説明

緻密なブロックの精製及び製造方法

【課題】アルミナ等の高融点物質の、精製、及び緻密で均一なブロックの製造方法を提供する。
【解決手段】基板12はプラズマトーチ8の下に置かれ、アルミナ粒子又は他の高融点物質は、プラズマトーチ8によって加熱溶融される。これは、垂直軸に沿う回転、水平軸に沿う前後運動、及び垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に動いている基板12上に堆積する。このことにより、ブロック11に、所定の直径、及び円筒形等の形態を持たせることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、結晶成長方法において用いられる、緻密で高純度の物質の生産に関する。具体的には、プラズマを発生させる段階、プラズマ中にアルミナ粒子を送り込む段階、アルミナ粒子を溶融する段階、溶融した粒子を基板上に堆積させる段階、三つの独立した方向に可動な(前後の水平運動、回転運動及び垂直の引き下ろし)基板表面において、溶融した酸化アルミニウムの層を形成して緻密なアルミナブロックを生産する段階を含む、高純度で緻密なアルミナ(Al)のブロックを生産する方法を提供する。本方法は、高純度で緻密な他の物質、アルミニウム−マグネシウムスピネル、イットリウムアルミニウムガーネット、酸化ジルコニウム、二酸化珪素等を調製するために使用可能である。
本出願は、米国特許仮出願番号60/704,718、出願日2005年8月2日の優先権を主張し、引用により、その全体を援用する。
【背景技術】
【0002】
サファイア(Al)は、その独特の特性により、広く用いられている物質である。近年、サファイアはLED(発光ダイオード)の生産において、その用途を見出した。サファイアの結晶は、チョクラルスキー(CZ)、キロポロス、熱交換法(HEM)、水平方向固化法(HDSM)、及びEFG(ステパノフ)等の、いくつかの結晶成長方法を利用して生産される。これらの方法において、Alで作られた「クラックル」と呼ばれる出発物質が坩堝に詰められ、溶融され、次いで、結晶成長過程が開始される。最高の生産収率を得るためには、最高純度のクラックルを、最大収容能力で坩堝に詰めることが極めて望ましいであろう。
【0003】
今日まで、サファイア結晶を成長させるために十分な純度と密度のクラックルを生産するため特別に設計された方法は存在しない。サファイア結晶を成長させる者は、彼らの方法で遣い残されたもの、又は、通常ベルヌーイ法と呼ばれる、火炎溶融法によって成長させたサファイア結晶をクラックル物質として用いている。ベルヌーイ法においては、酸素−水素炎中にアルミナ粉が送り込まれ、溶融され、そして種結晶上に堆積する。しかしながら、この方法によって生産される結晶は、直径が制限され(1.5’’まで)、及び、異なるドーピング元素を含有する、着色した宝石品位の結晶の生産に由来する交差汚染に起因して汚染される可能性がある。更に、ベルヌーイ法は、酸素と水素の可燃性混合物を用いるので、安全ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、クラックルとして用いる、任意の所定の直径を持つ、高純度で緻密なアルミナブロックの製造方法は、極めて望ましい。更に、アルミニウム−マグネシウムスピネル、イットリウムアルミニウムガーネット、酸化ジルコニウム、二酸化珪素等の高純度で緻密な他の物質の製造方法も、極めて望ましい。本発明によって調製される緻密な高純度ブロックは、結晶成長のためのクラックル、高純度で高密度のセラミックス等の、任意の適切な目的に対して有用である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、所定の直径を持つ、精製された緻密な製品の調製方法に関する。ブロックは、円筒形等の、任意の所望の形状を持つことができる。一般的に、アルミナ等の出発物質の粒子をプラズマ中に送り込み、プラズマを用いて溶融して、溶融された粒子(液体又は融液とも呼ばれる)を形成させる。溶融された粒子を、次いで、堆積基板上に堆積させる。基板は、三方向の独立した動きとその動きを制御する手段を提供する機構又は装置の一部である支持体の上に設置される。堆積すると、溶融された粒子は基板上に液体層を形成し、これは、次いで、指向的な固化を受けて、出発物質は更に精製される。ドーピング物質が用いられる場合は、溶融されたドープされた物質、例えば、溶融されたドープされたアルミナは、基板上に固体層を形成して、ドーピング物質の偏析を防ぐ。本発明の方法は、緻密な、精製されたアルミナブロックの作成に特に有用であり、任意の所望の形状を持つ精製された、緻密なブロック、又は、アルミニウム−マグネシウムスピネル、イットリウムアルミニウムガーネット、酸化ジルコニウム、二酸化珪素等の他の高融点物質の調製に拡大することができる。任意の適切なサイズの粒子を使用可能だが、一般的に、粒子サイズが0.1μmから500μmの粒子を用いる。精製された緻密なブロックの純度レベルは、部分的には出発物質の純度レベルに依存する。本発明の方法により、99.999%までの純度レベルを達成できる。
