縦結合多重モードSAWフィルタ、モジュール装置
【課題】 低損失、且つ通過帯域の低域側の減衰量が十分得られる縦結合多重モードSAWフィルタを提供する。
【解決手段】 回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板1と、この水晶基板1上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDT2とを備え、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振されるSAWを水晶基板1の表面付近を伝搬するSH波とし、SAWの波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部11a、11bを2段縦続接続にて形成し、各々の縦結合多重モードSAWフィルタ部11a、11bのIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせるようにした。
【解決手段】 回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板1と、この水晶基板1上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDT2とを備え、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振されるSAWを水晶基板1の表面付近を伝搬するSH波とし、SAWの波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部11a、11bを2段縦続接続にて形成し、各々の縦結合多重モードSAWフィルタ部11a、11bのIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型でQ値を高く、周波数温度特性に優れた弾性表面波デバイスを利用した縦結合多重モードSAWフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:以下、SAW)デバイスは移動体通信用端末や車載用機器等の部品として幅広く利用され、小型であること、Q値が高いこと、周波数安定性が優れていることが強く要求されている。
これらの要求を実現するSAWデバイスとして、STカット水晶基板を用いたSAWデバイスがある。STカット水晶基板は結晶X軸を回転軸としてXZ面を結晶Z軸より反時計方向に42.75°回転した面(XZ’面)を持つ水晶板のカット名であり、結晶X軸方向に伝搬するレイリー波と呼ばれる(P+SV)波であるSAW(以下、STカット水晶SAWと称す)を利用する。STカット水晶SAWデバイスの用途は、発振素子として用いられるSAW共振子や、移動体通信端末のRF段とIC間に配置されるIF用フィルタなど幅広く存在する。
STカット水晶SAWデバイスが小型でQ値の高いデバイスを実現できる理由として、SAWの反射を効率良く利用できる点が挙げられる。
以下、図13に示すSTカット水晶SAW共振子を例に説明する。
この図13に示すSTカット水晶SAW共振子は、STカット水晶基板101上にそれぞれ互いに間挿し合う複数本の電極指を有するくし形電極(以下、IDTと称す)102を配置し、このIDT102の両側にSAWを反射する為のグレーティング反射器103a、103bを配置した構造である。STカット水晶SAWは圧電基板の表面に沿って伝搬する波であるので、グレーティング反射器103a、103bにより効率良く反射され、SAWのエネルギーをIDT102内に十分閉じ込めることができ、小型で且つQ値の高いデバイスが得られる。
更に、SAWデバイスを使用する上で重要な要素に周波数温度特性がある。上述のSTカット水晶SAWにおいては、周波数温度特性の1次温度係数が零であり、その特性は2次曲線で表され、頂点温度を使用温度範囲の中心に位置するように調整すると周波数変動量が格段に小さくなるので周波数安定性に優れていることが一般的に知られている。
しかしながら、前記STカット水晶SAWデバイスは、1次温度係数は零であるが、2次温度係数は−0.034(ppm/℃2)と比較的大きいので、使用温度範囲を拡大すると周波数変動量が極端に大きくなってしまうという問題があった。
【0003】
前記問題を解決する手法として、Meirion Lewis, “Surface Skimming Bulk Wave, SSBW”,IEEE Ultrasonics Symp. Proc., pp.744〜752 (1977)及び特公昭62−016050号に開示されたSAWデバイスがある。このSAWデバイスは、図14に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−50°回転した付近に設定し、且つ、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して垂直方向(Z’軸方向)にしたことが特徴である。なお、前述のカット角をオイラー角で表示する場合は(0°,θ+90°,90°)=(0°,40°,90°)となる。このSAWデバイスは、圧電基板の表面直下を伝搬するSH波をIDTによって励起し、その振動エネルギーを電極直下に閉じ込めることを特徴としていて、周波数温度特性が3次曲線となり、使用温度範囲における周波数変動量が極めて少なくなるので良好な周波数温度特性が得られる。
しかしながら、前記SH波は基本的に基板内部に潜って進んでいく波である為、圧電基板表面に沿って伝搬するSTカット水晶SAWと比較してグレーティング反射器によるSAWの反射効率が悪い。従って、小型で高QなSAWデバイスを実現し難いという問題がある。また、前述の先行文献においてもSAWの反射を利用しない遅延線としての応用については開示されているものの、SAWの反射を利用する手段は提案されておらず実用は困難であると言われていた。
【0004】
この問題を解決すべく、特公平01−034411号では、回転Yカット水晶基板のカット角θを−50°付近に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対し垂直方向(Z’軸方向)にした圧電基板111上に800±200対もの多対のIDT112を形成することにより、図15に示すようにグレーティング反射器を利用せずIDT112自体の反射だけでSAWエネルギーを閉じ込め高Q化を図った所謂多対IDT型SAW共振子が開示されている。
しかしながら、前記多対IDT型SAW共振子はグレーティング反射器を設けたSAW共振子と比較して効率的なエネルギー閉じ込め効果が得られず、高いQ値を得るのに必要なIDT対数が800±200対と非常に多くなってしまうので、STカット水晶SAW共振子よりもデバイスサイズが大きくなってしまい、近年の小型化の要求に応えることができないという問題があった。
また、前記特公平01−034411号に開示されているSAW共振子においては、IDTにて励振されたSAWの波長をλとした時、電極膜厚を2%λ以上、好ましくは4%λ以下にすることによりQ値を高めることができるとされており、共振周波数200MHzの場合、4%λ付近でQ値が飽和に達するが、その時のQ値は20000程度しか得られずSTカット水晶SAW共振子と比較してもほぼ同等のQ値しか得られない。この原因として、膜厚が2%λ以上4%λ以下の範囲ではSAWが圧電基板表面に十分集まっていないので反射が効率良く利用できないことが考えられる。
【特許文献1】特公昭62−016050号
【特許文献2】特公平01−034411号
【非特許文献1】Meirion Lewis, “Surface Skimming Bulk Wave, SSBW”, IEEE Ultrasonics Symp. Proc., pp.744〜752 (1977)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧電基板にSTカット水晶基板を用いると周波数温度特性の2次温度係数が−0.034(ppm/℃2)と大きいので実用上の周波数変動量が極端に大きくなってしまう問題点があった。また特公平01−034411号に開示されているSAWデバイスの構造では、IDTの対数を非常に多くしなければならないのでデバイスサイズが大型になってしまうという問題点があった。
そこで、本出願人らは上記したような問題を解決するために、特願2004−310452で回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°とした水晶基板を用いて、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して垂直方向とし、励振されるSAWは前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波であるSAWデバイスを構成し、そのIDTはAl又はAlを主成分とする合金からなり、SAWの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10とすることで、従来から一般的に使用されているSTカット水晶SAWデバイスよりも高いQ値と良好な周波数温度特性が得られる小型のSAWデバイスを実現する手法を提案した。
そして、このSAWデバイスを用いて縦結合多重モードSAWフィルタ(以下、縦結合DMSフィルタともいう)を形成すれば、低損失で周波数温度特性が良好な小型のフィルタを実現することができる。
