説明

肥料及び土壌改良剤並びに写真廃液の再利用方法

【課題】 ミニラボでも実施が可能で、植物成長阻害を伴うことのない写真廃液を再利用した肥料又は土壌改良剤を提供すること。また、それによって廃液処理に係る環境保全、コスト、及び作業性の負担を軽減すること。
【解決手段】 写真廃液からタール又はタール前駆体を除去し、必要に応じて成分濃度を調整して得られたことを特徴とする肥料。好ましくは銀とハロゲン化物を除去した上記肥料。また、電解酸化又は化学酸化を施した写真廃液からえられた上記肥料。さらにこれらの肥料を用いた土壌改良剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は写真廃液の処理に関するもので、具体的には写真廃液の処理に伴う環境負荷の軽減に関し、より具体的には写真廃液の肥料や土壌改良剤への再利用に関する。
【背景技術】
【0002】
写真廃液は、高濃度のBOD、COD、窒素成分を含み、且つ、生物処理または化学処理によっても容易には分解されにくい成分が含まれている。したがって、写真廃液、特にカラー現像処理廃液は、直接環境に排出可能にする処理が困難な廃液の一つであって、従来から多くの処理法が開示されている。例えば、活性汚泥法に代表される生物処理法、オゾン、過酸化水素−第一鉄塩、過硫酸、ハロゲン酸等による化学酸化法、電解酸化法、及び高圧加熱、噴霧焼却等の物理処理法などが挙げられる。しかしながら、これにより廃液を無害化して排出する方法は、廃液処理のコスト負荷がかかること及び資源の浪費になることが問題である。
【0003】
そのため大型現像所(大ラボと呼ぶ)では、使用済み処理液のある割合を成分再調製して再生使用を行なったり、低補充化して写真廃液量の低減を図っているが、それだけでは問題解決に十分ではない。小規模処理であるがために、このような再生処理や低補充処理が困難な店頭現像所(ミニラボと呼ぶ)では、合理的な廃液対策が一層強く求められている。
【0004】
ミニラボ廃液処置の現実的な対応策として、廃液は廃液回収業者により回収され、焼却処理されている。大気環境及び水域環境中に環境有害物質物質を排出することなく焼却処理するには排煙処理施設が整備された大規模焼却装置で焼却する必要があって、処理コスト負荷がかかっている。また、燃焼時に生じる酸化鉄等の高融点の無機塩による配管の閉塞や燃焼炉の消耗を回避するために、化学的な脱鉄工程の設置が必要であるので、工程及び操作がさらに複雑になる問題点も含んでいる。
このような事情から、写真廃液の処理においては、環境に極力インパクトを与えないで処理可能で処理コスト負荷も大きくない適切な方法が求められている。その上、写真廃液は、有用な高濃度の化学成分を含んでいるので、資源の節減の観点からも、廃液の無害化処理よりも再利用が望まれている。
【0005】
資源の再利用の面では、特許文献1には、有機廃棄物をpH調整して微生物処理して肥料成分の高いコンポストを製造する方法が開示されており、また、特許文献2には、木酢廃液を微生物処理して肥料とする方法が開示されている。しかしながら、これらは天然有機物主体の廃棄物の再利用である。これら天然有機物由来のものとは異なって高塩濃度、高イオン強度で、かつ合成化学物質主体の写真廃液では、微生物処理法はもとより、他の方法による肥料化も試みられた例はない。
一方、特許文献3には、メッキ廃液を電解酸化処理して肥料として再利用する方法が開示されている。このメッキ廃液はリン酸塩や亞リン酸塩を多量に含有しているので電解酸化した液はリン酸肥料としての価値がある。写真廃液は、環境法規による規制のためりん化合物を処理液処方から除去している点でメッキ廃液のようなインセンティブを持っていない。
【0006】
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次ぎの文献がある。
【特許文献1】特開2002−153846号公報
【特許文献2】特開平6−65019号公報
【特許文献3】特開平9−40482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に述べたように、ミニラボは勿論大ラボにおいても、従来開示されている写真廃液の処理手段のいずれも除去率、処理コスト、作業の容易さなどの点で不十分で、かつ、化学資源の浪費にも繋がっている点を解決できる適切な対応手段が望まれている。
本発明者は、写真廃液が植物生育に必要な肥料成分を含有していることに着目してこの課題の解決手段として、写真廃液を肥料として再利用する方法を試みたが、予期に反して植物成長阻害が引き起こされて肥効が十分に発揮されないことが判り、原因を追求したところ写真廃液中のタール分が植物の根の周りに吸着することが悪影響していることが判明した。
したがって、本発明の具体的目的は、ミニラボでも実施が可能で、植物成長阻害を伴うことのない写真廃液を再利用した肥料を提供することであり、また、それによって廃液処理に係る環境保全、コスト、及び作業性の負担を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的の解決方法を見出すべく、鋭意検討を進めて下記の本発明に到達することができた。
【0009】
(1)写真廃液からタール又はタール前駆体を除去し、必要に応じて成分濃度を調整して得られたことを特徴とする肥料。
(2)タール又はタール前駆体を油吸着剤に吸着させることによって写真廃液から除去して得られたことを特徴とする上記(1)に記載の肥料。
(3)タール又はタール前駆体を油吸着膜に吸着させることによって写真廃液から除去して得られたことを特徴とする上記(1)に記載の肥料。
(4)写真廃液に電解酸化処理を施し、該酸化処理中又は処理後にタールを除去して得られたことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の肥料。
(5)写真廃液に化学酸化処理を施し、該酸化処理中又は処理後にタールを除去して得られたことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の肥料。
(6)タール前駆体を除去した写真廃液に電解酸化処理又は化学酸化処理を施すことなく、ただし必要に応じて成分濃度を調整して得られたことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の肥料。
(7)タール又はタール前駆体の除去に加えて、写真廃液中の含有銀を回収することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の肥料。
(8)タール又はタール前駆体の除去に加えて、写真廃液中のハロゲン化物の濃度を低減させる処理を施したことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の肥料。
(9)ハロゲン化物の濃度を低減させる処理がイオン交換膜を用いる電気透析処理又はイオン交換樹脂処理であることを特徴とする上記(8)に記載の肥料。
【0010】
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の肥料を基材に含有させてなることを特徴とする土壌改良剤。
(11)基材がパーライト、パーミキュライト、赤玉土、鹿沼土、コンポスト、腐葉土、ピートモス、吸水性ポリマー、合成及び/又は天然ゼオライト、合成及び/又は天然白土、みずごけ、ゼラチン、木屑及び砕木チップから選択される少なくとも一つであることを特徴とする上記(10)に記載の土壌改良剤。
