説明

耐熱透明容器

【課題】 食品を収納して販売するための食品容器等において、電子レンジ加熱やレトルト殺菌に耐え得る耐熱性を有するとともに、優れた透明性を有する耐熱透明容器を提供する。
【解決手段】 耐熱透明容器は、A−PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)シートを加熱して一次延伸後一次熱固定する一次延伸熱固定工程と、該一次延伸熱固定工程で作製された一次延伸A−PETシートを、熱成形機の金型で加熱成形し成形によるニ次延伸後同じ金型内で二次熱固定する二次延伸熱固定工程とを経て冷却されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビニエンスストア等において食品を収納して販売するための食品容器に関し、さらに詳しくは、油分を含む食品が電子レンジ加熱で上昇する150℃やレトルト殺菌温度の125℃でも変形がない耐熱性を有するとともに、優れた透明性を有する耐熱透明容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア、デパート、スーパー等の食品売場おいては、トレー、カップ、丼容器等の食品容器に、惣菜、麺類、サラダ等の食品が詰められて売られている。このような食品容器は、食品を収納する容器本体と、容器本体を密封する蓋体とで構成されており、一般に、容器本体は、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、フィラー入りポリプロピレン、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、耐熱発泡ポリスチレン、A−PET(Amorphous PET)等のシートを真空、圧空、真空・圧空成形機で熱成形して製造されている。また、蓋体は、A−PET、ニ軸延伸ポリスチレン(OPS)、ポリプロピレン(PP)等のシートで形成されている(特許文献1参照)。
また、近年、一軸延伸されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが、高透明で耐熱性があることからIT関連のタッチパネルや液晶表示素子として用いられてきている(特許文献2、3、4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−329972号公報
【特許文献2】特開2000−82335号公報
【特許文献3】特開2000−82336号公報
【特許文献4】特開平5−165035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、コンビニエンスストア等で購入した食品を、食品容器に収納された状態でそのまま電子レンジで温めることが日常的に行なわれているが、このように食品を食品容器ごと電子レンジで温めると、油分を含む食品は150℃ぐらいまで温度が上昇するものであった。したがって、食品容器には、150℃まで耐え得る高耐熱性が要求されている。また、油分を含まない食品であっても、レトルト食品においては、125℃のレトルト殺菌に耐え得る高耐熱性が要求されているものであった。
さらに、食品容器においては、中身食品が一目でクリアに認識でき、商品性を向上させるために、高透明性が要求されている。
【0005】
しかしながら、上述した従来使用されている各種シートにおいては、高耐熱性と高透明性との2つを同時に満足するものが存在しなかった。すなわち、これらの各種シートの内、高透明性を有するものとしては、A−PETシートとOPS(ニ軸延伸ポリスチレン)シートとがあるが、これらのシートは、80℃ぐらいで軟化し、高耐熱性を有するものではなかった。また、PPシートは、高耐熱性を有するが、透明性が劣るものであった。
【0006】
なお、タッチパネル等に用いられる一軸延伸されたPETフィルムは、高透明性かつ耐熱性であるが、特許文献2にも記載されているように、TD(横)一軸延伸後220℃で熱固定されており、加熱しても伸びがなく熱成形機で成形することは不可能である。
【0007】
以上のように、従来、電子レンジで直接加熱される食品容器においては、高耐熱性及び高透明性を要望されていたが、これら両者を同時に満足する食品容器は未だ提案されていなかった。
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたもので、高耐熱性と高透明性を有する食品容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討し、高透明性を有するA−PETシートやOPSシートに着目し、これらのシートの耐熱性を改善することにより課題を達成することができると考えた。しかしながら、OPSシートは、残留モノマー、ダイマーやトリマー、添加剤の溶出による安全衛生性上の懸念があり、食品安全衛生性に優れているA−PETシートの耐熱性を改善することを検討した。
【0010】
本発明者らは、以上の検討の結果、A−PETシートの耐熱性を改善することについて鋭意検討し、A−PETシートを延伸による配向結晶化と熱固定による結晶化によって結晶化度を上げることによって、150℃にも耐え得る高耐熱性を付与することが出来ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
