説明

美白剤、抗老化剤および抗酸化剤

【課題】優れた美白作用を有し、日焼け後の色素沈着・しみ・そばかす・肝斑等の淡色化、美白に優れた効果を有する美白剤、および活性酸素(フリーラジカル)による皮膚老化や皮膚疾患を防止・抑制する優れたフリーラジカル捕捉能を有し、安全性の高い抗酸化剤、抗老化剤を提供する。
【解決手段】マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美白剤、抗老化剤および抗酸化剤に関し、より詳しくは、植物抽出物を有効成分として含む美白剤、抗老化剤、抗酸化剤およびそれを含む皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚のしみなどの発生機序については一部不明な点もあるが、一般には、ホルモンの異常や日光からの紫外線の刺激が原因となってメラニン色素が形成され、これが皮膚内に異常沈着するものと考えられている。皮膚の着色の原因となるこのメラニン色素は、表皮と真皮との間にあるメラニン細胞(メラノサイト)内のメラニン生成顆粒(メラノソーム)において生産され、生成したメラニンは、浸透作用により隣接細胞へ拡散する。
【0003】
このメラノサイト内における生化学反応は、次のようなものと推定されている。すなわち、必須アミノ酸であるチロシンが酵素チロシナーゼの作用によりドーパキノンとなり、これが酵素的または非酵素的酸化作用により黒色のメラニンへ変化する過程がメラニン色素の生成過程である。
上記のメラニン色素の生成を抑制する美白剤については、従来より植物由来の抽出物が、その安全性や皮膚への刺激の穏やかさを期待して種々開発されている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0004】
一方、紫外線により活性酸素が発生することは周知である。活性酸素のうち、フリーラジカル型のものは脂質などの酸化性基質と反応すると、連鎖的な酸化反応を誘発する。したがって、フリーラジカルとなる活性酸素は、皮膚等の身体組織に対するダメージを増幅する。
【0005】
皮膚は、常時、酸素や紫外線にさらされるため、フリーラジカルによる酸化ストレスのダメージが最も大きな組織である。近年では、紫外線により発生した種々の活性酸素が、皮脂や脂質の過酸化、蛋白変性、酵素阻害等を引き起こし、それが、短期的には皮膚の炎症などを誘発する。また、長期的には、老化やガンなどの原因となると考えられている。
【0006】
また、活性酸素や過酸化脂質は、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎、乾癬などの皮膚疾患にも関与すると考えられている。このように、皮膚老化や皮膚疾患には、活性酸素(フリーラジカル)が深く関与している。
【0007】
フリーラジカルを捕捉する能力を備える物質は、ラジカル連鎖反応を抑制したり、停止させたりすることができ、例えば抗酸化剤と呼ばれているものが相当する。
したがって、抗酸化剤を配合した皮膚外用剤は、光酸化ストレスによる皮膚老化(例えば、シミ、しわ、たるみなど)に予防・改善効果が期待できる。また、フリーラジカルが関連する各種皮膚疾患用皮膚外用剤としても、予防・改善効果が期待できる。
【0008】
酸化防止剤として知られているビタミンEやビタミンCは、生体内におけるフリーラジカル捕捉型抗酸化物質である。また、BHTやBHAの合成抗酸化物質も知られている。また、植物由来の酸化防止剤としては、シイタケ、エノキタケ、シメジ、カワラタケ、マツタケ、マンネンタケ、ホウウロクタケ、ナメコ、その他の担子菌類の抽出物が報告されている(特許文献6〜8)。さらに、ゴマノハグサ科モウズイカ属植物の抽出物からなる抗酸化剤や(特許文献9)、ムラサキ科カキバチシャノキ属植物の抽出物からなる抗酸化剤(特許文献10)が報告されている。
【0009】
また、特許文献5にはアピゲニンやアメントフラボンを含有する植物抽出物の一つとしてマツバラン科マツバランの溶媒抽出物が挙げられている。特許文献5においては、この植物抽出物がメラニン生成促進作用を有していたとする旨のデータはなく、特許文献5ではマツバランの溶媒抽出物そのものの働きは不明である。本発明はマツバラン抽出物によるメラニン生成抑制作用やフリーラジカル捕捉型の抗酸化作用に関するものであり、特許文献5の記載と本発明の内容とは全く異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−310939号公報
【特許文献2】特開平7−89843号公報
【特許文献3】特開平9−30954号公報
【特許文献4】特開2003−73224号公報
【特許文献5】特開平9−263534号公報
【特許文献6】特開平5−317016号公報
【特許文献7】特開平6−65575号公報
【特許文献8】特開昭59−124984号公報
【特許文献9】特開平11−171723号公報
【特許文献10】特開平11−171720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したように、植物由来の美白剤、抗老化剤について、新しい植物で新たな美白効果、抗老化効果を奏する植物を見出すことが求められている。本発明はこのような従来の事情に対処してなされたもので、新しい植物由来の美白剤、抗老化剤および抗酸化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、このような現状に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の植物抽出物に優れた美白作用および抗老化作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする美白剤である。
【0014】
