説明

繊維強化複合体およびその製造方法

【課題】 所望の優れた装飾性を持つ装飾層と、強度が十分高い繊維強化樹脂層とを有し、装飾層と繊維強化樹脂層との界面が、ボイドや接着不良という欠陥の無い界面である繊維強化複合体を提供し、その製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 繊維強化複合体11は、第1繊維と第1樹脂とを含む繊維強化樹脂層12を内側に、第2繊維と第2樹脂とを含む装飾層13を外側に有する。繊維強化樹脂層12および装飾層13は、第1樹脂を含浸した第1繊維を型に巻きつけ、第2樹脂を含浸した第2繊維をその外側に巻きつけて、第1樹脂および第2樹脂を同時に硬化させた層である。そうすることによって、繊維強化複合体11は、繊維強化樹脂層12と装飾層13とが一体化された繊維強化複合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量でかつ高強度な装飾性の高い繊維強化複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に装飾柱としては大理石を使用したものが利用されている。しかしながら、大理石は、天然資源であるので、その利用は限界があり、非常に高価である。そこで、人工的に得られた大理石調の柱やパイプなどの成形体を、大理石製の柱の代わりに用いられている。
【0003】
また、いろいろな模様や柄が施された装飾柱も利用され、それらは柱表面に装飾性フィルムや彩色および吹きつけなどで装飾されている。しかし、これらは柱表面のみに加飾されているため、質感が劣るほか、剥がれや欠落により装飾性が著しく阻害される。
【0004】
大理石調やその他装飾された成形体としては、たとえば、金属製のパイプまたは塩化ビニル製のパイプなどにそれぞれの紋様が印刷されたフィルムを張り付けたものがある。しかしながら、このような成形体は、フィルムを張り合わせた継ぎ目が必ずあり、著しく装飾性が阻害される。
【0005】
また、質感の向上や継ぎ目解消のため、ハンドレイアップ法またはスプレーアップ法を用いて、所望の表面装飾性を持った成形体を製造することができる。しかしながら、ハンドレイアップ法またはスプレーアップ法によって製造され装飾された成形体は、装飾層が薄く、例えば、大理石調の場合には質感および色調などが異なってしまう。装飾層を複数層重ねて形成することによって、厚くすることは可能であるが、これには長時間の作業が必要となり、著しいコストアップになる。また、作業者もその作業のため、防護マスクや防護衣料などが必要な厳しい作業環境に長時間さらされることにより、好ましい成形方法とはいえない。また、ハンドレイアップ法またはスプレーアップ法によって装飾層を複数層重ねて形成することによって厚くした成形体は、質感が劣るだけではなく、装飾層の内側部分を成形する際に長繊維強化および高繊維体積含有率を有することができないため成形体自身の強度が得られない。
【0006】
他の従来の技術としては、特許文献1に記載されている。特許文献1には、内側に繊維強化樹脂層を、外側に人工大理石層を有する柱状中空成形体が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−137187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1によると、内側に繊維強化樹脂層を、外側に人工大理石層を設けることによって、強度が高く、人工大理石の外観を有する柱状中空成形体が得られる。しかしながら、特許文献1の方法では、繊維強化樹脂層と人工大理石層との界面は化学的に結合していないために水分等がその界面より浸入したり、また少しの衝撃で剥離が生じたり、繊維強化樹脂層の強度が低下する危険性がある。
【0009】
さらに、特許文献1は、ダイスを用いて行う引き抜き成形法であるため、断面形状が同一のものしかつくれない。よって、エンタシスの柱のような製品中に異なる断面形状および寸法を有するものを製造することができない。また、製品中に異なる断面形状および寸法を有するものを製造しようとすると、生産性が著しく低下してしまう。
【0010】
