説明

絶縁抵抗測定装置

【課題】高電圧線路を活性化状態のままで、高電圧線路に電気部品を接続することなく、高電圧系システムの絶縁抵抗を測定できる絶縁抵抗測定装置を提供する。
【解決手段】発振器11で出力された交流電流は、電流制限抵抗Rcを介して、電極12に出力され、電極12から高電圧線路23に伝達される。電流制限抵抗Rcの他端における電流をバッファアンプ13と、積分器14とを介し、CPU15のA/D端子から取り込み、CPU15内のA/D変換器で取り込んだ電圧値を読み込む。取り込んだ電圧値から、CPU15が絶縁抵抗Rdの算出のための演算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車などで、モータ等を駆動するための高電圧系システムの絶縁抵抗測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧系システムの線路と、通常電圧系システム側の測定回路とを容量素子で接続し、通常電圧系システム側の測定回路から容量素子を通して、高電圧系システムへ交流電流が流れる状態にして、高電圧系システムの絶縁抵抗を測定する装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2001−330643号公報
【特許文献2】特開2002−020931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術においては、絶縁抵抗を測定するためには、通常電圧系システム側の測定回路と高電圧系システムの線路とを容量素子で直接接続する必要があるため、容量素子の接続により高電圧系システムの絶縁性が悪くなる可能性が高く、測定方法として最適ではないという問題があった。
【0004】
本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、絶縁抵抗を測定したい高電圧系システムの線路に直接部品を接続することなく、高電圧系システムの線路の絶縁抵抗を測定する事ができる絶縁抵抗測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、通常電圧系システムとモータ駆動用の高電圧系システムとから構成される車載用システムの前記高電圧系システムの絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置において、交流電流を出力する電流出力手段と、一端を前記電流出力手段の出力端に接続された抵抗と、前記抵抗の他端に接続され、前記高電圧系システムの線路の近傍に配置された第1の電極と、前記抵抗の他端における電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段での検出電圧から、前記高電圧系システムの線路とGNDとの間に形成される前記絶縁抵抗を算出する演算をする演算手段と、を具備する事を特徴とする絶縁抵抗測定装置である。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、GND接地され、前記高電圧系システムの線路の近傍に配置された第2の電極を具備する事を特徴とする請求項1に記載の絶縁抵抗測定装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、高電圧系システムの線路に電気部品を直接接続することなく、高電圧系システムの絶縁抵抗を測定することができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、GND接地された第2の電極と高電圧系システムの線路とを近傍に配置し、その間にCR成分を形成することで、測定値に対する高電圧系システムの線路と通常電圧系システムとの間の容量値の変動の影響を少なくでき、高電圧系システムの線路と通常電圧系システムとの間の容量成分を安定させる事が出来るので、より正確な絶縁抵抗測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本実施形態による絶縁抵抗測定装置の全体構成を示すブロック図である。図1は、通常電圧系システム10と高電圧系システム20とから構成され、通常電圧系システム10は、交流信号を出力する発振器(電流出力手段に対応)11と、発振器11に一端が接続された電流制限抵抗(抵抗に対応)Rcと、電流制限抵抗Rcの他端に接続され、高電圧線路23の近傍に配置された電極(第1の電極に対応)12と、電流制限抵抗Rcの他端に接続されたバッファアンプ13と、バッファアンプ13の出力端に接続された積分器14と、A/D端子から積分器14の出力電圧を取り込み、絶縁抵抗Rdを算出する演算を行うCPU(中央処理装置:演算手段に対応)15とから構成されている。
【0010】
12V電源を使用した通常電圧系システム10は、車体や大地のGNDと同電位になっている。また高電圧系システム20には、高電圧電源21と、高電圧電源21により駆動されるモータ22と、高電圧電源21の電力をモータ22に供給するための高電圧線路23とが設けられている。ここで、電極12は高電圧線路23のハーネス被覆部の上から円筒状に巻きつけた形で設置されている。なお、高電圧線路23の周りに設置する電極12は、絶縁抵抗測定をする際に作業者が手動で設置・取り外しできるようにしても良い。
【0011】
図2は図1の等価回路図である。この図に示すように、電極12と高電圧線路23との間には、抵抗成分R12と容量成分C12とが形成され、また、高電圧線路23と通常電圧系システム10のGNDとの間には絶縁抵抗Rdが形成されている。
【0012】
図3は図2の絶縁抵抗測定経路を示す図である。発振器11は電流制限抵抗Rcの一端に接続され、電流制限抵抗Rcの他端が、抵抗成分R12と容量成分C12との並列接続の一端に接続されている。並列接続の他端は、絶縁抵抗Rdの一端に接続されていて、絶縁抵抗Rdの他端はGND接地されている。また、電流制限抵抗Rcの他端にはバッファアンプ13が接続されている。
【0013】
発振器11から、電流制限抵抗Rcを介して交流電流を流し、電流制限抵抗Rcの他端の信号を測定した時、容量成分C12、抵抗成分R12が一定で値が既知であれば、絶縁抵抗Rdが変化した時に測定した信号も同時に変化するので、電流制限抵抗Rcの他端での信号をCPU15で測定する事により絶縁抵抗Rdの値を求めることができる。
