説明

缶用両面塗装鋼板

【課題】缶内面側塗膜がD&I加工性、耐レトルト性、香味保持性、衛生性等に優れ、且つ缶外面側塗膜が印刷発色性、D&I加工性等に優れる缶用両面塗装鋼板を提供すること。
【解決手段】両面塗装鋼板であって、缶加工後外面となる側に、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、アミノ樹脂及びレゾール型フェノール樹脂の少なくとも1種の架橋剤(B)、並びにアルミニウム顔料(C1)又は白色顔料(C2)を、特定割合で含有する缶用塗料(I)の塗膜が形成され、且つ缶加工後内面となる側に、エチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)、ブチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)、並びに該微粒子(D)及び(E)に対する溶解度が、40℃以下では5質量%未満で170℃以上では99質量%以上である有機溶剤(F)を、特定割合で含有する缶用塗料(II)の塗膜が形成されている缶用両面塗装鋼板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶用両面塗装鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品用缶等の缶の内面及び外面には、通常、塗膜が形成されている。従来から、缶に塗膜を形成する方式として、鋼板等の金属板を、プレスオイルの使用下に、缶状に成形加工してから、缶の内外面を塗装するポストコート方式が行われて来た。
【0003】
近年、工程短縮による製造コスト削減及び成形加工後のプレスオイル処理に伴う環境問題の解消の観点から、上記ポストコート方式から、予め両面に塗装が施された金属板を缶状に成形加工するプレコート方式に替わってきている。プレコート方式の場合、缶特に缶内面側に形成された塗膜には、絞りしごき加工性(以下、D&I(Draw and Ironing)加工性ということがある)、耐レトルト性、香味保持性、衛生性等の塗膜性能に優れることが要求されるが、これらの全てを満足させることは容易ではない。また、プレコート方式の場合、缶外面側に形成された塗膜には、商品名、商品の絵等を印刷する際の印刷発色性、D&I加工性等に優れることが要求される。
【0004】
プレコート方式に用いる両面塗装金属板として、缶内面側となる塗膜が、水酸基含有ポリエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂とを含有する塗料で形成され、缶外面側となる塗膜が、水酸基含有ポリエステル樹脂とアミノ樹脂及び/又はレゾール型フェノール樹脂とを含有する塗料で形成された両面塗装金属板が開示されている(特許文献1参照)。しかし、この両面塗装金属板では、缶内面側塗膜のD&I加工性、耐レトルト性、香味保持性、衛生性等及び缶外面側塗膜の印刷発色性等の特性が必ずしも十分ではなかった。従って、これらの特性を向上させることが要望されていた。
【0005】
上記要望に応え得る缶内面用の塗料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた缶用塗料組成物があるが、PETの結晶性の高さから一般的に用いられている有機溶剤には溶解し難いため、プレコート用塗料として十分な特性を発揮せしめることは容易ではなかった。
【0006】
例えば、プレコート方式に使用し得る缶用塗料組成物として、非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を溶剤に溶解後、徐冷して得られる、結晶性ポリエステル樹脂を分散状態で含有する缶被覆用樹脂組成物が公知である(特許文献2参照)。しかし、この缶被覆用樹脂組成物を金属板に塗装した樹脂被覆金属板は、D&I加工性が不十分であった。
【0007】
また、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を有機溶剤中に加熱、溶解させた後、該樹脂溶液を結晶性ポリエステル樹脂の昇温結晶開始温度以上の温度から結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度以下の温度まで急冷して得られる、ポリエステル樹脂分散液を缶用塗料組成物として使用することが公知である(特許文献3参照)。しかし、この様な缶用塗料組成物を、プレコート方式で使用した場合、D&I加工性及び塗膜平滑性のいずれかが十分ではない場合があった。
【特許文献1】特開2003−34322号公報
【特許文献2】特開2001−234115号公報
【特許文献3】特開2004−2671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、缶内面側となる塗膜がD&I加工性、耐レトルト性、香味保持性、衛生性、密着性、防食性、塗膜平滑性等の塗膜性能に優れ、且つ缶外面側となる塗膜が印刷発色性、D&I加工性等の塗膜性能に優れる缶用両面塗装鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を行った。その結果、缶加工後外面となる側に、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、アミノ樹脂及びレゾール型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B)、並びにアルミニウム顔料(C1)又は白色顔料(C2)を、それぞれ特定割合で含有する缶用塗料(I)の塗膜が形成され、且つ缶加工後内面となる側に、エチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)、ブチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)、並びに特定の有機溶剤(F)を、それぞれ特定割合で含有する缶用塗料(II)の塗膜が形成された両面塗装鋼板により、上記課題を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、完成されたものである。
【0010】
本発明は、以下の缶用両面塗装鋼板を提供するものである。
【0011】
1.両面塗装鋼板であって、
缶加工後外面となる側に、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、アミノ樹脂及びレゾール型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B)、並びに該ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対して、アルミニウム顔料(C1)5〜60質量部又は白色顔料(C2)60〜140質量部を含有する缶用塗料(I)の塗膜が形成され、且つ
缶加工後内面となる側に、エチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)、ブチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)、並びに該微粒子(D)に対する溶解度及び該微粒子(E)に対する溶解度が、いずれも、40℃以下では5質量%未満であり170℃以上では99質量%以上である有機溶剤(F)を含有し、該微粒子(D)と該微粒子(E)との割合が、これらの合計に基づいて、前者が95〜30質量%で、後者が5〜70質量%であり、且つ、有機溶剤(F)の含有量が、該微粒子(D)及び該微粒子(E)の合計100質量部に対して40〜800質量部である缶用塗料(II)の塗膜が形成されている缶用両面塗装鋼板。
【0012】
2.缶用塗料(I)の塗膜膜厚が、乾燥膜厚で1〜20μmであり、且つ缶用塗料(II)の塗膜膜厚が、乾燥膜厚で1〜30μmである上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0013】
3.缶用塗料(I)のアルミニウム顔料(C1)が、ノンリーフィング型アルミニウム顔料である上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0014】
4.缶用塗料(II)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)が、樹脂固有粘度0.4〜1.4dl/g、ガラス転移温度(Tg)55〜130℃、及び融点(Tm)160〜260℃のものである上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0015】
5.缶用塗料(II)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)が、エチレンテレフタレート単位含有率が80モル%以上のポリエステル樹脂からなるものである上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0016】
6.缶用塗料(II)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)が、樹脂固有粘度0.4〜1.4dl/g、ガラス転移温度(Tg)0〜40℃、及び融点(Tm)130〜250℃のものである上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0017】
7.缶用塗料(II)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)が、ブチレンテレフタレート単位含有率が90モル%以上のポリエステル樹脂からなるものである上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0018】
8.缶用塗料(II)が、更に、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)を、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の合計100質量部に対して、0.1〜100質量部含有してなる塗料である上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0019】
