説明

美白剤

【課題】高い美白効果を有するとともに、副作用が少なく、安全性の高い美白剤を提供する。
【解決手段】美白剤は、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩を有効成分として含有する。前記メルカプトスルホン酸化合物は、メルカプトアルカンスルホン酸又はその二量体であり、メルカプトスルホン酸化合物の塩は金属塩(メスナ、ジメスナなど)であってもよい。メルカプトスルホン酸化合物又はその塩の含有量は、美白剤全体に対して固形分換算で0.01〜50重量%程度であってもよい。前記美白剤は、メラニンの生成を抑制可能である。前記美白剤は、経口剤又は外用剤の形態で使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩を有効成分として含有し、メラニンの生成を効率よく抑制可能である美白剤(美白用組成物)に関する。
【背景技術】
【0002】
シミ、ソバカス、日焼け後の肌における色素沈着を予防又は回復するため、美白用化粧料として、美白成分を含有する種々の化粧料、サプリメント、医薬品や医薬部外品が市販されたり、クリニックなどで処方されている。このような美白成分の多くは、メラノサイトにおけるメラニン生成過程のいずれかの反応ステップをブロックしたり、逆反応を生じさせたりして、メラニン生成を抑制している。このような美白成分としては、例えば、ビタミンC、ハイドロキノン、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、ルシノール(登録商標)、甘草エキスなどが知られている。例えば、特開平5−310562号公報(特許文献1)には、アズレン系化合物と、色白剤(コウジ酸、アスコルビン酸、ハイドロキノンなど)とを有効成分とするメラニン生成抑制外用剤が開示されている。
【0003】
一方、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(メスナ/MESNA)は、従来、様々な作用を有する物質として広く知られており、慢性気管支炎、喘息を伴う気管支炎、喘息、気管支狭窄、気腫、気管支拡張症、膵線維症、鼻炎および慢性咽頭咽喉炎のような呼吸器型病変などの効能を有する優れた医薬品として多くの国で使用されている。また、メスナは、例えば、イホスファミド、オキシアザホスホリン及びシクロホスファミドなどの抗腫瘍作用を有する薬剤による尿路の中毒性病変の予防剤、又は粘液溶解剤としても古くから知られている(特開平6−263629号公報(特許文献2))。さらに、メスナは、日本においても、イホスファミドまたはシクロホスファミド投与に伴う泌尿器系障害の発現抑制の効能又は効果を有する医薬品として市販されている(特表2001−508033号公報(特許文献3))。近年では、手術に伴って、メスナの局所投与により組織(例えば、コレステリン腫など)の離断を容易にしたり(特許文献3)、抗ウィルス剤(特に抗インフルエンザウィルス剤)としても有効であること(国際公開第04/69235号パンフレット(特許文献4))も明らかとなっている。
【0004】
しかし、メスナの美白効果に関する知見は得られておらず、また、メスナを有効成分とする美白剤も知られていない。
【特許文献1】特開平5−310562号公報(請求項1及び2)
【特許文献2】特開平6−263629号公報(従来の技術の欄)
【特許文献3】特表2001−508033号公報(特許請求の範囲、第4頁2〜15行)
【特許文献4】国際公開第04/69235号パンフレット(特許請求の範囲の欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、メラニンの生成を効率よく抑制して、美白効果に優れる美白剤(美白用組成物)を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、安全性が高く、高い美白作用を有する美白剤(美白組成物)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩が、メラニン生成の抑制効果に優れ、高い美白効果を示すことを見出し、本発明を完成した。このようなメルカプトスルホン酸化合物又はその塩(メスナなど)の美白効果は、従来知られていた前記化合物又はその塩の生理又は薬理作用からは全く予想できないものである。
【0008】
すなわち、本発明の美白剤(美白用組成物)は、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩を有効成分として含有する。前記メルカプトスルホン酸化合物は、メルカプトアルカンスルホン酸又はその二量体であってもよく、メルカプトスルホン酸化合物の塩は金属塩であってもよい。前記メルカプトスルホン酸化合物又はその塩は、メスナ及びジメスナから選択された少なくとも一種であってもよい。メルカプトスルホン酸化合物又はその塩の含有量は、美白剤全体に対して固形分換算で0.01〜50重量%程度であってもよい。前記美白剤は、メラニンの生成を抑制可能である。また、前記美白剤は、経口剤又は外用剤の形態で使用してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の美白剤では、有効成分としてメルカプトスルホン酸化合物又はその塩(メスナなど)を用いるので、メラニンの生成を効果的に抑制して、高い美白効果が得られる。また、メスナ、ジメスナなどは、医薬品としても汎用される化合物であり、安全性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の美白剤(美白用組成物)は、有効成分として、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩を含有する。
