説明

繊維強化複合材料成形装置

【課題】繊維に樹脂を含浸し、前記樹脂含浸繊維を巻回部材に巻回することにより繊維強化複合材料を成形する繊維強化複合材料成形装置において、樹脂の含浸不足を検知することである。
【解決手段】本発明に係る繊維強化複合材料成形装置10は、炭素繊維等の繊維に、エポキシ樹脂等の樹脂を含浸し、前記樹脂含浸繊維を巻回部材に巻回することにより繊維強化複合材料を成形する繊維強化複合材料成形装置であり、樹脂含浸装置22が、樹脂が付着した繊維36を、所定の幅を有する間隙に通して樹脂の含浸量を調整する樹脂含浸量調整手段と、樹脂含浸量調整手段により除かれた余分な樹脂の樹脂量を計測する樹脂量計測手段とを有し、計測した樹脂量から樹脂の含浸不足を検知する。また、本発明に係る繊維強化複合材料成形装置10は、流量計により、樹脂含浸量調整手段により除かれた余分な樹脂の樹脂量を計測する手段を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料成形装置に係り、特に、繊維に樹脂を含浸し、前記樹脂含浸繊維を巻回部材に巻回することにより繊維強化複合材料を成形する繊維強化複合材料成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮水素ガスや圧縮天然ガス(CNG)等を貯蔵する、例えば、車両用の高圧タンク等には、軽量化のために、繊維強化複合材料が用いられている。このような繊維強化複合材料には、例えば、強化繊維としての炭素繊維等に、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂等を含浸させて成形した繊維強化複合材料が用いられる。そして、繊維強化複合材料を成形するための繊維強化複合材料成形装置には、例えば、フィラメントワインディング(Filament Winding:FW)装置等が使用される。フィラメントワインディング装置は、樹脂槽等に溜められた樹脂を含浸した繊維が、高圧タンクのライナ等に連続して巻き付けられることにより繊維強化複合材料を成形する装置である。
【0003】
そして、特許文献1には、フィラメントワインディング成形における樹脂量調節装置において、(a)樹脂が含浸された繊維をガイドする隆起状ガイド板と、(b)該隆起状ガイド板に一定間隔をおいて設けられる壁状拘束板と、(c)該壁状拘束板の間に位置し、前記繊維が通過する空隙断面積を設定する押し付け部材を具備することを特徴とする樹脂量調節装置が示されている。そして、同文献には、樹脂を過剰に含浸した繊維が空隙断面積の調節が可能な空隙を通過することにより、目標とする値まで樹脂を過剰に含浸した繊維の樹脂量を低下させることができることが示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−286043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば、樹脂槽等の中に溜められている樹脂の不足等が生じると、繊維に目標よりも少ない樹脂量が含浸されることや、繊維に樹脂がほとんど含浸されないことがある。そして、このような樹脂含浸不足の繊維を上述したような空隙に通しても、樹脂が過剰に含浸されていないために樹脂量を調節することができない場合がある。そのような樹脂含浸不足の繊維が、上述したフィラメントワインディング装置等により高圧タンクのライナ等に連続して巻き付けられて繊維強化複合材料が成形されると、成形された繊維強化複合材料の中に樹脂が欠損する部位が生じて均質な繊維強化複合材料が成形されず、耐圧性能が部分的に満足できない部位が高圧タンクに生じる場合がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、樹脂の含浸不足を検知することができる繊維強化複合材料成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る繊維強化複合材料成形装置は、繊維に樹脂を含浸し、前記樹脂含浸繊維を巻回部材に巻回することにより繊維強化複合材料を成形する繊維強化複合材料成形装置であって、樹脂含浸装置は、樹脂が付着した繊維を、所定の幅を有する間隙に通して樹脂の含浸量を調整する樹脂含浸量調整手段と、樹脂含浸量調整手段により除かれた余分な樹脂の樹脂量を計測する樹脂量計測手段とを有し、計測した樹脂量から樹脂の含浸不足を検知することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る繊維強化複合材料成形装置は、樹脂量計測手段が、流量計により樹脂量を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記繊維強化複合材料成形装置によれば、除かれた余分な樹脂の樹脂量を計測することにより樹脂の含浸不足を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。