線条検査方法および装置
【課題】本発明は、検査試料の設置方向および光学条件に左右されず、線条交差角度および線条密度を同時に検出することができる線条の検査方法および装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の線条の検査方法は、平面的に平行に配列されて互いに交差する、多数の縦の線条と多数の横の線条のデジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施したのちにフーリエ変換を施し、フーリエスペクトルから、縦の線条と横の線条とが交差する角度、および縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数を算出する。前記デジタルフィルタ処理がハニング窓関数処理であることが好ましい。フーリエスペクトルを平面極座標上に表わして、極座標の偏角ごとのフーリエスペクトル値の動径方向の総和が、最大および第2のクラスターとなる偏角を線条交差角度とする。また、線条の角度方向において、フーリエスペクトル値がピークとなる最小の動径を線条密度とする。
【解決手段】本発明の線条の検査方法は、平面的に平行に配列されて互いに交差する、多数の縦の線条と多数の横の線条のデジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施したのちにフーリエ変換を施し、フーリエスペクトルから、縦の線条と横の線条とが交差する角度、および縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数を算出する。前記デジタルフィルタ処理がハニング窓関数処理であることが好ましい。フーリエスペクトルを平面極座標上に表わして、極座標の偏角ごとのフーリエスペクトル値の動径方向の総和が、最大および第2のクラスターとなる偏角を線条交差角度とする。また、線条の角度方向において、フーリエスペクトル値がピークとなる最小の動径を線条密度とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面的に平行に配列されて互いに交差する、多数の縦の線条と多数の横の線条とが交差する角度(線条交差角度)、および多数の縦の線条と多数の横の線条それぞれの密度(線条密度)を、自動的に検査する方法および装置に関する。さらに詳しくは、製造過程における織物、または製品としての織物において、経糸と緯糸とが交差する角度(糸交差角度)、および経糸と緯糸それぞれの単位長さあたりの糸の本数(糸密度)を自動的に検査する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに実質的に平行に配列された所定の数の経糸と、該多数の経糸と一定の角度で交差する互いに実質的に平行に配列された所定の数の緯糸とからなる織物の糸交差角度を検査する場合、理想状態が刻まれたフィルム上に織物を設置し、理想状態を投影させることで測定している。また糸密度は、デンシメーターを用いて1インチ当たりの経糸数および緯糸数を測定している。どちらも肉眼による目視評価であることから測定のバラつきが大きく、測定値は信頼性に乏しい。
【0003】
また、プラズマディスプレイの前面パネルに内蔵される電磁波シールドフィルタのようにメッシュ状の線条が形成された面状体全般について、メッシュ状の線条を構成する縦線と横線の交差角度および縦線と横線それぞれの線密度を検査することが必要であるが、織物と同様に目視による評価にたよっている。
【0004】
このような問題に対し、検出精度を向上させる目的で、様々な方策が提案されている。例えば特許文献1には、投光手段により織布に投射した光をCCD素子にて撮像し、これによって得られた画像データをもとに織布情報(糸の密度、糸の傾き、織組織等)を算出し、この織布情報から得られた糸ピッチ幅を有する領域と、この糸ピッチ幅の整数倍離れた位置の他の領域との画像データ全体にわたる相関値に対して、設定されたしきい値との比較を行うことにより、織組織の異なる領域を経糸、緯糸の区別なく、同一光学条件で全幅に対して高精度に検出することが可能な織布の検反装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、フーリエ変換を応用した布目曲がり検出装置が開示されている。これは、織物の柄を撮像し、撮像装置から出力される画像信号をフーリエ変換して柄の方向を示す柄方向信号と基準となる柄方向信号を比較し、布目曲がりを検知する装置である。
【0006】
【特許文献1】特許第2800726号公報
【特許文献2】特許第2909192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の糸密度の算出手法を以下に述べる。まず、検査対象となる糸に対して垂直方向に矩形領域の短軸を設定する。次に、この短軸の幅の最も小さい値(同一光学条件において撮像される織布画像のなかで最も検査対象糸密度の高い糸のピッチサイズに相当する画素数)から順に比較領域(異なる領域に設定された同じ大きさの2つの比較領域)内の画像データの相関値を求める。求められた相関値の中で最大値となる短軸の幅が糸密度となる。ここで、矩形領域の短軸方向または長軸方向が糸の主軸方向と傾きをなす場合、検査精度が低下するという問題があった。このため、矩形領域を糸の主軸方向に合わせる補正が必要であった。また、特許文献2は布目まがりを検出する装置であって、柄の周期性を算出することができず、糸交差角度および糸密度を検出することは示されていない。さらに、いずれの特許文献においても、基準状態との比較で示す相対値評価であり、基準状態が存在しない場合には検査が不可能である。そのため、基準状態を設定し、また、基準状態に沿って検査対象である織布を設置することが必要であった。いずれもフーリエ変換を応用しているが、フーリエスペクトルの先鋭性を向上させるための処理(デジタルフィルタ処理)を施していないため、そこから得られる周波数情報の信頼性に乏しく、検査精度の低下を招く。
【0008】
上述のとおり、従来の技術では、糸交差角度の異なる多数の織物を、検査試料の設置方向および光学条件に左右されず同一の測定条件で、糸交差角度および糸密度を全幅にわたって異常を高精度に検出することは困難であった。
【0009】
本発明は、平面的に平行に配列されて互いに交差する、多数の縦の線条と多数の横の線条とが交差する角度、および多数の縦の線条と多数の横の線条それぞれの密度を、自動的に検査する方法および装置を提供することを目的とする。本発明では、検査対象となる線条として、織物のみならず印刷またはエッチングによってメッシュ状の線条が形成されたフィルム、シート、スクリーン、プレートなどが含まれる。具体的には、たとえばプラズマディスプレイの前面パネルに内蔵される電磁波シールドフィルタや、生化学などで精密さが要求されるメッシュ状の分離フィルタ、印刷用スクリーン紗、網戸などを挙げることができる。
【0010】
さらに詳しくは、本発明は、糸交差角度の異なる多数の織物において、検査試料の設置角度および光学条件に左右されない同一の測定条件で、糸交差角度および糸密度を同時に、高速に、かつ高精度に検出することができる織物における糸交差角度および糸密度の自動検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の線条検査方法は、実質的に平行に平面的に配列された多数の縦の線条と、該縦の線条が配列される平面に、前記多数の縦の線条と交差して、実質的に平行に設けられた多数の横の線条とを含む面状体の線条を検査する方法であって、
(a)前記面状体を撮像して、該撮像された画像を縦横の配列に区切った画素ごとに画像の明るさを数値で表わしたデジタル画像データを得る工程と、
(b)前記デジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施す工程と、
(c)前記工程(b)でデジタルフィルタ処理が施された画像データにフーリエ変換を施してフーリエスペクトルを得る工程と、
(d)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条とが交差する角度すなわち線条交差角度を算出する線条交差角度算出工程と、
(e)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数すなわち線条密度を算出する線条密度算出工程と
を有し、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度、および縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を検出することを特徴とする。
【0012】
本発明の線条検査方法は、前記面状体が織物であり、前記縦の線条が経糸であり、前記横の線条が緯糸である場合を含む。
【0013】
また、前記面状体がフィルムまたはシートであってもよく、前記縦の線条と横の線条が、当該フィルムまたはシートの面に形成される線条であってもよい。
【0014】
また、前記面状体がプレートであってもよく、前記縦の線条と横の線条が、当該プレートの面に形成される線条であってもよい。
【0015】
本発明の線条検査方法において、前記デジタルフィルタ処理が、ハニング窓関数処理であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の線条検査方法において、線条交差角度を算出する工程は、前記フーリエスペクトルを平面極座標上に表わして、該極座標の偏角ごとに動径方向のフーリエスペクトル値の総和を計算し、該総和のピーク値を構成するクラスターの面積が最大であるピーク値偏角と、該総和のピーク値を構成するクラスターの面積が第2の大きさであるピーク値偏角との差を、線条交差角度として算出することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の線条検査方法において、線条密度を算出する工程は、前記総和のピーク値を構成するクラスターの面積が最大であるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径と、前記総和のピーク値を構成するクラスターの面積が第2の大きさであるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径とから、縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の線条検査装置は、実質的に平行に平面的に配列された多数の縦の線条と、該縦の線条が配列される平面に、前記多数の縦の線条と交差して、実質的に平行に設けられた多数の横の線条とを含む面状体の線条を検査する装置であって、
(a)前記面状体を撮像して、該撮像された画像を縦横の配列に区切った画素ごとに画像の明るさを数値で表わしたデジタル画像データを得る手段と、
