説明

耐熱材及び同耐熱材の使用方法

【課題】既設の構造物の用いられている部材などに後から担持させるだけで、耐熱性、耐火性を著しく向上させること。
【解決手段】有機材料にフライアッシュ及び/又は炭素を添加した。このとき、前記フライアッシュ及び/又は炭素の配合比を、全体の10〜30重量%とした。前記有機材料に、金属類をさらに添加した。このとき、金属類の配合比を、全体の5〜30重量%とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱材及び同耐熱材の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木や建築の分野では、火災時にコンクリート構造物の構造破壊を防止することを目的とした耐火耐熱コンクリートが提案されており、この中に、例えば、フライアッシュなどが添加された耐火耐熱コンクリートも知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2005−187275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した耐火耐熱コンクリートは、新たな建築物にしか適用できないため、既設の建築物などに対して耐熱性を向上させるには不適と言わざるを得ない。また、あくまでもコンクリートであるため、その用途は限定されてしまう。
【0004】
したがって、既設の建築物などに対しても、耐熱性を向上させることができることが望ましいが、未だこれを実現する手段はない。
【0005】
また、耐熱性が必要とされるのは、建築物などの基本構造に限定されるわけではなく、例えば建築物に付設される樹脂部分などにも望まれている。さらには、身の回りにある樹脂製品などでも熱によって簡単に変形、溶解することは可及的に回避されることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記課題を解決することのできる耐熱材及び同耐熱材を主成分とする塗料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明では、有機材料にフライアッシュ及び/又は炭素を添加した耐熱材とした。
【0008】
(2)本発明は、上記(1)に記載の耐熱材において、前記フライアッシュ及び/又は炭素の配合比を、全体の10〜30重量%としたことを特徴とする。
【0009】
(3)本発明は、上記(1)又は(2)に記載の耐熱材において、前記有機材料に、金属類をさらに添加したことを特徴とする。
【0010】
(4)本発明は、上記(3)に記載の耐熱材において、前記金属類の配合比を、全体の5〜30重量%としたことを特徴とする。
【0011】
(5)本発明は、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐熱材において、前記有機材料を、エポキシ樹脂としたことを特徴とする。
【0012】
(6)本発明は、上記(3)〜(5)のいずれかに記載の耐熱材において、前記金属類を、酸化鉄又は酸化亜鉛としたことを特徴とする。
【0013】
(7)本発明は、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の耐熱材を塗料として用いることを特徴とする耐熱材の使用方法とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば既設の構造物に用いられている部材などに後から担持させるだけで、耐熱性、耐火性を著しく向上させることが可能であり、耐熱材としての汎用性を著しく高めることができる。また、耐熱性の高い樹脂製品を容易に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施形態に係る耐熱材は、有機材料にフライアッシュ及び/又は炭素を添加したものである。
【0016】
すなわち、シリカとアルミナを主成分とし、微粉炭を燃焼した際に発生する石炭灰を採取したフライアッシュ、あるいは黒鉛や炭素化合物などの炭素を有機材料に、例えば有機樹脂に選択的に添加したもの、あるいはフライアッシュ及び黒鉛や炭素化合物などの炭素を同時に添加したものである。
【0017】
フライアッシュはコンクリート混和材としてしばしば用いられるが、有機材料に添加することでも耐熱性、耐火性が向上することを知見した。
【0018】
そこで、これを現代社会において広く用いられる有機材料に適用して、例えば、耐熱プラスチックとして用いることにより汎用性を高め、耐熱製品、耐火製品としてのニーズに応えることができるようにしている。
【0019】
ところで、前記フライアッシュ及び/又は炭素の配合比は、耐熱材全体の10〜30重量%とするとよい。
【0020】
かかる配合比とすれば、硬化させて成形することも、あるいは未硬化の状態では、既設の材料の上から塗布したりすることが可能で、汎用性をより高めることができる。
【0021】
有機樹脂としては、特に、寸法安定性や耐水性があり、また、耐薬品性や電気絶縁性が高いエポキシ樹脂とすることが望ましい。エポキシ樹脂とすることで、例えば、CPUなど、熱に起因する不具合(所謂「熱暴走」など)の懸念がある電子部品を搭載するマザーボードなどの電子部品用基板にも好適に用いることができる。
【0022】