図1は、繊維強化複合材料成形装置10の構成を示す図である。
【0011】
繊維供給装置12は、繊維強化複合材料に用いられる繊維14等を送り出す機能を有している。繊維供給装置12には、例えば、クリールスタンド(Creel Stand)等を用いることができる。繊維供給装置12は、繊維14を巻くための複数のボビン16と、繊維14に負荷する張力を調整するための複数の繊維張力調整装置18とを有している。
【0012】
繊維14には、高強度繊維または高弾性繊維である炭素繊維等を使用することができる。そして、炭素繊維には、レーヨン系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile:PAN)系炭素繊維またはピッチ系炭素繊維等が用いられる。勿論、他の条件次第では、繊維14には、ガラス繊維またはアラミド繊維等を用いることができる。また、繊維14の形態には、フィラメント、ヤーン、テープ、編組品等の形態を用いることができる。勿論、他の条件次第では、繊維14の形態は、これらに限定されることはない。
【0013】
繊維張力測定装置20は、繊維供給装置12から送り出された繊維14に負荷された張力を測定する機能を有している。繊維張力測定装置20には、一般的に、繊維14の張力測定に用いられている張力測定装置を使用することができる。
【0014】
樹脂含浸装置22は、繊維張力測定装置20により張力が測定された繊維14に樹脂を含浸する機能を有している。図2は、樹脂含浸装置22の構成を示す模式図であり、図2(A)は、樹脂含浸装置22を上面から見た模式図であり、図2(B)は、樹脂含浸装置22を側面から見た模式図である。
【0015】
樹脂槽24は、繊維14に含浸するための樹脂を溜める機能を有しており、樹脂含浸装置22に配置される。樹脂には、熱硬化性樹脂である、例えば、エポキシ樹脂等を用いることができる。勿論、他の条件次第では、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂に限定されることはなく、フェノール樹脂等の他の熱硬化性樹脂を用いることができる。樹脂槽24には、硬化剤や溶剤等を含有したエポキシ樹脂等が液体の状態で溜められる。そして、樹脂槽24には、樹脂の粘度等を調整するために、樹脂を加熱して樹脂温度を調節する機能を有する図示されないヒータ等の加熱装置が配置される。また、樹脂槽24には、樹脂槽24の中に溜められた樹脂の温度を測定する機能を有する図示されない熱電対等の樹脂温度センサが配置される。
【0016】
樹脂含浸用ローラ26は、樹脂槽24の中の樹脂をローラ表面に付着させた後、付着させた樹脂を繊維14に転写させる機能を有している。そして、樹脂含浸用ローラ26は、ローラの下部が樹脂槽24の中の樹脂に浸漬するようにして樹脂含浸装置22に配置される。また、樹脂含浸用ローラ26は、ローラをモータ等により回転させて、第1テンションローラ28と歯車型の第2テンションローラ30とで押さえられた繊維14に樹脂槽24中の樹脂を転写して付着させるための回転軸32を備えている。
【0017】
ブレード34は、樹脂含浸用ローラ26におけるローラ表面に付着した樹脂量を調整する機能を有しており、樹脂含浸装置22に配置される。ブレード34は、繊維14に転写して付着させる樹脂が略一定となるようにするために、ブレード34の先端と樹脂含浸用ローラ26におけるローラ表面との間が所定の幅を有するようにして配置される。ブレード34は、一般的に、ステンレス等の金属材料等により作製することができる。勿論、他の条件次第では、ブレードのかわりにヘラ等を使用してもよい。
【0018】
