説明

線条体検査装置およびその方法

【課題】死角の無いコブ検査を小型軽量で安価な線条体検査装置により実現する。
【解決手段】回動軸部材21a、21bに軸支された一対の両開き扉状のホルダ25a、25bは、2分割された割れダイス29の左部29aと右部29bを保持する。割れダイス29の丸孔には、検査対象のKFRP81が挿通される。コイルバネ37a,37bは、それぞれホルダ25a,25bを閉位置方向へ付勢し、係止ボルト47a,47bは、ホルダを閉位置に係止する。所定の長径以上のコブが割れダイス29の丸孔を通過する際に、反射型フォトインタラプタ51a,51bの信号により、制御装置61がホルダの開状態を検出して警報を発するとともに、コブの個数をカウントする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線や電線部材等の線条体のコブを検査する線条体検査装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバによる高速・大容量の伝送を一般家庭に提供するFTTH(Fiber to the Home )がブロードバンド市場の主役として普及率を高めている。幹線ケーブルから光ファイバを宅内へ引き込むためにドロップケーブルが用いられる。ドロップケーブルは、光ファイバ心線と、テンションメンバとしてのケブラー(登録商標、一般的にはアラミド)繊維強化プラスチック(Kevlar Fiber Reinforced Plastics,KFRP)と、自重を支える支持線(鋼線)とを黒色ポリエチレンでモールドして形成される。
【0003】
このKFRPの作成工程は、例えば、アラミド繊維束にエポキシ樹脂槽を潜らせ、絞りダイスにより余分な樹脂を除去するとともに円形断面に成形し、加熱により樹脂を硬化させることからなる。そして、KFRPを高密度ポリエチレン(HDPE)により被覆した後に、上記ドロップケーブルの部材として用いている。
【0004】
このようなKFRPの表面に部分的に膨らんだコブがあると、HDPEの被覆を被せる際の押出機のニップルに詰まり、KFRPが切断されることがある。このため、KFRPの全長に亘って、KFRPに所定以上のコブが有るか否かを検査している。
【0005】
線条体の検査装置としては、例えば、特許文献1に記載の線条体の表面形状検出装置が知られている。この装置は、電線の押出し製造工程において、絶縁皮膜に発生する凹凸を検出する装置であり、電線の搬送方向に沿って所定距離を離した2つの受光素子間の検出信号の差により凹凸を検出するものである。しかしながら特許文献1に記載の装置は、一方向から見た線条体の検査であり、線条体の反対側の死角に隠れたコブを見逃すことが多い。
【0006】
このため、従来のKFRPのコブ検査としては、例えば図5に示すように、直交する2方向に設けた投光器101、103からそれぞれ光を投射し、受光器105、107でKFRP109の影画像を撮像し、画像解析により所定の長径(線条体の長さ方向に垂直な断面におけるコブの径が最も長い部分を長径と呼ぶ)以上のコブがKFRPに有るか否かを検査していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−264732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記画像解析法を用いる検査装置は、受光器に設けた撮像装置、及び撮像装置で撮像した画像を解析する画像解析装置が大型で広い設置面積を要するとともに、装置が高価であるという問題点があった。
【0009】
また2方向から検査しても撮像装置に映らない死角(図5の111)の位置にあるコブを見逃し、正確にコブ検出を行うことができないという問題点があった。
【0010】
上記問題点を解決するために、本発明の目的は、小型で広い設置面積を要さず、安価な線条体検査装置を提供することである。
【0011】