請求項1に係る耐熱透明容器は、A−PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)シートを加熱して一次延伸後一次熱固定する一次延伸熱固定工程と、該一次延伸熱固定工程で作製された一次延伸A−PETシートを、熱成形機の金型で加熱成形し成形によるニ次延伸後同じ金型内で二次熱固定する二次延伸熱固定工程とを経たことを特徴として構成されている。
【0012】
請求項2に係る耐熱透明容器は、請求項1記載の耐熱透明容器において、一次延伸熱固定工程において、ロールによる延伸装置を用い、A−PETシートを、延伸温度90〜120℃でMD(縦方向)に2〜5倍に一軸一次延伸した後延伸温度より5〜20℃高い温度で一次熱固定することを特徴として構成されている。
【0013】
請求項3に係る耐熱透明容器は、請求項1又は2記載の耐熱透明容器において、一次延伸熱固定工程を経た一次延伸A−PETシートの下記の式で示される結晶化度が、22%以上30%未満であることを特徴として構成されている。
【0014】
【数1】

【0015】
請求項4に係る耐熱透明容器は、請求項1、2又は3記載の耐熱透明容器において、二次延伸熱固定工程において、一次延伸A−PETシートを80〜130℃で加熱成形して二次延伸し、同じ金型内で160℃以上で二次熱固定することを特徴として構成されている。
【0016】
請求項5に係る耐熱透明容器は、請求項1、2、3又は4記載の耐熱透明容器において、二次延伸熱固定工程を経て冷却された容器の下記の式で示される結晶化度が、30%以上であることを特徴として構成されている。
【0017】
【数1】

【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る耐熱透明容器においては、一次延伸熱固定工程において、A−PETシートの結晶化度を熱成形できる範囲内で大きくし、さらに、二次延伸熱固定工程において、一次延伸A−PETシートを容器の形状に成形すると同時に結晶化度を大きくし、耐熱性を向上させている。また、一次延伸熱固定工程においては、A−PETシートを延伸し、その後熱固定するだけでよいので、安価な装置を用いることができ、また、二次延伸熱固定工程においては、同一金型内での熱固定で透明かつ耐熱性のある成形体を得ることができるので、ダブルモールド法によらないために装置が安価であり、かつ成形時間の短縮が図れて生産性が上がる。
【0019】
請求項2に係る耐熱透明容器においては、A−PETシートを、延伸温度90〜120℃でMD(縦方向)に2〜5倍に一軸一次延伸した後延伸温度より5〜20℃高い温度で一次熱固定することにより、透明性を維持しながら結晶化度を22%以上30%未満にコントロール出来、延伸シートの熱収縮をおさえることが出来る。
【0020】
請求項3に係る耐熱透明容器においては、一次延伸熱固定工程を経た一次延伸A−PETシートの下記の式で示される結晶化度を、22%以上30%未満とすることにより、熱成形出来る結晶化度であり、次の二次延伸熱固定工程で高耐熱性が得られる結晶化度30%以上に近づけることが出来る。
【0021】
【数1】

【0022】
請求項4に係る耐熱透明容器においては、二次延伸熱固定工程において、一次延伸A−PETシートを80〜130℃で加熱成形して二次延伸し、同じ金型内で160℃以上で二次熱固定することにより、透明性を維持しながら結晶化度を30%以上とすることが出来る。
【0023】
請求項5に係る耐熱透明容器においては、二次延伸熱固定工程を経て冷却された容器の下記の式で示される結晶化度を、30%以上とすることにより、高透明で150℃の高耐熱性を付与することが出来る。
【0024】
【数1】

【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の耐熱透明容器は、A−PETシートを用いるものであり、このA−PETは、非結晶状態であり、その結晶化度は大略5〜7%のものである。
【0026】
A−PETシートとしては、一般に市販されているA−PETシートを用いることができ、A−PETシートに用いる樹脂は、固有粘度(IV値)が高いものであることは必要ではないが、固有粘度が0.6dL/g以下の樹脂や、回収PETボトルのフレークを用いた樹脂から成形したシートだと表面性が良好でない場合があるので特別な前処理が必要である。
【0027】
一次延伸熱固定工程は、まず、A−PETシートを加熱して一次延伸する。このA−PETシートは、予め成形して得たものを用いても、Tダイ成形機で成形直後のA−PETシートをインラインで延伸手段に送り込んでもよい。
【0028】
一次延伸の延伸温度は、90〜120℃が好ましく、95〜110℃がより好ましい。延伸温度が90℃未満であると、A−PETシートが延伸される際に張力が掛かりすぎて延伸ムラを起こして、延伸A−PETシートの偏肉が起こり易くなり、また、120℃を超えると、シートが白濁気味となり表面肌あれも発生し、透明で良好な延伸A−PETシートが得られない。
【0029】