本発明は、マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする美白用皮膚外用剤である。
【0015】
本発明は、マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする抗老化剤である。
【0016】
本発明は、マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする抗老化用皮膚外用剤である。
【0017】
本発明は、マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする抗酸化剤である。
【0018】
本発明は、マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする抗酸化用皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の美白剤は、優れた美白作用を有しており、日焼け後の色素沈着・しみ・そばかす・肝斑等の淡色化、美白に優れた効果を有するものである。
本発明の抗老化剤および抗酸化剤は、活性酸素(フリーラジカル)による皮膚老化や皮膚疾患を防止・抑制する優れたフリーラジカル捕捉能を有するものである。
本発明の美白用皮膚外用剤は、肌に塗布することで優れた美白効果を発揮し、日焼け後の色素沈着・しみ・そばかす・肝斑等の淡色化、美白に優れた効果を有し、安全性も高いものである。
本発明の抗老化用皮膚外用剤および抗酸化用皮膚外用剤は、肌に塗布することで優れたフリーラジカル捕捉能を発揮し、活性酸素(フリーラジカル)による皮膚老化や皮膚疾患を防止・抑制することができ、安全性も高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による植物抽出物のメラニン生成抑制作用の結果を示す図である。
【図2】本発明による植物抽出物のラジカル消去作用の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳述する。
本発明で用いられる植物は、マツバラン科マツバラン属(Psilotum)に属する植物であり、シダ植物の仲間である。マツバラン属植物としては、Psilotum nudum 、Psilotum complanatum、Psilotum flabellatum、Psilotum flaccidum、Psilotum triquetrum、Psilotum truncatumなどが知られている。
【0022】
日本国内に分布する種としてはマツバラン(Psilotum nudum)を挙げることができ、これは日本中部以南・台湾・中国南部・東南アジアなどに広く分布する。本発明において、マツバラン科マツバラン属(Psilotum)に属する植物としては、特にマツバラン(Psilotum nudum)が好ましい。
【0023】
本発明の植物抽出物に、美白作用や抗酸化作用、抗老化作用があるという報告はこれまでになく、いずれも本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0024】
本発明に用いられるマツバラン属植物の抽出物は、全草を適宜、乾燥あるいは粉砕した後、溶媒にて抽出することにより得られる。抽出は室温静置で行っても良いが、必要に応じて加温、攪拌、加熱還流により抽出を促進することが可能である。得られた抽出液は、そのまま、あるいは適宜濾過・濃縮・脱色などの処理を施して用いることが出来る。また、一旦溶媒を除去した後に、抽出に用いた溶媒とは異なる溶媒に再溶解して用いることも可能である。得られた抽出物を活性炭やカラムマトグラフィーなどによりさらに精製して用いることも可能である。
抽出部位としては全草を用いる以外に、特定の部位を集めて抽出しても良い。
【0025】
本発明に用いられる抽出溶媒は、通常抽出に用いられる溶媒であれば何でもよく、特にメタノール、エタノール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルコール類、含水アルコール類、アセトン、酢酸エチルエステル、クロロホルム等の有機溶媒を単独あるいは組み合わせて用いることができるが、メタノール、エタノール、1,3−ブタンジオール、アセトン等が特に好ましい。また、これらの抽出物を溶媒分画や活性炭処理やカラムクロマトグラフィーなどにより精製して用いても良い。
本発明の美白剤、抗酸化剤および抗老化剤はマツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とするが、本発明の効果を損なわない範囲において他の種々の成分を含有することが出来る。
【0026】
本発明の美白剤、抗老化剤は、皮膚外用基剤に配合して、美白用皮膚外用剤、あるいは抗酸化作用に基づく抗老化用皮膚外用剤とすることができる。これらの皮膚外用剤は、特に化粧料、医薬品、医薬部外品等の分野において好適に用いることができる。
【0027】
本発明の美白剤、抗老化剤を含む皮膚外用剤における植物抽出物の配合量は、マツバラン属植物由来の成分の乾燥残分として、通常0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上である。配合量が少なすぎると効果が十分に発揮されない。上限は本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されないが、過剰に配合しても増量に見合った顕著な効果が得られないこと、また、製剤設計や使用性などにおいて悪影響を及ぼすこともあることなどから、通常10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0028】