(12)写真廃液を用いて上記(1)〜(9)のいずれかに記載の肥料又は上記(10)又は(11)に記載の土壌改良剤を得ることを特徴とする写真廃液の再利用方法。
【発明の効果】
【0011】
写真廃液からタール又はタール前駆体を除去し、必要に応じて成分濃度を調整して得られる本発明の肥料は、窒素及びカリ成分を含み、その上鉄分などの微量植物栄養素を含んだ肥料であり、さらにリン成分を補うことによって3要素が揃った肥料となる。この肥料化は、ミニラボでも実施可能の簡易な操作で行なうことができ、これによって写真廃液を有効に再利用できる。さらに該肥料をその他の添加成分と共に基質に配合すると土壌改質剤が得られ、同様に写真廃液の再利用ができる。その結果、環境負荷の大きい写真廃液の排出量を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
なお、本明細書では「写真処理廃液」とその簡略表現である「写真廃液」は、同義である。また、「ハロゲン化物の除去」及び「銀の除去」、「脱銀」は、それぞれ「ハロゲン化物濃度の低減」及び「銀濃度の低減」という意味に用いられていて必ずしも不検出レベルまでハロゲン化物又は銀を除去することを意味するものではない。
【0013】
写真廃液は、カリウム成分やアンモニウム成分などの肥料分を含有してはいても、高塩濃度、高イオン強度で、かつ合成化学物質主体(窒素化合物も合成化学物質主体)の水溶液であり、その中には微生物に有害な発色現像主薬が含まれるので、肥料や土壌改質に適用するには制約が大きすぎる。しかしながら意外にもこのような性質の廃液であっても写真廃液中のタール及び/又はタール前駆体を除去すると植物成長阻害作用が消滅して肥効が発揮されるようになることが見出された。
タール及び/又はタール前駆体の除去は、写真廃液に対して直接行なってもよく、写真廃液に電解酸化処理を施したのちに行なってもよく、また化学酸化処理を施した後に行なってもよい。電解酸化処理又は化学酸化処理によって写真廃液のタールの量は増加するが、タールを除去した廃液の肥効は増大する。
タールとは、写真処理液を用いて感光材料の処理中に、又は処理液の空気接触下での保存中に写真処理液中に生成するタール状の不溶性析出物を指し、タール前駆体とはタールの原因となる写真処理液の溶存成分を指す。タール前駆体は、主に発色現像主薬である。
【0014】
写真廃液は、本来高塩濃度、高イオン強度であるが、意外なことにタール又はその前駆体を除去した廃液では、その弊害が著しいものではないという好都合な結果がもたらされる。さらに電解酸化又は化学酸化したことによって廃液中の含窒素化合物(非アンモニウム性化学合成品)が、肥料の窒素成分をさらにもたらす(含窒素化合物が硝酸性又は亞硝酸性窒素となるためと考えられる)ことが判った。したがって、水田、畑地、沼地、湿原などで肥料や土壌改質剤成分としての効果が現れる。そのうえ、写真廃液には鉄化合物が多いことが特徴ある肥効を発揮する。さらに写真廃液中に通常存在するハロゲン化物を除去(低減)すれば土壌固化、高塩化あるいは保水性低下などの土壌劣化の危険性も少なくなり、地力の維持に一層好都合であり、優れた肥料や土壌改質剤の効果が得られる。本発明では、イオン交換膜やイオン交換樹脂などによって写真廃液中のハロゲン化物を低減することが望ましい。
また好ましくはさらに写真廃液から(電解酸化又は化学酸化を施す場合にはその前でも、後でも、又は酸化処理中に)廃液中の銀を回収することによって、銀資源の再利用も図られる。
【0015】
さらに、タール及び/又はタール前駆体除去処理した写真廃液に欠如する肥料成分すなわちリン化合物を添加することによって肥料の3要素をすべて具備して適用性の広い肥料とすることができる。それに加えて、植物に必要で写真廃液には存在しない微量栄養素を加えることによって、肥料の質を向上させることができる。
また、ハロゲン化物を除去した、好ましくはさらに脱銀した写真廃液に、リン成分や好ましくは植物の生育に有用な他の成分を加えた肥料を基材と混合して調整することによって肥効、保水性、通気性に優れた土壌改質剤とすることができる。
【0016】
[写真廃液]
本発明の実施の形態の説明に先だって、発明の対象である写真処理廃液について述べる。写真処理廃液は、カラー写真或いはモノクローム写真の現像廃液の他、定着系廃液または写真製版等写真工業で発生した多くの種類の廃液が含まれている。定着系廃液は溶存している銀を回収した残液が処理の対象となる。通常これら種々の写真処理工程からの廃液は混合された状態で回収されて処理される。本発明は、その目的からカラー写真用の廃液を用いるのがその成分構成から好ましい。
写真廃液を構成する現像廃液は、現像処理の各工程から排出された廃液であって、処理中に感光材料から溶出した例えばゼラチンや感光色素などの成分、処理中に生じた反応生成物、及び処理液処方に含まれて消費されなかった構成薬品(処理液処方の詳細は後述する)などを含んでいる廃液である。
【0017】
カラー現像廃液には、現像主薬及びその酸化生成物、アルカリ化合物及び緩衝剤、亜硫酸塩やヒドロキシルアミン誘導体などから選択される補恒剤、アルカリハライドなどを主体としており、定着廃液は、チオ硫酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及び/又は亜硫酸のアンモニウム塩及び/又はナトリウム塩、アルカリハライドなどを主体としており、漂白廃液は、ポリアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩などの漂白剤とそれに由来する反応生成物、アルカリハライド(再ハロゲン化剤)、緩衝塩などを主体としており、漂白定着廃液は、定着廃液と漂白廃液に含まれるものとほぼ同様の成分を主体としており、その他の各工程から排出される廃液もそれらの工程液の機能性化合物とそれに由来する化合物を含有している。したがって、処理される写真廃液の成分は、現像液由来の成分や漂白液・定着液・漂白定着液由来の成分などが感光材料溶出物や処理中の反応生成物と混在しており、例えば緩衝剤(炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩など)、発色現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤、アルキレングリコール類、ベンジルアルコール類、界面活性剤(アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等)酸化剤(鉄(III)のEDTA錯塩、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸錯塩など)、ハロゲン化物(臭化アルカリ、臭化アンモニウムなど)、チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩など多岐に亘る化学成分を含んでいる。写真廃液の処理液由来の成分の更なる詳細は、後述する写真処理の項に述べる。
感光材料からも処理の過程で種々の感光材料添加成分やそれらの反応生成物が処理液中へ溶出する。ハロゲン化銀は、銀錯塩とハライドイオンとなって処理液中に溶出し、それに伴ってハロゲン化銀に吸着していた感光色素(色増感剤)やかぶり防止、化学増感、その他の目的の含窒素ヘテロ環化合物、カプラーやDIR化合物から離脱した化合物(多くの場合窒素化合物)が処理液中に溶出する。さらに感光層のバインダーから界面活性剤などが溶出してくる。感光材料から溶出される化合物の更なる詳細は、後述する感光材料の項に述べる。