また本発明の目的は、死角により線条体のコブを見逃すことなく、確実に所定の長径以上のコブを検出するとともに、検査対象の線条体に所定の長径以上のコブが複数あっても、人手を介入させることなくそれぞれのコブを自動的に検出することができる線条体検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、検査対象の線条体に所定の長径以上のコブが有るか否かを検査する線条体検査装置であって、線条体が挿通される所定の直径を有する丸孔を有し左右に2分割された割れダイスと、割れダイスの片方をそれぞれ保持するとともに、両開き扉状に開閉可能な一対のホルダと、一対のホルダを、割れダイスの左部と割れダイスの右部とが近接して丸孔を形成している閉位置へ付勢する弾性部材と、一対のホルダが閉位置であるか、又は割れダイスの左部と割れダイスの右部とが離隔した開位置であるかを検出するセンサと、を備え、線条体の丸孔を通過している部分の長径が所定の直径未満である場合、一対のホルダが閉位置にある状態となり、線条体の丸孔を通過している部分の長径が丸孔の直径以上である場合、一対のホルダが開位置の状態となり、センサによる一対のホルダが開位置であることの検出により、線条体に所定の長径以上のコブが有ると判定することを要旨とする。
【0013】
また本発明の線条体検査装置においては、センサの検出状態に基づいて線条体に所定の長径以上のコブが有るか否かを判定する判定部と、判定部が所定の長径以上のコブが有ると判定したときに警報を発する警報部と、を制御装置として備えることができる。
【0014】
また本発明の線条体検査装置においては、制御装置は、所定の長径以上のコブの数を計数するコブ計数部を更に備えることができる。
【0015】
また本発明の線条体検査装置においては、制御装置は、割れダイスを通過した線条体の長さ方向の位置に関する信号である位置信号を受け入れる位置信号入力部と、所定の長径以上のコブを検出した時点の長さ方向の位置情報を所定の長径以上のコブ毎に記憶するコブ位置記憶部と、を更に備えることができる。
【0016】
また本発明の線条体検査装置においては、センサは、反射型フォトインタラプタ、または透過型フォトインタラプタとすることができる。
【0017】
また本発明は、所定の直径の丸孔を有し左部と右部とに2分割された割れダイスの左部と右部とが近接して所定の直径の丸孔を形成している閉状態に付勢する線条体検査装置を用いて、検査対象の線条体に所定の長径以上のコブが有るか否かを検査する線条体検査方法であって、割れダイスの丸孔に線条体の一端部を通す工程と、線条体の検査対象の全長に亘って丸孔に通すように線条体を長さ方向に駆動する工程と、閉状態から割れダイスの左部と割れダイスの右部とが離隔した開状態となったことを検出したときに、線条体に所定の長径以上のコブがあると判定する工程と、を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小型で簡単に設置することができ、安価な線条体検査装置を提供することができるという効果がある。
【0019】
また本発明によれば、死角により線条体のコブを見逃すことなく、確実に所定の長径以上のコブを検出するとともに、検査対象の線条体に所定の長径以上のコブが複数あっても、人手を介入させることなくそれぞれのコブを自動的に検出することができる線条体検査装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る線条体検査装置の実施形態を説明する斜視図である。
【図2】線条体検査装置のコブ非検出時の状態を説明する要部平面図である。
【図3】線条体検査装置のコブ検出時の状態を説明する要部平面図である。
【図4】線条体検査装置の制御装置の詳細を説明する制御ブロック図である。
【図5】従来の画像解析法における死角を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る線条体検査装置1の実施形態を説明する斜視図である。線条体検査装置1は、XZステージ3に結合され割れダイス29を含む機構部分と、センサである反射型フォトインタラプタ51a、51bと、制御装置61とを備える。
【0022】
XZステージ3は、市販の手動型XZステージを利用可能である。XZステージ3は、移動対象物が固定される天板部であるテーブル5と、テーブル5のX軸方向位置を調整するためのX軸調整ツマミ7と、テーブル5のZ軸方向位置を調整するためのZ軸調整ツマミ9と、X軸固定ツマミ11と、Z軸固定ツマミ13とを備える。
【0023】
XZステージ3は、後述する割れダイス29に設けられた丸孔31の中心軸位置と検査対象のKFRP(線条体)の軸の位置とを一致させるために使用される。尚、XZステージ3が入手困難な場合には、市販のXYステージを図1のXZ方向に位置調整可能なように配置して用いることもできる。
【0024】
テーブル5の上には、例えば長方形のアルミニウム板を2箇所で直角に折り曲げて2段の階段状にしたブラケット15が4本のビス17によりネジ止めされている。また、ブラケット15には、ベースプレート19が図示しないビスによりネジ止めされている。
