説明

脂溶性活性成分の粉末状配合物

【課題】天然ルピナスタンパク質組成物のマトリックスに、脂溶性活性成分、例えばビタミンAを含有する安定な粉末状配合物が開示される。
【解決手段】

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、脂溶性活性成分を含む新規で安定な粉末状配合物、及びその調製方法に関する。本発明の新規な組成物は、食品、飲料物、動物飼料、化粧品又は薬物のための添加物として使用して、前記脂溶性活性成分をそのような適用形態に取り込むことができる。
【0002】
より具体的には、本発明は、脂溶性活性成分を天然ルピナスタンパク質のマトリックスに含む安定な粉末状配合物に関する。
【0003】
ここで使用される用語「天然ルピナスタンパク質」は、ルピナス種子などの天然産物に見出されるようなルピナスタンパク質を意味し、加水分解により修飾されていない。しかしながら、用語「天然ルピナスタンパク質」は、等電点後の沈殿化を受け、「再構成」タンパク質として一般には知られているルピナスタンパク質を含むことが理解される(国際公開第99/11143号パンフレット及びそれに含まれる参考文献を参照のこと)。
【0004】
用語「天然ルピナスタンパク質組成物」は、天然のルピナスタンパク質供給源から得ることができるような天然ルピナスタンパク質を含む任意の組成物を意味する。そのような天然ルピナスタンパク質組成物の例には、重量比で60%から90%(以降:重量%)までのタンパク質含有量、一般的には50重量%〜96重量%のタンパク質、典型的には約65重量%〜70重量%のタンパク質を有するルピナスタンパク質濃縮物;及びルピナスタンパク質単離物があり、ルピナスタンパク質単離物の用語は、約90重量%を超えるタンパク質を含有するタンパク質調製物を規定するためにこの分野では一般的に使用される。そのような濃縮物及び単離物の残り成分(4重量%〜50重量%)は、水及び油のほかには主に植物繊維である。
【0005】
本発明の目的のために、約60重量%〜90重量%のタンパク質含有量を有するルピナス濃縮物、90重量%を超えるタンパク質含有量を有するルピナス単離物及び約40重量%〜60重量%のタンパク質含有量を有する粉末が好ましい。このようなタンパク質組成物のための供給源として、Lupine Angustifolius、Lupine Albus oder Lupine Luteus等のようなすべての知られているルピナス品種を使用することができる。しかしながら、Lupine Angustifolius及びLupine Albusに由来するタンパク質組成物が好ましい。
【0006】
ここで使用される用語「脂溶性活性成分」は、脂質に可溶性であり、かつ、水には不溶性であるか、又はやや溶けにくい生理活性成分を意味する。そのような脂溶性活性成分の例には、脂溶性ビタミン、すなわち、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK及びビタミンAエステルのようなそれらの誘導体、例えば、酢酸ビタミンA及びパルミチン酸ビタミンA、並びにビタミンEエステル、例えば、酢酸トコフェロール;カロテノイド及びカロテノイド誘導体、例えば、α−カロテン、β−カロテン、8’−アポ−β−カロテナール、エチルエステルのような8’−アポ−β−カロテン酸エステル、カンタキサンチン、アスタキサンチン、アスタキサンチンエステル、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン又はクロセチン及びそれらの誘導体;多不飽和脂肪酸、例えば、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸及びγ−リノレン酸及び/又はエチルエステルがある。脂溶性活性成分は、組成物の総重量に基づいて約0.1重量%〜約80重量%、特に約0.5重量%〜約60重量%の量で配合物に存在させることができる。
【0007】
本発明の好ましい態様において、新規な配合物はさらに、還元糖、例えば、グルコース、フルクトース又はキシロースを組成物の総重量に基づいて約0.1重量%〜約70重量%、特に約1.0重量%〜約10重量%の量で含有する。
【0008】
そのような配合物は、メイラード型反応における糖とタンパク質との架橋を生じさせるために熱処理に供することができる。架橋はまた、それ自体は知られている様式でのトランスグルタミナーゼのような酵素による処理によっても達成することができる(例えば、米国特許第5156956号明細書を参照のこと)。架橋された配合物は、増大した安定性を示すことが見出されている。
【0009】