したがって写真処理廃液は、前記したように処理液由来及び感光材料由来の窒素化合物、カリウム化合物などの肥料要素を含んでいるが、同時に硫黄化合物,鉄錯塩及び高い塩濃度を持っている。この多様性が効果的な廃液処理手段を困難にしていると同時に再利用方法を見出すことも困難にしていたが、本発明はその解決につながるものである。
【0018】
水質環境面からみた写真廃液は、その組成は、処理の種類及びその処理の各工程からの廃液の混合比率によりかなり変動するが、おおよそCOD5,000〜60,000 mg/L、BOD 5,000 〜15,000 mg/Ll、TOC(Total Organic Carbon)5,000〜25,000 mg/l、ケルダール窒素5,000 〜15,000 mg/Lの範囲である。COD:BOD:TOC の比率は概ね 4:1:1.5でCOD が高い特徴があり、またC:Nの元素比率はほぼ 100:100でN の含有率が高い特徴がある。また、炭酸カリウム、水酸化カリウムなどに由来するカリ成分の含有量も多い。この写真廃液の特徴が、水質環境面では写真廃液を簡便に環境無害化することを困難にしているが、その一方、写真廃液の構成を肥料成分の観点から見ると、高濃度の窒素化合物(上記)やカリウム化合物(多くの場合K元素として1000〜10000mg/L)を含んでおり、また緑葉野菜や芝生に適した葉面散布肥料に望まれる鉄成分もアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩などの形の鉄塩として含有している(多くの場合Fe元素として500〜5000mg/L)。したがって、写真廃液は、高ハロゲン化物濃度や高イオン強度に伴う植物や土壌への悪影響が解決できれば肥料化、土壌改良剤化を考慮できる性質の廃液である。
【0019】
[写真廃液から肥料の調製工程]
(タール又はタール前駆体の除去)
写真廃液からのタール又はタール前駆体の除去は、除去が可能であるかぎり任意の方法を用いることができるが、好ましい方法としては、i)油吸着剤に吸着させたのち、これを廃液から分離除去する方法と、ii)油吸着膜に吸蔵させたのち、吸蔵膜を廃液から除く方法が挙げられる。
油吸着剤としては、無機及び有機の各種吸着剤を用いることができ、例えば無機吸着剤には、合成又は天然ゼオライト、合成又は天然白土、パーライト、パーミキュライト、モンモリロナイト、活性炭、鹿沼土を用いることができる。有機吸着剤には、ピートモス、ポリプロピレン、吸水性ポリマー、おがくず、砕木チップ、パルプ、リンター、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロースエステル類、各種市販油吸着剤を用いることができる。例えば天然セルロース系の吸着剤(商品名セルソーブ、供給元モルゲンロート社)、天然植物系の吸着剤(商品名オイルスポンジ、供給元遠藤工業(株))が市販されているが、これらに限定されない。写真廃液1リットル当たり0.1〜100g、好ましくは1〜50g添加して時々攪拌しながら1日放置、常時攪拌機で攪拌を続けながら1時間以上好ましくは6時間の後、タール及び前駆体を吸着した浮上している油吸着剤を上液のみ分離したり、濾過によって分離する。
油吸着膜は、ポリプロピレンやポリスチレンの製膜成形品など市販されているものを用いることができるが、例えば商品名ネオアタックエース、菱化イーテック社、商品名ネイルパッド、橋本クロス社、商品名ラグマット及びラグロール、ガネシ商事社が挙げられるが、これらに限定されない。写真廃液1リットル当たり0.1〜100g、好ましくは1〜50gg添加して時々攪拌しながら1日放置、常時攪拌機で攪拌を続けながら1時間以上好ましくは6時間の後、タール及び前駆体を吸蔵した油吸着膜を廃液から取出すことによってタール及び前駆体を除去する。
使用済みの油吸着剤や油吸着膜は、焼却処理によって熱回収される。
【0020】
(電解酸化処理)
本発明の方法による写真処理廃液の電解酸化処理について述べる。
<廃液の調整>
本発明において、写真処理廃液は、pHの調製や、支持電解質の添加を行うことなしに電解処理に供して良い。必要があれば電解酸化処理に先だって又は電解中に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤を用いてpHの調整が行ってもよい。電解中に被処理液は酸性化すると成分中の臭素イオン、塩素イオン、沃素イオンが酸化されてそれぞれのハロゲンガスが発生するので、これを防止するためである。また、CODの分解効率にもアルカリ性のpHが好ましい。添加されるアルカリ剤は、固体、水溶液、懸濁液などのいずれの形であってもよく、添加方法も電解酸化処理に先だって添加してもよく、また自動調整装置と連動させながら電解をすすめてもよい。pHは電解操作中7以上に、好ましくはpH8以上に、維持されるように調整されてもよい。
一方、鉄錯塩化合物の加水分解による沈殿生成を抑止するために、pHは12.5以下であることが好ましい。
【0021】
<電解酸化>
電解酸化法について述べる。写真廃液は高い腐食性をもっているので、電解槽はこれらの成分に耐える耐食性材料である白金、フェライト、ステンレス、酸化皮膜が速やかに形成される鉄、硬質プラスチック等を選択する必要がある。
【0022】
陽極は、酸化され難い耐蝕材質である白金、ステンレス、カーボン(とくにグラファイト、グラシーカーボン、基板上に層形成されたダイヤモンド)、チタン、酸化皮膜が速やかに形成される鉄等が好ましい。
中でも好ましい陽極は、いわゆるダイヤモンド電極即ち基板上にダイヤモンド構造の炭素層を形成させた電極であり、水の陽極酸化との競合が少ないので効率的に酸化が進行する利点を有する。ダイヤモンド構造の層に良好な導電性を付与するためには原子価の異なる元素を微量添加(ドーピング)することが必要で、例えばリンや硼素を1〜100000ppm 、好ましくは100 〜10000 ppm 程度含有させる。この添加物の原料化合物としては毒性の少ない酸化硼素や五酸化二リンなどが好ましい。ドーピングの方法としては、熱フィラメントCVD(HFCVD)法(Klages, Appl.Phys. A56巻 (1993) 513〜526頁 を参照)や特開平8-225395号公報段落0007に記載されている真空チャンバー内での化学蒸着法が知られている。ダイヤモンド電極の詳細は、特登第3442888号公報に記載されている。
【0023】
陰極は、電解酸化反応には直接関与しないが、廃液に対して不活性な材質である白金、ステンレス、チタン、カーボン等が好ましい。
例えば、陽極にはステンレス電極、ダイヤモンド電極、酸化皮膜が速やかに形成される鉄電極を、陰極にはステンレス、チタンなどの電極が好ましい。
また、反応液中には多量の懸濁成分が含まれているため、電極への懸濁物の沈澱を防止して均一な酸化反応を起こさせ、電流効率を高めるためには回転電極を用いることも好ましい。
【0024】
本発明においては、電解槽の構造は公知の各種の構成で用いることができる。すなわち、単一室セルであってもよく、又は陽極と陰極が膜で仕切られた分割セルであってもよい。最も簡単な実施態様は、単一室セルである。単一室セルでは、陽極と陰極を隔てるバリヤーがなく、したがって溶質は陽極と陰極間を移動するのに制限を受けない。このような単一室方式は、一般的には陽極で酸化された成分がその後陰極で還元されるという可能性を持っているが、写真廃液成分の電気的酸化分解反応の場合は、酸化種の大半は非可逆的な酸化を受けるのでそのリスクの可能性は少ない。