本発明の目的は、所望の優れた装飾性を持つ装飾層と、強度が十分高い繊維強化樹脂層とを有し、装飾層と繊維強化樹脂層との界面が、ボイドや接着不良という欠陥の無い界面である繊維強化複合体を提供し、その製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1繊維と第1樹脂とを含む繊維強化樹脂層を内側に、第2繊維と第2樹脂とを含む装飾層を外側に有し、
前記繊維強化樹脂層および前記装飾層は、前記第1樹脂を含浸した前記第1繊維を型に巻きつけ、前記第2樹脂を含浸した前記第2繊維をその外側に巻きつけて、前記第1樹脂および前記第2樹脂を同時に硬化させた層であることを特徴とする繊維強化複合体である。
【0012】
また本発明は、前記第1樹脂および前記第2樹脂とは、同種の樹脂であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記装飾層は、さらに充填材を含み、人造大理石調の外観および質感を有することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記第2繊維は、不織布であることを特徴とする。
また本発明は、前記第2繊維は、意匠性を有する繊維を含み、前記第1繊維と同一であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記意匠性を有する繊維は、有色繊維、蛍光繊維および飾り糸から選ばれる1種または2種以上であることであることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、円筒形状であることを特徴とする。
また本発明は、第1繊維と第1樹脂とを含む繊維強化樹脂層が内側に、第2繊維と第2樹脂とを含む装飾層が外側になるように、前記第1樹脂を含浸した前記第1繊維を型に巻きつけ、前記第2樹脂を含浸した前記第2繊維をその外側に巻きつけた後に、前記第1樹脂および前記第2樹脂を同時に硬化させて、前記型を外すことを特徴とする繊維強化複合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、繊維強化複合体は、内側に第1繊維と第1樹脂とを含む繊維強化樹脂層を有する。この繊維強化樹脂層は、第1樹脂を含浸した第1繊維を巻きつけて、第1樹脂を硬化させて得られる層である。このような繊維強化樹脂層を内側に有することによって、繊維強化複合体は、強度を高めることができる。
【0018】
また、この繊維強化複合体は、外側に第2繊維と第2樹脂とを含む装飾層を有する。この装飾層は、第2樹脂を含浸した第2繊維を巻きつけて、第2樹脂を硬化させて得られる層である。
【0019】
このような装飾層は、ハンドレイアップ法およびスプレーアップ法で製造した場合などとは異なり、十分に厚い層にすることができ、質感および色調などが大幅に向上する。たとえば、大理石調を発現させる充填材を第2樹脂に混入した場合には、大理石と変わらないような優れた質感を得ることができる。
【0020】
さらに、繊維強化樹脂層および装飾層は、第1樹脂を含浸した第1繊維を型に巻きつけ、第2樹脂を含浸した第2繊維をその外側に巻きつけて、第1樹脂および第2樹脂を同時に硬化させた層である。このような繊維強化樹脂層と装飾層とは、お互いが一体となって硬化されて形成された層であるので、繊維強化樹脂層と装飾層との界面は強固に一体化している。
【0021】
以上より、この繊維強化複合体は、所望の優れた装飾性を持つ装飾層と、強度が十分高い繊維強化樹脂層とを有し、装飾層と繊維強化樹脂層との界面が、ボイドや接着不良という欠陥の無い界面である。
【0022】
また本発明によれば、第1樹脂および第2樹脂とは、同種の樹脂である。同種の樹脂とは、たとえば、硬化のメカニズムや硬化条件などの硬化特性が同様の樹脂である。そうすることによって、第1樹脂と第2樹脂とを同時に硬化させる際に、第1樹脂と第2樹脂とが化学的に結合する。したがって、繊維強化樹脂層と装飾層との一体性のより高い繊維強化複合体が得られる。
【0023】
また本発明によれば、装飾層は、さらに充填材を含み、人造大理石調の外観および質感を有する。そうすることによって、様々な質感や色調の充填材を選ぶことができ、その含有量を変えることにより、さらに様々な質感や色調の装飾層が得られる。