【0025】
ベースプレート19には、回動軸部材21a,21bが立設されている。回動軸部材21aには、ベアリング23を介してホルダ25aが回動可能に設けられている。回動軸部材21bには、ベアリング23を介してホルダ25bが回動可能に設けられている。ホルダ25a,25bは、図中Y方向へ観音開きに開くことができる一対の両開き扉を形成している。
【0026】
割れダイス29は、左部29aと右部29bとに左右に2分割され、中央に図中Y軸方向に割れダイス29を貫通する所定の直径を有する丸孔31が設けられている。丸孔31は、検査対象の線条体が挿通される孔であり、丸孔31の直径は、検査対象の線条体、例えばKFRPの部分的に膨らんだコブの検出したい長径(線条体の長さ方向に垂直な断面におけるコブの径が最も長い部分を長径と呼ぶ)とする。即ち、線条体検査装置1は、丸孔31の直径以上の長径を有するコブを検出する。また割れダイス29には、線条体を丸孔31に導くための円錐状の凹部31aが設けられ、凹部31aの頂点部が丸孔31に連通している。
【0027】
ホルダ25a、25bには、それぞれ切り欠き部27a、27bが設けられ、切り欠き部27a、27bには、それぞれ割れダイス29の左部29a、右部29bが嵌め込まれ、それぞれビス33で固定されている。
【0028】
またホルダ25a,25bには、それぞれコイルバネ37a,37bが挿通される長孔35a,35bが設けられている。コイルバネ37a,37bの一端部は、ビス39によりホルダ25a,25bにそれぞれ固定されている。コイルバネ37a,37bの他端部は、それぞれベースプレート19に立設されたコイルバネ掛止部41a,41bに固定されている。コイルバネ37a及び37bの長さとバネ定数は、それぞれホルダ25a,25bを閉位置方向へ所望の力で付勢できるように選択されている。
【0029】
また、ベースプレート19には、係止ボルトホルダ43a,43bがそれぞれビス45で固定されている。係止ボルトホルダ43a,43bには、それぞれ図中Y方向へ貫通するネジ孔が切られ、このネジ孔へ係止ボルト47a,47bがネジ込まれている。係止ボルト47a,47bは、それぞれの先端が閉位置にあるホルダ25a,25bに当接するように正逆回転させて調整され、係止ボルト固定ビス49により緩まないように固定されている。
【0030】
図2は、本実施形態の線条体検査装置1のホルダ25a,25bの閉位置を説明する要部平面図である。図1に示した斜視図における線条体検査装置1の構成要素と同じ構成要素には、同じ符号が付与されている。
【0031】
検査対象のKFRP81は、図外下方の線条体送出装置から繰り出される。そして割れダイス29の丸孔31を通過し検査が完了したKFRP81は、図外上方の線条体巻取装置により巻き取られるものとする。
【0032】
図2において、ホルダ25a,25bのそれぞれの開閉状態を検出するセンサとして、反射型フォトインタラプタ51a,51bが設けられている。反射型フォトインタラプタ51a,51bは、所定の距離範囲に光を反射する反射体が有るか否かを光学的に検出するセンサであり、一般的な市販品を用いることができる。反射型フォトインタラプタ51a,51bは、それぞれ、発光部として発光ダイオード(LED)と、受光部としてフォトトランジスタまたはフォトICとを備えている。フォトICは、フォトトランジスタまたはフォトダイオードと、これらの出力を増幅する集積回路(IC)とを一体化したものである。反射型フォトインタラプタ51a,51bは、制御装置61に接続されている。
【0033】
図2は、本実施形態の線条体検査装置1のホルダ25a,25bの閉位置を説明する要部平面図である。図3は、本実施形態の線条体検査装置1のホルダ25a,25bの開位置を説明する要部平面図であり、線条体検査装置1が所定の長径以上のコブを検出している状態である。
【0034】
図2に示すように、ホルダ25aが閉位置にあるとき、反射型フォトインタラプタ51aの発光部が発した光は、ホルダ25aの底面で反射されずに受光部へ到達しない。同様に、ホルダ25bが閉位置にあるとき、反射型フォトインタラプタ51bの発光部が発した光は、ホルダ25bの底面で反射されずに受光部へ到達しない。
【0035】