【0025】
2室セルにおいては、イオン交換膜、ミクロろ過膜、半透膜、多孔性膜例えば多孔性セラミックスなどの通電性隔膜を陽極と陰極の間に挿入する。イオン交換膜はあるタイプのイオン種のみを陽極液から陰極液へ又はその逆方向へ通過させることができる。膜の機能は、陽極液と陰極液が混合することなく電気的中性を保持することである。また、適当な膜を用いれば、その膜を通過して移動するイオンの性質を制御することができる。例えば、陰極室でチオ硫酸イオンや亜硫酸イオンが還元されて生成した硫黄イオンにとって硫化銀が生成して沈殿し、陰極室内で捕集する本発明の好ましい態様が可能である。なかでもイオン交換膜、半透膜、セラミックスなどが両極を分ける隔膜として好ましい。
【0026】
電解酸化処理の温度は常温或いはこれよりやや高い温度が好ましく、また、電圧は5.0 〜8.0V、電流密度は、0.5〜100 A/dmが好ましく、より好ましくは5 〜50 A/dmがよい。
また、電解は回分法及び連続法の何れでもよい。回分式の好ましい電圧印加方式としては、電解初期(COD低減目標値の2〜10%相当の間)は4〜6A/dmの比較的低電流密度を適用し、電解の進行と共に電流密度を高めてCOD低減目標値の10%相当程度に電解した後は、定常的な電流密度、例えば12〜20A/dmの電流密度を適用することによって電気分解を続けるのも好ましい態様である。
【0027】
本発明における電解酸化は、バッチ方式、再循環方式、連続方式のいずれの方式を用いても良く、廃液処理の規模や処理の程度に応じて、適宜最も都合がよい方式を選択できる。
好ましい通電量は被処理廃液のCODにも依存するが、通常写真廃液1リットルにつき0.5MQ以上であり、好ましくは1〜10MQであり、より好ましくは2〜8MQである(MQはメガクーロン)。
【0028】
写真廃液には、写真処理液由来の界面活性剤が含まれているが、電解酸化中の発泡を抑制するために、さらにノニオン性界面活性剤のような消泡剤を使用することができる。例えば、BASF社によって上市されているPluronic(登録商標)シリーズからのもの、好ましくはPluronic−31R1Polyol(登録商標)(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロックコポリマーのメタノール溶液)を用いてもよい。しかし、消泡剤を使用する場合、泡の形成を避けるために必要な最低量で使用する。例えば、Pluronic−31R1Polyol(登録商標)消泡剤ではその添加量は、0.15mL/処理廃液L以下でよい。
【0029】
(化学酸化処理)
本発明の方法による写真処理廃液の化学酸化処理について述べる。
<化学酸化剤及び処理>
写真廃液は、pHなどの調整後又は調整することなく直接に化学酸化処理、すなわち化学酸化剤(酸化剤と呼ぶ)による酸化処理が施される。本発明に適用される酸化剤は、写真現像液を酸化し得る酸化性化合物であればいずれでもよいが、好ましい酸化剤と酸化処理は、酸化剤としてオゾン、過酸化水素又は過硫酸塩を使用する酸化処理、塩素を使用する酸化処理、次亜塩素酸又はその塩を使用する酸化処理が挙げられる。また、必要に応じて酸化過程で加熱や紫外線照射などを行なったり、或いはその他の酸化剤を併用することができる。本明細書における化学酸化処理とは、酸化剤が写真廃液中の還元性成分や有機成分をある程度分解酸化できる処理を指す。好ましい化学酸化処理は、オゾン酸化処理、過酸化水素酸化処理、及びこれらと紫外線照射の組み合わせ処理並びに過硫酸処理である。
【0030】
上記化学酸化は、主にヒドロキシラジカル、パーヒドロキシラジカル、活性酸素基などの酸化作様によって進行すると考えられ、廃液に化学酸化を施すに当たって、予めこれらの酸化性基の作用に好都合なpH領域に調整することが酸化処理を効率的に進めるのに好都合である。好ましいpH領域は、8〜12である。
【0031】
<オゾン酸化>
オゾン曝気処理について述べる。
オゾン酸化法は、オゾナイザー(オゾン発生装置)から導かれるオゾン含有空気を写真廃液に注入して行われる。注入方法の一態様としては、紫外光を効率良く透過する容器に処理水を導き入れオゾンを容器底部に設けた例えばガラスボールフィルター(気孔径40〜50μm)又はアトマイザーを通して送気する形式が挙げられる。
【0032】
オゾンを発生させるには無声放電を行わせたり、コロナ放電を利用したりあるいは電解反応を利用するなどの方法が採られているが、本発明に用いるオゾン発生装置は、いずれであっても特に制約はなく通常市販されているオゾン発生装置から選択して使用することができる。その中では無声放電を利用する方法が好ましい。無声放電は2つの電極の間に誘電体を介して交流高電圧をかけたとき、その間隙に起る放電現象を指すもので、放電の際にその空間に介在する酸素の一部がオゾンに変化する。誘電体は普通ガラスを用い、空間々隙は数mm、電圧は交流50〜500サイクル数千ボルトから場合によっては2万ボルトぐらいまでが使われる。
【0033】
オゾン発生装置は、平板型の相対する電極群からなるものや、筒状のオゾン発生管を縦型又は横型に配置したものなどがあるが、本発明にはそのいずれも使用できる。また原料は酸素、空気いずれでもよいが、本発明においては空気を使用する方が安価で好ましい。
【0034】
オゾン含有空気の注入とともに紫外光による照射処理を行なうことも好ましい。オゾン送気と同時に紫外光を照射するとオゾンが活性化されて酸化効率が向上する。紫外光は容器底部または内部または周囲に設置した水銀ランプ等の光源より照射される。水銀ランプはランプ内部の水銀蒸気圧により低圧、高圧、超高圧に分類されていてそれぞれ遠紫外の輝線,近遠紫外の輝線と近紫外線値と可視域連続スペクトル,紫外連続スペクトルを発する。本発明の目的にはどの型のものでも使用できるが、オゾンガスの励起波長領域が遠紫外域(UV−C)で強いので低圧水銀灯と組み合せるのが好ましい。別の好ましい組合せとしては、遠紫外域の水銀の輝線で励起されて300〜400nm波長域の蛍光を発するタイプの紫外線蛍光管(ブラックライトと呼ばれる)とその蛍光を吸収して光触媒作用を営む酸化チタンとを組み合せてオゾン酸化を行なわせる光照射・光触媒・オゾン酸化法も好ましい。いずれにしても、酸化剤はオゾンであり、オゾンが高い自由エネルギーを有しながら反応が遅いので反応促進のための触媒として遠紫外域(UV−C)の光照射や酸化チタンとブラックライト光照射が用いられる。
照射光の電力量は、COD値と廃液成分の分解性によって異なるが、目安として廃液量100kgに対して5WHrから600WHrが好ましく、中でも20WHrから500WHrがより好ましい。
【0035】
オゾンガス酸化により分解される適当な量は、廃液中のCODの10%以上,好ましくはCODの15〜90%,多くは20〜80%が低減される程度が適切である。
通気したオゾン含有ガスは、そのまま排気してもよいが、循環使用して利用率を高めるのが好ましい。
オゾン酸化処理装置からの排気ガスは、加熱分解又は亜硫酸塩水溶液などのオゾン捕集液で処理してから排出する。
【0036】
上記のオゾンおよび紫外光による処理については水処理技術第32巻1号3頁(1991)、工業用水第349号15頁(1987)、ACS Symposium Ser.(Am. Chem. Soc.) 第259号195頁(1984)などに記載されている。