【0006】
本発明の一つの態様において、所定の直径を持つ精製された、緻密なアルミナブロックの製造方法が提供される。この方法は、プラズマを発生させる段階;プラズマ中にアルミナ粒子を送り込んで、粒子を溶融し液状アルミナを形成させる段階;堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、堆積基板上に液状アルミナを堆積させて、基板の表面上に液状アルミナの層を形成させ、精製された、緻密なアルミナブロックを生産する段階を含む。任意の適切なサイズの粒子を使用可能だが、一般的に、アルミナ粒子は0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ。精製された、緻密なアルミナブロックの純度レベルは、部分的には出発物質の純度レベルに依存する。本発明の方法により、99.999%までの純度レベルを達成できる。プラズマは、高周波発生器による誘導を包含する任意の適切な方法で発生可能である。
【0007】
もう一つの態様において、所定の直径を持つ、精製された、緻密な、ドープされたアルミナブロックの製造方法が提供される。この方法は、アルミナの粒子とドーピング物質を混合して均一な混合物を形成させる段階;プラズマを発生させる段階;プラズマ中に均一な混合物を送り込んで粒子を溶融させ、液体を形成させる段階;堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に動かしながら、堆積基板上に液体を堆積させて、固体の、ドープされたアルミナの層を形成させ、精製された、緻密な、ドープされたアルミナブロックを生産する段階を含む。任意の適切なサイズの粒子を用いることが可能だが、アルミナ及びドープ用粒子は、一般的に、0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ。精製された、緻密な、ドープされたアルミナブロックの純度レベルは、部分的には、用いられるアルミナ及びドーピング物質の出発物質の純度レベルに依存する。本発明の方法により、99.999%までの純度レベルを達成できる。Ti、Cr、Mn、Ni、Fe、V又は2以上の前記物質の混合物を包含する、任意のドーピング物質を使用可能だが、これらに限定されない。プラズマは、高周波発生器による誘導を包含する任意の適切な方法で発生可能である。
【0008】
本発明のもう一つの態様において、所定の直径を持つ精製された、緻密なアルミニウム−マグネシウムスピネルブロックの製造方法が提供される。この方法は、プラズマを発生させる段階;プラズマ中に酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムの粒子を送り込み、粒子を溶融して液体を形成させる段階;堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、堆積基板上に液体を堆積させて、精製された、緻密なアルミニウム−マグネシウムスピネルブロックを生産する段階を含む。任意の適切なサイズの粒子の使用が可能だが、一般的に、アルミニウム−マグネシウムスピネル粒子は、0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ。精製された、緻密なアルミニウム−マグネシウムスピネルブロックの純度レベルは、部分的には、出発物質の、及び用いられる場合にはドーピング物質の純度レベルに依存する。本発明の方法により、99.999%までの純度レベルを達成できる。プラズマは、高周波発生器による誘導を包含する任意の適切な方法で発生可能である。
【0009】
この態様の一側面において、溶融された粒子は、基板の表面に堆積したときに液体層を形成する。
【0010】
この態様のもう一つの側面において、粒子は、ドーピング物質を更に含み、及び溶融された粒子は、基板の表面に堆積したとき固体層を形成する。Fe、Ni又はCoを包含する任意の適切なドーピング物質を使用可能だが、これらに限定されない。
【0011】
本発明のもう一つの態様において、所定の直径を持つ、精製された、緻密な酸化ジルコニウムブロックの製造方法が提供される。この方法は、プラズマを発生させる段階;プラズマ中に酸化ジルコニウム粒子を送り込み、粒子を溶融させ及び液体を形成させる段階;堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、堆積基板上に前記液体を堆積させて、精製された、緻密な酸化ジルコニウムブロックを生産する段階を含む。任意の適切なサイズの粒子を使用可能だが、一般的に、酸化ジルコニウム粒子は、0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ。精製された、緻密な酸化ジルコニウムブロックの純度レベルは、部分的には、出発物質の酸化ジルコニウム、及び用いる場合にはドーピング物質の純度レベルに依存する。本発明の方法により、99.999%までの純度レベルを達成できる。プラズマは、高周波発生器による誘導を含む任意の適切な方法で発生可能である。