9.缶用塗料(II)の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が、ガラス転移温度(Tg)55〜150℃のものである上記項9に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0020】
10.缶用塗料(II)が、更に、分散剤(G)を含有してなる塗料である上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0021】
11.分散剤(G)が、一般式(1)
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、炭素数6〜18の脂肪族もしくは芳香族炭化水素、又は−C2mOC2n+1を示す。ここで、m及びnは1以上の整数であって、かつm+nが6以上の整数である。)で表されるリン酸系化合物である上記項10に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0024】
12.缶用塗料(II)が、更に、レゾール型フェノール樹脂を、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部含有してなる塗料である上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0025】
13.缶用塗料(II)が、更に、エポキシ樹脂を、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部含有してなる塗料である上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【0026】
14.上記項1に記載の缶用両面塗装鋼板を、絞り加工又は絞りしごき加工して得られるスチール缶体。
【0027】
缶用両面塗装鋼板
本発明の缶用両面塗装鋼板は、鋼板の缶加工後に外面となる側に、缶用塗料(I)の塗膜を形成し、且つ鋼板の缶加工後に内面となる側に、缶用塗料(II)の塗膜を形成してなる塗装鋼板である。
【0028】
鋼板
缶用塗料(I)及び缶用塗料(II)の各塗膜を形成する鋼板としては、飲食用缶等の各種缶用に使用されるものであれば、特に制限は無い。例えば、冷延鋼板、錫メッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、クロムメッキ鋼板、ティンフリースチール(錫無し鋼板)などを挙げることができる。これらの鋼板は、表面処理をすることなく用いてもよいし、リン酸塩処理、ジルコニウム塩処理、クロメート処理などの表面処理を行ってから用いてもよい。
【0029】
また、鋼板の形状としては、板状であればよく、コイル状に巻いた金属帯であってもよい。鋼板の厚さは、通常0.15〜0.4mm程度であり、縦及び横の長さは任意である。また、金属帯の場合、通常、幅1m前後であることが適当である。
【0030】
缶用塗料(I)
缶用塗料(1)は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、アミノ樹脂及びレゾール型フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B)、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対して、アルミニウム顔料(C1)を5〜60質量部又は白色顔料(C2)を60〜140質量部含有する塗料である。
【0031】
缶用塗料(I)は、鋼板の缶加工後に外面となる側に塗装することによって、製缶後に下地の鋼板の黒っぽい色を隠蔽して、優れた缶外面部の印刷発色性を得ることができ、又D&I加工性等の塗膜性能にも優れている。
【0032】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、示査走査型熱量計による測定において明確な融点を示さないものであり、常温で有機溶剤に溶解しやすい樹脂であり、架橋剤(B)と架橋硬化反応して、塗膜を形成する。
【0033】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)としては、数平均分子量が、8,000〜100,000程度であるのが好ましく、10,000〜80,000程度であるのがより好ましい。また、水酸基価が、1〜20mgKOH/g程度であるのが好ましく、1〜15mgKOH/g程度であるのがより好ましい。
【0034】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分を反応させることにより得られる。
【0035】
多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物;無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが用いられ、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸を併用することができる。
【0036】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの二価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール等を用いることができる。
【0037】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、「UE−3201」、「UE−3203」、「XA−0653」(商品名、以上ユニチカ(株)製)、「GK−640」、「GK−880」、(商品名、以上東洋紡績(株)製)などが挙げられる。
【0038】
架橋剤(B)
架橋剤(B)として、アミノ樹脂とレゾール型フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いる。
【0039】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂;該メチロール化アミノ樹脂のメチロール基をアルコールによってエーテル化したもの等が挙げられる。
【0040】
アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0041】
アミノ樹脂としては、メチロール化アミノ樹脂のメチロール基がメチルエーテル化又はメチルエーテル化とブチルエーテル化との混合エーテル化されたアルコキシメラミン樹脂を用いるのが好ましい。このメチルエーテル化アルコキシメラミン樹脂又はメチルエーテル化・ブチルエーテル化アルコキシメラミン樹脂の分子量は、300〜2,000程度であるのが好ましい。
【0042】
上記レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール成分に、反応触媒存在下でホルムアルデヒド類を加熱縮合反応させてメチロール基を導入してメチロール化フェノール樹脂を得、次いでそのメチロール基の一部をアルコールでアルキルエーテル化して得られるものが好ましい。
【0043】
レゾール型フェノール樹脂の製造において用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどを挙げることができる。これらのフェノール化合物は1種単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0044】
レゾール型フェノール樹脂の製造に用いられるホルムアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0045】
メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8個の1価アルコールが好ましく、炭素数1〜4個の1価アルコールがより好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどの1価アルコールを用いるのが、特に好ましい。
【0046】
アミノ樹脂とレゾール型フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の固形分量100質量部に基いて、0.1〜20質量部程度であるのが好ましく、0.5〜5質量部程度であるのがより好ましい。
【0047】
アルミニウム顔料(C1)及び白色顔料(C2)
本発明に用いる缶用塗料(I)は、メタル光輝感が必要とされる場合には、スチール缶に特有の黒っぽい色を隠蔽し、優れた缶外面部の印刷発色性を得るために、アルミニウム顔料(C1)を配合する。また、アルミニウム顔料(C1)は、加工延展性に優れる金属であるので、しごき加工時に変形延展し易く、外面側のしごき応力による特定部位への応力集中を回避させる効果もある。
【0048】
アルミニウム顔料(C1)の平均粒子径は、レーザー光散乱式粒度分布測定装置で測定した平均粒子径(D50)で5〜50μm程度であることが、缶加工後の光輝感やデザイン性の点から望ましい。レーザー光散乱式粒度分布測定装置としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば「SALD−1100型」(商品名、島津製作所製)を挙げることができる。
【0049】
アルミニウム顔料(C1)としては、蒸着、コーティング、表面研磨等の表面処理を施したものであってもよい。このようなアルミニウム顔料(C1)としては、リーフィング型アルミニウム顔料、ノンリーフィング型アルミニウム顔料等が挙げられるが、絞りしごき加工によって缶体を得るには、ノンリーフィング型アルミニウム顔料を用いる方が好ましい。ノンリーフィング型アルミニウム顔料は、オレイン酸等の脂肪酸により表面処理されたものであり、表面張力が小さく、溶剤、塗料との親和性が強いため、塗膜中で一様に分散し、これにより優れた光沢性を示すものである。
【0050】