また、特開平7-47347号合法記載の廃液のオゾン酸化法及び特開平5-968295号公報に記載の紫外線照射しながらオゾン曝気を行なう廃水酸化方法を利用することもできる。
【0037】
<過酸化水素酸化>
オゾンに代えて過酸化水素を用いて化学酸化を行なうこともできる。過酸化水素は、3%、10%あるいは28%水溶液として廃液中に注入される。過酸化水素濃度が35,50又は60%水溶液の製品形態のものをそのまま使用することも可能であるが、安全上前記の濃度に希釈して使用するのが好ましい。過酸化水素による化学酸化の場合も、好ましい酸化度は、オゾンの場合について前記した酸化率と同じである。
過酸化水素はオゾンよりも電位的には酸化活性が低いが、この場合も光照射や光照射と光触媒(酸化チタン)との組み合せによる接触酸化促進が効果的であり、むしろその促進効果はオゾンに対する促進効果よりも大きい。組み合せられる紫外線光源、光触媒もオゾンについて前記したことが当てはまる。
上記の過酸化水素による処理については特開平9−234475号公報などに記載されている技術も利用できる。
【0038】
過酸化水素を用いる写真廃液の一形態として、本発明ではフェントン酸化法を用いることもできる。この酸化法は、過酸化水素の酸化力を利用する方法であるが、過酸化水素は前記したように自由エネルギーは大きいにも拘わらず電子移行が遅いために酸化速度が制約されるので、触媒として第一鉄塩を併用する酸化方法である。この触媒作用によって、生分解性に乏しい高COD物質も効果的に分解される点に特徴がある。
フェントン法では、具体的には、過酸化水素濃度が0.5〜10モル/L,硫酸第一鉄100〜200ミリモル/L,pH2〜3、初期温度10〜30℃で行われる。
フェントン法を利用した廃水処理方法の具体例には、例えば特開平3−262594号公報をあげることができる。また、過酸化水素を酸化剤とする同様の接触酸化方法には、特開平4−235786号公報に記載の鉄粉を触媒に用いた廃水処理方法をあげることができる。
また、過酸化水素を用いる酸化処理に使用できるさらに別の触媒は、特開平9−234475号公報に記載されている。
【0039】
好ましい化学酸化処理法としては、上記の化学的酸化処理のほかに、過硫酸、塩素、次亞塩素酸による酸化処理も挙げられる。
次亞塩素酸を用いる場合は、ナトリウム塩、アンモニウム塩、いわゆる晒し粉(次亞塩素酸カルシウム・塩化カルシウム・水和物)を用いることが好ましい。本明細書では、塩の形のものも含めて次亜塩素酸と呼んでいる。
これらはいずれも市販品を入手できる。
これらの酸化剤を用いて化学酸化処理を行う場合の温度は、室温又は成り行きでよく、また30〜90℃の適当な範囲に温度調節して行なってもよい。とくに、過硫酸塩による酸化の場合は、加熱することによって処理が促進される。
一方,廃液の有機物濃度を短時間に低減させるためには、酸化剤の添加濃度を高める必要があるが、高濃度酸化の場合には処理された写真廃液の酸化剤が残留し易く好ましくない。その場合は、高濃度酸化剤のもとでの酸化の後、十分に長い攪拌放置時間を取って反応時間を十分に長く取ることが好ましい。
上記の塩素および/又は次亞塩素酸による処理については特開昭53−41055号公報などに記載されている技術も利用できる。
また、過硫酸酸化処理については特開昭61−230144号公報などに記載されている技術も利用できる。
【0040】
(ハロゲン化物除去及び銀除去)
写真廃液は感光材料由来の銀をチオ硫酸銀錯塩などの形で含有しているが、銀は有価物であるので、事前に回収することが望ましい。ただし、チオ硫酸銀錯塩(定着銀)は、動植物に無害であるので、微量の銀が残留していても問題はない。銀回収方法は、写真廃液の銀回収に通常行なわれる方法のいずれでも適用できる。
好ましい銀回収方法としては、金属置換法と電解法を挙げることができる。金属置換法は、鉄置換法とアルミニウム置換法が用いられるが、鉄置換法がより好ましく、とくにスチールウールを用いる銀回収方法が市販の銀回収装置も普及しており、簡易であり、かつ銀回収業者との回収ネットワークも確率しているので好ましい。
電解回収方法も写真廃液用の電解銀回収装置が市販されている。電解後の廃液は再利用が可能であるという利点があるので、定着液や漂白定着液の再生使用には好都合であるが、本発明の目的である廃液を肥料として利用するにはスチールウールを用いる金属置換法が簡易性の点で最も好ましい。
写真廃液中に含まれる感光材料由来の、及び処理液処方由来のハロゲン化物は、塩素イオン、臭素イオン及び若干量の沃素イオンのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩で構成されている。これらのハロゲン化物は、微少量は必要であるが、過剰に存在すると土壌の固化を促進したり、植物の生育に有害な作用を及ぼしたりするために、除去するか、又は悪影響のない濃度まで希釈して使用するのが好ましい。塩素イオンに関しては、年間1000m(10a)当たり1〜10kgの供給が必要であることが最近の研究で判明している。塩素イオンなどのハロゲンイオン除去手段としては、公知の任意の方法を用いることができるが、イオン交換膜電気透析法やイオン交換樹脂によるハロゲンイオンの捕集が実際的である。イオン交換膜やイオン交換樹脂は、ハロゲン化物除去の目的には1価選択性の膜又は樹脂を用いればよいが、写真廃液にはハロゲン化物以外に、硫酸塩、亜硫酸塩が含まれているので、場合によっては、これらのアニオンをも除去可能のイオン交換膜やイオン交換樹脂を選択してもよい。ただし、アニオン成分を除去することにより廃液のpHが過度にアルカリ性にならない範囲で行う必要がある。
【0041】
(肥効成分添加及び調整)
写真廃液、又は電解酸化や化学酸化処理を加えた写真廃液に添加して使用できるリン化合物としては、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸などのほか、リン肥料として汎用されている例えば過リン酸石灰、重過リン酸石灰、苦土過リン酸、焼成リン肥、沈澱リン酸石灰などをあげることができる。これらのリン化合物は、写真廃液に添加したのち他の必要な成分添加や成分調整をしてもよく、また写真廃液や他の必要な添加物と同時に混合してもよい。
銀とハロゲン化物が除去され、好ましくはリン化合物が添加された廃液は、そのままでも液体肥料として用いることができるが、さらに成分調製を行うことが好ましい。成分調製は、pHの調整、付加したい微量成分の添加、特定成分濃度の調整、肥料形態の調整から選択して行なわれる。
【0042】
pHの調整は、植物の生育に悪影響しないpH範囲への調製であって、pH3.5〜9の範囲、好ましくはpH4〜8.5の範囲に調製される。写真廃液から、ハロゲン化物を除去する過程では、イオン交換膜やイオン交換樹脂のいずれを適用した場合でも、廃液のpHはアルカリ性に多少とも移行しているのでpHの調整を必要とすることが多い。pHの調整は、イオン強度の増加を避けるためには、無機酸を避けて酢酸、クエン酸などの有機酸、あるいは炭酸ガス、さらには酸性白土などの酸性土壌などによって行なうことが好ましい。さらには、肥料が基材と混合した形態の場合には、基材の中でも酸性の、例えばピートモス(pH3.5〜4.5)やみずごけ(pH4.5〜5.0)を用いることもよい。
【0043】
肥料には、上記した3要素のほかに、さらに植物の生育に必要な微量成分を付加することによって肥料としての機能を高めることができる。そのような微量成分としては、必須元素としては、上記3要素のほか、カルシウム、マグネシウム及び硫黄であり、カルシウム及び硫黄は写真廃液中に含まれている。