【0011】
メルカプトスルホン酸化合物としては、メルカプト基を有する有機スルホン酸化合物(メルカプトアルカンスルホン酸などのメルカプト基を有する脂肪族スルホン酸;メルカプトシクロアルカンスルホン酸(メルカプトシクロヘキサンスルホン酸など)などのメルカプト基を有する脂環族スルホン酸;メルカプトアレーンスルホン酸(メルカプトベンゼンスルホン酸など)などのメルカプト基を有する芳香族スルホン酸など)、又はその二量体(メルカプト基とメルカプト基との反応により得られる二量体)などが挙げられる。また、メルカプトスルホン酸化合物には、メチルスルホン酸エステルなどのメルカプトスルホン酸化合物のC1−6アルキルスルホン酸エステルなども含まれる。
【0012】
これらのメルカプトスルホン酸化合物のうち、メルカプトアルカンスルホン酸(メルカプトエタンスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸などのメルカプトC2−6アルカンスルホン酸など)又はその二量体(ジチオアルカンスルホン酸、例えば、ジチオエタンスルホン酸などのジ(チオC2−6アルカンスルホン酸)など)などが好ましい。
【0013】
メルカプトスルホン酸化合物の塩としては、例えば、前記メルカプトスルホン酸化合物と、無機塩基との塩[例えば、金属(カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属;アルミニウムなどの周期表第13族金属など)との塩、アンモニウム塩など]、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン;ピリジン、ピコリンなどの複素環式アミン;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン;ジシクロヘキシルアミンなどのシクロアルキルアミン;N,N−ジベンジルエチレンジアミンなどのアルキレンジアミン誘導体など)との塩が例示できる。これらの塩のうち、金属塩、特に、アルカリ金属塩などが好ましい。また、上記塩としては、通常、生理学的又は薬理学的に許容可能な塩を用いるのが好ましい。
【0014】
これらのメルカプトスルホン酸化合物又はその塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。メルカプトスルホン酸化合物又はその塩のうち、特に、メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(メスナなど)及び/又はその二量体(ジ(チオエタンスルホン酸ナトリウム)(ジメスナなど))を用いるのが好ましい。
【0015】
メルカプトスルホン酸化合物又はその塩は、慣用の方法により製造できる。例えば、メスナの製造方法の詳細は、J. Am. Chem. Soc.,77,6231-3(1955)、特開昭63−115856号公報、特表2001−501219号公報などを参照できる。
【0016】
前記メルカプトスルホン酸化合物又はその塩は、メラニン生成の抑制効果が高いため、本発明の美白剤は、メラニンの生成を効率よく抑制することができ、高い美白効果を有している。また、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩(特に、メスナ、ジメスナなど)は、古くから医薬成分として使用されていることから、本発明の美白剤は、毒性も低く、その安全性も確立されており、哺乳動物(特に、ヒトなど)に対して、安全に使用できる。
【0017】
本発明の美白剤では、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩は、通常、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品(栄養補助食品、機能性食品なども含む)などの分野で使用される種々の成分、例えば、担体及び/又は添加剤などと組み合わせて美白用組成物として用いる。
【0018】
担体としては、剤形、投与形態、用途などに応じて、適宜選択でき、例えば、粉末状担体[例えば、局方及び「医薬品添加物事典」(薬事日報社、2002年3月25日発行)に収載されている結合剤、崩壊剤、賦形剤などの他、金属石鹸類(例えば、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩など)、無機粉末成分(カオリン、タルク、雲母などの天然粘土鉱物など)など]、固形又は半固形担体[動植物由来の油性担体(蜜ろう、カルナバろう、カカオ脂、牛脂、ラノリンなど)、鉱物由来の油性担体(固形パラフィン、ワセリン、パラフィンワックスなど)、長鎖脂肪酸エステル(飽和又は不飽和脂肪酸アルキルエステル、飽和又は不飽和オキシ酸アルキルエステル、脂肪酸と多価アルコール(ポリC2−4アルキレングリコールなど)とのエステルなど)、高級アルコール(ステアリルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール、オレイルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコールなど)、高級脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸など)、ゲル担体[トラカガントガム、キサンタンガムなどのガム類;アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸類;ペクチン、デンプン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コンドロイチンヘパリンなどの多糖類;セルロース又はその誘導体(セルロース;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど);合成ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、高分子量のポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコールなど)など]、液状担体[動植物系油剤(ホホバ油、オリーブ油、やし油などの植物系油剤;スクアランなどの動物系油剤など)、鉱物系油剤(流動パラフィンなど)、シリコーンオイルなどの油性担体;水、水溶性有機溶媒(エタノール、イソプロパノールなどの低級脂肪族アルコール;(ポリ)アルキレングリコール類(エチレングリコールなどのアルキレングリコール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの低分子量のポリC2−4アルキレングリコールなど);グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類など)などの水性担体など]などが挙げられる。
【0019】
前記粉末状担体のうち、結合剤としては、デンプン[アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン(特に、アルファ化デンプンなどの可溶性デンプン)など];寒天、アラビアゴム、デキストリンなどの多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリ乳酸などの合成高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル類などが例示できる。前記崩壊剤としては、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩(カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムなど)、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポピドン)など)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが例示できる。前記賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールなどの糖類;トウモロコシデンプンなどのデンプン;結晶セルロース(微結晶セルロースも含む)などの多糖類;軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウムなどの酸化ケイ素又はケイ酸塩などが例示できる。これらの担体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
添加剤としては、用途、剤形及び投与形態などに応じて、例えば、保湿剤(ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール;プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリC2−4アルキレングリコール又はその脂肪酸エステル;前記ゲル担体の項で例示の多糖類及びアルギン酸類、アロエ(アロエベラなど)抽出物など)、エモリエント剤、肌荒れ防止剤(グリチルリチン酸塩、ビタミン類など)、皮膚軟化剤(サリチル酸又はその誘導体、乳酸、尿素など)、収れん剤(クエン酸などのオキシ酸又はその塩など、塩化アルミニウムなど)、酵素、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEなど)、アミノ酸(システインなど)、細胞賦活剤(リボフラビンなど)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系吸収剤など)、紫外線を散乱する無機顔料(酸化チタンなど)、抗酸化剤(ポリフェノール類など)、抗炎症剤(グアイアズレン、グリチルリチン酸又はその塩など)、乳化剤(例えば、非イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤など)、増粘剤(カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ゼラチンなどの水溶性高分子;カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、pH調整剤、緩衝剤(クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝剤など)、防腐剤又は保存剤(メチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類、安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩など)、酸化防止剤、殺菌剤又は抗菌剤(塩化ベンザルコニウムなどの第四級アンモニウム塩;安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩など)、粉体[カオリン、タルク、セリサイト、マイカ、ベントナイト、バーミキュライト、亜鉛華、雲母、雲母チタン、金属酸化物(酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、シリカ、酸化鉄、ベンガラなど)など]、滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)、コーティング剤、分散剤、懸濁剤、等張化剤、溶解補助剤、安定剤、湿潤剤、帯電防止剤、矯味剤(例えば、甘味剤など)やマスキング剤、着色剤(染顔料など)、矯臭剤又は香料(芳香剤など)、清涼化剤、消泡剤、崩壊助剤、無痛化剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
本発明の美白剤は、他の美白成分を含有してもよい。他の美白成分としては、医薬品、医薬部外品、食品、化粧品分野などで使用される慣用の美白成分、例えば、カルノジン酸、ヒドロキノン、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンC又はその誘導体、ビタミンE又はその誘導体、パントテン酸又はその誘導体、システイン、胎盤抽出物、アルブチン、コウジ酸又はその誘導体、エラグ酸又はその誘導体、グルタチオン、ルシノールの他、美白効果を有する植物(例えば、レモン、キュウリ、ウワウルシ、桑の実、甘草、カミツレ、ユキノシタ、イリス(アイリス)、チョウジ、ウコン、トウガラシ、ツルレイシ、アロエ、アロエベラ、茶、オウゴン、ソウハクヒ、カッコン、サンショウ、ボタンピ、グァバ、ローズマリー、セージなど)の抽出物や精油、フィチン酸などが挙げられる。これらの他の美白成分は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。メルカプトスルホン酸化合物又はその塩と、これらの他の美白成分とを併用すると、美白効果をさらに改善又は増強することができる。
【0022】
なお、これらの他の美白成分は、単一の組成物中にメルカプトスルホン酸化合物又はその塩と共に、含有されていてもよい。また、本願発明の美白剤と、別個の他の美白成分(又は他の美白成分を含有する別個の組成物)とを組み合わせてキットとして使用してもよい。
【0023】
他の美白成分の割合は、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩100重量部に対して、例えば、0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部程度であってもよい。
【0024】
メルカプトスルホン酸化合物又はその塩の含有量は、美白剤(美白用組成物)全体に対して、固形分換算で、例えば、0.01〜50重量%、好ましくは0.05〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜20重量%(例えば、0.5〜10重量%)程度である。なお、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩の割合は、適用又は投与対象、適用対象の年齢及び体重、症状、適用又は投与回数、美白剤の形態、適用又は投与方法、他の美白成分などの割合などに応じて、適宜選択することができる。
【0025】
美白剤(組成物)の形態(剤形)としては、特に制限されず、液剤(ローション剤、エッセンス剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、シロップ剤、注射剤、ゲル剤、ゼリー剤、グミ剤など)、半固形剤(軟軟膏、硬軟膏などの軟膏剤など)、固形剤[粉末剤、散剤(細粒剤も含む)、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤など)、錠剤などの他、ケーキ状又はペースト状固形剤なども含む]のいずれであってもよい。
【0026】
これらの形態の美白剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品分野などにおける慣用の製造方法に従って製造できる。すなわち、例えば、固形剤は、有効成分(メルカプトスルホン酸化合物又はその塩、必要により他の美白成分など)とともに、粉末状担体(結合剤、賦形剤、崩壊剤から選択された少なくとも1つの担体など)を用いて調製できる。例えば、顆粒剤は、押出造粒、噴霧造粒などにより有効成分と担体成分とを造粒し、必要により整粒することにより調製できる。錠剤は、前記造粒物を必要により添加剤と混合し、圧縮成形することにより製造できる。また、圧縮成型剤を、必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性を付与する自体公知の方法でコーティングしてもよい。カプセル剤は、カプセルに顆粒剤を充填することにより調製できる。また、ケーキ状又はペースト状の固形剤は、有効成分と粉末担体と、湿潤成分(液状担体、ゲル担体、固形状又は半固形状担体、添加剤など)と共に混合、練り合わせることにより調製できる。さらに、粉末剤は、有効成分と粉末担体と必要により他の成分(他の担体、添加剤など)とを混合することにより製造できる。