また、アルミニウム顔料(C1)の純度は、表面処理部を除き、99.5%以上であるアルミニウム顔料が、延展性やしごき加工時のアルミニウムによる表面被覆性の観点から望ましい。
【0051】
アルミニウム顔料(C1)としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば「アルミニウムペーストMC-666」、「アルミニウムペーストMH-8801」、「アルミニウムペーストMH−8805」(商品名、以上旭化成メタルズ社製)、「アルミペースト564NS」、「アルミペースト1950M」、「アルミペースト1700NAL」、「アルミペースト7160N」 、「アルミペースト7680NS」(商品名、以上東洋アルミニウム社製)等が挙げられる。
【0052】
アルミニウム顔料(C1)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対して、5〜60質量部程度であることが、必要である。アルミニウム顔料(C1)の含有量が、5質量部以上であれば、製缶後に缶外面部の塗膜が薄膜化しても、下地の鋼板の黒っぽい色を隠蔽でき、優れた缶外面部の印刷発色性を得ることができる。また、60質量部以下であれば、塗膜表層へのアルミニウムの突出による絞りしごき加工性の低下や、塗料の沈降安定性の低下を防ぐことができる。
【0053】
アルミニウム顔料(C1)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の固形分合計100質量部に対して、10〜50質量部程度であるのが好ましく、15〜40質量部程度であるのがより好ましい。
【0054】
また、缶用塗料(I)が、メタル光輝感が要求されない場合、スチール缶に特有の黒っぽい色を隠蔽し、優れた缶外面部の印刷発色性を得るために、白色顔料(C2)を配合する。
【0055】
白色顔料(C2)としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポンなどを挙げることができるが、優れた印刷発色性を得るために、酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしては、通常塗料用及びインキ用として使われる、平均粒子径が約0.05〜約2μmのものが好ましく、約0.1〜約1μmのものがより好ましい。
【0056】
酸化チタンとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、「JR−301」、「JR−600」、「JR−701」、「JR−901」(商品名、以上テイカ社製)、「CR−50」(商品名、石原産業社製)等が挙げられる。
【0057】
白色顔料(C2)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対して、60〜140質量部程度であることが、必要である。白色顔料(C2)の含有量が、60質量部以上であれば、製缶後に缶外面部の塗膜が薄膜化しても、下地の鋼板の黒っぽい色を隠蔽でき、優れた缶外面部の印刷発色性を得ることができる。また、140質量部以下であれば、塗膜硬度が高くなることによる絞りしごき加工性の低下や、加工ダイス磨耗などの問題の発生を防ぐことができる。
【0058】
白色顔料(C2)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の固形分合計100質量部に対して、60〜120質量部程度であるのが好ましく、80〜100質量部程度あるのがより好ましい。
【0059】
缶用塗料(I)においては、アルミニウム顔料(C1)と白色顔料(C2)を併用することもできる。
【0060】
その他の成分
缶用塗料(I)には、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、架橋剤(B)及びアルミニウム顔料(C1)又は白色顔料(C2)以外に、必要に応じて、硬化反応を促進するため酸触媒を添加することができる。
【0061】
酸触媒としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸化合物、燐酸などの酸;これらの酸のアミン中和物などを具体例として挙げることができる。なかでも上記スルホン酸化合物、スルホン酸化合物のアミン中和物が好適である。
【0062】
酸触媒の配合量は、得られる塗膜の物性などの点から、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の固形分量100質量部に基いて、酸量として0.1〜5質量部程度が好ましく、0.5〜2質量部程度がより好ましい。酸量は、例えば、スルホン酸化合物のアミン中和物の場合は、この中和物からアミンを除去した残りのスルホン酸化合物量を意味する。
【0063】
缶用塗料(I)には、更に必要に応じて、有機樹脂、ワックス、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、着色顔料、体質顔料、有機溶剤などを添加することができる。
【0064】
上記有機樹脂としては、特にエポキシ樹脂を添加することで硬度、密着性、耐レトルト性などが向上するが、この中でもノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0065】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂などの各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。なかでも塗膜性能のバランスを取り易いフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好適である。
【0066】
上記ワックスは、缶用塗料(I)の塗膜の動摩擦係数を調整するために添加され、該塗料を塗装した鋼板の搬送及び成形加工時において引っ掻き傷等の発生を抑えるために有用である。ワックスとしては、軟化点30℃以上のものが好ましく、33〜150℃程度のものがより好ましく、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィンワックス、動物系ワックス、植物系ワックスなどを挙げることができる。
【0067】
上記脂肪酸エステルワックスの原料となるポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ジ又はそれ以上のポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどを挙げることができる。これらのうち、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール化合物が好ましく、この中でもポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好適である。
【0068】
上記脂肪酸エステルワックスのもう一方の原料となる脂肪酸としては、飽和又は不飽和の脂肪酸を挙げることができ、炭素原子数6〜32の脂肪酸であることが好ましい。好適な脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などの飽和脂肪酸;カプロレイン酸、ウンデシレン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リカン酸、リシノール酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0069】
脂肪酸エステルワックスとしては、上記ポリオール化合物の水酸基数の少なくとも1/3が脂肪酸でエステル化されたものが好ましい。
【0070】
シリコン系ワックスとしては、市販品が使用できる。市販品としては、例えば、「BYK−300」、「BYK−320」、「BYK−330」[商品名、以上BYK Chemie(ビックケミー)社製]、「シルウェットL−77」、「シルウェットL−720」、「シルウェットL−7602」[商品名、以上日本コニカー(株)製]、「ペインタッド29」、「ペインタッド32」、「ペインタッドM」[商品名、以上ダウコーニング社製]、「信越シリコーンKF−96」[商品名、信越化学(株)製]等が挙げられ、また、フッ素系ワックスとしては、例えば、「シャムロックワックスSST−1MG」、「シャムロックワックスSST−3」、「シャムロックワックスフルオロスリップ231」[商品名、以上、シャムロックケミカルズ社製]、「POLYFLUO(ポリフルオ)120」、「POLYFLUO150」、「POLYFLUO400」[商品名、以上マイクロパウダーズ社]等が挙げられる。
【0071】
ポリオレフィンワックスとしては、市販品が使用できる。市販品としては、例えば、「シャムロックワックスS−394」、「シャムロックワックスS−395」[商品名、以上シャムロックケミカルズ社製]、「ヘキストワックスPE−520」、「ヘキストワックスPE−521」[商品名、以上ヘキスト社製]、「三井ハイワックス」[商品名、三井化学(株)製]等が挙げられる。
【0072】
さらに、動物系ワックスとしては、例えば、ラノリンワックス、蜜ろう等が挙げられ、植物系ワックスとしては、例えば、カルナバワックス、水ろう等が挙げられる。
【0073】
上記ワックスは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
これらワックスの添加量は、塗料安定性に優れかつ被膜の絞りしごき加工に耐え得る加工性の面から、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対して、20質量部以下であるのが好ましく、0.01〜10質量部程度であるのがより好ましい。
【0075】
上記着色顔料としては、従来から塗料用に常用されているものを使用できる。着色顔料としては、例えばアゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機系顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ等の無機系顔料を挙げることができる。
【0076】