樹脂含浸量調整装置38は、樹脂が付着した繊維36を、所定の幅を有する間隙に通して樹脂の含浸量を調整する機能を有する樹脂含浸量調整手段であって、樹脂含浸装置22に配置される。図3は、樹脂含浸量調整装置38を示す模式図であり、図3(A)は、樹脂含浸量調整装置38を側面から見た断面模式図であり、図3(B)は、樹脂含浸量調整装置38をA方向から見た模式図である。
【0019】
樹脂含浸量調整装置38は、樹脂が付着した繊維36の挿入側に第1スリット39と、引き出し側に第2スリット40とを有している。更に、樹脂含浸量調整装置38は、第1スリット39と第2スリット40との間に、樹脂の含浸量を調整するための複数のローラ等が配置される空間である樹脂含浸量調整室41を有している。そして、第1スリット39と樹脂含浸量調整室41、第2スリット40と樹脂含浸量調整室41とは、樹脂が付着した繊維36を通すために連結されている。
【0020】
第1スリット39は、樹脂が付着した繊維36の両端部に付着した余分な樹脂を除去する機能を有している。そして、第1スリット39の幅は、樹脂が付着した繊維36が第1スリット39を通過するとき、樹脂が付着した繊維36の両端部に付着した余分な樹脂が除去できるように定められる。また、第1スリット39は、樹脂が付着した繊維36ごとに配置される。例えば、図3(B)に示すように、樹脂が付着した繊維36が3本ある場合には、3個の第1スリット39が配置される。第1スリット39の先端部には、樹脂が付着した繊維36が第1スリット39へ挿入されるときの抵抗を軽減等するために、テーパを設けてもよい。第2スリット40の幅と数量とについても、第1スリット39と同様に定めることができる。勿論、他の条件次第では、第2スリット40は、これに限定されることはない。
【0021】
一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43は、樹脂が付着した繊維36をローラの間に通して、樹脂が付着した繊維36の厚み方向の樹脂量を調整する機能を有しており、樹脂含浸量調整室41に配置される。そして、樹脂含浸量調整室41には、例えば、図3(A)に示すように、一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43を5組配置することができる。勿論、他の条件次第では、樹脂含浸量調整室41に配置される一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43の数は、5組に限定されることはない。
【0022】
一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43において、一方の樹脂含浸量調整用ローラ42と他方の樹脂含浸量調整用ローラ43とは、所定の幅を有する間隙を設けて配置される。ここで、所定の幅は、一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43の間に樹脂が付着した繊維36を通したときに、樹脂が付着した繊維36の厚さ方向における余分な樹脂を除去できるように定められる。それにより、樹脂が付着した繊維36が一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43の間の所定の幅を有する間隙を通過するとき、樹脂含浸量調整用ローラ42,43が各々回転し、樹脂が付着した繊維36における厚み方向の余分な樹脂を取り除くことができる。
【0023】
間隙制御用サーボシリンダ44は、一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43の間の間隙の幅を調整する機能を有しており、樹脂含浸量調整装置38に配置される。間隙制御用サーボシリンダ44には、例えば、電動サーボシリンダ等を用いることができる。そして、間隙制御用サーボシリンダ44のロッド45は、図3(A)に示すように、樹脂含浸量調整室41と連結したロット挿入口から挿入され、樹脂含浸量調整用ローラ42を支持している支持部材46に取り付けられる。それにより、間隙制御用サーボシリンダ44は、間隙制御用サーボシリンダ44のロッド45を上下させることにより支持部材46を上下させて、一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43の間の間隙を調整することができる。例えば、一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43の間の間隙を小さくすることで樹脂含浸量を少なくし、一対の樹脂含浸量調整用ローラ42,43の間の間隙を大きくすることで樹脂含浸量を多くすることができる。