本発明によれば、新規な配合物は、脂溶性活性成分と天然ルピナスタンパク質組成物の水性乳化物を調製するステップと、所望の場合には、還元糖を加えるステップと前記乳化物を乾燥粉末に変換するステップと、還元糖が加えられた場合には、熱処理又は架橋酵素での処理によって前記糖を前記タンパク質と架橋するために前記乾燥粉末を供するステップとを含む方法によって得ることができる。
【0010】
好適には、本発明の方法の第1ステップにおいて、タンパク質組成物を水に分散する。その後、脂溶性活性成分を、好適には液体状態で、すなわち、十分に加温しながら、かつ/又は、適切な溶媒における溶液として、タンパク質の水性分散物に乳化する。あるいは、固体の活性物質の懸濁物をミリングのような適切な手法によって製造することができる。その後、乳化物を、場合により過剰な溶媒を除いた後、噴霧乾燥する。噴霧乾燥は、従来の噴霧乾燥技術、流動層造粒と組合せた噴霧乾燥(後者の技術は、流動噴霧乾燥又はFSDとして一般に知られている)を使用することによって、又は、噴霧された乳化物液滴が、デンプン又はケイ酸カルシウムなどの吸収剤の床において捕捉され、続いて乾燥される粉末捕捉技術によって行うことができる。
本発明のさらに別の態様において、新規な配合物はさらに、保護コロイドとして作用する他のタンパク質又は加水分解されたタンパク質、例えば、ダイズタンパク質又は加水分解されたダイズタンパク質を含有することができる。そのようなさらなるタンパク質は、配合物におけるタンパク質の総量に基づいて10重量%〜50重量%の量で本発明の配合物に存在させることができる。
【0011】
最後に、さらにさらなる態様において、本発明は、本発明の新規な配合物を含む食品、飲料物、動物飼料、化粧品及び薬物に関する。
【0012】
本発明の新規な配合物はさらに、補助剤及び/又は賦形剤、例えば、単糖、二糖、オリゴ糖又は多糖、トリグリセリド、水溶性抗酸化剤、脂溶性抗酸化剤、ケイ酸、ケイ酸Ca、炭酸Ca及び水の1つ又は複数を含有することができる。
【0013】
本発明の配合物に存在させることができる単糖及び二糖の例には、サッカロース、転化糖、グルコース、フルクトース、ラクトース及びマルトースがある。本発明の組成物に存在させることができるオリゴ糖又は多糖の例には、デンプン、修飾デンプン及びデンプン加水分解物、例えば、デキストリン及びマルトデキストリン、特に、5〜65のデキストロース当量(以降、DE)の範囲にあるそのようなもの、及びグルコースシロップ、特に、20〜95のDEの範囲にあるグルコースシロップがある。用語「デキストロース当量」(DE)は加水分解の程度を意味し、乾燥重量に基づいてD−グルコースとして計算される還元糖の量に対する尺度である。天然のデンプンは0に近いDEを有し、一方、グルコースはDE=100を有する。
【0014】
トリグリセリドは好適には植物性の油又は脂肪であり、例えば、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ベニバナ油、ナタネ油、ラッカセイ油、パーム油、パーム核油、綿実油又はヤシ油などである。
【0015】
水溶性抗酸化剤はアスコルビン酸及びその塩で、例えば、アスコルビン酸ナトリウム及び同種のものであり得る。脂溶性抗酸化剤はトコフェロール、例えば、dl−α−トコフェロール(すなわち、合成トコフェロール)、d−α−トコフェロール(すなわち、天然トコフェロール)、β−トコフェロール及びγ−トコフェロール、並びにそれらの混合物;アスコルビン酸パルミテート又はアスコルビン酸ステアレートのような脂肪酸のアスコルビン酸エステル;ブチルヒドロキシトルエン(BHT);ブチルヒドロキシアニソール(BHA);没食子酸プロピル;又はt−ブチルヒドロキシキノリン;又は6−エトキシ−1,2−ジヒドロキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(EMQ)であり得る。
【0016】
下記の実施例は本発明をさらに例示する。
【0017】
(実施例1)
粉末状ビタミンA配合物の調製:
Lup.Angustifoliusから得られた62.4gのルピナスタンパク質単離物(タンパク質含有量96.2%)及び10.9gのグリセロールを230mlの水に加えた。この混合物を、溶解が生じるまで60℃に加温した。この溶液に12.3gのフルクトースを加え、溶液のpHを6.5±0.2に調節した。その後、49.3gの酢酸ビタミンA(エトキシキンで安定化された2.1×10IEビタミンA/g)をマトリックス溶液に乳化し、混合物を60℃で60分間撹拌した。そのとき、乳化物の内側相は約580nmの平均粒子サイズを示した。その後、乳化物を約25mlの水で希釈し、約300gの乳化物を回転噴霧ノズルによって約5℃でケイ酸Ca床内の噴霧皿において噴霧した。このようにして得られたビーズ小滴をふるい分けによって過剰なケイ酸Caから分離し、乾燥した。ビタミンA含有量が約850,000IEA/gである約100gの乾燥粉末を得た。