【0024】
また本発明によれば、第2繊維は、不織布である。そうすることによって、様々な質感や色調を発現させる充填材を、装飾層に均一に分散させることができる。すなわち、充填材の分散した樹脂は、第2繊維である不織布に充填材を担持したまま繊維強化樹脂層の上に巻きつけられる。
【0025】
以上より、充填材の種類や含有量に応じた優れた外観を持ち、強度が高い繊維強化複合体を得ることができる。
【0026】
また本発明によれば、第2繊維は、意匠性を有する繊維を含み、第1繊維と同一である。そうすることによって、装飾層に意匠性を有する繊維が一体となって埋め込まれた高強度な繊維強化複合体を得ることができる。
【0027】
また本発明によれば、意匠性を有する繊維は、有色繊維、蛍光繊維および飾り糸から選ばれる1種または2種以上である。そうすることによって、より意匠性の高い繊維強化複合体を得ることができる。
【0028】
また本発明によれば、円筒形状である。そうすることによって、軽量な繊維強化複合体が得られ、優れた外観を有し、強度が十分高いので、外観の優れた柱などとして好ましい。また、繊維強化複合体が、光を透過させることができる材料からなっている場合、円筒内に光源を入れることにより、発光する注状体として利用でき、ロビーやエントランス等にオブジェやインテリア用品として設置し、好ましい空間を演出することができる。
【0029】
また本発明によれば、第1繊維と第1樹脂とを含む繊維強化樹脂層が内側に、第2繊維と第2樹脂とを含む装飾層が外側になるように、第1樹脂を含浸した第1繊維を型に巻きつけ、第2樹脂を含浸した第2繊維をその外側に巻きつける。その後に、第1樹脂および第2樹脂を同時に硬化させて、型を外す。
【0030】
そうすることによって、たとえば大理石のような優れた外観を有し、強度が十分高く、繊維強化樹脂層と装飾層とが一体となった繊維強化複合体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、大理石のような外観や、有色繊維等をデザインを配慮して巻きつけた優れた外観を有する繊維強化複合体であり、装飾柱やインテリア用オブジェなどに用いることができる。
【0032】
図1は、本発明の実施形態である繊維強化複合体11の軸方向に垂直な断面図である。繊維強化複合材11は、第1繊維と第1樹脂とを含む繊維強化樹脂層12を内側に、第2繊維と第2樹脂とを含む装飾層13を外側に有する。
【0033】
繊維強化樹脂層12および装飾層13は、第1樹脂を含浸した第1繊維を型に巻きつけ、第2樹脂を含浸した第2繊維をその外側に巻きつけて、第1樹脂および第2樹脂を同時に硬化させた層である。このような繊維強化樹脂層12と装飾層13とは、お互いが一体となって硬化されて形成された層であるので、繊維強化樹脂層12と装飾層13とが強固に一体化される。
【0034】
繊維強化樹脂層12は、第1樹脂を含浸した第1繊維を巻きつけて、第1樹脂を硬化させて得られる層である。このような繊維強化樹脂層12を内側に有することによって、繊維強化複合体11は、強度を高めることができる。
【0035】
第1繊維としては、糸、ロービング、織物、不織布、編物、組物、クロスなどのいずれの形態の繊維材料であっても用いることができる。その素材としては、繊維強化複合体に用いられる強化材であれば、公知の繊維を用いることができ、たとえば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維およびポリエチレン繊維などが挙げられ、これらの中でもガラス繊維が好ましい。
【0036】
第1樹脂としては、熱硬化性樹脂であれば、公知の樹脂を用いることができ、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられ、これらの中でもエポキシ樹脂が好ましい。
【0037】
繊維強化樹脂層12の厚みは、2mm以上20mm以下であることが好ましい。
装飾層13は、第2樹脂を含浸した第2繊維を巻きつけて、第2樹脂を硬化させて得られる層である。このような装飾層13は、ハンドレイアップ法およびスプレーアップ法で製造した場合とは異なり、充分に厚い層にすることができ、質感および色調などが大理石と変わらない大理石のような優れた外観を有する層となる。