【0027】
液剤(クリーム剤、ゲル剤、ゼリー剤、グミ剤などを含む)は、剤型に応じて、有効成分と、液状担体(精製水などの水性担体、油性担体など)、ゲル担体(水性又は油性のゲル担体など)などと、必要により、固形又は半固形担体、添加剤(乳化剤、分散剤、懸濁剤、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、安定剤、矯味剤、pH調整剤や緩衝剤など)とを混合(例えば、溶解、懸濁、乳化など)することにより調製でき、必要により滅菌処理される。軟膏剤は、有効成分と、半固形担体と(必要により添加剤と)を、必要により加熱下、混合又は練合することにより調製できる。
【0028】
また、本発明の美白剤は、経口剤及び非経口剤のいずれであってもよい。非経口剤は、注射剤などであってもよいが、通常、外用剤の形態で使用する場合が多い。経口剤としては、例えば、顆粒剤(ドライシロップ剤なども含む)、散剤、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠、トローチ剤、チュアブル錠なども含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、ドリンク剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、ゲル剤、ゼリー剤、グミ剤などが挙げられる。外用剤としては、ローション剤、エッセンス剤、懸濁剤、クリーム剤、ゲル剤、ゼリー剤、これらの液剤を支持体(不織布などのシートなど)に含浸又は塗布した含浸剤(ウェットティッシュ、マスクシートなど)、軟膏剤等が挙げられる。
【0029】
本発明の美白剤の適用又は投与量は、適用又は投与対象、適用対象の年齢及び体重、所望する美白効果の程度、適用又は投与時間、美白剤の形態(剤形)、適用又は投与経路、適用又は投与方法などに応じて、適宜選択することができる。例えば、前記美白剤は、必要に応じて、1日当たり1〜5回程度、経口摂取してもよく、また必要な部位(皮膚など)へ適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の美白剤は、メルカプトスルホン酸化合物又はその塩を有効成分として含有するので、優れた美白効果を有しており、副作用も少なく、安全性が高い。そのため、医薬品、医薬部外品、サプリメント、食品、化粧品(基礎化粧料、メークアップ化粧料、洗顔料、口唇用化粧料、爪用化粧料などの他、入浴料、洗浄料なども含む)などとして有用である。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0032】
実施例1
(メラノーマ細胞に対するメラニン生成抑制試験)
フェノールレッドフリーのダルベッコ改変イーグル培地(以下、単にDMEMと称する場合がある)に、濃度が10容量%となるように牛胎児血清(GIBCO社製、以下、FBSと称する場合がある)を溶解させた溶液(以下、10%FBS−DMEMと称する場合がある)を調製した。この10%FBS−DMEMに、B16−5F7(大量のメラニンを生成するB16亜種株)細胞を懸濁して、細胞液(濃度1.0×10cells/ml)を調製した。この細胞液100μlを96wellプレートに播き、37℃で、5容積%CO中、一晩培養し、培養物を得た。
【0033】
一方、濃度が250μg/ml又は500μg/mlになるように、メスナを、10%FBS−DMEMに溶解し、濃度の異なる2つのメスナ溶液を調製した。これらのメスナ溶液を、それぞれ別々の前記培養物に、メスナの最終濃度が125μg/ml又は250μg/mlとなるように、100μl添加し、得られた混合物を、37℃で、5容積%CO中にて、さらに6日間培養した。培養終了後、培養液の上清150μlを96wellプレートに分取し、吸光度(450nm)を測定し、この吸光度に基づいて生成メラニン量を算出した。
【0034】
また、培地を取り除き、細胞溶解液(1mol/l水酸化ナトリウム及び0.5容量%tritonX100を含む水溶液)200μlを加えてよく撹拌した後、得られた溶液の150μlを96wellプレートに分取して、吸光度(450nm)を測定し、この吸光度に基づいて、細胞中のメラニン量を算出した。
【0035】
細胞中のメラニン量と上記生成メラニン量とを合わせてトータルメラニン量とし、コントロール(メスナを加えていない系)におけるトータルメラニン量を100とした場合のそれぞれの比率を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から明らかなように、メスナを用いた例では、高い美白効果が認められた。
【0038】
実施例2
(ニュートラルレッド(以下、NRと称する場合がある)による細胞毒性試験)