しかしながら、本出願人が先に提案したSAWデバイスを用いて縦結合DMSフィルタを実現した場合は、IDTとグレーティング反射器の特性により、図16に示すように通過帯域の低域側の減衰量が劣化するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板と、該水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を2段縦続接続にて形成し、各々の前記縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせた縦結合多重モードSAWフィルタであることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板と、該水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を並列接続にて形成し、各々の前記縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせた縦結合多重モードSAWフィルタであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記水晶基板の前記回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定した請求項1又は請求項2に記載の縦結合多重モードSAWフィルタを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記電極膜厚H/λを0.05<H/λ<0.10に設定した請求項1乃至3のいずれかに記載の縦結合多重モードSAWフィルタを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の縦結合多重モードSAWフィルタを用いたモジュール装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定した水晶基板と、この水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を、2段従属接続、または並列接続にて形成し、各々の縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせたことで、通過帯域低域側の減衰量の劣化を防止し、低損失且つ高減衰フィルタ特性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
先ず、図1〜図8を参照して本出願人が特願2004−310452で提案した弾性表面波フィルタについて説明する。
図1(a)は本出願人が先に提案したSAWデバイスの一例であるSAW共振子の平面図を示しており、圧電基板1上に正電極指と負電極指とがそれぞれ互いに間挿し合うIDT2と、このIDT2の両側にSAWを反射する為のグレーティング反射器3a、3bとを配置する。そして、前記IDT2の入出力パッド4a、4bとパッケージ6の入出力用端子とを金属ワイヤ5a、5bにより電気的に導通し、パッケージ6の開口部を蓋(リッド)で気密封止する。圧電基板1は、図14に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−50°回転した付近に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対しほぼ垂直方向(90°±5°)にした水晶平板であって、励振するSAWはSH波である。なお、IDT2及びグレーティング反射器3a、3bの電極材料はAl又はAlを主成分とする合金である。また、図1(b)はIDT2の断面図を示しており、ここではIDT2上を励振するSAWの波長をλとした時に電極膜厚を波長で基準化した値H/λで表し、IDT2を構成する電極指の電極指幅L/(電極指幅L+電極指間のスペースS)をライン占有率mrとした時にmr=0.60としている。
上記のSAWデバイスにおいては、電極膜厚H/λを従来より大きく設定することで、SAWを圧電基板表面に集中させて、グレーティング反射器によりSAWの反射を効率良く利用できるようにし、少ないIDT対数やグレーティング反射器本数でもSAWエネルギーをIDT内に閉じ込めるようにしてデバイスサイズの小型化を図った。
一般的にSAW共振子における最適設計とは、周波数温度特性が優れており、Qが高く且つ容量比γの小さいもの、即ちfigure of merit(Q/γ)が大きいことが重要である。ここで、図1に示したSAW共振子の諸特性について調べた。図2は、図1に示すSAW共振子において、圧電基板1に−51°回転Yカット90°X伝搬水晶基板(オイラー角表示では(0°,39°,90°))を用い、共振周波数を315MHz、電極膜厚H/λを0.06、IDT2の対数を100対、グレーティング反射器3a、3bの本数を各々100本とした場合の共振子の諸特性を表している。図2(a)にQ値、figure of merit、2次温度係数を、図2(b)に周波数温度特性を実際の試作結果に基づき示している。また、比較の為に、圧電基板のサイズを同じにしたSTカット水晶SAW共振子の諸特性を従来品として併記した。
【0009】
図2より図1に示したSAW共振子と従来のSTカット水晶SAW共振子とを比較すると、Q値が1.8倍強、figure of meritが約2倍と大きい値が得られている。また、周波数温度特性については、頂点温度Tpは約+25℃が得られ、温度による周波数変動量は従来の約0.6倍程度に小さくなるという非常に優れた効果が確認された。
更に、図1に示したSAW共振子はSTカット水晶SAW共振子よりも良好なQ値を保ちながら圧電基板のサイズを小型化できる。これは、図1に示したSAW共振子の電極膜厚H/λの増加に対するIDT又はグレーティング反射器でのSAWの反射量の増加分が、STカット水晶SAW共振子と比較して著しく大きいことに起因する。即ち、図1に示したSAW共振子は電極膜厚H/λを大きくすることで、STカット水晶SAW共振子よりも少ないIDT対数又はグレーティング反射器本数で高いQ値を実現可能である。
図3は図1に示したSAW共振子における電極膜厚H/λとQ値の関係を示したものであり、共振子設計条件は前述と同等である。同図より、0.04<H/λ<0.12の範囲においてSTカット水晶SAW共振子のQ値(=15000)を上回る値が得られることが分かる。更に、0.05<H/λ<0.10の範囲に設定することにより20000以上もの高いQ値が得られる。
また、特公平01−034411号にある多対IDT型SAW共振子と図1に示したSAW共振子のQ値を比較すると、特公平01−034411号で得られているQ値は共振周波数が207.561(MHz)における値であり、これを共振周波数315(MHz)に変換すると、Q値は15000程度となり、STカット水晶SAW共振子とほぼ同等である。また、共振子のサイズを比較すると、特公平01−034411号の多対IDT型SAW共振子は800±200対もの対数が必要なのに対し、図1に示したSAW共振子ではIDTとグレーティング反射器の両方で200対分の大きさで十分であるので格段に小型化できる。従って、電極膜厚を0.04<H/λ<0.12の範囲に設定し、グレーティング反射器を設けて効率良くSAWを反射することで、特公平01−034411号に開示されている多対IDT型SAW共振子よりも小型で且つQ値が高いSAWデバイスを実現できる。
【0010】
次に、図4は図1に示したSAW共振子における電極膜厚H/λと2次温度係数の関係を示したものであり、共振子設計条件は前述と同等である。同図より、高いQ値が得られる0.04<H/λ<0.12の範囲においてSTカット水晶SAW共振子の2次温度係数−0.034(ppm/℃2)よりも良好な値が得られることが分かる。
以上より、電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12の範囲に設定することで、STカット水晶SAWデバイス及び特公平01−034411号に開示されているSAWデバイスよりも小型でQ値が高く、且つ周波数安定性に優れたSAWデバイスを提供できる。
また、これまでカット角θを−51°とした場合についてのみ示してきたが、図1に示したSAW共振子においては、カット角θを変えても膜厚依存性は大きく変化せず、−51°から数度ずれたカット角においても電極膜厚を0.04<H/λ<0.12の範囲に設定することで、良好なQ値と2次温度係数が得られる。
ところで、図1に示したSAW共振子は、非常に広い温度範囲では3次的な温度特性となるが、特定の狭い温度範囲では2次特性と見なすことができ、その頂点温度Tpは電極膜厚やカット角によって変化する。従って、いくら周波数温度特性が優れていても頂点温度Tpが使用温度範囲外となってしまうと周波数安定性は著しく劣化してしまうので、実用的な使用温度範囲(−50℃〜+125℃)において優れた周波数安定性を実現するには、2次温度係数だけでなく頂点温度Tpについても詳細に検討する必要がある。
【0011】
図5(a)は、図1に示したSAW共振子においてカット角θを−50.5°とした時の電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係を示している。同図から明らかなように、電極膜厚H/λを大きくすると頂点温度Tpは下がり、電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係は次の近似式で表わされる。
Tp(H/λ)=−41825×(H/λ)2+2855.4×(H/λ)−26.42・・・(1)
また、−50°近傍のカット角においても切片を除けばおおよそ式(1)が適用できる。
また、図5(b)は、図1に示したSAW共振子において電極膜厚H/λを0.06とした時のカット角θと頂点温度Tpの関係を示している。同図から明らかなように、カット角θの絶対値を小さくすると頂点温度Tpは下がり、カット角θと頂点温度Tpの関係は次の近似式で表わされる。
Tp(θ)=−43.5372×θ−2197.14 ・・・(2)
