説明

締結装置

【課題】締結ピンと締結ブッシュとの固定操作を、締結ピンに対して側方からの操作を行ない得るようにすると共に、それら締結ピンと締結ブッシュとの固定が容易に且つ確実に実現され得るようにした締結装置を提供すること。
【解決手段】締結ブッシュ10と締結ピン12との嵌合、締結に際して、操作孔48内に収容された駆動スピンドル82の回動に伴って、締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76を移動させることで、それらと締結離脱受動クサビ52との間に形成されたクサビ機構により締結離脱受動クサビ52を移動させ、締結離脱受動クサビ52に設けられたテーパ状押圧面60にてスチールボール50を押圧することにより、かかるスチールボール50をピン本体部34の外周面から突出させて、締結ブッシュ10のテーパ状係合面26に係合せしめることにより、締結を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結装置に係り、特に、マシニングセンター等の工作機械テーブルに取り付けられるベースエレメントと所定の治具が固定される治具プレートとを相互に締結するのに好適に用いられ得る締結装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、二つの部材を締結するための締結装置としては、種々の構造のものがあり、それらの中から、締結されるべき部材の形状や用途等に応じて、適宜に選択されて使用されている。そして、例えば、マシニングセンター等の工作機械においても、様々な締結装置が用いられている。
【0003】
すなわち、一般に、マシニングセンター等の工作機械にあっては、加工されるべきワークを保持するために、クランプやバイス等の各種の治具が用いられているが、それらの治具は、その段取り変えを容易に且つ迅速に行なわしめるために、多くの場合、治具プレートに固定されており、この治具プレートがベースエレメントに対して締結せしめられることによって、各種の治具が、ベースエレメントに取り付けられるようになっている。そして、それら治具プレートとベースエレメントとを相互に締結せしめるものとして、所定の締結装置が用いられているのである。
【0004】
ところで、このような締結装置として用いられるものの一つとして、特開平8−170607号公報(特許文献1)には、ベースエレメントと治具プレートの何れか一方に対して位置固定に取り付けられる締結ピンと、それらのうちの何れか他方に対して位置固定に取り付けられる締結ピンが軸方向に挿入、嵌合可能な締結ブッシュとを有してなる構造の締結装置が、提案されている。この締結装置にあっては、締結ピンに設けられたねじ穴に螺合された所定のねじ部材が、かかるねじ穴に螺入されて、締結ピンの締結ブッシュへの挿入方向となる軸方向に移動せしめられることにより、締結ピンの内部に配置されたスチールボールが、ねじ部材と共に一体移動せしめられる押圧面にて、軸方向に対して直角な方向に押圧され、移動せしめられて、締結ピンの外周面から部分的に突出せしめられるようになっており、そして、締結ピンの締結ブッシュへの挿入状態下で、かかるスチールボールの突出部位に対して、締結ブッシュの内周面に設けられた係合部が係合せしめられると共に、締結ブッシュの外周面に設けられた係合部が、締結ピンに係合せしめられることにより、締結ピンの締結ブッシュへの挿入状態下でのそれらの軸方向における相対移動が阻止され得るように構成されている。
【0005】
このような構造を有する締結装置を用いれば、締結ピンと締結ブッシュとを、それぞれ、ベースエレメントと治具プレートとにそれぞれ取り付けた状態で、単に、締結ピンを締結ブッシュに挿入して、ねじ部材をねじ穴に螺入するだけで、ベースエレメントと治具プレートとの締結を、極めて容易に且つ迅速に行なうことが出来るのである。
【0006】
しかしながら、かかる構造の締結装置にあっては、締結ピンと締結ブッシュとを嵌合せしめた状態下において、スチールボールを外方に突出させて、それら締結ピンと締結ブッシュとの固定を行なうべく、ねじ部材を螺入せしめる必要があるところ、従来にあっては、そのようなねじ部材の螺入操作は、締結されるベースエレメントと治具プレートの上方から、かかる治具プレートを貫通する穴を通じて行なわれることとなるところから、治具プレート上に既にワークや治具等が配置されている場合にあっては、ねじ部材の螺入操作を行なうことが出来ず、そのために、締結ピンと締結ブッシュとの固定が出来なくなる等の問題を内在している。
【0007】
また、そのような締結ピンと締結ブッシュとからなる締結装置は、一般に、治具プレートの四隅に位置するように、ベースエレメントと治具プレートとの間に配置せしめられることとなるが、上記したように、治具プレート上からのねじ部材の螺入操作が阻害されないように、治具プレートの四隅部位を避けるようにして、ワークや治具等を配置する場合にあっては、治具プレートの使用できる有効面積が限られることとなり、そのために、治具プレートを有効利用することが困難となるのである。
【0008】
そこで、本発明者らは、そのような問題を解決すべく、特開2004−286086号公報(特許文献2)において、締結される二つの部材のうちの一方の部材に位置固定に取り付けられる締結ブッシュに対して、他方の部材に位置固定に取り付けられる締結ピンの突出したピン本体部の先端部位を挿入、嵌合せしめた状態において、それら二つの部材の間に所定の間隙が形成されるようにする一方、それら部材間において露呈されるピン本体部の外周面に操作手段を設けた構造の締結装置を、明らかにした。即ち、かかる締結装置にあっては、締結される二つの部材にそれぞれ固定された締結ブッシュと締結ピンを、挿入、嵌合せしめた後に、それら二つの部材の間隙を利用して、操作手段を側方より操作することにより、かかる締結ピンのピン本体部に設けた操作・作動機構を介して、第二の移動手段を軸方向に移動せしめ、以て第一の移動手段を軸直角方向に移動させて、ピン本体部の外周面から突出せしめて、締結ブッシュに設けられた離脱阻止係合部と係合させて、二つの部材の締結が行なわれるようになっている。