(b)前記デジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施す手段と、
(c)前記手段(b)でデジタルフィルタ処理が施された画像データにフーリエ変換を施してフーリエスペクトルを得る手段と、
(d)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条とが交差する角度すなわち線条交差角度を算出する線条交差角度算出手段と、
(e)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数すなわち線条密度を算出する線条密度算出手段と
を有し、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度、および縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を検出することを特徴とする。
【0019】
本発明において線条密度とは、単位長さあたりの線条の本数をいう。
【0020】
本発明では、極座標において、動径と極軸(X軸の正の部分に相当する)とのなす角度を偏角という。また、本発明ではグラフにおいて1つのピーク(極大値)を形成する凸形状部分をクラスターという。本発明の場合、動径方向のスペクトルの総和が偏角に対して連続して0でない値である、1群のデータが1つのクラスターを構成する。
【0021】
なお、前記総和のピーク値を構成するクラスターのピーク値偏角は、そのクラスターにおける偏角の中央値、そのクラスターの偏角ごとの総和で重み付けした偏角の平均値(すなわちクラスターの重心の偏角)、またはそのクラスターのピーク(極大値)における偏角である。
【0022】
本発明の方法を、たとえば織物に適用することによって、検査試料と検査装置間の精密な角度設定を行わなくても、任意の糸交差角度を有する織物の、糸交差角度と糸密度を同時に、高速かつ高精度に計測することができるので、織物の製造工程において、自動的に織物の糸交差角度および糸密度を設計値と比較し、織物が設計値どおりに製造されているかどうか(公差範囲に入るかどうか)を判定することができる。また、その判定結果を表示することによって作業者に検査対象の織物の状態を知らせて、製造装置の制御に役立てることができる。たとえば、検査対象が設計値より密度が粗い場合、密度を細かくするように製造装置の設定を変更する。さらに、その判定結果によって公差範囲に入らない製品を自動的に選別することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フーリエスペクトルの特徴を生かすことで、検査試料と検査装置間の精密な角度設定を行わなくても、線条の交差角度と線条密度を同時に、高速かつ高精度に計測することができる。また、任意の線条交差角度を有する線条でも、特別な設定をすることなく自動的に線条交差角度と線条密度を検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の線条の検査装置の実施の形態について、織物を例にとって、線条交差角度および線条密度が高精度に検査できることを図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は織物の一例を示す拡大写真である。図1に示すように織物は、経糸Vと緯糸Hがそれぞれ一定の密度で平行に配列され、相互に一定の角度で交差して織られている。
【0026】
図2に本発明の織物の糸交差角度および糸密度高精度検査装置の構成図を示す。光源1から照明される光は、織物2とバックグラウンド3から反射され、カメラレンズ4で集光されてデジタルスチルカメラ5内の受光素子に結像される。受光素子は、結ばれた像から織物2の画像信号に変換する。変換された画像信号はデジタル画像データに生成され、デジタルスチルカメラ5から演算装置(図示せず)に送られる。演算装置では、デジタル画像データを処理して、糸交差角度および糸密度を検出し、結果を表示装置(図示せず)に表示する。または、検出した糸交差角度および糸密度を、織物製品ごとに予め決められた規格値と比較し、検査対象の織物の糸交差角度または糸密度が公差範囲に入るかどうかを判定し、判定した結果を表示したり、糸交差角度または糸密度が公差範囲に入らない場合は、制御装置(図示せず)に指令して、検査対象の織物を選別する。
【0027】
光源1には、標準の光D65の常用光源である人工太陽照明灯に、D65近似フィルタと拡散照明フィルタを装着したものを用いる。拡散照明フィルタを用いて、照明の均一性を目指しているが、若干の照明ムラが発生する。これを防ぐために、反射率が可視光域にわたり99.9%である均一な拡散反射素材である標準白色板(スペクトラロン、Labsphere社製)を用いる。以下に、照明ムラと暗電流の影響を打ち消す方法を示す。
【0028】
受光素子は一般的に、入射光がゼロの状態でもある程度の感度を有している。これを暗電流と呼ぶ。レンズにキャップを被せ、全く光が入射しない状態で撮影し、暗電流画像における受光素子の読取り値をIB(x,y)とする。次に、標準白色板の撮像画像における受光素子の読取り値をIW(x,y)とし、試料の撮像画像における受光素子の読取り値をIT(x,y)とする。最後に、数式1から、照明ムラおよび暗電流補正された試料の撮像画像IC(x,y)が得られる。
IC(x,y) = {IT(x,y)−IB(x,y)}/{IW(x,y)−IB(x,y)}×255 (数式1)
【0029】
ここで、極力暗電流を防ぐために、デジタルスチルカメラ5には、冷却デジタルスチルカメラを採用する。受光素子はペルチェ素子により冷却され、有効画素は2048×2048 pixelである。また、デジタルスチルカメラ5は、パーソナルコンピュータとUSBにより接続され制御される。ダイナミックレンジは8bitである。受光素子の分光感度特性は500nm付近に感度のピークを有している。
【0030】
カメラレンズ4の拡大倍率は、織物が最も細やかなレベルを基準に決定する。デジタルスチルカメラ5の撮影位置の校正および画素と実サイズの測定には、図3に示すカメラ校正用ターゲットT(Target Grid Distortion、Edmund Industrial Optics社製)を使用する。カメラ校正用ターゲットのサイズは5.1×5.1cmである。したがって、本検査装置の校正における検査対象試料の最大サイズは5.1×5.1cmとなる。
【0031】
デジタルスチルカメラ5で撮像されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、得られた2次元デジタル信号に窓関数(ハニング窓)を施し、フーリエ変換を施し、フーリエスペクトルを得る。窓関数を施すことで、より鋭いフーリエスペクトルのピークを得ることができる。
【0032】
織物は、経糸数および緯糸数が空間的に規則正しく配列されており、周期性を有する。このことから、織物の2次元空間的なテクスチャ特徴を抽出すれば、糸交差角度、経糸数および緯糸数を数学的に求めることが可能である。織物におけるテクスチャ特徴の抽出アルゴリズムを以下に示す。
(1)デジタルスチルカメラから織物のデジタル画像データを取得する
(2)デジタル画像データに窓関数処理を施す
(3)窓関数処理されたデジタル画像データを高速フーリエ変換(以下、FFT:Fast Fourier Transformとする)し、フーリエスペクトルを取得する
(4)フーリエスペクトルのピークを抽出する
(5)各ピークの情報(角度、周波数)を織物のテクスチャ特徴量(糸交差角度、経糸数および緯糸数)に対応させる
【0033】
つぎに、前記アルゴリズムの各工程を順を追って、詳細に説明する。
(1)デジタルスチルカメラから織物のデジタル画像データを取得する
ここで、検査装置の精度を示すために標準状態の織物を線画でモデル化する。表1に設計値を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
図4に表1に示す織物Fの線画モデルの画像を示す。本実施の形態は、縦の線条と横の線条との交差する角度αが直角でない場合である。
【0036】
(2)デジタル画像データに窓関数処理を施す
得られたデジタル画像データに窓関数を施すことで、よりピークの鋭いフーリエスペクトルを得ることができる。本発明において、適用できる窓関数としては、方形波窓、ハミング窓、ブラックマン窓、ハニング窓などがある。また、窓関数以外に、ハイパスフィルタなどのエッジ検出(境界検出)をデジタル画像データに施してもよい。本発明においては、デジタルフィルタ処理としてハニング窓が最も効果的であった。ハニング窓関数を数式2に示し、図5に窓関数のグラフを示す。窓関数は、例えば1次元のデジタル信号の場合、中心部の信号強度を残し、両端の信号の強度を減衰させる。これにより両端で発生する信号の不連続性を抑え、よりノイズの少ないフーリエスペクトルを得ることができる。画像は2次元信号であるので、x軸方向に窓関数を処理し、その処理結果に対してy軸方向に窓関数を施すような2段階の処理を施す。図6にハニング窓関数を施す前の画像P1を示し、図7にハニング窓関数を施した後の画像P2を示す。次に、図8に通常のFFT結果P3を示し、図9にハニング窓関数を施したFFT結果P4を示す。図8および9より明らかなように、ハニング窓関数を施した結果はフーリエスペクトルのピークが明確に表れているが、施していない結果は、ピークが不明瞭でぼやけていることがわかる。このフーリエスペクトルのピークの先鋭度は、糸交差角度および糸密度の検出精度を左右する最も重要な指標の一つである。ハニング窓関数が検査精度の向上に及ぼす影響は、本実施の形態における検査系全体の誤差要因の12%である。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、数式2におけるMは本実施の形態の場合、x軸またはy軸の総画素数512(pixel)であり、mは画素の番号である。数式2のW(m)を画素番号mの画像データに乗じて、ハニング窓関数処理画像データを得る。
【0039】
デジタルフィルタ処理は、汎用マイクロプロセッサ、汎用マイコン、カスタムLSI、またはより高速にはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)などで処理することができる。本実施の形態では、汎用マイクロプロセッサ(パーソナルコンピュータ)Pentium(登録商標)III(動作周波数800MHz)を使用し、1つのデジタル画像データのハニング窓関数処理に要した時間は160msecであった。
【0040】
(3)窓関数処理されたデジタル画像データをFFTし、フーリエスペクトルを取得する