着色顔料の添加量は、塗色の色相に合わせて任意に設定される。
【0077】
前記体質顔料としては、従来から塗料用に常用されているものを使用できる。具体例としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、クレー、バリタなどを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0078】
前記有機溶剤としては、各成分を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶剤などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0079】
塗料(I)の調製
本発明で用いる缶用塗料(I)は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、架橋剤(B)及びアルミニウム顔料(C1)又は白色顔料(C2)の必須成分、及び必要に応じて、その他の任意成分を、公知の方法に従って、混合することにより、調製することができる。
【0080】
得られる塗料(I)は、通常、有機溶剤型塗料組成物であり、塗料組成物の固形分含量は、通常、5〜50質量%程度とするのがよい。
【0081】
缶用塗料(II)
本発明で用いる缶用塗料(II)は、エチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)、ブチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)、並びに該微粒子(D)に対する溶解度及び該微粒子(E)に対する溶解度が、いずれも、40℃以下では5質量%未満であり170℃以上では99質量%以上である有機溶剤(F)を含有する塗料である。また、缶用塗料(II)において、該微粒子(D)と該微粒子(E)との割合は、これらの合計に基づいて、前者が95〜30質量%で、後者が5〜70質量%であり、且つ、有機溶剤(F)の含有量は、該微粒子(D)及び該微粒子(E)の合計100質量部に対して40〜800質量部である。
【0082】
缶用塗料(II)は、鋼板の缶加工後に内面となる側に塗装することによって、D&I加工性、耐レトルト性、香味保持性、衛生性、密着性、防食性、塗膜平滑性等の塗膜性能に優れた塗膜を形成できる塗料である。
【0083】
缶用塗料(II)において、ポリエステル樹脂の特性である樹脂固有粘度、ガラス転移温度、融点及び平均粒子径は、以下の様にして測定したものである。
【0084】
(1)樹脂固有粘度:JIS Z 8803に規定の方法に従い、フェノール/テトラクロロエタン=1/1(質量比)の混合溶液を用いて、25℃で測定して求める。
【0085】
(2)ガラス転移温度:JIS K 7121 9.3(1987)に規定の方法によって求められる値である。
【0086】
(3)融点:示査走査型熱量計を用いて、測定した値である。示査走査型熱量計の市販品としては、例えば、「DSC−60A」(商品名、島津製作所社(株)製)を使用できる。
【0087】
(4)体積平均粒子径:レーザー散乱式粒度分布測定器を用いて、測定した値である。この様な粒度分布測定器の市販品としては、例えば、「MICROTRAC HRA model 9320−X100」(商品名、日機装(株)製)を使用できる。
【0088】
結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)
缶用塗料(II)における結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)は、エチレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル樹脂の微粒子である。結晶性とは、示査走査型熱量計による測定において、明確な融点を示すことを意味する。エチレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル樹脂は、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとの重縮合反応によって得られるが、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルの一部をイソフタル酸、アジピン酸等のその他の多塩基酸又はその低級アルキルエステルで置き換えたり、エチレングリコールの一部をプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のその他の多価アルコールで置き換えてもよい。
【0089】
エチレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル樹脂としては、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとに基づくエチレンテレフタレート単位の含有率が80モル%以上のポリエステル樹脂であるのが、香味保持性に優れる観点から、好ましい。エチレンテレフタレート単位の含有率が80モル%以上である限りにおいて、例えば、エチレンテレフタレート単位含有率が100モル%のポリエチレンテレフタレート(PET)であっても、エチレンテレフタレート単位とエチレンイソフタレート単位等のその他の単位との共重合体であってもよい。また、ゴム状ポリエステル構造(例えば、ガラス転移温度の低いポリエーテルからなる鎖状セグメント)を有しているものも包含される。
【0090】
該微粒子(D)を得るための結晶性ポリエステル樹脂の微粒子化方法としては、例えば、粉砕法、溶解冷却法、スプレードライ法等が挙げられるが、塗膜外観の面から有機溶剤によって加熱溶解した後に冷却させる溶解冷却法によって得た結晶性ポリエステル樹脂微粒子を用いることが好ましい。
【0091】
本発明に使用できる結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)の特性としては、樹脂固有粘度が0.4〜1.4dl/g程度であるのが好ましく、0.7〜1.2dl/g程度であるのがより好ましい。また、ガラス転移温度が55〜130℃程度であるのが好ましく、融点が160〜260℃程度であるのが好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)の体積平均粒子径は、通常、0.1〜25μm程度、特に0.1〜10μm程度の範囲内である。
【0092】
結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)としては、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、「PA−200」(商品名、三菱レイヨン(株)製)、「J125」(商品名、三井化学(株)製)、「J135」(商品名、三井化学(株)製)、「TN8756」(商品名、帝人化成(株)製)などが挙げられる。
【0093】
結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)
塗料(II)における結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)は、ブチレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル樹脂の微粒子である。結晶性とは、示査走査型熱量計による測定において、明確な融点を示すことを意味する。ブチレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル樹脂は、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルと1,4−ブタンジオールとの重縮合反応によって得られるが、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルの一部をイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のその他の多塩基酸又はその低級アルキルエステルで置き換えたり、1,4−ブタンジオールの一部を1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等のその他の多価アルコールで置き換えてもよい。
【0094】
ブチレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル樹脂としては、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルと1,4−ブタンジオールとに基づくブチレンテレフタレート単位の含有率が90モル%以上のポリエステル樹脂であるのが好ましい。ブチレンテレフタレート単位の含有率が90モル%以上である限りにおいて、例えば、ブチレンテレフタレート単位含有率が100モル%のポリブチレンテレフタレート(PBT)であっても、ブチレンテレフタレート単位とブチレンイソフタレート単位等のその他の単位との共重合体であってもよい。また、ゴム状ポリエステル構造(例えば、ガラス転移温度の低いポリエーテルからなる鎖状セグメント)を有しているものも包含される。
【0095】
該微粒子(E)を得るための結晶性ポリエステル樹脂の微粒子化方法としては、例えば、粉砕法、溶解冷却法、スプレードライ法等が挙げられるが、塗膜形成性の面から有機溶剤によって加熱溶解した後に冷却させる溶解冷却法によって得た結晶性ポリエステル樹脂微粒子を用いることが好ましい。
【0096】
本発明に使用できる結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の特性としては、樹脂固有粘度が0.4〜1.4dl/g程度であるのが好ましく、0.7〜1.2dl/g程度であるのがより好ましい。また、ガラス転移温度が0〜40℃程度であるのが好ましく、融点が130〜250℃程度であるのが好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の体積平均粒子径は、通常、0.1〜25μm程度、特に0.1〜7μm程度の範囲内である。