【0009】
そして、この締結装置によれば、締結されるべき二つの部材を、装置側方からの操作にて容易に且つ迅速に締結し得ると共に、それら二つの部材の締結の解除も、可及的に少ない労力で、迅速に行なうことが出来ることとなるのであるが、そのような締結装置にあっては、締結ブッシュと締結ピンとの間の締結又は解除を行なう機構、即ち、第一の移動手段及び第二の移動手段を移動させる操作・作動機構が、偏心シャフトを用いた所謂カム作動にて構成されているために、かかる操作・作動機構の僅かな動きで、それら第一及び第二の移動手段が移動してしまい、その結果、締結が緩み易くなってしまうという新たな問題を惹起することとなるものであった。
【0010】
【特許文献1】特開平8−170607号公報
【特許文献2】特開2004−286086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、締結ピンと締結ブッシュとの固定操作を、締結されるべき二つの部材のうちの一方の部材側から行なうものではなく、それら二つの部材間に位置する締結ピンに対して側方からの操作を行ない得るようにすると共に、それら締結ピンと締結ブッシュとの固定が容易に且つ確実に実現され得るようにした締結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、(a)第一の部材に対して位置固定に取り付けられる締結ブッシュと、(b)第二の部材に対して位置固定に取り付けられると共に、該第二の部材から突出するピン本体部を有し、該ピン本体部の先端部位において、前記第一の部材に取り付けられた前記締結ブッシュに挿入されて嵌合せしめられることにより、それら第一及び第二の部材の締結を、それら部材間に所定の間隙を形成せしめて、実現する締結ピンと、(c)該締結ピンの前記ピン本体部の先端部位の内部に、軸方向に対して直角な方向に向かって移動可能に且つ該ピン本体部の外周面から突出可能に配置された第一の移動部材と、(d)前記締結ピンのピン本体部内において軸方向に移動可能に設けられ、該軸方向への移動によって、前記第一の移動部材を該軸方向に直角な方向に移動せしめ、該ピン本体部の外周面から突出せしめる第二の移動部材と、(e)前記締結ブッシュの、前記締結ピンのピン本体部が挿入、嵌合せしめられる部位の内周面に設けられ、該ピン本体部の該締結ブッシュへの挿入状態下で、該ピン本体部の外周面から突出せしめられた前記第一の移動部材に係合して、該締結ブッシュから該ピン本体部を離脱させる方向への該締結ブッシュの移動を阻止せしめる離脱阻止係合部と、(f)前記第一及び第二の部材間の間隙において露呈される前記締結ピンのピン本体部に前記第二の移動部材に直交するように設けられた軸直角方向の操作孔内に収容され、頭部において該操作孔内面に設けられたネジに螺合されて、該操作孔の軸方向に移動せしめられる、外部から操作可能な駆動スピンドルと、(g)前記操作孔内において、前記第二の移動部材を挟むように締結駆動クサビ及び離脱駆動クサビを配置して、それら締結駆動クサビ、第二の移動部材及び離脱駆動クサビに対して、前記駆動スピンドルの脚部を遊嵌状態において挿通せしめると共に、該締結駆動クサビと該第二の移動部材との間及び該離脱駆動クサビと該第二の移動部材との間にそれぞれ設けた締結及び離脱クサビ機構により、前記駆動スピンドルの軸方向の移動に基づいて該第二の移動部材をその軸方向に移動させ、前記第一の移動部材の前記締結ピンのピン本体部の外周面からの突出又はその解消を図ることにより、前記締結ブッシュと前記締結ピンとの間の締結又は解除を行なうようにした作動機構と、を含んで構成されていることを特徴とする締結装置を、その要旨とするものである。
【0013】
なお、そのような本発明に従う締結装置の望ましい態様の一つによれば、前記締結クサビ機構及び前記離脱クサビ機構は、それぞれ、前記締結駆動クサビと前記第二の移動部材との間に設けた締結用傾斜面部及び前記離脱駆動クサビと前記第二の移動部材との間に設けた離脱用傾斜面部を含んで構成され、且つそれら締結用傾斜面部と離脱用傾斜面部とは、前記第二の移動部材の軸方向において、前記駆動スピンドルの脚部を挟んだ両側に配設されることとなる。
【0014】
また、かかる本発明に従う締結装置の他の望ましい態様の一つによれば、前記締結用傾斜面部における前記締結駆動クサビと前記第二の移動部材との間の当接面積は、前記離脱用傾斜面部における前記離脱駆動クサビと前記第二の移動部材との間の当接面積よりも大となるように構成されている。
【0015】
さらに、本発明に従う締結装置の好ましい態様の一つにあっては、前記締結駆動クサビ、前記第二の移動部材及び前記離脱駆動クサビを挿通した前記駆動スピンドルの脚部の先端部に、前記操作孔の内径よりも小さな外径を有する抜止めナットが螺着、固定され、それら締結駆動クサビ及び離脱駆動クサビを該第二の移動部材に対して相互に押し付けて、連結せしめられることとなり、別の好ましい態様の一つにあっては、前記締結駆動クサビ又は前記離脱駆動クサビの外周面に摺動ブッシュを設け、該摺動ブッシュを介して前記操作孔の内周面に接するように構成されることとなる。
【0016】
更にまた、本発明の別の望ましい態様にあっては、前記締結ブッシュと前記締結ピンの対向面の何れか一方に、位置決めピンを立設、配置せしめる一方、それらの対向面の何れか他方に、該位置決めピンが嵌入される位置決め穴が形成されることとなる。
【0017】
加えて、本発明に従う締結装置の更に別の望ましい態様の一つによれば、前記第一の移動部材は、少なくとも一つのスチールボールにて構成されることとなる。
【発明の効果】
【0018】
要するに、このような本発明に従う締結装置にあっては、締結されるべき二つの部材のうちの一方の部材に位置固定に取り付けられる締結ブッシュに対して、他方の部材に位置固定に取り付けられる締結ピンの突出したピン本体部の先端部位を挿入、嵌合せしめた状態において、それら二つの部材の間に所定の間隙が形成されるようにする一方、それら部材間において露呈されるピン本体部の外周面に操作孔が形成され、かかる操作孔内に収容された駆動スピンドルを、それら二つの部材の間隙を利用して、側方より操作せしめることが可能となっているのである。そして、そのような駆動スピンドルの操作により、かかる駆動スピンドルを収容された操作孔の軸方向に移動させ、締結駆動クサビと第二の移動部材との間及び離脱駆動クサビと第二の移動部材との間にそれぞれ設られた締結及び離脱クサビ機構によって、駆動スピンドルの軸方向の移動に基づいて第二の移動部材をピン本体部の軸方向に移動せしめて、以て第一の移動部材を軸直角方向に移動させて、ピン本体部の外周面から突出せしめられ得るようになっているのである。