画像は平面であることから、信号はx(i,j)の2次元になる。周波数も水平方向と垂直方向の2つの周波数を有する。また、画像の場合、周波数の配置は、中心が直流分で、右端がfx/2、左端が−fx/2という形式にすることが常套とされている。水平周波数をu、垂直周波数をvとした際の2次元的な周波数成分の分布がフーリエスペクトル(2次元フーリエスペクトル)である。フーリエスペクトルと実際の画像の関係を図10に示す。原点が直流成分で、画像が一様に真っ白な画像に相当する。縞模様が細かくなっていくにしたがって、周波数が高くなる。また、斜め方向の縞は、図のように水平周波数と垂直周波数の両方の成分を有するプロットになる。フーリエスペクトルの計算には、数式3に示す2次元のFFTを使用する。
【0041】
【数2】
【0042】
上記FFTを用いて、図4に示す織物のモデル画像のフーリエスペクトルを求めた結果Pfを図11に示す。
【0043】
FFTにおいても、デジタルフィルタ処理と同様、種々のプロセッサを使用することができる。本実施の形態では、ハニング窓関数処理と同じプロセッサを使用し、1画面のデジタル画像データの処理時間は611msecであった。
【0044】
(4)フーリエスペクトルのピークを抽出する
図11のフーリエスペクトルにおいて、上位25位(経験的に定めた)までのレベルの周波数座標を残し、残りをレベル0とするような数式4に示す閾値処理を施す。
【0045】
【数3】
【0046】
ここで、F(u,v)およびF'(u,v)は、それぞれ、処理前および処理後のフーリエスペクトル座標(u,v)におけるレベルを示し、tは閾値を示す。閾値処理の結果Pf1を図12に示す。閾値処理されたフーリエスペクトルF'(u,v)を、原点を中心に、偏角θと動径r(rは空間周波数に対応)で表される極座標F'(θ,r)に変換する。次に、各偏角におけるフーリエスペクトルのレベル総和を数式5で算出する。
【0047】
【数4】
【0048】
ここで、rmaxは空間周波数rに関して計測する最大値で、画像サイズの半分とする。また、F'(θ,r)は原点に対して対称であることから、θの値域は0.0°〜180.0°とする。角度分解能は0.1°である。各偏角θにおけるレベル総和F'total(θ)の分布を図13に示す。図13に示すとおり、レベル総和分布にはいくつかの鋭いピークが現われる。フーリエスペクトルの各ピークは、1つのデータ点で形成されることが好ましいが、実際には多数の点で形成されるため、微小な幅を有するものとなる。ここで、フーリエスペクトルの各ピークを形成するデータ点の集合体(凸形状部分)をクラスターという。
【0049】
フーリエスペクトルのピーク抽出においても、デジタルフィルタ処理と同様、種々のプロセッサを使用することができる。本実施の形態では、ハニング窓関数処理と同じプロセッサを使用し、1画面のデジタル画像データの処理時間は1002msecであった。
【0050】
(5)各ピークの情報(角度、周波数)を織物のテクスチャ特徴量(糸交差角度、経糸数および緯糸数)に対応させる
フーリエスペクトルのピーク抽出で得られた各クラスターにおいて、それを形成する偏角範囲におけるレベル総和の総和(すなわち、クラスターの面積に相当する)を数式6で算出する。
【0051】
【数5】
【0052】
Fcluster:各クラスターにおけるレベル総和の総和
n:クラスター番号
θ1:クラスターの始点の偏角
θ2:クラスターの終点の偏角
【0053】
算出結果のレベル総和の総和を降順に並べ替え、各クラスターにおける偏角の平均値(中央値)を数式7で算出する。
【0054】
【数6】
【0055】
θM:クラスターにおける偏角の平均値
n:クラスター番号
θ1:クラスターの始点の偏角
θ2:クラスターの終点の偏角
Δθ:θに関する計測幅
【0056】
表2にまとめて結果を示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2より、クラスター:5およびクラスター:2におけるθM=125.0°とθM=25.0°の方向にレベル総和の総和Fcluster(n)が大きいことがわかる。θ方向において、レベル総和の総和Fcluster(n)が大きいということは、その方向における空間周波数成分が大きいということであり、画像上で、その方向における濃淡変化が大きいことを示唆している。織物の経糸および緯糸方向は、糸部分と空隙部分の繰り返しの頻度が最も大きい部分であり、これは、画像の濃淡変化に対応する。上記理由から、レベル総和の総和における上位2位までのクラスターにおける偏角の平均値を、経糸方向または緯糸方向に対応させることが可能であると考えられる。したがって、経糸の角度θwarpは25°、緯糸の角度θweftは125°となる。なお、糸の交差角度θcrossingは数式8で計算される。
【0059】
【数7】
【0060】
θcrossing:糸の交差角度
θwarp:経糸の角度
θweft:緯糸の角度
【0061】
閾値処理されたフーリエスペクトルF'(u,v)と、経糸の角度θwarp、緯糸の角度θweftおよび糸の交差角度θcrossingの対応を図14に示す。ここで、フーリエスペクトルにおけるピーク位置は、視認性のために膨張処理を施してある。
【0062】
なお、本実施の形態では、クラスターのピーク値偏角をクラスターにおける偏角の中央値としたが、そのクラスターの偏角ごとの総和で重み付けした偏角の平均値(すなわちクラスターの重心の偏角)、またはそのクラスターのピーク(極大値)における偏角としてもよい。
【0063】
次に、経糸および緯糸における糸の本数を算出する。経糸の角度および緯糸の角度が既知であることから、その方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布を算出すればよい。計算式を数式9に示す。
【0064】
【数8】
【0065】
Δθ:θに関する計測幅
Δθ=0.2
【0066】
ある空間周波数rにおいて、レベル総和F'total(r)が大きいということは、画像上において、その空間周波数rに相当する規則的な濃淡の繰り返しが、頻繁に行われていることを示唆している。経糸の角度θwarp=25°における計算結果を図15に示す。
【0067】
図15より、ピークが多数存在し、クラスターを形成していることがわかる。各クラスターにおける空間周波数rの平均値を数式10で算出する。
【0068】
【数9】
【0069】
NM:クラスターにおける空間周波数の平均値
n:クラスター番号
r1:クラスターの始点の空間周波数
r2:クラスターの終点の空間周波数
Δr:rに関する計測幅
【0070】
結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
織物のモデル画像は、糸が有るか無いかの0、1のインパルス信号であり、インパルス信号をFFT処理した場合、得られるフーリエスペクトルは倍周波数にピークが観測される。したがって、同一角度に多数のピークが存在する。ここで、同一角度における最も小さいクラスターである、空間周波数rの平均値NM=64が求めるべき値であり、これが経糸における糸の本数に対応する。本実施の形態では、織物の大きさが1インチ×1インチなので、最小のNMがそのまま1インチあたりの糸の本数に相当する。
【0073】
次に、緯糸の角度θweft=125°においても上記と同様の処理を施す。結果を図16と表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4より、クラスター:1における空間周波数rの平均値NM=128が求めるべき値であり、これが緯糸における糸の本数に対応する。上記結果を表5にまとめる。
【0076】
【表5】
【0077】
表5より、織物のモデルの設計値を正確に捉えていることがわかる。また、織物の縦糸および緯糸が画像に対して傾きを有する場合でも、正確な測定が可能であることがわかる。また、糸交差角度が直角である場合はもちろん、90°でなく任意の角度であっても、糸交差角度および糸密度を正確に検出することができることがわかる。
【0078】
本実施の形態では、各ピークの情報(角度、周波数)を織物のテクスチャ特徴量(糸交差角度、経糸数および緯糸数)に対応させる処理も、ハニング窓関数処理およびFFT処理と同じプロセッサを使用した。
【0079】
本実施の形態では、表1に示す設計値の織物の線画モデルを用いて、糸交差角度および糸密度を正確に検出できることを示したが、線画モデルで検出できるので、本発明の方法は対象が織物に限られることがなく、フィルム、シートまたはプレートであってもよい。その場合、フィルム、シートまたはプレートの面に形成されたメッシュ状の線条同士の交差角度および線条の密度を検査する方法として使用することができる。たとえば、本発明の方法によって、ガラスプレートや透明樹脂プレート、透明樹脂フィルムなどの面に印刷またはエッチングでメッシュ状の線条が形成されたプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルタを検査することができる。また、生化学などで精密さが要求されるメッシュ状の分離フィルタや印刷用スクリーン紗、網戸などの検査にも適用可能である。
【実施例】
【0080】
実際の織物の検査応用例として、織物に無電解金属メッキを施して得られる、プラズマディスプレイの前面パネルに内蔵される電磁波防止用のメッシュ状織物(PDPメッシュ)を試料とした、糸交差角度および糸密度の検査試験を挙げる。表6に設計値を示す。本実施例は、縦の線条と横の線条とが直角に交差する場合である。
【0081】
【表6】
【0082】
図17にPDPメッシュの撮像画像PMを示す。画像サイズは2048×2048pixelである。視認性のために、図18に図17の拡大画像PM1を示す。
【0083】
図17に示したPDPメッシュの撮像画像のフーリエスペクトルを求めた結果PMfを図19に示す。
【0084】
図19のフーリエスペクトルに、閾値処理を施した結果PMf1を図20に示す。各偏角θにおけるフーリエスペクトルにあらわれたクラスターのレベル総和F'total(θ)の分布と、ナンバリングを施した結果を図21に示す。
【0085】
各クラスターにおいて、それを形成する偏角におけるレベル総和の総和F'cluster(n)を降順に並べ替え、各クラスターにおける偏角の平均値θM(n)を算出する。表7にまとめて結果を示す。
【0086】
【表7】
【0087】
表7より、クラスター:5およびクラスター:2におけるθM=123.7°とθM=33.9°の方向にレベル総和の総和Fcluster(n)が大きいことがわかる。したがって、経糸の角度はθwarp=33.9°、緯糸の角度はθweft=123.7°であることがわかる。なお、糸の交差角度は数式7により、θcrossing=89.9°と計算される。閾値処理されたフーリエスペクトルF'(u,v)と、経糸の角度θwarp、緯糸の角度θweftおよび糸の交差角度θcrossingの対応を図22に示す。ここで、フーリエスペクトルにおけるピーク位置は、視認性のために膨張処理を施してある。
【0088】
次に、経糸および緯糸における糸の本数を算出する。経糸の角度および緯糸の角度、それぞれの方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)の分布を算出する。