微量必須元素には、鉄、マンガン,銅、亜鉛、モリブデン、ホウ素及び塩素であり、鉄及び塩素は写真廃液中に含まれている。
その他の有用元素としては、珪素、ナトリウム、コバルト、ニッケル、アルミニウム及びセレンが挙げられるが、写真廃液にはナトリウムは一般的に含まれている。
微量必須元素及び微量有用元素は、自然界に常時存在している元素もあり、上記した元素をすべて意図的に供給する必要はないが、必要に応じて特定の微量元素の化合物の肥料として適正な添加量を電解処理した写真廃液・リン化合物含有組成物に加えることができる。
【0044】
本発明に係る写真廃液(そのもの、電解酸化したもの、化学酸化したもの)を肥料とするためには、写真廃液そのままでも、あるいは適正量のリン化合物を混合しただけでもよいが、さらに特定成分濃度の調整を行なって、窒素、カリウム及びリンの3要素の成分濃度を調整し、さらにその他の成分調整を必要に応じて行なうことが好ましい。3要素の調整は、使用目的すなわち肥料の種類によって、適切な成分比が選択される。
成分濃度の調整は、例えば窒素成分を補正するには、尿素やアンモニア水などを添加するなど、カリウム成分を補正するには、塩化カリウムの添加、さらにはチリ硝石や硝酸カリウムなどによって両成分の補正を行なってもよい。
各肥料成分の配合比と濃度は、肥料の適用対象植物や、施肥目的などによって、適当な比率と濃度が選択されるので多様である。例えば、いわゆる5:5:5肥料と呼ばれる汎用の基礎配合肥料では、窒素、リン酸、カリ成分が植物の生育に適した比率に構成されて配合されている。花や果実対象で肥沃な土壌には、リン酸、カリ成分が配合された5:5肥料が作られる。
【0045】
<肥料の形態>
肥料形態の調整としては、第一に液肥か、固形肥料かの使用形態別の調整が挙げられる。
液肥の形態には、原液供給形態、希釈された使用液形態などが用いられ、それぞれの使用形態に応じて減圧濃縮や水希釈などの濃度調節と収納容器の選択が行なわれる。
固形肥料の場合には、粉末状、顆粒状などの製品形態に応じて、噴霧乾燥、減圧蒸発乾燥などの固化や後に述べる造粒が行なわれる。固化物の形態には、粉末状、顆粒状、錠剤状などの形態が挙げられる。
粉剤形態には、必要あれば乾固ののち粉砕して粒度を調節する方法、噴霧乾燥などの適切な乾燥によって粉末化する方法、などによって作られる。
粉末剤は、特開昭54−133332号、英国特許725892号、同729862号及びドイツ特許3733861号等の明細書に記載される一般的な方法で製造できる。
固形肥料、すなわち濃厚固形肥料は、造粒された形態が好ましく、造粒方法に付いては、土壌改良剤の造粒方法に含めて後述する。
固形肥料の場合は、上記の調整済みの液体肥料をそのまま固化し、さらには造粒した濃厚固形剤の形態と基材と混合してから固化させた、更には造粒した固形肥料の形態が選択される。
基材と混合した固形肥料の形態では、基材は土壌改良剤用の基材の中から選択されるので、土壌改良剤用基材に含めて説明する。
本発明の肥料の使用形態としては、肥料を含有した土壌改良剤として用いることも好ましい適用形態である。
【0046】
(土壌改良剤)
土壌改良剤としては、基材に上記の液肥を含浸させた態様、同様に上記基材に上記固形肥料を混合した態様、上記基材の微粒又は粉末と上記液肥とを混練して造粒した形態などが好ましいが、これらに限定されない。
基材とは、植物生育用に望ましい物理性をもつ肥料,水分,空気担体を指し、通気性、保肥性、保水性に優れた土壌や土壌改質剤、例えばパーライト、パーミキュライト、赤玉土、鹿沼土、コンポスト、腐葉土、ピートモス、吸水性ポリマー、合成及び/又は天然ゼオライト、合成及び/又は天然白土、みずごけ、ゼラチン、木屑及び砕木チップなどが挙げられる。吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸やアクリル酸/アクリル酸メチル共重合体などの親水性アクリル酸系ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などを上げることができる。
【0047】
固形肥料及び土壌改良剤のとくに好ましい形態は、基材の微粒又は粉末と上記液肥とを混練して造粒した形態である。混合比率は、基材と調整済み廃液とが析出・分離することなく安定に含浸・混合されている限り任意の比率でよいが、造粒方法としては、液肥/基材の質量比は0.1〜1のものは、濃厚肥料として置肥えや希釈し用の目的に、質量比は10−4〜0.1のものは、肥力賦活剤として土壌改良剤との併用や生育不良のときの速効性の肥力増強の目的に、質量比は10−8〜10−4のものは、土壌改良材として使用できる。
【0048】
<造粒>
本発明において、基材の微粒又は粉末と上記液肥とを混練して造粒する方法、さらには造粒してその粒子表面に保護のための被覆層を設ける方法は、公知の各種造粒法によって行うことができる。それら本発明に適用できる各種造粒法は、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編)に記載されており、また例えば、特開昭51−61837号、同54−155038号、同52−88025号、英国特許1213808号の明細書に記載される一般的な方法で製造できる。さらに、特開平4−221951号、同2−109043号公報などにも記載されている。その中でも好ましい方法として、特開2001-183780号及び同2001-183779号公報に詳細に記載された方法を用いることができる。 すなわち顆粒化の方法については特開2001-183779号公報段落[0018]〜[0027]及び実施例並びに特開2001-183780号公報段落[0021]〜[0028]及び実施例に、処理剤容器については特開2001-183779号公報段落[0029]〜[0033]及び特開2001-183780号公報段落[0030]〜[0034]に記載された方法を用いることができる。
しかしながら、本発明において、造粒法はこれらに限定されるものではない。
【0049】
本発明では、圧縮型造粒法、コンパクティング法が本発明の効果が著しく、また、造粒した粒子表面への被覆には転動造粒法、流動層造粒法、コーティング造粒法、遠心流動型コーティング機を用いたコーティング造粒法が好ましい。
【0050】
本発明の顆粒は、その表面に水溶性ポリマーを必要に応じてコーティングすることができる。コーティングに用いられる水溶性ポリマーの種類に制限はなく、例えばゼラチン、ベクチン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニールアルコール、変性ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、ポリビニールピロリドン・ビニールアセテート共重合体、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、カラゲナン、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体等の合成、半合成及び天然水溶性高分子物質から選ばれる1種又は2種以上を用いることができ、中でもポリエチレングリコール、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、アラビアガム、カラゲナンの1種又は2種以上を用いることが本発明においてより好ましい。