【0019】
従って、かかる本発明に従う締結装置によれば、締結ブッシュと締結ピンとの嵌合・固定操作を、第一の部材と第二の部材との間に形成される間隙を通じて、側方からの操作にて行なうことが出来、従来の如き締結されるべき二つの部材の一方の側を貫通する穴を通じて、ねじ部材を螺入せしめる等の操作が必要ではないところから、かかる一方の部材上にワークや治具等が配置されていても、それが邪魔となって,それら締結ブッシュと締結ピンとの嵌合・固定操作が困難となることは、全く惹起されることがないのであり、これによって、それらワークや治具等が配置される部材の使用面積を効果的に高め得ることとなったのである。
【0020】
さらに、そのような本発明に従う締結装置の構成によれば、締結ブッシュに設けられた離脱阻止係合部と係合する締結ピンの外周面から突出せしめられる第一の移動部材を、かかる締結ピンのピン本体部から突出・収容させるための第二の移動部材の移動が、かかる第二の移動部材を挟むように配置された締結駆動クサビ及び離脱駆動クサビと第二の移動部材との間にそれぞれ設けた締結及び離脱クサビ機構により行なわれると共に、それら締結駆動クサビ及び離脱駆動クサビが、その頭部が操作孔の内周面に設けられたネジと螺合されて、操作孔内をその軸方向に移動せしめられるようになっている駆動スピンドルによって、確実に移動、固定せしめられるようになっているため、従来の構成において惹起された、第一及び第二の移動部材の固定が緩み易いといった問題が、効果的に解消され得ることとなり、以て、締結ブッシュと締結ピンとの嵌合・固定操作を、より確実に行なうことが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0022】
先ず、図1には、マシニングセンター等の工作機械のテーブルに取り付けられるベースエレメントと治具プレートとを相互に締結するために用いられる、本発明に従う構造を有する締結装置の一例が、概略的に示されている。そこにおいて、締結装置2は、締結ブッシュ10と締結ピン12とを有して構成されており、締結ブッシュ10が、上下に対向配置された治具プレート14とベースエレメント16のうち、上方に位置する治具プレート14に対して位置固定に取り付けられるようになっている一方、締結ピン12は、下方に位置するベースエレメント16に対して位置固定に取り付けられるようになっている。
【0023】
より具体的には、締結ブッシュ10は、図2にも示される如く、一端側に外向きのフランジ部18が一体的に形成されてなる略円筒形状を呈するブッシュ本体20と、このブッシュ本体20の他方の端部側に螺着せしめられる蓋部材22とから構成されている。そして、ブッシュ本体20には、締結ピン12の先端側部位の外形よりも所定寸法大きな内径を有する内孔が形成されており、またその内周面には、ブッシュ本体20の軸方向長さの略中間部位よりフランジ部18の側に位置するように、径方向内方に向かって低い高さで突出し、且つ周方向に連続して延びる内側凸部24が、一体的に形成されている。
【0024】
また、そのような締結ブッシュ10の内周面に設けられた内側凸部24は、蓋部材22側の側面である上面が、下方に向かうに従って次第に小径となるテーパ面形状を有する、離脱阻止係合部となるテーパ状係合面26とされている一方、そのような内側凸部24より下方の内周面は、図において下方に向かうに従って次第に大径となる、テーパ面形状を呈するブッシュ側テーパ嵌合部28として形成されている。
【0025】
そして、かかるブッシュ本体20に対して、蓋部材22が螺着せしめられてなる締結ブッシュ10は、治具プレート14に形成された凹所30内に、その筒状部が嵌入された状態下において、ブッシュ本体20のフランジ部18が、図1に示される如く、かかるフランジ部18に形成されたネジ穴に挿通されたボルト32によって固定せしめられるようになっている。要するに、ボルト32の螺入によって、ブッシュ本体20のフランジ部18が、治具プレート14に固定せしめられることによって、締結ブッシュ10は、治具プレート14に位置固定に取り付けられるようになっているのである。
【0026】
一方、上述の如き締結ブッシュ10と共に、締結装置2を構成する締結ピン12は、図1に示されるように、全体として略円筒形状を呈するピン本体部34と、第一の移動部材としてのスチールボール50と、その外周面に所定の切り欠き部が形成された所定長さの略円柱形状を呈する、第二の移動部材としての締結離脱受動クサビ52と、かかる締結離脱受動クサビ52を挟むようにそれぞれ配置された締結駆動クサビ70と離脱駆動クサビ76とが駆動スピンドル82とナット90にて締結離脱受動クサビ52と一体化されたものとから、構成されている。
【0027】
即ち、ピン本体部34は、図3にも示される如く、その中心部に所定大きさの貫通孔44が形成された略円筒形状を呈しており、その軸方向略中間部の外周面上において、下方に向かって次第に大径となるテーパ面形状を呈するピン側テーパ嵌合部40と、軸方向に直角な方向において外方に向かって所定長さ延出し、且つ周方向に連続して延びる厚肉のフランジ部42とが、軸方向において上下に連接せしめられた状態において、それぞれ、一体的に設けられている。また、かかるテーパ嵌合部40よりも上側の周壁部には、軸方向に対して直角な方向に延出し、且つかかる周壁部を厚さ方向に貫通して、その外周面上において側方に開口する円形貫通孔46が、周方向に等間隔をおいて複数(ここでは、三つ)形成されている。
【0028】
