説明

群管理エレベーター

【課題】
乗場からかご位置が確認できる場合でも待ち客に不快感を与えず、運転効率の良いサービスとする。
【解決手段】
複数台のエレベーターの運行を管理し、乗場呼びが発生した場合、各エレベーターの乗りかごを選択して乗場呼びに応答させるエレベーターを割当てる群管理エレベーターにおいて、乗場呼びが登録された階を通過予定とされたエレベーターが生じる場合、応答させるエレベーター,階,通過予定とされたエレベーターとの相対的関係により通過予定とされたエレベーターを乗場呼びに応答させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のエレベーターの運行を統括管理する群管理システムに係り、乗場からかご位置が確認できるものに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、同一昇降路内を上かごと下かごが独立して走行可能なマルチカーエレベーターにおいて、現時点から方向反転するまでのかごの相対距離を算出し、この値が予め設定された水準値より悪くなった場合に既に登録済みの乗場呼びを割当て変更することが知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、エレベーターの位置に応じて、そのエレベーターに対し乗場呼びを優先的に割当てるゾーンを設定し、少なくともそのゾーンと上記乗場呼びに対する予測待機時間とを演算して評価指標を求めることが特許文献2に記載されている。
【0004】
さらに、乗場呼びが割当てられているエレベーターの到着予測時間が所定値以上になり、且つそれより到着予測時間の短いエレベーターがある場合、そのエレベーターに乗場呼びの割当てを変更することが特許文献3に記載されている。
【0005】
さらに、乗場呼びが割当てられたかごを即時に予報し、そのかごよりも先に到着するかごが生じたときに、乗場のかご位置表示を一時的に到着確立表示に切り換えることにより、待ち客に与える戸惑いや焦燥感を和らげることが特許文献4に記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−223765号公報
【特許文献2】特開平1−226676号公報
【特許文献3】特公昭55−11989号公報
【特許文献4】特開平8−81147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術においては、個々の乗場呼びに対して最適なエレベーターを割当てると混雑する時間帯に長待ち状態の乗場呼びが多発する為、全ての乗場呼びに対して最適となるエレベーターの割当てを行い、運行効率の向上を図っている。その結果、待ち客がいる乗場をエレベーターが頻繁に通過してしまい、乗場からかご位置が確認できる場合、その階にいる待ち客に対しては、不快感を与えてしまう。
【0008】
また、単に、待ち客に不快感を与えないように、待ち客がいる場合は通過するエレベーターに割当て変更し、必ずその階にサービスさせるものでは、運行効率を大幅に低下させることになる。
さらに、待ち客がいる階床をエレベーターが通過する場合、かご位置表示を到着確率表示に切り換え乗場の待ち客に通過を気付かせ難くするものでは、乗場側とエレベーター側の間の隔壁によっては、待ち客から通過エレベーターが見えるので、エレベーターの通過を乗場待ち客に気付かせてしまうことになる。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、乗場からかご位置が確認できる場合でも待ち客に不快感を与えず、運転効率の良いサービスとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、複数台のエレベーターの運行を管理し、乗場呼びが発生した場合、各エレベーターの乗りかごを選択して乗場呼びに応答させるエレベーターを割当てる群管理エレベーターにおいて、前記乗場呼びが登録された階を通過予定とされたエレベーターが生じる場合、前記応答させるエレベーター,前記階,前記通過予定とされたエレベーターとの相対的関係により前記通過予定とされたエレベーターを前記乗場呼びに応答させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乗場からかご位置が確認できる階に待ち客がいる状況において、エレベーターが通過後、待ち時間が長いと予測される場合は通過を許可せず、待ち時間が短いと予測される場合は通過を許可するので、通過による不快感を削減するとともに、エレベーターの運行効率の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、エレベーターの乗場の外観図を示し、エレベーターは乗りかごが群管理制御によって昇降する。1a,1b,1cはエレベーターの乗場ドアを示す。各乗場ドア1a,1b,1cの上方側には、乗場からかご位置が確認できる乗場のかご位置表示装置2a,2b,2cが設けられている。乗場ドア1a,1b,1cのそれぞれの間に、乗場呼びの登録操作を行う乗場呼び登録装置3を設置する。30aは上方向乗場釦、30bは下方向乗場釦である。
【0013】
図2は、制御部の全体構成図を示し、群管理制御装置11,A号機制御装置12,B号機制御装置13,C号機制御装置14を備える。群管理制御装置11は図1に示した上方向乗場呼び登録釦30a,下方向乗場呼び登録釦30bを含む、各階床の乗場呼び登録装置3と接続され、これらの操作により入力された乗場呼び信号に対して各号機の乗りかごの位置と既登録かご呼び情報などをもとに割当評価演算を行って最適な乗りかごを選択して乗場呼びに応答させる。
【0014】
群管理制御装置11はA号機制御装置12,B号機制御装置13,C号機制御装置14と接続される。A号機制御装置12は乗場呼びへの応答指示を群管理制御装置11から受けると、自号機エレベーター用の図示しない巻き上げ機を制御して乗場呼びに応答させるべく自号機エレベーターの乗りかごを昇降させる。
【0015】
また、A号機制御装置12はかご位置表示装置2aと接続され、B号機制御装置13はかご位置表示装置2b、C号機制御装置14はかご位置表示装置2cと接続される。
【0016】
図3は基本的な概念を説明する図であり、17階床のビルに複数台のエレベーターが設置されてあり、今回はその中の2台のエレベーターについて説明する。A号機が11階、B号機が16階にいる場合を想定している。
【0017】
