説明

脂肪分解促進作用を有する組成物

【課題】脂肪分解促進作用及びアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を有し、且つ、食品として副作用や毒性等の安全性の点で問題がなく、経口摂取することが可能な組成物や、該組成物を含む飲食品やサプリメントを提供する。
【解決手段】脂肪分解促進作用及びACE阻害作用を有する食品用組成物を提供すべく種々の食材について鋭意検討した結果、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、及びトリコラーゲンを組み合わせて調製した組成物が、優れた脂肪分解促進作用及びACE阻害活性作用を有する。組成物を有効成分として用いることにより、脂肪分解促進作用及びACE阻害作用を有する飲食品やサプリメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪分解促進作用を有し、かつ、そのペプシン及びトリプシン分解物がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を有する組成物、より詳細には、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、及びトリコラーゲン(チキンコラーゲン)からなる組成物や、かかる組成物を含有する経口摂取用の脂肪分解促進剤や、及び経口摂取用のACE阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪は食物として摂取した余剰のエネルギーが白色脂肪組織に蓄積されたものであり、過剰な白色脂肪組織の蓄積によって肥満となり、その結果、様々な生活習慣病の原因となるばかりでなく、美容面でも大きな問題となっている。特に最近内臓周囲(腸間膜脂肪)に形成される白色脂肪組織の増大が高血圧、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高脂血症を誘発することによりメタボリックシンドロームを引き起こすことが科学的に明らかにされ、その予防と改善が社会的に切望されている。
【0003】
脂肪細胞に脂肪が蓄積して肥大すると、脂肪細胞からの善玉アディポカインの分泌が減り、種々の悪玉アディポカイン(例えば、TNFα、レジスチン等)が分泌され、インスリン抵抗性(すなわち、インスリン感受性の低下)が引き起こされる。その結果、血糖値を十分に低下させられなくなるので、血糖値を制御するためにインスリンが過剰分泌され、高インスリン血症となる。高インスリン血症になると、過剰のインスリンによる脂質代謝などへの作用によって、メタボリックシンドロームが引き起こされる。
【0004】
アディポネクチンは、善玉アディポカインの1つであり、脂肪酸の燃焼および糖の取り込みを促進し、インスリン抵抗性を改善する(非特許文献1)。アディポネクチンによる脂肪酸の燃焼作用は、脂肪細胞で生じるのではなく、肝臓および骨格筋におけるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化によるものである。肝臓においては、糖の新生を抑制して脂肪酸を燃焼し、そして骨格筋では、糖を取り込んで脂肪酸を燃焼させる。
【0005】
アディポネクチンの発現は、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化に伴って誘導される。そして、脂肪細胞が肥大していないときに脂肪細胞から活発に分泌される。一方、脂肪細胞が肥大した場合には、上述のTNFαなどによってアディポネクチンの作用が減弱される。また、脂肪細胞が肥大すると、アディポネクチンの転写は抑制され、アディポネクチンが欠乏して代謝異常が引き起こされる(非特許文献1)。
【0006】
野菜または果実由来のカロテノイドが、インスリン誘導時における前駆脂肪細胞からの脂肪細胞への分化を抑制することが報告されているが(特許文献1)、上述のように、前駆脂肪細胞からの脂肪細胞への分化を抑制するとアディポネクチンの発現も抑制されるため、脂肪細胞への分化を抑制することが、即抗肥満作用につながるかは疑わしい。
【0007】
従来から、肥満の予防と改善については、食事制限、過剰エネルギーの吸収の遅延及び阻害、あるいは消化管における糖質吸収阻害物質の探索など、摂取エネルギーを制限するような様々な研究が行われてきた。しかし、エネルギー摂取の制限は基礎代謝量を低下させる要因にもなり、必ずしも肥満が改善されないことがある。したがって、肥満を解消するためには蓄積された脂肪を積極的に代謝、分解して熱エネルギーとして発散することが理想的である。これらのことから、近年、食品素材中から脂肪分解促進作用を有する機能性成分の探索が活発に行われ、多くの脂肪分解促進剤及び飲食品が提案されている。
【0008】
既に知られている天然由来の脂肪分解促進剤の有効成分としては、ミカン科植物(特許文献2)、アザミ族の植物(特許文献3)、コショウ科植物(特許文献4)、オレンジリーフ、オレンジフラワー、フキタンポポ葉およびカラマスルート(特許文献5)、ハトムギ、大麦、決明子、蕃石榴およびプーアル茶(特許文献6)などがある。さらに最近では、ハスまたはその抽出物を有効成分とする脂肪分解促進剤(特許文献7)、カバノキ科シラカバの抽出液及びイネ科クマザサの抽出物の少なくともいずれかを含有する脂肪分解促進剤(特許文献8)、小麦タンパク質の加水分解物を含有する脂肪蓄積抑制および促進剤(特許文献9)等を挙げることができる。
【0009】
