説明

繊維積層体冷間プレス成形装置

【課題】自動車用防音材、フロアーマット、インシュレータダッシュ等の自動車用繊維積層体を所要形状に成形するための冷間プレス成形装置であって、成形冷却に要する時間を短縮し、生産性を向上させる。
【解決手段】繊維積層体15を成形するための通気性金型2a,2bが取り付けられる定盤1a,1bの型取付面に給出口4a〜4fおよび排出口5a〜5dを形成し、該給出口および排出口を通して該通気性金型に冷却エアーを給排出する。また、定盤1a,1bの型取付面に給出口4a〜4fと排出口5a〜5dとを隣り合わせに形成し、通気性金型2a,2bの表面には該給出口と連通する多数の小孔13a〜13fと該排出口と連通する多数の小孔14a〜14dを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用防音材、フロアーマット、インシュレータダッシュ等の自動車用繊維積層体を所要形状に成形するための冷間プレス成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば高い防音性,遮音性を有する繊維積層体からなるインシュレータダッシュは、下記特許文献1に示されたように、低融点で融解するバインダー樹脂を含有した該繊維積層体をオーブンで加熱して該バインダー樹脂を溶融させるとともに、これを通気性の金型間に挟着し、冷却エアーを吹き付けて冷間プレスすることにより所要形状に成形される。
また、下記特許文献2は、同様の繊維積層体からなる自動車用フロアーカーペットを冷却エアーを吹き付けて冷間プレスすることにより所要形状に成形する技術を示すものである。
【特許文献1】特開平7−16917号公報
【特許文献2】特開平6−199168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記冷間プレス成形に用いられる従来の装置では、金型に冷却エアーを送るための配管を設けるのに工数が掛かるとともに、その配管の径が型高さにより制限を受け大口径の配管を設けることができず、また屈曲させたり分岐して配管しなければならないので、十分な風量の冷却エアーを供給できないと云う問題があった。このため、金型間に挟着した状態で繊維積層体を短時間で冷却することができなかった。例えば、目付量2000g/m、幅700mm、長さ1300mmの繊維積層体を180℃に加熱し、従来の冷間プレス装置で成形する場合、成形時間として40秒を要し、更に成形後の戻りを防止するため該繊維積層体を金型間から取り出した後に冷風を20秒程度当てて強制冷却する必要があった。このためサイクルタイムが長くなって生産性が悪いという問題があった。
本発明は、このような課題を解決し、生産性を向上できる繊維積層体成形用冷間プレス装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため請求項1に記載した繊維積層体冷間プレス成形装置は、繊維積層体成形用の通気性金型が取り付けられる定盤の型取付面に給出口および排出口を形成し、該給出口および排出口を通して該通気性金型に冷却エアーを給排出することを特徴とする。
【0005】
また、請求項2に記載の発明は、上記繊維積層体冷間プレス成形装置において、定盤の型取付面に給出口と排出口とを隣り合わせに形成し、通気性金型の表面には該給出口と連通する多数の小孔と該排出口と連通する多数の小孔を形成してなることを特徴とする。
【0006】
また、請求項3に記載の発明は、上記繊維積層体冷間プレス成形装置において、給出口および排出口に通気性金型との密着性を保持するシール部材を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項4に記載の発明は、上記繊維積層体冷間プレス成形装置において、給出口または排出口に冷却エアーの流量調節用ダンパーを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1および請求項2に記載した発明では、金型の高さにより制限を受けることなく大口径の給出口と排出口およびその配管を設けることができるので、冷却エアーの流量が十分に確保され、成形冷却に要する時間が短縮され生産性を向上させる。
請求項3に記載した発明では、定盤に金型を取り付けるだけで空気洩れが防止される。
請求項4に記載した発明では、冷却を特に必要とする部分に冷却エアーを多量に供給できる。
【実施例1】
【0009】