【0097】
結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)としては、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、「N−1000」(商品名、三菱レイヨン(株)製)等が挙げられる。
【0098】
結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)との割合
塗料(II)における、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)との使用割合は、これらの微粒子の合計に基づいて、前者が95〜30質量%で、後者が5〜70質量%である。これらの微粒子が有機溶剤中に分散した状態の場合は、微粒子(D)と微粒子(E)の固形分当たりでこの割合となる様に混合使用する。
【0099】
結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)の割合が95質量%を超えると、塗膜の絞りしごき加工性(D&I加工性)が低下する。また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)の割合が5質量%未満となると、塗膜の香味保持性を低下させるため好ましくない。
【0100】
結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)との使用割合は、これらの微粒子の合計に基づいて、前者が90〜40質量%で、後者が10〜60質量%であるのが好ましく、前者が80〜50質量%で、後者が20〜50質量%であるのがより好ましい。
【0101】
有機溶剤(F)
有機溶剤(F)は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)に対する溶解度及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)に対する溶解度が、いずれも、40℃以下では5質量%未満であり、170℃以上では99質量%以上である有機溶剤である。有機溶剤(F)が、このような溶解度であることにより、本発明塗料組成物は、常温では流動性に優れた分散状態であり、塗膜形成のための加熱時には微粒子(D)及び微粒子(E)が共に溶融して均一塗膜を形成する。
【0102】
有機溶剤(F)としては、具体的には、例えば、アジピン酸ジメチルとグルタール酸ジメチルとコハク酸ジメチルとの混合溶剤(沸点範囲170〜205℃程度)、N−メチル−2−ピロリドン、イソホロン等が挙げられる。このアジピン酸ジメチルとグルタール酸ジメチルとコハク酸ジメチルとの混合溶剤としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば「DBE」(商品名、デュポン社製)等を挙げることができる。
【0103】
有機溶剤(F)の含有量としては、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の合計100質量部に対して、40〜800質量部程度であるのが、これらの微粒子の分散性と塗装作業性の面からよい。有機溶剤(F)の含有量は、該微粒子(D)と該微粒子(E)の合計100質量部に対して、50〜500質量部程度であるのが好ましい。
【0104】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)
缶用塗料(II)においては、必要に応じて、前記缶用塗料(I)で用いる水酸基含有ポリエステル樹脂(A)を、配合することができる。水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、示査走査型熱量計による測定において明確な融点を示さないものであり、常温で有機溶剤に溶解しやすい樹脂で、塗膜形成時において溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)との親和性や相溶性が高い樹脂、又は溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)と反応して連続層を形成するような樹脂が挙げられる。このような性質によって、該ポリエステル樹脂(A)は、塗料(II)の塗膜平滑性等の塗膜外観の向上に寄与する。
【0105】
塗料(II)に配合する水酸基含有ポリエステル樹脂(A)としては、ガラス転移温度(Tg)が、55〜150℃程度であるものが好ましく、60〜120℃程度であるものがより好ましく、65〜110℃程度であるものが更に好ましい。
【0106】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の原料、製法、市販品等は、前記塗料(I)で説明した通りである。
【0107】
缶用塗料(II)において、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の合計固形分100質量部に対して、0.1〜100質量部程度配合することにより、塗膜外観を向上せしめることができる。該樹脂(A)の配合量は、該微粒子(D)と該微粒子(E)の合計100質量部に対して、5〜100質量部程度であるのが好ましい。
【0108】
分散剤(G)
分散剤(G)は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の有機溶剤(F)中の分散性を向上させるために用いることができる。
【0109】
分散剤(G)としては、例えば、主鎖の片末端又は両末端に、微粒子(D)及び(E)と親和性のある基を有する直鎖状の高分子系分散剤を使用できる。該親和性基としては、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、窒素原子を有する複素環基等が挙げられ、直鎖状の高分子としては、例えば、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。また、このような複素環基としては、例えば、ピロール基、イミダゾール基、ピリジニル基、ピリミジニル基等が挙げられる。
【0110】
このような高分子系の分散剤として、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、「BYK−160」、「BYK−161」、「BYK−162」、「BYK−180」、「BYK−181」、「BYK−182」[商品名、以上BYK Chemie(ビックケミー)社製]、「ソルスパース20000」(商品名、ゼネカ社製)等を使用することができる。
【0111】
また、分散剤(G)としては、下記一般式(1)
【0112】
【化2】

【0113】
(式中、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、炭素数6〜18の脂肪族もしくは芳香族炭化水素、又は−C2mOC2n+1を示す。ここで、m及びnは1以上の整数であって、かつm+nが6以上の整数である。)で表されるリン酸系化合物を使用することも、好ましい。
【0114】
一般式(1)のリン酸系化合物としては、具体的には、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等を挙げることができる。
【0115】
これらの分散剤(G)は、いずれか1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
分散剤(G)の配合量は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の分散性を向上させる観点から、該樹脂微粒子(D)と樹脂微粒子(E)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部程度が好ましく、0.5〜5質量部程度がより好ましい。
【0117】
その他の成分
缶用塗料(II)には、必要に応じて、レゾール型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂などのポリエステル樹脂以外の樹脂を配合することができる。これらの中でもレゾール型フェノール樹脂やエポキシ樹脂が、鋼板との塗膜密着性を向上せしめる点から、好ましい。
【0118】
レゾール型フェノール樹脂は、特にフェノール成分とホルムアルデヒド類とを反応触媒の存在下で加熱して縮合反応させてメチロール基を導入して得られるメチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルコールでアルキルエーテル化してなるものが好ましい。
【0119】
レゾール型フェノール樹脂の製造において用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどを挙げることができる。これらのフェノール化合物は1種単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0120】
レゾール型フェノール樹脂の製造に用いられるホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0121】
メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜4個の1価アルコールを好適に使用することができる。好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができる。
【0122】
レゾール型フェノール樹脂の配合量は、塗膜外観とD&I加工性とのバランスの観点から、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部程度が好ましく、0.5〜5質量部程度が、より好ましい。
【0123】