ホルダ25a,25bを閉位置方向へ付勢するコイルバネ37a,37bと、係止ボルト47a,47bにより、ホルダ25a,25bは、通常閉位置にある。言い換えれば、ホルダ25a,25bが閉位置に或る状態は、線条体検査装置1が所定の長径以上のコブを検出していない状態である。ホルダ25a,25bが共に閉位置にあれば、反射型フォトインタラプタ51a、51bのセンサ信号は、共に反射光不検出を示し、図示しない制御装置は、線条体の所定の長径以上のコブが無い状態と判定する。
【0036】
線条体の検査時には、割れダイス29の丸孔31に検査対象の線条体を通し、線条体の検査対象の全長に亘って、線条体を丸孔31に通すように線条体を駆動する。線条体に所定の長径以上のコブが有れば、割れダイス29の左部29aと右部29bとを左右に押し広げる力が働く。このコブが割れダイスを押し広げる力により、割れダイス29の左部29aと右部29bとをそれぞれ保持するホルダ25a,25bは、閉位置から回動軸部材21a,21bの周りに互いに逆方向へ回動して開位置へ移動する。この状態を図示したものが図3である。但し、開位置は、閉位置と異なり単一の位置ではなく、線条体のコブの長径に従って、割れダイス29の左部29aと右部29bとの隙間の幅、言い換えれば、回動軸部材21a,21b周りのホルダ25a,25bの回動角度が異なる。
【0037】
図3に示すように、ホルダ25aが開位置となると、反射型フォトインタラプタ51aの発光部が発した光は、ホルダ25aの底面で反射されて、反射型フォトインタラプタ51a受光部へ到達する。同様に、ホルダ25bが開位置となると、反射型フォトインタラプタ51bの発光部が発した光は、ホルダ25bの底面で反射されて、反射型フォトインタラプタ51bの受光部へ到達する。制御装置61は、反射型フォトインタラプタ51a及び51bの少なくとも一方が反射光を検出していれば、線条体に所定の長径以上のコブが有ると判定する。コブが割れダイス29を通過してしまえば、コイルバネ37a,37bにより、ホルダ25a、25bは、共に閉位置となり、図2の状態へ戻る。
【0038】
尚、図3では、ホルダ25a、25bは、共に開位置として図示しているが、コブの形状やコブと割れダイス29との摩擦係数等の使用状況により、線条体に所定の長径以上のコブがあっても、ホルダ25a、25bの一方しか開位置とならず、他方が閉位置を継続することが考えられる。このため、本実施の形態では、それぞれのホルダ25a,25bに対応して、反射型フォトインタラプタ51a、51bを設けた。しかし、線条体に所定の長径以上のコブがある場合には、必ずホルダ25a,25bが共に開状態となるのであれば、一方のホルダのみにセンサを設けるだけでもよい。
【0039】
図4は、制御装置61の構成例を説明する制御ブロック図である。同図において、制御装置61は、センサ信号入力部63と、電流供給部65と、判定部67と、警報出力部69と、位置信号入力部71と、コブ位置記憶部73と、コブ計数部75とを備えている。
【0040】
センサ信号入力部63は、反射型フォトインタラプタ51a,51bから、それぞれケーブル53a,53bを介して反射光検出信号を入力する。次いで、反射光検出信号と所定の判別値(閾値)と比較して、反射光検出信号が判別値以上であれば、反射光有り、即ち対応するホルダが開状態である2値信号を判定部へ出力し、反射光検出信号が判別値未満であれば、反射光無し、即ち対応するホルダが閉状態である2値信号を判定部67へ出力する。
【0041】
電流供給部65は、反射型フォトインタラプタ51a,51bのそれぞれの発光部であるLEDへ、ケーブル53a,53bを介して点灯電流を供給する。
【0042】
判定部67は、センサ信号入力部63が出力するホルダ25a,25bのそれぞれの開閉状態を示す2値信号が共に閉状態を示していれば、線条体の所定の長径以上のコブを検出していない状態と判定する。また判定部67は、センサ信号入力部63が出力するホルダ25a,25bのそれぞれの開閉状態を示す2値信号の少なくとも一方が開状態を示していれば、線条体の所定の長径以上のコブを検出している状態と判定する。判定部67は、線条体の所定の長径以上のコブを検出している状態と判定すると、警報出力部69に、光又は音による警報を発生させるとともに、コブ位置記憶部73へ記憶指示信号を出力し、コブ計数部75に計数信号を出力する。コブ計数部75は、内蔵するカウンタに保持しているコブの数を1だけ増加させる。
【0043】