次に図面とともに本発明の実施例を説明する。図1は本発明に係るプレス成形装置の概略を示す正面図である。図中、1aは下定盤、1bは上定盤、2aは下定盤1aにボルト3により固定された通気性金型、2bは上定盤1bにボルト3により固定された通気性金型である。下定盤1aと上定盤1bとは同じ構成であるので、図2に下定盤1aおよび通気性金型2aの縦断面図、図3にそのA−A線断面図を示す。即ち、このプレス成形装置では定盤1aの型取付面に給出口4a〜4fと排出口5a〜5dを隣り合わせに形成し、該給出口4a〜4fを該定盤1a内に横断状に形成した給気路6に連通するとともに、排出口5a〜5fを該定盤1a内に横断状に形成した排気路7に連通する。8は該給気路6の入口に設けられた電磁弁で、給気路6は該電磁弁を介して冷却エアー源に繋がる。9は排気路7の出口に設けられた電磁弁で、排気路7は該電磁弁を介して排気用ブロワーに繋がる。
【0010】
また、10は給出口4aと連なる給気路6の途中に設けられた流量調節用ダンパー、11は排出口5aと連なる排気路7の途中に設けられた流量調節用ダンパーである。また、定盤1aの型取付面であって各給出口4a〜4fおよび各排出口5a〜5dの周囲に区画状に溝を形成し、該溝にゴム等の弾性材料からなるシール部材12が設けられ、該シール部材が通気性金型2aの下面と密着することでエアーが漏洩しないようにしている。
【0011】
また、通気性金型2aの表面は図4に示したように繊維積層体の所要成形形状に従って付形されているとともに、給出口4a〜4fと連通する多数の小孔13a〜13fおよび排出口5a〜5dと連通する多数の小孔14a〜14dが形成される。
【0012】
このように構成した冷間プレス成形装置では、上定盤1bを下降させ図5に示したように繊維積層体15を通気性金型2a,2b間に挟着し、その状態で給気路6を通して各給出口4a〜4fより給出した冷却エアーを該通気性金型2a,2b内に流入させ、冷却エアーを多数の小孔13a〜13fから該繊維積層体15中に流出させ該繊維積層体を冷却するとともに、前記排気用ブロワーを作動させ排気路7を減圧することにより隣接する小孔14a〜14dより該冷却エアーを排出口5a〜5dに吸引させる。このため、冷却エアーが該繊維積層体15中を多量に流れ該繊維積層体は短時間で冷却される。ちなみに、給気路6および排気路7の口径を120mmとし、風量を30m/分に設定した場合、180℃に加熱した目付量2000g/m、幅700mm、長さ1300mmの繊維積層体を40秒で成形冷却することができた。
【0013】
また、流量調節用ダンパー10,11を調節することにより繊維積層体15の厚手部分等に多量に冷却エアーが流れるようにし、冷却されにくい部分の冷却が促進されるように設定できる。このため繊維積層体15の形状に合わせた風量設定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るプレス成形装置の概略を示す正面図。
【図2】本発明に係る冷間プレス成形装置の下定盤および金型の縦断面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】本発明に係る冷間プレス成形装置の金型の斜視図。
【図5】本発明に係るプレス成形装置の作動状態を示した要部の縦断面図。
【符号の説明】
【0015】
1a,1b 定盤
2a,2b 通気性金型
4a〜4f 給出口
5a〜5d 排出口
6 給気路
7 排気路
10,11 流量調節用ダンパー
12 シール部材
13a〜13f 小孔
14a〜14d 小孔
15 繊維積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維積層体成形用の通気性金型が取り付けられる定盤の型取付面に給出口および排出口を形成し、該給出口および排出口を通して該通気性金型に冷却エアーを給排出することを特徴とした繊維積層体冷間プレス成形装置。
【請求項2】
定盤の型取付面に給出口と排出口とを隣り合わせに形成し、通気性金型の表面には該給出口と連通する多数の小孔と該排出口と連通する多数の小孔を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の繊維積層体冷間プレス成形装置。
【請求項3】
給出口および排出口に通気性金型との密着性を保持するシール部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の繊維積層体冷間プレス成形装置。
【請求項4】
給出口または排出口に冷却エアーの流量調節用ダンパーを設けた請求項1〜3のいずれかに記載の繊維積層体冷間プレス成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−218827(P2006−218827A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36439(P2005−36439)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000241599)豊和繊維工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】