延伸倍率は、2〜5倍が好ましく、2.6〜3.7倍がより好ましい。延伸倍倍率が2倍未満であると、示差走査熱量計(DSC)測定から冷結晶化点が観測され、結晶化度が22%未満となって後述する熱成形で成形体が白化してしまう。また、5倍を超えると延伸時に延伸ロールでスベリが起こり易くなり、すべった部分とすべらない部分があるためシートに横波模様が発生したりして、良好な一軸一次延伸A−PETシートが得られない。
【0030】
延伸装置としては、例えば、加熱ロールを用いた延伸装置を用いることができるが、この加熱ロールの短区間の1段延伸でも、2段延伸以上の多段延伸であってもよい。
【0031】
一次熱固定の温度は、特に限定されないが、アニールによる配向緩和をさせる観点から延伸温度より5〜20℃高い温度が好ましく、熱固定温度が、延伸温度より5℃より高くないと、シートの熱収縮率が大きくなる。また、延伸温度より20℃より高いと、表面に肌荒れが起こり白化気味となる。
【0032】
なお、上記熱固定温度の範囲において、延伸A−PETシートの加熱収縮率が小さくなり、熱成形体を製造する際に変形を少なくできるので、高めの熱固定温度とすることがより好ましい。
【0033】
なお、熱固定ロールの速度はシートの配向緩和に合わせるため延伸ロール速度より0.5〜10%程度遅めにする。
【0034】
以上のような一次延伸熱固定工程を経た一次延伸A−PETシートは、下記の式で示される結晶化度が、22%以上30%未満であることが好ましい。結晶化度が22%未満であれば、冷結晶化点が存在するので、二次延伸において加熱された際、白化する恐れがある。また、30%以上であると、熱成形が困難となり、金型の再現性が得にくくなる。
【0035】
【数1】

【0036】
二次延伸の延伸温度は、80〜130℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。延伸温度が80℃未満であると、成形体に波打ちが発生する、また、130℃を超えると、シートのドローダウンが大きくなり成形された時に成形体にシワが発生する。
【0037】
二次熱固定の温度は、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。熱固定温度が160℃未満であると、150℃の耐熱性を確保できない恐れがある。また、熱固定温度の上限は特に無いが、220℃を超えて長時間熱固定すると、半透明になり白濁する恐れがある。
金型内での熱固定時間は、少なくとも10秒程度保持することが好ましく、熱固定時間が10秒程度より短いと成形体に波うち状のシワが発生するものである。
【0038】
以上のような二次延伸熱固定工程を経た二次延伸A−PETシート(熱成形体)は、下記の式で示される結晶化度が、30%以上であることが必要で、結晶化度が30%未満であると、十分な耐熱性を得ることができない。
【0039】
【数1】

【0040】
熱成形方法は特に限定されず、真空成形、圧空成形、真空圧空成形いずれでもかまわない。
【0041】
本発明の耐熱透明容器は、耐熱性と透明性とが要求される各種容器に適用することができる。例えば、食品容器、特に電子レンジで加熱する食品容器やレトルト食品容器に最適である。
【0042】
本発明による耐熱透明容器を製造する工程について図面を参照して説明する。
図1は縦一軸延伸A−PETシートの製造装置の概略図、図2は熱成形体の製造装置の概略図である。
【0043】
図1において、1はA−PETシート、2は予熱ロール、3はニップロール、4は加熱ロール、5は延伸ロール、6は熱固定ロール、7は縦一軸延伸A−PETシートであり、A−PETシート1を、まず予熱ロール2で70〜90℃に予熱した後、加熱ロール4で90〜120℃に加熱する。そして、この加熱されたA−PETシート1を延伸ロール5により、縦方向に2〜5倍延伸する。さらに、この一軸延伸されたA−PETシート1は熱固定ロール6で、加熱ロール4で加熱した温度より5〜20℃高い温度で加熱されて熱固定され、縦一軸延伸A−PETシート7が完成する。
【0044】
図2において、11は熱成形上部加熱ヒータ板、12は熱成形下部加熱ヒータ板であり、熱成形する前に縦一軸延伸A−PETシートを加熱するためのものである。また、13は熱成形上金型、14は熱成形下金型、15は熱成形下金型埋め込みヒータ、16は熱成形体であり、まず、熱成形上部加熱ヒータ11と熱成形下部加熱ヒータ12との間に縦一軸延伸A−PET7を設置し、縦一軸延伸A−PETシート7の表面温度が80〜130℃となるように加熱する。次に、この加熱した縦一軸延伸A−PETシート7を熱成形上金型13と熱成形下金型14とで熱成形し、そのまま10秒程度保持した後取り出す。この時、熱成形下金型14は熱成形下金型埋め込みヒータ12で160℃以上に加熱されているので、熱成形体16は160℃で熱固定される。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
アテナ工業(株)製0.4mm厚みのA−PETシート(結晶化度6.1%)を日本製鋼所(株)製T−17型ロール延伸装置で延伸A−PETシートを製造した。すなわち、予熱ロール温度80℃、加熱ロール温度(延伸温度)95℃、延伸ロール温度80℃、熱固定ロール温度100℃に設定し、A−PETシートを3m/分で繰り出して、加熱ロールと延伸ロールとの間で2.6倍に1段で延伸し、0.15mm厚みの延伸A−PETシートを得た。