【0089】
経糸の角度θwarp=33.9°における計算結果を図23と表8に示す。緯糸の角度θweft=123.7°における計算結果を図24と表9に示す。
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
ここで、数式11を用いて、NMを1インチあたりの糸の本数に換算する。
【0093】
Nin=NM/S (数式11)
ここで、
Nin:1インチあたりの糸の本数
S:PDPメッシュのサイズ
である。
【0094】
PDPメッシュ外観検査の結果を表10に示す。
【0095】
【表10】
【0096】
表10より、経糸および緯糸の本数は設計値とおりに製造されていることがわかる。また、糸の交差角度は89.9°であり、設計値に対して0.1°の差があるが、許容範囲、たとえば1.0°に対して充分小さく、糸交差角度も設計値とおりに製造されていることがわかる。本検査装置の角度分解能は0.1°であることから、本実施例の場合89.9°〜90.1°が許容値の最小値である。
【0097】
また、経糸を基準とすれば、PDPメッシュは画像に対して33.9°の傾きを有してバックグランドに設置されたことがわかる。このことは、実際のオンライン検査において、試料の厳密な位置および角度合わせをしなくても、正確な測定値が得られることを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】織物の1例を示す写真である。
【図2】実施の形態における、織物の糸交差角度および糸密度検査装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における、カメラ校正用ターゲットの例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における、織物のモデル画像の例を示す図である。
【図5】窓関数の例を表わすグラフである。
【図6】ハニング窓関数処理前のデジタル画像の例を示す図である。
【図7】ハニング窓関数処理後のデジタル画像の例を示す図である。
【図8】窓関数処理を施さない通常のFFT結果の例である。
【図9】ハニング窓関数を施したFFT結果の例である。
【図10】フーリエスペクトルと実際の画像の関係を示す図である。
【図11】フーリエスペクトルの例を示す図である。
【図12】図11のフーリエスペクトルに閾値処理を施した結果の例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における各偏角θにおけるレベル総和F'total(θ)の分布の例を示すグラフである。
【図14】フーリエスペクトルF'(u,v)と、経糸の角度θwarp、緯糸の角度θweftおよび糸の交差角度θcrossingの対応である。
【図15】本発明の実施の形態の例において、25°方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布である。
【図16】本発明の実施の形態の例において、125°方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布である。
【図17】本発明の実施例のPDPメッシュの原画像である。
【図18】図17の拡大図である。
【図19】本発明の実施例におけるフーリエスペクトルを表す図である。
【図20】図19のフーリエスペクトルに閾値処理を施した結果を示す図である。
【図21】本発明の実施例において、各偏角θにおけるレベル総和F'total(θ)の分布を示すグラフである。
【図22】本発明の実施例において、フーリエスペクトルF'(u,v)と、経糸の角度θwarp、緯糸の角度θweftおよび糸の交差角度θcrossingの対応である。
【図23】本発明の実施例において、33.9°方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布である。
【図24】本発明の実施例において、123.7°方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面的に平行に配列されて互いに交差する、多数の縦の線条と多数の横の線条とが交差する角度(線条交差角度)、および多数の縦の線条と多数の横の線条それぞれの密度(線条密度)を、自動的に検査する方法および装置に関する。さらに詳しくは、製造過程における織物、または製品としての織物において、経糸と緯糸とが交差する角度(糸交差角度)、および経糸と緯糸それぞれの単位長さあたりの糸の本数(糸密度)を自動的に検査する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに実質的に平行に配列された所定の数の経糸と、該多数の経糸と一定の角度で交差する互いに実質的に平行に配列された所定の数の緯糸とからなる織物の糸交差角度を検査する場合、理想状態が刻まれたフィルム上に織物を設置し、理想状態を投影させることで測定している。また糸密度は、デンシメーターを用いて1インチ当たりの経糸数および緯糸数を測定している。どちらも肉眼による目視評価であることから測定のバラつきが大きく、測定値は信頼性に乏しい。
【0003】
また、プラズマディスプレイの前面パネルに内蔵される電磁波シールドフィルタのようにメッシュ状の線条が形成された面状体全般について、メッシュ状の線条を構成する縦線と横線の交差角度および縦線と横線それぞれの線密度を検査することが必要であるが、織物と同様に目視による評価にたよっている。
【0004】
このような問題に対し、検出精度を向上させる目的で、様々な方策が提案されている。例えば特許文献1には、投光手段により織布に投射した光をCCD素子にて撮像し、これによって得られた画像データをもとに織布情報(糸の密度、糸の傾き、織組織等)を算出し、この織布情報から得られた糸ピッチ幅を有する領域と、この糸ピッチ幅の整数倍離れた位置の他の領域との画像データ全体にわたる相関値に対して、設定されたしきい値との比較を行うことにより、織組織の異なる領域を経糸、緯糸の区別なく、同一光学条件で全幅に対して高精度に検出することが可能な織布の検反装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、フーリエ変換を応用した布目曲がり検出装置が開示されている。これは、織物の柄を撮像し、撮像装置から出力される画像信号をフーリエ変換して柄の方向を示す柄方向信号と基準となる柄方向信号を比較し、布目曲がりを検知する装置である。
【0006】
【特許文献1】特許第2800726号公報
【特許文献2】特許第2909192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の糸密度の算出手法を以下に述べる。まず、検査対象となる糸に対して垂直方向に矩形領域の短軸を設定する。次に、この短軸の幅の最も小さい値(同一光学条件において撮像される織布画像のなかで最も検査対象糸密度の高い糸のピッチサイズに相当する画素数)から順に比較領域(異なる領域に設定された同じ大きさの2つの比較領域)内の画像データの相関値を求める。求められた相関値の中で最大値となる短軸の幅が糸密度となる。ここで、矩形領域の短軸方向または長軸方向が糸の主軸方向と傾きをなす場合、検査精度が低下するという問題があった。このため、矩形領域を糸の主軸方向に合わせる補正が必要であった。また、特許文献2は布目まがりを検出する装置であって、柄の周期性を算出することができず、糸交差角度および糸密度を検出することは示されていない。さらに、いずれの特許文献においても、基準状態との比較で示す相対値評価であり、基準状態が存在しない場合には検査が不可能である。そのため、基準状態を設定し、また、基準状態に沿って検査対象である織布を設置することが必要であった。いずれもフーリエ変換を応用しているが、フーリエスペクトルの先鋭性を向上させるための処理(デジタルフィルタ処理)を施していないため、そこから得られる周波数情報の信頼性に乏しく、検査精度の低下を招く。
【0008】
上述のとおり、従来の技術では、糸交差角度の異なる多数の織物を、検査試料の設置方向および光学条件に左右されず同一の測定条件で、糸交差角度および糸密度を全幅にわたって異常を高精度に検出することは困難であった。
【0009】
本発明は、平面的に平行に配列されて互いに交差する、多数の縦の線条と多数の横の線条とが交差する角度、および多数の縦の線条と多数の横の線条それぞれの密度を、自動的に検査する方法および装置を提供することを目的とする。本発明では、検査対象となる線条として、織物のみならず印刷またはエッチングによってメッシュ状の線条が形成されたフィルム、シート、スクリーン、プレートなどが含まれる。具体的には、たとえばプラズマディスプレイの前面パネルに内蔵される電磁波シールドフィルタや、生化学などで精密さが要求されるメッシュ状の分離フィルタ、印刷用スクリーン紗、網戸などを挙げることができる。
【0010】
さらに詳しくは、本発明は、糸交差角度の異なる多数の織物において、検査試料の設置角度および光学条件に左右されない同一の測定条件で、糸交差角度および糸密度を同時に、高速に、かつ高精度に検出することができる織物における糸交差角度および糸密度の自動検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の線条検査方法は、実質的に平行に平面的に配列された多数の縦の線条と、該縦の線条が配列される平面に、前記多数の縦の線条と交差して、実質的に平行に設けられた多数の横の線条とを含む面状体の線条を検査する方法であって、
(a)前記面状体を撮像して、該撮像された画像を縦横の配列に区切った画素ごとに画像の明るさを数値で表わしたデジタル画像データを得る工程と、
(b)前記デジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施す工程と、
(c)前記工程(b)でデジタルフィルタ処理が施された画像データにフーリエ変換を施してフーリエスペクトルを得る工程と、
(d)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条とが交差する角度すなわち線条交差角度を算出する線条交差角度算出工程と、
(e)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数すなわち線条密度を算出する線条密度算出工程と
を有し、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度、および縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を検出することを特徴とする。
【0012】
本発明の線条検査方法は、前記面状体が織物であり、前記縦の線条が経糸であり、前記横の線条が緯糸である場合を含む。