【0038】
第2繊維としては、第1繊維と同様、糸、ロービング、織物、不織布、編物、組物、クロスなどのいずれの形態の繊維材料であっても用いることができる。それらの中でも不織布であることが好ましい。そうすることによって、装飾層13の表面平滑性が高まり、大理石のような優れた外観を有する装飾層13が容易に得られる。第2繊維の素材としては、公知の繊維を用いることができ、たとえば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、レーヨン繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ乳酸繊維およびアラミド繊維などの合成繊維、綿、絹、竹、ケナフ繊維およびココナッツ繊維などの天然繊維、ガラス繊維、カーボン繊維およびアルミナ繊維などの無機繊維などが挙げられる。
【0039】
また、第2繊維の装飾層13中に占める繊維含有率が低いほうが好ましい。第2繊維の装飾層13中に占める繊維含有率は、10重量%以上50重量%以下が好ましい。
【0040】
第2樹脂としては、熱硬化性樹脂であれば、公知の樹脂を用いることができ、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられ、これらの中でもエポキシ樹脂が好ましい。また、第2樹脂は、第1樹脂と同種の樹脂であることが好ましい。同種の樹脂とは、たとえば、硬化のメカニズムや硬化条件などの硬化特性が同様の樹脂である。そうすることによって、第1樹脂と第2樹脂とを同時に硬化させる際に、第1樹脂と第2樹脂とが化学的に結合する。したがって、繊維強化樹脂層と装飾層との一体性のより高い繊維強化複合体が得られる。
【0041】
第1樹脂と第2樹脂とが異種の樹脂であると、以下のような理由により、第1樹脂と第2樹脂とを同時に硬化させても、第1樹脂と第2樹脂との間に化学結合が形成されて、繊維強化樹脂層12と装飾層13とを強固に接着させるということはできない。
【0042】
第1樹脂と第2樹脂との硬化のメカニズムが異なる場合は、第1樹脂と第2樹脂との界面で化学結合が全く形成されず、繊維強化樹脂層12と装飾層13とが強固に接着されない。たとえば、第1樹脂がエポキシ樹脂で、第2樹脂が不飽和ポリエステルである場合、エポキシ樹脂は、吸核攻撃による付加重合によって硬化されるのに対して、不飽和ポリエステルは、ラジカル重合によって硬化されるので、第1樹脂と第2樹脂とを同時に硬化しようとしても、第1樹脂と第2樹脂とが化学結合することはない。
【0043】
第1樹脂と第2樹脂との硬化条件が異なる場合は、硬化のメカニズムが同様であっても、第1樹脂と第2樹脂との界面で化学結合が形成されにくく、繊維強化樹脂層12と装飾層13とが充分に接着されない。たとえば、第1樹脂が加熱硬化型の樹脂で、第2樹脂が常温硬化型の樹脂である場合、徐々に温度を上昇させると、第1樹脂の硬化が開始されるときには、第2樹脂の硬化は完了している。よって、第1樹脂と第2樹脂との界面で化学結合が形成されにくい。また、第1樹脂の硬化が完了したときには、第2樹脂は、熱的劣化が発生している。第1樹脂が硬化せず第2樹脂が硬化するような温度で硬化すると、第2樹脂のみが硬化してしまう。また、第1樹脂が硬化する温度ではじめから硬化すると、第2樹脂の硬化が、必要以上の加熱により暴走的に進行し、火災を起こす危険性がある。
【0044】
pHが正反対の硬化剤を使用して硬化させる場合は、第1樹脂と第2樹脂との界面で化学結合が形成されにくく、繊維強化樹脂層12と装飾層13とが充分に接着されない。たとえば、第1樹脂を酸無水物系の硬化剤で硬化させ、第2樹脂をアミン系の硬化剤で硬化させる場合、第1樹脂と第2樹脂との界面付近では、酸無水物系の硬化剤とアミン系の硬化剤とが中和反応を起こすので、硬化剤が第1樹脂と第2樹脂とを硬化するのに働かない。よって、第1樹脂と第2樹脂との界面付近では、第1樹脂と第2樹脂とが充分に硬化しない。よって、繊維強化樹脂層12と装飾層13とが充分に接着されない。
【0045】
装飾層13の厚みは、0.5mm以上30.0mm以下であることが好ましい。