【0046】
この延伸A−PETシートは、シワも無く透明であり、DSC測定値から求めた結晶化度は24%で冷結晶化ピークは消えており、高結晶化されていた。
次に、まず、延伸A−PETシートを、加熱ヒーターで表面温度が90℃になるように加熱して軟化させた後、(株)浅野研究所製FKC型真空圧空成形機で上部径180mm×95mm、底部径165mm×75mm、深さ15mmの雌型アルミ金型を用い、アルミ金型の温度を180℃に設定し、0.5MPaで圧空をかけながら真空圧空成形し、熱成形体を得た。なお、金型を閉じている熱固定時間は10秒とした。
【0047】
この熱成形体は、延伸A−PETシートの透明性を保持しており、変形も無く金型通りの成形体が得られた。結晶化度は30.5%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
【0048】
この熱成形体の電子レンジ加熱による耐熱性テストを行なった。この耐熱性テストは、熱成形体の上に“とんかつ”を載せて電子レンジ(National NE−EZ2)を用いて700W×3分かけた後、成形体の変形の有無と透明性を調べた。電子レンジにかけた後の“とんかつ”の表面温度を赤外線放射温度計(SATO:SK−8700II)で測定したら157℃を示しており、熱成形体底部には油がたまっていた。熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0049】
[実施例2]
実施例1と同じアテナ工業(株)製0.6mm厚みのA−PETシート(結晶化度6.3%)を用い、延伸倍率を3倍とした他は、実施例1と同じ延伸装置で同じ条件で、0.2mm厚みの延伸A−PETシートを得た。
この延伸A−PETシートは、シワも無く透明であり、DSC測定値から求めた結晶化度は28.9%で冷結晶化ピークは消えており、高結晶化されていた。
【0050】
次に、この延伸A−PETシートを、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、変形も無く金型通りの成形体が得られた。結晶化度は34.2%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
この熱成形体の耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0051】
[実施例3]
実施例2と同じアテナ工業(株)製0.6mm厚みのA−PETシート(結晶化度6.3%)を用い、延伸倍率を3.7倍とした他は、実施例1と同じ延伸装置で同じ条件で、0.16mm厚みの延伸A−PETシートを得た。
【0052】
この延伸A−PETシートは、シワも無く透明であり、DSC測定値から求めた結晶化度は29.1%で冷結晶化ピークは消えており、高結晶化されていた。
次に、この延伸A−PETシートを、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
【0053】
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、変形も無く金型通りの成形体が得られた。結晶化度は34.6%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
この熱成形体の耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0054】
[実施例4]
実施例2と同一の延伸A−PETシートを用いた。
次に、この延伸A−PETシートを、金型の熱固定時間を7.5秒とした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
【0055】
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、また、側面に少しの波うち現象が見られたが、商品価値としては問題の無いものであった。結晶化度は34.0%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
この熱成形体の耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0056】
[実施例5]
実施例2と同一の延伸A−PETシートを用いた。
次に、この延伸A−PETシートを、加熱ヒータによる表面加熱温度を110℃にした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
【0057】
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、変形も無く金型通りの成形体が得られた。結晶化度は34.2%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
この熱成形体の耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0058】
[実施例6]