そして、かかるピン本体部34の周壁部に設けられた複数の円形貫通孔46のそれぞれの内部には、その孔径よりも所定寸法小さな直径を有する、第一の移動部材としてのスチールボール50が、かかる円形貫通孔46内を、その延出方向たる、ピン本体部34の軸方向に直角な方向、つまりピン本体部34の径方向に対して移動可能に、それぞれ一個ずつ配置されている。
【0029】
また、フランジ部42には、その厚さ方向の中央部位を中心が通過すると共に、かかる中心とピン本体部の軸心が直交するようにされた、所定大きさの操作孔48が、フランジ部42を径方向に貫通するように形成されている(図3(b)及び図3(c)参照)。そして、そのような操作孔48の内周面のうち、一方の端部側の内周面には、所定ピッチのネジ山(雌ネジ)49が形成されており、図7に示される駆動スピンドル82の頭部84に形成されたネジ山(雄ネジ)85と螺合されるようになっている。このように、駆動スピンドル82の頭部84に設けられたネジ85と操作孔48の内周面に設けられたネジ49が螺合されていることにより、駆動スピンドル82の回動量に応じて、駆動スピンドル82が、操作孔48内を、その軸方向に移動可能となっている。
【0030】
そして、ピン本体部34の軸方向に設けられた貫通孔44内には、貫通孔44の内径よりも所定寸法小さい外径とされた、略円柱形状を呈する締結離脱受動クサビ52が、貫通孔44内を移動可能に挿入・配置されている。このような締結離脱受動クサビ52の外周面には、図4(b)〜図4(d)に示される如く、その周方向に連続するように、所定深さの溝54が形成されると共に、所定深さに形成された切り欠き部56,58が、径方向に対向するように形成されている。また、かかる溝54は、締結離脱受動クサビ52がピン本体部34の貫通孔44に挿入・配置された際に、円形貫通孔46に対応する部分に形成されており、その溝の両壁面のうち、締結離脱受動クサビ52をピン本体部34の貫通孔44に挿入・配置して締結ピン12として構成した際に上側(締結ブッシュ側)となる側の壁面は、その断面が所定角度で傾斜したテーパ面からなるテーパ状押圧面60とされ、かかるテーパ状押圧面60において、円形貫通孔46内に挿入・配置されたスチールボール50に対して接触し得るようにされている。
【0031】
なお、かかるテーパ状押圧面60は、ここでは、図4(b)〜図4(d)に示す如く、小さなテーパ角度から大きなテーパ角度に途中で変化する、2種類のテーパ状押圧面60a,60bから形成されているが、これは、単純な一つのテーパ角度をもつテーパ状押圧面60や、より複数の角度に分割されたテーパ状押圧面60とすることも可能である。このように、角度の小さなテーパ状押圧面60aと角度の大きなテーパ状押圧面60bを形成することにより、かかるテーパ状押圧面60(60a,60b)にてスチールボール50を押圧する際に、締結開始時には大きなテーパ角度を持つテーパ状押圧面60bにて押圧することで、多い移動量をもって素早くスチールボール50をピン本体部34より突出させると共に、スチールボール50が締結ブッシュ10のテーパ状係合面26に押し付けられて実際の締結が行なわれる際は、小さなテーパ角度を持つテーパ状押圧面60aにて押圧することで、少ない移動量をもってスチールボール50の移動が行なわれ、より確実な締結を行なうことが可能となるのである。なお、このように複数のテーパ角度を有するテーパ状押圧面60とされたときは、隣接する2つのテーパ面は、それらのうちの径方向外側に位置するテーパ状押圧面よりも径方向内側に位置するテーパ状押圧面の方が、テーパ角度が大きくなるように構成されることとなる。
【0032】
また、そのようなテーパ状押圧面60よりも締結離脱受動クサビ52の軸方向下部に設けられた切り欠き部56,58は、図4(d)にも示される如く、それぞれ一方の壁面が傾斜面62,64とされると共に、それぞれの切り欠き部の底面を貫通するように、長孔68が形成されている。なお、かかる切り欠き部56の傾斜面62と切り欠き部58の傾斜面64は、それぞれが締結離脱受動クサビ52の軸方向において対向する側の壁面が、傾斜面となるようにされている。
【0033】
ところで、かかる締結離脱受動クサビ52と共に、クサビ機構を構成する締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76は、図5(a)〜(c)及び図6(a)〜(c)にそれぞれ示される如く、その中心部に貫通孔72,78がそれぞれ設けられた、ピン本体部34の操作孔48よりも小径の略円筒形状を呈しており、その軸方向一方の端部の一部に、それぞれ所定角度の傾斜面74,80が形成されている。
【0034】
具体的には、締結駆動クサビ70は、操作孔48のネジ山49の設けられた部位内に配置されるものであって、その中心部の貫通穴72内に駆動スピンドル82の脚部86が挿通せしめられて、配設されるようになっており(図1参照)、そしてその状態で、傾斜面74が締結離脱受動クサビ52の傾斜面62に当接し得るようになっている。このため、傾斜面74と傾斜面62とは、同様な傾斜角度に設定されているのである。なお、締結駆動クサビ70の外径は、操作孔48のネジ山49に接触しないように、かかるネジ山49の内径よりも少し小さな径となるように設定されている。また、離脱駆動クサビ76は、操作孔48の前記ネジ山49が設けられた側とは反対側の部位の内部に配置されるものであって、その中心部の貫通穴78内に駆動スピンドル82の脚部86が挿通されて、配設されるようになっている(図1参照)。そして、その状態で、傾斜面80が締結離脱受動クサビ52の傾斜面64に当接し得るように、それら二つの傾斜面80,64は、略同一の傾斜角度に設定されている。なお、この離脱駆動クサビ76の外径は、操作孔48内に離脱駆動クサビ76を挿入することが出来、且つ操作孔48内の内径に可及的に近い大きさの径となるように設定されることとなる。
【0035】