装飾層13には、層自体に所望の質感、色調を得るため第2繊維として不織布を用い、充填材を分散させることが望ましい。さらに、含有する充填材の種類を変えたり、充填材の含有率を変えたりすることによって、様々な質感および色調の装飾層が得られる。
【0046】
充填材としては、装飾層13を人造大理石調にする場合、大理石調を発現する充填材であれば、公知の充填材を用いることができる。たとえば、天然無機物、合成無機物および天然有機物などが挙げられる。天然無機物としては、たとえば、ケイ石、ケイ砂、けい藻土、カオリン、ハロサイト、モンモリナイト、ベントナイト、ゼオライト、リン鉱石、ダイアヌポア、ギプサイト、ボーキサイト、雲母、バーミキュライト、陶石、ろう石、長石、石灰石、ケイ灰石、石膏、ドロマイト、マグネサイトおよび滑石などが挙げられる。合成無機物としては、たとえば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、酸化チタン、酸化鉄、アルミナ、球状シリカなどのシリカ、含水ケイ酸、マグネシア、酸化亜鉛、スピネル、合成コージライト、合成ムライトおよび合成ゼオライトなどの金属酸化物、カルシウムアルミネート水和物およびカルシウムスルホアルミネート水和物などの金属酸化物の水和物、トベルモナイトおよびゾノトライトなどのケイ酸カルシウム系水和物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。天然有機物として、竹およびココナッツなどが挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、竹およびココナッツが好ましく、酸化チタン、水酸化アルミニウムおよびアルミナがより好ましい。充填材は、装飾層13が所定の質感および色調になるように1種または2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0047】
装飾層13を人工大理石調にする場合の充填材含有率は、1.5重量%以上50重量%以下が好ましい。
【0048】
質感および色調を向上させるためには、第2樹脂と第2繊維の屈折率が同じであることが望ましい。こうすることで、装飾層13は、充填材の質感および色調をより忠実に反映することができる。
【0049】
また、充填材を含む装飾層13を製造する場合、第2繊維として不織布を用いることが好ましい。第2繊維として糸およびフィラメントなどを用いた場合、第2繊維に充填材と第2樹脂とを含浸させても、充填材が第2繊維に保持されず脱落してしまう。また、第2樹脂を含浸させた第2繊維に充填材を上から添加しても、充填材が第2樹脂を含浸させた第2繊維に保持されず脱落してしまう。それに対して、第2樹脂として不織布を用いると、第2樹脂を含浸させた不織布により多くの充填材を含ませることができる。よって、製造された装飾層に多くの充填材を含ませることができる。第2繊維として不織布を用いる場合、不織布の目付は、10g/m2以上200g/m2以下が好ましい。
【0050】
以上より、繊維強化複合体11は、質感および色調が大変優れたものとなる。たとえば、大理石調の充填材を使用した場合には、本物の大理石と同じような優れた質感および色調を有する外観を有し、強度が十分に高く、継ぎ目のないものとなり、外観の優れた柱やインテリア用品として好適に利用することができる。
【0051】
繊維強化複合体11の軸方向に垂直な断面の形状は、中空形状であることが好ましく、中空形状であれば、角形、円形および楕円形などのいずれであってもよい。この中でも、断面の形状が円形の中空形状である円筒形状が好ましい。
【0052】
そうすることによって、軽量な繊維強化複合体11が得られ、繊維強化複合体11は、たとえば大理石のような優れた外観を有し、強度が十分高いため、装飾柱やインテリア用品として好ましく利用することができる。
【0053】
繊維強化複合体11は、光を完全に遮蔽しない樹脂およびガラス繊維などからなっていて、光を透過させることができる材料からなっている場合、円筒内に光源を入れることにより、発光体や照明器具として利用することができる。そうすることによって、たとえば、装飾柱として利用した場合、昼間などの明るいときは、大理石調の外観の優れた柱となり、夜間などの暗いときは、ほのかに光る外観の優れた柱となる。第1樹脂および第2樹脂として、蛍光性または蓄光性を有する材料を使うことによって、さらに意匠性の高い繊維強化複合体が得られる。