【0012】
この態様の一側面において、溶融された酸化ジルコニウムは、基板の表面に堆積したとき液体層を形成する。
【0013】
この態様のもう一つの側面において、粒子はドーピング物質を更に含み、及び溶融された粒子は、基板の表面に堆積したとき固体層を形成する。Yb、Ce、Er、Mg、Fe、Ca又は2以上の前記物質の混合物を包含する任意の適切なドーピング物質を使用可能だが、これらに限定されない。
【0014】
本発明のもう一つの態様において、所定の直径を持つ、精製された、緻密なシリカブロックの製造方法が提供される。この方法は、プラズマを発生させる段階;プラズマ中に二酸化珪素粒子を送り込み、粒子を溶融させ、及び液体を形成させる段階;堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、堆積基板上に液体を堆積させて、精製された緻密なシリカブロックを製造する段階を含む。任意の適切なサイズの粒子を使用可能だが、一般的に、酸化珪素粒子は、0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ。精製された、緻密な酸化シリコンブロックの純度レベルは、部分的には、出発物質の酸化シリコンの、及び用いる場合にはドーピング物質の純度レベルに依存する。本発明の方法により、99.999%までの純度レベルを達成できる。プラズマは、高周波発生器による誘導を包含する、任意の適切な方法で発生可能である。
【0015】
この態様の一側面において、溶融された二酸化珪素は、基板の表面に堆積したとき、液体層を形成する。
【0016】
この態様のもう一つの側面において、粒子は、ドーピング物質を更に含み、及び溶融された粒子は、基板の表面に堆積したとき固体層を形成する。Ge、B又はPを包含する任意の適切なドーピング物質を使用可能だが、これらに限定されない。
【0017】
本発明のもう一つの態様において、所定の直径を持つ、精製された、緻密なイットリウムアルミニウムガーネットブロックの製造方法が提供される。この方法は、所定量のアルミナ粉末に酸化イットリウム粉末を混合して均一な混合物を形成させる段階;プラズマを発生させる段階;プラズマ中に均一な混合物を送り込んで粒子を溶融させ、液体を形成させる段階;堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に動かしながら、堆積基板上に液体を堆積させて、基板表面上に液体イットリウムアルミニウムガーネットの層を形成させ、精製された、緻密なイットリウムアルミニウムガーネットブロックを製造する段階を含む。任意のサイズの粒子を使用可能だが、一般的に、アルミナ粒子は、0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ。精製された、緻密なイットリウムアルミニウムガーネットブロックの純度レベルは、部分的には、出発物質の純度レベルに依存する。本発明の方法により、99.999%までの純度レベルを達成できる。プラズマは、高周波発生器による誘導を包含する、任意の適切な方法で発生可能である。
【0018】
本発明のもう一つの態様において、所定の直径を持つ、精製された、緻密な、ドープされたイットリウムアルミニウムガーネットブロックの製造方法が提供される。この方法は、所定量のアルミナ粉末、酸化イットリウム粉末及びドーピング物質を混合させて均一な混合物を形成させる段階;プラズマを発生させる段階;プラズマ中に均一な混合物を送り込み、粒子を溶融させ、及び液体を形成させる段階;堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に動かしながら、堆積基板上に液体を堆積させて、基板表面上に、固体の、ドープされたイットリウムアルミニウムガーネットの層を形成させ、精製された、緻密な、ドープされたイットリウムアルミニウムガーネットブロックを製造する段階を含む。任意の適切なサイズの粒子を使用可能だが、一般的に、イットリウムアルミニウムガーネット及びドーピング粒子は、0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ。精製された、緻密な、ドープされたイットリウムアルミニウムガーネットブロックの純度レベルは、部分的には、用いられる出発物質のアルミナ、酸化イットリウム及びドーピング物質の純度レベルに依存する。本発明の方法により、99.999%までの純度レベルを達成できる。Er、Yb、Ho、Cr、Tm、Dy、Sm、Tb、Ce又は2以上の前記物質の混合物を包含する、任意の適切なドーピング物質を使用可能だが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】プラズマトーチの内側に設置された水冷式の探針を介した粉体送り込みシステムを伴うRFプラズマトーチを用いた、緻密なアルミナブロックの製造システムを図解する。