そして、締結離脱受動クサビ52を、その切り欠き部56,58の位置が操作孔48付近となるように、貫通穴44内に配置せしめると共に、締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76が、かかる締結離脱受動クサビ52を挟むように、操作孔48内に配置された状態下において、締結駆動クサビ70の傾斜面74と締結離脱受動クサビ52の傾斜面62とが互いに接することで、締結クサビ機構が構成され、一方、離脱駆動クサビ76の傾斜面80と締結離脱受動クサビ52の傾斜面64とが互いに接することによって、離脱クサビ機構が構成されているのである。なお、この際、それぞれの部材に形成されている長孔68及び貫通孔72,78とを、駆動スピンドル82の脚部86が遊嵌状態において挿通せしめられると共に、かかる脚部86の先端部にナット90が取り付けられて、それら締結離脱受動クサビ52と締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76とを相互に押し付けて、それらを連結している。
【0036】
なお、ここでは、締結駆動クサビ70の傾斜面74は、離脱駆動クサビ76の傾斜面80よりも、大きな面積をもつ傾斜面とされ、かかる締結駆動クサビ70の傾斜面74が締結離脱受動クサビ52の傾斜面62と当接した際の面積が、離脱駆動クサビ76の傾斜面80が締結離脱受動クサビ52の傾斜面64と当接する面積よりも大きな面積となるように構成されて、それぞれのクサビ機構が構成されている。このように、締結クサビ機構を構成する側の当接面積を大きくすることによって、締結駆動クサビ70の傾斜面74によって締結離脱受動クサビ52の傾斜面62を押圧する際に、より大きな力をもって押圧することが可能となり、その結果、締結離脱受動クサビ52に設けられたテーパ状押圧面60によるスチールボール50の押圧力、即ち、締結の際の力を大きくすることが出来るのである。
【0037】
従って、かかる構造とされた締結ピン12においては、ピン本体部34の側方に露呈する操作孔48に収容された駆動スピンドル82の頭部に設けられた六角穴88に、適当な工具を挿入して駆動スピンドル82を回動せしめることにより、締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76を操作孔48の軸方向に移動せしめ、かかる移動に伴って、それら締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76とクサビ機構を構成している締結離脱受動クサビ52を、貫通穴44内においてその軸方向(締結ピン12の軸方向)に移動させることが出来ることとなる。そして、そのような締結離脱受動クサビ52の軸方向の移動によって、テーパ状押圧面60によるスチールボール50の押圧作動や、その押圧解除を行ない得るようにした作動機構が、構成されているのである。
【0038】
なお、このような締結ピン12は、ベースエレメント16に形成された取付凹所内に、ピン本体部34のフランジ部42よりも下部の筒状部を嵌入して、位置決めされた状態において、ピン本体部34のフランジ部42に形成されたネジ穴に取付ボルト(ここでは図示せず)を挿入して、ボルト固定することにより、ベースエレメント16の上面から上方に突出せしめられた状態において、ベースエレメント16に対して、位置固定に取り付けられている。
【0039】
ところで、このような構造を有する締結ブッシュ10と締結ピン12からなる締結装置2を用いて、治具プレート14とベースエレメント16との締結と、その解除を行なう場合にあっては、以下の如くして、操作されることとなるのである。
【0040】
すなわち、先ず、図1に示されるように、ベースエレメント16と治具プレート14とを、それらにそれぞれ固定された締結ピン12と締結ブッシュ10とが互いに離間し、且つ同軸的に位置するように、対向配置せしめられる。このとき、締結離脱受動クサビ52は、貫通穴44内を移動可能な範囲において、最も上方に位置するようにされ、テーパ状押圧面60による、スチールボール50に対する押圧作用が加わらないような状態とされることとなる。
【0041】
次いで、図8(a)に示される如く、締結ブッシュ10の内孔内に、締結ピン12のピン本体部34のフランジ部42よりも上側部分を挿入して、締結ピン12を締結ブッシュ10に対して内嵌せしめる。このときの締結ピン12の締結ブッシュ10への挿入位置は、ピン本体部34のピン側テーパ嵌合部40と、締結ブッシュ10のブッシュ側テーパ嵌合部28とが互いに接触するものの、締結ブッシュ10のフランジ部18とピン本体部34のフランジ部42との間には、微小な隙間が形成される程度の位置とされる。
【0042】
その後、締結ブッシュ10の締結ピン12への挿入状態下において、治具プレート14とベースプレート16との隙間を通じて、ピン本体部34のフランジ部42の外周面に形成された操作孔48に挿入されている駆動スピンドル82の六角穴88に、適当な工具を挿入して、駆動スピンドル82を回動せしめて、駆動スピンドル82及び締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76を操作孔48の軸方向(図8において左右方向)に移動せしめる。この移動に伴って、締結離脱受動クサビ52と締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76との間に設けられている締結及び離脱クサビ機構によって、締結離脱受動クサビ52がピン本体部34の軸方向(図8において上下方向)に移動せしめられるようにされる。即ち、締結動作を行なう際には、駆動スピンドル82の移動(図8において左向きの移動)に伴って、締結駆動クサビ70に形成された傾斜面74が締結離脱受動クサビ52に形成された傾斜面62に押し付けられて、それらの締結用斜面部からなるクサビ機構が、締結離脱受動クサビ52を下方に移動させるのである。
【0043】
そして、このようにして、締結離脱受動クサビ52をピン本体部34の貫通穴44内で下方に移動させることにより、各円形貫通孔46内に配置されたスチールボール50を、それぞれ、締結離脱受動クサビ52の外周面に形成されたテーパ状押圧面60にて押圧して、各円形貫通孔46内を、嵌合筒部34の径方向外方に移動させ、それら各スチールボール50を、ピン本体部34の外周面から側方に突出せしめることにより、図8(b)に示される如く、締結ブッシュ10のテーパ状係合面26に対して、各スチールボール50の突出部位を係合させるのである。