式(1)及び式(2)から電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とした時に頂点温度Tpを実用的な使用温度範囲(−50〜+125℃)に設定するには、カット角θを−59.9°≦θ≦−48.9°の範囲に設定すれば良いことが分かる。
また、電極膜厚H/λとカット角θの双方を考慮する場合、頂点温度Tpは式(1)及び式(2)から次の近似式で表わされる。
Tp(H/λ,θ)=Tp(H/λ)+Tp(θ)=−41825×(H/λ)2+2855.4×(H/λ)−43.5372×θ−2223.56 ・・・(3)
式(3)より、頂点温度Tpを使用温度範囲(−50〜+125℃)に設定するには、次式で表される範囲に電極膜厚H/λ及びカット角θを設定すれば良い。
0.9613≦−18.498×(H/λ)2+1.2629×(H/λ)−0.019255×θ≦1.0387 ・・・(4)
このように、本出願人が先に提案したSAWデバイスではカット角θが−59.9゜≦θ≦−48.9゜の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、SAWの伝搬方向がX軸に対してほぼ垂直方向(直交方向)として励振されるSH波を用い、IDTやグレーティング反射器の電極材料をAlまたはAlを主とした合金にて構成し、その電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とすることで、STカット水晶SAWデバイスより小型で、且つQ値が大きく、且つ周波数安定性の優れているSAWデバイスを実現できる。
【0012】
ここで、より最適な条件について検討すると、電極膜厚H/λは図3よりQ値が20000以上得られる0.05<H/λ<0.10の範囲に設定するのが好ましい。また、頂点温度Tpをより実用的な使用温度範囲(0〜+70℃)に設定する為には、カット角θは−55.7°≦θ≦−50.2°の範囲に設定するのが好ましく、更には、式(3)より得られる次式の範囲にカット角θ及び電極膜厚H/λを設定するのが好ましい。
0.9845≦−18.518×(H/λ)2+1.2643×(H/λ)−0.019277×θ≦1.0155 ・・・(5)
以上では、図5(a)のカット角θを−50.5°とした時の電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係、及び図5(b)の電極膜厚H/λを0.06とした時のカット角θと頂点温度Tpの関係から、頂点温度Tpが実用的な使用温度範囲に入るような電極膜厚H/λとカット角θの関係式を導き出したが、更にカット角θの範囲を広げて実験を行ったところ、より詳細な条件を見出すことができたので以下説明する。
【0013】
図6は、前記SAW共振子において頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時の水晶基板のカット角θと電極膜厚H/λの関係を示しており、各Tp特性の近似式は以下の通りである。
Tp=−50(℃):H/λ≒−1.02586×10-4×θ3−1.73238×10-2×θ2−0.977607×θ−18.3420
Tp=0(℃):H/λ≒−9.87591×10-5×θ3−1.70304×10-2×θ2−0.981173×θ−18.7946
Tp=+70(℃):H/λ≒−1.44605×10-4×θ3−2.50690×10-2×θ2−1.45086×θ−27.9464
Tp=+125(℃):H/λ≒−1.34082×10-4×θ3−2.34969×10-2×θ2−1.37506×θ−26.7895
図6から、頂点温度Tp(℃)を実用的な範囲である−50≦Tp≦+125に設定するには、Tp=−50℃及びTp=+125℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−1.34082×10-4×θ3−2.34969×10-2×θ2−1.37506×θ−26.7895<H/λ<−1.02586×10-4×θ3−1.73238×10-2×θ2−0.977607×θ−18.3420となるようにカット角θ及び電極膜厚H/λを設定すれば良いことが分かる。また、この時の電極膜厚H/λの範囲は、従来のSTカット水晶デバイスより優れた特性が得られる0.04<H/λ<0.12とし、カット角θの範囲は図6の点Aから点Bに示す範囲の−64.0°<θ<−49.3°とする必要がある。
【0014】
更に、より最適な条件について検討すると、頂点温度Tp(℃)はより実用的な使用温度範囲である0≦Tp≦+70に設定するのが望ましい。Tp(℃)を前述の範囲に設定するには、図6に示すTp=0℃及びTp=+70℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−1.44605×10-4×θ3−2.50690×10-2×θ2−1.45086×θ−27.9464<H/λ<−9.87591×10-5×θ3−1.70304×10-2×θ2−0.981173×θ−18.7946となるようにカット角θ及び電極膜厚H/λを設定すれば良い。また、電極膜厚H/λはQ値が20000以上得られる0.05<H/λ<0.10の範囲にするのが望ましく、電極膜厚を前述の範囲とし、頂点温度Tp(℃)を0≦Tp≦+70の範囲内に設定するには、カット角θを図6(a)の点Cから点Dに示す範囲の−61.4°<θ<−51.1°に設定する必要がある。
以上、詳細に検討した結果、カット角θが−64.0゜<θ<−49.3゜、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、SAWの伝搬方向がX軸に対してほぼ垂直方向(直交方向)として励振されるSH波を用い、IDTやグレーティング反射器の電極材料をAlまたはAlを主とした合金にて構成し、その電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10とすることで、STカット水晶SAWデバイスよりQ値が大きく優れた温度特性が得られると共に、頂点温度Tpを実用的な使用温度範囲内に設定できることを見出した。
ところで、これまでIDTのライン占有率mrを0.60と固定した時の例について説明してきたが、以下ではライン占有率を変数に含めた場合のTp特性について検討した。
図7は、電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrと頂点温度Tpの関係を示している。なお、縦軸は頂点温度Tp(℃)を、横軸は電極膜厚とライン占有率との積H/λ×mrを示しており、この時の水晶基板のカット角θは−51.5°としている。同図に示すように、電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrの値を大きくする程、頂点温度Tpは下がることが分かる。
【0015】
次に、図8は頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時の水晶基板のカット角θと電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrの関係を示している。なお、各Tp特性の近似式は以下の通りである。
Tp=−50(℃):H/λ×mr≒−6.15517×10-5×θ3−1.03943×10-2×θ2−0.586564×θ−11.0052
Tp=0(℃):H/λ×mr≒−5.92554×10-5×θ3−1.02183×10-2×θ2−0.588704×θ−11.2768
Tp=+70(℃):H/λ×mr≒−8.67632×10-5×θ3−1.50414×10-2×θ2−0.870514×θ−16.7678
Tp=+125(℃):H/λ×mr≒−8.04489×10-5×θ3−1.40981×10-2×θ2−0.825038×θ−16.0737
図8から、頂点温度Tp(℃)を実用的な範囲である−50≦Tp≦+125に設定するには、Tp=−50℃及びTp=+125℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−8.04489×10-5×θ3−1.40981×10-2×θ2−0.825038×θ−16.0737<H/λ×mr<−6.15517×10-5×θ3−1.03943×10-2×θ2−0.586564×θ−11.0052となるようにカット角θ及び電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrを設定すれば良いことが分かる。また、この時の電極膜厚H/λの範囲は従来のSTカット水晶デバイスより優れた特性が得られる0.04<H/λ<0.12とし、カット角θの範囲は−64.0°<θ<−49.3°とする必要がある。
また、頂点温度Tp(℃)をより実用的な使用温度範囲である0≦Tp≦+70に設定するには、図8に示すTp=0℃及びTp=+70℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−8.67632×10-5×θ3−1.50414×10-2×θ2−0.870514×θ−16.7678<H/λ×mr<−5.92554×10-5×θ3−1.02183×10-2×θ2−0.588704×θ−11.2768となるようにカット角θ及び電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrを設定すれば良い。また、この時の電極膜厚H/λはQ値が20000以上得られる0.05<H/λ<0.10とするのが望ましく、電極膜厚を前述の範囲とし、且つ、頂点温度Tp(℃)を0≦Tp≦+70の範囲内に設定するには、カット角θは−61.4°<θ<−51.1°とするのが望ましい。