【0024】
樹脂排出口47は、樹脂含浸量調整用ローラ42,43により取り除かれた余分な樹脂48を排出する機能を有しており、樹脂含浸量調整室41に配置される。また、樹脂案内部49は、樹脂排出口47から排出された余分な樹脂48を案内して排出し、排出された余分な樹脂48を樹脂槽24に回収する等の機能を有しており、樹脂含浸量調整装置38に配置される。そして、樹脂案内部49は、図3(B)に示すように、樹脂が付着した繊維36ごとに配置される。
【0025】
流量計50は、樹脂含浸量調整装置38により除かれた余分な樹脂48の樹脂量を計測する機能を有する樹脂量計測手段であって、樹脂含浸装置22に配置される。流量計50には、図3(A)または図3(B)に示すように、非接触式流量計を用いることができる。そして、非接触式流量計には、超音波流量計等を用いることができる。勿論、他の条件次第では、樹脂量計測手段には、非接触式距離センサ等を用いることもできる。流量計50は、樹脂が付着した繊維36ごとに配置される。そして、各々の流量計50により、図3(A)または図3(B)に示すように、樹脂含浸量調整装置38の樹脂排出口47から流れて排出されている余分な樹脂48の樹脂量が、樹脂が付着した繊維36ごとに計測される。
【0026】
再び、図2に戻り、繊維案内部材51は、樹脂含浸量調整装置38から引き出されて、第2テンションローラ30を介して送られた樹脂を含浸した繊維52を案内する機能を有しており、樹脂含浸装置22に配置される。繊維案内部材51と繊維案内部材51との間隔は、各々の樹脂を含浸した繊維52が通過することができるように定められる。繊維案内部材51は、一般的に、ステンレス等の金属材料等により作製することができる。
【0027】
再び、図1に戻り、制御装置54は、繊維張力測定装置20と、樹脂槽24に配置される樹脂温度センサと、樹脂含浸量調整装置38に配置される間隙制御用サーボシリンダ44と、樹脂含浸装置22に配置される流量計50等とにリード線とコネクタ等を用いて接続される。制御装置54は、繊維張力測定装置20から出力される繊維14の張力データの電気信号を入力し、繊維14の張力を制御することができる機能を有している。そして、制御装置54は、樹脂槽24に配置された樹脂温度センサから出力される樹脂温度データの電気信号を入力し、樹脂温度を制御することができる機能を有している。また、制御装置54は、間隙制御用サーボシリンダ44から出力される樹脂含浸量調整用ローラ42,43の間の間隙データの電気信号を入力して、樹脂含浸量調整用ローラ42,43の間の間隙を制御することができる機能を有している。
【0028】
更に、制御装置54は、流量計50から出力される樹脂量データの電気信号を入力して、基準となる所定の樹脂量が排出されているか否かを検知することができる機能を有している。そして、制御装置54は、流量計50で計測された樹脂量と基準となる樹脂量とを比較して、流量計50で計測された樹脂量が基準となる樹脂量よりも少ない場合には、異常信号を出力することができる機能を有している。そして、かかる制御装置54は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)で構成することができる。また、制御装置54と接続されたデータロガ56には、上述した繊維14の張力データ、樹脂温度データ、樹脂含浸量調整用ローラ42,43の間の間隙データまたは樹脂量データ等が記憶される。
【0029】