【0044】
その際、各スチールボール50の移動により、ピン本体部34の外周面からの各スチールボール50の突出量が増大せしめられるのに従って、締結ブッシュ10のテーパ状係合面26が、各スチールボール50の突出部位にて、下方に押圧されて、締結ブッシュ10全体が下方に徐々に移動せしめられ、それによって、ブッシュ側テーパ嵌合部28がピン側テーパ嵌合部40に噛み込んで、それら両テーパ嵌合部28、40が、より強固にテーパ嵌合せしめられると共に、締結ブッシュ10のフランジ部18とピン本体部34のフランジ部42とが互いに当接せしめられることとなる。そして、そのような状態下で、各スチールボール50が、前述せるように、ピン本体部34の外周面からの突出側とは反対側の部位において、締結離脱受動クサビ52のテーパ状押圧面60に接触せしめられるため、各スチールボール50のピン本体部34からの突出状態が保持されて、締結ブッシュ10と締結ピン12の径方向と上下方向への相対移動が、確実に且つ安定的に阻止されることとなるのである。
【0045】
これによって、締結ブッシュ10と締結ピン12が、それぞれ、固定された治具プレート14とベースエレメント16とが、上下方向とそれに直角な方向への相対移動が不能とされた状態で、相互に締結せしめられ、そして、そのような締結状態が、安定的に確保され得ることとなるのである。
【0046】
また、そのような治具プレート14とベースエレメント16との締結状態を解除するには、前述の締結操作とは逆、即ち、駆動スピンドル82の回動方向を逆方向とすることにより、駆動スピンドル82の移動方向を反対向き(図8において右向きの移動)にし、離脱駆動クサビ76に形成された傾斜面80を締結離脱受動クサビ52に形成された傾斜面64に押し付けて、それらの離脱用斜面部からなるクサビ機構にて、締結離脱受動クサビ52を上方に移動させる。これによって、締結離脱受動クサビ52のテーパ状押圧面60からの各スチールボール50に対する、ピン本体部34の径方向外方への押圧力を解除して、それら各スチールボール50を、各円形貫通孔46内において、ピン本体部34の径方向内側に引込移動させ、以て、締結ブッシュ10のテーパ状係合面26に対する各スチールボール50の突出部位の係合を解消せしめる。
【0047】
そして、引き続き、駆動スピンドル82を逆方向に回動させて、締結離脱受動クサビ52を上方に移動せしめ、その上端面を締結ブッシュ10の蓋部材22の内面に当接させ、さらにその状態から、締結離脱受動クサビ52の上方への移動を、更に継続して行なうことにより、かかる締結離脱受動クサビ52の頭部の上端面にて、締結ブッシュ10の底部(具体的には蓋部材22の内面)を上方に押圧せしめて、締結ブッシュ10の全体を、上方、つまり締結ピン12から離間する方向に変位させ、以て、締結ブッシュ10のブッシュ側テーパ嵌合部28と締結ピン12のピン側テーパ嵌合部40との間の強固なテーパ嵌合の縁切りが行なわれるようにされるのである。
【0048】
そして、その後、締結ピン12を締結ブッシュ10の内孔内から引き抜くように、それらを上下方向に相対移動せしめることによって、治具プレート14とベースエレメント16との締結が解除されることとなる。
【0049】
このように、例示の締結装置2にあっては、ベースエレメント16に取り付けられた締結ピン12を、治具プレート14に取り付けられた締結ブッシュ10の内孔内に挿入せしめた状態下において、単に、それら治具プレート14とベースエレメント16との間の間隙に露呈される操作孔48内に挿入された駆動スピンドル82を、側方から適当な工具等を用いて回動せしめるだけの簡単な操作を行なうだけで、締結ピン12のピン本体部34の外周面から突出せしめられるスチールボール50が、締結ブッシュ10のテーパ状係合面26に係合せしめられると共に、締結ピン12のピン側テーパ嵌合部40と締結ブッシュ10のブッシュ側テーパ嵌合部28とがテーパ嵌合せしめられ、それによって、対向する治具プレート14とベースエレメント16とを、上下方向とそれに直角な方向への相対移動が不能とされた状態で、相互に締結せしめることが出来るのである。
【0050】
また、かかる締結装置2の作動は、治具プレート14とベースエレメント16との間の隙間を通じて、側方から行なうことが可能であるところから、ワークの配置位置の如何に拘わらず、締結装置2による締結作動を、極めて容易に行なうことが出来るのであり、以て、治具プレート14の使用可能な有効面積を、有利に増大せしめることが可能となるのである。
【0051】
さらに、例示の締結装置2においては、特に、ベースエレメント16と治具プレート14とが相互に締結せしめられた状態下で、単に、締結ピン12のピン本体部34の操作孔48内に配置した駆動スピンドル82を回動せしめるだけの単純且つ容易な操作を行なうだけで、締結ブッシュ10のテーパ状係合面26に対するスチールボール50の係合を解消せしめると共に、締結ピン12におけるピン側テーパ嵌合部40と締結ブッシュ10のブッシュ側テーパ嵌合部28との間のテーパ嵌合の縁切りを行なうことが出来、それによって、テーパ嵌合により強固に嵌合せしめられた締結ピン12と締結ブッシュ10との嵌合状態を、簡単に且つ確実に解除することも出来るのである。
【0052】
加えて、このような締結装置2にあっては、締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76が、頭部84が操作孔48の内周面に設けられたネジと螺合された駆動スピンドル82の回動によって、その軸方向に移動せしめられるようになっていることにより、それら締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76が操作孔48内を確実に移動、固定せしめられることとなり、以て、それら締結駆動クサビ70及び離脱駆動クサビ76と締結離脱受動クサビ52によって構成されるクサビ機構により、スチールボール50を締結ピン12のピン本体部34から突出・収容させるための締結離脱受動クサビ52の移動をも、より確実に、且つ固定されるようになっているところから、従来の締結装置の構成において惹起された、締結を行なうスチールボール50を押圧する部材が移動して、締結が緩み易いという問題が、効果的に解消され得ることとなり、以て、締結ブッシュ10と締結ピン12との嵌合・固定操作を、より確実に行なうことが出来るのである。