【0016】
以下、本発明のSAWデバイスの実施形態について説明する。
ところで、上記したような本出願人が先に提案したSAWデバイスを用いて縦結合DMSフィルタを実現した場合は、IDTとグレーティング反射器の特性により通過帯域の低域側の減衰量が劣化するという問題点があった。
そこで、本出願人らは上記のSAWデバイスを用いて縦結合DMSフィルタを構成した場合に、通過帯域の低域側で発生する減衰量の劣化を防止するために各種実験を行った結果、2段縦続接続する各々の縦結合DMSフィルタのIDTピッチと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせるようにすると効果的であることがわかった。以下、具体例を挙げて説明する。
図9は、第1の実施形態の1次−2次モードを利用した縦続接続型縦結合DMSフィルタの構成を示した平面図である。
この図9に示す縦続接続型縦結合DMSフィルタは、図1〜図8において説明したSAWデバイスの構成を備えると共に、2つのIDT2a、2bと、2つのグレーティング反射器3a、3bとを、IDT2a、2bによって励起されるSAWの伝搬方向に沿って近接配置することにより形成した1次−2次縦結合DMSフィルタ(縦結合多重モードSAWフィルタ部)11a、11bを1枚の水晶基板1に2つ並列に配置し、それら縦続接続して構成したものである。
即ち、図9に示す縦結合DMSフィルタは、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板1と、この水晶基板1上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDT2とを備え、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振されるSAWを水晶基板1の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した1次−2次縦結合DMSフィルタ11a、11bのIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせるようにした。
【0017】
図10は、図9に示す縦続接続型縦結合DMSフィルタの各々の1次−2次縦結合DMSフィルタの周波数特性を示した図であり、例えば一方の1次−2次縦結合DMSフィルタ11a(以下、セクション1という)11aのIDTピッチLt1と反射器ピッチLr1の比Lt1/Lr1を0.996、他方の1次−2次縦結合DMSフィルタ11b(以下、「セクション2」という)のIDTピッチLt2と反射器ピッチLr2の比を0.993とすることにより、各セクション1,2の周波数特性の山と山、谷と谷をおおよそ一致させるようにしている。
図11(a)は、図10に示した各々のセクションのIDTピッチと反射器ピッチの比を異ならせた縦結合DMSフィルタの周波数特性を示した図、図11(b)は、図11(a)に示した周波数特性を実線に、図16に示した従来の縦結合DMSフィルタの周波数特性を破線に合わせて示した図である。この図11(b)から分かるように、本実施形態の縦結合DMSフィルタによれば、通過帯域における低域側の減衰量の劣化が大幅に改善されていることがっわかる。
図12は、第2の実施形態の1次−3次モードを利用した並列接続型縦結合DMSフィルタの構成を示した平面図である。
この図12に示す並列接続型縦結合DMSフィルタも、上記図1〜図8において説明したSAWデバイスの構成を備えると共に、3つのIDT2a、2b、2cと、2つのグレーティング反射器3a、3bとを、IDT2a、2b、2cによって励起されるSAWの伝搬方向に沿って近接配置することにより形成した1次−3次縦結合DMSフィルタを1枚の水晶基板1に配置し、それら並列接続して構成したものである。そのうえで、並列接続した各々の縦結合DMSフィルタ部11a、11b(セクション1、2)のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせるようにしたものである。
このように構成した場合は上記縦続接続型縦結合DMSフィルタに比べて通過帯域における低域側の減衰量を低下するが、挿入損失を大幅に改善することが可能になる。
【0018】
なお、これまで説明したSAWデバイスにおいて、IDTやグレーティング反射器上にSiO2等の保護膜やAlを陽極酸化した保護膜等を形成したり、Al電極の上部あるいは下部に密着層あるいは耐電力向上等の目的で別の金属薄膜を形成した場合においても、本発明と同様の効果を得られることは明らかである。また、センサ装置やモジュール装置、発振回路等に本発明のSAWデバイスが適用できることは言うまでもない。また、電圧制御SAW発振器(VCSO)等に本発明のSAWデバイスを用いれば、容量比γを小さくできるので周波数可変幅を大きくとれる。
また、本発明のSAWデバイスは、図1に示すようなSAWチップとパッケージをワイヤボンディングした構造以外でも良く、SAWチップの電極パッドとパッケージの端子とを金属バンプで接続したフリップチップボンディング(FCB)構造や、配線基板上にSAWチップをフリップチップボンディングしSAWチップの周囲を樹脂封止したCSP(Chip Size Package)構造、或いは、SAWチップ上に金属膜や樹脂層を形成することによりパッケージや配線基板を不要としたWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)構造等にしても良い。更には、水晶デバイスを水晶又はガラス基板で挟んで積層封止したAQP(All Quartz Package)構造としても良い。前記AQP構造は、水晶又はガラス基板で挟んだだけの構造であるのでパッケージが不要で薄型化が可能であり、低融点ガラス封止や直接接合とすれば接着剤によるアウトガスが少なくなりエージング特性に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るSAW共振子を説明する図であり、(a)は平面図、(b)はIDTの断面図。
【図2】本発明に係るSAW共振子と従来品の比較を示したものであり、(a)はQ値及びFigure of merit及び2次温度係数の比較を示す図、(b)は周波数温度特性の比較を示す図。
【図3】本発明に係るSAW共振子の電極膜厚H/λとQ値との関係を示す図。
【図4】本発明に係るSAW共振子の電極膜厚H/λと2次温度係数との関係を示す図。
【図5】(a)は本発明に係るSAW共振子の電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係を示す図、(b)はカット角θと頂点温度Tpの関係を示す図。
【図6】本発明に係るSAW共振子の頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時のカット角θと電極膜厚H/λの関係を示す図。
【図7】本発明に係るSAW共振子の電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrと頂点温度Tpの関係を示す図。
【図8】本発明に係るSAW共振子の頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時のカット角θと電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrの関係を示す図。
【図9】第1の実施形態の1次−2次モードを利用した縦続接続型縦結合DMSフィルタの構成を示した平面図。
【図10】図9に示す縦続接続型縦結合DMSフィルタの各々の縦結合DMSフィルタ(セクション)の周波数特性を示した図。
【図11】(a)は図10に示した各々のセクションのIDTピッチと反射器ピッチの比を異ならせた縦続接続型縦結合DMSフィルタの周波数特性を示した図、(b)は(a)に示した周波数特性と従来の縦結合DMSフィルタの周波数特性を合わせて示した図。
【図12】第2の実施形態の1次−3次モードを利用した並列接続型縦結合DMSフィルタの構成を示した平面図。
【図13】従来のSTカット水晶SAW共振子を説明する図。
【図14】(a)(b)は−50°回転Yカット90°X伝搬水晶基板を説明する図。
【図15】従来の多対IDT型SAW共振子を説明する図。
【図16】従来の縦結合DMSフィルタの周波数特性を合わせて示した図。
【符号の説明】
【0020】
1 圧電基板、2 2a 2b 2c IDT、3a、3b グレーティング反射器、4a、4b 入出力用パッド、5a、5b 金属ワイヤ、6 パッケージ、11 縦結合DMSフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型でQ値を高く、周波数温度特性に優れた弾性表面波デバイスを利用した縦結合多重モードSAWフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:以下、SAW)デバイスは移動体通信用端末や車載用機器等の部品として幅広く利用され、小型であること、Q値が高いこと、周波数安定性が優れていることが強く要求されている。
これらの要求を実現するSAWデバイスとして、STカット水晶基板を用いたSAWデバイスがある。STカット水晶基板は結晶X軸を回転軸としてXZ面を結晶Z軸より反時計方向に42.75°回転した面(XZ’面)を持つ水晶板のカット名であり、結晶X軸方向に伝搬するレイリー波と呼ばれる(P+SV)波であるSAW(以下、STカット水晶SAWと称す)を利用する。STカット水晶SAWデバイスの用途は、発振素子として用いられるSAW共振子や、移動体通信端末のRF段とIC間に配置されるIF用フィルタなど幅広く存在する。