フィラメントワインディング装置60は、樹脂含浸装置22から送り出された樹脂を含浸した繊維52を、巻回部材である型または心金であるマンドレル(Mandrel)62等に巻回して巻き付ける機能を有している。そして、フィラメントワインディング装置60は、樹脂を含浸した繊維52を、マンドレル62等を回転させて巻き付けるための回転装置を備えている。また、フィラメントワインディング装置60は、樹脂を含浸した繊維52をマンドレル62等の円周方向や軸方向に巻き付けることができ、例えば、マンドレル62等の回転軸方向に対して略垂直に巻き付けるフープ巻き(Hoop Winding)やマンドレル62等の回転軸方向に対して所定の角度で巻き付けるヘリカル巻き(Helical Winding)等により巻き付けることができる。例えば、繊維強化複合材料を用いて高圧タンクを製造する場合には、ポリアミド樹脂等により成形された樹脂ライナまたはアルミニウム等により成形された金属ライナ等に、フィラメントワインディング装置60により、樹脂を含浸した繊維52が巻き付けられる。
【0030】
そして、上述したマンドレルまたはライナ等に巻き付けた樹脂を含浸した繊維52を、図示されない樹脂硬化炉等で加熱することにより樹脂を硬化させて、繊維強化複合材料が成形される。
【0031】
次に、上記構成における繊維強化複合材料成形装置10の作用について説明する。繊維供給装置12のボビン16から、例えば、炭素繊維である繊維14が繰り出される。ボビン16から繰り出された繊維14は、繊維張力調整装置18により所定の張力に調整されて繊維供給装置12から送り出される。
【0032】
繊維供給装置12から送り出された繊維14は、繊維張力測定装置20により繊維14に負荷されている張力が測定される。ここで、繊維張力測定装置20により測定された繊維14の張力データは、繊維張力測定装置20から制御装置54へ出力され、データロガ56に記憶されて保存される。また、繊維14に、例えば、基準となる所定の張力が負荷されていない場合には、制御装置54が、張力の異常を検知して異常信号等を出力する。それにより、例えば、繊維強化複合材料成形装置10が停止する。
【0033】
繊維張力測定装置20を通過した繊維14は、樹脂含浸装置22に送り出される。樹脂含浸装置22における樹脂槽24の中には、例えば、エポキシ樹脂である液状の樹脂が溜められている。樹脂の温度は、熱電対等の樹脂温度センサにより測定される。そして、樹脂温度データは、樹脂温度センサからから制御装置54へ出力され、データロガ56に記憶されて保存される。また、樹脂温度が、例えば、設定された樹脂温度でない場合には、制御装置54が樹脂温度の異常を検知して、異常信号等を出力する。それにより、例えば、繊維強化複合材料成形装置10が停止する。
【0034】
樹脂含浸用ローラ26は、回転することにより樹脂槽24に溜められた樹脂と接触し、ローラ表面に樹脂が付着する。そして、ブレード34により余分な樹脂が除去されて、樹脂含浸用ローラ26のローラ表面に付着した樹脂の樹脂量が調整される。第1テンションローラ28と第2テンションローラ30とにより押さえられた繊維14は、樹脂が付着した樹脂含浸用ローラ26と接触することにより、樹脂含浸用ローラ26に付着した樹脂が転写されて付着する。
【0035】
樹脂が付着した繊維36は、樹脂含浸量調整装置38における第1スリット39を通過することにより、樹脂が付着した繊維36の両端部に付着した余分な樹脂が除去される。そして、樹脂が付着した繊維36は、間隙制御用サーボシリンダ44により調整された樹脂含浸量制御用ローラ42,43の間における所定の幅を有する間隙を通ることにより、樹脂が付着した繊維36の厚み方向における余分な樹脂が除去される。それにより、適正な樹脂量の樹脂が繊維14に含浸され第2スリット40から引き出される。
【0036】
樹脂含浸量制御用ローラ42,43により除去された余分な樹脂48は、樹脂含浸量調整装置38の樹脂排出口47から樹脂案内部49に案内されて排出され、樹脂槽24へ回収される。そして、排出された余分な樹脂48の樹脂量は、流量計50により計測される。流量計50により計測された樹脂の樹脂量データは、流量計50から制御装置54へ出力され、データロガ56に記憶されて保存される。
【0037】
ここで、樹脂含浸用ローラ26により転写されて繊維14に付着した樹脂量が略一定であれば、略一定の余分な樹脂48の樹脂量が排出される。そして、例えば、樹脂槽24の中の樹脂が不足していた場合や、樹脂槽24の中の樹脂が空の状態である場合には、樹脂含浸用ローラ26により転写されて繊維14に付着した樹脂量が、正常の場合より少なくなるので、排出される余分な樹脂48の樹脂量も正常の場合より少なくなる。したがって、排出された余分な樹脂48の樹脂量が、正常の場合における基準となる樹脂量よりも少ない場合には、繊維14に適正な樹脂量の樹脂が含浸されていないと判断して、制御装置54から異常信号等が出力される。それにより、例えば、繊維強化複合材料成形装置10が停止する。