実施例1と同様に細胞を6日間培養した後、NR溶液100μlを添加し、さらに3時間培養した。その後、培養物をPBS(phosphate buffered saline)で洗浄し、細胞固定液(1重量%ホルムアミド、1重量%CaClを含む水溶液)200μlを加え、1分放置した後、さらにPBSで洗浄し、抽出液(1重量%酢酸、50重量%エタノールを含む水溶液)100μlを添加して、撹拌した。吸光度(540nm)を測定し、この吸光度に基づいて、NR色素の取込量(生細胞数)を求めた。コントロール(メスナを加えていない系)を100とした場合のそれぞれの比率を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表2から明らかなように、メスナに細胞毒性は認められなかった。
【0041】
実施例1及び2の結果から明らかなように、メスナはメラニン生成抑制効果を有することから美白効果が認められ、また安全性も高いことが認められた。
【0042】
製剤例1 乳液
下記に示すA,B及びCの成分を用いて、乳液を調製した。すなわち、成分Aを加熱溶解し、80℃に保持し、別途80℃に加熱溶解した成分Bを添加し、十分混合した。混合物を攪拌しながら、冷却し、50℃にて成分Cを添加し、乳液を得た。なお、各成分の割合は、乳液中の最終濃度が以下の濃度(重量%)となるように決定した。
【0043】
成分A:
ショ糖脂肪酸エステル 1.0重量%
濃グリセリン 6.0重量%
防腐剤(パラオキシ安息香酸エステル) 適量
カルボキシビニルポリマー 0.06重量%
水酸化カリウム 0.028重量%
精製水 残部
成分B:
オリーブ油 4.0重量%
ホホバ油 4.0重量%
乳酸ミリスチル 2.0重量%
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1.5重量%
親油型モノステアリン酸グリセリン 1.5重量%
成分C:
メスナ 0.2重量%
香料 0.2重量%。
【0044】
製剤例2 化粧水
化粧水中の最終濃度が、下記の濃度となるように、下記に示す成分を、室温にて攪拌、混合して均一な溶液とし、pH5.5に調整して、化粧水を調製した。
【0045】
濃グリセリン 4.0重量%
ソルビット液(70重量%水溶液) 4.0重量%
クエン酸(pH調整剤) 適量
クエン酸ナトリウム 0.3重量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5重量%
エタノール 15.0重量%
メスナ 0.4重量%
香料 0.05重量%
精製水 残部。
【0046】
製剤例3 クリーム剤
クリーム剤中の最終濃度が下記の濃度となるように、下記の成分を用いて、クリーム剤を調製した。すなわち、精製水にプロピレングリコールを添加し、加熱して70℃に保持し、水相とした。他の成分を混合し加熱融解して、70℃に保持し油相とした。この油相を、前記水相に添加し、予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化してクリーム剤を得た。
【0047】
ステアリン酸 2.0重量%
ステアリルアルコール 7.0重量%
水添ラノリン 2.0重量%
スクワラン 5.0重量%
2−オクチルドデシルアルコール 6.0重量%
ポリオキシエチレン(25モル)セチルアルコールエステル
3.0重量%
グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0重量%
プロピレングリコール 5.0重量%
メスナ 0.2重量%
亜硫酸水素ナトリウム 0.03重量%
エチルパラベン 0.3重量%
香料 適量
精製水 残部。
【0048】
製剤例4 (錠剤)
下記の成分を、錠剤中の割合が下記の重量%となるようにして用いて、錠剤を調製した。
【0049】
メスナ 5重量%
乳糖 63重量%
コーンスターチ 30重量%
グァガム 2重量%。
【0050】
製剤例5(カプセル剤)
下記の成分を、カプセル内容物100重量%に対する割合で、用いて、顆粒剤を調製し、得られた顆粒剤をゼラチンカプセル1つにつき約250mgずつ充填し、カプセル剤を調製した。
【0051】
メスナ 10重量%
デキストリン 90重量%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルカプトスルホン酸化合物又はその塩を有効成分として含有する美白剤。
【請求項2】
メルカプトスルホン酸化合物が、メルカプトアルカンスルホン酸又はその二量体であり、メルカプトスルホン酸化合物の塩が金属塩である請求項1記載の美白剤。
【請求項3】
メルカプトスルホン酸化合物又はその塩が、メスナ及びジメスナから選択された少なくとも一種である請求項1記載の美白剤。
【請求項4】
メルカプトスルホン酸化合物又はその塩の含有量が、美白剤全体に対して固形分換算で0.01〜50重量%である請求項1記載の美白剤。
【請求項5】
メラニンの生成を抑制可能であり、経口剤又は外用剤の形態である請求項1記載の美白剤。

【公開番号】特開2007−230919(P2007−230919A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55392(P2006−55392)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(506071818)KIファルマ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】