STカット水晶SAWデバイスが小型でQ値の高いデバイスを実現できる理由として、SAWの反射を効率良く利用できる点が挙げられる。
以下、図13に示すSTカット水晶SAW共振子を例に説明する。
この図13に示すSTカット水晶SAW共振子は、STカット水晶基板101上にそれぞれ互いに間挿し合う複数本の電極指を有するくし形電極(以下、IDTと称す)102を配置し、このIDT102の両側にSAWを反射する為のグレーティング反射器103a、103bを配置した構造である。STカット水晶SAWは圧電基板の表面に沿って伝搬する波であるので、グレーティング反射器103a、103bにより効率良く反射され、SAWのエネルギーをIDT102内に十分閉じ込めることができ、小型で且つQ値の高いデバイスが得られる。
更に、SAWデバイスを使用する上で重要な要素に周波数温度特性がある。上述のSTカット水晶SAWにおいては、周波数温度特性の1次温度係数が零であり、その特性は2次曲線で表され、頂点温度を使用温度範囲の中心に位置するように調整すると周波数変動量が格段に小さくなるので周波数安定性に優れていることが一般的に知られている。
しかしながら、前記STカット水晶SAWデバイスは、1次温度係数は零であるが、2次温度係数は−0.034(ppm/℃2)と比較的大きいので、使用温度範囲を拡大すると周波数変動量が極端に大きくなってしまうという問題があった。
【0003】
前記問題を解決する手法として、Meirion Lewis, “Surface Skimming Bulk Wave, SSBW”,IEEE Ultrasonics Symp. Proc., pp.744〜752 (1977)及び特公昭62−016050号に開示されたSAWデバイスがある。このSAWデバイスは、図14に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−50°回転した付近に設定し、且つ、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して垂直方向(Z’軸方向)にしたことが特徴である。なお、前述のカット角をオイラー角で表示する場合は(0°,θ+90°,90°)=(0°,40°,90°)となる。このSAWデバイスは、圧電基板の表面直下を伝搬するSH波をIDTによって励起し、その振動エネルギーを電極直下に閉じ込めることを特徴としていて、周波数温度特性が3次曲線となり、使用温度範囲における周波数変動量が極めて少なくなるので良好な周波数温度特性が得られる。
しかしながら、前記SH波は基本的に基板内部に潜って進んでいく波である為、圧電基板表面に沿って伝搬するSTカット水晶SAWと比較してグレーティング反射器によるSAWの反射効率が悪い。従って、小型で高QなSAWデバイスを実現し難いという問題がある。また、前述の先行文献においてもSAWの反射を利用しない遅延線としての応用については開示されているものの、SAWの反射を利用する手段は提案されておらず実用は困難であると言われていた。
【0004】
この問題を解決すべく、特公平01−034411号では、回転Yカット水晶基板のカット角θを−50°付近に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対し垂直方向(Z’軸方向)にした圧電基板111上に800±200対もの多対のIDT112を形成することにより、図15に示すようにグレーティング反射器を利用せずIDT112自体の反射だけでSAWエネルギーを閉じ込め高Q化を図った所謂多対IDT型SAW共振子が開示されている。
しかしながら、前記多対IDT型SAW共振子はグレーティング反射器を設けたSAW共振子と比較して効率的なエネルギー閉じ込め効果が得られず、高いQ値を得るのに必要なIDT対数が800±200対と非常に多くなってしまうので、STカット水晶SAW共振子よりもデバイスサイズが大きくなってしまい、近年の小型化の要求に応えることができないという問題があった。
また、前記特公平01−034411号に開示されているSAW共振子においては、IDTにて励振されたSAWの波長をλとした時、電極膜厚を2%λ以上、好ましくは4%λ以下にすることによりQ値を高めることができるとされており、共振周波数200MHzの場合、4%λ付近でQ値が飽和に達するが、その時のQ値は20000程度しか得られずSTカット水晶SAW共振子と比較してもほぼ同等のQ値しか得られない。この原因として、膜厚が2%λ以上4%λ以下の範囲ではSAWが圧電基板表面に十分集まっていないので反射が効率良く利用できないことが考えられる。
【特許文献1】特公昭62−016050号
【特許文献2】特公平01−034411号
【非特許文献1】Meirion Lewis, “Surface Skimming Bulk Wave, SSBW”, IEEE Ultrasonics Symp. Proc., pp.744〜752 (1977)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧電基板にSTカット水晶基板を用いると周波数温度特性の2次温度係数が−0.034(ppm/℃2)と大きいので実用上の周波数変動量が極端に大きくなってしまう問題点があった。また特公平01−034411号に開示されているSAWデバイスの構造では、IDTの対数を非常に多くしなければならないのでデバイスサイズが大型になってしまうという問題点があった。
そこで、本出願人らは上記したような問題を解決するために、特願2004−310452で回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°とした水晶基板を用いて、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して垂直方向とし、励振されるSAWは前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波であるSAWデバイスを構成し、そのIDTはAl又はAlを主成分とする合金からなり、SAWの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10とすることで、従来から一般的に使用されているSTカット水晶SAWデバイスよりも高いQ値と良好な周波数温度特性が得られる小型のSAWデバイスを実現する手法を提案した。
そして、このSAWデバイスを用いて縦結合多重モードSAWフィルタ(以下、縦結合DMSフィルタともいう)を形成すれば、低損失で周波数温度特性が良好な小型のフィルタを実現することができる。
しかしながら、本出願人が先に提案したSAWデバイスを用いて縦結合DMSフィルタを実現した場合は、IDTとグレーティング反射器の特性により、図16に示すように通過帯域の低域側の減衰量が劣化するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板と、該水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を2段縦続接続にて形成し、各々の前記縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせた縦結合多重モードSAWフィルタであることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板と、該水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を並列接続にて形成し、各々の前記縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせた縦結合多重モードSAWフィルタであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記水晶基板の前記回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定した請求項1又は請求項2に記載の縦結合多重モードSAWフィルタを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記電極膜厚H/λを0.05<H/λ<0.10に設定した請求項1乃至3のいずれかに記載の縦結合多重モードSAWフィルタを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の縦結合多重モードSAWフィルタを用いたモジュール装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定した水晶基板と、この水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を、2段従属接続、または並列接続にて形成し、各々の縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせたことで、通過帯域低域側の減衰量の劣化を防止し、低損失且つ高減衰フィルタ特性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
先ず、図1〜図8を参照して本出願人が特願2004−310452で提案した弾性表面波フィルタについて説明する。