本発明の美白剤、抗老化剤を含む皮膚外用剤は、本発明による美白剤、抗老化剤を皮膚外用基剤に配合して製造される。皮膚外用剤には、上記必須成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、植物エキス類、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0029】
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸、アルコキシサリチル酸および/またはその塩類等の他の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0030】
本発明の美白剤、抗老化剤を含む皮膚外用剤は、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等、従来皮膚外用剤に用いるものであればいずれでもよく、剤型は特に問わない。
【0031】
本発明の美白剤、抗老化剤は、上記のような外用剤に適用する以外に、食品に配合することができ、かかる食品を摂取することで、美白効果、抗老化効果を内から発揮することが期待される。
【実施例】
【0032】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
最初に、本実施例で用いた植物抽出物の調製方法、メラニン生成抑制効果、抗酸化効果に関する試験方法とその結果について説明する。
【0033】
1.試料の調製
本実施例ではいずれも沖縄産の植物を用いたが、これに限定されるものではない。
(1) Psilotum nudumの全草7.4gにメタノール75mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、乾燥固形物1.360gを得た。
(2) Psilotum nudumの全草1.04gに50%エタノール水溶液10mlを加え、室温で攪拌しながら3日間抽出後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、乾燥固形物0.18gを得た。
(3) Psilotum nudumの全草1.02gに70%エタノール水溶液10mlを加え、室温で攪拌しながら3日間抽出後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、乾燥固形物0.21gを得た。
(4) Psilotum nudumの全草1.03gに90%エタノール水溶液10mlを加え、室温で攪拌しながら3日間抽出後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、乾燥固形物0.21gを得た。
(5) Psilotum nudumの全草1.05gに100%エタノール10mlを加え、室温で攪拌しながら3日間抽出後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、乾燥固形物0.15gを得た。
(6) Psilotum nudumの全草1.00gにアセトン10mlを加え、室温で攪拌しながら3日間抽出後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、乾燥固形物0.072gを得た。
(7) Psilotum nudumの全草1.01gに酢酸エチルエステル10mlを加え、室温で攪拌しながら3日間抽出後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、乾燥固形物0.067gを得た。
(8) Psilotum nudumの全草1.00gに1,3−ブタンジオール0mlを加え、室温で攪拌しながら3日間抽出後、ろ過した。本エキスの蒸発残分(105℃、減圧下6時間)を測定したところ、6.3mg/gであった。
(9) Psilotum nudumの全草1.00gにジプロピレングリコール10mlを加え、室温で攪拌しながら3日間抽出後、ろ過した。本エキスの蒸発残分(105℃、減圧下6時間)を測定したところ、5.3mg/gであった。
(10) (1)にて得られた抽出乾固物1.0gを水50mlに分散・溶解させた後、酢酸エチルエステル50mlで3回抽出した。酢酸エチル相を濃縮し、272mgの乾燥物を得た。本品をアセトンに溶解し活性炭処理を行った後、ろ過した。ろ液を濃縮し、脱色物201mgを得た(酢酸エチル画分)。
【0034】
2.メラニン生成抑制効果試験方法およびその結果
前述の各種の抽出方法により得られたマツバラン抽出物を試験試料として用い、次の方法でメラニン生成抑制効果を測定・評価した。
【0035】
(1)細胞播種・試験物質の添加
マウスB16メラノーマ細胞を6ウェルプレートに100,000細胞/ウェルで播種した。翌日、試験物質溶液(乾燥物の場合は溶媒:DMSO)を添加した。
【0036】
(2)細胞増殖試験
試験物質溶液添加から3日後に培地を吸引除去した後、10%のアラマブルー溶液を含むEMEM培地を1ml添加して、37℃で反応させた。30分後に100μlを96ウェルプレートに移し、励起波長544nm、測定波長590nmで蛍光を測定した。その値を細胞数の相対値として、試験物質無添加群(溶媒のみ添加)に対する試験物質添加群の細胞数比率(%細胞数)を算出した。%細胞数が高いほど細胞毒性が低いことを意味し、80%未満は「毒性あり」と判断した。
【0037】
(3)メラニン量の測定
培地を吸引除去し、バッファー(リン酸緩衝液50mM、pH6.8)を用いて洗浄した後、1M NaOHを添加して細胞を溶解し、475nmの吸光度を測定した。この値をメラニン量の相対値として、試験物質無添加群(溶媒のみ添加)に対する試験物質添加群のメラニン量比率(%)を算出した。メラニン量比率が低いほどメラニン生成抑制効果が高いことを意味する。