【0013】
また、前記面状体がフィルムまたはシートであってもよく、前記縦の線条と横の線条が、当該フィルムまたはシートの面に形成される線条であってもよい。
【0014】
また、前記面状体がプレートであってもよく、前記縦の線条と横の線条が、当該プレートの面に形成される線条であってもよい。
【0015】
本発明の線条検査方法において、前記デジタルフィルタ処理が、ハニング窓関数処理であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の線条検査方法において、線条交差角度を算出する工程は、前記フーリエスペクトルを平面極座標上に表わして、該極座標の偏角ごとに動径方向のフーリエスペクトル値の総和を計算し、該総和のピーク値を構成するクラスターの面積が最大であるピーク値偏角と、該総和のピーク値を構成するクラスターの面積が第2の大きさであるピーク値偏角との差を、線条交差角度として算出することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の線条検査方法において、線条密度を算出する工程は、前記総和のピーク値を構成するクラスターの面積が最大であるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径と、前記総和のピーク値を構成するクラスターの面積が第2の大きさであるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径とから、縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の線条検査装置は、実質的に平行に平面的に配列された多数の縦の線条と、該縦の線条が配列される平面に、前記多数の縦の線条と交差して、実質的に平行に設けられた多数の横の線条とを含む面状体の線条を検査する装置であって、
(a)前記面状体を撮像して、該撮像された画像を縦横の配列に区切った画素ごとに画像の明るさを数値で表わしたデジタル画像データを得る手段と、
(b)前記デジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施す手段と、
(c)前記手段(b)でデジタルフィルタ処理が施された画像データにフーリエ変換を施してフーリエスペクトルを得る手段と、
(d)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条とが交差する角度すなわち線条交差角度を算出する線条交差角度算出手段と、
(e)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数すなわち線条密度を算出する線条密度算出手段と
を有し、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度、および縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を検出することを特徴とする。
【0019】
本発明において線条密度とは、単位長さあたりの線条の本数をいう。
【0020】
本発明では、極座標において、動径と極軸(X軸の正の部分に相当する)とのなす角度を偏角という。また、本発明ではグラフにおいて1つのピーク(極大値)を形成する凸形状部分をクラスターという。本発明の場合、動径方向のスペクトルの総和が偏角に対して連続して0でない値である、1群のデータが1つのクラスターを構成する。
【0021】
なお、前記総和のピーク値を構成するクラスターのピーク値偏角は、そのクラスターにおける偏角の中央値、そのクラスターの偏角ごとの総和で重み付けした偏角の平均値(すなわちクラスターの重心の偏角)、またはそのクラスターのピーク(極大値)における偏角である。
【0022】
本発明の方法を、たとえば織物に適用することによって、検査試料と検査装置間の精密な角度設定を行わなくても、任意の糸交差角度を有する織物の、糸交差角度と糸密度を同時に、高速かつ高精度に計測することができるので、織物の製造工程において、自動的に織物の糸交差角度および糸密度を設計値と比較し、織物が設計値どおりに製造されているかどうか(公差範囲に入るかどうか)を判定することができる。また、その判定結果を表示することによって作業者に検査対象の織物の状態を知らせて、製造装置の制御に役立てることができる。たとえば、検査対象が設計値より密度が粗い場合、密度を細かくするように製造装置の設定を変更する。さらに、その判定結果によって公差範囲に入らない製品を自動的に選別することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フーリエスペクトルの特徴を生かすことで、検査試料と検査装置間の精密な角度設定を行わなくても、線条の交差角度と線条密度を同時に、高速かつ高精度に計測することができる。また、任意の線条交差角度を有する線条でも、特別な設定をすることなく自動的に線条交差角度と線条密度を検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の線条の検査装置の実施の形態について、織物を例にとって、線条交差角度および線条密度が高精度に検査できることを図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は織物の一例を示す拡大写真である。図1に示すように織物は、経糸Vと緯糸Hがそれぞれ一定の密度で平行に配列され、相互に一定の角度で交差して織られている。
【0026】
図2に本発明の織物の糸交差角度および糸密度高精度検査装置の構成図を示す。光源1から照明される光は、織物2とバックグラウンド3から反射され、カメラレンズ4で集光されてデジタルスチルカメラ5内の受光素子に結像される。受光素子は、結ばれた像から織物2の画像信号に変換する。変換された画像信号はデジタル画像データに生成され、デジタルスチルカメラ5から演算装置(図示せず)に送られる。演算装置では、デジタル画像データを処理して、糸交差角度および糸密度を検出し、結果を表示装置(図示せず)に表示する。または、検出した糸交差角度および糸密度を、織物製品ごとに予め決められた規格値と比較し、検査対象の織物の糸交差角度または糸密度が公差範囲に入るかどうかを判定し、判定した結果を表示したり、糸交差角度または糸密度が公差範囲に入らない場合は、制御装置(図示せず)に指令して、検査対象の織物を選別する。
【0027】
光源1には、標準の光D65の常用光源である人工太陽照明灯に、D65近似フィルタと拡散照明フィルタを装着したものを用いる。拡散照明フィルタを用いて、照明の均一性を目指しているが、若干の照明ムラが発生する。これを防ぐために、反射率が可視光域にわたり99.9%である均一な拡散反射素材である標準白色板(スペクトラロン、Labsphere社製)を用いる。以下に、照明ムラと暗電流の影響を打ち消す方法を示す。
【0028】
受光素子は一般的に、入射光がゼロの状態でもある程度の感度を有している。これを暗電流と呼ぶ。レンズにキャップを被せ、全く光が入射しない状態で撮影し、暗電流画像における受光素子の読取り値をIB(x,y)とする。次に、標準白色板の撮像画像における受光素子の読取り値をIW(x,y)とし、試料の撮像画像における受光素子の読取り値をIT(x,y)とする。最後に、数式1から、照明ムラおよび暗電流補正された試料の撮像画像IC(x,y)が得られる。
IC(x,y) = {IT(x,y)−IB(x,y)}/{IW(x,y)−IB(x,y)}×255 (数式1)
【0029】
ここで、極力暗電流を防ぐために、デジタルスチルカメラ5には、冷却デジタルスチルカメラを採用する。受光素子はペルチェ素子により冷却され、有効画素は2048×2048 pixelである。また、デジタルスチルカメラ5は、パーソナルコンピュータとUSBにより接続され制御される。ダイナミックレンジは8bitである。受光素子の分光感度特性は500nm付近に感度のピークを有している。
【0030】
カメラレンズ4の拡大倍率は、織物が最も細やかなレベルを基準に決定する。デジタルスチルカメラ5の撮影位置の校正および画素と実サイズの測定には、図3に示すカメラ校正用ターゲットT(Target Grid Distortion、Edmund Industrial Optics社製)を使用する。カメラ校正用ターゲットのサイズは5.1×5.1cmである。したがって、本検査装置の校正における検査対象試料の最大サイズは5.1×5.1cmとなる。
【0031】
デジタルスチルカメラ5で撮像されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、得られた2次元デジタル信号に窓関数(ハニング窓)を施し、フーリエ変換を施し、フーリエスペクトルを得る。窓関数を施すことで、より鋭いフーリエスペクトルのピークを得ることができる。
【0032】
織物は、経糸数および緯糸数が空間的に規則正しく配列されており、周期性を有する。このことから、織物の2次元空間的なテクスチャ特徴を抽出すれば、糸交差角度、経糸数および緯糸数を数学的に求めることが可能である。織物におけるテクスチャ特徴の抽出アルゴリズムを以下に示す。
(1)デジタルスチルカメラから織物のデジタル画像データを取得する
(2)デジタル画像データに窓関数処理を施す
(3)窓関数処理されたデジタル画像データを高速フーリエ変換(以下、FFT:Fast Fourier Transformとする)し、フーリエスペクトルを取得する
(4)フーリエスペクトルのピークを抽出する
(5)各ピークの情報(角度、周波数)を織物のテクスチャ特徴量(糸交差角度、経糸数および緯糸数)に対応させる
【0033】
つぎに、前記アルゴリズムの各工程を順を追って、詳細に説明する。
(1)デジタルスチルカメラから織物のデジタル画像データを取得する
ここで、検査装置の精度を示すために標準状態の織物を線画でモデル化する。表1に設計値を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
図4に表1に示す織物Fの線画モデルの画像を示す。本実施の形態は、縦の線条と横の線条との交差する角度αが直角でない場合である。
【0036】
(2)デジタル画像データに窓関数処理を施す