【0053】
従って、かかる例示の締結装置2を用いれば、ベースエレメント16と治具プレート14とを、容易に且つ迅速に、しかも優れた位置精度をもって締結し得ることとなるのであり、しかも、スチールボール50のテーパ状係合面26に対する係合を解消させるための作業とは別に、特別な作業を何等行なうことなく、締結ピン12と締結ブッシュ10との強硬な嵌合状態を容易に解除することが出来ることとなり、以て、ベースエレメント16と治具プレート14との締結の解除も、可及的に少ない労力で、迅速に行なうことが出来るのである。
【0054】
なお、本発明に従う締結装置2の望ましい態様の一つとして、締結ブッシュ10と締結ピン12の対向するフランジ面18,42に、その一方の面に位置決めピンを立設すると共に、他方の面の対応する位置に、かかる位置決めピンが嵌入される位置決め穴を形成した締結装置を、例示することが出来る。即ち、ベースエレメント16と治具プレート14との固定に際して、一つの締結装置2のみを用いた場合にあっては、円筒状の締結ブッシュ10と円柱状の締結ピン12とから構成される締結装置2を中心に回動してしまう恐れがあるのであるが、このような位置決めピン及び位置決め穴を締結ブッシュ10と締結ピン12にそれぞれ形成して、かかる位置決めピンを位置決め穴に嵌入することにより、そのような回動を効果的に抑制することが可能となり、締結装置2の使用個数に係わらず、ベースエレメント16と治具プレート14とを、有利に固定することが出来るのである。
【0055】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これは、あくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではないことが、理解されるべきである。
【0056】
例えば、例示の具体例では、第二の移動部材として、その外周面にテーパ状押圧面60や切り欠き部56,58が一体的に設けられた締結離脱受動クサビ52の一つの部材にて構成されていたが、締結及び離脱クサビ機構を構成する切り欠き部56,58を形成した部材と、テーパ状押圧面60が設けられたクランプリング等の2つの部材を別々に形成して、それをボルト等で一体的に組み合わせて、それを第二の移動手段として構成することも可能である。
【0057】
さらに、前記した実施形態においては、離脱駆動クサビ76は、操作孔48の内周面に対して、その外周面が直接に接した状態において、かかる操作孔48内を摺動せしめられていたが、図6(d)に示される如く、離脱駆動クサビ76の外周面に摺動ブッシュ77を設けて、かかる摺動ブッシュ77を介して、操作孔48の内周面に接するようにすることも、可能である。このように、摺動ブッシュを追加することによって、操作孔48内における離脱駆動クサビ76の移動に必要な力を低減することが出来、以て、締結ブッシュ10と締結ピン12との嵌合・固定操作を、より少ない労力で、迅速に行なうことが可能となる。
【0058】
また、第一の移動部材も、例示の如きスチールボール50に、何等限定されるものではなく、第二の移動部材の軸方向への移動に伴って、それに直角方向に移動せしめられて、締結ピン12の外周面から部分的に突出位置せしめられ得る構造を有するものであればよく、従って、例えば、スチールボール50に代えて、第一の移動部材として、円柱状のコロ等を採用することも、可能である。また、その個数にあっても、例示の3個に限定されるものではなく、構成される締結装置2の大きさや求められる締結力等に応じて、適宜に増減されることとなる。
【0059】
さらに、締結ピン12や締結ブッシュ10のベースエレメント16や治具プレート14への取付構造も、前記実施形態に示されるものに、決して限定されるものでないことは、言うまでもないところである。
【0060】
加えて、前記した実施形態では、本発明を、マシニングセンター等の工作機械のテーブルに取り付けられるベースエレメントと治具プレートとを相互に締結するために用いられる締結装置に対して適用したものの具体例を示したが、本発明が、ベースエレメントと治具プレート以外の互いに締結されるべき二つの様々な部材を相互に締結するために用いられる締結装置に対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
【0061】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に従う締結装置の一例を示す縦断面説明図である。
【図2】図1に示される締結装置に用いられている締結ブッシュを示す説明図であって、(a)は、その平面説明図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面説明図である。
【図3】図1に示される締結装置に用いられている締結ピンを構成するピン本体部を示す説明図であって、(a)は、その平面説明図であり、(b)は、正面説明図であり、(c)は、(b)におけるB−B断面説明図である。
【図4】図1に示される締結装置に用いられている締結離脱受動クサビを示す説明図であって、(a)は、その平面説明図であり、(b)は、正面説明図であり、(c)は、背面説明図であり、(d)は、(b)におけるC−C断面説明図である。
【図5】図1に示される締結装置に用いられている締結駆動クサビを示す説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、(a)におけるD−D断面説明図であり、(c)は、底面説明図である。
【図6】図1に示される締結装置に用いられている離脱駆動クサビを示す説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、(a)におけるE−E断面説明図であり、(c)は、平面説明図である。更に、(d)は、外周面に摺動ブッシュが設けられた状態を示す(b)に対応する断面説明図である。