【0051】
水溶性ポリマーのコーティング量は、通常行われるコーティング量である限り格別の制約はないが、顆粒に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%が特に好ましい。水溶性ポリマーのコーティング方法にも公知の方法を格別の制約なく用いることができるが、前記の転動造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法、コーティング造粒法、溶融造粒法又は噴霧乾燥造粒法を用いることが好ましい。中でも、転動造粒法、流動層造粒法、コーティング造粒法又は噴霧造粒法によって、顆粒表面に1〜50%濃度のポリマー水溶液をスプレーコーティングし、乾燥する方法が特に好ましい。
【0052】
[写真処理液]
本発明は、写真処理に用いられる結果として生じる写真廃液の利用に係るが、廃液となる前段の写真処理液は、いずれの種類、形態の写真処理液であってもよい。
【0053】
写真処理液にはカラー処理液、黒白処理液、製版作業に伴う減力液、現像処理タンク洗浄液などがあり、黒白現像液、カラー現像液、定着液、漂白液、漂白定着液、画像安定化液などが挙げられる。また、カラーネガ用、カラーリバーサル用、カラーペーパー用、黒白感光材料用、印刷システム用感光材料などの各感光材料種類ごとの各種写真処理液がある。それぞれの写真処理液は、現像所において調液された写真処理液や、写真処理剤供給者が製造した調合処理剤、キット形態や単薬形態、が用いられているが、本発明の写真廃液の再生利用方法は、それらのいずれにも摘要できる。
[感光材料]
【0054】
つぎに、写真処理の対象である感光材料について説明する。本発明に係る感光材料は、発明の目的と背景に関連して前記したように写真市場で汎用されているカラーネガフィルムなどの撮影用カラー写真感光材料及びカラー印画紙などのプリント用カラー感光材料であって、本発明はこれら感光材料を処理して生じる処理廃液に適用するのが好ましく、これらの感光材料は支持体上に少なくとも1層の感光性層が設けられている。典型的な例としては、支持体上に、実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感光性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀写真感光材料である。
【0055】
本発明に使用できるハロゲン化銀写真乳剤は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)No.17643 (1978年12月), 22 〜23頁, “I. 乳剤製造(Emulsion preparation and types)”、および同No.18716 (1979年11月),648頁、同No.307105(1989年11月),863 〜865 頁、およびグラフキデ著「写真の物理と化学」,ポールモンテル社刊(P.Glafkides, Chimie et Phisique Photographiques, Paul Montel, 1967) 、ダフィン著「写真乳剤化学」,フォーカルプレス社刊(G.F. Duffin, Photographic Emulsion Chemistry,Focal Press, 1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V. L. Zelikman, et al., Making and Coating Photographic Emulsion, Focal Press,1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。US 3,574,628、同 3,655,394およびGB 1,413,748に記載された単分散乳剤も好ましい。
【実施例1】
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
(芝生栽培)
市販の芝生植生材ドムターフ(興人製)を縦3枚横3枚の正方形に並べ木枠に入れて1パレットを構成する。このパレットを実験水準ごとに各3パレット用いた。購入後10日後に第一回目の測定と撮影を行った後、各パレットの芝を剪定して高さを揃えた後,施肥試験を開始した。
(使用肥料)
A.(本発明例)店頭処理用小型現像機[デジタルミニラボFRONTIER350(富士写真フイルム(株)製)]を用いて、市販のカラーペーパー(フジカラーペーパーsuper)をフジカラーペーパー用処理剤CP-48Sを用いて処理して排出された現像、漂白定着、リンスの各浴からのオーバーフロー液、すなわち現像廃液、漂白定着廃液、リンス廃液の混合廃液を得た。この廃液に定法によりスチールウールを浸漬し、廃液中の銀イオンを1mg/リットル以下まで除去した後、pHは硫酸(希釈液)を用いて7.0に調整した。その液を油吸着材アタックエース(菱化イーテック製)でろ過した。肥料液としての使用に際しては市販肥料と窒素含有量を揃えるように水道水にて100倍に希釈した。
B(比較例).Aと同様に調製したもので油吸着材処理のみ省いた試料。
C(比較例).市販肥料[葉物用スミトモ液肥、住友化学(株)製]を100倍に希釈。
D(比較例).タイプ(追肥なし)
【0057】
(施肥)
各パレットに肥料100mL/mの比率で週1回均一に散布した。潅水は2日置きに行なった。
(観察・結果)
結果の評価は、芝生の色味の測定と写真撮影プリントの視覚評価によって行なった。
【0058】
(1)色味の測定
・芝生の色味の測色方法
芝生の色の変化を定量化するため、刺激値直読方法の色彩色差計(ミノルタ色彩色差計CS-100)を用い、硫酸バリウム製の標準白色面と芝生の色度値(Y,x,y)を測定した。
撮影は、試験開始当日、4,6,9,13週目を目途にして測定値の変動を少なくするため、晴天の日を選び、その日の11時から13時の間に計測を行い、計測位置も一定の位置から測定するように規定した。また本装置は視野角1度の色度を測色できる装置であるが、芝の微細な構造や陰の影響を除くため、ピントをずらして測定を行った。
各パレットの正面で前端より100cmの位置で高さ150cmの位置に色彩計をセットし、各パレットにつき均等に分割した3箇所x3箇所(計9箇所)について測定した。
【0059】
求めた色度値から硫酸バリウム製の標準白色面を基準とした色度値CIE1965(L*,a*,b*)を算出し、これをもとに色味Hab°を算定した(測色値より、L*,a*,b*、Hab°を下記の式により算出する計算式は測色計算に用いられる一般式であり、色彩科学ハンドブック:日本色彩学会編に記載されている)。
色度値から国際色差学会(CIE)で定められたスペクトル三刺激値は次のように計算される。
X=x/yY
Y=Y
Z=(1−x−y)/yY
基準白色板の測色値を X0 、Y0 、Z0
芝生の測色値を X、Y、Z とすると

*=116 (Y/Y1/3 ―16
*=500 {(X/X1/3−(Y/Y1/3
*=200 {(Y/Y1/3−(Z/Z1/3
このとき、基準白色板の測色値をX0、Y0、Z0とし、芝生の測色値をX、Y、Z とした。
色味の変化を1個の特性値で表すため、上記CIE1976(L*,a*,b*)色度座標系の色度値L*,a*,b*を求め、それらの値から次式で表される色相(Hab°)を求めた。
Hab°=180/π x tan−1(b*/a*
但し、a*>0 b*>0 の時 0°<Hab°< 90°