また、エポキシ樹脂などの前記有機材料には、金属類をさらに添加することができる。かかる金属類としては、本実施形態では、酸化鉄又は酸化亜鉛などの金属酸化物を用いている。かかる金属類を添加することによって、放熱性が向上して蓄熱を防止できるため、過熱が問題となり易い前記マザーボードや、その他の電子部品用基板などに、より好適な材料とすることができる。また、近年、環境問題などから需要が増加している太陽光発電装置のカバーなどにも好適である。
【0023】
そして、金属類の配合比としては、全体の5〜30重量%とするとよい。かかる配合比とすることで、前記放熱性を有しつつ、樹脂材料としての粘性あるいは流動性、さらには成形性などを損なうことがなくなる。
【0024】
上述した耐熱材を生成するためには、有機材料としてエポキシ樹脂を用いた場合、これを全体の70〜90重量%用意し、その中に、全体の10〜30重量%のフライアッシュ又は黒鉛を混合すればよい。あるいは、全体の70〜90重量%のエポキシ樹脂中に、フライアッシュと黒鉛との混合物を、全体の10〜30重量%となるように混合すればよい。このとき、フライアッシュと黒鉛との配合比については任意に定めて構わない。ここでは、5:5とした。
【0025】
上述した耐熱材は、極めて汎用性が高く、例えば、上記電子部品用基板をはじめ、エポキシ樹脂の接着性、強靱性、耐食性などが高い性質を生かした耐熱プラスチック、耐火プラスチックとしての生活用品にも利用することが可能である。
【0026】
また、本発明の他の実施形態として、上述した耐熱材を塗料として用いることができる。塗料とするためには、適宜所定の添加材や顔料などを添加するとよい。このように、塗料として用いることができるため、これを塗布した場合に少なくとも見栄えを損なうおそれはなく、リフォーム工事などにも好適となる。特に、本実施形態に係る耐熱材は、防錆性も有するため、建築資材用の塗料として極めて有用となる。
【0027】
塗布対象としても幅広く、例えば、既存の建築物や構築物の屋根、外壁、内壁、さらには扉などに塗布することで、耐熱性、耐火性を著しく向上させることができる。また、屋内屋外を問わず、鉄骨や階段、さらにはエレベータシャフトなどにも適用することができる。すなわち、塗料として使用できるため、既設建築物について、後からであっても耐火性を付与することが可能となる。したがって、一般住宅から高層ビル、さらには油タンクなどにも広く適用することが可能である。
【0028】
このように、塗料として用いれば、既設の建築材料の上から塗布するだけで、耐熱性、耐火性を付与することができるため、利用価値が極めて高くなる。
【0029】
上述した耐熱材について、図1に示すような実験を行った。
【0030】
図1において、1は本実施形態に係る耐熱材からなる試験ピース、2はガスバーナ、3はガスバーナ2の火炎温度を計測する温度センサである。試験ピース1は、図2に示すように、厚さ3mmの鋼材10に、上述した耐熱材からなる耐熱塗料11を略500μm程度の膜厚となるように塗布したものである。なお、鋼材10は耐熱温度が600℃程度の普通鋼板である。
【0031】
そして、図1(a)に示すように、温度センサ3が1000℃になるまで試験ピース1の一側面からガスバーナ2の火炎を噴射した。
【0032】
図2(b)に示すように、1000℃の温度に対して、塗布された耐熱塗料11は、焦げただけであり、鋼材10が変形、溶解するには至らなかった。
【0033】
このように、耐熱塗料11を塗布するだけで、耐熱性、耐火性が著しく向上したことが分かった。
【0034】
したがって、上述した耐熱塗料11を使用することにより、既存の建築物、構築物についても、十分な耐熱効果、耐火効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】耐熱実験概要を示す説明図である。
【図2】本実施形態に係る耐熱材を用いた試験ピースの説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 試験ピース
2 ガスバーナ
3 温度センサ
10 鋼材
11 耐熱塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料にフライアッシュ及び/又は炭素を添加したことを特徴とする耐熱材。
【請求項2】
前記フライアッシュ及び/又は炭素の配合比を、全体の10〜30重量%としたことを特徴とする請求項1記載の耐熱材。
【請求項3】
前記有機材料に、金属類をさらに添加したことを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱材。
【請求項4】
前記金属類の配合比を、全体の5〜30重量%としたことを特徴とする請求項3記載の耐熱材。
【請求項5】
前記有機材料を、エポキシ樹脂としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱材。
【請求項6】
前記金属類を、酸化鉄又は酸化亜鉛としたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の耐熱材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の耐熱材を塗料として用いることを特徴とする耐熱材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91433(P2009−91433A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262371(P2007−262371)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(507064097)
【Fターム(参考)】