【0018】
(実施例2)
熱架橋:
実施例1で得られたビタミンA乾燥粉末を135℃の温度で35分間撹拌する。このようにして得られた生成物は熱水に不溶であり、ビタミンA含有量が570,000IEA/gであった。
【0019】
(実施例3)
アポ−カロテン酸エチル乾燥粉末の調製:
a)Lup.Angustifoliusから得られた16gのルピナスタンパク質単離物(タンパク質含有量96.2%)を130mlの水に50℃で溶解した。この溶液に1.6gのアスコルビン酸パルミテートを加え、溶液のpHを20重量%水酸化ナトリウム溶液の添加により7.5±0.2に調節した。
【0020】
b)9gのβ−アポ−8’−カロテン酸エチル、5.5gのトウモロコシ油及び0.6gのエトキシキンを50mlのクロロホルムに溶解した。
【0021】
c)段落b)で得られたβ−アポ−8’−カロテン酸エチル溶液を45℃で30分間、段落a)で得られた溶液に乳化した。そのとき、乳化物の内側相は約280nmの平均粒子サイズを示した。クロロホルムを減圧下、50℃で蒸発させ、デンプン床において実施例1の手法と同様の手法で、乳化物を噴霧乾燥した。β−アポ−8’−カロテン酸エチル含有量が11.4重量%である42gの乾燥粉末を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ルピナスタンパク質組成物のマトリックスに、脂溶性活性成分を含む安定な粉末状配合物。
【請求項2】
前記ルピナスタンパク質組成物が、90重量%を超えるタンパク質含有量を有するルピナスタンパク質単離物である請求項1記載の配合物。
【請求項3】
前記ルピナスタンパク質組成物が、約60重量%〜90重量%のタンパク質含有量を有するルピナスタンパク質濃縮物である請求項1記載の配合物。
【請求項4】
前記ルピナスタンパク質組成物が、約40重量%〜60重量%のタンパク質含有量を有するルピナスタンパク質粉末である請求項1記載の配合物。
【請求項5】
請求項2〜4記載の天然ルピナスタンパク質組成物の混合物を含む請求項1記載の配合物。
【請求項6】
前記脂溶性活性成分が、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE若しくはビタミンK、又はカロテノイド、又は多不飽和脂肪酸、又はそれらのエステル、又はそれらの混合物、である請求項1記載の配合物。
【請求項7】
前記脂溶性活性成分が、植物性若しくは動物性の油又は脂肪、特に、ヒマワリ油、パーム油又はトウモロコシ油、である請求項1記載の配合物。
【請求項8】
さらに還元糖、特に、グルコース、フルクトース又はキシロース、を含む請求項1記載の配合物。
【請求項9】
前記タンパク質が架橋されている請求項1〜8のいずれか一項記載の配合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の配合物を含む、食品、飲料物、動物飼料、化粧品又は薬物。
【請求項11】
脂溶性活性成分及び天然ルピナスタンパク質組成物、の水性乳化物を調製するステップと、
所望の場合には、
還元糖を加えるステップと、前記乳化物を乾燥粉末に変換するステップと、を含み、
必要な場合には、
熱処理又は架橋酵素による処理によって前記タンパク質を架橋するために前記乾燥粉末を供するステップと、を含む、
請求項1〜9のいずれか一項記載の配合物を調製するための方法。
【請求項12】
還元糖が添加され、前記組成物が加熱による架橋に供される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、架橋酵素、特にトランスグルタミナーゼでの処理による架橋に供される、請求項11記載の方法。

【公表番号】特表2006−521798(P2006−521798A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504839(P2006−504839)
【出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003110
【国際公開番号】WO2004/086882
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(505220217)デーエスエム アイピー アセッツ ベー. ヴェー. (29)
【Fターム(参考)】