【0038】
樹脂を含浸した繊維52は、第2テンションローラ30を介した後、繊維案内部材51に案内されて、フィラメントワインディング装置60へ送り出される。樹脂を含浸した繊維52は、フィラメントワインディング装置60により、マンドレル62または高圧タンクのライナ等にフープ巻き等により巻き付けられる。その後、マンドレル62またはライナ等に巻き付けた樹脂を含浸した繊維52を樹脂硬化炉で加熱することにより、樹脂を硬化させて繊維強化複合材料が成形される。
【0039】
なお、上記構成における繊維強化複合材料成形装置では、樹脂含浸用ローラを用いて繊維に樹脂を転写させて付着させたが、他の条件次第では、樹脂槽の樹脂の中に繊維を浸漬させることにより、繊維に樹脂を付着させることもできる。
【0040】
以上、上記構成における繊維強化複合材料成形装置によれば、樹脂含浸量調整装置により除かれた余分な樹脂の樹脂量を流量計等により計測することで、計測した樹脂量から繊維に対する樹脂の含浸不足を検知することができる。
【0041】
また、上記構成における繊維強化複合材料成形装置によれば、樹脂含浸量調整装置により除かれた余分な樹脂の樹脂量を常時監視する等により、樹脂含浸不足の繊維がマンドレル等に巻き付けられる前に、樹脂の含浸不足を検知することができる。そして、含浸不足を検知した時点で、繊維強化複合材料成形装置を停止させる等により、樹脂含浸不足の繊維が巻き付けられるのを抑制することができる。したがって、上記繊維強化複合材料成形装置によれば、繊維に樹脂をより均一に含浸して繊維強化複合材料を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明における実施の形態である繊維強化複合材料成形装置10の構成を示す模式図である。
【図2】本発明における実施の形態である樹脂含浸装置22の構成を示す模式図である。
【図3】本発明における実施の形態である樹脂含浸量調整装置38の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
10 繊維強化複合材料成形装置、12 繊維供給装置、14 繊維、16 ボビン、18 繊維張力調整装置、20 繊維張力測定装置、22 樹脂含浸装置、24 樹脂槽、26 樹脂含浸用ローラ 28 第1テンションローラ、30 第2テンションローラ、32 回転軸、34 ブレード、36 樹脂が付着した繊維、38 樹脂含浸量調整装置、39 第1スリット、40 第2スリット、41 樹脂含浸量調整室、42,43 樹脂含浸量調整用ローラ、44 間隙制御用サーボシリンダ、45 ロッド、46 支持部材、47 樹脂排出口、49 樹脂案内部、50 流量計、51 繊維案内部材、52 樹脂を含浸した繊維、54 制御装置、56 データロガ、60 フィラメントワインディング装置、62 マンドレル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維に樹脂を含浸し、前記樹脂含浸繊維を巻回部材に巻回することにより繊維強化複合材料を成形する繊維強化複合材料成形装置であって、
樹脂含浸装置は、
樹脂が付着した繊維を、所定の幅を有する間隙に通して樹脂の含浸量を調整する樹脂含浸量調整手段と、
樹脂含浸量調整手段により除かれた余分な樹脂の樹脂量を計測する樹脂量計測手段と、
を有し、
計測した樹脂量から樹脂の含浸不足を検知することを特徴とする繊維強化複合材料成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維強化複合材料成形装置であって、
樹脂量計測手段は、流量計により樹脂量を計測することを特徴とする繊維強化複合材料成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−210102(P2007−210102A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29174(P2006−29174)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】