上記エポキシ樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び/又は結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)であるポリエステル樹脂がカルボキシル基を有している場合には、その架橋剤として有効に作用するが、該ポリエステル樹脂がカルボキシル基を持っていない場合にもポリエステル樹脂の補強材又は上記レゾール型フェノール樹脂と架橋することによる造膜成分として有効に作用する。
【0124】
エポキシ樹脂を添加することで、硬度、密着性、耐レトルト性などの塗膜性能が向上するが、中でもノボラック型エポキシ樹脂が環境ホルモンの疑いをもたれているビスフェノールAを含有していないため好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂などの各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。なかでも塗膜性能のバランスを取り易いフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好適である。
【0125】
エポキシ樹脂の配合量は、塗膜外観とD&I加工性とのバランスの観点から、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)との合計100質量部に対して、0.5〜20質量部程度が好ましく、2〜10質量部程度がより好ましい。
【0126】
缶用塗料(II)には、さらに必要に応じて、その他の有機樹脂、ワックス、消泡剤、レベリング剤、凝集防止剤、着色顔料、光輝性顔料、体質顔料、防錆顔料、有機溶剤(F)以外の有機溶剤等を添加使用できる。
【0127】
上記ワックスは、缶用塗料(II)の塗膜の動摩擦係数を調整するために添加され、該組成物を塗装した鋼板の搬送及び成形加工時において引っ掻き傷等の発生を抑えるために有用である。ワックスとしては、軟化点30℃以上のものが好ましく、33〜150℃程度のものがより好ましく、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィンワックス、動物系ワックス、植物系ワックスなどを挙げることができる。
【0128】
上記ワックスの具体例としては、前記塗料(I)で用いるものと同様であり、その原料、製法、市販品等は、前記塗料(I)で説明した通りである。
【0129】
缶用塗料(II)において、ワックスの添加量は、塗料安定性に優れかつ被膜の絞りしごき加工に耐え得る加工性の面から、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)との合計100質量部に対して、5質量部以下であるのが好ましく、0.5〜2.5質量部程度であるのがより好ましい。
【0130】
前記の有機溶剤(F)以外の有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の炭化水素類;メチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0131】
前記の硬化触媒としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、燐酸などの酸触媒又はこれらの酸のアミン中和物などを具体例として挙げることができる。
【0132】
塗料(II)の調製
缶用塗料(II)は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)及び有機溶剤(F)の各必須成分、必要に応じて、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及び分散剤(G)の各任意成分並びに前記その他の成分を、公知の方法に従って、混合することにより、調製することができる。
【0133】
得られる塗料(II)は、通常、有機溶剤型塗料組成物であり、塗料組成物の固形分含量は、通常、5〜50質量%程度とするのがよい。
【0134】
缶用塗料(II)においては、その固形分合計に対して、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)と結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)との固形分合計を50質量%以上程度に調整することが、塗膜のD&I加工性を十分とする点から、好ましい。
【0135】
缶用両面塗装鋼板の調製
本発明の缶用両面塗装鋼板は、鋼板の缶加工後に外面となる側に、缶用塗料(I)を塗装してその塗膜を形成し、且つ鋼板の缶加工後に内面となる側に、缶用塗料(II)を塗装してその塗膜を形成することにより、容易に調製することができる。
【0136】
缶用塗料(I)と缶用塗料(II)との塗装順序は、特に限定されず、いずれを先に塗装しても良い。また、両被膜の焼き付けは、同時に行うのが好ましい。具体的には、例えば、下記塗装工程により、飲食品缶用等の鋼板に、両面塗装した塗装鋼板を調製できる。
【0137】
好ましい塗装方法としては、鋼板の缶外面となる側に缶用塗料(I)を塗装する工程、缶内面となる側に缶用塗料(II)を塗装する工程、次いで塗装された両塗料被膜を加熱して、焼き付ける工程により、両面塗装鋼板を得る方法が挙げられる。
【0138】
鋼板への缶用塗料(I)及び缶用塗料(II)の塗装方法は、特に限定されるものではない。いずれの塗料も、例えばスプレー塗装、ロールコーター塗装、カーテンフローコーター塗装、バーコーター塗装などにより行うことができるが、鋼板への効率的な塗装方法としては、ロールコーター塗装が適している。
【0139】
各塗料の塗布量は、次の通りである。缶用塗料(I)は、加工前の乾燥塗膜量で10〜200mg/100cm程度であるのが好ましく、10〜80mg/100cm程度であるのがより好ましい。また、缶用塗料(II)は、加工前の乾燥塗膜量で、10〜300mg/100cm程度であるのが好ましく、50〜200mg/100cm程度であるのが、より好ましい。
【0140】
塗装された両被膜の焼付け温度は、塗料(II)に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び(E)の融点以上の温度であることが好ましく、該融点より30〜100℃程度高い温度であることがより好ましい。具体的な焼付け温度としては、通常、180℃〜300℃程度が好ましく、200〜280℃程度がより好ましい。また、焼付け時間としては、通常、1〜180秒間程度、特に5〜60秒間程度、被塗物の鋼板の温度が保持されることが好ましい。これにより、缶用塗料(I)及び缶用塗料(II)の両塗膜が、乾燥又は硬化する。
【0141】
次に、焼付け後の被膜は、冷風や大量の冷却水を吹き付けたり、冷却された水中に浸漬するなどの方法等で急冷することが望ましい。この焼き付け後の急冷により、缶用塗料(I)及び缶用塗料(II)の両塗膜中に含まれるポリエステル樹脂をアモルファス化することが、D&I加工性の向上の観点から、好ましい。冷却速度としては、40℃以下となるまで、5秒以内に冷却することが、D&I加工性に優れる塗膜を得る観点から、好ましい。
【0142】
この様にして、鋼板の缶加工後に外面となる側に、缶用塗料(I)の塗膜を、乾燥膜厚で1〜20μm程度、特に1〜10μm程度、且つ鋼板の缶加工後に内面となる側に、缶用塗料(II)の塗膜を、乾燥膜厚で、1〜30μm程度、特に5〜20μm程度形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0143】
本発明の缶用両面塗装鋼板によれば、次のような顕著な効果が得られる。
【0144】
(1) 缶用塗料(II)により形成された缶内面側となる塗膜は、通常クリヤ塗膜であり、D&I加工性、耐レトルト性、香味保持性、衛生性、密着性、防食性、塗膜平滑性等の塗膜性能に優れている。また、缶用塗料(I)により形成された缶外面側となる塗膜は、メタリック塗膜又はホワイト塗膜であり、印刷発色性、D&I加工性等の塗膜性能に優れている。
【0145】
(2) 本発明の缶用両面塗装鋼板は、絞り加工又は絞りしごき加工を施すことにより、缶外面においては印刷発色性を損うことがなく、缶内面においては、耐レトルト性、香味保持性、衛生性等に優れたスチール缶体を得ることができる。従って、本発明の両面塗装鋼板を用いて得られた缶体は、飲料缶および食缶として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0146】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、これらによって限定されない。各例において、「部」及び「%」はいずれも質量基準による。
【0147】
缶用塗料(I)の製造
製造例1
攪拌機を有する容器に、樹脂(A)である「バイロン200」(注1)100部(固形分)、架橋剤(B)である「サイメル303」(注2)6.3部、顔料(C1)である「アルペースト5640NS」(注3)43.8部(固形分)、ワックスである「S−394N1」(注4)6.3部(固形分)を、混合溶剤(シクロヘキサノン/キシレン=50部/50部)を用いて、粘度を50秒(フォードカップ#4、25℃)に調整して缶外面用塗料I−1を得た。(注1)〜(注4)は、下記のものを示す。
【0148】
(注1)「バイロン200」:商品名、東洋紡績社製、水酸基含有ポリエステル樹脂、数平均分子量17,000、水酸基価6mgKOH/g、ガラス転移温度67℃。
【0149】
(注2)「サイメル303」:商品名、日本サイテックインダストリーズ(株)製、メチルエーテル化メラミン樹脂、分子量600。
【0150】
(注3)「アルペースト5640NS」:商品名、東洋アルミニウム社製、ノンリーフィンク型アルミニウム顔料ペースト、アルミニウム粒子の平均粒子径14μm、アルミニウム純度99.8%。
【0151】
(注4)「S−394N1」:シャムロック社製、ポリエチレンワックス。
【0152】
製造例2〜3
表1の配合内容とする以外は、製造例1と同様にして、缶外面用塗料I−2〜I−3を得た。
【0153】
製造例4