実施例2と同一の延伸A−PETシートを用いた。
次に、この延伸A−PETシートを、金型の熱固定温度を200℃にした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
【0059】
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、変形も無く金型通りの成形体が得られた。結晶化度は34.9%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
この熱成形体の耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0060】
[実施例7]
実施例2と同一の延伸A−PETシートを用いた。
次に、この延伸A−PETシートを、金型の熱固定温度を200℃、金型の熱固定時間を7.5秒にした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
【0061】
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、また、側面に少しの波うち現象が見られたが、商品価値としては問題の無いものであった。結晶化度は33.8%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
この熱成形体の耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0062】
[実施例8]
実施例2と同一の延伸A−PETシートを用いた。
次に、この延伸A−PETシートを、金型の熱固定温度を170℃、金型の熱固定時間を12秒にした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
【0063】
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、変形も無く金型通りの成形体が得られた。結晶化度は32.5%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
この熱成形体の耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0064】
[実施例9]
実施例2と同一の延伸A−PETシートを用いた。
この延伸A−PETシートを、加熱ヒータによる表面加熱温度を90℃、金型の熱固定温度を170℃、金型の熱固定時間を10秒にした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
【0065】
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、変形も無く金型通りの成形体が得られた。結晶化度は32.0%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
この熱成形体の耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0066】
[実施例10]
実施例2と同じアテナ工業(株)製0.6mm厚みのA−PETシート(結晶化度6.3%)を用い、延伸温度を110℃、熱固定ロール温度を115℃、延伸倍率を3倍とした他は、実施例1と同じ延伸装置で同じ条件で、0.2mm厚みの延伸A−PETシートを得た。
【0067】
この延伸A−PETシートは、シワも無く透明であり、DSC測定値から求めた結晶化度は28%で冷結晶化ピークは消えており、高結晶化されていた。
この延伸A−PETシートを、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、変形も無く金型通りの成形体が得られた。結晶化度は33.0%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
この熱成形体の電子レンジ加熱による耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。
【0068】
また、この熱成形体のレトルト殺菌による耐熱性テストを行なった。この耐熱性テストは、熱成形体の容器に、ヘッドスペースの空間部が深さ1mmになるように水を充填し、PET(12μm)/ドライ/Al箔(9μm)/ドライ/PETG(50μm)からなる蓋材でヒートシールにより密封した。そして、この水を充填した密封容器を、熱水・静置のレトルト方式で125℃―30分間のレトルト殺菌を行い、冷却後、中の水を排出し、目視観察により透明性と変形度合を判定した。透明性はレトルト前と変化が無く透明であり、変形度合もレトルト前と変化が無く変形は見られなかった。
【0069】
[実施例11]
実施例2と同じアテナ工業(株)製0.6mm厚みのA−PETシート(結晶化度6.3%)を用い、延伸温度を110℃、熱固定ロール温度を115℃とした他は、実施例2と同じ延伸装置で同じ条件で、0.2mm厚みの延伸A−PETシートを得た。
【0070】
この延伸A−PETシートは、シワも無く透明であり、DSC測定値から求めた結晶化度は28%で冷結晶化ピークは消えており、高結晶化されていた。