各植物抽出物を用いたメラニン量比率(%)の結果を表1に示した。表1はコントロールのメラニン量を基準とし、マツバラン抽出物を添加した場合(抽出乾燥物換算濃度)のメラニン量をコントロールに対する百分率で示したものである。植物抽出物を含まない溶媒のみを添加した場合をコントロールとした。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から本発明で用いる植物抽出物は、いずれも優れたメラニン抑制作用を有し、美白剤として有用であることが分かる。表1以外の様々な溶媒抽出液を評価したところ、図1に示すような高い美白効果が認められた。図1は、各溶媒抽出液を終濃度0.04%(volume/volume)に調整した結果である。いずれの場合も細胞毒性は認められなかった。なお、コントロールは各溶媒のみを同様に0.04%(volume/volume)に調整した。
【0040】
さらに表2から、メタノール抽出物の酢酸エチル分画物も高い美白効果を示すことがわかった。
【0041】
【表2】

【0042】
以上のように本発明で用いる植物抽出物は、いずれも優れたメラニン生成抑制作用を有し、美白剤として有用であることが分かる。
【0043】
3.抗酸化効果の評価およびその結果
前述の各種の抽出方法により得られたマツバラン抽出物を試験試料として用い、次の方法で抗酸化効果を測定・評価した。
【0044】
(1)抗酸化効果の評価法(DPPH radical quenching assay)
Dimethyl Sulfoxideで溶解した被験物質を96wellプレートに10μl/wellずつ注入した後、1mmol/lの1,1−Diphenyl−2−picrylhydrazyl溶液を90μl/well添加した。室温にて10分間放置した後、517nmにおける吸光度を測定し、吸光度のデータより、ラジカル量のコントロールに対する消去率(%)を求めた。その評価結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表3から、本発明で用いる植物抽出物は、いずれの溶媒抽出物も優れたラジカル消去作用を有し、抗酸化剤として有用であることが分かる。表3以外の様々な溶媒抽出液を評価したところ、1,3−ブタンジオールやジプロピレングリコールなどのポリオール類で抽出した抽出物エキスにも図2に示すような高い抗酸化効果が認められた。図2は、各溶媒抽出液を終濃度1%(volume/volume)に調整した結果である。いずれの場合も細胞毒性は認められなかった。
【0047】
以上の結果から本発明のマツバラン属(Psilotum)植物の抽出物は優れた抗酸化効果を示すことから、ヒトの肌に対してもすぐれた抗酸化活性を奏するものである。したがって、該植物抽出物を外用剤に配合して、肌の老化を防ぎ、若々しく健康な肌の状態を維持する抗老化剤として用いることができる。
【0048】
以下に、種々の剤型の本発明による美白剤、抗老化剤の配合例を処方例として説明する。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
各処方中のマツバラン抽出物含量は抽出溶媒を除去した後の乾燥残分量として表した。
【0049】
配合処方例1(化粧水) 質量%
トリメチルグリシン 1.0
マツバランエタノール抽出物 0.00001
グリセリン 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
アルギン酸ナトリウム 0.1
エチルアルコール 5.0
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル 0.2
ヘキサメタリン酸ナトリウム 適量
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0050】
配合処方例2(化粧水) 質量%
マツバランアセトン抽出物1,3−ブタンジオール転溶物 5.0
グリセリン 2.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 1.0
PEG/PPG−14/7ジメチルエーテル 3.0
エリスリトール 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
ジイソステアリン酸ポリグリセリル 0.3
トリエチルヘキサノイン 0.3
EDTA3ナトリウム 適量
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
【0051】
配合処方例3(化粧水) 質量%
トラネキサム酸 1.0
4−メトキシサリチル酸カリウム 1.0
リポ酸 0.1
ハマメリス葉エキス 0.1
ヒポタウリン 0.1
クララエキス 0.1
トウニンエキス 0.1
ブナの芽エキス 0.1
マツバラン1,3-ブタンジオール抽出物 0.0001
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.1
チオタウリン 0.1
緑茶エキス 0.1
西洋ハッカエキス 0.1
イリス根エキス 1.0
トリメチルグリシン 1.0
グリセリン 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ヒドロキシエチルセルロース 0.05
エチルアルコール 5.0
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル 0.2
EDTA3ナトリウム 適量
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0052】
配合処方例5(乳液) 質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