図1(a)は本出願人が先に提案したSAWデバイスの一例であるSAW共振子の平面図を示しており、圧電基板1上に正電極指と負電極指とがそれぞれ互いに間挿し合うIDT2と、このIDT2の両側にSAWを反射する為のグレーティング反射器3a、3bとを配置する。そして、前記IDT2の入出力パッド4a、4bとパッケージ6の入出力用端子とを金属ワイヤ5a、5bにより電気的に導通し、パッケージ6の開口部を蓋(リッド)で気密封止する。圧電基板1は、図14に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−50°回転した付近に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対しほぼ垂直方向(90°±5°)にした水晶平板であって、励振するSAWはSH波である。なお、IDT2及びグレーティング反射器3a、3bの電極材料はAl又はAlを主成分とする合金である。また、図1(b)はIDT2の断面図を示しており、ここではIDT2上を励振するSAWの波長をλとした時に電極膜厚を波長で基準化した値H/λで表し、IDT2を構成する電極指の電極指幅L/(電極指幅L+電極指間のスペースS)をライン占有率mrとした時にmr=0.60としている。
上記のSAWデバイスにおいては、電極膜厚H/λを従来より大きく設定することで、SAWを圧電基板表面に集中させて、グレーティング反射器によりSAWの反射を効率良く利用できるようにし、少ないIDT対数やグレーティング反射器本数でもSAWエネルギーをIDT内に閉じ込めるようにしてデバイスサイズの小型化を図った。
一般的にSAW共振子における最適設計とは、周波数温度特性が優れており、Qが高く且つ容量比γの小さいもの、即ちfigure of merit(Q/γ)が大きいことが重要である。ここで、図1に示したSAW共振子の諸特性について調べた。図2は、図1に示すSAW共振子において、圧電基板1に−51°回転Yカット90°X伝搬水晶基板(オイラー角表示では(0°,39°,90°))を用い、共振周波数を315MHz、電極膜厚H/λを0.06、IDT2の対数を100対、グレーティング反射器3a、3bの本数を各々100本とした場合の共振子の諸特性を表している。図2(a)にQ値、figure of merit、2次温度係数を、図2(b)に周波数温度特性を実際の試作結果に基づき示している。また、比較の為に、圧電基板のサイズを同じにしたSTカット水晶SAW共振子の諸特性を従来品として併記した。
【0009】
図2より図1に示したSAW共振子と従来のSTカット水晶SAW共振子とを比較すると、Q値が1.8倍強、figure of meritが約2倍と大きい値が得られている。また、周波数温度特性については、頂点温度Tpは約+25℃が得られ、温度による周波数変動量は従来の約0.6倍程度に小さくなるという非常に優れた効果が確認された。
更に、図1に示したSAW共振子はSTカット水晶SAW共振子よりも良好なQ値を保ちながら圧電基板のサイズを小型化できる。これは、図1に示したSAW共振子の電極膜厚H/λの増加に対するIDT又はグレーティング反射器でのSAWの反射量の増加分が、STカット水晶SAW共振子と比較して著しく大きいことに起因する。即ち、図1に示したSAW共振子は電極膜厚H/λを大きくすることで、STカット水晶SAW共振子よりも少ないIDT対数又はグレーティング反射器本数で高いQ値を実現可能である。
図3は図1に示したSAW共振子における電極膜厚H/λとQ値の関係を示したものであり、共振子設計条件は前述と同等である。同図より、0.04<H/λ<0.12の範囲においてSTカット水晶SAW共振子のQ値(=15000)を上回る値が得られることが分かる。更に、0.05<H/λ<0.10の範囲に設定することにより20000以上もの高いQ値が得られる。
また、特公平01−034411号にある多対IDT型SAW共振子と図1に示したSAW共振子のQ値を比較すると、特公平01−034411号で得られているQ値は共振周波数が207.561(MHz)における値であり、これを共振周波数315(MHz)に変換すると、Q値は15000程度となり、STカット水晶SAW共振子とほぼ同等である。また、共振子のサイズを比較すると、特公平01−034411号の多対IDT型SAW共振子は800±200対もの対数が必要なのに対し、図1に示したSAW共振子ではIDTとグレーティング反射器の両方で200対分の大きさで十分であるので格段に小型化できる。従って、電極膜厚を0.04<H/λ<0.12の範囲に設定し、グレーティング反射器を設けて効率良くSAWを反射することで、特公平01−034411号に開示されている多対IDT型SAW共振子よりも小型で且つQ値が高いSAWデバイスを実現できる。
【0010】
次に、図4は図1に示したSAW共振子における電極膜厚H/λと2次温度係数の関係を示したものであり、共振子設計条件は前述と同等である。同図より、高いQ値が得られる0.04<H/λ<0.12の範囲においてSTカット水晶SAW共振子の2次温度係数−0.034(ppm/℃2)よりも良好な値が得られることが分かる。
以上より、電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12の範囲に設定することで、STカット水晶SAWデバイス及び特公平01−034411号に開示されているSAWデバイスよりも小型でQ値が高く、且つ周波数安定性に優れたSAWデバイスを提供できる。
また、これまでカット角θを−51°とした場合についてのみ示してきたが、図1に示したSAW共振子においては、カット角θを変えても膜厚依存性は大きく変化せず、−51°から数度ずれたカット角においても電極膜厚を0.04<H/λ<0.12の範囲に設定することで、良好なQ値と2次温度係数が得られる。
ところで、図1に示したSAW共振子は、非常に広い温度範囲では3次的な温度特性となるが、特定の狭い温度範囲では2次特性と見なすことができ、その頂点温度Tpは電極膜厚やカット角によって変化する。従って、いくら周波数温度特性が優れていても頂点温度Tpが使用温度範囲外となってしまうと周波数安定性は著しく劣化してしまうので、実用的な使用温度範囲(−50℃〜+125℃)において優れた周波数安定性を実現するには、2次温度係数だけでなく頂点温度Tpについても詳細に検討する必要がある。
【0011】
図5(a)は、図1に示したSAW共振子においてカット角θを−50.5°とした時の電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係を示している。同図から明らかなように、電極膜厚H/λを大きくすると頂点温度Tpは下がり、電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係は次の近似式で表わされる。
Tp(H/λ)=−41825×(H/λ)2+2855.4×(H/λ)−26.42・・・(1)
また、−50°近傍のカット角においても切片を除けばおおよそ式(1)が適用できる。
また、図5(b)は、図1に示したSAW共振子において電極膜厚H/λを0.06とした時のカット角θと頂点温度Tpの関係を示している。同図から明らかなように、カット角θの絶対値を小さくすると頂点温度Tpは下がり、カット角θと頂点温度Tpの関係は次の近似式で表わされる。
Tp(θ)=−43.5372×θ−2197.14 ・・・(2)
式(1)及び式(2)から電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とした時に頂点温度Tpを実用的な使用温度範囲(−50〜+125℃)に設定するには、カット角θを−59.9°≦θ≦−48.9°の範囲に設定すれば良いことが分かる。
また、電極膜厚H/λとカット角θの双方を考慮する場合、頂点温度Tpは式(1)及び式(2)から次の近似式で表わされる。
Tp(H/λ,θ)=Tp(H/λ)+Tp(θ)=−41825×(H/λ)2+2855.4×(H/λ)−43.5372×θ−2223.56 ・・・(3)
式(3)より、頂点温度Tpを使用温度範囲(−50〜+125℃)に設定するには、次式で表される範囲に電極膜厚H/λ及びカット角θを設定すれば良い。
0.9613≦−18.498×(H/λ)2+1.2629×(H/λ)−0.019255×θ≦1.0387 ・・・(4)
このように、本出願人が先に提案したSAWデバイスではカット角θが−59.9゜≦θ≦−48.9゜の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、SAWの伝搬方向がX軸に対してほぼ垂直方向(直交方向)として励振されるSH波を用い、IDTやグレーティング反射器の電極材料をAlまたはAlを主とした合金にて構成し、その電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とすることで、STカット水晶SAWデバイスより小型で、且つQ値が大きく、且つ周波数安定性の優れているSAWデバイスを実現できる。
【0012】
ここで、より最適な条件について検討すると、電極膜厚H/λは図3よりQ値が20000以上得られる0.05<H/λ<0.10の範囲に設定するのが好ましい。また、頂点温度Tpをより実用的な使用温度範囲(0〜+70℃)に設定する為には、カット角θは−55.7°≦θ≦−50.2°の範囲に設定するのが好ましく、更には、式(3)より得られる次式の範囲にカット角θ及び電極膜厚H/λを設定するのが好ましい。
0.9845≦−18.518×(H/λ)2+1.2643×(H/λ)−0.019277×θ≦1.0155 ・・・(5)
以上では、図5(a)のカット角θを−50.5°とした時の電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係、及び図5(b)の電極膜厚H/λを0.06とした時のカット角θと頂点温度Tpの関係から、頂点温度Tpが実用的な使用温度範囲に入るような電極膜厚H/λとカット角θの関係式を導き出したが、更にカット角θの範囲を広げて実験を行ったところ、より詳細な条件を見出すことができたので以下説明する。
【0013】
図6は、前記SAW共振子において頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時の水晶基板のカット角θと電極膜厚H/λの関係を示しており、各Tp特性の近似式は以下の通りである。