【0054】
繊維強化複合体11は、繊維強化樹脂層12と装飾層13との2層からなるものに限らず、3層以上であってもよい。たとえば、繊維強化樹脂層12と装飾層13との間に、柄を有する柄層を有していてもよい。そうすることによって、装飾層13を通して、柄層の有する柄が見え、意匠性の高い繊維強化複合体が得られる。また、繊維強化複合体を発光体や照明器具として利用する場合、柄層の有する柄を映し出すことができ、より意匠性の高い発光体や照明器具となる。
【0055】
図2は、発光体として利用したときの繊維強化複合体11の写真を示す図である。繊維強化複合体11は、繊維強化樹脂層12と装飾層13との間に、蛍光性または蓄光性を有するテープ状またはひも状の繊維を巻きつけてもよい。そうすることによって、図2にしめすように、巻きつけた繊維が光って、意匠性の高い発光体となる。
【0056】
繊維強化複合体11は、一部が分厚くなっている部分が形成されていてもよい。一部が分厚くなっている部分が形成されている繊維強化複合体11とは、たとえば、縦断面の形状が平坦ではなく、凹部および凸部などが周方向全面に渡って形成されている繊維強化複合体である。また、繊維強化複合体の軸方向断面の周の一部又は全面に凹部および凸部などが形成されていてもよい。一部が分厚くなっている部分とは、たとえば、繊維強化複合体11の端部に形成されるペデスタル、レリーフ模様および紋様などが挙げられる。
【0057】
次に、繊維強化複合体11の製造方法について説明する。繊維強化複合体11は、第1樹脂を含浸した第1繊維を巻きつけて、第2樹脂を含浸した第2繊維を巻きつけた後に、第1樹脂と第2樹脂とを同時に硬化させればよく、以下の製造方法に限定されない。
【0058】
図3は、繊維強化複合体11を製造する方法を説明するための概略図である。まず、型となるマンドレル31を、フィラメントワインダ32に取り付け、樹脂槽33に、第1樹脂を供給する。第1繊維は、マンドレル31をフィラメントワインダ32によって回転させることによって、第1繊維をまきつけたロール34から供給される。そして、第1繊維は、ガイド36によって、巻きつける位置を決め、マンドレル31に巻きつける。その際、第1繊維は、樹脂槽33の中を通過させて、第1樹脂を含浸させる。さらに、マンドレルを回転させて、第1樹脂を含浸した第1繊維をマンドレルの表面上へ巻きつけていく。強度の要求値に対して巻き角度および厚みを設定し、設定値まで第1樹脂を含浸した第1繊維を巻きつける。ロール34は、ボビンであってもよい。
【0059】
第1樹脂を含浸した第1繊維の巻きつけが終了した後、樹脂槽に第2樹脂を供給する。第2繊維は、マンドレル31をフィラメントワインダ32によって回転させることによって、第2繊維をまきつけたロール35から供給される。そして、第2繊維は、ガイド36によって、巻きつける位置を決め、マンドレル31に巻きつける。その際、第2繊維は、樹脂槽33の中を通過させて、第2樹脂を含浸させる。さらに、マンドレルを回転させ、第2樹脂を含浸した第2繊維を第1繊維上に巻きつける。ロール35は、ボビンであってもよい。フィラメントワインダ32としては、ボレンツ・シェーファー社製のフィラメントワインダなどが挙げられる。マンドレル31としては、たとえば、直径250mm、長さ2000mmのマンドレル、直径250mm、長さ5000mmのマンドレルなどが挙げられる。また、樹脂槽に供給する第1樹脂および第2樹脂としては、無溶媒で液体状態の樹脂を使用する。
【0060】
第2樹脂を含浸した第2繊維の巻きつけが終了した後、回転硬化を行い、一体成形を行う。硬化完了後、マンドレルを外して目的の成形体を得る。
【0061】
繊維強化複合体11は、上記のように、第1繊維および第2繊維として、糸、フィラメントなどの状態の繊維を用いる場合は、たとえば、フィラメントワインディング法で成形し、第1繊維および第2繊維として、テープ状の不織布などの状態の繊維を用いる場合は、たとえば、テープワインディング法で成形することもできる。そうすることによって、他の成形方法で繊維強化複合体を成形するより高い強度を有する繊維強化複合体が成形することができる。