酢酸トコフェロール 0.5
マツバランジプロピレングリコール抽出物 0.001
L−グルタミン酸ナトリウム 0.05
ウイキョウエキス 0.1
酵母エキス 0.1
ジオウエキス 0.1
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 0.1
グリセリン 6.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 3.0
ヒマワリ油 1.0
スクワラン 2.0
イソドデカン 4.0
ジメチルポリシロキサン 3.0
キサンタンガム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
エチルアルコール 5.0
水酸化カリウム 適量
ヘキサメタリン酸ナトリウム 適量
ベンガラ 適量
黄酸化鉄 適量
エチルパラベン 適量
香料 適量
精製水 残余
【0053】
配合処方例6(日中用乳液) 質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
マツバランアセトン抽出物エタノール転溶物 0.00003
酢酸トコフェロール 0.1
1,3−ブチレングリコール 5.0
スクワラン 0.5
イソドデカン 10.0
イソヘキサデカン 25.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 1.5
トリメチルシロキシケイ酸 1.0
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 1.0
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 5.0
ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
シリコーン被覆微粒子酸化チタン 4.0
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
球状ポリエチレン末 3.0
タルク 5.0
EDTA3ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0054】
配合処方例7(乳液) 質量%
L−アルギニン 0.1
ローヤルゼリーエキス 0.1
酵母エキス 0.1
マツバラン90%エタノール抽出物 10.0
グリチルレチン酸ステアリル 0.05
酢酸トコフェロール 0.1
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 7.0
ポリエチレングリコール1500 2.0
流動パラフィン 7.0
ワセリン 3.0
ベヘニルアルコール 1.0
バチルアルコール 2.0
ホホバ油 1.0
ステアリン酸 0.5
イソステアリン酸 0.5
ベヘニン酸 0.5
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 3.0
2−エチルヘキサン酸セチル 3.0
モノステアリン酸グリセリン 1.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.15
ヘキサメタリン酸ナトリウム 適量
水酸化カリウム 適量
メチルパラベン 適量
香料 適量
精製水 残余
【0055】
配合処方例8(乳液) 質量%
アスコルビン酸グルコシド 1.5
トラネキサム酸 1.0
酢酸トコフェロール 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
マツバラン1,3-ブタンジオール抽出物 0.0003
パントテニルエチルエーテル 0.1
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
グリセリン 7.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリエチレングリコール20000 0.5
ワセリン 2.0
ホホバ油 3.0
スクワラン 2.0
ヒドロキシステアリン酸フィトステリル 0.5
ベヘニルアルコール 0.5
バチルアルコール 0.2
ジメチルポリシロキサン 2.0
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 3.0
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.1
ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
キサンタンガム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.2
エタノール 5.0
水酸化カリウム 適量
ピロ亜硫酸ナトリウム 適量
ヘキサメタリン酸ナトリウム 適量
EDTA3ナトリウム 適量
黄酸化鉄 適量
パラオキシ安息香酸エステル 適量
精製水 残余
【0056】
配合処方例9(クリーム) 質量%
マツバラン90%1,3−ブタンジオール抽出物 0.05
4−メトキシサリチル酸カリウム 3.0
プロピレングリコール 5.0
グリセリン 8.0
ステアリン酸 2.0
ステアリルアルコール 7.0
水添ラノリン 2.0
スクワラン 5.0
2−オクチルドデシルアルコール 6.0
ポリオキシエチレンセチルアルコールエーテル 3.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0
水酸化カリウム 適量
エチルパラベン 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
【0057】
配合処方例10(クリーム) 質量%
4−メトキシサリチル酸カリウム 1.0