一方、高血圧症は代表的なメタボリックシンドロームの症状であり、その患者数は年々増加している。高血圧症は脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、腎硬化症など種々の合併症を引き起こすことが知られており、高血圧症の発症メカニズムについて様々な研究が行われてきており、血圧の昇圧に関与するレニン・アンジオテンシン系と、降圧に関与するカリクレイン・キニン系が重要な役割を果たしていることが知られている。レニン・アンジオテンシン系では主に肝臓から分泌されるアンジオテンシノーゲンが腎臓で生産されるレニンによってアンジオテンシンIとなり、更にアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンIIに変換される。このアンジオテンシンIIは血管平滑筋を収縮させ、血圧を上昇させる。一方、降圧系のカリクレインはキニノーゲンに作用してブラジキニンを産生する。このブラジキニンには血管を拡張して血圧を下げる効果があるが、ACEにはこのブラジキニンを分解してしまう作用がある。このように、ACEは昇圧ペプチドであるアンジオテンシンIIの産生と降圧ペプチドであるブラジキニンの不活化という2つの作用によって血圧の上昇に関与していることが明らかにされている。従って、このACEの酵素活性を抑制することにより血圧の上昇を抑制することが可能となる。ACE阻害活性物質として開発されたプロリン誘導体であるカプトプリルやエナラプリル等は高血圧症の治療に広く用いられている。
【0010】
また、最近では食品素材蛋白質の酵素分解物であるペプチドにACE阻害活性のあることが報告されている。例えば、ゼラチンのコラーゲナーゼ分解物(特許文献10)、カゼインのトリプシン分解物(特許文献11〜16)、γ−ゼインのサーモライシン分解物(特許文献17)、イワシ筋肉のペプシン分解物(特許文献18)、かつお節のサーモライシン分解物(特許文献19)、ゴマ蛋白のサーモライシン分解物(特許文献20)、κ−カゼインのペプシン等の分解物(特許文献21)など多数の報告がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−95930号公報
【特許文献2】特開平8−81382号公報
【特許文献3】特開平8−301780号公報
【特許文献4】特開平8−245410号公報
【特許文献5】特開平11−228431号公報
【特許文献6】特開2002−275078号公報
【特許文献7】特開2004−307365号公報
【特許文献8】特開2006−045120号公報
【特許文献9】特開2007−106683号公報
【特許文献10】特開昭52−148631号公報
【特許文献11】特開昭58−109425号公報
【特許文献12】特開昭59−44323号公報
【特許文献13】特開昭60−23086号公報
【特許文献14】特開昭60−23087号公報
【特許文献15】特開昭61−36226号公報
【特許文献16】特開昭61−36227号公報
【特許文献17】特開平2−32127号公報
【特許文献18】特開平3−11097号公報
【特許文献19】特開平4−144696号公報
【特許文献20】特開平8−231588号公報
【特許文献21】特開平8−269088号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】門脇孝ら、「アディポネクチンと糖尿病・心血管病の分子メカニズム」,第128回日本医学会シンポジウム記録集「糖尿病と動脈硬化」2004年12月2日,34−45頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、脂肪分解促進作用及びACE阻害作用を有し、且つ、食品として副作用や毒性等の安全性の点で問題がなく、経口摂取することが可能な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、種々の食材について脂肪分解促進作用及びACE阻害活性について鋭意検討した結果、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、及びトリコラーゲン(チキンコラーゲン)を組み合わせて調製した混合物が、優れた脂肪分解促進作用を有することを、さらに、大麦若葉、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、トリコラーゲンの混合物を消化酵素であるペプシン及びトリプシンを用いて処理した消化混合物がACE阻害活性を示すことを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、
(1)サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、及びトリコラーゲンを含む組成物であって、脂肪分解促進作用を有し、かつ、そのペプシン及びトリプシン分解物がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を有することを特徴とする組成物、
(2)大麦若葉エキス100重量部あたり、サケ白子抽出物14.0〜14.5重量部、ビール酵母抽出物2.8〜3.2重量部、及びトリコラーゲン5.7〜6.2重量部を含むことを特徴とする、上記(1)記載の組成物、
(3)サケ白子抽出物が、サケ白子を酵素処理することにより得られる、オリゴヌクレオチドとオリゴペプチドまで分解した低分子成分を含む抽出物であることを特徴とする、上記(1)又は(2)記載の組成物