位置信号入力部71は、線条体検査装置で検査された線条体を巻き取る線条体巻取装置のキャプスタン回転信号、または巻き取りボビン回転信号を検査対象の線条体の長さ方向の位置に関連する位置信号として入力する。キャプスタン回転信号、または巻き取りボビン回転信号は、キャプスタンまたは巻き取りボビンの一定の回転角度毎に発生するパルス信号である。位置信号入力部71は、このパルス信号を計数して割れダイスを通過中の線条体の位置情報に変換して、変換した位置情報をコブ位置記憶部73へ出力する。
【0044】
コブ位置記憶部73は、複数の記憶領域と記憶領域を指定するアドレスカウンタを有する。コブ位置記憶部73は、判定部67から記憶指示信号が入力される毎に、位置信号入力部71から入力した位置情報をアドレスカウンタが指定する記憶領域へ記憶し、アドレスカウンタをカウントアップする。
【0045】
尚、図4には図示しないが、制御装置61には表示部が設けられ、コブ計数部75が計数したコブの数やコブ位置記憶部73に記憶したコブの位置情報を表示できるようになっているのが好ましい。また、制御装置61には、通信部を設けて、コブの数やコブの位置情報を他の制御システムへ通信できるようにしてもよい。
【0046】
本実施形態では、センサとして反射型フォトインタラプタ51a,51bを用いたので、線条体検査装置1の設置時に、センサ信号入力部63の判別値を調整すれば、以後は無調整で、死角の無い正確なコブ検出を行うことができる。
【0047】
次に、本実施形態の線条体検査装置1を利用した線条体の検査方法を説明する。
【0048】
第1の工程は、作業者が、検査対象の線条体の一端部を左右2分割の割れダイス29に設けられた丸孔31に挿通にする工程である。さらに詳しくは、作業者が、線条体送出装置から線条体の一端部を引き出して、左右2分割の割れダイス29に設けられた丸孔31に挿通し、さらに、この一端部を線条体巻取装置が巻き取り可能なように設定する。このとき、作業者は、XZステージ3のX軸調整ツマミ7及びZ軸調整ツマミ9を操作して、線条体の走行位置が丸孔31の中心を通るように調整し、調整後、X軸固定ツマミ11及びZ軸固定ツマミ13をロック位置へ設定する。
【0049】
第2の工程は、線条体送出装置及び線条体巻取装置を作動させて、線条体の検査対象の全長に亘って、線条体を割れダイス29の丸孔31に通すように、図1のY方向へ駆動する工程である。
【0050】
第3の工程は、センサである反射型フォトインタラプタ51a,51bの出力信号に基づいて、制御装置61が、割れダイス29の左部29aと右部29bとが離隔した開状態となったことを検出したときに、線条体に所定の長径以上のコブがあると判定する工程である。
【0051】
以上説明した本実施形態によれば、丸孔を有する割れダイスを用いたので、小型で簡単に設置することができ、安価な線条体検査装置及び線条体検査方法を提供することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、死角により線条体のコブを見逃すことなく、確実に所定の長径以上のコブを検出するとともに、検査対象の線条体に所定の長径以上のコブが複数あっても、人手を介入させることなく、それぞれのコブを自動的に検出することができる線条体検査装置を提供することができるという効果がある。
【0053】
また本実施形態によれば、線条体上の所定の長径以上のコブの数を計数することができるという効果がある。
【0054】
また本実施形態によれば、線条体上の所定の長径以上のコブの位置をコブ毎に記憶することができ、記憶したコブの位置を用いて線条体のコブを修正、或いは所定の長径以上のコブがなく正常と判断される部位を容易に選択することができるという効果がある。
【0055】
尚、上述の実施形態では、割れダイスの左部及び右部をそれぞれ保持した一対のホルダが閉位置から開位置へ変化したこと検出するセンサとして、反射型フォトインタラプタを用いた。しかしながら、センサは、反射型フォトインタラプタに限らず、ホルダの開閉状態を検出できれば、如何なるセンサでもよい。
【0056】
例えば、ホルダ25a,25bが共に閉位置において、発光部が発した光が受光部に到達し、ホルダ25a,25bの少なくとも一方が開位置において、発光部が発した光がホルダに遮られて受光部に達しないように、光の投射方向を図1中のX軸方向とした位置に、光透過型のフォトインタラプタを設けてもよい。また、ホルダに金属等の導電性部材を用いた場合、センサの電極と、ホルダとの間の静電容量を検出する静電容量センサが利用可能である。また、ホルダに磁性体を用いたり磁性体を貼付すれば、磁場を検出するホール素子や磁気抵抗素子等の磁気センサを利用することができる。