*<0 b*>0 の時 90°<Hab°<180°
*<0 b*<0 の時 180°<Hab°<270°
*>0 b*<0 の時 270°<Hab°<360°
3個のパレットの各9箇所の芝生の計測値(Hab°)の平均値を表1に示した。
【0060】
【表1】

【0061】
芝生の色は、a*<0、B*>0 の領域にあり、数値が小さいほど黄色味を帯び、数値が大きいほど青味を帯びて見える。表1に示されるように、試料A,B,Cともに施肥を行なわない場合(試料D)よりも青味を帯びているが、タール除去を行なった本発明による試料Aがもっとも優れており、スミトモ液肥(試料C)よりも優れていた。
【0062】
(2)写真撮影プリントの視覚評価
芝生の色味変化の記録手段として、計測に先立ちデジタルスチルカメラによる撮影も行った。カメラは富士写真フイルム(株)製 FinePix S2Pro を用い、自動光源色補正機能をオフにし、「晴天」に固定して撮影を行い、RAW形式で画像データを保存した。 この時、同一撮影条件でマクベスチャートを撮影し、前記色彩色差計で24色の計測をおこなった。
撮影画像は、同時撮影したマクベスチャートの画像から求めた出力値と前記色彩色差計での測色値が一致するよう、記録画像をマトリック演算で補正した後、富士写真フイルム(株)製デジタルプリント装置 (Pictrogrphy3500)で出力して比較写真とした。
撮影画像結果より、試料Aの肥料は、葉を青々と見え、気温の下がって来る13週目になっても芝生の緑を保ち、黄ばみ難くする効果があることを確認できた。
【実施例2】
【0063】
実施例1において、廃液試料に対して銀除去を施す操作とpHの調整の間に、下記の電解酸化処理を施した以外は実施例1と全く同じ方法によって本発明の試料及び比較試料を作製して施肥試験を行ない、写真撮影によって写真プリントの視覚評価を行なった。
【0064】
(電解酸化処理)
陽極に二酸化鉛(日本カーリット社製、LD400)、陰極にステンレス(SUS−316)用い、陰極3枚と陽極2枚を並列で交互に取り付けた容量15Lのタンクに、廃液10Lを入れて電解した。それぞれの電極面積は、200cmであり、極間距離は25mm、廃液はスターラーで撹拌しながら、電流を100Aとして、15時間電解酸化処理を行った。
【0065】
(結果)
撮影画像の観察結果では、試料A,B,Cともに施肥を行なわない場合(試料D)よりも青味を帯びているが、タール除去を行なった本発明による試料Aの肥料を施した芝生は、葉を青々と見え、気温の下がって来る13週目になっても芝生の緑を保ち、黄ばみ難くする効果が他の試料の芝生より優れていることを確認できた。
本発明の実施例同士で比較すると、実施例2の芝生試料の方が視覚的に青味が優れているという結果を示した。これは、電解酸化に伴う過剰の鉄塩濃度の低下と、植物の生育に不要な有機物や有機酸がより効果的に分解されたためと推定している。
【実施例3】
【0066】
実施例1において、廃液試料に対して銀除去を施す操作とpHの調整の間に、下記の化学酸化処理を施した以外は実施例1と全く同じ方法によって本発明の試料及び比較試料を作製して施肥試験を行ない、写真撮影によって写真プリントの視覚評を行なった。
【0067】
上記写真廃液1Lあたり、オゾンを100mg/hrの速度で、ボールフィルターを経由して供給し10時間の処理を行った。
使用装置は以下の通り;
オゾン発生装置:FM-300N,ニッコー金属製
ボールフィルター:口径クレード2G,25mmφ、木下理科製
【0068】
オゾン通気中を通して紫外線(UV)光を照射した。容器は光化学反応用石英セルを用いた。
使用装置は以下の通り;
UV光発生装置; 450W高圧水銀灯(UM−452型、安定機としてUM−453BA型、ウシオ電機製)
【0069】
(結果)
撮影画像の観察結果では、試料A,B,Cともに施肥を行なわない場合(試料D)よりも青味を帯びているが、タール除去を行なった本発明による試料Aの肥料を施した芝生は、葉を青々と見え、気温の下がって来る13週目になっても芝生の緑を保ち、黄ばみ難くする効果が他の試料の芝生より優れていることを確認できた。
また、本発明の実施例同士で比較すると、実施例3の芝生試料の方が実施例1の芝生試料よりも視覚的に青味が優れているという結果を示した。この理由も前記同様、化学酸化に伴う過剰の鉄塩濃度の低下と、植物の生育に不要な有機物や有機酸がより効果的に分解されたためと推定している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真廃液からタール又はタール前駆体を除去し、必要に応じて成分濃度を調整して得られたことを特徴とする肥料。
【請求項2】
タール又はタール前駆体を油吸着剤に吸着させることによって写真廃液から除去して得られたことを特徴とする請求項1に記載の肥料。
【請求項3】
タール又はタール前駆体を油吸着膜に吸着させることによって写真廃液から除去して得られたことを特徴とする請求項1に記載の肥料。
【請求項4】
写真廃液に電解酸化処理を施し、該酸化処理中又は処理後にタールを除去して得られたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の肥料。
【請求項5】
写真廃液に化学酸化処理を施し、該酸化処理中又は処理後にタールを除去して得られたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の肥料。
【請求項6】
タール前駆体を除去した写真廃液に電解酸化処理又は化学酸化処理を施すことなく、ただし必要に応じて成分濃度を調整して得られたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の肥料。
【請求項7】
タール又はタール前駆体の除去に加えて、写真廃液中の含有銀を回収することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の肥料。
【請求項8】
タール又はタール前駆体の除去に加えて、写真廃液中のハロゲン化物の濃度を低減させる処理を施したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の肥料。
【請求項9】
ハロゲン化物の濃度を低減させる処理がイオン交換膜を用いる電気透析処理又はイオン交換樹脂処理であることを特徴とする請求項8に記載の肥料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の肥料を基材に含有させてなることを特徴とする土壌改良剤。
【請求項11】
基材がパーライト、パーミキュライト、赤玉土、鹿沼土、コンポスト、腐葉土、ピートモス、吸水性ポリマー、合成及び/又は天然ゼオライト、合成及び/又は天然白土、みずごけ、ゼラチン、木屑及び砕木チップから選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項10に記載の土壌改良剤。
【請求項12】
写真廃液を用いて請求項1〜9のいずれかに記載の肥料又は請求項10又は11に記載の土壌改良剤を得ることを特徴とする写真廃液の再利用方法。

【公開番号】特開2006−96570(P2006−96570A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281080(P2004−281080)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】