【0014】
次に図1に記載の第1の実施形態の動作について説明する。まず、容量成分C12及び抵抗成分R12の値は、電極12と高電圧線路23とが対向している部分の構造や高電圧線路23のハーネス被覆部の材料の比誘電率等から予め求めておき、CPU15に接続されたメモリ(図示略)に値を保存する。発振器11から出力された交流電流は、電流制限抵抗Rcを介して、電極12に出力され、さらに電極12から高電圧線路23、絶縁抵抗を介して、GNDへ流れる。電流制限抵抗Rcの他端における電圧をバッファアンプ13と、積分器14とを介し、CPU15のA/D端子から取り込み、CPU15内のA/D変換器(図示略:電圧検出手段に対応)で取り込んだ電圧値を読み込み、メモリに保存する。保存された電圧値と、予めメモリ内に記憶させておいた抵抗成分R12及び容量成分C12の値とからCPU15で演算することにより絶縁抵抗Rdの算出を行う。高電圧系システム20の稼動時には、絶縁抵抗Rdの測定を定期的に行う。
【0015】
以上のことにより、高電圧系システム20と、通常電圧系システム10との間の絶縁抵抗Rdが低下した時に、作業者が高電圧系システム20の回路に触れると、図4に示すような経路を通して感電する事となり危険であるが、絶縁抵抗Rdの値を定期的に測定することにより、絶縁抵抗Rdが低下した時にはアラームを鳴らし、作業者に対して注意を促す事ができる。
【0016】
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。図5は本実施形態による絶縁抵抗測定装置の全体構成を示すブロック図である。図5に示す装置は、図1に示す第1の実施形態の絶縁抵抗測定装置に、GND接地され高電圧線路23の近傍に配置された電極(第2の電極に対応)16を加えたものである。ここで、電極16は電極12と同様に高電圧線路23のハーネス被覆部の上に円筒状に巻きつけた形で設置されている。電極16と高電圧線路23との間には、図6に示すように抵抗成分R16と容量成分C16とが形成されている。また、高電圧線路23と通常電圧系システム10のGNDとの間には、絶縁抵抗Rdが形成されている。
【0017】
次に、第2の実施形態の動作について説明する。まず、容量成分C12、C16及び抵抗成分R12、R16の値を予め求めておき、メモリに記憶させる。発振器11から出力された交流電流は、電流制限抵抗Rcを介して電極12に出力され、さらに電極12から高電圧線路23へ伝達される。また、高電圧線路23へ伝達された電流は、高電圧線路23から電極16に伝達される。
【0018】
電流制限抵抗Rcの他端における信号をバッファアンプ13と、積分器14とを介し、CPU15のA/D端子から取り込み、CPU15内のA/D変換器で取り込んだ電圧値を読み込み、メモリに保存する。保存された電圧値と、予めメモリ内に記憶させておいた抵抗成分R12、R16及び容量成分C12、C16の値とからCPU15で演算することにより絶縁抵抗Rdの算出を行う。また、第1の実施形態の時と同様に、高電圧系システム20の稼動時には絶縁抵抗Rdの測定を定期的に行う。
【0019】
以上のように、電極16を付加した構成にすることで、高電圧線路と通常電圧系システムとの間に形成されるCR成分を安定させる事が出来るので、より正確な絶縁抵抗の測定を行うことできる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車などで、モータ等を駆動するための高電圧系システムの絶縁抵抗測定装置に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる絶縁抵抗測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる絶縁抵抗測定装置の等価回路を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる絶縁抵抗測定経路を示す図である。
【図4】絶縁抵抗が低下したときの高電圧系システムの感電経路を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる絶縁抵抗測定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる絶縁抵抗測定装置の等価回路を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
11 … 発振器(電流出力手段)
Rc … 電流制限抵抗(抵抗)
12、16 … 電極(第1の電極、第2の電極)
15 … CPU(演算手段)
Rd … 絶縁抵抗(絶縁抵抗)
R12、R16 … 抵抗成分
C12、C16 … 容量成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常電圧系システムとモータ駆動用の高電圧系システムとから構成される車載用システムの前記高電圧系システムの絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置において、
交流電流を出力する電流出力手段と、
一端を前記電流出力手段の出力端に接続された抵抗と、
前記抵抗の他端に接続され、前記高電圧系システムの線路の近傍に配置された第1の電極と、
前記抵抗の他端における電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段での検出電圧から、前記高電圧系システムの線路とGNDとの間に形成される前記絶縁抵抗を算出する演算をする演算手段と、
を具備する事を特徴とする絶縁抵抗測定装置。
【請求項2】
GND接地され、前記高電圧系システムの線路の近傍に配置された第2の電極を具備する事を特徴とする請求項1に記載の絶縁抵抗測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−132684(P2007−132684A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323253(P2005−323253)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【Fターム(参考)】