【0062】
(実施例)
以下に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1は、上記の製造方法によって製造した繊維強化複合体11である。
第1樹脂として、エポキシ樹脂(硬化剤:酸無水物、硬化触媒:3級アミン)、第1繊維として、ガラスロービング(材質:Eガラス、繊度:2310tex)、第2樹脂として、エポキシ樹脂(硬化剤:酸無水物、硬化触媒:3級アミン)、第2繊維として、ポリエステル不織布(材質:ポリエチレンテレフタレート、目付:38g/m2)を用いた。エポキシ樹脂としては、日本チバガイギー株式会社製、LY556を用い、硬化剤としては、日本チバガイギー株式会社製、HY917を用い、硬化触媒としては、日本チバガイギー株式会社製、DY040を用いた。Eガラスは、アルカリ(Na2OおよびK2Oなど)含有率が0.8%以下のガラスである。
【0063】
(実施例2)
充填材として、第2樹脂のエポキシ樹脂100重量部に対して、炭酸カルシウムを50重量部添加したこと以外、実施例1と同様である。
【0064】
(実施例3)
充填材として、第2樹脂のエポキシ樹脂100重量部に対して、炭酸カルシウムを100重量部添加したこと以外、実施例1と同様である。
【0065】
(実施例4)
充填材として、第2樹脂のエポキシ樹脂100重量部に対して、アルミナを50重量部添加したこと以外、実施例1と同様である。
【0066】
(実施例5)
充填材として、第2樹脂のエポキシ樹脂100重量部に対して、水酸化アルミニウム50重量部、酸化チタン0.5重量部添加したこと以外、実施例1と同様である。
【0067】
(実施例6)
充填材として、第2樹脂のエポキシ樹脂100重量部に対して、酸化チタン10重量部添加したこと以外、実施例1と同様である。
【0068】
(実施例7)
充填材として、第2樹脂のエポキシ樹脂100重量部に対して、酸化チタン2重量部添加したこと以外、実施例1と同様である。
【0069】
(実施例8)
第2繊維として、ポリエステル不織布の代わりにガラス繊維(材質:Eガラス、目付:50g/m2)を用いたこと以外、実施例7と同様である。
【0070】
(比較例1)
比較例1は、第1樹脂を含浸した第1繊維を巻きつけ、硬化させた後、第2樹脂を含浸した第2繊維を巻きつけ、硬化させて得られた繊維強化複合体である。第1樹脂、第2樹脂、第1繊維および第2繊維としては、実施例1と同様である。
【0071】
図4は、実施例4の断面の写真を示す図である。図5は比較例1の断面の写真を示す図である。
【0072】
実施例である繊維強化複合体は、大理石のような優れた外観を有し、強度が充分高かった。さらに、図4に示すように、繊維強化樹脂層と装飾層との間に、剥離が発生しておらず、強固に一体化されていた。それに対して、比較例1は、繊維強化樹脂層と装飾層との間に、ボイド51が発生し、強固に一体化されているとはいえない状態であった。また、仮に確認できるボイドなどの欠陥が見つからなかったとしても、繊維強化樹脂層と装飾層とを同時に硬化させない比較例は、繊維強化樹脂層と装飾層との界面が2次接着であり、実施例と比較して強度が低い。また、比較例は、硬化を2回行う必要があり、コストがかかってしまう。したがって、実施例は、品質面とコスト面との両面において優れている。
【0073】
また、実施例1は、繊維強化層と強固に一体化されている装飾層が、第2樹脂を含浸した第2繊維を巻きつけて、第2樹脂を硬化させて得られる層である。よって、実施例1は、縞模様やうろこ模様が現れ、装飾性の優れた繊維強化複合体である。
【0074】
実施例2は、装飾層に充填材として炭酸カルシウムを含むので、実施例1より、表面に表れる縞模様やうろこ模様が目立たない、薄い黄色の装飾性の優れた繊維強化複合体である。
【0075】
実施例3は、装飾層に充填材として炭酸カルシウムを実施例2より多く含むので、実施例2より、表面に表れる縞模様やうろこ模様がさらに目立たない、より黄色味の強い装飾性の優れた繊維強化複合体である。
【0076】
実施例4は、装飾層に充填材としてアルミナを含むので、人造大理石調の外観および質感を有する装飾性の優れた繊維強化複合体である。