この延伸A−PETシートを、加熱ヒータによる表面加熱温度を110℃とした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。
この熱成形体は延伸A−PETシートの透明性を保持しており、変形も無く金型通りの成形体が得られた。結晶化度は33.0%で延伸A−PETシートの結晶化度より高くなって高結晶化されていた。
【0071】
この熱成形体の耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、熱成形体は変形もなく、透明であった。また、レトルト殺菌による耐熱性テストを実施例10と同じ条件で行なった結果、透明性はレトルト前と変化が無く透明であり、変形度合もレトルト前と変化が無く変形は見られなかった。
【0072】
[比較例1]
実施例1と同じアテナ工業(株)製0.4mm厚みのA−PETシート(結晶化度6.1%)を用い、延伸倍率を1.8倍とした他は、実施例1と同じ延伸装置で同じ条件で、0.22mm厚みの延伸A−PETシートを得た。
この延伸A−PETシートは、表面にシワが見られ、DSC測定値から求めた結晶化度は15.3%で、冷結晶化ピークも存在しており実施例1の結晶化度より小さかった。
【0073】
この延伸A−PETシートを、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。この熱成形体は、肌も悪く中程度に白濁しており成形状態も波うちが大きく現れていた。また、結晶化度は21.5%であった。したがって、この熱成形体では耐熱性のテストは実施しなかった。
【0074】
[比較例2]
実施例2と同じアテナ工業(株)製0.6mm厚みのA−PETシート(結晶化度6.3%)を用い、延伸倍率を5.2倍とした他は、実施例1と同じ延伸装置で同じ条件で、0.12mm厚みの延伸A−PETシートを得た。
【0075】
この延伸A−PETシートは、DSC測定値から求めた結晶化度は29.7%であり、実施例1より結晶化されていたが、延伸ムラが原因と思われるシワが発生していた。この延伸A−PETシートは表面状態が悪いので真空圧空成形は行なわなかった。
【0076】
[比較例3]
実施例2と同じアテナ工業(株)製0.6mm厚みのA−PETシート(結晶化度6.3%)を用い、延伸温度を80℃とした他は、実施例2と同じ延伸装置で同じ条件で、0.2mm厚みの延伸A−PETシートを得た。
【0077】
この延伸A−PETシートは、DSC測定値から求めた結晶化度は29%であり、実施例2と略同一であったが、表面の平滑性が悪く良好なシートを得られなかった。この延伸A−PETシートは表面状態が悪かったので熱成形テストは実施しなかった。
【0078】
[比較例4]
実施例1と同一のA−PETシートを用い、延伸温度を125℃、熱固定ロール温度を130℃とした他は、実施例2と同じ延伸装置で同じ条件で、0.13mm厚みの延伸A−PETシートを得た。
【0079】
この延伸A−PETシートは、DSC測定値から求めた結晶化度は27.8%であり、表面の平滑性が悪く、また白化が起こっていた。この延伸A−PETシートは表面状態が悪く白化したので熱成形テストは実施しなかった。
【0080】
[比較例5]
実施例2で得られた延伸A−PETシートを用いた。
この延伸A−PETシートを、金型の熱固定温度を25℃、熱固定時間を60秒とした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。この熱成形体は、透明性はあったが金型通りに成形できなかった。熱成形体の耐熱性テストは実施しなかった。
【0081】
[比較例6]
実施例2で得られた延伸A−PETシートを用いた。
この延伸A−PETシートを、金型の熱固定温度を150℃、熱固定時間を20秒にした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。この熱成形体は、透明性はあったが金型通りに成形できなかった。熱成形体の耐熱性テストは実施しなかった。
【0082】
[比較例7]
実施例2で得られた延伸A−PETシートを用いた。
この延伸A−PETシートを、金型の熱固定温度を220℃、熱固定時間を5秒にした他は、実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。この熱成形体は、中程度に白化し、波うちの大きな熱成形体しか得られなかった。熱成形体の耐熱性テストは実施しなかった。
【0083】
[比較例8]
0.4mm厚みのA−PETシートを用いた。
このA−PETシートを、シート加熱温度を140℃、金型熱固定温度25℃、熱固定時間10秒とした他は、で実施例1と同じ装置及び同じ条件で真空圧空成形し、熱成形体を得た。この熱成形体は、成形状態は良好であったが、少し白濁した。また、結晶化度は13.0%であった。熱成形体の電子レンジ加熱による耐熱性テストを実施例1と同じ条件で行った結果、大きく変形し、白化した。
以上の結果を、表1及び表2に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
[延伸A−PETシートの評価]