Tp=−50(℃):H/λ≒−1.02586×10-4×θ3−1.73238×10-2×θ2−0.977607×θ−18.3420
Tp=0(℃):H/λ≒−9.87591×10-5×θ3−1.70304×10-2×θ2−0.981173×θ−18.7946
Tp=+70(℃):H/λ≒−1.44605×10-4×θ3−2.50690×10-2×θ2−1.45086×θ−27.9464
Tp=+125(℃):H/λ≒−1.34082×10-4×θ3−2.34969×10-2×θ2−1.37506×θ−26.7895
図6から、頂点温度Tp(℃)を実用的な範囲である−50≦Tp≦+125に設定するには、Tp=−50℃及びTp=+125℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−1.34082×10-4×θ3−2.34969×10-2×θ2−1.37506×θ−26.7895<H/λ<−1.02586×10-4×θ3−1.73238×10-2×θ2−0.977607×θ−18.3420となるようにカット角θ及び電極膜厚H/λを設定すれば良いことが分かる。また、この時の電極膜厚H/λの範囲は、従来のSTカット水晶デバイスより優れた特性が得られる0.04<H/λ<0.12とし、カット角θの範囲は図6の点Aから点Bに示す範囲の−64.0°<θ<−49.3°とする必要がある。
【0014】
更に、より最適な条件について検討すると、頂点温度Tp(℃)はより実用的な使用温度範囲である0≦Tp≦+70に設定するのが望ましい。Tp(℃)を前述の範囲に設定するには、図6に示すTp=0℃及びTp=+70℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−1.44605×10-4×θ3−2.50690×10-2×θ2−1.45086×θ−27.9464<H/λ<−9.87591×10-5×θ3−1.70304×10-2×θ2−0.981173×θ−18.7946となるようにカット角θ及び電極膜厚H/λを設定すれば良い。また、電極膜厚H/λはQ値が20000以上得られる0.05<H/λ<0.10の範囲にするのが望ましく、電極膜厚を前述の範囲とし、頂点温度Tp(℃)を0≦Tp≦+70の範囲内に設定するには、カット角θを図6(a)の点Cから点Dに示す範囲の−61.4°<θ<−51.1°に設定する必要がある。
以上、詳細に検討した結果、カット角θが−64.0゜<θ<−49.3゜、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、SAWの伝搬方向がX軸に対してほぼ垂直方向(直交方向)として励振されるSH波を用い、IDTやグレーティング反射器の電極材料をAlまたはAlを主とした合金にて構成し、その電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10とすることで、STカット水晶SAWデバイスよりQ値が大きく優れた温度特性が得られると共に、頂点温度Tpを実用的な使用温度範囲内に設定できることを見出した。
ところで、これまでIDTのライン占有率mrを0.60と固定した時の例について説明してきたが、以下ではライン占有率を変数に含めた場合のTp特性について検討した。
図7は、電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrと頂点温度Tpの関係を示している。なお、縦軸は頂点温度Tp(℃)を、横軸は電極膜厚とライン占有率との積H/λ×mrを示しており、この時の水晶基板のカット角θは−51.5°としている。同図に示すように、電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrの値を大きくする程、頂点温度Tpは下がることが分かる。
【0015】
次に、図8は頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時の水晶基板のカット角θと電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrの関係を示している。なお、各Tp特性の近似式は以下の通りである。
Tp=−50(℃):H/λ×mr≒−6.15517×10-5×θ3−1.03943×10-2×θ2−0.586564×θ−11.0052
Tp=0(℃):H/λ×mr≒−5.92554×10-5×θ3−1.02183×10-2×θ2−0.588704×θ−11.2768
Tp=+70(℃):H/λ×mr≒−8.67632×10-5×θ3−1.50414×10-2×θ2−0.870514×θ−16.7678
Tp=+125(℃):H/λ×mr≒−8.04489×10-5×θ3−1.40981×10-2×θ2−0.825038×θ−16.0737
図8から、頂点温度Tp(℃)を実用的な範囲である−50≦Tp≦+125に設定するには、Tp=−50℃及びTp=+125℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−8.04489×10-5×θ3−1.40981×10-2×θ2−0.825038×θ−16.0737<H/λ×mr<−6.15517×10-5×θ3−1.03943×10-2×θ2−0.586564×θ−11.0052となるようにカット角θ及び電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrを設定すれば良いことが分かる。また、この時の電極膜厚H/λの範囲は従来のSTカット水晶デバイスより優れた特性が得られる0.04<H/λ<0.12とし、カット角θの範囲は−64.0°<θ<−49.3°とする必要がある。
また、頂点温度Tp(℃)をより実用的な使用温度範囲である0≦Tp≦+70に設定するには、図8に示すTp=0℃及びTp=+70℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−8.67632×10-5×θ3−1.50414×10-2×θ2−0.870514×θ−16.7678<H/λ×mr<−5.92554×10-5×θ3−1.02183×10-2×θ2−0.588704×θ−11.2768となるようにカット角θ及び電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrを設定すれば良い。また、この時の電極膜厚H/λはQ値が20000以上得られる0.05<H/λ<0.10とするのが望ましく、電極膜厚を前述の範囲とし、且つ、頂点温度Tp(℃)を0≦Tp≦+70の範囲内に設定するには、カット角θは−61.4°<θ<−51.1°とするのが望ましい。
【0016】
以下、本発明のSAWデバイスの実施形態について説明する。
ところで、上記したような本出願人が先に提案したSAWデバイスを用いて縦結合DMSフィルタを実現した場合は、IDTとグレーティング反射器の特性により通過帯域の低域側の減衰量が劣化するという問題点があった。
そこで、本出願人らは上記のSAWデバイスを用いて縦結合DMSフィルタを構成した場合に、通過帯域の低域側で発生する減衰量の劣化を防止するために各種実験を行った結果、2段縦続接続する各々の縦結合DMSフィルタのIDTピッチと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせるようにすると効果的であることがわかった。以下、具体例を挙げて説明する。
図9は、第1の実施形態の1次−2次モードを利用した縦続接続型縦結合DMSフィルタの構成を示した平面図である。
この図9に示す縦続接続型縦結合DMSフィルタは、図1〜図8において説明したSAWデバイスの構成を備えると共に、2つのIDT2a、2bと、2つのグレーティング反射器3a、3bとを、IDT2a、2bによって励起されるSAWの伝搬方向に沿って近接配置することにより形成した1次−2次縦結合DMSフィルタ(縦結合多重モードSAWフィルタ部)11a、11bを1枚の水晶基板1に2つ並列に配置し、それら縦続接続して構成したものである。
即ち、図9に示す縦結合DMSフィルタは、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板1と、この水晶基板1上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDT2とを備え、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振されるSAWを水晶基板1の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した1次−2次縦結合DMSフィルタ11a、11bのIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせるようにした。
【0017】
図10は、図9に示す縦続接続型縦結合DMSフィルタの各々の1次−2次縦結合DMSフィルタの周波数特性を示した図であり、例えば一方の1次−2次縦結合DMSフィルタ11a(以下、セクション1という)11aのIDTピッチLt1と反射器ピッチLr1の比Lt1/Lr1を0.996、他方の1次−2次縦結合DMSフィルタ11b(以下、「セクション2」という)のIDTピッチLt2と反射器ピッチLr2の比を0.993とすることにより、各セクション1,2の周波数特性の山と山、谷と谷をおおよそ一致させるようにしている。