図3の現在の状態で、A号機は3階の乗場呼びと1階のかご呼びにより下降方向に走行中である。B号機は1階のかご呼びにより下降方向に走行中である。この状況下で、新規に5階から下方向の乗場呼びが発生した場合の運行サービスを説明する。
【0018】
従来技術の場合、3,5階の待ち客の待ち時間が平均的に短くなるように、B号機を5階の新規の乗場呼びに割当てる。よって、A号機は5階の乗場呼びを通過する。仮に、A号機が5階を通過直後にB号機に複数の乗場呼びに割当てられた場合、B号機が到着するまで5階の待ち客は乗場で長時間エレベーターを待つことになり、焦燥感を与えてしまう。また、この状況下で、A号機に割当て変更した場合、一度通過したエレベーターがサービスすることになり、同様に不快感を与えてしまう。
【0019】
本例では、A号機が乗場呼び発生階を通過する時に、発生階においてA号機とB号機が到着すると予測される時間を演算し、その差が所定時間を超える場合には、5階の新規乗場呼びの割当てをB号機からA号機に割当て変更し、A号機を5階に停止させる。これにより5階の待ち客のエレベーター通過後の長待ちによる不快感を削減できる。また、A号機とB号機が到着すると予測される時間の差が、所定時間を超えない場合には、5階の新規乗場呼びの割当てをB号機からA号機に割当て変更しない。したがって、より、待ち客に適応すると共に、全体の運行効率の低下を抑えることができる。
【0020】
図4は、エレベーターの割当て変更を示すフローチャートである。
エレベーターが乗場呼び発生階を通過する場合の割当て変更について説明する(ステップ1)。エレベーター通過予定階の呼びを割当てられている号機(A号機)の通過予定階への到着予測時間を演算し、演算結果をA′とする(ステップ2)。通過予定階を通過するエレベーター(B号機)の到着予測時間を演算し、演算結果をB′とする(ステップ3)。A′とB′の差を計算し、その差が所定時間内の場合(ステップ4)、割当て変更は無く、A号機が通過予定階へサービスする(ステップ5)。しかし、A′とB′の差が所定時間を超えた場合(ステップ4)、A号機からB号機へ割当て変更し、B号機が通過予定階へサービスする(ステップ6)。
【0021】
この例では、乗場呼び発生階のエレベーター通過判定を、到着予測時間の比較で行ったが、比較対象をエレベーター間の距離,エレベーターの現在いる階床,エレベーターの現時点で停止可能な階床(図7),エレベーターの表示位置(図8),かご位置表示装置2a,2bでの数字による表示,エレベーターの乗場呼び発生階までの停止階床数(図9)としてもよい。図5〜図9は、それぞれ、エレベーター通過判定時の比較対象を変更した場合を説明する図である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態によるエレベーターの乗場の外観図。
【図2】一実施の形態の全体構成を示すブロック図。
【図3】本発明の一実施の形態による動作説明図。
【図4】本発明の一実施の形態による動作を示すフローチャート。
【図5】本発明の他の実施の形態による動作説明図。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態による動作説明図。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態による動作説明図。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態による動作説明図。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態による動作説明図。
【符号の説明】
【0023】
1a,1b,1c 乗場ドア
2a,2b,2c かご位置表示装置
3 乗場呼び登録装置
11 群管理制御装置
12 A号機制御装置
13 B号機制御装置
14 C号機制御装置
30a 上方向乗場釦
30b 下方向乗場釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のエレベーターの運行を管理し、乗場呼びが発生した場合、各エレベーターの乗りかごを選択して乗場呼びに応答させるエレベーターを割当てる群管理エレベーターにおいて、
前記乗場呼びが登録された階を通過予定とされたエレベーターが生じる場合、前記応答させるエレベーター,前記階,前記通過予定とされたエレベーターとの相対的関係により前記通過予定とされたエレベーターを前記乗場呼びに応答させることを特徴とする群管理エレベーター。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記相対的関係は前記応答させるエレベーターと前記通過予定とされたエレベーターとが前記階に到着すると予測される時間に基づいて決定されることを特徴とする群管理エレベーター。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記相対的関係は前記応答させるエレベーターと前記通過予定とされたエレベーターとの距離に基づいて決定されることを特徴とする群管理エレベーター。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記相対的関係は前記応答させるエレベーターと前記通過予定とされたエレベーターとの階床差に基づいて決定されることを特徴とする群管理エレベーター。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記相対的関係は前記応答させるエレベーターと前記通過予定とされたエレベーターの現時点で停止可能な階床に基づいて決定されることを特徴とする群管理エレベーター。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記相対的関係は前記応答させるエレベーターと前記通過予定とされたエレベーターとのかご位置表示装置による表示位置に基づいて決定されることを特徴とする群管理エレベーター。
【請求項7】
請求項1に記載のものにおいて、前記相対的関係は前記応答させるエレベーターと前記通過予定とされたエレベーターと前記階までの停止階床数に基づいて決定されることを特徴とする群管理エレベーター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−64874(P2010−64874A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234165(P2008−234165)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】