(4)ビール酵母抽出物が、ビール酵母を酵素処理することにより得られる、低分子化したRNA成分を含む抽出物であることを特徴とする、上記(1)又は(2)記載の組成物
(5)大麦若葉エキスが、30%難消化性デキストリンを含むことを特徴とする上記(1)又は(2)記載の組成物、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする経口用脂肪分解促進剤、
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする経口用アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、及び
(8)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする飲食品に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、優れた脂肪分解促進作用及びその消化物がACE阻害作用を有する組成物の提供が可能となった。本発明の組成物は、食品として副作用や毒性等の問題がないため、長期間継続して簡便に摂取することが可能であり、肥満や高血圧などの成人病予防・改善に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の組成物の存在下で培養した脂肪細胞の培養上清中のグリセロール量が、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、又はチキンコラーゲンの単独存在下で培養した脂肪細胞の培養上清中のグリセロール量と比較して顕著に増加していることを示す図である。図の縦軸は、無添加区の培養上清中のグリセロール量を基準とした百分率の値を示している。
【図2】本発明の組成物の存在下で培養した脂肪細胞の生存率と、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、又はチキンコラーゲンの単独存在下で培養した脂肪細胞生存率との間に顕著な差が認められないことを示す図である。図の縦軸は、無添加区の脂肪細胞の生存率を基準とした百分率の値を示している。
【図3】本発明の組成物のペプシン及びトリプシン処理物のACE阻害活性が、ペプシン及びトリプシン処理したサケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、又はチキンコラーゲン処理物単独のACE阻害活性と比較し顕著に優れていることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の、脂肪分解促進作用を有し、且つ、ペプシン及びトリプシンによる分解後にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を有する組成物としては、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、及びトリコラーゲン(チキンコラーゲン)を含む組成物であれば特に制限されるものではないが、大麦若葉エキス100重量部あたり、サケ白子抽出物14.0〜14.5重量部、ビール酵母抽出物2.8〜3.2重量部、及びトリコラーゲン5.7〜6.2重量部を含む組成物であることが得に好ましい。
上記サケ白子抽出物としては、食品用として使用できるものであれば特に制限されるものではないが、サケ白子を酵素処理することにより、オリゴヌクレオチドとオリゴペプチドまで分解した低分子成分を含むサケ白子抽出物が好ましい。特に分子量1000〜3000のオリゴヌクレオチド、オリゴペプチドを20〜50%含有するサケ白子抽出物が好ましい。このようなサケ白子抽出物は、例えば日生バイオ株式会社等より入手することができる。
上記ビール酵母抽出物としては、食品用として使用できるものであれば特に制限されるものではないが、ビール酵母を酵素処理することにより、低分子化したRNAを含むビール酵母抽出物が好ましい。特に分子量1000〜3000のRNAを20〜50%含有するビール酵母抽出物が好ましい。このようなビール酵母抽出物は、例えば日生バイオ株式会社等より入手することができる。
上記大麦若葉エキスとしては、特に制限されるものではないが、食品用に低温でスプレードライした大麦若葉エキスを好適に用いることができる。大麦若葉エキスに難消化性デキストリンを含んでいるものも用いることができる。難消化性デキストリンを含んだ大麦若葉エキスとしては20〜30%の難消化性デキストリンを含有しているラクソン社製の大麦若葉エキスを好適に挙げることができる。
上記トリコラーゲンとしては、特に制限されるものではないが、食品用のトリコラーゲンを好適に用いることができ、例えば株式会社エル・エス・ファクトリー社製のトリコラーゲンを好適に挙げることができる。
【0019】
本発明の組成物は、経口用の脂肪分解促進剤の他、経口用の脂肪蓄積抑制、肥満予防剤、肥満改善剤として用いることができ、また、経口用ACE阻害剤の他、カプトプリルなどの合成医薬品とは異なって、摂取後副作用がない、あるいは極めて少ない血圧上昇抑制剤、高血圧症の予防若しくは改善剤として用いることができる。さらに、本発明の組成物は飲食品に配合して用いることにより、飲食品に脂肪分解促進作用及びACE阻害作用を付与することができる。下記の実施例に記載のように、本発明の組成物は消化酵素であるペプシン及びトリプシンで消化した後に、優れたACE阻害作用を示すことから、食品として経口摂取することにより高血圧症の予防・改善に効果を奏することができる。本発明の組成物を飲食品に配合して用いるためには、その有効成分の有効量を飲食品の製造原料段階、あるいは製造した製品の段階等で添加、配合する。ここで「有効成分の有効量」とは、個々の飲食品において通常喫食される量を摂取した場合に、有効成分が摂取されるような含有量を意味するものであり、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定することができる。