延伸A−PETシートのシート状態を評価した。すなわち、延伸A−PETシートの状態を、透明か白化したかに加えて、表面のシワ、肌荒れの発生有無を判定した。なお、ここで透明とは、JISK7105法で測定したヘーズ値が4%以下の場合である。また、結晶化度を測定した。
【0087】
<延伸A−PETシートの状態>
○透明 ×白化 ■シワ、表面肌あれ、表面平滑なし
【0088】
<結晶化度>
セイコー電子DSC220示差走査熱量計で延伸シート融解挙動を測定し、下記の式に基づいて得た。なお、測定条件はサンプル10mg、窒素50mL/minで昇温速度10℃/minで20〜300℃まで昇温して測定した。
【0089】
【数1】

【0090】
[熱成形体の評価]
熱成形体の成形状態及び透明性を評価した。成形状態は、成形体が何らの変形点もなく型通りになっていれば良好であり、成形体の一部でも波うち状になったか、全く成形できなかったかどうかで判定した。透明性については目視で成形前の透明性を保持していれば良好とし、それ以外は白濁度合いと白化に分けて判定した。また、結晶化度を測定した。
【0091】
<成形状態>
◎良好 ○少し波うち △波うち大 ×成形できず
<透明性>
◎透明 ○少し白濁 △中程度白濁 ×白化
<結晶化度>
延伸A−PETシートの場合と同様である。
【0092】
[熱成形体の耐熱性評価]
1.電子レンジ加熱
電子レンジで容器型の成形体に“とんかつ”を置いて700W×3分加熱した後の成形体の変形度合と透明性を評価した。なお、加熱後の“とんかつ”の温度は150℃を示していた。透明性については、加熱前の透明性を保持しているか白化しているかで判定した。変形度合は、変形の有無を目視により観察して判定した。
【0093】
<透明性>
◎透明 ×白化
<変形度合い>
◎変形なし ×変形
【0094】
2.レトルト殺菌
容器型の成形体にヘッドスペースの空間部が深さ1mmになるように水を充填し、PET(12μm)/ドライ/Al箔(9μm)/ドライ/PETG(50μm)からなる蓋材でヒートシールにより密封した。そして、この水を充填した密封容器を、熱水・静置のレトルト方式で125℃―30分間のレトルト殺菌を行った。冷却後、中の水を排出し、目視観察により変形度合と透明性とを判定した。
【0095】
<透明性>
◎レトルト前と変化無し ×白化
<変形度合>
◎レトルト前と変化無し ×変形
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明による耐熱透明容器に用いる縦一軸延伸A−PETシートの製造装置の概略図
【図2】本発明による耐熱透明容器に用いる熱成形装置の概略図
【符号の説明】
【0097】
1 A−PETシート
2 予熱ロール
4 加熱ロール
5 延伸ロール
6 熱固定ロール
7 縦一軸延伸A−PETシート
11 熱成形上部加熱ヒータ板
12 熱成形下部加熱ヒータ板
13 熱成形上金型
14 熱成形下金型
15 熱成形下金型埋め込みヒータ
16 熱成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A−PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)シートを加熱して一次延伸後一次熱固定する一次延伸熱固定工程と、該一次延伸熱固定工程で作製された一次延伸A−PETシートを、熱成形機の金型で加熱成形し成形によるニ次延伸後同じ金型内で二次熱固定する二次延伸熱固定工程とを経て冷却されたことを特徴とする耐熱透明容器。
【請求項2】
前記一次延伸熱固定工程において、ロールによる延伸装置を用い、A−PETシートを、延伸温度90〜120℃でMD(縦方向)に2〜5倍に一軸一次延伸した後延伸温度より5〜20℃高い温度で一次熱固定することを特徴とする請求項1記載の耐熱透明容器。
【請求項3】
前記一次延伸熱固定工程を経た一次延伸A−PETシートの下記の式で示される結晶化度が、22%以上30%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱透明容器。
【数1】

【請求項4】
前記二次延伸熱固定工程において、一次延伸A−PETシートを80〜130℃で加熱成形して二次延伸し、同じ金型内で160℃以上で二次熱固定することを特徴とする請求項1、2又は3記載の耐熱透明容器。
【請求項5】
前記二次延伸熱固定工程を経て冷却された容器の下記の式で示される結晶化度が、30%以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の耐熱透明容器。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−331831(P2007−331831A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168961(P2006−168961)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(594146180)中本パックス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】