攪拌機を有する容器に、「バイロン200」(注1)100部(固形分)、「サイメル303」(注2)5.7部、顔料(C2)である「JR−301」(注5)64.9部(固形分)、「S−394N1」(注4)5.4部(固形分)を、混合溶剤(シクロヘキサノン/キシレン=50部/50部)を用いて均一攪拌した後、サンドミル中で、1mmφガラスビーズを用いて分散し、顔料分散粒径5μm以下、粘度50秒(フォードカップ#4、25℃)の缶外面用塗料I−4を得た。(注5)は、下記のものを示す。
【0154】
(注5)「JR−301」:テイカ(株)製、アナターゼ型の酸化チタン、平均粒子径0.3μm。
【0155】
製造例5
表1の配合内容とする以外は、製造例4と同様にして、缶外面用塗料I−5を得た。
【0156】
比較製造例1〜4
表2の配合内容とする以外は、製造例1と同様にして、缶外面用塗料I−6〜I−9を
得た。
【0157】
比較製造例5
表2の配合内容とする以外は、製造例4と同様にして、缶外面用塗料I−10を得た。
【0158】
表1及び表2に、缶外面用塗料I−1〜I−10の配合内容を示す。配合量は、全て、固形分(部)を示す。
【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
表1及び表2において、「エリーテルUE−3600」(注6)は、下記のものを示す。
【0162】
(注6)「エリーテルUE−3600」:商品名、ユニチカ社製、水酸基含有ポリエステル樹脂、数平均分子量20,000、水酸基価4mgKOH/g。
【0163】
缶用塗料(II)の製造
製造例6 結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂微粒子の製造
多塩基酸成分を、テレフタル酸/イソフタル酸=85モル%/15モル%の原料組成とし、又多価アルコール成分を、エチレングリコールを100モル%の原料組成として得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を、常法によりジェットミルで冷却粉砕し、分級を繰り返して、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂微粒子(PET-No.1という)を得た。
【0164】
製造例7 結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂微粒子の製造
表3に示す原料組成のポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、該樹脂を「DBE」(商品名、デュポン社製、アジピン酸ジメチル、グルタール酸ジメチル、コハク酸ジメチルの混合溶剤、沸点205℃)400部と共に攪拌しながら加熱溶解し、次いで、冷却しながら、500部のシクロヘキサノン(沸点155℃)を投入して結晶微粒子を析出させた後、濾過及び減圧乾燥して、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂微粒子(PET-No.2という)を得た。
【0165】
製造例8 結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂微粒子の製造
表3に示す原料組成のポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、溶解溶剤をN−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)に変更する以外は、製造例2と同様にして、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂微粒子(PET-No.3という)を得た。
【0166】
製造例9 結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂微粒子の製造
表2に示す原料組成のポリブチレンテレフタレート樹脂を用い、該樹脂を「DBE」(商品名、デュポン社製、アジピン酸ジメチル、グルタール酸ジメチル、コハク酸ジメチルの混合溶剤、沸点205℃)400部と共に攪拌しながら加熱溶解し、500部のシクロヘキサノン(沸点155℃)を投入して結晶微粒子を冷却析出させた後、濾過及び減圧乾燥して、結晶性ポリブチレンテレフタレート樹脂微粒子(PBT-No.1という)を得た。
【0167】
製造例10 結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂微粒子の製造
表3に示す原料組成のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる以外は、製造例4と同様にして、結晶性ポリブチレンテレフタレート樹脂微粒子(PBT-No.2という)を得た。
【0168】
表3に、製造例6〜10で得た結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂微粒子及び結晶性ポリブチレンテレフタレート樹脂微粒子の原料組成、並びに樹脂固有粘度、ガラス転移温度、融点及び体積平均粒子径を示す。
【0169】
【表3】

【0170】
製造例11 缶用塗料組成物II−1の製造
表3に示したPET−No.1を50部、PBT−No.1を50部、「DBE」(注7)を500部、「BYK−161」(注8)を5部(固形分)、及び「ショーノールCKS394」(注9)を2部(固形分)、ペイントシェーカーで60分間混合分散し、シクロヘキサノン/メチルエチルケトン(50/50の質量比)にて固形分を調整し、固形分12%の缶内面用塗料II−1を得た。(注7)〜(注9)は、下記のものを示す。
【0171】
(注7)「DBE」:商品名、デュポン社製、アジピン酸ジメチルとグルタール酸ジメチルとコハク酸ジメチルの混合溶剤。
【0172】
(注8)「BYK−161」:商品名、BYK Chemie(ビックケミー)社製、アミン価11mgKOH/gのポリウレタン樹脂である分散剤。
【0173】
(注9)「ショーノールCKS394」:商品名、昭和高分子(株)製、レゾール型フェノール樹脂。
【0174】
製造例12〜18 缶内面用塗料II−2〜II−8の製造
表4の配合内容とする以外は、製造例11と同様にして、固形分12%の缶内面用塗料II−2〜II−8を得た。
【0175】
表4に、缶内面用塗料II−1〜II−8の配合内容を示す。配合量は、全て、固形分(部)を示す。
【0176】
【表4】

【0177】
表4において、樹脂(D)及び分散剤(G)の配合割合は固形分(部)を示す。また、「GK−640」(注10)は、下記のものを示す。
【0178】
(注10)「GK−640」:商品名、東洋紡績社製、水酸基含有ポリエステル樹脂、数平均分子量18,000、水酸基価5mgKOH/g、ガラス転移温度79℃。
【0179】
比較製造例5〜6 缶内面用塗料II−9〜II−10の製造
表5の配合内容とする以外は、製造例11と同様にして、固形分12%の比較缶内面用塗料II−9〜II−10を得た。
【0180】
表5に、缶内面用塗料II−9〜II−10の配合内容を示す。配合量は、全て、固形分(部)を示す。
【0181】
【表5】

【0182】
両面塗装鋼板の調製
実施例1
被塗物として、ティンフリースチール板(厚さ0.22mm、トータルクロム付着量120mg/m)を用い、下記工程1〜工程3に従って、両面塗装鋼板No.1を作成した。
【0183】
工程1:製造例19で得た被塗物表面に、缶外面用塗料I−1を乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコーターで塗装し、80℃で60秒間乾燥し溶剤を揮散させた。
【0184】
工程2:該被塗物裏面に、缶内面用塗料II−1を乾燥膜厚が10μmとなるようにバーコーターで塗装した。
【0185】
工程3:次いで、被塗物最高到達温度が270℃となる条件で20秒間焼付けし、直後に、20℃の冷却水に投入した。
【0186】
実施例2〜8
表6の塗料及び工程内容とする以外は、実施例1と同様にして、両面塗装鋼板No.2〜No.8を作成した。
【0187】
表6に、塗装鋼板No.1〜No.8について、工程1〜3を示す
【0188】
【表6】

【0189】
比較例1
被塗物として、ティンフリースチール板(厚さ0.22mm、トータルクロム付着量120mg/m)を用い、下記工程1〜工程3に従って、両面塗装鋼板No.9を作成した。
【0190】
工程1:製造例19で得た被塗物表面に、缶外面用塗料I−1を乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコーターにて塗装した。
【0191】
工程2:該被塗物裏面に、缶内面用塗料II−9を乾燥膜厚が10μmとなるようにバーコーターにて塗装した。
【0192】
工程3:素材最高到達温度が270℃になる条件で20秒間焼付けし、直後に、20℃の冷却水に投入した。
【0193】
比較例2〜9
表7の塗料及び工程内容とする以外は、比較例1と同様にして、両面塗装鋼板No.10〜No.17を作成した。
【0194】
表7に、塗装鋼板No.9〜No.17について、工程1〜3を示す
【0195】
【表7】

【0196】
実施例1〜8及び比較例1〜9の両面塗装鋼板No.10〜No.17について、外面用塗膜の50℃鉛筆硬度、60℃動摩擦係数、D&I加工性及び印刷発色性の塗膜性能を、又内面用塗膜のD&I加工性、耐レトルト性、香味保持性及び衛生性の塗膜性能を、下記試験方法により調べた。
【0197】
50℃鉛筆硬度:各塗装鋼板を50℃に設定した加熱板の上に乗せ、表面温度計で試料表面が50℃になったのを確認した後、JIS K−5400 8.4.2(1990)に準拠して鉛筆引っ掻き試験を行った。評価は破れ法で行った。
【0198】
60℃動摩擦係数:「FRICTION TESTER TR−2」(商品名、東洋精機社製、動摩擦測定装置)の加熱板を60℃に設定し、その上に各塗装鋼板を乗せ、表面温度計で試料表面が60℃になったのを確認してから、荷重2kg、引張り速度1000mm/minの条件で動摩擦係数を測定した。
【0199】
D&I加工性:各塗装鋼板を、下記式に従って、缶胴最薄部の減厚率N=60%となるように缶状に絞りしごき加工を行った。
【0200】
減厚率N=1−(n/n