【0020】
本発明の飲食品は、本発明の組成物を含有するものであれば特に制限されるものではなく、具体的には、本発明の組成物をそのまま飲食品やサプリメントとして調製したものや、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等をさらに配合したものや、液状、半液体状若しくは固体状にしたものや、一般の飲食品へ添加、配合したものを例として挙げることができる。
【0021】
さらに、本発明の飲食品は、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、あるいは病者用食品であってもよい。本発明の経口用脂肪分解促進剤、経口用ACE阻害剤、及び飲食品は、その製造に関しては、通常用いられる添加物や配合剤、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、分散剤、保存剤、湿潤化剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化材、カプセル基剤、食品素材等の補助剤を用いることができる。該補助剤の成分としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはその塩、アラビアガム、ポリエチレングルコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム、プルラン、カラギーナン、デキストリン、還元パラチノース、ソルビトール、キシリトール、ステビア、合成甘味料、クエン酸、アスコルビン酸、酸味料、重曹、ショ糖エステル、植物硬化油脂、塩化カリウム、サフラワー油、ミツロウ、大豆レシチン、香料等を具体的に挙げることができる。
【0022】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
(1)試料の調製
本発明の実施例において、評価に用いた試料は、サケ白子抽出物(日生バイオ株式会社製)、ビール酵母抽出物(日生バイオ株式会社製)、大麦若葉エキス(ラクソン社製、30%難消化性デキストリン含有)、チキンコラーゲン(トリコラーゲン:株式会社エル・エス・ファクトリー社製)を単独又は組み合わせて調製した。試料の調製に用いた各成分の濃度を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
(2)脂肪細胞への分化及び脂肪分解活性の測定
マウス前駆脂肪細胞株3T3−L1細胞を、96well培養プレートに3×10cells/250μl/wellとなるように播種し、10%CSを含むDMEM培地(10%CS/DMEM)を用いて2日間プレインキュベートを行い、コンフルエント (day0)になるまで培養した。脂肪細胞分化誘導剤[0.5mMイソブチルメチルキサンチン(IBMX)、1μMデキサメサゾン(DEX)、10μg/mlインスリン]を培地に添加し、さらに3日間培養することにより脂肪細胞への分化誘導を行った。分化誘導後の細胞を、10μg/mlインスリンを含む10%FBS/DMEM培地にて3日間培養した後、基本培地で6日間培養した。この6日間の培養中、培地を2日間おきに交換し脂肪滴を蓄積させた。その後、表1に記載の混合物、及び、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、チキンコラーゲンを単独で添加して、さらに、48時間の培養を行った。培養終了後に上清を回収し、Adipolysis assay kitを用いて培養上清中のグリセロール量を測定した。この培養上清中のグリセロール量を脂肪分解の指標とした。グリセロール遊離率はコントロールの値を100%とした場合の相対的な値である。
脂肪分解促進率%=[A/B]×100
A:抽出物添加時の遊離グリセロール量
B:抽出物無添加時の遊離グリセロール量
【0026】
(3)試験結果
上述のように、脂肪分解促進作用の判定は、脂肪分解により生成するグリセロール量の測定値を指標として求めた。結果をグラフにしたものを図1に、数値化したものを表2にそれぞれ示す。大麦若葉エキスを含む混合物(試料)を添加した区において、1mg/mlと5mg/ml濃度において、それぞれcontrolの208.67%、504.17%の値を示した。一方、各成分を単独で添加した区における脂肪分解率は、大麦エキス810μg/ml添加区で141.57%、 4.05mg/ml添加区で255.22%;サケ白子抽出物116μg/ml添加区で95%、580μg/ml添加区で95.44%;ビール酵母抽出物24μg/ml添加区で95%、120μg/ml添加区で81.6%;チキンコラーゲン48μg/ml添加区で87.67%、240μg/ml添加区で116.7%を示した。以上のように、大麦若葉エキス、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、チキンコラーゲン成分を組み合わせて調製した試料が示すような顕著な脂肪分解促進作用は、各成分単独では認められないことが明らかとなり、大麦若葉エキス、サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、チキンコラーゲン成分の組み合わせることにより顕著な相乗効果が認められることが示された。