【0057】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 線条体検査装置
3 XZステージ
5 テーブル
7 X軸調整ツマミ
9 Z軸調整ツマミ
11 X軸固定ツマミ
13 Z軸調整ツマミ
15 ブラケット
19 ベースプレート
21 回動軸部材
23 ベアリング
25 ホルダ
29 割れダイス
29a 左部、29b 右部
31 丸孔
31a 凹部
35 長孔
37 コイルバネ
41 コイルバネ掛止部
43 係止ボルトホルダ
47 係止ボルト
51 反射型フォトインタラプタ(センサ)
53 ケーブル
61 制御装置
63 センサ信号入力部
65 電流供給部
67 判定部
69 警報出力部
71 位置信号入力部
73 コブ位置記憶部
75 コブ計数部
81 KFRP(線条体)
81a コブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の線条体に所定の長径以上のコブが有るか否かを検査する線条体検査装置であって、
前記線条体が挿通される所定の直径を有する丸孔を有し左右に2分割された割れダイスと、
該割れダイスの片方をそれぞれ保持するとともに、両開き扉状に開閉可能な一対のホルダと、
前記一対のホルダを、前記割れダイスの左部と前記割れダイスの右部とが近接して前記丸孔を形成している閉位置へ付勢する弾性部材と、
前記一対のホルダが前記閉位置であるか、又は前記割れダイスの左部と前記割れダイスの右部とが離隔した開位置であるかを検出するセンサと、を備え、
前記線条体の前記丸孔を通過している部分の長径が前記所定の直径未満である場合、前記一対のホルダが閉位置にある状態となり、
前記線条体の前記丸孔を通過している部分の長径が前記丸孔の直径以上である場合、前記一対のホルダが開位置の状態となり、
前記センサによる前記一対のホルダが開位置であることの検出により、前記線条体に所定の長径以上のコブが有ると判定することを特徴とする線条体検査装置。
【請求項2】
前記センサの検出状態に基づいて前記線条体に所定の長径以上のコブが有るか否かを判定する判定部と、該判定部が所定の長径以上のコブが有ると判定したときに警報を発する警報部と、を制御装置として備えたことを特徴とする請求項1に記載の線条体検査装置。
【請求項3】
前記制御装置は、所定の長径以上のコブの数を計数するコブ計数部を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の線条体検査装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記割れダイスを通過した前記線条体の長さ方向の位置に関する信号である位置信号を受け入れる位置信号入力部と、
前記所定の長径以上のコブを検出した時点の長さ方向の位置情報を前記所定の長径以上のコブ毎に記憶するコブ位置記憶部と、
を更に備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の線条体検査装置。
【請求項5】
前記センサは、反射型フォトインタラプタ、または透過型フォトインタラプタであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の線条体検査装置。
【請求項6】
所定の直径の丸孔を有し左部と右部とに2分割された割れダイスの前記左部と前記右部とが近接して前記所定の直径の丸孔を形成している閉状態に付勢する線条体検査装置を用いて、検査対象の線条体に所定の長径以上のコブが有るか否かを検査する線条体検査方法であって、
前記割れダイスの丸孔に前記線条体の一端部を通す工程と、
前記線条体の検査対象の全長に亘って前記丸孔に通すように前記線条体を長さ方向に駆動する工程と、
前記閉状態から前記割れダイスの左部と前記割れダイスの右部とが離隔した開状態となったことを検出したときに、前記線条体に所定の長径以上のコブがあると判定する工程と、
を備えたことを特徴とする線条体検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−68088(P2012−68088A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212023(P2010−212023)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】