【図7】図1に示される締結装置に用いられている駆動スピンドル示す説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、(a)におけるF−F断面説明図である。
【図8】図1に示された締結装置の使用状態を示す断面説明図であって、(a)は、締結ピンを締結ブッシュの内孔内に挿入せしめた状態を示し、(b)は、締結ピンと締結ブッシュとの完全な締結状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
2 締結装置
10 締結ブッシュ
12 締結ピン
14 治具プレート
16 ベースエレメント
18 フランジ部
20 ブッシュ本体
22 蓋部材
24 内側凸部
26 テーパ状係合面
28 ブッシュ側テーパ嵌合部
30 凹所
32 ボルト
34 ピン本体部
40 ピン側テーパ嵌合部
44 貫通孔
46 円形貫通孔
48 操作孔
50 スチールボール
52 締結離脱受動クサビ
56,58 切り欠き部
60 テーパ状押圧面
62,64 傾斜面
70 締結駆動クサビ
76 離脱駆動クサビ
74,80 傾斜面
82 駆動スピンドル
90 ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材に対して位置固定に取り付けられる締結ブッシュと、
第二の部材に対して位置固定に取り付けられると共に、該第二の部材から突出するピン本体部を有し、該ピン本体部の先端部位において、前記第一の部材に取り付けられた前記締結ブッシュに挿入されて嵌合せしめられることにより、それら第一及び第二の部材の締結を、それら部材間に所定の間隙を形成せしめて、実現する締結ピンと、
該締結ピンの前記ピン本体部の先端部位の内部に、軸方向に対して直角な方向に向かって移動可能に且つ該ピン本体部の外周面から突出可能に配置された第一の移動部材と、
前記締結ピンのピン本体部内において軸方向に移動可能に設けられ、該軸方向への移動によって、前記第一の移動部材を該軸方向に直角な方向に移動せしめ、該ピン本体部の外周面から突出せしめる第二の移動部材と、
前記締結ブッシュの、前記締結ピンのピン本体部が挿入、嵌合せしめられる部位の内周面に設けられ、該ピン本体部の該締結ブッシュへの挿入状態下で、該ピン本体部の外周面から突出せしめられた前記第一の移動部材に係合して、該締結ブッシュから該ピン本体部を離脱させる方向への該締結ブッシュの移動を阻止せしめる離脱阻止係合部と、
前記第一及び第二の部材間の間隙において露呈される前記締結ピンのピン本体部に前記第二の移動部材に直交するように設けられた軸直角方向の操作孔内に収容され、頭部において該操作孔内面に設けられたネジに螺合されて、該操作孔の軸方向に移動せしめられる、外部から操作可能な駆動スピンドルと、
前記操作孔内において、前記第二の移動部材を挟むように締結駆動クサビ及び離脱駆動クサビを配置して、それら締結駆動クサビ、第二の移動部材及び離脱駆動クサビに対して、前記駆動スピンドルの脚部を遊嵌状態において挿通せしめると共に、該締結駆動クサビと該第二の移動部材との間及び該離脱駆動クサビと該第二の移動部材との間にそれぞれ設けた締結及び離脱クサビ機構により、前記駆動スピンドルの軸方向の移動に基づいて該第二の移動部材をその軸方向に移動させ、前記第一の移動部材の前記締結ピンのピン本体部の外周面からの突出又はその解消を図ることにより、前記締結ブッシュと前記締結ピンとの間の締結又は解除を行なうようにした作動機構と、
を含んで構成されていることを特徴とする締結装置。
【請求項2】
前記締結クサビ機構及び前記離脱クサビ機構が、それぞれ、前記締結駆動クサビと前記第二の移動部材との間に設けた締結用傾斜面部及び前記離脱駆動クサビと前記第二の移動部材との間に設けた離脱用傾斜面部を含んで構成され、且つそれら締結用傾斜面部と離脱用傾斜面部とが、前記第二の移動部材の軸方向において、前記駆動スピンドルの脚部を挟んだ両側に配設されている請求項1に記載の締結装置。
【請求項3】
前記締結用傾斜面部における前記締結駆動クサビと前記第二の移動部材との間の当接面積が、前記離脱用傾斜面部における前記離脱駆動クサビと前記第二の移動部材との間の当接面積よりも大となるように構成されている請求項2に記載の締結装置。
【請求項4】
前記締結駆動クサビ、前記第二の移動部材及び前記離脱駆動クサビを挿通した前記駆動スピンドルの脚部の先端部に、前記操作孔の内径よりも小さな外径を有する抜止めナットが螺着、固定され、それら締結駆動クサビ及び離脱駆動クサビを該第二の移動部材に対して相互に押し付けて、連結せしめている請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の締結装置。
【請求項5】
前記締結駆動クサビ又は前記離脱駆動クサビの外周面に摺動ブッシュを設け、該摺動ブッシュを介して前記操作孔の内周面に接するように構成されている請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の締結装置。
【請求項6】
前記締結ブッシュと前記締結ピンの対向面の何れか一方に、位置決めピンを立設、配置せしめる一方、それらの対向面の何れか他方に、該位置決めピンが嵌入される位置決め穴が形成されている請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の締結装置。
【請求項7】
前記第一の移動部材が、少なくとも一つのスチールボールにて構成されている請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の締結装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−105111(P2010−105111A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278388(P2008−278388)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(592063401)株式会社ナベヤ (28)
【Fターム(参考)】