾斜幅が変化し、散乱光の吸収能力が不足したり、露光光の透過率が下がり、感光性絶縁ペーストの感度が低下するので注意を要する。
【0038】
また、有機染料を紫外線吸収剤として用いることも有効である。有機染料を用いる場合、上記感光性絶縁ペースト内部の散乱光を吸収し、散乱光を弱める効果の他に染料を添加して着色することにより視認性が良くなり、現像時に感光性絶縁ペーストが残存している部分と除去された部分との区別が容易になる。有機染料としては、特に限定はされないが、焼成後の絶縁膜中に残存しないものが好ましい。具体的には、アントラキノン系染料、インジゴイド系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム系染料、キノンイミン系染料、メチン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、ニトロソ系染料、ベンゾキノン系染料、ナフトキノン系染料、フタルイミド系染料、ペリノン系染料等が使用できる。特に、h線とi線付近の波長の光を吸収するもの、例えばベーシックブルー等のカルボニウム系染料を選択すると、本発明の効果がより出やすくなり好ましい。有機染料の添加量は0.001〜1質量%であることが好ましい。
【0039】
その他、本発明の絶縁ペーストでは、重合禁止剤、分散剤、チキソ剤、可塑剤等を目的に応じて適宜用いることができる。
【0040】
本発明の絶縁ペーストは、各種成分を所定の組成となるように調合した後、プラネタリーミキサー等のミキサーによって予備分散した後、3本ローラーなどの分散機で分散・混練手段によって均質に作製する。
【0041】
次に、本発明の絶縁ペーストを用いた電子回路部品の製造方法について、感光性絶縁ペーストを用いた厚膜多層回路を例に説明する。
【0042】
用いる基板としては、例えばアルミナ基板等を使用することができるが、感光性絶縁ペーストの場合、露光時に基板からの反射の影響を受けるため、アルミナ純度が99.5%より高いものを使用するのが好ましい。
【0043】
まず、基板上に下層導体パターンを形成する。導体パターンは、Cu、Ag、Ag/Pd、Ag/Pt、Au、等の導電性粉末と有機ビヒクルからなる導電ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷した後に焼成して形成する方法や導電ペーストに感光性有機成分を付与させた感光性導電ペーストを用いて形成する方法などがある。感光性導電ペーストを用いる場合は、塗布、乾燥後にフォトマスクを介して露光し、不要部分を現像で洗い流してパターンを形成した後に焼成し、導体パターンが得られる。
【0044】
続いて、本発明の感光性絶縁ペーストを用いて絶縁パターンを形成する。導体パターンが形成された基板上に感光性絶縁ペーストを塗布する。塗布方法としては、公知のスクリーン印刷法、バーコーター法、ドクターブレード法、スピンナー法、ロールコーター法、ダイコート法等を用いることができる。塗布した後、通風オーブン、ホットプレート、赤外線乾燥炉など任意のものを用いて乾燥し、塗布膜を形成する。乾燥後、露光装置を用いて露光を行う。露光装置としては、プロキシミティ露光機などを用いることができる。また、大面積の露光を行う場合は、基板上に感光性ペーストを塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、この場合、浸漬法やスプレー法、ブラシ法等を用いることができる。現像液には、感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒、精製水、およびアルカリ水溶液等を用いることができる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム水溶液などが使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、パターン部を剥離させ、また非可溶部を腐食させるおそれがあり良くない。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。現像後に焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉等を用いることができる。焼成温度は600〜1000℃で行う。
【0045】
必要に応じて、導体パターンおよび絶縁パターンは繰り返して積層される。また、導体パターンと絶縁パターンの焼成は、パターン形成後に一括で焼成してもよい。
【0046】
次に、抵抗体を形成する。抵抗体は、RuO、RuO系、Al系粉末およびBを含有するガラス粉末、Al粉末、遷移金属粉末およびBを含有するガラス粉末、In系−ガラス粉末、RuO−ガラス粉末、LaB−ガラス粉末、SnO添加品−ガラス粉末、珪化物−ガラス粉末、NiOとLi−B−SiO−RO(Rは、Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種)などから構成される抵抗体粉末と有機ビヒクルからなる抵抗体ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷した後に焼成して形成する方法や抵抗体ペーストに感光性有機成分を付与させた感光性抵抗体ペーストを用いて形成する方法などがある。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0048】