(式中、nは加工後の塗装鋼板の厚さであり、nは加工前の塗装鋼板の厚さである。)。
【0201】
次に、得られた絞りしごき缶を切り開いて、「内面用塗膜」及び「外面用塗膜」の状態を以下の基準で評価した。
【0202】
◎;塗膜にクラック及び加工による白化が無く、且つ平滑性に優れる。
【0203】
○;塗膜にクラックが無く、わずかに白化が認められる。
【0204】
△;塗膜にクラックが認められるが、塗膜の剥離や脱落は認められない。
【0205】
×;塗膜の剥離や脱落が認められる。
【0206】
印刷発色性:上記「D&I加工性」の試験で得た絞りしごき缶の胴部を切り開き、その外面用塗膜上に、ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化型着色塗料(商品名「KP−1593白」、関西ペイント(株)製、塗色ホワイト)を乾燥後塗着量が3.6g/mとなるようにバーコーター塗装し、素材最高到達温度が220℃となるよう60秒間焼付乾燥して、白色印刷塗膜を形成した。
【0207】
この白色印刷塗膜のJIS Z 8729に規定されるL表色系に基づく明度(L値)を、「カラーコンピュータSM−4」(商品名、スガ試験機(株)製、測色計)を用いて、測定し、下記基準により印刷発色性を評価した。
【0208】
○;L値が70以上であり、印刷発色性良好である。
【0209】
×;L値が70未満であり、印刷発色性不良である。
【0210】
耐レトルト性:各塗装鋼板を、水に浸漬し、オートクレーブ中で125℃で30分間処理したときの内面用塗膜の白化状態を下記基準により評価した。
【0211】
○;全く白化が認められない。
【0212】
△;わずかに白化が認められる。
【0213】
×;著しく白化が認められる。
【0214】
香味保持性:脱イオン水中にd−リモネン(香料)を30mg/lの濃度になるように加え、更に「S−1170」(商品名、三菱化学社製、ショ糖脂肪酸エステル)を1g/lの濃度になるように加えて分散した液に、外面用塗膜側をシールした各塗装鋼板を35℃で1ヶ月浸漬して貯蔵した。貯蔵後、塗膜に収着したd−リモネン(香料)を測定する為、内面側塗膜表面を拭いた後、ジエチルエーテルに20℃で1週間浸漬し、抽出されたd−リモネン(香料)をガスクロマトグラフィーによって測定し、以下の基準で評価した。
【0215】
○;抽出されたd−リモネン(香料)が、内面側塗膜重量120mg当たり0.6mg未満で、香味保持性に優れる。
【0216】
△;抽出されたd−リモネン(香料)が、内面側塗膜重量120mg当たり0.6mg以上1.6mg未満で、香味保持性不良。
【0217】
×;抽出されたd−リモネン(香料)が内面塗膜重量120mg当たり1.6mg以上で、香味保持性に劣る。
【0218】
衛生性:外面用塗膜側をシールした各塗装鋼板を、塗装面積1cmに対して活性炭処理した水道水の量が1mlとなる比率となるように、活性炭処理した水道水を満たした耐熱ガラス製ボトルに浸漬し、蓋をしたオートクレーブ中にて125℃で30分間処理を行った。処理後の内容液について食品衛生法記載の試験法に準じて、過マンガン酸カリウムの消費量(ppm)に基づいて衛生性を評価した。
【0219】
◎;消費量が2ppm未満で、衛生性に優れる。
【0220】
○;消費量が2ppm以上5ppm未満で、衛生性良好。
【0221】
△;消費量が5ppm以上10ppm未満で、衛生性不良。
【0222】
×;消費量が10ppm以上で、衛生性に劣る。
【0223】
塗膜性能試験の結果を表8及び表9に示す。
【0224】
【表8】

【0225】
【表9】

【0226】
表9において、印刷発色性の欄の「−」は、塗膜の剥離や脱落のため、評価できなかったことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面塗装鋼板であって、
缶加工後外面となる側に、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、アミノ樹脂及びレゾール型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B)、並びに該ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対して、アルミニウム顔料(C1)5〜60質量部又は白色顔料(C2)60〜140質量部を含有する缶用塗料(I)の塗膜が形成され、且つ
缶加工後内面となる側に、エチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)、ブチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)、並びに該微粒子(D)に対する溶解度及び該微粒子(E)に対する溶解度が、いずれも、40℃以下では5質量%未満であり170℃以上では99質量%以上である有機溶剤(F)を含有し、該微粒子(D)と該微粒子(E)との割合が、これらの合計に基づいて、前者が95〜30質量%で、後者が5〜70質量%であり、且つ、有機溶剤(F)の含有量が、該微粒子(D)及び該微粒子(E)の合計100質量部に対して40〜800質量部である缶用塗料(II)の塗膜が形成されている缶用両面塗装鋼板。
【請求項2】
缶用塗料(I)の塗膜膜厚が、乾燥膜厚で1〜20μmであり、且つ缶用塗料(II)の塗膜膜厚が、乾燥膜厚で1〜30μmである請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項3】
缶用塗料(I)のアルミニウム顔料(C1)が、ノンリーフィング型アルミニウム顔料である請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項4】
缶用塗料(II)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)が、樹脂固有粘度0.4〜1.4dl/g、ガラス転移温度(Tg)55〜130℃、及び融点(Tm)160〜260℃のものである請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項5】
缶用塗料(II)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)が、エチレンテレフタレート単位含有率が80モル%以上のポリエステル樹脂からなるものである請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項6】
缶用塗料(II)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)が、樹脂固有粘度0.4〜1.4dl/g、ガラス転移温度(Tg)0〜40℃、及び融点(Tm)130〜250℃のものである請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項7】
缶用塗料(II)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)が、ブチレンテレフタレート単位含有率が90モル%以上のポリエステル樹脂からなるものである請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項8】
缶用塗料(II)が、更に、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)を、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の合計100質量部に対して、0.1〜100質量部含有してなる塗料である請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項9】
缶用塗料(II)の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が、ガラス転移温度(Tg)55〜150℃のものである請求項9に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項10】
缶用塗料(II)が、更に、分散剤(G)を含有してなる塗料である請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項11】
分散剤(G)が、一般式(1)
【化1】

(式中、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、炭素数6〜18の脂肪族もしくは芳香族炭化水素、又は−C2mOC2n+1を示す。ここで、m及びnは1以上の整数であって、かつm+nが6以上の整数である。)で表されるリン酸系化合物である請求項10に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項12】
缶用塗料(II)が、更に、レゾール型フェノール樹脂を、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部含有してなる塗料である請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項13】
缶用塗料(II)が、更に、エポキシ樹脂を、結晶性ポリエステル樹脂微粒子(D)及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子(E)の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部含有してなる塗料である請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板。
【請求項14】
請求項1に記載の缶用両面塗装鋼板を、絞り加工又は絞りしごき加工して得られるスチール缶体。

【公開番号】特開2008−18713(P2008−18713A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141595(P2007−141595)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】