得られたデジタル画像データに窓関数を施すことで、よりピークの鋭いフーリエスペクトルを得ることができる。本発明において、適用できる窓関数としては、方形波窓、ハミング窓、ブラックマン窓、ハニング窓などがある。また、窓関数以外に、ハイパスフィルタなどのエッジ検出(境界検出)をデジタル画像データに施してもよい。本発明においては、デジタルフィルタ処理としてハニング窓が最も効果的であった。ハニング窓関数を数式2に示し、図5に窓関数のグラフを示す。窓関数は、例えば1次元のデジタル信号の場合、中心部の信号強度を残し、両端の信号の強度を減衰させる。これにより両端で発生する信号の不連続性を抑え、よりノイズの少ないフーリエスペクトルを得ることができる。画像は2次元信号であるので、x軸方向に窓関数を処理し、その処理結果に対してy軸方向に窓関数を施すような2段階の処理を施す。図6にハニング窓関数を施す前の画像P1を示し、図7にハニング窓関数を施した後の画像P2を示す。次に、図8に通常のFFT結果P3を示し、図9にハニング窓関数を施したFFT結果P4を示す。図8および9より明らかなように、ハニング窓関数を施した結果はフーリエスペクトルのピークが明確に表れているが、施していない結果は、ピークが不明瞭でぼやけていることがわかる。このフーリエスペクトルのピークの先鋭度は、糸交差角度および糸密度の検出精度を左右する最も重要な指標の一つである。ハニング窓関数が検査精度の向上に及ぼす影響は、本実施の形態における検査系全体の誤差要因の12%である。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、数式2におけるMは本実施の形態の場合、x軸またはy軸の総画素数512(pixel)であり、mは画素の番号である。数式2のW(m)を画素番号mの画像データに乗じて、ハニング窓関数処理画像データを得る。
【0039】
デジタルフィルタ処理は、汎用マイクロプロセッサ、汎用マイコン、カスタムLSI、またはより高速にはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)などで処理することができる。本実施の形態では、汎用マイクロプロセッサ(パーソナルコンピュータ)Pentium(登録商標)III(動作周波数800MHz)を使用し、1つのデジタル画像データのハニング窓関数処理に要した時間は160msecであった。
【0040】
(3)窓関数処理されたデジタル画像データをFFTし、フーリエスペクトルを取得する
画像は平面であることから、信号はx(i,j)の2次元になる。周波数も水平方向と垂直方向の2つの周波数を有する。また、画像の場合、周波数の配置は、中心が直流分で、右端がfx/2、左端が−fx/2という形式にすることが常套とされている。水平周波数をu、垂直周波数をvとした際の2次元的な周波数成分の分布がフーリエスペクトル(2次元フーリエスペクトル)である。フーリエスペクトルと実際の画像の関係を図10に示す。原点が直流成分で、画像が一様に真っ白な画像に相当する。縞模様が細かくなっていくにしたがって、周波数が高くなる。また、斜め方向の縞は、図のように水平周波数と垂直周波数の両方の成分を有するプロットになる。フーリエスペクトルの計算には、数式3に示す2次元のFFTを使用する。
【0041】
【数2】
【0042】
上記FFTを用いて、図4に示す織物のモデル画像のフーリエスペクトルを求めた結果Pfを図11に示す。
【0043】
FFTにおいても、デジタルフィルタ処理と同様、種々のプロセッサを使用することができる。本実施の形態では、ハニング窓関数処理と同じプロセッサを使用し、1画面のデジタル画像データの処理時間は611msecであった。
【0044】
(4)フーリエスペクトルのピークを抽出する
図11のフーリエスペクトルにおいて、上位25位(経験的に定めた)までのレベルの周波数座標を残し、残りをレベル0とするような数式4に示す閾値処理を施す。
【0045】
【数3】
【0046】
ここで、F(u,v)およびF'(u,v)は、それぞれ、処理前および処理後のフーリエスペクトル座標(u,v)におけるレベルを示し、tは閾値を示す。閾値処理の結果Pf1を図12に示す。閾値処理されたフーリエスペクトルF'(u,v)を、原点を中心に、偏角θと動径r(rは空間周波数に対応)で表される極座標F'(θ,r)に変換する。次に、各偏角におけるフーリエスペクトルのレベル総和を数式5で算出する。
【0047】
【数4】
【0048】
ここで、rmaxは空間周波数rに関して計測する最大値で、画像サイズの半分とする。また、F'(θ,r)は原点に対して対称であることから、θの値域は0.0°〜180.0°とする。角度分解能は0.1°である。各偏角θにおけるレベル総和F'total(θ)の分布を図13に示す。図13に示すとおり、レベル総和分布にはいくつかの鋭いピークが現われる。フーリエスペクトルの各ピークは、1つのデータ点で形成されることが好ましいが、実際には多数の点で形成されるため、微小な幅を有するものとなる。ここで、フーリエスペクトルの各ピークを形成するデータ点の集合体(凸形状部分)をクラスターという。
【0049】
フーリエスペクトルのピーク抽出においても、デジタルフィルタ処理と同様、種々のプロセッサを使用することができる。本実施の形態では、ハニング窓関数処理と同じプロセッサを使用し、1画面のデジタル画像データの処理時間は1002msecであった。
【0050】
(5)各ピークの情報(角度、周波数)を織物のテクスチャ特徴量(糸交差角度、経糸数および緯糸数)に対応させる
フーリエスペクトルのピーク抽出で得られた各クラスターにおいて、それを形成する偏角範囲におけるレベル総和の総和(すなわち、クラスターの面積に相当する)を数式6で算出する。
【0051】
【数5】
【0052】
Fcluster:各クラスターにおけるレベル総和の総和
n:クラスター番号
θ1:クラスターの始点の偏角
θ2:クラスターの終点の偏角
【0053】
算出結果のレベル総和の総和を降順に並べ替え、各クラスターにおける偏角の平均値(中央値)を数式7で算出する。
【0054】
【数6】
【0055】
θM:クラスターにおける偏角の平均値
n:クラスター番号
θ1:クラスターの始点の偏角
θ2:クラスターの終点の偏角
Δθ:θに関する計測幅
【0056】
表2にまとめて結果を示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2より、クラスター:5およびクラスター:2におけるθM=125.0°とθM=25.0°の方向にレベル総和の総和Fcluster(n)が大きいことがわかる。θ方向において、レベル総和の総和Fcluster(n)が大きいということは、その方向における空間周波数成分が大きいということであり、画像上で、その方向における濃淡変化が大きいことを示唆している。織物の経糸および緯糸方向は、糸部分と空隙部分の繰り返しの頻度が最も大きい部分であり、これは、画像の濃淡変化に対応する。上記理由から、レベル総和の総和における上位2位までのクラスターにおける偏角の平均値を、経糸方向または緯糸方向に対応させることが可能であると考えられる。したがって、経糸の角度θwarpは25°、緯糸の角度θweftは125°となる。なお、糸の交差角度θcrossingは数式8で計算される。
【0059】
【数7】
【0060】
θcrossing:糸の交差角度
θwarp:経糸の角度
θweft:緯糸の角度
【0061】
閾値処理されたフーリエスペクトルF'(u,v)と、経糸の角度θwarp、緯糸の角度θweftおよび糸の交差角度θcrossingの対応を図14に示す。ここで、フーリエスペクトルにおけるピーク位置は、視認性のために膨張処理を施してある。
【0062】
なお、本実施の形態では、クラスターのピーク値偏角をクラスターにおける偏角の中央値としたが、そのクラスターの偏角ごとの総和で重み付けした偏角の平均値(すなわちクラスターの重心の偏角)、またはそのクラスターのピーク(極大値)における偏角としてもよい。
【0063】
次に、経糸および緯糸における糸の本数を算出する。経糸の角度および緯糸の角度が既知であることから、その方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布を算出すればよい。計算式を数式9に示す。
【0064】
【数8】
【0065】
Δθ:θに関する計測幅
Δθ=0.2
【0066】
ある空間周波数rにおいて、レベル総和F'total(r)が大きいということは、画像上において、その空間周波数rに相当する規則的な濃淡の繰り返しが、頻繁に行われていることを示唆している。経糸の角度θwarp=25°における計算結果を図15に示す。
【0067】
図15より、ピークが多数存在し、クラスターを形成していることがわかる。各クラスターにおける空間周波数rの平均値を数式10で算出する。
【0068】
【数9】
【0069】
NM:クラスターにおける空間周波数の平均値
n:クラスター番号
r1:クラスターの始点の空間周波数
r2:クラスターの終点の空間周波数
Δr:rに関する計測幅
【0070】
結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
織物のモデル画像は、糸が有るか無いかの0、1のインパルス信号であり、インパルス信号をFFT処理した場合、得られるフーリエスペクトルは倍周波数にピークが観測される。したがって、同一角度に多数のピークが存在する。ここで、同一角度における最も小さいクラスターである、空間周波数rの平均値NM=64が求めるべき値であり、これが経糸における糸の本数に対応する。本実施の形態では、織物の大きさが1インチ×1インチなので、最小のNMがそのまま1インチあたりの糸の本数に相当する。
【0073】
次に、緯糸の角度θweft=125°においても上記と同様の処理を施す。結果を図16と表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4より、クラスター:1における空間周波数rの平均値NM=128が求めるべき値であり、これが緯糸における糸の本数に対応する。上記結果を表5にまとめる。
【0076】
【表5】
【0077】
表5より、織物のモデルの設計値を正確に捉えていることがわかる。また、織物の縦糸および緯糸が画像に対して傾きを有する場合でも、正確な測定が可能であることがわかる。また、糸交差角度が直角である場合はもちろん、90°でなく任意の角度であっても、糸交差角度および糸密度を正確に検出することができることがわかる。
【0078】
本実施の形態では、各ピークの情報(角度、周波数)を織物のテクスチャ特徴量(糸交差角度、経糸数および緯糸数)に対応させる処理も、ハニング窓関数処理およびFFT処理と同じプロセッサを使用した。
【0079】
本実施の形態では、表1に示す設計値の織物の線画モデルを用いて、糸交差角度および糸密度を正確に検出できることを示したが、線画モデルで検出できるので、本発明の方法は対象が織物に限られることがなく、フィルム、シートまたはプレートであってもよい。その場合、フィルム、シートまたはプレートの面に形成されたメッシュ状の線条同士の交差角度および線条の密度を検査する方法として使用することができる。たとえば、本発明の方法によって、ガラスプレートや透明樹脂プレート、透明樹脂フィルムなどの面に印刷またはエッチングでメッシュ状の線条が形成されたプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルタを検査することができる。また、生化学などで精密さが要求されるメッシュ状の分離フィルタや印刷用スクリーン紗、網戸などの検査にも適用可能である。