3−O−エチルアスコルビン酸 1.0
マツバラン50%エタノール抽出物 0.3
コエンザイムQ10 0.03
トラネキサム酸 2.0
酢酸トコフェロール 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
パントテニルエチルエーテル 0.1
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
グリセリン 7.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリエチレングリコール20000 0.5
ワセリン 2.0
ベヘニルアルコール 0.5
バチルアルコール 0.2
スクワラン 2.0
ヒドロキシステアリン酸フィトステリル 0.5
ホホバ油 3.0
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 1.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
キサンタンガム 0.1
エタノール 5.0
ヘキサメタリン酸ナトリウム 適量
黄酸化鉄 適量
EDTA3ナトリウム 適量
水酸化カリウム 適量
パラオキシ安息香酸エステル 適量
精製水 残余
【0058】
配合処方例11(二層タイプ日中用乳液) 質量%
トラネキサム酸 2.0
4−メトキシサリチル酸カリウム 1.0
マツバラン50%1,3−ブタンジオール抽出物 3.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
グルタチオン 1.0
チオタウリン 0.05
クララエキス 1.0
ジプロピレングリコール 5.0
ジメチルポリシロキサン 5.0
イソヘキサデカン 25.0
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 2.0
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
ブチルエチルプロパンジオール 0.5
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 7.5
トリメチルシロキシケイ酸 5.0
球状ポリアクリル酸アルキル粉末 5.0
パルミチン酸デキストリン被覆微粒子酸化亜鉛 15.0
EDTA3ナトリウム 適量
メチルパラベン 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0059】
配合処方例12(ジェル) 質量%
4−メトキシサリチル酸カリウム 0.1
オドリコソウエキス 0.1
マツバラン酢酸エチル画分乾燥物 0.00001
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
アスコルビン酸グルコシド 2.0
酢酸トコフェロール 0.1
オウゴンエキス 0.1
ユキノシタエキス 0.1
グリセリン 2.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリエチレングリコール1500 3.0
ポリエチレングリコール20000 3.0
寒天末 1.5
キサンタンガム 0.3
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05
オクタン酸セチル 3.0
ジメチルポリシロキサン 5.0
ヘキサメタリン酸ナトリウム 適量
ジブチルヒドロキシトルエン 適量
黄酸化鉄 適量
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
水酸化ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする美白剤。
【請求項2】
マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物がマツバラン(Psilotum nudum)であることを特徴とする請求項1に記載の美白剤。
【請求項3】
マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする美白用皮膚外用剤。
【請求項4】
マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする抗老化剤。
【請求項5】
マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物がマツバラン(Psilotum nudum)であることを特徴とする請求項4に記載の抗老化剤。
【請求項6】
マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする抗老化用皮膚外用剤。
【請求項7】
マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする抗酸化剤。
【請求項8】
マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物がマツバラン(Psilotum nudum)であることを特徴とする請求項7に記載の抗酸化剤。
【請求項9】
マツバラン科マツバラン属(Psilotum)植物の抽出物を含むことを特徴とする抗酸化用皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−180189(P2010−180189A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27227(P2009−27227)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】