【図2】注入器系を介した粉体送り込みシステムを伴うRFプラズマトーチを用いた、緻密なアルミナブロックの製造システムを図解する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の複数の態様は、プラズマ又は熱エネルギー供給手段からの炎、好ましくは誘導結合高周波(RF)プラズマを用いる、直径の異なる、高純度で緻密なアルミナブロック(他の物質の、他の高純度で緻密なブロックも同様)の製造方法を提供する。この方法で製造される高純度のアルミナブロックは、キロプロス、HEM、Cz、及びEFG(ステパノフ)等の種々の方法を利用した、サファイア結晶を成長させるための原材料(クラックル)、又は高純度、高密度のセラミックス等、任意の適切な目的のために使用できる。
図1を参照して、代表的な誘導結合高周波(RF)プラズマトーチ8を模式的に示す。プラズマトーチ8は、ステンレス製水冷反応器14上に搭載されている。典型的には、プラズマトーチ8は水冷された銅部で作られ、プラズマトーチと誘導コイル7(切取り表示)の間に置かれた石英管9により、放電から保護されている。プラズマ発生の間、プラズマトーチ8を冷却するために、水冷装置5及び6が用いられる。トーチは、RF発生器システム(この模式図には示されていない)の一部である誘導コイル7の内側に置かれている。適切なプラズマトーチの代表的な例は、米国特許第3,401,302号及び第5,200,595号に示されており、これらの開示の全体を、引用により援用する。プラズマトーチの選択は本方法の一般性を制限せず、それは、任意の他の熱エネルギー供給手段、及びアルミナ及び他の高温材料を溶融するために適切な温度を作り出す手段によって、実行することができる。操作の間、プラズマトーチ中にプラズマ発生ガスが導入され、及び誘導コイル7は高周波交流磁場を発生させ、これはガスをイオン化してプラズマ10を発生させる。水素を添加した、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はこれらの混合物を包含する、任意の適切なプラズマ発生ガスを使用可能だが、これらに限定されない。溶融すべき、アルミナ等の高融点物質の粒子は、粉末供給装置(図示せず)から供給管1を介し、水冷装置2及び3を持つ水冷式探針4を介して送り込まれる。プラズマ中の非常に高い温度(10,000℃を超える)に起因して、アルミナ又は他の高融点物質の粒子は溶融され、不純物は蒸発する。任意の適切なサイズの粒子を使用可能である。一般的に、0.1μmから500μmの粒子サイズが用いられる。液体状の、溶融された粒子、例えば液状アルミナは、次いで、通常アルミナ製の、又は他の適切な物質製の基板12上に堆積される。堆積した液状アルミナは、基板表面上に、液体層(ドープされていないアルミナ粒子が用いられたとき)、又は固体層(アルミナ粒子とドープされた粒子の混合物が用いられたとき)を形成する。
【0021】
溶融された粒子が基板に到達すると、直ちに固化するか、又は基板表面上に液体層を形成し、これは、プラズマトーチに対する基板の位置に依存して、方向性のある固化を経る可能性がある。基板とプラズマトーチの間の距離が比較的近いときは、プラズマのエネルギーが基板の表面を加熱して、堆積した、溶融された粒子を液体状態に保つであろう。しかしながら、基板とプラズマトーチの間の距離が十分に遠く、堆積した、溶融された粒子を液体状態に保つにはプラズマのエネルギーが十分ではないなら、溶融された粒子は、基板表面上に堆積すると、直ちに固化するであろう。液体層の条件を維持することは、ドープされていないアルミナ、イットリウムアルミニウムガーネット、アルミニウムマグネシウムスピネル、ジルコニア、及び溶融温度が1000℃以上の他の高融点物質の二重精製(下に論じる)を可能にするために重要である。対照的に、ドープされた高融点物質に関しては、高度に精製された、緻密なブロック中におけるドーピング物質の均一な分布を維持することが望まれ、これは、基板表面における液体層の形成を防ぐことにより、達成される。このように、高融点材料、例えばアルミナとドーピング物質が均一に混合された粒子はプラズマトーチによって溶融され、溶融された粒子は基板上に堆積し、基板表面上で即座に固化する。ドーピング物質の移送はおきないであろう。
【0022】