【実施例】
【0080】
実際の織物の検査応用例として、織物に無電解金属メッキを施して得られる、プラズマディスプレイの前面パネルに内蔵される電磁波防止用のメッシュ状織物(PDPメッシュ)を試料とした、糸交差角度および糸密度の検査試験を挙げる。表6に設計値を示す。本実施例は、縦の線条と横の線条とが直角に交差する場合である。
【0081】
【表6】
【0082】
図17にPDPメッシュの撮像画像PMを示す。画像サイズは2048×2048pixelである。視認性のために、図18に図17の拡大画像PM1を示す。
【0083】
図17に示したPDPメッシュの撮像画像のフーリエスペクトルを求めた結果PMfを図19に示す。
【0084】
図19のフーリエスペクトルに、閾値処理を施した結果PMf1を図20に示す。各偏角θにおけるフーリエスペクトルにあらわれたクラスターのレベル総和F'total(θ)の分布と、ナンバリングを施した結果を図21に示す。
【0085】
各クラスターにおいて、それを形成する偏角におけるレベル総和の総和F'cluster(n)を降順に並べ替え、各クラスターにおける偏角の平均値θM(n)を算出する。表7にまとめて結果を示す。
【0086】
【表7】
【0087】
表7より、クラスター:5およびクラスター:2におけるθM=123.7°とθM=33.9°の方向にレベル総和の総和Fcluster(n)が大きいことがわかる。したがって、経糸の角度はθwarp=33.9°、緯糸の角度はθweft=123.7°であることがわかる。なお、糸の交差角度は数式7により、θcrossing=89.9°と計算される。閾値処理されたフーリエスペクトルF'(u,v)と、経糸の角度θwarp、緯糸の角度θweftおよび糸の交差角度θcrossingの対応を図22に示す。ここで、フーリエスペクトルにおけるピーク位置は、視認性のために膨張処理を施してある。
【0088】
次に、経糸および緯糸における糸の本数を算出する。経糸の角度および緯糸の角度、それぞれの方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)の分布を算出する。
【0089】
経糸の角度θwarp=33.9°における計算結果を図23と表8に示す。緯糸の角度θweft=123.7°における計算結果を図24と表9に示す。
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
ここで、数式11を用いて、NMを1インチあたりの糸の本数に換算する。
【0093】
Nin=NM/S (数式11)
ここで、
Nin:1インチあたりの糸の本数
S:PDPメッシュのサイズ
である。
【0094】
PDPメッシュ外観検査の結果を表10に示す。
【0095】
【表10】
【0096】
表10より、経糸および緯糸の本数は設計値とおりに製造されていることがわかる。また、糸の交差角度は89.9°であり、設計値に対して0.1°の差があるが、許容範囲、たとえば1.0°に対して充分小さく、糸交差角度も設計値とおりに製造されていることがわかる。本検査装置の角度分解能は0.1°であることから、本実施例の場合89.9°〜90.1°が許容値の最小値である。
【0097】
また、経糸を基準とすれば、PDPメッシュは画像に対して33.9°の傾きを有してバックグランドに設置されたことがわかる。このことは、実際のオンライン検査において、試料の厳密な位置および角度合わせをしなくても、正確な測定値が得られることを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】織物の1例を示す写真である。
【図2】実施の形態における、織物の糸交差角度および糸密度検査装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における、カメラ校正用ターゲットの例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における、織物のモデル画像の例を示す図である。
【図5】窓関数の例を表わすグラフである。
【図6】ハニング窓関数処理前のデジタル画像の例を示す図である。
【図7】ハニング窓関数処理後のデジタル画像の例を示す図である。
【図8】窓関数処理を施さない通常のFFT結果の例である。
【図9】ハニング窓関数を施したFFT結果の例である。
【図10】フーリエスペクトルと実際の画像の関係を示す図である。
【図11】フーリエスペクトルの例を示す図である。
【図12】図11のフーリエスペクトルに閾値処理を施した結果の例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における各偏角θにおけるレベル総和F'total(θ)の分布の例を示すグラフである。
【図14】フーリエスペクトルF'(u,v)と、経糸の角度θwarp、緯糸の角度θweftおよび糸の交差角度θcrossingの対応である。
【図15】本発明の実施の形態の例において、25°方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布である。
【図16】本発明の実施の形態の例において、125°方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布である。
【図17】本発明の実施例のPDPメッシュの原画像である。
【図18】図17の拡大図である。
【図19】本発明の実施例におけるフーリエスペクトルを表す図である。
【図20】図19のフーリエスペクトルに閾値処理を施した結果を示す図である。
【図21】本発明の実施例において、各偏角θにおけるレベル総和F'total(θ)の分布を示すグラフである。
【図22】本発明の実施例において、フーリエスペクトルF'(u,v)と、経糸の角度θwarp、緯糸の角度θweftおよび糸の交差角度θcrossingの対応である。
【図23】本発明の実施例において、33.9°方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布である。
【図24】本発明の実施例において、123.7°方向における空間周波数rに関するフーリエスペクトルのレベル総和F'total(r)分布である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に平行に平面的に配列された多数の縦の線条と、該縦の線条が配列される平面に、前記多数の縦の線条と交差して、実質的に平行に設けられた多数の横の線条とを含む面状体の線条を検査する方法であって、
(a)前記面状体を撮像して、該撮像された画像を縦横の配列に区切った画素ごとに画像の明るさを数値で表わしたデジタル画像データを得る工程と、
(b)前記デジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施す工程と、
(c)前記工程(b)でデジタルフィルタ処理が施された画像データにフーリエ変換を施してフーリエスペクトルを得る工程と、
(d)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条とが交差する角度すなわち線条交差角度を算出する線条交差角度算出工程と、
(e)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数すなわち線条密度を算出する線条密度算出工程と
を有し、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度、および縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を検出する線条検査方法。
【請求項2】
前記多数の縦の線条と多数の横の線条とが直角に交差していない前記面状体の線条を検査する請求項1記載の線条検査方法。
【請求項3】
前記多数の縦の線条と多数の横の線条とが直角に交差している前記面状体の線条を検査する請求項1記載の線条検査方法。
【請求項4】
前記面状体が織物であり、前記縦の線条が経糸であり、前記横の線条が緯糸である請求項1記載の線条検査方法。
【請求項5】
前記面状体がフィルムまたはシートであり、前記縦の線条と横の線条が、当該フィルムまたはシートの面に形成される線条である請求項1記載の線条検査方法。
【請求項6】
前記面状体がプレートであり、前記縦の線条と横の線条が、当該プレートの面に形成される線条である請求項1記載の線条検査方法。
【請求項7】
前記デジタルフィルタ処理が、ハニング窓関数処理である請求項1、2、3、4、5または6記載の線条検査方法。
【請求項8】
前記フーリエスペクトルから前記縦の線条と横の線条との線条交差角度を算出する工程が、前記フーリエスペクトルを平面極座標上に表わして、該極座標の偏角ごとに動径方向のフーリエスペクトル値の総和を計算し、該総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が最大であるピーク値偏角と、該総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が第2の大きさであるピーク値偏角との差を、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度として算出する請求項1、2、3、4、5、6または7記載の線条検査方法。
【請求項9】
前記フーリエスペクトルから前記縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出する工程が、前記総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が最大であるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径と、前記総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が第2の大きさであるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径とから、前記縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出する請求項8記載の線条検査方法。
【請求項10】
実質的に平行に平面的に配列された多数の縦の線条と、該縦の線条が配列される平面に、前記多数の縦の線条と交差して、実質的に平行に設けられた多数の横の線条とを含む面状体の線条を検査する装置であって、
(a)前記面状体を撮像して、該撮像された画像を縦横の配列に区切った画素ごとに画像の明るさを数値で表わしたデジタル画像データを得る手段と、
(b)前記デジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施す手段と、