【0027】
【表2】

【0028】
(4)細胞生存率の測定
さらに、上清を回収した後の細胞生存率を、Cell counting Kit-8(Dojindo社製)を用いて測定した。図2に結果を示すように、混合物及び各成分の添加区において生存率には差が認められないことを確認した。
【実施例2】
【0029】
(1)試料及び各成分のペプシン及びトリプシン分解物の調製
0.1M HCl・KCl(pH2.5)を用いて、表1に示す混合物及び各成分の10%溶液を調製し、ペプシンを加えて、37℃で2.5時間酵素処理した。処理後、沸騰水浴中90℃で10分間加熱し、ペプシンを失活させた。この処理液を、0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を用いて5倍希釈し、さらに、トリプシンを加えて、37℃で24時間酵素処理した。処理後、沸騰水浴中90℃で10分間加熱し、トリプシンを失活させた。この処理液を遠心し、上清を凍結乾燥し、以下の実験に用いた。
【0030】
(2)アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性の測定
ACE阻害活性の測定はLieberman測定法の変法に基づいて行った。上記のようにして酵素処理した凍結乾燥試料を酵素処理前の濃度と同様に表1に記載の濃度となるように調製した。この調製液(30μL)に、400mM NaClを含むホウ酸緩衝液(pH8.3)で5mMに希釈したHip−His−Leu基質溶液(250μl)を添加し、37℃の恒温水槽中で5分間保温した。600mu/ml(6mU)のACE溶液(100μl)を添加し、直ちに撹拌した後、37℃で60分間反応を行った。1N塩酸(250μl)を添加し、撹拌して反応を停止させた後、酢酸エチル(1.5ml)を添加し、十分に撹拌することにより馬尿酸を遊離させた。3,000rpm、10分間の遠心分離後に上層の酢酸エチル層を1.0ml回収し、エバポレーターで乾固した。さらに減圧デシケーター内で60分間乾燥させた後、超純水を3ml添加し、その溶液の吸光値(228nm)を測定した。なお、阻害活性は以下の式により阻害率(%)として算出した。
阻害率(%)=(E−E/E−E)×100
【0031】
ここでのEは、試料溶液を添加したときの吸光値、Eは試料溶液の代わりに超純水を添加したときの吸光値、Eはあらかじめ1N塩酸を添加して反応させたときの吸光値をそれぞれ示している。
【0032】
(3)試験結果
図3に結果に示すように、混合物1mg/ml、10mg/mlの場合、対応する濃度の各組成物単独の場合に比べてACE阻害活性が顕著に高いことが明らかとなり、相乗的な効果が認められた。
【実施例3】
【0033】
一本あたり、大麦若葉エキス1687mg、サケ白子抽出物240mg、ビール酵母抽出物50mg、チキンコラーゲン100mg、難消化性デキストリン723mg、デキストリン500mgを配合した、スティックタイプのサプリメントを調製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サケ白子抽出物、ビール酵母抽出物、大麦若葉エキス、及びトリコラーゲンを含む組成物であって、脂肪分解促進作用を有し、かつ、そのペプシン及びトリプシン分解物がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
大麦若葉エキス100重量部あたり、サケ白子抽出物14.0〜14.5重量部、ビール酵母抽出物2.8〜3.2重量部、及びトリコラーゲン5.7〜6.2重量部を含むことを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
サケ白子抽出物が、サケ白子を酵素処理することにより得られる、オリゴヌクレオチドとオリゴペプチドまで分解した低分子成分を含む抽出物であることを特徴とする、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
ビール酵母抽出物が、ビール酵母を酵素処理することにより得られる、低分子化したRNA成分を含む抽出物であることを特徴とする、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
大麦若葉エキスが、30%難消化性デキストリンを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする経口用脂肪分解促進剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする経口用アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−74051(P2011−74051A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230493(P2009−230493)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【特許番号】特許第4493725号(P4493725)
【特許公報発行日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(509276102)株式会社 ファイナルフューチャーインターナショナル (2)
【Fターム(参考)】