ドープされていないアルミナが基板上に堆積して液体層を形成すると想定すると、基板上で液体が方向性を持って固化するにつれて更なる精製が行われ、分配係数が1未満の不純物は固体−液体界面から溶融物中へと弾かれ、これらは、更に、ブロックの最外部上で固化する。不純物を含有するブロックのこの部分は、ダイヤモンドソーの使用を包含する任意の適切な手段を介して、簡単に、機械的にブロックから除去できる。基板12は、アルミナが基板上に均一に堆積し、精製されたアルミナの緻密なブロック11の形成を可能にする、垂直軸に沿う回転、反転可能な水平移動運動、及び垂直軸に沿う引き下ろし運動ができる支持体13上に設置される。装置15上での、供給する粉末の速度、回転速度、水平移動の振幅と速度、及び引き下げ速度のパラメーター、並びにプラズマトーチ内の基板の位置を経験的に調整することにより、所望の直径及び形状を持つアルミナ又は他の高融点材料の、精製された、緻密なブロックの生産が可能である。これらの3方向の動きは、モーターの使用を包含する任意の適切な方法で発生させることが可能である。任意の所望の直径及び形状のアルミナブロックを提供することに加えて、本発明の方法は、蒸発と方向性を持つ固化の過程による二重精製によって精製されたブロックを提供する。下の表1は、出発物質アルミナ、及び本発明の方法によって製造された、完成したアルミナブロックの不純物レベルを示す。精製前(出発物質)、及び精製後(緻密化されたブロック)の不純物濃度は、グロー放電質量分析計(VG9000)を用いて測定した。
【0023】
図2は、図1に類似している。図2を参照して、フィーダー16に格納された粉末は、粉体フィーダー16に接続されている水冷された注入装置17を介して、プラズマ炎10に供給される。注入装置17は、アルミナ粉末をプラズマ炎10に送り込む。この設計の、全ての他の構成要素は、図1に関して示し、説明した、同じ番号を付した構成要素と同様である。
【0024】
驚くべきことに、所望の直径及び形状の、高い溶融温度を持つ物質(アルミナ等)の、緻密で均一なブロックを製造するためには、溶融されたアルミナ(又は他の高融点物質)が基板上に堆積している間、3方向の全ての動きが必要であることが発見された。ドルアール(Drouart)等の欧州特許公開第1281680 A2号(米国特許第631,628 B2号)は、2方向の運動(回転及び水平軸に沿った前後の反転可能な運動)を用いた、シリカの精製及びそのシリカを光ファイバーの予備成型品に堆積させる方法を記載した。報告されたドルアールの方法は溶融シリカのブロックを製造するために有用であると言われているが、この様な方法はアルミナに対しては役に立たない。何故なら、アルミナは、もっと高い融点(2050℃)及び熱伝導率を持ち、従って、熱応力に起因して、得られる製品の屈曲及び亀裂の危険があるので、ドルアールの方法によって、制御された、また均一なやり方で予備成型品上に堆積させることはできないからである。
【0025】
ボール等(米国特許公開第20030027055号、第20040050098号、第20040025542号)は、2方向の運動(回転及び引き下げ運動)を用いた、シリカの精製及びそのシリカを基板上に堆積させる方法を記載した。報告されたボールの方法は溶融シリカの基板を製造するために有用であり、また、おそらく溶融シリカのブロックを製造するために使用できると言われているが、この様な方法はアルミナに対しては役に立たない。何故なら、アルミナは、もっと高い融点(2050℃)及び熱伝導率を持ち、従って、熱応力に起因して、得られる製品の屈曲及び亀裂の危険があるので、ボールの方法によって、制御された、また均一なやり方で基板上に堆積させることはできないからである。ボールの方法では、直径50−100mmの範囲のプラズマトーチの直径によって堆積基板の直径が制限されるという事実に起因して、溶融シリカを製造するときでさえ、製造される製品の直径は制限された。これに対し、驚くべきことに、特許請求された本発明の方法により、所定の直径及び形状を持つ、高融点物質(1000℃以上)の、高度に精製された、緻密なブロックを製造できるのである。
【0026】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを発生させる段階;
前記プラズマ中にアルミナ粒子を送り込んで、前記粒子を溶融する段階;及び
堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、前記堆積基板上に前記溶融された粒子を堆積させて、精製された、緻密なアルミナブロックを生産する段階、
を含む、所定の直径を持つ、精製された、緻密なアルミナブロックの生産方法。
【請求項2】
前記アルミナ粒子が0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマを高周波発生器による誘導によって発生させる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記精製された、緻密なアルミナブロックが、99.999%までの純度レベルを持つ請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、液体層を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子がドーピング物質を更に含み、及び前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、固体層を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ドーピング物質がTi、Cr、Mn、Ni、Fe、V又は2以上の前記物質の混合物を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プラズマを発生させる段階;