【0077】
実施例5は、装飾層に充填材として水酸化アルミニウムと酸化チタンとを含むで、装飾層が白く、人造大理石調の外観および質感を有する装飾性の優れた繊維強化複合体である。
【0078】
実施例6は、装飾層に充填材として酸化チタンを含むので、装飾層が最も白く、人造大理石調の外観および質感を有する装飾性の優れた繊維強化複合体である。
【0079】
実施例7は、充填材として実施例6より少ないが酸化チタンを装飾層に含む。酸化チタンの含有量は、実施例6より少ないが、実施例7は、充分に白く、人造大理石調の外観および質感を有する装飾性の優れた繊維強化複合体である。
【0080】
実施例8は、第2繊維として、ポリエステル不織布の代わりにガラス繊維を用い、装飾層に充填材として酸化チタンを含むので、実施例7より青色の強い装飾性の優れた繊維強化複合体である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態である繊維強化複合体11の軸方向に垂直な断面図である。
【図2】発光体として利用したときの繊維強化複合体11の写真を示す図である。
【図3】繊維強化複合体11を製造する方法を説明するための概略図である。
【図4】実施例4の断面の写真を示す図である。
【図5】比較例1の断面の写真を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
11 繊維強化複合体
12 繊維強化樹脂層
13 装飾層
31 マンドレル
32 フィラメントワインダ
33 樹脂槽
34,35 ロール
36 ガイド
51 ボイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1繊維と第1樹脂とを含む繊維強化樹脂層を内側に、第2繊維と第2樹脂とを含む装飾層を外側に有し、
前記繊維強化樹脂層および前記装飾層は、前記第1樹脂を含浸した前記第1繊維を型に巻きつけ、前記第2樹脂を含浸した前記第2繊維をその外側に巻きつけて、前記第1樹脂および前記第2樹脂を同時に硬化させた層であることを特徴とする繊維強化複合体。
【請求項2】
前記第1樹脂および前記第2樹脂とは、同種の樹脂であることを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合体。
【請求項3】
前記装飾層は、さらに充填材を含み、人造大理石調の外観および質感を有することを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合体。
【請求項4】
前記第2繊維は、不織布であることを特徴とする請求項3記載の繊維強化複合体。
【請求項5】
前記第2繊維は、意匠性を有する繊維を含み、前記第1繊維と同一であることを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合体。
【請求項6】
前記意匠性を有する繊維は、有色繊維、蛍光繊維および飾り糸から選ばれる1種または2種以上であることであることを特徴とする請求項5記載の繊維強化複合体。
【請求項7】
円筒形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の繊維強化複合体。
【請求項8】
第1繊維と第1樹脂とを含む繊維強化樹脂層が内側に、第2繊維と第2樹脂とを含む装飾層が外側になるように、前記第1樹脂を含浸した前記第1繊維を型に巻きつけ、前記第2樹脂を含浸した前記第2繊維をその外側に巻きつけた後に、前記第1樹脂および前記第2樹脂を同時に硬化させて、前記型を外すことを特徴とする繊維強化複合体の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−87346(P2008−87346A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271318(P2006−271318)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000238234)シキボウ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】