(実施例1〜7、比較例1)
以下の方法で絶縁ペーストを作成し、評価を行った。
【0049】
(絶縁ペースト作製)
表1に示した無機成分(窒化硼素化合物とガラス粉末の合計)70質量部とエチルセルロース(ハーキュリース社製)をテルピネオールで溶解した有機ビヒクル(固形分濃度10質量%)30質量部を混ぜ合わせ、三本ローラーで混練し、絶縁ペーストを得た。六方晶窒化硼素粉末aは、電気化学工業社製、GP(黒鉛化指数1.0)を分級機(日清エンジニアリング社製、TC−25IIIC)を用いて中心粒子径2.1μm、最大粒子径7μmとしたものを用いた。六方晶窒化硼素粉末bは、電気化学工業社製、SP−2(黒鉛化指数7.5)を分級機(日清エンジニアリング社製、TC−25IIIC)を用いて中心粒子径1.2μm、最大粒子径4.5μmとしたものを用いた。ガラス粉末Aは、SiO 63質量%、Al 4質量%、B 12質量%、MgO 15質量%、KO 2質量%、その他酸化物 4質量%からなる軟化点730℃、中心粒子径1.2μm、最大粒子径6μm、比誘電率4.5のガラス粉末を用いた。ガラス粉末Bは、SiO 36質量%、Al 15質量%、B 2質量%、CaO 17質量%、ZnO 15質量%、TiO 12質量%、その他酸化物 3質量%からなる軟化点790℃、中心粒子径1.4μm、最大粒子径6μm、比誘電率11のガラス粉末を用いた。ガラス粉末Cは、ZnO 52質量%、SiO 9質量%、B 26質量%、BaO 9質量%、KO 2質量%、その他酸化物2質量%からなる軟化点545℃、中心粒子径1.2μm、最大粒子径5μm、比誘電率6.8のガラス粉末を用いた。
【0050】
(吸水率測定)
基板(99.6%アルミナ基板、76mm角、厚さ0.635mm)上に、絶縁ペーストをマイクロテック社製スクリーン印刷機および380メッシュのスクリーン版を用いて全面塗布し、850℃で焼成して膜厚20μmの絶縁層を形成した。次に、平沼産業(株)製の微量水分率測定装置AQ−7と水分気化付属装置EV−6を用い、200℃加熱気化法(試料を200℃で加熱して水分を気化させ、これを乾燥窒素ガスで規定セルへ導き測定する方法)で測定した。
【0051】
(比誘電率測定)
まず基板(99.6%アルミナ基板、76mm角、厚さ0.635mm)上に、蒸着によりアルミのベタ膜を形成した。次いで、絶縁ペーストをマイクロテック社製スクリーン印刷機および380メッシュのスクリーン版を用いて全面塗布し、850℃で焼成して膜厚20μmの絶縁層を形成した。さらに、その上に蒸着によりアルミのベタ膜を形成し、LCRメーター(横河ヒューレットパッカード社製“HP4284A”)で23℃、1MHzで静電容量を測定し、下記式(1)を用いて比誘電率(ε)を算出した。
【0052】
ε=C・d/ε・S (1)
ここで、Cは静電容量(nF)、dは試料厚み(μm)、εは真空中の誘電率、Sはアルミ電極面積(cm)である。
【0053】
なお、ガラス粉末の比誘電率は、上記絶縁ペーストに代えてガラス粉末とバインダーポリマーおよび有機溶剤からなるペーストを用いて同様の測定を行うことによって測定することができる。
【0054】
(中心粒子径、最大粒子径測定)
マイクロトラック社製粒度分布計HRA9320−X100を用いて、試料量1gを精製水中で1.5分間超音波で分散して測定した。粒子屈折率は、無機粉末の種類によって変更し、溶媒屈折率は、1.33とした。測定は3回行い、平均値より求めた。
【0055】
評価結果を表1に示す。実施例1〜3では、比誘電率4以下の低誘電率と緻密性(吸水率が低い)に優れた絶縁膜が得られた。実施例4は、緻密性(吸水率が低い)は優れていたが、ガラス粉末を多く用いたため、少し比誘電率が高い絶縁膜であった。実施例5は、比誘電率は低いものであったが、ガラス粉末が少ないために緻密性がやや不良(吸水率が少し高い)であった。
実施例6では、比誘電率が7を越えるガラス粉末を用いたために、絶縁膜の比誘電率は高めであったが、緻密性は良好であった。実施例7では、黒鉛化指数が3.5を越える窒化硼素を用いたために、絶縁膜の比誘電率はやや高めであったが、緻密性は良好であった。
【0056】
また、比較例1では、ガラス粉末を用いなかったために、絶縁層の緻密性が著しく不良であり、比誘電率の測定ができなかった。
【0057】
(実施例8)