前記プラズマ中に酸化アルミニウム粒子及び酸化マグネシウム粒子を送り込んで、前記粒子を溶融する段階;及び
堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、前記堆積基板上に前記溶融された粒子を堆積させて、精製された、緻密なアルミニウム−マグネシウムスピネルブロックを生産する段階、
を含む、所定の直径を持つ、精製された、緻密なアルミニウム−マグネシウムスピネルブロックの生産方法。
【請求項9】
前記酸化アルミニウム粒子及び酸化イットリウム粒子が0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマを高周波発生器による誘導によって発生させる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記精製された、緻密なアルミニウムマグネシウムスピネルブロックが99.999%までの純度レベルを持つ請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、液体層を形成する請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子がドーピング物質を更に含み、及び前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、固体層を形成する請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ドーピング物質がFe、Ni又はCoを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プラズマを発生させる段階;
前記プラズマ中に酸化ジルコニウム粒子を送り込んで、前記粒子を溶融する段階;及び
堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、前記堆積基板上に前記溶融された粒子を堆積させて、精製された、緻密な酸化ジルコニウムブロックを生産する段階、
を含む、所定の直径を持つ、精製された、緻密な酸化ジルコニウムブロックの生産方法。
【請求項16】
前記酸化ジルコニウム粒子が0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プラズマを高周波発生器による誘導によって発生させる請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記精製された、緻密な酸化ジルコニウムブロックが99.999%までの純度レベルを持つ請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、液体層を形成する請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記粒子がドーピング物質を更に含み、及び前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、固体層を形成する請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記ドーピング物質がY、Ce、Er、Mg、Fe、Ca又は2以上の前記物質の混合物を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
プラズマを発生させる段階;
前記プラズマ中に二酸化珪素粒子を送り込んで、前記粒子を溶融する段階;及び
堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、前記堆積基板上に前記溶融された粒子を堆積させて、精製された、緻密なシリカブロックを生産する段階、
を含む、所定の直径を持つ、精製された、緻密なシリカブロックの生産方法。
【請求項23】
前記二酸化珪素粒子が0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プラズマを高周波発生器による誘導によって発生させる請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記精製された、緻密なシリカブロックが99.999%までの純度レベルを持つ請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、液体層を形成する請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記粒子がドーピング物質を更に含み、及び前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、固体層を形成する請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記ドーピング物質がGe、B又はPを含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