図11(a)は、図10に示した各々のセクションのIDTピッチと反射器ピッチの比を異ならせた縦結合DMSフィルタの周波数特性を示した図、図11(b)は、図11(a)に示した周波数特性を実線に、図16に示した従来の縦結合DMSフィルタの周波数特性を破線に合わせて示した図である。この図11(b)から分かるように、本実施形態の縦結合DMSフィルタによれば、通過帯域における低域側の減衰量の劣化が大幅に改善されていることがっわかる。
図12は、第2の実施形態の1次−3次モードを利用した並列接続型縦結合DMSフィルタの構成を示した平面図である。
この図12に示す並列接続型縦結合DMSフィルタも、上記図1〜図8において説明したSAWデバイスの構成を備えると共に、3つのIDT2a、2b、2cと、2つのグレーティング反射器3a、3bとを、IDT2a、2b、2cによって励起されるSAWの伝搬方向に沿って近接配置することにより形成した1次−3次縦結合DMSフィルタを1枚の水晶基板1に配置し、それら並列接続して構成したものである。そのうえで、並列接続した各々の縦結合DMSフィルタ部11a、11b(セクション1、2)のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせるようにしたものである。
このように構成した場合は上記縦続接続型縦結合DMSフィルタに比べて通過帯域における低域側の減衰量を低下するが、挿入損失を大幅に改善することが可能になる。
【0018】
なお、これまで説明したSAWデバイスにおいて、IDTやグレーティング反射器上にSiO2等の保護膜やAlを陽極酸化した保護膜等を形成したり、Al電極の上部あるいは下部に密着層あるいは耐電力向上等の目的で別の金属薄膜を形成した場合においても、本発明と同様の効果を得られることは明らかである。また、センサ装置やモジュール装置、発振回路等に本発明のSAWデバイスが適用できることは言うまでもない。また、電圧制御SAW発振器(VCSO)等に本発明のSAWデバイスを用いれば、容量比γを小さくできるので周波数可変幅を大きくとれる。
また、本発明のSAWデバイスは、図1に示すようなSAWチップとパッケージをワイヤボンディングした構造以外でも良く、SAWチップの電極パッドとパッケージの端子とを金属バンプで接続したフリップチップボンディング(FCB)構造や、配線基板上にSAWチップをフリップチップボンディングしSAWチップの周囲を樹脂封止したCSP(Chip Size Package)構造、或いは、SAWチップ上に金属膜や樹脂層を形成することによりパッケージや配線基板を不要としたWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)構造等にしても良い。更には、水晶デバイスを水晶又はガラス基板で挟んで積層封止したAQP(All Quartz Package)構造としても良い。前記AQP構造は、水晶又はガラス基板で挟んだだけの構造であるのでパッケージが不要で薄型化が可能であり、低融点ガラス封止や直接接合とすれば接着剤によるアウトガスが少なくなりエージング特性に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るSAW共振子を説明する図であり、(a)は平面図、(b)はIDTの断面図。
【図2】本発明に係るSAW共振子と従来品の比較を示したものであり、(a)はQ値及びFigure of merit及び2次温度係数の比較を示す図、(b)は周波数温度特性の比較を示す図。
【図3】本発明に係るSAW共振子の電極膜厚H/λとQ値との関係を示す図。
【図4】本発明に係るSAW共振子の電極膜厚H/λと2次温度係数との関係を示す図。
【図5】(a)は本発明に係るSAW共振子の電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係を示す図、(b)はカット角θと頂点温度Tpの関係を示す図。
【図6】本発明に係るSAW共振子の頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時のカット角θと電極膜厚H/λの関係を示す図。
【図7】本発明に係るSAW共振子の電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrと頂点温度Tpの関係を示す図。
【図8】本発明に係るSAW共振子の頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時のカット角θと電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrの関係を示す図。
【図9】第1の実施形態の1次−2次モードを利用した縦続接続型縦結合DMSフィルタの構成を示した平面図。
【図10】図9に示す縦続接続型縦結合DMSフィルタの各々の縦結合DMSフィルタ(セクション)の周波数特性を示した図。
【図11】(a)は図10に示した各々のセクションのIDTピッチと反射器ピッチの比を異ならせた縦続接続型縦結合DMSフィルタの周波数特性を示した図、(b)は(a)に示した周波数特性と従来の縦結合DMSフィルタの周波数特性を合わせて示した図。
【図12】第2の実施形態の1次−3次モードを利用した並列接続型縦結合DMSフィルタの構成を示した平面図。
【図13】従来のSTカット水晶SAW共振子を説明する図。
【図14】(a)(b)は−50°回転Yカット90°X伝搬水晶基板を説明する図。
【図15】従来の多対IDT型SAW共振子を説明する図。
【図16】従来の縦結合DMSフィルタの周波数特性を合わせて示した図。
【符号の説明】
【0020】
1 圧電基板、2 2a 2b 2c IDT、3a、3b グレーティング反射器、4a、4b 入出力用パッド、5a、5b 金属ワイヤ、6 パッケージ、11 縦結合DMSフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板と、該水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を2段縦続接続にて形成し、各々の前記縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせたことを特徴とする縦結合多重モードSAWフィルタ。
【請求項2】
回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板と、該水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を並列接続にて形成し、各々の前記縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせたことを特徴とする縦結合多重モードSAWフィルタ。
【請求項3】
前記水晶基板の前記回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の縦結合多重モードSAWフィルタ。
【請求項4】
前記電極膜厚H/λを0.05<H/λ<0.10に設定したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の縦結合多重モードSAWフィルタ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の縦結合多重モードSAWフィルタを用いたことを特徴とするモジュール装置。
【請求項1】
回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板と、該水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を2段縦続接続にて形成し、各々の前記縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせたことを特徴とする縦結合多重モードSAWフィルタ。
【請求項2】
回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定した水晶基板と、該水晶基板上に形成されたAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対して直交方向、励振される弾性表面波を前記水晶基板の表面付近を伝搬するSH波とし、前記弾性表面波の波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定した縦結合多重モードSAWフィルタ部を並列接続にて形成し、各々の前記縦結合多重モードSAWフィルタ部のIDTピッチLtと反射器ピッチLrの比Lt/Lrを異ならせたことを特徴とする縦結合多重モードSAWフィルタ。
【請求項3】
前記水晶基板の前記回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の縦結合多重モードSAWフィルタ。
【請求項4】
前記電極膜厚H/λを0.05<H/λ<0.10に設定したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の縦結合多重モードSAWフィルタ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の縦結合多重モードSAWフィルタを用いたことを特徴とするモジュール装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−19976(P2007−19976A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200476(P2005−200476)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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