(c)前記手段(b)でデジタルフィルタ処理が施された画像データにフーリエ変換を施してフーリエスペクトルを得る手段と、
(d)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条とが交差する角度すなわち線条交差角度を算出する線条交差角度算出手段と、
(e)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数すなわち線条密度を算出する線条密度算出手段と
を有し、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度、および縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を検出する線条検査装置。
【請求項11】
前記面状体が織物であり、前記縦の線条が経糸であり、前記横の線条が緯糸である請求項10記載の線条検査装置。
【請求項12】
前記面状体がフィルムまたはシートであり、前記縦の線条と横の線条が、当該フィルムまたはシートの面に形成される請求項10記載の線条検査装置。
【請求項13】
前記面状体がプレートであり、前記縦の線条と横の線条が、当該プレートの面に形成される請求項10記載の線条検査装置。
【請求項14】
前記デジタルフィルタ処理が、ハニング窓関数処理である請求項10、11、12または13記載の線条検査装置。
【請求項15】
前記フーリエスペクトルから前記縦の線条と横の線条との線条交差角度を算出する線条交差角度演算手段が、前記フーリエスペクトルを平面極座標上に表わして、該極座標の偏角ごとに動径方向のフーリエスペクトル値の総和を計算し、該総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が最大であるピーク値偏角と、該総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が第2の大きさであるピーク値偏角との差を、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度として算出する請求項10、11、12または13記載の線条検査装置。
【請求項16】
前記フーリエスペクトルから前記縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出する線条密度演算手段が、前記総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が最大であるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径と、前記総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が第2の大きさであるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径とから、前記縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出する請求項14記載の線条検査装置。
【請求項1】
実質的に平行に平面的に配列された多数の縦の線条と、該縦の線条が配列される平面に、前記多数の縦の線条と交差して、実質的に平行に設けられた多数の横の線条とを含む面状体の線条を検査する方法であって、
(a)前記面状体を撮像して、該撮像された画像を縦横の配列に区切った画素ごとに画像の明るさを数値で表わしたデジタル画像データを得る工程と、
(b)前記デジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施す工程と、
(c)前記工程(b)でデジタルフィルタ処理が施された画像データにフーリエ変換を施してフーリエスペクトルを得る工程と、
(d)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条とが交差する角度すなわち線条交差角度を算出する線条交差角度算出工程と、
(e)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数すなわち線条密度を算出する線条密度算出工程と
を有し、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度、および縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を検出する線条検査方法。
【請求項2】
前記多数の縦の線条と多数の横の線条とが直角に交差していない前記面状体の線条を検査する請求項1記載の線条検査方法。
【請求項3】
前記多数の縦の線条と多数の横の線条とが直角に交差している前記面状体の線条を検査する請求項1記載の線条検査方法。
【請求項4】
前記面状体が織物であり、前記縦の線条が経糸であり、前記横の線条が緯糸である請求項1記載の線条検査方法。
【請求項5】
前記面状体がフィルムまたはシートであり、前記縦の線条と横の線条が、当該フィルムまたはシートの面に形成される線条である請求項1記載の線条検査方法。
【請求項6】
前記面状体がプレートであり、前記縦の線条と横の線条が、当該プレートの面に形成される線条である請求項1記載の線条検査方法。
【請求項7】
前記デジタルフィルタ処理が、ハニング窓関数処理である請求項1、2、3、4、5または6記載の線条検査方法。
【請求項8】
前記フーリエスペクトルから前記縦の線条と横の線条との線条交差角度を算出する工程が、前記フーリエスペクトルを平面極座標上に表わして、該極座標の偏角ごとに動径方向のフーリエスペクトル値の総和を計算し、該総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が最大であるピーク値偏角と、該総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が第2の大きさであるピーク値偏角との差を、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度として算出する請求項1、2、3、4、5、6または7記載の線条検査方法。
【請求項9】
前記フーリエスペクトルから前記縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出する工程が、前記総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が最大であるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径と、前記総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が第2の大きさであるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径とから、前記縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出する請求項8記載の線条検査方法。
【請求項10】
実質的に平行に平面的に配列された多数の縦の線条と、該縦の線条が配列される平面に、前記多数の縦の線条と交差して、実質的に平行に設けられた多数の横の線条とを含む面状体の線条を検査する装置であって、
(a)前記面状体を撮像して、該撮像された画像を縦横の配列に区切った画素ごとに画像の明るさを数値で表わしたデジタル画像データを得る手段と、
(b)前記デジタル画像データにデジタルフィルタ処理を施す手段と、
(c)前記手段(b)でデジタルフィルタ処理が施された画像データにフーリエ変換を施してフーリエスペクトルを得る手段と、
(d)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条とが交差する角度すなわち線条交差角度を算出する線条交差角度算出手段と、
(e)前記フーリエスペクトルから、前記縦の線条と横の線条それぞれの単位長さあたりの線条の本数すなわち線条密度を算出する線条密度算出手段と
を有し、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度、および縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を検出する線条検査装置。
【請求項11】
前記面状体が織物であり、前記縦の線条が経糸であり、前記横の線条が緯糸である請求項10記載の線条検査装置。
【請求項12】
前記面状体がフィルムまたはシートであり、前記縦の線条と横の線条が、当該フィルムまたはシートの面に形成される請求項10記載の線条検査装置。
【請求項13】
前記面状体がプレートであり、前記縦の線条と横の線条が、当該プレートの面に形成される請求項10記載の線条検査装置。
【請求項14】
前記デジタルフィルタ処理が、ハニング窓関数処理である請求項10、11、12または13記載の線条検査装置。
【請求項15】
前記フーリエスペクトルから前記縦の線条と横の線条との線条交差角度を算出する線条交差角度演算手段が、前記フーリエスペクトルを平面極座標上に表わして、該極座標の偏角ごとに動径方向のフーリエスペクトル値の総和を計算し、該総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が最大であるピーク値偏角と、該総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が第2の大きさであるピーク値偏角との差を、前記縦の線条と横の線条との線条交差角度として算出する請求項10、11、12または13記載の線条検査装置。
【請求項16】
前記フーリエスペクトルから前記縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出する線条密度演算手段が、前記総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が最大であるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径と、前記総和のピーク値を構成するクラスターにおける前記総和の総和が第2の大きさであるピーク値偏角において、前記フーリエスペクトルが極大値となる最小の動径とから、前記縦の線条と横の線条それぞれの線条密度を算出する請求項14記載の線条検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−58185(P2006−58185A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241519(P2004−241519)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
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