所定量のアルミナ粒子と酸化イットリウム粒子を混合して均一な混合物を形成させる段階;
プラズマを発生させる段階;
前記プラズマ中に前記均一な混合物を送り込んで前記粒子を溶融させ、液体を形成させる段階;及び
堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、前記堆積基板上に前記液体を堆積させて、精製された、緻密なイットリウムアルミニウムガーネットブロックを生産する段階、
を含む、所定の直径を持つ、精製された、緻密なイットリウムアルミニウムガーネットブロックの生産方法。
【請求項30】
前記アルミナ粒子及び酸化イットリウム粒子が0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記プラズマを高周波発生器による誘導によって発生させる請求項29に記載の方法。
【請求項32】
精製された、緻密なイットリウムアルミニウムスピネルブロックが99.999%までの純度レベルを持つ請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、液体層を形成する請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記粒子がドーピング物質を更に含み、及び前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、固体層を形成する請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記ドーピング物質がNd、Er、Yb、Ho、Cr、Tm、Dy、Sm、Tb、Ce又は2以上の任意の前記物質の混合物を含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
プラズマを発生させる段階;
前記プラズマ中に高融点物質の粒子を送り込んで前記粒子を溶融し、及び溶融された粒子を形成させる段階、ここで前記高融点物質は1000℃以上の融点を持ち;及び
堆積基板を、その垂直軸に沿う回転、その水平軸に沿う前後の並進運動、及びその垂直軸に沿う引き下ろし運動を包含する三つの独立した方向に移動させながら、前記堆積基板上に前記溶融された粒子を堆積させて、精製された、緻密なブロックを生産する段階、
を含む、所定の直径を持つ、精製された、緻密なブロックの生産方法。
【請求項37】
前記粒子が0.1μmから500μmの範囲の粒子サイズを持つ請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記プラズマを高周波発生器による誘導によって発生させる請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記精製された、緻密なブロックが99.999%までの純度レベルを持つ請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、液体層を形成する請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記粒子がドーピング物質を更に含み、及び前記溶融された粒子が、基板の表面に堆積したとき、固体層を形成する請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記高融点物質が少なくも1000℃の溶融温度を持つ請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記高融点物質がアルミナ、アルミニウム−マグネシウムスピネル、イットリウムアルミニウムガーネット、酸化ジルコニウム、及び二酸化珪素を含む請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−251902(P2011−251902A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−165678(P2011−165678)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【分割の表示】特願2008−525080(P2008−525080)の分割
【原出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(508034451)
【Fターム(参考)】