絶縁ペーストとして、表1に示した無機成分(窒化硼素化合物とガラス粉末の合計)60質量部、酸価=85、重量平均分子量=32,000の感光性アクリルポリマー(東レ社製APX−716)10質量部、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(第一工業製薬社製)10質量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1.5重量部、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(東京化成社製)0.5質量部、N−ブチルアクリドン(最大吸収波長402nm、東京化成社製)0.5質量部、ベーシックブルー26(東京化成社製)0.02質量部、p−メトキシフェノール(東京化成社製)0.05質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(協和発酵工業社製)20質量部からなる感光性絶縁ペーストを用いた以外は、実施例1〜7と同様に比誘電率、絶縁層の緻密性を評価した。結果、表1のとおり、比誘電率4以下の低誘電率と緻密性(吸水率が低い)に優れた絶縁膜が得られた。
次に、該感光性絶縁ペーストを、基板(99.6%アルミナ基板、76mm角、厚さ0.635mm)上にマイクロテック社製スクリーン印刷機および380メッシュのスクリーン版を用いて全面塗布し、タバイ社製熱風乾燥機を用いて100℃で30分乾燥した。乾燥後の膜厚は20μmとした。乾燥後、解像度テストパターンが形成されたフォトマスク(6、8、10、12、15、20、25、30、40、50μmφが50μmピッチで並んでいる)を介して露光を行った。露光機は、大日本スクリーン製露光機(光源:2kW超高圧水銀灯)を用いた。露光後、0.1%の2−アミノエタノール水溶液を用いて、1分間シャワーで現像しパターンを得た(現像液温度は25℃とした)。その後、850℃で10分間光洋サーモテック社製ローラーハース焼成炉を用いて焼成した。焼成後、電子顕微鏡(キーエンス社製、VE−7800)を用いて解像度を調査したところ、10μmφまで解像していた。
【0058】
(実施例9)
絶縁ペーストとして、表1に示した無機成分(窒化硼素化合物とガラス粉末の合計)60質量部、酸価=85、重量平均分子量=32,000の感光性アクリルポリマー(東レ社製APX−716)10質量部、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(第一工業製薬社製)10質量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)2質量部、ベーシックブルー26(東京化成社製)0.02質量部、p−メトキシフェノール(東京化成社製)0.05質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(協和発酵工業社製)20質量部からなる感光性絶縁ペーストを用いた以外は、実施例1〜8と同様に比誘電率、絶縁層の緻密性を評価した。結果、表1のとおり、比誘電率4以下の低誘電率と緻密性(吸水率が低い)に優れた絶縁膜が得られた。
【0059】
次に、該感光性絶縁ペーストを、実施例8と同様に評価したところ、30μmφまで解像していた。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化硼素化合物、ガラス粉末および有機ビヒクルを含むことを特徴とする絶縁ペースト。
【請求項2】
窒化硼素化合物が黒鉛化指数3.5以下の窒化硼素であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ペースト。
【請求項3】
ガラス粉末の比誘電率が7以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁ペースト。
【請求項4】
ガラス粉末が、酸化物換算表記で、
SiO 15〜70質量%
Al 3〜50質量%
4〜20質量%
MgO 1〜20質量%
およびCaO、BaO、TiO、LiO、KOおよびNaOの少なくとも1種の化合物を0.1〜20質量%含有するガラスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁ペースト。
【請求項5】
窒化硼素化合物とガラス粉末との質量比が50:50〜95:5の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁ペースト。
【請求項6】
有機ビヒクルが不飽和二重結合を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁ペースト。
【請求項7】
400nmを越えた波長領域に吸収極大をもつ化合物とビス(アルキルアミノ)ベンゾフェノンもしくはチオキサントン誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の絶縁ペースト。
【請求項8】
少なくとも基板上に絶縁ペーストを塗布した後に乾燥する工程を含む電子回路部品の製造方法であって、絶縁ペーストとして請求項1〜7のいずれかに記載の絶縁ペーストを用いることを特徴とする電子回路部品の製造方法。

【公開番号】特開2006−216300(P2006−216300A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26339(P2005−26339)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】